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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】研磨処理装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/015 20120101AFI20250312BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20250312BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20250312BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20250312BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20250312BHJP
   B24B 49/14 20060101ALI20250312BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250312BHJP
   B24B 37/005 20120101ALN20250312BHJP
【FI】
B24B37/015
B24B37/32 Z
B24B37/30 E
B24B37/00 K
B24B37/12 D
B24B49/14
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
B24B37/005 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024058846
(22)【出願日】2024-04-01
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500487837
【氏名又は名称】ミクロ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 明夫
(72)【発明者】
【氏名】桑野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 肇
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/233681(WO,A1)
【文献】特開平10-156708(JP,A)
【文献】特開2000-228391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00-3/60,21/00-51/00;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にプラテンパッドが貼付されたプラテンと、研磨処理対象となるウェーハを保持してその被研磨面を当該プラテンパッドの表面に摺接させる研磨ヘッドと、を有する研磨処理装置であって、
前記研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、
前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記ウェーハを保持する弾性体と、
前記弾性体に保持された前記ウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリングと、
前記環状体と前記リテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段と、を有する前記研磨ヘッドと、
前記プラテンパッドの表面側に配設され、且つ、前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成され、前記プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源と、
前記弾性体の裏面側に配設され、当該弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源と、
前記プラテンの裏面側に配設され、前記プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源と、を有し、
前記第1の補填熱源は、その一部が前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む円弧部を両側に有する錨形状に形成された補填熱源であり、一方の円弧部が前記研磨ヘッドの外周と対向して前記プラテンパッドの表面側に配設されることを特徴とする、
研磨処理装置。
【請求項2】
表面にプラテンパッドが貼付されたプラテンと、研磨処理対象となるウェーハを保持してその被研磨面を当該プラテンパッドの表面に摺接させる研磨ヘッドと、を有する研磨処理装置であって、
前記研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、
前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記ウェーハを保持する弾性体と、
前記弾性体に保持された前記ウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリングと、
前記環状体と前記リテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段と、を有する前記研磨ヘッドと、
前記プラテンパッドの表面側に配設され、且つ、前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成され、前記プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源と、
前記弾性体の裏面側に配設され、当該弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源と、
前記プラテンの裏面側に配設され、前記プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源と、を有し、
前記第2の補填熱源と、前記研磨ヘッドの外周を囲む2つの前記第1の補填熱源により前記プラテンパッドの表面に扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成することを特徴とする、
研磨処理装置。
【請求項3】
前記プラテンの中心を基準に、当該中心からの距離の異なる複数の測定位置で前記プラテンパッドの表面温度を取得する第1の温度取得手段を有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の研磨処理装置。
【請求項4】
前記第1の温度取得手段は複数の赤外線カメラから構成されており、それぞれの赤外線カメラの測定位置は、前記プラテンの中心から外方に向かう直線上に配置され、それぞれの位置において前記プラテンパッドの表面温度を取得することを特徴とする、
請求項に記載の研磨処理装置。
【請求項5】
前記第1の補填熱源は、前記プラテンパッドの表面に軽面圧で接触し、且つ、少なくとも当該プラテンパッドの表面に接する面は非金属性の素材を用いて形成されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の研磨処理装置。
【請求項6】
前記第1の補填熱源は、前記プラテンパッドの表面と非接触に配設され、当該補填熱源からのふく射熱により当該プラテンパッドの表面温度を調整することを特徴とする、
請求項1又は2記載の研磨処理装置。
【請求項7】
前記研磨処理装置は、研磨処理時における前記ウェーハの被研磨面の表面温度を疑似的に取得する第2の温度取得手段を有し、
前記第2の温度取得手段は、
前記ウェーハと同質のものであり、且つ、当該ウェーハと比べて小型に形成された模擬ウェーハと、
前記模擬ウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、
前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記模擬ウェーハを保持する弾性体と、
前記模擬ウェーハの温度を検知するセンサと、を有して構成され、
前記保持された模擬ウェーハの被研磨面を前記プラテンパッドの表面に摺接させ当該模擬ウェーハの温度を取得することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の研磨処理装置。
【請求項8】
前記研磨ヘッドを基準に、前記第1の補填熱源と対向する位置で当該研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成されたL字形状あるいは略L字形状の規制手段を有し、
前記規制手段は、前記プラテンパッドに向けて供給された研磨液の流れを扇形状に形成することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の研磨処理装置。
【請求項9】
前記第2の補填熱源は、前記弾性体の裏面側に配設された熱源であり、当該弾性体に保持されたウェーハの温度を調整する円形の補填熱源と前記リテーナリングの温度を調整するリング状の補填熱源とで構成されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の研磨処理装置。
【請求項10】
表面にプラテンパッドが貼付されたプラテンと、研磨処理対象となるウェーハを保持してその被研磨面を当該プラテンパッドの表面に摺接させる研磨ヘッドと、を有する研磨処理装置であって、
前記研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、
前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記ウェーハを保持する弾性体と、
前記弾性体に保持された前記ウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリングと、
前記環状体と前記リテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段と、を有する前記研磨ヘッドと、
前記プラテンの裏面に接して配設され、前記プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源と、
前記弾性体の裏面側に配設され、当該弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源と、
前記プラテンの裏面側に配設され、前記プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源と、を有し、
前記プラテンの裏面に接して配設される第1の補填熱源は同心円状に複数配置されたリング状のワイヤヒータであり、隣接する当該ワイヤヒータの間隔が粗な領域と密な領域を設けて発熱体密度を調整することで当該第1の補填熱源と前記第2の補填熱源との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成することを特徴とする、
研磨処理装置。
【請求項11】
前記プラテンの裏面に接して配設される第1の補填熱源は、らせん状に巻かれたワイヤヒータであり、隣接する当該ワイヤヒータの間隔が粗な領域と密な領域を設けて発熱体密度を調整することで当該第1の補填熱源と前記第2の補填熱源との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成することを特徴とする、
請求項10に記載の研磨処理装置。
【請求項12】
前記プラテンの裏面に接して配設される第1の補填熱源はシートヒータであり、当該シートヒータは複数の孔部を有し、
前記孔部を、前記第1の補填熱源と前記第2の補填熱源が重ならない領域に設けることで当該第1の補填熱源と当該第2の補填熱源との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成することを特徴とする、
請求項10に記載の研磨処理装置。
【請求項13】
表面にプラテンパッドが貼付されたプラテンと、研磨処理対象となるウェーハを保持してその被研磨面を当該プラテンパッドの表面に摺接させる研磨ヘッドと、を有する研磨処理装置であって、
前記研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、
前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記ウェーハを保持する弾性体と、
前記弾性体に保持された前記ウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリングと、
前記環状体と前記リテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段と、を有する前記研磨ヘッドと、
前記プラテンパッドの表面側に配設され、且つ、前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成され、前記プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源と、
前記弾性体の裏面側に配設され、当該弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源と、
前記プラテンの裏面側に配設され、前記プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源と、を有し、
前記第1の補填熱源は、前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む円弧部を有する半錨形状に形成された補填熱源であり、この円弧部が前記研磨ヘッドの外周と対向して前記プラテンパッドの表面側に配設されることを特徴とする、
研磨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ又はガラス基板などの基板の研磨処理に用いる研磨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェーハやガラス基板のような基板(以下、ウェーハと称する)の高集積化に伴い、ウェーハ表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械的研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械的研磨は、研磨処理装置(ポリッシング装置とも呼ばれる)を用いて、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液をプラテンパッド(研磨パッド)等の研磨面上に供給しつつ、ウェーハを研磨面に摺接させて研磨処理を行うものである。
【0003】
CMPシステムにおいて、研磨除去速度(MRR(Material Removal Rate))は研磨面温度に対し、指数関数的(べき数)に大きく影響される。従来技術においては、研磨対象物であるウェーハ面内の温度分布が制御できず、 研磨レートの面内均一性に問題があった。また、従来の手法では、流体による温度制御のため、制御の応答性と熱源形状形成の精度に問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたCMP装置は、プラテンパッド(研磨パッド)を張り付ける研磨定盤の温度を均一化する、というものである。具体的には、低温度領域にパイプから蒸気などを噴射する手法であり、パイプ曲率や位置などの調整によりプラテンパッドの温度の均一化を狙っている。
【0005】
また、特許文献2、3に開示されたCMP装置は、メンブレンヘッドの空圧部を温度制御し、ウェーハ裏面よりウェーハ表面の温度均一化を狙っている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-520834号公報
【文献】特開2022-59759号公報
【文献】特開2008-166448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェーハの面内温度均一化には、プラテンパッド側の面内温度均一化が必須条件であるが、従来技術ではプラテンパッド側の温度制御に不備があり研磨ムラが生じてしまう。その主たる要因は外部からの補填熱源形成の不備である。従来思考の熱源は、1)ウェーハとリテーナリング、2)蒸気などの外部熱源である。
一般的なCMPシステムではリング形状のプラテンパッド面幅上に面幅と同径のリテーナリングに保持された円形状の被研磨物が搭載されるが、この円形状熱源のみではプラテンパッド面の温度均一化の達成は困難である。また、蒸気などの外部補填熱源では熱の形状形成が不十分でありプラテンパッドの温度均一化の達成は困難である、という課題が残る。
【0008】
本発明の第1の課題は、ウェーハとリテーナリングの円形熱源と外部からの補填熱源により扇形状熱源(扇型熱源)を形成し、プラテンパッドの温度均一化を図ることである。第2の課題はCMP反応温度を制御することができる機構の検討である。
この二つの問題解決により、これまで考案されていなかったプラテンパッドの温度均一化への対処を可能とし、ウェーハ表面のSFQR(Site Front least sQuare Range)等の更なる向上を図ることができ、高品質で安定的に多数毎の研磨処理を行うことができる研磨処理装置を提供することを、主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表面にプラテンパッドが貼付されたプラテンと、研磨処理対象となるウェーハを保持してその被研磨面を当該プラテンパッドの表面に摺接させる研磨ヘッドと、を有する研磨処理装置であって、前記研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体と、前記環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介して前記ウェーハを保持する弾性体と、前記弾性体に保持された前記ウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリングと、前記環状体と前記リテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段と、を有する前記研磨ヘッドと、前記プラテンパッドの表面側に配設され、且つ、前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成され、前記プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源と、前記弾性体の裏面側に配設され、当該弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源と、前記プラテンの裏面側に配設され、前記プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源と、を有し、前記第1の補填熱源は、その一部が前記研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む円弧部を両側に有する錨形状に形成された補填熱源であり、一方の円弧部が前記研磨ヘッドの外周と対向して前記プラテンパッドの表面側に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、これまで実現できなかった熱源の形状保持によりプラテンパッドの温度均一化への対処を可能とし、この基本条件を基としてウェーハ面内の温度均一化が構成されMRR(Material Removal Rate)の均一化によりSFQR等の更なる向上と、高品質で安定的に多数毎の研磨処理を行うことができる研磨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る研磨処理装置の基本的な構成を説明するための図。
図2】本実施形態に係る研磨処理装置のプラテン上の具体的な構成の一例を説明するための斜視図。
図3】プラテン上の構成の一例を説明するための上面図。
図4】(a)、(b)は、第2の補填熱源の構成の一例を説明するための図。
図5】プラテンパッド上の第1の補填熱源の構成の一例を説明するための図。
図6】プラテン下の第3の補填熱源の構成の一例を説明するための図。
図7】研磨処理時におけるウェーハの温度を疑似的に取得する温度センサの構成の一例を示す図。
図8】(a)、(b)は、第2の補填熱源の構成の別例を説明するための図。
図9】(a)、(b)は、研磨処理時のウェーハとリテーナ熱源及び補填熱源でのプラテンパッドの温度分布について説明するための図。
図10】(a)、(b)は、第1の補填熱源の形状・組み合わせの別例を説明するための図。
図11】プラテンパッドに向けて供給された従来型スラリーの流れの一例を説明するための図。
図12】CMPシステムの伝熱機構についての一例を説明するための図。
図13】熱システム構成の一例を説明するための模式図。
図14】研磨処理を実行する際の制御部による主要な制御手順の一例を説明するためのフローチャート。
図15図7とは異なる、研磨処理時におけるウェーハの温度を疑似的に取得する温度センサの構成の一例を示す図。
図16図2図3とは異なる、第1の補填熱源の構成の一例を示す図。
図17】プラテンの裏面側に第1の補填熱源を配置する場合の当該第1の補填熱源の構成の別例を説明するための上面図。
図18】第1の補填熱源であるワイヤヒータによる略扇形状の熱源領域の形成ついて説明するための図。
図19図17図18とは異なる、第1の補填熱源であるシートヒータによる略扇形状の熱源領域の形成について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
CMPシステムにおいては、プラテンパッドで研磨液(スラリー)の化学反応温度が、例えば35[℃]前後で最適とされている場合がある。熱源の熱量:Qは、研磨条件であるパッド摩擦係数:μ、研磨圧力:P[kgf/cm^2]、相対速度:V[m/min]、J:単位運動当たりの摩擦熱量[≒427kgf・m/kcal]としたとき『Q=μPV/J[kcal/min]』で決定される。そのため、最適化学反応温度に対する自己発熱量の過不足分は外部熱源による制御が必要である。
【0013】
また、スラリー流れもプラテンパッドとウェーハの面内温度分布に影響を与え、熱源の一部として取り扱う必要がある。例えばスラリー温度をプラテンパッド温度と同一に制御することができればコリオリ流れ(従来の流し方・流れ)でも良い。しかしながら、スラリー温度をプラテンパッド温度と同一に制御することは応答性において困難である。そのため、スラリー流れ形状も扇形状が理想的である。したがって、スラリーの流れ形状も扇形状にする必要があり、温度均一化には『扇形状熱源』が最適である事が本発明者らにより解明された。
【0014】
また、プラテン任意半径上での温度は熱源との接触時間に左右されることになる。ここで、研磨処理時のウェーハ熱源及び補填熱源でのプラテンの温度について説明する。
【0015】
図9は、研磨処理時のウェーハとリテーナ熱源及び補填熱源でのプラテンパッドの温度分布について説明するための図である。
図9(a)は、熱源を円形熱源(ウェーハとリテーナリング)のみとしたとき、プラテンパッドの温度分布が不均一になることを示す図であり、図9(b)は、本実施形態に係る研磨処理装置Sのように扇形状熱源としたときプラテンパッドの温度分布が均一になることを示す図である。
【0016】
図9に示すように、内径:Ri、外径:Roのプラテンパッド面上に内径と外径に接している円形熱源がある場合、プラテン回転によるプラテン半径:R3と熱源円板上の円弧ghとの接触時間比:CtはCt=R3*θi/(2π*R3)となる。
図9(a)の右図は上述の接触時間比をプラテン全半径上で計算したものであり、グラフに示すように、半径上での同一時間比にならない事が判明した。プラテン面幅において、プラテン内・外径接触部での時間比はゼロであり、時間比(温度)ピーク点は円板中心方向に偏向している。理想的な時間比は右部の矩形上破線で示されている。
【0017】
これに対し図9(b)では、扇形状熱源での接触時間比を示したものであり、図中右側のグラフに示すように、理想的な矩形状の同一時間比となる事が判明した。この現象によりプラテンパッド面上での温度均一化が可能となる。
【0018】
本発明は、回転しているプラテンにおいて、面上の熱源形状を扇形状に形成して面内の温度均一化を図り、同時にウェーハ及びプラテン裏面よりの熱源補填によるCMP反応温度を制御できる事を特徴とするものである。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。なお、本実施形態の研磨処理装置は、半導体ウェーハやガラス基板のような基板(以下、ウェーハと称する。)を研磨対象とする。本明細書では、このウェーハの一方の表面を円形又は略円形の被研磨面と称す。また、プラテンパッド上においてウェーハの被研磨面が接する面を研磨面と称す。
[実施形態例]
【0020】
図1は、本実施形態に係る研磨処理装置Sの基本的な構成を説明するための図である。
図1に示す研磨処理装置Sは、リング状に形成された研磨テーブルであるプラテン51を有し、このプラテン51の表面(表面側)にプラテンパッド50が接着されている。
【0021】
研磨処理装置Sは、更にウェーハWを保持してその被研磨面をプラテンパッド50の表面に押圧する研磨ヘッド100、研磨液(スラリー)をプラテンパッド50に向けて供給するためのノズルN、プラテン51及び研磨ヘッド100をそれぞれ水平に回転させるためのモータ(図示省略)、ノズルNと接続されている研磨液供給機構(図示省略)、及び、モータを含む各駆動部を制御するためのコンピュータを含む制御部20を有する。
【0022】
プラテンパッド50はリング状のものであり、その半径は、ウェーハWの被研磨面の最大径(直径)よりも大きいものである。この機構においてプラテン51と研磨ヘッド100それぞれの回転数及び回転方向を変化させ、ウェーハW面内の相対研磨速度を調整できる機構となっている。
なお、プラテンパッド50は、それ自体で弾性を持つものであり、不織布からなるものや、発泡ウレタン製のものなど、市場で入手できる素材を用いることができる。
【0023】
研磨ヘッド100は、ウェーハWを、その被研磨面がプラテンパッド50の表面に摺接するように保持し、保持されたウェーハWをその被研磨面の背面方向(背面側)からプラテンパッド50の方向に向けて加工圧力P(図6参照)を付与する押圧機構を有する。
【0024】
制御部20は、ノズルNの位置決め、ノズルNからの研磨液の供給開始又は停止制御、ノズルNから噴出供給される研磨液の単位時間当たりの供給量制御、モータの始動開始や始動停止制御等を主として行う。
制御部20により制御されたモータの回転力は、図示しない駆動部を介してプラテン51に伝達される。これによりプラテン51が水平に回転し、あるいは回転を停止する。
研磨ヘッド100にも、図示しない駆動部(例えば自在継手)を介してモータの回転力(トルク)が伝達される。これにより研磨ヘッド100が水平に回転し、あるいは回転を停止する。
【0025】
プラテン51の回転方向と研磨ヘッド100の回転方向は同方向であることが一般的である。これは、逆方向にするとウェーハ面内の研磨相対速度が不均一となり、均等量研磨が不可能となるおそれがあるためである。プラテン51の回転方向と研磨ヘッド100の回転方向を同じ方向として、両者の回転速度を調整することで研磨精度を高めることができる。
【0026】
なお、単一のモータの回転力を、それぞれ異なるギア比のギアを介してプラテン51及び研磨ヘッド100に伝達するようにしても良く、それぞれ個別のモータを通じて回転力を伝達するようにしても良い。両者は任意に設計することができる。この制御部20による制御手順については、後述する。
【0027】
研磨液は、制御部20の制御によりプラテン51の回転速度が所定値に達した状態で、ノズルNから所定時間、プラテンパッド50に向けて供給される。
【0028】
図2は、本実施形態に係る研磨処理装置Sのプラテン51上の具体的な構成の一例を説明するための斜視図である。
図3は、本実施形態に係る研磨処理装置Sのプラテン51上の構成の一例を説明するための上面図である。
図4は、本実施形態に係る研磨処理装置Sの研磨ヘッド100における第2の補填熱源200の構成の一例を説明するための図である。図4(a)に示すA部分を拡大したものが図4(b)である。
図5は、本実施形態に係る研磨処理装置Sにおけるプラテン上の第1の補填熱源(ヒータブロック)300a(300b)の構成の一例を説明するための図である。
図6は、本実施形態に係る研磨処理装置Sのプラテン下の第3の補填熱源の構成の一例を説明するための図であり、図3上のAA線断面図である。
図7は、研磨処理時におけるウェーハWの温度を疑似的に取得する温度センサ400の構成の一例を示す図である。
以下、図2から図7を用いて本実施形態に係る研磨処理装置Sの特徴の一つである、第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源などについて説明する。
【0029】
本実施形態に係る研磨処理装置Sは、表面にプラテンパッド50が貼付されたプラテン51、研磨処理対象となるウェーハWを保持してその被研磨面を当該プラテンパッド50の表面に摺接させる研磨ヘッド100を有する。
また、研磨処理装置Sは、補填熱源(ヒータブロック)300a、300b、この補填熱源の温度を取得する温度センサ310(図中では一例として補填熱源300aに配設している状態を示す)、温度センサ(ウェーハダミーセンサ)400、スラリー規制枠500、温度センサ600を有する。
【0030】
[第1の補填熱源/ヒータブロックの構成例]
図2図3に示すように補填熱源300a、300bは、プラテン51の表面側に配設され、且つ、研磨ヘッド100の外周の所定の領域(所定の範囲)を囲む形状に形成されたヒータブロック(熱源、例えば電熱ヒータ)である。補填熱源300a、300bには、配線(不図示)を介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。なお、補填熱源300a、300bへの電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。
また補填熱源300a、300bは、その一部が研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲むように円弧部を両側に有する錨形状に形成された第1の補填熱源であり、一方の円弧部が研磨ヘッド100の外周と対向するようにしてプラテン51の表面側に配設される。
温度センサ310は、補填熱源300aの温度を取得する温度センサである。
【0031】
このように補填熱源300a、300bは、同じ形状のものを背中合わせのミラー対に配置し錨形状に形成された熱源であり、プラテンパッド50の表面温度を調整する第1の補填熱源として機能する。
【0032】
補填熱源(ヒータブロック)300a、300bは、図5に示すように、枠体301、断熱材302、面状のフィルムヒータ303、樹脂系あるいはセラミック系の非金属性の材料で形成された均熱板304を有する。なお、均熱板304とフィルムヒータ303は、例えば熱伝導性が高い両面テープなどを用いて貼り合わせる。
【0033】
また、補填熱源(ヒータブロック)300a、300bは、プラテンパッド50の表面に軽面圧で接触させる保持機構(不図示)を介して当該プラテン51の表面側に保持される。
また、補填熱源(ヒータブロック)300a、300bを、プラテンパッド50の表面と非接触に配設し、補填熱源からのふく射熱により当該プラテンの表面温度を調整するように構成しても良い。
【0034】
なお、図2図3に示す温度センサ310による温度検知のタイミングなどは、主として制御部20により制御される。
温度センサ310により取得された温度情報は制御部20に送られ、制御部20は、取得した温度情報に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整する。
【0035】
[第1の温度取得手段の構成例]
温度センサ600は、図2図3に示すように、例えば3つの赤外線カメラ(IRカメラ)から構成され、プラテンパッド50の中心を基準に当該中心からの距離の異なる複数の測定位置(図2に示す一点鎖線上)における当該プラテンパッド50の表面温度を取得する。これによりプラテンパッド50の表面の温度分布を捉える。
【0036】
このように温度センサ600は、プラテンパッド50上の複数の位置の当該プラテンパッド50の表面温度を取得する第1の温度取得手段として機能する。
例えば、温度センサ600それぞれの測定位置は、プラテンパッド50の中心から外方に向かう直線上に位置するように配設される。
【0037】
また、温度センサ600による温度検知のタイミングなどは、主として制御部20により制御される。
温度センサ600により取得された温度情報は制御部20に送られ、制御部20は、取得した温度情報に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整する。
【0038】
[第2の温度取得手段の構成例]
温度センサ400は、研磨処理時におけるウェーハWの被研磨面の表面温度を疑似的に取得するウェーハダミーセンサである。
前述した補填熱源(ヒーターブロック)300a、300bの加熱・温度制御には、研磨処理時におけるウェーハWの研磨面の表面温度(被研磨面温度)を取得する必要がある。しかしながら研磨処理時におけるウェーハWの被研磨面の表面温度の測定は困難である。
そこで、研磨処理時におけるウェーハWの研磨面の表面温度(被研磨面温度)を疑似的にウェーハWの研磨面と同じ環境を作りその表面より最短距離にある裏面で温度取得するウェーハダミーセンサが必要になる。
【0039】
温度センサ400の素材構成は、図7に示すように、ウェーハWと同質のものであり、且つ、当該ウェーハWと比べて小型に形成された模擬ウェーハ401(例えばφ20×t0.075[mm])を有する。
また、温度センサ400は、模擬ウェーハ401の外周を囲むサイズの内周径を有する環状体405、環状体405の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルム403を介して模擬ウェーハ401を保持する弾性体404を有する。また、温度センサ400は、模擬ウェーハ401の温度を検知するセンサ402(例えば、熱電対)を有する。
【0040】
上記のように素材構成された温度センサ400は、保持された模擬ウェーハ401の被研磨面をプラテンパッド50の表面に摺接させて当該模擬ウェーハ401の温度を検知する。このように温度センサ(ウェーハダミーセンサ)400は、研磨処理時におけるウェーハWの温度を疑似的に取得する第2の温度取得手段として機能する。
【0041】
温度センサ400による温度検知のタイミングなどは、主として制御部20により制御される。温度センサ400により取得された温度情報は制御部20に送られ、制御部20は、取得した温度情報に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整する。
なお、温度センサ400は、ウェーハWの半径中心と等距離の位置のプラテンパッド50の表面に載置することが良い。
【0042】
温度センサ400においては、模擬ウェーハ401を、その被研磨面がプラテンパッド50の表面に摺接するように保持し、保持された模擬ウェーハ401をその被研磨面の背面方向(背面側)からプラテンパッド50の方向に向けてウェーハと同一の加工圧力Pを付与するように構成される。
【0043】
[スラリーの流れコントロール/スラリー規制枠の構成例]
上述の過程で熱源形状を扇形状にする必要性を説明したが、スラリー流れの形状も温度均一に影響する。
スラリー規制枠500は、図2,3に示すように研磨ヘッド100を基準に、補填熱源300a、300bと対向する位置で当該研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲む形状に形成されたL字形状あるいは略L字形状の枠体である。
【0044】
研磨ヘッド100とスラリー規制枠500に囲まれた領域に向けてノズルNから供給された研磨液(スラリー)は、当該スラリー規制枠500によってスラリーの流れ形状も図3の2点鎖線で示したような扇形状にすることができる。なお、スラリー流れはウェーハとパッド間の流れも含むものである。
このようにスラリー規制枠500は、プラテンパッド50に向けて供給された研磨液(スラリー)の流れを扇形状に形成する規制手段として機能する。
【0045】
[研磨ヘッド100及び第2の補填熱源の構成例]
本実施形態に係る研磨処理装置Sの研磨ヘッド100は、図4図6に示すように、研磨処理対象となるウェーハWの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体101、環状体101の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルム102を介してウェーハWを保持する弾性体103、弾性体103に保持されたウェーハWの外周を囲む形状に形成されたリテーナリング104を有する。
【0046】
研磨ヘッド100には、図4(a)に示すように、弾性体103の裏面側に円形の補填熱源200が配設され、当該弾性体103に保持されたウェーハW、及び、リテーナリング104の温度を調整する。この補填熱源200は、第2の補填熱源として機能する。
【0047】
補填熱源200は、図4に示すように、例えば面状の加熱用ヒータを用いて構成することができる。補填熱源200には、配線200aを介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。
なお、補填熱源200への電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。
【0048】
[第3の補填熱源/プラテン下の流体熱源の構成例]
本実施形態に係る研磨処理装置Sは、図6に示すように、プラテン51、プラテン51と同じ形状に形成された上ベース板55、下ベース板56、リング状に形成された直径サイズの異なる環状体52、53、54、流体ポンプ21を含んで構成される。
【0049】
上ベース板55と下ベース板56は、リング状に形成された直径サイズの異なる環状体52、53、54を介して接続され、図6に示すように、環状体52と環状体53、環状体53と環状体54、環状体54の内径側それぞれに空間が形成される。
【0050】
環状体52と環状体53、環状体53と環状体54、環状体54の内径側それぞれの空間には、配管60、流体ポンプ21を介して流体(例えば水)が循環するように構成される。また、流体は、流体ポンプ21が有する温調装置により所定の温度に調温されてから研磨処理装置Sに向けて供給される。
なお、流体ポンプ21による流体の調温、及び、流体の供給開始又はその停止、所定時間当たりの供給量などは、主として制御部20により制御される。
【0051】
流体ポンプ21を介して供給される流体がプラテン51の裏面側に配設された補填熱源となり、この流体を含む一連の構成が当該プラテンパッド50の表面温度を調整する第3の補填熱源として機能する。
【0052】
図8は、第2の補填熱源の構成の別例を説明するための図である。図8(a)に示すA部分を拡大したものが図8(b)である。
図8に示す補填熱源(第2の補填熱源)は、弾性体103の裏面側に配設された熱源であり、当該弾性体103に保持されたウェーハWの温度を調整する円形の補填熱源201、リテーナリング104の温度を調整するリング状の補填熱源202とで構成される。
【0053】
補填熱源201、202は、図8に示すように、例えば面状の加熱用ヒータを用いて構成することができる。補填熱源201には、配線201aを介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。補填熱源202には、配線202aを介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。
なお、補填熱源201、202への電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。
【0054】
第2の補填熱源の構成を上記したうように補填熱源201(ウェーハ裏面用ヒータ)と補填熱源202(リテーナリング裏面用ヒータ)として構成することで、ウェーハとリテーナリングの各面圧力が異なったり、熱伝導率が異なる各素材を組み合わせた場合であったりしてもより正確に温度調整を行うことが可能になる。
【0055】
図10は、第1の補填熱源の形状・組み合わせの図2図3とは別例を説明するための図である。
図10(a)に示すように、2体の第1の補填熱源300a、300bを組み合わせてプラテンパッド50の表面側に配設しても良い。つまり、第1の温調機構の熱源と、研磨ヘッドの外周を囲む2つの第2の温調機構の熱源によりプラテンパッド50の表面に略扇形状の熱源領域を形成する。
このように、扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成するときの第1の補填熱源の形状や組み合わせは、第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)との合体で扇形状と同面積及び同熱源容量であれば形状は任意に設定することもできる。
【0056】
また、図10(b)に示すように、補填熱源(ヒーターブロック)を1体とすることも可能である。図10(b)に示す第1の補填熱源は、研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲むように円弧部を有する扇形状に形成された補填熱源である。
なお、この場合、補填熱源(ヒーターブロック)の表面温度は2体時の倍になる。このように第1の補填熱源は1体とすることも分割体とすることも可能である。
【0057】
また、本実施形態に係る研磨処理装置Sのように、プラテン51の表面側に配設され、且つ、研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲む形状に形成された錨形状の補填熱源(ヒーターブロック)として構成しても良い。
この場合、同じ形状のものを背中合わせのミラー対に配置し錨形状あるいは略錨形状に形成する他に、例えば錨形状あるいは略錨形状に一体的に形成しても良い。
【0058】
図11は、プラテンパッドに向けて供給された研磨液(スラリー)の流れの一例を説明するための図である。
図11に示すように従来のスラリー流路形状はコリオリ流れになる。しかしながら前述したように、スラリー温度をプラテン温度と同一に制御できればコリオリ流れでもよいが応答性において困難なため、スラリー流れ形状も扇形状が理想的である。そのため、スラリー規制枠500によってスラリーの流れ形状も扇形状にすることが最良である。
【0059】
図12は、CMPシステムの伝熱機構についての一例を説明するための図である。
なお、初期熱源はウェーハとリテーナリングがパッドとの擦過で生じる摩擦熱である。
ウェーハ側、プラテン側とも初期状態では表面温度が上昇し、数十秒後には一定温度となるが、両者の熱伝播容積差によりプラテン側が低温度となる。理想的な状態は両者の温度差が小さな状態である。つまり、CMP反応熱だけで目標の表面温度にならない場合は、それぞれの裏面側からの熱量補填が必要となる。
【0060】
図13は、熱システム構成の一例を説明するための模式図である。
CMP反応熱はウェーハ側、プラテン側への2方向に流れることは前述した通りである。また、ウェーハ側への熱移動は固定熱源での熱伝導扱いである。また、プラテン側への熱移動は移動熱源での熱伝導扱いとなる。
CMPシステムにおいて、研磨除去速度(MRR)は研磨面温度に対し、指数関数的(べき数)に大きく影響される。そのため、最適化学反応温度に対する自己発熱温度の過不足分は外部熱源による制御が必要となる。
【0061】
[研磨処理の制御手順]
次に、本実施形態の研磨処理装置Sによる処理手順について説明する。図14は、研磨処理を実行する際の制御部20による主要な制御手順の一例を説明するためのフローチャートである。以下説明する処理手順は、前述した運転条件に基づいて連続してウェーハの研磨処理(量産)を実施するものである。
【0062】
制御部20は、研磨処理装置Sのオペレータによる開始指示の入力受付を契機に制御を開始する(S100)。
制御部20は、所定の初期加工後、研磨ヘッド100の保持機構によるウェーハWの保持を開始する(S101)。
【0063】
制御部20は、ウェーハWをウェーハ受け渡しテーブル(不図示)からウェーハWを保持し、研磨ヘッド100を研磨処理の開始位置へ移動させる(S102)。
制御部20は、所定量の圧力流体を供給して加工圧力Pを整える(S103)。
【0064】
制御部20は、圧力流体の供給量に応じた各圧力が適切であることを確認した場合は(S104:Yes)、プラテン51、並びに、研磨ヘッド100の回転を開始するように、図示しないモータへ指示を出す(S105)。これにより、プラテン51と研磨ヘッド100が、水平に回転を開始する。
【0065】
プラテン51と研磨ヘッド100の回転開始を指示した後、制御部20は、ノズルNの位置決めを指示するとともに、研磨液供給機構に対して研磨液の供給を開始させるように指示を出す(S106)。これにより、研磨液がノズルNからプラテンパッド50の表面に向けて供給される。このようにして制御部20は、研磨を開始する(S107)
【0066】
制御部20は、各温度センサの検知結果に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整する(S108)。
【0067】
その後制御部20は、研磨が終了したか否かを判別する(S109)。この判別は、例えばセンサの検出結果に基づき、ウェーハWが所望の厚みに研磨されたと判断した場合に研磨を終了する。また、そうでない場合(S109:No)、ステップS108の処理へ戻る。
【0068】
制御部20は、研磨が終了したと判別した場合(S109:Yes)、研磨液供給機構に対して研磨液の供給停止を指示する(S110)。
【0069】
その後、制御部20は、プラテン51と研磨ヘッド100の回転を止めるように、モータへ停止指示を出す(S111)。その後、研磨後のウェーハWを載置するテーブルまで研磨ヘッド100を移動させる(S112)。これにより、一連の研磨処理の処理が終了する。
【0070】
なお、保持が解除されたか否かの判別は、例えば図示しない各種センサを用いて検知するように構成することもできる。なお、プラテン51と研磨ヘッド100の回転停止後に、供給した圧力流体を回収しても良い。このように制御することにより、研磨後のウェーハWが搬送途中において意図せず脱落してしまうことを防ぐことができる。
【0071】
ここで、各温度センサの検知結果に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整するステップS108の処理の一例について説明する。
【0072】
ステップS108の処理における制御部20による制御手順は、温度センサ400と温度センサ310により第1の補填熱源の補填熱量を制御する。
制御例として、制御部20は、温度センサ400の30秒間データでウェーハ研磨面の40秒後の温度値:Twを予測する(ウェーハ擦過のみ温度に到達)。
制御部20は、CMP目標温度:Tcと異なる場合、「Tc-Tw」をゼロとする第2の補填熱源の補填熱量を制御する(CMP目標温度を目指す)。
制御部20は、温度センサ600の30秒間データでプラテンパッド50の40秒後の温度値:Tpを予測する(ウェーハ擦過熱量のみでの到達温度)。
制御部20は、CMP目標温度:Tcと異なる場合、「Tc-Tp」を小さくする第3の補填熱源の補填熱量を制御する(循環水温度の制御)。
【0073】
このように本実施形態に係る研磨処理装置Sでは、プラテンパッド表面の温度均一化への対処を可能とし、ウェーハ表面のSFQR等の更なる向上を図ることができ、高品質で安定的に多数毎の研磨処理を行うことができる。
【0074】
[第2の温度取得手段の変形例]
図15は、図7とは異なる、研磨処理時におけるウェーハの温度を疑似的に取得する温度センサの構成の一例を示す図である。
以下、図7に示す温度センサ400と異なる構成を中心に説明をする。
【0075】
図15に示す温度センサ420は、研磨処理時におけるウェーハWの被研磨面の表面温度を疑似的に取得するウェーハダミーセンサである。
温度センサ420の素材構成は、図15に示すように、ウェーハWと同質のものであり、且つ、当該ウェーハWと比べて小型に形成された模擬ウェーハ401(例えばφ20×t0.075[mm])を有する。
また、温度センサ420は、模擬ウェーハ401の外周を囲むサイズの内周径を有する環状体405、環状体405の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルム403を介して模擬ウェーハ401を保持する弾性体404を有する。また、温度センサ400は、模擬ウェーハ401の温度を検知するセンサ402(例えば、熱電対)を有する。
また、温度センサ420は、弾性体404の裏面側に円形のヒータ(補填熱源)410が配設され、当該弾性体404に模擬ウェーハ401の温度を調整する。
【0076】
このように温度センサ420を構成し、補填熱源200(第2の補填熱源)とヒータ(補填熱源)410を同じ温度にすることで、疑似的にウェーハWの研磨面と同じ環境をより精密に再現することが可能になる。
上記のように素材構成された温度センサ420は、保持された模擬ウェーハ401の被研磨面をプラテンパッド50の表面に摺接させて当該模擬ウェーハ401の温度を検知する。このように温度センサ(ウェーハダミーセンサ)420は、研磨処理時におけるウェーハWの温度を疑似的に取得する第2の温度取得手段として機能する。
【0077】
温度センサ420による温度検知のタイミングなどは、主として制御部20により制御される。温度センサ420により取得された温度情報は制御部20に送られ、制御部20は、取得した温度情報に基づいて第1の補填熱源、第2の補填熱源、第3の補填熱源それぞれにおいて生じさせる温度を調整する。
なお、ヒータ(補填熱源)410への電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。また、温度センサ420は、ウェーハWの半径中心と等距離の位置のプラテンパッド50の表面に載置することが良い。
【0078】
[第1の補填熱源/ヒータブロックの変形例]
図16は、図2図3に示す第1の補填熱源(補填熱源300a、300b)の別例を示す図である。
ここで、ウェーハダミーセンサを前述した温度センサ420として構成する場合、この温度センサ420は熱源ともなるため、プラテンパッド50の表面温度に影響を及ぼすことになる。そこで、第1の補填熱源の形状を、図16に示す第1の補填熱源(補填熱源320a、320b)のような形状とすることで、温度センサ420によるプラテンパッド50の表面温度の影響を打ち消すことについて説明する。
以下、図2図3に示す第1の補填熱源(補填熱源300a、300b)と異なる構成を中心に説明をする。
【0079】
図16に示す補填熱源320a、320bは、プラテン51の表面側に配設され、且つ、研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲む形状に形成されたヒータブロック(熱源)である。温度センサ310は、補填熱源320aの温度を取得する温度センサである。
補填熱源320a、320bは、その一部が研磨ヘッド100の外周の所定の領域を囲む円弧部を両側に有する錨形状に形成された第1の補填熱源であり、一方の円弧部が研磨ヘッド100の外周と対向してプラテン51の表面側に配設される。
【0080】
補填熱源320a、320bは、同じ形状のものを背中合わせのミラー対に配置し錨形状に形成された熱源である。また、補填熱源320a、320bは背中合わせの位置にそれぞれ半円の窪み321a、半円の窪み321bを有する。それぞれの半円の窪みの面積を合算した孔部(円形)の面積は、温度センサ420の模擬ウェーハ401(例えばφ20[mm])の面積と同じ面積になるようにする。
補填熱源320a、320bのように構成することで、温度センサ420によるプラテンパッド50の表面温度への影響を打ち消すことが可能になり、より精緻にプラテンパッド50の表面温度の温度調整を可能にする。
なお、補填熱源320a、320bには、配線(不図示)を介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。また、補填熱源320a、320bへの電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。
【0081】
なお、ウェーハダミーセンサの構成の選択、第1の補填熱源に半円の窪みを設けることなどは、CMP目標温度到達後の温度精度をどの程度に設定するか、あるいは研磨対象であるウェーハの種類に対応した研磨処理時の処理温度域に応じて任意に選択することができる。
また、第1の補填熱源に形成された孔部の位置に補填熱源付きのウェーハダミーセンサを配置するように構成しても良い。
【0082】
[第1の補填熱源/線状のワイヤヒータを用いた構成例]
図17は、プラテン51の裏面側に第1の補填熱源を配設する場合の当該第1の補填熱源の構成の別例を説明するための上面図である。
図17に示すように、プラテン51の裏面上に第1の補填熱源として線状のワイヤヒータ350が配置されている。なお、ワイヤヒータ350はプラテン51の裏面に接して配置されているため破線で示している。
【0083】
また、ワイヤヒータ350には、配線(不図示)を介して電力が供給され、供給される電力に応じて発熱する。なお、ワイヤヒータ350への電力の供給あるいはその停止は、主として制御部20により制御される。
【0084】
ワイヤヒータ350は、図17に示すように、例えばリング状のワイヤヒータを同心円状に複数配置して構成したものをプラテン50の裏面に配置して構成する。また、ワイヤヒータ350は、いわゆるらせん状に巻いたワイヤヒータをプラテン50の裏面に配置して構成したりすることができる。
以下、図18を用いてワイヤヒータ350による略扇形状の熱源領域の形成について説明する。
【0085】
図18は、ワイヤヒータ350による略扇形状の熱源領域の形成について説明するための図である。
ここで、扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域を形成するときの第1の補填熱源の形状や組み合わせは、第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)との合体で扇形状と同面積及び同熱源容量であれば形状は任意に設定するこができる点は先述した通りである。
【0086】
図18に示すワイヤヒータ350は、補填熱源(ヒータブロック)300a、300bと同面積及び同熱源容量となるように発熱体密度が調整される。
具体的には、らせん状あるいは同心円状に配されたワイヤヒータ350がプラテン51の裏面において隣接するワイヤヒータ350の間隔(隙間)が粗な領域(発熱体密度が低い領域)と密な領域(発熱体密度が高い領域)を設ける。これにより発熱体密度を調整することができる。
【0087】
この粗密の関係は、例えば各線のピッチ:Piとし、ピッチ:Piはプラテン幅:Bと各線長比:(Xi/ΣXi)の比例長さで計算することができる。各線長比:( Xi/ΣXi)の大きな部分ではピッチ:Piは小さくなり、各線長比:(Xi/ΣXi)の小さな部分ではピッチ:Piは大きくなる。
【0088】
このようにして、補填熱源(ヒータブロック)300a、300bと同面積及び同熱源容量となるようにワイヤヒータ350を配することで、第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)との合体で扇形状と同面積及び同熱源容量を確保することが可能になる。
これによりプラテンパッド50の表面側の構成の自由度を増加させることができる。
【0089】
[第1の補填熱源/面状のシートヒータを用いた構成例]
図19は、図17図18とは異なる、プラテン51の裏面側に第1の補填熱源を配設する場合の当該第1の補填熱源の構成の別例を説明するための上面図である。
図19に示すように、プラテン51の裏面側に第1の補填熱源として面状のシートヒータ360が配されている。なお、シートヒータ360はプラテン51の裏面側に配されているため破線で示している。
【0090】
図19に示す補填熱源領域では、第1の補填熱源としてプラテン51の裏面に配置されたシートヒータ360と第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域が形成されている。そのため、第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)による補填熱源領域部分がシートヒータ360では孔部になっている。つまり、第1の補填熱源と第2の補填熱源が重ならない領域を孔部として設けて、第1の補填熱源と第2の補填熱源との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域が形成されるようにシートヒータ360を形成している。
【0091】
また、シートヒータ360プラテン51と共に回転するため、前述した第2の補填熱源(研磨ヘッド/円形熱源)との合体で扇形状あるいは略扇形状の補填熱源領域が形成されるように、図20では6つの孔部が形成されたシートヒータ360が示されている。
これによりプラテンパッド50の表面側の構成の自由度を増加させることができる。
【0092】
上記説明した実施形態は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これらの例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
50…プラテンパッド、51…プラテン、100…研磨ヘッド、200、201、202…第2の補填熱源、300a、300b、320a、320b…第1の補填熱源(ヒータブロック)、350…第1の補填熱源(ワイヤヒータ)、360…第1の補填熱源(シートヒータ)、310、600…温度センサ、400、420…温度センサ(ウェーハダミーセンサ)、410…ヒータ、500…スラリー規制枠、S…研磨処理装置、N…ノズル、W…ウェーハ。
【要約】
【課題】プラテンパッドの表面温度均一化への対処を可能とし、ウェーハ表面のSFQR等の更なる向上を図ることができ、高品質で安定的に多数毎の研磨処理を行うことができる研磨処理装置を提供する。
【解決手段】研磨処理装置は、研磨処理対象となるウェーハの外周を囲むサイズの内周径を有する環状体、環状体の下端側開口部に被覆され、その表面側に貼着されたバッキングフイルムを介してウェーハを保持する弾性体、弾性体に保持されたウェーハの外周を囲む形状に形成されたリテーナリング、環状体とリテーナリングを一体的に水平に回転させる駆動手段を有する研磨ヘッドを有する。また、プラテンパッドの表面側に配設され、且つ、研磨ヘッドの外周の所定の領域を囲む形状に形成され、プラテンパッドの表面温度を調整する第1の補填熱源、弾性体の裏面側に配設され、弾性体に保持されたウェーハ、及び、リテーナリングの温度を調整する第2の補填熱源、プラテンの裏面側に配設され、プラテンパッドの温度を調整する第3の補填熱源を有する。
【選択図】図2
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