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特許7649078垂直軸型風車及び当該風車を利用した風力発電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】垂直軸型風車及び当該風車を利用した風力発電機
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
F03D3/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024148424
(22)【出願日】2024-08-30
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524325535
【氏名又は名称】白井 洋人
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】白井 洋人
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0020123(US,A1)
【文献】特開2014-211141(JP,A)
【文献】特開2006-152922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に設置される主軸と、当該主軸の周りを公転する複数の翼を備えた垂直型風車であって、
前記翼は、前記主軸から半径方向外側に向かって延びるメインアームによって前記主軸と平行なピッチ軸を中心に回転可能に支持されており、
前記メインアームとは別に、前記主軸と前記翼を繋ぐように架設されて前記翼のピッチ角を規制する補助アームを備え、
風速が所定以下のとき、前記補助アームは、風向きに応じて前記主軸から水平方向にオフセットされた位置が回転中心となるように前記翼に架設されており、
風速が所定以上となった段階で、前記オフセットをキャンセルするオフセットキャンセル機構を備え、
前記オフセットキャンセル機構は、前記オフセットされた位置から前記主軸の軸心方向に斜め上方に延びるスラントシャフトと、当該スラントシャフトに沿って移動する円盤体と、当該円盤体から回転可能に支持される回転枠とを備え、
当該回転枠から前記補助アームが支持されており、
前記円盤体を前記スラントシャフトに沿って上方に移動させる上方移動機構を有する
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項2】
請求項1において、
前記オフセットキャンセル機構が作動すると、前記補助アームの回転中心は前記主軸の軸心と一致し、前記全ての翼のピッチ角が同一となる
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項3】
請求項において、
前記上方移動機構の作用がなくなると、前記円盤体は自重によって前記スラントシャフトに沿って下方に戻される
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項4】
請求項において、
前記上方移動機構は、前記翼と共に前記主軸の周りを公転する公転子を有し、当該公転子に加わる遠心力を利用して前記円盤体を上方に移動させる
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項5】
請求項において、
前記上方移動機構は、サーボモータの動力を利用して前記円盤体を前記スラントシャフトに沿って上方に移動させる
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかにおいて、
前記上方移動機構には、前記円盤体の上方への移動を上限高さまでに制限する制限機構を備え、
風速が規定値を超えた場合にのみ当該制限機構が解除され前記円盤体が前記上限高さを超えて上昇することによって、前記補助アームの回転中心を前記オフセットされた位置とは反対方向にオフセットさせることにより、前記翼のピッチ角を変化させて前記翼の公転を失速させる失速機構を備える
ことを特徴とする垂直型風車。
【請求項7】
請求項1~に記載の垂直型風車の前記主軸の回転により発電する発電機を加えた風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車に関し、特に詳しくは主軸が垂直に配置される垂直軸型風車に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直軸風車には、翼に働く揚力を利用して回転力を得る揚力型風車と、翼に働く抗力を利用して回転力を得る抗力型風車が存在している(非特許文献1参照)。揚力型風車、抗力型風車にはそれぞれ様々なタイプのものが存在するが、揚力型風車の一例を図9に、抗力型風車の一例を図10に示している。図9及び図10はいずれも(a)が平面図、(b)が斜視図である。
【0003】
図9に示す揚力型風車は、垂直に設置される主軸10と、当該主軸10の周りを公転する4つの翼20を備えている。翼20は、主軸10から半径方向外側に向かって延びるメインアーム12によって固定的に支持されている。
【0004】
図10に示す抗力型風車は、垂直に設置される主軸10と、当該主軸10の周りを公転する4つの翼20を備えている。翼20は、主軸10から半径方向外側に向かって延びるメインアーム12によって主軸10と平行なピッチ軸(図10におけるメインアーム・翼ジョイント70によって翼が回転する軸)を中心に回転可能に支持されている。更に、メインアーム12とは別に、主軸10と翼20の先端側端部を繋ぐように架設されて翼20の回転角(ピッチ角)を規制する補助アーム14を備えており、この補助アーム14は、主軸10から水平方向にオフセットされた位置βが回転中心となるように前記翼に架設されている。なお、オフセットされる方向は、風見30が受ける風向きに応じてオフセットプレート40の延在方向が変化し、それに伴って変化する構成となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「垂直軸風車には、抗力型風車と揚力型風車があります。」のページhttps://www2s.biglobe.ne.jp/~wesra/vawt/vawt.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
揚力型風車は、一定以上の風速が見込める場合には非常に効率が良いことが知られているが、停止時からの起動性に乏しいという問題点があり、別途起動させるための動力源を必要とするケースも多い。
【0007】
一方、抗力型風車は、低風速時から起動性に富むというメリットがあるものの、回転数が上がった場合に回転効率(風速に対する回転効率)が早い段階で頭打ちとなり、揚力型風車ほどの高効率が望めないという問題点がある。
【0008】
そこで本発明は、低風速時には抗力型風車の起動性を確保しつつ、高風速時には揚力型風車の効率を実現できるハイブリッド式垂直型風車及びこれを利用した風力発電機を提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく、本願発明は、垂直に設置される主軸と、当該主軸の周りを公転する複数の翼を備えた垂直型風車であって、前記翼は、前記主軸から半径方向外側に向かって延びるメインアームによって前記主軸と平行なピッチ軸を中心に回転可能に支持されており、前記メインアームとは別に、前記主軸と前記翼(の先端側端部)を(後述するオフセットキャンセル機構を介して)繋ぐように架設されて前記翼の回転角(ピッチ角)を規制する補助アームを備え、風速が所定以下のとき、前記補助アームは、風向きに応じて前記主軸から水平方向にオフセットされた位置が回転中心となるように前記翼に架設されており、風速が所定以上となった段階で、前記オフセットをキャンセルするオフセットキャンセル機構を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成したことによって、低風速時には抗力型風車の起動性を確保しつつ、高風速時には揚力型風車の高効率を実現できるハイブリッド式垂直型風車の提供が可能となっている。即ち、一定以上の風速となると、オフセットキャンセル機構が作動して、補助アームの回転中心は前記主軸の軸心と一致し、全ての翼の回転角(ピッチ角)が同一となる。即ち、風速が一定程度以上となった段階で、自動的に抗力型から揚力型に変化することによって、抗力型及び揚力型のそれぞれのデメリットを無くしているのである。
【0011】
また、前記オフセットキャンセル機構は、前記オフセットされた位置から前記主軸の軸心方向に斜め上方に延びるスラントシャフトと、当該スラントシャフトに沿って移動する円盤体と、当該円盤体から回転可能に支持される回転枠とを備え、当該回転枠から前記補助アームが支持されており、前記円盤体を前記スラントシャフトに沿って上方に移動させる上方移動機構を有することを特徴とする。
【0012】
このような構成によって、抗力型から揚力型への翼の回転角(ピッチ角)の変化を実現している。即ち、スラントシャフトを利用して円盤体を斜め上方に移動させることによって、もともとオフセット配置されていた補助アームの回転中心を主軸の軸心と一致させているのである。このような従来にない発想のシンプルな機構によってオフセットをキャンセルさせているため、複雑な構成や大きな動力を必要とせず、非常に軽量に仕上げることが可能である。
【0013】
また、前記上方移動機構の作用がなくなると、前記円盤体は自重によって前記スラントシャフトに沿って下方に戻されることを特徴とする。
【0014】
このように構成したことによって、風の弱まった際の揚力型から抗力型への変化は、自重(円盤体及び円盤体に支えられている部材乃至は円盤体から支えられている部材の自重)によってのみ実現されるため、円盤体を下方に戻すための制御やそのための機構が不要となり、全体を軽量に構成することができる。
【0015】
また、前記上方移動機構は、前記翼と共に前記主軸の周りを公転する公転子を有し、当該公転子に加わる遠心力を利用して前記円盤体を上方に移動させることを特徴とする。
【0016】
このように構成したことによって、外部からの動力を得ることなく、風車の回転だけを利用して円盤体の上昇、即ち、補助シャフト回転中心のオフセットキャンセルを実現できる。
【0017】
また、前記上方移動機構は、サーボモータの動力を利用して前記円盤体を前記スラントシャフトに沿って上方に移動させてもよい。
【0018】
本発明にかかるオフセットキャンセル機構は、スラントシャフトを利用した円盤体の斜め方向への上下動によって実現するという非常にシンプル且つ軽量な構成で実現しているため、円盤体をサーボモータによって動かす場合においても制御がし易く、小電力で実現することができる。即ち、(当該風車を利用して発電を行う場合に)サーボモータの電力消費によって、実質的な発電量を打ち消してしまうという程度を低く抑えることができる。
【0019】
また、前記上方移動機構には、前記円盤体の上方への移動を上限高さまでに制限する制限機構を備え、風速が規定値を超えた場合にのみ当該制限機構が解除され前記円盤体が前記上限を超えて上昇することによって、前記補助アームの回転中心を前記オフセットされた位置とは反対方向にオフセットさせることにより、前記翼の回転角(ピッチ角)を変化させて前記翼の公転を失速させる失速機構を備えることを特徴とする。
【0020】
このように構成したことによって、高回転になりすぎて破損する等の事態を未然に回避することができる。更に、当該制限機構は、オフセットキャンセル機構を構成するスラントシャフトをそのまま利用して実現しており、当該制限機構を実現する為の追加的な機構が少なく軽量性を犠牲にしないという大きなメリットがある。
【0021】
また本願発明は、上記に記載の垂直型風車の前記主軸の回転により発電する発電機を加えた風力発電機として捉える事も可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明を適用することで、低風速時には抗力型風車の起動性を確保しつつ、高風速時には揚力型風車の効率を実現できるハイブリッド式垂直型風車を軽量コンパクトに実現でき、及びこれを利用した風力発電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態の一例である垂直型風車の斜視図(一部パーツの記載省略あり)であって、オフセットキャンセル機構が作動する前の状態を示した図である。
図2】本発明の実施形態の一例である垂直型風車の斜視図(一部パーツの記載省略あり)であって、オフセットキャンセル機構が作動した後の状態を示した図である。
図3】オフセットキャンセル機構の概念を示した斜視図(一部パーツの記載省略あり)である。
図4】オフセットキャンセル機構の概念を示した一部断面図(一部パーツの記載省略あり)であって、(a)はオフセットキャンセル機構が作動する前の状態を示した図、(b)はオフセットキャンセル機構が作動した後の状態を示した図である。
図5】上方移動機構の第1実施例を示した斜視図(一部パーツの記載省略あり)である。
図6】上方移動機構の第2実施例を示した斜視図(一部パーツの記載省略あり)である。
図7】制限機構の一例及びその動作を示した図であって、(a)はオフセットキャンセル機構が作動する前の状態であって制限機構も作動していない状態を示した図、(b)はオフセットキャンセル機構が作動した後の状態であって制限機構も作動している状態を示した図、(c)は、制限機構が解除された状態を示した図である。
図8】制限機構の動作に伴う円盤体の動き及びその時の翼の状態の簡易的に示した図であって、(a)はオフセットキャンセル機構が作動する前の状態であって制限機構も作動していない状態の平面図、(b)は同斜視図、(c)はオフセットキャンセル機構が作動した後の状態であって制限機構も作動している状態の平面図、(d)は同斜視図、(e)は、制限機構が解除された状態の平面図、(f)は同斜視図である。
図9】従来例としての揚力型風車の一例を示す模式図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
図10】従来例としての抗力型風車の一例を示す模式図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である垂直軸型風車100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。また、図面理解容易のため、実際には存在する一部の部品を省略して記載したり、図面毎に形状や構成が異なる場合がある。
【0025】
〈垂直軸型風車の構成〉
本発明にかかる垂直型風車100は、従来例として説明した抗力型風車(図10参照)をベースにして、所定の条件下において、当該抗力型風車におけるオフセットされた補助アーム14の回転中心βを主軸10の軸心αと一致させる機能を追加した風車である。なお、従来例との比較対象を容易とする目的で、従来例の風車と構造的若しくは機構的に同一又は類似する部分については、従来例を示した図面(図9及び図10)で使用した符号と数字下二桁を共通にして説明する。
【0026】
図1及び図2に示している通り、本発明にかかる実施形態の一例として示す垂直型風車100は、垂直に設置される主軸110と、当該主軸110の周りを公転する複数の(ここでは4枚の)翼120を備えている。翼120はそれぞれ、主軸110から半径方向外側に向かって延びるメインアーム112によって主軸110と平行なピッチ軸(メインアーム112と翼120を繋いでいるメインアーム・翼ジョイント170により回転する軸)を中心に回転可能に支持されている。
【0027】
また、メインアーム112とは別に、主軸110と翼120(の先端側端部)を繋ぐように架設されて翼120の回転角(ピッチ角)を規制する補助アーム114を備えている。
【0028】
主軸110の上端には、水平方向に延在するオフセットプレート141が備わっている。当該オフセットプレート141は主軸110上に回転可能に設置されており、主軸110の回転とは独立して回転する。更に当該オフセットプレート141の上には、当該オフセットプレート141から斜め上方に延びるスラントシャフト142が固定されている。なお、図面上のスラントシャフト142には一部鉛直方向に延在している部分があるが、当該部分は設計事項的な部分であり全体が斜めとなっていても構わない。また、スラントシャフト142の先端から風見130が取り付けられており、当該風見130が風を受けることによって、オフセットプレート141の向き、即ち、オフセット方向が変化する構成となっている。
【0029】
スラントシャフト142上には、円盤体150と、当該円盤体150の周りを回転する回転枠154がスラントシャフト142に沿ってスライド可能に取り付けられている。円盤体150には、スラントシャフト142を通せる程度の貫通孔151が斜めに形成されており、当該円盤体150の周りに、複数のローラ152を介して回転枠154が組み付けられている。前述した補助アーム114の一端は、当該回転枠154にジョイント(補助アーム・回転枠ジョイント174)を介して組み付けられている。このように構成したことによって、円盤体150及び回転枠154、並びに、補助アーム114の一端側は、スラントシャフト142に沿って上下に移動できる構成となっている。
【0030】
その結果、図1に示しているように、円盤体150がスラントシャフト142の下方に位置しているとき(風速が一定程度以下のとき)は、主軸110の軸心αと、回転枠154の回転中心βはオフセットプレート141の存在によってオフセットされた状態となっている。一方、図2に示しているように、円盤体150がスラントシャフト142の上方に位置しているとき(風速が一定程度以上のとき)は、主軸110の軸心αと、回転枠154の回転中心βは一致することとなる。
【0031】
なお、図1及び図2においては図面理解容易のため記載を省略しているが、図3図4を参照しつつ、回転枠154の構造をより詳しく説明する。
【0032】
円盤体150及び回転枠154はオフセットプレート141上に浮いているわけではなく、回転枠154から下方に延びた脚部156と、当該脚部156内及び回転枠154を上下に貫通する貫通孔と、当該貫通孔内に挿通される垂直ガイド161と、当該垂直ガイド161の下端に取り付けられるローラ158によって、一定程度支えられて存在している。このような構成によって、円盤体150自体は回転しないが、回転枠154は、当該風車が回転している時はその回転に伴って常に回転しながら、垂直ガイド161に沿って上下動可能に構成されている。
【0033】
続いて、図5及び図6を参照しつつ、円盤体150をスラントシャフト142に沿って上方に移動させる上方移動機構について説明する。
【0034】
図5は上方移動機構の第1実施例を示したものである。ここでは回転枠154の外周に、当該回転枠154と一体的に回転する錘(公転子)180が取り付けられている。この錘180からは、回転枠154の上に設置されたガイドローラ184を介して垂直ガイド161の上端付近とワイヤ182で接続されている。即ち、遠心力によって錘180が半径方向外側に向かって飛び出すと、それによってワイヤ182が引っ張られ、ガイドローラ184の作用によって、回転枠154が上方に移動する構成となっている。
【0035】
なお、図面上省略しているが、錘180は反対側にも同じものが設置されている。その結果、回回転枠154の回転数が上がって錘180に加わる遠心力が一定程度以上となると、円盤体150やそれに付随している部材の自重に打ち勝って、円盤体150が回転枠154と共にスラントシャフト142に沿って斜め上方に移動する。当然ながら、回転枠154にジョイント(補助アーム・回転枠ジョイント174)を介して接続されている補助アーム114の一端側もスラントシャフト142に沿って斜め上方に移動する。遠心力が一定程度以下を下回ると、自重によって元に戻る構成となっている。
【0036】
当然ながら上方移動機構は上記の構成に限定されない。軽量な錘180であっても遠心力の力を効率良く利用することができるよう、図6に示しているような構成(上方移動機構の第2実施例)を採用してもよい。図6では、回転枠154の一部を図示しているように半径方向外側に大きく張り出すように構成し(このとき、例えば、補助アーム114と連結するジョイント(補助アーム・回転枠ジョイント174)は図示している部分の下方に設置されているため図面上表れない)、更にその張り出した先に、リンク159を介して回転アーム155を備えるような構成を採用してもよい。この構成の場合、回転枠154の貼り出し方向に向かって回転アーム155が真っ直ぐに位置するようになればなるほど、ワイヤ182が引っ張られて、回転枠154が上方に移動する構成となっている。このように構成すれば、むやみに錘180の重量を上げることなく、回転により錘180に生じる遠心力を利用して上方移動機構を構成することが可能となる。
【0037】
更にこの上方移動機構の第2実施例を前提として、制限機構について図7及び図8を参照しつつ説明する。図7(a)に示しているように、オフセットキャンセル機構が作動する前は、回転アーム155は閉じている。その後図7(b)に示しているように、風車の回転数が一定程度以上となると、回転アーム155が開いてオフセットキャンセル機構が作動する。このとき回転アーム155は、回転アーム155根元に形成された突起191が、回転枠154上に設置されたフック192(バネ193によって支持されている)に引っ掛かりこれ以上開かない構成となっている。更に風車の回転数が上がり過ぎて危険なレベルになると、回転アーム155が開こうとする力がフック192を支えるバネ193に打ち勝って、図7(c)に示したように最大限の位置まで広がるように構成される。ここではこれら突起191、フック192及びバネ193が制限機構として機能する。
【0038】
なお、図8は、上記制限機構の動きに伴う円盤体150や翼120の状態を模式的に示したものである。図8(a)(b)は、オフセットキャンセル機構が作動する前であり、回転アーム155が閉じているときの円盤体150や翼120の状態である。図8(c)(d)は、風車の回転数が一定程度以上となり、回転アーム155が開いてオフセットキャンセル機構が作動しているとき(即ち制限機構も作動している状態)の円盤体150や翼120の状態である。図8(e)(f)は、風車の回転数が上がり過ぎて危険なレベルとなり、回転アーム155が開こうとする力がフック192を支えるバネ193に打ち勝って最大限の位置まで広がったとき(即ち制限機構が解除された状態)の円盤体150や翼120の状態である。
【0039】
〈垂直軸型風車の作用・機能〉
上記説明した通り、本願発明は、垂直に設置される主軸110と、当該主軸110の周りを公転する複数の翼120を備えた垂直型風車100であって、前記翼120は、前記主軸110から半径方向外側に向かって延びるメインアーム112によって前記主軸110と平行なピッチ軸を中心に回転可能に支持されており、前記メインアーム112とは別に、前記主軸110と前記翼120をオフセットキャンセル機構140を介して繋ぐように架設されて前記翼120の回転角(ピッチ角)を規制する補助アーム114を備え、風速が所定以下のとき、前記補助アーム114は、風向きに応じて前記主軸110から水平方向にオフセットされた位置が回転中心βとなるように前記翼120に架設されており、風速が所定以上となった段階で、前記オフセットをキャンセルするオフセットキャンセル機構を備えることを特徴としていた。
【0040】
このように構成したことによって、低風速時には抗力型風車の起動性を確保しつつ、高風速時には揚力型風車の効率を実現できるハイブリッド式垂直型風車の提供が可能となっている。即ち、一定以上の風速となると、オフセットキャンセル機構が作動して、補助アーム114の回転中心βは主軸110の軸心αと一致し、全ての翼120の回転角(ピッチ角)が同一となる。即ち、風速が一定程度以上となった段階で、自動的に抗力型から揚力型に変化することによって、抗力型及び揚力型のそれぞれのデメリットを無くしているのである。
【0041】
また、前記オフセットキャンセル機構は、前記オフセットされた位置から前記主軸110の軸心方向に斜め上方に延びるスラントシャフト142と、当該スラントシャフト142に沿って移動する円盤体150と、当該円盤体150から回転可能に支持される回転枠154とを備え、当該回転枠154から前記補助アーム114が支持されており、前記円盤体150を前記スラントシャフト142に沿って上方に移動させる上方移動機構を有することを特徴としていた
【0042】
このような構成によって、抗力型から揚力型への翼120の回転角(ピッチ角)の変化を実現している。即ち、スラントシャフト142を利用して円盤体150を斜め上方に移動させることによって、もともとオフセットプレート141によってオフセット配置されていた補助アーム114の回転中心βを主軸110の軸心αと一致させているのである。このような従来にない発想のシンプルな機構によってオフセットをキャンセルさせているため、複雑な構成や大きな動力を必要とせず、非常に軽量に仕上げることが可能である。
【0043】
また、前記上方移動機構の作用がなくなると、前記円盤体150は自重によって前記スラントシャフト142に沿って下方に戻されることを特徴としていた。
【0044】
このように構成したことによって、風の弱まった際の揚力型から抗力型への変化は、自重(円盤体150及び円盤体150に支えられている部材乃至は円盤体150から支えられている部材の自重)によってのみ実現されるため、円盤体150を下方に戻すための制御やそのための機構が不要となり、全体を軽量に構成することができる。
【0045】
また、前記上方移動機構は、前記翼120と共に前記主軸110の周りを公転する錘(公転子)180を有し、当該錘180に加わる遠心力を利用して前記円盤体150を上方に移動させることを特徴としていた。
【0046】
このように構成したことによって、外部からの動力を得ることなく、風車の回転だけを利用して円盤体150の上昇、即ち、補助アーム114回転中心βのオフセットキャンセルを実現できる。
【0047】
また、前記上方移動機構には、前記円盤体150の上方への移動を上限高さまでに制限する制限機構を備え、風速が規定値を超えた場合にのみ当該制限機構が解除され前記円盤体150が前記上限を超えて上昇することによって、前記補助アーム114の回転中心βを当初のオフセットされた位置βとは反対方向にオフセットさせることにより、前記翼120の回転角(ピッチ角)を変化させて前記翼120の公転を失速させる失速機構を備えることを特徴としていた。
【0048】
このように構成したことによって、高回転になりすぎて破損する等の事態を未然に回避することができる。更に、当該制限機構は、オフセットキャンセル機構を構成するスラントシャフト142をそのまま利用して実現しており、当該制限機構を実現する為の追加的な機構を少なく軽量性を犠牲にしないという大きなメリットがある。
【0049】
また本願発明は、上記に記載の垂直型風車100の前記主軸110の回転により発電する発電機を加えれば、風力発電機として機能する。
【0050】
〈その他の構成例〉
上記説明した上方移動機構は、公転子に生じる遠心力を利用して外部からの動力を得ることなく実現していたが、サーボモータの動力を利用して前記円盤体を前記スラントシャフトに沿って上方に移動させてもよい。
【0051】
本発明にかかるオフセットキャンセル機構は、スラントシャフトを利用した円盤体の斜め方向への上下動によって実現するという非常にシンプル且つ軽量な構成で実現しているため、円盤体をサーボモータによって動かす場合においても制御がし易く、小電力で実現することができる。即ち、(当該風車を利用して発電を行う場合に)サーボモータの電力消費によって、実質的な発電量を打ち消してしまう程度を低く抑えることができる。
【0052】
また、上記説明及び添付図面においては、風見130が、翼120の上方に設置されているがこれに限られるものではない。例えば翼120の下方に設置されていても良いし、場合によっては、翼120と主軸110の間(内側)に設置されていてもよい。即ち、本質的な部分は斜め上方へと向かうスラントシャフトに沿ってオフセットキャンセル機構を可動させることであり、このオフセットキャンセル機構の設計が変わっていたり、それに伴って風見130が補助アーム114の下、翼120とメインアーム112の内側等に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100・・・垂直型風車
110・・・主軸
112・・・メインアーム
114・・・補助アーム
120・・・翼
130・・・風見
140・・・オフセットキャンセル機構
141・・・オフセットプレート
142・・・スラントシャフト
150・・・円盤体
151・・・貫通孔
152・・・ローラ
154・・・回転枠
156・・・脚部
158・・・ローラ
160・・・上方移動機構
161・・・垂直ガイド
170・・・メインアーム・翼ジョイント(ピッチ軸)
172・・・補助アーム・翼ジョイント
174・・・補助アーム・回転枠ジョイント
180・・・錘
182・・・ワイヤ
184・・・ガイドローラ
α・・・主軸の軸心
β・・・補助アームの回転中心
【要約】      (修正有)
【課題】低風速時には抗力型風車の起動性を確保しつつ、高風速時には揚力型風車の効率を実現できるハイブリッド式垂直型風車を提供する。
【解決手段】翼120は、主軸110から半径方向外側に向かって延びるメインアーム112によって前記主軸110と平行なピッチ軸を中心に回転可能に支持されており、前記メインアーム112とは別に、主軸110と翼120を繋ぐように架設されて翼120の回転角(ピッチ角)を規制する補助アーム114を備え、風速が所定以下のとき、補助アーム114は、風向きに応じて主軸114から水平方向にオフセットされた位置が回転中心βとなるように翼120に架設されており、風速が所定以上となった段階で、オフセットをキャンセルするオフセットキャンセル機構を備える。
【選択図】図1
図1
図2
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図4
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図9
図10