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特許7649082ライトガイド、およびライトガイドの製造方法
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  • 特許-ライトガイド、およびライトガイドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】ライトガイド、およびライトガイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20250312BHJP
   G02B 6/00 20060101ALN20250312BHJP
【FI】
G02B6/02 391
G02B6/02 366
G02B6/00 326
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024194074
(22)【出願日】2024-11-06
【審査請求日】2024-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502291610
【氏名又は名称】神田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一英
(72)【発明者】
【氏名】村島 光俊
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 万起
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-177241(JP,A)
【文献】特開2020-166223(JP,A)
【文献】特開2021-081637(JP,A)
【文献】特表2016-527542(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113060945(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 -6/10
6/245-6/25
6/44 -6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コアを囲繞するクラッドと、
を有するライトガイドであって、
前記クラッドは、
3官能モノマーの重合体と中空粒子とで構成され
前記中空粒子と前記3官能モノマーの重合体がそれぞれ前記クラッド全体の略半分の質量%で構成されていることを特徴とするライトガイド。
【請求項2】
前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、一定の粒子径で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のライトガイド。
【請求項3】
前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、異なる粒子径を混合して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のライトガイド。
【請求項4】
前記中空粒子の粒子径は、50nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項に記載のライトガイド。
【請求項5】
前記コアは、アクリル系樹脂を主材として形成されていることを特徴とする請求項に記載のライトガイド。
【請求項6】
コアと、3官能モノマーの重合体と中空粒子とで構成され、前記コアを囲繞するクラッドとを有するライトガイドの製造方法であって、
前記3官能モノマーと前記中空粒子を略同一の質量%で混合して溶剤に撹拌して流体を形成する第1の工程と、
前記第1の工程で形成された前記流体を収容した容器に前記流体の液面に対して前記コアを垂直に浸漬する第2の工程と、
前記流体に浸漬した前記コアを垂直な状態を維持しつつ前記流体から一定の速度で引き上げる第3の工程と、
前記第3の工程で前記流体から引き上げた前記コアの周囲に形成された前記流体に紫外光を照射して前記流体から前記溶剤を揮発させつつ、前記3官能モノマーを重合体とする第4の工程と、
を経て得られることを特徴とするライトガイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全周を発光させるライトガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸い棒状に形成され、その外周面を発光させるライトガイドは、光源から放射された光を導光するためのコア層と、コア層の外周面を覆うように設けられ、コア層を保護しつつコア層に入射した光を外部に出力するクラッド層を有する2層構造に形成されている。
【0003】
そして、クラッド層は、コア層から入射した光を拡散させるために、フッ素を含有した化合物で形成されている。フッ素を含有した化合物は、ペレット状に形成された樹脂を溶融してコア層の周囲に形成されることから、溶融後の冷却過程で収縮してコア層に密着した態様でライトガイドが形成される。そして、フッ素を含有した化合物は、微細な粒子状で存在するため、光を散乱させる性質を有し、ライトガイドをムラなく均一に発光させることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、コア層をアクリル系樹脂で形成し、クラッド層をフッ素系樹脂で形成したライトガイドが記載されている。このようにクラッド層をフッ素系樹脂で形成した構成により、コア層からクラッド層に伝達された光がクラッド層で拡散され、ライトガイド全体を均一に発光することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-112616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1に記載のライトガイドは、光が放出されるクラッド層をフッ素を含有した化合物で形成していることから、クラッド層を通過する光が反射または散乱されやすく、ライトガイドの外周面から均一に放射することができる。しかしながら、フッ素を含有した化合物をクラッド層に用いると、この化合物による光の散乱作用により、ライトガイドの非発光時において、ライトガイドの外部から入射した光がクラッド層で散乱されてしまい、その結果、白濁化して見えてしまう。つまり、クラッド層にフッ素を含有した化合物を用いると、ライトガイドの白濁化により、ライトガイドを装着した部分の美観を損なう虞があった。
【0007】
また、近年、フッ素を含有した化合物の内、有機フッ素化合物(PFAS)が健康に影響を及ぼす可能性が指摘されたことから、多くの国でこの有機フッ素化合物(PFAS)の使用が規制され始めている。そして、多くのライトガイドにおいては、ムラなく均一に発光させるために、クラッド層に有機フッ素化合物(PFAS)が含有されており、有機フッ素化合物(PFAS)の使用が禁止されると、ムラなく均一に発光させるライトガイドを提供することが困難であった。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、点灯時に均一発光が可能であって、非点灯時には透明性を有して、装着した部分の美観を損なう虞のないライトガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、コアと、前記コアを囲繞するクラッドと、を有するライトガイドであって、前記クラッドは、3官能モノマーの重合体と中空粒子とで構成されている、ものである。
【0010】
本発明の他の態様は、前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、一定の粒子径で形成されていることを特徴とする、ものである。
【0011】
本発明の他の態様は、前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、異なる粒子径を混合して形成されていることを特徴とする、ものである。
【0012】
本発明の他の態様は、前記クラッドは、前記中空粒子と前記3官能モノマーの重合体が略同一の質量%で構成されていることを特徴とする、ものである。
【0013】
本発明の他の態様は、前記中空粒子の粒子径は、50nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする、ものである。
【0014】
本発明の他の態様は、前記コアは、アクリル系樹脂を主材として形成されていることを特徴とする、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、コアと、前記コアを囲繞するクラッドと、を有するライトガイドであって、前記クラッドは、3官能モノマーの重合体と中空粒子とで構成されているため、非点灯時において、透明性を有し、装着した部分の美観を損なうことなく、点灯時においては、均一に発光させることができる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、一定の粒子径で形成されているため、非点灯時の透明性が高く、装着した部分の美観を損なう虞がない。
【0017】
本発明の他の態様によれば、前記中空粒子は、内部に空気層を有するシリカ粒子であって、異なる粒子径を混合してクラッドを形成しているため、光の散乱作用を向上させることにより、クラッド内で屈折や反射が発生しやすく、ライトガイドから放射される光の均一性を向上させることができる。
【0018】
本発明の他の態様によれば、前記クラッドは、前記中空粒子と3官能モノマーが略同一の質量%で構成されているため、クラッド内に中空粒子を均一に分散させることができ、ライトガイドから外部に放射される光を均一とすることができる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、前記中空粒子の粒子径は、50nm以上100nm以下の範囲内であるため、クラッド全体の屈折率を一定に保つことができ、コアからクラッドに漏出する光量を一定にでき、ライトガイドの外周面を均一に発光させることができる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、前記コアは、アクリル系樹脂を主材として形成されているため、非点灯時における透明性を向上でき、装着した部分の美観を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るライトガイドの全体を示す斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4図3のC線を拡大した状態を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るライトガイドの製造手順を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、コアとクラッドからなるライトガイドにおいて、クラッドの構成を工夫することにより、非点灯時に透明性を有して装着時の美観を向上させるとともに、発光時には、クラッドの外周面全体を均一に発光できるライトガイドを提供するものである。以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、図1に示すライトガイドの伸延した方向を前後方向とし、ライトガイドの伸延方向と直交する方向を左右方向とする。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るライトガイドMの構成を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1のB-B線断面図を示す。図4は、図3の一部を拡大した図であり、クラッドの内部構成を示す模式図であり、内部の構成を示すため断面を示すハッチングを省略して図示している。図5は、本発明の一実施形態に係るライトガイドMを形成する手順を示す概略図であり、上から下にかけて太い黒矢印の順番で形成される。なお、図4および図5に示す中空粒子20は、他部材との関係上図示されるほどの大きさの粒子径ではないが、発明を理解するために図示している。
【0024】
ライトガイドMは、図1に示すように、光源からの光を入射するコア1と、コア1を囲繞してライトガイドMの発光層を形成するクラッド2とを有する。
【0025】
コア1は、中実の円柱状に形成されており、可撓性を有する。コア1は、アクリル系樹脂を主材として構成されている。コア1を構成するアクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やメチルメタクリレート(MAM)にアクリレート(例えば、アクリル酸ブチルやアクリル酸2-エチルヘキシル)を混合したアクリル系ブロック共重合体などである。なお、コア1は、高い透明性を有し、光源から入射された光を伝達でき、適度な可撓性を有していればどのような樹脂で構成されていても良い。コア1は、一端部に光源が連結されており、一端部から他端部、すなわち、コア1の長手方向に沿う方向に光が入射されている。
【0026】
クラッド2は、図2および図3に示すように、コア1の外周面に密着して設けられている。クラッド2は、コア1の半径方向を厚み方向とし、コア1の伸延方向に沿って略均一の厚みに形成されている。クラッド2は、図4に示すように、中空粒子20と、3官能モノマー21の重合体で構成されている。中空粒子20は、粒子径50~100nmの中空部分を有する粒子で構成されている。クラッド2は、3官能モノマー21に中空粒子20を混合することにより屈折率ndを低下させている。本実施形態においては、中空粒子20と3官能モノマー21の重合体とが同一の質量%で構成されている。つまり、クラッド2は、中空粒子20と3官能モノマー21が1対1の割合で構成されている。なお、図4における、波線Wは、コア1とクラッド2の境界部分を示している。
【0027】
また、クラッド2は、コア1と比較して光の屈折率が低くなるように設定されている。なお、本実施形態におけるコア1の屈折率neは1.49で構成されており、クラッド2の屈折率ndは1.38で構成されている。ただし、クラッド2の屈折率ndとコア1の屈折率neは、この値に限定されることはなく、コア1の屈折率neがクラッド2の屈折率ndよりも高く設定されていれば、上述した屈折率に限定されることはない。
【0028】
クラッド2は、中空部を有する中空粒子20を含有した樹脂によって構成されている。クラッド2は、中空部を有する構成により、屈折率ndを低下させるとともに高い透明性を有している。なお、中空部を有することで屈折率が低下する原理は、中空部分に屈折率の低い空気層を有するためであり、樹脂に含有させる中空部の量を変化させることによりクラッド2の屈折率ndを変化させることができる。つまり、中空粒子20は、中空部を囲う殻膜の厚みが略一定に形成されていることから、粒子径を変化させることにより、中空部の体積が変化して、クラッド2の屈折率ndを変化させることができる。換言すると、中空粒子20の粒子径を拡大することによりクラッド2の屈折率ndを低下させることができる。
【0029】
クラッド2を構成する中空粒子20は、中空部を有する中空シリカで構成されている。中空粒子20は、50~100nmの範囲内で形成された粒子径を有し、クラッド2全体の中空粒子20は、略同一の粒子径で構成されている。このようにクラッド2を構成する中空粒子20が略同一の粒子径で構成されることにより、クラッド2を通過する光の散乱を低減し、クラッド2を通過する光の直進性が向上してライトガイドMの高い透明度を実現できる。
【0030】
また、クラッド2を構成する中空粒子20は、50~100nmの範囲内で任意の粒子径のものを混在して使用することもできる。粒子径の異なる中空粒子20をクラッド2内で混在させた場合、中空粒子20の粒子径の違いからクラッド2内において局所的な屈折率の違いが生起され、クラッド2内における散乱作用を向上させることができる。つまり、クラッド2を通過する光が散乱されることにより、ライトガイドから放射される光の均一性を向上させることができる。
【0031】
また、中空粒子20は、クラッド2内において、母材となる樹脂(3官能モノマー21)中に均一に分散していることが好ましく、凝集した二次粒子(造粒体)を形成せず、一次粒子の状態で分散していることが好ましい。なお、中空粒子20を母材となる3官能モノマー21の重合体中に均一に分散させる手段については、後述する。
【0032】
上述したように、ライトガイドMは、アクリル系樹脂で構成されたコア1と、母材となる樹脂(3官能モノマー21の重合体)中に均一に分散した中空粒子20を含むクラッド2と、を有し、コア1全体をクラッド2で密着した態様で囲繞する構成により、コア1の側端面から入射した光をクラッド2を介してクラッド2の外表面から外部に均一に放射することができる。
【0033】
また、クラッド2の屈折率ndをコア1の屈折率neよりも小さくした構成により、コア1とクラッド2との界面における臨海角を小さくして、コア1からクラッド2に進入する光の量を制御して、ライトガイドM全体を略均一に光らせることができる。
【0034】
また、ライトガイドMは、クラッド2を構成する母材となる樹脂体を形成する3官能モノマー21の重合体と中空粒子20を略同一の質量%で形成した構成により、3官能モノマー21の重合体中に中空粒子20を略均一に分散させることができる。これにより、ライトガイドM全体を略均一に発光させることができる。
【0035】
また、中空粒子20が3官能モノマー21の重合体に均一に分散されているため、非点灯時において、中空粒子20が有する中空部分によりクラッド2が高い透明性を有することができる。また、中空粒子20の粒子径を50~100nmで中空部分を有する中空ナノシリカで形成したことにより、さらに、透明性を有することができる。
【0036】
また、クラッド2を構成する樹脂体が3官能モノマー21による重合体で形成されているため、高い架橋密度を有し、単位体積当たりの架橋点が多数存在することから、高い弾性率を有して設置場所の形態に合わせてライトガイドMを変態できる。また、クラッド2を構成する3官能モノマー21が重合体を形成する過程において収縮率が低いため、3官能モノマー21の重合体内で中空粒子20の偏りが生起されにくくなり、クラッド2の高い透明度を維持することができる。つまり、中空部を有する中空粒子20と3官能モノマー21の重合体でクラッド2を形成した構成により、設置時に美観を損なうことなく、また、点灯時には、均一に発光できるライトガイドMを提供できる。
【0037】
≪ライトガイドの製造方法≫
上述したようにライトガイドMは構成されており、以下の手順で作製される。このライトガイドMの作製手順について、図5を参照して説明する。ライトガイドMは、クラッド2を形成するコート剤(以下、流体23と称する。)にコア1をディッピングして、紫外線で硬化させることにより、コア1の外周面に膜厚を均一としたクラッド2を形成することができる。このディッピングの詳細について、以下に説明する。
【0038】
まず、クラッド2を形成するための中空粒子20と3官能モノマー21を溶剤22中に溶融してコア1にディッピングするための流体23を形成する。形成された流体23は、縦長の容器Cに収容される。流体23は、3官能モノマー21を45質量%、中空粒子20を45質量%、これらを混合する溶剤22を10質量%の割合で混合して形成されている。なお、流体23を構成する中空粒子20と3官能モノマー21と溶剤22の混合割合は、溶剤22が5~20質量%の範囲で構成され、且つ、中空粒子20と3官能モノマー21が同一の混合割合で構成されていれば、上述した割合に限定されることはなく、任意に設定できる。
【0039】
ここで、流体23を構成する3官能モノマー21としては、トリメチロールプロパン・トリアクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパン・トリアクリレート(TNPEOTA)、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等、で構成されている。なお、3官能モノマー21は、上述したものに限定されることなく、粘性が高く、UV光を照射した際に硬化するものであれば、どのようなもので構成されていても良い。
【0040】
また、流体23を構成する溶剤22は、メチルイソブチルケトン(MIBK)で構成されている。なお、溶剤22は、メチルイソブチルケトン(MIBK)に限らず、これと類似した特性を有するアセトンやイソプロピルアルコール(IPA)等で構成されていても良い。つまり、溶剤22は、コア1の外周面に塗布する流体23に適度な粘性を付与しつつ、3官能モノマー21と中空粒子20とが溶剤22中で均一に分散され、コア1に塗布した後には、揮発してクラッド2から離脱できる特性を有していればどのようなもので構成されていても良い。
【0041】
そして、このように構成された流体23を収容した容器Cに、長手丸棒状に形成されたコア1を流体23の液面Fに対して垂直に浸漬する。
【0042】
その後、コア1を流体23の液面Fに対して垂直な状態を維持しつつ上方に引き上げる。この際、コア1は、0.5-2.0cm/sの速度で引き上げられる。なお、コア1の引き上げ速度は、流体23を構成する溶剤22の割合に応じて変動させる。つまり、流体23を構成する溶剤22の割合が高い場合、流体23の粘性が低下するため、コア1の引き上げ速度を増加させてコア1の周囲に塗布される流体23が所定の膜厚となるようにする。また、流体23を構成する溶剤22の割合が低い場合、流体23の粘性が増加するため、コア1の引き上げ速度を低下させてコア1の周囲に塗布される流体23が所定の膜厚となるようにする。つまり、流体23を構成する溶剤22の割合が高い(20質量%)場合、流体23から引き上げるコア1の引き上げ速度を2cm/sに設定し、溶剤22の割合が低い(5質量%)場合、流体23から引き上げるコア1の引き上げ速度を0.5m/sに設定する。
【0043】
そして、流体23を塗布したコア1は、流体23の液面Fから引き上げられると同時に紫外光L(例えば、波長365nmの紫外光)が照射されてコア1の外周面にクラッド2が形成される。コア1の外周面にクラッド2が形成される際、流体23から溶剤22が揮発しつつ、3官能モノマー21が光重合反応によって収縮することにより、コア1の外周面にクラッド2が密着した態様で形成される。
【0044】
つまり、コア1とクラッド2との境界部分が密着して、コア1とクラッド2との間に空気の層などが形成されることがない。そのため、コア1からクラッド2に入射する光がコア1とクラッド2の境界部分において、略均一に屈折率を変化させることができ、ライトガイドMから放射される光も略均一に放射される。つまり、ライトガイドM全体が均一に発光できる。
【0045】
そして、コア1の外周面にクラッド2が形成されない、または均一に形成されない部分、具体的には、流体23をコア1にディッピングする際にコア1を把持する部分、およびディッピングする際に流体23が流れ落ち膜厚になりやすいコア1の下端部を切断することにより、コア1の周囲に均一な膜厚、且つ、密着した態様でクラッド2を被覆したライトガイドMが完成する。
【0046】
ライトガイドMは、上述した手順で形成され、流体23を形成する溶剤22の粘度、ディッピング時のコア1の引き上げ速度、および3官能モノマー21の光重合反応により、コア1の外周面にクラッド2が密着した態様、且つ、均一の膜厚で形成される。これにより、コア1とクラッド2からなるライトガイドMは、3官能モノマー21の光重合体で形成されることにより弾性作用を有し、また、粒子径が50-100nmの中空ナノシリカを中空粒子20としてクラッド2内に均一分散してクラッド2の透明性を確保しつつ、中空ナノシリカによる散乱作用を利用してライトガイドMを均一に発光することができる。
【0047】
なお、本実施形態を説明するための図において、中空粒子20を見えるように図示しているが、中空粒子20は、50~100nmと非常に小さい粒子径で形成されているため、実際には視認することはできない。図4および図5に記載の中空粒子20は、クラッド2の構成が分かるように模式的に示しているに過ぎない。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0049】
M ライトガイド
1 コア
2 クラッド
20 中空粒子
21 3官能モノマー
22 溶剤
23 流体
ne,nd 屈折率
【要約】
【課題】非点灯時には透明性を有して、装着した部分の美観を損なう虞がなく、点灯時には略均一に発光が可能なライトガイドを提供する。
【解決手段】本発明は、光を導光するためのコア1と、コア1を囲繞して外部に光を放射するクラッド2と、を有するライトガイドMであって、コア1がアクリル系樹脂で構成され、クラッド2が母材となる3官能モノマーの重合体中に中空粒子を均一に分散しつつ、3官能モノマーの重合体と中空粒子を同一の質量%で構成したライトガイドMである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5