(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】酸味増強剤、及びそれを含有する酸成分含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20250312BHJP
A23L 2/68 20060101ALI20250312BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20250312BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20250312BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20250312BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250312BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20250312BHJP
A23G 1/32 20060101ALN20250312BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20250312BHJP
A61K 8/60 20060101ALN20250312BHJP
A61K 8/9789 20170101ALN20250312BHJP
A61Q 11/00 20060101ALN20250312BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/00 D
A23L2/56
A23L2/60
A23L27/00 101A
A23L27/10 C
A61K47/26
A61K47/46
A23G1/32
A23L23/00
A61K8/60
A61K8/9789
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2019100497
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2018104031
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茜
(72)【発明者】
【氏名】湯之戸 俊介
【合議体】
【審判長】柴田 昌弘
【審判官】加藤 友也
【審判官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/063921(WO,A1)
【文献】特開2017-205100(JP,A)
【文献】特開2011-115142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23L
A23G
A61K
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で含有する酸味増強剤。
【請求項2】
レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物、及びモグロシドVを含有する酸味増強剤であって、酸味増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1(質量比)であることを特徴とする酸味増強剤。
【請求項3】
前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である請求項2に記載する酸味増強剤。
【請求項4】
レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比が質量比で50:50~99:1となるように、酸成分含有組成物に配合することを特徴とする、酸成分含有組成物の酸味増強方法。
【請求項5】
レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物及びモグロシドVを、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1(質量比)となるように、酸成分含有組成物に配合することを特徴とする、酸成分含有組成物の酸味増強方法。
【請求項6】
前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である請求項
5に記載する酸味増強方法。
【請求項7】
レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が0.1ppm~500ppmとなる範囲で経口用または口腔用組成物に配合する、請求項
4乃至
6のいずれかに記載する酸味増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸味増強剤に関する。また本発明は酸味増強剤を含有する酸成分含有組成物に関する。さらに本発明は酸味が増強されてなる酸成分含有組成物の製造方法、並びに酸成分含有組成物について酸味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品や医薬品等に甘味を付与したり、それら自体の味を調節するために、甘味料が広く用いられている。なかでも近年の健康志向の高まりから、ノンカロリーや低カロリー、または低う蝕性の高甘味度甘味料が広く用いられるようになっている。高甘味度甘味料には、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、及びアドバンテーム等の合成甘味料、並びにステビア抽出物、ラカンカ(羅漢果)抽出物、及びソーマチン等の天然甘味料がある。近年の天然物志向から、ステビア抽出物やラカンカ抽出物等の天然甘味料が好まれるようになってきている。
【0003】
しかしながら、これらの天然甘味料、特にステビア抽出物は甘味質が砂糖とは異なり、甘味に苦味を有すること、甘味が長く口の中に残る(甘味の後引きがある)こと、甘味にコクがなく、また口腔内での甘味発現が遅く、物足りなさがあるといった問題がある。ステビア抽出物に含有される主要な甘味成分であるレバウディオサイドAは、ステビオサイド等のステビア抽出物中の他の甘味成分に比べて、甘味の後引きや苦味等の雑味は少ないものの、まだ呈味の点で問題を有している。また、ラカンカ抽出物の甘味主成分であるモグロシドVにも、苦味や独特の風味がある等の問題がある。
【0004】
ステビア抽出物のこのような問題を解決する方法としては、例えば、特許文献1にはステビア抽出物の主たる甘味成分であるレバウディオサイドAと、ラカンカ抽出物の主たる甘味成分であるモグロシドVとを、重量比で95:5~60:40の割合になるように配合することにより、前記の問題を解消して甘味質に優れた組成物が得られることが示されている。また特許文献2には、レバウディオサイドA等のレバウディオサイド成分とモグロサイドVとを、重量比で1:1以上6:1以下の範囲で含む組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、レバウディオサイドAとモグロサイドVとを含有する甘味料組成物に、酸成分を含有する組成物の酸味を増強する作用があることについては従来知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO2009/063921
【文献】特開2016-41073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、天然甘味料の成分を用いて、酸成分を含む組成物について酸味を増強するための技術を提供することを目的とする。より詳細には、第1に、本発明は酸味増強剤を提供することを目的とする。第2に酸味が増強されてなる酸成分含有組成物を提供することを目的とする。第3に、酸味が増強されてなる酸成分含有組成物を製造する方法、換言すれば、酸成分を含む組成物について酸味を増強させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、ステビア抽出物の甘味主成分であるレバウディオサイドAに対してラカンカ抽出物の甘味主成分であるモグロシドVを配合し、レバウディオサイドAとモグロシドVとの割合を50:50~99:1(質量比)に調整した組成物が、酸成分を含む組成物の酸味を増強する作用を発揮することを見出した。このことから、当該組成物を酸味増強剤として、酸成分を含む組成物、好ましくは経口的に摂取されるか、または口腔内で用いられる酸成分含有組成物に配合することで、酸味が増強された酸成分含有組成物が得られることを確認して本発明を完成した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0010】
(I)酸味増強剤
(I-1)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2の割合で含有する酸味増強剤。
(I-2)レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物、及びモグロシドVを含有する酸味増強剤であって、酸味増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2であることを特徴とする酸味増強剤。
(I-3)前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である(I-2)に記載する酸味増強剤。
(I-4)酸成分含有組成物に対して、レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が0.1ppm~500ppmとなる範囲で用いられる(I-1)~(I-3)のいずれかに記載する酸味増強剤。
【0011】
(II)酸味が増強されてなる酸成分含有組成物、及びその製造方法
(II-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する酸味増強剤を含有する酸成分含有組成物。
(II-2)レバウディオサイドA及びモグロシドVを、合計量として0.1ppm~500ppmの割合で含有する(II-1)に記載する酸成分含有組成物。
(II-3)経口用または口腔内用の組成物である(II-1)または(II-2)に記載する酸成分含有組成物。
(II-4)飲食品組成物である(II-1)~(II-3)に記載する酸成分含有組成物。
(II-5)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比(質量比)が50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2となるように、酸成分含有組成物に配合する工程を有する、酸味が増強した酸成分含有組成物の製造方法。
(II-6)レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が0.1ppm~500ppmとなる範囲で酸成分含有組成物に配合する工程を有する、(II-5)に記載する製造方法。
【0012】
(III)酸成分含有組成物の酸味増強方法
(III-1)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比(質量比)が50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2となるように、酸成分含有組成物に配合することを特徴とする、酸成分含有組成物の酸味増強方法。
(III-2)レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物及びモグロシドVを、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、より好ましくは70:30~98:2となるように、酸成分含有組成物に配合することを特徴とする、酸成分含有組成物の酸味増強方法。
(III-3)前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である(III-2)に記載する酸味増強方法。
(III-4)レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が0.1ppm~500ppmとなる範囲で酸成分含有組成物に配合する、(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載する酸味増強方法。
(III-5)酸成分含有組成物が口用または口腔内用の組成物、好ましくは飲食品組成物である、(III-1)乃至(III-4)のいずれかに記載する酸味増強方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸味増感剤は、酸成分を含有する経口用または口腔用組成物に対して用いられることで、当該組成物の酸味を増強することができる。つまり、本発明の酸味増感剤によれば、酸成分を含有する経口用または口腔用組成物に対して酸味増強効果を発揮し、酸味が増強されてなる経口用または口腔用組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)酸味増強剤
本発明の酸味増強剤(以下、「本酸味増強剤」と称する。)は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で含有することを特徴とする。
【0015】
(レバウディオサイドA)
レバウディオサイドAは、ステビア抽出物に含まれているステビオール配糖体であり、ステビア抽出物の主要甘味成分として、砂糖の300~450倍の甘味度を有していることが知られている。レバウディオサイドAは、キク科ステビア属に属する植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニ(Stevia
rebaudiana
Bertoni)(本発明では「ステビア」と略称する)の葉や茎等から水又は有機溶媒で抽出し、精製することによって調製することができる。なお、本発明で対象とするレバウディオサイドAには、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いてレバウディオサイドAにグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理レバウディオサイドAも含まれる。
【0016】
本酸味増強剤においてレバウディオサイドAは精製された状態で用いられてもよいが、これに制限されず、本酸味増強剤におけるレバウディオサイドAの作用効果を妨げないことを限度として、他のステビオール配糖体(ステビオサイド、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、レブソサイド、ステビオールビオサイド等)との混合物の状態で用いることもできる。かかる混合物としては好適にはステビア抽出物を挙げることができる。なお、ステビア抽出物には、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビアも含まれる。かかる混合物を用いる場合、混合物中のレバウディオサイドAの含有量は全体の90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上である。混合物中におけるレバウディオサイドA以外の成分の含有量が5質量%、特に10質量%を超えて増えると、当該成分による酸味増強剤の味質に対する影響が無視できなくなるからである。制限はされないが、好ましい混合物として、レバウディオサイドAの含有量が全体の95質量%以上であり、その他の成分として他のステビオール配糖体の含有量が合計で1質量%以下、より好ましくはステビオサイド及びレバウディオサイドCの含有量が合計で0.2質量%以下であるステビア抽出物を例示することができる。
【0017】
レバウディオサイドAは、前述するようにステビアの葉や茎等を原料として抽出精製して調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、制限されないものの、レバウディオJ-100(守田化学工業(株)製)等を挙げることができる。当該製品はレバウディオサイドAを95質量%以上の割合で含有するレバウディオサイドA含有製品(ステビア抽出物)である。
【0018】
(モグロシドV)
モグロシドVは、ラカンカ(羅漢果)抽出物に含まれているトリテルペン系配糖体であり、ラカンカ抽出物の主要甘味成分として、砂糖の約300倍の甘味度を有していることが知られている。モグロシドVは、ウリ科ラカンカ属に属する植物である羅漢果(学名:Siraitia
grosvenorii)の生果実から水で抽出し、精製することによって調製することができる。
【0019】
本酸味増強剤においてモグロシドVは、レバウディオサイドAと同様に精製された状態で用いられてもよいが、これに制限されず、本酸味増強剤におけるモグロシドVの作用効果を妨げないことを限度として、他のトリテルペン系配糖体(モグロール、モグロシドIE1、モグロシドIA1、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIVa、モグロシドIVE、シメノシド、11-オキソモゴロシド、5α,6α-エポキシモグロシド)との混合物の状態で用いることもできる。かかる混合物としては好適にはラカンカ抽出物を挙げることができる。かかる混合物を用いる場合、混合物中のモグロシドVの配合量は全体の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上、とりわけ好ましくは50質量%以上である。混合物中におけるモグロシドV以外の成分の含有量が増えると、当該成分による本酸味増強剤の味質に対する影響が無視できなくなる。
【0020】
当該モグロシドVは、前述するように羅漢果の果実を原料として抽出精製して調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、制限されないものの、モグロシドVを高純度で含み、甘味度が砂糖の約300倍である「サンナチュレ(登録商標)M50」(商品名:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)や高純度ラカンカ抽出物(サラヤ株式会社製)等を例示することができる。
【0021】
(本酸味増強剤)
本酸味増強剤は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを質量比で50:50~99:1の割合で含有することを特徴とする。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比は50:50~98:2であり、より好ましくは60:40~98:2であり、特に好ましくは70:30~98:2(以上、質量比)である。なお、本発明の効果には直接関係しないものの、モグロシドVは高価であるため、レバウディオサイドAとモグロシドVとの総量を100質量部とした場合においてモグロシドVの割合を5質量部よりも多くすると、本酸味増強剤のコストがアップする傾向がある。
【0022】
本酸味増強剤は、レバウディオサイドAとモグロシドVを上記割合で混合することにより製造することができる。また本酸味増強剤は、レバウディオサイドAを90質量%以上含有する前述のステビア抽出物を用いて、これにモグロシドVを、レバウディオサイドAとの質量比が前述の通り、50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2となるように配合することで製造することもできる。ここでモグロシドVとして、本発明の効果を損なわないことを限度として、モグロシドVを甘味主成分として含有するラカンカ抽出物を用いることもできる。斯くして、ステビア抽出物特有の味質(苦味、後引き感、コク味のなさ、甘味発現が遅い)を抑えながらも、酸味増強作用を有する組成物を得ることができる。
【0023】
本酸味増強剤は、例えば後述する対象の酸成分含有組成物の酸味を増強するために用いられる。その形態を問わないが、粉末状、顆粒状、タブレット状、およびカプセル剤状等の固体の形態、ならびにシロップ状、乳液状、液状、およびジェル状等の半固体または液体の形態を有することができる。また一剤の形態のほか(例えばレバウディオサイドAとモグロシドVとの混合調合品)、二剤の形態(例えばレバウディオサイドAを含有する製剤とモグロシドVを含有する製剤との組み合わせ物)を有するものであってもよい。
【0024】
本酸味増強剤は、レバウディオサイドAとモグロシドVを上記割合で混合し製造する際に(またはステビア抽出物に、レバウディオサイドAとモグロシドVの割合が上記割合になるようにモグロシドVを配合して製造する際に)、その形態に応じて、薬学的に許容される担体、または飲食品に配合可能な担体を適宜配合することもできる。かかる担体としては、本酸味増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類;デキストリン、セルロース、アラビアガム、およびでん粉(コーンスターチ等)等の多糖類;および水等を挙げることができる。また本酸味増強剤の作用効果に影響を与えないことを限度として、乳糖、ブドウ糖、果糖、砂糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類;ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、還元パラチノース等の糖アルコール類;アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン又はその塩(サッカリンナトリウム、サッカリンカルシウム等)等の合成甘味料;甘草抽出物、アマチャ抽出物、ブラゼイン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナイゼリアベリー抽出物(モネリン)、およびテンリョウチャ抽出物等の天然甘味料の配合も排除するものではない。さらに本酸味増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、飲食品や医薬品に通常使用されるような香料、色素、酸味料、または防腐剤等を配合することもできる。
【0025】
本酸味増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量は、本酸味増強剤の使用態様、及び他の成分の有無等に応じて、0.005~100質量%の範囲から適宜設定することができる。前述する割合からなるレバウディオサイドAとモグロシドVとの混合物(100質量%)の甘味度は、砂糖の150~450倍程度である。このため、本酸味増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計含有量、及び本酸味増強剤の使用量は、本酸味増強剤を適用する酸成分含有組成物に所望される甘味を考慮して適宜設定することができる。例えば、甘味を付与することなく、酸成分含有組成物の酸味を増強するために本酸味増強剤を酸成分含有組成物に配合する場合は、最終の酸成分含有組成物中に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量が0.002質量%未満になるような範囲で適宜調整することができる。一方、酸成分含有組成物の酸味を増強するとともに、甘味付与を目的として、本酸味増強剤を酸成分含有組成物に配合する場合は、酸成分含有組成物中に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量が0.002質量%以上になればよく、その限りにおいて特に制限されない。酸成分含有組成物への配合により10~50000倍に希釈されると考えれば、本酸味増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量は0.02~100質量%の範囲になるように適宜調整することができる。
【0026】
(II)酸成分含有組成物
本発明の酸成分含有組成物(以下、「本発明組成物」と略称する場合がある)は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを質量比で50:50~99:1の割合で含有する、経口用または口腔用の組成物である。この限りにおいて、本発明組成物は、レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物とモグロシドVを含有するものであってもよい。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比(質量比)は50:50~98:2であり、より好ましくは60:40~98:2であり、特に好ましくは70:30~98:2である。当該本発明組成物は、前述する本酸味増強剤を、後述する対象の経口用または口腔用組成物(以下、これを「経口・口腔用組成物」と総称する)に添加配合することで簡便に調製することができる。
【0027】
本発明が対象とする経口・口腔用組成物は、酸味が必要とされる組成物であり、例えば飲食品、経口医薬品、口腔用医薬品、歯磨きや洗口液等のオーラルケア製品(医薬品または医薬部外品を含む)を挙げることができる。また甘味が必要とされる組成物であることもできる。具体的には、酸成分を含有する組成物であり、好ましくは飲食品である。
【0028】
本発明が対象とする酸成分は、酸味を有し、飲食品や経口医薬品または経口医薬部外品等の経口・口腔用組成物に配合が許容される酸成分であればよく、具体的には、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、プロピオン酸、酢酸等の有機酸およびその塩類;リン酸、塩酸等の無機酸およびその塩類等が挙げられる。好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び乳酸等の有機酸及びその塩類、並びにリン酸及びその塩類である。塩類としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩を例示することができる。これらは1種単独でも、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また酸成分は、前記酸を1種または2種以上含有する食品素材またはその加工物であってもよく、例えば前記食品素材としては果物や野菜等が、また加工物としては果汁等の果物や野菜の搾汁、醸造酢、及び発酵乳等を例示することができる。酸成分として、好ましくはクエン酸またはその塩である。またクエン酸またはその塩を含有する食品素材またはその加工物も好適な酸成分として使用される。なお、これらの酸成分の形状は特に制限されない。例えば、粉末状、半固形状、液体状のいずれの形状であってもよい。本発明組成物に含まれる酸成分の割合は、本発明組成物の目的や種類に応じて適宜設定することができる。制限はされないものの、例えばpH2~8の範囲になるように適宜調整することもでき、酸成分の割合としては0.001~10質量%を例示することができる。
【0029】
本発明が対象とする経口・口腔用組成物は、前記酸成分に加えて糖類を含有するものであってもよい。糖類としては、甘味を有し、飲食品や経口医薬品または経口医薬部外品等の経口・口腔用組成物に配合が許容される糖類であればよく、具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース等の単糖類;麦芽糖、ショ糖及び乳糖等の二糖類;乳果オリゴ糖、クラフトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース(ビートオリゴ糖)等のオリゴ糖;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール;異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖);水飴、還元麦芽糖水飴、高糖化還元水飴、低糖化還元水飴等を例示することができる。これらは1種単独でも、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また糖類は、前記糖類を1種または2種以上含有する食品素材またはその加工物であってもよく、例えば前記食品素材としては果物や野菜等が、また加工物としては果汁等の果物や野菜の搾汁を例示することができる。糖類として、好ましくは砂糖、果糖、ブドウ糖、異性化糖、糖アルコール類、果糖ブドウ糖液糖、水飴等である。またこれらの糖類を含有する食品素材またはその加工物も好適な糖類として使用される。なお、これらの糖類の形状は特に制限されない。例えば、粉末状、半固形状、液体状のいずれの形状であってもよい。本発明組成物に糖類を配合する場合、その配合割合は、本発明の効果を妨げないことを限度として、本発明組成物の目的や種類に応じて、0.01~99.9質量%の範囲で適宜設定することができる。
【0030】
経口・口腔用組成物は、少なくともこれらの酸成分を含有するものであり、酸成分に加えて糖類を含有するものであってもよい。前述する酸成分の少なくとも1種をそれぞれ単独で含有するものであってもよいし、2種又は3種以上を任意に組み合わせて含有するものであってもよい。
【0031】
飲食品としては、具体的に、前述する酸成分を含有する、炭酸飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料等の飲料;おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、その他種々の和菓子;クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ドーナッツ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、ゼリー、ホットケーキ、パンその他種々の洋菓子;ヨーグルト、プリン、ババロア、ムース等の乳製品;キャラメル、ソフトキャンディー、ハードキャンディー、グミキャンディー、錠菓(ラムネ菓子、タブレット状製菓、清涼菓子等を含む)等の飴類;チューインガムや風船ガム等のガム類;ポテトチップス、その他種々のスナック菓子;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ソフトクリーム等のアイスクリーム類;アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート、その他種々の氷菓;フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、その他種々のペースト類;ソース(パスタソースを含む)、マヨネーズ、固形ブイヨン、シチューの素、スープの素、その他種々の調味料類を挙げることができる。
【0032】
また経口医薬品としては、前述する酸成分を含有する、トローチ、ドリンク剤、顆粒剤、散剤(粉末剤)、錠剤、およびカプセル剤等を、口腔用医薬品としては、前述する酸成分を含有する、スプレー剤、軟膏剤、パスタ剤等を、またオーラルケア製品としては、前述する酸成分を含有する、液体歯磨き、練り歯磨き、口中洗浄剤、および口臭除去剤等を挙げることができる。
【0033】
経口・口腔用組成物に対してレバウディオサイドA及びモグロシドVは、両者の配合比が前述する範囲であって、且つ本発明組成物中のこれらの最終濃度が総量で0.1~500pmとなるように配合される。かかる最終濃度は、対象とする経口・口腔用組成物の種類等に応じて適宜設定することができ、例えば下限値としては、前記の通り0.1ppm以上を挙げることができるが、好ましくは0.2ppm以上、より好ましくは0.3ppm以上、さらに好ましくは0.4ppm以上、特に好ましくは0.5ppm以上である。また上限値としては、前記の通り500ppm以下を挙げることができるが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。
【0034】
具体的には、対象とする経口・口腔用組成物の種類に応じて、レバウディオサイドA及びモグロシドVの総濃度が、0.1~500ppmの範囲で、例えば0.5~100ppm、好ましくは0.5~80ppm、より好ましくは0.5~50ppmの範囲になるように配合することもできる。なお、レバウディオサイドA及びモグロシドVは、本発明組成物の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0035】
斯くして調製される本発明組成物は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを上記の割合で含有することで、レバウディオサイドAとモグロシドVとを含有しない場合と比較して酸味が増強されてなることを特徴とする。またレバウディオサイドAとモグロシドVの配合量にもよるが、本発明組成物は、同時にステビア抽出物が有する特有の呈味(苦味、甘味の後引き感(後味の残存)、コク味のなさ、口腔内での甘味発現の遅さ)が改善されており、砂糖に近い味質(甘味)を有することもできる。
【0036】
本発明において「酸味」とは、酸成分が有している味であり、これらは、通常、酸成分を含有する飲食物を摂取した際に、特に初期~中にかけて口腔内で感じられる風味、特に舌で感じられる味覚による味である。
【0037】
本発明組成物について酸味が増強されているか否かは、レバウディオサイドA及びモグロシドVが配合された本発明組成物の風味を、レバウディオサイドA及びモグロシドVが配合されていない以外は本発明組成物と同じ組成の組成物(比較組成物)の風味と比較することで評価することができ、比較組成物と比較して本発明組成物の風味のほうが、酸味が上昇している場合に、本発明組成物について酸味が増強されていると判断することができる。制限されないものの、具体的には、後述する実施例の記載に従って評価することができる。レバウディオサイドA及びモグロシドVの配合により本発明組成物の酸味が増強されることで、実際よりも多くの酸成分を配合した組成物と同様の酸味を有する本発明組成物を調製することができる。
【0038】
このように、本発明を用いることにより、酸成分の配合量の増大や質の改善を要することなく、経口・口腔用組成物の酸味を増強することができる。すなわち、本発明の製造方法により、簡便かつ安価に、酸味が増強された経口・口腔用組成物を製造することができる。また、酸成分の配合が少ないと、とぼけた単調な味になり易いが、本発明を用いることにより、とぼけた単調な味が、酸味が増強されることで補われ、風味を改善することができる。逆にいえば、本発明によれば、酸味を大きく低減ないし損なうことなく、酸成分の使用量を抑えることができる。
【0039】
(III)経口用または口腔用組成物の酸味増強方法
本発明の経口用または口腔用組成物(経口・口腔用組成物)の酸味増強方法は、上記(II)で対象とする経口・口腔用組成物に、レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で添加することによって実施することができる。レバウディオサイドAとして、レバウディオサイドAを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含むステビア抽出物を用いることもできる。制限されないものの、他の成分としてレバウディオサイドA以外のステビオール配糖体の含有量が合計で1質量%以下、好ましくはステビオサイド及びレバウディオサイドCの含有量が合計で0.2質量%以下であるステビア抽出物を例示することができる。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比は50:50~98:2(質量比)であり、より好ましくは60:40~98:2(質量比)であり、特に好ましくは70:30~98:2(質量比)である。
【0040】
これらの経口・口腔用組成物に対して酸味増強効果を得るのに必要なレバウディオサイドAとモグロシドVの量は、対象とする本経口・口腔用組成物の種類等に応じて、最終濃度が総量で0.1~500ppmの範囲になるように適宜設定することができる。レバウディオサイドAとモグロシドVの合計量として、例えば下限値としては、前記の通り0.1ppm以上を挙げることができるが、好ましくは0.2ppm以上、より好ましくは0.3ppm以上、さらに好ましくは0.4ppm以上、特に好ましくは0.5ppm以上である。また上限値としては、前記の通り500ppm以下を挙げることができるが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。具体的には、対象とする経口・口腔用組成物の種類に応じて、レバウディオサイドA及びモグロシドVの総濃度が0.1~500ppmの範囲で、例えば0.5~100ppm、好ましくは0.5~80ppm、より好ましくは0.5~50ppmの範囲になるように配合することもできる。なお、レバウディオサイドA及びモグロシドVは、本発明組成物の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0041】
本発明の酸味増強方法において、レバウディオサイドAとモグロシドVは、各成分を個別に上記の配合比と添加量になるように、対象とする経口・口腔用組成物に添加してもよいし、また(I)で説明する本酸味増強剤を、上記添加量になるように、対象とする経口・口腔用組成物に添加してもよい。
【0042】
経口・口腔用組成物にレバウディオサイドAとモグロシドVとを上記の割合で配合することで、ステビア抽出物が有する特有の呈味(苦味、甘味の後引き感(後味の残存)、コク味のなさ、口腔内での甘味発現の遅さ)を改善し、ステビア抽出物の味質を砂糖の味質に近づけながらも、対象とする経口・口腔用組成物の酸味を増強することができる。このように、本発明の方法によれば、酸成分の配合量の増大や質の改善を要することなく、経口・口腔用組成物の酸味を増強することができる。すなわち、本発明の方法により、簡便かつ安価に、酸味が増強された経口・口腔用組成物を得ることができる。また、前述するように、本発明の方法を用いることにより、経口・口腔用組成物の酸味を増強することで、酸成分の使用量を抑えることで生じる単調な味を補い、経口・口腔用組成物の呈味(風味)を改善することができる。
【0043】
なお、本明細書において、「含む」や「含有する」という用語には、「から実質的になる」及び「からなる」の意味が包含される。
【実施例】
【0044】
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0045】
以下の実験例において、レバウディオサイドA含有原料として、ステビア抽出物(レバウディオJ-100:守田化学工業(株)製(乾燥粉末)を用いた。レバウディオJ-100は、レバウディオサイドAを95.2%、レバウディオサイドCを0.1%、及びステビオサイドを0.1%の割合で含む、砂糖の360~460倍の甘味を有する高甘味度甘味料である(特開2011-115142号公報参照)。以下の実験例では、これを「ステビア抽出物」と称する。
【0046】
また、以下の実験例において、モグロシドV含有原料として、ラカンカ抽出物(サンナチュレM50:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)(乾燥粉末)を使用した。サンナチュレM50は羅漢果の生果実(未乾燥果実)を水で抽出した後、濾過して回収した水抽出液を脱色及び濃縮した後、スプレードライにより乾燥粉末としてモグロシドVを50%の割合で含むように調製したものである。以下の実験例では、これを「ラカンカ抽出物」と称する。
【0047】
実施例1~5 酸味増強剤の調製
前述するステビア抽出物及びラカンカ抽出物を用いて、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が表1に記載する割合になるように混合して、5種類の組成物(実施例1~5)を調製した。表1に記載するレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比は、レバウディオサイドAとモグロシドVの総量を100部とした場合における各成分の配合比(質量比)を意味する。
【0048】
【0049】
実験例1 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
(1)評価方法
飲食品の味質の官能評価に従事し訓練して社内試験に合格したパネル4名(以下の実験例においても同じ)を用いて、前記酸味増強剤(実施例1~5)を配合した酸成分含有飲食物I(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム、pH2.9~3.5)の酸味を評価した。ここで酸味は、酸成分含有飲食物を摂取した際に口腔内、特に舌で感じられる酸味を意味する。
【0050】
(酸成分含有飲食物I)
クエン酸 0.068
クエン酸三ナトリウム 0.011
酸味増強剤 表2参照
水 残 部
合計 100.00%
【0051】
具体的には、評価基準とする酸成分含有飲食物として、上記各酸成分含有飲食物Iについて酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「対照飲食物I」;上記各酸成分含有飲食物Iについて各酸成分の配合量を約0.9倍量(クエン酸0.061質量%、クエン酸三ナトリウム0.01質量%)とし、且つ酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「陰性対照飲食物I」;上記各酸成分含有飲食物Iについて各酸成分の配合量を約1.1倍量(クエン酸0.075質量%、クエン酸三ナトリウム0.012質量%)とし、且つ酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「陽性対照飲食物I」とし、これらの酸味をそれぞれ「0点」、「-2点」、及び「2点」とした。
【0052】
パネル4名に下記の評価スコアに従って、酸味増強剤1~5を添加した酸成分含有飲食物I(被験飲食物I:表2)の酸味を評価してもらい、パネル4名の評価スコアの平均値を求めた。
【0053】
[酸味の評価スコア]
3点:陽性対照飲食物よりも強い酸味が感じられる(強い酸味増強効果あり)
2点:陽性対照飲食物とほぼ同じ酸味が感じられる(酸味増強効果あり)
1点:対照飲食物よりも強いが、陽性対照飲食物よりは弱い酸味が感じられる(酸味増強効果ややあり)
0点:対照飲食物と同程度の酸味(酸味増強効果なし)
-1点:対照飲食物よりも弱いが、陰性飲食物よりは強い酸味が感じられる
-2点:陰性対照飲食物とほぼ同じ酸味が感じられる
-3点:陰性対照飲食物よりも弱い酸味が感じられる(または酸味が感じられない)
【0054】
(2)評価結果
結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
この結果から、レバウディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1、好ましくは50:50~98:2、より好ましくは60:40~98:2、特に好ましくは70:30~98:2の割合(質量比)で併用することで、酸成分を含有する組成物に対して酸味増強作用を発揮することが確認された。
【0057】
実験例2 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
(1)評価方法
パネル4名を用いて、前記酸味増強剤(実施例2)を各種濃度(0.00005~0.01質量%:表6参照)になるように配合した酸成分含有飲食物II(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム、pH2.9~3.5:表3参照)の酸味を評価した。
【0058】
【0059】
具体的には、評価基準とする酸成分含有飲食物として、上記各酸成分含有飲食物IIについて酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「対照飲食物II」;上記各酸成分含有飲食物IIについて各酸成分の配合量を0.9倍量とし、且つ酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「陰性対照飲食物II」(表4参照);上記各酸成分含有飲食物IIについて各酸成分の配合量を1.1倍量とし、且つ酸味増強剤を配合しない酸成分含有飲食物を「陽性対照飲食物II」(表5参照)とし、これらの酸味をそれぞれ「0点」、「-2点」、及び「2点」とした。
【0060】
【0061】
【0062】
パネル4名に実験例1と同じ評価スコアに従って、各種濃度の酸味増強剤を添加した評価試験用の酸成分含有飲食物II(被験飲食物:表3)の酸味を評価してもらい、パネル4名の評価スコアの平均値を求めた。なお、これらの酸成分含有飲食物の酸味の評価はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。
【0063】
(2)評価結果
結果を表6に示す。
【0064】
【0065】
表6に示す結果から、酸成分含有組成物に対して、レバウディオサイドAとモグロシドVとを併用した組成物(酸味増強剤)を配合することで、酸成分含有組成物の酸味を有意に増強させることができることが確認された。また、酸成分含有組成物を冷蔵して品温を10℃に調整したものについても同様に評価したところ、25℃で評価した前記評価スコアと有意な相違は認められなかった。これらの結果から、酸成分含有組成物に対して酸味増強剤(実施例2)を少なくとも0.5~100ppm、好ましくは0.5~50ppm、より好ましくは1~30ppmの割合で配合することが好ましいことがわかる。
【0066】
実験例3 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
(1)評価方法
パネル4名を用いて、前記酸味増強剤(実施例2)を用いて調製した酸成分含有飲食物III(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム)の酸味を評価した。また比較試験として、前記酸味増強剤に代えて、ラカンカ抽出物(サンナチュレM50:比較例1)、ステビア抽出物(レバウディオJ-100:比較例2)、アスパルテーム(比較例3)、及びスクラロース(比較例4)(以上、高甘味度甘味料)をそれぞれ配合して調製した酸成分含有飲食物IIIについても、同様にして酸味を評価し、前記酸味増強剤を用いた場合に得られる酸味と比較した。なお、これらの酸成分含有飲食物の酸味はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。
【0067】
(酸成分含有飲食物III)
クエン酸 0.068
クエン酸三ナトリウム 0.011
酸味増強剤または高甘味度甘味料 表7参照
水 残 部
合計 100.00%
【0068】
具体的には、前記酸成分含有飲食物IIIの処方において、酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない酸成分含有飲食物を「対照飲食物III」;酸成分の配合量を0.9倍に減らし、且つ酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない酸成分含有飲食物を「陰性対照飲食物III」;酸成分の配合量を1.1倍に増やし、且つ酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない酸成分含有飲食物を「陽性対照飲食物III」として、実験例1と同じ評価スコア(基準)に従って、パネル4名に酸成分含有飲食物III(被験飲食物IIIシリーズ)の酸味を評価してもらった。
【0069】
(2)評価結果
被験飲食物IIIシリーズについてパネル4名の評価スコアの平均値を表7に示す。表中「甘味倍率」は、ショ糖の甘さに換算した甘味度を意味する。添加量を調節することで、最終の飲食物の甘味度が等しく砂糖0.3%相当になるように調整している。なお、砂糖0.3%相当量とは甘味を呈しない量(甘味の閾値未満)である。
【0070】
【0071】
以上、表7に示す結果から、酸成分含有組成物に対してレバウディオサイドAとモグロシドVとを組み合わせて配合することで、酸成分含有組成物の酸味を有意に増強させることができることが確認された。比較例1及び2の結果に示すように、モグロシドV(ラカンカ抽出物)及びレバウディオサイドA(ステビア抽出物)には酸味増強効果は認められなかったことから、本酸味増強剤(実施例2)の酸味増強効果が、両者の併用による相加的なものではないことが確認された。また同様に他の高甘味度甘味料(アスパルテーム、スクラロース)にも、酸味増強効果はなく、むしろ酸味を緩和する作用があることが認められた。このことから、本発明の本酸味増強剤の酸味増強効果は予想外のことと認められる。
【0072】
なお、酸味増強剤(実施例2)の甘味閾値(極限法、以下同じ)は0.002%(20ppm)であることから、本発明の酸味増強剤が発揮する酸味増強効果はその甘味の有無とは無関係であると考えられる。つまり、本発明の酸味増強剤は甘味を呈さない量でも有意に酸味成分の酸味を増強することができる。
【0073】
実験例4 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
酸成分含有飲食物に糖成分(果糖ブドウ糖液糖)を配合し、酸味増強剤の配合量を変えて、経口用組成物に対する酸味増強作用を確認した。
【0074】
(1)評価方法
パネル4名を用いて、本酸味増強剤(実施例2)を用いて調製した各種の酸成分含有飲食物IV(被験飲食物Aシリーズ、Bシリーズ、Cシリーズ)(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム、pH2.9~3.5)の酸味を評価した。なお、これらの酸成分含有飲食物の酸味はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。
【0075】
(被験飲食物Aシリーズ:A-1~A-8)
果糖ブドウ糖液糖 15.00
クエン酸 0.18
クエン酸三ナトリウム 0.03
酸味増強剤 表8参照
水 残 部
合計 100.00%
【0076】
(被験飲食物Bシリーズ:B-1~B-8)
果糖ブドウ糖液糖 10.00
クエン酸 0.18
クエン酸三ナトリウム 0.03
酸味増強剤 表8参照
水 残 部
合計 100.00%
【0077】
(被験飲食物Cシリーズ:C-1~C-8)
果糖ブドウ糖液糖 5.00
クエン酸 0.18
クエン酸三ナトリウム 0.03
酸味増強剤 表8参照
水 残 部
合計 100.00%
【0078】
具体的には、パネル4名に、上記被験飲食物Aシリーズ、Bシリーズ、及びCシリーズの各被験飲食物について、実験例1と同じ評価スコアに従って酸味を評価してスコア付けしてもらった。なお、陽性対照飲食物としては、各シリーズの被験飲食物の上記処方において、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの配合量をそれぞれ1.1倍量(クエン酸:0.198質量%、クエン酸三ナトリウム:0.033質量%)に増量した飲食物を使用した。また対照飲食物としては、各シリーズの被験飲食物の上記処方において、酸味増強剤を配合しない飲食物を使用した。さらに陰性対照飲食物としては、各シリーズの被験飲食物の上記処方において、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの配合量をそれぞれ0.9倍量(クエン酸:0.162質量%、クエン酸三ナトリウム:0.027質量%)に減量した飲食物を使用した。
【0079】
(2)評価結果
結果として、パネル4名の評価スコアの平均値を表8に示す。
【0080】
【0081】
以上の結果から、レバウディオサイドAとモグロシドVとを含む酸味増強剤(実施例2)は、糖類を配合した酸成分含有組成物に配合した場合でも、当該酸成分含有組成物の酸味を有意に増強させることが確認された。実験例2(表6)の結果と比較すると、酸成分含有組成物に糖類が配合されているほうが、酸味増強剤の酸味増強作用は強く、極めて少量(低濃度)の酸味増強剤で本発明の効果が得られることが判明した。また前記実験例では、酸成分組成物の品温を室温(25℃)に調整して酸味を評価したが、酸成分組成物を冷蔵して品温を10℃に調整したものについて同様に評価した結果、評価スコアに有意な変化は認められなかった。このことから、本発明の効果は、冷蔵と室温との品温の違いに影響されることなく得られる効果であることが判明した。これらの結果から、酸成分含有組成物に対して酸味増強剤(実施例2)を少なくとも0.5~100ppm、好ましくは0.5~80ppm、特に0.5~50ppmの割合で配合することが好ましいことがわかる。なお、0.5ppmの配合で充分高い酸味増強効果を発揮することから、酸味増強剤(実施例2)の下限値は0.5ppmよりも低く、例えば0.1ppm、好ましくは0.2ppm、より好ましくは0.3ppmであると考えられる。実験例3でも示したように、本発明の酸味増強剤が発揮する酸味増強効果はその甘味の有無とは無関係である。但し、酸味増強剤の配合量が甘味の閾値である0.002%(20ppm)(砂糖換算で0.6%)を超えて増加するにつれて甘味が強くなり、例えば果糖ブドウ糖液糖を多く含む被験飲食物Aシリーズ及びBシリーズでは、酸味増強剤の配合量が0.005%(50ppm)、特に0.008%(80ppm)以上になると、甘味が優って酸味増強効果が低減する傾向が認められた。
【0082】
実験例5 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
(1)評価方法
パネル4名を用いて、前記各酸味増強剤(実施例2)を用いて調製した酸成分含有飲食物V(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム、pH2.9~3.5)の酸味を評価した。また比較試験として、前記酸味増強剤に代えて、ラカンカ抽出物(サンナチュレM50:比較例1)、ステビア抽出物100%(レバウディオJ-100:比較例2)、アスパルテーム(比較例3)、及びスクラロース(比較例4)(以上、高甘味度甘味料)をそれぞれ配合して調製した酸成分含有飲食物Vについても、同様にして酸味を評価し、前記酸味増強剤を用いた場合に得られる酸味と比較した。なお、これらの酸成分含有飲食物Vの酸味はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。
【0083】
酸成分含有飲食物Vの処方を表9に記載する。なお、酸成分含有飲食物Vは、果糖ブドウ糖液糖の濃度が異なる3つのシリーズの被験飲食物A~Cとして調製した。
【0084】
【0085】
具体的には、前記被験飲食物A~Cシリーズの各処方において、酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない被験飲食物を「対照飲食物」;酸成分の配合量を0.9倍に減らし、且つ酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない被験飲食物を「陰性対照飲食物」;酸成分の配合量を1.1倍に増やし、且つ酸味増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない被験飲食物を「陽性対照飲食物」として、実験例1と同じ評価スコア(基準)に従って、パネル4名に酸成分含有飲食物V(被験飲食物A~Cシリーズ)の酸味を評価してもらった。
【0086】
(2)評価結果
被験飲食物A~Cシリーズについてパネル4名の評価スコアを表10~12に、それらの平均値を表13に示す。表中「甘味倍率」は、ショ糖の甘さに換算した甘味度を意味する。添加量を調節することで、最終の飲食物の甘味度が等しく砂糖0.3%相当(甘味を呈さない量)になるように調整している。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
以上、表10~13に示す結果から、酸成分含有組成物に対して、レバウディオサイドA(ステビア抽出物)、またはモグロシドV(ラカンカ抽出物)をそれぞれ単独で配合するよりも、レバウディオサイドAとモグロシドVとを組み合わせて配合することで、酸成分含有組成物の酸味を有意に増強させることができることが確認された。特に比較例2の結果に示すように、レバウディオサイドA(ステビア抽出物)には酸味増強効果はほとんど認められなかったことから、本酸味増強剤(実施例2)の酸味増強効果が、レバウディオサイドA(ステビア抽出物)の酸味増強効果とモグロシドV(ラカンカ抽出物)の酸味増強効果の単なる相加的なものではないことが確認された。一方、他の高甘味度甘味料に関しては、スクラロース(比較例4)にはやや弱い酸味増強効果があるものの、アスパルテーム(比較例3)には酸味増強効果は全く認められなかった。
【0092】
実験例6 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
前記実験例5では、酸味増強剤(実施例2)及び高甘味度甘味料を甘味の閾値以下の量(甘味を呈さない量)用いて実験したのに対して、本実験例では、甘味の閾値を超える量(甘味を呈する量)用いて実験し、酸成分に対する酸味増強効果を確認した。
【0093】
(1)評価方法
パネル4名を用いて、前記酸味増強剤(実施例2)を用いて調製した酸成分含有飲食物VI-1と、比較試験として、前記酸味増強剤に代えてラカンカ抽出物(サンナチュレM50:比較例1)、ステビア抽出物(レバウディオJ-100:比較例2)、アスパルテーム(比較例3)、及びスクラロース(比較例4)(以上、高甘味度甘味料)をそれぞれ配合して調製した酸成分含有飲食物VI―2~5について、それぞれ酸味を評価した。なお、これらの酸成分含有飲食物の酸味はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。酸成分含有飲食物VI-1~5の処方を表14に記載する。ここで、各酸成分含有飲食物VIにおける酸味増強剤及び高甘味度甘味料の配合量は、甘味度基準酸含有飲食物と同じ甘さ(果糖ブドウ糖液糖15質量%含有)になるように調整した。
【0094】
具体的には、パネル4名に、各酸成分含有飲食物VIについて、実験例1と同じ評価スコアに従って酸味を評価してスコア付けしてもらった。なお、陽性対照飲食物としては、各酸成分含有飲食物VIの処方において、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの配合量をそれぞれ1.1倍量に増量した飲食物を使用した。また対照飲食物としては、各シリーズの被験飲食物の上記処方において、酸味増強剤を配合しない飲食物を使用した。さらに陰性対照飲食物としては、各シリーズの被験飲食物の上記処方において、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの配合量をそれぞれ0.9倍量に減量した飲食物を使用した。
【0095】
(2)評価結果
結果として、パネル4名の評価スコアの平均値を表14に併せて示す。
【0096】
【0097】
この結果からわかるように、本酸味増強剤は、甘味を呈する量で使用しても、酸成分の酸味を増強する効果を発揮することが確認された。一方、他の高甘味度甘味料は、ラカンカ抽出物を除いて、甘味を呈する量で使用すると、むしろ酸成分の酸味を緩和する方向に作用することが確認された。
【0098】
実験例7 酸味増強剤の酸味増強作用の評価
酸成分含有飲食物に配合する糖成分(果糖ブドウ糖液糖)の量を変えて、経口用組成物に対する酸味増強作用を確認した。
(1)評価方法
パネル4名を用いて、本酸味増強剤(実施例2)を用いて調製した各種の酸成分含有飲食物VII(被験飲食物VII-1~7)(酸成分:クエン酸、クエン酸三ナトリウム、pH2.9~3.5)の酸味を評価した。なお、各種の酸成分含有飲食物は、最終飲食物の甘味度が同じになるように(砂糖換算で約12%相当、甘味度12)、配合する糖成分の量に応じて、本酸味増強剤の配合量を調整した。これらの酸成分含有飲食物の酸味はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した。
【0099】
(酸成分含有飲食物VII)
果糖ブドウ糖液糖 表15参照
クエン酸 0.18
クエン酸三ナトリウム 0.03
酸味増強剤 表15参照
水 残 部
合計 100.00%
【0100】
具体的には、実験例1と同様に、評価基準飲食物として、上記対照飲食物、陽性対照飲食物、及び陰性対照飲食物を調製し、その酸味との対比により、実験例1と同じ[酸味の評価スコア]を用いて、被験飲食物VII-1~7の酸味を評価した。
【0101】
(2)評価結果
結果を表15に示す。
【0102】
【0103】
以上、表15に示す結果から、糖類と酸成分を含有する組成物に対して、レバウディオサイドAとモグロシドVとを組み合わせて配合することで、酸成分の酸味を有意に増強させることができることが確認された。表15の結果から、本酸味増強剤を甘味成分として糖類の一部に置き換えても、広範囲にわたり、酸味増強効果を発揮することが確認された。
【0104】
実験例8 種々の酸成分含有組成物への適用
(1)チョコレート
本発明の酸味増強剤について、カカオ豆に由来するフルーティな酸味を増強する効果を確認するため、本酸味増強剤の代表として実施例2の本酸味増強剤を用いてチョコレートを製造した。
【0105】
【0106】
[製法]
(i)最初に成分1を40~45℃で溶解する。
(ii)次いで、それを32℃まで冷却し、これに成分2及び3を添加して混合する。
(iii)チョコレートの型に充填し、冷蔵庫で30分程度冷やして固化し、チョコレートを得る。
【0107】
[評価]
対照チョコレートと比較して、本発明のチョコレートはカカオ豆に由来するフルーティな酸味が高まっていることが確認された。この結果からわかるように、本発明の酸味増強剤には、カカオ豆に由来するフルーティな酸味を増強する作用がある。また、酸味が強くなることで、カカオ高含有のチョコレートの風味に近づく傾向が認められた。つまり、チョコレートに関しては、酸味の増強に伴い、カカオ感も向上することが認められた。
【0108】
(2)キムチ風鍋スープ
本発明の酸味増強剤について、有機酸(酢酸)に由来する酸味を増強する効果を確認するため、本酸味増強剤の代表として実施例2の本酸味増強剤を用いてキムチ風鍋スープを製造した。
【0109】
【0110】
[製法]
(i)成分1に成分2を加えて混合して、本発明のキムチ風鍋スープを得る。
【0111】
[評価]
対照スープと比較して、本発明のスープはキムチ風の酸味が引き立っており、すっきりした風味を有することが確認された。この結果からわかるように、本発明の酸味増強剤には、有機酸(酢酸)の酸味を増強する作用がある。
【0112】
(3)レモン風味清涼飲料水
本発明の酸味増強剤について、クエン酸及び果糖ぶどう糖液糖を含むレモン風味清涼飲料水の酸味を増強する効果を確認するため、本酸味増強剤の代表として実施例2の本酸味増強剤を用いて清涼飲料水を製造した。
【0113】
【0114】
[製法]
(i)水に成分1~6を加えて、撹拌溶解する。
(ii)93℃まで加温してから成分7を添加し、湯にて全量調整した後に、容器に充填してレモン風味清涼飲料水を得る。
【0115】
[評価]
対照清涼飲料水と比較して、比較清涼飲料水はクエン酸の酸味が抑制されていたが、本発明の清涼飲料水は酸味が増強されて、すっきり爽やかな風味を有することが確認された。この結果からわかるように、本発明の酸味増強剤には、レモンに含まれる有機酸(クエン酸)の酸味を増強する作用がある。