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7649112大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバー及びシリンダカバーの修理方法
<図1>
  • -大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバー及びシリンダカバーの修理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバー及びシリンダカバーの修理方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
F02F1/24 J
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020093807
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2020204325
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】19180334.5
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンゲーデー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド、レース
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゲッテ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-035012(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2703631(EP,A1)
【文献】特開昭62-203966(JP,A)
【文献】特開平10-008970(JP,A)
【文献】中国実用新案第204140219(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第10119511(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバーであって、燃料噴射ノズルを収容する少なくとも1つの燃料ボア(4)と、燃焼室軸(A)を有する燃焼室(2)を画定する燃焼室表面(5)とを有し、前記燃料ボア(4)は燃料軸(B)の方向に延在し、前記燃焼室表面(5)に開口し、燃料噴射ノズル用の座面(41)が前記燃料ボア(4)に設けられ、前記座面(41)は、前記燃料軸(B)と一致する対称軸を有し、ノズルチャネル(42)によって燃焼室表面(5)に接続され、前記ノズルチャネル(42)は、ノズルチャネル(42)の最大長(L1)とノズルチャネル(42)の最小長(L2)との比であり最大で2に等しい長さ比を有し、前記燃焼室表面(5)には、前記ノズルチャネル(42)の一部を画定するビーズ形状の隆起部(6)が設けられ、前記隆起部(6)は、前記長さ比を所定値まで低減するように設計されている
ことを特徴とするシリンダカバー。
【請求項2】
前記長さ比が最大で1.5であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダカバー。
【請求項3】
前記隆起部(6)は、前記燃焼室軸(A)に面する側で前記ノズルチャネル(42)を画定することを特徴とする請求項1に記載のシリンダカバー。
【請求項4】
前記隆起部(6)は、前記ノズルチャネル(42)の周方向に見たときに、最大でノズルチャネル(42)の周囲の長さの半分にわたって延在することを特徴とする請求項1又は3に記載のシリンダカバー。
【請求項5】
前記隆起部(6)の高さ(H)が、前記ノズルチャネル(42)の周方向に見たときに変化することを特徴とする請求項1又は3に記載のシリンダカバー。
【請求項6】
前記隆起部(6)が、少なくとも前記ノズルチャネル(42)の半径(R)の半分程度と同じ大きさの最大幅(B)を有することを特徴とする請求項1又は3に記載のシリンダカバー。
【請求項7】
前記長さ比が1.4未満であることを特徴とする請求項2に記載のシリンダカバー。
【請求項8】
前記隆起部(6)が、少なくとも前記ノズルチャネル(42)の半径(R)と同じ大きさの最大幅(B)を有することを特徴とする請求項1又は3に記載のシリンダカバー。
【請求項9】
大型ディーゼルエンジンのシリンダのシリンダカバーを修理する方法であって、前記シリンダカバーは、燃料噴射ノズルを収容する少なくとも1つの燃料ボア(4)と、燃焼室軸(A)を有する燃焼室(2)を画定する燃焼室表面(5)とを有し、前記燃料ボア(4)は燃料軸(B)の方向に延在し、前記燃焼室表面(5)に開口し、燃料噴射ノズル用の座面(41)が前記燃料ボア(4)に設けられ、前記座面(41)は、前記燃料軸(B)と一致する対称軸を有し、ノズルチャネル(42)によって燃焼室表面(5)に接続され、前記ノズルチャネル(42)の最大長(L1)とノズルチャネル(42)の最小長(L2)との比である長さ比が最大で2となるように、前記シリンダカバー(1)の燃焼室表面(5)が処理される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記燃焼室表面(5)にビーズ形状の隆起部(6)を適用することによって、又は、前記燃焼室表面(5)に凹部(7)を設けることによって、前記長さ比を変えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのシリンダを有する大型ディーゼルエンジンであって、前記少なくとも1つのシリンダは、請求項1~のいずれか一項に従って設計された、又は、請求項又は1に記載の方法により修理されたシリンダカバー(1)を有することを特徴とする大型ディーゼルエンジン。
【請求項12】
前記大型ディーゼルエンジンは、長手方向に掃気される2ストローク大型ディーゼルエンジンであることを特徴とする請求項1に記載の大型ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバー及び各カテゴリの独立請求項の前文に記載のシリンダカバーの修理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型ディーゼルエンジンは、2ストロークエンジン又は4ストロークエンジンとして設計できる。例えば、長手方向に掃気される2ストローク大型ディーゼルエンジンは、船舶の駆動装置として、又は静止運転においても使用され、例えば、電気エネルギーを生成する大型発電機の駆動を行う。エンジンは、通常、連続運転で相当な期間にわたって稼働するため、運転の安全性と可用性が強く求められる。そのため、とりわけメンテナンス間隔が長く、摩耗が少なく、作動材料の取り扱いが経済的であることが操作者にとっては重要な基準となる。大型ディーゼルエンジンは、通常、内径(ボア)が200mm以上のシリンダを備えている。最近では、最大960mm以上のボアを有する大型エンジンが使用されている。
【0003】
さまざまなタイプの大型ディーゼルエンジンが知られており、それぞれ2ストローク又は4ストロークエンジンとしての設計が可能である。従来、大型ディーゼルエンジンの運転は、重油を燃料として行われていた。経済的かつ効率的な運転、排ガス閾値の遵守、資源の利用可能性に関して、大型ディーゼルエンジンでの重油燃料の代替燃料の探索も行われている。この点で、液体燃料、すなわち、液体状態で燃焼室に導入される燃料と、気体燃料、すなわち、気体状態で燃焼室に導入される燃料の両方が使用される。
【0004】
重油の既知の代替品としての液体燃料の例としては、特に、石油精製装置、アルコール、特にメタノール又はエタノール、ガソリン、ディーゼル、又は、エマルジョンや懸濁液から残されるその他の重質炭化水素が挙げられる。例えば、MSAR(多相超微細噴霧残渣)として知られるエマルジョンを燃料として使用することが知られている。周知の懸濁液としては、炭塵と水の懸濁液があり、大型エンジンの燃料としても使用されている。LNG(液化天然ガス)などの天然ガスは、気体燃料として知られている。
【0005】
重油による純粋な操作に代わる周知の別の代替案としては、2つ以上の異なる燃料での操作が可能となるよう大型ディーゼルエンジンの設計を行うことがあり、そこでは操作状況や周囲環境に応じて、一方の燃料又は他方の燃料でエンジンの運転が行われる。
【0006】
2つの異なる燃料で運転可能な大型ディーゼルエンジンの既知の設計としては、現在「デュアルフュエルエンジン」という用語が用いられているタイプのエンジンがある。これらのエンジンは、一方では、気体燃料、例えば 天然ガスやメタンを燃焼室に導入して燃焼を行う気体モードと、他方では、重油やその他の液体燃料などの液体燃料を同じエンジンで燃焼させる液体モードとで運転を行うことが可能である。これらの大型ディーゼルエンジンは、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの両方、特に長手方向に掃気される2ストローク大型ディーゼルエンジンであってもよい。
【0007】
少なくとも2つ以上の異なる液体又は気体燃料で運転可能な大型エンジンは、現在使用されている燃料に応じて、さまざまな運転モードで運転されることが多い。しばしばディーゼル運転と呼ばれる運転モードでは、燃料の燃焼は、一般に、燃料の圧縮点火又は自己着火の原理に基づいて行われている。しばしばオットー運転と呼ばれるモードでは、着火性の予混合された混合気の火花点火によって燃焼が行われる。この火花点火は、例えば、スパークプラグによる電気火花や、少量の燃料の自己着火によって行われ、それが別の燃料の火花点火を引き起こすことになる。自己着火を目的とした少量の燃料は、燃焼室に接続された予備室に噴射されることが多い。
【0008】
さらに、オットー運転とディーゼル運転からの混合形式も知られている。
【0009】
本出願の枠内では、「大型ディーゼルエンジン」という用語は、少なくともディーゼル運転で運転可能なエンジンを指す。特に、「大型ディーゼルエンジン」という用語には、ディーゼル運転に加えて、異なる運転、例えば、オットー運転で運転可能な二元燃料又は多種燃料の大型エンジンも含まれる。
【0010】
大型ディーゼルエンジンは、少なくとも1つのシリンダで構成されるが、通常は複数のシリンダを備え、各シリンダにはピストンが設けられており、上死点と下死点の間で前後に移動可能に配置されている。さらに、各シリンダは、ピストンと共に燃焼室を画定するシリンダカバーを有する。運転中、燃焼室には燃料が導入され、運転モードに応じて、ピストンが上死点近くにある場合にその燃料が火花点火又は自己着火する。
【0011】
特に、例えば、重油を燃料として使用するディーゼル運転の場合、燃料を高圧で燃焼室に噴射する少なくとも1つの、多くの場合、複数の燃料噴射ノズルをシリンダヘッドに設けることは周知の手段である。各燃料噴射ノズルには、通常、燃焼室へと延在するボアがシリンダカバーに設けられている。このボアには、燃料噴射ノズルが着座する座面が設けられている。すなわち、ボアは、座面の下流では、直径が大幅に小さいノズルチャネルとして設計されている。燃料噴射ノズルは、その端部に燃料が噴射されるノズルヘッドを有する。このノズルヘッドは、燃料噴射ノズルがボア内に配置されている場合、ノズルチャネルを通って燃焼室へと延在する。これは、ノズルヘッドが燃焼室を画定する壁を超えて突出することを意味している。ノズルヘッドは、それ自体既知の方法で燃料が燃焼室に噴射される複数のノズル穴を有する。
【0012】
燃料噴射ノズルは、通常、シリンダのシリンダ軸又は燃焼室軸に対して斜めに延びるように配置され、燃焼室軸は、通常、シリンダ軸と一致している。そして、燃料噴射ノズルの長手方向軸がシリンダ軸と鋭角を成す。利用可能なスペースが非常に限られているため、一つ又は複数の燃料噴射ノズルをシリンダ軸に対して任意の角度で配置することは通常不可能であるが、実現可能な角度範囲は非常に制限されている。
【0013】
燃料噴射ノズルのノズルヘッドが燃焼室内に延びる燃焼室壁のこれらの領域は、大型ディーゼルエンジンの運転中に特に高い熱負荷にさらされる。これは、特に、燃料が燃焼室に入るノズル穴の出口領域に位置する領域に該当する。ノズルチャネルが燃焼室に通じている穴の端部では、材料除去や、それによって危険なクラック形成が生じる可能性があり、複雑で高価な修理保守作業が必要となる。
【発明の概要】
【0014】
そこで、本発明は、ノズルヘッドが燃焼室に延在するノズルチャネルの領域におけるクラック形成のリスクが少なくとも大幅に低減される大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバーを提案することを目的とする。さらに、本発明は、将来的なクラック形成のリスクを少なくとも大幅に低減することができるシリンダカバーの修理方法を提案することを目的とする。
【0015】
これらの目的を達成する本発明の主題は、各カテゴリの独立請求項の特徴部によって特徴付けられる。
【0016】
従って、本発明によれば、大型ディーゼルエンジンのシリンダ用シリンダカバーが提案され、シリンダカバーは、燃料噴射ノズルを収容する少なくとも1つの燃料ボアと、燃焼室軸を有する燃焼室を画定する燃焼室表面とを有する。燃料ボアは燃料軸の方向に延在し、燃焼室表面に開口し、燃料噴射ノズル用の座面が燃料ボアに設けられ、この座面は、燃料軸と一致する対称軸を有し、ノズルチャネルによって燃焼室表面に接続され、ノズルチャネルは、ノズルチャネルの最大長とノズルチャネルの最小長との比である長さ比を有し、この長さ比は最大で2に等しい。
【0017】
本発明にとって極めて重要なことは、燃料ボアの座面と燃焼室を接続するノズルチャネルの長さが変化することが、ノズルチャネルの周囲にわたって見た場合、燃焼室壁におけるクラック形成の実質的な原因となるということを認識することである。シリンダカバーの既知の設計では、燃料噴射ノズルが位置する燃料ボア内の座面は、その円周にわたって見た場合、燃焼室からの距離が比較的大きく変化している。この座面は、座面の周囲に沿って見た場合、燃焼室から異なる距離にある。これにより、ノズルチャネルの長さは、円周のいくつかの点でその他の点よりも大幅に短くなる。ここで、本発明により、このようなノズルチャネルの長さ変化を、ノズルチャネルの最大長と最小長の比である長さ比が最大で2となるように低減することが提案されている。このようにノズルチャネルの長さ変化を低減させることによって、その周囲にわたって見た場合に、燃焼室内のクラック形成を少なくとも大幅に減少させることが可能となる。
【0018】
一般的に燃料軸の方向に延在するノズルチャネルは、通常、90度とは異なる角度で燃焼室に開口している。つまり、燃料軸は、燃焼室表面と90度とは異なる角度を成す。この角度は、通常、90度よりも小さく、0度よりも大きい。燃料軸が燃焼室表面に垂直である場合、燃焼室からの座面の距離はノズルチャネルの周囲にわたって一定であるため、上記問題は自明には発生しない。しかしながら、一般に、大型ディーゼルエンジンのシリンダカバーでは、スペース上の理由から、一つ又は複数のノズルチャネルを燃焼室表面に垂直に開口するように配置することは不可能である。
【0019】
理想的な例では、最大長と最小長の比率は1に等しく、つまり、最大長と最小長は同じであるため、ノズルチャネルはその全周にわたって見た場合に一定の長さとなる。しかしながら、多くの用途では、この理想的な例は実用的な理由から実現不可能である。ただし、特に、長さ比が最大で1.5、好ましくは、1.4未満である場合に、クラック形成を、完全ではないとしても、少なくとも非常に良好に低減することができることが示されている。
【0020】
特に好適な実施形態では、長さ比を低減させて、ノズルチャネルの一部を画定するビーズ形状の隆起部を燃焼室表面に設ける。これにより、ノズルチャネルは、その隆起部がなければ他の領域よりも短くなる領域で、その周囲に沿って延長することができる。この実施形態では、ノズルチャネルは、隆起部なしで最小の長さとなる領域で延長される。
【0021】
この領域は、通常、座面の燃焼室からの距離が最小となる領域であるため、隆起部は、燃焼室軸に面する側でノズルチャネルを画定することが好ましい。
【0022】
隆起部は、長さ比を所定値に低減するように設計されていることが好ましい。すでに述べたように、長さ比の最小値は1に等しい。ただし、多くの用途では、実際には長さ比を1より大きい値、例えば、1.4に調整すれば十分である。長さ比のそれぞれの所望値は、隆起部の幾何学的寸法によって求められる。
【0023】
隆起部は、主に、隆起部のないノズルチャネルの最大長と、隆起部のないノズルチャネルの最小長との差を低減又は補償することを目的としているため、隆起部が、ノズルチャネルの周方向から見た場合に、最大でもノズルチャネルの周囲の長さの半分にわたって延在する場合に有利である。
【0024】
長さ比を可能な限り低減するために、ノズルチャネルの周方向から見たときに隆起部の高さが変化すると有利である。隆起部の高さとは、燃焼室表面に垂直な隆起部の延長を指す。
【0025】
さらに、隆起部が最大幅を有し、それが少なくともノズルチャネルの半径の半分と同じ大きさ、好ましくは、少なくともノズルチャネルの半径と同じ大きさであることが好ましい。隆起部の幅とは、燃焼室表面の隆起部がノズルチャネルからどれだけ離れて延在しているかを示す寸法である。
【0026】
長さ比を低減するための別の好適な実施形態は、ノズルチャネルが開口する燃焼室表面に凹部を設けることである。
【0027】
これにより、ノズルチャネルを、凹部がないと他の領域よりもノズルチャネルが長くなる領域で、その周囲に沿って短くすることができる。この実施形態では、ノズルチャネルは、凹部なしで最大の長さを有する領域で短縮される。
【0028】
凹部は、長さ比を所定値に低減するように設計されていることが好ましい。すでに述べたように、長さ比の最小値は1に等しい。ただし、多くの用途では、実際には長さ比を1より大きい値、例えば、1.5に調整すれば十分である。長さ比のそれぞれの所望値は、凹部の幾何学的寸法によって求められる。
【0029】
凹部は、主に、凹部のないノズルチャネルの最大長と、凹部のないノズルチャネルの最小長との差を低減又は補償することを目的としているため、凹部が、ノズルチャネルの周方向から見た場合に、少なくともノズルチャネルの周囲の長さの半分にわたって延在する場合に有利である。
【0030】
また、凹部は、ノズルチャネルの周方向から見たときに、ノズルチャネルの全周にわたって延在していてもよい。この凹部の深さは、ノズルチャネルの周方向から見たときに、ノズルチャネルの最大長が最大でもノズルチャネルの最小長の2倍になるように変化する。ノズルチャネルの全周にわたって凹部を設けるということには、ノズルチャネルの境界において鋭い縁部や非常に薄い領域を回避できるという利点がある。
【0031】
凹部は、ノズルチャネルの周囲の少なくとも一部に沿って延在するので、半径を有する。この半径は、ノズルチャネルの半径の少なくとも2倍であることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明によれば、大型ディーゼルエンジンのシリンダのシリンダカバーを修理する方法が提案され、シリンダカバーは、燃料噴射ノズルを収容する少なくとも1つの燃料ボアと、燃焼室軸を有する燃焼室を画定する燃焼室表面とを有する。燃料ボアは燃料軸の方向に延在し、燃焼室表面に開口し、燃料噴射ノズル用の座面が燃料ボアに設けられ、この座面は、燃料軸と一致する対称軸を有し、ノズルチャネルによって燃焼室表面に接続されている。この方法は、特に、ノズルチャネルが最大で2に等しい長さ比を有するように、シリンダカバーの燃焼室表面が機械加工されることを特徴とし、長さ比は、ノズルチャネルの最大長とノズルチャネルの最小長との比である。
【0033】
本発明に係る方法は、燃料軸が燃焼室表面に対して垂直ではなく、燃焼室表面上に90度とは異なる角度で配置され、ノズルチャネルが90度とは異なる角度、好ましくは、90度より小さい角度で燃焼室表面に開口するようなシリンダカバーにも特に適している。
【0034】
燃料ボアの座面と燃焼室を接続するノズルチャネルの長さが変化することが、ノズルチャネルの周囲にわたって見た場合、燃焼室壁におけるクラック形成の実質的な原因となるという本発明にとって極めて重要な認識は、大型ディーゼルエンジンのシリンダカバーの修理にも有利に利用できる。このような修理では、燃焼室表面は、修理されたシリンダカバーが本発明に係るシリンダカバーを具現化するように機械加工される。
【0035】
上記長さ比は、ビーズ形状の隆起部を燃焼室表面に適用することによって、又は、燃焼室表面に凹部を設けることによって変化する。
【0036】
さらに、本発明によれば、大型ディーゼルエンジン、特に、少なくとも1つのシリンダを有する長手方向に掃気される2ストローク大型ディーゼルエンジンが提案され、シリンダは、本発明に従って設計された、又は、本発明に係る方法で修理されたシリンダカバーを有する。
【0037】
本発明のさらなる有利な手段及び実施形態は従属請求項に記載されている。
【0038】
以下において、本発明について、実施形態に基づき、図面を参照して、装置及びプロセス工学の両方に関してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】大型ディーゼルエンジンのシリンダの燃焼室からシリンダカバーまでの上から見た概略図であり、本発明に係るシリンダカバーの第1の実施形態を左側に、従来技術のシリンダカバーを右側に示す図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図2の詳細拡大図である。
図4】本発明に係るシリンダカバーの第2の実施形態をシリンダ軸に沿って示す断面図である。
図5図4の詳細拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
「大型ディーゼルエンジン」という用語は、電気エネルギーを生成する大型発電機を駆動する船舶用主駆動装置として、又は、定常運転でも使用されるようなエンジンを指す。通常、大型ディーゼルエンジンのシリンダはそれぞれ、少なくとも約200mmの内径(ボア)を有する。「長手方向に掃気される」という表現は、掃気や給気が下端部の領域でシリンダに導入されることを意味する。
【0041】
実施形態に基づく本発明の以下の説明では、例示的な意味合いで、二元燃料エンジン、すなわち、二つの異なる燃料で運転可能なエンジンとして設計された実用に特に重要な大型エンジンの場合について言及する。特に、大型ディーゼルエンジンの本実施形態は、シリンダの燃焼室には液体燃料しか噴射されない液体モードで運転可能である。通常、液体燃料、例えば、重油やディーゼル油は、適した時間に燃焼室に直接噴射され、自己着火のディーゼル原理に従ってそこで発火する。大型ディーゼルエンジンは、例えば、天然ガスなど、燃料となるガスが、予混合された混合気の形で燃焼室内で着火する気体モードでも運転可能である。気体モードでは、大型ディーゼルエンジンの運転は、特に、低圧法によって行われる。つまり、ガスは気体状態でシリンダに導入され、ガスの噴射圧力は最大50バール、好ましくは、最大20バールである。空気とガスの混合物は、オットーの原理に従って燃焼室内で火花点火される。この火花点火は、通常、適した瞬間に少量の自己着火性液体燃料(例えば、ディーゼル油や重油)を燃焼室や予備室に導入することによって行われ、その後、その燃料が自己着火して、燃焼室内の混合気の火花点火を引き起こす。
【0042】
ここで説明する実施形態では、大型エンジンは、長手方向に掃気される二元燃料2ストローク大型ディーゼルエンジンとして設計されている。
【0043】
本発明は、このタイプの大型ディーゼルエンジンやその用途に限定されず、一般に大型ディーゼルエンジンに言及することが理解される。すでに述べたように、「大型ディーゼルエンジン」という用語には、ディーゼル運転に加えて、オットー運転などの別の運転でも運転可能なエンジンも含まれる。もちろん、大型ディーゼルエンジンが、重油やディーゼル油などの単一の液体燃料の燃焼用だけに設計されていてもよい。大型エンジンは、2つ以上の燃料の燃焼用に設計された多種燃料大型エンジンとして設計することもできる。
【0044】
大型ディーゼルエンジンには、少なくとも1つの、通常は複数のシリンダを有し、それ自体既知の方法で、ピストンが上死点と下死点との間でシリンダ軸に沿って前後移動可能に各シリンダ内に配置されている。ピストンの上側は、シリンダカバー1と共に、燃料が導入されて燃焼が行われる燃焼室2を画定している。この燃焼室は、通常、シリンダカバー1がシリンダに取り付けられたとき、シリンダ軸と一致する燃焼室軸A(図1)を有している。それ自体既知の方法で、ピストンがピストンロッドを介してクロスヘッドに接続され、そのクロスヘッドがプッシュロッドを介してクランクシャフトに接続されて、ピストンの運動がピストンロッド、クロスヘッド、プッシュロッドを介してクランクシャフトに伝達され、それを回転させるようになっている。
【0045】
図1は、大型ディーゼルエンジンのシリンダの燃焼室2、2’からシリンダカバー1、1’までの上から見た概略図を示す。よりよく理解するために、図1は2つの部分に分けられており、本発明に係るシリンダカバー1の第1の実施形態を左側に、従来から知られているシリンダカバー1’を右側に示す。従来から知られている設計ではダッシュや逆コンマが付けられた符号を使用し、本発明に係る実施形態では逆コンマが付いていない符号を使用する。
【0046】
図2は、図1の実施形態の燃焼室軸Aに沿った断面図であり、図1と同様に、本発明に係るシリンダカバー1の第1の実施形態を左側に、従来から知られている設計を右側に示す。
【0047】
図3は、異なる寸法の定義を示すために、図2の詳細を拡大して示している。図3では、本発明に係るシリンダカバー1の第1の実施形態のみが示されている。
【0048】
シリンダカバー1、1’は、出口弁(図示せず)を収容する中央ボア3、3’と、燃料、例えば、重油を燃焼室2、2’に導入可能な燃料噴射ノズル(図示せず)を収容する少なくとも1つの燃料ボア4、4’とを備えている。多くの実施形態では、各シリンダカバー1、1’には、複数の燃料噴射ノズル、例えば、2つ又は3つの燃料噴射ノズルが設けられる。そして、各燃料噴射ノズルには別個の燃料ボア4、4’が設けられることがわかる。理解には十分であるため、以下では、1つの燃料ボア4についてしか言及されていないが、本発明に係る実施形態では、それぞれが燃料噴射ノズルを収容する複数の燃料ボア4を備えることが可能であることは当然である。
【0049】
各シリンダにつき、シリンダカバーに複数の出口弁を収容する複数のボアを設ける実施形態も可能である。例えば、各シリンダに3つ又は4つの出口弁を設けることも可能である。そして、これらの出口弁のそれぞれについて、ボアがシリンダカバー1に設けられる、又は、より大きなボアがシリンダカバーに設けられ、いくつかの出口弁が含まれる構造ユニットを収容する。
【0050】
シリンダカバー1、1’は、燃焼室2、2’を画定する燃焼室表面5、5’をさらに備えている。ここで説明する実施形態では、燃焼室表面5は、円すい台の形状に設計されている。他の実施形態では、燃焼室表面5又は5’は、球面形状や、球面と円すい台の混合形状を有していてもよい。出口弁を収容する中央ボア3、3’は、燃焼室軸Aの方向に延在している。ここで、燃焼室表面5、5’は、円すい台状の表面であるため、円すい台軸を有している。一般に、燃焼室表面は対称軸を有している。この円すい台軸又は対称軸は、燃焼室軸Aと一致し、ひいては、シリンダカバー1がシリンダに取り付けられている場合、シリンダ軸と一致する。燃料噴射ノズルを収容する燃料ボア4、4’は、燃料軸B、B’の方向に延在し、燃焼室表面5、5’に開口し、燃料軸B、B’は、通常、90度とは異なる角度、好ましくは、90度未満の角度で燃焼室表面5、5’に開口する。燃料ボア4、4’には、燃料ボア4、4’に挿入されたときに燃料噴射ノズルが支持される燃料噴射ノズル用の座面41、41’が設けられている。この座面41、41’は、燃料軸B、B’に対して垂直に配置されている。座面41、41’は、ノズルチャネル42、42’を介して燃焼室表面5、5’に接続されている。ノズルチャネル42、42’は、燃料噴射ノズルが燃焼室2、2’内に突出するように、すなわち、燃料噴射ノズルがノズルチャネル42、42’の端部を越えて延在し、それにより、燃焼室2、2’に燃料を導入する燃料噴射ノズルに設けられたノズル穴が燃焼室2、2’に、すなわち、ノズルチャネル42、42’の外側に配置されるような方法や寸法で設計される。
【0051】
座面41、41’は、通常、図面ではヒントとしてしか示されていない円すい台形状に設計されている。従って、座面41、41’は対称軸を有している。これは、燃料軸B、B’と一致している。
【0052】
通常、燃料軸B、B’と燃焼室軸A、A’は、ゼロとは異なり、シリンダカバー1の設計やシリンダカバー1の空間条件によっては最大45度となることもある角度を形成している。特に、燃料軸B、B’は、燃焼室表面5、5’と、90度とは異なる、好ましくは、90度より小さく、0度より大きい角度を形成する。
【0053】
液体モードの噴射システム、気体モードのガス供給システム、ガス交換システム、排気システム、掃気や給気を提供するターボチャージャシステム、大型ディーゼルエンジンのチェック・制御システムなど、大型ディーゼルエンジンの構造と個々のコンポーネントについては、2ストロークエンジンとしての設計や4ストロークエンジンとしての設計のいずれにおいても当業者に周知であるため、ここではこれ以上の説明は行わない。現代の大型ディーゼルエンジンでは、チェック・制御システムは電子システムであり、通常、すべてのエンジンやシリンダ機能、特に、噴射(噴射の開始と終了)と出口弁の作動を調整、制御又は規制することができる。
【0054】
本発明によれば、ノズルチャネル42は、最大で2に等しい長さ比を有し、この長さ比は、ノズルチャネル42の最大長L1とノズルチャネルの最小長L2との商として定義される。これらの長さについては、図3に基づいて以下に詳しく説明する。
【0055】
燃料ボア4と燃焼室表面5の相対的配置のために、対称軸が燃料軸Bと同一である座面41が燃焼室表面5に平行ではない場合が一般的である。従って、燃料ボア4の一部であるノズルチャネル42は、燃焼室表面5に直角に開口するのではなく、90度とは異なる、好ましくは、0度と90度の間の角度で開口する。その結果、ノズルチャネル42の長さ、すなわち、燃料軸Bの方向におけるその延長は、ノズルチャネル42の周囲に沿って移動する場合に変化する。これは、明らかに、ノズルチャネル42が燃焼室表面5に垂直に開口していない、又は、座面41が燃焼室表面5に平行ではないことに起因する。これは、ノズルチャネル42の周囲に沿って移動する場合、その長さが、座面41の燃焼室表面5からの距離が最大である最大長L1と、座面41の燃焼室表面5からの距離が最小である最小長L2との間で、燃焼室軸Bの方向に変化することを意味する。
【0056】
本発明にとって極めて重要なことは、ノズルチャネル42の長さが変化することが、ノズルチャネル42の周囲にわたって見た場合、燃焼室壁2、とりわけ、燃焼室表面5におけるクラック形成の実質的な原因となるということを認識することである。そこで、本発明により、このようなノズルチャネル42の長さ変化を、ノズルチャネル42の最大長L1と最小長L2の比である長さ比が最大で2となるように低減することが提案されている。このようにノズルチャネル42の長さ変化を低減させることによって、その周囲にわたって見た場合に、燃焼室2、とりわけ、燃焼室表面5におけるクラック形成を少なくとも大幅に減少させることが可能となる。
【0057】
さらに、ノズルチャネル42は、燃料噴射ノズルが燃料ボア4に挿入されたときに燃焼室表面5を越えて燃焼室2内に突出するように設計又は寸法設定され、燃料を燃焼室2に導入する燃料噴射ノズルの先端の領域に設けられたノズル穴が燃焼室2内に配置されるようになっている。
【0058】
理想的には、最大長L1と最小長L2の比は1に等しい必要がある。つまり、最大長と最小長L1、L2は同じであるため、ノズルチャネル42はその全周にわたって見た場合に一定の長さとなる。しかしながら、多くの用途では、この理想的な例は実用的な理由から実現不可能である。ただし、実際には、特に、長さ比が最大で1.5、好ましくは、1.4未満である場合に、クラック形成を、完全ではないとしても、少なくとも非常に良好に低減することができることが示されている。
【0059】
L1とL2の長さ比を最大で2の値に低減するために、第1の実施形態では、ノズルチャネル42の一部を画定する、すなわち、ノズルチャネル42の壁の一部を形成するビーズ形状の隆起部6が燃焼室表面5に設けられている。
【0060】
具体的には、図1の左側に見られるように、隆起部6は、ノズルチャネル42の開口全体の周りに延在するのではなく、燃焼室軸Aに面するノズルチャネル42の側にのみ延在する。この隆起部6は、最大でノズルチャネル42の周囲の長さの約半分にわたって延在することが好ましい。
【0061】
すでに説明したように、隆起部6の主な機能は、ノズルチャネル42の長さの変化を低減することである。このため、隆起部6の高さHは、ノズルチャネル42の周方向から見たときに変化することが好ましい。この高さHは、燃焼室の表面5に垂直な隆起部6の延長を指す。図3では、高さHは、その高さが最大になるところに描かれている。高さHは、ノズルチャネル42が隆起部6なしでその長さが最小となるところにその最大を有することが好ましい。
【0062】
ノズルチャネル42の長さ及び隆起部6の高さは、燃料噴射ノズルが挿入された場合に、燃料噴射ノズルのノズル穴を出ていく燃料が隆起部6に対してではなくそれを越えて噴射されるように寸法設定が行われる。
【0063】
隆起部6は、さらに、円筒形のノズルチャネル42の半径Rの少なくとも半分の大きさである最大幅Bを有している。この幅Bとは、燃焼室表面5の隆起部6がノズルチャネル42の開口からどれだけ離れて延在しているかを示す寸法である。最大幅Bは、少なくともノズルチャネル42の半径Rと同じ大きさであることが好ましい。
【0064】
隆起部6を作製する方法としてはいくつかの方法が考えられる。例えば、隆起部は、鍛造又は鋳造プロセスにおけるシリンダカバー1の製造中に、シリンダカバー1と一体的に作製しておくことができる。一方、シリンダカバーが製造された後に、例えば、肉盛溶接のような溶接プロセスによって、別の加工プロセスで隆起部6を作製することも可能である。この最後に述べた手段は、既に使用されているシリンダカバー1の修理やメンテナンスを行う場合に特に有利である。
【0065】
図4及び図5は、本発明に係るシリンダカバーの第2の実施形態を示す。図4は、燃焼室軸Aに沿って第2の実施形態を示す断面図である。図5は、図3と同様に図4の細部を示す拡大図である。
【0066】
第2実施形態では、ノズルチャネル42の最大長L1と最小長L2との長さ比を低減するために、ノズルチャネル42が開口する凹部7が燃焼室表面5に設けられる。この凹部7は、リング断片の形状又はリングの形状に設計され、その軸が燃料軸Bである円筒形のノズルチャネル42と同軸であることが好ましい。凹部7の半径は、符号RAで示される。
【0067】
これにより、ノズルチャネル42が凹部7なしでは他の領域よりも長くなるであろう領域において、ノズルチャネル42はその周囲に沿って短くすることができる。この実施形態では、ノズルチャネル42は、少なくとも凹部7なしで最大の長さを有する領域で短縮される。
【0068】
具体的には、図5から分かるように、第2の実施形態において、最大長L1が最小長L2と同じである、すなわち、L1=L2である実施形態の例がある。これは、ノズルチャネル42の長さは、その周囲にわたって見た場合、一定の値を有し、よって長さ比が1に等しくなることを意味している。
【0069】
凹部7は、L1とL2の長さ比を所定値まで低減するように設計されていることが好ましい。すでに述べたように、長さ比の最小値は1に等しい。ただし、多くの用途では、実際には長さ比を1より大きい値、例えば、1.5に調整すれば全く十分である。長さ比のそれぞれの所望値は、凹部の幾何学的寸法によって求められる。
【0070】
凹部7は、主に、凹部7のないノズルチャネル42の最大長と、凹部7のないノズルチャネルの最小長との差を低減又は補償することを目的としているため、凹部7が、ノズルチャネル42の周方向から見た場合に、少なくともノズルチャネル42の周囲の長さの半分にわたって延在する場合に有利である。また、凹部7は、ノズルチャネル42の周方向から見たときに、ノズルチャネル42の全周にわたって延在していてもよい。燃焼室表面5に垂直な凹部7の深さは、最小長L2と最大長L1の差を所望値まで低減させるために、ノズルチャネル7の周方向に変化する。
【0071】
凹部7の半径RAは、ノズルチャネル42の半径Rの少なくとも2倍であることが好ましい。
【0072】
凹部7を作製する方法としてはいくつかの方法が考えられる。例えば、凹部7は、鍛造又は鋳造プロセスにおけるシリンダカバー1の製造中に、シリンダカバー1と一体的に作製しておくことができる。一方、シリンダカバー1が製造された後に、例えば、フライス加工のような機械加工プロセスによって、別の加工プロセスで凹部7を作製することも可能である。この最後に述べた手段は、既に使用されているシリンダカバー1の修理やメンテナンスを行う場合に特に有利である。
【0073】
燃料ボア4の座面41と燃焼室2を接続するノズルチャネル42の長さが変化することが、ノズルチャネル42の周囲にわたって見た場合、燃焼室壁2におけるクラック形成の実質的な原因となるという本発明にとって極めて重要な認識は、大型ディーゼルエンジンのシリンダカバー1の修理にも有利に利用できる。
【0074】
本発明に係る大型ディーゼルエンジンのシリンダのシリンダカバー1を修理する方法は、特に、シリンダカバー1の燃焼室表面5に対して、ノズルチャネル42の最大長L1とノズルチャネル42の最小長L2との比である長さ比が最大で2に等しくなるように機械加工が施されることを特徴とする。
【0075】
このため、長さ比は、例えば溶接プロセスによって燃焼室表面5にビーズ形状の隆起部6を適用することによって、又は、例えばフライス加工によって燃焼室表面5に凹部を設けることによって、変化することが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5