IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図1
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図2
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図3
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図4
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図5
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図6
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図7
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図8
  • 特許-転てつ機のレール直結装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】転てつ機のレール直結装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 7/00 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
E01B7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021174302
(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公開番号】P2023064184
(43)【公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-07-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 板山卓也、坂本龍哉、大町芳史、大島和彦が、第34回鉄道テクニカルフォーラム論文集にて、板山卓也、坂本龍哉、大町芳史が発明したYS形電気転てつ機用レール直結装置に付いて公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】大町 芳史
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-140108(JP,A)
【文献】実開昭62-094101(JP,U)
【文献】特開2001-151113(JP,A)
【文献】実開昭58-165001(JP,U)
【文献】特開2007-314941(JP,A)
【文献】特開2015-214815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
E01B 27/00-37/00
B61L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道の分岐点に設けられたトングレールを転換するためのリンク機構と、
枕木上に設置され枕木を上下に貫通するように設けられた複数の固定用ボルトにて枕木に固定され、前記リンク機構のリンクアームの回転軸を支承するとともにトングレールの転換後位置を保持する手段を備えた転換鎖錠器と、
基本レールの外側に設置され動作かんを介して前記リンク機構を動作させる駆動手段を有する転てつ機本体部と、
を備えた電気転てつ機の前記転換鎖錠器を、前記基本レールおよび枕木に固定するためのレール直結装置であって、
前記複数の固定用ボルトが挿通可能な複数のボルト挿通穴を有し、前記転換鎖錠器の下面と枕木の上面との間に介挿される台座プレートと、
前記台座プレートの一部に一端が結合され、他端側に前記基本レールのフランジ部を両側より把持するレール把持手段を有する一対の連結ロッドと、を備え、
枕木を上下に貫通する前記複数の固定用ボルトは前記台座プレートおよび前記転換鎖錠器を貫通し突出した上端部にナットが螺合されることによって、前記転換鎖錠器が枕木に固定されるように構成されていることを特徴とする転てつ機のレール直結装置。
【請求項2】
前記台座プレートの縁部には前記転換鎖錠器の筐体よりも外側へ突出し、ボルト挿通穴をそれぞれ有する突出部が複数個形成され、
前記突出部に対応する部位にそれぞれボルト挿通穴が設けられ、前記台座プレートとの間に前記転換鎖錠器の筐体の一部を挟持可能な一対の押えプレートを備えていることを特徴とする請求項1に記載の転てつ機のレール直結装置。
【請求項3】
前記台座プレートに設けられている前記複数のボルト挿通穴は、レールと平行な方向に長い長穴として形成されており、
前記台座プレートには下方へ延びる一対の垂直壁部が設けられ、
前記一対の垂直壁部にはそれぞれボルト穴が形成され、
前記一対の連結ロッドの一端が、前記ボルト穴に螺合されるボルトによって結合されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の転てつ機のレール直結装置。
【請求項4】
前記レール把持手段は、
前記連結ロッドのロッド本体に所定の間隔をおいて装着され、対向する面の一部に前記基本レールのフランジ部の側面にそれぞれ当接する係止部を有する一対の締め金と、
前記ロッド本体の外端部に形成された雄ネジに螺合可能なナットと、を備え、
前記ナットを締め方向に回すことによって前記一対の締め金のうち一方の締め金を他方の締め金に接近させることで、前記一対の締め金により前記基本レールのフランジ部を両側より把持するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の転てつ機のレール直結装置。
【請求項5】
前記ロッド本体の他方の端部の前記ナットと前記一対の締め金の一方との間に嵌合されるスペーサ部材を備え、
前記スペーサ部材の前記一方の締め金に近い側の端部には先細となるテーパ面が形成され、
前記一対の締め金のうち前記基本レールの内側に位置する締め金は、前記係止部が爪部として形成され、
前記一対の締め金のうち前記基本レールの外側に位置する締め金は、前記係止部が段差部として形成されるとともに、前記スペーサ部材に近い側のロッド挿入口に逆テーパ面が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の転てつ機のレール直結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道に設けられている転てつ機のレール直結装置に関し、特にゲレンク(転換鎖錠器)を備えた転てつ機において、ゲレンクを連結ロッドによってレールに連結することで固定するレール直結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道の分岐点には、車両の進路を変えるための転てつ機を備えた分岐器が設置されている。転てつ機には、種々の形式のものがあるが、その一つに、モータの回転力を、リンクを介してトングレールに伝達してレールを移動させるYS形電気転てつ機がある。
YS形電気転てつ機においては、リンクアームの回転軸を支承するとともに引っ張りばねを内蔵したゲレンクを備え、ゲレンクは枕木の中央部に固定させることで、リンクのぐらつきを防止して安定した転換を行えるように構成されている。なお、従来のYS形電気転てつ機におけるゲレンクは、ボルトによって枕木上が固定されているものが一般的であった。ゲレンクを備えた転てつ機に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
また、転てつ機には、トングレールを移動させる動作かんと分岐器の転換完了位置を照査する鎖錠かんを備えたNS形電気転てつ機がある。
NS形電気転てつ機は、一対のトングレールの先端部間に横架された動作かんを転てつ機本体内のモータによって軸方向へ移動させることでトングレールを移動させる機構を有し、ロックピースと呼ばれる部品を鎖錠かんに設けられている凹部に係合させることで、分岐器の転換完了位置を照査すると共に鎖錠かんの移動を阻止するように構成されており、リンクおよびゲレンクを有していない。かかる構成のNS形電気転てつ機に関しては、連結ロッドによって転てつ機本体をレールに連結することで固定するレール直結装置に関する発明が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-131362号公報
【文献】特開2004-19240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲレンクを備えた従来のYS形電気転てつ機においては、ゲレンクを固定するボルトが挿通されている枕木のボルト穴の径が木製の枕木の腐食によって広がってボルトの締め付け力が弱くなり、トングレールの転換中にゲレンクが動揺して、トングレールによって押圧される回路制御器(オン/オフ・スイッチ)の突起の押し付けが甘くなり、転てつ機の開通方向を示す表示ランプが滅灯したり、トングレールの転換不良を招いたりする。また、枕木の腐食によるボルト穴の不良が激しい場合には枕木を交換する必要があるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、ゲレンクを連結ロッドによってレールに連結することで動揺を防止するレール直結装置について検討した。しかし、単に連結ロッドを設けただけでは枕木が腐食してボルト穴不良が生じた場合に充分に対応できない。また、ゲレンクをレールに連結する連結ロッドを簡単に取り付けられるようにするには、レールキャッチャと呼ばれる結合部品で連結ロッドの端部をレールのフランジに結合するのが望ましいが、転てつ機が設けられる主要な分岐点においては、レール側面に融雪器が取り付けられていることが多く、融雪器があるとレールキャッチャの取付けが難しい上、振動で保持力が低下してレールから外れ易くなるという課題があることが明らかになった。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、枕木が腐食したとしてもゲレンクが動揺するのを防止することができ、開通方向を示す表示ランプが滅灯したり、トングレールの転換不良を招いたりするのを防止することができる転てつ機のレール直結装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、レール側面に融雪器が設けられていたとしても取り付けることができるととともに、連結ロッドがレールから容易に外れることのない転てつ機のレール直結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明は、
鉄道軌道の分岐点に設けられたトングレールを転換するためのリンク機構と、
枕木上に設置され枕木を上下に貫通するように設けられた複数の固定用ボルトにて枕木に固定され、前記リンク機構のリンクアームの回転軸を支承するとともにトングレールの転換後位置を保持する手段を備えた転換鎖錠器と、
基本レールの外側に設置され動作かんを介して前記リンク機構を動作させる駆動手段を有する転てつ機本体部と、
を備えた電気転てつ機の前記転換鎖錠器を、前記基本レールおよび枕木に固定するためのレール直結装置において、
前記複数の固定用ボルトが挿通可能な複数のボルト挿通穴を有し、前記転換鎖錠器の下面と枕木の上面との間に介挿される台座プレートと、
前記台座プレートの一部に一端が結合され、他端に前記基本レールのフランジ部を両側より把持するレール把持手段を有する一対の連結ロッドと、を備え、
枕木を上下に貫通する前記複数の固定用ボルトは前記台座プレートおよび前記転換鎖錠器を貫通し突出した上端部にナットが螺合されることによって、前記転換鎖錠器が枕木に固定されるように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する転てつ機のレール直結装置によれば、転換鎖錠器(ゲレンク)の下面と枕木の上面との間に介挿される台座プレート(接続板)を備え, 転換鎖錠器と台座プレートとが一体になった状態で枕木を貫通する固定用ボルトによって枕木に固定されるため、枕木が腐食したとしても転換鎖錠器(ゲレンク)が動揺するのを防止することができ、開通方向を示す表示ランプが滅灯したり、トングレールの転換不良を招いたりするのを防止することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記台座プレートの縁部には前記転換鎖錠器の筐体よりも外側へ突出し、ボルト挿通穴をそれぞれ有する突出部が複数個形成され、
前記突出部に対応する部位にそれぞれボルト挿通穴が設けられ、前記台座プレートとの間に前記転換鎖錠器の筐体の一部を挟持可能な一対の押えプレートを備えているように構成する。
かかる構成によれば、押えプレートによって台座プレート(接続板)との間に転換鎖錠器の筐体の一部を挟持することができるため、枕木が腐食して枕木に設けられているボルト穴に不良が生じた場合にも、転換鎖錠器(ゲレンク)が動揺するのを防止することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記台座プレートに設けられている前記複数のボルト挿通穴は、レールと平行な方向に長い長穴として形成されており、
前記台座プレートには下方へ延びる一対の垂直壁部が設けられ、
前記一対の垂直壁部にはそれぞれボルト穴が形成され、
前記一対の連結ロッドの一端が、前記ボルト穴に螺合されるボルトによって結合されるように構成する。
【0012】
上記のような構成によれば、台座プレート(接続板)に下方へ延びる一対の垂直壁部が設けられているため、台座プレートの厚みが薄くても連結ロッドの一端をボルトによって台座プレートに結合することができるとともに、台座プレートのボルト挿通穴が長穴として形成されているため枕木に設けられているボルト穴の位置にバラツキがあってもそれを吸収して台座プレートを正確に枕木に固定することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記レール把持手段は、
前記連結ロッドのロッド本体に所定の間隔をおいて装着され、対向する面の一部に前記基本レールのフランジ部の側面にそれぞれ当接する係止部を有する一対の締め金と、
前記ロッド本体の外端部に形成された雄ネジに螺合可能なナットと、を備え、
前記ナットを締め方向に回すことによって前記一対の締め金のうち一方の締め金を他方の締め金に接近させることで、前記一対の締め金により前記基本レールのフランジ部を両側より把持するように構成する。
かかる構成によれば、レール把持手段(レールキャッチャ)によって連結ロッドの一端をレールに固定するため、レールに加工をして固定する必要がないので、容易に台座プレート(接続板)と転換鎖錠器(ゲレンク)を固定することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記ロッド本体の他方の端部の前記ナットと前記一対の締め金の一方との間に嵌合されるスペーサ部材を備え、
前記スペーサ部材の前記一方の締め金に近い側の端部には先細となるテーパ面が形成され、
前記一対の締め金のうち前記基本レールの内側に位置する締め金は、前記係止部が爪部として形成され、
前記一対の締め金のうち前記基本レールの外側に位置する締め金は、前記係止部が段差部として形成されるとともに、前記スペーサ部材に近い側のロッド挿入口に逆テーパ面が形成されているように構成する。
【0015】
上記のような構成によれば、基本レールの外側に位置する締め金は係止部が段差部として形成されているため、レールの側面に融雪器が取り付けられていたとしてもレール把持手段をレールに取り付けることができる。また、ナットと一方の締め金との間に嵌合されるスペーサ部材を備え、スペーサ部材にテーパ面が形成され、対応する一方の締め金のロッド挿入口に逆テーパ面が形成されているため、一対の締め金によって連結ロッドがレールから容易に外れないようにレールのフランジ部をしっかりと把持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る転てつ機のレール直結装置によれば、枕木が腐食したとしてもゲレンクが動揺するのを防止することができ、開通方向を示す表示ランプが滅灯したり、トングレールの転換不良を招いたりするのを回避することができる。また、レール側面に融雪器が設けられていたとしても取り付けることができるととともに、連結ロッドがレールから外れるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るレール直結装置が適用される転てつ機の構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る転てつ機のレール直結装置の一実施形態を示す平面図である。
図3】実施形態のレール直結装置を構成する接続板の具体例を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図4】実施形態のレール直結装置を構成する押えプレートの具体例を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図5】実施形態のレール直結装置を構成する腕金の具体例を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図6】実施形態のレール直結装置を構成する結合金具の具体例を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は従来の結合金具の正面図である。
図7】実施形態のレール直結装置を構成する結合ロッドの具体例を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図8】結合ロッドに設けられるレールキャッチャの具体例を示すもので、(A)は一般的なレールキャッチャの正面図、(B)は実施形態のレール直結装置におけるレールキャッチャの正面図である。
図9】実施形態のレール直結装置におけるレールキャッチャの詳細を示す要部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る転てつ機のレール直結装置の一実施形態について詳細に説明するが、先ず実施形態のレール直結装置が適用されるYS形電気転てつ機の基本的な構成について簡単に説明する。図1はYS形電気転てつ機10を鉄道軌道の分岐点に設置した状態を示す平面図である。
【0019】
YS形電気転てつ機10は、図1に示すように、鉄道線路の側方にて枕木S1,S2に跨って設置されボルトにて固定された転てつ機本体11と、左右の基本レールR1とR2との間にて同じく枕木S2上に設置されボルトにて固定されたゲレンク(転換鎖錠器)12と、転てつ機本体11内のモータの力をゲレンク12のリンク機構(リンクアーム12a)に伝達する動作かん13と、ゲレンク12により回転自在に軸支されたL形リンク12bの両端部とトングレールT1,T2の先端部との間に設けられた一対の作動ロッド14A,14Bと、一端が作動ロッド14A,14Bの先端部にピン結合され他端部がトングレールT1,T2の先端部の側面に接合された一対の肘金15A,15Bを備えている。
【0020】
また、動作かん13の先端にはリンクアーム12aとピン結合するための結合金具16が設けられており、上記L形リンク12bは動作かん13の軸方向への移動によってリンクアーム12aが回転すると追従して回転するように構成されている。また、リンクアーム12aは動作かん13によって左右方向に90度の範囲で往復回動可能に軸支されており、リンクアーム12aが回転するとL形リンク12bが回転し、作動ロッド14A,14Bが旋回してトングレールT1,T2の先端部を左方向または右方向へ移動させるように構成されている。
【0021】
そして、トングレールT1,T2の先端部が移動すると、基本レールR1,R2の外側面に設けられている一対の回路制御器(オン/オフ・スイッチ)17A,17Bのいずれかの突起が押圧されてオン状態になり、図示しない一対の転てつ機開通方向表示ランプの一方が点灯されるようになっている。レールのウェブ(腹部)には回路制御器17A,17Bの突起が貫通する孔が形成されており、突起はこの孔を外側から貫通しレールの内側へ突出している。なお、トングレールT1,T2の先端部間には、レール間隔を一定に保持する機能を有する転てつ棒と呼ばれる連結かん18が架設されている。また、図示しないが、基本レールR1,R2間にもゲージタイが架設される。
【0022】
さらに、図示しないが、上記転てつ機本体11内には、モータとモータの回転力を動作かん13の直線移動力に変換するラック・ピニオン機構が設けられている。
一方、上記ゲレンク12内には、上記リンクアーム12aの後端部に一端が係止された引っ張りバネが内蔵されており、この引っ張りバネはリンクアーム12aの回動中央位置にて最大に引き延ばされ、左右いずかに偏移するとバネの復元力がL形リンク12bを介して作動ロッド14A,14Bに伝達されることによって、トングレールT1,T2の先端部を基本レールR1,R2に押し付けるように作用することで、転換後にモータが停止されても状態を維持できるように構成されている。
【0023】
次に、図2図5を用いてレール直結装置20一実施形態について説明する。
図2には、本実施形態のレール直結装置20を構成する部品と電気転てつ機10を構成するゲレンク12との関係が示されている。また、図3図9には、レール直結装置20を構成する各部品の具体例が示されている。
図2に示すように、本実施形態のレール直結装置20は、ゲレンク12を搭載した状態で枕木上に設置されボルトにて固定される台座として機能する接続板21と、接続板21の両側部の上面側に配設されゲレンク12の両側部を挟み込んだ状態で結合される一対の押えプレート22A,22Bと、接続板21と左右の基本レールとの間に架設される一対の連結ロッド23A,23Bと、を備えている。
【0024】
また、本実施形態においては、後に詳しく説明するが、ゲレンク12の下側に接続板21を挿入したことによってゲレンク12の設置位置が高くなったのに応じて、高さの違いを吸収するように、肘金15A,15Bと結合金具16が工夫されている。
接続板21は、軽量化のため中央に開口部21aが形成されているとともに、両側部にはゲレンク12を枕木に固定するための爪ボルトが挿通されるボルト挿通穴21bが形成されている。ボルト挿通穴21bは長穴として形成されており、枕木側のボルト挿通穴の形成位置等にバラツキがあっても吸収できるようになっている。また、枕木に設けられていたボルト挿通穴が不良になったことに応じて既設のゲレンクを補修する際に、枕木の腐食が進んでいない場合にはもともと挿通されていた爪ボルトをそのまま利用し、枕木の腐食が進んでいる場合には新しい爪ボルトに交換して接続板21を固定する。
【0025】
さらに、接続板21の4隅にはゲレンク12の外側方向へ突出する突出部21cが設けられているとともに、接続板21のリンクアーム12aの突出側の面には左右に一対の垂直壁部21dが設けられ、前記連結ロッド23A,23Bの端部がそれぞれボルト24によって結合されている。
図3には接続板21の詳細が、また図4には押えプレート22A,22Bの詳細が示されている。図3(A)に示すように、接続板21の4隅の突出部21cにも、押えプレート22A,22Bを結合するボルトを挿通するためのボルト挿通穴が形成されている。また、図3(B)に示すように、接続板21はプレート状をなしており、接続板21の前端側に設けられた垂直壁部21dは、枕木の上面よりも下方へ延出するように形成されている。
【0026】
押えプレート22A(22B)は、図4(A)に示すように、接続板21の側部に対応した形状を有するよう形成されているとともに、接続板21と同様に、ゲレンク12を枕木に固定するためのボルトが挿通される長穴からなる一対のボルト挿通穴22aが中央に形成され、両端部には接続板21と結合するためのボルトが挿通される一対のボルト挿通穴22bが形成されている。また、押えプレート22A(22B)の外側縁には、ゲレンク12の側面に接触して位置決めを行うための垂下壁部22cが形成され、下面中央には滑り止め用のナーリング加工が施されている。接続板21の下面にも滑り止め用のナーリング加工部を設けるようにしても良い。
【0027】
枕木の上に接続板21を設置しその接続板21の上面にゲレンク12を載置した後、押えプレート22A,22Bをゲレンク12の両側部の上に重ねるとともに、ボルト挿通穴22bを接続板21の4隅のボルト挿通穴21bに合わせてから、ボルトを挿通してナットで締め付けることによってゲレンク12が接続板21上に固定されるように構成されている。また、枕木にもともと挿通されている固定用の爪ボルトは接続板21のボルト挿通穴21bおよび押えプレート22A,22Bのボルト挿通穴22aに挿通させて、爪ボルトにナットを螺合することによって締付け固定する。
【0028】
図5には、作動ロッド14A,14Bの先端とトングレールとの間に接続される肘金15A(15B)の詳細が示されている。このうち、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図5(B)に示すように、本実施形態において使用する肘金15A(15B)は、作動ロッド14A,14Bと結合するピンが挿通されるピン穴を有する段差部15a,15bが端部に形成されている。また、肘金15A(15B)の本体部には、図5(C)に示すように、当該肘金15A(15B)をトングレールに結合するためのボルトが挿通されるボルト挿通穴15c,15dが形成されている。
【0029】
上記段差部15a(15b)の高さは、接続板21の厚さに対応した寸法に設定される。具体的には、転てつ機の設置対象が50Nまたは40Nのレールの場合は、もともと装着されていた肘金をひっくり返した上で左右の肘金を入れ替えて装着し直し、設置対象が40NYのレールの場合は、元の肘金よりも段差の大きな肘金に交換して装着する。これによって、ゲレンク12の下側に接続板21が挿入されて高さが高くなったとしても、その高さのずれを吸収して作動ロッド14A,14Bと肘金15A,15Bを連結し、L形リンク12bから作動ロッド14A,14Bに作用する力を肘金15A,15Bを介してトングレールに伝達することができる。
【0030】
図6には、動作かん13の先端に装着される結合金具(オフセットジョー)16の詳細が示されている。このうち、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は従来の結合金具の側面図である。図6(A)に示すように、本実施形態における結合金具16の先端(右端)には、リンクアーム12aと連結するピンが挿通されるピン穴16aが形成され、後端に動作かん13の先端部がボルトによって結合される。
【0031】
図6(B)に示すように、本実施形態において使用する結合金具16は、リンクアーム12aが嵌合される隙間Gの中心線が動作かん13の中心線よりも高くなるようにオフセットOSが設けられている。オフセットの量は、接続板21の厚さと同一寸法に設定される。従来の結合金具16’は、図6(C)に示すように、オフセットがなく隙間Gの中心線が動作かん13の中心線と一致した形状であったが、本実施形態における結合金具16はオフセットが設けられていることによって、ゲレンク12の下側に接続板21が挿入されて高さが高くなったとしても、そのずれを吸収することができ、不要な曲げ応力を生じることなく動作かん13に作用する力を結合金具16を介してリンクアーム12aに伝達することができる。
【0032】
図7には、ゲレンク12と基本レールとの間に架設される連結ロッド23A(23B)の詳細が示されている。このうち、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図7に示すように、本実施形態のレール直結装置20を構成する連結ロッド23A,23Bは、ロッド本体31とロッド本体31の一方の端部にそれぞれ設けられゲレンク12の前端の一対の垂直壁部21dにそれぞれボルト24にて結合される平板状の結合部32と、ロッド本体31の他方の端部にそれぞれ設けられ基本レールR1(R2)のフランジ部を下方より挟持するレールキャッチャ33とを備える。
上記のような構成を有する一対の連結ロッド23A(23B)によってゲレンク12を左右の基本レールR1(R2)に連結することによって、固定用のボルトが多少緩んだとしてもゲレンク12を安定させ、転換時に回路制御器17A,17Bの突起をしっかり押圧して、開通方向表示ランプを点灯させることができる。
【0033】
図8には、連結ロッド23A,23Bに設けられているレールキャッチャ33の詳細が示されている。このうち、(A)は一般的なレールキャッチャ、(B)は本実施形態において使用されるレールキャッチャである。
図8(A)に示すように、一般的なレールキャッチャにおいては、レールR1(R2)のフランジ部に左右から係合する一対の締め金34A,34Bにそれぞれ爪部34a,34bが設けられている。
【0034】
しかし、近年、重要な分岐点においては、図8(B)に示すように、レール側面にレールを加熱する融雪器40が設けられることが多く、融雪器が設けられていると、図8(A)のように融雪器側の締め金34Aに爪部34aがあると融雪器と干渉してしまい、レールキャッチャ33を取り付けることができないという課題がある。また、図8(A)に示すレールキャッチャにおいては、締め金34Aの左側のロッド本体31の長さが短いため、融雪器が設けられることによって、締め金34Aを締め付けて固定するボルト35を回す作業が困難になるという課題があることも明らかになった。
【0035】
そこで、本実施形態においては、図8(B)に示すように、融雪器40側の締め金34Aから爪部34aをなくし単に段差を形成するとともに、ロッド本体31の融雪器側の端部を延長して円筒状のスペーサ36を介挿して、スペーサ36を介してボルト35によって締め金34Aを締め付けるようにした。
しかし、爪部の代わりに段差を設けると、レールからの振動によってレールキャッチャ33が外れることがあることを振動試験によって確認した。
そこで、本実施形態では、さらに、図9に示すように、スペーサ36の先端に先細となるテーパ面を形成するとともに、締め金34Aのロッド挿入口に上記テーパ面と同一傾斜角の逆テーパ面を形成した。
【0036】
上記のように、先端にテーパ面を形成したスペーサ36と、ロッド挿入口に逆テーパ面を形成した締め金34Aとを有するレールキャッチャ33を使用して、ボルト35を回すことによって締め金34Aを締め付けると、テーパ面が逆テーパ面に沿って侵入する際に、締め金34Aのロッド挿入口を広げるような力が作用する。そのため、締め金34Aのロッド挿入口が上側へ変形して段差部をレールのフランジ部の端面に強く押し付ける力が生じ、それによってレールからの振動によってレールキャッチャ33が外れるのを防止できる機能があることを、振動試験によって確認した。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ゲレンク12の下に挿入する接続板21として、4隅に突出部21cおよびボルト挿通穴を設けるとともに押えプレート22A,22Bを使用したものを示したが、連結ロッド23A,23Bからアームを伸ばしてゲレンク12の一部を枕木に押し付けるなどの構造を設けることで、突出部21cおよび押えプレート22A,22Bを省略した構成も可能である。一方、突出部21cおよび押えプレート22A,22Bを設けた場合には、爪ボルトとナットを省略することも可能である。
【0038】
また、前記実施形態では、連結ロッド23A,23Bに設けるレールキャッチャ33として、一方にのみ爪部を有する図8(B)に示す締め金34A,34Bを備えたレールキャッチャを使用すると説明したが、例えば融雪器が設けられていない分岐点においては、各々が爪部を有する図8(A)に示す締め金34A,34Bを備えたレールキャッチャ33を使用するようにしても良い。そして、この場合にも、図8(A)に示すレールキャッチャと図8(B)に示すレールキャッチャの両方を予め用意しておいて、補修対象における融雪器の有無に応じて使い分けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 電気転てつ機
11 転てつ機本体
12 ゲレンク(転換鎖錠器)
12a リンクアーム
12b L形リンク
13 動作かん
14A,14B 作動ロッド
15A,15B 肘金
15a,15b 段差部
16 結合金具
17A,17B 回路制御器
18 連結かん
20 レール直結装置
21 接続板
21a 開口部
21b ボルト挿通穴(長穴)
21c 突出部
21d 垂直壁部
22A,22B 押えプレート
23A,23B 連結ロッド
24 ボルト
31 ロッド本体
32 結合部
33 レールキャッチャ
34A,34B 締め金
34a,34b 爪部
35 ボルト
36 スペーサ
40 融雪器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9