(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体ファクトリおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20250312BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250312BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250312BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250312BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250312BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250312BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20250312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250312BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250312BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250312BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20250312BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20250312BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/705
A61P35/00
A61K35/17
A61P37/02
C07K16/30
A61K39/00 Z
(21)【出願番号】P 2021530875
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019064032
(87)【国際公開番号】W WO2020113224
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マラスコ ウェイン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チュー クアン カレン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン マシュー
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/075537(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/152181(WO,A1)
【文献】特表2015-513394(JP,A)
【文献】国際公開第2018/156802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作された細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記細胞外リガンド結合ドメインが、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含み、前記第1の抗原結合ドメインが、CAIXに特異的であり、前記第2の抗原結合ドメインが、CD70に特異的であり、前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含み、
CAIXに特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
それぞれ、アミノ酸配列SYAMS、AISGSGGSTYYADSVKG、およびSHSSGGFDYによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列TGSSSNIGRGYNVH、GNTNRPS、およびQSYDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR
3
を含み、
CD70に特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(a)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SGSIASNY、EDN、およびQSYDSGNRRVによる、VL CDR1,CDR2、およびCDR3;
(b)それぞれ、アミノ酸配列GFTFSSYA、ISGSGGSR、およびARGRGGHGMDVによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SSNIGSNY、RNN、およびAAWDDSLNGLVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(c)それぞれ、アミノ酸配列GGTFSSQA、IIPFFGVP、およびAVLKGRGNFDFによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列YSVFHSPNNKNY、WAS、およびQQRSNWPLTによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(d)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列ALPKKY、EDS、およびYSTDSSGNHKVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(e)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSTSH、KDSGGKT、およびARARPSDPYDGSGFDAFDIによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SNNVGNQG、RNN、およびSAWDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;または
(f)それぞれ、アミノ酸配列GFIFSDYY、IRSRRGET、およびARHRKSFTDLDAFDLによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列QDIGTD、KAS、およびQHFNNYPATによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む、
操作された細胞。
【請求項2】
前記CARが、膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項1に記載の操作された細胞。
【請求項3】
前記CARが、細胞外リガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置するストーク領域をさらに含む、請求項2に記載の操作された細胞。
【請求項4】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項2または3に記載の操作された細胞。
【請求項5】
CAIXに特異的な前記抗体またはその抗原結合断片が以下を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された細胞:
アミノ酸配列QVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSHSSGGFDYWGQGTLVTVSSによるVH、および、
アミノ酸配列QSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGSSSNIGRGYNVHWYQQLPGTAPKLLIYGNTNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEGDYYCQSYDSSLSAWVFGGGTKLTVLGによるVL。
【請求項6】
CD70に特異的な前記抗体またはその抗原結合断片が以下を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された細胞:
(a)アミノ酸配列QVQLVQSGGGLVQPRGSLRLSCAASGFTVSNYAMSWVRQAPGKGLEWVATKSGSDGRTYYADSVKGRFTIARDNSKNSLYLQMNSLRAADTAVYYCAKGIYDVTGSSFDSによるVH、および、
アミノ酸配列NFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSAPTTVIYEDNQRPSGVPDRFSGSIDSSSNSASLTISGLKTEDEADYYCQSYDSGNRRVによるVL;
(b)アミノ酸配列QVQLVQSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSLISGSGGSRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNNLRAEDTAVYYCARGRGGHGMDVによるVH、および、
アミノ酸配列QPGLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNYVYWYQQLPGTAPKLLIYRNNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLQSEDEADYYCAAWDDSLNGLVによるVL;
(c)アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCRSSGGTFSSQAFSWVRQAPGQGLEWMGRIIPFFGVPTYAQRFQGRVTITADKSPTTAYMELTSLRSDDTAVYYCAVLKGRGNFDFによるVH、および、
アミノ酸配列DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSYSVFHSPNNKNYLAWYQQRPGQPPKLLIYWASTRGSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTによるVL;
(d)アミノ酸配列QVQLVQSGGGLVQPRGSLRLSCAASGFTVSNYAMSWVRQAPGKGLEWVATKSGSDGRTYYADSVKGRFTIARDNSKNSLYLQMNSLRAADTAVYYCAKGIYDVTGSSFDSによるVH、および、
アミノ酸配列SYELTQPPSVSVSPGQTARITCSGDALPKKYAYWYQQKSGQAPVLVMFEDSKRPSGIPERFSGSSSGTMATLTISGAQVEDEADYYCYSTDSSGNHKVによるVL;
(e)アミノ酸配列EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTVSTSHMSWVRQAPGKGLEWLSGKDSGGKTYYADSVRGRFTIARDDSLNTVFLQMNNMRDEDSGVYYCARARPSDPYDGSGFDAFDIによるVH、および、
アミノ酸配列SYELTQPPSVSKGLRQTATLTCTGNSNNVGNQGAAWLQQHQGHPPKLLSYRNNNRPSGISERFSASRSGNTASLTITGLQPEDEADYYCSAWDSSLSAWVによるVL;または
(f)アミノ酸配列QVQLVQSGGGLVKPRGSLRLSCAASGFIFSDYYMSWIRQAPGKGLQWVASIRSRRGETNYADSVKGRFTIARDNAEKSLYLQMNSLRAEDAAVYYCARHRKSFTDLDAFDLによるVH、および、
アミノ酸配列DIVMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQDIGTDLSWYQQKPGKAPKLLIYKASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCQHFNNYPATによるVL。
【請求項7】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、請求項5
に記載のVHおよびVL、ならびに請求項6(a)~(f)のいずれか1つに記載のVHおよびVLを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項8】
組換えポリペプチドを発現および分泌する、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項9】
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその抗原結合断片、またはサイトカインを含む、請求項8に記載の操作された細胞。
【請求項10】
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、請求項8または9に記載の操作された細胞。
【請求項11】
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、請求項8または9に記載の操作された細胞。
【請求項12】
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、請求項8または9に記載の操作された細胞。
【請求項13】
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的に結合する、請求項12に記載の操作された細胞。
【請求項14】
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項8に記載の操作された細胞。
【請求項15】
前記サイトカインがIL-12、IL-15、またはIL-18を含む、請求項9に記載の操作された細胞。
【請求項16】
前記細胞が、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項17】
前記T細胞が、CD4+、CD8+、CD3+panT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項16に記載の操作された細胞。
【請求項18】
前記T細胞が、CD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である、請求項16に記載の操作された細胞。
【請求項19】
キメラ抗原受容体をコードする核酸構築物であって、前記キメラ抗原受容体が、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記第1の抗原が、CAIXを含み、前記第2の抗原が、CD70を含み、前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含み、
CAIXに特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
それぞれ、アミノ酸配列SYAMS、AISGSGGSTYYADSVKG、およびSHSSGGFDYによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列TGSSSNIGRGYNVH、GNTNRPS、およびQSYDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR
3
を含み、
CD70に特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(a)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SGSIASNY、EDN、およびQSYDSGNRRVによる、VL CDR1,CDR2、およびCDR3;
(b)それぞれ、アミノ酸配列GFTFSSYA、ISGSGGSR、およびARGRGGHGMDVによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SSNIGSNY、RNN、およびAAWDDSLNGLVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(c)それぞれ、アミノ酸配列GGTFSSQA、IIPFFGVP、およびAVLKGRGNFDFによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列YSVFHSPNNKNY、WAS、およびQQRSNWPLTによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(d)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列ALPKKY、EDS、およびYSTDSSGNHKVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(e)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSTSH、KDSGGKT、およびARARPSDPYDGSGFDAFDIによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SNNVGNQG、RNN、およびSAWDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;または
(f)それぞれ、アミノ酸配列GFIFSDYY、IRSRRGET、およびARHRKSFTDLDAFDLによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列QDIGTD、KAS、およびQHFNNYPATによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む、
核酸構築物。
【請求項20】
前記キメラ抗原受容体が、膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項19に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記キメラ抗原受容体が、共刺激ドメインをさらに含む、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
組換えポリペプチドをさらにコードする、請求項19~21のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
前記組換えポリペプチドが、操作された細胞から分泌され得る、請求項22に記載の核酸構築物。
【請求項24】
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその抗原結合断片、またはサイトカインを含む、請求項22または23に記載の核酸構築物。
【請求項25】
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、請求項22~24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項26】
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、請求項22~24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項27】
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、請求項22~24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項28】
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項22に記載の核酸構築物。
【請求項29】
前記サイトカインが、IL12、IL15、またはIL18を含む、請求項24に記載の核酸構築物。
【請求項30】
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的に結合する、請求項27に記載の核酸構築物。
【請求項31】
請求項19~30のいずれか一項に記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項32】
請求項31に記載のベクターを含む細胞。
【請求項33】
治療上有効量の、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された細胞を含む、癌に罹患している対象を治療するための、薬学的組成物。
【請求項34】
治療上有効量の、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された細胞を含む、対象における癌の進行を低減させるまたは退縮を促進するための、薬学的組成物。
【請求項35】
治療上有効量の、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された細胞を含む、対象における癌細胞の細胞増殖を低減させるための、薬学的組成物。
【請求項36】
癌が、腎細胞癌を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
細胞外リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外リガンド結合ドメインが、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的であり、前記第1の抗原が、CAIXを含み、前記第2の抗原が、CD70を含み、前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含み、
CAIXに特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
それぞれ、アミノ酸配列SYAMS、AISGSGGSTYYADSVKG、およびSHSSGGFDYによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列TGSSSNIGRGYNVH、GNTNRPS、およびQSYDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR
3
を含み、
CD70に特異的である抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(a)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SGSIASNY、EDN、およびQSYDSGNRRVによる、VL CDR1,CDR2、およびCDR3;
(b)それぞれ、アミノ酸配列GFTFSSYA、ISGSGGSR、およびARGRGGHGMDVによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SSNIGSNY、RNN、およびAAWDDSLNGLVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(c)それぞれ、アミノ酸配列GGTFSSQA、IIPFFGVP、およびAVLKGRGNFDFによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列YSVFHSPNNKNY、WAS、およびQQRSNWPLTによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(d)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列ALPKKY、EDS、およびYSTDSSGNHKVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(e)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSTSH、KDSGGKT、およびARARPSDPYDGSGFDAFDIによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SNNVGNQG、RNN、およびSAWDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;または
(f)それぞれ、アミノ酸配列GFIFSDYY、IRSRRGET、およびARHRKSFTDLDAFDLによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列QDIGTD、KAS、およびQHFNNYPATによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む、
キメラ抗原受容体。
【請求項38】
膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項37に記載のCAR。
【請求項39】
共刺激ドメインをさらに含む、請求項38に記載のCAR。
【請求項40】
請求項37~39のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞。
【請求項41】
第1のキメラ抗原受容体および第2のキメラ抗原受容体を含む操作された細胞であって、前記第1のキメラ抗原受容体が、CAIXに特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記第2のキメラ抗原受容体が、CD70に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、
CAIXに特異的な細胞外リガンド結合ドメインが、以下:
それぞれ、アミノ酸配列SYAMS、AISGSGGSTYYADSVKG、およびSHSSGGFDYによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列TGSSSNIGRGYNVH、GNTNRPS、およびQSYDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR
3
を含む抗体またはその抗原結合断片を含み、
CD70に特異的な細胞外リガンド結合ドメインが、以下:
(a)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SGSIASNY、EDN、およびQSYDSGNRRVによる、VL CDR1,CDR2、およびCDR3;
(b)それぞれ、アミノ酸配列GFTFSSYA、ISGSGGSR、およびARGRGGHGMDVによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SSNIGSNY、RNN、およびAAWDDSLNGLVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(c)それぞれ、アミノ酸配列GGTFSSQA、IIPFFGVP、およびAVLKGRGNFDFによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列YSVFHSPNNKNY、WAS、およびQQRSNWPLTによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(d)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSNYA、KSGSDGRT、およびAKGIYDVTGSSFDSによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列ALPKKY、EDS、およびYSTDSSGNHKVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;
(e)それぞれ、アミノ酸配列GFTVSTSH、KDSGGKT、およびARARPSDPYDGSGFDAFDIによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列SNNVGNQG、RNN、およびSAWDSSLSAWVによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3;または
(f)それぞれ、アミノ酸配列GFIFSDYY、IRSRRGET、およびARHRKSFTDLDAFDLによる、VH CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、
それぞれ、アミノ酸配列QDIGTD、KAS、およびQHFNNYPATによる、VL CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む抗体またはその抗原結合断片を含む、
操作された細胞。
【請求項42】
組換えポリペプチドを発現および分泌する、請求項41に記載の操作された細胞。
【請求項43】
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその抗原結合断片、またはサイトカインを含む、請求項42に記載の操作された細胞。
【請求項44】
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、請求項42または43に記載の操作された細胞。
【請求項45】
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、請求項42または43に記載の操作された細胞。
【請求項46】
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、請求項42または43に記載の操作された細胞。
【請求項47】
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項42に記載の操作された細胞。
【請求項48】
前記サイトカインが、IL12、IL15、またはIL18を含む、請求項43に記載の操作された細胞。
【請求項49】
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的に結合する、請求項46に記載の操作された細胞。
【請求項50】
前記細胞が、T細胞またはNK細胞を含む、請求項41~49のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項51】
前記T細胞が、CD4+、CD8+、CD3+panT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項50に記載の操作された細胞。
【請求項52】
前記T細胞が、CD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である、請求項50に記載の操作された細胞。
【請求項53】
前記第1のキメラ抗原受容体および前記第2のキメラ抗原受容体が、単一の核酸構築物から発現している、請求項41~52のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月30日に出願された米国仮出願第62/773,885号および2019年3月29日に出願された米国仮出願第62/826,462号から優先権を主張し、各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載され特許請求される本発明の日付の当業者に既知の最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象となる、材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標局の特許ファイルまたは記録に表れているように、特許文書または特許開示のいずれかによってファクシミリ複製に異議はないが、それ以外では、何であれすべての著作権を留保する。
【0004】
配列表の参照による組み込み
[ ]に作成された「[ ]」という名前のテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
発明の分野
本発明は、キメラ抗原受容体およびそれを含む細胞を対象とし、細胞はさらに、腫瘍部位で局所的にモノクローナル抗体を分泌する。
【背景技術】
【0006】
発明の背景
淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)は、RCCの主要なタイプであり、男性と女性の両方で最も一般的な10種の癌の1つである。他のタイプの腎癌には、乳頭状腎細胞癌、色素性腎細胞癌、および他のまたは分類されていないタイプの腎細胞癌が含まれる。例えば、Lancet 373(2009)1119-32(非特許文献1)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Lancet 373(2009)1119-32
【発明の概要】
【0008】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から容易に明らかになるであろう。
【0009】
本発明の態様は、キメラ抗原受容体を含む操作された細胞に向けられている。実施形態では、キメラ抗原受容体は、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、第1の抗原がCAIXを含み、第2の抗原がCD70を含む。
【0010】
実施形態では、CARは、膜貫通ポリペプチド、細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激ドメインをさらに含む。
【0011】
実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、抗体またはその断片を含む。例えば、抗体は、表2によるVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、抗体は、表4によるVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、細胞外結合ドメインは、表2および表4のVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、抗体は、表1のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、抗体は、表3のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、細胞外結合ドメインは、表1および表3のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0012】
実施形態では、操作された細胞は、組換えポリペプチドを発現および分泌する。
【0013】
実施形態では、組換えポリペプチドは、抗体もしくはその断片、またはサイトカインを含む。例えば、組換えポリペプチドは、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、もしくはCCR4に特異的な抗体またはその断片を含む。例えば、組換えポリペプチドは、IL-12、IL-15、またはIL-18を含むサイトカインを含む。
【0014】
実施形態では、組換えポリペプチドは、対象の免疫系を調節する。例えば、組換えポリペプチドは、免疫チェックポイント遮断抗体である。
【0015】
実施形態では、組換えポリペプチドは、腫瘍の脈管形成を調節する。例えば、組換えポリペプチドは、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的であり得る。
【0016】
実施形態では、操作された細胞は、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞である。例えば、T細胞は、CD4+、CD8+、CD3+panT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである。例えば、T細胞は、CD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である。
【0017】
本開示の態様はさらに、キメラ抗原受容体をコードする核酸構築物に向けられている。実施形態では、キメラ抗原受容体は、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、第1の抗原がCAIXを含み、第2の抗原がCD70を含む。
【0018】
実施形態では、核酸構築物は、膜貫通ポリペプチド、細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激ドメインをさらにコードする。
【0019】
実施形態では、核酸構築物は、組換えポリペプチドをさらにコードする。
【0020】
本開示の態様はさらに、本明細書に記載される核酸構築物を含むベクターに向けられている。
【0021】
さらに、本開示の態様は、本明細書に記載されるベクターを含む細胞に向けられている。
【0022】
本開示の態様はまた、癌に罹患している対象を治療するための方法に向けられている。実施形態では、方法は、治療上有効量の本明細書に記載される操作された細胞を対象に投与することを含む。
【0023】
また、本発明の態様は、対象における癌の進行を低減させるか、または癌の退縮を促進する方法に向けられている。実施形態では、方法は、治療上有効量の本明細書に記載される操作された細胞を対象に投与することを含む。
【0024】
さらに、本発明の態様は、対象における癌細胞の細胞増殖を低減させる方法に向けられている。実施形態では、方法は、治療上有効量の、本明細書に記載される操作された細胞を対象に投与することを含む。
【0025】
実施形態では、癌は、腎細胞癌を含む。
【0026】
本開示の態様は、細胞外リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)に向けられており、細胞外リガンド結合ドメインが、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的であり、第1の抗原がCAIXを含み、第2の抗原がCD70を含む。
【0027】
実施形態では、CARは、膜貫通ポリペプチド、細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激ドメインをさらに含む。
【0028】
実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、抗体またはその断片を含む。
【0029】
さらに、本発明の態様は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞に向けられている。
【0030】
さらに、本発明の態様は、第1のキメラ抗原受容体および第2のキメラ抗原受容体を含む操作された細胞に向けられ、第1のキメラ抗原受容体が、CAIXに特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、第2のキメラ抗原受容体が、CD70に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0031】
実施形態では、操作された細胞は、組換えポリペプチドを発現および分泌する。
【0032】
実施形態では、第1のキメラ抗原受容体および第2のキメラ抗原受容体は、単一の核酸構築物から発現している。
[本発明1001]
キメラ抗原受容体を含む操作された細胞であって、前記キメラ抗原受容体が、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記第1の抗原が、CAIXを含み、前記第2の抗原が、CD70を含む、操作された細胞。
[本発明1002]
前記CARが、膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1003]
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、本発明1002の操作された細胞。
[本発明1004]
前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその断片を含む、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1005]
前記抗体が、表2によるVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1006]
前記抗体が、表4によるVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1007]
前記細胞外結合ドメインが、表2および表4のVHおよび/もしくはVL、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1008]
前記抗体が、表1のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1009]
前記抗体が、表3のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1010]
前記細胞外結合ドメインが、表1および表3のCDR1、CDR2、および/もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1004の操作された細胞。
[本発明1011]
組換えポリペプチドを発現および分泌する、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1012]
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその断片、またはサイトカインを含む、本発明1011の操作された細胞。
[本発明1013]
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、本発明1011の操作された細胞。
[本発明1014]
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、本発明1011の操作された細胞。
[本発明1015]
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、本発明1011の操作された細胞。
[本発明1016]
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的である、本発明1015の操作された細胞。
[本発明1017]
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその断片を含む、本発明1011の操作された細胞。
[本発明1018]
前記サイトカインがIL-12、IL-15、またはIL-18を含む、本発明1012の操作された細胞。
[本発明1019]
前記細胞が、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞を含む、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1020]
前記T細胞が、CD4+、CD8+、CD3+panT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、本発明1019の操作された細胞。
[本発明1021]
前記T細胞が、CD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である、本発明1019の操作された細胞。
[本発明1022]
キメラ抗原受容体をコードする核酸構築物であって、前記キメラ抗原受容体が、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記第1の抗原が、CAIXを含み、前記第2の抗原が、CD70を含む、核酸構築物。
[本発明1023]
前記キメラ抗原受容体が、膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、本発明1022の核酸構築物。
[本発明1024]
前記キメラ抗原受容体が、共刺激ドメインをさらに含む、本発明1023の核酸構築物。
[本発明1025]
組換えポリペプチドをさらにコードする、本発明1023の核酸構築物。
[本発明1026]
前記組換えポリペプチドが、操作された細胞から分泌され得る、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1027]
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその断片、またはサイトカインを含む、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1028]
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1029]
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1030]
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1031]
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその断片を含む、本発明1025の核酸構築物。
[本発明1032]
前記サイトカインが、IL12、IL15、またはIL18を含む、本発明1027の核酸。
[本発明1033]
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的である、本発明1030の核酸。
[本発明1034]
本発明1022の核酸構築物を含むベクター。
[本発明1035]
本発明1034のベクターを含む細胞。
[本発明1036]
癌に罹患している対象を治療する方法であって、治療上有効量の本発明1001の操作された細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1037]
対象における癌の進行を低減させるまたは退縮を促進する方法であって、治療上有効量の本発明1001の操作された細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1038]
対象における癌細胞の細胞増殖を低減させる方法であって、治療上有効量の本発明1001の操作された細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1039]
癌が、腎細胞癌を含む、本発明1036~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
細胞外リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外リガンド結合ドメインが、癌細胞の表面上の第1の抗原および第2の抗原に特異的であり、前記第1の抗原が、CAIXを含み、前記第2の抗原が、CD70を含む、キメラ抗原受容体。
[本発明1041]
膜貫通ポリペプチドおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、本発明1040のCAR。
[本発明1042]
共刺激ドメインをさらに含む、本発明1041のCAR。
[本発明1043]
前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその断片を含む、本発明1040のCAR。
[本発明1044]
本発明1040のキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞。
[本発明1045]
第1のキメラ抗原受容体および第2のキメラ抗原受容体を含む操作された細胞であって、前記第1のキメラ抗原受容体が、CAIXに特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含み、前記第2のキメラ抗原受容体が、CD70に特異的な細胞外リガンド結合ドメインを含む、操作された細胞。
[本発明1046]
組換えポリペプチドを発現および分泌する、本発明1045の操作された細胞。
[本発明1047]
前記組換えポリペプチドが、抗体もしくはその断片、またはサイトカインを含む、本発明1046の操作された細胞。
[本発明1048]
前記組換えポリペプチドが、対象の免疫系を調節する、本発明1046の操作された細胞。
[本発明1049]
前記組換えポリペプチドが、免疫チェックポイント遮断抗体である、本発明1046の操作された細胞。
[本発明1050]
前記組換えポリペプチドが、腫瘍の脈管形成を調節する、本発明1046の操作された細胞。
[本発明1051]
前記組換えポリペプチドが、TIGIT、GITR、PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、VISTA、CD70、TIM-3、LAG-3、CD40L、またはCCR4に特異的な抗体またはその断片を含む、本発明1046の操作された細胞。
[本発明1052]
前記サイトカインが、IL12、IL15、またはIL18を含む、本発明1047の操作された細胞。
[本発明1053]
前記組換えポリペプチドが、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGF、Ang-1、またはAT1に特異的である、本発明1050の核酸。
[本発明1054]
前記細胞が、T細胞またはNK細胞を含む、本発明1045の操作された細胞。
[本発明1055]
前記T細胞が、CD4+、CD8+、CD3+panT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、本発明1054の操作された細胞。
[本発明1056]
前記T細胞が、CD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である、本発明1054の操作された細胞。
[本発明1057]
前記第1のキメラ抗原受容体および前記第2のキメラ抗原受容体が、単一の核酸構築物から発現している、本発明1045の操作された細胞。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】共刺激ドメイン(CD28、41BB、CD28-41BB、または41BB-CD28を含む非限定的な例)および活性化ドメイン(CD3など)に接続された様々なリンカーおよびヒンジを伴う2つの標的化scFvの順序を変更することにより異なる順列で組み合わされた二重特異性タンデムCAR T抗CD70および抗CAIX scFvの概略図を示す。有効性(不均一性への対処など)および安全性(on-target off-tumor(オンターゲットオフ腫瘍)効果の制限など)を評価するために、第2のカセット抗CD70 scFvの導入により、第2世代のCAR T細胞ファクトリを設計することができる。
【
図2】一連のCAR(異なるscFv、リンカー、およびヒンジなど)をペイロードとしての免疫チェックポイント遮断剤と組み合わせることにより、第2世代のCAR T細胞ファクトリを確立することができることを示す。これらのデータに基づいて、G36を抗CAIX scFvとして使用し、B7を抗CD70 scFvとして使用することにより、8つの構築物が確立された。当業者は、本発明による任意のscFvが利用され得ることを認識するであろう。二重CAR工学は、最も重要な部分であり、ペイロードは、変換効率を示すためにzsgreenに置き換えられた。
【
図3】ccRCCで上方調整され、共発現しているCAIXおよびCD70を示す。患者試料から生成されたccRCC初代細胞株のIHC染色は、CAIXおよびCD70の両方がccRCCで高度に発現および共発現していることを示す。理論に縛られることを望まないが、CAIXおよびCD70は、ccRCC療法の2つの潜在的な標的である。標的を検証するために、ccRCCの患者から生成された初代細胞株におけるCAIXおよびCD70の染色のためにIHCを実施した。これらの画像から、CAIXおよびCD70染色が100%陽性であることがわかり、CAIXおよびCD70がccRCCにおいて高度かつ同時に発現していることを実証する。これは現在、少なくとも150個の試料で、ccRCCの患者におけるCAIXおよびCD70の発現を測定する研究で検証されている。
【
図4】ccRCCで上方調整され、共発現しているCAIXおよびCD70を示す。ccRCCの患者試料のIHC染色は、CAIXおよびCD70の両方がccRCC上で高度に発現および共発現していることを示す。
【
図5-1】CRISPR skrc-59細胞株の確立を示す。インビトロでのさらなる評価のために、4つの異なる表現型(i)CAIX+CD70+、(ii)CAIX+CD70-、(iii)CAIX-CD70+、および(iv)CAIX-CD70-で4つのCRISPRで操作されたskrc-59細胞株が確立された。4つのCRISPR skrc-59細胞株が確立されている。4つの異なる表現型(i)CAIX+CD70+、(ii)CAIX+CD70-、(iii)CAIX-CD70+、および(iv)CAIX-CD70-が、本明細書に記載されるインビトロアッセイに使用される。対応する表は、定量化された4つの異なる細胞株でのCAIXおよびCD70の発現レベルを示す。
【
図6】CD70+SKRC59細胞への選択的結合を示した抗CD70ミニボディのグラフを示す。ファージディスプレイ(CD70+skrc-59細胞に対してパニングされ、CD70-skrc-59細胞に対して差し引かれた)は、一連の抗CD70ミニボディがCD70陽性ccRCC skrc-59細胞との結合を示したことを示す。抗CD70ミニボディは、6ウェルプレートのExpi293細胞を介して発現した。トランスフェクションの3日後、上清を回収し、IgG定量ELISA(Bethyl)を実施して、上清中のミニボディの濃度を概算した。このおおよその濃度を使用して、FACS結合曲線について上清を正規化した。染色は、抗hFc-APC二次物を使用して標準的なFACS染色プロトコルを介して実施された。見てわかるように、殺傷活性のヒットのうちの1つ(#9)は、非常に非特異的である。殺傷活性を呈する他の2つのモノCAR(#3、7)は、CD70に対して良好な特異性を示す。
【
図7】抗CD70 CAR T細胞がCeligo殺傷アッセイにおいて殺傷活性を示すことを実証する。これらの抗CD70 scFv候補は、ベクターにクローン化され、レンチウイルスにパッケージされて、初代T細胞に形質導入された。CAR T細胞は、Celigoアッセイで抗増殖活性について評価された。結果は、#3、#7、#9が、CD70リガンドCD27 CAR T細胞と比較して有効性を有することを示した。また、これらのヒットは、pHAGEベクターにクローン化され、Celigo殺傷アッセイを実施した。これらのグラフは、抗CD70 CAR T細胞が、Celigo殺傷アッセイで殺傷活性を呈したことを示し、エフェクター:標的の比は、2:1であった。異なる時点での細胞数を比較し、対応する時点で未処理の細胞で正規化した。そのため、Y軸は、処理済み細胞/未処理細胞のパーセンテージであり、X軸は、異なる処理である。T細胞との24時間の共培養後、処理群のSKRC59細胞数は、未処理群および非形質導入T細胞群と比較して、有意に減少し、これらのCAR T細胞の抗増殖活性を実証する。48時間の共培養後、CD70のリガンドであるCD27に匹敵する3つの候補を見つけた。そのため、3、7、9がさらなるクロム51殺傷アッセイに使用された。
【
図8】抗CD70 CAR T細胞が、CAIX+CD70+細胞に対するクロム51殺傷アッセイにおいて殺傷活性を示すことを実証する。CAR T細胞は、クロム51放出アッセイにおいても殺傷活性について評価された。結果は、#7のCAR T細胞が、CD27(CD70リガンド)CAR T細胞と比較して、増強された有効性を有することを示した。クロム51の4時間放出アッセイが実施された。クロム51で標識された標的細胞との4時間のインキュベーション後、B7がSKRC59 CD70+細胞に対して殺傷活性を有することが検証された。
【
図9】第2世代のCAR-T細胞を示す。CAR T細胞は、免疫チェックポイント遮断剤の代わりにzsGreenを使用して生成することができる。これらのデータに基づいて、G36を抗CAIX scFvとして使用し、B7を抗CD70 scFvとして使用することにより、8つの構築物が確立された。二重CAR工学は、最も重要な部分であり、ペイロードは、変換効率を示すためにzsgreenに置き換えられた。
【
図10】CAIX-PEと結合するトランスフェクトされた293T細胞を示す。293T細胞は、二重CARの異なる構築物でトランスフェクトされ、PEで標識されたCAIXタンパク質との結合アッセイが行われた。すべての二重CARは、CAIXに結合し、2つのscFvの異なる方向は、抗CAIX scFv結合のEC50に影響を与える。抗CAIX scFv G36は、リンカーの後の第2のカセットを優先する。例えば、293T細胞は、これらの8つの二重特異性構築物および対応するモノCARでトランスフェクトされ、CAIX-PEで染色された。トランスフェクション効率による正規化後、2つのscFvの異なる方向は、抗CAIX scFv結合のEC50に影響を与える。抗CAIX scFv G36は、リンカーの後の第2のカセットを優先する。
【
図11】CD70-APCと結合するトランスフェクトされた293T細胞を示す。293T細胞は、二重CARの異なる構築物でトランスフェクトされ、PEで標識されたCAIXタンパク質を用いて結合アッセイが行われた。すべての二重CARは、CD70に結合し、2つのscFvの異なる方向は、抗CD70 scFv結合のEC50に影響を与えない。抗CD70 scFv B7は、重要な優先性を有さない。例えば、293T細胞は、これらの8つの二重特異性構築物および対応するモノCARでトランスフェクトされ、CD70-PEで染色された。トランスフェクション効率による正規化後、2つのscFvの異なる方向は、抗CD70 scFv結合のEC50に影響を与えない。抗CD70 scFv B7は、重要な優先性を有さない。
【
図12】Celigoを用いたB7-GGGGS3-G36殺傷アッセイを示す。例えば、B7-GGGGS3-G36 CARを使用し、CAIX+もしくはCD70+単独陽性細胞またはCAIX-CD70-細胞と混合したCAIX+CD70+二重陽性細胞に対して選択的殺傷アッセイが行われた。B7-GGGGS3-G36 CAR T細胞は、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。
【
図13】FACSによるB7-GGGGS3-G36殺傷アッセイを示す。4つの異なるCRISPRで操作されたskrc-59細胞は、BFP蛍光群で形質導入された。細胞は、1:1:1:1の比率で混合され、B7-GGGGS3-G36 CAR T細胞または培地で処理された。処理後、PEで標識された抗CD70抗体およびAPC標識された抗CAIX抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーを行った。B7-GGGGS3-G36は、CAIX+CD70+細胞に対する選択的殺傷を有し、その集団は、26.7%から18.5%に減少したことを示した。
【
図14】微調整された抗CAIX CAR Tの概略図である。様々なKDを有する抗CAIX scFvが、CARとして生成され、対応する殺傷活性が評価された。on-target off-tumor効果を制限するために、第2世代のCAR T細胞ファクトリは、第2のカセットの抗CD70 scFvの導入により設計されている。
【
図15】微調整された抗CAIX CAR-T細胞の図のレンダリングである。検証実験では、免疫チェックポイント遮断剤の代わりにzsGreenを使用してCAR T細胞を生成した。G36を抗CAIX scFvとして使用し、B7を抗CD70 scFvとして使用することにより、8つの構築物が確立された。二重CAR工学は、重要な部分であり、ペイロードは、変換効率を示すためにzsgreenに置き換えられた。CAIXに対する一連の抗体は、1.49nM~99.58nMまでの異なるKD値で同定された(
図16も参照)。結合実験により13個の抗体は、4つの群に分類された。
【
図16-1】同定された19個の抗CAIX ScFvおよび対応する結合を示す表を描写する。
【
図17】CAIX+CD70+に対する抗CAIXモノCAR T殺傷のグラフを示す。これらの抗CAIX CAR T細胞は、Celigoアッセイにおいて抗増殖活性について評価された。結果により、殺傷活性に基づいて、19個のCARを4つの群に分けることができることが示された。G37、G39、G125(++++)>G10、G21、G36、G40、G45、G57、G62、G98、G106、G119(+++)>G6、G9、G17、G27、G28(++)>G104(++)。
【
図18】CAIX+CD70+に対する抗CAIXモノCAR Tの殺傷のグラフを示す。これらの抗CAIX CAR T細胞は、Celigoアッセイにおいて抗増殖活性について評価された。結果により、殺傷活性に基づいて、19個のCARを4つの群に分けることができることが示された。G37、G39、G125(++++)>G10、G21、G36、G40、G45、G57、G62、G98、G106、G119(+++)>G6、G9、G17、G27、G28(++)>G104(++)。
【
図19】CAIX+CD70+に対する抗CAIXモノCAR Tの殺傷を示す。これらの抗CAIX CAR T細胞は、Celigoアッセイにおいて抗増殖活性について評価された。結果は、殺傷活性に基づいて、19個のCARを4つの群に分けることができることを示した。G37、G39、G125(++++)>G10、G21、G36、G40、G45、G57、G62、G98、G106、G119(+++)>G6、G9、G17、G27、G28(++)>G104(++)。
【
図20】選択的殺傷アッセイの概略図(例えば、CeligoアッセイまたはFACSアッセイのいずれかを使用)。4つの異なる細胞株に対する二重特異性CARの選択性を調べるために、2つの異なる選択性アッセイが行われた。例えば、CAIX+CD70+細胞は、モノ陽性細胞と混合され、その後、CART細胞が添加された。一定時間のインキュベーション後、Celigoによって二重陽性細胞および単一陽性細胞の数が測定された。また、4つの異なる細胞株は、1:1:1:1の比率で混合され、CART細胞が添加された。24時間の共培養後、すべての細胞が収集され、FACSによってCAIX-APCおよびCD70-PEで染色される。
【
図21】skrc-59混合細胞に対するタンデムCAR殺傷を示すグラフ。選択的殺傷アッセイは、CAIX+もしくはCD70+単独陽性細胞またはCAIX-CD70-細胞と混合したCAIX+CD70+二重陽性細胞に対して行われた。二重特異性CAR T細胞は、E:T=5:1で、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。
【
図22】skrc-59混合細胞に対するタンデムCAR殺傷を示すグラフ。選択的殺傷アッセイは、CAIX+もしくはCD70+単独陽性またはCAIX-CD70-細胞と混合したCAIX+CD70+二重陽性細胞に対して行われた。二重特異性CAR T細胞は、E:T=5:1で、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。
【
図23】skrc-59混合細胞でのタンデムCAR殺傷を示すグラフ。選択的殺傷アッセイは、CAIX+もしくはCD70+単独陽性またはCAIX-CD70-細胞と混合したCAIX+CD70+二重陽性細胞に対して行われた。二重特異性CAR T細胞は、E:T=10:1で、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。
【
図24】ccRCCで上方調整され、共発現しているCAIXおよびCD70を示す。
【
図25】以前にCART細胞療法に関連していた望ましくない副作用に対処するためのCARの設計を示す。固形腫瘍にCART細胞療法を適用するために、有効性および安全性のプロファイリングを評価する。まず、効果的な抗癌免疫を回復するために、CAR-T細胞ファクトリが開発され、それは、ヒト抗免疫チェックポイント遮断モノクローナル抗体(mAbs)を腫瘍部位で局所的に分泌して、T細胞の枯渇を逆転させることで腫瘍微小環境を調節することができる。on-target off-tumorの副作用を制限するために、微調整されたCARは、正常組織上の腫瘍関連抗原の認識を制限することにより治療濃度域を拡大するために、親和性が低下したscFvで設計された。また、二重特異性CARは、抗CD70 scFvなどの第2のカセットを導入することによって設計され、二重陽性集団での優先的殺傷を増加させ、安全性プロファイリングの向上をもたらした。
【
図26】CAR-T細胞ファクトリが殺傷の増強を示していることを示す。我々は、バイシストロン性レンチウイルスベクターを設計して、第1のカセットにおいてCD28およびCD3zシグナル伝達ドメインにリンクされた抗CAIX scFvを発現させ、第2の発現カセットにおいて抗PDL1 mAbを発現させた。そのため、CAR-T細胞ファクトリは、CAIXを標的とし、腫瘍部位でチェックポイント遮断阻害剤を分泌して、抑制性腫瘍微小環境を変換することができる。RCC同所性マウスモデルでは、1E7 CAR-T細胞が0日目に静脈注射によって注射され、2.5E6 CAR-T細胞が17日目に注射された。CAR-T細胞ファクトリは、我々の同所性RCCマウスモデルでは、無関係な抗体を分泌するCAR-T細胞と比較して、殺傷効果の増強を示した。
【
図27】ヒト化同所性ccRCCマウスモデルに対するCAR-Tの評価の概略図を示す。
【
図29】ストレスモデルを確立し、同所性ccRCCマウスモデルに対する第2世代および第3世代のCARならびにCD8対CD4/8を比較するために設計された実験の概略図を示す。
【
図30】41BBがインビボで優れた殺傷を行ったことを示す。1E7の投薬で、効率的な腫瘍退縮が、G36-41BBおよびG36-CD28-41BB処理群で観察された。混合されたCD4/CD8 G36-41BB CAR-Tは、3E6の投薬でさえも優れた殺傷を行った。2つの第2世代のCAR構築物および1つの第3世代のCAR構築物を比較すると、G36-41BBは、G36-CD28およびG36-CD28-41BBより効率が良かった。
【
図31】G36-41BBストレスモデルを示す。3E6の投薬は、G36-41BBストレスモデルに使用することができる。
【
図32】41BBがインビボで優れた殺傷を行ったことを示す。
【
図33】41BB CAR-T細胞がインビボで最高の増殖を示した。
【
図35】CD4およびCD8T細胞のインビボでの増殖を示す。
【
図36】on-target off-tumor効果を制限するように設計された、微調整された抗CAIX CAR-Tの概略図を示す。理論に拘束されることを望まないが、抗CAIX scFvの親和性を低下させると、CARは、ccRCC上の高密度のCAIXのみを認識する。様々なKDを伴う一連の抗CAIX scFvは、レンチウイルスベクターにクローン化され、対応するCAR-T細胞が生成され、殺傷活性を評価した。
【
図37】「治療濃度域」の詳細図である。「治療濃度域」は、もともとは薬品毒物学に由来する用語であり、有効性と毒性との間の用量の範囲を指すことができ、許容できない毒性をもたらすことなく最高の治療効果を達成し、それは、最小有効量(MED)と最大耐量(MTD)との間の範囲である。この概念は、CAR-T療法を最適化するために適用された。治療濃度域を拡大するために、1nm~100nmなど、CAR構築物内の異なるKDを伴うscFvを集合させることにより、抗原とのCAR親和性を微調整することができる。理想的には、最適化後、CARは、正常細胞上の低密度抗原ではなく、腫瘍細胞上の高密度抗原のみを認識する。腫瘍細胞上でのみ発現する抗原または重要でない組織上でのみ発現する抗原を標的とすることは、主要組織上で直接的な毒性が起こらないため、治療濃度域を広げる。一方、重要な正常組織/細胞内で発現する抗原を標的とすることは、MTDを減少させることによって濃度域を狭める。
【
図38】on-target off-tumorの副作用に対処するために治療濃度域を拡大することを説明する概略図である。
【
図39】患者試料に対するCAIXおよびCD70のIHC二重染色を示す。CD70およびCAIXは、ccRCC上で高度に発現および共発現していることを見出した。したがって、CD70を第2の標的として選択する。
【
図40】患者試料に対するCAIXおよびCD70のIHC二重染色を示す。
【
図41】表に示すように、1.49nM~99.58nMの異なるKD値を伴うCAIXに対するscFvのパネルを示す。対応するCAR-T細胞が生成され、Celigo殺傷アッセイによってスクリーニングされた。
【
図42】scFvの親和性とCART細胞の殺傷との間に相関関係があることを示しており、19個のCARを細胞毒性に応じて4つの群に分け、CAIXの発現レベルが異なるskrc-59細胞に対して試験した。G37、G39、G125>G10、G21、G36、G40、G45、G57、G62、G98、G106、G119>G6、G9、G17、G27、G28>G104。
【
図43】腫瘍細胞の不均一性を捕捉するが、低標的密度の健康な細胞を殺傷しない「Or」ゲーティングを示す。
【
図44】CD70は、腎臓癌、特に淡明細胞型腎細胞癌上で高度に発現しているため、二重特異性CARの第2の標的として理想的な標的になり得ることを示す。
【
図45】ccRCC患者試料に対するCAIXおよびCD70のIHC二重染色を示す。CD70およびCAIXは、ccRCC上で高度に発現および共発現している。したがって、CD70を第2の標的として選択する。
【
図46】ccRCCの患者試料に対するCAIXおよびCD70のIHC二重染色を示す。CD70およびCAIXは、ccRCC上で高度に発現および共発現している。したがって、CD70を第2の標的として選択する。
【
図47】ccRCC上で上方調整され、共発現しているCAIXおよびCD70を示す。
【
図48】抗CD70ミニボディがCD70+SKRC59細胞への選択的結合を示したことを示す。ファージディスプレイ(CD70+skrc-59細胞に対してパニングされ、CD70-skrc-59細胞に対して差し引かれた)により、CD70陽性ccRCC skrc-59細胞との有望な結合を示す一連の抗CD70ミニボディを発見した。抗CD70ミニボディは、6ウェルプレートのExpi293細胞を介して発現した。トランスフェクションの3日後、上清が回収され、上清中のミニボディの濃度を概算するためにIgG定量ELISA(Bethyl)が実施された。このおおよその濃度を使用して、FACS結合曲線について上清が正規化された。染色は、抗hFc-APC二次を使用して標準的なFACS染色プロトコルを介して実施された。殺傷活性のヒットのうちの1つ(#9)は、非常に非特異的である。殺傷活性を呈する他の2つのモノCAR(#3、7)は、CD70に対して良好な特異性を示す。
【
図49】抗CD70 B7 CAR-T細胞がCD70+skrc-59細胞に対して有望な殺傷を示したことを示す。ファージディスプレイ(CD70+skrc-59細胞に対してパニングされ、CD70-skrc-59細胞に対して差し引かれた)により、CD70陽性ccRCC skrc-59細胞との有望な結合を示す一連の抗CD70ミニボディを発見した。また、これらのヒットは、レンチウイルスベクターにクローン化され、対応するCART細胞にCeligo殺傷アッセイが実施された。スクリーニングから、候補としてB7を見出した。
【
図50】二重特異性CAR構築物を示す。一連の構築物は、G36を抗CAIX scFvとして使用し、B7を抗CD70 scFvとして使用することにより、異なるリンカーを伴う異なる回転(または方向)において確立された。
【
図51】抗scFv G36がリンカーの後の第2のカセットにあることを優先することを示す。293T細胞は、これらの8つの二重特異性構築物および対応するモノCARでトランスフェクトされ、CAIX-PEで染色される。トランスフェクション効率による正規化後、それは、2つのscFvの異なる方向が抗CAIX scFv結合のEC
50に影響を与えることを示す。抗CAIX scFv G36は、リンカーの後の第2のカセットを優先する。
【
図52】抗CD70 scFv B7は、優先性を有さない。293T細胞は、二重CARの異なる構築物でトランスフェクトされ、APC標識されたCD70タンパク質で結合アッセイが行われる。トランスフェクション効率による正規化後、それは、2つのscFvの異なる方向が抗CD70 scFv結合のEC
50に影響を与えないことを示す。抗CD70 scFv B7は、重要な優先性を有さない。
【
図53】4つのCRISPR skrc-59細胞株の確立を示す。インビトロでのさらなる評価のために、4つの異なる表現型CAIX+CD70+、CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、およびCAIX-CD70-で4つのCRISPRで操作されたskrc-59細胞株が確立された。
【
図54】B7-GGGGS3-G36が優先殺傷を示していることを示す。B7-GGGGS3-G36 CARを例に取り、CAIX+もしくはCD70+単独陽性細胞、またはCAIX-CD70-細胞と混合したCAIX+CD70+二重陽性細胞に対して選択的殺傷アッセイを行った。B7-GGGGS3-G36 CAR-T細胞は、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的細胞(CAIX+CD70+)に対して優先的な殺傷活性を有することが示された。一定時間のインキュベーション後、Celigoによって二重陽性細胞および単一陽性細胞の数が測定された。また、B7-GGGGS3は、CAIX+細胞と混合している間、CAIX+CD70+に対する制限された選択的インデックスを有することがわかる。
【
図55】B7-GGGGS3-G36が優先殺傷を示していることを示す。4つの異なるCRISPRで操作されたskrc-59細胞は、BFP蛍光群で形質導入された。細胞は、1:1:1:1の比率で混合され、B7-GGGGS3-G36 CAR-T細胞または培地で処理された。処理後、PEで標識された抗CD70抗体およびAPC標識された抗CAIX抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーを行った。B7-GGGGS3-G36は、CAIX+CD70+細胞に対する選択的殺傷を有し、その集団は、26.7%から18.5%に減少したことを示した。FACSからのこの選択的殺傷データでは、B7-GGGGS3-G36がCAIX+CD70+細胞に対して選択的殺傷を有し、その集団は、26.7%から18.5%に減少したことを示した。
【
図56】二重特異性スプリットCAR Tの概略図を示す。抗CD70および抗CAIX scFvは、異なる共刺激ドメインで細胞表面に発現した。例えば、dual(split)CAR T,Nat Rev Cancer 16(9):566-81を参照されたい。
【
図57】ccRCC原発癌細胞での分割CAR殺傷を示す。分割CAR T細胞は、モノCAR TおよびタンデムCAR T細胞を用いた原発性ccRCC癌細胞に対する殺傷活性を評価された。それは、分割CARが1:1の比率のような低いE:T比で優れた殺傷を達成したことを示した。
【
図58】抗炭酸脱水酵素IX(G250)scFvクローンのアミノ酸配列の多重整列を提供する。
【
図59】ヒトおよびマウスのCAIXアミノ酸配列の整列を提供する。
【
図60】炭酸脱水酵素IX(G250)の構造を提供する。
【
図61】Skrc-59形質導入細胞のCAR T細胞殺傷アッセイを示す。Celigo画像サイトメトリーが示される。
【
図62】10個の異なる種の相同性研究を示す。ツリー:各枝の距離は、配列間の差異の数に等しく(例えば、0.1は、2つの配列間の差異が10%であることを意味する)、2つの種の間の距離は、それらを接続するすべての枝の合計の長さに等しい。相同性>60%→潜在的な交差反応性。
【
図63】異なる種からのCAIXまたはCD70を発現するskrc-59安定細胞株の確立を示す。CRISPRは、CAIX-/CD70-skrc-59細胞をノックアウトした→10個の異なる構築物(5つの異なる種からのCD70またはCAIX)で形質導入した→FACSによって分類した。BFP(Celigo用)で半分形質導入した。市販の抗体で染色した。
【
図64】抗CAIX(G36)scFvの結合アッセイを示す。市販の抗体の結合データで正規化した。非線形回帰および対数(アゴニスト)対応答モデルを使用して分析した。
【
図65】抗CAIX(G36)CAR T細胞の殺傷アッセイを示す。サル100%(ヒトと同じ殺傷、交差反応性)、マウス、ハムスター50%(有意な殺傷)。
【
図66】抗CD70(B7)CAR T細胞の殺傷アッセイを示す。
【
図67】20個の異なる抗CAIX CAR T細胞の殺傷アッセイを示す。
【
図68】倍率変化の殺傷アッセイG36 E:T 10:1を示す。
【
図69】殺傷アッセイG36 E:T 5:1を示す。
【
図71】殺傷アッセイ 20個の抗CAIX scFvを示す。
【
図76-1】抗cd70抗体のアミノ酸配列および生殖細胞系列の整列を示す。
【
図78】抗PDL1配列および抗PD1配列のアミノ酸配列および生殖細胞系列の整列を示す。
【
図79】抗CAIX抗体のアミノ酸配列および生殖細胞系列の整列を示す。
【
図80】タンデムCAR B7-GGGGS5-G36の細胞毒性を示す。
【
図81-1】抗TIGIT抗体のアミノ酸配列および生殖細胞系列の整列を示す。
【
図83-1】抗PD1核酸およびアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、いくつかの血液由来の癌の治療にすでに革命をもたらした、刺激的な発見の領域を表す。例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)では、寛解率が80~90%であると実証され、FDAの承認に至った。この技術は、患者自身の免疫細胞を利用して、癌細胞上に位置する特定のタンパク質をより良く認識するようにそれらを設計することによって、癌と戦うことができる。例えば、その変更が研究室で行われた後、免疫細胞は、研究室で広範囲に成長し、癌を殺す可能性を倍増させ、最終的に患者に注入され、増加した有効性と数により、体内のどこにあっても癌を攻撃することができる。
【0035】
CAR T細胞療法は、腎細胞癌(RCC)などの固形腫瘍では、癌細胞が免疫浸透をオフにする腫瘍微小環境を作り出すため、ほとんどとらえどころのないものであった。我々は、この技術に対する重要な情報を提供することができる高度なマウスモデルの作成に成功した。我々のアプローチは、免疫学的フィンガープリントをよりよく理解するために研究することができるマウスにおけるヒト化RCCの作成に依存する。ヒトRCCがマウス内でどのように振る舞うかを調べることで、研究室は、炭酸脱水酵素IX[CAIX]およびCD70など、ヒトおよび他の哺乳動物においてCAR T細胞療法を使用して標的とすることができる抗原を特定することができた。大体において、これらの2つの抗原、すなわちCAIXおよびCD70は、腎臓癌腫瘍細胞上でのみ一緒に見出され、これにより、免疫系は健康な組織への影響を最小限に抑えて局所的に攻撃することができる。チェックポイント遮断抗体を産生および/または分泌するT細胞を操作することにより、微小腫瘍環境内の免疫抑制効果を打ち消す際の進歩もあった。これらのアプローチを合わせると、腫瘍微小環境内で劇的に改善された有効性が可能になるであろう。
【0036】
本明細書に記載されているのは、例えば、CAIXおよびCD70を標的とするCAR T細胞であり、それは、腫瘍微小環境の変化および後続する抗腫瘍効果を綿密に監視しながら動物に投与することができる。当業者は、これらのアプローチが、免疫チェックポイント遮断剤の使用など、RCCの臨床状況にすでにプラスの影響を与えている現在利用可能な技術と組み合わせることもできることを認識するであろう。
【0037】
1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が本明細書に提供される。しかしながら、本発明が、様々な形式で具現化され得ることが、理解される。したがって、本明細書に開示された特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の根拠として、および当業者に本発明を任意の適切な方法で用いるように教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0038】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の参照を含む。特許請求の範囲および/または明細書において「備える」という用語とともに使用されるときの「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つ超」の意味とも一致する。
【0039】
句「例えば」、「など」、「含む」などが本明細書で使用される場合は常に、他に明確に明記されない限り、句「限定することなく」が付随することが理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0040】
用語「実質的に」は、意図した目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、単語「実質的に」が明確に列挙されていなくても、用語「実質的に」によって修正されることが理解される。
【0041】
用語「備えている(comprising)」および「含んでいる(including)」、ならびに「有している(having)」および「伴っている(involving)」(および同様に「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、および「伴う(involves)」)などは、交換可能に使用され、同じ意味を有している。具体的には、用語それぞれは、「含んでいる(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、それ故、非限定用語(open term)の意味「少なくとも以下の(at least the following)」であると解釈され、追加の特徴、限定、態様などを除外しないとも解釈される。したがって、例えば、「工程a、b、およびcを伴うプロセス」は、プロセスが少なくとも工程a、bおよびcを含むことを意味している。用語「1つ(a)」、「1つ(an)」が使用される場合は常に、そのような解釈が文脈において無意味でない限り、「1つまたは複数」と理解される。
【0042】
本明細書で使用される「約」という用語は、おおよそ、大まかに、およそ、またはその領域内を指すことができる。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、それは、記載された数値の上および下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、用語「約」は、本明細書では、数値を、記載された値の上下に20パーセントの変動(上下)で変更するために使用される。
【0043】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、CARの外因性発現によって、患者のT細胞を、腫瘍細胞を殺傷するように再指向させる。
図1を参照すると、例えば、CARは、抗体または断片の抗原認識ドメインをT細胞受容体および共受容体の細胞内シグナル伝達ドメインに連結する、膜貫通融合タンパク質である。例えば、キメラ抗原受容体は、抗原特異的な抗体断片をT細胞共刺激ドメインとCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインに融合させ、目的の細胞、例えば、腫瘍細胞上に提示された抗原へのT細胞の再指向を可能にする。
【0044】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合する(と免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指すことができる。「特異的に結合する」または「と免疫反応する」は、所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドと反応しない抗体を指すことができる。本発明の抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、完全ヒト、二重特異性、多重特異性、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖抗体、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、scFv、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc融合、ならびにFab発現ライブラリが含まれるが、これらに限定されない。反対の明示がない限り、本明細書でなされる「抗体(単数)」または「抗体(複数)」への言及は、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、例えば、これらの分子の任意の(またはすべての)ものを包含する。
【0045】
一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチド分子は、共有結合的に連結されたVH::VLヘテロダイマーであり、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVHコード遺伝子とVLコード遺伝子とを含む遺伝子融合体から発現できる。(Huston et al.(1988)Proc Nat Acad Sci USA 85(16):5879-5883を参照されたい)。抗体V領域由来の、天然で凝集しているが化学的に分離された軽鎖および重鎖ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に同様の三次元構造に折り畳まれるscFv分子へと変換するための化学構造を識別するための多くの方法が説明されている。例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,946,778号を参照されたい。
【0046】
固形腫瘍は、CAR-T療法に特有の課題を提供する。血液癌とは異なり、腫瘍に関連する標的タンパク質は腫瘍と健康な組織の間で過剰発現し、その結果、健康な組織へのon-target/off-tumor のT細胞による殺傷が起こる。さらに、腫瘍微小環境(TME)における免疫抑制は、腫瘍を死滅させるCAR-T細胞の活性化を制限する。開示の態様は、これらの問題に対処する。例えば、実施形態は、(a)癌細胞上の2つの抗原を標的とし、on-target/off-tumor のT細胞による殺傷を軽減する二重特異性CARを含むT細胞を含む。
図12を参照すると、例えば、B7-GGGGS-G36 CAR T細胞は、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的腎癌細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。実施形態では、二重特異性CARはまた、(b)腫瘍微小環境における抑制を除去するチェックポイント遮断抗体を分泌することができる。他の実施形態は、正常細胞上の低密度抗原ではなく、腫瘍細胞上の高密度抗原のみを認識する微調整されたCARを含む。理論に拘束されることを望まないが、これは、例えば、CARに関連する1つまたは複数の抗体の親和性を低下させることによって達成することができる。
【0047】
例えば、
図1は、CAIXおよびCD70などの2つの抗原を標的とする二重特異性CARの概略図を提供する。二重特異性CARは、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するCARを指すことができる。例えば、二重特異性CARは、ヒトもしくはヒト化抗体などのモノクローナル抗体、またはそれらの断片を含むことができる。この場合、結合特異性のうちの1つは、CAIXおよび/またはCD70である。第2の結合標的は、任意の他の抗原であり、有利なことに、細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットである。例えば、結合特異性のうちの1つはCAIXに対するもので、第2の結合特異性は、CD70に対するものである。
【0048】
報告されているように(例えば、J Clin Oncol 24(2006)20-22;Molecular Therapy 21(2013)4を参照されたい)、腎細胞癌RCC(RCC)の患者に対する第1世代抗CAIX G250 CAR-T細胞の最初の臨床試験は、on-target off-tumor の副作用への扉を開くことができなかった。最初の3人の患者のうち2人は、胆管でのCAIX発現のために肝炎を発症した。二次scFvなどの二次抗体の導入は、二重標的CAR Tがon-target/off-tumor 効果を低減または排除することができるため、対象の安全性を高める可能性がある。例えば、
図24を参照すると、CAIXおよびCD70の発現は、ccRCC上で上方制御され、共発現している。一方、CAIXは、胆管(主に細胞質)に発現し、CD70は、胆管には発現していない。例えば、British Journal of Cancer 103(2010)676-684を参照されたい。
【0049】
二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。二重特異性抗体を作製する方法は当技術分野で知られている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,329,178号を参照されたい。
【0050】
ヒトから得られる抗体分子は、分子中に存在する重鎖の性質が互いに異なる、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDのクラスのいずれかに関連する。ある特定のクラスは、IgG1、IgG2、および他のものなどのサブクラスも有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖であり得る。
【0051】
「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指すことができる。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる、重鎖と軽鎖のV領域内の3つの高度に異なる区間(stretch)は、「フレームワーク領域」または「FR」として知られるより保存された隣接区間の間に挿入される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域の間、およびそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、3次元空間で互いに対して配置されて、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合した抗原の3次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。例えば、抗CAIXおよび抗CD70抗体のCDRを提供する表1および3を参照されたい。
【0052】
腫瘍の進行に関連する新たなメカニズムは免疫チェックポイント経路であり、これには、正常な条件下でT細胞の過剰な活性化を防いで、自己限定的な方法でT細胞の機能を可能にする、細胞相互作用が含まれる。回避メカニズムとして、多くの腫瘍は免疫チェックポイント分子の発現を刺激することができ、腫瘍の進行を抑制できないT細胞のアネルギー性表現型をもたらす。たとえば、新しい臨床データは、細胞毒性Tリンパ球による癌細胞の殺傷を防止する、免疫チェックポイントとしての、1つの阻害性リガンドと受容体のペア、プログラム死リガンド1(PD-L1、B7-H1およびCD274)とプログラム死受容体1(PD-1、CD279)の重要性を強調している。PD1受容体は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、宿主組織などの多くの細胞型で発現している。PD-L1を発現する腫瘍および抗原提示細胞(APC)は、受容体PD-1への結合を介して細胞毒性Tリンパ球のT細胞受容体(TCR)シグナル伝達を遮断でき、サイトカインの生成およびT細胞増殖を減少させる。PD-L1の過剰発現は多くの腫瘍タイプで見られ、CD80(B7.1)を含む他のタンパク質との相互作用を通じて免疫抑制機能を媒介し、CD28への結合を介してT細胞を活性化する能力を遮断する。
【0053】
腫瘍を対象とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するヒトリンパ球の遺伝子操作は、タンパク質抗原のプロセシングと提示の異常による腫瘍免疫回避メカニズムを迂回する抗腫瘍エフェクター細胞を生成できる。さらに、これらのトランスジェニック受容体は、タンパク質由来ではない腫瘍関連抗原を対象とすることができる。本開示のある特定の実施形態では、少なくともCARを含むように改変されたリンパ球(CART)があり、本発明の特定の実施形態では、単一のCARが2つ以上の抗原(例えば、二重特異性CAR)を標的とする。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる共刺激ドメインを有する細胞表面上に発現している抗CD70および抗CAIX scFvなどの分割CARを含む。さらに、いくつかの実施形態は、微調整されたCARを含む。いくつかの実施形態では、CARTは、例えば、抗体、またはIL-12、IL-15、またはIL-18などのサイトカインなどの1つまたは複数のポリペプチドを発現および分泌するようにさらに改変される。そのようなCARTは、本明細書では、武装化(armed)CARTまたはCARファクトリと呼ばれる。武装化CARTは、標的部位(すなわち、腫瘍部位)での局所的なポリペプチドの同時分泌を可能にする。
【0054】
例えば、
図56を参照すると、分割CARは、T細胞またはNK細胞などの細胞の表面上に2つ以上のCARを含む。CARは、CD70およびCAIXなどの2つ以上の抗原に特異的であり得る。
図77は、分割CARをコードする核酸構築物の例を提供する。この例では、第1のCARは、CAIXに特異的であり、第2のCARは、CD70に特異的である。本明細書に記載されているように、CARは、所望の任意の方向にあり得る。例えば、第1のCARは、CD70に特異的であり得、第2のCARは、CAIXに特異的であり得る。例に示されているように、第1および第2のCARは、単一の核酸構築物から発現することができる。そのような例では、切断可能なリンカーをコードする核酸は、第1のCARをコードする核酸と第2のCARをコードする核酸との間に配置され得る。他の実施形態では、2つのCARは、同じ細胞であるが、2つの別個の核酸構築物から発現することができる。
【0055】
キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる改変TCR、例えば、特定の腫瘍関連抗原に対する高親和性によって以前に選択された一本鎖可変抗体断片(scFv)を含有するCARは、癌に対する強力な新しいアプローチである。CARに提示されているscFvは、CD3ζを含む細胞内シグナル伝達ブロックに連結されて、T細胞の活性化を誘導してから抗原に結合する。この構造は、第1世代のCARに特徴的であり、CD28、4-1BB、もしくはOX40のシグナル伝達共刺激エンドドメインをCD3に連結する第2世代のCAR、または2つの要素をCD3ζにタンデムに連結する第3世代のCARに改善されたものである。これらのエンドドメインは、抗原提示細胞(APC)によるTCR認識中の完全なT細胞活性化に必要であり、CAR-T細胞のサイトカイン産生と増殖を改善する。特有な腫瘍関連抗原を見つけることが困難なため、腫瘍の場所へのT細胞の非効率的なホーミングのため、体内でのT細胞の持続性の低下のため、および固形腫瘍の免疫抑制性微小環境のため、CART細胞の効果はこれまで固形腫瘍の治療に控えめであった。
【0056】
特定の場合において、リンパ球は、キメラで、非天然であり、そして少なくとも部分的に人の手によって操作された受容体を、含み得る。特定の場合において、操作されたキメラ抗原受容体(CAR)は、1、2、3、4、またはそれ以上の成分を有し、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分は、リンパ球が1つまたは複数の腫瘍抗原含有癌細胞に対して標的化するまたはそれに結合するのを促進する。
【0057】
本発明によるCARは、少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメインを含む少なくとも1つの膜貫通ポリペプチドと、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む1つの膜貫通ポリペプチドと、を含み、その結果、ポリペプチドが一緒に集合して、キメラ抗原受容体を形成する。本開示の態様において有用な例示的なCARSには、例えば、PCT/US2006/046350、PCT/US2015/067178、PCT/US2015/067225、およびPCT/US2019/022272に開示されるものが含まれ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で使用される「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合することができるオリゴまたはポリペプチドを指すことができる。ドメインは、細胞表面分子と相互作用することができる。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択され得る。
【0059】
特に、細胞外リガンド結合ドメインは、標的の抗原に対する抗体に由来する抗原結合ドメインまたは抗原認識ドメインを含み得る。抗原結合ドメインまたは抗原認識ドメインは、抗体断片であり得る。「抗体断片」は、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷の抗体の一部を含む無傷の抗体以外の分子であり得る。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFv)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるがこれらに限定されない。例えば、
図1を参照すると、一実施形態は、抗原認識ドメインとして2つのscFvを伴うCARを含む。例えば、
図14を参照すると、一実施形態は、抗原認識ドメインとして1つのscFvを伴うCARを含む。
【0060】
抗原認識ドメインは、目的の任意の抗原標的を対象とすることができる。実施形態では、目的の抗原標的は、癌細胞の表面などの細胞の表面上にある。抗原標的の非限定的な例には、CAIXおよび/またはCD70が含まれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、CARは、CAIXおよび/またはCD70に特異的である。
【0062】
実施形態では、該細胞外リガンド結合ドメインは、柔軟性リンカーによって接合された標的抗原特異性モノクローナル抗体の軽鎖(VL)および重鎖(VH)可変断片を含む一本鎖抗体断片(scFv)である。当業者は、実施形態が、当技術分野で典型的に知られている異なるリンカーを含むことができることを認識するであろう。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Chen, et al.”Fusion protein linkers:property,design and functionality.”Advanced drug delivery reviews 65.10(2013):1357-1369を参照されたい。例えば、異なるリンカーを使用すると、二重標的化CAR構築物を微調整できる。リンカーの長さは、二重標的化CAR構築物の抗体、標的エピトープへのそれらのアプローチの角度、腫瘍細胞膜上の標的のトポグラフィーに応じて変化し得る。例えば、
図2を参照すると、柔軟性リンカーには、GGGS1、GGGGS3、GGGGS5、またはIgG1ヒンジが含まれ得る。いくつかの実施形態では、リンカー中のGの数は、S1、S2、S3、S4、S5、またはS6のいずれかと組み合わせて、2、3、4、5、6、または7であり得る。例えば、scFv抗体は、CAIXおよび/またはCD70に特異的である。例えば、
図10および
図50に示されるように、リンカーに対するscFvの方向は、変化し得る。
図50に示される1つの核酸構築物において、抗CAIX scFvは、第1のカセット(すなわち、リンカーの前)にあり得、抗CD70カセットは、第2のカセット(すなわち、リンカーの後)にあり得る。あるいは、抗CAIX scFvは、第2のカセットにあり得、抗CD70 scFvは、第1のカセットにあり得る。例えば、
図51を参照すると、抗CAIX scFv G36は、第1のカセットにあり得、抗CD70 B7は、第2のカセットにあり得る。あるいは、抗CAIX scFv G36は、第2のカセットにあり得、抗CD70 B7は、第1のカセットにあり得る。本明細書に記載されるように、様々な長さおよび柔軟性のリンカーを利用することができる。示されているように、2つのscFvの異なる方向が結合に影響を与える可能性がある。例えば、G36は、第2のカセットとして操作されたものよりも高い結合力を有する。一方で、
図11に示されるように、抗CD70 scFv B7は、有意な優先性を有さない。
【0063】
本開示による、CARを構築するのに有用な抗体の例には、本明細書の表1、2、3、または4に詳述されているものが含まれる。例えば、内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、WO/2007/065027およびWO/2016/100985も参照されたい。
【0064】
CAR-Tを構築するのに有用な抗原認識ドメイン、例えば、CAIXおよび/またはCD70を対象とするscFVは、核酸(例えば、DNA)を使用して合成、操作、および/または産生され得る。抗原認識ドメインをコードするDNAは、例えば、これらに限定されないがCD28および41BBおよびCD3-ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインなどの、免疫学的に関心のある分子の、例えば、これらに限定されないがCD8ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインなどの必要なCAR-T要素をコードするDNAに、フレーム内でクローニングできる。たとえば、
図2を参照されたい。
【0065】
非限定的な例として、ラクダ科の単一ドメイン抗体断片もしくは受容体リガンド、抗体結合ドメイン、抗体超可変ループ、またはCDRなど、scFv以外の結合ドメインも、リンパ球の事前定義された標的化に使用することができる。
【0066】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、該細胞外リガンド結合ドメインと該膜貫通ドメインとの間にストーク領域をさらに含む。本明細書で使用される「ストーク領域」という用語は、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のオリゴまたはポリペプチドを意味することができる。特に、ストーク領域は、細胞外リガンド結合ドメインにより多くの柔軟性とアクセス性を提供するために使用される。ストーク領域は、最大300個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸、例えば、25~50個のアミノ酸を含み得る。ストーク領域は、CD8、CD4またはCD28の細胞外領域の全部または一部などの天然に存在する分子の全部または一部、または抗体定常領域の全部または一部に由来し得る。あるいは、ストーク領域は、天然に存在するストーク配列に対応する合成配列であってもよく、または完全に合成ストーク配列であってもよい。一実施形態では、該ストーク領域は、ヒトCD8アルファ鎖の一部である。
【0067】
本発明のCARのシグナル変換ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインの標的への結合後の細胞内シグナル伝達に関与し、免疫細胞の活性化および免疫応答をもたらす。換言すれば、シグナル変換ドメインは、CARが発現する免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与している。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。したがって、「シグナル変換ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを変換し、細胞に特定の機能を実行するように指示するタンパク質の部分を指すことができる。
【0068】
シグナル変換ドメインは、抗原依存性の一次活性化を開始するものと、抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルを提供するものとの、細胞質シグナル伝達配列の2つの異なるクラスを含むことができる。一次細胞質シグナル伝達配列は、ITAMである免疫受容体活性化チロシンモチーフとして知られているシグナル伝達モチーフを含むことができる。ITAMは、syk/zap70クラスのチロシンキナーゼの結合部位として機能するさまざまな受容体の細胞質内尾部に見られる明確に定義されたシグナル伝達モチーフである。本発明で使用されるITAMの例には、非限定的な例として、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、FcRイプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれ得る。別の実施形態では、CARのシグナル伝達変換ドメインは、CD3ゼータシグナル伝達ドメイン、またはFcイプシロンRIベータ鎖もしくはガンマ鎖の細胞質内ドメインを含むことができる。別の実施形態では、シグナル伝達は、CD28および例えば、4-1BBまたはOX40などの)腫瘍壊死因子受容体(TNFr)によって提供される共刺激とともに、CD3ゼータによって提供される。
【0069】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル分子を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、タンデムに2、3、4またはそれ以上の共刺激分子を含む。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。
【0070】
「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが搭載されたMHC分子とTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞上の分子を指すことができる。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体とリガンドを結合させるアゴニストまたは抗体、および特にB7-H3と特異的に結合するリガンドが含まれ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドは、とりわけ、T細胞上に存在する共刺激分子、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、と特異的に結合する抗体も包含する。
【0071】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、増殖などの、しかしそれに限定されない細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指すことができる。共刺激分子には、MHCクラス1分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれるが、これらに限定されない。共刺激分子の例には、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3およびCD83と特異的に結合するリガンドなど、が含まれる。
【0072】
別の特定の実施形態では、該シグナル変換ドメインは、共刺激性TNFRメンバーファミリーの細胞質内尾部であるTNFR関連因子2(TRAF2)結合モチーフである。共刺激性TNFRファミリーメンバーの細胞質尾部には、主要な保存モチーフ(P/S/A)X(Q/E)E)またはマイナーモチーフ(PXQXXD)からなるTRAF2結合モチーフが含まれる(前記Xは任意のアミノ酸である)。TRAFタンパク質は、受容体の三量体化に応答して、多くのTNFRの細胞内尾部に動員される。
【0073】
キメラ抗原受容体は、抗原認識ドメインを、細胞シグナル伝達を調節する(すなわち刺激する)シグナル伝達ドメイン(刺激ドメインとも呼ばれる)に融合する。そのような刺激ドメインの非限定的な例は、CD28、41BB、および/またはCD3-ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインのものを含む。たとえば、
図2を参照されたい。
【0074】
適切な膜貫通ポリペプチドの際立った特徴は、免疫細胞、特にリンパ球細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞の表面で発現し、所定の標的細胞に対する免疫細胞の細胞応答を誘導するために相互作用する能力を含む。細胞外リガンド結合ドメインおよび/またはシグナル変換ドメインを含む本発明のCARの異なる膜貫通ポリペプチドは、一緒に相互作用して、標的リガンドとの結合後のシグナル変換に関与し、免疫応答を誘発する。膜貫通ドメインは、天然由来または合成由来のいずれかに由来し得る。膜貫通ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。
【0075】
本明細書で使用される「の一部」という用語は、分子の任意のサブセット、すなわちより短いペプチドを指すことができる。あるいは、ポリペプチドのアミノ酸配列機能的バリアントは、ポリペプチドをコードするDNAの変異によって調製することができる。そのようなバリアントまたは機能的バリアントには、例えば、アミノ酸配列内の残基からの欠失、または挿入または置換が含まれる。最終構築物が所望の活性を有し、特に特異的な抗標的細胞性免疫活性を示すことを条件として、削除、挿入、および置換の任意の組み合わせを行って、最終構築物に到達してもよい。宿主細胞内の本発明のCARの機能性は、特定の標的が結合すると、該CARのシグナル伝達能力を実証するのに適したアッセイで検出可能である。そのようなアッセイは、当業者に利用可能である。例えば、このアッセイは、カルシウムイオン放出の増加、細胞内チロシンリン酸化、イノシトールリン酸代謝回転、またはこのようにしてもたらされるインターロイキン(IL)2、インターフェロン.ガンマ.、GM-CSF、IL-3、IL-4の産生、の測定を含むアッセイなど、標的の結合時にトリガーされるシグナル伝達経路の検出を可能にする。
【0076】
炭酸脱水酵素IX(CAIX)
RCC上の表面抗原と反応するいくつかのmAbが同定されている。これらには、分化および過剰発現している抗原を認識するmAb、ならびに正常な腎臓では発現しないRCC関連抗原を識別するmAbが含まれる(Michael,2003;Yang,2003)。G250およびMNとしても知られるCAIXの遺伝子は、染色体9p12~13に位置し、亜鉛に結合し、CA活性を有する膜貫通タンパク質をコードする(Zavada,1997;Grabmaier,2000)。子宮頸部のヒト癌に由来するHeLa細胞およびRCC細胞株では、CAIX/G250/MN/は、原形質膜で見られ、かつ見かけの分子量が58および54kDaの核タンパク質として見られる。それは、N-グリコシル化されており、非還元状態では、それは、オリゴマーを形成する(Pastorekova,1992)。予測されたCAIXタンパク質の配列分析は、シグナルペプチド(aa1-37)、細胞外(EC)部分(aa38-414)、20個のアミノ酸の疎水性膜貫通領域(aa415-434)、および25個のアミノ酸の小さなC末端細胞外部分(aa435-459)を含有することを示す。ヒトおよびマウスのCAIXアミノ酸配列を
図59に示す。細胞外部分は、2つの区別されるドメインで構成されている。シグナルペプチドとCAドメインの間の領域(aa53-111)は、ヒトの大きな凝集プロテオグリカンであるアグリカンのケラタン硫酸付着ドメインと有意な相同性(38%の同一性)を示す(Doege,1991)。CAIXのPG様ドメインでは、コンセンサスE-E-D-L-P-E(配列番号[ ])を伴うヘキサペプチドモチーフが7回繰り返される。炭酸脱水酵素ドメインは、原形質膜の近くにある(aa135-391)。CAIX抗原は、悪性形質転換時に現れ、淡明細胞型RCC標本の約95%、ならびにほとんどの腎細胞転移で陽性に染色される。
【0077】
腫瘍細胞の細胞表面に発現するエピトープは、細胞内抗原とは異なり、それらがインビボで循環抗体にアクセス可能であるため、体液性抗癌療法の優れた標的である。ヒトモノクローナル抗体(mAb)は、増えつつある癌における忍容性の高い治療選択肢となっている。抗体による選択的腫瘍標的化の概念は、抗体と、正常組織ではなく悪性細胞上で発現する抗原との間の貪欲な相互作用に基づく。腫瘍に対する抗体がインビボでそれらの効果を媒介する能力について多くのメカニズムが提案されてきた。例えば、抗体Fcドメインとエフェクター細胞FcγRの関与は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)につながる。いくつかの(拮抗または抑制)抗体は、腫瘍細胞上のシグナル伝達をブロックすることができ、このようにして、腫瘍細胞を免疫エフェクター細胞によって引き起こされるアポトーシスまたは溶解細胞死に対してより感受性にすることにより、免疫エフェクター応答と相乗的に作用し得る(Baselga,1998)。抗体を利用することができる別の方法は、キメラ免疫受容体またはそうでなければ「デザイナーT細胞」としても知られるTリンパ球上の「Tボディ」の構築および機能的発現によるものである。キメラ受容体の抗原結合ドメインは、抗原結合ドメイン、例えば、一本鎖抗体(scFv)からなり得るが、細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞活性化を誘導することができる膜結合受容体の細胞膜部分に由来する(Maher,2002;Pinthus,2003)。キメラ受容体を移植されたTリンパ球は、受容体リガンドへの特異的結合時に効率的なT細胞活性化を伴うMHC非依存性および抗体ベースの抗原結合の複合的な利点を有する。この活性化により、IL-2、インターフェロン、GM-CSF、およびTNF-αなどのサイトカインが産生および分泌される。インビトロおよびインビボの両方で、腫瘍細胞の抗原特異的溶解が報告されている。Tリンパ球は、選択した受容体分子をコードするベクター構築物のレトロウイルス形質導入により、抗原特異的キメラ受容体を恒久的に移植することができる(Riviereによるレビュー、2004)。
【0078】
本発明の実施形態は、炭酸脱水酵素IX(G250)タンパク質に免疫特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその断片を含むことができる。そのような抗体は、該タンパク質の炭酸脱水酵素活性を低下させることができる。例えば、そのような抗CAIX抗体は、WO2007/065027およびUS8,466,263に記載されているものを含むことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、抗炭酸脱水酵素IX(G250)scFvクローンのアミノ酸配列の多重整列を提供する
図58を参照されたい。例えば本発明の実施形態は、一本鎖抗体、例えば、scFv G6、G9、G10、G17、G21、G27、G28、G36、G37、G39、G40、G45、G57、G62、G98、G104、G119、またはG125、ならびに本明細書に開示される方法に従って同定される任意の他のscFvを含む。
【0079】
例えば、抗CAIX抗体のCDRのアミノ酸を表1に示す。
【0080】
【0081】
例えば、抗CAIX抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列を表2に示す。
【0082】
【0083】
実施形態はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれかのコンセンサス配列を含むことができる。例えば、4つ以上のクローンが所与位置に同じアミノ酸を有する場合、コンセンサス内のその位置は、そのアミノ酸によって指定される。
【0084】
CD70
CD70は、腎臓の腫瘍細胞(例えば、淡明細胞型癌および乳頭癌)、膵臓、喉頭または咽頭、黒色腫、卵巣、肺腺癌、結腸、乳房、および脳の表面に見られる。例えば、British Journal of Cancer 103(2010)676-684を参照されたい。
【0085】
本発明の実施形態は、CD70に免疫特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその断片を含むことができる。例えば、本発明の実施形態は、scFv A20、B2、B3、B5、B7、B8、またはB9などの一本鎖抗体、ならびに本明細書に開示される方法に従って同定される任意の他のscFvを含む。
【0086】
例えば、抗CD70抗体のCDRのアミノ酸を表3に示す。
【0087】
【0088】
例えば、抗cd70抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列を表4に示す。
【0089】
【0090】
実施形態はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれかのコンセンサス配列を含むことができる。例えば、4つ以上のクローンが所与位置に同じアミノ酸を有する場合、コンセンサス内のその位置は、そのアミノ酸によって指定される。
【0091】
細胞
本開示の実施形態は、CARを発現する細胞(すなわち、CART)を含む。細胞は、癌治療のためにCARを発現することができる免疫細胞、またはCARをコードする発現ベクターを保有する細菌細胞などの細胞を含む、任意の種類のものであり得る。本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」という用語は、交換可能に使用することができる。これらのすべての用語には、それらの子孫も含まれ、これは、あらゆる後続世代である。例えば、計画的または偶発性の突然変異により、すべての子孫が同一ではない可能性がある。異種核酸配列を発現する状況において、「宿主細胞」は、ベクターを複製し、および/またはベクターによってコードされる異種遺伝子を発現することができる真核細胞を指すことができる。宿主細胞はベクターのレシピエントとして使用でき、使用されてきた。宿主細胞は、「トランスフェクト」または「形質転換」されてもよく、これは、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。形質転換された細胞は、初代対象細胞(primary subject cell)およびその子孫を含む。本明細書で使用される場合、「操作された」および「組換え」細胞または宿主細胞という用語は、例えば、ベクターなどの外因性核酸配列が導入された細胞を指すことができる。したがって、組換え細胞は、組換えによって導入された核酸を含まない自然発生細胞と区別できる。本発明の実施形態では、宿主細胞は、細胞毒性T細胞(TC、細胞毒性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞、またはキラーT細胞としても知られる)を含むT細胞であり、NK細胞およびNKT細胞もまた本開示に包含される。
【0092】
いくつかのベクターは、原核細胞および真核細胞の両方で複製および/または発現されることを可能にする制御配列を使用することができる。当業者は、上記の宿主細胞のすべてをインキュベートしてそれらを維持し、ベクターの複製を可能にする条件をさらに理解するであろう。また、ベクターの大規模生産、ならびにベクターによってコードされる核酸およびそれらの同族のポリペプチド、タンパク質、またはペプチドの生産を可能にする技術および条件も理解され、知られている。
【0093】
細胞は、自家細胞、同系細胞、同種異系細胞、場合によっては異種細胞であってもよい。
【0094】
治療を終わらせることが望まれる場合に、細胞が腫瘍性化する場合に、細胞の存在後の該細胞の不在が関心対象である研究にて、または他の事由にて、改変CTLを殺傷できることが望まれ得る状況は多い。この目的のために、誘導性自殺遺伝子などの制御された条件下で改変細胞を殺傷することができる特定の遺伝子産物の発現を提供することができる。
【0095】
武装化CART
本発明はさらに、1つまたは複数のポリペプチドを分泌するように改変されたCARTを含む。このようなCARTは、CARTファクトリ、CAR T細胞ファクトリ、または武装化CARTと呼ばれ得る。ポリペプチドは、例えば、本明細書に記載される抗体またはその断片であり得る。例えば、ポリペプチドは、抗体またはサイトカインであり得る。実施形態では、抗体は、TIGIT、CAIX、GITR、PD-L1、PD-L2.PD-1、CCR4、CTLA-4、VISTA、またはCD70に特異的である。例えば、CAR T細胞ファクトリは、PD-L1 mAbを腫瘍部位で局所的に分泌して、効果的な抗癌免疫を回復させ、および/またはT細胞の枯渇を逆転することができる。実施形態では、武装化CARTは、IL-12、IL-15、またはIL-18を分泌する。
【0096】
例えば、CARをコードするものと同じDNAベクター(例えば、抗原認識ドメイン)または第2の別個のベクターにあってよい第2の発現構築物は、目的の単一または複数の抗原を対象とする、ミニボディ(scFv-Fc)または抗体またはその断片をコードするのに使用でき、内部リボソーム侵入部位(IRES)の後にクローニングすることができる。図を参照すると、第2の発現カセットは、蛍光分子または免疫調節ミニボディのいずれかを含む。
【0097】
武装化CARTには、標的部位、例えば腫瘍部位でポリペプチドを同時に分泌するという利点がある。例えば、武装化CARTは、抗TIGIT抗体またはその断片を分泌することができる。TIGITは、抗腫瘍、およびCD8+T細胞依存性免疫応答などの他のT細胞依存性慢性免疫応答を制限するT細胞共抑制受容体である。TIGITは、活性化T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞のサブセットに発現される。たとえば、TIGITは腫瘍浸潤性T細胞で高度に発現している。癌モデルでは、TIGITの抗体遮断がCD8+T細胞のエフェクター機能および腫瘍クリアランスの向上に寄与した。
【0098】
実施形態では、武装化CARTの抗TIGIT抗体は、
図81に記載される抗TIGIT抗体クローン(またはその断片、例えば、FR1、FR2、FR3、FR4、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワークおよび/もしくはその中のCDR領域の任意の組み合わせ)のうちの1つまたは複数を含む。
【0099】
例えば、抗TIGIT抗体は、配列GYTF....TSYG(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR1、配列ISAY..NGNT(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR2、配列ARDPGLWFGLTHDYYFDY(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR3、配列SSNI....GSNT(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR1、配列RN.......N(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR2、および配列AAWDDSRSGPV(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR3を含むことができる。
【0100】
例えば、抗TIGIT抗体は、配列GFTF....SDYS(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR1、配列INSD..GSRT(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR2、配列ARGPGFFGFDI(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR3、配列RSNI....GRNS(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR1、配列SN.......N(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR2、および配列AAWDARLTGPL(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR3を含むことができる。
【0101】
例えば、抗TIGIT抗体は、配列GYSF....TNYW(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR1、配列INPV..NSRT(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR2、配列ARYYYYAMEV(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR3、配列SSNI....GSNT(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR1、配列RN.......N(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR2、および配列EAWDDSLNGPV(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR3を含むことができる。
【0102】
例えば、抗TIGIT抗体は、配列GYTF....TNYG(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR1、配列VDNN..NGNI(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR2、配列ARGLFSSRWYLWFDP(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR3、配列SSDVG...GYNY(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR1、配列EV.......T(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR2、および配列SSYTRSSTSYVV(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR3を含むことができる。
【0103】
例えば、抗TIGIT抗体は、配列GGTF....SSYA(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR1、配列ILPM..FGST(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR2、配列ARGRDIVAPSNSGFDV(配列番号[ ])を有するVH領域のCDR3、配列SNNV....GNQG(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR1、配列RN.......D(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR2、および配列SAYDRSLNAWV(配列番号[ ])を有するVL領域のCDR3を含むことができる。
【0104】
他の実施形態では、武装化CARTは、抗PDL1抗体またはその断片を分泌することができる。例えば、武装化CARTは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる仮特許出願第62/624,455号に開示されている抗PDL1抗体またはその断片を分泌することができる。例示的な抗PDL1抗体には、配列番号[ ]を有するVHアミノ酸配列および/または配列番号[ ]を有するVLアミノ酸配列を有する抗体が含まれる。例えば、
図78および
図81を参照されたい。
【0105】
実施形態では、武装化CARTの抗PDL1抗体は、
図78および/または
図81に記載される抗PDL1抗体クローン(またはその断片、例えば、FR1、FR2、FR3、FR4、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワークおよび/もしくはその中のCDR領域の任意の組み合わせ)のうちの1つまたは複数を含む。
【0106】
例えば、PDL-1抗体の重鎖および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである。
【0107】
例えば、抗PDL1抗体は、それぞれ配列番号[ ]、[ ]、および/または[ ]のアミノ酸配列を含む3つのCDRを有する重鎖と、アミノ酸配列を含む3つのCDRを有する軽鎖を有する。
【0108】
他の実施形態では、武装化CARTは、抗PD1抗体またはその断片を分泌することができる。例示的な抗PD1抗体には、配列番号[ ]を有するVHアミノ酸配列および配列番号[ ]を有するVLアミノ酸配列を有する抗体が含まれる。例えば、
図78および
図83を参照されたい。
【0109】
実施形態では、武装化CARTの抗PD1抗体は、
図78および
図83に記載される抗PD1抗体クローン(またはその断片、例えばFR1、FR2、FR3、FR4、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワークおよび/またはその中のCDR領域の任意の組み合わせ)のうちの1つまたは複数を含む。例えば、抗PD1抗体は、それぞれ配列番号[ ]、[ ]、および/または[ ]のアミノ酸配列を含む3つのCDRを有する重鎖と、それぞれ配列番号[ ]、[ ]、および/または[ ]のアミノ酸配列を含む3つのCDRを有する軽鎖を有する。例えば、
図78および
図83を参照されたい。
【0110】
実施形態では、PD-1抗体の重鎖および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列を以下に示す。
PD-1抗体の重鎖(V
H)の相補性決定領域(CDR)
PD-1抗体の軽鎖(V
L)の相補性決定領域(CDR)
【0111】
他の実施形態では、武装化CARTは、抗CCR4抗体またはその断片を分泌することができる。例えば、武装化CARTは、WO2009/086514、WO2013/166500、PCT/US2015/054202、またはPCT/US2016/026232に記載されているような抗CCR4抗体または断片を分泌することができる。
【0112】
例えば、武装化CARTの抗CCR4タンパク質抗体またはその断片は、アミノ酸配列GYTFASYY(配列番号[ ])を有するVH CDR1領域、アミノ酸配列WINPGNVNTKYNEKFKG(配列番号[ ])を有するVH CDR2領域、アミノ酸配列STYYRPLDY(配列番号[ ])を有するVH CDR3領域、および/またはアミノ酸配列KSSQSILYSSNQKNYLA(配列番号[ ])を有するVL CDR1領域、アミノ酸配列WASTRES(配列番号[ ])を有するVL CDR2領域、および/またはアミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号[ ])を有するVL CDR3領域を有する抗体を含むことができる。
【0113】
例えば、武装化CARの抗CCR4タンパク質抗体またはその断片は、VHアミノ酸配列
(配列番号[ ])および/またはVLアミノ酸配列
(配列番号[ ])を有する抗体を含むことができる。
【0114】
例えば、武装化CARTの抗CCR4タンパク質抗体またはその断片は、以下を有する抗体を含むことができる。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
抗CCR4抗体の重鎖および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列を以下の表に示す。
【0126】
武装化CARTは、細胞内シグナル伝達ドメインの後に目的のポリペプチドをコードする核酸を含めることで構築できる。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインと目的のポリペプチドとの間に配置された内部リボソーム侵入部位(IRES)がある。当業者は、複数のIRES配列をタンデムで使用することにより、2つ以上のポリペプチドを発現できることを理解することができる。
【0127】
一実施形態では、本明細書に提示される方法および組成物は、例えば、T細胞の枯渇と戦うために、腫瘍微小環境においてポリペプチドを分泌する力を備えた、CAIXおよび/またはCD70に対する特異性を有するT細胞などの標的特異性T細胞を提供する。例えば、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、腫瘍微小環境を構成する分化の異なる段階にある初期骨髄前駆細胞、未成熟顆粒球、マクロファージ、および樹状細胞の不均一集団である。MDSCは、炎症誘発性サイトカインによって誘発され、感染性および炎症性の病状に多数見られる。理論に拘束されることを望まないが、腫瘍微小環境におけるそれらの存在は、腫瘍関連免疫抑制の促進における原因となる役割を示す。ヒトMDSCは、Siglec-3/CD33(GENBANKアクセッション番号NM_001772.4(ヌクレオチド配列)およびNP_001763.3(アミノ酸配列))を発現し、CD14(GENBANKアクセッション番号NM_000591.4(ヌクレオチド配列)およびNP_000582.1(アミノ酸配列))とCD15(GENBANKアクセッション番号NM_002033.3(ヌクレオチド配列)およびNP_002024.1(アミノ酸配列))の不均一な発現を有し、これらは、複数のサブセットが存在することを示す。MDSCを同定するために有用な他のMDSCマーカーには、B7-1/CD8(NM_001145873.1(ヌクレオチド配列)、NP_001139345.1(アミノ酸配列))、CCR2(NM_001123041.2(ヌクレオチド配列)、NP_001116513.2(アミノ酸配列))、CD1d(NM_001766.3(ヌクレオチド配列)、NP_001757.1(アミノ酸配列))、CD2(NM_001328609.2(ヌクレオチド配列)、NP_001315538.1(アミノ酸配列))、CD31/PECAM-1(NM_000442.5(ヌクレオチド配列用)、NP_000433.4(アミノ酸配列))、CD43(NM_001030288.3(ヌクレオチド配列)、NP_001025459.1(アミノ酸配列))、CD44(NM_000610.4(ヌクレオチド配列)、NP_000601.3(アミノ酸配列))、gp130(NM_002184.4(ヌクレオチド配列)、NP_002175.2(アミノ酸配列))、PD-L1(NM_014143.4(ヌクレオチド配列)、NP_054862.1(アミノ酸配列))、およびCD162(NM_001206609.2(ヌクレオチド配列)、NP_001193538.1(アミノ酸配列))が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
一実施形態では、本明細書に提示される方法および組成物は、腫瘍微小環境においてMDSCを標的とするポリペプチドを分泌する力を備えた、CAIXおよび/またはCD70に対する特異性を有するT細胞などの標的特異性T細胞を提供する。例えば、分泌されたポリペプチドは、1つまたは複数のMDSCマーカー(例えば、CD33、CD14、および/もしくはCD15、または本明細書に列挙される他のMDSCマーカー)を標的とすることができる。
【0129】
CTLへの構築物の導入
CARをコードする発現ベクターは、1つまたは複数のDNA分子または構築物として導入され得、そこに構築物(複数可)を含む宿主細胞の選択を可能にする少なくとも1つのマーカーが存在してもよい。
【0130】
構築物は従来の方法で調製でき、遺伝子および調節領域を適宜、単離し、ライゲーションし、適切なクローニング宿主にクローニングし、制限もしくは配列決定または他の便利な手段で分析することができる。特に、PCRを使用すると、機能単位の全部または一部を含む個々の断片を分離でき、「プライマー修復」、ライゲーション、インビトロ変異誘発などを適宜使用して、1つまたは複数の変異を導入できる。一旦完成し、適切な配列を有することが実証された構築物(複数可)は、次いで、任意の好都合な手段によってCTLに導入され得る。構築物は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)などの非複製型の欠陥のあるウイルスゲノム、またはレトロウイルスベクターやレンチウイルスベクターなど、細胞への感染や形質導入のために組み込まれおよびパッケージ化してもよい。構築物は、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、構築物は、融合、エレクトロポレーション、バイオリスティック法、トランスフェクション、リポフェクションなどによって導入されてもよい。宿主細胞は、構築物(複数可)を導入する前に培養物中で成長および増大させ、その後、構築物(複数可)を導入し、構築物(複数可)を組み込むための適切な処理を行うことができる。次に、細胞を増大させ、構築物中に存在するマーカーによってスクリーニングする。首尾良く使用できるさまざまなマーカーには、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性などがある。
【0131】
場合によっては、構築物が特定の遺伝子座に組み込まれる場合、相同組換えのための標的部位を有し得る。例えば、内因性遺伝子をノックアウトし、それを(同じ遺伝子座または他の場所で)、相同組換えについて当技術分野で知られている材料および方法を使用して、該構築物によってコードされる遺伝子で置き換えることができる。相同組換えのために、.OMEGA.またはO-ベクターのいずれかを使用することができる。例えば、Thomas and Capecchi,Cell (1987)51,503-512; Mansour,et al.,Nature(1988)336,348-352、およびJoyner,et al.,Nature (1989)338,153-156を参照されたい。
【0132】
構築物は、少なくともCARおよび任意選択で別の遺伝子をコードする単一のDNA分子、または1つもしくは複数の遺伝子を有する異なるDNA分子として導入することができる。他の遺伝子には、例えば、治療分子または自殺遺伝子をコードする遺伝子が含まれる。構築物は、同時にまたは連続的に導入され得、それぞれが同じまたは異なるマーカーを有する。
【0133】
構築物DNAのストックの調製やトランスフェクションの実施に使用できる、細菌または酵母の複製起点、選択可能および/または増幅可能なマーカー、原核生物または真核生物での発現用のプロモーター/エンハンサー要素などの有用な要素を含むベクターは、当技術分野でよく知られており、多くは市販されている。
【0134】
使用方法
本開示の態様は、癌に罹患している対象を治療する方法を対象とする。
【0135】
例えば、本開示の態様は、腎癌細胞などの癌細胞を殺傷する方法を対象とする。
図12を参照すると、例えば、B7-GGGGS-G36 CAR T細胞は、非標的細胞(CAIX+CD70-、CAIX-CD70+、CAIX-CD70-)よりも標的腎癌細胞(CAIX+CD70+)に対してより多くの殺傷活性を有した。さらに、例えば、
図57を参照すると、二重特異性分割CARは、モノCARまたは二重特異性CARと比較した場合、優れた殺傷を達成した。
【0136】
本開示の態様はさらに、対象における癌の進行を停止または低減させるか、または癌の退縮を促進する方法を対象とする。
【0137】
なおさらに、本開示の態様は、対象における癌細胞の細胞増殖を低減させる方法を対象とする。例えば、
図80を参照されたい。
【0138】
「癌」および「癌性」は、例えば、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか、または記述することができる。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、およびさまざまなタイプの頭頸部癌が含まれる。例えば、癌は、ccRCCなどの腎細胞癌である。
【0139】
癌において、組織内の正常な細胞間相互作用は破壊され、腫瘍微小環境は増殖する腫瘍に対応するように進化する。腫瘍微小環境(TME)は、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、骨髄由来炎症細胞、リンパ球、シグナル伝達分子、および細胞外マトリックス(ECM)などの構成要素を含む、腫瘍が存在する細胞環境を指すことができる。腫瘍微小環境は複雑で、免疫系の影響を強く受ける。
【0140】
本発明は、とりわけ(本明細書に記載されているものなど)、腎細胞癌のためのCAR-T細胞療法を提供する。腫瘍部位でのCAR-T細胞による単一特異性、二重特異性、または三重特異性のミニボディ、抗体、またはミニボディ/抗体融合タンパク質の分泌は、免疫抑制性腫瘍微小環境を変化させる(すなわち、調節する)ことにより、さらなる利益をもたらす可能性がある。
【0141】
実施形態では、方法は、癌に罹患している対象に、本明細書に記載の操作された細胞の治療上有効量を投与することを含む。治療上有効量は、癌の重症度と経過、以前の治療、対象の健康状態、体重、薬物への反応、および担当医師の判断に依存し得る。
【0142】
対象は、液性癌(すなわち、血液癌)および/または固形癌(すなわち、腫瘍)などの癌に罹患している可能性がある。癌は良性または悪性であり得、免疫系によって影響を受けるものであり得る。
【0143】
本明細書に記載される実施形態は、癌に罹患している対象を治療するように免疫系を調節することができる。「調節すること」は、阻害の上方制御、誘導、刺激、増強、および/または解放、ならびに阻害、減弱および/または下方制御または抑制を指すことができる。実施形態では、対象の免疫系の活性が調節されるか、癌細胞および/または腫瘍を取り囲む微小環境が調節されるか、あるいはその両方である。例えば、本明細書に記載の実施形態は、免疫抑制性腫瘍微小環境を変化させ、微小環境依存性免疫抑制を低減して、免疫系を調節して(または可能にして)腫瘍細胞を殺傷することができる。
【0144】
一実施形態は、腎細胞癌に罹患している対象を治療する方法を対象とする。本明細書に記載されるものなどの免疫療法は、RCCの素晴らしい治療選択肢を提示する。例えば、実施形態は、RCCのためのキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を操作することを含む。
【0145】
「個体」または「対象」は哺乳動物であり得る。哺乳動物には、家畜(例:牛、羊、猫、犬、馬)、霊長類(例:ヒトおよびサルなどの非人類霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例:マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、個体または対象はヒトである。
【0146】
本開示による細胞は、癌の治療を必要とする患者の癌を治療するために使用することができる。別の実施形態では、本発明による該単離された細胞は、癌の治療を必要とする患者における、癌、自己免疫障害のウイルス感染の治療のための医薬の製造において使用することができる。
【0147】
本開示は、癌の治療を必要とする患者を治療するための方法に依存し、該方法は、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む:(a)本発明によるキメラ抗原受容体細胞を提供するステップ、および(b)該患者に細胞を投与するステップ。
【0148】
該治療は、寛解、治癒または予防であり得る。それは、自己免疫療法の一部または同種異系免疫療法治療の一部であり得る。自己とは、患者の治療に使用される細胞、細胞株または細胞集団が、該患者に由来またはヒト白血球抗原(HLA)適合ドナーに由来することを意味する。同種異系とは、患者の治療に使用される細胞または細胞集団が、該患者に由来するのではなく、ドナーに由来することを意味する。
【0149】
本発明は、ドナーから得られるT細胞の非アロ反応性細胞への形質転換を可能にする限り、同種異系免疫療法に特に適している。これは、標準プロトコルの下で実行され得、必要な回数だけ複製され得る。得られた改変T細胞をプールして、1人または数人の患者に投与し、「既製の」治療用製品として利用可能にすることができる。
【0150】
開示された方法で使用できる細胞は、前項に記載されている。該治療は、癌と診断された患者を治療するために使用することができる。治療され得る癌には、血管新生されていない、またはまだ実質的に血管新生されていない腫瘍、ならびに血管新生腫瘍が含まれる。癌は、非固形腫瘍(例えば、血液腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫)を含んでよく、または固形腫瘍を含んでよい。本発明のCARで治療される癌のタイプには、癌腫、芽細胞腫、および肉腫、ならびに特定の白血病またはリンパ性悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、および悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫、および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。成人腫瘍/癌および小児腫瘍/癌も含まれる。
【0151】
それは、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光線療法および放射線療法の群から選択される癌に対する1つまたは複数の療法と組み合わせた治療であり得る。
【0152】
本発明の実施形態によれば、該治療は、免疫抑制治療を受けている患者に投与することができる。本発明は、免疫抑制剤の受容体をコードする遺伝子の不活性化のために少なくとも1つの免疫抑制剤に対して耐性にされた細胞または細胞集団を使用する。この態様では、免疫抑制治療は、患者内で本発明によるT細胞の選択および拡大を助けるはずである。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3やCAM PATHなどの抗体のいずれかを使用するT細胞除去療法(T cell ablative therapy)と組み合わせて(例えば、前に、同時にまたは後に)患者に投与される。別の実施形態では、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法(B-cell ablative therapy)後に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、大量化学療法による標準治療を受け、その後末梢血幹細胞移植を受けることができる。特定の実施形態では、移植後、対象は、本発明の増大された免疫細胞の注入を受ける。さらなる実施形態では、増大された細胞は、手術の前または後に投与される。本明細書に記載される方法のうちのいずれかによって得られる該改変細胞は、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対して治療を必要とする患者を治療するための本発明の特定の態様において使用でき、したがって、本発明の範囲には、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対して治療を必要とする患者を治療する方法であって、不活化されたTCRアルファおよび/またはTCRベータ遺伝子を含む改変細胞の有効量を該患者に投与することにより該患者を治療することを含む、方法がある。
【0154】
細胞の投与
本開示は、ドナーから得られるT細胞の非アロ反応性細胞への形質転換を可能にする限り、同種異系免疫療法に特に適している。これは、標準プロトコルの下で実行され得、必要な回数だけ複製することができる。得られた改変T細胞をプールして、1人または数人の患者に投与し、「既製の」治療用製品として利用可能にすることができる。
【0155】
細胞の性質に応じて、細胞は多種多様な方法で宿主生物、例えば哺乳動物に導入することができる。特定の実施形態では、細胞は腫瘍の部位に導入することができるが、代替の実施形態では、細胞を癌へと鍛え上げる(hone)か、または癌へと鍛え上げられるように改変する。使用される細胞の数は、様々な状況、導入の目的、細胞の寿命、使用されるプロトコル、例えば、投与回数、細胞が増殖する能力、組換え構築物の安定性などに依存する。細胞は、例えば、目的の部位またはその近くに注入される分散液として適用され得る。細胞は、生理学的に許容される媒体中にあってよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、細胞はカプセル化されて免疫認識を阻害し、腫瘍の部位に配置される。
【0157】
細胞は所望により投与できる。所望の応答、投与方法、細胞の寿命、存在する細胞の数に応じて、様々なプロトコルを使用することができる。投与回数は、少なくとも部分的に上記の要因に依存する。
【0158】
本発明による細胞または細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、インプラント術または移植を含む、任意の都合のよい方法で行うことができる。本明細書に記載される組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内もしくはリンパ内注射、または腹腔内で患者に投与することができる。一実施形態では、本発明の細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。
【0159】
細胞または細胞集団の投与は、体重1kg当たり104~109個の細胞、例えば、体重105~106個の細胞/kgの投与からなることができ、これらの範囲内の細胞数のすべての整数値を含む。細胞または細胞集団は、1回または複数回の用量で投与することができる。別の実施形態では、該有効量の細胞は、単回用量として投与される。別の実施形態では、該有効量の細胞は、ある期間にわたって2回以上の用量として投与される。投与のタイミングは、主治医の判断の範囲内であり、患者の臨床状態に依存する。細胞または細胞集団は、血液バンクまたはドナーなどの任意の供給源から得ることができる。個々の必要性は変化するが、特定の疾患または状態に対する所与の細胞型の有効量の最適範囲の決定は当技術の範囲内である。有効量は、治療的または予防的利益を提供する量を意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態および体重、もしあれば同時治療の種類、治療の頻度および所望の効果の性質に依存するであろう。
【0160】
系は、リガンドに対する細胞応答、発現効率、および適切な場合には分泌レベル、発現産物の活性、患者の特定の必要性など、時間および状況、細胞の損失または個々の細胞の発現活性の結果としての細胞活性の損失率などによって変化し得る多くの変数に影響されることを理解されたい。したがって、個々の患者に関しては、集団全体に投与することができる万能細胞があったとしても、各患者は、個人の適切な投与量について監視され、患者を監視するそのような慣行は、当技術分野では日常的である。
【0161】
核酸ベースの発現系
本開示のCARは、発現ベクターから発現することができる。そのような発現ベクターを作製するための組換え技術は、当技術分野でよく知られている。
【0162】
本明細書に記載される「DNAベクター」とも呼ばれ得るDNA構築物は、ポリペプチドおよび/またはその断片を分泌するキメラ抗原受容体T細胞を形質導入および産生するために使用されるベクターにクローニングされ得る。例えば、DNA構築物は、腫瘍部位で単一特異性、二重特異性、または三重特異性免疫調節抗体/ミニボディおよび/または抗体融合タンパク質を分泌するキメラ抗原受容体T細胞を形質導入し、生産するために使用されるレンチウイルスの産生のためのレンチウイルスベクターにクローニングされ得る。
【0163】
ベクター
「ベクター」という用語は、核酸配列が、それが複製され得る細胞への導入のために、挿入され得る担体核酸分子を指すことができる。核酸配列は「外因性」であり得、これは、ベクターが導入される細胞にとって外来であるか、または配列が細胞内の配列と相同であるが、配列が通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、人工染色体(YACなど)が含まれる。当業者であれば、標準的な組換え技術を用いてベクターを構築するために十分な設備を有しているであろう(例えば、ともに参照により本明細書に組み込まれる、Maniatis et al.,1988およびAusubel et al.,1994を参照されたい)。
【0164】
「発現ベクター」という用語は、転写され得るRNAをコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を指す。いくつかの場合、次に、RNA分子はタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合では、これらの配列は、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは、様々な「制御配列」を含有することができ、それは、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の転写および翻訳に必要な核酸配列を指す。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能も果たす核酸配列を含み得、以下に記載される。
【0165】
プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度が制御される核酸配列の領域である制御配列である。それは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの、調節タンパク質および分子が結合して、核酸配列の特定の転写を開始させる遺伝的要素を含有することができる。「作動可能に配置された」、「作動可能に連結された」、「制御下」、および「転写制御下」という語句は、プロモーターが、その配列の転写開始および/または発現を制御するために、核酸配列に関して正しい機能的位置および/または方向にあることを意味する。
【0166】
プロモーターは、RNA合成のための開始部位を配置するように機能する配列を含む。これの最もよく知られている例はTATAボックスであるが、例えば哺乳動物のターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターやSV40後期遺伝子のプロモーターなど、TATAボックスのない一部のプロモーターでは、開始部位自体を覆う個別の要素自体が、開始場所を固定するのを助けている。追加のプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節する。これらは、開始部位の上流30 110bpの領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的要素を含有することが示されている。コード配列をプロモーターの「制御下」に置くために、転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’)に配置する。「上流」プロモーターがDNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0167】
多くの場合、プロモーター要素間の間隔は柔軟であり、そのため、要素が互いに反転したり移動したりしても、プロモーターの機能は維持される。tkプロモーターでは、活性が低下し始める前に、プロモーター要素間の間隔を50bpまで広げることができる。プロモーターに応じて、個々の要素が協調的にまたは独立して機能して転写を活性化することができると思われる。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す「エンハンサー」と組み合わせて使用してもしなくてもよい。
【0168】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5プライム’非コード配列を単離することにより得ることができるような、核酸配列と天然で関連するものであってもよい。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ばれ得る。同様に、エンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然で関連するものであってもよい。あるいは、コード核酸セグメントを組換えまたは異種プロモーターの制御下に配置することによって特定の利点が得られるが、これは、その自然環境において核酸配列と通常関連しないプロモーターを指す。組換えまたは異種エンハンサーはまた、その自然環境において核酸配列と通常関連しないエンハンサーも指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および他のウイルス、または原核細胞または真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在しない」、すなわち異なる転写調節領域の異なる要素、および/または発現を変化させる突然変異を含むプロモーターまたはエンハンサーを含み得る。例えば、組換えDNA構築で最も一般的に使用されるプロモーターには、ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に生成することに加えて、配列は、本明細書に開示される組成物に関連して、PCR.TM.を含む組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を使用して生成され得る(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,683,202号および第5,928,906号を参照)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ内の配列の転写および/または発現を指示する制御配列も同様に使用することができる。
【0169】
当然のことながら、発現のために選択された細胞小器官、細胞型、組織、器官、または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に導くプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することが重要であろう。分子生物学の当業者は、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組み合わせの使用を一般に知っている(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.1989を参照)。使用されるプロモーターは、構成的、組織特異的、誘導可能な、および/または組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模生産に有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指示する適切な条件下で有用であり得る。プロモーターは、異種または内因性であり得る。
【0170】
さらに、プロモーター/エンハンサーの任意の組み合わせを使用して発現を促進することもできる。T3、T7、またはSP6細胞質発現系の使用は、別の実施形態である。真核細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが送達複合体の一部として、または追加の遺伝子発現構築物として提供される場合、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写をサポートできる。
【0171】
組織特異的プロモーターまたは要素の同一性、ならびにそれらの活性を特徴付けるアッセイは、当業者に周知である。
【0172】
コード配列の効率的な翻訳には、特定の開始シグナルも必要になる場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接する配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを提供する必要がある場合がある。当業者は、これを容易に決定し、必要なシグナルを提供するであろう。
【0173】
本開示のある特定の実施形態では、内部リボソーム侵入部位(IRES)要素の使用は、多重遺伝子、またはポリシストロニック、メッセージを作成するために使用され、これらは、本発明において使用することができる。
【0174】
ベクターには、複数の制限酵素部位を含む核酸領域であるマルチクローニングサイト(MCS)を含めることができ、これらのいずれも、標準的な組換え技術と組み合わせてベクターを消化するために使用できる。「制限酵素消化」は、核酸分子の特定の位置でのみ機能する酵素による核酸分子の触媒的切断を指す。これらの制限酵素の多くは市販されている。そのような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。多くの場合、MCS内で切断する制限酵素を使用してベクターを線形化または断片化して、外来配列をベクターにライゲーションできるようにする。「ライゲーション」とは、2つの核酸断片間にホスホジエステル結合を形成するプロセスを指し、これは互いに隣接していてもいなくてもよい。制限酵素およびライゲーション反応を含む技術は、組換え技術の当業者によく知られている。
【0175】
スプライシング部位、終結シグナル、複製起点、および選択可能なマーカーも使用することができる。
【0176】
プラスミドベクター
ある特定の実施形態では、プラスミドベクターは、宿主細胞を形質転換するために使用することができる。宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、ならびに形質転換された細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を保有する。非限定的な例では、大腸菌(E.coli)は、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体を使用してしばしば形質転換される。pBR322にはアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子が含まれているため、形質転換された細胞を簡単に同定できる。pBRプラスミド、または他の微生物プラスミドもしくはファージはまた、例えば、微生物がそれ自体のタンパク質の発現のために使用することができるプロモーターを含むか、または含むように改変されなければならない。
【0177】
さらに、宿主微生物と適合性のあるレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主と関連して形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、ファージラムダGEM.TM.11は、例えば、E.coli LE392などの宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えファージベクターを作製する際に利用することができる。
【0178】
さらに有用なプラスミドベクターには、pINベクター(Inouye et al.,1985)、およびpGEXベクターが含まれ、後で精製および分離または切断するためのグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質の生成に使用するためのものである。他の適切な融合タンパク質は、ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどを有するものである。
【0179】
発現ベクターを含む細菌宿主細胞、例えば、E.coliは、任意の多くの適切な培地、例えば、LBで増殖される。当業者に理解されるように、宿主細胞を特定のプロモーターに特異的な薬剤と接触させることにより、例えば培地にIPTGを添加することにより、またはインキュベーションを高温に切り替えることにより、特定のベクターにおける組換えタンパク質の発現を誘導することができる。細菌をさらに、例えば、2~24時間培養した後、遠心分離により細胞を回収し、洗浄して、残留培地を除去する。
【0180】
ウイルスベクター
受容体を介したエンドサイトーシスを介して細胞に感染する、細胞に侵入する、宿主細胞のゲノムに組み込む、ウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する特定のウイルスの能力は、外来核酸の細胞(例、哺乳動物細胞)への導入のための魅力的な候補となっている。本発明の構成要素は、本発明の1つまたは複数のCARをコードするウイルスベクターであり得る。本発明の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例は、以下に記載される。
【0181】
アデノウイルスベクター
核酸の送達のための特定の方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの組み込み能力が低いことが知られているが、この機能は、これらのベクターによって得られる高い遺伝子導入効率によって相殺される。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングをサポートするのに十分な、(b)その中にクローニングされた組織または細胞特異的構築物を最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。遺伝的構成またはアデノウイルスが、36kb、線形、二本鎖DNAウイルスである知識により、アデノウイルスDNAの大きな断片を最大7kbの外来配列で置換することができる(Grunhaus and Horwitz,1992)。
【0182】
AAVベクター
アデノウイルス支援トランスフェクションを使用して、核酸を細胞に導入することができる。アデノウイルス共役系(adenovirus coupled system)を使用した細胞系でトランスフェクション効率の増加が報告されている(Kelleher and Vos,1994;Cotten et al.,1992;Curiel,1994)。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、組み込みの頻度が高く、非分裂細胞に感染することができるため、本発明の細胞で使用するための魅力的なベクター系であり、したがって、例えば、組織培養(Muzyczka,1992)またはインビボで、哺乳動物細胞への遺伝子の送達に有用である。AAVは感染性の宿主範囲が広い(Tratschin et al.,1984;Laughlin et al.,1986;Lebkowski et al.,1988;McLaughlin et al.,1988)。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込むそれらの能力、大量の外来遺伝物質を導入すること、広範囲の種および細胞型に感染すること、および、特別な細胞株にパッケージ化されることにより、送達ベクターとして有用である(Miller,1992)。
【0184】
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸(例えば、目的の配列をコードするもの)が、ある特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損のあるウイルスを産生する。ビリオンを生成するためには、gag、pol、およびenv遺伝子を含むが、LTRおよびパッケージング構成要素を含まないパッケージング細胞株を構築する(Mann et al.,1983)。レトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列とともに、cDNAを含む組換えプラスミドが特別な細胞株に導入されると(たとえば、リン酸カルシウム沈殿などにより)、パッケージング配列により、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージ化でき、次にそれは培養培地に分泌される(Nicolas and Rubenstein,1988;Temin,1986;Mann et al.,1983)。次に、組換えレトロウイルスを含む培地を収集し、任意で濃縮し、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターはさまざまな種類の細胞に感染することができる。しかしながら、組み込みおよび安定した発現には、宿主細胞の分裂が必要である(Paskind et al.,1975)。
【0185】
レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて、調節または構造機能を持つ他の遺伝子を含有する。レンチウイルスベクターは当技術分野でよく知られている(例えば、Naldini et al.,1996; Zufferey et al.,1997;Blomer et al.,1997、米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1、HIV-2およびサル免疫不全ウイルス:SIVが含まれる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重弱毒化することによって生成され、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefは削除されており、生物学的に安全なベクターになっている。
【0186】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染し得、インビボおよびエクスビボの両方で遺伝子導入および核酸配列の発現に使用することができる。例えば、組換えレンチウイルスは、好適な宿主細胞がパッケージング機能、すなわちgag、pol、およびenv、ならびに参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,136号に記載されるrevおよびtatを保有する2つ以上のベクターでトランスフェクトされている非分裂細胞に感染し得る。特定の細胞型の受容体に対して標的化するために、エンベロープタンパク質と抗体または特定のリガンドとの結合によって組換えウイルスを標的にすることができる。例えば、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子とともに、関心のある配列(調節領域を含む)をウイルスベクターに挿入することにより、ベクターは今や標的特異的である。
【0187】
他のウイルスベクター
本発明では、他のウイルスベクターをワクチン構築物として使用することができる。ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Coupar et al.,1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルスおよび単純ヘルペスウイルスなどのウイルスに由来するベクターを使用することができる。これらは、さまざまな哺乳動物細胞にいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989;Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Coupar et al.,1988;Horwich et al.,1990)。
【0188】
改変ウイルスを使用した送達
送達される核酸は、特異的結合リガンドを発現するように操作された感染性ウイルス内に収容されてもよい。したがって、ウイルス粒子は標的細胞の同族受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達する。レトロウイルスベクターの特異的標的化を可能にするために設計された新しいアプローチは、ウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学修飾に基づいて開発された。この改変により、シアロ糖タンパク質受容体を介した肝細胞の特異的感染が可能になる。
【0189】
組換えレトロウイルスを標的とする別のアプローチが設計され、レトロウイルスエンベロープタンパク質および特異的な細胞受容体に対するビオチン化抗体が使用された。抗体は、ストレプトアビジンを使用することにより、ビオチン成分を介して結合された(Roux et al.,1989)。主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を使用して、彼らは、インビトロでエコトロピックウイルスによるこれらの表面抗原を保有するさまざまなヒト細胞の感染を示した(Roux et al.,1989)。
【0190】
ベクター送達と細胞形質転換
細胞のトランスフェクションまたは形質転換のための核酸送達に適した方法は、当業者に知られている。そのような方法には、エクスビボトランスフェクション、注射などによるDNAの直接送達が含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野で既知の技術の適用により、細胞は安定的にまたは一時的に形質転換され得る。
【0191】
エクスビボ形質転換
生体外で生体から取り出された真核細胞および組織をトランスフェクトする方法は、当業者に知られている。したがって、本発明の核酸を使用して、細胞または組織を取り出し、エクスビボでトランスフェクトすることができる。いくつかの態様では、移植された細胞または組織は、生物に配置することができる。他の実施形態では、核酸は、移植された細胞で発現する。
【0192】
本発明のキット
本明細書に記載される組成物のいずれもキットに含まれ得る。非限定的な例では、組換え発現ベクターを収容する細胞治療で使用するための1つもしくは複数の細胞、および/または細胞治療で使用するために1つもしくは複数の細胞を生成する試薬を、キットに含めることができる。キットの構成要素は、適切な容器手段で提供される。
【0193】
キットの一部の構成要素は、水性媒体中にまたは凍結乾燥された形態で、パッケージングされ得る。キットの容器手段は、構成成分が配置され、好適に分注され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段を含み得る。キットに2つ以上の構成成分がある場合、キットは、追加の構成要素を個別に配置できる第2の、第3の、またはその他の追加の容器も含有し得る。しかしながら、構成要素の様々な組み合わせがバイアルに含まれてもよい。本発明のキットはまた、商業的販売のために構成要素を厳重に封じ込めて含有するための手段を含み得る。そのような容器は、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0194】
キットの構成要素が1つおよび/または複数の液体溶液の状態で提供される場合、液体溶液は、水溶液であり、無菌水溶液が特に有用である。場合によっては、容器手段自体がシリンジ、ピペット、および/または他の同様の装置であってもよく、そこから製剤を身体の感染領域に適用し、動物に注射し、および/またはキットの他の構成要素に適用および/または他の構成要素と混合することもできる。
【0195】
しかしながら、キットの構成要素は、乾燥粉末(複数可)として提供されてもよい。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒の添加により再構成され得る。例えば、溶媒はまた、別の容器手段で提供され得る。キットはまた、無菌の薬学的に許容される緩衝液および/または他の希釈剤を含むための第2の容器手段を含み得る。
【0196】
本発明の特定の実施形態では、細胞療法に使用される細胞はキットで提供され、場合によっては、細胞は本質的にキットの唯一の構成要素である。キットは、所望の細胞を作製するための試薬および材料を含み得る。特定の実施形態では、試薬および材料は、所望の配列を増幅するためのプライマー、ヌクレオチド、適切な緩衝液または緩衝液試薬、塩などを含み、場合によっては、試薬は、本明細書に記載のCARをコードするベクターおよび/またはDNAを含み、および/またはそのための調節エレメントを含む。
【0197】
特定の実施形態では、個体から1つまたは複数の試料を抽出するのに適したキット内に1つまたは複数の装置がある。装置は、注射器、メスなどであり得る。
【0198】
本発明のいくつかの場合において、キットは、細胞療法の実施形態に加えて、例えば、化学療法、ホルモン療法、および/または免疫療法などの第2の癌療法も含む。キット(複数可)は、個体の特定の癌に合わせて調整することができ、個体のそれぞれの第2の癌療法を含むことができる。
【0199】
併用療法
本発明の特定の実施形態では、臨床的側面のための本発明の方法は、抗癌剤などの過剰増殖性疾患の治療に有効な他の薬剤と組み合わされる。「抗癌」剤は、例えば、癌細胞内のアポトーシスを含む、癌細胞を殺傷すること、癌細胞の増殖率を減少させること、転移の発生率もしくは数を減少させること、腫瘍サイズを減少させること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を減少させること、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進すること、癌の進行の防止もしくは阻害すること、または癌を有する対象の寿命の延ばすことにより、対象における癌に悪影響を与えることができる、例えば、これらの他の組成物は、細胞の殺傷または増殖を阻害するのに有効な組み合わされた量で提供されるであろう。このプロセスは、癌細胞を、発現構築物および薬剤(複数可)または複数の因子(複数可)と同時に接触させることを含み得る。これは、細胞を単一の組成物または両方の薬剤を含む薬理学的製剤と接触させることによって、または同時に2つの異なる組成物(一方の組成物は発現構築物を含み、もう1つの組成物は第2の薬剤(複数可)を含む。)または製剤と、細胞を接触させることによって達成できる。
【0200】
化学療法剤および放射線療法剤に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における主要な問題である。現在の癌研究の1つの目標は、化学療法と放射線療法を他の治療法と組み合わせることで、その効果を改善する方法を見つけることである。一実施形態では、細胞療法は、化学療法、放射線療法、または免疫療法の介入、ならびにアポトーシス促進剤または細胞周期調節剤と併せて同様に使用することができる。
【0201】
あるいは、本発明の治療は、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤の治療に先行または後行することができる。他の薬剤と本発明が個別に適用される実施形態では、一般に、該薬剤および本発明の治療がまだ細胞に対して有利な複合効果を発揮することができるように、各送達の時点の間で有効な期間が満了していないことを確実にする。そのような場合、互いに約12~24時間以内(例えば、互いに約6~12時間以内)に両方のモダリティで細胞を接触させ得る。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に、数日(2、3、4、5、6、または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)が経過する場合、治療期間を大幅に延長することが望ましいことがある。
【0202】
治療サイクルは、必要に応じて繰り返されるであろう。例えば、本発明の細胞療法と組み合わせて、様々な標準的な療法、ならびに外科的介入が適用され得る。
【0203】
化学療法
癌治療には、化学物質と放射線に基づく治療の両方を用いたさまざまな併用療法も含まれる。併用化学療法には、例えば、アブラキサン、アルトレタミン、ドセタキセル、ハーセプチン、メトトレキサート、ノバントロン、ゾラデックス、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロスウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルプロテインタンスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチン(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、または前述の任意の類似体もしくは誘導体の変異体、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0204】
特定の実施形態では、個体に対する化学療法は、本発明と組み合わせて、例えば、本発明の投与の前、間、および/または後に採用される。
【0205】
放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く使用されてきた他の要因には、γ線、X線として一般に知られているもの、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の誘導送達が含まれる。マイクロ波および紫外線照射など、他の形式のDNA損傷因子も有用である。これらの要因のすべてが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、染色体の組み立てと維持に広範囲の損傷を与える可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)についての1日の線量50~200レントゲンから、単回線量の2000~6000レントゲンまでである。放射性同位元素の線量範囲は大きく異なり、同位元素の半減期、放出される放射線の強度と種類、新生細胞による取り込みに依存する。
【0206】
本明細書では、細胞に適用される場合の「接触」および「曝露」という用語は、治療用構築物および化学療法剤または放射線治療剤が標的細胞に送達される、または標的細胞と直接並置されるプロセスを説明するために使用される。細胞の殺傷または静止を達成するために、両方の薬剤は、細胞を殺傷するか、または細胞が分裂するのを防ぐのに有効な合計量で細胞に送達される。
【0207】
免疫療法
免疫療法は、免疫エフェクター細胞および分子を使用して、癌細胞を標的とし、破壊することに依存する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体単独で治療のエフェクターとして機能し得るか、他の細胞を動員して実際に細胞を殺傷し得る。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合され得、そして単に標的化剤として機能し得る。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞毒性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0208】
したがって、本明細書に記載される本発明の療法以外の免疫療法は、本細胞療法と組み合わせて、併用療法の一部として使用され得る。併用療法のアプローチは、本明細書で説明されている。例えば、腫瘍細胞は、標的化を受けやすい、すなわち、他の細胞の大部分上には存在しない、いくつかのマーカーを持たなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれもが、本発明の状況下で標的化に適している可能性がある。一般的な腫瘍マーカーには、PD-1、PD-L1、CTLA4、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が含まれる。
【0209】
遺伝子
さらに別の実施形態では、二次治療は、本発明の臨床的実施形態の前、後、または同時に治療用ポリヌクレオチドが投与される遺伝子治療である。細胞増殖の誘導物質、細胞増殖の阻害剤、またはプログラムされた細胞死の制御因子を含む、様々な発現産物が本発明に含まれる。
【0210】
手術
癌患者の約60%は、予防的、診断的、病期診断的、治癒的および緩和的手術を含む、ある種の手術を受ける。治癒的手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の療法と組み合わせて使用できる癌治療である。
【0211】
治癒的手術には、癌性組織の全部または一部が物理的に除去され、切り取られ、および/または破壊される切除が含まれる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。腫瘍の切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。例えば、本発明は、表在癌、前癌、または付随的な量の正常組織の除去と組み合わせて使用され得る。
【0212】
すべての癌性細胞、組織、または腫瘍の一部を切除すると、体内に空洞が形成されることがある。治療は、灌流、直接注射、または追加の抗癌療法によるその部位への局所適用によって達成され得る。このような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごと、もしくは1、2、3、4、および5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12か月ごとに繰り返すことができる。これらの治療は、同様に様々な投与量であり得る。
【0213】
他の薬剤
いくつかの実施形態では、他の薬剤は、本発明と組み合わせて使用して、治療の治療効果を改善することができる。これらの追加の薬剤には、免疫調節剤、細胞表面受容体とGAP結合の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤と分化剤、細胞接着阻害剤、またはアポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を高める薬剤が含まれる。免疫調節剤には腫瘍壊死因子、インターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ;IL-2および他のサイトカイン;F42Kおよび他のサイトカイン類似体;またはMIP-1、MIP-1ベータ、MCP-1、RANTES、およびその他のケモカインが含まれる。いくつかの実施形態では、細胞表面受容体またはそれらのリガンド、例えば、Fas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAILの上方制御は、過剰増殖細胞に対するオートクリンまたはパラクリン効果の確立により、本発明のアポトーシス誘導能力を増強するであろう。GAP結合の数を増やすことによって細胞間シグナル伝達を増加させると、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果が増加する。他の実施形態では、細胞増殖抑制剤または分化剤は、本発明と組み合わせて使用して、治療の抗過剰増殖効力を改善することができる。細胞接着阻害剤も本発明の有効性を改善するために使用することができる。細胞接着阻害剤の例は、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。いくつかの実施形態では、抗体c225などのアポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を高める他の薬剤は、本発明と組み合わせて使用して、治療有効性を改善することができる。
【0214】
操作されたCAR T細胞の活性を評価する方法
本開示の態様はさらに、操作されたCAR T細胞の殺傷能力を評価する方法およびそのためのキットを対象とする。具体的には、実施形態は、癌細胞との共培養中のCAR T細胞活性を決定するための免疫複合体分析方法およびキットを対象とする。まず、さまざまな標的癌細胞(例えば、HEK293T、MDA-MB-231、MDA-MB-468、HCC38、およびskrc59)を色素(例えば、ViaStain(商標)Tracer Blue色素)で染色し、プレート(例えば、96ウェルプレート)に播種し、一定期間(例えば、12時間、または一晩)インキュベートする。次に、異なるT細胞タイプ(例えば、2つの異なるT細胞タイプ)をウェルに(例えば、エフェクターと標的(E:T)の比率が20:1の比率で)追加し、一定期間(例えば、24時間)共培養させる。最後に、(例えば、明視野および青色蛍光チャネルを使用して)プレートを走査して分析する。免疫複合体をコンフルエンス測定によって分析し、形質導入されていないT細胞の陰性対照と比較した。結果として、データプロットは、試験されたすべての標的細胞とエフェクター細胞の組み合わせについてCAR T細胞の活性を表示した。イメージサイトメトリのプラットフォームを利用することで、エフェクター細胞と標的細胞間の相互作用を視覚的に確認できるため、精度の高いロバストな結果を得ることができる。
【実施例】
【0215】
実施例は、本発明のより完全な理解を促進するために以下に提供される。以下の実施例は、本発明を作製および実施する例示的な様式を例示する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示されている特定の実施形態に限定されず、代わりの方法を使用して同様の結果を得ることができるため、例示のみを目的としている。
【0216】
実施例1
淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)は、RCCの主要なタイプであり、男性と女性の両方において最も一般的な10の癌の1つである。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、血液悪性腫瘍に対する強力で臨床的に翻訳可能な免疫療法であることが証明されている。しかしながら、これらの結果は、CAR T細胞の非効率的なホーミング、抑制性腫瘍微小環境、および健康な組織上のCAR T標的化エピトープの共有に起因するon-target off-tumor毒性のため、固形腫瘍に翻訳可能ではない。抑制性微小環境と戦うために、免疫チェックポイント遮断剤は、局所的な抗腫瘍免疫を回復することにより、抗腫瘍反応に対する増強された効果を示した。CAR T細胞ファクトリは、腫瘍部位で局所的にヒト抗免疫チェックポイント阻害剤モノクローナル抗体(mAb)を分泌することにより、CAR T細胞に力を与えるように設計した。我々の結果は、CAR T細胞および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の枯渇を逆転させることにより、インビボおよびインビトロでのccRCCのCAR Tによる殺傷が劇的に改善することを示す。
【0217】
CAIXは、ccRCC療法の理想的な標的であり、最初の臨床試験のCAR標的として使用される(例えば、Lamers,Sleijfer et al.2006;Lamers,Willemsen et al.2011を参照されたい)。しかしながら、それは、胆管上でのCAIX発現による深刻な副作用を引き起こした。したがって、有効性および安全性が高いCARを開発することが重要である(on-target off-tumor効果の制限など)。それを達成するために、第2世代のCARは、CAR T細胞ファクトリに第2の標的化scFv(例えば、抗CD70scFv)を第1の標的化scFv(例えば、抗CAIX scFv)と一緒に導入することにより開発され、CARが2つの特有の抗原を同時に標的にすることを可能にする。例えば、
図1を参照にされたい。ccRCC患者試料のIHC染色により、標的CD70は、ccRCC上で高発現し、CAIXと共発現するため、第2の標的として利用するのに理想的な標的であることを見出した。
【0218】
我々の270億メンバーのヒトscFv-ファージディスプレイライブラリーを、抗原を発現するskrc-59 ccRCC細胞に対してパニングし、抗原を含まないskrc-59 ccRCC細胞を差し引いて、新しいscFvを同定した。次に、それらの結合速度論(Kon/Koff)および親和性(Kd)をOctetRed 96機器を介して測定し、望ましい速度論を伴うscFvを、抗原発現細胞と結合するそれらの能力について評価した。候補は、抗CD70および抗CAIX scFvが、共刺激ドメイン(CD28、41BB)および活性化ドメイン(CD3)に接続された様々なリンカーを伴う2つの標的化scFvの順序を変更することにより異なる順列で組み合わされたベクターにクローン化した。第4世代のレンチウイルスパッケージングシステムを使用して、CARレンチウイルスを取得し、PBMCから分離された初代T細胞を形質導入して、二重CARを発現させ、インビトロで異なる細胞株に対してテストした。インビボでのさらなる評価のために、ヒト化同所性ccRCCマウスモデルを、再構成されたヒト免疫系を伴うNSG-SGM3マウスの腎臓被膜下にルシファー化されたccRCC細胞を注入することによって確立した。
【0219】
要約すると、二重CAR Tディスカバリープラットフォームを利用して、異なるscFv、リンカー、およびヒンジを伴う一連のCARを生成した。当業者は、実施形態がscFv、リンカー、およびヒンジの異なる組み合わせを含み得ることを認識するであろう。例えば、scFv、リンカー、およびヒンジの異なる組み合わせを使用して、異なる癌を治療することができる。
【0220】
最高の二重CARを免疫チェックポイント阻害ペイロードなどのペイロードと組み合わせることにより、第2世代のCAR Tが発見された。理論に縛られることを望まないが、第2世代のCAR T細胞ファクトリは、ccRCCなどの癌の治療に使用することができ、正常組織に対する副作用を排除することができる。
【0221】
この実施例で引用されている参考文献
Lamers,C.H.,S.Sleijfer,A.G.Vulto,W.H.Kruit,M.Kliffen,R.Debets,J.W.Gratama,G.Stoter and E.Oosterwijk(2006).”Treatment of metastatic renal cell carcinoma with autologous T-lymphocytes genetically retargeted against carbonic anhydrase IX:first clinical experience.”J Clin Oncol 24(13):e20-22.
Lamers,C.H.,R.Willemsen,P.van Elzakker,S.van Steenbergen-Langeveld,M.Broertjes,J.Oosterwijk-Wakka,E.Oosterwijk,S.Sleijfer,R.Debets and J.W.Gratama(2011).”Immune responses to transgene and retroviral vector in patients treated with ex vivo-engineered T cells.”Blood 117(1):72-82.
【0222】
実施例2
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、血液悪性腫瘍に対する強力な免疫療法であることが証明されているが、これらは、固形腫瘍に翻訳されていない。我々のCAR T細胞ファクトリは、ヒト抗免疫チェックポイント阻害剤モノクローナル抗体(mAbs)などの抗体を腫瘍部位で局所的に分泌し、腫瘍微小環境を回復させて、固形腫瘍の治癒を達成することにより、CAR T細胞に力を与える。1つまたは複数の追加のscFvの導入により、第2世代のCARは、有効性および安全性が向上し、診療所で大きな期待が寄せられている。
【0223】
二重特異性タンデムCARは、IHCによってccRCC初代細胞上で高度に発現し、共発現するCAIXおよびCD70(例えば、
図1および
図2を参照されたい)などの腫瘍に関連する抗原を標的とするように設計した(
図3)。270億メンバーのファージディスプレイライブラリーのパニングに成功したことにより、いくつかの抗CD70 scFvが同定された(例えば、
図6を参照されたい)。我々が以前に発見した抗CAIX scFvおよび抗CD70 scFvを、異なるリンカーを伴うpHAGEベクターにクローン化した(例えば、
図9を参照されたい)。次に、レンチウイルスをパッケージ化し、初代T細胞で形質導入した。CAR T細胞を取得し、4つの異なるCRISPR操作細胞株で評価した(例えば、
図5を参照されたい)。殺傷活性は、CeligoおよびCr51放出アッセイで評価した(例えば、
図12および13を参照されたい)。選択性は、本明細書に記載されているように示された。
【0224】
このCAR T細胞ファクトリは、CAIXおよび/またはCD70の過剰発現癌の治療に、または他の治療法と組み合わせて使用することができる。
【0225】
実施例3
CAIXおよびCD70の二重IHC染色の定量化
【0226】
同等物
当業者であれば、ルーチンの実験以上のものを使用せずに、本明細書に具体的に記載された特定の物質および手順に対する多数の同等物を認識するであろう、または確認できるであろう。そのような同等物は、本発明の範囲内であると考えられ、添付の特許請求の範囲によってカバーされる。
【配列表】