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特許7649241MCL-1阻害剤の新しい結晶形、その調製プロセス及びそれらを含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】MCL-1阻害剤の新しい結晶形、その調製プロセス及びそれらを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20250312BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
C07D495/04 105Z
C07D495/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021531796
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019083773
(87)【国際公開番号】W WO2020115183
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】18306634.9
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
【氏名又は名称原語表記】Les Laboratoires Servier
(73)【特許権者】
【識別番号】514185839
【氏名又は名称】ヴァーナリス・(アール・アンド・ディ)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VERNALIS(R&D)LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・バーツ,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】オーヴレイ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】リンチ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン,ニコラ
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/125224(WO,A1)
【文献】特開2015-129120(JP,A)
【文献】特表2018-522855(JP,A)
【文献】安定性試験ガイドラインの改定について,医薬審発第0603001号,厚生労働省医薬局審査管理課長,2003年06月03日
【文献】芦澤 一英、他,医薬品の多形現象と晶析の科学,丸善プラネット株式会社,2002年,第305-317頁
【文献】長瀬 博,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,1999年,第347-354頁
【文献】平山 令明,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,2008年,pp. 36-43
【文献】芦澤 一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol. 18, No. 10,pp. 81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/00
A61K 31/00
A61P 35/00
A61P 37/00
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.94及び18.24、並びに、以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.27; 9.09; 12.16; 13.67; 14.75; 15.06; 16.97; 17.22; 17.44; 19.16; 19.93; 20.91; 25.88の少なくとも2、3,4、5、6、7、8、9、10、11、12個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶M。
【請求項2】
90重量%より高い純度を有する形態である、請求項1に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項3】
以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.94; 13.67; 14.75; 17.22; 18.24を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項4】
以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.27; 8.94; 9.09; 12.16; 13.67; 14.75; 15.06; 16.97; 17.22; 17.44; 18.24; 19.16; 19.93; 20.91; 25.88を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項5】
PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項に記載の化合物Aの結晶M:
【表13】
【請求項6】
以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):175.1、153.7、134.8、108.9、71.4及び35.1を有する固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項7】
以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):175.1、168.5、167.4、164.6、162.6、157.5、156.3、153.7、135.5、134.8、130.4、129.9、128.4、126.8、120.9、119.9、118.5、116.9、112.5、111.1、108.9、78.7、71.4、54.9、42.1、35.1及び18.2を有する固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項8】
活性成分として、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Mを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項9】
癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、黒色腫、悪性血液疾患、骨髄腫、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
医薬品として使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項12】
癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶M。
【請求項13】
癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、黒色腫、悪性血液疾患、骨髄腫、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項12に記載の使用のための化合物Aの結晶M。
【請求項14】
化合物Aが、トルエン、2-メチルテトラヒドロフラン、又はトルエンとメチルtert-ブチルエーテルとの混合物から選択される溶媒中で結晶化される、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項15】
化合物Aが化合物Aの結晶Aであり、結晶Aが少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52及び16.61、並びに、以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.89; 9.58; 10.35; 11.25; 13.08; 14.44; 17.07; 17.71; 19.10; 20.60; 20.80; 21.69; 22.14; 23.63; 27.36の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項14に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項16】
溶媒中の化合物Aの濃度が、5~15% m/mである、請求項14又は請求項15に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項17】
プロセス過程で得られたスラリーが、20℃~80℃の間で乾燥される、請求項1416のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項18】
結晶化が、0.5%~5% m/mの化合物Aの結晶Mを使用する種晶添加で行われる、請求項1416のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項19】
結晶化が、20℃~60℃の温度で種晶添加で行われる、請求項18に記載の化合物Aの結晶Mの調製プロセス。
【請求項20】
少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52及び16.61、並びに、以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.89; 9.58; 10.35; 11.25; 13.08; 14.44; 17.07; 17.71; 19.10; 20.60; 20.80; 21.69; 22.14; 23.63; 27.36の少なくとも2、3,4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶A。
【請求項21】
以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52; 8.89; 10.35; 16.61; 19.10を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項20に記載の化合物Aの結晶A。
【請求項22】
以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52; 8.89; 9.58; 10.35; 11.25; 13.08; 14.44; 16.61; 17.07; 17.71; 19.10; 20.60; 20.80; 21.69; 22.14; 23.63; 27.36を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項20に記載の化合物Aの結晶A。
【請求項23】
PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項22に記載の化合物Aの結晶A:
【表14】
【請求項24】
活性成分として、請求項2023のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Aを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項25】
癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、黒色腫、悪性血液疾患、骨髄腫、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、請求項25に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
化合物Aが、ジメトキシ-1,2-エタン又はジメトキシ-1,2-エタンとジイソプロピルエーテルとの混合物から選択される溶媒中で結晶化される、請求項2023のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶Aの調製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(本明細書では化合物Aと呼ばれる)の新しい結晶形に関する。2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の結晶形は本明細書に記載されており、結晶形A及びMとも呼ばれる。更には、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の2つの他の結晶形も本明細書に記載されており、結晶形M及びMHDと呼ばれる。
【0002】
本発明は更に、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の前記結晶形の調製プロセスを開示する。
【0003】
本発明は更に、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の前記結晶形を含む医薬組成物、並びに癌、免疫系疾患及び自己免疫疾患の処置のための前記組成物の使用を開示する。
【背景技術】
【0004】
下記式:
【0005】
【化1】

で示される、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸は、癌、免疫系疾患及び自己免疫疾患の処置に有用なMcl-1阻害剤であり、その調製、使用及び医薬製剤は、WO 2015/097123に以前に報告されており、その内容は引用例として取り込まれる。その調製は、WO 2015/097123の実施例30に具体的に開示されている。
【0006】
特定の実施態様において、化合物Aは、下記式:
【0007】
【化2】

で示される、(2R)-2-{[(5S)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である。更なる実施態様において、本明細書に記載の組成物に使用される化合物Aは、遊離分子である(その塩ではない)。
【0008】
化合物Aは、非常に有望な薬物であるが、製剤化するのが難しい化合物である。水には、0.001mg/mL(pH7.5で)よりも低い溶解度を示す。化学物質は、いずれかの結晶形で異なる物理的性質を示し得るため、薬物分子のこの多形性は、品質保持期間、溶解性、製剤特性、加工特性、及び薬物の作用に影響を与える可能性がある。更に、多形が異なれば体内への摂取速度も異なり、生物活性が望まれるよりも低くなったり高くなったりすることがある。極端な場合には、望ましくない多形が毒性を示すことさえある。よって多形性を理解して制御することは、活性が高いか、より安定であるか、又はより安価に製造される可能性のある新薬を上市する上で明らかな利点を与える。ただし、多形は集中的な調査の対象となっているが、この現象を理解して制御することは、相当な科学的挑戦を意味する。所与の分子が1つ又は幾つかの結晶形で結晶化するかを予測し、そしてそのような結晶化につながる条件を見い出すことは困難である。
【0009】
工業的観点からは、溶解、濾過、乾燥、製剤化の容易さ及び安定性の有益な特性を持ち、温度、光、湿度又は酸素レベルに対する特別な要件なしに長期保存できる、優れた純度の化合物を、特に完全に再現可能な形で合成できることが不可欠である。
【0010】
本発明は、上記の利点を有する化合物Aの新しい結晶形に関するものであり、また、医薬組成物の調製、特に濾過、及び保存の工業上の制約に適合する非常に良好な安定性を有する、明確に定義された完全に再現可能な結晶形(特に、結晶形A又は結晶形Mのいずれか)の化合物Aを得るためのプロセスも記載している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】化合物A、結晶形Mの粉末X線回折パターン(XRPD)を示す。
図2】化合物A、結晶形MのXRPDの拡大図を示す。
図3】化合物A、結晶形Mの水分収着プロファイル(DVS)を示す。
図4】化合物A、結晶形Mの固体13C NMRスペクトルを示す。
図5】化合物A、結晶形Mの中赤外スペクトル(MIR)を示す。
図6】化合物A、結晶形MのMIRスペクトルの拡大図を示す。
図7】化合物A、結晶形Mのラマンスペクトルを示す。
図8】化合物A、結晶形Mのラマンスペクトルの拡大図を示す。
図9】化合物A、結晶形MのORTEP図を示す。
図10】化合物A、結晶形AのXRPDを示す。
図11】化合物A、結晶形Mの示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)プロファイルを示す。
図12】化合物A、結晶形MのXRPDを示す。
図13】化合物A、結晶形MHDのXRPDを示す。
【0012】
発明の詳細な説明
「化合物A」とは、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、更に詳細には(2R)-2-{[(5S)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸を意味する。
【0013】
本明細書に使用されるとき、「含む」という用語は、「包含する」を意味し、文脈が別段の示唆を与えない限り、例えば、成分の合計が100%になる場合を除き、任意の追加の成分の存在を排除するものではない。
【0014】
「癌」とは、細胞の一群が制御不能な増殖を示す疾患の一分類を意味する。癌の種類は、血液癌(リンパ腫及び白血病)及び癌腫、肉腫、又は芽細胞腫を包含する充実性腫瘍を包含する。「癌」は、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌を包含する。
【0015】
「遊離分子」及び「遊離塩基」は、本明細書では交換可能に使用され、塩の形でない化合物Aのことをいう。
【0016】
「実質的に純粋」とは、化合物Aの結晶形に対して使用される場合、化合物の重量に基づいて、化合物Aの90重量%より高い、好ましくは95重量%より高い、より好ましくは97重量%より高い、更により好ましくは99重量%より高い純度を有することを意味し、また約100重量%相当を包含することを意味する。
【0017】
「ICH」とは、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)を意味する。
【0018】
本発明の実施態様
本発明の幾つかの実施態様を以下に説明する。
E1.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶形M。
E2.実質的に純粋な形態である、E1に記載の化合物Aの結晶形M。
E3.少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.94及び18.24を示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E1又はE2に記載の化合物Aの結晶形M。
E4.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.27; 8.94; 9.09; 12.16; 13.67; 14.75; 15.06; 16.97; 17.22; 17.44; 18.24; 19.16; 19.93; 20.91; 25.88の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E1又はE2に記載の化合物Aの結晶形M。
E5.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):8.94; 13.67; 14.75; 17.22; 18.24を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E4に記載の化合物Aの結晶形M。
E6.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.27; 8.94; 9.09; 12.16; 13.67; 14.75; 15.06; 16.97; 17.22; 17.44; 18.24; 19.16; 19.93; 20.91; 25.88を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E4に記載の化合物Aの結晶形M。
E7.PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、E6に記載の化合物Aの結晶形M:
【0019】
【表1】

E8.以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):175.1、153.7、134.8、108.9、71.4及び35.1を有する固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、E1~E7のいずれかに記載の化合物Aの結晶形M。
E9.以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):175.1、168.5、167.4、164.6、162.6、157.5、156.3、153.7、135.5、134.8、130.4、129.9、128.4、126.8、120.9、119.9、118.5、116.9、112.5、111.1、108.9、78.7、71.4、54.9、42.1、35.1及び18.2を有する固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、E1~E7のいずれかに記載の化合物Aの結晶形M。
E10.以下のピーク(cm-1で表される):1516.0、1220.0、770.0、752.0、380.0を有するラマンスペクトルを有することを特徴とする、E1~E7のいずれかに記載の化合物Aの結晶形M。
E11.以下のピーク(cm-1で表される):1602.0、1544.0、1518.0、1478.0、1376.0、1286.0、1220.0、 1164.0、1130.0、1048.0、1034.0、988.0、812.0、770.0、752.0、634.0、566.0、508.0、414.0、380.0、254.0を有するラマンスペクトルを有することを特徴とする、E1~E7のいずれかに記載の化合物Aの結晶形M。
E12.活性成分として、E1~E11のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Mを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤、又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
E13.癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、E12に記載の医薬組成物。
E14.癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、E13に記載の使用のための医薬組成物。
E15.医薬品として使用するための、E1~E11のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形M。
E16.癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、E1~E11のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形M。
E17.癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、E16に記載の使用のための化合物Aの結晶形M。
E18.化合物Aが、トルエン、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)又はトルエンとメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)との混合物、より好ましくはトルエン又はトルエンとMTBEとの混合物から選択される溶媒中で結晶化される、E1~E11のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E19.溶媒が、トルエンとMTBEの混合物、好ましくは75/25 m/mのトルエン/MTBE混合物である、E18に記載の化合物Aの結晶形Mの調製方法。
E20.溶媒中の化合物Aの濃度が、5~15% m/m、好ましくは7~13% m/m、より好ましくは10~12.5% m/mである、E18に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E21.プロセス過程で得られた溶媒中の化合物Aの懸濁液が、濾過され、そして20℃~80℃、好ましくは20℃~75℃、より好ましくは35℃~75℃の間で真空乾燥される、E18~E20のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E22.E19に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセスであって、プロセス過程で得られた溶媒中の化合物Aの懸濁液が、濾過され、そして以下:
-濾過された固体が、MTBEのICH残留溶媒限界に達するまで20℃で真空乾燥される第1工程、及び
-第1工程で得られた固体が、トルエンのICH残留溶媒限界に達するまで70℃で真空乾燥される第2工程
を含む2工程で乾燥されるプロセス。
E23.結晶化が、非常に少量の化合物Aの結晶形Mを使用する種晶添加で行われ、詳細には結晶化が、0.5%~5% m/m、好ましくは0.5%~3%の化合物Aの結晶形Mを使用する種晶添加で行われる、E18~E22のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E24.結晶化が、20℃~60℃の温度で種晶添加で行われる、E23に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E25.結晶化が、30℃~45℃の間で種晶添加で行われる、E24に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E26.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶形A。
E27.実質的に純粋な形態である、E26に記載の化合物Aの結晶形A。
E28.少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52及び16.61を示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E26又はE27に記載の化合物Aの結晶形A。
E29.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52; 8.89; 9.58; 10.35; 11.25; 13.08; 14.44; 16.61; 17.07; 17.71; 19.10; 20.60; 20.80; 21.69; 22.14; 23.63; 27.36の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E26又はE27に記載の化合物Aの結晶形A。
E30.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52; 8.89; 10.35; 16.61; 19.10を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E29に記載の化合物Aの結晶形A。
E31.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.52; 8.89; 9.58; 10.35; 11.25; 13.08; 14.44; 16.61; 17.07; 17.71; 19.10; 20.60; 20.80; 21.69; 22.14; 23.63; 27.36を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E29に記載の化合物Aの結晶形A。
E32.PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、E31に記載の化合物Aの結晶形A:
【0020】
【表2】

E33.活性成分として、E26~E32のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Aを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
E34.癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、E33に記載の医薬組成物。
E35.癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、E34に記載の使用のための医薬組成物。
E36.化合物Aが、ジメトキシ-1,2-エタン(DME)又はジメトキシ-1,2-エタンとジイソプロピルエーテル(DIPE)との混合物から選択される溶媒中で結晶化される、E26~E32のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Aの調製プロセス。
E37.化合物Aが、化合物Aの結晶形Aである、E18に記載の化合物Aの結晶形Mの調製プロセス。
E38.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶形M
E39.実質的に純粋な形態である、E38に記載の化合物Aの結晶形M
E40.少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):11.05及び20.04を示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E38又はE39に記載の化合物Aの結晶形M
E41.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.29、7.26、7.92、8.35、10.11、11.05、11.49、12.74、16.72、17.36、18.47、20.04、20.53、21.07、21.58、22.22、23.15、24.41の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E38又はE39に記載の化合物Aの結晶形M
E42.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):7.26、7.92、11.05、12.74、20.04、20.53、24.41を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E41に記載の化合物Aの結晶形M
E43.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.29、7.26、7.92、8.35、10.11、11.05、11.49、12.74、16.72、17.36、18.47、20.04、20.53、21.07、21.58、22.22、23.15、24.41を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E41に記載の化合物Aの結晶形M
E44.PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、E43に記載の化合物Aの結晶形M
【0021】
【表3】

E45.活性成分として、E38~E44のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形Mを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
E46.癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、E45に記載の医薬組成物。
E47.癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、E46に記載の使用のための医薬組成物。
E48.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物A)の結晶形MHD
E49.実質的に純粋な形態である、E48に記載の化合物Aの結晶形MHD
E50.少なくとも以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):13.30及び21.00を示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E48又はE49に記載の化合物Aの結晶形MHD
E51.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.03、8.45、10.14、10.42、11.29、11.82、13.30、15.85、17.07、17.77、18.05、18.84、19.14、20.05、21.00、21.92、22.99、27.27の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17個又は全てを示す粉末X線回折図を有することを特徴とする、E48又はE49に記載の化合物Aの結晶形MHD
E52.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):10.14、13.30、15.85、18.05、18.84 、19.14、21.00を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E51に記載の化合物Aの結晶形MHD
E53.以下の回折線(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ):6.03、8.45、10.14、10.42、11.29、11.82、13.30、15.85、17.07、17.77、18.05、18.84、19.14、20.05、21.00、21.92、22.99、27.27を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E51に記載の化合物Aの結晶形MHD
E54.PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用してスピナー透過モードで測定され、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図を有することを特徴とする、E53に記載の化合物Aの結晶形MHD
【0022】
【表4】

E55.活性成分として、E48~E54のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶形MHDを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む、医薬組成物。
E56.癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の処置に使用するための、E55に記載の医薬組成物。
E57.癌が、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵臓癌及び小細胞肺癌から選択される、E56に記載の使用のための医薬組成物。
【0023】
化合物Aの結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形Aを得ることには、一貫した再現可能な組成を有し、安定性の良好な特性を有する医薬製剤を調製できるという利点がある。化合物Aの結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形MHDを得ることには、一貫した再現可能な組成を有し、安定性の良好な特性を有する医薬製剤を調製できるという利点がある。
【0024】
本発明の更なる態様は、化合物Aの新規結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形Aを含む医薬組成物であり、そしてこれは、ヒトを包含する哺乳動物における癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の治療処置(予防処置を包含する)における使用のための標準的な製薬慣行により製剤化することができる。本発明の更なる態様は、化合物Aの新規結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形MHDを含む医薬組成物であり、そしてこれは、ヒトを包含する哺乳動物における癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の治療処置(予防処置を包含する)における使用のための標準的な製薬慣行により製剤化することができる。
【0025】
本発明の更なる態様は、化合物Aの新規結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形Aを含む医薬組成物であり、そしてこれは、ヒトを包含する哺乳動物における癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の治療処置(予防処置を包含する)用の併用療法における使用のための標準的な製薬慣行により製剤化することができる。本発明の更なる態様は、化合物Aの新規結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形MHDを含む医薬組成物であり、そしてこれは、ヒトを包含する哺乳動物における癌、自己免疫疾患及び免疫系疾患の治療処置(予防処置を包含する)用の併用療法における使用のための標準的な製薬慣行により製剤化することができる。
【0026】
本発明の更なる態様は、化合物Aの結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形Aを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む医薬組成物である。適切な担体、希釈剤、流動促進剤、賦形剤又は安定剤は、当業者には周知であり、そして炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などのような材料を包含する(Remington's Pharmaceutical Sciences (1995) 18th edition, Mack Publ. Co., Easton, PA)。本発明の更なる態様は、化合物Aの結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形MHDを、1つ以上の薬学的に許容し得る担体、流動促進剤、希釈剤、賦形剤又は安定剤と共に含む医薬組成物である。適切な担体、希釈剤、流動促進剤、賦形剤又は安定剤は、当業者には周知であり、そして炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などのような材料を包含する(Remington's Pharmaceutical Sciences (1995) 18th edition, Mack Publ. Co., Easton, PA)。
【0027】
本発明の医薬組成物は、適正な医療行為と一致する方法で、即ち、量、濃度、スケジュール、クール、ビヒクル及び投与経路で服用及び投与される。これに関連して考慮すべき要因は、処置される特定の障害、個々の患者の臨床症状、病因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師には既知のその他の要因を包含する。
【0028】
更には、そうして得られた化合物Aの結晶形、詳細には化合物Aの結晶形M又は結晶形Aは、温度、光、湿度又は酸素レベルの特定の条件なしに長期間保存できるほど十分に安定である。特に、化合物Aの結晶形Mは、種々の条件下で6か月の保存期間の後、温度及び湿度に対して非常に安定であることが見い出された。更に詳細には、化合物Aの結晶形Mは、25℃/60% RH又は30℃/65% RH条件下で12か月の保存期間後も安定なままである。
【0029】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、本発明を何ら限定するものではない。本発明の結晶化プロセスにおいて、出発物質としての化合物A(遊離塩基)は、任意のプロセスによって得ることができる。例えば、化合物Aは、WO 2015/097123により合成することができる。
【実施例
【0030】
実施例1:化合物Aの結晶形Mを得るプロセス
周囲温度で、化合物Aをトルエンに加えて7% m/m(質量比)濃度にした。混合物を周囲温度で約8時間撹拌した。次に得られた懸濁液(スラリー)を濾過し、20℃~70℃で真空乾燥して、化合物Aの結晶形Mを得た。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
融点:148.7℃(TA Instruments Q1000 DSCを使用して、窒素下で10℃/分でのDCSによって決定)
あるいは、濾過前に得られたスラリーを、以下の実施例2~5に示されるとおり、結晶化プロセスの種晶として直接使用することができる。
【0031】
実施例2:化合物Aの結晶形Mを得るプロセス(種晶添加)
化合物A(9g;遊離塩基)を、周囲温度で6.5mL/g又は15% m/mの濃度でトルエンに加えた。次に、化合物Aを可溶化するために混合物を70℃に加熱した。混合物を冷却し、温度が約30℃に達したら、溶液に実施例1で得られた化合物Aの未乾燥スラリー(出発物質の4.4重量%)を種晶添加した。混合物を5℃で更に25時間撹拌した。次に懸濁液を濾過し、水で洗浄して、70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Mが収率約87%、純度99.37%で得られた。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0032】
実施例3:化合物Aの結晶形Mを得る代替プロセス
化合物A(10g;遊離塩基)を、周囲温度で10.4mL/g又は10% m/mの濃度でトルエンに入れた。次に混合物を70℃で加熱し、60℃で真空下で濃縮して、6.5mL/g又は15% m/mの濃度にした。混合物を43℃に冷却し、実施例1で得られた化合物Aの未乾燥スラリー(出発物質の4重量%)を種晶添加した。75/25 m/mのトルエン/MTBE溶液を得るためにMTBEを加えた。化合物Aの最終濃度は12% m/mであった。混合物を冷却し、20℃で15時間撹拌した。次に懸濁液を濾過し、MTBEで洗浄して、70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Mが収率約89%、純度99.6%で得られた。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0033】
実施例4:化合物Aの結晶形Mを得る代替プロセス
化合物A(275g;遊離塩基)を、質量比75/25のトルエン/アセトンのトルエン/アセトン二成分系に周囲温度で16.5% m/mの濃度で入れた。約50℃での真空蒸留により、アセトンをトルエンから除去した。16.5% m/mの濃度に達するまでトルエンを添加後、混合物を40℃に加熱し、次に実施例1で得られた化合物Aの未乾燥スラリー(出発物質の1重量%~2重量%)を種晶添加した。40℃で撹拌後、75/25 m/mのトルエン/MTBE溶液を得るためにMTBEをゆっくり加えた。化合物Aの最終濃度は12% m/mであった。混合物を40℃で30分間撹拌し、20℃で2時間冷却した。次に懸濁液を濾過し、75/25 m/mのトルエン/MTBE溶液で洗浄し、そして最初にMTBEのICH残留溶媒限界に達するまで20℃で真空乾燥し、次にトルエンのICH残留溶媒限界に達するまで70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Mが収率約93%、純度99%超で得られた。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0034】
実施例5:化合物Aの結晶形Mを得る代替プロセス
化合物A(遊離塩基)を、周囲温度で約12% m/mの濃度で、約10%の水m/m比を有する2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)/水の二成分混合物に入れた。混合物を真空下で40℃で加熱して、水を(溶媒切り替えにより)Me-THFで置き換えた。凝縮液中の水が1%未満に達するまで、及び12% m/m比で混合物の最終容量に達するまで、Me-THFを加えた。40℃で、濃度約7% m/mのMe-THF中の化合物Aのスラリー(実施例1で得られた)を混合物に種晶添加した(出発物質の1重量%)。1時間撹拌後、懸濁液を10℃に冷却し、更に2時間撹拌した。次に懸濁液を濾過し、Me-THFで洗浄して、40℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Mが収率約62%、純度99.6%で得られた。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0035】
実施例6:化合物Aの結晶形Mを得る代替プロセス
化合物A(1kg)、トルエン(4.2kg)及びアセトン(1.4kg)を、可溶化のために20℃で反応器に導入した。凝縮トラップでトルエン密度(toluene density)に達するまで一定容量での真空蒸留(温度約50℃)により、アセトンをトルエンに置き換えた。トルエン密度に達した時点で、質量生成物率(mass product rate)16.5%に達するようにトルエンで容量を調整し、温度を50℃に保持した。40℃で冷却後、トルエン中の化合物Aの懸濁液(実施例1のプロセスにより調製した、7%質量生成物率のスラリー)を種晶添加することにより結晶化を誘導した。40℃で2時間の保持時間後、MTBE(1.8kg)を40℃で最低1時間かけて加え、次に反応液を20℃になるまで冷却した。反応が終了したら、懸濁液を濾過し、MTBE(3.8kg)で洗浄し、残留溶媒が10%に達するまで窒素をフラッシュし、そして最初にMTBEのICH残留溶媒限界に達するまで20℃で真空乾燥し、次にトルエンのICH残留溶媒限界に達するまで70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Mが収率約93%、純度約99.8%で得られた。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0036】
実施例7:化合物Aの結晶形MのXRPD図
スピナー透過モードでのデータの記録は、以下の条件下で、PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用して実施された:
電圧:45kV
電流:40mA
取付:θ/θ
陽極:銅
Kα1波長:1.54060Å
Kα2波長:1.54443Å
Kα2/Kα1比:0.5
測定モード:0.017°刻みで3.5°~55°(ブラッグ角2θ)連続
ステップごとの測定時間:34.9250s
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mの粉末X線回折図は、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔(Åで表される)によって表される(図1及び2)。重要な線は、以下の表に照合されている:
【0037】
【表5】
【0038】
実施例8:吸湿性
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mの吸湿性は、動的蒸気収着(DVS)法を使用して評価された。5~10mgの原薬試験試料を正確に秤量し、湿度制御下25℃で動作するDVS試料皿に入れた。試料の質量は、50% RH(相対湿度)で安定値に達するまで記録された。その後、質量変化を1時間当たり10%の速度で50% RH~90% RHの間で記録した。質量変化はまた、90% RH~0% RHの間で、及び0% RHから50% RHに戻して記録された。相対湿度が0又は90% RHのいずれかに達したら、15時間の制限時間内に質量変化が1分当たり0.002%未満になるまで、相対湿度を一定に維持した。
試料が25℃で50%~90%の相対湿度に曝露されたとき、DVS分析によって試料質量の約0.4%の増加が記録された。
試料質量の約0.5%の減少が90%~0% RHの間で記録され、一方試料質量の約0.1%の増加が0%~50% RHの間で記録された。
DVSプロファイル(図3)は、水分の収着/脱着/収着サイクル後に、粉末X線回折図で観察された結晶形Mへの変化が無く、水分の収着及び脱着が実質的に可逆的であることを示す。
化合物Aの結晶形Mは、欧州薬局方(Ph. Eur.)によれば、わずかに吸湿性であると見なすことができる。
【0039】
実施例9:電量滴定
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mの水分含量は、774オーブン試料処理装置、774 SCコントローラー、831 KF電量計及びTiamo 1.2 ソフトウェアによる846 DosingインターフェースからなるMetrohm電量計を使用する電量滴定によって決定された。正確に秤量された微粉化原薬約10mgをバイアルに導入して140℃で10分間加熱した。
試験試料中の水分含量は0.1重量%に達した。
【0040】
実施例10:化合物Aの結晶形Mの安定性試験
全ての保存条件及び保存期間について、実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形M 20mgを、保存後HPLC分析のために30mLバイアルに導入した(包装:PVO=開封済みガラス容器;VRAC PA=二重ポリエチレン袋)。結果は以下のとおりである:
【0041】
【表6】

化合物Aの結晶形Mは、種々の条件下で6か月の保存期間後も、温度及び湿度に対して安定したままである。更に詳細には、化合物Aの結晶形Mは、25℃/60% RH又は30℃/65% RHの条件下で12か月の保存期間後も安定したままである。
【0042】
実施例11:化合物Aの結晶形Mの固体13C NMRスペクトル
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mは、固体13C核磁気共鳴分光法によっても特性決定された(図4)。化合物A結晶形Mの固体13C NMRスペクトルは、以下の条件下で、4mm CP/MAS SB VTN型のプローブを備えたBruker SB Avance III 500分光計を使用して周囲温度で記録された:
周波数:125.7MHz
スペクトル幅:37.5kHz
マジック角回転速度:13kHz
パルスプログラム:SPINAL64デカップリングを伴う交差分極
リサイクル遅延:10秒
取得時間:46ミリ秒
接触時間:4ミリ秒
スキャン数:2048
フーリエ変換の前に5Hzの線幅拡大が適用された。そうして得られたスペクトルは、アダマンタンの試料(アダマンタンの高周波ピークを38.5ppmに設定)を基準に参照された。化合物A、結晶形Mは、NMRスペクトル(ppm±0.2ppmで表される)における以下のピークの存在によって定義できる:
【0043】
【表7】

更に詳細には、特徴的なピークは、175.1、153.7、134.8、108.9、71.4及び35.1(ppm±0.2ppmで表される)にある。
【0044】
実施例12:化合物Aの結晶形MのMIRスペクトル
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mはまた、中赤外分光法によっても特性決定されたが、このデータは、以下の条件下でBruker Vertex MIR分光計を使用してATRモードで記録された:
スキャン数:32
解像度:2cm-1
化合物Aの結晶形MのMIRスペクトルを図5及び6に示す。
特徴的なピークは、1603.7、1569.0、1556.5、1544.9、1517.9、1498.6、1475.5、1457.1、1434.0、1401.2、1374.2、1364.6、1278.7、1239.2、1226.7、1187.1、1163.0、1118.7、1072.4、1031.9 、995.2、884.3、848.6、811.0、795.6、770.5、745.5、690.5、670.2(cm-1で表される)にある。
更に詳細には、特徴的なピークは、1475.5、1457.1、1434.0、1278.7、1226.7、848.6、770.5、745.5(cm-1で表される)にある。
【0045】
実施例13:化合物Aの結晶形Mのラマンスペクトル
実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた化合物Aの結晶形Mはまた、ラマン分光法によっても特性決定されたが、このデータは、以下の条件下でPerkin-Elmer RS400ラマン分光計を使用して記録された:
スキャン数:10
露光時間:0.5秒
レーザー出力:100%
化合物Aの結晶形Mのラマンスペクトルを図7及び8に示す。
特徴的なピークは、1602.0、1544.0、1518.0、1478.0、1376.0、1286.0、1220.0、1164.0、1130.0、1048.0、1034.0、988.0、812.0、770.0、752.0、634.0、566.0、508.0、414.0、 380.0、254.0(cm-1で表される)にある。
更に詳細には、特徴的なピークは、1516.0、1220.0、770.0、752.0、380.0(cm-1で表される)にある。
【0046】
実施例14:シンクロトロン放射光(Soleil Synchrotron、Saclay、フランス)によって決定された化合物Aの結晶形Mの純度
化合物Aの結晶形Mの適切な結晶を選択して、シンクロトロンビームラインPROXIMA II回折計(SOLEIL、Saclay、フランス)に取り付けた。データ収集中、結晶は100Kに保たれた。Olex2(Dolomanov et al., J. Appl. Cryst. 2009, 42, 339-3411)を使用して、Intrinsic Phasing(Sheldrick, Acta Cryst. 2015, A71, 3-8)を使用したShelXT構造解析プログラムで構造を解析して、Least Squares Minimisation(Sheldrick, Acta Cryst. 2015, C71, 3-8)を使用したShelXL精緻化パッケージで構造を精緻化した。位置及び原子変位パラメーターは、Fに対するフルマトリックスの最小二乗ルーチンによって精緻化された。水素原子はライディングモデルを使用して配置された。絶対構造が決定されており、化合物Aの純粋なエナンチオマー相と一致している。
1.100Kで記録されたシンクロトロンデータと非対称単位の熱楕円体図(化合物A 1分子):
空間群 P212121(No.19)
a=10.610Å
b=17.400Å
c=23.720Å
V=4379.0Å
Z=4
T=100K
図9は、化合物A、結晶形Mの熱楕円体図(ORTEPプログラムを使用して得られた)を示す。
2.室温での化合物A(結晶形M)の粉末X線回折図から得られた結晶格子定数:
空間群 P2(No.19)
a=10.6401Å
b=17.3643Å
c=24.0494Å
V=4443.3Å
Z=4
T=293K
3.単結晶から得られたデータから計算されたピーク位置及び面間隔(dhkl)(100Kで)
【0047】
【表8】

単結晶データから得られた一連のピークは、実験で測定されたものとほぼ一致している(比較のために実施例7を参照のこと)。したがって、これらの結果は、化合物A、結晶形Mの高純度を裏付ける。
【0048】
実施例15:化合物Aの結晶形Aを得るプロセス及びその粉末X線回折図
化合物Aを2-メチルテトラヒドロフランに周囲温度で8mL/gの濃度で溶解し、ジメトキシ-1,2-エタン(DME)を加えて11mL/gの濃度にした。次に混合物を35℃で2時間、及び20℃で3時間撹拌した。結晶化後、固体を濾過し、アセトンで洗浄して、50℃で、次に70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Aが収率約81%、純度99.5%で得られた。固体は、以下に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
融点:125.4℃(TA Instruments Q1000 DSCを使用して窒素下で10℃/分でDSCによって決定)
化合物Aの結晶形Aを得るためのプロセス変法(種晶添加)は以下のとおりである:
化合物Aを2-メチルテトラヒドロフランに周囲温度で約11mL/gの濃度で溶解し、DMEを加えて11mL/gの濃度にした。蒸留により溶媒の4分の1を除去し、DMEを再度加えて11mL/gの濃度にした。次に混合物を35℃で加熱し、化合物Aの結晶形A(出発物質の2重量%)を種晶添加した。混合物を35℃で2時間及び20℃で19時間撹拌した。結晶化後、固体を濾過し、アセトンで洗浄し、50℃で、次に70℃で真空乾燥した。乾燥後、化合物Aの結晶形Aが収率約93%、純度99.0%超で得られた。固体は、以下に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
スピナー透過モードでのデータの記録は、以下の条件下で、PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用して実施された:
電圧:45kV
電流:40mA
取付:θ/θ
陽極:銅
Kα1波長:1.54060Å
Kα2波長:1.54443Å
Kα2/Kα1比:0.5
測定モード:0.017°刻みで3.5°~55°(ブラッグ角2θ)連続
ステップごとの測定時間:34.9250s
化合物Aの結晶形Aの粉末X線回折図は、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び面間隔(Åで表される)によって表される(図10)。重要な線は、以下の表に照合されている:
【0049】
【表9】
【0050】
実施例16:化合物Aの結晶形Aから化合物Aの結晶形Mを得るプロセス
周囲温度で、実施例14で得られた化合物Aの結晶形Aをトルエンに加えて7% m/m濃度にした。多形転移を完了させるために、混合物を周囲温度で8時間撹拌した。得られた懸濁液(スラリー)を次に濾過し、20℃~70℃で真空乾燥して、化合物Aの結晶形Mを得た。固体は、実施例7に記載されるとおり粉末X線回折図によって特性決定された。
【0051】
実施例17:化合物Aの結晶形Aの安定性試験
全ての保存条件及び保存期間について、実施例15のプロセスによって得られた化合物Aの結晶形A 1.2gを、保存後HPLC分析のために特定のパッケージに導入した。結果は以下のとおりである:
【0052】
【表10】


化合物Aの結晶形Aは、25℃/60% RH条件下で24か月の保存期間後も安定したままである。化合物Aの結晶形Aは、より厳しい条件下で数か月の保存期間後も、温度及び湿度に対して安定したままである。
【0053】
実施例18:化合物A、結晶形MのDSC及びTGAプロファイル
約3mgの重量の化合物A、結晶形M(実施例1~6のプロセスのいずれか1つにより得られた)の試料のDSCプロファイルは、TA Instruments Q2000示差走査熱量計で正の窒素流の下でピンホール穴あきアルミニウム皿で10℃/分で25℃から220℃まで記録された。約7.5mgの重量の化合物A、結晶形M(実施例1~6のプロセスのいずれか1つによって得られた)の試料のTGAプロファイルは、TA Instruments Q5000熱重量分析器で正の窒素流の下で蓋のないアルミニウム皿で10℃/分で25℃から220℃まで記録された。
DSC及びTGAプロファイル(図11)は、化合物Aの結晶形Mが無水であり、約148℃で融解することを示す。
【0054】
実施例19:化合物Aの結晶形Mを得るプロセス及びその粉末X線回折図
化合物Aの水和形(結晶形Mと呼ばれる)は、25℃の水中での結晶形Mの熟成によって調製された。100mlのガラス容器に入れた化合物A 1gに、精製水約100mlを加える。懸濁液を500rpmの速度で撹拌しながら30℃で4日間熟成させる。4日後、懸濁液をわずかな減圧下で濾過し、更に30分間減圧しながら濾液を乾燥させる。白色のペーストが回収され、これが粉砕によりゆっくりと白色の粉末に変化する。回収した粉末をXRPDで分析した。続いての水分含量分析と組合せた粉末X線分析は、白色粉末が水和結晶形Mであることを示した。
データの記録は、以下の条件下で、PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用して、透過モードで実施された:
電圧:45kV
電流:40mA
取付:θ/θ
陽極:銅
Kα1波長:1.54060Å
Kα2波長:1.54443Å
Kα2/Kα1比:0.5
測定モード:0.017°刻みで3°~55°(ブラッグ角2θ)連続
ステップごとの測定時間:35.5301s
化合物Aの結晶形Mの粉末X線回折図は、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び相対強度(最も強い線に対する百分率として表される)によって表される(図12)。重要な線は、以下の表に照合されている:
【0055】
【表11】

粉末の水分含量も電量法により決定した。結果は、新しい固体結晶形Mがかなりの量の水(29.3%)を含有することを示した。
【0056】
実施例20:化合物Aの結晶形MHDを得るプロセス及びその粉末X線回折図
水和結晶形Mを1℃/分で25℃から100℃に加熱したときに、新しい回折プロファイルが記録された。熱処理により得られた粉末をXRPDで分析した。この新しい回折プロファイルは、結晶形MHD(即ち、水和結晶形Mの脱水形)に起因すると考えられた。
データの記録は、以下の条件下で、PIXCel 1D検出器を備えたPANalytical Empyrean回折計を使用して、透過モードで実施された:
電圧:45kV
電流:40mA
取付:θ/θ
陽極:銅
Kα1波長:1.54060Å
Kα2波長:1.54443Å
Kα2/Kα1比:0.5
測定モード:0.017°刻みで3°~55°(ブラッグ角2θ)連続
ステップごとの測定時間:35.5301s
化合物Aの結晶形MHDの粉末X線回折図は、線位置(度±0.2°で表される、ブラッグ角2θ)及び相対強度(最も強い線に対する百分率として表される)によって表される(図13)。重要な線は、以下の表に照合されている:
【0057】
【表12】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13