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特許7649309呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム
<図1>
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図1
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図2
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図3
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図4
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図5A
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図5B
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  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図5D
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図5E
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図6
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図7
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図8
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図9
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図10A
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図10B
  • 特許-呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】呼吸ガスの濃度を検出するためのパッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸ガス検出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/097 20060101AFI20250312BHJP
   A61B 5/083 20060101ALI20250312BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20250312BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
A61B5/097
A61B5/083
G01N21/3504
A61M16/00 370Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022538749
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020087583
(87)【国際公開番号】W WO2021130202
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】19219189.8
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20167148.4
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ケスターエン ハンス ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ランベルト ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】ジュッテ ペトルス テオドルス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブエイハールト アドリアヌス ウィルヘルムス ディオニシウス マリア
【審査官】村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513987(JP,A)
【文献】特許第6198882(JP,B1)
【文献】米国特許第05931161(US,A)
【文献】特開2012-108095(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
G01N 21/3504
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸モジュールを呼吸アダプタに接続するためのパッチケーブルであって
前記パッチケーブルの第1の端部を前記呼吸モジュールに接続するモジュールコネクタと、
前記パッチケーブルの第2の端部を前記呼吸アダプタに接続するアダプタコネクタであって、前記アダプタコネクタは光検出器を含む、アダプタコネクタと、
前記モジュールコネクタから前記アダプタコネクタに光を導く導光体であって、前記アダプタコネクタは、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記呼吸アダプタが含むガスキャビティ内に前記光を供給するように前記導光体の端部が配置されるように構成されている、導光体と、
前記光検出器によって生成された電気検出信号を前記アダプタコネクタから前記モジュールコネクタに送る電気ケーブルと、を備え、
前記アダプタコネクタは、光が検出される前記光検出器の表面が、前記光検出器によって検出される光の第1のビーム方向に対してある角度で配置されるように構成され、前記光検出器によって検出される光の前記第1のビーム方向は、前記光検出器に当たるすべての光のビームの空間平均のビーム方向であり、前記光検出器の検出表面と前記ビーム方向との間の前記ある角度は、前記第1のビーム方向と前記検出表面に対する法線との間の角度であり、
前記導光体の前記端部における前記表面は、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部によって前記ガスキャビティ内に供給される光の第2のビーム方向に対してある角度であり、前記導光体の前記端部によって提供される光の前記第2のビーム方向は、前記導光体の前記端部によって提供されるすべての光のビームの空間平均のビーム方向であり、前記導光体の前記端部における前記表面と前記第2のビーム方向との間の前記ある角度は、前記第2のビーム方向と前記表面の法線との間の角度であり、
前記アダプタコネクタは、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記光検出器が、前記ガスキャビティ内に供給されたガスとインタラクトした、前記導光体の前記端部によって供給された光を検出するように構成されており、前記光検出器によって生成された前記電気検出信号は、前記ガスキャビティ内に供給された患者からの呼吸ガスの濃度を示す、パッチケーブル。
【請求項2】
前記アダプタコネクタは、第1のコネクタ部および第2のコネクタ部を含み、前記第1のコネクタ部は前記光検出器を含み、前記第2のコネクタ部は前記導光体の前記端部を含み、前記第1のコネクタ部および前記第2のコネクタ部は、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部を通って供給される光であって、前記呼吸アダプタの前記ガスキャビティを通過した当該光が前記光検出器によって検出されるように、前記アダプタコネクタを前記呼吸アダプタに接続している、請求項1に記載のパッチケーブル。
【請求項3】
前記アダプタコネクタはU字形を有し、前記導光体の前記端部は、U字形の前記アダプタコネクタの一方の側に配置されており、前記光検出器は、前記U字形のアダプタコネクタの反対側に配置されており、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部を介して供給される光であって、前記呼吸アダプタの前記ガスキャビティを通過した当該光が前記光検出器によって検出される、請求項1に記載のパッチケーブル。
【請求項4】
前記導光体の前記端部は、前記アダプタコネクタ内に組み込まれたレンズを含む、請求項1からのいずれか一項に記載のパッチケーブル。
【請求項5】
前記アダプタコネクタは、透明材料から形成されている正面部をさらに含み、前記正面部は、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部と前記ガスキャビティとの間に、および/または前記光検出器前記ガスキャビティに配置される、請求項1からのいずれか一項に記載のパッチケーブル。
【請求項6】
前記モジュールコネクタはさらに、
前記導光体を介して光を供給する光供給ユニットと、
前記光検出器によって供給される前記電気検出信号を受信する処理ユニットとを含み、前記処理ユニットは、前記電気検出信号に基づいて、前記呼吸ガスの前記濃度を表すデータ信号を生成する、請求項1からのいずれか一項に記載のパッチケーブル。
【請求項7】
呼吸アダプタであって、ガスキャビティを含み、前記呼吸アダプタおよび前記ガスキャビティは、前記呼吸アダプタが患者の口および/または鼻と機能的に接触して配置されているとき、前記患者からの呼吸ガスが前記ガスキャビティに入ることができるように構成された、呼吸アダプタと、
呼吸モジュールを前記呼吸アダプタに接続する、請求項1に記載のパッチケーブルと、
前記パッチケーブルを介して供給された信号に基づいて呼吸ガスの濃度を示すデータを処理する前記呼吸モジュールと、を備える、呼吸ガス検出システム。
【請求項8】
前記呼吸アダプタは、前記ガスキャビティの、前記アダプタコネクタを前記呼吸アダプタに接続できる接続側とは反対側に、前記呼吸アダプタの一部として少なくとも1つの反射器を提供し、前記アダプタコネクタは、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部および前記光検出器が実質的に同じ方向を向き、前記導光体の前記端部によって前記ガスキャビティ内に供給される光であって、前記呼吸アダプタの一部として提供されている前記少なくとも1つの反射器によって反射された当該光が前記光検出器によって検出されるように構成されている、請求項に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項9】
記呼吸アダプタは、さらに、前記導光体の前記端部によって供給された光が、前記ガスキャビティ内に供給された前記呼吸ガスとインタラクトするために前記ガスキャビティを通過した後、前記アダプタコネクタの前記光検出器によって検出されることができるように、前記アダプタコネクタに接続している、請求項7または8に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項10】
前記ガスキャビティの表面は、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部を介して供給される光ビームのビーム方向に対してある角度を有する、請求項に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項11】
前記呼吸アダプタは少なくとも1つの反射器を含み、前記少なくとも1つの反射器は、前記アダプタコネクタが前記呼吸アダプタに接続されているとき、前記導光体の前記端部によって供給された光が前記少なくとも1つの反射器によって反射され、前記少なくとも1つの反射器における前記反射後に前記光検出器によって検出されるように配置されている、請求項または10に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項12】
前記呼吸アダプタは、鼻および/または口の流れをサンプリングするための入口部と、拡散による二酸化炭素の交換を制限する出口部との両方を含み、前記ガスキャビティは、ガス感知キャビティにおいて、前記入口部および前記出口部における断面よりも大きな断面を有する、請求項から11のいずれか一項に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項13】
前記呼吸アダプタのガス感知キャビティ内の流れ方向が、光の前記ビーム方向に対して90°未満の角度を有する、請求項から12のいずれか一項に記載の呼吸ガス検出システム
【請求項14】
前記パッチケーブルのアダプタコネクタと前記呼吸アダプタとの間のインターフェースに、ゲルまたは柔軟なゴムの形態のレセプタクルインサートが提供されている、請求項から13のいずれか一項に記載の呼吸ガス検出システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸ガス検出の分野において使用可能なパッチケーブル、呼吸アダプタ、呼吸モジュール、および呼吸ガス検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の息に含まれる呼吸ガスを検出するには、一般に、検出対象の呼吸ガスによる特定の波長範囲の光の吸収が利用される。この手法では、光源(ほとんどの場合、熱中赤外線源)を設ける必要があり、また、患者の息に含まれる各呼吸ガスの濃度を求めるために、各呼吸ガスによる特定の波長範囲の光の吸収を検出する必要がある。このような応用の一例は、患者の息に含まれる二酸化炭素CO濃度が検出されるカプノグラフィである。多くの手法では、呼吸ガスを検出するために、患者の呼気ガスが、ポンプを用いて、呼吸を検出するために必要な技術、具体的には、中赤外線源、スペクトルフィルタ、光検出器、および検出電子機器を備えたモニタリングモジュールにカニューレおよびサンプリングチューブを介して送られる。このような手法では、ポンプが大量の電力を消費するため、息のガスを検出するためのバッテリ駆動小型モバイルデバイスの開発が阻害される。さらに、支流のサンプリングチューブは、ガス輸送による信号の遅延や歪みを引き起こし、また呼吸分泌物や湿度のために詰まりがちである。
【0003】
別の手法では、近赤外ダイオードレーザ光源および光ファイバを使用して、モニタリングモジュール内のレーザから供給された光が呼吸アダプタ、例えば口鼻カニューレに導かれ、吸収されなかった光が呼吸アダプタからモニタリングモジュールに導かれる。この場合、患者の気道から検出器にガスを輸送する必要がないため、ポンプを省くことができる。この手法では、TDLAS(tunable diode laser absorption spectroscopy)を使用し、さらにモニタリングモジュール内に設けられる光源として垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を使用することで、小型で低電力のモニタリングモジュールを構築できる。このようなカプノグラフィモジュールは、患者によって持ち運び可能なバッテリ駆動型であり得、患者に取り付けられているケーブルを減らすことができる。あるいは、呼吸ガス検出用の電子機器を、小型のポータブルバイタルサイン患者モニタに組み込むこともできる。そのような手法の一般的な概念は、例えば、US2011/0066061A1、WO2015/104531A1、およびWO2017/162804A1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この手法にもいくつかの課題がある。例えば、カプノグラフィでは、波長可変近赤外ダイオードレーザを使用し、供給されたレーザ光の光吸収に基づいてCOが検出されることが多い。なぜなら、近赤外範囲ではファイバおよび半導体レーザ技術が良く発展しているからである。しかし、近赤外線でのCOの吸収は、例えば中赤外線波長範囲でのそれよりもはるかに小さい。さらに、光ファイバを使用する手法は、光路内の光学部品の表面での反射、またはマルチモードファイバ内の内部干渉に起因する干渉効果による信号品質の低下に悩まされることが多い。これらの品質劣化効果はスペクトルバックグラウンドとも呼ばれ、呼吸ガスの濃度検出の精度に影響を与える可能性がある。もう1つの大きな問題は、歪みのない適切で安定したCO信号を取得するには、レーザからCO検出キャビティへの、およびCO検出キャビティから遠隔検出器への導光体としてシングルモードファイバが必要になることである。このため、配置およびアラインメントの許容誤差は1マイクロメートルのオーダーになる。結果として、デバイスのロバストネスおよび信頼性が低下し、製造コストが増加する。したがって、呼吸ガス濃度検出の精度、ロバストネス、および信頼性を改善することを可能にするとともに、呼吸ガスを検出するための小型デバイスを提供できるという利点を維持する呼吸検出手法を提供することは有益であろう。
【0005】
本発明の目的は、患者の息に含まれる呼吸ガスの検出を改善することを可能にするとともに、軽量かつ小型の呼吸ガス検出システム提供することを可能にするパッチケーブル、呼吸アダプタ、呼吸モジュール、および呼吸ガス検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、呼吸モジュールを呼吸アダプタに接続するためのパッチケーブルが提示され、呼吸アダプタはガスキャビティを含み、呼吸アダプタおよびガスキャビティは、呼吸アダプタが患者の口および/または鼻と機能的に接触して配置されているとき、患者からの呼吸ガスがガスキャビティに入ることができるように構成されており、呼吸モジュールは、パッチケーブルを介して供給された信号に基づいて、呼吸ガスの濃度を示すデータを処理し、パッチケーブルは、a)パッチケーブルの第1の端部を呼吸モジュールに接続するモジュールコネクタと、b)パッチケーブルの第2の端部を呼吸アダプタに接続するアダプタコネクタであって、アダプタコネクタは光検出器を含む、アダプタコネクタと、c)モジュールコネクタからアダプタコネクタに光を導く導光体であって、アダプタコネクタは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、呼吸アダプタのガスキャビティ内に光を供給するように導光体の端部が配置されるように構成されている、導光体と、d)光検出器によって生成された電気検出信号をアダプタコネクタからモジュールコネクタに送る電気ケーブルと、を備え、アダプタコネクタは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、光検出器が、ガスキャビティ内に供給されたガスとインタラクトした、導光体の端部によって供給された光を検出するように構成されており、光検出器によって生成された検出信号は、ガスキャビティ内に供給された呼吸ガスの濃度を示す。
【0007】
パッチケーブルは、モジュールコネクタからアダプタコネクタに光を導く導光体だけでなく、アダプタコネクタに配置された光検出器によって生成される電気検出信号をモジュールコネクタに送るための電気ケーブルも含み、アダプタコネクタは、光検出器が、ガスキャビティ内に供給されたガスとインタラクトした、導光体の端部によって供給された光を検出するように構成されており、光検出器によって生成された検出信号は、ガスキャビティ内に供給された呼吸ガスの濃度を示すので、呼吸ガスをローカルに、すなわち、患者の気道において直接検出することができる。したがって、ガス輸送に起因する信号の遅延、カプノグラムの歪みは存在せず、また、支流のチューブのクロッキングの問題もない。さらに、光検出器がアダプタコネクタに組み込まれており、導光体ではなく光検出器に光を集光させることができ、検出器の面積はファイバのコアの断面積よりも大きいため、光学アラインメントのずれに対する許容誤差が大幅に増加する。これにより、呼吸ガス検出の精度を向上させることができ、同時に、呼吸ガス検出用のロバストなシステムおよび小型で軽量の呼吸モジュールを開発することができる。
【0008】
パッチケーブルは、一般に、呼吸ガス検出システムの呼吸モジュールと呼吸アダプタとの間の接続を提供する。パッチケーブルは1本のケーブルとして提供することができるが、複数のケーブル、すなわちパッチケーブルセットとして提供することもでき、複数のケーブルのそれぞれがアダプタコネクタおよびモジュールコネクタに取り付けられる。例えば、パッチケーブルは、導光体を含む1本のケーブルおよび電気ケーブルを含む1本のケーブルを含んでもよく、両ケーブルは同じ呼吸アダプタに取り付けられる一方、異なるモジュールコネクタに取り付けられる。さらに、パッチケーブルは、パッチケーブルが2つ以上のブランチ、すなわちケーブルに分割される分割部を含んでもよい。例えば、パッチケーブルは、導光体を含む1つのブランチと、電気ケーブルを含む1つのブランチとを含むことができる。したがって、パッチケーブルは、合わせてパッチケーブルを形成する1つ以上のケーブルブランチを提供するパッチケーブルセットと見なすこともできる。
【0009】
呼吸アダプタは複数の異なる形態で提供することができ、一般的には、息のガス、すなわち患者の気道の呼吸ガスが呼吸アダプタ内に設けられたガスキャビティに入ることができるよう、呼吸ガスを取り込むように構成されている。この文脈において、患者の口および/または鼻と機能的に接触しているとは、患者の呼気および/または吸気の少なくとも一部が、呼吸アダプタによって提供されるガスキャビティに入るのを可能にする位置に配置されていることを指す。呼吸アダプタは、鼻呼吸をサンプリングする鼻カニューレ、または、ある時は鼻呼吸し、別の時は口呼吸する患者向けの口鼻カニューレであってもよい。また、呼吸アダプタは、換気療法を受けている患者の換気回路の一部であってもよい。その場合、呼吸アダプタは気道アダプタであり、換気療法で使用される換気チューブの一部として提供される。さらに、呼吸アダプタは、パッチケーブルのアダプタコネクタによって呼吸モジュールに接続されるように構成される。一般に、後述されるような、呼吸アダプタと、これに対応して構成されたパッチケーブルとの組み合わせは、呼吸ガスの濃度を示す検出信号を呼吸モジュールに供給するように構成された呼吸ガス検出信号供給ユニットを形成すると見なすことができる。
【0010】
呼吸モジュールは、呼吸ガスの濃度を示すデータを処理するように構成された何らかの回路構成を少なくとも含む。一実施形態では、呼吸モジュールは、パッチケーブルの電気ケーブルを介して検出器によって供給される検出信号を直接使用して、患者の息に含まれる呼吸ガスの濃度を決定するように構成される。呼吸モジュールは、パッチケーブルを介して供給される信号に基づいて、1つの呼吸ガスまたは複数の選択された呼吸ガスの濃度を示すデータを処理するように構成され得る。さらに、呼吸ガスモジュールは、処理結果を、例えば、小さなディスプレイまたは何らかの他の可視もしくは可聴出力を介してユーザに提供するように構成され得、例えば、1つ以上の呼吸ガスの濃度閾値が超過された場合にアラームが提供されてもよい。さらに、呼吸モジュールは、例えば、無線接続を介してバイタルサイン患者モニタ、または心臓活動モニタリングデバイスや血圧モニタリングデバイスなどの患者をモニタリングする他のモニタリングモジュールに接続されるように構成されてもよい。
【0011】
また、呼吸モジュールは、パッチケーブルの導光体によって呼吸アダプタに導かれる光を供給する光源を含むように構成されてもよい。しかし、別の実施形態では、光源をモジュールコネクタに組み込むことができ、呼吸モジュールは、光源が光を生成するために必要な電力をモジュールコネクタへの接続を介して供給するように構成され得る。呼吸モジュールはポンプまたは光検出器を提供する必要がないので、呼吸モジュールを小型かつ軽量にすることができ、したがって、例えば、適切な取り付け手段を使用することによって患者が装着できるようになる。
【0012】
パッチケーブルはモジュールコネクタおよびアダプタコネクタを含む。好ましくは、パッチケーブルは1つのモジュールコネクタおよび1つのアダプタコネクタを含む。しかし、例えば、パッチケーブルがパッチケーブルセットを指す場合、パッチケーブルは複数のモジュールコネクタおよび複数のアダプタコネクタを含むこともできる。さらに、モジュールコネクタおよびアダプタコネクタは複数の部分を含んでもよく、各部分が個別に呼吸モジュールおよび呼吸アダプタに接続されてもよい。例えば、アダプタコネクタは2つの部分を含み得、アダプタコネクタの両方の部分が呼吸アダプタに接続されているとき、一方の部分は、光検出器をガスキャビティに提供し、他方の部分は、導光体の端部をガスキャビティに提供するように構成されている。
【0013】
モジュールコネクタは、パッチケーブルを呼吸モジュールに接続するように構成されている。具体的には、モジュールコネクタおよび呼吸モジュールはそれぞれ、例えばプラグおよびソケット機構を使用して両者を互いに接続できるように構成された接続部を含む。さらに、アダプタコネクタも、呼吸アダプタの対応する接続部に接続されるように構成された接続部を含む。具体的には、アダプタコネクタと呼吸アダプタとの接続部は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部によって供給される光がガスキャビティに供給され、ガスキャビティ内のガスを通過した光が光検出器によって検出され得るように構成されている。好ましくは、呼吸アダプタは、呼吸アダプタのハウジングの開口部の形態の接続部を提供する。この接続部には、導光体の端部によって供給される光がガスキャビティに到達できるように、そしてガスキャビティからの光が光検出器に到達できるように、アダプタコネクタのケーブル接続部をはめ込むことができる。開口部は透明な窓によってガスキャビティから分離されてもよく、導光体の端部によって供給される光、および光検出器によって検出される光が透明な窓を通過することができる。
【0014】
パッチケーブルの導光体は、モジュールコネクタからアダプタコネクタに光を導くように構成されている。導光体は1つの光ファイバを指してもよいが、複数の光ファイバを指してもよく、例えば、複数の光ファイバのそれぞれが異なる波長の光を呼吸アダプタに導くように構成されている。これらの光ファイバは、CO、O、または揮発性麻酔薬の検出に最適になるように選択されてもよい。好ましくは、導光体の1つ以上の光ファイバはシングルモード光ファイバである。シングルモード光ファイバには、光ファイバ内のスペクトルバックグラウンドを無視できるという利点がある。具体的には、導光体は、CO吸収波長に対応する2μmに近い波長の光を導くのに適したシングルモードケイ酸塩ファイバを含むことが好ましい。別の実施形態では、導光体はマルチモーダル光ファイバを含んでもよい。
【0015】
パッチケーブルの電気ケーブルは、光検出器によって生成された電気検出信号をアダプタコネクタからモジュールコネクタに送るように構成されている。電気ケーブルは1本以上の電線を含む。例えば、電気ケーブルは、光検出器によって生成された電気信号をアダプタコネクタからモジュールコネクタに送るための信号線として構成されたワイヤを含むことができ、さらに、モジュールコネクタから光検出器に電力を供給するための電力線として構成された電線を含むことができる。
【0016】
アダプタコネクタの一部として提供される光検出器は、好ましくは、自身の表面に当たる光を電気信号に変換するように構成されたフォトダイオードである。具体的には、フォトダイオードは、導光体によって供給される波長の光を電気信号に変換するのに特に適しているように構成され得る。好ましくは、光検出器は、近赤外スペクトルの光を検出するように構成されたInGaAs検出器である。
【0017】
一実施形態では、アダプタコネクタは、第1のコネクタ部および第2のコネクタ部を含み、第1のコネクタ部は光検出器を含み、第2のコネクタ部は導光体の端部を含み、第1のコネクタ部および第2のコネクタ部は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部を通って供給され、呼吸アダプタのガスキャビティを通過した光が光検出器によって検出されるように、アダプタコネクタを呼吸アダプタに接続する。
【0018】
アダプタコネクタの第1のコネクタ部および第2のコネクタ部は、例えば、パッチケーブルのある箇所において、パッチケーブルを、光検出器に接続される電気ケーブルを含む第1のケーブル部と、導光体の端部に光を供給する導光体を含む第2のケーブル部とに分割することによって提供され得る。パッチケーブルの分割は、パッチケーブルの任意の長さにおいて行うことができ、例えば、パッチケーブルは、第1のケーブル部および第2のケーブル部を含むパッチケーブルセットとして直接提供されてもよい。呼吸アダプタは、例えば、アダプタコネクタを呼吸アダプタに接続するために第1のコネクタ部および第2のコネクタ部を接続できる2つの異なる接続部をガスキャビティの異なる側に設けることによって、第1のコネクタ部および第2のコネクタ部がガスキャビティの異なる側に提供されるように構成され得る。あるいは、呼吸アダプタは、ガスキャビティの同じ側にコネクタ部を提供するように構成されてもよい。この実施形態では、鏡のような反射器がガスキャビティの反対側に設けられており、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、第2のコネクタ部内の導光体の端部によって供給された光を、第1のコネクタ部内に設けられた光検出器によって検出することができる。
【0019】
一実施形態では、アダプタコネクタはU字形を有し、導光体の端部は、U字形アダプタコネクタの一方の側に配置されており、光検出器は、U字形アダプタコネクタの反対側に配置されており、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部を介して供給され、呼吸アダプタのキャビティを通過した光が光検出器によって検出される。具体的には、この実施形態では、導光体の端部がU字形アダプタコネクタの一方の側部に配置されており、光検出器がU字形アダプタコネクタの他方の側部に配置されており、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部と光検出器とはガスキャビティを介して互いに向かい合っている。この実施形態では、呼吸アダプタは、U字形アダプタコネクタに接続するように構成された接続部を提供するように構成されている。例えば、呼吸アダプタは、導光体によって供給される光がガスキャビティに供給され、ガスキャビティを通過した光が光検出器によって検出され得るように、U字形アダプタコネクタの2つの側部をはめ込むことができるコネクタ開口部を接続部として含んでもよい。
【0020】
一実施形態では、呼吸アダプタは、ガスキャビティの、アダプタコネクタを呼吸アダプタに接続できる接続側とは反対側に、呼吸アダプタの一部として少なくとも1つの反射器を提供し、アダプタコネクタは、アダプタコネクタが呼吸アダプタ に接続されているとき、導光体の端部および光検出器が実質的に同じ方向を向き、導光体の端部によってガスキャビティ内に供給され、呼吸アダプタの一部として提供されている少なくとも1つの反射器によって反射された光が光検出器によって検出されるように構成されている。この実施形態では、呼吸アダプタは、導光体の端部がガスキャビティ内に光を供給することができ、かつ光検出器がガスキャビティ内に供給された光を検出することができるように、アダプタコネクタをはめ込むことができるコネクタ開口部などの接続部を、呼吸アダプタの1つの側に提供するように構成されてもよい。具合的には、呼吸アダプタは、この実施形態では、導光体の端部によって供給された光が反射器によって反射されて光検出器に当たるように、ガスキャビティの反対側に配置された鏡などの反射器を有してもよい。反射器は反射層として金属層、好ましくはアルミニウム層、または誘電体多層コーティングを含むことができる。
【0021】
一実施形態では、導光体の端部は、アダプタコネクタ内に組み込まれたレンズを含む。ある好ましい実施形態では、レンズは屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)である。別の実施形態では、レンズはプラスチックレンズまたはボールレンズであり得る。レンズは、導光体の端部によって供給される光を特定の点に集光させるように、例えば、光を光検出器に集光させるように構成されてもよい。したがって、レンズの特性は、呼吸アダプタの、具体的には呼吸アダプタによって提供されるガスキャビティの寸法および構成によって決定され得る。例えば、レンズの焦点距離は、ガスキャビティを通るレンズの表面と光検出器の表面との間の光ビームがたどる光路の長さを指す可能性がある。導光体の端部の正面、すなわちガスキャビティと導光体の端部との間にレンズを設けることにより、光を検出器の表面に集光させることができる。集光されたスポットの直径は、検出器の直径よりもはるかに小さくすることができる。配置の許容誤差に起因してスポットが検出器に対して偏心している場合でも、検出器の表面が十分に大きければ、光を検出することができる。これにより、配置およびアラインメントの許容誤差が大きくなる。
【0022】
一実施形態では、光検出器は、アダプタコネクタ内に組み込まれた集積回路(IC)に接続される。好ましくは、ICは、光検出器から呼吸モジュールへの電子信号が外乱の影響を受けにくくなるように、光検出器の検出信号を増幅する増幅ICである。
【0023】
一実施形態では、アダプタコネクタは、光が検出される光検出器の表面が、光検出器によって検出される光のビーム方向に対してある角度を有して配置されるように構成されている。一般に、光検出器によって検出される光のビーム方向は、導光体の端部によって供給され、光検出器に当たるすべての光ビームの空間平均を指す平均ビーム方向として定義することができる。また、ビーム方向は、導光体の中心において供給され、呼吸アダプタおよびアダプタコネクタの光学的配置に従ってガスキャビティを通る経路をたどる中心光ビームによって定義されてもよい。さらに、表面と線、例えばビーム方向との間の角度は、線と表面の法線との間の角度として定義することができる。光検出器は、光検出器によって検出される光のビーム方向に対してある角度を成すように配置されるので、検出器表面によって反射された光が、検出器の表面に当たる光ビームの一部に再びなることはできない。したがって、検出器の表面で反射された光のスペクトルバックグラウンドへの寄与を低減することができる。好ましくは、ビーム方向に対する検出器の表面の角度は3°~20°の間である。
【0024】
一実施形態では、導光体の端部における表面は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部によってガスキャビティ内に供給される光のビーム方向に対してある角度を提供する。具体的には、導光体の端部における表面は、導光体の側壁に対してもある角度を提供する。さらに、呼吸アダプタが、ガスキャビティの、導光体の端部が光をガスキャビティ内に供給する側とは反対側に、ガスキャビティの一部として少なくとも1つの反射器を提供する場合、導光体の端部における表面は、ガスキャビティの反射面に対してもある角度を提供することができる。さらに、導光体の端部がレンズを含む場合、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、ガスキャビティと向かい合うレンズの表面に上記角度が設けられてもよい。この場合、角度はレンズの中心平面に対して定義することができる。好ましくは、導光体の側面に対する導光体の端部における表面の角度は2°~20°の間であり、特に8°である。
【0025】
一実施形態では、アダプタコネクタは、透明材料から形成されている正面部をさらに含み、正面部は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部および/または光検出器とガスキャビティとの間に配置されている。透明材料、例えばガラスから形成されている正面部は、所定の厚さを有し、透明材料で作られた角度のある板または円形の板の形態を有してもよい。好ましい実施形態では、導光体の端部の正面および/または光検出器の正面、すなわち、導光体の端部および/または光検出器とガスキャビティとの間に位置する透明な正面部は光学窓であり、光検出器によって検出される光および/または光学窓を通過する導光体の端部によって供給された光のビーム方向に対して傾斜している。好ましくは、傾斜角度は3°~20°の間であり、特に5°である。さらに好ましい実施形態では、正面部と、導光体および/または光検出器との間に形成される空間は光学ゲル、例えば、所定の屈折率を有する光学ゲルで満たされている。屈折率は、例えば、1.44または光学窓の屈折率に近い別の屈折率であり得る。
【0026】
一実施形態では、モジュールコネクタはさらに、i)導光体を介して光を供給する光供給ユニットと、ii)光検出器によって供給される電気検出信号を受信する処理ユニットとを含み、処理ユニットは、電気検出信号に基づいて、呼吸ガスの濃度を表すデータ信号を生成する。光供給ユニットは、モジュールコネクタ内に設けられたレーザ光供給ユニットであり得る。好ましくは、光供給ユニットはVCSELユニットである。処理ユニットは、光検出器によって供給される電気検出信号を受信し、電気検出信号に基づいて呼吸ガス濃度を決定することによってデータ信号を生成するように構成された専用回路であってもよい。しかし、処理ユニットは、モジュールコネクタの一部である汎用または専用処理デバイス上で実行されるソフトウェアユニットを指す場合もある。
【0027】
光供給ユニットおよび処理ユニットは、パッチケーブルのモジュールコネクタの一部として提供されるので、呼吸モジュールは、対応する光供給ユニットまたは対応する処理ユニットを提供する必要がなく、さらに軽量に構築され得る。この場合、呼吸モジュールは、モジュールコネクタの光供給ユニットおよび処理ユニットに電力を供給するためにモジュールコネクタに電気を供給するだけでよいので、モジュールコネクタと呼吸モジュールとの間の接続部も電気コネクタに簡略化することができ、例えば、導光体用のコネクタを提供する必要がない。ここでの呼吸モジュールの主な機能は、カプノグラフィデータをユーザに提供すること、およびカプノグラフィ設定に関するユーザからの入力を取得することである。この実施形態では、パッチケーブルはスマートパッチケーブルと見なすことができ、スマートパッチケーブルは、呼吸モジュールと呼吸アダプタとの間の単純な接続を提供することを超えた追加機能を提供することによって定義される。別の実施形態では、パッチケーブルのモジュールコネクタは、上記ユニットのうちの1つのみを含んでもよく、すなわち、光供給ユニットのみまたは処理ユニットのみを含んでもよい。
【0028】
本発明の別の態様では、上記のようなパッチケーブルのアダプタコネクタに接続される呼吸アダプタが提示され、呼吸アダプタはガスキャビティを含み、呼吸アダプタおよびガスキャビティは、呼吸アダプタが患者と機能的に接触しているとき、患者からの呼吸ガスがガスキャビティに入ることができるように構成されており、呼吸アダプタは、さらに、導光体の端部によって供給された光が、ガスキャビティ内に供給された呼吸ガスとインタラクトするためにガスキャビティを通過した後、アダプタコネクタの光検出器によって検出されることができるように、アダプタコネクタに接続している。例えば、呼吸アダプタは、アダプタコネクタのコネクタ部を接続できるコネクタ部、例えばコネクタ開口部を提供することができる。
【0029】
一実施形態では、ガスキャビティの表面は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部を通って供給される光ビームのビーム方向に対してある角度を有する。好ましくは、導光体の端部を通して供給される光ビームのビーム方向とガスキャビティの表面との間の角度は3°よりも大きく、好ましくは5°の角度を有する。アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、ガスキャビティの表面は、導光体の端部を通して供給される光ビームのビーム方向に対してある角度を有するため、ガスキャビティの表面に当たった光は、反射されて導光体または光検出器に戻ることはなく、よってスペクトルバックグラウンドに寄与しない。
【0030】
一実施形態では、呼吸アダプタは少なくとも1つの反射器を含み、少なくとも1つの反射器は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部によって供給された光が少なくとも1つの反射器によって反射され、少なくとも1つの反射器における反射後に光検出器によって検出されるように配置されている。具体的には、呼吸アダプタ内の少なくとも1つの反射器の位置および構成は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているときの導光体の端部および光検出器の位置および向きに依存する。例えば、上記のように、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部および光検出器がガスキャビティの同じ側に提供されるようにアダプタコネクタが構成されている場合、ガスキャビティの反対側に少なくとも1つの反射器が設けられてもよい。さらに、同じく上記したように、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部および光検出器がガスキャビティの異なる側に提供されるようにアダプタコネクタが構成されている場合、導光体の端部によって供給された光が、光検出器によって検出される前に2回以上反射されるように、少なくとも1つの反射器がガスキャビティの各側に設けられてもよい。2つ以上の反射器を使用するこのような構成は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部および光検出器がガスキャビティの同じ側に提供されている実施形態でも使用することができ、この場合、導光体の端部によって供給された後、かつ光検出器によって検出される前に、光は少なくとも3回反射される。
【0031】
一実施形態では、反射器は、導光体によってガスキャビティ内に供給された光のビーム方向に対して傾斜していてもよい。具体的には、反射器は、光を光検出器に反射するように傾斜していてもよい。その場合、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているときの導光体の端部および光検出器の位置に基づいて、傾斜を予め決定することができる。
【0032】
ある好ましい実施形態では、設けられている少なくとも1つの反射器のうちの少なくとも1つは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部によって供給された光ビームを光検出器に集光させるための球面反射器である。例えば、球面反射器は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているときの導光体の端部および光検出器の位置および向きに基づいて決定することができる所定の半径を有する球面鏡であってもよい。球面反射鏡は光を検出器の表面に集光させることができる。集光されたスポットの直径は、検出器の直径よりもはるかに小さくすることができる。配置の許容誤差に起因してスポットが検出器に対して偏心している場合でも、検出器の表面が十分に大きければ、光を検出することができる。これにより、配置およびアラインメントの許容誤差が大きくなる。また、この実施形態において、球面反射器は、導光体によって供給される光のビーム方向に対して傾斜していてもよい。
【0033】
本発明の別の態様では、上記のような呼吸アダプタおよび上記のようなパッチケーブルを備えた呼吸ガス検出信号提供ユニットが提示され、呼吸アダプタおよびパッチケーブルは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、アダプタコネクタによって提供される導光体の端部によって供給された光が、呼吸アダプタによって提供されるガスキャビティ内のガスとインタラクトした後、アダプタコネクタによって提供される光検出器によって検出され得るように構成されている。
【0034】
本発明の別の態様では、上記のようなパッチケーブルによって提供されるモジュールコネクタに接続可能であるように構成された呼吸モジュールが提示され、呼吸モジュールは、パッチケーブルによって供給される信号に基づいて呼吸ガスの濃度を決定するように構成されており、呼吸モジュールは、呼吸ガスの決定された濃度を出力するための出力ユニットを含む。呼吸モジュールは、光検出器の検出信号に基づいて、または、パッチケーブルのモジュールアダプタが処理ユニットを含む場合は、呼吸ガスの濃度を表す処理ユニットによって供給されたデータ信号に基づいて、ガス濃度を決定するように構成され得る。出力ユニットは、例えば、決定された呼吸ガスの濃度を表示するためのディスプレイであってもよい。しかし、出力ユニットは、別の形態の出力、例えば、拡声器またはLEDによってそれぞれ提供される可聴出力または可視出力を提供するように構成されてもよく、出力は、決定された呼吸ガスの濃度を示す。具体的には、呼吸ガスの濃度の所定の閾値が超過された場合、出力ユニットによってアラームが提供されてもよい。
【0035】
一実施形態では、呼吸モジュールは、i)パッチケーブルが呼吸ガス検出モジュールに接続されているとき、モジュールコネクタを介してパッチケーブルの導光体に光を供給するように構成された光供給ユニットと、ii)パッチケーブルが呼吸ガス検出モジュールに接続されているとき、光検出器によって供給される電気検出信号を受信するように構成された処理ユニットとをさらに含み、処理ユニットは、電気検出信号に基づいて呼吸ガス濃度を決定するように構成されている。この実施形態では、パッチケーブルはスマートパッチケーブルを指しておらず、すなわち、パッチケーブル自体が光供給および/またはガス濃度決定機能を提供するわけではない。この場合、呼吸モジュールが、光供給ユニットおよびガス濃度を決定するための処理ユニットを提供することが好ましい。
【0036】
一実施形態では、光供給ユニットは、濃度が決定されるべき呼吸ガスの吸収波長と実質的に等しい波長を有する光を供給するように構成されている。例えば、光供給ユニットは、呼吸ガスとしてのCOによって吸収されることが知られている波長を指す近赤外または中赤外線スペクトルの光を供給するように構成され得る。
【0037】
ある好ましい実施形態では、光供給ユニットは、光検出器によって供給される検出信号も変調されるように、供給される光の波長を、濃度が検出されるべき呼吸ガスの吸収波長の付近に変調するように構成されており、処理ユニットは、変調周波数の第2高調波で検出された信号に基づいて呼吸ガスの濃度を決定するように構成されている。
【0038】
本発明の別の態様では、上記のような呼吸ガスモジュールと、上記のような呼吸アダプタと、呼吸ガスモジュールを呼吸アダプタに接続する上記のようなパッチケーブルとを含む呼吸ガス検出システムが提示される。具体的には、呼吸ガスモジュール、呼吸アダプタ、およびパッチケーブルは、呼吸ガスモジュールを呼吸アダプタに接続するためにパッチケーブルを使用できるように構成されており、呼吸ガス検出システムは、呼吸ガスの濃度を決定するように構成されている。呼吸ガス検出システムとは、呼吸ガスモジュール、呼吸アダプタ、およびパッチケーブルの上記実施形態の技術的に適切な任意の組み合わせを指す可能性がある。
【0039】
パッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸モジュールは合わせて呼吸ガス検出システムを形成し、呼吸ガス検出システムの要素のうちの1つの要素の構成が、特に、従属請求項に記載されているように、呼吸ガス検出システム他の要素の構成に影響を及ぼす可能性があることを理解されたい。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項または上記実施形態と独立請求項との任意の組み合わせとすることもできることを理解されたい。
【0041】
本発明の上記および他の態様は、以下に記載される実施形態を参照しながら説明され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明に係る呼吸ガス検出システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図2図2は、本発明に係る呼吸ガス検出システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図3図3は、本発明に係る呼吸アダプタの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図4図4は、本発明に係る呼吸ガス検出システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図5A-5E】図5A図5Eは、本発明に係る呼吸アダプタおよびパッチケーブルの異なる実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図6-7】図6および図7は、本発明に係るパッチケーブルに接続された呼吸アダプタの例示的な実施形態におけるシミュレーション光路を示す。
図8図8は、本発明に係る呼吸アダプタおよびパッチケーブルの詳細な実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図9図9は、本発明に係る呼吸モジュールの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図10A-10B】図10Aおよび図10Bは、鼻カニューレの2つの実施形態をパッチケーブルコネクタとともに概略的かつ例示的に示す。
図11図11は、コネクタ・レセプタクル・インサートを有する呼吸アダプタの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明に係る呼吸ガス検出システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す。この例示的な実施形態では、呼吸ガス検出システムは患者120によって着用され、呼吸アダプタ101、パッチケーブル110、および呼吸ガスモジュール103を備える。呼吸ガス検出システムのこの例示的な実施形態では、呼吸モジュール103は、バッテリパック、呼吸ガス濃度を示す受信された電気検出信号を処理するように構成された処理ユニット、および検出対象の呼吸ガスの吸収波長範囲内の光を供給するための光供給ユニットを含み得る。さらに、呼吸モジュール103は、例えば、検出信号の処理結果を示すために使用され得る患者モニタに呼吸モジュール103を接続するように構成された無線接続ユニットを備え得る。さらに、呼吸モジュール103はパッチケーブル110に接続されるように構成されている。例えば、呼吸モジュール103は、パッチケーブル110の接続部に接続可能であるように構成された接続部を備え得る。具体的には、この実施形態では、接続部は、光供給ユニットとパッチケーブル110の導光体との間の光接続を提供するための光インターフェースを含む。光インターフェースは、光供給ユニットによって供給された光をパッチケーブル110の導光体に結合するように構成されている。さらに、この実施形態では、呼吸モジュール103は、パッチケーブル110から処理ユニットに電気検出信号を渡すために、処理ユニットとパッチケーブル110の電気ケーブルとの間の電気接続を提供する電気信号インターフェースを含む。
【0044】
呼吸アダプタ101は、患者120の気道と機能的に接触して配置され、患者120の呼吸が通過できるガスキャビティを提供するように構成されている。図1に示される実施形態では、呼吸アダプタ101は、患者の気道、この場合は患者の鼻および口に取り付けられる使い捨てカニューレの形態を有する。さらに、呼吸アダプタ101は、パッチケーブル110のアダプタコネクタ114に接続されるように構成されている。
【0045】
パッチケーブル110は、パッチケーブル110の第1の端部を呼吸モジュール103に接続するためのモジュールコネクタ113を備える。さらに、パッチケーブル110は、パッチケーブル110の第2の端部を呼吸アダプタ101に接続するためのアダプタコネクタ114を備える。アダプタコネクタ114は、光供給モジュールによって供給される波長範囲の光を検出し、検出対象の呼吸ガスの吸収波長範囲を参照するための光検出器をさらに備える。
【0046】
さらに、パッチケーブル110は、モジュールコネクタ113からアダプタコネクタ114に光を導くための導光体、および光検出器によって生成された電気検出信号をアダプタコネクタ114からモジュールコネクタ113に送るための電気ケーブルを備える。アダプタコネクタ114および呼吸アダプタ101は、アダプタコネクタ114が呼吸アダプタ101に接続されたとき、導光体の端部によって供給された光が呼吸アダプタ101のガスキャビティを通過し、光検出器によって検出できるように、互いに対して構成されている。したがって、呼吸アダプタ101およびパッチケーブル110は、呼吸モジュール103にガス検出信号を供給するためのガス検出信号供給ユニットと見なすことができる。一般に、呼吸アダプタは、患者が使用した後に使い捨て可能なものであってもよい。好ましくは、パッチケーブルは、例えば、特別な消毒剤を使用して拭き洗いすることによって洗浄可能であり、他の患者のために再利用可能である。HHHしかし、他の実施形態では、呼吸アダプタも洗浄可能かつ再利用可能であり得る。さらに、他の実施形態では、パッチケーブルは患者が使用した後に使い捨て可能であってもよい。
【0047】
図1に示される実施形態では、パッチケーブル110は、ともに1つのモジュールコネクタに接続されている2つのケーブル部を含む。さらに、2つのケーブル部はともに同じアダプタコネクタに接続されてもよく、またはアダプタコネクタが第1の部分および第2の部分を含み、各ケーブル部が、それぞれアダプタコネクタの部分のうちの1つを介して呼吸アダプタ101に接続されてもよい。この実施形態では、呼吸アダプタ101は、鼻を通る呼吸空気をサンプリングするためのプロングと、口を通る吸気および呼気をサンプリングするためのマウスキャップとを備えた口鼻カニューレであり得る。この実施形態の2つのケーブル部は、例えば、図1に示されるように、ケーブル部が患者の顔の下で分割することで、呼吸アダプタ101を患者の気道と機能的に接触させることができる、すなわち、呼吸アダプタ101を患者の鼻および/または口の前に配置できるという利点を有する。この構成では、ケーブル部のうちの一方は、呼吸モジュール103から呼吸アダプタ101に光を導くための導光体を含み得、他方のパッチケーブル部は、光検出器によって生成された電気検出信号を呼吸モジュール103に送るための電気ケーブルを含み得る。
【0048】
図2では、本発明に係る呼吸ガス検出システムの別の実施形態の概略的かつ例示的な概要が提供されており、以下、これについて説明する。呼吸器系の問題のある患者は、気道に直接酸素を補給される必要があることが多い。したがって、この実施形態では、呼吸ガス検出システム200は、呼吸アダプタ201、パッチケーブル210、および呼吸モジュール203に加えて、酸素供給チューブ204および酸素供給コネクタ206を含む酸素供給源を含む。酸素供給コネクタ206は、酸素供給チューブ204を介して患者に酸素を供給するように構成された酸素供給源に接続するように構成されている。酸素供給源を呼吸アダプタ201と組み合わせるために、呼吸アダプタ201内またはその上に、補給酸素を患者の気道、例えば患者の鼻に導くための流路が設けられ得る。好ましくは、呼吸アダプタ201は、呼吸アダプタ201内に設けられた、患者の息に含まれる呼吸ガスの濃度を検出するために使用されるガスキャビティの外側を酸素流が通過するように構成される。これは、酸素供給チューブ204を介して供給される酸素がガス感知キャビティ内で患者の呼気と混ざり、呼吸ガス検出に影響を与えることを防ぐ。
【0049】
図2に示される例示的な実施形態では、パッチケーブル210は、図1に示されるパッチケーブル110とは対照的に、1つのみのパッチケーブルとして提供される。したがって、この実施形態のパッチケーブル210は、2つのコネクタ部を備えていないアダプタコネクタを含む。なお、図2ではアダプタコネクタは直接図示されていない。代わりに、この実施形態では、アダプタコネクタおよび呼吸アダプタ201は、パッチケーブル210のアダプタコネクタが呼吸アダプタ201の1つの側に接続されることで、酸素供給チューブ204が呼吸アダプタ201の別の側に、好ましくは呼吸アダプタ201の反対側に接続され得るように構成されている。
【0050】
さらに、この例示的な実施形態では、パッチケーブル210および酸素供給チューブ204の周りに調節可能なスライダー205が設けられている。調節可能なスライダー205は、例えば、パッチケーブル210および酸素供給チューブ204を患者の耳の後ろに通し、パッチケーブル210および酸素供給チューブ204を患者の顎の下に固定するように調節可能なスライダー205を調節することで、パッチケーブル210、酸素供給チューブ204、および呼吸アダプタ201の位置を患者の頭部に対して固定することによって、患者の酸素供給チューブ204およびパッチケーブル210を患者に固定するために使用され得る。したがって、パッチケーブル210および供給チューブ204に関連付けられた調節可能なスライダー205は、呼吸アダプタ201を患者に取り付けることを可能にする取り付け手段と見なすことができる。
【0051】
図2に示される実施形態では、呼吸アダプタ201およびパッチケーブル210は、パッチケーブル210が、呼吸アダプタ201の片側からのみ呼吸アダプタ201に接続されるように構成されている。しかし、図3により詳細に示されるように、パッチケーブルはまた、図1に関して既に示されているように、第1のコネクタ部311および第2のコネクタ部312を含むように構成されてもよい。そのような実施形態では、呼吸アダプタ301は、第1のコネクタ部311および第2のコネクタ部312が、互いに、呼吸アダプタ301の反対側において、具体的には、呼吸アダプタ301内に設けられたガスキャビティの反対側において呼吸アダプタ301に接続できるように構成されてもよい。患者の鼻呼吸の流れの一部は、プロング313および呼吸アダプタ301によって提供されるガスキャビティを通過することができる。そのような実施形態において酸素供給チューブ204が存在する場合、酸素供給チューブ204は、呼吸アダプタ301とは独立して、すなわち、呼吸アダプタ301に接続されずに提供され得る。あるいは、呼吸アダプタ301は、酸素供給チューブ204を接続することができる酸素供給源のための追加の経路を提供してもよい。好ましくは、酸素供給チューブ204は呼吸アダプタ301の上に配置され、別個のプロング314に連結される。この実施形態は、例えば、図1に示されるような呼吸ガス検出システム100の実施形態に酸素供給チューブを容易に組み合わせることを可能にする。
【0052】
図4は、呼吸ガス検出システムの別の実施形態を概略的かつ例示的に示す。この実施形態では、呼吸ガス検出システム400は、患者の肺を換気するための換気システムと組み合わされている。この場合における呼吸ガス検出システム400も呼吸アダプタ401、パッチケーブル410、および呼吸モジュール403を備える。図4に示される例示的な実施形態では、呼吸アダプタ401およびパッチケーブル410は、図3に示されるような接続構成と同様の接続構成を提供する。具体的には、図4に示されるパッチケーブル410は図3に示されるパッチケーブルと同様であり、呼吸アダプタ401の互いに反対側に接続可能な第1のコネクタ部411および第2のコネクタ部412を備える。しかし、この実施形態では、呼吸アダプタ401は、気道アダプタとして、患者の肺を換気するための換気システムに組み込まれるように構成されている。例えば、呼吸アダプタ401は、患者の挿管に使用される換気チューブ404の第1の部分と、換気チューブ404を換気システムまたは回路に接続する換気チューブ404の第2の部分との間に配置されるように構成され得る。例示的な一実施形態では、呼吸アダプタ401は、換気用に供給されたガスが呼吸アダプタ401を通過するように、具体的には、気道アダプタ401によって提供されるガスキャビティを通過するように、換気チューブ404の第1の部分と換気チューブ404の第2の部分との間の接続部として使用され得る。しかし、他の実施形態では、気道アダプタ401は、患者に供給される、または患者から来る息のガスが気道アダプタ401内に設けられたガスキャビティを通過するように他の方法で患者の換気システムに接続されてもよい。一般に、呼吸アダプタを換気システムの一部にすることを可能にする呼吸アダプタのこの変更は、上述の、または後述される呼吸アダプタの例示的な構成のうちの任意の構成と組み合わせることができる。
【0053】
さらに、図4には、パッチケーブル410がスマートパッチケーブルとして提供される例示的な実施形態が示されている。具体的には、パッチケーブル410は、光供給ユニットおよび処理ユニットを含むモジュールコネクタ413を備える。具体的には、光供給ユニットおよび処理ユニットはモジュールコネクタ413に組み込まれている。パッチケーブル410の導光体を介して光を供給するための光供給ユニットがモジュールコネクタ413の一部であるため、モジュールコネクタ413は、モジュールコネクタ413と呼吸モジュール403との間の電気接続を提供するように構成されるだけでよい。電気接続を提供するためのインターフェースは、一般に、例えば光インターフェースよりも故障しにくく、この実施形態では、モジュールコネクタ413と呼吸モジュールとの間に技術的により複雑な光インターフェースを設ける必要がない。したがって、この例では、モジュールコネクタ413内の光供給ユニットおよび処理ユニットのための電力は、モジュールコネクタ413と呼吸モジュール403との接続を介して得られる。
【0054】
好ましくは、この実施形態では、処理ユニットは、光検出器によって供給される電気検出信号を受信し、供給された電気検出信号に基づいて、呼吸ガス濃度を表すデジタルデータ信号を生成するように構成される。そして、モジュールコネクタ413は、光供給ユニットおよび処理ユニットのための電力のみを呼吸モジュール403からモジュールコネクタ413に送るのではなく、デジタルデータ信号をモジュールコネクタ413から呼吸モジュール403に送るように構成され得る。これは、モジュールコネクタ、例えばモジュールコネクタ413のコネクタ部またはインターフェースを受け入れるように構成された標準化されたコネクタを呼吸モジュールに設けることを可能にするが、呼吸モジュールのコネクタは、他のセンサタイプを有し、これらの他のセンサタイプの測定値を表すデジタルデータ信号を供給する他のスマートケーブルのコネクタインターフェースを受け入れるように構成されてもよい。
【0055】
呼吸モジュール403はさらに、例えば、モジュールコネクタ413の処理ユニットによって供給されるデジタルデータ信号を認識し、デジタルデータ信号のソースを識別するように、例えば、デジタルデータ信号が呼吸ガス濃度を求めるスマートパッチケーブルによって供給されたものであると識別するように構成されてもよい。そして、呼吸モジュール403は、必要に応じて、デジタルデータ信号の識別に基づいてデジタルデータ信号を処理し、呼吸ガス濃度検出の結果および/または他の測定の結果を患者モニタ405に提供することができる。患者モニタ405は、例えば、ディスプレイ上で、呼吸ガス濃度検出および/または他の測定の結果を視覚化するように構成され得る。さらに、患者モニタ405は、測定結果を解析するように、または測定からの情報を他の情報、例えば、病院ネットワークによって提供されるか、もしくは他のソースによって提供される患者データと組み合わせるように構成されてもよい。
【0056】
図4に示される実施形態では、呼吸モジュール403は患者モニタ405に組み込まれている。しかし、例えば、図1に示される実施形態のような他の実施形態では、呼吸モジュールはスタンドアロンシステムであってもよく、または、例えば、無線接続を介してのみ患者モニタに接続可能である。一般に、上記実施形態に関して、図1図4に関連して説明した呼吸アダプタ、パッチケーブル、および呼吸モジュールの異なる構成は容易に組み合わせることができる。例えば、スマートパッチケーブル、すなわち、組み込まれた光供給ユニットおよび処理ユニットを有するモジュールコネクタと、対応するように構成された呼吸モジュールとを含むパッチケーブルを、図2または図3に示される呼吸アダプタと一緒に使用することもできる。
【0057】
以下では、呼吸ガス検出信号供給ユニットを形成する呼吸アダプタおよびパッチケーブルの異なる可能な実施形態を、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されている場合において、図5A図5Eに関連してより詳細に説明する。これらの実施形態はすべて、呼吸モジュールの上記実施形態のうちの任意の実施形態と組み合わせることができる。一般に、図5A図5Eに示される他の実施形態のうちの1つと同じである構成要素には同じ参照符号が付されている。
【0058】
図5Aは、アダプタコネクタ520aを含むパッチケーブル510aの第1の例示的な実施形態を示す。アダプタコネクタ520aは、ガスキャビティ530を含む呼吸アダプタ501aに接続された状態で示されている。一般に、呼吸アダプタとは、図5A図5Eに示されるように、ガスキャビティ530を取り囲む構造全体を指す。この第1の実施形態では、アダプタコネクタ520aはU字形である。U字形アダプタコネクタ520aの一方の側には導光体514aの端部が配置されており、U字形アダプタコネクタ520aの反対側には光検出器515が配置されており、光検出器515と導光体514aの端部とが互いに向き合っている。具体的には、導光体514aの端部および光検出器515は、アダプタコネクタ520aが呼吸アダプタ501aに接続されたときに、導光体514aの端部によって供給された光531がガスキャビティ530を通過し、光検出器515に当たるように、U字形アダプタコネクタ520aの互いに反対側に配置されている。
【0059】
信号対雑音比を改善するために、この実施形態では、導光体514aの端部には、導光体514aの端部によって供給される光を、例えばフォトダイオードであり得る光検出器515に集光するGRINレンズが設けられていてもよい。この実施形態は、アダプタコネクタ520aのU字形が、導光体514aの端部および光検出器515の相対位置のしっかりとした固定を提供するという利点を有する。また、導光体514aの端部によって供給される光531が、例えば、GRINレンズによって光検出器515に集光される場合、さらに、パッチケーブルのコストを削減すること、およびアダプタコネクタのサイズを小さくし、よって呼吸アダプタのサイズを小さくすることを可能にする非常に小さな光検出器が得られる。
【0060】
さらに、導光体514aの端部によってガスキャビティ530に供給される光ビーム531のビーム方向に対してある角度を提供するように、例えば、レンズ、例えば、GRINレンズを有する導光体514aの端部を提供することが有利であり得る。レンズは光531を検出器の表面に集光される。光ビーム531のビーム方向は、一般に、導光体514aの中心によって供給される光ビーム531の中心ビームの方向によって定義することができる。そのような角度は、供給された光が反射して戻り導光体514aに結合されたり、または反射して光検出器に当たったりする望ましくない反射を防ぎ、したがって、導光体514aの端部の表面での光反射によって引き起こされるスペクトルバックグラウンドを減少させる。さらに、光検出器515、具体的にはガスキャビティ530に面する光検出器515の表面に、光検出器515によって検出される光ビーム531のビーム方向に対して角度をつけることも有利であり得る。また、これは、例えば、光検出器515の表面および/または異なる表面で起こる、光検出器515に当たる光の反射に起因するスペクトルバックグラウンドを低減することを可能にする。
【0061】
図5Bは、アダプタコネクタ520bを介して呼吸アダプタ501bに接続されるパッチケーブル510bの別の例示的な実施形態を示している。図5Aに関して説明した実施形態との主な違いは、この実施形態では、アダプタコネクタ520bが呼吸アダプタ501bの片側にのみ接続されるように、アダプタコネクタ520bおよび呼吸アダプタ501bが構成されていることである。具体的には、アダプタコネクタ520bを呼吸アダプタ501bに接続できる部分である接続部、ここでは接続開口部は、ガスキャビティ530の片側にしか設けられていない。
【0062】
この例示的な実施形態では、アダプタコネクタ520bは、例えば、GRINレンズを含む導光体514aの端部と光検出器515とが実質的に同じ方向を向くように構成されている。さらに、この実施形態では、呼吸アダプタ501bは呼吸アダプタ501bの一部として反射器532bを備えており、反射器532bは、アダプタコネクタ520bが呼吸アダプタ501bに接続されているとき、アダプタコネクタ520bの反対側に位置する。したがって、導光体514aの端部によって供給される光531は、ガスキャビティ530の反対側に位置する反射器532bによって反射され、光検出器515に到達する前にガスキャビティ530を2回通過する。これは、導光体514aの端部によって供給される光531の少なくとも一部を吸収できる呼吸ガスを含む患者が呼吸しているガスで満たされたガスキャビティ530を通過する間の光吸収を実質的に2倍にすることを可能にする。この吸収の増加は、例えば、信号対雑音比を向上させ、したがって、検出感度を改善するか、または検出感度を一定に保ちつつガスキャビティ530の長さを短くすることを可能にする。この例示的な実施形態でも、光検出器515の表面および導光体514aの端部の表面は、図5Aに関して上記したように、光ビーム531に対して角度をつけて提供され得る。
【0063】
アダプタコネクタ520bに接続することができる呼吸アダプタ501cの別の実施形態が図5Cに示されている。図5Cに示される実施形態と図5Aに示される実施形態との主な違いは、呼吸アダプタ501cの反射器532cが球面反射器として提供されることである。パッチケーブル510cのこの実施形態では、導光体514cの端部におけるレンズ、例えば、GRINレンズが省かれるとともに、球面反射器532cが、導光体514cの端部によって供給される光を光検出器515に集光してもよい。したがって、発散光ビーム531が導光体514cの端部によって供給される場合、光はやはり、反射器532cによって光検出器515に集光される。好ましくは、この場合も、スペクトルバックグラウンドおよびダイオードレーザ光源の不安定性に寄与する可能性がある後方反射干渉を防ぐために、導光体514cの端部は、導光体514cの端部によって供給される光ビームの方向に対して角度をつけられている。この実施形態では、導光体514cの端部のレンズが省かれているので、アダプタコネクタ520bの寸法を小さくすることができる。あるいは、さもなければレンズによって占められる空間を使用して光検出器515のサイズを大きくし、システムが光路内の外乱の影響を受けにくくなるようにしてもよい。
【0064】
図5Dは、アダプタコネクタ520bを接続することができる呼吸アダプタ501dの別の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、図5Cにすでに示された第1の反射器532cに加えて、呼吸アダプタ501dの一部として第2の反射器532dが設けられている。好ましくは、第2の反射器532dも球面鏡である。第1の反射器532cおよび第2の反射器532dは、導光体514cの端部によって供給される光531が光検出器515に集光される前にガスキャビティ530を4回通過できるように、ガスキャビティ530内の呼吸アダプタ501dに配置される。したがって、この実施形態では、信号対雑音比をさらに向上させるか、またはガスキャビティ530のサイズ、具体的には、ガスキャビティ530の長さをさらに短くすることができる。さらに、他の実施形態では、光がガスキャビティ530をさらに多く通過するようにするために、さらに多くの反射器が設けられてもよい。
【0065】
パッチケーブル510eおよび呼吸アダプタ501eのさらなる実施形態が図5Eに示されている。この実施形態では、パッチケーブル510eのアダプタコネクタは、第1のコネクタ部511および第2のコネクタ部512を含み、第1のコネクタ部511は光検出器515を含み、第2のコネクタ部512は導光体514aの端部を含む。この実施形態では、第1のコネクタ部511および第2のコネクタ部512は、ガスキャビティ530の互いに反対側において呼吸アダプタ501eに接続されるように構成されている。具体的には、呼吸アダプタ501eは、第1のコネクタ部511および第2のコネクタ部512をそれぞれ接続することができる、呼吸アダプタ501eの互いに反対側に位置する2つの接続部、例えば2つの接続開口部を提供するように構成されている。呼吸アダプタ501eは、具体的には、第1のコネクタ部511および第2のコネクタ部512が呼吸アダプタ501eのコネクタ部に接続されたとき、導光体514aの端部によって供給される光が光検出器515に当たることができるように、コネクタ部を提供するように構成されている。
【0066】
上記と同様に、この実施形態では、導光体514aの端部はレンズ、例えば、GRINレンズを備え得る。さらに、この実施形態においても、光検出器515の表面および導光体514aの端部の表面、例えば、GRINレンズの表面は、光ビーム531のビーム方向に対して角度をつけて提供され得る。また、この実施形態では、IC516が第2のコネクタ部512内に設けられ、光検出器515に接続されてもよいことがさらに示されている。IC516を使用することで、光検出器515によって供給される検出信号を増幅し、外乱による影響を信号輸送が受けにくくすることができる。ICはまた、アダプタコネクタの一部として上記の他の実施形態のうちの任意の実施形態に設けられ得、光検出器に接続され得る。
【0067】
図5A図5Eに関連して上述したすべての実施形態において、呼吸アダプタは、呼吸ガスの検出に使用される波長での吸収が限られているプラスチック、例えば、ポリカーボネートから形成され得る。例えば、検出対象の呼吸ガスがCOである場合、呼吸アダプタ、または少なくとも光が通過する呼吸アダプタの部分は、CO検出に使用される波長の吸収が限られたものであるべきである。呼吸アダプタは、例えば、射出成形を使用して製造することができる。しかし、他の製造方法も企図され得る。
【0068】
好ましくは、上記実施形態のすべてにおいて、ガスキャビティの表面は、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、導光体の端部を通って供給される光ビームのビーム方向に対してある角度を有する。これは、スペクトルバックグラウンドをさらに減らすことを可能にする。また、図5A図5Eには示されていないが、すべての実施形態の呼吸アダプタが、導光体の端部によって供給されるビームが、呼吸アダプタのいかなる構成要素によっても実質的に妨害されることなく、ガスキャビティに入り、ガスキャビティから光検出器に入るのを可能にする。例えば、呼吸アダプタは、好ましい波長の光について透過性であるか、または導光体の端部/光検出器とガスキャビティとの間に透明な窓を含むことができる。あるいは、呼吸アダプタは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているときアダプタコネクタによって閉じられるガスキャビティへの開口部を提供し得、光はこの開口部を通ってガスキャビティに入ることができ、また、ガスキャビティから光検出器に向かうことができる。
【0069】
さらに、上記の実施形態のすべてにおいて、アダプタコネクタは、導光体の端部の正面および/または光検出器の正面に配置された、すなわち、導光体の端部/光検出器とガスキャビティとの間に位置する、透明材料から形成された正面部を有し得る。この透明な正面部は、導光体の端部によって供給される光ビームを分散させるために使用されてもよく、これにより、正面部の表面において出ていく光ビームおよび戻ってくる光ビームの直径がより大きくなり、光検出が失敗するおそれ、例えば、小さなほこりの粒子による光の遮断に起因して失敗するおそれが低くなる。
【0070】
上記実施形態のすべてにおいて、導光体の端部にレンズが設けられ得、レンズは好ましくはGRINレンズである。しかし、レンズはまた、例えばアダプタコネクタの一部である、一般的に知られている球面または非球面プラスチックレンズであり得る。さらに、プラスチックレンズは、呼吸アダプタの一部として、具体的には、アダプタコネクタが接続される箇所である呼吸アダプタのインターフェースの一部として設けられてもよい。追加でまたは代わりに、すべての実施形態において、レンズ、例えば、小さなプラスチック製の集光レンズが光検出器の正面に設けられ得る。これにより、光検出器の有効サイズを大きくすることができる。検出対象の呼吸ガスがCOであり、したがって導光体の端部によって供給される光が近赤外波長範囲内である場合、光検出器はInGaAs検出器であってもよい。
【0071】
以下では、図5Cに関して説明した実施形態に対応するアダプタコネクタおよび呼吸アダプタの非常に詳細な実施形態を、図6図8に関連して例示的に説明する。具体的には、図6および図7は、アダプタコネクタがこの実施形態の呼吸アダプタに接続されているときに、導光体の端部によって供給される光ビームの経路のシミュレーションを示している。図示されているシミュレーションは、光学的レイトレーシングアルゴリズムを使用して取得されたものである。図6および図7に示される実施形態は、干渉効果を引き起こし、測定される光信号のスペクトルバックグラウンドに寄与するおそれがあるガスキャビティ内の望ましくない反射を回避するためにとることができる異なる手段を例示的に示している。さらに、図6図8には、呼吸アダプタおよびアダプタコネクタのいくつかの例示的な寸法が提供されており、ここで、長さの寸法はすべてmm単位で提供されている。
【0072】
図6の第1の図面は、図5Cに関連して説明した呼吸アダプタの実施形態の例、およびそのような実施形態において導光体の端部によって供給された光がたどる光路を示している。図6の上側の部分はyz平面における呼吸アダプタ601の概略図を示しており、一方、図6の下側の部分はxz平面における呼吸アダプタ601の概略図を示している。このシミュレーションでは、近赤外光ビームの波長は2000nmであり、導光体614のシングルモードファイバによって呼吸アダプタ601に導かれるものとしてシミュレートされた。この例では、光ファイバ614の端部は、ビームのファイバへの後方反射を回避するために、y軸に対して、およびx軸をたどるビーム方向に対して8°の角度を有する。さらに、この例では、光ビームが透過する、y軸に対して8°の角度を有するガラス窓617の形態の正面部が設けられている。このシミュレーションでは、ガラスはBK7タイプとして選択されている。さらに、光検出器615は、やはりy軸に対して8°の角度を有するように構成されたInGaAs近赤外光検出器として選択されている。この例では、正面部617と検出器615との間の空間は、正面部の表面と検出器の表面との間の反射を回避するために、1.44の屈折率を有する光学ゲル618で満たされている。この例では、呼吸アダプタ601は射出成形されたポリカーボネートから形成されている。
【0073】
導光体614の端部において供給される光ビームは、呼吸アダプタ601の表面にある窓を介して呼吸アダプタ601に入る。この窓はくさび形を有し、また、干渉効果をもたらす可能性のある望ましくない反射を回避するために、y軸に対して7.5°の角度を有する傾斜した表面をガスキャビティ内に有する。その後、ビームは呼吸アダプタ601のガスキャビティ内に配置された球面鏡632によって反射され、検出器に集光される。この例では、球面鏡の半径は16.0mmである。鏡の反射性材料は金属層、例えば、アルミニウム、または誘電体多層コーティングであり得る。球面鏡632は、y軸に対して2.15°の角度を有する。鏡の正面の呼吸アダプタ601のポリカーボネート表面は、y軸に対して5.7°の角度を有する。また、検出器の直径は0.2mmに選択されている。
【0074】
図6の右下隅のシミュレーション測定結果に示されているように、この構成では、導光体の端部によって光が供給されたときに検出器の表面で検出される光点は、検出器の直径よりもはるかに小さくい。光点の直径は約20マイクロメートルである。正方形の検出器の寸法は0.2x0.2mmであるので、検出器の位置の許容誤差が最大0.1mmとなり、これにより、アダプタコネクタおよび呼吸アダプタの製造が容易になる。
【0075】
図7は、図6と同じアダプタコネクタおよび呼吸アダプタの例示的な構成を示しており、この光路のシミュレーションでは、発生し得る検出器の表面での光の反射がシミュレートされている。図7の上側の部分は、上記と同様に、yz平面における呼吸アダプタの構成を示しており、図7の下側の部分は、上記と同様に、xz平面における呼吸アダプタの構成を示している。この図面からわかるように、そのような発生し得る反射は光検出器に当たらないため、スペクトルバックグラウンドに寄与しない。さらなるシミュレーションでは、この例示的な構成について、呼吸アダプタの表面のいずれかによる意図されていない反射光がいずれも光検出器に到達しないことも示され得る。したがって、この構成により、不要な干渉効果およびスペクトルバックグラウンドを大幅に減らすことができる。
【0076】
図8は、呼吸用アダプタおよびアダプタコネクタのより詳細な例示的実施形態を示している。具体的には、図8は、本発明に係る呼吸アダプタおよびアダプタコネクタのいくつかの例示的な寸法を提供しており、図面で提供される長さの寸法はmm単位で提供されている。図8は、呼吸用アダプタ801およびアダプタコネクタ820の例示的な寸法を示しており、図8の構成は、図5Cに関連して説明した実施形態に対応する。さらに、パッチケーブル810、呼吸アダプタ801、アダプタコネクタ820、導光体814、および検出器815のいくつかの例示的な配置が図8の左側に示されている。一般に、この構成では、導光体の端部によって供給される光ビームの方向のガスキャビティの長さが7.7mmであると有利であることが見出された。図8に示される呼吸アダプタ801は、射出成形されたポリカーボネート呼吸アダプタを指し、呼吸アダプタ801は使い捨て製品として設計されている。図8に示されるような呼吸アダプタ801は、さらなる光電気アラインメントを提供することなく、アダプタコネクタ820に直接接続されるように構成されている。この実施形態における光検出器815は、InGaAs近赤外線検出器を指す。光検出器815の価値のために、パッチケーブル810は再利用可能な製品として構成されてもよい。
【0077】
一般に、ガスキャビティの表面によって提供される角度など、上記の構成によって提供されるスペクトルバックグラウンドを低減するための手段はすべて、呼吸アダプタおよびアダプタコネクタの上記実施形態のいずれにも適用することができる。さらに、提供されている寸法は、上図に示される実施形態の好ましい寸法であるが、他の寸法も上記と同じ効果を提供することができる。
【0078】
以下では、本発明に係る呼吸モジュールの例示的な実施形態を図9に関連して説明する。図9には、息のガスがその中を通るように導かれる呼吸アダプタ901と、パッチケーブル910とが概略的に示されている。呼吸アダプタ901およびパッチケーブル910は、上記で説明された実施形態のうちの任意のものを指し得る。パッチケーブル910は呼吸モジュール903に接続されており、呼吸モジュール903は、この場合、モジュールコネクタ913を介したカプノグラフィモジュールとして示されている。この実施形態では、呼吸モジュール903は、パッチケーブル910の導光体に光を供給するための光供給ユニット931を備える。この例では、光供給ユニット931は、2μm付近のCO吸収線のうちの1つに近い波長を有するVCSELを指す。VCSELによって供給される光はパッチケーブル910の導光体に導かれ、次に、導光体を介して呼吸アダプタ901に導かれる。呼吸アダプタ901のガスキャビティ内の呼吸ガスによって吸収されない光は、パッチケーブル910と一体化された光検出器によって検出される。その後、光検出器からパッチケーブル910の電気ケーブルを介して、検出信号が、呼吸モジュール903の検出電子機器932、すなわち処理ユニットに供給される。一般に、すべての実施形態において、信号品質を改善するために、電気ケーブルがシールドされるか、またはプリアンプが光検出器に、またはその近くに設けられ得る。
【0079】
好ましくは、VCSELによって供給される波長は、VCSELの注入電流を変調することによって、数十kHzで変調される。この場合、変調周波数の第2高調波f2を用いたロックイン検出により、CO濃度に比例する電気信号が受信される。第1高調波ではなく、変調周波数の第2高調波を使用してCO濃度に比例する信号を取得する利点は、第2高調波が電気信号のオフセットの影響を受けにくいことである。VCSELの強度ドリフトや、呼吸アダプタへの経路内および呼吸アダプタ内での変動する光損失を補償するために、電気信号が光検出信号の直流f0に正規化されてもよい。VCSELの温度を安定化させるために、熱電冷却(TEC)ユニットがVCSELの近く、例えば、VCSELハウジング内に設けられてもよい。VCSELの温度は、VCSELに供給される電流とともに、供給される光の波長を決定する。呼吸ガスの、例えばCOの所望の吸収線付近の光を供給するようにVCSELを安定化させるために、電子機器、すなわち処理ユニット932の概略図に示されるように、第3高調波f3信号を使用する制御ループが設けられている。第3高調波f3信号は、呼吸ガスの吸収線の中心でゼロと交差する。図9に示される処理ユニット932および呼吸モジュール903は、この信号処理のための例示的な電気処理スキームを示す。しかし、他の電気処理スキームが使用されてもよく、または処理ユニット931は、上記信号処理の処理を可能にするソフトウェアを有するコンピューティングユニットのような一般的な電子処理ユニットを指す可能性がある。さらに、光検出器によって供給される電気信号からガス濃度を決定するために他の信号処理スキームが使用されてもよい。例えば、呼吸ガスの濃度を決定するための、第3高調波信号f3のゼロ交差を用いたロックイン検出および第2高調波f2のピーク検出の代わりに、VCSELによって供給される光の波長が、吸収線に対応する波長にわたって連続的にスワップされ、その後、保存されている基準線形状にあてはめられてもよい。その後、結果として得られた信号のピーク強度が導出され、波長スイープの中心が決定され得、必要に応じて、後続のスイープに基づいて補正されてもよい。
【0080】
好ましくは、VCSEL光は、呼吸モジュール903とモジュールコネクタ913とが接続される光インターフェース内のアイソレータを通過する。これにより、VCSELへの光のフィードバックが、VCSELユニットからのレーザノイズおよびスペクトルバックグラウンドをもたらすことが防止される。
【0081】
図10Aおよび図10Bは、パッチケーブルコネクタを有する鼻カニューレ構成を示す。これらの口鼻カニューレ構成は、ダイオードレーザカプノグラフィに適しており、完全な呼吸サイクルの間、カニューレ内のCO濃度が呼吸空気内の濃度と等しくなるように注意することで、正確なカプノグラフィ波形を記録することを可能にする。
【0082】
より具体的には、本発明に係る鼻カニューレ1001の断面が図10Aに示されている。呼気時は、呼気の一部が、入口部1002を形成するプロング、ガス検出キャビティ1003、および狭窄部1004を有する出口部を連続的に通過する。吸気時は、空気が逆方向にカニューレを通過する。流路は滑らかであるため、呼吸中に大きな渦は発生せず、ガス感知ボリューム内にCOが均一に分布する。カニューレの両側には、パッチケーブルコネクタ1005用のレセプタクルが存在する。一方のパッチケーブルコネクタには、導光体およびその出射面、光を集光するレンズ、ならびに出射窓が組み込まれている。光ビームはガス感知キャビティの壁、およびキャビティを通過する。他方のパッチケーブルコネクタには、窓と、透過した光を検出するための光検出器とが組み込まれている。キャビティの壁の内側には、水滴による散乱および光の吸収を防ぐコーティングが施されている。全体的な体積を小さく保ちながら吸収長を増加させるために、この実施形態における平均流れ方向と光ビームの方向との間の角度θは約45°である。カニューレは、好ましくは、COの吸収波長において透過性であるプラスチック材料から射出成形される。この目的のためにポリカーボネートが使用されてもよい。入口部および出口部は、ガス感知キャビティを有するカニューレ部とは異なる材料で形成された別個の部分であってもよい。プロングを有する入口部、および出口部は、例えばシリコーンなどの柔らかい材料で形成され得、製造中に中央部に移動されるか、またははめ込まれ得る。
【0083】
図10Bは、鼻呼吸および口呼吸に適したカニューレ1011の断面を示している。呼気時は、呼気の一部が、入口部1012を形成するプロングおよび/または別の入口部1016を形成する口キャップ、ガス検出キャビティ1013、ならびに狭窄部1014を有する出口部を連続的に通過する。この設計では、長い吸収経路を提供するために、ガス感知キャビティ1013内の平均流れ方向とビーム方向との間の角度θは10°に近い。ビームは、カニューレの片側にある曲面鏡1017によって反射され、ガス感知キャビティを2回通過し、これによって吸収長が2倍になる。パッチケーブルコネクタ1015には、窓、ファイバおよびその出射面、ならびに光検出器が組み込んでいる。この場合、コネクタにレンズは存在しない。ファイバからの発散ビームは、射出成形されたカニューレの一部である鏡によってコリメートされる。成形後、反射金属層が曲面鏡の表面上に蒸着され得る。口呼吸の場合も鼻呼吸の場合も、ガス感知キャビティ内の流れの方向は同じである。出口部1014が鼻および口から離れて配置されているため、吸気時、ガス感知キャビティ内の空気はCO濃度が低い環境空気によって置き換えられ、ゼロレベルに近いカプノグラムが得られる。
【0084】
どちらの構成でも、呼吸の流れと光ビームの方向との間の角度が90°未満であることが要求される。カニューレは、鼻または口の流れを効果的にサンプリングする入口部と、拡散による二酸化炭素COの交換を制限する出口部の両方を含む必要がある。中央ガス感知キャビティの流れ抵抗は入口部および出口部と比較して小さく、キャビティは流れ方向においてより大きな断面を有する。鼻呼吸および口呼吸に適したカニューレの場合、流路は、鼻呼吸および口呼吸について、ガス感知キャビティを通る同じ流れ方向を有し、流路の出口部は鼻および口から離れている。
【0085】
本発明に係る別の実施形態によれば、レセプタクルインサートを有する呼吸アダプタレセプタクルが提供される。レセプタクルインサートは、パッチケーブルのアダプタコネクタと呼吸アダプタとの間のインターフェースにおけるゲルまたは柔軟なゴムの形態をとる。このゲルまたは柔軟なゴムは、挿入後にアダプタコネクタ窓と接触し、アダプタコネクタの正面窓の屈折率に近く、かつ存在し得る指紋の屈折率にも近い屈折率を有する。
【0086】
図11はゲルを有する実施形態を示す。製造中、高粘度ゲル(1111)の液滴がカニューレレセプタクル(1101)内に配置される。その後、光インターフェースにほこりが付かないようにするために、カニューレ/気道アダプタが包装される。使用前に、カニューレが開封され、パッチケーブルプラグ(1120)がカニューレレセプタクル(1101)内に挿入され、固定される。挿入中、プラグの正面部にある窓がゲル(1111)に押し込まれ、窓とゲルとの間の直接接触が確立される。余分なゲル(1111)は過剰分チャネル(1112)内に押し込まれる。2μmの波長においてゲルは小さな吸収を有し、シリカ、窓エポキシ/ガラス、および、カニューレの内側の例えばポリカーボネートの屈折率に近くなるよう、屈折率は約1.5である。様々なポリジメチルシロキサンPDMSシリコーン組成物がこれらの要件を満たしている。あるいは、十分に小さい粒子サイズを有するゲル化コロイダルシリカ、またはコロイダルシリカとシリコーンとの混合物が使用されてもよい。
【0087】
あるいは、レセプタクルインサートは柔軟なゴムである。例えば、様々な架橋密度でPDMSシリコーンが調製され得る。このようにすることで、シリコーンは適応インサートとして適した柔軟なゴム材料にされ得る。射出成形により、適応インサートが適切な寸法で形成され、カニューレの組み立て中にカニューレレセプタブル内に配置される。シリコーンの柔軟性および適応インサートの寸法は、プラグをレセプタクルに挿入した後、コネクタプラグ窓と適応インサートとの間に直接接触が確立されるように調節される。挿入中の膨張を許容するために、レセプタクルの円周に沿ってカニューレ内に小さな膨張ボリュームが存在し得る。多孔質の柔軟なシリコーンゴムを適用することで、シリコーンに流体を浸透させることができる。好ましくは、流体は揮発性が低く、カニューレの保管中に適応インサート内に留まる。パッチケーブルとカニューレとの接続が確立されると、流体はコネクタプラグ窓に押し付けられ、空気層のない界面が形成される。
【0088】
別の選択肢として拡散レセプタクルインサートが挙げられる。シリコーンゴム内に光散乱粒子、例えば、波長と同等の、またはそれよりもいくらか大きいサイズのシリカ粒子が組み込まれる。光ビームがそのような材料で作られた適応インサートを横断するとき、適応インサートは拡散部として機能し、レーザービームのコヒーレンスは低下する。拡散レセプタクルインサートの利点は、ガス感知キャビティの壁でのレーザ光の干渉、よって、吸収信号内のスペクトルバックグラウンドが減少することにより、カプノグラフィ信号の品質が向上することである。
【0089】
例えば図4に関連して上述したように、光ユニットおよび処理ユニット、例えば検出電子機器は、呼吸モジュール903の一部ではなく、モジュールコネクタ913の一部であってもよい。この場合、呼吸モジュール903は、光供給ユニットおよび処理ユニットのための電力を供給することができるインターフェースであるモジュールコネクタ913への電気インターフェースのみを提供し、さらに、呼吸ガスの濃度を示すデータ信号をモジュールコネクタ913から呼吸モジュール903に供給することができるインターフェースであるデータインターフェースが提供されてもよい。
【0090】
上記実施形態では、パッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸モジュールは呼吸ガスとしてCOを検出するように構成されているが、他の実施形態では、パッチケーブル、呼吸アダプタ、および呼吸モジュール、具体的には光学的導光体と光源は、Oや揮発性麻酔薬などの他の呼吸ガスを検出するように構成されてもよい。
【0091】
図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、開示の実施形態の他の変形例が、クレームされる発明を実施する当業者によって理解および実現され得る。
【0092】
特許請求の範囲において、「備える」や「含む」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形は複数を除外しない。
【0093】
単一のユニットまたはデバイスが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせを好適に使用することができないとは限らない。
【0094】
1つまたはいくつかのユニットまたはデバイスによって実行される、光検出器によって供給される信号に基づく呼吸ガスの濃度の決定などの手順は、他の任意の数のユニットまたはデバイスによって実行されてもよい。例えば、これらの手順が単一のデバイスによって実行されてもよい。これらの手順は、具体的には、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、および/または専用ハードウェアとして実施することができる。
【0095】
特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0096】
本発明は、例えばカプノグラフィシステムの一部である呼吸アダプタに呼吸モジュールを接続するためのパッチケーブルに関する。パッチケーブルは、a)モジュールコネクタ、b)光検出器を含むアダプタコネクタ、c)導光体、およびd)光検出器によって生成された電気検出信号をアダプタコネクタからモジュールコネクタに送るための電気ケーブルを備える。アダプタコネクタは、呼吸アダプタのガスキャビティ内に光を供給するように導光体の端部が配置されるように構成されている。アダプタコネクタは、アダプタコネクタが呼吸アダプタに接続されているとき、光検出器が、ガスキャビティ内に供給されたガスとインタラクトした、導光体の端部によって供給された光を検出するように構成されている。これにより、呼吸ガス検出の精度を向上させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11