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特許7649323天然ガス、メタンの吸着貯蔵方法、及びその実施のための複合施設(実施形態)
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  • 特許-天然ガス、メタンの吸着貯蔵方法、及びその実施のための複合施設(実施形態) 図1
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  • 特許-天然ガス、メタンの吸着貯蔵方法、及びその実施のための複合施設(実施形態) 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】天然ガス、メタンの吸着貯蔵方法、及びその実施のための複合施設(実施形態)
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
F17C11/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022568731
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 RU2021000597
(87)【国際公開番号】W WO2023059218
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】2021128853
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】522440197
【氏名又は名称】パブリチノエ アクツィオネルノエ オブスチェストヴォ “ガズプロム”
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォムキン,アナトリイ アレクセエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シコリン,アンドレイ ヴヤチェスラヴォヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】メンシチコフ,イリア エヴゲニエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】アクシウティン,オレグ イェヴゲニエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】イシコヴ,アレクサンドル ガヴリロヴィッチ
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148438(JP,A)
【文献】特表2019-521837(JP,A)
【文献】特表2015-530554(JP,A)
【文献】特表2016-512595(JP,A)
【文献】特開2008-304056(JP,A)
【文献】特開昭56-051316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346724(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0146538(US,A1)
【文献】Mason J. A. et al. ,Methane storage in flexible metal-organic frameworks with intrinsic thermal management,Nature,英国,2015年11月19日,Vol.527, No.7578, ,PP.357-361,https://www.nature.com/articles/nature15732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
B01J 20/20-20/30
C01B 32/15
C10L 3/10
F25J 3/02
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設であって、連続して配置されたガス処理ユニット、ガス圧縮ユニット、および一定圧力を有するガス貯蔵ユニットを備え、前記ガス貯蔵ユニットが1つまたは複数の陸上ガス吸着貯蔵モジュールを備え、前記モジュールのそれぞれが高圧垂直円筒形ガスタンクであり、前記タンクが直径の異なる同心円状に配置された円筒形シェルのセットの形態で設計され、前記シェルの1つが別の前記シェルの内側に配置されて環状のギャップを有し、前記ギャップの間に前記ギャップの体積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材が充填され、前記吸着材が前記吸着材1mあたり少なくとも155nmの天然ガスを蓄積し、ただし、すべての前記シェルの厚さが等しく、前記タンク内のガス貯蔵圧力が周辺から中心に向かって増加する、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設。
【請求項2】
前記微多孔性吸着材は、造粒されているかブロックの形態に圧縮されている、請求項に記載の複合施設。
【請求項3】
前記ガス処理ユニットには、固体含有物および異物混合物からの精製セクション、天然ガス流メタン富化セクション、およびC2+炭化水素貯蔵セクションが含まれ、前記ガス貯蔵ユニットには、さらに、内容積に少なくとも2のエタン/メタン分離係数を有する吸着材が充填されて前記陸上ガス吸着貯蔵モジュールの前に設置されたC2+捕捉貯蔵モジュール、前記高圧タンクの運転圧力を超える圧力を解放するための補償タンク、ならびに前記高圧タンクと前記C2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールに接続された前記陸上ガス吸着貯蔵モジュールの再生セクションが含まれる、請求項に記載の複合施設。
【請求項4】
前記C2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールの吸着材は、造粒されているかブロックの形態に圧縮されている、請求項に記載の複合施設。
【請求項5】
前記陸上ガス吸着貯蔵モジュールは、それぞれがガス源から個別に切り離されるように取り付けられている、請求項に記載の複合施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この一群の発明は、ガス産業、特に天然ガスの陸上貯蔵に関するものであり、複合施設の位置の地質学的および地理的特性に関係なく、天然ガス、メタン、または関連する石油ガスの貯蔵、分配、および供給に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
水で洗い流された無機塩の中の地下空洞に、通常は100kg/cmを超える圧力下で、圧縮天然ガスを貯蔵する方法が知られている(V.A. Mazurov, Subsurface Storage Facilities in Mineral Salt, Moscow, Nedra, 1982)。百万mの天然ガスを貯蔵するためには、少なくとも600mの深さで洗い流された10,000mを超える容積の空洞が必要である。このような貯留施設の建設は、地質学的/地理的および地球物理学的に非常に制限されており、無機塩鉱床でのみ可能である。さらに、その建設にはかなりの費用と時間が必要である。
【0003】
天然ガス(NG)を液化状態で貯蔵する方法が知られている(例えば、GOST R 56352-2015 Petroleum and Natural gas Industries. Production, Storage and Handling of Liquefied Natural Gas)。液化天然ガス(LNG)は、NGに含まれる軽質炭化水素、窒素、および二酸化炭素が混合した混合物であり、極低温(約マイナス162℃)(ガスが大気圧に近い圧力で液体になる熱力学的条件)まで深く冷却することによって技術的に液化されたメタンを主成分としている)。メタンNGの液化は、スロットル、膨張サイクル、カスケード、冷却、および複合サイクルの原理で動作する特別な極低温プラントを使用して実行される。天然ガスの技術的な液化により、その密度は通常の条件下でのガス状物質の密度を超えて500~600倍に急激に増加する。したがって、非常に大量のNGを効果的に保管および輸送する機会が提供される。
【0004】
液化状態での天然ガスの貯蔵は、通常、12Cr18Ni10Ti耐食鋼製の内殻、従来の極低温技術に基づいて作られた断熱材(粉末断熱材)、および現場打ち鉄筋コンクリート製の外殻からなるタンクを使用して行われる(I.P. Usyukin, Cryoengineering Plants, Machines and Devices. - Moscow: Consumer Goods and Food Industry, 1982, p. 275)。
【0005】
この貯蔵方法の欠点は、成層現象、または液体天然ガスの密度層形成による火災や爆発の危険性が高く、その結果、ロールオーバー(LNGの表面上のガスクッション圧力の急激な増加)が発生するだけでなく、極低温までのガスの冷却、貯蔵中の液化、および使用可能にするための加熱の必要性に関連してガス貯蔵のコストが高いことである。
【0006】
また、ガスハイドレートなど、外部構造に拘束された状態で天然ガスを貯蔵する方法(ロシア連邦特許第2293907号、2007年2月20日発行、IPC F17C 11/00)。天然ガスをハイドレートの形でタンクに貯蔵する場合、所定の温度で純粋なメタンハイドレートを形成するために、平衡圧力を20~30%超える圧力に保たれた界面活性剤水溶液をハイドレート形成水性媒体として使用する。
【0007】
貯蔵は、定格の圧力が2MPaの鋼製容器に代表される貯蔵タンクを用いて行う。容器の底部の内側にはコイルが設置されており、タンクの内容物を加熱または冷却するために底部に冷却剤がポンプで送られる。
【0008】
このような貯蔵方法には、冷却剤をポンプで送ることにより貯蔵の過程で継続的に低温を維持する必要があること、および消費者に届ける前に専用の高効率ガス乾燥システムを使用する必要があること、ならびにガス貯蔵の比容量が小さいことによって決定される、貯蔵システムのエネルギー効率が低いことに関連する多くの欠点を有する。
【0009】
最も近い類似の解決策は、高圧ガスホルダーを使用して圧縮状態で天然ガスを貯蔵する方法である(例えば、U.S. Karabalin, F.A. Mamonov, K.M. Kabyldin, M.M. Yermekov, Transportation and Storage of Oil, Gas and Oil Products. - Almaty: TST-Company, 2005. - 509 pages)。
【0010】
定容量(高圧)ガスホルダーは、集落のガス供給ステーション、冶金または化学企業でガス蓄圧タンクとして機能する。このようなタンク内の圧力は最大 2MPaになる場合がある。構造的に、高圧ガスホルダーは、金属溶接または鋳造の円筒形または球形のタンクであって、容積が異なる。しかし、増加した貯蔵ガス量は、通常、複数のタンクを1つのガスシステムに結合することによって提供される。ガスホルダーステーションは、集落や産業企業でのガス需要のピークをカバーするように設計された多数のガスホルダーまたはその一組の装置からなるエンジニアリング構造物である。ガスは、MDS(メインディストリビューションステーション)から高圧中継幹線を通じてガスホルダーステーションに供給される。次に、ガスホルダーからのガスは、ガスホルダーステーションの容量の留保が可能な循環的で相互に関連する中圧ネットワークに供給される。制御サブステーションは、低圧ネットワークへの供給が行われる中圧ネットワークのいくつかのポイントに建設される。
【0011】
このような貯蔵方法の欠点は、最大20m(ガス)/m(貯蔵システム)の天然ガス貯蔵の比容量が低く、高圧ガスホルダーを使用すると火災や爆発の危険性が高くなることである。
【発明の概要】
【0012】
提供された一群の発明によって解決されるべき問題は、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための簡単、堅牢かつ効率的な方法と、その実施のための複合施設の開発によって表される。
【0013】
一群の発明によって達成される技術的成果は、実施の単純さ、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵の安全性とエネルギー効率によって表され、天然ガスの品質とそのカロリー含有量を維持し、複合施設の位置の地質学的および地理的特性に関係なく、消費が急激に不均一になる状況においてさまざまな消費者の天然ガスの需要をカバーする。
【0014】
追加の技術的成果は、ガス貯蔵モジュール内の金属の特定の量の削減、および圧力によって段階化されたエネルギー節約ガスの充填および抽出手順を実施する機会であると考えられる。
【0015】
追加の技術的成果は、複合施設での製造の実現可能性と簡便性の改善、吸着貯蔵複合施設での製造期間の本質的な短縮、および天然ガス貯蔵コストの削減である。
【0016】
前記の技術的成果は、第1の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設が、連続して配置されたガス処理ユニット、ガス圧縮ユニット、および一定圧力を有するガス貯蔵ユニットを備え、ガス貯蔵ユニットが1つまたは複数の陸上ガス吸着貯蔵モジュールを備え、モジュールのそれぞれが高圧垂直円筒形ガスタンクであり、タンクが直径の異なる同心円状に配置された円筒形シェルのセットの形態で設計され、シェルの1つが別のシェルの内側に配置されて環状のギャップを有し、ギャップの間にギャップの体積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材が充填され、前記吸着材が吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積し、ただし、すべてのシェルの厚さが等しく、タンク内のガス貯蔵圧力が周辺から中心に向かって増加することによって達成される。
【0017】
前記の技術的成果は、第2の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設が、連続して配置されたガス処理ユニット、ガス圧縮ユニット、および一定圧力を有するガス貯蔵ユニットを備え、ガス貯蔵ユニットが1つまたは複数の陸上ガス吸着貯蔵モジュールを備え、モジュールのそれぞれが高圧タンクであり、タンクの耐力壁がプレストレストロッドで補強された現場打ち鉄筋コンクリートで作られているか、金属とプレストレストロッドで補強された現場打ち鉄筋コンクリートとから作られた一連の層を結合した設計を有し、ただし、タンクの内面がガスバリア材料を使用してライニングされ、タンクにタンクの内容積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材が充填され、前記吸着材が吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積することによって達成される。
【0018】
前記の技術的成果は、第3の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設が、連続して配置されたガス処理ユニット、ガス圧縮ユニット、および一定圧力を有するガス貯蔵ユニットを備え、ガス貯蔵ユニットが1つまたは複数の陸上ガス吸着貯蔵モジュールを備え、モジュールのそれぞれが高圧タンクであり、タンクが少なくとも3MPaの運転圧力を有する垂直に配置された大口径の金属ガスパイプの形態で設計され、ただし、パイプの上側と下側のクラウンが球形のカバーで閉じられ、パイプの下側の部分が現場打ちコンクリートにキャストされた主要部分を固定するための閉じたライナーであり、タンクにタンクの内容積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材が充填され、前記吸着材が吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積することによって達成される。
【0019】
ただし、微多孔性吸着材は、造粒されていてもブロックの形態に圧縮されていてもよい。
【0020】
ガス処理ユニットには、さらに、固体含有物および異物混合物からの精製セクション、天然ガス流メタン富化セクション、およびC2+炭化水素貯蔵セクションが含まれ、ガス貯蔵ユニットには、さらに、内容積に少なくとも2のエタン/メタン分離係数を有する吸着材が充填されて陸上ガス吸着貯蔵モジュールの前に設置されたC2+捕捉貯蔵モジュール、高圧タンクの運転圧力を超える圧力を解放するための補償タンク、ならびに高圧タンクとC2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールに接続された陸上ガス吸着貯蔵モジュールの再生セクションが含まれる。
【0021】
C2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールの吸着材は、造粒されていてもブロックの形態に圧縮されていてもよい。
【0022】
陸上ガス吸着貯蔵モジュールは、それぞれがガス源から個別に切り離されるように取り付けられている。
【0023】
前記の技術的成果は、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵方法が、ガス源からの天然ガスの取り出し、ガス貯蔵ユニットの陸上ガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンク内の吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積する微多孔性吸着材の処理、さらに3~10MPaのガス貯蔵圧力が達成されるまでガス源から直接ガスをガス貯蔵ユニットに充填することを含み、または、ガス源からの天然ガスの取り出し、固体含有物および異物混合物からの精製を含む天然ガス処理ユニットでの天然ガスの処理、ガス貯蔵ユニットの陸上ガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンク内の吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積する微多孔性吸着材の処理、さらに3~10MPaのガス貯蔵圧力またはガス源圧力が達成されるまで、そして次に、天然ガス圧縮装置を通して、3~10MPaのガス貯蔵圧力が達成されるまで、精製ガスをガス貯蔵ユニットに充填することを含む、ことによって達成される。
【0024】
さらに、天然ガス処理には、低温法、吸着法、膜法、またはそれらの組み合わせを使用したメタン富化天然ガスとC2+炭化水素濃縮物への天然ガス分離が含まれる。高圧タンク内における、顆粒状の、またはブロック状に圧縮された、微多孔性吸着材の処理は、加熱した窒素を最大0.05MPaの過剰圧力でパージし、10-4MPa以下の希薄化が達成されるまで真空引きし、さらに精製メタン富化天然ガスを0.05~0.15MPaの過剰圧力でパージすることによって行われる。ガス貯蔵ユニット内において、精製ガスは、少なくとも2のエタン/メタン分離係数を有する吸着材で内部容積が充填されたC2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールに供給され、そして次に、メタン富化ガスは、貯蔵のために陸上ガス吸着貯蔵モジュールに送られる。精製ガスは、顆粒状の、またはブロック状に圧縮された、吸着材で内部容積が充填されたC2+炭化水素捕捉貯蔵モジュールに供給される。
【0025】
一群の発明の本質は、特定の例示的な実施形態の詳細な説明および添付の図面によって説明されるが、これらは本発明群を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1は、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設の全体図を示す。図2は、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のために複合施設の図である。図3は、第1の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設の等しいシェル壁厚を有する同心吸着圧力容器であり、aはモジュールの正面図であり、bは断面図(A-A)であり、cは上面図(C)である。図4は、第2の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設の現場打ち鉄筋コンクリートと金属シートで作られた複合壁を備えた天然ガス、メタン吸着貯蔵モジュールのタンクであり、aはモジュールの正面図、bは上面図である。図5は、天然ガス、メタン吸着貯蔵モジュールの現場打ち鉄筋コンクリートと天然ガスの金属シートで作られた複合壁の図案である。図6~7は、大口径(1,420mm)のメインガスパイプで作られた天然ガス吸着貯蔵モジュールであり、aは正面図、bは第3の実施形態による天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設の図(A)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設(実施形態)は、以下を含む。
A:天然ガス処理ユニット
B:天然ガス圧縮ユニット
C:ガス貯蔵ユニット
1:天然ガス源
2:固体含有物からの精製セクション
3:異物混合物からの精製セクション
4:圧縮装置
5:固体含有物および天然ガス源1からの精製のためにセクション2に接続されたガス(天然ガス、メタン)陸上吸着貯蔵モジュール
6:天然ガス流メタン富化セクション
7:C2+炭化水素貯蔵セクション
8:陸上ガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンクの再生セクション
9:天然ガス源1と陸上ガス吸着貯蔵モジュール5に接続された追加のタンク
10:陸上ガス吸着貯蔵モジュール5の高圧タンクの再生セクション8に接続されたC2+炭化水素捕捉貯蔵モジュール
11:圧縮装置
12:メタン富化天然ガスの消費者
13:外部スチールシェル
14:内部スチールシェル
15:ガス供給パイプライン
16:吸着材フィラー
17:現場打ち鉄筋コンクリートタンク
18:内部スチールシェル
19:吸着材フィラー
20:保護プレート
21:カバー
22:ガス供給パイプライン
23:鉄筋コンクリート壁
24:内部スチールシェル
25:金属保護材
26:吸着材
27:垂直吸着パイプカラム
28:モジュール耐力壁
29:モジュール基礎プレート
30:ガス供給パイプライン
31:吸着パイプカラムの整備用クレーン
【0028】
一般に、提供される天然ガス貯蔵方法は、吸着された形態におけるガスの貯蔵によって示される。天然ガス吸着貯蔵法を利用することで、天然ガス貯蔵のエネルギー効率と安全性を向上させることができる。
【0029】
高圧タンクに吸着材を使用すると、吸着材を使用しないタンクと比較して、同じ量の天然ガスで充填圧力を2倍以上下げることができる。さらに、吸着蓄積の相対効率(吸着材がある場合とない場合の貯蔵システムに貯蔵されたガスの量の比率)は、圧力が低下するにつれて増加し、これにより、電力コストの削減と維持費が安価な単純な圧縮装置の使用による天然ガスのエネルギー効率の高い圧縮が可能になる。さらに、天然ガス貯蔵ユニットは、非圧縮方式を使用して直接、または最小限の圧縮で、メインガスパイプラインから充填されることができる。
【0030】
さらに、微多孔性吸着材中の吸着物(この場合は天然ガス)は、吸着力場内ではナノ分散状態のままであり、タンクが減圧された場合にガスが急激に放出されるのを防ぎ、つまり、ガス爆発の条件を達成する可能性を防いで開示された方法をより安全にすることが知られている。
【0031】
例えば、地下ガスまたはガスハイドレート貯蔵施設での貯蔵と比較して、この天然ガス貯蔵方法の別の利点は、ガス品質およびカロリー含有量の維持であり、これは、例えば、輸出ガス供給の不規則性を補償するために、またはガスエンジン燃料としてガスを使用するために、開示された貯蔵方法を使用する場合において非常に重要である。
【0032】
提供された方法に基づく天然ガスの陸上貯蔵のための複合施設(以下、複合施設と呼ぶ)は、非常に広範囲に及ぶ可能性があり、貯蔵規模のモジュールの原理の実現性または貯蔵されるガスの量によって、そのような複合施設をプラント(工業用ガス燃料供給用)と、近くの村、集落、農村コミュニティ、都市、およびその他の住宅地の両方の地域に配置し、開発の原動力を考慮して天然ガス需要をカバーすることが可能になる。複合施設は、年間平均気温がマイナス40℃からプラス30℃の気候帯に位置する場合がある。吸着された形態で貯蔵される天然ガスの量は、メタンの液化温度までの低温でも増加することに注意する必要があり、したがって、特許請求の範囲に記載された複合施設は、それらのすべてのユニットの機能が一般的に保証されるという条件で、マイナス40℃未満の温度で運転することができる。
【0033】
一般に、その方法を実施する複合施設の動作原理は次のとおりである。ガス源1からのガスは、天然ガス処理ユニットAに供給され、そこでは、固体含有物からの精製セクション2と、水分、硫黄酸化物、二酸化炭素などの異物混合物からの精製セクション3で処理される。精製後、ガスは圧縮ユニットBに送られ、次にガス貯蔵ユニットCに送られる。ガスが高圧下にある、メインガスパイプラインを使用して充填する場合、吸着貯蔵モジュール5の充填は、圧縮ユニットBの圧縮装置4を使用せずに直接行われる。ガス源1の運転圧力が吸着貯蔵モジュール5の運転圧力よりも低い場合、ガス源1の運転圧力までの吸着貯蔵モジュール5の充填は、圧縮装置4なしで行なわれ、次にそれを使用して行なわれる。ガス源1からの天然ガスの組成が、複合施設の運転の条件によって指定されたガス組成の要件を満たす場合、天然ガス処理ユニットをバイパスして、吸着貯蔵モジュール5に直接充填することができる。吸着貯蔵モジュール5からのガス供給は、天然ガス処理ユニットAのセクション2の固体含有物浄化フィルターを介して行われて天然ガス源1に直接戻るか、必要に応じて、天然ガス圧縮ユニットBの圧縮装置4を介して行われる。
【0034】
ガス貯蔵ユニットCの吸着貯蔵モジュール5は、ガスネットワークから個々に切り離すことができるようにガスネットワークに結合された高圧タンクまたは複数の高圧タンクである。これにより、高圧タンクの事故、修理、または定期的なメンテナンスの場合、貯蔵施設全体を停止する必要がなく、単一のタンクを切り離すだけで十分であるため、貯蔵の実現可能性を高めることができる。その上、そのようなアプローチは、ガス消費者にとってより用途が広く、経済的に実現可能であることが証明される可能性がある。ガス貯蔵容量は、複合施設の要件と使用目的に厳密に従って設定することができ、容量の増減は妨げられない。また、建設工事(モジュールごと)の進捗状況に応じて、貯蔵の段階的な立ち上げが可能である。明らかに、モジュールの数は広い範囲内で変化し、上限は土地および経済的な理由のみによって決定される。モジュールの原理により、貯蔵施設の統合が可能になり、少なくとも個々の複合施設の枠組みの中でそれらを典型的なものにすることができることに注意することが重要であり、これにより、新しい設計ソリューションの開発と建設および設置工事の実施にかかるコストが大幅に削減される。
【0035】
それぞれの高圧タンク5は、特に3から10MPaの高圧に耐えることのできる密閉容器の形態で製造されている。この運転圧力の範囲は、吸着システムの最も効率的な動作が観察される貯蔵システムの圧力値に対応している。吸着された天然ガスと圧縮ガスの密度の最大の差が観察されるのは、この圧力範囲内である。
【0036】
高圧タンク5には、天然ガス、好ましくはその主成分であるメタンを貯蔵するための微多孔性吸着材が装備されている。微多孔性炭素吸着材、活性炭、金属有機骨格構造、ゾルゲル、金属有機ゲル、複合微多孔性材料、またはそれらの混合物に代表されるタイプの高圧タンクで使用される微多孔性吸着材は、少なくとも155(天然ガス)/m(吸着剤)を消費者に向けて産出できなければならない。吸着材は、高圧タンクからガスネットワークへの粉塵と吸着材の排出を減らすために、顆粒、粒、またはさまざまな形態のブロック、例えば、タブレット、円柱、六角柱、長方形のブロック、正方形のブロック、円環などの形態にする必要がある。ただし、高圧タンクには、タンクの内容積の97%を超えない範囲で吸着材を充填しなければならない。これは、吸着の過程で昇温に伴う吸着材の吸着変形や熱変形が発生するため必要である。メタンと通常の炭化水素の吸着中の圧倒的多数の吸着材の膨張変形の程度は、C5+(天然ガスの主成分)のときよりも高くなく、線形測定で1%、または体積で3%を超えない。したがって、吸着材が膨張するためのスペースをタンク内に残して、壁への補償されていない余分な負荷によるタンクへの機械的損傷の可能性を減らす必要があると同時に、粉塵の増加をもたらし、結果として、複合施設のガス輸送ネットワークへの粉塵の排出を増加させる可能性のある吸着材の破壊の可能性を減らす必要がある。
【0037】
特定の場合では、天然ガスはその貯蔵効率を高めるためにメタンが富化されている。メタン富化天然ガスが吸着材に蓄積する場合、重質炭化水素の蓄積量は大幅に少なくなるため、吸着材の吸着能力が低下する。これにより、タンク内の吸着剤の再生間隔が長くなるため、天然ガス吸着貯蔵モジュールのタンクの運転サイクル数(吸着/脱着)が増加する可能性がある。
【0038】
この方法の実施形態では、前述の方法に加えて、天然ガス処理ユニットAにメタン富化セクション6が追加され、そこでC2+炭化水素の捕捉とそのC2+炭化水素貯蔵セクション7への輸送(図2)が、極低温法、吸着法、膜法、またはそれらの組み合わせを用いて行われ、個々の容器に濃縮された抽出C2+ガスは、そこから処理のために消費者に輸送されるか、ガス源に戻される。必要に応じて、メタン富化セクション6の入口と出口でのガスの流れは、ガスの品質を検証するために定期的な組成分析を受け、それに応じて、セクションでの装置の機能が設定された要件を満たしているかどうかを確認する必要がある。
【0039】
吸着貯蔵の高い実現可能性と保守性は、とりわけ、ガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンク内の微多孔性吸着材の初期吸着特性を、取り出しや交換なしで復元できるかどうかによって決まる(図2)。
【0040】
使用中の定期的な再生を含む天然ガス吸着貯蔵モジュールの初期準備は、ガス貯蔵ユニットCの再生セクション8で行われる。再生セクションのシステムは、稼働中のモジュールタンクに接続され、吸着材の吸着特性を回復する。タンクは、最大0.05MPaの過剰圧力下の加熱窒素でパージされる。吸着材処理を改善するために、1mbarを超えない希薄化までの高圧タンクの追加の真空引きが許容される。その後、高圧タンクは、0.05~0.15MPaの過剰圧力下の精製メタン富化天然ガスでパージされる。
【0041】
天然ガスを用いた処理済みタンクのパージ圧力は、ガス吸着貯蔵モジュール用リザーバの試運転期間のデータ、およびタンク処理の完了から試運転までの期間の予想温度変動に基づいて選択される。主な基準は、夜間や季節の変化など、温度が低下した場合にタンク内の過剰な圧力を維持することである。
【0042】
さらに、ガス吸着貯蔵モジュールは、高圧タンク5内の圧力よりも低い過剰圧力下にある追加のタンク9を有する(図2)。
【0043】
タンク9は、ガス吸着貯蔵モジュール5の高圧タンク5から運転圧力を超える圧力を逃がすように設計されている。タンク9は、高圧タンクの運転圧力以下の運転圧力を有していてもよく、消費者に155(天然ガス)/m(吸着材)の産出量を提供できる微多孔性吸着剤を装備することも、装備しないこともできる。追加タンク9からの天然ガス供給は、天然ガス圧縮ユニットが使用される場合、複合施設の付属機器とガス供給源(消費者)の両方に提供されてもよい。
【0044】
高圧タンクにメタン富化天然ガスを充填することによるガス吸着貯蔵モジュールの運転効率の改善は、二重モジュール貯蔵が使用される場合に実施することができ、そのうちの第1のモジュール10は、少なくとも2のエタン/メタン分離係数を有し、C2+炭化水素を蓄積するために粒状形態の、またはブロックの形態に圧縮された吸着材(例えば、微多孔性炭素吸着材、活性炭、有機金属骨格構造、ゾルゲル、有機金属ゲル、複合微多孔性材料、またはそれらの混合物によって代表されるタイプのもの)を備え、そのうちの第2のモジュール5は、少なくとも155(天然ガス)/m(吸着剤)を消費者に向けて産出することができる粒状形態の、またはブロックの形態に圧縮された微多孔性吸着材を備えており、前記第2のモジュールは、第1のモジュールよりも大きな全ガス貯蔵容量を有する。貯蔵される天然ガス中のメタン含有量は、2つのモジュール間の比率の評価基準として機能する。
【0045】
そのような設計(図2)におけるガス貯蔵の動作は、第1の貯蔵モジュール10を通過する天然ガスが分離され、第1の天然ガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンク内の吸着材にC2+よりも高い天然ガス成分が完全にまたは部分的に捕捉されて濃縮され、メタン富化ガスが貯蔵のために第2のガス貯蔵モジュール5に輸送されることを意味する。さらに、C2+炭化水素は、濃縮のために別の容器に抽出され、処理のために移送されるか、または消費者に送られる。または、貯蔵モジュールからのガス取り出しの場合、第2のモジュール5からのメタン富化天然ガスは、逆流によってモジュール10から脱着され、充填中に濃縮されたC2+炭化水素と、最初のものと同様の組成を有する天然ガスがガス源1に供給される。
【0046】
個々のケースでは、例えば、自動車に充填して自動車を運転するために、天然ガス自動車燃料(メタン)またはメインガスパイプラインから離れたガス源へガスを供給するための移動吸着ターミナルを使用して、メタン富化天然ガスを充填することが必要とされる。これは、天然ガス吸着貯蔵モジュールの充填中にも必要になる場合がある。そうするために、ガス貯蔵ユニットは、天然ガス処理および圧縮ユニットがこれに使用できない場合に、消費者12(図2)に充填するための圧縮装置11を備えている。
【0047】
特許請求の範囲に記載された天然ガス貯蔵方法を実施するには、プロセスシステム全体を確立する必要があり、その中心部分は陸上ガス吸着貯蔵モジュールになる。
【0048】
複合施設の主要かつ最も重要な構造は、天然ガス吸着貯蔵モジュールの吸着材を備えた特別な高圧タンクであり、その特性は、高い貯蔵容量値、および天然ガスの取り出しと充填のガス動的挙動を保証しなければならない。さらに、タンクは堅牢で、安全で、保守可能でなければならない。陸上天然ガス貯蔵複合体は、特に3MPaから10MPaまでの広い間隔で変化する可能性がある運転圧力の上限が高いクラスのクラスに関連している。複雑な設計では、マイナス40℃からプラス60℃までの範囲内におけるガスの充填および抽出中の貯蔵温度の変動を促進する吸着および脱着プロセスの熱力学的特性をさらに考慮しなければならない。
【0049】
特許請求の範囲に記載された天然ガス貯蔵方法を実施するために、天然ガス処理、圧縮および貯蔵ユニットを含む天然ガスの陸上貯蔵のための複合施設が提供され、天然ガス貯蔵ユニットがガス吸着貯蔵モジュールの高圧タンクを備え、ガス吸着貯蔵モジュールが直径の異なる同心円状に配置された円筒形シェル13、14のセットの形態で設計され、シェルの1つが別のシェルの内側に配置されて環状ギャップを有し、ギャップの間にギャップの体積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材16が充填され、前記吸着材が1m(吸着材)あたり少なくとも155(天然ガス)を消費者に向けて産出し、ただし、すべてのシェルの厚さが等しく、タンク内のガス貯蔵圧力が周辺から中心に向かって増加する。
【0050】
特許請求の範囲に記載されている設計の特徴は、ガス供給パイプライン15を通じてガスを充填するための容器として機能する環状ギャップを間に有する、同心円状に配置された円筒形シェルのセットから成ることである(図3)。高圧タンクのこのような実施スキームにより、すべてのシェルの厚さが等しいが、容器内の過剰圧力値が異なり、シェル間の半径方向のギャップによって形成され、その値は周辺から中心に向かって増加する構造を作成できる。この実施形態では、シェル壁は、内側と外側の両方から圧力がかかる膜として機能し、内圧pは外圧pよりも高く、結果として生じる圧力Presは差p-pに等しい。したがって、この解決手段により、肉厚をより少ない値に最適化し、特定の金属量をさらに減らすことができる。構造の空間剛性を向上させるために、半径方向の補強材を取り付けることが可能である(図3b)。
【0051】
このような高圧タンクの充填は、次のように実行される。まず、外部同心容器の運転圧力に達するまで、高圧タンクを完全に充填し、次に、外部同心容器へのガス供給を停止し、前の同心容器に続き次の同心容器の運転圧力に達するまで残りの容器にガスを供給し、このプロセスは、中央の容器が最大の運転圧力まで充填されるまで繰り返される。ガスの産出は、中央の容器からの産出から開始して逆の順序で、残りの同心容器が中央から端まで徐々に続いて、適切な天然ガス産出圧力値で実行される。
【0052】
特許請求の範囲に記載されている構造の実施例として、同じ厚さs=100mmのシェルを備え、シェルの内径Dが5メートルから25メートルまで変化し、ピッチが5mである同心圧力容器の主な特性の計算結果が提供されている(図3、表1)。この例では、タンク内の圧力が1MPaから12MPaに増加する。
【0053】
【表1】
【0054】
フィールド1は、「周辺から中心まで」のシェルの数を提供し、フィールド2は、直径を提供し、フィールド3は、各シェルに作用する許容内部過剰圧力pallow.を提供し、フィールド4は、各シェルの内側の内部過剰圧力の想定値Pを提供する。内部過剰圧力Pを使用した積載可能条件の検証の結果は、フィールド5に示され、不等式pallow.≧P-Pi-1を解く必要がある。フィールド6と7には、シェル間のギャップの基部の計算された面積と、指定された圧力レベルに対する吸着材層の蓄積容量の特定の値が含まれる。
【0055】
シェル間のギャップの基部の総「自由」面積は、475mであり、直径25mの単一タンクの基部の面積より15mだけ小さい。同心タンクシェルの厚さは、100mmであるが、3MPaでの単一タンクD=25mの壁厚がすでに207mmであることに注目することが重要である。そのような高さ20mの貯蔵タンクの幾何学的容積Wは、9,501mであり、ガスの使用可能貯蔵容量VCH4は、想定されるVspec.-1.1百万m立方メートルに対応する。
【0056】
特許請求の範囲に記載された解決手段のシェルは、両側から荷重が加えられるため、壁の厚さを最適化できる。シェル間の運転圧力値が異なるため、陸上ガス吸着貯蔵モジュールを段階的に充填できる。したがって、特許請求の範囲に記載された解決手段は、エネルギーを節約した段階的な圧力による充填と、さらに天然ガス、メタンの抽出を実施することを提供する。
【0057】
特許請求の範囲に記載された本発明の別の実施形態は、天然ガス注入セクション、固体含有物からの精製、異物混合物からの精製、圧縮、貯蔵タンクに注入されたガスの密閉容器内における吸着された形態での一定圧力下における所定期間の貯蔵およびさらに天然ガスの取り出し、を含む天然ガスの戦略的陸上貯蔵のための複合施設であり、ただし、天然ガス吸着貯蔵モジュールは、圧力容器17として設計されており、その耐力壁は、プレストレストロッドで補強された現場打ち鉄筋コンクリートで作られているか、金属とプレストレストロッドで補強された現場打ち鉄筋コンクリートとから作られた一連の層を結合した設計を有し、さらに、構造物の内面は、ガスバリア材料を使用してライニングされ、タンクは、その内容積の97%を超えない量の天然ガスを蓄積するのに効果的な吸着材で満たされている。
【0058】
鉄筋コンクリートモジュールは、鉄筋コンクリート工場と現場の両方で製造できる。これにより、ガス貯蔵用金属タンク特有の大容量の加工中の製品や物品の輸送に伴う問題を回避できる。
【0059】
プレストレストを加えていない鉄筋コンクリートと比較して、プレストレスト鉄筋コンクリートを使用すると、曲げを大幅に減らすことができ、同等の強度を持ちながら改善された耐クラック性を提供することができる。鉄筋コンクリート作成の間に引張り強度の高い鋼材で作られた鉄筋を敷設し、特殊な装置を用いてこの鋼材に張力をかけ、コンクリート配合物を打設する。硬化すると、解放された鋼線またはロープのプレストレス力が周囲のコンクリートに伝達され、圧縮される。このような圧縮応力の生成により、運転負荷によって引き起こされる引張応力を部分的または完全に除去することができる。
【0060】
鉄筋コンクリート吸着天然ガス貯蔵モジュールの気密性を確保するため、ガスバリア材、例えば、金属シートで内面をライニングすることができ、溶接接合部の超音波検査をさらに行い、または特殊なガスバリア膜を取り付けることができる。タンク壁の鉄筋コンクリートと厚い金属板を同時に使用することで、両方の層(鉄筋コンクリートと金属)が荷重を支えるときに、構造が結合されたものに変わる。
【0061】
例として、天然ガス吸着貯蔵モジュールを示す。そのタンクは、金属シートで作られた内部金属ライナーを備えた鉄筋コンクリート構造であり、公称容積9,420m(高さ約30m、内径23mのタンク)を有し、最大4MPaの高圧下で動作する(図4)。タンクの鉄筋コンクリート壁の厚さは1mである。タンク壁は、ロッドの環状位置に垂直な平面内のモジュール壁セクションの各1.5mあたり105本の補強ロッドを備えている。天然ガス吸着貯蔵モジュールの現場打ち鉄筋コンクリートと金属板を結合して作られた壁構造の例を図5に示す。タンク17は、内部スチールシェル18、保護プレート20、カバー21から構成され、吸着材19、26のフィラーが充填されている。
【0062】
タンクには、その内容積の97%を超えない範囲で有効な吸着材が充填されており、タンク運転圧力において少なくとも150/mを蓄積することができる。このようなタンクが貯蔵できる天然ガスの量は、1.41百万mである。
【0063】
図5は、内部スチールシェル24、プレストレスト補強ロッドを備えた現場打ち壁、および金属保護ケーシング25を備えた結合されたモジュールの壁23の構造を示す。3.5MPa用に設計されたモジュール壁の構造上の厚さは、1メートルを超える。
【0064】
現場打ち鉄筋コンクリートと金属シートから作られた結合壁を備えたタンクの小さな寸法により、天然ガスの吸着貯蔵用のコンパクトなモジュールを作ることができる。したがって、2~3ヘクタールの面積は、天然ガスの陸上貯蔵のための戦略的複合施設を収容することができ、その吸着型天然ガス貯蔵モジュールは9~12個のタンクを備え、そこに貯蔵されるガスの総量は、12~16.5百万mのガスになる。
【0065】
このような構造を選択した場合、ガス供給ユーティリティラインの数を最適化することができ、貯蔵のコストを大幅に削減することができ、その信頼性を向上させることができる。
【0066】
より詳細には、鉄筋コンクリートから作られ、結合壁を有する地上吸着貯蔵モジュールの建造のための建設および設置作業の以下の段階と順序を決定することができる:エリア計画;天然ガス吸着貯蔵モジュールの配置を目的とした基礎のためのピットの掘削;パイルフィールドの建設(必要な場合);モノリシックグリル(基礎スラブ)の第1の層の建設;現場打ち壁のキャスト用の補強フレームの突出部を備えたヘッドの取り付け;モノリシックグリルの第2の層の設置;中央のスチールシェルの設置;カバーの設置;ピットのくぼみの埋め戻し;ガス供給パイプラインの設置;運転のための作業プラットフォーム、ユーティリティシステムの設置、建築外観の構成など。
【0067】
特許請求の範囲に記載された本発明の別の実施形態は、天然ガス、メタンの陸上吸着貯蔵のための複合施設であって、連続して配置されたガス処理ユニット、ガス圧縮ユニット、および一定圧力を有するガス貯蔵ユニットを備え、ガス貯蔵ユニットが1つまたは複数の陸上ガス吸着貯蔵モジュールを備え、モジュールのそれぞれが高圧タンクであり、タンクが少なくとも3MPaの運転圧力を有する垂直に配置された大口径の金属ガスパイプの形態で設計され、ただし、パイプの上側と下側のクラウンが球形のカバーで閉じられ、パイプの下側の部分が現場打ちコンクリートにキャストされた主要部分を固定するための閉じたライナーであり、タンクにタンクの内容積の97%を超えない範囲の微多孔性吸着材が充填され、前記吸着材が吸着材1mあたり少なくとも155の天然ガスを蓄積する。
【0068】
これにより、複合施設での製造の実現可能性、保守性と簡便性が向上し、すでに詳細なプロセスと規制文書が作成されており、その運転の豊富な経験があるタンク設計において、規格品から得られる工業的に製造された素子を使用することにより、天然ガス吸着貯蔵モジュールの製造時間が大幅に短縮される。
【0069】
一例として、パイプラインガス貯蔵施設の変形例として、GOST R 52079-2003に従って9.8MPaの圧力用に設計された直径1,420mmの垂直に配置されたメインガスパイプに相当するタンクから製造されたガス吸着貯蔵モジュールが提供される(図6)。鉄筋コンクリートの土台(グリル)に高さ約31メートルのパイプを垂直に設置し、パイプの上側と下側のクラウンが球形のカバーで閉じられている。パイプの下側の部分は、基礎モノリシックグリルとともに現場打ちコンクリートにキャストされた主要部分を固定するための閉じたライナーである。
【0070】
建設と保守の便宜上、天然ガス吸着貯蔵モジュールを上下の2つの階に分けることができる(図6~7)。特別な運転プラットフォームを備えた保守用のガス供給パイプラインシステムおよびその他のシステムへのアプローチは、下階で行われる。上階は、その荷重の一部がパイプ自体に伝達される現場打ち設計の鉄筋コンクリート床である。レールに取り付けられたガントリークレーン31と高所運転プラットフォームが、2階のモジュールを保守するために取り付けられている。
【0071】
設置前に、パイプには天然ガスの貯蔵に有効な吸着材がすでに充填されていてもよい。しかしながら、吸着材の配置は、特殊用途のブリケットに成型された形態で、クレーンを使用してパイプを垂直に配置した後にすでに実行することもできる。
【0072】
垂直に配置された高圧パイプタンクは、天然ガス吸着貯蔵モジュールの設定容量が確実に達成されるように配列して配置される。この解決手段の最適性は、すでに詳細なプロセスと規制文書が作成されておりその運転の豊富な経験がある、工業的に生産された規格品から構造が構成されているという事実によって保証される。さらに、新しいタンクの導入または撤去によって貯蔵容量の微調整をいつでも実行することができる(図6~7)。
【0073】
図6~7は、垂直吸着パイプカラム27、ガス吸着貯蔵モジュールの耐力壁28、モジュール基礎スラブ29、ガス供給パイプライン30および吸着パイプカラムを整備するためのクレーン31を備えた天然ガスの陸上吸着貯蔵のための複合施設の概略を示す。ガス吸着貯蔵モジュールのパイプ(1,420mmメインガスパイプ)が51本ずつ平行に配置されている。
【0074】
この解決手段は、建設現場への貨物と資材の配送のための輸送および物流戦略の開発にも多くの利点を提供する。現在、天然ガス吸着貯蔵モジュールのタンクを生産するための主要なタイプの物品(パイプ)の配送のために、輸送プロセスのフローチャートとリギングがすでに開発されている。
【0075】
提供された一群の発明は、典型的な構成部分と複合施設のモジュール設計を使用することによる実装の簡素化、複合施設の充填圧力の低下によるガス貯蔵充填中のエネルギー効率の改善、ガスと環境の汚染を防止し微細孔(1細孔に20~30分子が含まれる)における天然ガスのナノ分散を保証する特殊なナノ多孔性吸着材が充填された加圧タンクにおけるガスの貯蔵による、天然ガスの貯蔵中の爆発安全性の向上ならびに天然ガスの品質とカロリー含有量の保存、を保証する。これにより、高い熱吸収能力を有する微細孔内でガスが拡散するため容器の減圧時にガスが急激に放出されるのが防止され、これにより次は爆発反応の抑制が促進される。それらはまた、ガス産出中の吸熱効果を提供し、これによりガス排出の場合に材料の「クールダウン」が発生し、それが抑制される。提供された一群の発明は、エネルギーを節約したガスの充填と抽出を圧力によって段階的に実施する可能性、貯蔵モジュールの特定の金属量の削減ならびに複合施設の製造の実現可能性と簡便性の改善、ガス吸着貯蔵モジュールの製造時間の本質的な短縮、ガス吸着貯蔵モジュールのコスト改善と典型的な産業上の解決手段の適用に基づいたモジュラー構造の使用による天然ガス貯蔵コストの削減、を保証する。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5
図6
図7