(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20250312BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/02 Z
(21)【出願番号】P 2022579186
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003739
(87)【国際公開番号】W WO2022168166
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂人
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091770(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187033(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/208287(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008148(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/039495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の実装に関する実装関連処理を行う複数の実装関連装置が並んで配置された複数の実装ラインを備え、前記実装関連処理に用いられる部材が自動搬送車により前記実装ラインの所定箇所に搬送される実装システムであって、
前記複数の実装ラインの生産計画に基づいて前記自動搬送車の走行計画を作成する作成部と、
前記走行計画に基づいて前記所定箇所への前記自動搬送車の走行を制御する制御部と、
を備え、
前記作成部は、前記生産計画における前記実装関連装置の段取り替えの予定に基づいて、前記段取り替えが前記自動搬送車の走行の妨げとならないように、または前記自動搬送車の走行が前記段取り替えの妨げとならないように、前記自動搬送車の発車時
刻を定めた前記走行計画を作成する
実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の実装システムであって、
前記制御部は、前記走行計画で定められた発車時刻になるまで前記所定箇所への走行を開始させず、前記発車時刻になると前記所定箇所への走行を開始するように前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【請求項3】
請求項2に記載の実装システムであって、
前記制御部は、前記所定箇所における前記部材の状況を取得可能であり、前記発車時刻になっても前記所定箇所における前記部材の状況に関する所定条件が成立しない場合には、前記所定箇所への走行の開始を遅らせるように前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【請求項4】
請求項
3に記載の実装システムであって、
前記制御部は、前記所定条件が成立しない場合でも前記発車時刻からの遅れが所定時間を超えると前記所定箇所への走行を開始するように前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の実装システムであって、
前記制御部は、前記複数の実装ラインにおける生産の状況を取得可能であり、前記生産の状況が前記生産計画より早くなっている場合に前記走行計画で定められた発車時刻よりも前記自動搬送車の走行開始を早くする制御と、前記生産の状況が前記生産計画より遅れている場合に前記発車時刻よりも前記自動搬送車の走行開始を遅らせる制御とのうち少なくとも一方を行う
実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、実装システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を基板に実装する実装装置などの実装関連設備が並んで配置された複数の実装ラインを備え、実装に用いられる部材などが自動搬送車(自動搬送装置)により実装ラインまで自動搬送される実装システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この実装システムでは、搬送計画作成部が、生産計画データと生産実数データとに基づいて部品の残数を算出し、その残数に基づいて部品の収容部材の搬送計画を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した実装システムでは、部品の残数に基づいて部品の収容部材の搬送計画を作成するから、搬送対象の実装ラインの生産計画が考慮されるものとなるが、他の実装ラインの生産計画は考慮されていない。このため、例えば搬送先の実装ラインに隣接する実装ラインにおいて段取り替えなどの作業が行われている場合に自動搬送車が走行を開始すると、作業に干渉するのを防止するために自動搬送車を途中で待機させる必要が生じ、自動搬送車による部材の搬送効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、部材を自動搬送する自動搬送車の走行制御を適切に行って効率よく走行させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の実装システムは、
部品の実装に関する実装関連処理を行う複数の実装関連装置が並んで配置された複数の実装ラインを備え、前記実装関連処理に用いられる部材が自動搬送車により前記実装ラインの所定箇所に搬送される実装システムであって、
前記複数の実装ラインの生産計画に基づいて前記自動搬送車の走行計画を作成する作成部と、
前記走行計画に基づいて前記所定箇所への前記自動搬送車の走行を制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の実装システムでは、複数の実装ラインの生産計画に基づいて自動搬送車の走行計画を作成し、その走行計画に基づいて所定箇所への自動搬送車の走行を制御する。これにより、複数の実装ラインの生産計画に応じた適切な状況で自動搬送車を走行させることができるから、各実装ラインで行われる各種作業や実装関連処理などに自動搬送車が干渉したり、干渉防止のために走行中に自動搬送車が長時間待機したりするのを抑制することができる。したがって、部材を自動搬送する自動搬送車の走行制御を適切に行って効率よく走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実装システム1の制御に関する構成を示すブロック図。
【
図5】走行計画作成処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】生産計画PPから作成される走行計画TPの一例を示す説明図。
【
図7】AGV走行制御の一例を示すフローチャート。
【
図8】AGV55が保管庫16へ走行する様子の一例を示す説明図。
【
図9】変形例のAGV走行制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、実装システム1の一例を示す説明図である。
図2は、実装ライン10の構成の概略を示す説明図である。
図3は、実装装置20の構成の概略を示す説明図である。
図4は、実装システム1の制御に関する構成を示すブロック図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図2,3に示した通りとする。
【0011】
実装システム1は、基板Sへの部品の実装に関する実装関連処理が行われる複数(
図1では2つを例示)の実装ライン10(10A,10B)を備え、実装関連処理に用いられる各種部材の搬送処理が搬送システム50により行われる。また、実装システム1は、システム全体の処理を管理する管理装置5を備える。各実装ライン10は、実装関連処理を行う複数の実装関連装置と、複数の実装関連装置を制御する実装制御装置38とを備える。また、搬送システム50は、複数台の自動搬送車55(以下、AGV55)と、充電ステーション57と、搬送制御装置58とを備える。
【0012】
実装ライン10の複数の実装関連装置には、例えば、印刷装置12、印刷検査装置14、保管庫16、実装装置20、実装検査装置28、リフロー装置30、リフロー検査装置32などのうち1以上が含まれている。これらは、基板Sの搬送方向(X軸方向)に沿って並んで配置されている。また、本実施形態では、実装ライン10に沿って移動可能なローダ18を備える。なお、各実装ライン10(10A,10B)は、同じ構成とするが、異なる構成でもよく、
図2,
図4では1の実装ライン10(10A)のみを図示する。
【0013】
印刷装置12は、スクリーンマスクに形成されたパターン孔にはんだを押し込むことで基板S(
図3参照)に印刷する。印刷検査装置14は、印刷装置12で印刷されたはんだの状態を検査する。実装検査装置28は、実装装置20で基板Sに実装された部品の実装状態を検査する。リフロー装置30は、はんだ上に部品が配置された基板Sを加熱することによりはんだを溶融し、その後冷却することにより各部品を基板S上に電気的に接続、固定する。リフロー検査装置32は、リフロー後の基板S上の部品の状態を検査する。
【0014】
実装装置20は、基板Sの搬送方向に沿って複数配置されており、基板Sに部品を実装する。実装装置20は、
図3に示すように、実装ユニット22と、フィーダ24とを備える。実装ユニット22は、ノズルなどの採取部材を装着した実装ヘッドにより、部品を採取して基板S上に実装するユニットである。フィーダ24は、部品を所定ピッチで保持するテープが巻回されたリールが着脱可能に取り付けられ、リールを回転させることによりテープを送り出して部品を供給するテープフィーダとして構成されている。
【0015】
ローダ18は、複数の実装装置20および保管庫16の前面側において、基板Sの搬送方向に沿った移動エリア内(
図1の点線エリア)で移動可能に構成されている。ローダ18は、移動エリア内で移動して、実装処理に用いられる部材を自動で交換(回収や補給)する自動交換作業を行う。例えば、ローダ18は、実装装置20に対して交換可能な作業ユニットであるフィーダ24を自動で交換するが、実装ユニット22が備えるヘッド、ノズルなどの採取部材、はんだの収容部材、スクリーンマスクなど、実装関連処理に用いられる部材を自動で交換可能であればよい。
【0016】
保管庫16は、実装関連処理で使用される各種部材を各実装ライン10内で保管するライン内保管庫であり、例えばフィーダ24を保管する。保管庫16では、作業者Mがフィーダ24を供給(補給)したり回収したりすることができる。また、ローダ18は、保管庫16に対してフィーダ24の自動交換作業が可能であり、必要なフィーダ24を保管庫16から取り出して実装装置20に補給したり、使用したフィーダ24を実装装置20から取り出して保管庫16に回収したりする。また、保管庫16では、AGV55もフィーダ24を補給したり回収したりすることができる。また、保管庫16は、例えば第1保管部16aと第2保管部16bなどの複数の保管部に区画されており、各保管部にフィーダ24を保管可能となっている。
【0017】
実装制御装置38は、CPUやROM、RAM、HDDなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。実装制御装置38のHDDなどの記憶装置には、基板Sの生産計画(後述する生産計画PP)や基板Sの生産に関連した生産情報が記憶される。生産計画は、基板Sへの部品の実装順や、基板Sの生産数等を規定する。また、生産情報は、基板Sにおけるはんだの印刷位置を示す情報や、基板Sに実装される部品の情報、各部品の実装位置などが含まれる。部品の情報には、各実装装置20で実装される部品種の他、部品の在庫状況として、各実装装置20や保管庫16へのフィーダ24の配置状況などを示す。実装制御装置38は、基板Sの生産に際し、生産計画および生産情報に基づいて、印刷装置12や印刷検査装置14、ローダ18、実装装置20、実装検査装置28、リフロー装置30、リフロー検査装置32などに各種指令信号を与える。また、実装制御装置38は、搬送制御装置58と通信可能に接続されており、ローダ18の作業状況に関する情報やAGV55の走行状況に関する情報などをやり取りする。
【0018】
AGV55は、図示は省略するが、車輪を回転駆動させるモータや電力を供給するバッテリなどを備え、フィーダ24などの実装関連処理に用いられる部材を、倉庫60と保管庫16との間などで自動搬送する。AGV55は、例えば、倉庫60から必要なフィーダ24を取り出して保管庫16に自動搬送して配膳(供給)したり、保管庫16から使用済みのフィーダ24を回収して倉庫60に自動搬送して収容したりする。なお、AGV55は、フィーダ24を自動で搬送するが、実装ユニット22が備えるヘッド、ノズルなどの採取部材、はんだの収容部材、スクリーンマスクなど、実装関連処理に用いられる部材を自動で搬送するものであればよい。
【0019】
ここで、AGV55と保管庫16との間では、例えば複数のフィーダ24を所定の搭載部材としてのマガジン55aに搭載した状態で、マガジン55aごと一括で自動交換可能となっている。ローダ18は、保管庫16の上述した第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち一方の保管部が空いた状態で、他方の保管部に対してフィーダ24を出し入れして使用済みのフィーダ24を他方の保管部に回収する。AGV55は、フィーダ24の配膳と回収とを行う場合、まず、保管庫16の第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち一方の保管部に対し、配膳対象の複数のフィーダ24をマガジン55aごと払い出して配膳する。次に、AGV55は、第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち他方の保管部に回収された複数のフィーダ24をマガジン55aごと受け取って回収する。AGV55は、回収したフィーダ24を倉庫60まで自動搬送する。
【0020】
倉庫60には、作業者Mにより収容されたフィーダ24やAGV55により自動搬送されたフィーダ24などの各種部材が保管されている。なお、AGV55は、倉庫60に対して複数のフィーダ24をマガジン55aごと一括で出し入れすることができる。また、充電ステーション57は、所定の充電位置に駐車した1または複数台のAGV55のバッテリを充電する設備である。なお、充電ステーション57は、所定の充電位置にAGV55が駐車すると、コネクタが接続されて給電可能となる構成でもよいし、非接触で給電可能となる構成でもよい。
【0021】
搬送制御装置58は、CPUやROM、RAM、HDDなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。搬送制御装置58は、無線によりAGV55と通信接続が可能に構成されており、AGV55の位置情報を取得したり、AGV55の発車や待機などの走行制御を行ったり、AGV55のバッテリ残量などの状態を取得したりする。また、搬送制御装置58は、充電ステーション57におけるAGV55の充電制御なども行う。
【0022】
管理装置5は、CPU5aやROM5b、RAM5c、HDD5dなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。管理装置5は、各実装ライン10の各実装制御装置38や搬送制御装置58と通信可能に構成されている。この管理装置5は、HDD5dに基板Sの生産計画PPやAGV55の走行計画(搬送計画)TPなどを記憶している。管理装置5は、各実装ライン10の基板Sの生産計画PPや生産情報を各実装制御装置38に送信する。管理装置5は、各実装制御装置38から基板Sの生産状況や生産に必要なフィーダ24の使用状況、保管庫16におけるフィーダ24の配置状況などを受信する。なお、生産状況には、異なる種類の基板に対する生産準備としてスクリーンマスクの交換やフィーダ24の交換などを行う段取り替えの状況を含む。また、管理装置5は、各AGV55の走行計画TPを搬送制御装置58に送信したり、搬送制御装置58から各AGV55の走行状況やバッテリ残量、充電状況などを受信したりする。なお、管理装置5は、各実装ライン10の基板Sの生産計画PPや基板Sの生産状況、生産に必要なフィーダ24に関する情報などに基づいて、各AGV55におけるフィーダ24の搬送予定や充電予定などを含む走行計画TPを作成する。
【0023】
こうして構成された実装システム1の動作、特にAGV55の走行に関する処理について説明する。まず、AGV55の走行計画TPについて説明する。
図5は、走行計画作成処理の一例を示すフローチャートである。
【0024】
図5の走行計画作成処理では、管理装置5のCPU5aは、まず各実装ライン10A,10Bの生産計画PPを取得する(S100)。次に、CPU5aは、取得した生産計画PPにおける段取り替えの予定に基づいて、AGV55の走行が段取り替えの妨げとならないように、AGV55の走行計画TPを作成してHDD5dに記憶する(S110)。例えば、走行するAGV55が段取り替えの作業エリア(後述する
図8の作業エリアA1,A2参照)と干渉する場合、作業者はAGV55との接触を防止するために段取り替えを中断する必要が生じるなど、AGV55の走行が段取り替えの妨げとなることがある。このため、搬送制御装置58は、そのような段取り替えの中断が生じないように走行計画PPを作成する。なお、S110では、段取り替えによってAGV55の走行が妨げられないように、例えば段取り替えの中断または終了を待つために、AGV55の待機が必要とならないように、走行計画TPが作成されるものとしてもよい。続いて、管理装置5のCPU5aは、走行計画TPを搬送システム50の搬送制御装置58に送信して(S120)、走行計画作成処理を終了する。
【0025】
図6は、生産計画PPから作成される走行計画TPの一例を示す説明図である。
図6の生産計画PPでは、一例として、実装ライン10Aの印刷装置12の段取り替えが時刻t0から時刻t1まで行われ、実装ライン10Bの印刷装置12の段取り替えが時刻t1から時刻t2まで行われる予定となっている。
図6の走行計画TPでは、これらの段取り替えが終了した後、即ちAGV55の走行が段取り替えの妨げとならない時刻t2からAGV55が実装ライン10Aの保管庫16へ走行する予定となっている。このため、段取り替えによって走行中にAGV55が待機する必要がないから、段取り替えによってAGV55の走行が妨げられないものとなる。
図6では、段取り替えが終了した後からAGV55が走行を開始する予定としたが、これに限られない。例えば、実装ライン10Aの保管庫16へ走行可能な経路が複数ある場合、管理装置5のCPU5aは、段取り替えの妨げとならない経路を探索し、最短経路でなくても段取り替えの妨げとならない経路があれば、その経路を選択してもよい。そして、時刻t2となる(段取り替えが終了する)前から、選択した経路でAGV55が走行を開始する予定としてもよい。なお、
図6では、印刷装置12の段取り替えを例示したが、これに限られず、実装装置20の段取り替えであってもよい。また、保管庫16でのAGV55の作業や倉庫60へのAGV55の戻りは時刻t3で完了する予定となっている。搬送制御装置58は、受信した走行計画TPをHDDなどに記憶しておき、走行計画TPに基づいてAGV55の走行を制御する。
図7は、AGV走行制御の一例を示すフローチャートであり、
図8は、AGV55が保管庫16へ走行する様子の一例を示す説明図である。
【0026】
図7のAGV走行制御では、搬送制御装置58は、走行計画TPで定められた発車時刻になるのを待つ(S200)。S200では、搬送制御装置58は、例えば
図6に示した走行計画TPの時刻t2となるのを待つ。なお、本実施形態では、発車時刻となるまでに、例えばAGV55に配膳対象のフィーダ24が全て搭載されるなど、発車準備を完了させておくものとする。
【0027】
走行計画TPの発車時刻になると、搬送制御装置58は、目的地の保管庫16におけるフィーダ24の回収状況を実装制御装置38との通信により取得し(S210)、フィーダ24の回収が完了しているか否かを判定する(S220)。搬送制御装置58は、フィーダ24の回収が完了している、即ち回収対象のフィーダ24が保管庫16に揃っていると判定すると、所定の走行開始位置P1(
図8参照)からAGV55の走行を開始する(S230)。
【0028】
一方、搬送制御装置58は、フィーダ24の回収が完了していないと判定すると、S230の処理に進まずに、予定の発車時刻からの遅延時間が所定時間を超えるか否かを判定する(S240)。即ち、搬送制御装置58は、発車時刻になってもフィーダ24の回収が完了していなければ、AGV55の走行を開始させずにAGV55を待機させて、発車時刻からの遅延時間が所定時間を超えるか否かを判定しながら回収が完了するのを待つ。そして、搬送制御装置58は、遅延時間が所定時間を超えることなくフィーダ24の回収が完了したと判定すると、S230でAGV55の走行を開始する。また、搬送制御装置58は、フィーダ24の回収が完了する前にS240で遅延時間が所定時間を超えたと判定すると、S230でAGV55の走行を開始する。即ち、搬送制御装置58は、遅延時間が所定時間を超えて遅延が大きくなった場合には、回収対象のフィーダ24が揃っていなくてもAGV55の走行を開始するのである。
【0029】
こうしてAGV55の走行を開始すると、搬送制御装置58は、AGV55の位置情報に基づいてAGV55が退避確認位置P2(
図8参照)に到着するのを待つ(S250)。退避確認位置P2は、目的地である保管庫16よりも手前の位置であって、AGV55が待機してもローダ18の作業や移動に干渉しない位置として定められている。搬送制御装置58は、AGV55が退避確認位置P2に到着したと判定すると、実装制御装置38との通信により保管庫16前からのローダ18の退避状況を取得する(S260)。次に、搬送制御装置58は、退避状況に基づいてローダ18の退避が完了しているか否かを判定し(S270)、退避が完了していないと判定すると、退避確認位置P2でAGV55を待機させながら(S280)、S260,S270でローダ18の退避が完了するのを待つ。なお、AGV55が走行を開始したことは、管理装置5または搬送制御装置58から実装制御装置38に通知されるものとする。その通知を受けた実装制御装置38は、保管庫16でのローダ18の作業が完了するか、またはローダ18の作業を一時中断させて、ローダ18を保管庫16前から退避させる。このため、通常はAGV55が退避確認位置P2に到着した際に、ローダ18は退避が完了しているか退避中であるため、退避確認位置P2でAGV55を待機させたとしても待機時間が長時間となることは殆どない。
【0030】
搬送制御装置58は、S270でローダ18の退避が完了していると判定すると、AGV55を配膳先の保管部(例えば
図8では第1保管部16a)前に移動させてフィーダ24の配膳作業を実行させて(S290)、配膳作業が完了するのを待つ(S300)。次に、搬送制御装置58は、フィーダ24の配膳作業が完了したと判定すると、AGV55を回収先の他方の保管部(例えば
図8では第2保管部16b)前に移動させてフィーダ24の回収作業を実行させて(S310)、回収作業が完了するのを待つ(S320)。そして、搬送制御装置58は、フィーダ24の回収作業が完了したと判定すると、目的地を倉庫60としてAGV55の移動を開始して(S330)、AGV走行制御を終了する。なお、倉庫60までのAGV55の走行制御は、本発明の要旨をなさないから説明を省略する。搬送制御装置58は、AGV55が移動を開始すると、作業完了通知を実装制御装置38に送信する。作業完了通知を受けた実装制御装置38は、ローダ18の保管庫16への移動および作業を許可する。なお、S240で遅延時間が所定時間を超えたためにS230でAGV55が走行を開始した場合、S310では回収先の保管部にフィーダ24が揃っていない状態でAGV55がフィーダ24を回収する場合がある。その場合、管理装置5は、回収できなかったフィーダ24をAGV55に再度回収させに行くために、フィーダ24の回収予定を追加した走行計画TPを再度作成することになる。
【0031】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の実装ライン10(10A,10B)が実装ラインに相当し、管理装置5が作成部に相当し、AGV55が自動搬送車に相当し、搬送制御装置58が制御部に相当する。
【0032】
以上説明した実装システム1では、複数の実装ライン10の生産計画PPに基づいてAGVの走行計画TPを作成し、その走行計画TPに基づいて保管庫16へのAGV55の走行を制御する。このため、複数の実装ライン10の生産計画PPに応じた適切な状況でAGV55を走行させることができるから、各実装ライン10で行われる各種作業や実装関連処理などにAGV55が干渉したり、干渉防止のためにAGV55の待機時間が発生したりするのを抑制することができる。したがって、AGV55の走行制御を適切に行って、AGV55によるフィーダ24(部材)の搬送を効率よく行うことができる。
【0033】
また、生産計画PPの段取り替えの予定に基づいて、AGV55の走行が段取り替えの妨げとならないように、または段取り替えによってAGV55の走行が妨げられないように、走行計画TPを作成する。このため、段取り替えに遅延が生じたり、AGV55の待機時間が発生したりするのを抑制することができる。
【0034】
また、走行計画TPで定められた発車時刻以降にAGV55の走行を開始させるから、発車時刻前にAGV55が走行を開始することにより、各実装ライン10で行われる各種作業や実装関連処理などにAGV55が干渉するのを防止することができる。
【0035】
また、発車時刻となっても保管庫16におけるフィーダ24の回収が完了していない場合には、AGV55の走行の開始を遅らせるから、例えば保管庫16またはその近くでAGV55の待機時間が長時間となって干渉のおそれが高まるのを抑制することができる。
【0036】
また、発車時刻からの遅延時間が所定時間を超えるとAGV55の走行を開始させるから、発車の遅れが拡大することによって走行計画TPにおける以降の予定(図示は省略したが、
図6の時刻t3以降の予定)に大きなずれ込みが出るのを抑制して、フィーダ24の搬送や回収に及ぼす影響を抑制することができる。
【0037】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、搬送制御装置58は、S250ではAGV55の位置情報に基づいてAGV55が退避確認位置P2に到着したか否かを判定したが、これに限られず、AGV55の走行速度や退避確認位置P2までの距離などから退避確認位置P2への到着タイミングを予想しておき、S250ではその到着タイミングとなったか否かを判定してもよい。即ち、搬送制御装置58は、退避確認位置P2への到着が予想される到着タイミングとなった場合にローダ18の退避を確認してもよい。
【0039】
実施形態では、発車時刻からの遅延時間が所定時間を超えるとAGV55の走行を開始させたが、これに限られず、遅延時間が所定時間を超えてもフィーダ24の回収が完了していない場合にはAGV55の走行を開始させないものとしてもよい。
【0040】
実施形態では、発車時刻となった際に保管庫16におけるフィーダ24の回収が完了してフィーダ24の回収が可能な状況であるか否かを判定してからAGV55の走行を開始させたが、これに限られるものではない。例えば、フィーダ24の回収が可能な状況であるか否かに限られず、保管庫16にフィーダ24の配膳が可能な状況であるか否かを確認してもよいし、フィーダ24の回収が可能な状況であるかとフィーダ24の配膳が可能な状況であるかとを両方確認してもよい。即ち、保管庫16におけるフィーダ24などの部材の状況に関する所定条件が成立するか否かを判定するものであればよい。あるいは、このような部材の状況に関する判定を行わず、発車時刻になればAGV55の走行を開始させてもよい。
【0041】
また、発車時刻だけでなく、実装ライン10の生産状況を考慮してAGV55の走行を開始させてもよい。
図9は、変形例のAGV走行制御を示すフローチャートである。変形例では、主に
図7と処理が異なる部分を
図9に示して説明する。
【0042】
この変形例では、S200で発車時刻になると、搬送制御装置58は、実装制御装置38との通信により各実装ライン10の生産状況を取得し(S202)、各実装ライン10の段取り替えが完了しているか否かを判定する(S204)。例えば搬送制御装置58は、
図6に例示した実装ライン10Aの段取り替えと実装ライン10Bの段取り替えがいずれも完了しているか否かを判定する。搬送制御装置58は、段取り替えが完了していれば、S230でAGV55の走行を開始する。また、搬送制御装置58は、段取り替えが完了していなければ、S202に戻り生産状況を取得しながら段取り替えが完了するのを待ち、段取り替えが完了するとS230でAGV55の走行を開始する。このように、変形例では、発車時刻になっても、生産状況が生産計画PPより遅れているために段取り替えが完了していない場合には、AGV55の走行開始を遅らせるのである。このため、段取り替えが完了していない状態でAGV55が走行を開始したことにより、AGV55の走行が段取り替えの妨げとなったり、段取り替えによってAGV55の走行が妨げられたりするのを、確実に防止することができる。
【0043】
また、S200で発車時刻になっていない場合でも、搬送制御装置58は、実装制御装置38との通信により各実装ライン10の生産状況を取得し(S206)、各実装ライン10の段取り替えが完了しているか否かを判定する(S208)。搬送制御装置58は、段取り替えが完了していなければ、S200に戻り発車時刻になるのを待つと共に、生産状況を取得しながら段取り替えが完了するのを待つ。また、搬送制御装置58は、発車時刻にならなくても段取り替えが完了すれば、S230でAGV55の走行を開始する。このように、変形例では、発車時刻になる前でも、生産状況が生産計画PPより早くなっているために段取り替えが完了している場合には、AGV55の走行開始を早くするのである。このため、生産状況に基づいてAGV55の走行が可能な状況になれば速やかにAGV55の走行を開始させることができるから、AGV55を効率よく走行させてフィーダ24の回収効率を上げることができる。
【0044】
変形例では、搬送制御装置58は、発車時刻になった後と、発車時刻になる前とのいずれにおいても生産状況から段取り替えが完了したか否かを判定したが、これに限られるものではない。例えば、搬送制御装置58は、発車時刻になった後と、発車時刻になる前とのうちいずれか一方において、生産状況から段取り替えが完了したか否かを判定してAGV55の走行を開始させてもよい。また、変形例では、搬送制御装置58は、取得した生産状況から段取り替えが完了したか否かを判定したが、段取り替えに限られず、取得した生産状況から生産計画PPに対して遅れがあるか否かを判定してもよい。そのようにする場合、搬送制御装置58は、生産状況が生産計画PPより早くなっている場合にAGV55の走行開始を早くする制御と、生産状況が生産計画PPより遅くなっている場合にAGV55の走行開始を遅くする制御とのうち少なくとも一方を行うものとすればよい。
【0045】
なお、変形例の
図9では、
図7のS210,S220,S240の図示を省略し、これらの処理が行われないものとしたが、これに限られず、実施形態と同様にS210の処理に進んで、S210,S220,S240の処理が行われてもよい。即ち、搬送制御装置58は、S200で発車時刻になった後にS204で段取り替えの完了を判定した場合と、S200で発車時刻になる前にS208で段取り替えの完了を判定した場合とのうち、両方または一方で、S210の処理に進むものとしてもよい。例えば、発車時刻になる前は、発車時刻になった後よりも回収が完了していない可能性が高いものといえる。このため、発車時刻になる前にS208で段取り替えの完了を判定した場合にはS210の処理に進み、発車時刻になった後にS204で段取り替えの完了を判定した場合にはS210(S220,S240)の処理を省略してS230の処理に進むようにしてもよい。
【0046】
実施形態では、生産計画PPの段取り替えの予定に基づいてAGV55の走行計画TPを作成したが、これに限られず、生産計画PPに基づいてAGV55の走行計画TPを作成するものであればよい。また、管理装置5が走行計画TPを作成したが、搬送制御装置58が走行計画TPを作成してもよい。即ち、走行計画TPの作成と、AGV55の走行制御とを別々の装置が行うものに限られず、同じ装置が行ってもよい。
【0047】
実施形態では、搬送制御装置58は、ローダ18の退避完了を確認できなかった場合にAGV55を退避確認位置P2で待機させたが、これに限られず、退避確認位置P2とは別の位置でAGV55を待機させてもよい。即ち、退避確認位置P2よりも目的地である保管庫16により近い位置でAGV55を待機させてもよい。あるいは、ローダ18の退避完了を確認できるか否かに拘わらず、退避確認位置P2で一旦AGV55を停止させ、ローダ18の退避完了を確認できなかった場合にはそのまま待機させ、ローダ18の退避完了を確認できた場合にはAGV55を再度走行させるものとしてもよい。
【0048】
実施形態では、フィーダ24などの実装関連処理に用いられる部材が、AGV55により実装ライン10内の専用の保管庫16に搬送されたが、これに限られず、実装ライン10の所定箇所に搬送されるものであればよい。例えば、
図3の実装装置20の下方に設けられた保管庫など、各装置(印刷装置12や印刷装置14、実装装置20、実装検査装置28など)に設けられた保管庫に搬送されるものでもよい。
【0049】
ここで、本開示の実装システムは、以下のように構成してもよい。なお、以下では、複数の実装ラインの生産計画に基づくものに限られず、例えば自動搬送車の目的地(所定箇所)を含む実装ラインなど、1の実装ラインの生産計画に基づくものでもよく、実装システムが複数の実装ラインを備えるものに限られない。例えば、本開示の実装システムにおいて、前記生産計画における前記実装関連装置の段取り替えの予定に基づいて、前記段取り替えが前記自動搬送車の走行の妨げとならないように、または前記自動搬送車の走行が前記段取り替えの妨げとならないように、前記走行計画を作成するものとしてもよい。こうすれば、各実装ラインで行われる段取り替えの作業に自動搬送車が干渉するのを防止することができる。また、この構成では、複数の実装ラインに限られず、1の実装ラインの段取り替えでもよく、1の実装ラインの複数の実装関連装置の段取り替えでもよい。
【0050】
本開示の実装システムにおいて、前記制御部は、前記走行計画で定められた発車時刻になるまで前記所定箇所への走行を開始させず、前記発車時刻になると前記所定箇所への走行を開始するように前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、発車時刻より前に自動搬送車が発車することにより、各実装ラインの各種作業や実装関連処理などに自動搬送車が干渉するのを防止することができる。
【0051】
本開示の実装システムにおいて、前記制御部は、前記所定箇所における前記部材の状況を取得可能であり、前記発車時刻になっても前記所定箇所における前記部材の状況に関する所定条件が成立しない場合には、前記所定箇所への走行の開始を遅らせるように前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、所定箇所またはその近くで所定条件の成立を待つことにより、自動搬送車の待機時間が長時間となって干渉のおそれが高まるのを抑制することができる。
【0052】
本開示の実装システムにおいて、前記制御部は、前記所定条件が成立しない場合でも前記発車時刻からの遅れが所定時間を超えると前記所定箇所への走行を開始するように前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、発車の遅れが拡大することによって走行計画における以降の予定に大きなずれ込みが出るのを抑制することができる。このため、部材の自動搬送に及ぼす影響を抑制することができる。
【0053】
本開示の実装システムにおいて、前記制御部は、前記複数の実装ラインにおける生産の状況を取得可能であり、前記生産の状況が前記生産計画より早くなっている場合に前記走行計画で定められた発車時刻よりも前記自動搬送車の走行開始を早くする制御と、前記生産の状況が前記生産計画より遅れている場合に前記発車時刻よりも前記自動搬送車の走行開始を遅らせる制御とのうち少なくとも一方を行うものとしてもよい。こうすれば、生産の状況に応じて適切なタイミングで自動搬送車の走行を開始させることができるから、さらに効率よく自動搬送車を走行させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、部材が自動搬送車で搬送される実装システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 実装システム、5 管理装置、5a CPU、5b ROM、5c RAM、5d HDD、10,10A,10B 実装ライン、12 印刷装置、14 印刷検査装置、16 保管庫、16a 第1保管部、16b 第2保管部、18 ローダ、20 実装装置、22 実装ユニット、24 フィーダ、28 実装検査装置、30 リフロー装置、32 リフロー検査装置、38 実装制御装置、50 搬送システム、55 自動搬送車(AGV)、55a マガジン、57 充電ステーション、58 搬送制御装置、60 倉庫、M 作業者、PP 生産計画、S 基板、TP 走行計画。