(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】処理剤投入装置および処理剤投入方法
(51)【国際特許分類】
F27D 3/00 20060101AFI20250312BHJP
B22D 1/00 20060101ALI20250312BHJP
B22D 27/20 20060101ALI20250312BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
F27D3/00 Z
B22D1/00 G
B22D1/00 F
B22D27/20 C
C21C7/00 P
(21)【出願番号】P 2023218541
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2025-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平ノ上 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大
(72)【発明者】
【氏名】柿▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】塚本 学
(72)【発明者】
【氏名】中田 涼介
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 貞徳
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 智哉
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-95853(JP,A)
【文献】特開2022-95366(JP,A)
【文献】国際公開第2021/025019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00
B22D 1/00
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入するための処理剤投入装置であり、
前記処理剤投入装置は、
前記処理剤収容部の開口部から前記処理剤収容部内に挿入されて処理剤を投入するための処理剤投入部と、
前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の位置を調整する位置調整機構と、
前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内に挿入する処理剤投入部挿入機構と、
を備え、
前記処理剤投入部は、処理剤を内部に収容する本体部と、前記本体部内に収容された処理剤を前記本体部の外へ押し出す押出し部とから構成されている、
ことを特徴とする処理剤投入装置。
【請求項2】
前記処理剤収容部の前記開口部を撮像して、前記開口部を被写体として含む画像データを生成する撮像装置と、
前記画像データに基づいて、前記処理剤収容部内への前記処理剤投入部の挿入の可否を判定する処理剤投入部挿入可否判定部と、
をさらに備え、
前記撮像装置は、前記処理剤投入部の軸の延長線上の位置に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の処理剤投入装置。
【請求項3】
前記処理剤投入装置に前記処理剤を供給するための処理剤セットレールをさらに備え、
前記処理剤投入部は、前記処理剤セットレールを介して処理剤が前記本体部内に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の処理剤投入装置。
【請求項4】
光源をさらに備え、
前記光源は、前記光源からの光を前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に対して斜めから照射できるように、前記開口面に対して傾けて配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の処理剤投入装置。
【請求項5】
前記処理剤投入部は、前記本体部を、前記押出し部の先端から基部に向かう方向にスライド移動させるスライド駆動部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の処理剤投入装置。
【請求項6】
前記位置調整機構は、前記処理剤投入部挿入可否判定部による判定結果に基づき、前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内へ挿入可能なように、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の相対位置を調整することを特徴とする、請求項2に記載の処理剤投入装置。
【請求項7】
前記位置調整機構は、前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に沿う方向に前記処理剤投入部の前記先端を移動させることで、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の相対位置を調整し、
前記処理剤投入部挿入機構は、前記開口面と交わる方向に前記処理剤投入部の前記先端を移動させることで、前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内に挿入する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の処理剤投入装置。
【請求項8】
前記処理剤収容部は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有することを特徴とする、請求項7に記載の処理剤投入装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の処理剤投入装置を用いて、圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入する方法であり、
前記処理剤投入部の前記本体部内に、前記処理剤を供給する処理剤供給工程と、
前記処理剤収容部の開口部に対する前記処理剤投入部の先端の位置を調整する位置調整工程と、
前記処理剤投入部を、前記処理剤収容部内に挿入する処理剤投入部挿入工程と、
前記処理剤投入部から前記処理剤収容部内に前記処理剤を投入する処理剤投入工程と、
を含むことを特徴とする、処理剤投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理剤投入装置および処理剤投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶融金属が入った取鍋を第1容器と第2容器とが形成する中空部に収容した状態で、当該中空部に圧力を添加可能である圧力容器と、前記第1容器を、前記第2容器に対して当接する当接位置と、当該当接が解除される当接解除位置との間で移動させる第1駆動部と、前記第2容器を、前記圧力が添加される圧力添加位置と、前記取鍋を設置する当該圧力添加位置とは異なる取鍋設置位置との間で移動させる第2駆動部と、前記圧力添加位置にて、前記中空部に前記取鍋を収容した状態で前記第1容器と前記第2容器とを締結する締結部と、前記締結され且つ前記圧力が添加された状態で前記溶融金属に処理剤を浸漬して当該溶融金属を撹拌する浸漬部と、を備えることを特徴とする圧力添加装置が開示されている。また、特許文献1には、当該圧力添加装置を用いて溶解炉で溶解された溶湯をダクタイル鋳鉄に溶製する際に、前記浸漬部が有する収容部に処理剤を収納し、溶融金属の脱硫および黒鉛球状化を行なう技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧力添加装置の収容部は高所に位置しているため、収容部に処理剤を投入する作業は高所での作業となる。この作業を作業者が手作業で行う場合は危険を伴い、さらには作業性にも劣る。
【0005】
そこで、本発明の一形態は、圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入するための処理剤投入装置および処理剤投入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入するための処理剤投入装置であり、前記処理剤投入装置は、前記処理剤収容部の開口部から前記処理剤収容部内に挿入されて処理剤を投入するための処理剤投入部と、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の位置を調整する位置調整機構と、前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内に挿入する処理剤投入部挿入機構と、を備え、前記処理剤投入部は、処理剤を内部に収容する本体部と、前記本体部内に収容された処理剤を前記本体部の外へ押し出す押出し部とから構成されている構成である。
【0007】
前記の構成によれば、処理剤収容部内に処理剤を自動で投入することが可能となるため、処理剤収容部への処理剤の投入作業の安全性及び作業性が向上する。
【0008】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記処理剤収容部の前記開口部を撮像して、前記開口部を被写体として含む画像データを生成する撮像装置と、前記画像データに基づいて、前記処理剤収容部内への前記処理剤投入部の挿入の可否を判定する処理剤投入部挿入可否判定部と、をさらに備え、前記撮像装置は、前記処理剤投入部の軸の延長線上の位置に配置されている構成としてもよい。
【0009】
前記の構成によれば、開口部の画像に基づく処理剤投入部挿入可否判定処理を行なうことで、処理剤収容部内に、より精度よく処理剤投入部を挿入することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記処理剤投入装置に前記処理剤を供給するための処理剤セットレールをさらに備え、前記処理剤投入部は、前記処理剤セットレールを介して処理剤が前記本体部内に供給される構成としてもよい。
【0011】
前記の構成によれば、処理剤投入部内への処理剤の供給を容易に行なうことができる。
【0012】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、光源をさらに備え、前記光源は、前記光源からの光を前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に対して斜めから照射できるように、前記開口面に対して傾けて配置されている構成としてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、処理剤収容部の開口部の画像のコントラストを向上させることができ、開口部の位置がよりわかりやすくなる。その結果、処理剤収容部内に、より精度よく処理剤投入部を挿入することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記処理剤投入部は、前記本体部を、前記押出し部の先端から基部に向かう方向にスライド移動させるスライド駆動部をさらに備える構成としてもよい。
【0015】
前記の構成によれば、処理剤収容部内の所定位置に、処理剤をより確実に投入することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記位置調整機構は、前記処理剤投入部挿入可否判定部による判定結果に基づき、前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内へ挿入可能なように、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の相対位置を調整する構成としてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、開口部の画像に基づく処理剤投入部挿入可否判定部による判定結果に基づき、処理剤投入部の先端の位置を調整するので、処理剤収容部内に、より精度よく処理剤投入部を挿入することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記位置調整機構は、前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に沿う方向に前記処理剤投入部の前記先端を移動させることで、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記処理剤投入部の先端の相対位置を調整し、前記処理剤投入部挿入機構は、前記開口面と交わる方向に前記処理剤投入部の前記先端を移動させることで、前記処理剤投入部を前記処理剤収容部内に挿入する構成としてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、開口面に沿う方向の処理剤投入部の位置調整と、開口面と交わる方向の処理剤投入部の位置調整とを別の機構によって調整することができる。また、処理剤投入部の挿入方向が一軸方向であるため、処理剤投入部挿入機構の制御が容易である。このような処理剤投入装置は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する処理剤収容部への適用に特に適している。
【0020】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、前記の構成において、前記処理剤収容部は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する構成としてもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する処理剤収容部への適用に特に適している。
【0022】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る処理剤投入方法は、本発明の一態様に係る処理剤投入装置を用いて、圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入する方法であり、前記処理剤投入部の前記本体部内に、前記処理剤を供給する処理剤供給工程と、前記処理剤収容部の開口部に対する前記処理剤投入部の先端の位置を調整する位置調整工程と、前記処理剤投入部を、前記処理剤収容部内に挿入する処理剤投入部挿入工程と、前記処理剤投入部から前記処理剤収容部内に前記処理剤を投入する処理剤投入工程と、を含む方法である。
【0023】
前記の構成によれば、処理剤収容部内に処理剤を自動で投入することが可能となるため、処理剤収容部への処理剤の投入作業の安全性及び作業性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、圧力添加装置が備える処理剤収容部に処理剤を投入するための処理剤投入装置および処理剤投入方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る処理剤投入装置の主要部分の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した処理剤投入装置について、処理剤投入後の処理剤投入部の状態を説明する図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る処理剤投入装置を用いた、処理剤投入方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】処理剤セットレールを介して処理剤投入部に処理剤を供給する方法を説明する図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る処理剤投入装置の主要部分の構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る処理剤投入装置を用いた、処理剤投入方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態に係る圧力添加装置の処理剤投入装置について、詳細に説明する。説明の便宜上、「圧力添加装置の処理剤収容部」を、単に「処理剤収容部」と呼ぶことがある。
【0027】
図1は、本実施形態の処理剤投入装置1の主要部分の構成を示す図である。
図2は、
図1に示した処理剤投入装置1について、処理剤投入後の処理剤投入部10の状態を説明する図である。
図1および
図2において、処理剤投入装置1の処理剤投入部10の先端が、処理剤収容部2の開口部20から処理剤収容部2内に挿入されている様子を表している。なお、図面には、必要に応じて、基準軸(処理剤収容部2の開口部20が設けられた面21に直交する方向)をX軸とし、水平面をXY平面に定め、鉛直方向をZ軸としたXYZ系の三次元座標を併せて示す。なお、
図1および
図2では、説明の便宜上、処理剤収容部2をX軸に沿った断面視で示し、処理剤投入部10の本体部101の内部を透視して示している。
【0028】
<処理剤投入装置1>
処理剤投入装置1は、処理剤投入部10と、スライド駆動部11と、ロボットアーム12と、ロボット制御装置13と、処理剤セットレール14と、を備える。
【0029】
処理剤投入部10は、処理剤Mgを処理剤収容部2に投入するために、処理剤収容部2の開口部20から処理剤収容部2内に挿入される。
【0030】
処理剤投入部10は、本体部101と、押出し部102とから構成されている。本体部101は、処理剤Mgを内部に収容するための収容空間と、開口部とを有している。本体部101の形状は、処理剤収容部2に挿入可能なように処理剤収容部2の収容空間の形状に基づき適宜設定することができる。例えば、
図1に示す処理剤収容部2は一方向に延びる角パイプ形状の部材であることから、処理剤収容部2への挿入容易性の観点から、本体部101も一方向に延びる形状を有していることが好ましい。例えば、
図1に示す本体部101は、上面の少なくとも一部が開放された矩形筒状部材である。本体部101が上面の少なくとも一部が開放された形状であることにより、処理剤Mgが設置しやすくなり、また処理剤Mgの設置漏れ等の作業不良を判別しやすくなる等の利点がある。
【0031】
押出し部102は、本体部101の延伸方向に本体部101内をスライド移動することで、本体部101内に収容された処理剤Mgを本体部101の外へ押し出すための部材である。押出し部102の形状は、本体部101内をスライド移動なように、本体部101の収容空間の形状に基づき適宜設定することができる。例えば、
図1に示す押出し部102は、ロッド状部材である。押出し部102のロッドの先端部分は、押し出しの際に処理剤Mgに当接する部分であり、処理剤Mgを首尾よく押し出せるように平板状になっている。
【0032】
押出し部102の先端とは反対側の端部(以下、「基部」という)は、ロボットアーム12のアーム先端部分に取り付けられている。
【0033】
スライド駆動部11は、押出し部102と本体部101とをスライド移動させるための駆動力を与える部分である。本体部101と押出し部102とはスライド駆動部11によって接続されている。
図2に示すように、本実施形態の処理剤投入部10では、スライド駆動部11の先端を矢印A2の方向に押し出すことによって、スライド駆動部11の推力を本体部101に与えて、本体部101を、押出し部102の先端から基部に向かう方向(
図2中の矢印A1の方向)にスライド移動させる。
図1に示す例では、スライド駆動部11としてエアシリンダを用いているが、スライド移動のための駆動力を与えることができればこれに限定されない。例えば、油圧シリンダ、モータによる電動駆動等によってもスライド移動のための駆動力を与えることが可能である。
【0034】
ロボットアーム12は、位置調整機構および処理剤投入部挿入機構として機能する。ロボットアーム12は、位置調整機構として、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の位置を調整する。また、ロボットアーム12は、処理剤投入部挿入機構として、処理剤投入部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0035】
より詳細に説明すると、開口部20が設けられた面21(以下、「開口面21」という)に直交する方向をX軸方向と定め、開口面21に沿う方向をYZ平面と定めたときに、ロボットアーム12は、位置調整機構として、YZ平面上において処理剤投入部10の先端の位置を移動させて、開口部20に対する処理剤投入部10の先端の位置を調整する。また、ロボットアーム12は、処理剤投入部挿入機構として、処理剤投入部10の先端のX軸方向の位置を移動させて、処理剤投入部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0036】
ロボットアーム12としては、従来公知の産業用ロボットアームを採用することができ、例えば、
図1に示すような6軸垂直多関節型のロボットアームを用いることができる。
【0037】
ロボット制御装置13は、ロボットアーム12の動作を制御する。例えば、ロボット制御装置13は、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の位置に応じてロボットアーム12の動作を制御して、処理剤投入部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の相対位置を調整する。例えば、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端のYZ平面上の位置を少なくとも調整する。
【0038】
処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の位置情報は、例えば、レーザー光を用いた距離センサ等の従来公知の位置検出センサによって取得することができる。ここで、前記位置情報は、例えば、処理剤投入部10の先端がYZ平面上のどの位置にあるかを示す情報であり、例えば、YZ平面における座標データである。
【0039】
本実施形態の処理剤投入装置1によれば、処理剤収容部2内に処理剤Mgを自動で投入することが可能となるため、処理剤収容部2への処理剤Mgの投入作業の安全性及び作業性が向上する。
【0040】
処理剤セットレール14は、本体部101の開口部の位置まで処理剤Mgをガイドするガイドレールである。処理剤Mgは、処理剤セットレール14を介して本体部101内に供給される。処理剤Mgを処理剤セットレール14上にセットし、処理剤セットレール14に沿って処理剤Mgをスライド移動させることで、処理剤投入部10内への処理剤Mgの供給を容易に行なうことができる。処理剤投入部10は高所に位置しているため、処理剤セットレール14を介して本体部101内に処理剤Mgを供給することにより、本体部101への処理剤Mgの供給作業の安全性及び作業性が向上する。
【0041】
<処理剤投入装置1を用いた処理剤投入方法>
次に、
図3および
図4を参照して、処理剤投入装置1を用いた処理剤投入方法の一例について以下に説明する。
図3は、処理剤投入方法S1の流れを示すフローチャートである。
図4は、処理剤セットレール14を介して処理剤投入部10に処理剤Mgを供給する方法を説明する図である。
【0042】
まず、ステップS11の処理剤供給ステップにおいて、処理剤投入部10の本体部101内に、処理剤Mgを供給する。ステップS11は、
図4に示すように、処理剤セットレール14を介して行う。ステップS11では、ロボット制御装置13は、ロボットアーム12の動作を制御することで、処理剤セットレール14の下端の位置と処理剤投入部10の先端にある本体部101の開口の位置とが合うように、処理剤投入部10の先端の位置を調整する。
【0043】
処理剤セットレール14上にセットされた処理剤Mgは、処理剤セットレール14に沿って処理剤セットレール14上をスライド移動して、本体部101の開口から処理剤投入部10内に供給される。
【0044】
処理剤セットレール14に処理剤Mgをセットしてから本体部101内に処理剤Mgが供給されるまでの一連の処理は、全て手作業で行ってもよく、一部の処理(例えば、処理剤セットレール14への処理剤Mgのセット)のみを手作業行ってもよく、全てを処理剤投入装置1が自動で行ってもよい。
【0045】
次いで、ステップS12の位置調整ステップにおいて、ロボット制御装置13は、処理剤投入部10の先端の位置に応じてロボットアーム12の動作を制御することで、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の相対位置を調整する。
【0046】
例えば、まず、ロボット制御装置13は、処理剤収容部2の開口部20に向けてロボットアーム12の向きを回転させる。ステップS11では、
図4中に実線で示すように、処理剤投入部10の先端が処理剤セットレール14の下端の方を向いているが、ロボットアーム12の向きを、例えば、
図4に示す矢印A3方向に回転させることによって、
図4中に点線で示すように、処理剤投入部10の先端を処理剤収容部2の開口部20の方に向ける。
【0047】
次いで、位置検出センサ等から取得した処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端のYZ平面上の位置情報に基づきロボットアーム12の動作を制御して、処理剤投入部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端のYZ平面上の位置を少なくとも調整する。
【0048】
ステップS12では、ロボットアーム12の向きを回転させた後の処理剤投入部10の先端の位置に応じて、処理剤投入部10の先端が開口部20の正面に来るように、処理剤収容部2が接続されているロッド22の軸周りの処理剤投入部10の先端の位置を調整してもよい。
【0049】
続いて、ステップS13の処理剤投入部挿入ステップにおいて、ロボット制御装置13は、ロボットアーム12の動作を制御することで、処理剤投入部10を処理剤収容部2内に挿入する。具体的には、X軸方向(例えば、
図4に示す矢印A4の方向)に処理剤投入部10の先端を移動させることで、処理剤投入部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0050】
続いて、ステップS14の処理剤投入ステップにおいて、ロボット制御装置13は、スライド駆動部11を駆動させて、本体部101を、押出し部102の先端から基部に向かう方向にスライド移動させることで、処理剤投入部10内の処理剤Mgを処理剤収容部2内に投入する。本体部101を、押出し部102の先端から基部に向かう方向にスライド移動させる処理剤の投入様式を採用することには、次の利点がある。例えば、処理剤収容部2内の所定位置に、処理剤Mgをより確実に投入することができるという利点である。尚、スライド駆動部の制御は、ロボット制御装置以外の制御装置によって制御されてもよい。
【0051】
以上の処理剤投入方法S1により、処理剤収容部2内に処理剤Mgを自動で投入することが可能となるため、処理剤収容部2への処理剤Mgの投入作業の安全性及び作業性が向上する。また、処理剤投入方法S1では、処理剤投入部10の処理剤収容部2への挿入方向が一軸方向(X軸方向)であるため、ロボットアーム12による処理剤投入部10の挿入動作の制御が容易である。
【0052】
<処理剤を投入する対象となる処理剤収容部2>
図1等では、本実施形態の処理剤投入装置1による処理剤投入対象となる処理剤収容部2の一例として、一端部に開口部20と、内部に処理剤を収容するための収容空間とを有する角パイプ形状の部材を示したが、本実施形態の処理剤投入装置1によって処理剤が投入される対象となる処理剤収容部2の形状はこれに限定されない。圧力添加装置が有している処理剤収容部であり、開口部と、処理剤を収容するための収容空間が設けられている構造を有するものであれば、本実施形態の処理剤投入装置1による処理剤投入対象となり得る。そのような処理剤収容部2としては、例えば、特許文献1(特開2022-95366号公報)の圧力添加装置が有している浸漬部の添加用ロッドの下端に設けられた収容部を挙げることができる。
【0053】
また、
図1等に示すように、処理剤収容部2は、開口面21に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有することが好ましい。処理剤投入装置1の内、処理剤収容部2内に挿入される処理剤投入部10は一方向に延びる形状の部材であるため、上記のような形状は、処理剤投入部10を内部に出し入れし易い形状である。また、処理剤収容部2内で処理剤投入装置1の処理剤投入部10を一軸方向に前後させるというシンプルな動作で、処理剤投入部10を内部に出し入れすることができる。このため、本実施形態の処理剤投入装置1は、上記のような形状を有する処理剤収容部2への適用に特に適している。
【0054】
<投入対象となる処理剤>
図1では、本実施形態の処理剤投入装置1による投入対象となる処理剤の例として、脱硫および黒鉛球状化処理を行なうために投入される処理剤であるマグネシウム地金を例示したが、投入対象となる処理剤の種類はこれに限定されない。処理剤は、例えば、圧力添加装置を用いて溶解炉で溶解された溶湯をダクタイル鋳鉄に溶製する際に投入される従来公知の処理剤を挙げることができ、例えば、ミッシュメタル、塩化カルシウム等であってもよい。ミッシュメタルは、黒鉛球状化を補助するものとして投入される処理剤である。また、塩化カルシウムは、除滓性を向上させるために投入される処理剤である。
【0055】
また、
図1では、処理剤として、インゴット型の形状を有する処理剤を例示したが、処理剤の形状はこれに限定されない。
【0056】
<位置調節機構の変形例>
図1では、ロボットアーム12が、位置調整機構としての処理剤投入部の位置調節動作を行なう例を説明したが、本発明はこれに限定されない。処理剤投入装置1は、ロボットアーム12の代わりに、位置調節機構としてラックピニオン、リニアレール等の公知の移動機構を備える構成としてもよい。
【0057】
<処理剤投入部挿入機構の変形例>
図1では、ロボットアーム12が、処理剤投入部挿入機構としての挿入動作を行なう例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、押出し部102の基部側(ロボットアーム12に取り付けられている側)に、スライド駆動機構のような機構を設けることで、ロボットアーム12による挿入動作に依らずに、処理剤投入部10の処理剤収容部2内への挿入動作を実現することができる。
【0058】
<処理剤投入部10への処理剤供給方法の変形例>
図1では、処理剤セットレール14を介して処理剤Mgを本体部101内に供給する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の一態様に係る処理剤投入装置は、処理剤セットレール14を備えない構成としてもよい。その場合は、処理剤セットレール14とは別の手段によって本体部101に処理剤Mgを供給してもよく、または本体部101に手作業で直接処理剤Mgを供給してもよい。
【0059】
<処理剤投入方法の変形例>
図1では、処理剤収容部2内への挿入後の押出し部102の位置を変えずに本体部101をスライド移動させる方法(つまり、本体部101を処理剤収容部2から引き抜く方法)によって、処理剤投入部10内の処理剤Mgを処理剤収容部2内に投入する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。処理剤収容部2内への挿入後の本体部101の位置を変えずに押出し部102を本体部101の基部から先端に向かってスライド移動させる方法(つまり、押出し部102を処理剤収容部2内に押し込む方法)によって、処理剤投入部10内の処理剤Mgを処理剤収容部2内に投入する構成としてもよい。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
図5は、本実施形態の処理剤投入装置1aの主要部分の構成を示す図である。
図5に示すように、処理剤投入装置1aは、実施形態1に係る処理剤投入装置1が備える各構成に加えて、撮像装置15、処理剤投入部挿入可否判定部16、および光源17を備えている。なお、
図5は、説明の便宜上、処理剤収容部2はX軸に沿った断面視で示し、処理剤投入部10の本体部101の内部を透視して示している。また、
図5中の矢印A5は、光源17からの光の照射方向を表している。
【0062】
処理剤投入装置1aが備える各構成のうち、撮像装置15、処理剤投入部挿入可否判定部16、および光源17以外の構成は、実施形態1に係る処理剤投入装置1が備える各構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0063】
撮像装置15は、処理剤収容部2の開口部20を撮像して、開口部20を被写体として含む画像データを生成する。撮像装置15は、処理剤投入部10の軸の延長線上の位置に配置されている。これにより、処理剤投入部10の先端と開口部20と位置関係を示す画像データを取得することができる。撮像装置15としては、例えば、カメラ等の従来公知の撮像装置を用いることができる。
【0064】
処理剤投入部挿入可否判定部16は、撮像装置15が撮像した画像データを取得し、当該画像データに基づいて、処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入の可否を判定する。処理剤投入部挿入可否判定部16が開口部20の画像に基づく処理剤投入部挿入可否判定処理を行なうことで、処理剤投入部10の先端に対する処理剤収容部2の開口部20の向きおよび位置をより精度よく把握することができるため、処理剤収容部2内に、より精度よく処理剤投入部10を挿入することができる。ここで、開口部20の向きとは、処理剤投入部10の先端に対して開口部20がどの方向を向いているか、というデータである。
【0065】
光源17は、処理剤収容部2の開口面21に対して光を照射する。光源17は、光を処理剤収容部2の開口面21に対して斜めから照射できるように、開口面21に対して傾けて配置されている。前記の構成によれば、処理剤収容部2の開口部20の画像のコントラストを向上させることができ、画像データにおける開口部20の向きおよび位置がよりわかりやすくなる。その結果、処理剤収容部2内に、より精度よく処理剤投入部を挿入することができる。
【0066】
図5では、光源17が処理剤収容部2の開口面21に対して下斜め方向(
図5中の矢印A5の方向)から光を照射する態様を説明したが、本発明はこれに限定されない。光源17は、処理剤収容部2の開口面21に対して斜めから光を照射できればよく、処理剤収容部2の開口面21に対して上斜め方向から光を照射してもよい。
【0067】
ロボット制御装置13は、処理剤投入部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、ロボットアーム12の動作を制御する。具体的には、ロボット制御装置13は、処理剤投入部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、処理剤投入部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対する処理剤投入部10の先端の相対位置を調整する。前記の構成によれば、開口部20の画像に基づく処理剤投入部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、処理剤投入部10の先端の位置を調整するので、処理剤収容部2内に、より精度よく処理剤投入部10を挿入することができる。
【0068】
図5では、ロボット制御装置13とは別に処理剤投入部挿入可否判定部16を備える例を示したが、この構成に限定されない。例えば、ロボット制御装置13により処理剤投入部挿入可否判定部16の機能を実現してもよい。
【0069】
<処理剤投入装置1aを用いた処理剤投入方法>
次に、
図6を参照して、処理剤投入装置1aを用いた処理剤投入方法の一例について以下に説明する。
図6は、処理剤投入方法S2の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS21の処理剤供給ステップにおいて、処理剤投入部10の本体部101内に、処理剤Mgを供給する。処理剤供給ステップについては、実施形態1において説明したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0070】
次いで、ステップS22の画像データ取得ステップにおいて、処理剤投入部挿入可否判定部16は、撮像装置15が撮像した画像データを取得する。
【0071】
続いて、ステップS23の処理剤投入部挿入可否判定ステップにおいて、処理剤投入部挿入可否判定部16は、取得した画像データに基づいて、処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入の可否を判定する。ステップS23の判定は、例えば、以下のように行なう。取得した画像データにおいて処理剤投入部10が処理剤収容部2の開口部20以外の部位に干渉せずに挿入できる位置にある場合に、処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入が可能と判定する。一方、取得した画像データにおいて処理剤投入部10が処理剤収容部2の開口部20以外の部位に干渉する位置にある場合に、処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入が不可能と判定する。
【0072】
ロボット制御装置13は、処理剤投入部挿入可否判定部16の判定結果に従って、次の処理を実行する。ステップS23において、処理剤投入部挿入可否判定部16が処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入が可能と判定した場合、ロボット制御装置13は、ステップS24の処理剤投入部挿入ステップを実行し、次いでステップS25の処理剤投入ステップを実行する。
【0073】
一方で、ステップS23において、処理剤投入部挿入可否判定部16が処理剤収容部2内への処理剤投入部10の挿入が不可能と判定した場合、ロボット制御装置13は、ステップS26の位置調整ステップを実行し、その後、ステップS24の処理剤投入部挿入ステップおよびステップS24の処理剤投入ステップを実行する。なお、位置調整ステップ、処理剤投入部挿入ステップおよび処理剤投入ステップについては、実施形態1において説明したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
以上の処理剤投入方法S2では、開口部20の画像に基づく処理剤投入部挿入可否判定ステップS25を行なうので、処理剤投入方法S1による効果に加えて、処理剤投入部10の先端に対する処理剤収容部2の開口部20の向きおよび位置をより精度よく把握することができるため、処理剤収容部2内に、より精度よく処理剤投入部10を挿入することができる。
【0075】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1、1a 処理剤投入装置
2 処理剤収容部
10 処理剤投入部
11 スライド駆動部
12 ロボットアーム(位置調整機構および処理剤投入部挿入機構)
13 ロボット制御装置
14 処理剤セットレール
15 撮像装置
16 処理剤投入部挿入可否判定部
17 光源
101 本体部
102 押出し部
【要約】
【課題】圧力添加装置の処理剤収容部に処理剤を投入するための処理剤投入装置および処理剤投入方法を提供する。
【解決手段】処理剤投入装置(1)は、処理剤投入部(10)と、位置調整機構(12)と、処理剤投入部挿入機構(12)と、を備え、処理剤投入部(10)は、処理剤を内部に収容する本体部(101)と、本体部(101)内に収容された処理剤を本体部(101)の外へ押し出す押出し部(102)とから構成される。
【選択図】
図1