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特許7649380内部オレフィンの製造方法、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法及び低温安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】内部オレフィンの製造方法、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法及び低温安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/25 20060101AFI20250312BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20250312BHJP
   C07C 303/06 20060101ALI20250312BHJP
   C07C 309/04 20060101ALI20250312BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20250312BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250312BHJP
【FI】
C07C5/25
C07C11/02
C07C303/06
C07C309/04
B01J21/04 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023538583
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2022028887
(87)【国際公開番号】W WO2023008464
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2021122422
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 広太
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中村 典義
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144945(JP,A)
【文献】特開2014-156462(JP,A)
【文献】特表2004-519419(JP,A)
【文献】特開2013-241386(JP,A)
【文献】特開2020-097544(JP,A)
【文献】特開2012-024766(JP,A)
【文献】特表2011-500628(JP,A)
【文献】特開2014-213290(JP,A)
【文献】特開2017-87107(JP,A)
【文献】特開2008-222609(JP,A)
【文献】特開2006-193442(JP,A)
【文献】米国特許第5321193(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 5/25
C07C 11/02- 11/113
C07C 303/06
C07C 309/04
B01J 21/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸触媒粒子を反応管内に充填した固定床反応器を用いて、炭素数14以上18以下のα-オレフィンを内部異性化する工程を含む内部オレフィンの製造方法であって、
前記固体酸触媒粒子がアルミニウムを含み、
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpが、1mm以上6mm以下であり、
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する前記反応管の内径Dの比(D/dp)が、200以上であることを特徴とする内部オレフィンの製造方法。
【請求項2】
α-オレフィンを内部異性化する際の反応温度は、300℃以下である請求項1に記載の内部オレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記内部異性化する工程において、WHSV(固体酸触媒単位質量に対する1時間当たりのα-オレフィン供給質量)は、0.03/hr以上7/hr以下である請求項1又は2に記載の内部オレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記内部異性化する工程において、LHSV(液空間速度)は、0.03/hr以上5/hr以下である請求項1又は2に記載の内部オレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記内部オレフィンの平均二重結合位置は、2以上4.8以下である請求項1又は2に記載の内部オレフィンの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化する工程を含む、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化し、更に中和して内部オレフィンスルホン酸塩を得る、内部オレフィンスルホン酸塩の低温安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部オレフィンの製造方法、前記内部オレフィンを用いた内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法及び低温安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アニオン性界面活性剤、特にアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、洗浄力及び起泡力に優れていることから家庭用及び工業用の洗浄成分として広く用いられている。アニオン性界面活性剤の一つとして、オレフィンスルホン酸塩、特に二重結合をオレフィンの末端ではなく内部に有する内部オレフィンを原料として得られる内部オレフィンスルホン酸塩が報告されている。
【0003】
内部オレフィンスルホン酸塩は、一般に内部オレフィンを三酸化硫黄と反応させてスルホン化し、得られたスルホン化物を中和後、更に、好ましくは加水分解することにより得られる。
【0004】
例えば、特許文献1では、炭素数8以上24以下の第一級脂肪族アルコールから内部オレフィンを得る工程と、前記内部オレフィンをスルホン化することによりスルホン化生成物を得る工程と、前記スルホン化生成物を中和した後、中和物を加水分解処理する工程とを含む、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-156462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の内部オレフィンスルホン酸塩は、低温安定性が低く、0℃前後の低温環境下に保存すると析出物が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、低温安定性の高い内部オレフィンスルホン酸塩を得るための内部オレフィンの製造方法、前記内部オレフィンを用いた内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法及び低温安定化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固体酸触媒粒子を反応管内に充填した固定床反応器を用いて、炭素数8以上24以下のα-オレフィンを内部異性化する工程を含む内部オレフィンの製造方法であって、
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する前記反応管の内径Dの比(D/dp)が、25以上であることを特徴とする内部オレフィンの製造方法に関する。
【0009】
また本発明は、前記製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化する工程を含む、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法、に関する。
【0010】
更に本発明は、前記製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化し、更に中和して内部オレフィンスルホン酸塩を得る、内部オレフィンスルホン酸塩の低温安定化方法、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭素数8以上24以下のα-オレフィンを内部異性化する工程において、固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する固定床反応器の反応管の内径Dの比(D/dp)を25以上に調整することにより、低温安定性の高い内部オレフィンスルホン酸塩を得るための内部オレフィンを製造することができる。本発明の製造方法により得られた内部オレフィンを用いて製造した内部オレフィンスルホン酸塩は、低温安定性が高く、0℃前後の低温環境下に保存した場合でも析出物が生じにくいという特徴を有する。その理由は定かではないが、原料である内部オレフィンの二重結合位置、及び二重結合位置が異なる内部オレフィンの含有割合が、内部オレフィンスルホン酸塩の低温安定性に影響を及ぼしていると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
<内部オレフィンの製造方法>
本発明の内部オレフィンの製造方法は、固体酸触媒粒子を反応管内に充填した固定床反応器を用いて、炭素数8以上24以下のα-オレフィンを内部異性化する工程を含む。
【0014】
内部オレフィンとは、炭素鎖の末端以外に二重結合を有するオレフィンであり、すなわち二重結合を炭素鎖の2位以上の位置に有するオレフィンである。また、α-オレフィンの内部異性化とは、α位の二重結合を炭素鎖の2位以上の位置に変換して、α-オレフィンを炭素鎖の末端以外に二重結合を有するオレフィン(内部オレフィン)に変換することを意味する。
【0015】
α-オレフィンの炭素数は、内部オレフィンスルホン酸塩を洗浄剤に用いた際の洗浄性能等の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、また、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。
【0016】
α-オレフィンを内部異性化する工程においては、固体酸触媒粒子を反応管内に充填した固定床反応器を用いることができる。
【0017】
前記固体酸触媒粒子は、α-オレフィンから内部オレフィンへの変換率を高める観点から、好ましくはアルミニウム、鉄、及びガリウムから選ばれる1種以上の元素を含む固体酸触媒粒子であり、より好ましくはアルミニウムを含む固体酸触媒粒子であり、更に好ましくはγ-アルミナ及び/又はリン酸アルミニウムである。
【0018】
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dp(球相当径)は、取り扱い性、触媒活性、及び前記反応管の内径Dとの関係性の観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0019】
前記固体酸触媒粒子の充填高さは、内部オレフィンの製造効率の観点から、好ましくは100mm以上、より好ましくは1000mm以上である。また、前記充填高さの上限値は、反応管の設置スペースの観点から、好ましくは8000mm以下である。
【0020】
前記反応管の内径Dは、例えば、10mm以上であってよく、内部オレフィンの製造効率及び前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpとの関係性の観点から、好ましくは50mm以上、より好ましくは500mm以上であり、また、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2000mm以下である。
【0021】
前記固定床反応器は、固体酸触媒粒子の取り扱い性、及び固定床反応器の設置スペースの観点から、反応管を鉛直方向に設置した固定床反応器であることが好ましい。また、前記固定床反応器は、機器の単純化や圧力損失を低減する観点から、反応管が1本である単管式であることが好ましく、また、反応熱を除熱する観点から、反応管を複数有する多管式であることが好ましい。
【0022】
本発明の内部オレフィンの製造方法においては、前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する前記反応管の内径Dの比(D/dp)が25以上になるように、前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpと前記反応管の内径Dとを調整する。D/dpは、低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を製造するための原料である内部オレフィンを得る観点から、好ましくは200以上、より好ましくは400以上である。D/dpの上限値は、固体酸触媒粒子の取り扱い性、及び固定床反応器の設置スペースの観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である。
【0023】
α-オレフィンを内部異性化する際の反応温度は、低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を製造するための原料である内部オレフィンを得る観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下である。前記反応温度の下限値は、α-オレフィンから内部オレフィンへの変換率を高める観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上である。
【0024】
α-オレフィンを内部異性化する際の圧力は、α-オレフィンから内部オレフィンへの変換率を高める観点、及び低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を製造するための原料である内部オレフィンを得る観点から、絶対圧力で好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上であり、また、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、更に好ましくは0.2MPa以下である。
【0025】
α-オレフィンを内部異性化する工程においては、固定床反応器内に不活性ガスを導入してもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、入手容易性の観点から、好ましくは窒素である。不活性ガスの導入量は、反応速度及び生産性を向上させる観点から、原料であるα-オレフィン1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上であり、また、好ましくは10モル以下、より好ましくは1モル以下である。
【0026】
α-オレフィンを内部異性化する工程において、WHSV(固体酸触媒単位質量に対する1時間当たりのα-オレフィン供給質量)は、反応効率の観点、及び低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を製造するための原料である内部オレフィンを得る観点から、好ましくは0.03/hr以上、より好ましくは0.05/hr以上、更に好ましくは0.07/hr以上、更に好ましくは0.09/hr以上であり、また、好ましくは7/hr以下、より好ましくは5/hr以下、更に好ましくは2.5/hr以下、更に好ましくは2/hr以下、更に好ましくは1.5/hr以下、更に好ましくは1/hr以下である。
【0027】
α-オレフィンを内部異性化する工程において、LHSV(液空間速度)は、反応効率の観点、及び低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を製造するための原料である内部オレフィンを得る観点から、好ましくは0.03/hr以上、より好ましくは0.05/hr以上、更に好ましくは0.07/hr以上であり、また、好ましくは5/hr以下、より好ましくは4/hr以下、更に好ましくは2.5/hr以下、更に好ましくは2/hr以下、更に好ましくは1.5/hr以下、更に好ましくは1/hr以下である。
【0028】
前記工程により得られた内部オレフィンは、原料であるα-オレフィン、2量体等の副生成物を除去するために蒸留等により精製してもよい。
【0029】
前記内部オレフィンの平均二重結合位置は、低温安定性が高い内部オレフィンスルホン酸塩を得る観点、及び内部オレフィンスルホン酸塩を洗浄剤として用いた際の洗浄性能及び泡立ち性能の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは3.5以上、更に好ましくは4以上であり、また、好ましくは4.8以下、より好ましくは4.6以下、更に好ましくは4.5以下である。
【0030】
前記内部オレフィンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。内部オレフィンを2種以上組み合わせて用いる場合には、内部オレフィンスルホン酸塩を洗浄剤に用いた際の洗浄性能等の観点から、好ましくは炭素数16の内部オレフィンと炭素数18の内部オレフィンとを組み合わせて用いる。
【0031】
<内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法>
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法は、前記製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化する工程を含む。前記スルホン化する工程は、前記製造方法によって得られた内部オレフィンを三酸化硫黄と反応させてスルホン化物を得るスルホン化工程であることが好ましい。また、本発明の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法は、好ましくは得られたスルホン化物を中和して中和生成物を得る中和工程を含み、更に、好ましくは得られた中和生成物を加水分解して加水分解生成物を得る工程を含む。
【0032】
本発明において、内部オレフィンスルホン酸塩は、前記内部オレフィンをスルホン化、更にスルホン化後、好ましくは中和することにより、更に中和後、より好ましくは加水分解することにより得られるスルホン酸塩である。すなわち、前記内部オレフィンをスルホン化すると、β-サルトン、γ-サルトン及びオレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和工程、及び好ましくは加水分解工程を経てヒドロキシスルホン酸塩と、オレフィンスルホン酸塩へと転換する。得られる生成物は、主にこれらの混合物である。本発明では、これらの各生成物及びそれらの混合物を総称して内部オレフィンスルホン酸塩という。
【0033】
<スルホン化工程>
前記スルホン化工程は、前記内部オレフィンをスルホン化する工程であり、好ましくは前記内部オレフィンと三酸化硫黄とを反応させてスルホン化物を得る工程である。
【0034】
三酸化硫黄は、反応性を向上させる観点から、三酸化硫黄ガスとして反応させることが好ましい。三酸化硫黄ガスは、空気及び窒素などの不活性ガスで、好ましくは1~30体積%に希釈したものであり、より好ましくは1.5~10体積%に希釈したものである。
【0035】
三酸化硫黄の使用量は、スルホン化物の収率を向上させる観点から、内部オレフィン1モルに対して、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは0.9モル以上、更に好ましくは0.95モル以上であり、経済性の観点及びスルホン化物の着色を抑制する観点から好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.1モル以下、更に好ましくは1.05モル以下である。
【0036】
内部オレフィンと三酸化硫黄を反応させるスルホン化反応は、液体の内部オレフィンと気体の三酸化硫黄を反応させる観点から、外部にジャケットを備えた薄膜式スルホン化反応器を使用することが好ましい。
【0037】
スルホン化工程の処理温度は、三酸化硫黄及びスルホン化物の凝固を防ぐ観点から、好ましくは0℃以上であり、またスルホン化物の着色を抑制する観点から、好ましくは50℃以下である。
【0038】
スルホン化反応は発熱反応であるため、スルホン化反応器に外部ジャケットを設けて冷却水を通液して冷却することが好ましい。スルホン化反応器の外部ジャケットに通液する冷却水の温度は、反応速度を向上させる観点から、好ましくは0℃以上であり、また、副反応を抑制して、最終的に得られる内部オレフィンスルホン酸塩中の内部オレフィン、無機塩等の不純物を低減する観点から、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下である。
【0039】
スルホン化反応率は、スルホン化物の収率を向上させる観点から、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、更に好ましくは98%以上であり、また過剰な三酸化硫黄によるスルホン化物の着色を抑制する観点から、好ましくは99.8%以下である。
【0040】
<中和工程>
中和工程は、スルホン化工程で得られたスルホン化物を中和して中和生成物を得る工程である。
【0041】
中和に使用するアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物でも有機アルカリ化合物でもよい。無機アルカリ化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が使用できる。有機アルカリ化合物としては、例えばアンモニア、2-アミノエタノールなどの炭素数1以上6以下のアミン化合物が使用できる。
【0042】
中和に使用するアルカリ化合物は、入手性及び経済性の観点から、無機アルカリ化合物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましい。中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、利用しやすさから水酸化ナトリウムがより更に好ましく、低温安定性の観点から水酸化カリウムがより更に好ましい。
【0043】
中和に使用するアルカリ化合物は、取扱い性の観点から、アルカリ性水溶液として用いることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度は、経済性の観点及び内部オレフィン、無機塩等の不純物の生成を抑制する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4.5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上である。また、加水分解工程での生産性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
【0044】
中和に使用するアルカリ化合物の使用量は、内部オレフィン、無機塩等の不純物の生成を抑制する観点及び反応性を向上させる観点から、スルホン酸基に対して、好ましくは1モル倍以上、より好ましくは1.03モル倍以上であり、また、経済性の観点及び内部オレフィン、無機塩等の不純物の生成を抑制する観点から、好ましくは2.5モル倍以下、より好ましくは2.0モル倍以下、更に好ましくは1.5モル倍以下である。
【0045】
中和工程において、スルホン化物とアルカリ性水溶液とを混合する際の温度、及び中和反応時の温度は、副反応による内部オレフィン、無機塩等の不純物の生成を抑制する観点から、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下、より更に好ましくは25℃以下であり、また、反応性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、より更に好ましくは20℃以上である。
【0046】
中和工程において、スルホン化物及びアルカリ性水溶液を効率的に混合でき、油状物にせん断力を加えられる混合器であれば、いかなるタイプの混合器を用いてもよい。かかる混合器としては、静止型混合器、衝突型混合器、撹拌翼型混合器、及び振動型混合器等が挙げられる。静止型混合器としては、ノリタケ社製スタティックミキサー等が挙げられる。衝突型混合器としては、ナノマイザー社製高圧乳化機等が挙げられる。撹拌翼型混合器としては、マツボー社製マイルダー、プライミクス社製ホモキサー等が挙げられる。これらの中でも、装置コストの観点から撹拌翼型混合器が好ましい。
【0047】
中和工程は、副生成物の生成抑制及び生産性の観点から、ループ型反応器を用いて反応液を循環させながら、スルホン化物とアルカリ性水溶液とを添加し、同時に、反応液を抜き出す、いわゆる連続法で行うことが好ましい。
【0048】
中和工程において、中和時間は、中和反応を十分に行う観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは8分以上、更に好ましくは10分以上、更に好ましくは12分以上である。また、生産性を向上させる観点から、好ましくは100分以下、より好ましくは50分以下、更に好ましくは40分以下、より更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下である。
【0049】
連続法の場合、中和時間はループ型反応器の容量を単位時間当たりのスルホン化物及びアルカリ性水溶液の合計添加量で除した、平均滞留時間として表すことができる。平均滞留時間は中和熱抑制の観点から、好ましくは8分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは12分以上であり、生産性を向上させる観点から、好ましくは100分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは40分以下、より更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下である。また、連続法の場合、反応液の循環倍率は反応性を向上させる観点から、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上、更に好ましくは9倍以上であり、反応器内の圧力上昇を抑制する観点から、好ましくは30倍以下、より好ましくは20倍以下、更に好ましくは15倍以下である。ここで、循環倍率とは、反応器内に投入する流量に対しての反応器内を循環している全内容量の比率であり、(反応器内の全循環量)/(反応器内への投入量)で表される。
【0050】
中和工程においては、アルコール及びアセトン等の水溶性有機溶剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びα-オレフィンスルホン酸等の界面活性剤を共存させることができる。かかる共存物は、中和反応時に変質したり、最終製品中に残存したり、精製工程に負荷をかけたりするため使用しないことが好ましく、使用する場合は、混合液中に好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下で使用する。
【0051】
<加水分解工程>
本発明の製造方法は、好ましくは得られた中和生成物を加水分解する加水分解工程を含む。
【0052】
加水分解工程において、加水分解時の温度は、反応性を向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、また、生成物の分解を抑制する観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0053】
加水分解反応は、バッチ反応器で行ってもよく、または連続反応器で行ってもよい。
【0054】
加水分解工程の処理時間は、反応を完結させる観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上であり、また、生産性を向上させる観点から、好ましくは4時間以下、より好ましくは3.5時間以下、更に好ましくは3時間以下、より更に好ましくは2時間以下、より更に好ましくは90分以下である。
【0055】
加水分解工程によって得られる内部オレフィンスルホン酸塩水溶液の濃度は、生産性の観点から好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは48質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、また水溶液の粘度等の観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
【0056】
内部オレフィンスルホン酸塩はそのままで各種用途に用いることができるが、さらに、脱塩、脱色等の精製を行ってもよい。
【0057】
本発明の製造方法で得られる内部オレフィンスルホン酸塩は、低温安定性が高く、0℃前後の低温環境下に保存した場合でも析出物が生じにくい。また、前記内部オレフィンスルホン酸塩は、純度及び色相がよいので、身体洗浄剤、シャンプー、衣料用洗浄剤、及び食器洗浄剤等の各種用途に好適に用いることができる。
【0058】
<低温安定化方法>
本発明の製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化し、更に中和して内部オレフィンスルホン酸塩を得ることにより、得られる内部オレフィンスルホン酸塩を低温安定化させることができる。前記内部オレフィン及び内部オレフィンスルホン酸塩は、上記で記載した内部オレフィン及び内部オレフィンスルホン酸塩を意味する。なお、低温安定化とは、室温以下で状態変化が起こりにくいことを意味し、例えば、常圧下で温度-5℃における析出物の発生の減少などにより確認することができる。
【0059】
以下に、本発明及び本発明の好ましい実施態様を示す。
<1>
固体酸触媒粒子を反応管内に充填した固定床反応器を用いて、炭素数8以上24以下のα-オレフィンを内部異性化する工程を含む内部オレフィンの製造方法であって、
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する前記反応管の内径Dの比(D/dp)が、25以上であることを特徴とする内部オレフィンの製造方法。
<2>
前記α-オレフィンの炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、また、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である、<1>に記載の内部オレフィンの製造方法。
<3>
前記固体酸触媒粒子は、好ましくはアルミニウム、鉄、及びガリウムから選ばれる1種以上の元素を含む固体酸触媒粒子であり、より好ましくはアルミニウムを含む固体酸触媒粒子であり、更に好ましくはγ-アルミナ及び/又はリン酸アルミニウムである、<1>又は<2>に記載の内部オレフィンの製造方法。
<4>
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<5>
前記固体酸触媒粒子の充填高さは、好ましくは100mm以上、より好ましくは1000mm以上、好ましくは8000mm以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<6>
前記充填高さは、好ましくは1000mm以上8000mm以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<7>
前記反応管の内径Dは、10mm以上であってよく、好ましくは50mm以上、より好ましくは500mm以上であり、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2000mm以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<8>
前記固定床反応器は、反応管を鉛直方向に設置した固定床反応器であり、好ましくは単管式又は多管式である、<1>~<7>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<9>
前記固体酸触媒粒子の平均粒子径dpに対する前記反応管の内径Dの比(D/dp)は、好ましくは200以上、より好ましくは400以上である、<1>~<8>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<10>
前記D/dpの上限値は、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である、<1>~<9>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<11>
前記D/dpは、好ましくは200以上2000以下、より好ましくは400以上1500以下、更に好ましくは400以上1000以下である、<1>~<10>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<12>
α-オレフィンを内部異性化する際の反応温度は、300℃以下である、<1>~<11>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<13>
α-オレフィンを内部異性化する際の反応温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下である、<1>~<12>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<14>
α-オレフィンを内部異性化する際の反応温度の下限値は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上である、<1>~<13>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<15>
α-オレフィンを内部異性化する際の圧力は、絶対圧力で好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、更に好ましくは0.2MPa以下である、<1>~<14>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<16>
α-オレフィンを内部異性化する工程において、固定床反応器内に不活性ガスを導入してもよく、前記不活性ガスとしては、好ましくは窒素である、<1>~<15>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<17>
前記不活性ガスの導入量は、原料であるα-オレフィン1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上であり、好ましくは10モル以下、より好ましくは1モル以下である、<16>に記載の内部オレフィンの製造方法。
<18>
前記内部異性化する工程において、WHSV(固体酸触媒単位質量に対する1時間当たりのα-オレフィン供給質量)は、0.03/hr以上7/hr以下である、<1>~<17>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<19>
α-オレフィンを内部異性化する工程において、WHSVは、好ましくは0.03/hr以上、より好ましくは0.05/hr以上、更に好ましくは0.07/hr以上、更に好ましくは0.09/hr以上であり、好ましくは7/hr以下、より好ましくは5/hr以下、更に好ましくは2.5/hr以下、更に好ましくは2/hr以下、更に好ましくは1.5/hr以下、更に好ましくは1/hr以下である、<1>~<18>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<20>
前記WHSVは、好ましくは0.03/hr以上7/hr以下、より好ましくは0.05/hr以上5/hr以下、更に好ましくは0.07/hr以上2.5/hr以下、更に好ましくは0.09/hr以上2/hr以下、更に好ましくは0.09/hr以上1.5/hr以下、更に好ましくは0.09/hr以上1/hr以下である、<1>~<19>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<21>
前記内部異性化する工程において、LHSV(液空間速度)は、0.03/hr以上5/hr以下である、<1>~<20>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<22>
α-オレフィンを内部異性化する工程において、LHSV(液空間速度)は、好ましくは0.03/hr以上、より好ましくは0.05/hr以上、更に好ましくは0.07/hr以上であり、好ましくは5/hr以下、より好ましくは4/hr以下、更に好ましくは2.5/hr以下、更に好ましくは2/hr以下、更に好ましくは1.5/hr以下、更に好ましくは1/hr以下である、<1>~<21>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<23>
前記LHSVは、好ましくは0.03/hr以上5/hr以下、より好ましくは0.05/hr以上4/hr以下、更に好ましくは0.07/hr以上2.5/hr以下、更に好ましくは0.07/hr以上2/hr以下、更に好ましくは0.07/hr以上1.5/hr以下、更に好ましくは0.07/hr以上1/hr以下である、<1>~<22>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<24>
前記内部オレフィンの平均二重結合位置は、2以上4.8以下である、<1>~<23>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<25>
前記内部オレフィンの平均二重結合位置は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは3.5以上、更に好ましくは4以上であり、好ましくは4.8以下、より好ましくは4.6以下、更に好ましくは4.5以下である、<1>~<24>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<26>
前記内部オレフィンは、好ましくは炭素数16の内部オレフィンと炭素数18の内部オレフィンとを組み合わせて用いる、<1>~<25>のいずれかに記載の内部オレフィンの製造方法。
<27>
前記<1>~<26>のいずれかに記載の製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化する工程を含む、内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<28>
前記スルホン化工程が、前記内部オレフィンと三酸化硫黄とを反応させてスルホン化物を得るスルホン化工程である、<27>記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<29>
前記三酸化硫黄は、三酸化硫黄ガスとして反応させる、<28>記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<30>
前記三酸化硫黄ガスは、空気及び窒素などの不活性ガスで、好ましくは1~30体積%に希釈したものであり、より好ましくは1.5~10体積%に希釈したものである、<29>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<31>
三酸化硫黄の使用量は、内部オレフィン1モルに対して、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは0.9モル以上、更に好ましくは0.95モル以上であり、1.2モル以下、より好ましくは1.1モル以下、更に好ましくは1.05モル以下である、<28>~<30>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<32>
前記内部オレフィンと三酸化硫黄を反応させるスルホン化反応は、外部にジャケットを備えた薄膜式スルホン化反応器を使用する、<28>~<31>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<33>
スルホン化工程の処理温度は、好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下である、<27>~<32>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<34>
スルホン化反応器に外部ジャケットを設けて冷却水を通液して冷却する、<32>又は<33>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<35>
スルホン化反応器の外部ジャケットに通液する冷却水の温度は、好ましくは0℃以上であり、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下である、<34>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<36>
スルホン化反応率は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、更に好ましくは98%以上であり、好ましくは99.8%以下である、<27>~<35>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<37>
得られたスルホン化物を中和して中和生成物を得る中和工程を含む、<27>~<36>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<38>
中和に使用するアルカリ化合物は、好ましくは無機アルカリ化合物、より好ましくはアルカリ金属水酸化物、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種、より更に好ましくは水酸化ナトリウム、より更に好ましくは水酸化カリウムである、<37>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<39>
前記アルカリ化合物は、アルカリ性水溶液として用いる<38>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<40>
前記アルカリ性水溶液の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4.5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である、<39>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<41>
前記アルカリ化合物の使用量は、スルホン酸基に対して、好ましくは1モル倍以上、より好ましくは1.03モル倍以上であり、好ましくは2.5モル倍以下、より好ましくは2.0モル倍以下、更に好ましくは1.5モル倍以下である、<38>~<40>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<42>
前記中和工程において、スルホン化物とアルカリ性水溶液とを混合する際の温度、及び中和反応時の温度は、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下、より更に好ましくは25℃以下であり、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、より更に好ましくは20℃以上である、<37>~<41>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<43>
前記中和工程における混合器は、撹拌翼型混合器である、<37>~<42>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<44>
前記中和工程は、ループ型反応器を用いて反応液を循環させながら、スルホン化物とアルカリ性水溶液とを添加し、同時に、反応液を抜き出す、いわゆる連続法で行う<37>~<43>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<45>
中和時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは8分以上、更に好ましくは10分以上、更に好ましくは12分以上であり、好ましくは100分以下、より好ましくは50分以下、更に好ましくは40分以下、より更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下である、<37>~<44>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<46>
連続法における平均滞留時間は、好ましくは8分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは12分以上であり、好ましくは100分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは40分以下、より更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下である、<44>又は<45>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<47>
連続法における反応液の循環倍率は、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上、更に好ましくは9倍以上であり、好ましくは30倍以下、より好ましくは20倍以下、更に好ましくは15倍以下である、<44>~<46>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<48>
前記中和工程において、界面活性剤(共存物)を使用しない、<37>~<47>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<49>
前記中和工程において界面活性剤(共存物)を使用する場合、前記界面活性剤は、混合液中に好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下で使用する、<37>~<47>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<50>
得られた中和生成物を加水分解して加水分解生成物を得る工程を含む、<37>~<49>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<51>
加水分解時の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは180℃以下である、<50>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<52>
加水分解工程の処理時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上であり、好ましくは4時間以下、より好ましくは3.5時間以下、更に好ましくは3時間以下、より更に好ましくは2時間以下、より更に好ましくは90分以下である、<50>又は<51>に記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<53>
加水分解工程によって得られる内部オレフィンスルホン酸塩水溶液の濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは48質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である、<50>~<52>のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩の製造方法。
<54>
<27>~<53>のいずれかに記載の製造方法によって得られた内部オレフィンスルホン酸塩の身体洗浄剤、シャンプー、衣料用洗浄剤、又は食器洗浄剤への使用。
<55>
<1>~<26>のいずれかに記載の製造方法によって得られた内部オレフィンをスルホン化し、更に中和して内部オレフィンスルホン酸塩を得る、内部オレフィンスルホン酸塩の低温安定化方法。
【実施例
【0060】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。また、各種測定及び評価方法は以下のとおりである。
【0061】
<固体酸触媒粒子の平均粒子径dp(球相当径)の測定方法>
無作為に50個の固体酸触媒粒子を抽出し、ノギスにより短軸径及び長軸径を測定した。短軸径の算術平均値及び長軸径の算術平均値を用いて、それらをそれぞれ底面の直径及び高さとする円筒の比表面積を算出した。そして、同等の比表面積を有する球の直径を固体酸触媒粒子の平均粒子径dp(球相当径)とした。
【0062】
<内部オレフィンの二重結合分布の測定方法>
内部オレフィンの二重結合位置は、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと省略)により測定した。具体的には、内部オレフィンに対しジメチルジスルフィドを反応させることでジチオ化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積より内部オレフィンの二重結合位置を求め、下記式により平均二重結合位置を算出した。なお、測定に使用した装置及び測定条件は、以下の通りである。
〔装置及び測定条件〕
GC装置:HP6890(HEWLETT PACKARD社製)
カラム:Ultra-Alloy-1HTキャピラリーカラム、30m×250μm×0.15μm(フロンティア・ラボ株式会社製)
検出器:水素炎イオン検出器(FID)
インジェクション温度:300℃
ディテクター温度:350℃
He流量:4.6mL/分
〔平均二重結合位置の算出式〕
【数1】
(式中、nはオレフィンの炭素数、mはオレフィン中の二重結合位置、Yは炭素数がnであるオレフィン中のm-オレフィンの百分率を表す。)
【0063】
実施例1
(1-ヘキサデセンの製造)
反応管を鉛直方向に設置した単管式固定床反応器を用い、前記反応管内に固体酸触媒粒子としてγ―アルミナを0.4mの高さまで充填した。反応管内の温度を290℃に調整し、1-ヘキサデカノール(製品名:カルコール6098、花王株式会社製)を毎時0.9L(LHSV=1/hr、WHSV=1.1/hr)、及び窒素を1-ヘキサデカノールに対し0.3モル倍となるように反応器の上部より大気圧で供給してオレフィン化反応を行った。反応管出口液を70℃に冷却して粗1-ヘキサデセンを回収した。得られた粗1-ヘキサデセンを蒸留用フラスコに移し、150~160℃/9mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の1-ヘキサデセンを得た。
(内部異性化反応)
反応管を鉛直方向に設置した単管式固定床反応器を用い、前記反応管内に固体酸触媒粒子としてγ―アルミナを0.2mの高さまで充填した。なお、D/dpは29である。反応管内の温度を220℃に調整し、製造した1-ヘキサデセンを毎時0.09L(LHSV=0.2/hr、WHSV=0.2/hr)、及び窒素を1-ヘキサデセンに対し0.3モル倍となるように反応器の上部より大気圧で供給して内部異性化反応を行った。反応管出口液を70℃に冷却して炭素数16の内部オレフィンを回収した。得られた内部オレフィンの平均二重結合位置は、4.1であった。
【0064】
(炭素数16の内部オレフィンスルホン酸塩(C16IOS)の製造方法)
製造した炭素数16の内部オレフィンを、外部にジャケットを有する薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で三酸化硫黄ガス(1.1体積%、残部空気)を用いてスルホン化反応を行った。スルホン化反応の際のSO/内部オレフィンのモル比は1.005に設定した。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.05モル倍量の水酸化カリウム(アルカリ剤)で調製したアルカリ水溶液(水酸化カリウム17質量%、残部水)と混合し、連続法(マイルダー混合器(製品名:マイルダーMDN303V、株式会社マツボー製)を使用、平均滞留時間30分、循環倍率9倍)にて30℃で中和した。中和物をオートクレーブ中で170℃にて、1時間加熱することで加水分解を行い、炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウムを55質量%含有する液を得た。
【0065】
実施例2~8、比較例1
内部異性化反応の条件を表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様の方法で炭素数16の内部オレフィンを製造した。そして、得られた炭素数16の内部オレフィンを用いて、実施例1と同様の方法で炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウム含有液を製造した。
【0066】
実施例9
(1-オクタデセンの製造)
反応管を鉛直方向に設置した単管式固定床反応器を用い、前記反応管内に固体酸触媒粒子としてγ―アルミナを0.4mの高さまで充填した。反応管内の温度を290℃に調整し、1-オクタデカノール(製品名:カルコール8098、花王株式会社製)を毎時0.9L(LHSV=1/hr、WHSV=1.1/hr)、及び窒素を1-オクタデカノールに対し0.3モル倍となるように反応器の上部より大気圧で供給してオレフィン化反応を行った。反応管出口液を70℃に冷却して粗1-オクタデセンを回収した。得られた粗1-オクタデセンを蒸留用フラスコに移し、175~180℃/9mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の1-オクタデセンを得た。
(内部異性化反応)
反応管を鉛直方向に設置した単管式固定床反応器を用い、前記反応管内に固体酸触媒粒子としてγ―アルミナを0.4mの高さまで充填した。なお、D/dpは29である。反応管内の温度を245℃に調整し、製造した1-オクタデセンを毎時0.2L(LHSV=1.9/hr、WHSV=2.0/hr)、及び窒素を1-オクタデセンに対し0.3モル倍となるように反応器の上部より大気圧で供給して内部異性化反応を行った。反応管出口液を70℃に冷却して炭素数18の内部オレフィンを回収した。得られた内部オレフィンの平均二重結合位置は、4.0であった。
【0067】
(炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩(C18IOS)の製造方法)
製造した炭素数18の内部オレフィンを、外部にジャケットを有する薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で三酸化硫黄ガス(1.1体積%、残部空気)を用いてスルホン化反応を行った。スルホン化反応の際のSO/内部オレフィンのモル比は1.005に設定した。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.05モル倍量の水酸化カリウム(アルカリ剤)で調製したアルカリ水溶液(水酸化カリウム17質量%、残部水)と混合し、連続法(マイルダー混合器(製品名:マイルダーMDN303V、株式会社マツボー製)を使用、平均滞留時間30分、循環倍率9倍)にて30℃で中和した。中和物をオートクレーブ中で170℃にて、1時間加熱することで加水分解を行い、炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウムを55質量%含有する液を得た。
【0068】
実施例10~12、比較例2及び3
内部異性化反応の条件を表2に記載の条件に変更した以外は実施例9と同様の方法で炭素数18の内部オレフィンを製造した。そして、得られた炭素数18の内部オレフィンを用いて、実施例9と同様の方法で炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム含有液を製造した。
【0069】
上記実施例で使用した固体酸触媒粒子(γ―アルミナ)の粒子径dpは1~5mm程度であり、前記固体酸触媒粒子を充填した反応管はそれぞれ単一径を有し、その内径Dは50~2000mm程度であった。
【0070】
<低温安定性の評価>
製造した各内部オレフィンスルホン酸カリウム含有液を広口規格ビンPS-13Kに100g入れ、密封したものを-5℃の恒温室に1週間放置した。1週間後の内部オレフィンスルホン酸カリウムの外観を以下の基準で判定した。
A:外観に全く変化がない。
B:析出物がごく少量みられる。
C:析出物が少量みられる。
D:ビンの底に析出物が多く堆積している。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法により得られる内部オレフィンは、石油掘削油基油、洗浄剤原料、紙サイズ剤原料、潤滑油の基油又は原料、及び化成品原料などとして有用である。また、本発明の製造方法により得られる内部オレフィンスルホン酸塩は、各種洗浄剤の基剤として有用である。