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特許7649381流体のパラメータを決定するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】流体のパラメータを決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023543114
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022050749
(87)【国際公開番号】W WO2022152847
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】21151857.6
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ケーア,トマス
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533012(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105092513(CN,A)
【文献】特表2021-518910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0193662(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0293016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 33/48 - G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の屈折率を決定する方法であって、
a)第1の既定の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長において既定の第1の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から、前記孔によって少なくとも散乱される放射線を検出することにより第1の光学信号を獲得するステップと、
b)前記孔によって少なくとも散乱される放射線を検出することにより前記検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、前記孔は、前記少なくとも第1および第2の波長において既定の第2の吸収、ならびに第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含み、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率とは異なる、ステップと、
c)前記孔によって少なくとも散乱される放射線を検出することにより前記検知要素から第3の光学信号を獲得するステップであって、前記孔は、第3の流体を含む、ステップと、
d)前記第1、第2、および第3の光学信号、前記第1および第2の既定の吸収、ならびに前記第1および第2の屈折率に基づいて、前記第3の流体の屈折率を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
流体のパラメータを決定する方法であって、
a)第1の既定の屈折率、および1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおいて既定の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から、前記孔によって少なくとも散乱される放射線を検出することにより第1の光学信号を獲得するステップと、
b)前記孔によって少なくとも散乱される放射線を検出することにより前記検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、前記孔は、第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含み、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率とは異なる、ステップと、
c)前記第1および第2の光学信号、前記第1および第2の屈折率、ならびに前記既定の吸収に基づいて、前記第2の流体の成分の濃度を決定するステップであって、前記成分は、前記1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける放射線を吸収する、ステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記第3の流体は、ある濃度の物質を含み、ステップd)は、前記第3の流体中の前記物質の濃度を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率の少なくとも1.05倍である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の流体は、ガスである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)、b)、およびc)の各々は、
-前記第1および第2の波長の各々における放射線を前記検知要素へ発射すること、ならびに
-前記検知要素から前記第1および第2の波長の各々における放射線の強度を決定すること
を含み、
ステップd)は、前記決定された強度にさらに基づいて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)およびb)は、
-少なくとも1つの波長および別の波長における放射線を前記検知要素へ発射すること、ならびに
-前記検知要素から前記少なくとも1つの波長および前記の波長における放射線の強度を決定すること
を含み、
ステップc)は、前記決定された強度にさらに基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
流体の屈折率を決定するためのシステムであって、
-複数の孔を有する検知要素と、
-1つまたは複数の波長の放射線を孔へ向けて発射するように構成される制御可能な放射線提供装置と、
-前記孔によって少なくとも散乱される発射放射線を検出し、対応する情報を出力するように構成される検出器と、
-前記孔に流体を提供するように構成される制御可能な流体提供要素と、
-制御器であって、前記放射線提供装置および前記流体提供要素を制御するように構成され、かつ、
-前記孔が、既定の第1の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長において既定の第1の吸収を有する第1の流体を含むとき、第1の光学信号を獲得するように前記検出器を制御することと、
-前記孔が、少なくとも前記第1および第2の波長において既定の第2の吸収、ならびに第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含むとき、第2の光学信号を獲得するように前記検出器を制御することであって、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率とは異なる、前記検出器を制御することと、
-前記孔が第3の流体を含むとき、第3の光学信号を獲得するように前記検出器を制御することと、
-前記第1、第2、および第3の光学信号、前記第1および第2の吸収、ならびに前記第1および第2の屈折率に基づいて、前記第3の流体の屈折率を決定することと
を行うように構成される制御器と
を備えるシステム。
【請求項9】
流体のパラメータを決定するためのシステムであって、
-複数の孔を有する検知要素と、
-1つまたは複数の波長の放射線を孔へ向けて発射するように構成される制御可能な放射線提供装置と、
-前記孔によって少なくとも散乱される発射放射線を検出し、対応する情報を出力するように構成される検出器と、
-前記孔に流体を供給するように構成される制御可能な流体提供要素と、
-制御器であって、前記放射線提供装置および前記流体提供要素を制御するように構成され、かつ、
-前記孔が、既定の第1の屈折率、ならびに1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおいて既定の第1の吸収を有する第1の流体を含むとき、第1の光学信号を獲得するように前記検出器を制御することと、
-前記孔が、第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含むとき、第2の光学信号を獲得するように前記検出器を制御することであって、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率とは異なる、前記検出器を制御することと、
-前記第1および第2の光学信号、前記既定の第1の吸収、ならびに前記第1および第2の屈折率に基づいて、前記第2の流体の成分の濃度を決定することであって、前記成分は、前記1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける放射線を吸収する、決定することと
を行うように構成される制御器と
を備えるシステム。
【請求項10】
前記制御器は、前記決定において、前記第3の流体中の物質の濃度を決定するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率の少なくとも1.05倍である、請求項8から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記流体提供要素は、複数の流体容器および各流体容器から前記孔への流路を備える、請求項8から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の流体は、ガスである、請求項8から12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御器は、
-前記第1および第2の波長の各々における放射線を前記検知要素へ発射するように前記放射線提供装置を制御することと、
-前記検出器を、
-前記第1の光学信号の少なくとも一部として、前記検知要素から前記第1および第2の波長の各々における放射線の第1の強度、ならびに
-前記第2の光学信号の少なくとも一部として、前記検知要素から前記第1および第2の波長の各々における放射線の第2の強度
を決定するように制御することと、
-前記決定された第1および第2の強度にさらに基づいて、前記屈折率を決定することと
を行うように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御器は、
-前記少なくとも1つの波長および別の波長における放射線を前記検知要素へ発射するように放射線提供装置を制御することと、
-前記検出器を、
-前記第1の光学信号の少なくとも一部として、前記検知要素から前記少なくとも1つの波長および前記の波長における放射線の第1の強度、ならびに
-前記第2の光学信号の少なくとも一部として、前記検知要素から前記少なくとも1つの波長および前記の波長における放射線の第2の強度
を決定するように制御することと、
-前記決定された強度にさらに基づいて前記成分を決定することと
を行うように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記検出される放射線が更に前記孔によって反射されたものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記検出される発射放射線が更に前記孔によって反射されたものである、請求項8または9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体のパラメータを決定するための方法およびシステム、ならびに詳細には、いくつかの孔を有する、および較正が較正流体の屈折率を使用して行われる、透過性要素内に存在する流体におけるパラメータを決定するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術は、米国特許第2006/285115号、米国特許第10830695号、国際特許第WO2019/197308号、および国際特許第WO2017/085162号において見ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様において、本発明は、流体の屈折率を決定する方法に関し、本方法は、
a)第1の既定の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長において既定の第1の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から第1の光学信号を獲得するステップと、
b)検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、孔は、少なくとも第1および第2の波長において既定の第2の吸収、ならびに第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含み、第2の既定の屈折率は、既定の第1の屈折率とは異なる、ステップと、
c)検知要素から第3の光学信号を獲得するステップであって、孔は、第3の流体を含む、ステップと、
d)第1、第2、および第3の光学信号、第1および第2の既定の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて、第3の流体の屈折率を決定するステップと
を含む。
【0004】
本発明のこの態様によると、流体の所望のパラメータは、屈折率である。以下にさらに説明されるように、孔を伴う検知要素は、孔が放射線を反射または散乱させるように作用し、この散乱または反射が流体の屈折率に依存するような決定によく適している。
【0005】
流体は、液体、ガス、懸濁液、または同様のものであり得る。流体は、検出環境もしくはシステムを較正するために使用され得、および/または試料であり得る。流体のパラメータは、決定されることが所望され得る。用語“試料”は、全血試料を指し得、この場合、“液体”は、全血の血漿分画、脊髄液、尿、胸膜、腹水、廃水、任意の種類の注射のための予め調製された流体、分光法によって検出することが可能な構成成分を有する流体、または、空気、二酸化炭素含有ガス、一酸化炭素含有ガスなどのガスなど、孔内へうまく進入し得る部分であり得る。当然ながら、孔サイズによってフィルタ除去される部分を含まない試料が、液体を形成し得る。
【0006】
用語“全血”は、血漿および細胞成分で構成される血液を指す。血漿は、体積の約50%~60%を表し、細胞成分は、体積の約40%~50%を表す。細胞成分は、赤血球(erythrocyte/red blood cell)、白血球(leucocyte/white blood cell)、および血小板(thrombocyte/platelet)である。好ましくは、用語“全血”は、人間の被検者の全血を指すが、動物の全血も指し得る。赤血球は、すべての血液細胞の合計数の約90%~99%を構成する。それらは、変形されていない状態で約2μmの厚さを有する直径約7μmの両凹の円盤として造られる。赤血球は、非常に可撓性であり、これにより、その直径を約1.5μmまで減少させて非常に狭い毛細血管を通過することを可能にする。赤血球の1つの中核成分は、ヘモグロビンであり、これが、組織への輸送のために酸素に結合し、次いで、酸素を解放し、老廃物として肺に送達されるべき二酸化炭素に結合する。ヘモグロビンは、赤血球の赤い色、したがって全体としての血液の赤い色の原因となる。白血球は、すべての血液細胞の合計数の約1%未満を構成する。それらは、約6~約20μmの直径を有する。白血球は、例えば、細菌またはウイルス侵入に対する、身体の免疫系に関与する。血小板は、約2~約4μmの長さおよび約0.9~約1.3μmの厚さを有する最も小さい血液細胞である。それらは、凝固に重要な酵素および他の物質を含有する細胞片である。特に、それらは、血管内の破損を封止するのに役立つ一時的な血小板血栓を形成する。
【0007】
用語“血漿(blood plasmaまたはplasma)”は、血液の体積の約半分(例えば、体積で約50%~60%)を構成する血液およびリンパ液の液体部分を指す。血漿は、細胞を持たない。それは、すべての凝固因子、特にフィブリノゲンを含み、体積で約90%~95%の水を含む。血漿成分は、電解質、脂質代謝物質、例えば感染または腫瘍のためのマーカ、酵素、基質、タンパク質、およびさらなる分子成分を含む。
【0008】
用語“廃水”は、洗い流し、フラッシングに関して、または製造プロセスにおいて、使用された水を指し、そのため、老廃物および/または粒子を含有し、故に、飲用および食品調理には好適ではない。
【0009】
第1の態様によると、第1の流体は、検知要素の複数の孔内に存在し、第1の流体は、第1の既定の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長において既定の第1の吸収を有する。多くの場合、3つ以上の波長が、決定において使用され、時として、流体の吸収スペクトルは、ある波長間隔内で分かっている。第1の流体は、ポンプまたは同様のものなどの供給要素によって、孔内に、または孔において、提供され得る。第1の流体は、毛細管作用または同様の自動プロセスを使用して、孔へ、または孔内へ、供給され得る。さらに代替的に、第1の流体は、孔の作成中など、孔内に自動的に提供され得る。
【0010】
通常、光学信号は、少なくとも第1および第2の波長の放射線を孔へ向けて発射し、孔によって反射および/または散乱される発射放射線を検出することによって獲得される。孔は、一端において閉じられ得、それと同時に、流体を孔へ誘導するために提供されるフローチャネル内へなど、検知要素の周囲への単一の開口部を有し得る。孔は、別々であり得るか、相互接続され得る。孔は、多かれ少なかれ平行であり得、開口部が提供される表面から離れる方へ延在し得る。
【0011】
ポンプ、弁、フローチャネル、流体容器、および同様のものが、第1および第2の流体を連続的に孔へ提供するために提供され得る。
検知要素は、半透明のスラブまたは要素、およびおそらくは、半透明のスラブの前側に適用される反射層を備え得る。半透明のスラブは、前側から、提供される場合は反射層を通って、半透明のスラブ内へ延在し得る、複数の孔、好ましくは、小さい非貫通孔を含む。放射線源および検出器は、孔の内容物を光学的にプローブするように、および流体のパラメータを決定するために使用され得る対応する信号出力を生成するように配置され得る。
【0012】
小孔の各々は、好ましくは、開口部を有し、この開口部を通じて、半透明のスラブの側面においてなど、流体空間と連通することができる。故に、孔は、存在する場合には反射層を貫通して、孔と流体空間との間の流体連通を可能にする。孔は、裏側へ向かう方向など、前側におけるそれぞれの開口部から半透明のスラブ内へ延在し得る。孔が“非貫通”であるとき、これは、孔が、半透明のスラブ内で終了し、その結果として、孔が、半透明のスラブ全体を通り抜けて裏側まで、またはスラブの内側の任意の共通の容器もしくは受容器まで継続しないことを意味する。このとき、孔は、半透明のスラブの前側における流体空間とのみ流体連通状態にあり得る。いくつかの実施形態において、非貫通孔は、十字交差であり得、故に孔の少なくともいくつかは、互いに接続され得、X形状、Y形状、V形状、または同様の相互接続された形状を形成するということに留意されたい。そのような構成は、孔が前側からのみ充填され、孔が互いに交差するとしても、孔を通過する著しい正味質量輸送が動作下で発生しないため、非貫通であると等しく見なされる。前側における孔の開口部を適切に寸法決定することにより、例えば、全血試料の血漿分画中の関連成分が孔に入ることを可能にしながら、検知要素の前側において全血試料の赤血球または流体中の細片などの流体のより大きい成分が孔に入ることを防ぐことが可能であり、関連成分は、全血試料の血漿分画内に存在する、およびセンサを使用して測定/検出されることになる物質である。特に、タンパク質、ビリルビン、および二酸化炭素は、関連成分である。
【0013】
孔は、その1つの表面から検知要素またはスラブ内へ延在し得、放射線は、その表面に対して非ゼロ角度および/または孔の平均方向に対して非垂直角度における方向から孔へ向けて発射される。同様に、または代替的に、検出器は、その表面に対して非ゼロ角度に沿って、および/または孔の平均方向に対して非垂直角度で、検出器の方へ指向される放射線を受信するように構成され得る。この様式では、反射/散乱の数は、かなり低く保たれ得、より多くの放射線が検出器に到達することを可能にする。
【0014】
動作下で、ステップa)において、半透明のスラブの前側など、孔は、流体が孔内に既に存在しない場合、第1の流体と接触され得る。第1の流体が孔内にある間、それは、光学的にプローブされ、その結果として、第1の光学信号が提供または検出される。測定後、第1の流体は、同じ開口部を通るなどして、孔から排出され得る。
【0015】
そのステップの前または後、第2の流体が、孔に供給され、光学的にプローブされる。
光学プローブは、少なくとも第1のおよび第2の波長の放射線を孔へ向けて発射することを含み得、および/または光学信号は、このことに基づき得る。放射線は、放射線の一部が検出されるように、検出器へ向かう方向を含め、異なる方向へ、孔によって反射され得る。検出された放射線は、任意の回数だけ反射され得る。検出される放射線は、複数の孔のうちの第2の孔によって、検出器の方へ反射/散乱され得る。
【0016】
放射線が、複数の孔のうちの第1の孔へ発射されること、および検出される放射線が、複数の孔のうちの第2の孔から生じることが好ましい場合がある。第1および第2の孔は、同じ孔、もしくは全く異なる孔であり得るか、または、第1の孔のうちのいくつかは、第2の孔でもあり得る。
【0017】
第1の孔の50%超、例えば75%超、例えば90%超が第2の孔でもある場合、および/または第2の孔の50%超、例えば75%超、例えば90%超が第1の孔でもある場合など、第1の孔と第2の孔との間に大きな重複が存在することが好ましい場合がある。第1の孔の50%以下が第2の孔である、および/または第2の孔の50%以下が第1の孔であるように、重複がより小さいことが好ましい場合がある。
【0018】
検出器は、このとき、検出された放射線を表す信号および/または光学信号を生成するように適合され得る。光学信号は、検出器に向けて反射/散乱されるか、または検出器によって検出される放射線など、反射/散乱放射線であり得る。光学信号は、そのような放射線に基づいた検出器の出力として見なされ得る。最後に、光学信号は、そのような出力または反射放射線の分析の結果であり得る。光学信号は、孔内の吸収および孔の散乱/反射に起因する放射線の強度変化を表し得る。
【0019】
好ましくは、放射線は、同じ孔に向けて発射され、検出は、検知要素の有用な寿命全体を通して、同じ孔から放射線を受信するように構成される。故に、第1および第2の孔は、上で述べられるように、好ましくは、本方法、または検知要素の有用な寿命の間、同じである。代替的に、または追加的に、放射線エミッタ(放射線出力要素など)、検知要素、および検出器(放射線受容要素など)の相対的な方向および位置は、少なくとも実質的に同じであることが所望され得る。この様式では、放射線は、同じ角度から同じ孔へ向けて発射され、放射線は、同じ孔から、および同じ角度から収集される。例えば、発射放射線の入射角を変更することは、放射線によって見られる光学構造体を変更することになり、その結果として、結果として生じる検出された放射線は、同じ入射波長、強度について、および孔内の同じ流体について、変化し得るということに留意されたい。
【0020】
孔の内容物は、孔の開口部が見られる表面と反対の半透明のスラブの裏側から簡便に光学的にプローブされ得る。試料がより大きい成分を含む場合、光学プローブは、孔の内側の副試料(液体)に対してのみ選択的に実施され得る。
【0021】
入射放射線は、放射線が孔を横断し、その中の流体と相互作用することを確実にするために、孔へ誘導/指向され得る。好ましくは、プローブ放射線は、光が、プローブされるべき流体を含む孔を横断することを確実にするために、孔の長手方向軸および/または孔開口部が見られる表面の平面上の表面法線に対して斜め入射で孔内へ送られ、以て、最大の光学的相互作用路程を確実にする。
【0022】
照射に応答して孔から出射する光は、孔内の流体と相互作用しており、故に、流体に関する情報を保有する。出射放射線、および/または出射放射線を表す信号は、次いで、その情報に対して、例えば、第3の流体中の分析物含有量を表す値を展開するために、分析され得る。放射線は、流体中の分析物によって引き起こされる吸収を含む強度変化、ならびに、孔における放射線の散乱/反射によってもたらされる“損失”または“利得”を表し得る。分析は、出射/検出放射線を分光学的に分析すること、ならびに/または、例えば、獲得した信号を、第1の流体などの較正/基準液について獲得した信号と比較するため、ノイズフィルタリングのため、補正を適用するため、およびアーチファクトを除去するための、信号/データ処理を含み得る。
【0023】
特に有利な実施形態において、それは、例えば、第3の流体の屈折率を決定することによって、光学的にプローブされる第3の流体である、血漿内のタンパク質の含有量である。タンパク質は、大きな放射線吸収をもたらさないが、血漿の屈折率の定義に関与する。
【0024】
孔の断面積は、孔が散乱する粒子様の要素のように作用し得るように、直径が放射線の波長の50%以内、例えば、波長の25%以内である円に相当することが所望され得る。放射線の波長は、例えば、決定に使用される極小波長、極大波長、または平均波長であり得る。故に、孔の散乱効率は、孔内の流体と孔を形成する検知要素の材料との間の屈折率の差に依存することになる。流体が空気などのガスである場合など、屈折率の差が大きいほど、散乱は高くなる。
【0025】
第1および第2の流体は、異なる既定の屈折率を有する。故に、孔によって引き起こされる散乱は異なる。これは、第3の流体の屈折率の決定のための較正として利用される。放射線エミッタと検出器との間の、放射線損失、すなわち、強度変化は、吸収および散乱/反射に起因する。故に、少なくとも2つの波長における第1および第2の流体の吸収が分かっているとき、流体の屈折率に起因して散乱/反射によって引き起こされる寄与は、決定および較正され得る。
【0026】
放射線損失は、吸収がRI変化からの利得よりも小さい場合、放射線利得でもあり得る。
1つの流体の吸収が、第1および第2の波長において分かっているとき、その流体の屈折率も分かっているとき、ならびに、別の流体の吸収が第1および第2の波長において分かっており、その流体の屈折率が分かっているとき、散乱/反射される受信放射線と吸収される放射線との間の第1の波長における関係性が決定され得る。また、同じ関係性が、第2の波長において決定され得る。これらの関係性から、散乱される放射線の量および/または吸収される放射線の量が、第3の流体について決定され得、以て、多数の化合物からの吸収および第3の流体の屈折率の両方を決定することが可能になる。これは、調査される化合物に1つ足したもの(RI決定のため)と同じだけ多くの波長(および波長の関数として化合物吸収スペクトルのデータ)を必要とし得る。
【0027】
故に、ステップa)、b)、およびc)の各々は、
-第1および第2の波長の各々における放射線を検知要素へ発射すること、ならびに
-検知要素から第1および第2の波長の各々における放射線の強度を決定すること、を含むことが好ましく、
ステップd)は、決定された強度にさらに基づいて実施される。
【0028】
一般に、波長は、波長が提供される波長間隔であり得る。多くの場合、単一波長は、所望されない、または獲得不可能であり、放射線は、このとき、フィルタリングされた後などに、所望の波長間隔内で、放射および/または受信される。
【0029】
当然ながら、第1および第2の波長よりも多くの波長が使用され得る。故に、第3の波長を含む放射線が、センサ要素へと発射され得、その波長における、またはその波長以内の放射線もまた、検出され得、その検出の結果が決定に使用される。
【0030】
実際、この較正は、さらにいっそう一般的であり得る。試料/流体または同様のものの成分の放射線吸収に基づいて濃度を決定するための通常の分光計または検知要素において、較正は、異なる波長における較正流体の吸収に基づく。波長は、求められる成分に基づいて選択される。較正流体は、各波長において吸収することが所望される。しかしながら、その一方で、較正流体の数を低減することが所望される。
【0031】
本発明は、そのような較正をより容易にする。較正から、吸収および散乱の合計の効果など、強度変化が、すべての関連波長において決定され得る。散乱からの寄与は、これらの波長において著しい吸収を有する、または有さない流体から決定され得る。吸収は、吸収成分の濃度および該成分のモル吸光係数で吸収を除算したものである感度へと変換され得る。故に、2つの波長における、散乱寄与、例えば、これによりもたらされる強度変化の決定、および波長のうちの1つにおける吸収決定から、他の波長における吸収が、散乱寄与から仮定または決定され得る。吸収寄与の間の相対的な差は、散乱寄与の間で観察されるものと同じであると仮定され得る。
【0032】
第1の流体は、本方法を較正するために使用され得、特定の較正流体であり得るが、第2または第3の流体により前側に接触する前に使用されるすすぎ流体など、他の機能も有し得、第3の流体は、いくつかの実施形態においては、分析されることになる全血試料または流体である実際の未知の流体である。実際には、第1の流体はガスであり得、第2の流体は、上記性質を有する流体であり得る。これにより、孔は、全血試料などの第2/第3の流体と親和性がある液体、および特に、血液分析器においてすすぎ、較正、および/または品質制御目的のために一般的に使用される水溶液など、流体が全血である場合は血漿相と親和性がある液体の予充填により‘プライム’され得る。例えば、全血分析器システムにおいて洗い流しのために使用される典型的なすすぎ液が、そのような液体として使用され得る。すすぎ液は、人間の血漿に対応する濃度でK+、Na+、Cl-、Ca2+、O2、pH、CO2、およびHCO3-を含む水溶液である。すすぎ、較正、および/または品質制御目的のために一般的に使用される好適な溶液の非限定的な例は、以下にさらに挙げられる。全血試料または流体が、その後、血漿親和性の液体/流体親和性の流体でプライムされる前側表面と接触されるとき、全血試料の血漿相内の成分の、または流体の、代表的な副試料(流体)が、予充填された孔内への関連成分の拡散により、非常に効率的かつ穏やかな様式で、抽出および移動される。特に、孔内の後者流体と前者流体との間の分析物の含有量における任意の濃度勾配が、拡散移動をもたらし、以て、孔内に、流体中の分析物濃度を表す分析物濃度を有する副試料(流体)を産生する。
【0033】
述べたように、第1の流体は、周囲空気などのガスであることが所望され得る。空気は、低い屈折率を有し、これは、較正において望ましい場合がある。このとき、検知要素の前側など、孔は、乾いていてもよい。加えて、孔の内面は、親水性であることが所望され得、以て、次の流体が水性であるとき、これを毛細管力により孔内へ抽出することを可能にする。
【0034】
検知要素は、すべての流体がその中に導入されたとき、検知要素が再度使用されないという意味で、使い捨てであり得る。一方の流体がガスであり、他方が液体であるときは特に、再使用が可能になる前に、孔からのすべての液体の完全な除去を必要とすることから、検知要素を再使用しないことが所望され得る。
【0035】
しかしながら、第1および第2の流体からの光学信号は、いくつかの第3の流体のために再使用され得、その結果として、検知要素が2つ以上の第3の流体のために使用され得るということに留意されたい。
【0036】
明らかに、第3の流体の別のパラメータもまた、第3の流体がある濃度の物質を含むときに決定され得、ステップd)は、第3の流体中の物質の濃度を決定することをさらに含む。この決定は、本発明の第2の態様と関連して以下にさらに説明されるものと同じ様式で行われ得る。
【0037】
さらに検知要素の1つの実施形態によると、孔の開口部の断面寸法は、約1μm以下、約800nm以下、好ましくは約500nm以下、もしくはさらには約400nm以下であり、および/または孔に沿って軸方向における孔の長さは、100μm未満、50μm未満、好ましくは30μm未満、もしくは約25μmである。
【0038】
約1μm以下、または好ましくは、サブミクロン範囲内の、例えば約800nm以下、例えば約500nm以下、または約400nm以下の、最大断面寸法を有する半透明のスラブの前側の平面に開口部を有する孔を使用することによって、第1または第2の流体が全血であるとき、赤血球、白血球、および血小板(thrombocyte/platelet)を含むいかなる細胞成分も孔に入ることが防がれる。
【0039】
さらに、約500nm以下の断面寸法を有する開口部を伴う孔は、約800nm以上の断面寸法を有する開口部を有するが、同じ合計孔体積/体積気孔率を有する孔など、より大きい孔と比較して増大された感度を有する。
【0040】
最も好ましくは、孔は、許容可能な信号対雑音比で依然としてプローブされ得る十分に大きい副試料の効率的な抽出を可能にするために、それぞれの最小孔体積を有する最小開口部を有する。有利には、孔は、約30nm以上、または50nm以上、または100nm以上、または約200nm以上の開口部を有する。
【0041】
好適な孔は、例えば、孔が一端で閉じられる改良を伴って、IT4IP社(IT4IP s.a./avenue Jean-Etienne Lenoir1/1348 Louvain-la-Neuve/Belgium)から市販されているものに類似した、いわゆるトラックエッチングされた孔を有する透明高分子膜から生産され得る。膜内の通り抜け孔は、例えば、多孔性膜の裏側にバックシートをラミネートすることによって、または、イオン衝撃トラック、および故に、これらのトラックに続くエッチングされた孔が、透明高分子膜内で停止して非貫通孔を形成するように、イオンを減速させることによって、閉じられ得る。膜は、典型的には、半透明のスラブまたは検知要素に適切な機械的強度を提供するために、固い透明の要素によって裏打ちされる。
【0042】
検知要素は、好ましくは、1つまたは複数の波長における放射線を吸収しない材料で作製され、同時に、好ましくは、例えば、材料をトラックエッチングすることによって、材料内に非貫通孔を産生することが可能である。これに好適な材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)、またはPETの類似物質(ポリエチレンテレフタレートポリエステル(PETPまたはPET-P))、またはポリカーボネート(PC)である。検知要素は、孔内への拡散を増加させるために、例えばポリエチレングリコール(PEG)の、親水性コーティングを含み得る。親水性コーティングは、検知要素の使用に従って選択され得る。いくつかの用途において、検知要素は、一旦使用されると、決して乾くことはなく、したがって、それは、始動時にのみ親水性である必要がある。検知要素の他の使途では、検知要素は、検知要素が乾き、その後、検知要素がさらなる使用のために再湿潤されるときに依然として使用可能であるように、それを永久的に親水性に保つコーティングを必要とする。
【0043】
さらに検知要素の1つの実施形態によると、孔を含む半透明のスラブの所与の体積の多孔性は、体積で50%~5%、体積で30%~10%、または体積で約15%である。
孔は、孔の開口部が分布される対応する前側表面積を伴って、検知要素内に(または検知要素の所与の領域内に)多孔性を作り出す。多孔性は、孔によって検知要素内に作り出される空所の体積、すなわち、孔体積に関して特徴付けられ得、孔体積は、孔によって貫通される検知要素の体積と称される。この体積は、ここでは、孔が分布される前側領域と、検知要素の前側に垂直の軸方向において見られるような検知要素への孔の貫通の最大深さだけ検知要素内へシフトされる同一の平行領域との間の体積と定義される。
【0044】
それに加えて、多孔性は、光学プローブが利用可能である流体体積に等しい、統合した孔体積に関してさらに特徴付けられ得る。孔体積は、簡便には、孔開口部が分布される対応する前側について言及される孔体積である、等価の孔体積深さDELTAとして表現され得る。したがって、検知要素の多孔性は、以下のように等価の孔体積深さDELTAへと変換され得る。所与の前側面積A内に開口部を有する孔は、総孔体積Vを有する。等価の孔体積深さは、このとき、総孔体積を所与の前側面積で割ったものとして計算される:DELTA=V/A。
【0045】
有利には、いくつかの実施形態によると、等価の孔体積深さDELTAは、20μm未満、または15μm未満、または10μm未満、または3μm~5μmの範囲内であり、等価の孔体積深さDELTAは、孔の総体積Vを、孔の開口部が分布される前側面積Aで割ったものと定義される。
【0046】
流体が全血であり、漿液のみが目的である状況において、関連成分の代表濃度を伴う小さい副試料が獲得される。小さい副試料体積は、高速副試料交換を促進し、以て、検知要素の応答時間、および検知要素を使用した測定のサイクル時間を低減するために、望ましい。小さい副試料体積は、検知要素の前側に近い全血試料内の血漿分画の境界層の逓減の効果を回避するために、さらに望ましい。そのような逓減効果はさもなければ、小さい静置試料において発生し得、このような試料においては、例えば、等価の孔体積深さが臨界値を超える場合、赤血球が、検知要素の前側において境界層の方への全血試料の体積からの関連成分の効率的な拡散交換を妨害し得る。
【0047】
好ましくは、等価の孔体積深さDELTAは、少なくとも1μm、代替的に少なくとも2μm、または3μm~5μmの範囲内であり、等価の孔体積深さは、上記のように定義される。より大きい流体体積は、より大きい流体体積が第2の流体内の関連成分に関する光学的にプローブされた情報に寄与することから、より良好な信号対雑音レベルを達成するために望ましい場合がある。
【0048】
さらに、いくつかの実施形態によると、一方では、応答時間を減少させること、サイクル時間を減少させること、および/または小さい静置量の流体において逓減効果を回避すること、ならびに他方では、必要とされるまたは所望される信号対雑音比、との間の有用な折衷案が、1μm~20μmの範囲内、好ましくは2μm~10μmの範囲内、または約4μm~5μmの等価の孔体積深さDELTAについて見出される。
【0049】
上で述べたように、本方法は、第3の流体の屈折率を決定することではなく、その成分の濃度を、この成分のステップc)において決定される吸収などから決定するために使用され得る。このとき、ステップd)が代わりに、第3の流体の屈折率による寄与を考慮しながら濃度を決定し得る。
【0050】
本発明の態様は、故に、流体の濃度を決定する方法に関し、本方法は、
a)第1の既定の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長において既定の第1の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から第1の光学信号を獲得するステップと、
b)検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、孔は、少なくとも第1および第2の波長において既定の第2の吸収、ならびに第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含み、第2の屈折率は、第1の屈折率とは異なる、ステップと、
c)検知要素から第3の光学信号を獲得するステップであって、孔は、第3の流体を含む、ステップと、
d)第1、第2、および第3の光学信号、第1および第2の既定の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて、第3の流体の成分の濃度を決定するステップと
を含む。
【0051】
該決定は、第3の流体の屈折率を決定することを含み得る。代替的に、屈折率寄与は補償され得る。該成分は、第1および第2の波長のうちの1つにおける放射線を吸収し得、ステップc)は、第1および/または第2の波長における吸収を決定することを含み得、この吸収は、ステップd)において利用され得る。
【0052】
上および下に述べられるように、ステップa)およびb)は、第1および第2の波長を含む放射線をセンサ要素へ発射すること、ならびに、センサ要素から受信される、第1および第2の波長における、またはその周辺の放射線の強度を決定することを含み得、決定された強度は、ステップc)において使用される。
【0053】
当然ながら、本発明のすべての他の態様のすべての考慮事項、実施形態、および同様のものは、この態様に関連して等しく関連性があり得る。
本発明の別の態様は、流体のパラメータを決定する方法に関し、本方法は、
a)第1の既定の屈折率、および1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおいて既定の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から第1の光学信号を獲得するステップと、
b)検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、孔は、第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含み、第2の屈折率は、第1の屈折率とは異なる、ステップと、
c)第1および第2の光学信号、第1および第2の屈折率、ならびに既定の吸収に基づいて、第2の流体の成分の濃度を決定するステップであって、該成分は、1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける放射線を吸収する、ステップと
を含む。
【0054】
この文脈において、パラメータは、流体の成分の濃度、または屈折率など、流体の任意のパラメータ、例えば、1つの波長とは異なる波長における該成分の吸収に基づくなど、放射線を使用して決定され得るパラメータであり得る。通常のパラメータは、分子、薬物、構成物質、または同様のものなど、液体の成分の濃度である。濃度は、周知のように、1つまたは複数の特定の波長における放射線の吸収に基づいて決定され得る。
【0055】
その一方で、流体の屈折率もまた、放射線が検出環境内を進行する様式に影響を及ぼし得、故に、補償され得る。
特に有利な実施形態において、第2の流体である血漿の色付けは、光学的にプローブされるヘモグロビンによる、例えば、分光的に分解された吸収測定を使用することによる、または、第2の流体中のビリルビンの存在を示すスペクトル範囲内、例えば波長380nm~750nmのスペクトル範囲内、例えば波長400nm~540nmのスペクトル範囲内、または約416nmおよび/もしくは約455nmおよび/もしくは約525nmの既定の帯域幅にわたって分光的に統合した吸収を測定することによるものである。
【0056】
第1および第2の流体は、異なる既定の屈折率を有する。故に、孔によって引き起こされる散乱は異なることになる。これは、第2の流体の成分の濃度の決定に考慮されることが所望されるが、それは、この濃度が、多くの場合、異なる波長内の放射線の強度に基づいて決定されるためである。このとき、より大きい散乱は、実際の光学環境に応じて、多かれ少なかれ放射線が、同じ試料または流体に対して検出されることを結果としてもたらす。
【0057】
散乱および反射は、理にかなった範囲内で、少なくとも波長感度が場合によっては決定に考慮される必要がない程度に、波長に依存しないということにここでも留意されたい。使用される波長があまりに異なる場合、または所望される精度があまりに高い場合、異なる屈折率における散乱/反射の波長依存が決定され、個々の波長について考慮され得る。
【0058】
第1および第2の流体の光学プローブから放射線が検出されるなど、第1および第2の光学信号が決定されると、第2の流体の成分の濃度が、検出された放射線、ならびに第1および第2の流体の屈折率に基づいて決定され得る。
【0059】
ステップa)およびb)は、
-少なくとも1つの波長および別の波長における放射線を検知要素へ発射すること、ならびに
-検知要素から少なくとも1つの波長および他の波長における放射線の強度を決定すること
を含むことが好ましく、
ステップc)は、決定された強度にさらに基づく。
【0060】
通常、2つの波長における吸収は、成分の濃度を決定するために所望される。いくつかの成分では、多くの場合、個々の成分の濃度を結果としてもたらすマトリックスを解くことができるようにするためには、決定されるべき成分と少なくとも同じだけ多くの波長、および多くの場合はそれよりも多くを有することが所望される。
【0061】
波長は、いくつかの成分が、一部の波長において他の波長よりも多く吸収するように選択され得るが、これは、当業者にとっては標準的である。
第1の流体、検知要素、および孔、ならびに流体提供、放射線発射、および放射線検出は、本発明の第1の態様に関連して説明されるもののようであってもよい。小さい非貫通孔は、非常に効率的かつ高速の流体取り込みを可能にし、また、流体がより大きい分子または部分を含む場合は、毛細管力および/または拡散により、光学プローブのための副試料の即座の抽出を可能にする。
【0062】
本発明の第1の態様のすべての実施形態、状況、例、および同様のものは、本発明の第2の態様に等しく関連性がある。
本発明のこの態様において、第1および第2の流体の屈折率は、予め決定されており、また異なる。第1および第2の流体は、それらの屈折率、1つまたは複数の波長における任意の吸収、それらのタイプ(液体、ガス、懸濁液)、それらが均質であるか、または孔内で所望されない大きい成分を含むかどうか、および同様のものなどいくつかのパラメータに基づいて選択され得る。
【0063】
また、波長は、検知要素の波長の任意の吸収および流体に基づいて選択され得る。また、上に説明されるように、波長は、孔サイズに適合され得るか、その逆も然りである。
第1の態様に関連しても述べられるように、同じ孔が放射線エミッタから放射線を受信し、放射線を検出器へ向けて散乱/反射させ得ること、およびどの流体が孔内にあるかに関わりなく、発射放射線および検出放射線の角度が同じであることが好ましい。
【0064】
一般に、第1および第2の屈折率は十分に異なることが所望され得る。故に、第2の屈折率は、第1の屈折率の少なくとも1.05倍、例えば少なくとも1.1倍、例えば少なくとも1.15倍、例えば少なくとも1.2倍、例えば少なくとも1.25倍、例えば少なくとも1.3倍であることが所望され得る。
【0065】
上で述べたように、第1の流体は、ガスであることが所望され得る。そのような様式においては、大きい屈折率の差が、第1の流体と第2の流体との間で獲得され得る。このガスは、周囲空気、または波長のうちの少なくとも1つにおいて非ゼロ吸収を有するガスであり得る。このような様式においては、センサユニットを起動(湿潤)することなくシステムの屈折率感度ならびに吸収感度の両方を決定することが可能である。周囲空気中の水蒸気が、いくつかの放射線波長において望ましくない吸収を引き起こし得るため、周囲空気の任意の湿度を決定または制御することも所望され得る。
【0066】
驚くべきことに、全血および血漿試料ならびに多くの他の試料について、空気と水/試料/流体との間の大きいRI差は、既知のRIを試料/流体を割り当てることを、たとえ、通常は1.33~1.35である(血液中の通常のタンパク質濃度変動に相当する)試料/流体のRIがそれよりも正確に分かっていないとしても、可能にする。これは、水(RI=1)とのRI差が試料/流体(RI=1.33-1.35)のものよりはるかに大きいことに起因する。このとき、試料のRIが水と試料/流体からの差の33分の1以内であることが分かっているため、より正確な較正が獲得され得る。
【0067】
本発明の第3の態様は、流体の屈折率を決定するためのシステムに関し、本システムは、
-複数の孔を有する検知要素と、
-1つまたは複数の波長の放射線を孔へ向けて発射するように構成される制御可能な放射線提供装置と、
-孔によって反射/散乱される発射放射線を検出し、対応する情報を出力するように構成される検出器と、
-孔に流体を提供するように構成される制御可能な流体提供要素と、
-制御器であって、放射線提供装置および流体提供要素を制御するように、また
-孔が、既定の第1の屈折率、ならびに少なくとも第1および第2の波長における既定の第1の吸収を有する第1の流体を含むとき、第1の光学信号を獲得するように検出器を制御することと、
-孔が、少なくとも第1および第2の波長における既定の第2の吸収、ならびに第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含むとき、第2の光学信号を獲得するように検出器を制御することであって、第2の屈折率は、第1の屈折率とは異なる、検出器を制御することと、
-孔が第3の流体を含むとき、第3の光学信号を獲得するように検出器を制御することと、
-第1、第2、および第3の光学信号、第1および第2の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて、第3の流体の屈折率を決定することと
を行うように、構成される、制御器と
を備える。
【0068】
第3の態様は、本発明の第1の態様に関し、また、流体、波長、屈折率、孔、検知要素、および同様のものに関するすべての考慮事項が、本文脈において等しく関連性がある。
放射線提供装置は、制御可能である。この文脈において、これは、望ましいように放出される波長または波長間隔を選択するためであり得る。代替的に、1つの波長、波長のうちのいくつか、またはすべての波長内で放出される強度が制御され得る。さらに代替的に、どの孔、検知要素内の孔の位置、放射線を受信する孔の面積もしくは体積、入射の角度、または同様のものなど、孔上への放射線の発射が制御され得る。
【0069】
放射線提供装置は、レーザ、レーザダイオード、LED、OLED、または同様のものなどの1つまたは複数の放射線エミッタ、および放射線を第1の孔へ輸送するための1つまたは複数の光学要素を備え得る。光学要素は、フィルタ、コリメータ、レンズ、光ガイド、または同様のものを備え得る。多くの場合、これらの光学要素は、どの孔が第1の孔であるかを規定することになる。
【0070】
検出器は、光ダイオードなどの1つまたは複数の検出要素、および放射線を第2の孔から検出要素へ輸送するための光学素子を備え得る。これらの光学素子は、レンズ、コリメータ、フィルタ、放射線ガイド、または同様のものを備え得る。多くの場合、これらの光学素子は、どの孔が第2の孔であるかを規定することになる。フィルタは、受信した放射線を、後に個々に検出され得る異なる波長または波長間隔へと分割するために使用され得る。代替的に、検出器は、受信した放射線のスペクトルを決定するように構成され得る。
【0071】
好ましくは、放射線提供装置および検出器は、検知中、および異なる流体の光学プローブ間で、検知要素に対して固定した関係を維持する。このような様式では、検知要素は、経時的に同じ孔から放射線を受信するように構成され得る。
【0072】
検出器は、受信した放射線に対応する情報を出力するように構成される。この対応する放射線は、受信される合計強度、1つまたは複数の波長または同様のものなど異なる波長において決定される強度に相当し得る。これは、例えば、受信される放射線の個々の値またはスペクトルの形態にあり得る。
【0073】
流体提供要素は、所望の流体を孔に提供するように制御可能である。上で述べたように、いくつかの流体は、例えば、検知要素の製造から、既に孔内に提供されている場合がある。流体提供要素は、個々の流体のための個々の容器を備え得る。代替的に、共通容器が提供され得、この場合、オペレータは、所望の流体を流体提供要素へ連続的に供給し、次いで流体提供要素が、選択された流体を孔へ供給し得る。流体供給要素はまた、同じステップまたは先のステップにおいて、前者流体を孔から除去し得る。
【0074】
制御器は、プロセッサ、FPGA、DSP、ソフトウェア制御、ハードワイヤード、またはそれらの任意の組み合わせなど、任意のタイプの制御器であり得る。プロセッサは、検知要素から遠隔にあり得るか、またはシステムの不可欠な部分であり得る。プロセッサは、異なるタスクを実施する異なる部分へと分割され得る。プロセッサは、任意の様式で、例えばワイヤを介して、またはワイヤレスで、放射線エミッタ、検出器、および流体供給要素と通信し得る。
【0075】
制御器は、このとき、上記方法および/または本発明の第1の態様の方法を実施するようにシステムを制御し得る。
本発明の第1の態様に関連して説明されるように、第3の流体の屈折率は、第1、第2、および第3の情報、第1および第2の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて決定され得る。
【0076】
上に示されるように、制御器は、決定において、第3の流体中の物質の濃度を決定するように構成されることが所望され得る。この文脈において、制御器は、ある濃度の物質を含む第3の流体を供給するように流体提供要素を制御するように構成され得る。次いで、制御器は、決定において、第3の流体中の物質の濃度を決定するように構成され得る。
【0077】
制御器は、好ましくは、
-第1および第2の波長の各々における放射線を検知要素へ発射するように放射線提供装置を制御することと、
-検出器を、
-第1の光学信号の少なくとも一部として、検知要素から第1および第2の波長の各々における放射線の第1の強度、ならびに
-第2の光学信号の少なくとも一部として、検知要素から第1および第2の波長の各々における放射線の第2の強度
を決定するように制御することと、
-決定された第1および第2の強度にさらに基づいて、屈折率を決定することと
を行うように構成される。
【0078】
本発明の第4の態様は、流体のパラメータを決定するためのシステムに関し、本システムは、
-複数の孔を有する検知要素と、
-1つまたは複数の波長の放射線を孔へ向けて発射するように構成される制御可能な放射線提供装置と、
-孔によって反射される発射放射線を検出し、対応する情報を出力するように構成される検出器と、
-孔に流体を供給するように構成される制御可能な流体提供要素と、
-制御器であって、放射線提供装置および流体提供要素を制御するように、また
-孔が、既定の第1の屈折率、ならびに1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける既定の第1の吸収を有する第1の流体を含むとき、第1の光学信号を獲得するように検出器を制御することと、
-孔が、第2の既定の屈折率を有する第2の流体を含むとき、第2の光学信号を獲得するように検出器を制御することであって、第2の屈折率は、第1の屈折率とは異なる、検出器を制御することと、
-第1および第2の光学信号、既定の第1の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて、第2の流体の成分の濃度を決定することであって、該成分は、1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける放射線を吸収する、決定することと
を行うように構成される、制御器と
を備える。
【0079】
この態様は、本発明の第2の態様に相当し、この点でなされるすべての考慮は、この態様について等しく関連性がある。
当然ながら、制御器、流体、流体提供要素、放射線提供装置、検出器、検知要素、および同様のものに関連する本発明の第3の態様に関してなされるすべての考慮は、この文脈において等しく関連性がある。
【0080】
制御器は、好ましくは、
-少なくとも1つの波長および別の波長における放射線を検知要素へ発射するように放射線提供装置を制御することと、
-検出器を、
-第1の光学信号の少なくとも一部として、検知要素から少なくとも1つの波長および他の波長における放射線の第1の強度、ならびに
-第2の光学信号の少なくとも一部として、検知要素から少なくとも1つの波長および他の波長における放射線の第2の強度
を決定するように制御することと、
-決定された強度にさらに基づいて成分を決定することと
を行うように構成される。
【0081】
第1、第2、および第3の流体が孔内にあったときに受信した放射線に関連した情報を受信すると、濃度は、第1および第2の情報、第1および第2の吸収、ならびに第1および第2の屈折率に基づいて決定され得、該濃度は、第2の流体の成分の濃度であり、該成分は、1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおける放射線を吸収する。これは、上にさらに説明される。
【0082】
第1の屈折率は、第2の屈折率の少なくとも1.05倍であることが所望され得る。
流体提供要素は、複数の流体容器および各流体容器から孔への流路を備えることが所望され得る。このような様式において、流体提供要素は、流体のうちの少なくともいくつかの流れを制御し得る。
【0083】
本システムはまた、検知要素が、屈折率または成分の濃度の決定の後、廃棄され得、新規の検知要素がその後の決定のために使用されるように、複数の検知要素を備え得る。
検知要素は、第1の流体として、孔内に周囲空気などのガスを有することが所望され得る。
【0084】
上で述べられるように、放射線エミッタは、少なくとも10%以内が同じ孔へ向けて放射線を発射することが好ましく、検出器は、その孔から放射線を受信するように構成される。
【0085】
最終の態様は、流体のパラメータを決定する方法に関し、本方法は、
a)第1の既定の屈折率、および1つまたは複数の波長のうちの少なくとも1つにおいて第1の既定の吸収を有する第1の流体を含む複数の孔を有する検知要素から第1の光学信号を獲得するステップと、
b)検知要素から第2の光学信号を獲得するステップであって、孔は、1つまたは複数の波長インデックスのうちの少なくとも1つにおいて第2の既定の吸収を有する第2の流体を含む、ステップと、
c)第1および第2の光学信号、第1および第2の吸収、ならびに既定の屈折率に基づいて、第2の流体の屈折率を決定するステップと
を含む。
【0086】
明らかに、本発明のすべての他の態様に関連するすべての実施形態、状況、および考慮事項は、本発明のこの態様に関連して等しく有効である。
この態様において、放射線吸収および孔内の流体の屈折率によって引き起こされる散乱の知識は、未知の流体の屈折率を決定するために使用され得る。上に述べられるように、屈折率は、少なくとも決定に使用される波長において放射線を吸収しない可能性がある成分を表すものであり得、その結果として、屈折率は、この成分に関する知識に到達するために使用され得る。
【0087】
以下において、好ましい実施形態が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明の実施形態によるシステムを例証する図である。
図2】4つの波長における既定の屈折率を有する流体および既知の吸収を有する流体を用いた較正を例証する図である。
図3】通常の光学吸収ベースの較正流体を用いて較正されるときの5つの分析器の性能を例証する図である。
図4】既定の屈折率を有する流体を用いて較正されるときの5つの分析器の性能を例証する図である。
図5】既定の屈折率を有する流体および通常の光学吸収ベースの較正流体の両方を用いて較正されるときの5つの分析器の性能を例証する図である。
図6】通常の光学吸収ベースの較正流体を用いて較正されるときの5つの分析器の推定総タンパク質を例証する図である。
図7】既定の屈折率を有する流体を用いて較正されるときの5つの分析器の推定総タンパク質を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1では、複数の非貫通孔122を含む、半透明のスラブであり得る検知要素12を備える測定環境10が見られ、流体は、フローチャネルまたは流れFから非貫通孔122内へ進行し得る。
【0090】
孔は、エッチングなど、任意の様式で提供され得る。エッチング溶液または流体内に材料を提供するとき、その材料はエッチングされ、孔がこれらの場所に形成される一方で、表面は維持され、実質的なエッチングが他の場所では見られないように、要素12の表面がいくつかの場所で変更される方法が存在する。いくつかの方法では、孔の位置は、表面の作用が荷電粒子またはイオンを使用して提供されるときなど、確率的である。リソグラフィを使用することなど、他の方法では、表面は、パターンで提供される場所において作用され得、以て、孔は、パターンで位置付けられ得る。
【0091】
孔の深さおよび幅は、エッチングパラメータによって制御され得る。
1つの実施形態において、半透明のスラブまたは要素12は、半透明、好ましくは透明の高分子材料で作製され、本質的に円形の断面を有するトラックエッチングされた非貫通孔122を有する。孔は、体積で15%の多孔性で分布される直径400nmおよび深さ25μmを有する開口部126を有する。合わせて、所与の前側124表面積Aにわたって分布される孔は、総体積Vを有し、1~100μm、例えば1~50μm、例えば1~25μm、例えば1~10μm、例えば2~6μm、例えば約4μmであり得る、等価の孔体積深さDELTA=V/Aを有する。
【0092】
1つの実施形態において、前側124には、鏡面がさらに提供される。例えば、この表面は、半透明のスラブ12の前側124に30nmの厚さを有する反射層(例証されない)が獲得されるまで、半透明の高分子スラブ12の前側の上への、前側124上の面法線に対して25度の入射角での蒸発の方向を用いたPdの指向性スパッタ蒸発によって獲得され得る。次いで、孔が、説明されるように形成され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、孔は、十字交差であり得、故に孔の少なくともいくつかは、互いに接続され得、X形状、Y形状、V形状、または同様の相互接続された形状を形成する。他の実施形態において、孔、または孔の大半は、1つの表面から互いに対して多かれ少なかれ平行に、および要素12の材料内へ、延在する。
【0094】
放射線エミッタ14は、放射線を孔122へ向けておよびこれを通じて発射するために提供され、放射線は、孔122内の流体と相互作用する。この放射線は、孔と流体との間の界面における流体とも相互作用する。故に、流体の屈折率は、放射線と流体との相互作用に関与する。
【0095】
1つまたは複数の放射線受信器または検出器16は、孔内の流体と相互作用した発射放射線を受信するために提供される。
好ましくは、要素12内へ発射される放射線は、上面または下面124/125に垂直または孔の共通方向に対して非ゼロ角度にある。加えて、または代替的に、検出器によって検出される放射線は、上面または下面に垂直または孔の共通方向に対してある角度にある方向から受信され得る。
【0096】
エミッタから放射線を受信する孔、および放射線を検出器の方へ最終的に反射または指向させる孔は、同じであるか、重複を有するか、または孔の異なる群を形成し得る。放射線は、検出される前に複数の孔に反射することが所望され得る。これは、エミッタからの放射線を発射される孔が、検出器の視野内にないことを確実にすることによって、実現され得る。
【0097】
孔122は、要素12の第1の側124において周囲に対して開口する。放射線は、反対側125において要素12内へ発射され得る。また、検出器16は、表面125において要素12を出る放射線を受信するように位置付けられ得、その結果として、例えば、流体は、第1の側124から孔内へ導入され得る。この表面は、流体の流路の一部を形成し得、これにより、流体が孔内へ提供され得、流体は、別の流体により置き換えられるときなど、再び孔から除去され得る。
【0098】
通常通り、流体が放射線の一部を吸収する場合、検出器16によって受信される放射線は、減少され得る。放射線の減衰または吸収から、孔内の吸収要素の濃度が決定され得る。
【0099】
しかしながら、流体の他のパラメータが決定され得る。孔122を形成する検知要素の材料と流体との間の屈折率の差は、孔をレンズ様の構造体へと変換することになることに留意されたい。次いで、これらのレンズ様の構造体のパラメータは、流体の屈折率の変化と共に変化することになる。
【0100】
したがって、レンズ様の構造体を通じて発射される放射線のビームは、異なる流体の異なる屈折率によって引き起こされるレンズ様の構造体の異なる屈折率では、異なる集束、散乱、反射、および分散を経ることになる。
【0101】
検出器によって受信される放射線は、故に、流体の屈折率および任意の吸収の両方に依存し得る。
孔は、検知要素12内に提供される。故に、検知要素12の部分は、隣り合う孔の間に提供される。開口部126において、検知要素は、破線により例証される、平らな、しかしながら多孔性の、表面124を形成し得る。孔の間のこれらの平らな外側部分は、検知要素12からそこに衝突する放射線を反射するように作用し得、その結果として、この放射線(またはその一部)は、検知要素12内へ反射して戻る。上に説明されるように、この表面にはさらに、そのような反射を増加させるために反射面が提供され得る。しかしながら、検出器16は、エミッタ14から直接的に、放射線のそのような直接反射から任意の放射線を受信するように位置付けられないことが好ましい場合がある。
【0102】
加えて、または代替的に、検知要素12の第1の領域または体積は、光源14から直接的に放射線を受信し得る。検知要素12の第1の領域または体積は、要素12上へ、および要素12内へ放射線を発射または指向する光学素子の視野内に存在する領域または体積であり得る。同様に、検知要素12の第2の領域または体積は、検出器16が放射線を直接的に受信する領域または体積であり得る。第2の領域または体積は、放射線を要素検出器16へ向けて収集または指向する光学素子の視野内に存在する検知要素12の領域または体積であり得る。
【0103】
放射線の光線は、干渉することなく交錯し得るため、該領域または体積は、1つの体積に向けて供給される放射線が、検出器へ向けて指向される別の領域からの放射線を通過し得るように位置付けられ得る。
【0104】
第1および第2の領域または体積が異なる、例えば、重複をほとんどあるいは全く有さないことが所望され得る。第1の領域/体積内の孔12のすべての表面の25%以下、例えば10%以下、例えば5%以下、例えば1%以下が、第2の領域/体積内にも存在することが所望され得る。代替的に、第1および第2の領域/体積は、一方が他方に完全に含まれるなど、大きい重複を有し得る。
【0105】
較正は、これより、新規の様式でなされ得る。
1つの様式では、本構造体は、未知の流体の屈折率を決定するために使用され得る。別の様式では、本構造体は、屈折率が分かっている流体の、吸収決定、および故に、吸収成分の濃度の決定を較正するために、屈折率を使用し得る。
【0106】
一般に、第1の屈折率を有する第1の流体または基準流体が、孔内に供給される。流体は、ガスまたは液体であり得る。周囲空気が使用されることが好ましい場合がある。周囲空気は、液体の屈折率とはかけ離れた屈折率を有し、このことは有利であり得る。
【0107】
第1の流体/基準流体が孔内にあるとき、例えば第1の波長における、または第1の波長間隔内の、放射線強度の第1の検出が行われる。基準流体が第1の波長においてほとんどあるいは全く吸収を有さない場合、検出される寄与は、流体の屈折率、および孔内の流体によって規定されるレンズ様の構造体に対するその効果に唯一または主に起因する。基準流体がその波長で吸収する場合、その寄与は考慮され得る。
【0108】
当然ながら、複数の波長における、または複数の波長間隔内の放射線が、要素12内へ発射され得る。基準流体の屈折率の効果は、たとえそれがわずかに変化するとしても、すべての波長について同じであると仮定され得、その結果として、異なる波長/間隔における吸収の効果は、吸収および屈折率からの寄与を決定および分離するために使用され得る。
【0109】
次いで、または第1の流体/基準流体を孔へ供給する前に、第2の流体が孔内へ導入され、放射線が再び孔へ発射され、放射線が検出される。
第2の流体の屈折率が、予め決定されている、または分かっている場合、第1および第2の流体は、ここで、孔に供給される第3の流体の屈折率の決定のための較正セットを形成し得る。
【0110】
明らかに、流体はまた、波長のうちの1つまたは複数における吸収を示し得るが、十分な決定が行われる限り(十分な数の波長においてなど)、そのような寄与は、較正において補償され得る。
【0111】
その一方で、第2の流体の屈折率が分かっている場合、および1つまたは複数の波長における第1の流体の吸収が分かっている場合、第2の流体でさえ、未知の濃度の吸収要素を有する流体であり得る。この状況では、成分の吸収および第2の流体の屈折率の両方の決定を可能にするのに十分な数の波長が使用されるときには、第1の流体を使用した較正がここでも十分であり得る。吸収に起因する放射線の損失が決定され得る波長が使用される場合、流体の屈折率の効果が決定され得る。この効果は、受信放射線強度における増加または減少であり得、この効果は、少なくとも幅広い範囲内のすべての波長について同じであると仮定され得る。異なる屈折率の2つの材料の間の界面における屈折は、波長依存であるが、数百nmの波長範囲内の任意のかなりの度合いには及ばない。
【0112】
複数の成分の濃度は、該成分が波長内で異なって吸収するように選択される十分な数の波長が使用されるときに決定され得る。
【実施例
【0113】
上に説明されるような検知要素において、異なる基準流体を、血漿パラメータを決定するために使用される4つの異なる波長WL1、WL2、WL3、およびWL4での測定のセットについて試験した。各試料タイプの3つの複製を用いて、同じ10個の分析器に対して実施され、また異なる度合いの溶血を有する4つの流体を流す、2つの較正を比較する。
【0114】
第1の較正流体(図2内でOで印される)は、標準色付き較正流体である。通常の較正流体の屈折率は、血漿の屈折率に近い(1.33)。
第2の較正流体(図2内で+で印される)は、これらの波長において非常に小さい吸収しか有さないが、1.41であるその屈折率に起因して散乱/反射をもたらす1500mMグルコース溶液である。
【0115】
図2では、信号は、それが安定状態値に到達するまで増加することが分かる。これは、拡散が本分析器において使用されるため、流体が孔に入るのにほとんど時間がかからないことに起因する。
【0116】
放射線強度変化は、純粋な吸収の単位法線mAbsで決定される。
非常に低い強度変化から、通常の較正流体の散乱および吸収の合計が、波長のうちの2つ(WL3およびWL4)において非常に低いことが分かる。これは、較正流体がこの放射線のいずれも吸収または散乱しないことに起因する。故に、波長WL3およびWL4の較正は、歴史的に、WL1および/またはWL2における測定に基づいて実施され得る。WL3およびWL4の感度は、例えば、WL2のものであると仮定され得る。
【0117】
対照的に、第2の較正流体は、4つすべての波長において高い強度変化を有する。ここでは、寄与は、孔と流体との間の界面における放射線の相互作用の変化によって、および故に、流体と基準流体(この場合、第4の流体)との間の屈折率の差によって、主に引き起こされる。
【0118】
この状況では、孔の長手方向軸に垂直の孔の断面は、放射線と孔との間の相互作用が散乱を含むように、放射線の波長に匹敵することは特筆に値する。放射線は、故に、要素12の外へ指向されるまで孔から孔へ散乱されることになる。孔において相互作用するとき、放射線はまた、流体を経て、故に、流体が放射線を吸収する場合は、吸収を経ることになる。WL2における同じ流体強度変化と比較して、WL1における第2の流体のより低い強度変化は、WL2と比較してWL1におけるより低い屈折率変化感度によって引き起こされる。同じ比が、光学的に吸収する較正流体(Cal2)を利用するときに観察され、これは、図2では直接的に明白ではないが、それは、WL2と比較してWL1におけるタルトラジンのおよそ1.25倍より高い消散係数によって引き起こされる。故に、驚くべきことに、WL間の吸収感度比は、同じWL間の散乱感度比に変換され得、その逆も然りである。
【0119】
通常の較正流体の吸収に加えて、放射線はまた、孔による散乱に起因して失われることになる。この効果は、流体の屈折率に依存する。
故に、第1の較正流体を用いて、第2の較正流体を用いて、および両方の流体を用いて5つの分析器を較正することの間で比較が行われ得る。
【0120】
図3は、4つの流体RPP0、RPP165、RPP330、およびRPP1000)が各分析器において3回測定された後、標準較正流体を使用した5つの分析器(各々が右側の符号の1つによって例証される)の較正を例証し、各流体の下で印の各々を結果としてもたらす。
【0121】
RPPは、溶血が赤血球からすべての色を放出した血液試料に基づくいわゆる“基準血漿プール(Reference Plasma Pool)”である。故に、RPP1000試料は、血漿中に溶解した1000mg/dlの遊離ヘモグロビン(ccfHbとも呼ばれる)を有する。流体が血液に基づくため、タンパク質濃度およびそのRIは、すべてのRPP流体について同じである。
【0122】
RPP0測定は、ゼロであるべきときにゼロにないことが分かる。これは、流体の屈折率によって引き起こされる散乱によって引き起こされる。また、mg/dL ccfHbにおけるRPP1000での性能がより低いことが分かる。
【0123】
図4では、同じ流体が第2の較正流体を使用して分析されている。RPP0測定は、ここでは、期待通りにゼロ値で提供されることが分かる。
較正が、RPP165およびRPP330流体において好適に機能することも分かり、それは、RI較正がcfHbからの色信号を較正するのに理想的ではないことからRPP1000流体においては改善されない。
【0124】
図5では、5つの分析器が、第1および第2の較正流体の両方を使用して較正されており、2つの較正のうちの最良のものが獲得されることが分かる。RPP0、RPP165、およびRPP330流体に対するより最良の性能は、第2の較正流体から見られ、RPP1000流体におけるより良好な性能は、第1の較正流体から見られる。
【0125】
放射線吸収を使用して成分の濃度を決定する測定の代わりに、成分の濃度は、流体の屈折率から推定され得る。例えば、血漿中のタンパク質は、WL1-WL4のいずれかにおいて任意のかなりの度合いに及ぶまでは吸収しないが、血漿中のタンパク質の濃度は、その屈折率を規定することになる。
【0126】
図6では、第1の較正流体を用いて較正される5つの分析器が、流体RPP0、RPP165、RPP330、およびRPP1000の各々における総タンパク質を推定するために使用されている。比較として、図7は、同じ流体を分析するが、ここでは第2の較正流体を使用して較正される同じ分析器を例証する。測定は、両方の較正を使用するときにより良好な性能を有することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7