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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】箱型擁壁及び擁壁用ブロック
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20250313BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
E02D29/02 303
E02D17/20 103H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021037346
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137714
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593087422
【氏名又は名称】株式会社箱型擁壁研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】長尾 幸典
(72)【発明者】
【氏名】大熊 淨
(72)【発明者】
【氏名】板谷 淳二
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0315679(US,A1)
【文献】特開2004-076343(JP,A)
【文献】特開平09-302685(JP,A)
【文献】特開平06-341150(JP,A)
【文献】特開2004-076344(JP,A)
【文献】特開2005-105784(JP,A)
【文献】特開平10-046614(JP,A)
【文献】特開2000-087331(JP,A)
【文献】特開2004-084442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E02D 17/20
E02B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立した表面板(12)と、表面板(12)の後方に離間して起立した控板(13)と、表面板(12)及び控板(13)の左右方向中間部どうしを繋ぐ2つの繋ぎ板(14)とを含み構成され、箱型擁壁の屈曲部に配される擁壁用ブロック(11)において、
表面板(12)と控板(13)と2つの繋ぎ板(14)とがコンクリートで一体的にプレキャストされてなり、
控板(13)の下端面及び繋ぎ板(14)の少なくとも後半部の下端面は、表面板(12)の高さの1/2のレベルにあり、
控板(13)の上端面及び繋ぎ板(14)の上端面は、表面板(12)の上端面よりも40~150mm低いことを特徴とする擁壁用ブロック。
【請求項2】
階段状に積み上げられた複数の段(z1,z2)を含み、各段(z1,z2)は、起立した表面板(2,12)と、表面板(2,12)の後方に離間して起立した控板(3,13)と、表面板(2,12)及び控板(3,13)の左右方向中間部どうしを繋ぐ2つの繋ぎ板(4,14)とを含み構成された擁壁用ブロック(1,11)が、横方向に複数並べられるとともに、表面板(2,12)の後方の空所に粒状充填材(9)が充填されて構築された箱型擁壁において、
箱型擁壁の直線部に配された第1擁壁用ブロック(1)は、控板(3)の上端面及び繋ぎ板(4)の少なくとも後半部の上端面が、表面板(2)の高さの1/2のレベルにあり、控板(3)の下端面及び繋ぎ板(4)の下端面が、表面板(2)の下端面と同じ高さレベルにあり、
箱型擁壁の屈曲部に配された第2擁壁用ブロック(11)は、控板(13)の下端面及び繋ぎ板(14)の少なくとも後半部の下端面が、表面板(12)の高さの1/2のレベルにあり、控板(13)の上端面及び繋ぎ板(14)の上端面が、表面板(12)の上端面よりも40~150mm低く、
第2擁壁用ブロック(11)の控板(13)の上端面及び繋ぎ板(14)の上端面が、粒状充填材(9)により覆われていることを特徴とする箱型擁壁。
【請求項3】
前記屈曲部は、箱型擁壁の角部を形成する一辺端部又は他辺端部である請求項2記載の箱型擁壁。
【請求項4】
ある段の一辺端部又は他辺端部に配された第2擁壁用ブロック(11)の上段の対応端部に、第2擁壁用ブロック(11)が配された請求項3記載の箱型擁壁。
【請求項5】
ある段の一辺端部又は他辺端部に配された第2擁壁用ブロック(11)の上段の対応端部に、第1擁壁用ブロック(1)が配された請求項3記載の箱型擁壁。
【請求項6】
前記屈曲部は、箱型擁壁の一辺端部と他辺端部との間に斜めに形成される面取り部である請求項2記載の箱型擁壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁及びその屈曲部に用いられるブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等で知られる箱型擁壁は、図12及び図13に示すように、表面板52と控板53とこれらを連結する2つの繋ぎ板54とを含むコンクリート製の擁壁用ブロック51を横方向に複数並べ、その表面板52と控板53との間の空所に単粒度砕石等の粒状充填材59を充填して一つの段を構成し、この段を下から上へ複数段にかつ階段状に積み上げて構築される。また、箱型擁壁に平面視で直線部のみならず屈曲部がある場合には、次のように、直線部と同じ擁壁用ブロック51を上下反転して屈曲部に配する。
【0003】
箱型擁壁の直線部に配された擁壁用ブロック51は、控板53の上端面及び繋ぎ板54の少なくとも後半部の上端面が、表面板52の高さの1/2のレベルにあり、控板53の下端面及び繋ぎ板54の各下端面が、表面板52の下端面と同じ高さレベルにある。
【0004】
箱型擁壁の屈曲部に配された擁壁用ブロック51は、上記の直線部に配される擁壁用ブロック51をそのまま上下反転して用いたものであるため、控板53の下端面及び繋ぎ板54の少なくとも後半部の下端面が、表面板52の高さの1/2のレベルにあり、控板53及び繋ぎ板54の各上端面が、表面板52の上端面と同じ高さレベルにある。これにより、控板53の下端面又は繋ぎ板54の下端面が、直線部に配された擁壁用ブロック51の控板53の上端面又は繋ぎ板54の上端面の上に載って安定する。
【0005】
箱型擁壁は、擁壁用ブロック51どうしを横・上下に結合する構造を持っておらず、空所に充填されて拘束された粒状充填材59が上下・横に噛み合うことにより、各擁壁用ブロック51はわずかには動きうるが大きくは動かないようにされた「可撓性を有するもたれ式擁壁」であることが特長である。地震の際には、擁壁用ブロック51のわずかな動きが許容されることで、擁壁用ブロック51にかかる力が緩和されて擁壁用ブロック51破損が防止され、かつ、擁壁用ブロック51の大きな動きが防止されることで、擁壁全体の形状が維持される。
【0006】
加えて、粒状充填材59は、箱型擁壁の各段面に現れて、陰影に富む美感を生じさせ、景観を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-76343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の箱型擁壁は、図12(b)に示すように、上下反転して屈曲部に配された擁壁用ブロック51の控板53及び繋ぎ板54の各上端面が各段面に露出し、各段面で粒状充填材59が分断されたように見えるため、景観が低下するという問題があった。
【0009】
また、図13(a)に示すように、上下反転して屈曲部に配された擁壁用ブロック51の上段に、上下反転した擁壁用ブロック51を配したときに、下段の繋ぎ板54の上端面が上段の表面板52の下端面に干渉し、上下段の粒状充填材59の噛み合わせ効果が減少するという問題があった。
また、図13(b)に示すように、上下反転して屈曲部に配された擁壁用ブロック51の上段に、上下反転しない擁壁用ブロック51を配する(図12(a)でその上段を左右対称に配する)ことも可能であるが、下段の控板53及び繋ぎ板54の各上端面が上段の表面板52及び繋ぎ板54の各下端面に干渉し、上下段の粒状充填材59の噛み合わせ効果がさらに減少するため、このような配し方は好ましくなかった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、箱型擁壁の屈曲部に配された擁壁用ブロックの控板及び繋ぎ板の各上端面が、粒状充填材により覆われて各段面に露出しないようにし、各段面で粒状充填材が分断されずに連なって見えるようにして景観を向上させるとともに、上下段の擁壁用ブロックどうしが干渉しないようにし、上下段の粒状充填材の噛み合わせ効果を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]擁壁用ブロック
起立した表面板と、表面板の後方に離間して起立した控板と、表面板及び控板の左右方向中間部どうしを繋ぐ2つの繋ぎ板とを含み構成され、箱型擁壁の屈曲部に配される擁壁用ブロックにおいて、
控板の下端面及び繋ぎ板の少なくとも後半部の下端面は、表面板の高さの1/2のレベルにあり、
控板の上端面及び繋ぎ板の上端面は、表面板の上端面よりも40~150mm低いことを特徴とする擁壁用ブロック。
【0012】
[2]箱型擁壁
階段状に積み上げられた複数の段を含み、各段は、起立した表面板と、表面板の後方に離間して起立した控板と、表面板及び控板の左右方向中間部どうしを繋ぐ2つの繋ぎ板とを含み構成された擁壁用ブロックが、横方向に複数並べられるとともに、表面板の後方の空所に粒状充填材が充填されて構築された箱型擁壁において、
箱型擁壁の直線部に配された第1擁壁用ブロックは、控板の上端面及び繋ぎ板の少なくとも後半部の上端面が、表面板の高さの1/2のレベルにあり、控板の下端面及び繋ぎ板の下端面が、表面板の下端面と同じ高さレベルにあり、
箱型擁壁の屈曲部に配された第2擁壁用ブロックは、控板の下端面及び繋ぎ板の少なくとも後半部の下端面が、表面板の高さの1/2のレベルにあり、控板の上端面及び繋ぎ板の上端面が、表面板の上端面よりも40~150mm低く、
第2擁壁用ブロックの控板の上端面及び繋ぎ板の上端面が、粒状充填材により覆われていることを特徴とする箱型擁壁。
【0013】
[作用]
屈曲部に配された第2擁壁用ブロックの控板及び繋ぎ板の各上端面は、表面板の上端面よりも40~150mm低いことから、粒状充填材により覆われて各段面に露出しなくなる。これにより、各段面で粒状充填材が分断されずに連なって見えるため景観が向上するとともに、上下段の擁壁用ブロックどうしが干渉しなくなり、上下段の粒状充填材の噛み合わせ効果が高くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、箱型擁壁の屈曲部に配された擁壁用ブロックの控板及び繋ぎ板の各上端面が、粒状充填材により覆われて各段面に露出しなくなり、各段面で粒状充填材が分断されずに連なって見えるため景観が向上するとともに、上下段の擁壁用ブロックどうしが干渉しなくなり、上下段の粒状充填材の噛み合わせ効果が高くなる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は実施例1の箱型擁壁に用いる第1擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図2図2は同実施例に用いる第2擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図3図3は同実施例の1段目に並べた擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図4図4は構築した同実施例の一部(2段分)を示す斜視図である。
図5図5図4のV-V線で切断して見た、(a)は第2擁壁用ブロックの上に第2擁壁用ブロックが配された場合の断面図、(b)は第2擁壁用ブロックの上に第1擁壁用ブロックが配された場合の断面図である。
図6図6は実施例2の1段目に並べた擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図7図7は構築した同実施例の一部(2段分)を示す斜視図である。
図8図8は実施例3に用いる第2擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図9図9は同実施例の1段目に並べた擁壁用ブロックを示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
図10図10は構築した同実施例の一部(2段分)を示す斜視図である。
図11図11は変更例を示し、(a)は実施例1,2に用いた第2擁壁用ブロックの変更例を背面側から見た斜視図、(b)は実施例3に用いた第2擁壁用ブロックの変更例を背面側から見た斜視図である。
図12図12は従来例の箱型擁壁を示し、(a)は1段目に並べた擁壁用ブロックを背面側から見た斜視図、(b)は構築した一部(2段分)を示す斜視図である。
図13図13図12のXIII-XIII線で切断して見た、(a)は上下反転した擁壁用ブロックの上段に上下反転した擁壁用ブロックが配された場合の断面図、(b)は上下反転した擁壁用ブロックの上段に上下反転しない擁壁用ブロックが配された場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.屈曲部
屈曲部としては、次の態様(1)(2)を例示できる。
【0017】
(1)屈曲部は、箱型擁壁の角部を形成する一辺端部又は他辺端部である態様(実施例1の図3図4参照)。
この態様においては、さらに次の態様(a)(b)を例示的できる。
(a)ある段の一辺端部又は他辺端部に配された第2擁壁用ブロックの上段の対応端部に、第2擁壁用ブロックが配された態様(実施例1の図5(a)参照)。
(b)ある段の一辺端部又は他辺端部に配された第2擁壁用ブロックの上段の対応端部に、第1擁壁用ブロックが配された態様(実施例1の図5(b)参照)。
【0018】
(2)屈曲部は、箱型擁壁の一辺端部と他辺端部との間に斜めに形成される面取り部である態様(実施例2の図6図7、実施例3の図9図10参照)。
この態様においては、ある段の面取り部に配された第2擁壁用ブロックの上段の対応端部には、必ず第2擁壁用ブロックが配される。
【0019】
2.第2擁壁用ブロック
第2擁壁用ブロックの控板及び繋ぎ板の各上端面を、表面板の上端面よりも低くする量は、上記のとおり40~150mmであるが、60~130mmがより好ましく、80~120mmが最も好ましい。
また、第2擁壁用ブロックの繋ぎ板の上端面については、該上端面の全部が表面板の上端面よりも40~150mm低いことが好ましいが、該上端面の前端部以外が表面板の上端面よりも40~150mm低く、該前端部(前後長40~150mmの範囲)で高さが増して表面板に繋がるものも、本発明に含まれるものとする(変更例の図11参照)。
【0020】
3.粒状充填材
粒状充填材としては、特に限定されないが、砕石、栗石等を例示でき、単粒度砕石が好ましい。より具体的には次のものを例示できる。
・道路用砕石:JIS A5001-2008、S-30(4号)30~20mm、S-40(3号)40~30mm、S-60(2号)60~40mm
・コンクリート用砕石:JIS A5005-2009、砕石4020
・割ぐり石:JIS A5006-1995、粒径50~150mm
【実施例
【0021】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例の構造及び各部の形状寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0022】
[実施例1]
図1図5は実施例1を示し、本実施例の箱型擁壁は、図4に示すように階段状に積み上げられた複数の段z1,z2からなる。
【0023】
各段z1,z2は、2種類の擁壁用ブロック1,11、すなわち、箱型擁壁の平面視で直線部に該直線に沿って横方向に複数並べられた第1擁壁用ブロック1、及び、箱型擁壁の平面視で屈曲部に配された第2擁壁用ブロック11と、全擁壁用ブロック1,11の空所に充填された粒状充填材9により構築されている。本実施例における屈曲部は、箱型擁壁の平面視で角部を形成する他辺端部である(この点はさらに後述する)。
【0024】
第1擁壁用ブロック1は、図1に示すように、起立した表面板2と、表面板2の後方に離間して起立した控板3と、表面板2の左右方向中間部と控板3の左右方向中間部とを連結する2つの繋ぎ板4とが、コンクリートで一体的にプレキャストされてなる。
【0025】
表面板2は、左右長約2000mm、上下長約1000mm、厚さ約120mmの長方形板であり、その表面には例えば石垣模様、溝模様等の模様が設けられ、左右の側端面の上部及び下部には水抜き用凹部5が形成されている。
控板3は、左右長約1860mm、上下長約500mm、厚さ約120~140mmの長方形板である。
繋ぎ板4は、前後長約1000mm、少なくとも後半を含む後部4a(前後長約660mmの範囲)で上下長約500mm、後部4aの前に続く前部4b(前後長約240mmの範囲)で上方へ増長して上下長約900mm、前部4bの前に続く前端部4c(前後長100mmの範囲)で上方へ斜めに増長して表面板2の上端に繋がる、厚さ約100mmの板である。後部4aと前部4bと前端部4cの境を鎖線で示す。
よって、控板3の上端面及び繋ぎ板4の少なくとも後半の上端面が、表面板2の高さの1/2のレベルにあり、控板3の下端面及び繋ぎ板4の下端面が、表面板2の下端面と同じ高さレベルにある。
【0026】
各繋ぎ板4の外側面は表面板2の各側端面から約390mm内側にあり、両繋ぎ板4の内側面は約1010mmの相互間隔をおいて平行に対峙する。よって、表面板2と控板3との間には、中央空所と左右の側部凹所とがある。また、控板3の背方(図示しない法面との間)には背方空所ができる。
【0027】
第2擁壁用ブロック11は、図2に示すように、起立した表面板12と、表面板12の後方に離間して起立した控板13と、表面板2の左右方向中間部と控板13の左右方向中間部とを連結する2つの繋ぎ板14とが、コンクリートで一体的にプレキャストされてなる。
【0028】
表面板12は、左右長約2000mm、上下長約1000mm、厚さ約120mmの長方形板であり、その表面には例えば石垣模様、溝模様等の模様が設けられ、左右の側端面の上部及び下部には水抜き用凹部15が形成されている。
控板13は、左右長約1860mm、上下長約500mm、厚さ約120~140mmの長方形板である。
繋ぎ板14は、前後長約1000mm、少なくとも後半を含む後部14a(前後長約660mmの範囲)で上下長約500mm、後部14aの前に続く前部14b(前後長約240mmの範囲)で下方へ増長して上下長約900mm、前部14bの前に続く前端部14c(前後長100mmの範囲)で下方へ斜めに増長して表面板12の下端に繋がる、厚さ約100mmの板である。後部14aと前部14bと前端部14cの境を鎖線で示す。
よって、控板13の下端面及び繋ぎ板14の少なくとも後半の下端面が、表面板12の高さの1/2のレベルにあり、控板13及び繋ぎ板14の各上端面が、表面板12の上端面よりも約100mm低い。
【0029】
各繋ぎ板14の外側面は表面板12の各側端面から約390mm内側にあり、両繋ぎ板14の内側面は約1010mmの相互間隔をおいて平行に対峙する。よって、表面板12と控板13との間には、中央空所と左右の側部凹所とがある。また、控板13の背方(図示しない法面との間)には背方空所ができる。
【0030】
本実施例の箱型擁壁は、次のように構築されている。
図3に示すように、段z1において、一辺((a)で右辺、(b)で左辺)と他辺((a)で左辺、(b)で右辺)とがそれらの一辺端部と他辺端部とで約90度の角部を形成するように、擁壁用ブロック1,11を配して並べる。詳しくは、一辺の直線部には、該直線に沿って複数の第1擁壁用ブロック1を並べる。次に、他辺の直線部には、該直線に沿って複数の第1擁壁用ブロック1を並べ、但し屈曲部としての他辺端部にだけは第2擁壁用ブロック11を配する。この第2擁壁用ブロック11は、控板13の下端面又は繋ぎ板14の下端面が、一辺端部に配された第1擁壁用ブロック1の控板13の上端面又は繋ぎ板14の上端面の上に載って安定する。
【0031】
次に、全擁壁用ブロック1,11の表面板1,12の後方の空所(前記中央空所、側部凹所及び背方空所)に、粒状充填材9(例えば単粒度砕石S-40(3号))を充填して、段z1を形成する。このとき、図4の下側及び図5(a)の下側に示すように、第2擁壁用ブロック11の繋ぎ板14の上端面は、粒状充填材9により覆われて露出しなくなる。
【0032】
次に、段z2を、段z1よりも100mm以上後退させて、段z1と同様に形成する。ここで、次の2態様がある。
【0033】
(a)図5(a)に示すように、段z1の他辺端部に配された第2擁壁用ブロック11の上段の対応端部に、段z2の第2擁壁用ブロック11が配された態様。
このとき、段z1の繋ぎ板14の上端面が粒状充填材9により覆われていて、これらの上端面が段z2の表面板12の下端面に干渉しないので、上述した図13(a)の従来例と比べて、上下段の粒状充填材9の噛み合わせ効果が高くなる。
【0034】
(b)図5(b)に示すように、段z1の他辺端部に配された第2擁壁用ブロック11の上段の対応端部に、段z2の第1擁壁用ブロック1が配された態様。
このとき、段z1の控板13及び繋ぎ板14の各上端面が粒状充填材9により覆われていて、該各上端面が段z2の表面板2及び繋ぎ板4の各下端面に干渉しないので、上述した図13(b)の従来例と比べて、上下段の粒状充填材9の噛み合わせ効果が高くなり、この態様でも特に問題なく実施できる。
【0035】
さらに、3段目以降(図示略)を所望の高さに達するまで、段z2と同様に形成することにより、箱型擁壁が構築される。
【0036】
以上のように構築された実施例1は、各段面で第2擁壁用ブロック11の繋ぎ板14の上端面が露出しないことから、粒状充填材9が分断されずに連なって見えるため景観が向上する。
【0037】
[実施例2]
図6及び図7に示す実施例2の箱型擁壁は、屈曲部が、箱型擁壁の一辺端部と他辺端部との間に斜めに形成される面取り部である点において、実施例1と相違するものである。
【0038】
図6に示すように、段z1において、一辺と他辺とにそれらの一辺端部と他辺端部にまで第1擁壁用ブロック1を配して並べる。次に、面取り部に第2擁壁用ブロック11を配して並べる。この第2擁壁用ブロック11は、控板13の下端面又は繋ぎ板14の下端面が、一辺端部と他辺端部に配された第1擁壁用ブロック1の控板3の上端面又は繋ぎ板4の上端面の上に載って安定する。
【0039】
次に、実施例1と同様に、全擁壁用ブロック1,11の空所に粒状充填材9を充填して、段z1を形成する。
次に、段z2を、段z1よりも100mm以上後退させて、段z1と同様に形成する。段z1の面取り部に配された第2擁壁用ブロック11の上段の対応端部には、必ず段z2の第2擁壁用ブロック11が配される。
さらに、3段目以降(図示略)を所望の高さに達するまで、段z2と同様に形成することにより、箱型擁壁が構築される。
【0040】
実施例2も、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0041】
[実施例3]
図8図10に示す実施例3の箱型擁壁は、第2擁壁用ブロック11の左右長が短縮された点において、実施例2と相違するものである。
【0042】
すなわち、表面板12は左右長約1500mmに短縮され、控板13は左右長約1260mmに短縮され、両繋ぎ板14の内側面の相互間隔がは約380mmに短縮され、その他の寸法はほぼ変更がない。
【0043】
実施例3も、実施例2と同様に構築され、同様の作用効果を奏する。
【0044】
[変更例]
図11(a)に実施例1,2に用いた第2擁壁用ブロック11の変更例を示し、(b)に実施例3に用いた第2擁壁用ブロック11の変更例を示す。
これらは、繋ぎ板14の前端部14c(前後長約100mmの範囲)で上方へ斜めに増長して表面板の上端に繋がる点のみが変更されたものである。
【0045】
これらの変更例を前記実施例に用いても、繋ぎ板14の上端面は粒状充填材により覆われて露出しなくなるため、同様の作用効果が得られる。
【0046】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 第1擁壁用ブロック
2 表面板
3 控板
4 繋ぎ板
4a 後部
4b 前部
4c 前端部
5 水抜き用凹部
9 粒状充填材
11 第2擁壁用ブロック
12 表面板
13 控板
14 繋ぎ板
14a 後部
14b 前部
14c 前端部
15 水抜き用凹部
z1 段
z2 段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13