(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】放射線防護のための薬物複合体及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/748 20150101AFI20250313BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20250313BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250313BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250313BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
A61K35/748
A61K31/661
A61K9/08
A61P35/00
A61P39/00
(21)【出願番号】P 2024516838
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2021143924
(87)【国際公開番号】W WO2023040130
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】202111082398.4
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】周 民
(72)【発明者】
【氏名】張 東暁
(72)【発明者】
【氏名】鐘 丹▲に▼
(72)【発明者】
【氏名】何 健
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102210694(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110464708(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105997889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102150867(CN,A)
【文献】特表2004-535396(JP,A)
【文献】Small,2020年,Vol.16, Article No.2000819,pp.1-10
【文献】Science Advances,2021年,Vol.7, Article No.eabi9265,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00- 9/72
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線防護のための薬物複合体であって、
前記薬物複合体は、アミフォスチンと、天然微細藻類とを含み、
ここで、天然微細藻類と薬物複合体のサイズは、いずれもミクロンスケールであり、
前記薬物複合体において、天然微細藻類とアミフォスチンとの質量比は、1:0.5~1:8であり(即ちSP:AMFが1:0.5~1:8であり)、
アミフォスチンと天然微細藻類との間に、浸透圧駆動結合を有し、前記浸透圧駆動結合の検出方法は、400~4000cm
-1の範囲内の赤外線スキャン条件下で、前記薬物複合体がアミフォスチンと天然微細藻類の特徴的なピークを兼ね備え、且つ758と3302cm
-1に特徴的なピークを有し、
前記天然微細藻類は、スピルリナである、
ことを特徴とする放射線防護のための薬物複合体。
【請求項2】
前記薬物複合体は、溶媒をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬物複合体。
【請求項3】
前記溶媒は、無菌のリン酸塩緩衝液、超純水、蒸留水又は生理食塩水から選択される少なくとも一つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項2に記載の薬物複合体。
【請求項4】
前記スピルリナの長さは、100~500μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬物複合体。
【請求項5】
放射線防護のための薬物複合体の製造方法であって、
天然微細藻類粉末とアミフォスチン溶液の製造:ミクロンスケールの微細藻類を取り、培養、遠心分離を行い、上清を除去し、沈殿物を洗浄した後に収集し、後処理を行った後に微細藻類粉末を得、アミフォスチン固体を秤量し、濃度0.05~0.5mg/mLのアミフォスチン溶液を調製するステップ(1)と、
薬物複合体の製造:得られる微細藻類粉末とアミフォスチン溶液を投入比1:0.8~1:10で混合し薬物複合体を製造するステップ(2)と、を含み、
前記天然微細藻類は、スピルリナである、
ことを特徴とする放射線防護のための薬物複合体の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(1)において、前記遠心分離の回転数と時間がそれぞれ4500rpmと10minである、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)において、前記沈殿物を洗浄する溶液が、蒸留水又はリン酸塩緩衝液から選択される少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)において、前記沈殿物を洗浄する回数は、3~5回である、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(1)において、前記アミフォスチン溶液は、リン酸塩緩衝液溶液又は蒸留水のうちの少なくとも一つを採用し、混合して調製される、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(2)において、一定の温度と遮光条件下で、アミフォスチン溶液に微細藻類粉末を加え、撹拌し、そして遠心分離を行い、沈殿物を収集し、3~5回洗浄し、後処理を行って薬物複合体の固体粉末を得る、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(2)において、一定の温度は2~8℃である、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(2)において、撹拌の速度は60~200rpmである、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(2)において、撹拌の時間は6~12時間である
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項14】
前記後処理は、乾燥
を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥は、凍結乾燥である、
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製剤技術分野に属し、具体的には放射線防護のための薬物複合体及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、人類の健康と生命を厳重に脅かす疾患の一つであり、手術、化学治療と放射線療法は常に癌に対抗する主要な力である。放射線療法(放射線治療と略称される)は、半数を超える悪性腫瘍患者に使用され、様々なタイプの異なる腫瘍の治療において非常に重要な作用を果たしている。しかしながら、放射線治療において、腫瘍を殺傷するための電離放射線は、腫瘍の近隣の健康組織を不可避的に損傷することによって、健康組織又は器官の正常機能に影響を及ぼす。ここで、腹部と骨盤腔固形腫瘍の放射線治療において、小腸は、放射線感受性が高く、且つ体積が比較的に大きく、放射線障害を極めて受けやすく、放射線性腸障害(又は放射線性腸疾患と呼ばれる)を引き起こし、腸管上皮更新障害、炎症性細胞浸潤、腸内フローラの乱れなどの異常を引き起こし、続いて一連の腸管毒性症状、例えば下痢、嘔吐、腸出血、腸穿孔、重度の感染症ひいては死亡などを引き起こし、推定によれば、米国で毎年骨盤腔又は腹部放射線療法を受けた患者のうち、放射線性腸障害症状の発生率は高くて60~80%(Hauer-Jensen,M.et al.,Nat.Rev.Gastroenterol.Hepatol.11,470-479(2014).)に達しており、腫瘍患者の生活の質に深刻な危害を及ぼす。そのため、放射線性腸障害の予防(即ち腸管放射線防護)のための薬物、薬物複合体又は製剤の研究開発は、非常に重要な意義を有する。
【0003】
アミフォスチン(化学名称は、3-アミノプロピルアミンエチルホスホロチオエートであり、アミホスチン又はエチオホス、WR-2721、AMF、Amifostineとも呼ばれる)は、FDA(米国食品医薬品局)が臨床に使用することを承認した正常組織の選択的放射線/化学治療保護剤であり、プロドラッグとして、それは、細胞内のアルカリホスファターゼで加水分解され、活性代謝生成物WR-1065に変換され、さらに遊離基除去などのメカニズムによって細胞を放射線障害から保護することができる。この薬物は、腫瘍組織の放射線殺傷に影響を与えることなく、正常組織に対して選択的な保護作用を有し、その保護メカニズムは、正常組織が腫瘍よりも高いアルカリホスファターゼ活性、より高いpH値(アルカリホスファターゼ活性に有利)とより良好な血管透過性を有するため、腫瘍組織に比べて、正常組織がより多くのWR-1065を濃縮することができ、特異的な防護効果を生じる(Smoluk,G.D.et al.,Cancer Res.48,3641-3647(1988).)ことである。それとともに、アミフォスチンの欠点も非常に明かであり、まず、この薬物は、一般的には、静脈投与により血液に入り、急速な除去と代謝が起こり、腸管組織の局所で十分な有効濃度に達することができず、静脈内投与濃度を増加すると、比較的高い血中濃度を引き起こし、さらに低血圧、悪心、嘔吐などの全身副作用を招き(Praetorius,N.P.&Mandal,T.K.J.Pharm.Pharmacol.60,809-815(2008).)、この薬物を直接経口投与すると、胃酸の低pH環境によってアミフォスチンの一部が不活性化されることによって、腸管に入る薬の量が大幅に減少し、腸管に対する有効な保護も実現できなくなる(Pamujula,S.et.al.,Int.J.Radiat.Biol.84,900-908(2008).)。そのために、薬物担体の形でアミフォスチンの経口投与送達を実現しようとする研究者がいるが、現在の報告ではナノレベルの担体を研究対象として薬物の担持と放出に関する研究を行うことが多い。
【0004】
特許(WO2020258584A1、CN110200941B、CN109970987A)には、いくつかの経口ナノ担体薬物の製造方法及びその使用を開示しており、ナノ材料で放射線防護薬物を包装することによって、腸管組織に入って作用を発揮し、薬物の経口投与送達を実現したが、低い吸収効率と経口投与安全性などのいくつかの問題が不可避的に存在し、ここで、低い吸収効率により、腸管組織での薬物の長期保存性及び穏やかな分解が困難であり、その原因は、ナノ材料がナノスケールに属し、サイズが極めて小さく、腸管での薬物の長期保存性を実現しにくく、薬効が持続的に保持されないことであり、他方では、ナノ薬物の製造過程が比較的に複雑であり且つコストが高く、規模化生産及び使用に適していない。最も重要なこととして、ナノ薬物のアジュバントの多くは、有機試薬などの一定の毒性を持つ化学物質であり、且つその製剤の安全性は報告されていない。しかしながら、今まで、薬効が持続し、経口投与安全性が確実であり、副作用が小さいなどの複数の機能を同時に備え、且つコストが低い新型腸管放射線防護薬物製剤又は薬物複合体はまだ開発されていないため、関連する薬物及び製剤の研究開発は、既に放射線治療保護薬物の研究問題における一番重要なポイントとなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の不足に対して、本発明の目的は、腸管放射線防護のための薬物複合体、製造方法及びその使用を提供することである。この薬物複合体は、従来の放射線防護薬物及び関連製剤の吸収効率が低くそして経口投与安全性が低いという欠点を克服し、腸管組織でのアミフォスチンの長期保存性及び穏やかな分解を実現し、薬物による腸管組織の局所に対する防護効果を強め、腹部/骨盤部腫瘍放射線療法又は環境における低線量放射線による腸管放射線性障害を予防するとともに、静脈投与による全身毒性副作用を回避する。製造フローが簡単であり、実行可能性が高く、規模化が容易であり、この薬物複合体はさらに、人体に必要な少量のタンパク質、不飽和脂肪酸と微量元素を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の目的は、放射線防護のための薬物複合体を提供することであり、前記薬物複合体は、アミフォスチンと、天然微細藻類とを含み、ここで、天然微細藻類と薬物複合体のサイズは、いずれもミクロンスケールであり、前記薬物複合体において、前記天然微細藻類とアミフォスチンとの質量比は、1:0.5~1:8であり(即ちSP:AMFが1:0.5~1:8であり)、アミフォスチンと天然微細藻類との間に、浸透圧駆動結合を有し、前記浸透圧駆動結合とは、微細藻類の内外で異なる溶液から形成される浸透圧の作用により駆動されることで、アミフォスチン分子が微細藻類の表面に結合するか又は微細藻類の表面の水通路の隙間を通って内部に入り、薬物複合体を形成することができることを指し、この薬物複合体は、赤外線検出において特徴的なピークを有し、前記浸透圧駆動結合の検出方法は、400~4000cm-1の範囲内の赤外線スキャン条件下で、前記薬物複合体が758と3302cm-1に特徴的なピークを有することである。
【0007】
好ましくは、前記薬物複合体は、溶媒をさらに含む。
【0008】
好ましくは、前記溶媒は、無菌のリン酸塩緩衝液、超純水、蒸留水又は生理食塩水から選択される少なくとも一つ又は複数である。
【0009】
好ましくは、前記薬物複合体は、腸管の長期保存性と穏やかに分解する性能を有し、ここで、腸管の長期保存性と穏やかな分解は、放射線照射4時間前に投与し、投与後に8時間以上経っても腸管内の薬物複合体が検出されることができることを指し、好ましくは、その検出方法は、12時間絶食したBalb/cヌードマウスに対して一定の用量で胃内投与を行い、作用後の蛍光画像が、ヌードマウスの小腸内に薬物複合体がまだ含まれていることを示すことであり、好ましくは、前記一定の用量は、120~600mg/kgであり、より好ましくは、前記一定の用量は、360mg/kgであり、さらに、好ましくは、前記作用の時間は、24時間であり、より好ましくは、前記蛍光画像は、Cy5.5、励起波長605nm、発光波長615~665nmのクロロフィルチャンネルを採用する。
【0010】
好ましくは、前記薬物複合体は、経口投与安全性を有し、その検出方法は、Balb/cシロネズミに対して一定の用量で胃内投与を行い、1日1回連続投与を行った後に、シロネズミの体重が変わらず、血液学的指標及び肝腎機能が正常を示すことであり、好ましくは、前記一定の用量は、120~600mg/kgであり、より好ましくは、前記一定の用量は、360mg/kgであり、さらに、好ましくは、前記連続投与は、30日間行われる。
【0011】
好ましくは、前記天然微細藻類は、スピルリナである。
【0012】
好ましくは、前記スピルリナの長さは、100~500μmである。
【0013】
本発明の第二の目的は、放射線防護のための薬物複合体の製造方法を提供することであり、前記製造方法は、アミフォスチン溶液、天然微細藻類及び薬物複合体の製造を含み、前記製造方法は、以下のステップを含む。
【0014】
(1).天然微細藻類粉末とアミフォスチン溶液の製造:
ミクロンスケールの微細藻類を取り、培養、遠心分離を行い、上清を除去し、沈殿物を洗浄した後に収集し、後処理を行った後に微細藻類粉末を得、アミフォスチン固体を秤量し、濃度0.04~0.48mg/mLのアミフォスチン溶液を調製する。好ましくは、前記遠心分離の回転数と時間はそれぞれ4500rpmと10minである。
【0015】
好ましくは、前記沈殿物を洗浄する溶液は、蒸留水又はリン酸塩緩衝液から選択される少なくとも一つである。
【0016】
好ましくは、前記沈殿物を洗浄する回数は、3~5回である。
【0017】
好ましくは、前記アミフォスチン溶液は、リン酸塩緩衝液溶液又は蒸留水のうちの少なくとも一つを採用して均一に混合して調製される。
【0018】
(2).薬物複合体の製造
得られる微細藻類粉末とアミフォスチン溶液を投入比1:0.8~1:10で混合し薬物複合体を製造する。
【0019】
好ましくは、前記の、混合して調製されることは、一定の温度と遮光条件下で、アミフォスチン溶液に微細藻類粉末を加え、撹拌し、そして遠心分離を行い沈殿物を収集し、3~5回洗浄し、後処理を行って薬物複合体の固体粉末を得ることを指す。
【0020】
好ましくは、前記一定の温度は、2~8℃である。
【0021】
好ましくは、前記撹拌の速度は、60~200rpmである。
【0022】
好ましくは、前記撹拌の時間は、6~12時間である。
【0023】
本発明の第三の目的は、医薬組成物を提供することであり、前記医薬組成物は、少なくとも一つの活性成分と、少なくとも一つの薬学的に許容可能な添加剤とを含み、前記活性成分は、上記薬物複合体又は上記製造方法により得られる薬物複合体から選択されるいずれか一つである。
【0024】
好ましくは、前記添加剤は、薬学分野の従来の希釈剤、賦形剤、充填剤、粘着剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、潤滑剤などを含み、必要がある時に香味料、甘味剤などを加えてもよい。
【0025】
本発明の第四の目的は、上記薬物複合体、上記製造方法により得られる薬物複合体又は上記医薬組成物の、腫瘍治療に関連する防護薬物の製造における用途を提供することである。
【0026】
好ましくは、前記腫瘍は、固形腫瘍から選択される一つである。
【0027】
好ましくは、前記固形腫瘍は、腸管組織に関連する腫瘍から選択される一つである。
【0028】
好ましくは、腹部又は骨盤腔固形腫瘍から選択される少なくとも一つである。
【0029】
好ましくは、前記腹部又は骨盤腔固形腫瘍は、膵臓癌、前立腺癌と結腸癌から選択される一つであり、さらに、前記腹部又は骨盤腔固形腫瘍は、好ましくは結腸癌である。
【0030】
好ましくは、前記薬物複合体又は医薬組成物は、経口投与後に、腸管に入り、消化に伴って徐々に分裂分解し、薬物を緩やかに放出し、小腸の近位端、中段と遠位端に全面的にカバーして分布し、小腸組織における薬物の濃度を顕著に向上させ、小腸組織及び細胞に対する保護作用を十分に発揮するとともに、血液中の薬物濃度を低下させ、全身毒性を起こすことを回避する。
【0031】
好ましくは、前記薬物複合体又は医薬組成物は、盲腸上皮内結腸癌の放射線治療において、X線による腫瘍組織の殺傷/阻害作用に影響を与えない。
【0032】
好ましくは、前記薬物複合体又は医薬組成物は、臨床における長期経口投与による放射線防護に使用され、良好なバイオ安全性を示し、アミフォスチンの潜在的な毒性副作用を効果的に回避でき、日常、長期経口投与への使用に適している。
【0033】
好ましくは、前記腸管放射線防護経口投与薬物複合体と医薬組成物は、アミフォスチンの静脈内注射の単一投与方式とナノ薬物複合体の腸管組織における不十分な薬効という欠点を克服した。
【0034】
本発明の第五の目的は、上記医薬組成物の、腸管調節における用途を提供することである。
【0035】
好ましくは、前記腸管調節は、炎症調節又は腸管栄養補給のうちの少なくとも一つを含む。
【0036】
好ましくは、前記栄養成分は、タンパク質、不飽和脂肪酸、カロチノイド、ビタミン、及び鉄、ヨウ素、亜鉛などの複数の微量元素又は多糖などのプロバイオティクスから選択される一つ又は複数である。
【0037】
本発明の第六の目的は、経口製剤を提供することであり、前記経口製剤の活性成分は、上記薬物複合体、上記製造方法により得られる薬物複合体又は医薬組成物のうちの少なくとも一つと、少なくとも一つの薬学的に許容可能な担体又は添加剤とを含む。
【0038】
好ましくは、前記製剤は、固体製剤である。
【0039】
好ましくは、前記固体製剤は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤から選択される少なくとも一つであり、上記各剤形の薬物はいずれも薬学分野の従来の方法で製造可能である。
【0040】
好ましくは、前記添加剤は、薬学分野の従来の希釈剤、賦形剤、充填剤、粘着剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、潤滑剤などを含み、必要がある時に香味料、甘味剤などを加えてもよい。
【発明の効果】
【0041】
有益な効果は以下のとおりである。
【0042】
1、本発明は、放射線防護薬物であるアミフォスチンと天然微細藻類から特定の質量比(SP:AMF=1:0.5~1:8)で形成される浸透圧駆動結合を有する薬物複合体を初めて製造し、400~4000cm-1の範囲内の赤外線スキャン条件下で、この薬物複合体は、758と3302cm-1に特徴的なピークを有し、放射線防護薬物であるアミフォスチンの静脈内注射の単一投与方式を克服し、使用後に、比較的に高い薬物活性レベルと経口投与安全性を保持することができ、腸管組織での長期保存性及び穏やかな分解を実現することができる。
【0043】
2、本発明は、放射線防護薬物であるアミフォスチンが腸管組織に入って全局的な放射線防護を行うことができないという制限性を打ち破り、この薬物複合体は、使用後に、小腸の近位端、中段と遠位端に全面的にカバーして分布し、小腸組織における薬物の濃度を顕著に向上させ、小腸組織及び細胞に対する保護作用を十分に発揮するとともに、血液中の薬物濃度を低下させ、全身毒性を起こすことを回避することができ、長期的に放射線治療が必要な患者に適している。
【0044】
3、本発明の薬物複合体は、浸透圧駆動結合を有し、且つ特有の特徴的なピーク(FTIR検出)が存在し、ミクロンスケール複合体であり、ナノ材料の薬物製剤又は複合体に比べて、本発明の薬物複合体は、長期的な放射線防護機能と腸管炎症調節作用を発揮するだけでなく、薬物複合体が使用された後に、徐々に破砕し、分解されるという法則を示し、アミフォスチンが十分に放出されることを表すとともに、この薬物複合体が消化器系で分解されやすいことを表し、生体内における長期保存性による毒性副作用を回避する。
【0045】
本発明では、用語である「SP」は、スピルリナを指す。
【0046】
本発明では、用語である「AMF」は、腸管放射線防護薬物であるアミフォスチンを指す。
【0047】
本発明では、用語である「SP@AMF」は、薬物複合体を指す。
【0048】
本発明では、用語である「SGF」は、人工胃液を指す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】薬物複合体の光学顕微鏡(明視野とクロロフィル蛍光チャンネル)と走査型電子顕微鏡写真であり、スケール=20μmである。
【
図2】製造過程におけるSP/AMF投入比と薬物複合体のSP/AMF質量比の正の相関図であり、対応付け関係式は、y=1.3820x-0.0427、R
2=0.9983であり、ここで、xは、製造過程におけるSP/AMF投入比であり、yは、製造により得られる薬物複合体におけるSP/AMF質量比である。
【
図3】薬物複合体(SP@AMF)、アミフォスチン(AMF)とスピルリナ(SP)のフーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)図である。
【
図4】薬物複合体を人工胃液(SGF)により0、1、2時間処理した後の薬物放出曲線図である(縦座標は、薬物の総担持量に対する累積放出薬物のパーセントである)。
【
図5】薬物複合体による人工胃液(SGF)のpH値への影響の傾向図である。
【
図6】薬物複合体の経口投与後の異なる時点(0~24時間)での生体内分布の蛍光イメージング図である。
【
図7】薬物複合体の経口投与後の小腸絨毛間での形態図(走査型電子顕微鏡疑似カラー写真)であり、スケール=20μmである。
【
図8】薬物複合体の経口投与後の消化道の各段内での形態図(走査型電子顕微鏡写真)であり、スケール=20μmである。
【
図9】腹部への放射線照射による小腸の各段(十二指腸、空腸、回腸)の陰窩増殖障害に対する薬物複合体の防護作用概略図(Ki67免疫組織化染色されており、黒色の点線に示されるものは、細胞増殖が正常である腸管陰窩である)であり、スケール=100μmである。
【
図10】腹部への放射線照射による小腸の各段(十二指腸、空腸、回腸)の線維化に対する薬物複合体の防護作用概略図(マッソントリクローム染色されており、線維は、青色に染色された)であり、スケール=100μmである。
【
図11】薬物複合体が小腸組織内の炎症因子IL-1βの含有量を低下させる図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001であり、黒色*は、各群と放射線照射群との間のp値を表し、赤色*は、放射線照射+AMF群と放射線照射+SP@AMF群との間のp値を表す)である。
【
図12】薬物複合体が小腸組織内の炎症因子IL-6の含有量を低下させる図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001であり、黒色*は、各群と放射線照射群との間のp値を表し、赤色*は、放射線照射+AMF群と放射線照射+SP@AMF群との間のp値を表す)である。
【
図13】薬物複合体が小腸組織内の炎症因子TNF-αの含有量を低下させる図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001であり、黒色*は、各群と放射線照射群との間のp値を表し、赤色*は、放射線照射+AMF群と放射線照射+SP@AMF群との間のp値を表す)である。
【
図14】盲腸上皮内担癌ヌードマウスが腹部の放射線療法を受けた後の腫瘍体積と重量概略図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001である)である。
【
図15】薬物複合体を30日間連続して経口投与した後の血液一般検査指標と肝腎機能指標図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001である)である。
【
図16】薬物複合体を30日間連続して経口投与する期間内の体重モニタリング概略図(*、p値<0.05であり、**、p値<0.01であり、***、p値<0.001である)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下は、以下の図面と実施例を結び付けながら、本発明をさらに説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0051】
実施例1.SP@AMFの合成
無菌条件で培養したスピルリナ(SP)懸濁液を取り、遠心分離(4500rpm、10min)を行い、上清を除去し、リン酸塩緩衝液を用いて3回洗浄し、残留した培地を除去し、沈殿物を収集し、凍結乾燥を行った後に、固体粉末を得た。3.125mg/mLのアミフォスチン(AMF)を含有するリン酸塩緩衝液溶液を調製し、スピルリナとアミフォスチンとの質量比1:0.6に応じて、上記スピルリナ粉末を加え、錫紙に包まれた50mLの無菌遠心管に十分に分散させ、4℃の恒温シェーカに置き、緩やかに12時間振盪した(60回転/分)。遠心分離を行い、上清を除去し、リン酸塩緩衝液により3回洗浄し、沈殿物を収集し、再び凍結乾燥を行い、薬物複合体SP@AMFの固体粉末(
図1)を得て、密閉、乾燥、2~8℃の条件下で遮光保存し、SP:AMF質量比が1:1.25である薬物複合体を製造して得ることができ、後処理を行った後に、薬物複合体粉末を収集し、顕微鏡及び走査型電子顕微鏡写真を撮影することで、異なる質量比の薬物複合体粉末が液体(蒸留水)中ではすべて均一な懸濁液となり、その形態が3D螺旋状であり、且つ赤色蛍光イメージング特性を持っていることが分かった(
図1)。
【0052】
上記SP@AMFの製造方法により、異なる投入比(SP:AMF=1:0.8~1:10であり、即ちSP/AMF=0.1~1.25である)で、異なる質量比(SP:AMF=1:0.5~1:8)の薬物複合体を製造して得て、電子顕微鏡によれば、その形態が、SP:AMF質量比が1:1.25である薬物複合体と同じであり、すべて3D螺旋状であり、且つ赤色蛍光イメージング特性を有することが示された。異なる質量比(SP:AMF=1:0.5~1:8)のSP@AMFの赤外スペクトルは、それがSPの特徴的なピーク(1541、1654と2926cm-1)とAMFの特徴的なピーク(587、956と1012cm-1)を兼ね備えるとともに、SP@AMFにいずれも特有の特徴的なピーク(758と3302cm-1)が形成されたことを示した。
【0053】
なお、SP自体の性能及び担持量の制限により、異なるSP/AMF投入比に対応する薬物複合体におけるSP/AMF質量比は、表1に示すとおりであり、これにより、異なる製造過程におけるSP/AMF投入比と製造により得られる薬物複合体におけるSP/AMF質量比とは、正の相関関係があることが分かっており、
図2に示すように、ここで、xは、製造過程におけるSP/AMF投入比であり、yは、製造により得られる薬物複合体におけるSP/AMF質量比であり、R
2は、相関係数であり、R
2の値が1に近いほど、試験データとフィッティング関数との適合度が高くなり、本発明において、R
2は、0.9983であり、試験データとフィッティング関数との適合度が高いことを表した。
【0054】
好ましくは、SP:AMF質量比が1:1.25である薬物複合体は、混合系における投入比SP:AMF≠1:1.7(即ちSP/AMF=0.6であり、
図2に示すとおりである)を採用することで製造されたものであり、担持効率と製造コストをまとめて分析すると、この時の複合体は、最適なAMF担持量を有し、さらに、この質量比の薬物複合体を採用して後続の効果実験を行った。
【0055】
なお、実施例2~7及び比較例はいずれもSP:AMF質量比が1:1.25である薬物複合体を採用して実験を行っており、且つ他の質量比の薬物複合体は、本発明においていずれも適用可能である。
【0056】
表1
SP/AMF投入比と薬物複合体におけるSP/AMF質量比との対応付けテーブル
【0057】
実施例2.薬物担持性能の検証
フーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)装置を使用して400~4000cm
-1の範囲内にSP@AMF、SP及びAMFの赤外スペクトル(
図3)を検出し、SPが1541、1654と2926cm
-1に特徴的なピークを有し、AMFが587、956と1012cm
-1に特徴的なピークを有することを示した。SP@AMFの赤外スペクトルは、それがSPの特徴的なピーク(1541、1654と2926cm
-1)とAMFの特徴的なピーク(587、956と1012cm
-1)を兼ね備えるとともに、SP@AMFに特有の特徴的なピーク(758と3302cm
-1)が形成されたことを示した。AMFがSPに成功裏にロードされたことを証明した。
【0058】
実施例3.生体外での薬物放出性能の検出
合成した薬物複合体1mgを取り、1mLの人工胃液(SGF)に加え、37℃のシェーカでそれぞれ0、1と2時間振盪(180回転/分)した後に、遠心分離を行い、上清を除去し、沈殿物を5mLのリン酸塩緩衝液に移し、37℃のシェーカに置き振盪(180回転/分)し、それぞれ0.5、1.5、3、6、12と24時間後に、上清液におけるAMFの濃度を検出し、薬物の生体外での放出曲線図(
図4)を描いた。生体外での放出曲線によれば、薬物複合体がAMFを緩やかに放出するという特徴を有し、且つ人工胃液で1~2時間前処理しても、薬物の50%以上の放出が保証されることを証明しており、SPがほとんどのAMFを腸管に入るように保護し、緩やかに放出することができることを示した。それとともに、異なる濃度の薬物複合体を含有する人工胃液のpH値に対する検出(
図5)により、SP@AMF薬物複合体が一定の胃酸中和性能を有し、胃液の酸性を低下させ、薬物の活性の保護に有利であることを証明した。
【0059】
実施例4.経口投与後の生体内での分布と分解の検出
SPに含まれるクロロフィルの蛍光イメージング機能を利用し、生体イメージング装置により経口投与後の生体内での分布法則をモニタリングし、上記薬物複合体を蒸留水で再懸濁し、12時間絶食したBalb/cヌードマウスに対して360mg/kgの SP@AMF(AMFが約200mg/kgである)を胃内投与し、胃内投与からそれぞれ0、0.5、1、2、4、6、8、24時間後にヌードマウスを麻酔し、生体イメージング装置を用いてSPのクロロフィルチャンネル(チャンネルCy5.5、励起波長605nm、発光波長615~665nm)において蛍光画像(
図6)を撮影した。SP@AMF経口投与から3~4時間後に、小腸中段を切り取り、内容物を少し洗浄し、小腸内面を平らに伸ばし、走査型電子顕微鏡サンプルを製造し、材料の小腸絨毛間での形態(
図7)を観察するとともに、消化道の各節における内容物を取り、少し洗浄し、走査型電子顕微鏡で材料の形態変化(
図8)を観察した。結果によれば、経口投与後の材料の蛍光が常に腹部に集まり、0~6時間内に比較的高い蛍光強度を保持することができ、比較的長い腸管分布時間を有し、腸管組織における薬物の濃度累積に有利であることを示しており、走査型電子顕微鏡(
図7)によれば、螺旋状形態と腸絨毛に近い長さを有するため、薬物複合体が腸絨毛の間に広く分布し、腸絨毛と直接接触し、これが腸上皮細胞に薬物が十分に吸収されるのに有利であることを示しており、
図8によれば、消化道の近位端(胃)から遠位端(大腸)に至るまで、薬物複合体の形態が徐々に破砕し、分解されるという法則を呈しており、これが薬物の十分な放出に有利であるだけでなく、この薬物複合体が消化器系で分解されやすく、生体内での長期保存性を回避することを表した。
【0060】
実施例5.腸管放射線障害に対する薬物複合体の防護作用
消化器系におけるSP@AMFの分布法則を分析することで、経口投与後4時間程度で小腸に対する全面的なカバー及び薬物分布を実現できることを発見したため、この時点で動物に対して腹部へのX線照射を実施し、病理検査により、X線による小腸障害に対する材料の防護作用を分析した。上記薬物複合体を蒸留水で再懸濁し、12時間絶食したBalb/cシロネズミに対して360mg/kgのSP@AMF(AMFが約200mg/kg含まれる)を胃内投与し、胃内投与から4時間後に、動物を麻酔し、腹部に12Gy(線量率=8.415Gy/分)のX線照射を行った。対照群に対してそれぞれ等量の蒸留水、SPとAMFを投与した。照射から3日間後に、動物を安楽死させ、小腸組織を取り、病理切片を作製し、免疫組織化(Ki67)染色を行い、小腸の短期放射線障害程度(増殖陰窩)(
図9)を評価した。照射から30日間後に、小腸組織を取り、病理切片を作製し、マッソントリクローム(Masson’s trichrome)染色(
図10)を行い、小腸の長期放射線障害程度(線維化)を評価し、一部の小腸組織が取り出された後に、組織ホモジネートとして製造され、それにおける炎症因子IL-1β、IL-6とTNF-αの含有量を検出した(Elisaキット、Boster Biological Technology Co.Itd)(
図11、12、13)。結果によれば、SP@AMF群の十二指腸、空腸、回腸はいずれも正常に近い陰窩増殖活性を保持し、末期の線維化程度が比較的に軽く、炎症因子レベルが比較的に低く、各指標がいずれもAMF群を含む他の処理群より顕著に優れていることを示しており、この薬物複合体が腸管組織に対するAMFの放射線防護作用を明かに向上させたことを表した。
【0061】
実施例6.薬物複合体の放射線治療中の腫瘍殺傷効果への影響
腫瘍の放射線療法の臨床過程をさらに模倣するために、盲腸上皮内結腸癌の動物モデルを構築しており、続いて動物に対して放射線防護薬物複合体の経口投与と腹部への放射線療法を行った。ルシフェラーゼによってトランスフェクトされたCT26-luci結腸癌細胞をBalb/cヌードマウスの盲腸腸壁に接種し、盲腸上皮内結腸癌の動物モデルを構築し、生体イメージング装置を使用して腫瘍蛍光信号を検出してその成長をモニタリングし、腫瘍の長径が1~2センチメートルになった時、動物を12時間絶食し、360mg/kgのSP@AMFを胃内投与した。4時間後に、動物は麻酔され腹部へのX線照射が12Gy与えられた。二つの対照群はそれぞれ放射線治療無し群(偽放射線治療+等量の蒸留水の経口投与)と腹部放射線治療群(腹部へのX線照射12Gy+等量の蒸留水の経口投与)である。治療後に、毎週生体イメージング装置により腫瘍の成長状況をモニタリングし、腫瘍が長径10~12センチメートルまで成長した時、動物を安楽死させ、腫瘍を取り出し、体積測定と重量秤量を行った(
図14)。結果によれば、腹部放射線治療群が、腹部放射線治療+SP@AMF群と比較して、腫瘍体積と重量に顕著な統計学的差異がないことが示されており、この薬物複合体の使用後、腫瘍組織に対して放射線保護作用がなく、放射線治療による腫瘍の殺傷に影響を及ぼさないことを表した。
【0062】
実施例7.薬物複合体の長期経口投与の安全性検出
SP@AMFを蒸留水で再懸濁した後に、360mg/kgの用量で、Balb/cシロネズミに対して胃内投与を行い、1日1回連続投与を30日間行った後に、動物の血液を取り、血液一般検査と肝腎機能指標の検出を行い(
図15)、その期間において体重変化をモニタリングし(
図16)、対照群に対してそれぞれ等量の蒸留水、SPとAMFを投与した。結果によれば、AMF群では明らかな体重低下、血液学的指標異常と肝腎機能障害が発生したのに対し、SP@AMF経口投与後の各指標はすべて正常であり、良好なバイオ安全性を示しており、これは、SP@AMFが腸管内で緩やかにAMFを放出し、腸管局所での薬物の分布が向上し、血液中の薬物濃度が低下することによって、AMFが直接経口投与された後に広く分布することによる全身毒性が回避されたためであると推測された。
【0063】
比較実施例
実験のステップ部分は、参考特許CN110200941Aを参照した。
【0064】
ナノ薬物製剤の合成
(1)アルギニン(0.867g、4.977mmol)を40mLのモルホリノエタンスルホン酸溶液(25mM、pH5.0)に溶解し、そしてN-ヒドロキシスクシンイミド(2.291g、19.908mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.816g、19.908mmol)を順次加え、2時間活性化した。
【0065】
(2)モルホリノエタンスルホン酸に溶解したキトサン溶液(1.0g、4.977mmol)を上記混合物に加え、室温で24時間継続的に攪拌して反応させた後に、水酸化ナトリウム(0.1M)を加え、反応を終了した。
【0066】
(3)水とアセトニトリルとの混合液(v/v=1/1)に溶解したアミフォスチン(4.5mg/mL、10mL)を上記ポリマー溶液(10mg/mL、100mL)内に緩やかに滴下し、撹拌を続け、窒素ガスを一晩通し、アセトニトリルを除去し、遠心分離後に上清液を取り、凍結乾燥した。
【0067】
(4)凍結乾燥サンプル(20.0mg)をドーパミン溶液(2mg/mL、40mL、pH8.5)に移し、室温で3時間撹拌し、脱イオン水で洗浄した後に、遠心分離を行い、上清液を収集し、ナノ薬物を得、このナノ薬物のアミフォスチン担持量は、本発明におけるSP:AMF質量比が1:1.25である薬物複合体と同じである。
【0068】
実施例 生体内での放射線防護効果のテスト
上記製剤を蒸留水で再懸濁し、12時間絶食したBalb/cシロネズミに対して、AMF 200mg/kgを含む上記ナノ薬物を胃内投与し、胃内投与から4時間後に、動物を麻酔し、腹部へのX線照射を12Gy(線量率=8.415Gy/分)行った。照射から3日間後に、動物を安楽死させ、小腸組織を取り、病理切片を作製し、免疫組織化(Ki67)染色を行い、小腸の短期放射線障害程度(増殖陰窩)を評価した。照射から30日間後に、小腸組織を取り、病理切片を作製し、マッソントリクローム(Masson’s trichrome)染色を行い、小腸の長期放射線障害程度(線維化)を評価し、一部の小腸組織が取り出された後に、組織ホモジネートとして製造され、それにおける炎症因子IL-1β、IL-6とTNF-αの含有量を検出した。結果によれば、このナノ材料が、小腸の近位端(十二指腸)の陰窩増殖活性に対して一定の保護作用(正常対照群の約50%である)があるが、小腸の中段と遠位端の空腸、回腸に対する保護作用が比較的に弱く、生存陰窩数が正常対照の20%程度に過ぎず、他の指標、例えば末期線維化程度、3種類の炎症因子レベルがすべて似ている法則を呈していることを示した。上記結果によれば、このナノ薬物が、放射線性腸炎に対して一定の予防作用があるが、その保護効果がまだ十分ではなく、且つ小腸の全長を全面的にカバーすることができないことを表した。
【0069】
以上の実施例と比較例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。なお、理解すべきこととして、本発明に記述した内容を読んだ後、当業者は、本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態もまた、本出願の添付の特許請求の範囲によって限定される範囲に含まれる。