(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20250313BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20250313BHJP
H01G 11/58 20130101ALI20250313BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20250313BHJP
【FI】
H01M10/36 A
H01M10/04 Z
H01G11/58
H01G11/52
(21)【出願番号】P 2022003805
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2021023085
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021075520
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】冨安 博
(72)【発明者】
【氏名】朴 潤烈
(72)【発明者】
【氏名】杉林 祐至
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212955(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115206(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/187019(WO,A1)
【文献】特開2020-087579(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097815(WO,A1)
【文献】特開2015-181107(JP,A)
【文献】特開2021-120965(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241713(WO,A1)
【文献】特開2014-197472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/667
H01G11/00-11/86
H01M 4/00- 4/98
H01M50/00-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に配置された黒鉛と活性炭とアセチレンブラックのうち、少なく
とも1つの材料を含有する負極と、
前記容器内に配置された鉄低スピン錯体とコバルト酸リチウム(LiCoO
2)のうち、少なくとも一方の材料を含有する正極と、
前記正極および負極間に充填された
飽和状態の95%以上の過塩素酸
リチウム水溶液を具備することを特徴とする電池。
【請求項2】
容器と、
前記容器内に配置された黒鉛と活性炭とアセチレンブラックのうち、少なくとも1つの材料を含有する負極と、
前記容器内に配置されたコバルト酸リチウム(LiCoO
2)を含有する正極と、
前記正極および負極間に充填された
飽和状態の95%以上の過塩素酸リチウム水溶液を具備することを特徴とする電池。
【請求項3】
前記正極の材料は、黒鉛とコバルト酸リチウム(LiCoO
2)の混合物であり、前記黒鉛と前記コバルト酸リチウム(LiCoO
2)との含有割合は、1:0.8~1:1.5の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電池。
【請求項4】
前記
鉄低スピン錯体は、鉄(II)ポルフィリン、[Fe(phen)
3]
2+、[Fe(bipy)
3]
2+、[Fe(terpy)
3]
2+のいずれかであることを特徴とする
請求項1記載の電池。
【請求項5】
前記正極と前記負極のうち、少なくとも一方の表面はFe
2O
3でコーティングされていることを特徴とする
請求項1または請求項2記載の電池。
【請求項6】
前記負極と前記正極は同一の基板またはシートまたはフィルム上に隣接して形成または配置されていることを特徴とする
請求項1または請求項2記載の電池。
【請求項7】
前記負極は、第1の負極と第2の負極があり、
前記正極は、第1の正極と第2の正極があり、
前記第1の負極と前記第1の正極は、第1の基板または第1のシートまたは第1のフィルム上に形成または配置され、
前記第2の負極と前記第2の正極は、第2の基板または第2のシートまたは第2のフィルム上に形成または配置され、
前記第1の基板または前記第1のシートまたは前記第1のフィルムと、前記第2の基板または前記第2のシートまたは前記第2のフィルムとは、対面して配置され、
前記第1の負極と前記第2の負極は対向する位置に配置され、
前記第2の正極と前記第2の正極は対向する位置に配置されていることを特徴とする
請求項1または請求項2記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ電池と二次電池および当該電池の製造方法に関するものである。主として本発明のキャパシタ電池と二次電池は電解液に過塩素酸塩水溶液、飽和過塩素酸塩水溶液等を用いる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池としては正極にマンガン複合酸化物、負極にリチウム・アルミニウム合金を使用するマンガンリチウム二次電池(ML系)が普及している。
特許文献1には、リチウムイオン二次電池用正極材料等に特徴を有するリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリチウムイオン二次電池あるいはナトリウムイオン二次電池は、電解液に有機系電解液を用いるため、発火の危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
二次電池の起電力は負極と正極での酸化還元反応によって支配される。たとえば、リチウムイオン電池において、起電力は3V以上のものも、3V以下のものと様々である。このことは、負極と正極で起こる反応が異なるからである。
【0006】
本発明は、飽和過塩素酸リチウム水溶液等をキャパシタ電池の電解液に使用する。過塩素酸塩水溶液は、広い電位窓を有するため、二次電池の電解液として優れた特性を発揮する。
【0007】
本発明のキャパシタ電池、二次電池は、電池の電解液として、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)のうち、いずいれかの水溶液、もしくはこれらの水溶液を混合させた水溶液を使用する。なお、各過塩素酸水溶液は、98%以上の飽和過塩素酸水溶液とすることが好ましい。
また、少なくとも正極を鉄錯体で構成あるいは形成する。また、正極と負極のうち少なくとも一方の電極をFe2O3でコーティングした構成である。
本発明の電池はキャパシタの構造を有するため、電気二重層キャパシタ電池と呼ぶこともある。
【0008】
本発明の一実施態様として、キャパシタ電池、二次電池等は負極として、黒鉛、または活性炭混合物、または黒鉛と活性炭混合物で構成される。正極として、黒鉛、またはLiCoO2(あるいは酸化されて構造変化しないもの)混合物、または黒鉛とLiCoO2を使用する。
【0009】
正極材料221と負極材料231間にはセパレータ204が配置される。セパレータ204は、過塩素酸リチウム(LiClO4)水溶液に含浸されている。正極205と負極206はガスケット207により絶縁されている。
【0010】
本発明の一実施態様として、キャパシタ電池、二次電池等は正極205および負極206を1つの基板またはフィルム301上に形成する。前記基板またはフィルム301上に電解液222が配置、あるいは前記正極205および負極206が電解液222に浸漬されて構成される。
【0011】
基板301aおよび基板301bに正極材料221と負極材料231とを隣接して配置している。基板301aの正極材料221の対向する基板301bには正極材料221が配置される。基板301aの負極材料231の対向する基板301bには負極材料231が配置される。正極材料221と負極材料231の表面はFe2O3でコーティングする。基板301aと基板301b間はガスケット207で封止され、過塩素酸塩水溶液からなる電解液222が充填される。
【0012】
本発明の電池は、黒鉛と活性炭の混合物からなる負極と、コバルト酸リチウムを含有する正極と、正極および負極間に充填された過塩素酸リチウム水溶液を具備する。
【0013】
また、本発明の電池は、黒鉛と活性炭の混合物からなる負極と、黒鉛とコバルト酸リチウムを含有する正極と、正極および負極間に充填された過塩素酸リチウム水溶液を具備し、正極の黒鉛と混合せる材料との含有割合は、1:0.8~1:1.5である。
【0014】
本発明の電池は、黒鉛と活性炭の混合物からなる負極と、低スピン鉄(II)錯体材料からなる正極と、正極および負極間に充填された電解液を具備し、電解液は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)のうち、いずれかである。
【0015】
低スピン鉄(II)錯体材料は、[Fe(phen)3]2+、[Fe(bipy)3]2+、[Fe(terpy)3]2+のいずれかであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の電池は、黒鉛と活性炭の混合物からなる負極および正極と、正極および負極間に充填された電解液を具備し、電解液は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)のうち、いずれかである。
負極と正極のうち、すくなくとも一方にFe2O3をコーティングされていることが好ましい。
負極と正極は同一の基板またはシートまたはフィルム上に隣接して形成または配置する。また、負極と正極の位置は段差があるように形成または配置する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキャパシタ電池、二次電池等は、電解液をして、飽和過塩素酸塩水溶液を使用しているため、発火の恐れがない。また、飽和過塩素酸塩水溶液の伝導率は有機系電解液より10倍前後大きく、大きな電力を蓄積でき、高速充電でき、高い電流容量を得ることができる。
【0018】
水溶液系の電解液(過塩素酸塩水溶液)をキャパシタ電池に用いることにより、電池の導電性を高めると同時に火災の恐れを無い。また、キャパシタ電池の製造工程において、水分を除去したドライルームを使用する必要がないため、製造設備コストを低減できる。
【0019】
本発明のキャパシタ電池、二次電池等は正極205および負極206を1つの基板またはフィルム301上に形成しているため、セパレータ204を使用しない電池を構成することができる。したがって、セパレータ204を使用する必要がなく、正極205を負極206が短絡することがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成および説明図である。
【
図2】本発明のキャパシタ電池、二次電池の斜視図および一部断面図である。
【
図3】飽和過塩素酸塩水溶液のサイクリックボルタモグラム(CV)の説明図である。
【
図4】飽和過塩素酸リチウム水溶液のサイクリックボルタモグラム(CV)および温度変化の説明図である。
【
図5】飽和過塩素酸リチウム水溶液および飽和過塩素酸リチウム水溶液の導電率とその温度変化の説明図である。
【
図6】本発明のキャパシタ電池、二次電池の充放電動作を説明する説明図である。
【
図7】本発明のキャパシタ電池、二次電池の充放電動作を説明する説明図である。
【
図8】本発明のキャパシタ電池、二次電池の特性を説明する説明図である。
【
図9】本発明のキャパシタ電池、二次電池の特性を説明する説明図である。
【
図10】本発明のキャパシタ電池、二次電池の特性を説明する説明図である。
【
図11】本発明のキャパシタ電池、二次電池の特性を説明する説明図である。
【
図12】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図13】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図14】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図15】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図16】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図17】本発明のキャパシタ電池、二次電池の製造方法の説明図である。
【
図18】本発明のキャパシタ電池、二次電池の製造方法の説明図である。
【
図19】本発明のキャパシタ電池、二次電池の製造方法の説明図である。
【
図20】本発明のキャパシタ電池、二次電池の製造方法の説明図である。
【
図21】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図22】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【
図23】本発明のキャパシタ電池、二次電池の構成図および説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のキャパシタ電池および二次電池の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、本明細書に記載する本発明の実施例は、それぞれの実施例と一部または全部を組み合わせることができる。
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、理解、説明を容易にするため、図示を容易にするため、拡大、縮小、省略する場合がある。
【0023】
なお、本発明の実施例の説明あるいは図示において、正極、負極とは容器あるいは電極の概念として説明あるいは図示する場合がある。また、使用する電極材料の概念として説明する場合がある。また、容器、電極材料を含む概念として説明する場合がある。
【0024】
電気二重層キャパシタの充電では、負極に陽イオンの吸着を牽引するのは、負極と陽イオンの間の静電的な相互作用である。蓄電容量と充放電速度が、温度に依存せず、また電解液の導電率にも影響されない。
二次電池のように、バルクにおけるイオンの拡散が必須な場合、蓄電容量と充放電速度は温度と電解液の導電率の影響を受ける。
電解液の導電率は、セルの内部抵抗に関する支配的な因子であるから、電気二重層キャパシタにおいても重要な要素である。
【0025】
非対称型キャパシタでは、対象型キャパシタと様相が異なる。充電において、負極に活性炭あるいは活性炭と同様の機能を有する物質が存在すると、その広い表面に陽イオンが吸着し、電気的中性を維持するため、電極中に電子が蓄積する。
【0026】
対象型キャパシタでは、正極に活性炭あるいは活性炭と同様の機能を有する物質が存在するため、正極の表面に陰イオンが吸着し、電気的中性を保つため、電極中に正孔が生じる。
【0027】
非対称型キャパシタにおいて、正極に活性炭あるいは活性炭と同様の機能を有する物質が存在しない場合、負極と同じように陰イオンが正極に吸着することは不可能である負極と正極の間の電気的中性を保つためには、正極がブラスの電荷を持たねばならない。
【0028】
このことは、正極が酸化されることを意味する。正極には酸素がなく、また水も分解しないため、正極の酸化とは、正極から電子が引き抜かれることを意味し、正孔が生じる。
【0029】
ただし、通常の酸化反応のように、物質(イオン)の移動は伴わず、電子が移動するだけである。充電により、正極で酸化反応が起こるレドックスキャパシタと呼ぶことができる。
【0030】
正極に、鉄(II)低スピン錯体が存在する場合、鉄(II)低スピン錯体は酸化すると鉄(III)低スピン錯体になる。鉄II価とIII価の低スピン錯体はいずれも八面体錯体で、可逆的な酸化還元反応をする。
【0031】
鉄II価とIII価の間では、d電子が6個と5個に変化するだけで、水溶液中に両者を共存させると、電子交換反応が起こり、II価はIII価に、III価はII価に迅速に変化する。
酸化還元電位は、ヘキサシアノ鉄(II)錯体では、0.36V、トリス1,10-フェナントロリン鉄(II)錯体では、1.06Vである。
正極における負荷電圧が酸化還元電位を超えると、鉄(II)錯体は酸化されて鉄(III)錯体になる。この反応は可逆的で、迅速に進行する。
トリス1,10-フェナントロリン鉄(II)錯体、[Fe(II)(phen)3]2+の酸化還元反応を以下に示す。
1,10-フェナントロリン : phen
[Fe(II)(phen)3]2+ ←→ [Fe(III)(phen)3]3+ + e-
【0032】
低スピン鉄錯体は、II価とIII価において、八面体を維持し、構造的にはほとんど変化しない。ただし、カウンターイオン(ClO4
-)は酸化に伴い一つ増える。つまり、充電に伴い、電気的中性を維持するため、負極から正極にClO4
-が移動する。
【0033】
NaClO4を電解液とする電気二重層キャパシタでは、充電に伴い、Na+は正極から負極に移動する。セル全体の中和の観点から見ると、負極から正極へのClO4
-の移動と正極から負極へのNa+の移動は同じ現象である。
【0034】
正極に鉄(II)低スピン錯体を混合させると、正極における負荷電圧が鉄(II)錯体の酸化還元電位を超えると、鉄(II)が酸化されて鉄(III)になる。
放電では、鉄(III)は還元され、鉄(II)になる。充放電に酸化還元反応が伴うので、レドックスキャパシタであることを意味する。
【0035】
正極に鉄(II)高スピン錯体を混合させても、レドックス効果を否定するものでないが、多くの鉄(II)高スピン錯体は低スピン錯体に比べると安定ではない。
空気酸化する可能性もあるので、扱いに注意が必要である。鉄(II)硫酸塩や鉄(II)リン酸塩は安定で、特に、鉄(II)リン酸塩は水に不溶である。
以上に説明したように、鉄錯体は良好な酸化還元作用を有する。本発明は、正極の鉄錯体を用いた電池に関するものである。
【0036】
電解液は、電極の極近傍(Helmholtz層)とバルクの拡散層に分けられる。充電によるイオンの局在化はHelmholtz層の近傍に制約される。この際、陽イオンは溶媒和(水系では水和)したまま、負極に吸着する。
【0037】
飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液とする場合、
図7(b)に図示するように電極の表面に水が吸着する構造は合理的ではない。この水溶液では、水分子は金属イオンに束縛され、自由な水分子はほとんど存在しないからである。
陽イオンはカウンターイオン(ClO
4
-)から引き離されて負極表面に吸着するので、電気的中性を保つため、負極に電子が蓄積する。
【0038】
正極では、負極に吸着した電子と同じ電荷量の正に帯電した空孔(正孔)が生じる。充電によるイオンの吸着は、Helmholtz層の近傍で起こり、バルク層での拡散の影響を受けない。
【0039】
陽イオンの吸着は、電極とイオンの間の静電的相互作用により引き起こされると考えるのが妥当である。なぜならば、充放電において、イオンの拡散が律速するならば、電解液の導電率と温度による影響を受けなければならない。また、電極近傍のイオン分布に、統計力学的なボルツマン分布を適用することも支持できない。ボルツマン分布は温度の関数だからである。
【0040】
二次電池では、酸化還元反応に物質移動が含まれるため、バルク層におけるイオンの拡散が不可欠である。酸化還元反応がどれほど速くても、拡散速度に律速されるため、電解液の導電率と温度による影響を受けることになる。
【0041】
二次電池における充電速度は原理的に拡散速度より速くはない。電気二重層キャパシタでは、充放電速度を支配するのは、負極と陽イオンの間の静電的な相互作用であり、陽イオンのイオン半径と電荷が重要な因子となる。
電気二重層キャパシタの電解液として、飽和LiClO4と飽和NaClO4水溶液を用いた場合を比較する。
【0042】
集電極はチタン箔、活物質は活性炭と黒鉛の混合物である。チタン上に活物質を塗布技術、印刷技術等を用いて形成する。また、チタン箔の他、ステンレス箔、鉄箔、銀箔等の他の金属箔、金属板を用いることができることは言うまでもない。
【0043】
二つのキャパシタの違いは、陽イオンでのLi+とNa+だけである。Li+はNa+よりイオン半径は小さいが、水和半径ではLi+が大きいとされている。Na+とLi+は共にhardな酸に分類され、負極との間で、強い静電的な相互作用が期待される。
【0044】
イオンが電極に吸着する際、
図7(a)に示すように、水和を伴って移動する。ここで、飽和LiClO
4水溶液の重量モル濃度は5.27m(mol/kg)、飽和NaClO4水溶液の重量モル濃度は17.1mである。
【0045】
LiClO4の水への溶解度は高くないが、それも電位窓は飽和NaClO4水溶液と同等である。このことは、Li+の水和力が強いことの証でもある。水の束縛は第二配位圏に及ぶとされている。飽和LiClO4水溶液の導電率は20℃で200mS/cmを超え、飽和NaClO4水溶液と比べると約2倍大きい。
【0046】
図8に、飽和NaClO
4水溶液と飽和LiClO
4水溶液を電解液とした場合、活性炭の比率とエネルギー密度の関係を示す。いずれの電解液においても、エネルギー密度は活性炭の比率に比例して増加する。
【0047】
図8に示すように、エネルギー密度の値は、飽和NaClO
4水溶液の方が飽和LiClO
4水溶液より僅かに大きい。このことは、Li
+の水和半径がNa
+より大きいことに起因していると考えられる。
【0048】
したがって、Na+がLi+より、イオンの容積が小さく(Stokes半径では、Na+とLi+は、それぞれ、1.84と2.38Å)、その結果、Na+では、より多くのイオンが電極に吸着することになり、蓄電容量が大きくなる。
【0049】
この際、飽和LiClO4水溶液の重量モル濃度は5.27mと比較的に低いが、エネルギー密度と活性炭比率が比例するので、電解液として十分に濃厚であることを意味する。
【0050】
導電率は、飽和LiClO4水溶液が飽和NaClO4水溶液より2倍大きい。それに関わらず、前者ではエネルギー密度が後者より小さいことは、導電率が蓄電容量には影響を与えないことを支持する。
【0051】
非対称キャパシタでは、対象型電気二重層キャパシタと様相が変わる。
図10では、負極は黒鉛(アセチレンブラックを含む)と活性炭の混合物であり、正極は黒鉛(アセチレンブラックを含む)のみで構成されている。
【0052】
充電時におけるセル電圧は、約3Vである。放電時におけるcut-off電圧は2.5Vから3.2Vに変化させている。放電時におけるcut-off電圧3.2Vと2.7Vの差が大きい。cut-off電圧2.7V以下では、蓄電能力が非常に低いことが分かる。
このことは、正極において、陰イオン、ClO4
-が吸着する電極表面が小さく、電極で正孔が生じ難いことを意味する。
【0053】
しかし、cut-off電圧3.2Vでは、放電曲線が一変し、エネルギー密度も20Wh/kgになる。このことは、以下のように説明される。正極において、印加電圧がしきい値を超えると、黒鉛が酸化される。酸化と言っても、正極には酸素がなく水も分解しない。結局、黒鉛から電子が引き抜かれ、正孔が生じる。即ち、正極では、以下の酸化反応が起こる。Cは黒鉛である。
C → C
+ + e
-
通常は物質移動を伴うが、ここでは、物質移動はなく、電子移動だけが起こる。
図11は、別の形の非対称キャパシタである。カーボンクロスにFe
2O
3をコーティングすると、活性炭のように表面積の大きな電極になる。
【0054】
図11(a)は正極と負極は共にFe
2O
3をコーティングしている。
図11(b)は負極のみにFe
2O
3をコーティングしている。正極はカーボンクロスのみである。
【0055】
図11(a)に図示するように、カーボンクロスにFe
2O
3をコーティングした電極を負極と正極に使うと、活性炭に勝るとも劣らない電気二重層キャパシタができる。一方、
図11(b)に図示するように、負極にFe
2O
3をコーティングし、正極にカーボンクロスのみを用いると、蓄電容量は極端に減少する。
図11(a)の実施態様のように、カーボンクロス等で電極を形成し、前記電極にFe
2O
3をコーティングした電極を採用することが好ましい。
【0056】
以上の結果から、電気二重層キャパシタは負極によりけん引され、活性炭あるいは活性炭と同様の機能を有するものが存在すれば、そこにイオンが吸着し、負極では電子が蓄積する。
【0057】
正極では、セル全体の電気的中性を保つため、正孔が蓄積する。非対称キャパシタでは、正極に、活性炭あるいは活性炭と同様の機能を有するものが存在しない場合、正極が酸化されることがある。この場合、エネルギー密度は活性炭を有する対称型電気二重層キャパシタに劣らない大きさを持ち、放電曲線は二次電池のようにプラトーな特性を示す。
【0058】
正極の添加物として、鉄(II)低スピン錯体を想定する。鉄以外の遷移金属錯体でも同様である。冒頭に述べたように、鉄(II)低スピン錯体は酸化すると鉄(III)低スピン錯体になる。
【0059】
酸化還元電位は、ヘキサシアノ鉄(II)錯体では、0.36V、トリス1,10-フェナントロリン鉄(II)錯体では、1.06Vである。正極における負荷電圧が酸化還元電位を超えると、鉄(II)錯体は酸化されて鉄(III)錯体になる。
【0060】
この反応は可逆的で、迅速に進行することが知られている。トリス1,10-フェナントロリン鉄(II)錯体、[Fe(II)(phen)3]2+,の酸化還元反応を以下に示す。
ここで、phen : 1,10-フェナントロリンである。
[Fe(II)(phen)3]2+ ←→ [Fe(III)(phen)3]3+ + e-
【0061】
低スピン鉄錯体は、II価とIII価において、八面体を維持し、構造的にはほとんど変化しない。ただし、カウンターイオン(ClO4
-)は酸化に伴い、一つ増える。つまり、充電に伴い、電気的中性を維持するため、負極から正極にClO4
-が移動する。
【0062】
電気二重層キャパシタにおいても、セル全体では、イオンは移動している。例えば、NaClO4を電解液とする場合、充電に伴い、Na+は正極から負極に移動する。二次電池との違いは、電気二重層キャパシタでは、イオンの移動が律速段階にならないことである。セル全体の中和の観点から見ると、負極から正極へのClO4
-の移動と正極から負極へのNa+の移動は同じ現象である。
【0063】
非対称キャパシタを実用化の観点から見ると、充電による正極での酸化反応は、セル電圧が2~2.5Vで起こることが望ましい。鉄(II)低スピン錯体は数多く存在するので、その中から、先の条件を満たす錯体を選べば良い。
鉄(II)低スピン錯体には、天然由来の錯体がある。鉄(II)ポルフィリン錯体は哺乳動物の血液から分離できる。
活物質として、汎用の活性炭や安価な金属化合物を用いることを前提にし、長時間の安定性を考えると、cut-off電圧は2.5~2.7Vとする。
【0064】
図9において、電極中の黒鉛と活性炭の比率を変えると、活性炭の比率に比例してエネルギー密度は増加する。このことは、イオン濃度は十分に高く、活性炭の増加と共に吸着するイオン濃度が増加することを意味する。黒鉛と活性炭の混合物では、活性炭70%が限界であるが、活性炭とアセチレンブラックとの混合物では、活性炭を90%まで上げることができる。その場合、エネルギー密度は30Wh/kgを超える。
これまでの結果から、活性炭を電極に用いると、30Wh/kgが水系電気二重層キャパシタにおけるエネルギー密度が得られる。
【0065】
以下、本発明のキャパシタ電池(電気二重層キャパシタ電池)をリチウムイオン二次電池形態に構成することを例示して、実施形態に係るキャパシタ電池、二次電池の構造等を、図面を参照して説明する。
図1は、キャパシタ電池の一例を示す断面図である。
【0066】
図1ではコイン型のリチウムイオン二次電池を例示して説明しているが、本発明の技術的思想は、これに限定するものではない。たとえば、
図2に図示するように円筒形等であっても良いことは言うまでもない。その他、フィルム形状、箱型形状が例示される。
【0067】
図1に図示するように、本発明のキャパシタ電池の一例としてのリチウムイオン二次電池は、正極205をなす導電体に正極材料221が形成または配置されている。負極206をなす導電体に負極材料231が形成または配置されている。正極材料221と負極材料231間にセパレータ204が配置され、セパレータ204は電解液222が充填、浸透、含浸されている。
【0068】
図1では省略しているが、正極205には正極端子202が接続され、負極206には負極端子203が接続される。正極205と負極206間はガスケット207により絶縁されている。
【0069】
正極は正極205の内面に位置して接続される正極材料221で構成され、負極は正極材料221と対面する位置に配置され、正極と負極間にセパレータ204が配置される。
【0070】
正極材料221は、コバルトを含有する材料を使用する。たとえば、黒鉛とコバルト酸リチウム(LiCoO2)の混合物を使用しても良い。また、黒鉛と混合せる材料との含有割合は、1:0.8~1:1.5の範囲とすることが好ましい。
【0071】
また、黒鉛とコバルトを使用する材料(LiCoO2)の混合物、黒鉛とマンガンを使用する材料(LiMn2O4)の混合物、黒鉛とニッケルを使用する材料(LiNiO2の混合物)、黒鉛とリン酸鉄を使用する材料(LiFePO4)の混合物、黒鉛と酸化鉄を使用する材料(Fe2O、Fe2O3)の混合物が例示される。また、炭素量子ドット(Carbon quantum dots:CQDs)も例示される。
以上のように、正極としてコバルト酸リチウムの他、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム等を用いることができる。
【0072】
図11で説明したように、正極と負極のうち少なくとも一方は、Fe
2O
3をコーティングする。好ましくは、正極および負極は共に、Fe
2O
3をコーティングすることが好ましい。
【0073】
LiCoO2等の混合物は酸化されて構造変化しないものであればいずれの酸化物であっても良い。なお、黒鉛に限定するものではなく、グラファイト系、コークス系等のカーボン材料を使用することができる。
【0074】
黒鉛とコバルトを使用する材料(LiCoO2)の混合物を使用しても良い。また、黒鉛と混合せる材料との含有割合は、1:0.8~1:1.5の範囲とすることが好ましい。
【0075】
黒鉛と混合させる材料は、酸化材料に限定されるものではない。たとえば、黒鉛と鉄フェナントロリン錯体([Fe(phen)3](ClO4)2)を使用する材料の混合物、黒鉛と鉄シアノ錯体(Li4[Fe(CN)6])を使用する材料の混合物が例示される。
【0076】
鉄(II)錯体の配位子はフェナントロリンに限らずビピリジンのような低スピン錯体を形成するものでも良い。他に、黒鉛と水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を使用する材料の混合物が例示される。
【0077】
負極は負極206の内面に位置して接続される負極材料231で構成される。負極材料231として、黒鉛(LiC6)、ハードカーボン(LiC6)、チタネイト(Li4Ti5O12)、チタン酸リチウム(LTO)が例示される。
【0078】
セパレータ204は、過塩素酸リチウム(LiClO4)等の過塩素酸塩水溶液に含浸されている。過塩素酸塩水溶液は飽和過塩素酸塩水溶液であることが好ましいが、飽和状態に近い水溶液でも性能、効率に差異はない。飽和状態の95%以上であれば良い。さらに好ましくは、98%以上であれば良い。
【0079】
負極206は、その端部がその下端および両側面をガスケット207で包んだ状態で正極205内に挿入され、負極206を正極205にかしめて固定するとともに、負極206および正極205とはガスケット207により絶縁している。
【0080】
図6は、本発明の電気二重層キャパシタ電池の充放電の動作を説明する説明図である。
図6において、
図6(a)は充電器101により電気二重層キャパシタ電池に充電しているときの動作の説明図であり、
図6(b)はモバイル機器102等の負荷装置に放電しているときの動作の説明図である。
【0081】
電気二重層キャパシタ電池は、電解液中に溶解しているイオンの局在化で発生する。即ち、溶液に電圧を印加すると、陽イオンは負極に、負イオン正極に局在化する。電気的中性を保つため、負極には電子が吸着し、正極では正に帯電した空孔が生じる。
【0082】
図6(a)に図示するように、Liイオン電池において、電圧を印加すると、下の式に示すように、正極では、コバルトが、部分的に、3価(LiCoO
2)から4価(CoO
2)に酸化される。部分的は、x < 1 で表現される。
LiCoO
2 ←→ Li
(1-x)CoO
2 + xLi
+ + xe
- 正極 (式1)
6xC + xLi
+ + xe
- ←→ xC
6Li 負極 (式2)
【0083】
一方、負極では、リチウムイオンが黒鉛にインターカレーション(Intercalation)して、部分的に還元される。つまり、正極で放出されたLi+が負極で還元されC6Liになる。
【0084】
この時、インターカレーションしたC6Liの酸化還元電位(C6Li / Li+=2.90)は単体Liにおける(Li / Li+=3.05)より低い。正極(反応1)における電位は0.90Vであるから、(式1)と(式2)を加えると全反応(電池)の起電力は3.8Vになる。しかし、xの値により起電力は変わる。実際に、東芝の水系リチウムイオン電池では、2.4Vで稼働している。
【0085】
負極に黒鉛を用いた電気二重層キャパシタ電池では、正極で酸化されるものがなく、正に帯電した空孔が発生して電気的中性を維持している。負極では、Li+は還元されることなく、単に電極中に局在化する。
【0086】
正極に、LiCoO2のように酸化される物質が存在すると、ある電圧(起電力を超えた)では、負極のLi+は黒鉛にインターカレーションしてC6Liを生成する。つまりLi+は還元される。この場合、リチウムイオン電池の負極と同じ現象が起こる。
つまり、リチウムイオン電池と本発明の電気二重層キャパシタ電池との違いは正極の混合物だけである。
【0087】
図6(a)のように電圧を印加すると、電圧上昇に伴い充電が開始する。最初は全て電気二重層キャパシタ電池によるものである。2V以上で、ある電圧(起電力)を超えると、リチウムイオン電池と同様の酸化還元反応が発生する。Cut-off電圧は2.7Vとする。これは、電気二重層キャパシタ電池に酸化還元反応を付随させた新しい概念の蓄電デバイスと言える。
【0088】
大電流を印加したとき、酸化還元反応は追いつかず、電気二重層キャパシタ電池のみが機能する。小電流を長い時間をかけ印加すると、起電力を超えた電圧で、酸化還元反応が起こり、全体のエネルギー密度は著しく増加することになる。
【0089】
たとえば、我々が開発した電気二重層キャパシタ電池において、電流密度20mA/cm2で、充放電容量0.03mAh/cm2が得られている(クーロン効率はほぼ100%)。このことは、5.4秒で満充電し、0.03mAh/cm2の充電容量が得られることを意味する。
【0090】
5.4秒間では、二次電池(酸化還元反応)はほとんど応答せず、急速充電では電気二重層キャパシタだけが機能することになる。他方、低い電流密度で長時間充電する、たとえば電流密度が1/10以下では、二次電池つまり酸化還元反応が機能し始める。
【0091】
負極では、Li+は黒鉛にインターカレーションしてC6Liを生成し、部分的に還元される。正極では、たとえば、LiCoO2は部分的に酸化されLi(1-x)CoO2になる。もし正極に[Fe(phen)3](ClO4)2が存在すると、酸化されて[Fe(phen)3](ClO4)3になる。つまり、鉄は2価から3価に酸化される。
【0092】
上記の蓄電方式は、広い電位窓の水系電解液において初めて可能である。電解液の電位窓が狭いと印加電圧を高くすることができず、酸化還元反応は起こらない。即ち二次電池として機能しない。これまで報告されているレドックスキャパシタとは本質的に異なる。同様に、有機系電解液を用いても行うことはできるが、有機系電解液における電気二重層キャパシタの蓄電容量は二次電池の数%にしかならず、ほとんど誤差の範囲となる。
【0093】
二次電池は負極と正極で起こる酸化還元反応を電気エネルギーに変換するものである。電解液の役割は、電子とイオンが負極と正極の間での移動を可能にすることである。
【0094】
電位窓が3V以上の飽和過塩素酸リチウム水溶液は、リチウムイオン電池の電解液に使用することができる。飽和でなくても、飽和に近い濃厚水溶液において、広い電位窓を有するため、二次電池の電解液に使用することができる。
【0095】
飽和過塩素酸塩水溶液を二次電池の電解液にするためには、電解液の電位窓は固有であるので、二次電池の起電力が電解液の電位窓よりも小さなものを選ばなければならない。
【0096】
セパレータ204に固体電解質を用いても良い。固体電解質は負極と正極の間のイオンの移動を抑えるため、個々の電極、即ち負極と正極には独立して印加されるため、充電において、負極における還元電位と正極における酸化電位を低く抑えることができる。
【0097】
そのため、電位窓の狭い水溶液を電解液にすることが可能になる。飽和過塩素酸リチウム水溶液は、他の水溶液よりも電位窓が広く(25℃で3.2V)、電解液として好ましい。
【0098】
本発明は、電位窓が広いため、安定して長時間の使用が可能である。ナトリウムイオン電池においても、同様に飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液として使用することができる。
【0099】
飽和過塩素酸塩水溶液は過塩素酸リチウム(LiClO4),過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)および過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)である。これら飽和過塩素酸塩水溶液を二次電池の電解液に用いる。
【0100】
本発明の実施例において、電解液として、飽和過塩素酸塩水溶液を用いるとして説明するが、飽和に限定するものではない。飽和に近い過塩素酸塩水溶液であっても、効果、能力、性能に大きな差異はない。したがって、過塩素酸塩水溶液を用いても良いことはいうまでもない。
【0101】
図1、
図2等は、本発明の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)の斜視図および一部断面図である。本発明の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)を筒状に構成した実施態様である。なお、図示を容易にするため、正極205、負極206等を省略している。本発明の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)等は、その他、箱型、板状等の多種多様な形状に構成できることは言うまでもない。
【0102】
図1、
図2等に図示するように、本発明の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)は容器107に、正極材料221、負極材料231、セパレータ204が構成され、また、必要に応じて、正極材料221、負極材料231、セパレータ204間等に絶縁フィルム108が配置される。
セパレータ204、正極材料221、負極材料231間には電解液222が充填され、また、正極材料221、負極材料231中に電解液222が充填される。
図3は、飽和過塩素酸塩水溶液のサイクリックボルタモグラム(CV)の説明図である。参照電極としてAg/AgCl電極を用いた。
図3に図示するCV測定において、平坦な部分では電流が流れていない。つまり、水の分解反応が起きていないことを意味する。平坦な部分が電位窓である。
【0103】
飽和過塩素酸ナトリウム水溶液と飽和過塩素酸リチウム水溶液では電位窓は3.2Vで、飽和過塩素酸マグネシウムと飽和過水溶液と飽和過塩素酸バリウム水溶液においても広い電位窓(約3V)を持つことが分かる。
【0104】
このことは飽和過塩素酸リチウム(LiClO
4)水溶液、飽和過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)水溶液、飽和過塩素酸バリウム(Ba(ClO
4)
2)水溶液および飽和過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)
2)水溶液が、二次電池の電解液に使えることを意味する。
図3に図示するように、過塩素酸塩水溶液の飽和水溶液は広い電位窓を持つ。これらの水溶液を電解液にすると高い印加電圧を操作することが可能である。
【0105】
図4は、飽和過塩素酸リチウム水溶液のサイクリックボルタモグラム(CV)および温度変化の説明図である。参照電極としてAg/AgCl電極を用いている。
CVは温度に依存するので、電位窓も温度により変化する。25℃では3.2Vであるが、40℃で3.0V、60℃では、2.8Vに減少する。
【0106】
図4において、25℃では飽和水溶液であるが、温度上昇に伴い、過塩素酸リチウムの溶解度は増加するので、40℃と60℃では、飽和状態ではなく、飽和状態に近い濃厚水溶液である。
【0107】
図4において、40℃と60℃では、広い電位窓を維持している。即ち、飽和に近い濃厚水溶液においても電位窓が広く、二次電池の電解液として使用することができる。
【0108】
過塩素酸リチウム(LiClO
4)以外の水溶液も電解液として用いることができる。たとえば、過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO
4)
2)、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO
4)
2)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO
4)
2)または過塩素酸アルミニウム(Al(ClO
4)
3)といった過塩素酸塩水溶液が例示される。
図5は、飽和過塩素酸リチウム水溶液および飽和過塩素酸リチウム水溶液の導電率とその温度変化の説明図である。
飽和過塩素酸リチウム水溶液の導電率は飽和過塩素酸ナトリウム水溶液の導電率より倍以上大きい。いずれの場合も、導電率は温度上昇と共に上昇する。
【0109】
図5において、グラフの横軸は温度とし、縦軸は導電率でミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm)としている。過塩素酸リチウム(LiClO
4)水溶液の導電率は、飽和NaClO
4水溶液よりも約2倍高く、飽和LiClO
4水溶液は優れた電解液である。
【0110】
以上の結果、飽和過塩素酸リチウム(LiClO4)水溶液を電解液に使用すると、25℃において、最大3.2Vの印加電圧が可能で、60℃においても2.8Vの印加電圧が可能である。
【0111】
過塩素酸リチウム(LiClO4)水溶液の導電率は過塩素酸ナトリウム(NaClO4)水溶液よりも高く、電気二重層キャパシタ電池(二次電池)の電解液として好ましい。
【0112】
水は水素結合を介してクラスター状に大きな構造を形成している。このクラスター構造が水の結合を弱め、結果として電位窓を狭くしている。逆に、独立したH2Oなら、電位窓は広いことが推測される。このことを可能にしたのが超濃厚水溶液である。
【0113】
飽和過塩素酸ナトリウム水溶液の重量濃度は (25℃において17.1mol/(水1kg))と超濃厚で、水のクラスター構造はほぼ破壊されていると推測される。
【0114】
上述の飽和過塩素酸ナトリウム水溶液、飽和過塩素酸リチウム水溶液、飽和過塩素酸マグネシウム、飽和過塩素酸カルシウム、飽和過塩素酸バリウム、飽和過塩素酸アルミニウム、飽和硫酸マグネシウム水溶液、飽和硫酸カリウム水溶液および飽和硫酸ナトリウム水溶液のうち、複数の飽和水溶液を混合した混合物を電解液として用いることもできる。
【0115】
飽和過塩素酸ナトリウムの水溶液と飽和過塩素酸リチウム水溶液との混合物というような2種の飽和水溶液の組み合わせによる混合物に限られない。また、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液、飽和過塩素酸リチウム水溶液および飽和過塩素酸バリウム水溶液の混合物というような3種以上の飽和水溶液の混合物であっても良い。
かかる混合物には、必ずしも過塩素酸リチウム水溶液を含まなくともよく、様々な組み合わせによる混合物を電解液として用いることができる。
【0116】
リチウムイオン電池に、飽和過塩素酸リチウム水溶液あるいは飽和に近い濃厚な過塩素酸リチウム水溶液を電解液に用いるとしたが、リチウムイオン電池と同様、ナトリウムイオン電池において、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液に用いることも本発明の技術的範疇である。
【0117】
以下、本発明の他の実施例について説明をする。以前に説明した事項と同一あるいは類似の事項、内容は説明を省略することがある。また、本明細書、図面で記載した実施例は一部または全部を組み合わせることができる。
【0118】
図12は、本発明の他の実施例における電池の構成図および説明図である。
図1、
図2の実施例では、負極材料231と正極材料221がセパレータ204と対面した位置に配置されている。
【0119】
図12の本発明の実施例では、基板あるいはフィルム(シート)(以下、基板(フィルム)と呼ぶ)301aに負極材料231と正極材料221が交互に隣接して配置または形成されている。負極材料231と正極材料221の周囲には電解液222が充填されている。
【0120】
また、基板(フィルム)301bに正極材料221と負極材料231が交互に隣接して配置または形成されている。正極材料221と負極材料231の周囲には電解液222が充填されている。
【0121】
基板(フィルム)301aの正極材料221の対向位置には、基板(フィルム)301bの正極材料221が配置されている。基板(フィルム)301aの負極材料231の対向位置には、基板(フィルム)301bの負極材料231が配置されている。基板(フィルム)301aと基板(フィルム)301b間にはセパレータ204が配置され、セパレータ204はガスケット207に取り付けられている。基板(フィルム)301a、基板(フィルム)301b、セパレータ204の周囲には電解液222が充填されている。
【0122】
基板(フィルム)301aの正極材料221に対向する位置には基板(フィルム)301bの正極材料221が配置または形成され、基板(フィルム)301aの負極材料231に対向する位置には基板(フィルム)301bの負極材料231が配置または形成されている。
図1において、セパレータ204は電解膜として機能するが、負極材料231と正極材料221が接触することを防止する機能も有する。
【0123】
図12の実施例では、基板(フィルム)301aの正極材料221に対向する位置には基板(フィルム)301bの正極材料221が配置または形成されているため、セパレータ204aがなく、基板(フィルム)301aの正極材料221と、基板(フィルム)301bの正極材料221とが接触しても、電気的短絡が発生することがない。
また、電解液222と隣接した正極材料221と負極材料231で電池を構成するため効率が良好である。
各基板(フィルム)301の正極材料221は正極として、負極材料231は負極として機能し、電解液222を機能させて電池を構成する。
【0124】
基板(フィルム)301a、基板(フィルム)301dは片面に負極材料231、正極材料221が配置または形成されている。基板(フィルム)301b、基板(フィルム)301cは、両面に負極材料231、正極材料221が配置または形成されている。
【0125】
各基板(フィルム)301の両端はガスケット207で封止され、各セパレータ204(セパレータ204a、セパレータ204b、セパレータ204c)が配置され、対向せする電極材料が接触することを防止している。
基板(フィルム)301a、基板(フィルム)301b、基板(フィルム)301c、
基板(フィルム)301dは、容器107内に保持される。
基板(フィルム)301は多数に積み重ねることにより、電力容量を増加させることができる。
【0126】
図13は、本発明の他の実施例における電池の構成図および説明図である。
図13において、負極材料231に負極コーティング材303を被覆(コーティング)し、正極材料221に正極コーティング材302を被覆(コーティング)している。
【0127】
図11で説明したように、カーボンクロス等で構成あるいは形成された電極材料にFe
2O
3をコーティングすると、活性炭のように表面積の大きな電極になる。
図11(a)では正極と負極は共にFe
2O
3をコーティングしている。
図11(b)は負極のみにFe
2O
3をコーティングしている。
【0128】
図13に図示するように、正極材料221にFe
2O
3等の酸化鉄材料を正極コーティング材302として被覆し、負極材料231にFe
2O
3等の酸化鉄材料を負極コーティング材303として被覆することにより、活性炭のように表面積の大きな電極になり、電池効率が向上する。なお、コーティング材による電極の被覆は、正極材料221と負極材料231のうち、一方の電極材料に形成しても良い。
図13の実施態様のように、カーボンクロス等で電極を形成し、前記電極にFe
2O
3をコーティングした電極を採用することが好ましい。
【0129】
図12、
図13で図示するように、対向する位置に同一極性の電極を配置することにより、対向する位置の電極(たとえば、基板(フィルム)301aの正極材料221と、基板(フィルム)301bの正極材料221)が積極しても電池機能としては動作する。したがって、電極材料が接触を防止する機能として使用するセパレータ204は不要である。なお、
図13の構成においても、セパレータ204を使用しても良いことは言うまでもない。
図14、
図15は、本発明の他の実施例における電池等の構成図及び説明図である。主として、セパレータ204が構成または配置されていない場合における状態を図示している。
【0130】
図14は、正極材料221と負極材料231の配置図の説明図である。正極材料221と負極材料231とは、櫛歯状に形成され、隙間をあけて配置されている。電極材料の周囲はガスケット207が配置され、ガスケット207内には電解液222が充填されている。
正極材料221の一端は正電位を印加する電極端子304aに接続されている。負極材料231の一端は負電位を印加する電極端子304bに接続されている。
櫛歯状に形成された正極材料221と、櫛状に形成された負極材料231と、充填された電解液222で電池等を構成する。
【0131】
基板(フィルム)301a上に、正極材料221と負極材料231とを隣接して配置または形成することにより、セパレータ204は不要となる。櫛歯状に形成することにより、正極材料221と負極材料231とが隣接する面積が広くなり、良好な電流容量を実現できる。
【0132】
なお、
図14等において、電極材料は櫛歯状として図示したが、これに限定するものではなく、1平面において、正極材料221と負極材料231とが隣接するように配置または形成した構成であればいずれの構成であっても良い。
【0133】
図15は、
図14のAA’線での断面図である。
図15(a)は基板301aに正極材料(正極)と負極材料(負極)が形成あるいは構成された実施例である。
図15(b)は基板301aおよび基板301bに正極材料(正極)と負極材料(負極)が形成あるいは構成された実施例である。
【0134】
図15(a)は、基板301bに電解液222の充填穴(入出穴)305が形成されている。入出穴305aから電解液を注入することができ、入出穴305bから電解液を注出することができる。したがって、電解液222を入れ替えることができる。
【0135】
電解液222は、電池の使用により劣化する。したがって、一定以上、電解液222を入れ替えることが好ましい。また、電解液は基板301aと基板301bとをガスケット207で組み立ててから、注入すると電池の製造が容易となる。
【0136】
入出穴305は、基板301aと基板301bの両方に形成または配置して良い。また、ガスケット207、容器107等に電解液222等の入出穴(図示せず)を形成し、この入出穴(図示せず)から電解液222を注入、注出しても良い。また、常時、入出穴305aから注入し、入出穴305bから注出するように構成し、電解液222を巡廻させても良い。
【0137】
図15(b)等の本発明の電池等において、基板301a正極材料221と基板301b正極材料221とを対向位置に配置し、基板301a負極材料231と基板301b負極材料231とを対向位置に配置することが好ましい。基板301a、基板301bが外部押圧などにより変形し、基板301aの正極材料221と基板301bの正極材料221が接触し、また、基板301aの負極材料231と基板301bの負極材料231とが接触しても電池の動作的に問題が少ないからである。
図14、
図15は、基板301に正極材料221、負極材料231を隣接して、平面上に配置または形成した構成である。
【0138】
図16は、基板301aに段差tを形成した構成である。段差tは、凸部307の形成により作製する。凸部307は、基板301aに樹脂などを使用して形成しても良いし、基板301aを溝状に切削して形成しても良い。
【0139】
図16の実施例では、凸部307に正極材料221を形成し、凹部308に負極材料231を形成しているとして図示している。なお、正極材料221と負極材料231の位置は、この逆でも良い。たとえば、凸部307に負極材料231を形成し、凹部308に正極材料221を形成する。
【0140】
段差tは、正極材料221と負極材料231の膜厚で決定する。正極材料221あるいは負極材料231の膜厚をaとすれば、t > aの関係となるように形成し、さらに好ましくは、2t > aの関係となるように形成する。
【0141】
図16では、凹凸がある基板301aに、正極材料221、負極材料231が形成され、基板301bと基板301a間に電解液222が充填されている。正極材料221、負極材料231と、その間にある電解液222でキャパシタ電池等が構成される。
本発明の電池の製造方法では、正極材料221、負極材料231は、蒸着技術、スパッタ技術で形成する。
【0142】
【0143】
基板301aには段差tが形成されている。凸部307は、基板301aに樹脂などを使用して形成しても良い。基板301aを溝状に切削して凹部308を形成しても良い。
【0144】
図17(a)に図示するように、基板301aに櫛歯状の凹部308、凸部307が形成され、凹部308の一端には負電圧を印加する電極端子304aが配置され、凹ぬ308の一端には正電圧を印加する電極端子304bが配置される。なお、櫛歯状に限定されるものではなく、少なくとも一対の凸部307と凹部308とが形成すれば良い。
【0145】
図18は、基板301aに蒸着技術(蒸着製膜)により膜306を形成している実施例である。なお、蒸着技術(蒸着製膜)に限定されるものではなく、スパッタリング成膜を採用しても良い。また、イオンプレーティング、気相成長(CVD)を用いて膜306を形成あるいは構成しても良いことは言うまでもない。
【0146】
蒸発源から蒸着材料309(正極材料221、負極材料231)が蒸発され、上方に配置された基板301aの膜306が蒸着される。膜306aが正極材料221となり、膜306bが負極材料231となる。
【0147】
正極材料221と負極材料231とは、同一の蒸着材料309で形成されるが、段差tがあるため、蒸着膜306は「膜段切れ」し、蒸着膜306aと蒸着膜306bに分離される。
【0148】
凸部307に形成された蒸着膜306aが正極材料221となり、凹部308に形成された蒸着膜306bが負極材料231となる。したがって、1回の蒸着工程において、段差tにより、正極材料221と負極材料231とを同時に形成または構成することができる。かつ、段差tにより、
図17(a)に図示するように、櫛歯状に正極材料221と負極材料231とを形成することができる。また、電極端子304a、電極端子304bとを、蒸着材料309で形成することができる。
【0149】
図11等で説明したように、正極材料221と負極材料231を酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)でコーティングする場合は、蒸着膜306(蒸着膜306a、蒸着膜306b)を形成後、蒸着材料309として、酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を使用して、蒸着膜306(蒸着膜306a、蒸着膜306b)上に酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を形成する。
なお、電極端子304a、電極端子304bの蒸着材料309は、Niめっき、Cuめっき等のめっき技術でめっき膜を形成することが好ましい。
【0150】
図18の本発明の製造方法の実施例は、正極材料221と負極材料231とを同一材料で形成する場合の実施例である。
図19の本発明の製造方法は、正極材料221と負極材料231とは、異なる材料で形成する場合の実施例である。
正極材料221と負極材料231で、形成材料を変化あるいは変更するためには、蒸着マスク310を使用する。
【0151】
図19(a)で図示するように、凹部308部に開口部を有する蒸着マスク310aを基板301aの下に配置する。蒸着材料309は蒸着マスク310aの開口部を通過して基板301aの凹部308に蒸着膜306bとして蒸着される。蒸着膜306bは負極材料231となる。蒸着マスク310aの配置はこの逆でも良い。凸部307部に開口部を有する蒸着マスク310aを基板301aの下に配置する。蒸着材料309は蒸着マスク310aの開口部を通過して基板301aの凸部307に蒸着膜306bとして蒸着される。
【0152】
図19(b)で図示するように、凸部307部に開口部を有する蒸着マスク310bを基板301aの下に配置する。蒸着材料309は蒸着マスク310bの開口部を通過して基板301aの凸部307に蒸着膜306aとして蒸着される。蒸着膜306aは正極材料221となる。また、蒸着マスク306に位置は前述の逆位置でも良い。
【0153】
図19の実施例では、正極材料221の形成に使用する蒸着マスク310aと、負極材料231の形成に使用する蒸着マスク310bを使用することにより、正極材料221と負極材料231とは、異なる材料で形成することができる。
【0154】
図20に図示するように、正極材料221と負極材料231とのうち、一方の電極材料を形成し、かつ、
図11等で説明したように、電極材料を酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)でコーティングする場合は、蒸着膜306(蒸着膜306aまたは蒸着膜306b)を形成する。次に、蒸着材料309として、酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を使用して、蒸着膜306(蒸着膜306aまたは蒸着膜306b)上に酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を形成する。
正極材料221と負極材料231のうち、一方の電極を形成するためには、蒸着マスク310を使用する。
【0155】
図20(a)で図示するように、凹部308部に開口部を有する蒸着マスク310を基板301の下に配置する。蒸着材料309は蒸着マスク310の開口部を通過して基板301aの凹部308に蒸着膜306bとして蒸着される。蒸着マスク310の位置はこの逆でも良い。凸部307部に開口部を有する蒸着マスク310を基板301の下に配置する。蒸着材料309は蒸着マスク310の開口部を通過して基板301aの凸部307に蒸着膜306bとして蒸着される。
【0156】
図20(b)で図示するように、蒸着マスク310を用いず、蒸着材料309として、酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を使用して、蒸着膜306b上に酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を形成する。
【0157】
図20の実施例では、負極材料231の形成に蒸着マスク310を使用する。また、基板301aの全体を被覆するように、酸化鉄(たとえば、Fe
2O
3)を形成することができる。
【0158】
以上の実施例は、正極材料221と負極材料231を櫛歯状に配置した実施例である。本発明はこれに限定するものではない。たとえば、
図21に図示するように、渦巻き状あるいはらせん状に形成しても良い。つまり、本発明は、1つの基板あるいはフィルムに隣接して正極材料221からなる正極と、負極材料231からなる負極とを形成し、正極材料221と負極材料231間に電解液222を充填した構成であればいずれの構成あるいは構造であっても良い。
【0159】
以上の実施例は、隣接して正極材料221からなる正極と、負極材料231からなる負極の位置配置が固定された実施例であったが、本発明はこれに限定するものではない。
【0160】
図22は、本発明の電池などの構成図および説明図である。
図22において、容器107内に、正極材料221からなる正極は、中心位置Cを中心に円筒状、かつL方向に回転できるように配置している。また、容器107内に、負極材料231からなる負極は、中心位置Cを中心に円筒状、かつR方向に回転できるように配置している。容器107内に電解液222が充填されている。
【0161】
正極材料221からなる正極は、中心位置Cを中心に回転し、負極材料231からなる負極は、中心位置Cを中心に回転する。回転に伴い、正極と負極との位置関係が変化するとともに、電解液222が攪拌される。
【0162】
図22においても、
図15(a)に図示するように、容器107に電解液222の充填穴(入出穴)305(図示せず)を形成または配置しても良い。入出穴305から電解液を注入することができ、また、電解液を注出することができる。したがって、電解液222を入れ替えることができる。
充電あるいは放電の状態をモニターあるいは監視し、充電あるいは放電の状態にしたがって、電解液の流量あるいは移動量を変化あるいは調整しても良い。
入出穴305から電解液を注入、排出することにより、電解液を移動、攪拌することができ、充電、放電状態を良好にできる。
【0163】
図22において、正極材料221からなる正極はL方向に回転できるように配置、構成し、負極材料231からなる負極はR方向に回転できるように配置、構成するとしたが、これに限定するものではない。正極材料221からなる正極の回転方向と、負極材料231の回転方向を同一方向としても良い。正極材料221からなる正極の回転方向と、負極材料231の回転方向とを同期を取り、位置関係を保持した状態で回転させても良い。位置関係を保持することにより、電池の充電あるいは放電状態を一定にすることができ、また、電解液を攪拌することができる。
【0164】
以上の事項は他の実施例にも適用される。また、回転に限定されるものではなく、たとえば、
図21の実施例において、中心Oで回転させても良い。また、回転に限定されるものではなく、振動させても良い。たとえば、
図16の実施例において、基板(フィルム、シート)301aを上下方向、左右方向に移動あるいは振動させることにより、電解液を攪拌等することができる。振動は超音波等による振動、移動であっても良い。
【0165】
本発明の実施例において、対向する位置に同一極性の電極あるいは電極材料を配置するとしたが、これに限定するものではない。対向する位置に異なる極性の電極あるいは電極材料を配置しても良い。
【0166】
以上の実施例では、負極あるいは負極材料231と正極あるいは正極材料221間に、間隙あるいは段差を形成あるいは構成し、電解液222を充填等するとしたが、これに限定するものではない。負極材料231と正極材料221間に絶縁材料(図示せず)からなる絶縁膜あるいは絶縁壁を形成または配置してよい。
【0167】
また、負極材料231と正極材料221とは、エッチング工法等によりパターニングしても分離しても良いし、また、印刷工法により、負極材料231と正極材料221とは分離して形成しても良い。また、負極材料231と正極材料221とを1つの電極として形成し、レーザ等を負極材料231と正極材料221との間に照射し、負極材料231と正極材料221とを分離しても良い。
【0168】
以上の実施例では、負極あるいは負極材料231と正極あるいは正極材料221間に、間隙あるいは段差を形成あるいは構成し、電解液222を充填等するとしたが、これに限定するものではない。
【0169】
図23は、本発明の他の実施例における電池の構成図および説明図である。
図23では負極材料231と正極材料221間に、絶縁材料312からなる絶縁膜あるいは絶縁壁を形成または配置した構成である。絶縁材料312を形成または配置することにより、負極材料231と正極材料221に電解液がなく、負極材料231と正極材料221との電界強度が均一となる。
【0170】
セパレータ204の存在は正極と負極が短絡(ショート)することを防ぐだけである。短絡を防ぐ機能があれば、セパレータ204は必要ない。しかし、内部抵抗が電解液の導電率に支配される構造ならば、正極と負極の距離は短い方が良い。
【0171】
図23のように、絶縁材料312を配置すれば、正極と負極の間の実質的な距離は短くできる。もし、短絡が生じた場合(抵抗が異常に小さくなった場合)、その部分を自動的に排除すれば、電池全体では、問題なく機能する。
絶縁材料312として、SiO
2、SiN
x、TiO
2、SiON等の無機材料、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の有機材料が例示される。
【0172】
絶縁材料312は壁状の絶縁壁であっても良い。また、隣接した電極間の電界強度を均一あるいは電界集中がないように隔離あるいは隔離間隔を設ける隔離膜あるいは隔離壁であっても良いことは言うまでもない。
【0173】
また、負極材料231と正極材料221とは、エッチング工法等によりパターニングしても分離しても良いし、また、印刷工法により、負極材料231と正極材料221とは分離して形成しても良い。また、負極材料231と正極材料221とを1つの電極として形成し、レーザ等を負極材料231と正極材料221との間に照射し、負極材料231と正極材料221とを分離しても良い。
図23の絶縁材料312等の構成、形態は本発明の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。
【0174】
本発明のキャパシタ電池はキャパシタとしての機能だけでなく、二次電池、あるいは二次電池的な機能を有するものである。電圧を印加すると、電圧上昇に伴い充電が開始する。最初は全て電気二重層キャパシタによるものである。ある電圧(起電力)を超えると、リチウムイオン電池と同様の酸化還元反応が発生する。つまり、電気二重層キャパシタに酸化還元反応を付随させた新しい概念の蓄電デバイスである。したがって、高速な充放電機能と、二次電池的な電圧発生の両方の機能、構成、構造を有する。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の電気二重層キャパシタ電池は、通常の二次電池と比較して高速な充放電が可能である。高出力特性に優れている電気二重層キャパシタ電池は、新エネルギーの蓄電等、様々な利用分野への応用が期待されている。
【0176】
水溶液系の電解液を用いた、いわゆる水系の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)は、導電性が高く、電解質の解離、イオンの移動度に優れ、また、溶媒が水であることから安全性が高く、不揮発性で水分管理がしやすく、コストも低い。また、高速な充放電機能を発揮できる。
本発明の電気二重層キャパシタ電池(二次電池)は、水の電気分解の制約を克服することができ、様々な分野での活用が期待できる。
【符号の説明】
【0177】
101 充電器
102 負荷
107 容器
108 絶縁フィルム
202 正極端子
203 負極端子
204 セパレータ
205 正極
206 負極
207 ガスケット
222 電解液
221 正極材料
231 負極材料
301 基板(フィルム、シート)
302 正極コーティング材
303 負極コーティング材
304 電極端子
305 入出穴
306 膜
307 凸部
308 凹部
309 蒸着材料
310 メタルマスク
312 絶縁材料(絶縁壁、隔離壁)