(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】人工ニューロンネットワーク
(51)【国際特許分類】
G02F 3/00 20060101AFI20250313BHJP
G02B 6/04 20060101ALI20250313BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20250313BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20250313BHJP
G06N 3/067 20060101ALI20250313BHJP
G06E 3/00 20060101ALI20250313BHJP
G06G 7/60 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
G02F3/00 502
G02B6/04 E
G02B6/02 461
G02B6/27 301
G06N3/067
G06E3/00
G06G7/60
(21)【出願番号】P 2022519171
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 IL2020051065
(87)【国際公開番号】W WO2021064727
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-29
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522101656
【氏名又は名称】コグニファイバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cognifiber Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ザレフスキー,ジィーヴ
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,エヤル
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0063834(US,A1)
【文献】米国特許第05568574(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033703(US,A1)
【文献】特表2018-533750(JP,A)
【文献】特開平05-210141(JP,A)
【文献】特開昭60-181877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0169505(US,A1)
【文献】特表2015-524087(JP,A)
【文献】特表2001-516468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G02B 6/02 - 6/10
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/44
G06E 1/00 - 3/00
G06G 1/00 - 99/00
G06N 3/00 - 3/12
G06N 7/08 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工ニューロンユニットの複数の2以上の層を含む人工ニューロンネットワークにおいて、前記人工ニューロンユニットの層は、2以上の光ファイバの配置を介してそれらの間で通信するように構成され、
光リンクユニットが、
前記2以上の光ファイバのうちの1以上の選択された
光ファイバの部分内に、1以上の他の
光ファイバの部分に近接して形成されるとともに、前記光ファイバの間の予め定められた結合を提供することによって、前記2以上の層のニューロンユニット間の相互通信を提供するように構成されていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項2】
請求項1に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、1以上の前記選択された光ファイバ部分が、選択された周期と長さのグレーティング領域を形成する周期的パターンでエッチングされ、前記周期的パターンが、前記光ファイバから選択された信号部分をアウトカプリングするように選択され、前記光ファイバからアウトカプリングされた前記信号部分が、信号部分を混合するように隣接する光ファイバに結合されることにより、光ファイバの間において制御された光信号の結合を提供することを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、1以上の前記選択された光ファイバ部分が、選択された周期と長さのグレーティング領域を形成する周期的パターンでエッチングされ、信号部分またはその一部を前記光ファイバの外側に向けて、選択された信号部分の損失を形成するように構成されていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項4】
請求項
2または3に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記光ファイバがマルチコアファイババンドルを含むことを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項5】
請求項
2または3に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記周期的パターンが、長周期ファイバブラッググレーティング(LPFBG)として構成されていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項6】
請求項
2または3に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記周期的パターンが、短周期ファイバブラッググレーティング(SPFBG)として構成されていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項7】
請求項6に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記SPFBGを有する光ファイバが、信号部分の選択的増幅に使用される利得材料でドープされていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項8】
請求項
2または3に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記光ファイバのコアが、非線形特性を有する選択された活性材料を有して提供されており、前記活性材料が、前記周期パターンの選択的に変化する光学効果を提供することを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項9】
請求項4に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記2以上の光ファイバのうちの少なくとも2つはテーパ領域を有して構成され、この領域において
前記2以上の光ファイバのうちの少なくとも2つ
の光ファイバの間の結合の増大が提供されることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項10】
請求項9に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記テーパ領域は、当該テーパ領域に関連するそれぞれの少なくとも2つの光ファイバを通って伝播する光信号間の自由空間相互作用を提供する専用の相互作用領域をさらに含むことを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項11】
請求項10に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記専用の相互作用領域は、フェルール要素によって形成されることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項12】
請求項11に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記フェルール要素は、外部ポンピングが可能な利得媒体材料を含み、それによって前記フェルール要素内を伝播する光信号のパワーを変調することを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項13】
請求項11または12に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記フェルール要素は、その一端に光反射要素をさらに含み、それによって前記テーパ領域に関連する前記少なくとも2つの光ファイバのうちの少なくとも1つに伝送される後方散乱光を提供することを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項14】
請求項13に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記テーパ領域に関連する少なくとも2つの光ファイバは、前記テーパ領域の少なくとも1つの入力導波路および少なくとも1つの出力導波路を選択的に規定するサーキュレータユニットをさらに含むことを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、1以上の人工ニューロンユニットを含み、前記1以上の人工ニューロンユニットの少なくとも1つは、第1の波長範囲の入力光を受け取り、前記入力光の2以上の空間モードの光成分に選択的な混合を適用するように構成されたモーダル混合ユニットを含み、前記モーダル混合ユニットは、その少なくとも一部に利得媒体が含浸され、第2の波長範囲のポンピング光に反応して所定の第1の波長範囲で光を放出するように構成された所定の利得媒体を有するマルチモード光ファイバを含み、前記モーダル混合ユニットはさらに、前記第2の波長範囲のポンピング光および1以上の選択された空間モードに応答してそこを伝播する前記入力光の1以上の空間モードに追加のエネルギーを選択的にポンピングするように構成されることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、少なくとも1つの光処理ユニットを含み、当該光処理ユニットは、入力マルチコア光ファイバと出力マルチコア光ファイバとの間の光路に配置された入力ファセットおよび出力ファセットを有する光利得ユニットを含み、前記光利得ユニットは、外部照明に曝されると、前記光利得ユニット内にホログラフィックパターンを生成し、それによって
前記入力マルチコア光ファイバと
前記出力マルチコア光ファイバとの間の光伝送に選択的に影響を与えることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、1以上の光処理ユニットを含み、当該光処理ユニットは、第1の光信号を受信するための少なくとも1つの光入力ポートと、第2の追加の入力信号を受信するための少なくとも1つの追加の入力ポートとを含み、前記光処理ユニットは、第1の光ファイバセクションと、相互作用ノードと、第2の光ファイバセクションとを含み、前記第1および第2の光ファイバセクションは、そこを通る光信号を波長成分または空間周波数成分に分離するための選択された特性および長さを有する光ファイバで構成され、前記相互作用ノードは、前記第1の光ファイバセクションから前記第1の光信号の信号成分を受信し、前記信号成分を前記第2の追加の入力信号と相互作用させ、重畳信号成分を生成させ、前記重畳信号成分を
前記第2の光ファイバセクションに結合して前記重畳信号成分を変換させ、
前記第1の光信号と前記第2の追加の入力信号との間の相互作用を示す出力信号を提供するように構成されることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、少なくとも1つの処理ジャンクションを含み、当該処理ジャンクションは、第1および第2の入力光信号を受信するように適合された入力ポートと、前記第1および第2の入力光信号を受信して、前記第1および第2の入力光信号間の相関を示す出力データを提供するための光処理を適用するように構成された光空間混合構造とを含むことを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、カスケード論理ゲートとして動作するように構成されていることを特徴とする人工ニューロンネットワーク。
【請求項20】
請求項15に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、その入力に配置されたビームコンバイナをさらに含み、前記ビームコンバイナは、前記第1の波長範囲の入力光および前記第2の波長範囲のポンピング光が前記マルチモード光ファイバに結合されるように配置されていることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項21】
請求項18に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記第1および第2の入力光信号は、対応する第1および第2のマルチコア光ファイバを伝播する光信号と関連付けられることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項22】
請求項21に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記光空間混合構造は、前記第1および第2の入力光信号の光を共通の空間経路に反射し、それによって前記第1および第2の入力光信号間の空間相関の光学測定を可能にするように構成された少なくとも1つの光反射要素を含むことを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項23】
請求項21または22に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記光空間混合構造の上流で、前記第1および第2の入力光信号の
空間コヒーレンスを低減するように構成されたデコヒーレンスユニットをさらに含むことを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項24】
請求項21乃至23のいずれか1項に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記処理ジャンクションは、第1および第2のマルチコア光ファイバを介して前記第1および第2の入力光信号を受信するように構成され、前記光空間混合構造は、光の自由空間伝搬で前記第1および第2の入力光信号を混合するように構成されることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項25】
請求項16に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記光利得ユニット内のホログラフィックパターンは3次元であることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項26】
請求項25に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、入力マルチコア光ファイバと前記光利得ユニットの入力ファセットとの間、および前記光利得ユニットの出力ファセットと前記出力マルチコア光ファイバとの間の光路にそれぞれ配置された入力光レンズユニットおよび出力光レンズユニットをさらに含むことを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項27】
請求項26に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記入力および出力マルチコア光ファイバは1次元マルチコア光ファイバとして形成され、前記入力光レンズユニットは、前記光利得ユニット内で入力光が3次元空間パターンを形成するように構成された非点収差レンズであることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項28】
請求項17に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記第1および第2の
光ファイバセクションは、そこ通る光信号をその複数の空間周波数に分離するために選択された屈折率プロファイルおよび長さを有する段階的屈折率ファイバセクションを含み、それによって入力信号に空間フーリエ変換を適用することを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項29】
請求項28に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記相互作用ノードは、利得材料を担持する光ファイバで形成された複数の光ファイバコアの構成を含み、前記第2の追加の入力信号は、前記複数の光ファイバコアの構成に選択的ポンピングを提供し、それによって前記第2の追加の入力信号の成分を前記第1の光信号の空間成分と選択的に相互作用させることを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【請求項30】
請求項29に記載の人工ニューロンネットワークにおいて、前記第1および第2のファイバセクションは、その波長成分に関して光信号にフーリエ変換を適用するように選択された長さを有する分散光ファイバを含み、前記相互作用ノードは、前記第2の追加の入力信号を示すデータを受け取り、それに応じて前記第1の光信号の成分を変調し、それによって前記第1および第2の入力信号の周波数成分を相互作用させるように構成された時間変調器を含むことを特徴とする
人工ニューロンネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光計算装置に関し、より具体的には、光集積型人工ニューロンネットワークでの使用に適した光演算デバイスおよびデバイス構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光コンピューティングは、電子コンピューティングのように電流ではなく、可視光や赤外光を操作して計算処理を行うものである。一般に光コンピューティングは、電子システムと比較して高速な計算速度が実現する。これは、光パルスの操作がより速く生じ、より高い帯域幅の情報伝達が可能であることが一因である。例えば、光領域に対してマイクロ波領域の誘電率がはるかに大きいため、電流信号は光速の10%程度で伝播し、したがって光コンピューティングの計算速度はほぼ10倍となる。また、光子は電子とは異なり極性がなく電荷を担持しないため、消費電力が少なく、近くの電界によるクロストークにさらされることも少ない。
【0003】
従来の光処理システムは、一般にオプトエレクトロニック処理と呼ばれる電子-光学ハイブリッド処理を利用する。これらのシステムでは、光信号がデータ伝送や特定の処理操作に使用され、他の特定の処理操作のために電子信号に変換される。このようなオプトエレクトロニクスデバイスは、電子エネルギーから光子への変換および逆変換にエネルギーの約30%を失う場合がある。さらに、光信号から電子信号への変換とその逆変換により、データの伝送や処理が遅くなる。そこで、光-電気-光(OEO)変換を不要にし、電力消費を抑え、処理速度が向上する全光コンピューティングの研究努力が盛んに行われている。
【0004】
光コンピューティングの分野における別の有利な態様は、人工ニューラルネットワーク(ANN)の実装である。一般に、ニューラルネットワークシステムは人間の脳の働きに相当する方法で問題を解決できる処理を提供する。人工ニューラルネットワークは、基本的に脳を構成する生物学的ニューラルネットワーク(BNN)にヒントを得たコンピュータシステムである。このシステムはパフォーマンスを向上させるために「学習」して、目的のタスクを完了するために一連のコマンドを実行する。より具体的には、ANNは、選択されたタスクに関連する入力の処理を最適化するために、提供された学習資料から関連する特性のセットを進化させる。典型的なANNシステムは、脳のBNNを構成する生物学的ニューロンの人工的な同等物である、人工ニューロンと呼ばれる接続ユニットまたはノードセットに基づいている。生物学的シナプスの人工的な同等物であるノード間接続は、あるノードから別のノードに信号を伝達することができる。信号を受信した人工ニューロンは、その信号を処理してから、接続されている人工ニューロンに対応する信号を送信するように構成されている。一般に、人工ニューロンは層状に配置される。様々な層が、入力に対して様々な種類の変換を実行し、対応する出力信号を伝送することができる。信号は、最初の(入力)層から最後の(出力)層へと、場合によっては異なる層を数回横断した後に伝達される。
【0005】
これまでの研究において、本発明の発明者は、マルチコアとマルチモード光ファイバ間の光の伝搬および結合を中継するニューラルネットワーク構成を開発している。
【0006】
例えば、ZalevskyらのWO2017/033197は、集積型光モジュールを教示している。この光モジュールは、複数の光学的に結合されたチャネルを含み、人工ニューラルネットワーク(ANN)においてその使用を実現している。いくつかの実施形態によれば、集積型光モジュールは、コアが光学的に結合されたマルチコア光ファイバを含む。
【0007】
WO2019/186548には、入力光を処理するための人工ニューロンユニットおよびニューラルネットワークが記載されている。人工ニューロンユニットは、入力光を受け取り、入力光内の2以上のモードの光成分に選択的な混合を適用して、出口光を提供するように構成されたマルチモード光ファイバなどのモーダル混合ユニットと、出口光の1以上のモードを選択するために前記出口光に事前選択されたフィルタを適用し、それによって人工ニューロンユニットの出力光を提供するように構成されたフィルタリングユニットとを含む。
【発明の概要】
【0008】
前述のように、光ファイバを伝搬する光の結合は、ニューラルネットワーク処理での使用に適した様々な処理タスクに使用することができる。しかしながら、当技術分野では、光操作を用いたデータ伝送および処理の両方を扱える機能的な全光ニューロンネットワーク構成が求められている。一般に、従来の光ネットワークでは、光学素子は非線形/処理操作の処理において比較的制限されている。これらの機能は現在、電子処理、高エネルギーレーザユニットの使用、および/または冷却原子の操作などによって行われているが、これらの手法にはそれぞれ欠点がある。
【0009】
本発明は、光人工ニューロンネットワークに実装するのに適した処理ソリューションを提供するものである。本発明の技術は、マルチモードおよびマルチコア光ファイバの使用、ならびに光の自由空間伝搬特性の使用に基づいて、完全に動作する全光型ニューロンネットワークの設計を実現するものである。
【0010】
したがって、本発明は、光導波路で形成された複数の人工ニューロンを含む人工ニューロンネットワークを提供する。WO2017/033197およびWO2019/186548を参照して上述した従来技術は、集積型光モジュールおよび人工ニューロンユニットを提供するためのマルチモードおよびマルチコア1D、2Dおよび3D導波路の使用を記載する。本技術は、ニューロンネットワークアーキテクチャの構成要素をさらに拡張し、以下に詳述するように、制御された結合、処理操作、およびトレーニング関連プロセスを提供する。
【0011】
以下に詳述するように、本技術は、人工光ニューロンユニットおよびニューロンネットワークを提供するものであり、ニューロンユニット内の信号に混合(mixing)、利得、および選択された追加の操作を光学的に適用できるようにする。一般に、人工ニューロンネットワークは、様々なニューロンを介して伝送される信号部分の重みを調整するとともに、ネットワークを通る選択された信号パスを調整することにより、選択されたタスク用にトレーニングされる。本技術は、空間的および/または時間的信号部分に適用される選択的な利得/ポンピングと、ネットワークへの重み調整を可能にする選択的な信号部分の混合を実現する光学的構成を提供する。
【0012】
1つの広範な態様によれば、本発明は、人工ニューロンユニットの複数の2以上の層を含む人工ニューロンネットワークを提供するものであり、前記人工ニューロンユニットの層は、2以上の光導波路(例えば光ファイバ)の配置(arrangement)を介してそれらの間で通信するように構成され、前記2以上の光導波路の配置は、前記2以上の導波路の間に予め定められた結合を有して構成され、それによって前記2以上の層のニューロンユニット間の相互通信を提供する。
【0013】
これに関し、本書で使用される「導波路(waveguide)」という語は、1次元導波路だけでなく、2次元導波路および3次元導波路にも関連することに留意されたい。これに関して、1次元導波路は、典型的には単一の横モードをサポートする平面導波路として示される(例えば、細いマルチモード光ファイバのシングルモード光ファイバ)。2次元または3次元の導波路が、1つまたは2つの横軸で、最大でバルク導波路までの追加の横モードをサポートしてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、前記2以上の光導波路のうちの少なくとも1つが、1以上のエッチングされたパターンを有し、1以上のグレーティングパターンを形成し、それによって前記少なくとも1つの導波路と、前記エッチングされたパターンに選択された近さに配置された少なくとも1つの他の導波路との間の光信号の結合を選択的に増強し得る。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、前記2以上の光導波路のうちの少なくとも2つはテーパ領域を有して構成され、この領域において前記少なくとも2つの光導波路間の結合の増大が提供され得る。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、前記テーパ領域は、当該テーパ領域に関連するそれぞれの少なくとも2つの光導波路を通って伝播する光信号間の自由空間相互作用を提供する専用の相互作用領域をさらに含み得る。前記専用の相互作用領域は、フェルール要素によって形成され得る。前記フェルール要素は、外部ポンピングが可能な利得媒体材料を含み、それによって前記フェルール要素内を伝播する光信号のパワーを変調し得る。追加的または代替的に、前記フェルール要素は、その一端に光反射要素をさらに含み、それによって前記テーパ領域に関連する前記少なくとも2つの光導波路のうちの少なくとも1つに伝送される後方散乱光を提供し得る。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、前記テーパ領域に関連する少なくとも2つの光導波路は、前記テーパ領域の少なくとも1つの入力導波路および少なくとも1つの出力導波路を選択的に規定するサーキュレータユニットをさらに含み得る。
【0018】
一般に、人工ニューロンネットワークは、カスケード論理ゲートとして構成することができる。このような構成では、ニューロンユニットのトポロジと配置を有して形成されたニューロンネットワークは、選択された出力を提供するために、入力のセットに対して一連の論理ゲート処理動作が行われる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、人工ニューロンネットワークは、1以上の人工ニューロンユニットを含み、前記1以上の人工ニューロンユニットの少なくとも1つは、第1の波長範囲の入力光を受け取り、前記入力光の2以上の空間モードの光成分に選択的な混合を適用するように構成されたモーダル混合ユニットを含み、前記モーダル混合ユニットは、その少なくとも一部に利得媒体が含浸され(impregnated)、第2の波長範囲のポンピング光に反応して所定の第1の波長範囲で光を放出するように構成された所定の利得媒体を有するマルチモード光ファイバを含み、前記モーダル混合ユニットはさらに、前記第2の波長範囲のポンピング光および1以上の選択された空間モードに応答してそこを伝播する前記入力光の1以上の空間モードに追加のエネルギーを選択的にポンピングするように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、人工ニューロンネットワークは、1以上の光処理ユニットを含み、そのような光処理ユニットは、入力マルチコア光ファイバと出力マルチコア光ファイバとの間の光路に配置された入力ファセットおよび出力ファセットを有する光利得ユニットを含み、前記光利得ユニットは、外部照明に曝されると、前記光利得ユニット内にホログラフィックパターンを生成し、それによって前記入力マルチコアファイバと出力マルチコアファイバとの間の光伝送に選択的に影響を与える。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、人工ニューロンネットワークは、1以上の光処理ユニットを含み、そのような光処理ユニットは、第1の光信号を受信するための少なくとも1つの光入力ポートと、第2の追加の入力信号を受信するための少なくとも1つの追加の入力ポートとを含み、前記光処理ユニットは、第1の光ファイバセクションと、相互作用ノードと、第2の光ファイバセクションとを含み、前記第1および第2の光ファイバセクションは、そこを通る光信号を波長成分または空間周波数成分に分離するための選択された特性および長さを有する光ファイバで構成され、前記相互作用ノードは、前記第1の光ファイバセクションから前記第1の光信号の信号成分を受信し、前記信号成分を前記第2の追加入力信号と相互作用させ、重畳信号成分(multiplied signal components)を生成させ、前記重畳信号成分を前記第2のファイバセクションに結合して前記重畳信号成分を変換させ、前記第1の入力信号と第2の入力信号との間の相互作用を示す出力信号を提供するように構成される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、人工ニューロンネットワークは少なくとも1つの処理ジャンクションを含み、当該処理ジャンクションは、第1および第2の入力光信号を受信するように適合された入力ポートと、前記第1および第2の入力光信号を受信して、前記第1および第2の入力光信号間の相関を示す出力データを提供するための光処理を適用するように構成された光空間混合構造(optical spatial mixing arrangement)とを含む。
【0023】
別の1つの広範な態様によれば、本発明は、第1の波長範囲の入力光を受け取り、前記入力光の2以上の空間モードの光成分に選択的な混合を適用するように構成されたモーダル混合ユニットを含む人工ニューロンユニットを提供するものであり、前記モーダル混合ユニットは、少なくともその一部が利得媒体に含浸され、第2の波長範囲のポンピング光に反応して所定の第1の波長範囲で光を放出するように構成された所定の利得媒体を含むマルチモード光ファイバを含み、前記モーダル混合ユニットはさらに、前記第2の波長範囲のポンピング光および1以上の選択された空間モードに応じてそこを通って伝播する前記入力光の1以上の空間モードに追加のエネルギーを選択的にポンピングするように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、前記人工ニューロンユニットは、その入力に配置されたビームコンバイナをさらに含み、前記ビームコンバイナは、前記第1の波長範囲の入力光および前記第2の波長範囲のポンピング光が前記マルチモード光ファイバに結合されるように配置されている。
【0025】
さらに別の広い態様によれば、本発明は、人工ニューロンネットワークに使用するための処理ジャンクション(または人工ニューロンユニット)を提供し、当該処理ジャンクションは、第1および第2の入力光信号を受信するように適合された入力ポートと、前記第1および第2の入力光信号を受信し、前記第1および第2の入力光信号間の相関を示す出力データを提供するための光処理を適用する光空間混合構造とを含む。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、前記第1および第2の入力光信号は、対応する第1および第2のマルチコア光ファイバを伝播する光信号と関連付けられ得る。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、前記光空間混合構造は、前記第1および第2の入力光信号の光を共通の空間経路に反射し、それによって前記第1および第2の入力光信号間の空間相関の光学測定を可能にするように構成された少なくとも1つの光反射要素を含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、処理ジャンクションは、前記光空間混合構造の上流で、前記第1および第2の入力光信号の空間コヒーレントを低減するように構成されたデコヒーレンスユニットをさらに含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、処理ジャンクションは、第1および第2のマルチコア光ファイバを介して前記第1および第2の入力光信号を受信するように構成され、前記光空間混合構造は、光の自由空間伝搬(free space propagation of light)で前記第1および第2の入力光信号を混合するように構成され得る。
【0030】
さらに別の広い態様によれば、本発明は、入力マルチコア光ファイバと出力マルチコア光ファイバとの間の光路に配置された入力および出力ファセットを有する光利得ユニットを含む光処理ユニット(または人工ニューロンユニット)を提供し、前記光利得ユニットは、外部照明に曝されると、前記光利得ユニット内にホログラフィックパターンを生成し、それによって前記入力マルチコアファイバと出力マルチコアファイバとの間の光伝送に選択的に影響を与える。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、光利得ユニット内のホログラフィックパターンは3次元であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、前記光処理ユニットは、入力マルチコア光ファイバと前記光利得ユニットの入力ファセットとの間、および前記光利得ユニットの出力ファセットと前記出力マルチコア光ファイバとの間の光路にそれぞれ配置された入力光レンズユニットおよび出力光レンズユニットをさらに含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、前記入力および出力マルチコア光ファイバは、1次元マルチコア光ファイバとして形成することができ、前記入力光レンズユニットは、前記光利得ユニット内で入力光が3次元空間パターンを形成するように構成された非点収差レンズ(astigmatic lens)である。
【0034】
さらに別の広い態様によれば、本発明は、第1の光信号を受信するための少なくとも1つの光入力ポートと、第2の追加の入力信号を受信するための少なくとも1つの追加の入力ポートとを具える光処理ユニットを提供し、当該光処理ユニットは、第1の光ファイバセクションと、相互作用ノードと、第2の光ファイバセクションとを具え、前記第1および第2の光ファイバセクションは、そこを通る光信号を波長成分または空間周波数成分に分離するための選択された特性および長さを有する光ファイバから構成され、前記相互作用モードは、前記第1の光ファイバセクションから前記第1の光信号の信号成分を受け取り、前記信号成分を前記第2の追加の入力信号と相互作用させて重畳信号成分(multiplied signal components)を生成し、前記重畳信号成分を前記第2のファイバセクションに結合して前記重畳信号成分を変換し、前記第1および第2の入力信号間の相互作用を示す出力信号を提供するように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、前記第1および第2のファイバセクションは、そこ通る光信号をその複数の空間周波数に分離するために選択された屈折率プロファイルおよび長さを有する段階的屈折率ファイバセクション(graded refractive index fiber sections)を含み、それによって入力信号に空間フーリエ変換を適用するようにしてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、前記相互作用ノードは、利得材料(gain material)を担持する光ファイバで形成された複数の光ファイバコアの構成を含み、前記第2の追加の入力信号は、前記複数の光ファイバコアの構成に選択的ポンピングを提供し、それによって前記第2の追加の入力信号の成分を前記第1の光信号の空間成分と選択的に相互作用させ得る。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、前記第1および第2のファイバセクションは、その波長成分に関して光信号にフーリエ変換を適用するように選択された長さを有する分散型光ファイバを含み、前記相互作用ノードは、前記第2の追加の入力信号を示すデータを受信し、それに応じて前記第1の光信号の成分を変調し、それによって前記第1および第2の入力信号の周波数成分を相互作用させるように構成された時間変調器を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本書に開示される主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実行され得るかを例示するために、添付の図面を参照しながら、非限定的な例としてのみ実施形態について説明する。
【
図1】
図1は、人工ニューロンネットワークの一般的な構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による光ファイバ間の光信号の結合を例示する図である。
【
図3】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、非線形処理が可能な人工ニューロンユニットを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、入力信号間の相関を決定するために構成された人工ニューロンユニットを示す図である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、本発明のいくつかの実施形態による光学畳み込みおよび変換ユニットを例示し、
図5Aは空間畳み込みユニットを例示し、
図5Bは3D空間的および時間的畳み込みユニットを例示する図である。
【
図6】
図6A~6Cは、本発明のいくつかの実施形態によるバルク利得構造を利用する人工ニューロンユニット構成を例示し、
図6Aはバルク利得構造と直接結合の3Dパターニングの例を示し、
図6Bはバルク利得構造の2次元パターニングを可能にする自由空間結合を例示し、
図6Cは光スイッチングユニットとしてのバルク利得構造およびそのパターンを例示する図である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、本発明のいくつかの実施形態による、選択された信号部分に混合および利得を適用するためのテーパ型マルチコア光ファイバを利用する人工ニューロンユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
人工ニューロンネットワークとは、生物学的ニューロンネットワークに着想を得た様々なコンピューティングアーキテクチャとアルゴリズムをいう。
図1を参照すると、それらの間のリンク210によって通信する人工ニューロンユニット(ニューロン)200の配列によって形成された人工ニューロンネットワーク100の概略構成が例示されている。
【0040】
概して、ニューロン200は、処理のために入力データを受け取るように配置および構成された入力層INLや、処理後に出力データを提供するように配置および構成された出力層OLを含む複数層に配置される。ネットワークはまた、
図1に例示されるHL1やHL2などの1以上の中間の隠れた層を含み得る。1以上の中間層のニューロンは、入力層と出力層の間を橋渡しし、データ処理の役割を担う。
【0041】
上記のように、光処理ネットワークおよび光ニューロンネットワークは、電子処理と比較して、処理速度を向上させることができる。一般に、光(フォトニック)ニューラルネットワークの実現は、2以上の人工ニューロンに関連する(すなわち、2以上の光ファイバまたはファイバコアに沿って移動する)信号間の線形混合と、人工ニューロンユニット内で処理を提供する増幅と混合に関連する非線形効果といった2つの主要な操作に基づいている。
【0042】
人工ニューロンネットワークは、様々な計算操作を実行するように構成およびトレーニングすることができる。一般に、ネットワーク100などの人工ニューロンネットワークは、ネットワークのトポロジー、層の数、層の配置、および特定のアプリケーションのためのネットワークのトレーニングに基づいて、特定の処理アプリケーションのために構成することができる。例えば、人工ニューロンネットワーク100は、カスケード論理ゲートとして動作するように構成され得る。そのような論理ゲートは、それらの間に選択された関係を有する複数の異なる入力に基づいて出力データを決定することを可能にする。追加の例示的なアプリケーションは、光入力に直接適用される様々なデータ処理を含んでもよい。例えば、画像認識などの処理アプリケーションが含まれる。本発明は、光ニューラルネットワークおよび人工ニューロンユニットの構成に関するものであり、本発明のネットワークおよびニューロン構成が適している任意の処理アプリケーションに使用できることに留意されたい。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、本技術は、人工光ニューロンネットワークで動作するのに適した人工光ニューロンユニットを提供する。人工ニューロンユニットは、1以上の光ファイバまたは導波路に基づいて構成され、増幅利得、混合、および/または選択された操作/変換を光信号に適用するように構成される。本技術は、信号の光・電子変換の必要性を排除するか、または少なくとも大幅に低減し、したがって、光から電子への信号変換の必要性をほぼ排除する。本技術による人工ニューロンユニットは、一般に、光信号部分の伝送、人工ニューロンユニット間の光信号部分の結合、および光信号への1以上の処理操作の適用のうちの少なくとも1つのために構成および使用される1以上の光ファイバを用いて形成され、それによって1以上の人工ニューロンユニットを動作させる。
【0044】
図2を参照すると、光ファイバ220a~220nの配列で形成された光リンクユニット210aが例示されている。光リンクユニットは、人工ニューロンユニットに入力信号を提供するために光信号の伝送を提供する。光リンクユニット210aは、1以上の選択された光ファイバ部分内に、1以上の他の光ファイバ部分に近接して形成される。この具体例では、ファイバ220bは、選択された周期と長さのグレーティング領域(例えば、ブラッググレーティング)を形成する周期的パターン250でエッチングされる(例えば、長周期ブラッググレーティング)。周期的パターン250は、光ファイバ220bから予め選択された信号部分260をアウトカプリングするように選択される。光ファイバ220bからアウトカプリングされた信号部分260は、隣接する光ファイバ(例えば、220aおよび/または220c)に結合され、信号部分が混合される。追加的または代替的に、信号部分260またはその一部は光ファイバ構造の外に向けられ、光信号の選択部分の損失を形成してもよい。信号部分260は、周期的パターン250のパラメータを選択することにより、波長および/または空間モードに基づいて選択することができる。
【0045】
周期的パターン250は、1以上の選択された光ファイバ220bの一部または光ファイバコア(マルチコアファイババンドルの場合)の一部に適用される(例えば、エッチングされた)長周期ファイバブラッググレーティング(LPFBG)として構成され得る。パターン250は、パターン250のパラメータによって選択された入力信号部分を混合するための重みを有する光ファイバ間の制御された結合を提供する。周期的パターン250の使用は、隣接する光ファイバ間の長さおよび物理的距離などの幾何学的要件を低減しながら、光ファイバ間の制御された結合を可能にする。
【0046】
いくつかの追加の構成では、光リンクユニット210aは、短周期ファイバブラッググレーティング(SPFBG)として形成された周期的パターン260を利用してもよい。SPFBGの周期は、光ファイバ220bを通過する信号の波長に基づいて信号部分を分離するために、光信号の波長に応じて選択される。選択された光ファイバに沿ってSPFBGを使用すると、マルチスペクトル光信号を使用し、光ファイバの波長に基づいて光ファイバを伝搬する信号部分を選択的に分離できる。そのような周期的パターン250は、以下に詳述するように、信号部分の選択的増幅に使用される利得材料でドープされた光ファイバ(例えば、エルビウムドープ光ファイバ(EDFA))と共に有利に使用することができる。例えば、ポンピング波長が980nmで信号波長が約1550nm程度である利得ドープ光ファイバでは、SPFBGの使用により、信号波長を変化させずに伝播させる一方でポンピング波長を逆反射(back reflecting)することによって、ポンピング波長と信号波長を分離することができる。
【0047】
いくつかの構成において、1以上の光ファイバ(220b)のコアは、非線形特性を有する選択された活性材料で提供することができる。そのような活性材料は、光ファイバに沿って屈折率プロファイルを変化させることによって、周期的パターンの選択的に変化する光学効果を提供する。例えば、1以上の光ファイバ220bのコアは、光屈折材料(すなわち、光屈折効果を示す材料)、カー非線形性(Kerr nonlinearity)を有する材料、または材料屈折率の選択的変化を可能にする液晶材料で形成またはドープすることができる。屈折率は、活性材料の非線形相互作用によって、またはファイバ220bに印加される外部場を使用して、相互作用する光に応答して変化し得る。例えば、このような活性材料の使用により、外部照明によって、あるいは外部電場を印加することによって周期的パターン260の光学特性の選択的変化が可能となり、この場合にLPFBGのレコーディングは、例えば屈折率を変化させ、したがって周期的パターン250と比較して信号の波長に影響を与えることによって、外部照明を介して再構成または調整可能である。
【0048】
図示のように、人工ニューロンユニット200は、マルチモード光ファイバ(MMF)に基づいて構成され得る。このようなマルチモード光ファイバ(MMF)は、第1の端部と、第2の端部と、選択された長さおよび直径とを有して構成され、その中で入力信号を伝搬しながら伝搬信号の空間モードを混合するために使用される。より具体的には、MMFに入力される光場は、MMF構造に対する1以上の空間モードの組み合わせであり得る。各空間モードはそれぞれの群速度でMMFを伝播し、出力光のモード組み合わせを変化させる。さらに、MMFを伝播すると、MMFの形状と光学特性に応じて光成分間の特定の混合が発生し、モード間で光エネルギーをシフトさせることができる。したがって、MMFは入力光信号のモードの混合に関連づけられた出口信号を提供する。
【0049】
さらに、いくつかの実施形態によれば、MMFは、そこを通る光信号の波長に関連する波長範囲で利得を提供するように選択された利得材料でドープしてもよい(例えば、エロジウムドープMMF)。これに関連して、
図3は、本発明のいくつかの実施形態による人工ニューロンユニット200を概略的に示す。人工ニューロンユニット200は、第2の(ポンピング)波長範囲のポンピング光に応答して第1の波長範囲の光を放出するように構成された、選択された量の利得媒体にドープされたマルチモードファイバ(MMF)10に基づく。MMF10は、入力光を受け取るための第1の端部と、出力光OLを提供するための第2の端部とを有する。MMF10は、一般に、第1の波長範囲の複数の空間光学モードをサポートする単一の幅広コアを有する光ファイバとして構成され得る。人工ニューロンユニット200はまた、光信号に関連する第1の入力光波面(input light wavefront)WFと、第2のポンピング光PLとを受けるように構成されたビームスプリッタユニットBSを含み得る。入力光波面WFは、特定の空間光場によって形成され得る。ポンピング光PLは、MMF10内の光の1以上の選択された空間モードにポンピングエネルギーを提供するように選択された空間分布を有し得る。人工ニューロンユニット200はまた、光をMMF10に結合するように構成された入力光学構造20と、出力光学構造30とを含み得る。さらに、人工ニューロンユニット100は、MMF10からの光出力カプリングの光路に配置された空間光変調器40を含み、これもまた、空間光変調器40の変調パターンを選択的に変えるように構成された制御ユニットと関連付けられてもよい。人工ニューロンユニット200の入力光および出力光は、自由空間伝搬光からのものであるか、および/またはインク付光ファイバ(inked optical fibers)間の光伝搬によるものであり得ることに留意されたい。
【0050】
人工ニューロンユニット200は、典型的には入力光学構造20によってMMF10に結合された入力光WF信号を受け取り、MMF10を通して入力光WFを伝搬しながら入力光信号WFの空間モードをある程度混合し、その第2の端部に出口光ELを提供する。さらに、ポンピング光PLの選択された空間分布がMMF10に入力されたら、ポンピング光は、ポンピング光PLの空間分布と高い重複を有する空間モードに関連する信号部分を選択的に増幅するために使用される。出口光ELは、ニューロンユニットが訓練された人工ニューロンユニットの選択された動作/タスクに従って、空間光変調器40によってさらに選択的に変調されて、出力光信号OLを提供してもよい。これに関連して、ニューラル型の構成を用いる処理技術は通常、ニューロンユニットの1以上のネットワークに基づくことに留意されたい。これらのネットワークは、内部接続や処理パラメータが決定されている選択されたトレーニングプロセスを経ることが好ましい。本明細書に記載の人工ニューロンユニット100は、様々なネットワークトポロジーで使用することができる。簡単のために、人工ニューロンユニット100は、入力光信号WFの空間モードを混合し、ポンピング光PLを使用して選択された空間モードを増幅することによって、選択された光学操作を実行できる単一の処理ユニットとして構成され得る。
【0051】
MMF10は、選択された長さ(例えば数ミリメートルから数センチメートル、いくつかの実施形態では、MMF10は数メートルもの長さであり得る)および直径(例えば、30マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上)を有するマルチモードファイバであり、典型的には複数の空間モードで伝播する選択された波長範囲(例えば、1.5マイクロメートル)の光の伝搬をサポートするように構成されている。MMF10のコアは利得特性を有する材料によって選択されたドーピング比でドープされ、例えばエロジウムまたは他の希土類ドープMMF10を提供する。
【0052】
一般に、特定の波面WF、振幅および長さの特性を有する入力光信号が、人工ニューロンユニット100に伝送される。入力光信号WFは入力光学構造20によってMMF10に結合され、MMF10内をその第2の端部に向かって伝播する。さらに、選択された空間波形(モード)のポンピング光PLもMMF10に結合されて、MMF10に埋め込まれた利得媒体の光ポンピングを提供する。MMF10を伝播する間に、ポンピング光の高い空間相関を有するモードは、利得媒体の誘導放出によって増幅される。さらに、光信号の異なる空間モード(MMF10の構造に投影された入力光波面WFの空間形状に対応)は、異なる速度で伝播し、それらの間で混合が生じる。MMF10の長さは、空間モード間の所望の混合ならびにそれによって提供される増幅のレベルに従って選択される。典型的には、比較的短いMMF10の場合(すなわちMMF10の群速度分散特性に関して短い場合)、出口光ELは、入力波面WFのモードコンテンツのほとんどを維持し、選択されたモードがポンピング光PLの空間波面に従って増幅される。
【0053】
出口光ELは、選択された空間変調を波面に適用して出力光OL信号を提供する空間光変調器40に向けられ得る。出力光OL信号は次に、ネットワークの追加の層に関連づけられた1以上の追加のニューロンユニット200、および/または対応する検出ユニットに向けられ得る。
【0054】
入力光学構造20は、MMF10の入力端の近くに配置され、入力光WFをMMF10に結合するように構成され得る。いくつかの構成では、この入力光学構造は、ポンピング光をMMF10に結合するように構成されてもよく、これはMMF10への光の伝搬に関して光学構造20をビームスプリッタユニットBSの下流に配置することによって行うことができる。あるいは、ポンプ光をMMF10に結合するために、追加の光学構造(特に図示せず)を使用してもよい。一般に、入力光学構造20は、1以上のレンズ(例えば、対物レンズユニット)などの1以上の光学素子を含み得る。
【0055】
上記したように、いくつかの構成において、人工ニューロンユニット200はまた、MMF10の下流(
図3に例示するように、MMF10と空間光変調器(SLM)40との間、および/またはSLM40の下流)に配置された出力光学構造30を含み得る。この出力光学構造30は、典型的にはレンズなどの1以上の光学素子で構成され得る。出力光学構造は、典型的には人工ニューロンユニットから出力光OLを収集し、追加のニューロンへの出力光の選択された経路に従って、出力光の発散および/または伝播方向に影響を与え(例えば、コリメートされた出力光を提供する)、さらなる光ファイバおよび/または1以上の検出ユニットに結合するように構成される。
【0056】
例えば、典型的な通信システムでは、使用される光信号は約1550nmの第1の波長範囲のものである。さらに、典型的なエロジウムドープ光ファイバは、約980nmの第2の波長のポンピング光に応答して、第1の波長範囲に対応する約1550nmの光を放出し得る。このように、ポンピング光PLの空間分布を適切に成形すると、MMF10を通過する光信号の1以上の選択された空間モードの選択的ポンピングを提供することができる。
【0057】
本明細書に記載の人工ニューロンユニット200は、干渉を低減するために、カプリングアウトまたは残留ポンピング光の逆反射を引き起こすように選択された1以上の周期的パターンでさらにパターニングしてもよいことに留意されたい。このような周期的パターンは、
図2を参照して本書で上述されている。代替的または追加的に、出力光OLを収集する人工ニューロンユニット200または任意の光リンクユニットが、第2の波長範囲のポンピング光をフィルタリングしつつ第1の波長範囲の波長の透過を可能にするように選択されたスペクトルフィルタを含んでもよい。スペクトルフィルタは、ポンピング光を吸収するか偏向させて、ニューラルネットワークの層間のポンピング光の伝送を防ぐように構成することができる。
【0058】
特定の処理操作が、2つの入力信号間の相関を決定することに関連し得る。例えば、このような処理ステップは、ニューラルネットワークのトレーニングの一部であり得る。
図4を参照すると、2つの入力信号(例えば、処理されたラベル付きデータピースに対する処理されたラベルなしデータピース)間の相関を決定するための、人工ニューロンネットワークで使用される光学処理ユニット240を示す。光処理ユニット240は、選択された処理動作を有し対応するマルチコア光ファイババンドル12a、12bを介して第1および第2の入力光信号ILa、ILbを受け取るように構成された、ニューラルネットワーク内の人工ニューロンユニット200として動作することができる。光処理ユニット240は、第1および第2の光信号ILa、ILbを空間的に重畳して、信号間の空間的干渉を示す出力光OLを提供するように構成される。出力信号OLは、光検出器26によって検出されるか、さらなる処理層における追加の処理へと向けられる。
【0059】
図4の具体例では、光学処理ユニット240は、選択された焦点距離fを有するレンズユニット20と、レンズユニット20を通過した後の入力光ILを受け取るように配置されたビームスプリッタユニットBSとを含む。一般に、相関器光学処理ユニット240の第1の部分は、空間的にコヒーレントな光と、レンズ20によるフーリエ変換を有する。回転ディフューザ28を入力光の光路に配置して、位相を壊し、空間的にコヒーレントな光を空間的にインコヒーレントな信号分布に変換してもよい。例示するように、回転ディフューザ28は、レンズユニット20とビームスプリッタBSとの間に配置され得る。相関器光学処理ユニット240の第2の部分は、ビームスプリッタBS、コーナープリズム22、および反射面(ミラー)24によって形成される剪断干渉計を用いて実行されるコサイン変換である。出力光OLは、2つの入力光信号ILa、ILb間の空間相関における相関ピークの形態である。出力光OLは、単一ピクセル検出器26によって検出してもよいし、さらなる使用のために伝送されてもよい。
【0060】
レンズユニット20は、好ましくは、第1および第2の入力光信号ILa、ILbのフーリエ結像を回転ディフューザ28(すなわち、光ファイバ12a、12bの出力間の距離fを有する)上に提供するように配置される。配光ILは回転ディフューザ28によりインコヒーレントとなり、ビームスプリッタユニットBSに向けられる。ビームスプリッタユニットBSは、入力光ILの少なくとも一部R1をコーナープリズム22に向けて反射し、これがプリズム22の光軸周りに光パターンを重畳して重畳された光部分R2を導くように配置されている。このように重畳された光パターンはR3として反射面(ミラー)24に向けられ、再びR4としてビームスプリッタBSの方へ反射され、そして出力光OLが提供され、ここにおいて入力光ILの第1および第2の部分ILa、ILbは互いに重畳され互いに干渉している。
【0061】
典型的に、第1および第2の入力信号ILa、ILbが一致する場合、出力光OLは高い相関ピーク出力を提供する。入力信号が異なる場合、出力光OLは低い読み出し(read out)となる。
図4に例示される光処理ユニット200は、例えば、処理中の光信号間の相関を決定するための光ニューロンネットワークのトレーニングプロセスに利用可能であり、一方で光信号の電子データへの変換の必要性を排除するか、少なくとも大幅に低減する。
【0062】
一部の処理機能は、信号の周波数成分の決定、または一般に信号のフーリエ変換の決定に関連し得る。これは、信号の時間的または空間的な周波数成分の個別の処理、および2つの信号の畳み込みなどの特定の操作の実行に関連し得る。この目的のために、人工ニューロンネットワークは、光ファイバセクションを伝播する光パターンに影響を与えるための選択された屈折率プロファイルと長さを有する、選択された長さのグレーデッドインデックス光ファイバ(GRINファイバ)を含む1以上の人工ニューロンユニットを利用して、光パターンに対して1以上の選択された変換を実行することができる。例えば、屈折率プロファイルおよび長さは、それに結合される光信号の空間的および時間的寸法の少なくとも一方に光フーリエ変換を実行するために選択され得る。入力光信号に対して選択された空間的または時間的変換を実行することは、光信号に対して直接実行できる追加の操作のために使用されてもよい。例えば、
図5Aおよび5Bを参照すると、空間的畳み込み(
図5A)と、空間的および時間的畳み込み(
図5B)を実行する光畳み込みユニット200を例示している。この例では、光畳み込みユニット200は、空間フーリエ変換およびエロジウムドープ光ファイバ(EDFA)を利用して、入力光信号ILと、選択された利得レベル(例えば、選択されたポンピング)によって提供される空間周波数FWの選択された重みとの間の空間的畳み込みを決定する。信号の乗算(multiplication)を、フーリエ変換された信号の畳み込みに変換し、またはその逆を行う。光畳み込みユニット200は、マルチモードグレーデッドインデックス(GRIN)光ファイバセクション50aと、それに続く、異なる空間周波数に適用される選択された重み(例えば、ポンピング強度によって決定される)に関連付けられた選択された半径方向分布FWを有するポンピングレベルを受け取るように構成されたEDFAネットワーク512とによって形成される。EDFAネットワーク512の次に、出力光信号OLを提供するための追加のGRINファイバセクション50bが続いてもよい。
【0063】
いくつかの例では、GRINファイバセクション50aおよび50bは、好ましくは、以下の屈折率プロファイルを有し得る。
(式1)
ここで、rはファイバ内の半径座標、n
1とn
2はファイバの選択された屈折率値である。このような屈折率プロファイルを使用して、ファイバセクション50aおよび50bは、長さ
であるように構成することができる。ファイバ部50aまたは50bを光信号が伝搬する間、信号部分の屈折率および位相速度の変動により、信号波形の2次元空間フーリエ変換が行われる。
【0064】
したがって、入力波形構造を有する入力信号ILは、第1のGRINファイバセクション50aに結合され得る。入力信号はGRINファイバセクション50aを伝播し、ここで信号部分は対応する群速度で伝播し、その結果GRINファイバ50aの出力端において中間結果信号(intermediate resulting signal)が入力信号の空間フーリエとなる。中間結果信号は、異なる空間周波数がネットワーク512の異なる半径方向セクションに結合されるように、EDFAネットワーク512に結合される。上記したように、EDFAネットワーク512は利得の選択された半径方向分布を提供し(例えば、勾配ドーピングレベルまたは選択されたポンピング分布を使用して)、それによって乗算されたフーリエ信号(multiplied Fourier signal)を提供する入力信号の異なるフーリエ成分に選択された利得レベルを適用するように構成される。乗算されたフーリエ信号はさらにGRINファイバセクション50bに結合され、逆フーリエ変換を受けながらその中を伝播し、出力光OLを提供する。出力光は、入力光信号と、EDFAネットワーク512における利得分布の逆フーリエ変換との間の畳み込みの形態である。
【0065】
一般に、EDFAネットワーク512は、ファイバセクション間の光部分を結合するための、GRINファイバセクション50aの出力およびGRINファイバセクション50bの入力に適切に接続されたNxNファイバの構成を含み得る。NxNポイントは入力GRINファイバの出力平面にあり、NxNポイントは出力GRINファイバの入力平面にある。EDFAネットワーク512のNxN光ファイバの選択された数および配置は、フーリエ変換および畳み込み処理の分解能(resolution)に関連している。
【0066】
分散光ファイバは、通過する光の波長によって様々な位相速度を提供する。したがって、そのような分散光ファイバは、入力光信号に対して、その時間周波数に関して選択された変換を適用することができる。一般に、このような分散光ファイバは、結合された入力光信号に対して時間的なフレネル変換を実行する。十分に長い分散ファイバ(すなわち、遠方界近似を満たすのに十分な長さの光ファイバ)は、そこを通過する光信号に、時間領域におけるフーリエ変換として影響を与える。
図5Bは、信号の時間的畳み込みならびに空間的畳み込みを提供するように構成された光畳み込みユニット200を示す。これに関連して、GRINファイバセクション50aから出力された中間結果信号は、長い分散ファイバ60a(長さは縮尺どおりに示されていない)、時間変調器612、および第2の長い分散ファイバ60bで形成される時間的畳み込みセクションに結合される。この時間的畳み込みセクションは、入力信号(中間結果信号)と、時間変調器612によって適用される選択された変調のフーリエとの間の畳み込みの決定を提供する。より具体的には、長い分散ファイバ60aおよび60bは、そのフーリエ変換(または逆フーリエ変換)を提供するために入力信号に影響を与える。時間変調器612は、時間周波数を選択された変調時間パターンで積算し、逆フーリエ変換の後に、信号の畳み込みを提供する。時間的畳み込みは、入力信号の時間的変動と、時間変調器612に供給される信号の逆フーリエとの間である。
【0067】
このようなGRINファイバセクション(例えば50a、ならびに60aなどの長い分散ファイバ)は、本明細書で例示される畳み込みユニットに加えて、追加の処理および変換ユニットを形成するために使用され得ることに留意されたい。より具体的には、
図5Aまたは5Bのセットアップの半分を使用して(すなわち、時間変調器512および612を除去し、それらを出力端で置き換えることにより、選択された信号の空間的および/または時間的フーリエ変換を決定することが可能になる。そのような変換された信号は、その選択された周波数成分に適用される追加の処理動作のためにさらに使用することができる。さらに、追加の処理要素(例えば、
図3に例示されるような選択的モーダル利得処理200)を、そのような変換および畳み込みユニット200の中間コンポーネントとして使用してもよい。
【0068】
例えば、いくつかの構成では、畳み込みユニット200は、変調されたクロック信号出力OLを生成するように構成され得る。より具体的には、入力クロック信号を入力信号ILに使用してもよく、ここではEDFAネットワーク512がクロック信号に空間変調を適用することができる。追加的または代替的に、時間変調器612は、時間または波長でクロック信号を符号化するように選択された時間的または波長的変調を適用するために使用され得る。このようなクロック信号は、3次元空間時間変換/畳み込みユニット200を使用して処理されてもよい。選択された波長選択フィルタを使用して、入力信号ILの周波数成分にさらなる処理操作を適用するために、時間的フーリエ成分から望ましくない波長をフィルタで除去することができる。
【0069】
本技術のいくつかの追加の構成では、光学処理ユニットは、バルク利得構造に選択的に書き込まれた/刻印された導波路パターンを含み得る。一般に、そのような選択されたポンピングパターンは、当該ポンピングパターンに従って選択された増幅/光操作効果を提供するために、バルク利得構造に光学的に適用され得る。このようなポンピングパターンは、バルク利得構造内に、入力光信号への選択的なフィルタリングと位相速度操作を可能にする導波路パターンの書き込み(writing)を提供し得る。
図6A~6Cを参照すると、選択された導波路およびそれを通してパターニングされた選択されたポンピング構造を提供するための選択的な書き込みパターンHW(例えば、ボリュームホログラフィック書き込み)が施されたバルク利得構造17を利用する人工ニューロンユニット200の構成が例示されている。人工ニューロンユニット200は、入力光信号ILを受信して入力光信号をバルク利得構造17に結合するように導き、バルク利得構造17から出た光信号を受信して出力光信号OLを提供するように導くように構成された、入力マルチコア光ファイバ70aおよび出力マルチコア光ファイバ70bを含む。
図6Aの例では、マルチコア導波路70aおよび70bと利得構造17との間は直接結合され、すなわち光ファイバからバルク導波路へ結合されている。
図6Bの例では、マルチコア導波路70aおよび70bと利得構造17との間の光を結合するために光学レンズ20および30が使用される。
図6Cの例では、バルク構造はスイッチとして選択的に動作可能であり、入力光をマルチコア導波路70bまたはマルチコア導波路70cに選択的に向けて、第1または第2の出力光OL1およびOL2信号を提供することができる。
【0070】
選択された書き込みパターンHWは、利得構造17内の導波路の2次元または3次元の書き込みを提供することができる。これは高速レーザシステムを使用して実行されて構成可能かつ制御可能なアーキテクチャが提供され、ここで導波路およびその利得レベルはHWを書き込むための光入力に従って選択的に変更され得る。
図6Cに例示するように、選択的書き込みはまた、光信号の選択的ルーティングのために使用され得る。より具体的には、入力信号ILは、利得構造17上の現在の書き込みHWパターンと、当該利得構造17内にそのように生成されたパターンと信号の相互作用に従って、出力信号OL1またはOL2に向けられ得る。
【0071】
一般に、バルク利得構造17は、3次元書き込みを用いてパターンニングすることができる。しかしながら一部の構成では、パターンは2次元で、より単純なパターン構成を実現してもよい。
図6Bの例ではこのような構成が可能であり、ここではマルチコアファイバ70aおよび/または70bが1次元光信号を運ぶ1次元ファイバアレイであり、この構成における光学レンズ20および30は、光信号の発散を回避するために、1次元パターンをバルク利得構造17に対して比較的広く配向するように構成された非点収差レンズとすることができる。
【0072】
本技術によるさらなる追加の例示的な構成では、テーパ型のマルチコアファイバを使用して、光コア間の直接的かつ適切な相互作用を提供することができる。
図7Aおよび7Bを参照すると、テーパ構成を有するテーパ型マルチコアファイバ結合を利用する制御可能な人工ニューロンユニット200が例示されている。一般に、テーパ型の光ファイバ構成は、テーパ領域から離れると光ファイバコアが離れて相互作用が回避され、テーパ領域ではコアがまとまり、例えば光結合によってそこを通って伝送される光信号間の相互作用が可能になる。
図7Aおよび7Bは、マルチコア光ファイバのコア間の光結合を提供するようにテーパ領域(
図7Aでは82aおよび82b、
図7Bでは82)を有して構成された、入力および出力マルチコア光ファイバ80aおよび80bを有する人工ニューロンユニット200が示されている。
図7Aの例では、入力光信号は特定の入力波形を有して入力マルチコアファイバ80aを通って伝播し、マルチコアファイバが先細になってフェルール85に到達すると、光は自由空間モードでフェルール85を通って伝播し、そして出力マルチコアファイバ80bに結合される。これにより、マルチコアファイバ80bの異なるコアを伝搬する光成分間の結合および混合が可能になる。テーパ領域82aの後にフェルール85を用いると、空間モード間の自由空間相互作用と混合の増加が提供される。さらに、フェルールは、信号部分の選択的なポンピングまたは混合特性の変化を実現するように選択された、利得媒体、光学カー効果などの選択された光学特性を有する非線形材料を含むか、またはそれで作製することができる。例えば、フェルール85は、エルビウム利得媒体または他の希土類材料を含み、外部からのポンピングとニューラルネットワークの選択された重みの制御を可能としてもよい。いくつかの追加の構成では、入力マルチコアファイバ80aおよび/または出力マルチコアファイバ80bにエロジウム光ファイバを使用する一方で、フェルール85が光成分間の自由空間混合を提供し、これによって入力光信号が最初に増幅され、次にテーパデバイス82aおよびフェルール85を介して混合され相互作用されてもよい。
【0073】
これに関し、
図7Aの例はダイレクトパスユニットを示している。一方で
図7Bの例は、フェルール85の一端に光信号を反射する光反射器87と、入力80aと出力80bのマルチコアファイバ間に配置され、これらを中間マルチコアファイバセクション80cに結合するサーキュレータ84を利用する。
【0074】
このように、本技術は、人工ニューロンネットワークで動作するように構成された人工光ニューロンユニットを提供するものである。本技術は、入力信号部分に対する選択的な重み付けや、光信号に対する混合や操作を実現する。本技術は、重みの選択、信号処理、さらには特定のトレーニング操作が光信号に基づいて直接決定され、電子信号への変換を必要としない全光ニューロンネットワークまたは少なくともほぼ全光ニューロンネットワークを実現する。