(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】エレベータの懸架体カバー装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/04 20060101AFI20250313BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
B66B11/04 Z
B66B11/08 Z
(21)【出願番号】P 2024093008
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171398(JP,A)
【文献】米国特許第5148646(US,A)
【文献】特許第7452767(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0000725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
B66C 1/00-25/00
B66D 1/00- 5/34
E04H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ巻上機に設けられ、懸架体における駆動シーブとそらせ車との間の部分である被カバー部を覆うカバー本体
を備え、
前記カバー本体は、
それぞれ前記被カバー部に沿って配置される複数本の支持ロッドと、
可撓性を有する材料により構成されており、かつ、前記複数本の支持ロッドのうちの少なくとも一部の支持ロッドが通される複数の筒状部が設けられており、前記複数本の支持ロッドにより支持されて前記被カバー部を覆うシート部材
と
を有して
おり、
各前記支持ロッドの長さは、調整可能であるエレベータの懸架体カバー装置。
【請求項2】
各前記支持ロッドは、複数のロッド片を継ぎ合わせることにより構成されている請求項
1に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
【請求項3】
各前記支持ロッドは、伸縮可能である請求項
1に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
【請求項4】
エレベータ巻上機に設けられ、懸架体における駆動シーブとそらせ車との間の部分である被カバー部を覆うカバー本体、
前記エレベータ巻上機に取り付けられ、前記カバー本体における前記駆動シーブ側の端部を保持する第1保持部材、及び
前記エレベータ巻上機に取り付けられ、前記カバー本体における前記そらせ車側の端部を保持する第2保持部材
を備え、
前記カバー本体は、
それぞれ前記被カバー部に沿って配置される複数本の支持ロッドと、
可撓性を有する材料により構成されており、かつ、前記複数本の支持ロッドのうちの少なくとも一部の支持ロッドが通される複数の筒状部が設けられており、前記複数本の支持ロッドにより支持されて前記被カバー部を覆うシート部材と
を有しており、
前記第1保持部材には、前記シート部材が引っ掛けられるフックが設けられており、
前記第2保持部材は、前記シート部材の余剰部分を受け
るエレベータの懸架体カバー装置。
【請求項5】
エレベータ巻上機に設けられ、懸架体における駆動シーブとそらせ車との間の部分である被カバー部を覆うカバー本体
を備え、
前記カバー本体は、
それぞれ前記被カバー部に沿って配置される複数本の支持ロッドと、
可撓性を有する材料により構成されており、かつ、前記複数本の支持ロッドのうちの少なくとも一部の支持ロッドが通される複数の筒状部が設けられており、前記複数本の支持ロッドにより支持されて前記被カバー部を覆うシート部材と
を有しており、
前記筒状部の数は、前記筒状部に通される前記支持ロッドの本数よりも多く、
前記複数の筒状部のうち、前記複数本の支持ロッドが通される筒状部の組み合わせを変更することにより、前記カバー本体の幅寸法が変更可能となってい
るエレベータの懸架体カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの懸架体カバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの巻上機用ロープカバーは、第1カバー部と第2カバー部とを有している。第1カバー部は、駆動シーブの外周の一部を覆っている。第2カバー部は、駆動シーブとそらせ車との間において、ロープを覆っている。また、第2カバー部は、2つのカバー体により構成されている。各カバー体は、平板状の本体部と、一対の側壁部とを有している。一対の側壁部は、本体部の両端から本体部と直交する方向へ突出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の巻上機用ロープカバーでは、各カバー体は、板金に曲げ加工を施して製作されるため、各カバー体が重くなる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、カバー本体の軽量化を図ることができるエレベータの懸架体カバー装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータの懸架体カバー装置は、エレベータ巻上機に設けられ、懸架体における駆動シーブとそらせ車との間の部分である被カバー部を覆うカバー本体を備え、カバー本体は、それぞれ被カバー部に沿って配置される複数本の支持ロッドと、可撓性を有する材料により構成されており、かつ、複数本の支持ロッドのうちの少なくとも一部の支持ロッドがそれぞれ通される複数の筒状部が設けられており、複数本の支持ロッドにより支持されて被カバー部を覆うシート部材を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベータの懸架体カバー装置によれば、カバー本体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1によるエレベータを示す概略の構成図である。
【
図2】
図1のエレベータ巻上機を示す正面図である。
【
図3】
図2の懸架体カバー装置を示す平面図である。
【
図4】
図3の懸架体カバー装置を矢印IVに沿って見た側面図である。
【
図5】
図3の懸架体カバー装置を矢印Vに沿って見た正面図である。
【
図6】
図4の支持ロッドを分解して示す側面図である。
【
図7】実施の形態2による懸架体カバー装置のカバー本体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータを示す概略の構成図である。
図1において、昇降路11の上には、機械室12が設けられている。機械室12には、エレベータ巻上機13が設置されている。
【0010】
エレベータ巻上機13は、巻上機本体14と、駆動シーブ15と、そらせ車16とを有している。巻上機本体14は、図示しない巻上機モータと、図示しない巻上機ブレーキとを有している。巻上機モータは、駆動シーブ15を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ15の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ15の回転を制動する。
【0011】
駆動シーブ15及びそらせ車16には、懸架体17が巻き掛けられている。懸架体17としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体17の第1端部には、かご18が接続されている。懸架体17の第2端部には、釣合おもり19が接続されている。
【0012】
かご18及び釣合おもり19は、懸架体17によって昇降路11内に吊り下げられている。また、かご18及び釣合おもり19は、駆動シーブ15を回転させることによって、昇降路11内を昇降する。
【0013】
図2は、
図1のエレベータ巻上機13を示す正面図である。
図1では省略したが、エレベータ巻上機13は、機械台20をさらに有している。機械台20は、機械室12の床に設置されている。巻上機本体14及びそらせ車16は、機械台20により支持されている。
【0014】
図1では省略したが、エレベータ巻上機13には、懸架体カバー装置21が設けられている。懸架体カバー装置21は、カバー本体22と、第1保持部材23と、第2保持部材24とを有している。
【0015】
カバー本体22は、懸架体17の被カバー部17aを覆っている。被カバー部17aは、懸架体17における駆動シーブ15とそらせ車16との間の傾斜部分である。
【0016】
第1保持部材23は、巻上機本体14の筐体に取り付けられている。また、第1保持部材23は、カバー本体22における駆動シーブ15側の端部、即ち上端部を保持している。
【0017】
第2保持部材24は、機械台20に取り付けられている。また、第2保持部材24は、カバー本体22におけるそらせ車16側の端部、即ち下端部を保持している。
【0018】
図3は、
図2の懸架体カバー装置21を示す平面図である。
図4は、
図3の懸架体カバー装置21を矢印IVに沿って見た側面図である。
図5は、
図3の懸架体カバー装置21を矢印Vに沿って見た正面図である。
【0019】
カバー本体22は、複数本の支持ロッド25と、シート部材26とを有している。複数本の支持ロッド25は、それぞれ被カバー部17aに沿って互いに平行に配置される。この例では、4本の支持ロッド25が用いられている。
図5に示すように、4本の支持ロッド25は、被カバー部17aを囲むように配置されている。
【0020】
各支持ロッド25における駆動シーブ15側の端部は、第1保持部材23に通されて、第1保持部材23により保持されている。各支持ロッド25におけるそらせ車16側の端部は、第2保持部材24に通されて、第2保持部材24により保持されている。
【0021】
シート部材26は、複数本の支持ロッド25により支持されている。即ち、複数本の支持ロッド25は、シート部材26を支持する骨組みである。シート部材26は、可撓性を有する材料により構成されている。シート部材26の材料としては、難燃性ポリエステル、ナイロン等が挙げられる。
【0022】
シート部材26には、複数の筒状部26aが設けられている。この例では、一対の筒状部26aがシート部材26の両端部に設けられている。
【0023】
複数本の支持ロッド25のうち、シート部材26の両端部に位置する一対の支持ロッド25、即ち被カバー部17aよりも下側に位置する一対の支持ロッド25は、一対の筒状部26aに通されている。また、複数本の支持ロッド25のうちの残りの一対の支持ロッド25、即ち被カバー部17aよりも上側に位置する一対の支持ロッド25には、シート部材26が掛けられている。これにより、シート部材26は、
図5に示すように、被カバー部17aの左右及び上方を覆っている。
【0024】
第1保持部材23には、フック23aが設けられている。シート部材26における第1保持部材23側の端部には、留め孔26bが設けられている。留め孔26bには、フック23aが通されている。即ち、シート部材26は、フック23aに掛けられている。これにより、シート部材26が第1保持部材23から離れることが抑制されている。
【0025】
被カバー部17aの長手方向におけるシート部材26の寸法は、被カバー部17aの長手方向の寸法よりも大きい。このため、シート部材26には、余剰部分26cが生じている。この余剰部分26cは、第2保持部材24側に寄せられて複数の皺が形成された状態で、第2保持部材24により受けられている。
【0026】
図6は、
図4の支持ロッド25を分解して示す側面図である。各支持ロッド25は、複数のロッド片27を継ぎ合わせることにより構成されている。即ち、各支持ロッド25は、複数のロッド片27に分割可能である。
【0027】
各ロッド片27の長さは、継ぎ合わせるロッド片27の数を変更することにより調整可能である。
【0028】
各ロッド片27は、円筒状の大径部27aと、円筒状の小径部27bとを有している。小径部27bは、大径部27aに隣接している。各ロッド片27の小径部27bは、隣接するロッド片27の大径部27aに挿入される。
【0029】
第1保持部材23には、図示しない複数の第1保持孔が設けられている。各第1保持孔には、対応する支持ロッド25が通されている。各第1保持孔の内径は、大径部27aの外径よりも大きい。
【0030】
図5に示すように、第2保持部材24には、複数の第2保持孔24aが設けられている。各第2保持孔24aの内径は、小径部27bの外径よりも大きく、大径部27aの外径よりも小さい。各第2保持孔24aには、対応する支持ロッド25の先端に位置する小径部27bが挿入されている。これにより、第1保持部材23及び第2保持部材24に対して各支持ロッド25がそらせ車16側へ移動することが阻止されている。
【0031】
このようなエレベータの懸架体カバー装置21では、カバー本体22が複数本の支持ロッド25とシート部材26とを有している。シート部材26は、可撓性を有する材料により構成されている。シート部材26には、複数の筒状部26aが設けられている。各筒状部26aには、支持ロッド25が通されている。
【0032】
このため、カバー本体22の軽量化を図ることができる。また、カバー本体22をコンパクトにまとめることができ、カバー本体22の運搬及び保管が容易である。
【0033】
また、各支持ロッド25の長さは、調整可能である。このため、同一部品からなるカバー本体22を、被カバー部17aの長さが異なる複数のエレベータ巻上機13に適用することができ、カバー本体22の種類を削減することができる。また、カバー本体22の運搬及び保管をさらに容易にすることができる。
【0034】
また、各支持ロッド25は、複数のロッド片27を継ぎ合わせることにより構成されている。このため、簡単な構成により、各支持ロッド25の長さを調整することができる。
【0035】
また、第1保持部材23には、フック23aが設けられている。フック23aには、シート部材26が引っ掛けられている。また、第2保持部材24は、シート部材26の余剰部分を受けている。このため、簡単な構成により、長さが異なる被カバー部17aをカバーすることができる。
【0036】
なお、実施の形態1において、シート部材26に3つ以上の筒状部26aが設けられ、3本以上の支持ロッド25が筒状部26aに通されてもよい。
【0037】
実施の形態2.
次に、
図7は、実施の形態2による懸架体カバー装置のカバー本体22を示す正面図である。実施の形態2における筒状部26aの数は、筒状部26aに通される支持ロッド25の本数よりも多い。
【0038】
そして、複数の筒状部26aのうち、複数本の支持ロッド25が通される筒状部26aの組み合わせを変更することにより、カバー本体22の幅寸法が変更可能となっている。カバー本体22の幅寸法は、支持ロッド25の長手方向に直角、かつ鉛直方向に直角な方向への寸法である。
【0039】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0040】
このような懸架体カバー装置では、カバー本体22の幅寸法が変更可能となっている。このため、同一部品からなるカバー本体22を、被カバー部17aの幅寸法が異なる複数のエレベータ巻上機13に適用することができる。
【0041】
例えば、懸架体17として複数本のロープが用いられている場合、ロープ本数が異なる複数のエレベータのエレベータ巻上機13に、同一部品からなるカバー本体22を適用しつつ、カバー本体22の幅寸法が必要以上に大きくなることを抑制することができる。
【0042】
なお、実施の形態2において、筒状部26aの数及び位置は、特に限定されない。例えば、シート部材26の全体に等間隔で筒状部26aが設けられていてもよい。
【0043】
また、実施の形態1、2において、各支持ロッド25は、伸縮可能であってもよい。これにより、各支持ロッド25の長さを連続的に調整することができる。
【0044】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0045】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0046】
(付記1)
エレベータ巻上機に設けられ、懸架体における駆動シーブとそらせ車との間の部分である被カバー部を覆うカバー本体
を備え、
前記カバー本体は、
それぞれ前記被カバー部に沿って配置される複数本の支持ロッドと、
可撓性を有する材料により構成されており、かつ、前記複数本の支持ロッドのうちの少なくとも一部の支持ロッドが通される複数の筒状部が設けられており、前記複数本の支持ロッドにより支持されて前記被カバー部を覆うシート部材
を有しているエレベータの懸架体カバー装置。
(付記2)
各前記支持ロッドの長さは、調整可能である付記1に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
(付記3)
各前記支持ロッドは、複数のロッド片を継ぎ合わせることにより構成されている付記2に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
(付記4)
各前記支持ロッドは、伸縮可能である付記2に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
(付記5)
前記エレベータ巻上機に取り付けられ、前記カバー本体における前記駆動シーブ側の端部を保持する第1保持部材、及び
前記エレベータ巻上機に取り付けられ、前記カバー本体における前記そらせ車側の端部を保持する第2保持部材
をさらに備え、
前記第1保持部材には、前記シート部材が引っ掛けられるフックが設けられており、
前記第2保持部材は、前記シート部材の余剰部分を受ける付記1から付記4までのいずれか1項に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
(付記6)
前記筒状部の数は、前記筒状部に通される前記支持ロッドの本数よりも多く、
前記複数の筒状部のうち、前記複数本の支持ロッドが通される筒状部の組み合わせを変更することにより、前記カバー本体の幅寸法が変更可能となっている付記1から付記5までのいずれか1項に記載のエレベータの懸架体カバー装置。
【符号の説明】
【0047】
13 エレベータ巻上機、15 駆動シーブ、16 そらせ車、17 懸架体、17a 被カバー部、21 懸架体カバー装置、22 カバー本体、23 第1保持部材、23a フック、24 第2保持部材、25 支持ロッド、26 シート部材、26a 筒状部、26c 余剰部分、27 ロッド片。
【要約】
【課題】カバー本体の軽量化を図ることができるエレベータの懸架体カバー装置を得ることを目的とする。
【解決手段】カバー本体22は、複数本の支持ロッド25とシート部材26とを有している。シート部材26は、可撓性を有する材料により構成されている。シート部材26には、複数の筒状部26aが設けられている。各筒状部26aには、支持ロッド25が通されている。また、各支持ロッド25の長さは、調整可能である。
【選択図】
図3