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特許7649603ピッチ収率を増加するための熱処理プロセス及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】ピッチ収率を増加するための熱処理プロセス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C10C 3/00 20060101AFI20250313BHJP
   C10C 3/06 20060101ALI20250313BHJP
   C10B 57/04 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
C10C3/00
C10C3/06
C10B57/04 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022505235
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2020022692
(87)【国際公開番号】W WO2021015824
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】16/520,135
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522032497
【氏名又は名称】コッパーズ デラウェア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マルムクヴィスト マイケル ベック
(72)【発明者】
【氏名】ケアンズ ビリー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー カール カミール
(72)【発明者】
【氏名】バロン ジョン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ ジェームズ ティー
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086985(WO,A1)
【文献】特開昭52-042518(JP,A)
【文献】特開昭50-109212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10C 3/00
C10C 3/06
C10B 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発原料からピッチを誘導する方法であって、
前記出発原料が流動可能な液相であり、前記出発原料を、熱伝達を促進する伝導性材料で少なくとも部分的に構築された導管の熱伝導性部分に導入するステップと、
前記出発原料を収容した前記導管の前記熱伝導性部分に、制御された方法で熱を適用し、前記出発原料の温度を、前記出発原料を液相に保ちながら、少なくとも約3.2bar(g)(46psi(g))の圧力において459~535℃に上昇させるステップと、
前記導管の前記熱伝導性部分の少なくとも一部を通る前記出発原料の近似等流を、メソフェーズ生成を0.7%以下に制限しながら前記出発原料の一部をピッチに変換するのに十分な時間にわたって、ほぼ一定の温度に維持し、前記出発原料と前記ピッチとを含有する併合ストリームを形成するステップと、
前記併合ストリームの温度を275~385℃に低下させるステップと、
前記ピッチを前記併合ストリームから分離し、分離したピッチを得るステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記出発原料は、4.1bar(g)(60psi(g))を超える圧力において、475~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が以下の1つを満たす、
a.前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、3.0~49.2分の範囲の時間にわたって発生する、
b.前記分離したピッチの収率は、15~45%の範囲である、
c.前記温度は475℃であり、前記圧力は約3.2bar(g)(46.2psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、49.2分間発生して、45%のピッチを生じる、及び、
d.前記温度は510℃であり、前記圧力は約10.7bar(g)(155psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、3分間発生して、15%のピッチを生じる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記出発原料は、約4.2~8.7bar(g)(60.7~126psi(g))の範囲の圧力において、490~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が以下の1つを満たす、
a.前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、4.3~23.6分の範囲の時間にわたって発生する、
b.前記分離したピッチ収率は、20~40%である、
c.前記温度は490℃であり、前記圧力は約4.2bar(g)(60.7psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、23.6分間発生して、40%のピッチを生じる、及び、
d.前記温度は510℃であり、前記圧力は約8.7bar(g)(126psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、4.3分間発生して、20%のピッチを生じる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記出発原料は、約4.5~7.7bar(g)(65.1~111.5psi(g))の範囲の圧力において495~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が以下の1つを満たす、
a.前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、5.7~16.3分の範囲の時間にわたって発生する、
b.前記分離したピッチ収率は25~35%の範囲である、
c.前記温度は495℃であり、前記圧力は約4.5bar(g)(65.1psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、16.3分間発生して、35%のピッチを生じる、及び、
d.前記温度は510℃であり、前記圧力は約7.7bar(g)(111.5psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、5.7分間発生して、25%のピッチを生じる、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記出発原料は、約5.8bar(g)(83.9psi(g))の圧力において500℃の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、7.4分間発生して、30%のピッチを生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出発原料は、約5.5~20.7bar(g)(80~300psi(g))の範囲の圧力において459~496℃の範囲の温度に上昇された石油系デカント油である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が以下の1つを満たす、
a.前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、1~25分の範囲の時間にわたって発生する、
b.前記分離したピッチ収率は40~54.3%の範囲であり、コークス値は47.3~50.5質量%である、
c.前記温度は496℃であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、1分間発生して、47.3質量%のコークス値を有するピッチを54%生じる、
d.前記温度は468~482℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、10分間発生して、47.3~50.5質量%の範囲のコークス値を有するピッチを43~54.3%の範囲で生じる、及び、
e.前記温度は459~471℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、20分間発生して、47.7~50.1質量%の範囲のコークス値を有するピッチを40~47.5%の範囲で生じる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記出発原料を前記導管への導入前に加温する追加ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記併合ストリームからの前記ピッチ部分の前記分離は、蒸留によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
予め選択された出発原料からピッチを誘導するための連続方法であって、前記ピッチ部分を前記出発原料として分離した後で、請求項1に記載の前記併合ストリームをリサイクルするステップを含む、方法。
【請求項15】
前記出発原料が、デカント油、コールタール系重質留出油、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記併合ストリームから分離したピッチが、(i)デカント油に関して少なくとも25%、及び(ii)コールタール系重質留出油に関して少なくとも15%、のピッチ収率を有する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月23日に出願された、現在出願中の米国特許出願第16/520,135号の優先権を主張するものであり、その内容は全体が参照により本明細書に援用される。
本発明は、炭素系ピッチの製造における改善に関する。より具体的には、本発明は、ピッチ中のキノリン不溶分及びメソフェーズ生成を最小限に抑えながらピッチ収率を最適化するための、コールタール及び石油の処理からの蒸留副生成物の熱処理に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は、近代化した世界が頼るようになった多数の有益製品の製造においてきわめて重要な出発原料である。中でも特に、地面から採掘された瀝青炭は、「コークス炉」と呼ばれる炉内で加熱されて、石炭の分解蒸留又は炭化によってコークスとコールタールとを生成し得る。コークスは、燃料として、及び鋼製造における試薬源として、広く利用されている。コールタールは、コークス化プロセスで石炭から除去される暗色液体で、道路、アスファルト、屋根、処理木材及びその他の建設材料のシーリングに使用されるシールコートの成分として有用である。コールタールは、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、フェノール、ナフタレン、ベンゾチオフェン、キノリン、メチルナフタレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、カルバゾール、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン(「BaP」)、コロネン及びベンゾ(ghi)ペリレンなどであるがこれらに限定されない、一般に50℃~550℃超の範囲の温度で沸騰する主に芳香族及び半芳香族の約10,000種の化合物の複雑な混合物である。従って、コールタールは、蒸留すると一連の留分となり、様々な構成成分が分離及び回収され、その各々が、それ自体で商業的に採算が取れる場合がある。蒸留されたコールタール材料のかなりの留分がコールタールピッチ残渣である。この材料は、アルミニウム精錬用のアノード、及び鉄鋼業で使用される電気アーク炉用の電極の製造に使用される。コールタールピッチの定性特性の評価において、産業界は、コールタールピッチ材料がアノード及び電極の製造プロセスでの使用に好適なバインダーを提供する能力に注目している。軟化点、比重、キノリン不溶分%、及びコークス値は、全て、これらの様々な製造プロセス及び産業への応用可能性について、コールタールピッチを特徴付ける役割を果たす。
ピッチは、石炭ではなく石油からも得られる。このような場合、デカント油又はエチレンクラッカーボトム(「ECB」)などの石油の接触分解から得られる油を、石油ピッチの製造の出発原料として使用できる。デカント油は、石油精製において石油の接触分解及び蒸留から製造される。デカント油は貯蔵安定性であり、高沸点を有し、更には芳香族化合物と複素環式化合物とを含む。ECBはデカント油よりも熱安定性が低いことから、その蒸留生成物は貯蔵中に爆発する可能性があり、あまり好ましくない。コールタール及び石油のピッチ製造プロセスは互いに似ている場合があり、同じ装置を使用することさえあるが、運転条件は異なる。あるいは、石油とコールタールのピッチ製造システムは、互いに異なる場合もある。更に、石油ピッチは、軟化点、キノリン不溶分(「QI」)%、又はコークス値に関して、コールタールピッチと比べて異なる特性を有し得る。多くの場合、原料材料不足、コスト及び最終生成物に望ましい特性に対処するために、特定の比の石油ピッチとコールタールピッチのブレンドが使用される。
【0003】
コールタール又は石油ピッチを製造する方法は多数存在する。例えば、図1Aは、そのようなプロセスの一実施形態を示す。この従来技術の蒸留プロセスは、湿潤粗製材料(wet crude)1の供給原料から始まる。湿潤粗製材料1は、コールタール、又はデカント油若しくはECBなどの石油系の油のいずれかであってもよい。湿潤粗製材料1は、C1供給ライン10を通して第1塔C1に導入され、当該ラインは、湿潤粗製材料1の出発原料を第1塔C1へ移送するパイプ又は導管である。C1供給ライン10は、第1塔C1の内部容積と比べて狭い場合があり、そのため湿潤粗製材料1は、C1供給ライン10内で高圧下にある。湿潤粗製材料1は、オリフィス11を通って第1塔C1に入るとき、「フラッシュ」又は圧力の急変を経験し、これにより構成部分が低沸点成分と高沸点成分に分離される。第1塔C1は、内容物を特定の温度で加熱して、軽質留分成分を除去する脱水容器である。あるいは、C1供給ライン10は、塔に入る前の湿潤粗製材料1の温度を上げるために熱交換器を通ってもよい。第1塔C1は主に、水を除去して、特定の含水量を超えない「乾燥タール」又は「乾燥油」(出発原料によって異なる)を塔のボトムに生じるために使用される。例えば、第1塔C1を約160℃の温度に加熱してC1留出物12を分別するために、スチームヒーターなどのヒーターを使用してもよく、当該留出物は、水蒸気と、比較的低沸点の軽質分子(例えば、水、一般に「BTX」と呼ばれるベンゼン、トルエン及びキシレンを含む軽油など)とを含む。上記のC1留出物12は、第1塔C1の頂部又は「オーバーヘッド」領域まで上昇し、C1蒸気ライン13を通して除去される。残りの、より重質の分子は、多環芳香族炭化水素(「PAH」)を含めて、塔のボトムまで下がる。「ボトム」は、質量及び高沸点の結果として、蒸留塔の底に分離する重質成分を有する留分を指す。従って、C1ボトムはPAHと他の重質分子とを含み、しばしば「乾燥タール/油」14と呼ばれる。
【0004】
C1ボトムからの乾燥タール/油14は、接続するC1~C2移送ライン15を通って第2塔C2へ移送され、更に蒸留される。従って、第1塔C1Aからの乾燥タール/油は、第2塔C2の供給原料である。第2塔C2は、多段蒸留を提供する分留塔である。多段を有する蒸留塔は、有用な化学物質の最適な回収及び純度をもたらす。蒸留塔は、塔の直径部分の少なくとも一部分に広がる複数のトレイ20を有し、当該トレイは蒸留凝縮物形成のための段として機能し、構成成分の還流において成分の更なる分離を助ける。蒸留塔は、不規則又は規則充填物21も含み、充填物を通って気化分子が上昇することで分離を助ける。塔の構造に関係なく、沸騰した蒸気は塔を上方へ進み、液体は重力によって下方に流れる。任意の段で、下方から入る蒸気は、下方に流れる液体よりも高温である。この蒸気と液体との対流接触は、蒸気から液体へ熱を伝達する。これは、液体中のより低沸点の軽質成分を気化し、蒸気中の重質成分を凝縮する。この軽質の気化と重質の凝縮が連続する段で起こることで、回収化学物質が分離及び精製される。
第2塔C2における蒸留は、典型的には、第2塔C2を、大気圧において、最低温度の約250~270℃から最高で360℃までヒーターで加熱することによって起こる。軽質留分22は、ナフタレン(それ自体で販売することも染料及びプラスチックの製造に使用することもできる)を含め、この段で除去されてもよく、更には210~315℃で留出する精製化学油(「RCO」)に濃縮されてもよい。軽質留分22は、蒸気ライン23を通して第2塔C2から除去される。軽質留分22の一部分は、還流のため第2塔C2に戻されて、更なる蒸留及び分離を達成する。第2塔C2から得られるC2ボトムは、一般に「抜頭タール/油」25と呼ばれ(これも出発原料に応じて異なる)、PAHなどの高分子量芳香族炭化水素を含有し、中間留分及び重質留分を構成する。
【0005】
C2ボトムからの抜頭タール/油25は、C2-C3移送ライン26を通して第2塔C2から第3塔C3へ移送される。抜頭タール、中間ピッチ又は軟ピッチを含む追加的なタール及びピッチは、軟ピッチ27として特徴づけられ、約40~125℃、好ましくは約90℃(最終ピッチの所望の最終軟化点に大いに依存するが)の軟化点を有し、追加の体積が必要である場合又は入ってくる供給原料の特徴を調節する場合に、C2-C3移送ライン26に追加されて、第3塔C3の追加の供給原料として抜頭タール/油25と一緒にされてもよい。この第3の蒸留塔C3は、充填物21及び/又はトレイを含有してもよく、その内容物は、ヒーターによって315℃を超える温度に加熱される。しかし、メソフェーズは390℃の温度で形成し始めることから、この段階で注意が必要である。メソフェーズはコークスの前駆体であり、生成したピッチ内で固体粒子として現れることとなる。しかし、用語「メソフェーズ」は、本明細書で使用するとき、4μmよりも大きい「報告できる」メソフェーズのみを指す。4μm以下の「未発達の」(embryonic)メソフェーズは、本開示の目的でメソフェーズとみなされない。ピッチ中のコークスは、アルミニウム製造用アノード作製及び製鋼用電極に使用したときにピッチの機能を低下し、アノード又は電極などの炭素人工物を作製するためにピッチが混合ステップでコークスを適切に湿潤する能力を制限し、得られる製品に導電性低下をもたらすことから、この特定の製造プロセスで避けるべきである。従って、構成成分が分離及び留出する沸点を下げるために、第3塔C3に真空を用いてもよい。
【0006】
様々な留分が第3塔C3から得られ、その各々が様々な成分の混合物である。例えば、第1中間留分35は最初に留出し、第3塔C3から留出物ライン36を通して除去され得る。第1中間留分35は、少なくとも12個の炭素を有し、従って高分子量を有する分子などの様々な炭素系分子の混合物である。上記分子はカーボンブラック供給原料(「CBF」)と呼ばれることもあり、ゴム産業の原材料を製造するためにカーボンブラック産業に販売される場合がある。第1中間留分35の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻されてもよい。
第2中間留分38は、第3塔C3から留出物ライン39を通して除去され得る。第2中間留分38は、クレオソート木材防腐剤の製造に使用される化合物を含む場合があり、当該化合物は更なる精製及び他の用途での使用(枕木処理、電柱、その他の木材防腐剤用途など)のために残りの留出物から分離されてもよい。第2中間留分38の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻され得る。
重質留分41は、更に高分子量の成分を含む。重質留分は、第3塔C3から蒸気ライン42を通って除去され得る。重質留分41は、連産物であり、カーボンブラック供給原料を含み得る。重質留分41の一部分は、還流及び更なる分離のために第3塔C3に戻され得る。
第3塔C3においてC3ボトム内に残るのは、コールタールピッチ50である。このピッチ50は、PAHなどの化学物質の混合物を含有する濃厚な黒色液体であり、上記のピッチ製造システムの所望の最終生成物である。ピッチは、ピッチ出口ライン51を通して第3塔C3から除去し、その後の用途に使用することができる。このピッチ50は、その品質及び様々な製造プロセス及び産業における適用可能性を判断するために、軟化点、比重、QI%、コークス値などの様々な品質で特徴付される。蒸留プロセスは、留出物の様々な留分が、異なる時間に及び/又は異なる体積で除去されるように調節することで、製造されるピッチ50に得られる特徴を所望に応じて選択的に変更し得る。例えば、約108~140℃のメトラー軟化点及び10~20%以下のQIを有するコールタールピッチ50を、アノード及び電極製造においてバインダーとして使用できる。含浸ピッチには、更に低いQIが必要になる。
【0007】
従来技術のピッチ製造の第2の実施形態では、図1Bに示すように、湿潤粗製材料1供給原料は、オリフィス11を通して第1塔C1内にフラッシングされ、脱水される。軽油及び水は、C1留出物12として除去され、乾燥タール/油14は、移送ライン15を通して第2塔C2へ移送される。
第2塔C2は、他の従来技術プロセスと同様に多段分留装置であり、大気圧において約250~270℃の温度までヒーターで加熱される。しかし、この実施形態では、軽質留分22は蒸気ライン23によって第2塔C2から留去され、中間留分38は留出物ライン39によって留去される。軽質留分22は、精製化学油(「RCO」)と、他の軽質蒸留油を含み得る。中間留分38は、クレオソートを含む場合あがり、これは更に分離及び精製されてもよい。軽質及び中間留分22、38を併合して一緒に保管してもよく、精製クレオソート製造のために後続処理を行ってもよい。
この実施形態では、C2ボトム中の抜頭タール/油25を、次いでC2-C4移送ライン26’を通して第4の(この実施形態では第3の)塔C4に移動させ、オリフィス11(スパージャーであってもよい)によって第4塔C4に導入又はフラッシングしてもよい。このフラッシングは、重油などの重質留分41を残りの残留物から分離し、重質留分41が蒸気ライン42によって第4塔C4から除去されるようにする。重質留分41の成分は、その後更なる蒸留又は処理によって分離され、カーボンブラックピッチ及び他の芳香族化合物を生じ得る。第4塔C4のボトムの残留物はピッチ50であり、これはコールタールで出発した場合はコールタールピッチであり得、デカント油から出発した場合は石油ピッチであり得る。
【0008】
従来技術のピッチ製造の第3の実施形態は、図1Cに示すように、ピッチ生成において残留物から油を蒸留及び/又は分離するために4つの塔を使用する。具体的には、湿潤粗製材料1は、最初に第1塔C1で脱水されて、水と軽油とを含むC1留出物12が除去される。次いで、乾燥タール/油14が蒸留装置の第2塔C2内で蒸留され、軽質留分22が除去される。得られた抜頭タール/油25は、次いで、別の蒸留装置の第3塔C3へ移送され、そこで中間留分38が除去される。この実施形態では、第3塔C3からの残留物は、フラッシュカラムである第4塔C4へ移送され、そこで急激な差圧により重質留分41を分離する。残りが、所望のピッチ50である。
【0009】
上記の従来技術のピッチ製造プロセスは、出発原料のコールタール及びデカント油のうちの1つから計算して、プロセスパラメータに応じて、15~60%のピッチ収率を生じ得る。プロセスの最適化及び生成物収率の増加は、重要であるが判定が難しく、商業的に販売できる品物を工業規模で生産することは、更に困難であることが判明している。
収率を最適化する方法の一つには、ピッチ製造において供給原料として使用する留出物及び副生成物の熱処理(温熱処理又はヒートソーキング(灼熱処理)とも呼ばれる)が挙げられる。熱処理プロセスは、温度、圧力、及び滞留時間の3つの主要パラメータを有することが認識されている。
ピッチ収率(及び他の特性)を熱処理の使用により改善する方法を特定するために多数の試みがなされてきたが、その能力は多種多様であり、商業的開発に必要な工業生産レベルで商業的に成功しているものはほとんどない。各引用文献は、幅広い時間と温度を開示しており、収率増加につながる機序はほとんど理解されておらず、特定の収率に関連する実際の時間と温度の開示は不十分である。
【0010】
米国特許第3,140,248号明細書は、ソーキングステップを用いたバインダーピッチの調製を開示している。200~650℃の沸点を有する石油留分を接触分解し、次いで熱分解する。熱分解から得られた熱残留物を、温度480~590℃の熱分解帯(soaking zone)で、4~20分、2.1~27.6bar(30~400psi)で処理する。コークス化を最小限に抑えるためには、短い滞留時間と高い線速度が好ましい。ソーキングコイルの使用が開示されているが詳細な説明はない。
米国特許第3,318,801号明細書は、熱ソーキングドラム及び短いチューブヒーターを開示している。熱ソーキングドラムは、温度340~425℃及び0~2.1bar(g)(0~30psi(g))で3~90分間使用される。加熱チューブは、1.7~17.2bar(g)(25~250psi(g))で425~510℃への2~30分間の急速加熱を誘導する。
米国特許第3,673,077号明細書は、トルエン不溶分(「TI」)を増加するためのバインダーピッチ製造用のヒートソーキングを開示している。条件は、350~450℃、圧力約5.2bar(g)(75psi(g))及び滞留時間15分~25時間である。任意選択的に空気が反応器を通過することも開示している。
米国特許第4,039,423号明細書は、石油ピッチを形成するためのデカント油の熱処理を開示している。条件には、413~524℃、15.2~30.3bar(g)(220~440psi(g))、滞留時間3~300分が含まれる。コークス生成を最小限に抑え、懸濁液中のQIを維持するためには、層流よりも乱流の連続流条件が好ましい。これはまた、材料の効率的混合を増し、反応時間を短縮する。生成物の軟化点は79~135℃の範囲である。
欧州特許出願公開第1739153号明細書は、不活性雰囲気下でのコールタール及び留出物の温熱処理の使用を開示している。条件は、340~400℃、10.0bar(g)(145psi(g))未満、及び3~10時間の滞留時間である。好ましい実施形態は、370~400℃、1.0bar(g)(14psi(g))、4~6時間である。不活性条件下での温熱処理は、分子の平面性及び反応生成物の安定性を増し、副反応を制限すると推測される。これは、湿潤性、黒鉛化性、及び反応収率を改善する。出発原料は、アントラセン油を含む。
米国特許第8,757,651号明細書は、ピッチ製造のための350~440℃、圧力3.5~8.3bar(g)(50~120psi(g))でのコールタール留出物の熱処理の使用を開示している。滞留時間は1~7時間の範囲である。出発原料は、低QIのクレオソート油である。熱処理は、比較的低分子量の成分を重合して、より大きな分子にできると推測される。生成物の下流蒸留は、異なる種を分離することが企図される。最終生成物は、55~70%のコークス値と90~140℃の軟化点とを有し得る。15%未満のQIも目標である。バッチ式と連続式の熱処理が企図されているが、反応器の詳細は示されていない。
米国特許第9,222,027号明細書は、高速及び高圧で作動する電気加熱式管型反応器を使用した熱処理を開示している。塩及び溶融金属浴も開示されている。条件は、450~560℃、34.5~62.1bar(g)(500~900psi(g))、滞留時間1~2分である。反応器のパイプ内の層流と乱流が扱われており、乱流が好ましい。乱流のレイノルズ数は、一般に4000超として受け入れられる。10000超のレイノルズ数が好ましく、25000で最も良い実験結果が得られる。50000超のレイノルズ数の使用の推測が示されているが、経験又は実験データはない。
米国特許出願公開第20170121834号明細書は、熱処理を利用した石油ピッチの製造を開示している。ソーカー反応器は、360~460℃の範囲、14.8~18.3bar(215-265psi)で、15分~5時間使用される。不活性環境、又は少なくとも酸素を含まないことが要求される。出発原料には、デカント油、潤滑剤抽出物、及びガソリンが含まれる。
【0011】
これらの取り組みにもかかわらず、従来技術の解決策は商業的成功を達成していないことから、まだ改善の余地がある。従って、当該技術分野で依然として未知の事項は、コールタール及び石油副生成物に適用でき、商業規模の運転で予想可能かつ再現可能な結果を生じる熱処理の方法及び装置である。従来技術の適用に対する重大な制限としては、出発原料の連続処理を妨げる、熱処理後の過剰なコークス又はメソフェーズの生成がある。これは、典型的には、処理の過剰な適用、又は処理の時間及び温度の過剰な変動に起因する。バッチ式反応器の内容物の再循環を利用する従来技術の教示からは、再循環はピッチの品質に有害なものとして識別される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
コークス化及びメソフェーズ生成を最小限に抑えるため、コールタール又は石油製造からの留出副生成物に、時間、温度、及び圧力に関するパラメータを特に重視した温熱処理を行う熱処理プロセスが開示される。当該熱処理プロセスを利用した、対応するコールタール又は石油ピッチ製造プロセスが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
具体的には、本発明の熱処理プロセスは、後段のピッチ製造で留出した重質留分及び石油製造からのデカント油を出発原料として利用する。本発明の熱処理プロセスはこれらの出発原料を、特定の温度、圧力及び滞留時間で熱処理することで、追加のピッチを回収し、全ピッチ収率を増加させる。従って、本発明の熱処理プロセスは、全体的なピッチ製造の効率を高めながら、他の方法では経済性が低くなる副生成物を有益なものとする。熱処理プロセスにおいて関連する温度、圧力及び滞留時間の変数を制御することは、QIレベルを最低限に保ち、メソフェーズ生成を避けるためにきわめて重要である。本発明は、510℃を超え得る高温範囲及び4.1~20.7bar(g)(60~300psi(g))を超える圧力範囲を利用して、出発原材料と反応物質とを液相に保持することで、出発原材料と反応物質が熱処理システム全体を常に移動する。しかし、メソフェーズは約390℃で形成することが知られていることから、本発明は、メソフェーズ生成及びそれによるコークス化の可能性を最小限に抑えるために、対応するプロセスでの滞留時間を最小にすることを企図する。本発明はまた、実世界の条件で物理的に可能な限り、供給材料の乱流加熱と、それに続く熱処理装置の反応器セクションの栓流とを達成することも試み、その目標は、出発原料が熱にほぼ等しく曝露するように、システム内で連続かつ一貫した流れを維持することであり、この流れを独自に「近似等流」(near-uniform flow)として識別する。本明細書において、栓流への言及は、近似等流として理解されるべきである。システム内での時間が長いほど、メソフェーズ生成及びコークス化の可能性が高くなり、温度を下げることでこれに対応し得るが、好ましいものではない。熱処理された出発原料を、その後、追加の供給原料として、連続プロセスの一環としてのピッチ製造プロセスへ戻すことで収率が増加し得る。
【0014】
加えて、商業的に使用されるピッチの軟化点は、今後上昇する傾向があることが指摘されている。現在、ほとんどの商業用ピッチ及びピッチブレンドの軟化点は90~150℃の範囲である。ピッチの軟化点の低下はPAH含有量が高い結果であり、この含有量を低減すると軟化点が上昇する。PAH化合物の多くは、発癌性の可能性があり、一部の州及び国は、これらの物質への人々と環境の曝露に対してますます敏感になりつつある。従って、これらの高PAH化合物をより多く除去することで、潜在的に発癌性の化合物が除去されるが、結果として軟化点の上昇も生じることから、ピッチの軟化点が今後上昇する可能性がある。重質留分は、多数の高芳香族化合物を含み、ピッチ生成中に除去される重質留分の量の増加により、得られるピッチの軟化点が高くなることが知られている。この除去した追加の重質留分を利用する方法は、特に更なるピッチ発生に使用できる場合に有益となる。本明細書に開示されるシステム及びプロセスは、そのような利益を提供する。
以下の発明を実施するための形態及び添付図面を参照することで、熱処理及びピッチ製造のシステム及びプロセスが、その特徴及び利点と共に、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】湿潤粗製コールタール又はデカント油からピッチを製造するための従来技術のシステムの第1の実施形態の概略図である。
図1B】ピッチを製造するための従来技術のシステムの第2の実施形態の概略図である。
図1C】ピッチを製造するための従来技術のシステムの第3の実施形態の概略図である。
図2A】収率増加したピッチをコールタールから製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第1の実施形態の概略図である。
図2B】収率増加したピッチをコールタールから製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第2の実施形態の概略図である。
図2C】収率増加したピッチをコールタールから製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第3の実施形態の概略図である。
図3A】収率増加したピッチをデカント油などの石油副生成物から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第1の実施形態の概略図である。
図3B】収率増加したピッチを石油から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第2の実施形態の概略図である。
図3C】収率増加したピッチを石油から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第3の実施形態の概略図である。
図3D】収率増加したピッチをデカント油などの石油副生成物から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第4の実施形態の概略図である。
図3E】収率増加したピッチを石油から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第5の実施形態の概略図である。
図3F】収率増加したピッチを石油から製造するための、熱処理を組み込んだ本発明のピッチ製造システムの第6の実施形態の概略図である。
図4A】本発明の熱処理システムの第1の実施形態の概略図である。
図4B】本発明の熱処理システムの第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
複数の図面を通して、同様の参照番号は同様の部品を指す。
【0017】
添付図面に示すように、本発明は、熱処理システム300、300’、並びに当該システムを利用するピッチ製造システム100、100’、100”(コールタールから)及び200、200’、200”(石油から)に関する。例えば、図2A~2Cは、コールタールピッチ150をコールタール102から製造する様々な実施形態を図示し、図3A~3Cは、石油ピッチ250をデカント油203から製造する様々な実施形態を示す。ピッチ製造システムのいずれかと共に使用できる様々な熱処理システム300、300’を図4A~4Bに示す。
【0018】
コールタール
最初にコールタールピッチ製造システムに注目すると、(図2Aに概略的に示す)ピッチ製造システム100の第1の実施形態は、コールタール102の脱水から始まる。粗製コールタール102は、初期コークス化プロセスからの水又は水分を多少有する可能性が高いが、タール処理を低速にしないように、水分は約4質量%未満であるべきである。コールタール102は、脱水のためにC1供給ライン110で第1塔C1へ移送される。C1供給ライン110は少なくとも1つの熱交換器(図示せず)を通り、そこでシステムの他の要素からの熱がC1供給ライン110に適用され、C1供給ライン110中のタール102を予熱すると同時に他の成分を冷却する。
本明細書に開示される熱交換器及び図中の熱交換器は、成分を混合させないが、高温成分から低温成分への熱の移動を可能にする十分な接触状態にある。これにより、システム内で発生した熱が効率的に使用される。システムの構成要素を加熱するコストが非常に高額になる可能性があり、多量の燃料を必要とし得る工業規模の製造において、これは特に重要である。熱を有効に使用するために、システム全体を通して複数の熱交換器が配置されてもよい。少なくとも1つの実施形態において、熱交換器は、対応する留出物を貯蔵のために冷却すると同時にタール102供給原料などの他の成分を加熱するように、様々な留出物ラインの経路を含んでもよい。他の実施形態では、より低温の成分を加熱するため、熱交換油を熱交換器に使用してもよい。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、コールタール102は、約50℃の初期温度を有する。コールタール102は、C1供給ライン110が少なくとも1つ、又は場合によっては2つ以上の熱交換器を通ると、約160℃まで加熱される。従って、コールタール102は、第1塔C1に入るとき、少なくとも160℃の温度である。コールタール102は、C1供給ライン110内を圧送されることから、例えば約6.9bar(100psi)の圧力を受けている。第1塔C1は、約1atmの圧力(約14.7psia)の大気圧塔である。コールタール102がオリフィス111を通って第1塔C1に入ると、突然の圧力降下がコールタール102をフラッシングし、その構成成分の分離を開始させる。好ましくは、第1塔C1を加熱するためのリボイラーや他のヒーターが存在しないことから、第1塔C1の熱は、概ね、入っている湿潤コールタール102の熱であり、少なくとも160℃である。
水蒸気及び留出軽油(BTXなど)は、第1塔C1を上方に移動し、C1蒸気ライン113によって除去され、C1留出物112として回収される前に、最高温度約75℃で冷却水凝縮器によって凝縮されてもよい。水は、おおよそ約100℃の温度で留出する。軽油も、ほぼ同じ温度で留出する:ベンゼン(80℃)、トルエン(110℃)及び場合によりキシレン(144℃)。そのため、これらの軽油及び水は、一緒に蒸留及び回収される。軽油は、コールタール供給材料の約1%を占め、水に不混和性であり、C1留出物112の最上層としてデカンテーションされ、貯蔵のため圧送される。軽油の比重は、監視する必要があり、例えば15.5℃で約0.92以下など、高すぎないようにする。上記値を超えると凝縮水からの分離が不十分となり得る。これは、第1塔C1のための湿潤コールタール102が高すぎる場合に起こり得る。
第1塔C1における蒸留は、C1ボトムに回収される乾燥タール114が含水量約2.5質量%以下、好ましくは0.5%未満に低下し、更に15.5℃で少なくとも1.15の比重を有することを特徴とし得るまで継続される。乾燥タール114は、その後移送ライン115を通して第1塔C1から除去されてもよく、これは少なくとも1つの熱交換器を通って、タールトッピングのために第2塔C2に入る前の乾燥タール114の温度を約250~270℃まで上昇させ得る。
【0020】
第2塔C2では、乾燥タール114の最低沸騰留分、すなわち塔頂留出物を除去することから「タールトッピング」と呼ばれるプロセスにおいて、乾燥タール114を更に蒸留して軽質留分122を回収する。当該留分は粗製ナフタレンをRCOとして含み得る。入ってくる乾燥タール114は、第2塔C2に入るときに既に約250~270℃の温度であり、流量制御下、第2塔C2に関連するヒーター、真空及び凝縮器システムに基づくC2供給流速で圧送され得る。第2塔Cは、圧力1atmの大気圧塔で、乾燥タール114供給点よりも下に蒸留トレイ120を有する。少なくとも1つの実施形態では、第2塔C2には20~30個のトレイが存在する。更に、軽質留分122が留出したときの純度を高めるために乾燥タール114供給点の上に少なくとも1つの充填塔セクション又は充填物121が存在してもよい。ヒーター、例えば、火力プロセスヒーターリボイラー又はその他の好適な熱源を、第2塔C2に附属して、ボトム内容物を約350~360℃の温度に加熱し、更なる軽質留分122を留出してもよい。軽質留分122蒸気は第2塔C2を上方に移動し、典型的には、C2供給速度の約15~22%の速度で留出物ライン123を通って除去される。次いで、軽質留分122は、凝縮器で凝縮されて液体形態に変換される。これはRCOをナフタレンと共に含む場合があり、更には熱交換器で冷却された水であり得る。好ましくは、軽質留分122は、55~65%のナフタレン含有量を有してもよく、ナフタレンを分離精製するために更に精製装置で処理されてもよい。軽質留分122はまた、好ましくは70℃で1.03の最大比重も有する。軽質留分122の特徴を、下記の表1及び2にも示している。軽質留分122の少なくとも一部は、第2塔C2の頂部に戻され、軽質留分122中の高沸点化合物の量を制限し、軽質留分122のナフサ含有量を増加するために還流される。本開示全体を通して、当業者に周知であるように、全ての蒸留及び蒸気ストリームは、別の方法として、除去されて将来の更なる使用のために貯蔵され、これらのプロセスに適切な時点で挿入されてもよいことを明記しておく必要がある。この液体C2還流は、蒸気中の高沸点化合物を供給点よりも上方で凝縮し、第2塔C2の塔頂精留セクションの分離効率を改善する。軽質留分122は、軽質留分122中のナフタレン含有量を増加するために、C2供給速度の少なくとも10%で還流され得る。当初のコールタール102の約15~22%が軽質留分122として除去され得る。
C2ボトムは抜頭タール125を含有し、所望の軟化点でピッチを製造するために移送ライン126を通して第3塔C3へ移送される。熱は移送ライン126に沿って保持されることから、第3塔C3に入る抜頭タール125はC2ボトムとほぼ同じ温度である。任意選択的に、軟ピッチ127を、第3塔C3の前に移送ライン126に添加し、抜頭タール125と合わせてC3供給原料とすることで、温度調節、供給原料の増量、又は添加軟ピッチからの残留油除去を行ってもよい。第3塔C3は、好ましくは約40~100ミリバールの絶対圧(絶対圧約0.77~1.9psia)で作動する真空塔である。第3塔はまた、多段蒸留のためのトレイ120と充填塔頂セクション121との組み合わせを有し得る。ヒーター(例えば火力プロセスヒーターリボイラーであるがこれに限定されない)は、C3塔ボトムを約350~360℃の温度に加熱し、C3ボトム液体の再循環によって抜頭タール125から重油留出物を沸騰除去するために使用され得る。
抜頭タール125が第3塔C3で蒸留されると、蒸留物の蒸気が塔内を上昇し、様々な留出物の再循環により凝縮される。具体的には、第1中間留分135は留出物ライン136を通して抽出され、他のプロセス、熱伝達油ストリーム、又は水で外部冷却されて凝縮し得る。当該留分は、下記の表1及び2に記載の特徴を有する。第1中間留分135は、主に他の製品の品質を支持するため、ブレンド油として製造される、中間カーボンブラック供給原料である。その一部は、還流して第3塔C3に戻されてもよく、又は貯蔵及び販売に送られてもよい。初期コールタール102の約5%未満が第1中間留分135として留出される。
【0021】
第3塔C3からの第2の生成物は、第2中間留分138で、WEI-C又はAWPAクレオソート基油などのクレオソートとして使用される成分を含み得る。第2中間留分138は留出物ライン139から除去され、他のプロセス、熱伝達油ストリーム、又は水で外部冷却されて凝縮し得る。全粗製タール102の約13~22%が第2中間留分138として留出される。第2中間留分138は、下記の表1及び2に記載の特徴を有し、及び/又は300℃までに最大10%の留出、355℃までに最大65~90%の留出、特定の場合(特に欧州)で最大10ppmのベンゾ(a)ピレンを特徴とする。留出した第2中間留分138の少なくとも一部は、還流のため第3塔C3に返送又は再循環され得る。第2中間留分138に含有されるクレオソートは、木材防腐剤など、他の産業で非常に有用であり、そのため、品質管理のための監視を、蒸留範囲及びベンゾ(a)ピレンの含有量を監視することで行ってもよい。第2中間留分138の品質は、その製造速度(好ましくは全粗製コールタール102の14~20%の範囲)、及び還流のため第3塔C3に再循環されたときの温度(好ましくは100~115℃の範囲)によって制御される。
第3塔C3において抜頭タール125の蒸留から得られる第3の生成物は、重質留分141で、これは留出物ライン142から除去され、他のプロセス、熱伝達油ストリーム、又は水で外部冷却されて凝縮し得る。この重質留分141は、下記の表1に示すように、主にカーボンブラック供給原料を含むが第1中間留分135に見られない追加成分を有する成分の混合物でもあり、当該成分が重質留分141のPAHレベル及び沸点を上昇する。更に、重質留分141は、QI及びトルエン不溶分の濃度がきわめて低く、実質的にゼロである。当該留分は、355℃までに最大10%の留出も特徴とし得る。重質留分141の少なくとも一部分は、還流による更なる蒸留及び分離のために第3塔C3に戻され得る。全粗製タール102の約14%が重質留分141として留去され得る。
【0022】
コールタール製造システム100の第1の実施形態に関する様々な留出物は、一般的に、下記の表1及び2に示す特徴を有し、その成分量は、製造されるピッチの標的軟化点に応じて変動し得る。
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
C3ボトムに残る残留物が所望のコールタールピッチ150であり、その品質は、限定するものではないが、その軟化点、355℃までの留出物のパーセンテージ、QI及びトルエン不溶分によって決定される。上記の3つのパラメータは全て、C3ボトム液体温度及び重質留分141製造速度によって制御される。好ましくは、得られるピッチ150の軟化点は100~140℃の範囲であり、QIは20%以下である。更に、最終ピッチ150の灰分は好ましくは0.4%以下であり、355℃までの留出物は、好ましくは4%以下である。このシステム100及びプロセスは、少なくとも約40%のピッチ収率を生じ得る。このピッチ150は、第3塔C3からピッチ出口ライン151を経て除去されて、貯蔵、輸送、使用又は販売される。
【0025】
ピッチ製造システム100は、熱処理システム300も含む。熱処理システム300の詳細は、以下に図4A及び4Bを参照して更に十分に示すが、熱処理プロセス300は、全ピッチ150収率を2~10%増加し、合計で約42~50%の収率とし得ることに注意すべきである。特定の実施形態では、ピッチ収率は、44%の全ピッチ収率という好ましい目標まで増加し得る。この追加のピッチ150は、蒸留された重質留分141を特定の予め選択した温度及び滞留時間で熱処理し、図2Aに示すように、その後、熱処理生成物を第3塔C3に導入して、ピッチ製造システム100においてピッチを更に蒸留及び分離することで得られる。
【0026】
本発明は、図2Bに概略的に示すコールタールピッチ製造システム100’の第2の実施形態も含む。コールタール102は、C1供給ライン110内で少なくとも1つの熱交換器(図示せず)を通るときに、約6.9bar(100psi)の圧力下で約160~170℃に加熱される。コールタール102は、オリフィス111を通って第1塔C1内へフラッシングされ、当該オリフィスでC1供給ライン110と第1塔C1とが流体連通して出会う。第1塔C1は、この実施形態において、約900mmHg(17.4psia)の大気圧下における脱水装置である。C1供給ライン110と第1塔C1との間の圧力差が、湿潤コールタール102をフラッシングして、水蒸気と軽油(ベンゼン、トルエン及びキシレンなど)とをC1留出物112として分離する。前述のように、第1塔C1のボトムに残る残留物は乾燥タール114であり、これは乾燥タール114の含水量が約2.5%以下、好ましくは0.5%以下になるまで第1塔C1に残る。これは上記の乾燥タール114と同様の特徴を有する。
乾燥タール114は、C1-C2移送ライン115を通って第2塔C2へ移送され、第2塔は上記のように分留装置又は多段蒸留塔である。ここで、第2塔C2は約120~180mmHg(2.3~3.48psia)の圧力で真空下にあってもよく、約182~230℃の内部温度に加熱されてもよい。この製造システム100’の第2の実施形態において、軽質留分122’が留出し、留出物ライン123によって回収される。軽質留分122’は、下記の表3に示す組成及び特徴を有し得る。中間留分138’も蒸留されて、第2塔C2から除去される。中間留分138’は、下記の表3に示す組成及び特徴を有し得る。C2ボトムは、残留物を循環させて蒸留を補佐するため、約350~365℃の温度までヒーター(図示せず)で加熱される。蒸留された軽質及び中間留分122’、138’は、併合して一緒に貯蔵されてもよく、又は別々に貯蔵されて、後で、例えば販売又は他の用途に使用できる精製クレオソート製造のためなどに処理されてもよい。
C2ボトムは抜頭タール125’を含有し、これは前述のものと同様の特徴を有し、約350~365℃の温度及び約180~220mmHg(3.48~4.25psia)の圧力であってもよい。ただし、ピッチ製造プロセス100’のこの第2の実施形態では、抜頭タール125’はC2-C4移送ライン126’を通して第2塔C2から第4塔C4へ移送される。第4塔C4は、上記の分留装置第3塔C3ではなく、フラッシュカラムである。抜頭タール125’は、オリフィス111(スパージャー又はその他の適切な導入開口部など)を通して第4塔C4’にフラッシングされ得る。第4塔C4は、圧力約40~70mmHg(0.77~1.35psia)の真空下であってもよい。抜頭タール125が第4塔C4にフラッシングされると、重質留分141’が約290~365℃の温度で分離し、留出物ライン142を通して除去され得る。この重質留分141’は、下記の表3に示す組成及び特徴を有する。次いで、重質留分141’は、ピッチ製造を増加する熱処理のため、下記の熱処理システム300へ移送される。熱処理システム300を通った後、熱処理生成物はC1-C2移送ライン115に導入され、追加の分留及び蒸留のためC2供給原料に追加される。このプロセスを通じて製造されるピッチ150’の収率は、重質留分141’の熱処理なしの当初収率よりも20~40%増加している。
【0027】
ピッチ製造システムの第2の好ましい実施形態によって製造される様々な留出物は、表3の特徴を有し得る。
【0028】
【表3】
【0029】
図2Cに示すピッチ製造システム100”の第3の実施形態では、コールタール102は、C1供給ライン110内で少なくとも1つの熱交換器(図示せず)を通るときに、約10.9~11.1bar(158~161psi)の圧力下で約124~184℃に加熱される。コールタール102は、オリフィス111を通して第1塔C1内へフラッシングされ、当該オリフィスでC1供給ライン110と第1塔C1とが流体連通して出会う。第1塔C1は、この実施形態において、約51.7mmHg(15.6psia)の大気圧下における脱水装置である。C1供給ライン110と第1塔C1との間の圧力差が、湿潤コールタール102をフラッシングして、水蒸気と軽油(BTXなど)とを約115℃の温度を有するC1留出物112として分離する。前述のように、第1塔C1のボトムに残る残留物は乾燥タール114であり、これは乾燥タール114の含水量が2.5%以下、好ましくは約0.5%以下になり、温度が約230℃になるまで第1塔C1に残る。これは上記の乾燥タール114と同様の特徴を有し得る。
【0030】
このシステム100”の第3の実施形態は、ピッチ生成において油の蒸留と分離に4つの塔を使用する点で、前述の実施形態とは異なる。具体的には、乾燥タール114は第2塔C2へ移送され、該塔はC1-C2移送ライン115を通る分留装置であり、ヒーター(図示せず)で約262℃の温度に加熱され得る。軽質留分122”は、この第2塔C2から留去され、更なる分離のために還流され得る。軽質留分122”は、下記の表4に示す特徴を有し、RCO及び他の軽油を含み得る。得られる抜頭タール125”は第2塔C2のボトムに生成し、更なる蒸留のためC2-C3移送ライン126を通して第3塔C3へ移送される。
第3塔C3において、タールは、中間留分138”を蒸留するためにヒーター(図示せず)で約330℃の温度に加熱され得る。上記中間留分138”は、表4に示す特徴を有する場合があり、クレオソート及び特定のカーボンブラック供給化合物を含み得る。中間留分138”は、更なる蒸留及び分解のため第3塔C3に還流される場合もある。得られる軟ピッチ127”は第3塔C3のボトムに生成し、所望のピッチに近い場合もあるが、軟化点が低すぎる(約90℃の範囲など)場合もある。ピッチの軟化点を上昇させるには、更に油を除去しなければならない。
従って、軟ピッチ127”はC3-C4移送ラインを通して第4塔C4へ移送され、該塔は、差圧を利用して固体から油を除去するフラッシュカラムであってもよい。例えば、第4塔C4は、約806.8mmHg(1psia)の真空下にあってもよい。差圧は、重質留分141”の留去を引き起こし、所望のコールタールピッチ150”を第4塔のボトムに残し、これは更なる使用又は販売のために除去され得る。重質留分141”は、温度約310℃及び圧力約7.6mbar(g)(0.11psi(g))であってもよく、更に下記の表4に示す特徴を有し得る。
以下に詳述するように、プロセス100”は、留出した重質留分141”の熱処理を、熱処理システム300を通して継続する。熱処理された後、重質留分141”は、C3供給原料として抜頭タール125”と一緒にされる、又は中間留分138”の蒸留及びその後の新たに生成した追加ピッチからの重質留分141”の蒸留のため、別に第3塔C3に導入される。
【0031】
コールタールピッチ製造システム100”の第3の好ましい実施形態によって製造される留出物は、表4の特徴を有し得る。
【0032】
【表4】
【0033】
石油ピッチ
石油製品は、図3A~3Cに示すように、石油ピッチ250製造の出発原料として使用され得る。例えば、図3Aに示すように、デカント油などの石油留分は、概して油203として識別され、ピッチ製造の出発製品として使用される。デカント油203は、石油の接触分解から得られる重油の混合物である。デカント油は多くの点でコールタール102と似ているが、石油由来の脂肪族炭化水素をより多く含む点が異なり、このことがデカント油203処理の化学をより複雑にしている。しかし、ステップの多くは同様である。特定の実施形態では、ECBは、独立で又はデカント油と併合して、ピッチ製造200のための油203として使用され得る。しかし、ECBは、特に蒸気としての安定性が低く、爆発する傾向を示し得ることから、出発試薬として信頼性を持って扱うことは困難である。ECBは、一般的に含浸ピッチの製造にも適さない。デカント油は貯蔵安定性が非常に高く、取り扱いが容易であることから、少なくとも1つの実施形態において好ましくなり得る。石油ピッチ製造システム200、200’、200”を、出発原料としてのデカント油203の使用に関して記載するが、硫黄分、炭素分、又はコークス値の特性が適切である石油の分解(接触分解など)から得られた重油又はその組成物が出発原料として使用され得ることは理解されるべきである。
【0034】
図3A~3C及び図3D~3Fに示す石油ピッチ製造システム200、200’、200”の脱水及び蒸留特性は、それぞれ図2A~2Cのコールタール製造システムs100、100’、100”の当該特性に類似し得る。しかし、石油ピッチ製造システム200、200’、200”は、各ステップにおける運転パラメータが異なり得る。異なるものとして明確に識別されない限り、コールタールの運転パラメータは石油にも等しく適用され得ることに当業者は注意すべきである。更に、図3A~3Cに示すように、熱処理プロセス300、300’は、石油ピッチ250の製造の場合はプロセスの第1ステップとして出発原料の脱水及び蒸留の前に実施され得るのに対し、コールタールピッチ150製造の場合は脱水及び蒸留の後に実施される。これは主にデカント油の化学組成が、コールタールと比べて重質成分がなく、一般的に送達時の含水量が低いためである。従って、デカント油蒸留副生成物は一般的に独立した熱処理には適さない。従って、石油ピッチ製造システム200、200’、200”における熱処理システム300、300’の投入物はデカント油203である。熱処理システム300、300’を、図4A及び4Bを参照して、以下に更に詳細に記載する。該システムは、コールタールピッチ150、150’、150”の製造で使用したシステムと同じであってもよい。
【0035】
図3Aを参照すると、ピッチ製造システム200の第1の実施形態において、デカント油203は最初に熱処理システム300を通して処理され、次いで残りの蒸留システムへと送られる。具体的な処理経路は、バッチ処理又は連続処理のいずれであるかと、含水量とによって決定される。デカント油203が脱水を必要としない限り、以下に図3A~3Cに関して述べるように、C1脱水装置を省いてもよく、当業者の知識にあるように、ストリーム326’と215とを併合してもよい。C1脱水装置が必要である限り又は潜在的に連続プロセスの一部として、デカント油203又は併合した軽質留分222、第1中間留分235、第2中間留分238、重質留分241又はこれらの任意の組み合わせ若しくは部分的組み合わせを、以下に更に詳述するように、熱処理システム300又はC1脱水装置に再導入してもよい。その場合、図3D~3Fに示すように、デカント油203を、別の方法として、投入ストリーム310Aを通してC1脱水装置に送ってもよい。後述するように、脱水後、デカント油を熱処理システム300に導入するために産出ストリーム215Aを通して熱処理に戻してもよい。更に、連続システムの一部として、留出物のストリーム243を、第1塔C1脱水装置に再導入するため、投入ストリーム310Aを通して戻してもよい。脱水装置C1を使用する実施形態では、材料は第1塔C1脱水装置に導入及びフラッシングされる。入ってくる熱処理された油と第1塔C1との間の差圧により、ナフサ又はBTX(ベンゼン、トルエン及びキシレン)などの軽油がデカント油203の残部から分離され、これが留出物ライン213を通してC1留出物212として除去される。以下に更に詳述するように、BTX及び他の軽油は、反応器320から抽出されてもよい。
残りの乾燥油214はC1-C2移送ライン215を通して分留装置第2塔C2へ移送されるか、又は上記のように熱処理に戻される。この第2塔C2は、油(RCO及びクレオソートを含み得る)から軽質留分222を留去するため、事前にヒーターで約350~365℃の温度まで加熱される。軽質留分222はまた、更なる熱処理のためにシステム200を通して、及び更なる蒸留のために軽質留分ストリーム224を通して、リサイクルに送られ得る。
C2ボトムの残留物は、抜頭熱処理油225を含み、該処理油は熱交換器へ移送されて、抜頭油225の温度を、第3塔C3(ここで更に蒸留される)に入る前に約375~415℃に上昇する。抜頭油225が蒸留されるにつれて、様々な留出物が石油ピッチ250から除去され得る。具体的には、カーボンブラック供給材料及び他の成分に相当する第1中間留分235が最初に留出され得る。第2中間留分238は、抽出され、わずかにより重い分子を含み得る。重質留分241は、最後に留出され、最も重い油及び成分を有し得る。これらの留出物の各々は、様々な組み合わせで併合されて、それぞれ第1中間留分ストリーム237、第2中間留分ストリーム240、及び重質留分ストリーム243を通して、更なる熱処理及び蒸留のためにシステム200を通してリサイクルに送られ得る。後述するように、ピッチ250は、熱処理を通したリサイクルの前に除去しなければならないことに注意すべきである。図3Aからわかるように、様々な留出物ストリーム224、237、240及び243は全て、任意の組み合わせ又は部分的組み合わせで併合されて、ピッチ製造プロセス200の最初に熱処理システム300に入る新鮮なデカント油203と合わせるための単一の投入物を形成してもよく、又は必要に応じてC1脱水装置に導入されてもよい。しかし、様々な留出物ストリーム224、237、240及び243は、リサイクルのため別々に熱処理システム300に適用されてもよい。
【0036】
ピッチ製造システム200’の第2の実施形態は、図3Bに示すように、非常に似ているが、蒸留手順が異なる。具体的には、軽質留分222’及び中間留分238’は両方とも、350~415℃に加熱された第2塔C2で蒸留されてもよい。得られた抜頭油225’は、次いで、前述のとおりフラッシュカラムである第4塔C4へ移送される。重質留分241’は、この第4塔C4で蒸留されて、結果として石油ピッチ250’を生成する。軽質留分222’、中間留分238’及び重質留分241’の各々は、それぞれ軽質留分ストリーム224、中間留分ストリーム240及び重質留分ストリーム243の更なる熱処理及び蒸留のため、システム200’を通してリサイクルに送られ、熱処理システム300への再投入のために併合されてもよく、又は別々に投入されてもよい。
【0037】
図3Cに示す、ピッチ製造システム200”の第3の実施形態は、同様であるが、脱水及び蒸留プロセスに4つの塔を使用している点が異なる。この場合、軽質留分222”は、抜頭油225”生成の際に第2塔C2分留装置で除去され、中間留分238”は軟ピッチ227’生成の際に第3塔C3分留装置から除去され、重質留分241”は最終石油ピッチ250”生成の際に第4塔C4フラッシュカラムから除去される。軽質留分222”、中間留分238”及び重質留分241”の各々は、それぞれ軽質留分ストリーム224、中間留分ストリーム240及び重質留分ストリーム243を通した更なる熱処理及び蒸留のため、システム200”を通してリサイクルに送られ、熱処理システム300への再投入のために併合されてもよく、又は別々に投入されてもよい。
好ましい実施形態において、軽質留分222’、中間留分238’及び重質留分241’は、石油ピッチ製造システム200’の第2の実施形態から誘導された状態で、下記の表5に示す特性を有し得るが、他の実施形態から誘導された留出物も同様となり得る。
【0038】
【表5】
【0039】
熱処理
本発明は、コールタールピッチ製造100、100’、100”からの留出物、又は石油ピッチ製造200、200’、200”は出発物質のデカント油を加熱するための熱処理システム300、300’も含む。熱処理システム300、300’の各々は、特定の温度及び保持時間を使用して、熱処理なしでは発生しないと思われる追加のピッチを製造するために熱処理された材料を濃縮し、それによって全ピッチ製造収率を増加する。これらのシステムは、意図的に互換可能であり、本明細書に記載のシステムのいずれかにおいて代用可能な実施形態を構成することは特記すべきである。
【0040】
図4Aは、熱処理システム300の第1の実施形態を示す。システム300への投入物はピッチ製造システムからであり、例えばコールタールピッチ製造100からの重質留分141、石油ピッチ製造200からのデカント油203又は軽質留分222と、中間留分238(又は第1及び第2中間留分235、238)と、重質留分241との組み合わせである。種類に関係なく、投入物は、熱処理投入ストリーム310を通って熱処理システム300に入る。この投入材料は、265~300℃の範囲の温度、流速約4~9MT/時での移動、及び圧力約3.3~7.5bar(g)(47.86~108.78psi(g));より好ましくは273~293℃の範囲の温度、流速約5.5~9MT/時及び圧力約3.5~6.5bar(g)(50.76~94.27psi(g));更により好ましくは、約278~288℃の温度、流速約6.5~9MT/時及び圧力約3.8~5.5bar(g)(55.11~79.77psi(g));最も好ましくは、温度約283℃、流速約7MT/時、及び圧力約4.5bar(g)(65.27psi(g))であってもよい。開示された流速は、プロセスの制限を意図するものではないことは特記すべきである。上記範囲を超える流速については、本明細書による変数の残りを再計算する必要があるにすぎない。熱処理投入ストリーム310は、直径50.8mm(約2インチ)のパイプ又はその他の導管であってもよい。ポンプ311は、例えば圧力ポンプであるがこれに限定されず、熱処理投入ストリーム310に使用されて、中を通る投入材料を移動させ、圧力約6.2~11.7bar(g)(89.92~169.69psi(g))、より好ましくは圧力約7.2~9.7bar(g)(104.42~140.69psi(g))、更により好ましくは圧力約7.5~8.7bar(g)(108.78~126.18psi(g))、最も好ましくは圧力約8.8bar(g)(127.63psi(g))まで加圧する。熱処理投入ストリーム310は、投入材料を熱交換器312に送り、熱交換器は投入材料の温度を約455~490℃、より好ましくは約470~490℃、更により好ましくは約475~490℃、最も好ましくは約480℃に上昇させる。投入材料は、熱交換器312からライン313(加熱されていてもよい)を通してプロセスヒーター314へと移動され、好ましくはその内部は乱流である。このプロセスヒーター314は、例えば誘導加熱であるがこれに限定されない任意の種類の熱反応器であってもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、プロセスヒーター314は、熱伝達を促進する熱伝導性材料で出来たソーキングコイル315を含んでもよく、ソーキングコイル315はライン313と流体連通している。「熱伝導性」は、熱を伝達する、又は熱伝達を促進する材料を意味することを意図し、特定の加熱機構又は体制を意図するものではないことは理解されるべきである。必須ではないが、材料の投入ストリームの乱流は、プロセスヒーター314内において非常に望ましい。少なくとも1つの動力源316が存在してもよく、例えば交流(AC)、直流(DC)又はその他の種類の仕事、出力又はエネルギーをプロセスヒーター314に提供して、熱コイル315を加熱する。エネルギーの適用は、誘導加熱、炎、塩若しくは金属などの溶融材料、電気コイルなど、任意の公知の種類のものであってもよいことは特記すべきである。唯一の制約は、指定された量で熱を適用することである。投入材料は、コイル315及びプロセスヒーター314を通ると、約475~510℃の温度及び約4.2~11.7bar(g)(60.92~169.69psi(g))の圧力、より好ましくは約5.2~9.7bar(g)(75.42~140.69psi(g))で約490~510℃、更により好ましくは約5.5~8.7bar(g)(79.77~126.18psi(g))で約495~510℃、最も好ましくは約6.8bar(g)(98.63psi(g))で約500℃になる。
加熱された材料は、反応器産出ライン317を通ってプロセスヒーター314を出て、反応器320へと移動する。反応器産出ライン317は、前の投入ストリーム310よりも小さい直径、例えば高速又は乱流移動の場合31.75mm(約5/4インチ)であってもよい。反応器320は、複数の容器、パイプ又は導管を含んでもよく、加熱された材料はそれを通って、熱処理のためにシステム300内で所望の保持時間又は滞留時間を達成する。従って、反応器320は、所望の保持時間を達成するために、当業者に公知の様々な長さ、形状、寸法及び配置を有してもよい。理論に束縛されるものではないが、加熱された材料は反応器320に導入され、連続ストリームとしてその中を通り、当該ストリームは一般に、従来の配管又はリザーバ流動特性の制限の範囲内で、均一又はほぼ均一な栓流及び速度で移動する。しかし、好ましくは、細長い容器において、長さ対直径比は約10:1である。
【0041】
例えば、少なくともこの第1の実施形態では、反応器産出ライン317は第1容器321と流体連通しており、加熱された材料を第1容器321に送達する。加熱された材料は高温であることから、第1容器321の内部容積は、酸素を第1容器321に入れないように、窒素又はアルゴンガスなどであるがこれらに限定されない不活性ガス318下にある。第1容器321は上記のように様々な形状及び/又は直径を有してもよく、少なくとも1つの実施形態において、長さ約16m、直径0.3m(約14インチ)を有してもよい。該容器はまた、加熱された材料の熱を保持し、温度を約500℃に維持するため、断熱されていてもよい。第1容器321はまた、約6~7bar(g)(87~101.5psi(g))の圧力下にあり、当該圧力は、上記温度と共に、加熱された材料を液相に保つよう作用し、その結果材料はシステム300内を容易に移動する。真の断熱状態は現実的に不可能であるが、第1容器321(及び、特に企図される単一容器の実施形態を含む、任意の他の実施形態の対応するセグメント)の温度は、その中を通る加熱された材料の横断面のかなりの部分が、ほぼ一定レベルに維持されることが意図され、これが「ほぼ一定の温度」として適宜識別される。この好ましい実施形態の目的で、プラス又はマイナス30℃、より好ましくはプラス又はマイナス10℃、最も好ましくはプラス又はマイナス5℃は、ほぼ均一とみなされる。更に、実用的な範囲内で、加熱された材料は、近似等流で出来るだけ均一に容器を通過することが意図される。
【0042】
加熱された材料は、ボトムから第1容器321に入り、追加の加熱された材料が第1容器321に送達されるにつれて、液位が上昇する。加熱された材料は、第1容器321内を本質的に栓流で移動し、その結果、加熱された材料の分子は全て、可能な限り、ほぼ同じ速度で第1容器321内を移動する。容器の内面との流体相互作用の力学を考慮すると、全体的な栓流は達成の可能性が低いが、容器及び反応器320の設計は、全体として、できるだけ近似等流を達成すべきであることは理解されるべきである。第1容器321内の流動又は流速の変化は避けるべきである。これは、反応器320内における加熱された材料の分子の移動をできるだけ均一な速度に保つことで、分子の滞留時間を知ることができるようにするためである。滞留時間が長いほど、加熱された材料の分子は所与の反応温度に曝され、コークス形成の原因となり得るメソフェーズ生成のリスクが高くなる。従って、乱流は、ほぼ均一な栓流の発生に有用であるが、一部の分子が急速に移動する一方で、一部が渦又は局所的再循環に捕まる程ではない。過度の乱流によって生じるこの非一貫性は、熱処理プロセス300の非一貫性を招き、従って該プロセスによって形成される追加ピッチ150、250の品質に有害であると考えられる。
加熱された材料が第1容器321の中を上昇すると、軽鎖(light Chain)322を含有する蒸気が液体前方に生成する。これらの軽鎖322は、他の分子と結合できなかった又はピッチ生成中に副生成物として破断した、短い炭素鎖分子を含み得る。これらの軽鎖322は、更なる処理のために、スクラビング又は他の任意の非凝縮性ガス回収方法によって、第1容器321から除去され、回収され得る。理論に束縛されるものではないが、この蒸気材料は容器を通る流れの均一性を助ける。加熱された材料の液位が第1容器321の所定の出口点まで上昇すると、材料は、第1容器321及び第2容器324と流体連通している中間反応器ライン323に入る。中間反応器ライン323は、第1又は第2容器321、323よりも小さいか、ほぼ同じサイズであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、中間反応器ライン323は直径76.2mm(約3インチ)であり、好ましくは最大で第1容器321の直径の5分の1である。上記ラインは、加熱された材料を更なる保持のため第1容器321から第2容器324へ移送する。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、第2容器324は、直径0.15m(約6インチ)及び長さ約5mを有する直立管又はその他の類似の細長い構造体であってもよい。当該容器は、更なる反応を抑えるために最小のサイズとすること、及び材料の熱を保存して約500℃の温度を維持するために断熱することが望ましい。加熱された材料はまた、上記のように疑似等流又は栓流(本明細書で互換可能に用いられる)によって第2容器324を通って移動する。反応器産出ライン325は第2容器324と流体連通しており、加熱された材料を第2容器324から熱交換器312へ移送する。これは上記と同じ熱交換器312であってもよく、異なる熱交換器であってもよいが、好ましくは同じである。反応器産出ライン325は、高速移送のため、反応器産出ライン317と類似の直径、例えば31.75mm(約1.25インチ)であってもよい。反応器320を出て熱交換器312に戻る加熱された材料は、反応器320を通って移動する間に多少の熱を失う場合があり、この時点で、約465~510℃、より好ましくは約480~510℃、更により好ましくは約485~510℃、最も好ましくは約490℃の温度を有し得る。この点で加熱された材料は、熱交換器312内で温度約275~325℃及び圧力約3.7~11.7bar(g)(53.66~169.69psi(g))、より好ましくは約280~315℃及び5.2~9.7bar(g)(75.42~140.69psi(g))、更により好ましくは約288~305℃及び5.0~8.7bar(g)(72.52~126.18psi(g))、最も好ましくは約300℃及び6.5bar(g)(94.27psi(g))まで冷却され、圧力がわずかに低下する。この熱処理された材料は、熱処理への曝露によって生成した追加ピッチを含む。この追加ピッチを得るため、熱処理された材料は、ピッチ製造システム100、100’、100”、200’、200’、200”の様々な位置(実施形態及びシステムの種類によって異なる)で交差する産出ライン326によって、熱交換器312から運び去られ、熱処理生成物を蒸留及び油の除去による追加ピッチ抽出のために送達する。具体的には、産出ライン326はコールタールピッチ製造システム100及び100”のC2-C3移送ライン126と交差して、それぞれ図2A及び2Cに示すように、追加C3供給原料となってもよく;図2Bに示すように、コールタールピッチ製造システム100’のC1-C2移送ライン115に入って、追加のC2供給原料となってもよく;図3A~3Cに示すように、石油ピッチ製造システム200、200’、200”において、第1塔C1に直接入って、脱水及びその後の蒸留が行われてもよい。他の実施形態は、熱処理生成物を、ピッチ製造システムに沿った異なる点で導入してもよい。コールタール実施形態において、熱処理した材料を、抜頭タール125、125”又は乾燥タール114と組み合わせると、温度、流速及び圧力が更に低下し、その結果、C3供給原料又はC2供給原料はそれぞれ、約358~375℃、流速約98~130m3/時、及び圧力約2.3~5.5bar(g)(33.35~79.77psi(g))、より好ましくは約362~373℃、約99~120m3/時、及び約2.5~4.9bar(g)(36.26~71.07psi(g))、更により好ましくは約364~370℃、約99~110m3/時及び約2.8~4.5bar(g)(40.61~65.27psi(g))、最も好ましくは約367℃、約99m3/時及び約3.5bar(g)(50.76psi(g))となり得る。任意の連続プロセスにおいて、熱処理された材料に含有される他の油は、これらの残留する他の油を更なる処理及び追加ピッチ生成のために熱処理システムに再導入する前に、熱処理によって生成したピッチから分離する必要があることを特記すべきである。理論に束縛されるものではないが、追加の熱処理時にメソフェーズ又はコークスが生成する可能性が高いことから、ピッチ材料を熱処理する場合、ピッチを熱処理に再導入する前に蒸留によって分離すべきであることは、一般的に理解されるであろう。
【0044】
熱処理システム300における加熱された材料の滞留時間は、互換可能に「滞留時間」又は「保持時間」と呼ばれる場合がある。これは熱処理プロセスの持続時間であって、加熱された材料が熱交換器312から反応器320を通って冷却のため熱交換器312に戻る回路を形成するのに要する時間として定義され得る。この回路は、加熱された材料が約500℃の高温に曝される時間、すなわち、メソフェーズ生成を避けるよう注意を払う必要がある時間を定める。滞留時間は、システムの厳密な温度及び圧力に応じて変動する場合があり、温度又は圧力が高いほど、対応する滞留時間は短くなる。少なくとも1つの実施形態では、熱処理システム300は、投入材料を、温度約500℃及び圧力約6.0~7.0bar(g)(87~101.5psi(g))で、約3~7分、好ましくは7分間、加熱するステップを含む。
ピッチ製造システム100、100’、100”からの様々な蒸留留分は、上記のようにかなり十分に定義され、特徴付けされる。従って、コールタール出発原料、重質留分141に一貫性があることは、様々なパラメータ間の固有の関係はやや複雑であるものの、保持時間及び反応温度が比較的予測可能であることを意味する。以下は、重質留分の熱処理プロセスの運転パラメータのいくつかの代表的範囲である。
【0045】
【表6】
【0046】
コールタール重質留分の熱処理に関して、様々な流速におけるピッチ収率予測のためのパラメータの追加計算を、下記の表7に示す。これは上記と同じ複雑な関係に基づく。
【表7】
【0047】
熱処理システム300’の第2の実施形態を図4Bに示す。これもピッチ製造システムのいずれかと接続して使用され得る。このような熱処理がない場合、ピッチは、最初のデカント油203の約15~25%の量で製造され得る。本明細書に記載の熱処理をシステム300’に用いると、収率は約25~30%増加して、合計ピッチ収率は約40~50%となる。留出物がリサイクルされ更に熱処理される場合、全ピッチ収率は、出発原料及び留出物の品質レベルに応じて、約60~80%まで増加し得る。
熱処理システム300’のこの実施形態では、熱処理システム300’全体の運転パラメータの一部が異なり得るように、反応器320’の構成要素は前述のものとはわずかに異なり得る。事前試験計画の非限定例として、投入材料は、熱処理システム300’に入るときに、温度約49~104℃、流速約7.2~13.1MT/時、及び圧力約1.4~4.8bar(g)(20~70psi(g))であり得る。圧力ポンプ311は、20.7bar(g)(300psi(g))において約2gpmで作動する高圧供給ポンプであり得るが、他の速度及び圧力も企図される。圧力ポンプ311は、投入材料が熱交換器312に入る前に、投入材料の流速を約20.3MT/時まで、圧力を約13.8~18.0bar(g)(200~260psi(g))まで上昇し得る。
熱交換器312は、より高温の成分(例えばシステム300’において下流からの加熱された生成物)を、熱交換器312に通すことで、投入材料の温度を約413~430℃に上昇させる。そこから、材料はプロセスヒーター314へ移送され、該ヒーターで投入材料の特徴に応じて約465~500℃の温度まで更に加熱される。
【0048】
前述の実施形態のように、プロセスヒーター314は誘導加熱されるかソーキングコイルであってもよく、1MWの出力で作動する表示の変換器などであるがこれに限定されない任意の好適な動力源316で駆動されてもよい。動力源316からプロセスヒーター314及び/又はその中のコイル315へは複数の接続があり、それはコイル315の3周毎などの定間隔であってもよい。ただし、プロセスヒーター314に十分な動力を提供する任意の構成が企図される。プロセスヒーター314は、十分な長さのコイル315をその中に有してもよく、投入材料が反応器出口ライン317を通ってプロセスヒーター314を離れる前に、所望の目標温度に維持及び加熱する。
反応器出口ライン317は反応器320’の第1容器321’と流体連通している。この第1容器321’は、前述のとおり、栓流反応器であってもよい。加熱された材料は、ボトムから第1容器321’に入り、ほぼ均一な速度で上昇することで、乱流を避け、加熱された材料の全分子について同じ流速を維持する。第1容器321’は、圧力約6.9~13.8bar(g)(100~200psi(g))、好ましくは6.9~12.1bar(g)(100~175psi(g))の範囲であってもよく、更に、高温であることを考慮して、第1容器321’内に存在する酸素を制限するため、窒素又はアルゴンなどの不活性ガス318下であってもよい。加熱された材料は、第1容器321’に入るとき、好ましくは約482.2~496℃であり得る。当該材料は、第1容器321’を上方に移動するにつれて、多少の熱、例えば約20~30℃を失う場合がある。
【0049】
実施形態において、第1容器321’は、その一部に沿って画定された、好ましくは容器321’の頂部付近の離脱ゾーン(disengagement zone)328を含み得る。離脱ゾーン328は、第1容器321’の残りの部分よりも大きい直径(従って大きい内部容積)を有する。実施形態において、この追加スペースは、ピッチ製造プロセスでピッチ150、250を生成しなかった小さい炭化水素分子を含む蒸気を、液体から分離し、LC1 322’として除去させ得る。この抽出はまた、発泡(これは乱流を発生することから望ましくない)を制限し得る。これらのLC1 322’は、第1容器321’の頂部まで上昇する。LC1 322’は、約437.8~443.3℃の温度であってもよく、好ましくは離脱ゾーン328の上方の点で.第1容器321’から除去され得る。除去されたLC1 322’は、凝縮器に送られてもよく、そこで凝縮され、及び/又は汚染防止デバイスで熱分解される。
LC2 333は、離脱ゾーン328において泡及び/又は蒸気として生成し得る。LC2 333は非凝縮性ガスを含有し、第1容器321’の離脱ゾーン328から除去されて、第2容器324’へ移送され得る。好ましい実施形態では、追加の軽鎖LC2 333は、第2容器324’の長手方向中央点で該容器に入る。第1容器321’内の加熱された材料の液位が特定のレベルまで上昇するにつれて、第1容器321’から出た液体の加熱された材料も、中間反応器ライン323’を通って第2容器324’へ移送される。第1容器321’からの加熱された材料は、第2容器324’を通る追加の栓流のために第2容器324’のLC2 333と併合される。第2容器324’はまた、不活性ガス318下にあり、不活性ガスは第1容器321’のガスと同じでも異なっていてもよい。加熱された材料は、第2容器324’内で、第1容器321’内と実質的に同じ温度及び圧力であるが、加熱された材料が反応器320’を通る際に多少の損失を生じ得る。
第2容器324’の頂部に集まる蒸気は、軽鎖LC3 340として除去されてもよく、その後LC1 322’と併合されて、凝縮により液体に戻されてもよい。上記の併合されたLC1 322’及びLC3 340は、ナフサを含有してもよく、ナフサは、販売又は更なる使用のため、ナフサ精製装置で精製及び分離されてもよい。LC1 322’及びLC3 340の残りは、上記のように熱分解されてもよい。第2容器324’のボトムは熱処理された材料を含有し、その後冷却のため反応器産出ライン325を通して熱交換器312に戻される。冷却後、熱処理された材料は、実施形態及びシステムの種類に応じて、ピッチ製造システム100、100’、100”、200’、200’、200”に戻り、上記と同様の交差点を有する。あるいは、熱処理された材料は、反応器320’から塔C1へ戻されてもよく、従来手段によって温度が低下されてもよい。
システム300’の第2の実施形態を使用した熱処理プロセスの滞留時間は、少なくとも使用温度に応じて変動する。例えば、約482.2~500℃の温度の加熱されたコールタール材料は、熱処理プロセス200’を約10~20分の保持時間で通過するのに対し、約537.8℃の温度の場合は、約5分の保持時間しか持続しなくてもよい。更に低い反応温度の場合、最長で60分の保持時間が可能である。これらは、ほんの数例の非限定例である。
【0050】
投入材料を本発明の熱処理システム300’に1回通すことで、ピッチ収率が2.5倍に増大し、熱処理なしの場合のピッチ収率約15%と比べて、約40%の全ピッチ収率が得られることが明らかになっている。追加ピッチ150、250は、投入材料をリサイクルして熱処理システム300’に少なくとも1回通すことによって、複数回ではなくても、更に発生し得る。ただし、ピッチ負荷が増えるとメソフェーズ蓄積が起こる危険がある。従って、いくつかの実施形態では、熱処理生成物を蒸留に通して得られるピッチ150、250を除去し、熱処理システム300’に再度リサイクルしないことが有益、又は必要になることさえあり得る。これは、ピッチ150、250中のメソフェーズ生成を制限又は防止する。
【0051】
コールタール102の出発原料と比べて、デカント油203は、バッチ間で組成及び濃度のばらつきが大きい。これは、温度と、保持時間と、圧力との間の関係に複雑さを増す原因となる。しかし、>47%のコークス値及び<0.7%のメソフェーズという所望のピッチパラメータは、許容可能なピッチ収率増加の上限と下限を制御する。増加が大きすぎる又は小さすぎると、コークス値が不十分又はメソフェーズが多すぎる、のいずれかのピッチを生成するからである。上記の限度から、熱処理したデカント油における保持時間と温度の間の関係は、次式で記載できる。
25=0.1((1.8×Tr+32)-Tc)+0.1(Rt
式中、25は、熱処理なしで得られる収率に対する収率増加のパーセント(少なくとも47%のコークス値及び0.7%の以下メソフェーズという所望のピッチパラメータによって決定される)であり;Trは摂氏単位の反応温度であり;Tcは653であり、Rtは分単位の保持時間である。最初の0.1は、華氏温度1度に対する収率(%)増加を示し、2つ目の0.1は、1分追加ごとの収率(%)増加を示す。特定のシステムの制約に応じて、上記の式は、保持時間Rt又は反応温度Trに関して、それぞれ以下のように表すこともできる。
t=250-(1.8×Tr+32)+Tc
【数1】
【0052】
本発明に記載の好ましい実施形態において、デカント油203の熱処理の場合、Tr反応温度は454~483℃の範囲であり、Rt保持時間は3~25分の範囲である。興味深いことに、25%の収率増加(上記式で「25」及び「250」に対応する)は、-5~0のAPI比重を有するデカント油203出発原料に等しく良好に当てはまる。上記よりも高い又は低い収率は、許容できないレベルのメソフェーズ又は不十分なコークス値のいずれかを生じる傾向がある。石油産業で一般的に理解されているように、API比重と比重(SP)には以下のような関係がある:
【数2】
【0053】
従って、石油ピッチ製造200”におけるデカント油203の比重は、システム200”の運転パラメータを変える場合があるが、上記の式はデカント油203出発原料の様々な比重に等しく良好に当てはまる。
反応温度及び反応時間を予測するための上記式は、平均的な反応器勾配(reactor gradient)の場合、本明細書に開示された熱処理システム300’を使用した石油留出物の熱処理プロセスの運転パラメータについて、以下の表8に示す代表的範囲を提供する。
【0054】
【表8】
【0055】
本明細書の好ましい実施形態の上記特徴及びその他の特徴は、以下の非限定例により例証され得る。
【実施例
【0056】
以下の実施例は、本明細書に記載のピッチ製造システム及び/又は熱処理システムの特定のパラメータの決定及び/又は試験において誘導された実験データを提供する。特定の実施形態への参照が適宜示される。
【0057】
実施例1 重質留分除去率の決定
上記のコールタールピッチ製造システム100の第1の実施形態の第3塔C3からピッチ製造システム100の全体的性能を損なうことなく重質留分141を除去し得る最大流速を決定するために、ある実験を実施した。重質留分141の熱処理は、B(a)Pの分離のため、並びに得られるピッチ150の高い軟化点(例えば、約130℃、メトラー法)を維持するために、重要である。
ピッチ収率を5%増加するという目標を仮定し、熱処理システム300に必要な流速を次のように計算した。年間タール生産量を約300,000MT/年と仮定すると、この数字の5%は約15,000MT/年であり、これが要求される追加ピッチとなる。この15,000MT/年という速度を予測収率の30%で除算すると約50,000MT/年で、300日/年の運転日で除算すると、追加で5%のピッチ収率を達成するための熱処理システム300の流速は、166MT/日又は7MT/時となる。
コールタールピッチ製造システム100は、典型的には、ピッチ製造のために約31.5MT/時の速度で運転され得る。重質留分141が、熱処理プロセス300を約7MT/時の速度で通過するには、ピッチ製造の速度を同様に低下する必要がある。このことから、ピッチ製造速度の十分な低下が達成されれば、既存のピッチ製造プロセスを妨げることなく追加のピッチ収率を達成できるか否かを判定するために試験を実施した。
これを試験するため、第3塔C3から留出物ライン142へのバルブを様々な量で部分的に閉じることで、重質留分141の熱処理ドローを試験的にシミュレートした。これは、油のドローの流速を制限した。55%閉鎖(通常位置)から開始し、次いで35%閉鎖、30%及び25%閉鎖と、閉鎖率の異なる4種のバルブ位置を試験した。各バルブ位置について、流速を測定して、シミュレートした重質留分141のドローを監視した。システムの効果を監視するために熱負荷も測定し、得られたピッチの軟化点(メトラー)を、ピッチ製造プロセスの品質管理として測定した。他の項目も、コントロールとして測定した。分離の影響の理解を深めるために、B(a)P及び蒸留間隔も測定した。これらの試験の結果を下記の表9にまとめる。
【0058】
【表9】
【0059】
この結果は、ピッチ製造システム100の通常運転を維持しながら、重質留分141熱処理流速を低下できることを示す。これは、流速低下の熱負荷に対する影響によって実証される。55%におけるプロセス条件は、標準的な運転条件でありながら、通常変動の一部を示す。これは、第2中間留分トレイ温度が、210℃の通常温度とは異なることからわかる。
通常運転は維持されているものの、第2中間留分冷却ループは最大を超えていることに注目すべきである。このため、第2中間留分トレイ温度は実験が進むにつれて上昇し、それが第1中間留分収率の増加を招いた。第2中間留分冷却が最大に達することは、特に重質留分速度の低下により追加の冷却負荷が除去された場合に、問題である。
総じて、温度管理と実験結果の両方が、塔の冷却が不十分であることを示す。追加の流れが管理ループから除去されると、この効果は増大する。従って、冷却負荷の損失を克服するため、又はエネルギー入力を低減するために、追加の冷却が必要となり得る。
上記の結果は、合わせると、7MT/時の流速を用いた熱処理は可能であるが、低PAHクレオソート製造には、追加の冷却が必要となり得ることを示す。
【0060】
実施例2 反応器温度の決定
熱処理システム300のフルスケール適用を更に設計するため、いくつかの基本事例を、特にプロセスヒーター314温度について評価した。ここでは、420、445、471、497及び522℃の温度を評価した。この評価の下限は、反応性の限度を示した予備的オートクレーブの結果に基づく。上限は、重質留分の自然発火温度(測定値542℃)に基づく。安全上の理由から、最終反応器温度は522℃に制限される。
過去の実験で、重質留分は、メソフェーズ又はコークスを形成することなく、550℃の温度で5.2分間処理できることが明らかになっている。更に、長い保持時間に関する過去の実験から、以下の表10に示すデータが得られた。
【0061】
【表10】
【0062】
これらの過去のデータに基づき、速度論に基づくシミュレーションを、実施例1から識別されたように、7MT/時の重質留分流速と、全体で30%という所望のピッチ収率とを使用して決定した。これらの速度論的計算は、以下の表11に示すデータを提供する。
【0063】
【表11】
【0064】
実験室で使用した最大保持時間は5.2分である。表11からわかるように、計算結果の大部分は、この時間をはるかに超えた。従って、これらの速度論的計算は、反応速度を過大評価する可能性がある。
【0065】
実施例3 様々な温度及び保持時間の試験-コールタール
重質留分をピッチに変換する熱処理の実現可能性を評価するための試験を実施した。これらの初期実験は、365~510℃の様々な温度及び4.5分~2時間の範囲の保持時間で実施した。これらの結果から反応定数を導出した。反応が吸熱か否かを測定するために、反応器を十分に断熱し、測定された反応器の温度がオーブンの温度によるものではなく、内部の重質留分によることを確実として、2つの追加実験を断熱的に実施した。実験は、栓流反応器を用いて実施した。
実験は全て、同じ一般的方法で実施した。重質留分を供給タンクに入れ、回転ポンプで反応器に通した。反応器は、プレヒーターを有するオーブンに収容され、299~330mLの範囲の異なるサイズの反応器も使用した。重質留分をポンプで反応器に通し、所与の温度で所定の保持時間を得た。オーブンの後、重質留分を、冷却コイルを通して温度を低下させた後、廃棄物タンク又はサンプルタンクに進めた。反応器の温度が安定になった後、サンプル回収を実施した。ほとんどの実験で、1000gのサンプルが回収された。
重質留分が実験を通して液体であることを確実とするため、すべてのパイプにヒートトレースを追加した。供給タンクは100℃、冷却コイルは180℃、サンプル及び廃棄物タンクは150℃に維持した。温度センサーをプレヒーター及び反応器上の複数の場所に設置し、重質留分の温度プロファイルを追跡した。実験中は、不活性雰囲気とするために窒素パージフローを使用した。実験は、重質留分の蒸気圧力に打ち勝つために高圧で実施した。実験は、一般に、約6.9bar(g)(100psi(g))で実施した。
得られた熱処理油は、サンプルのピッチ収率を確認するために蒸留する必要があった。蒸留のため、減圧蒸留を用意した。各蒸留は、丸底フラスコ内で約400gのサンプルで実施した。使用した蒸留塔は、長さ1mのビグリューカラムであった。全てのサンプルを、完全真空下で蒸留した。ボトム温度は、蒸留開始時に250℃に設定し、その後、十分な油が蒸留されて期待した収率が得られるまで徐々に上昇させた。ピッチが適切な融点範囲の105~130℃にないとき、蒸留を最初から再度実施した。2回目の蒸留の間、より高融点又は低融点のピッチを製造するため、それぞれ、より多い又は少ない留出物が留去されるように、ボトム温度を上昇又は低下させた。
熱処理油、ピッチ及び留出物について、数種類の分析を実施した。熱処理油を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)で測定して、芳香族性を計算した。ピッチの融点を測定した。融点が許容されるには、105~130℃である必要があった。ピッチのQIを測定した。QIはできるだけ低いことが望ましかった。ピッチをB(a)Pについても分析した。ガスクロマトグラフィー(GC)を留出物に実施して、重質留分中の化合物の変換率を計算し、反応定数を計算した。油の一部を、ガスクロマトグラフィー質量分光法(GCMS)でも測定し、GCの結果と比較した。
様々な試験のデータを下記の表12にまとめる。
【0066】
【表12-1】
【0067】
【表12-2】
【0068】
これらのデータは、試験した温度及び保持時間に対するピッチ収率(%)の増加を示し、重質留分の熱処理がピッチ収率を増加し得ることを示唆した。
反応が吸熱か否かを試験するための断熱実験の結果を下の表13に示す。
【表13】
【0069】
実施例4 様々な温度及び保持時間の試験-石油
石油由来デカント油の熱処理について、様々な実験室スケールの試験を、様々な温度及び保持時間で実施した。未加工のデカント油を、13.8bar(g)(200psi(g))で一定のオートクレーブ内でヒートソーキングにより実施した。デカント油が所望の温度に加熱されるにつれて、わずかなラグタイムが生じた。所望の温度に熱処理した後、生成物を急冷してヒートソーキングを中止し、メソフェーズ生成を制限した。熱処理プロセス中に生成したピッチを蒸留によって単離して、未反応のデカント油を除去し、得られたピッチをコークス値及びメソフェーズにより特性決定した。これらの実験の結果を下記の表14にまとめる。
【0070】
【表14】
【0071】
上記実験の各々で、>47%のコークス値及び<0.7%のメソフェーズを特徴とする許容可能なピッチが生成された。
記載した好ましい実施形態には、細部に多数の変更、変形及び変化を行うことができることから、上記の記載及び添付図面に記載の事項は全て、例示であって限定的な意味ではないと解釈されることを意図する。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物によって決定されるべきである。以上、本発明を説明した。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕予め選択された出発原料からピッチを誘導する方法であって、
(i)石油系デカント油と(ii)コールタール系重質留出油とからなる群から出発原料を選択するステップと、
前記出発原料を、流動可能な液相中で、熱伝達を促進する伝導性材料で少なくとも部分的に構築された導管に導入するステップと、
前記出発原料を収容した前記導管の前記熱伝導性部分に、制御された方法で熱を適用し、前記出発原料の温度を、約3.2~20.7bar(g)(46~300psi(g))の圧力において459~535℃に上昇させるステップと、
前記導管の前記熱伝導性部分の少なくとも一部を通る前記出発原料の近似等流を、併合ストリーム中のメソフェーズ生成を0.7%以下に制限しながら前記出発原料の一部をピッチに変換するのに十分な時間にわたって、ほぼ一定の温度に維持するステップと、
前記併合ストリームの温度を275~385℃に低下させるステップと、
前記ピッチを前記併合ストリームから分離し、(i)前記石油系デカント油に関して少なくとも25%、及び(ii)前記コールタール系重質留出油に関して少なくとも15%、のピッチ収率を得るステップと、
を含む、方法。
〔2〕前記出発原料は、約3.2~10.7bar(g)(46~155psi(g))の範囲の圧力において475~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、3.0~49.2分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記ピッチ収率は、15~45%の範囲である、前記〔2〕に記載の方法。
〔5〕前記温度は約475℃であり、前記圧力は約3.2bar(g)(約46.2psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約49.2分間発生して、約45%のピッチを生じる、前記〔2〕に記載の方法。
〔6〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約10.7bar(g)(約155psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約3分間発生して、約15%のピッチを生じる、前記〔2〕に記載の方法。
〔7〕前記出発原料は、約4.2~8.7bar(g)(60.7~126psi(g))の範囲の圧力において、490~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、4.3~23.6分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕前記ピッチ収率は、20~40%である、前記〔7〕に記載の方法。
〔10〕前記温度は約490℃であり、前記圧力は約4.2bar(g)(約60.7psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約23.6分間発生して、約40%のピッチを生じる、前記〔7〕に記載の方法。
〔11〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約8.7bar(g)(約126psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約4.3分間発生して、約20%のピッチを生じる、前記〔7〕に記載の方法。
〔12〕前記出発原料は、約4.5~7.7bar(g)(65.1~111.5psi(g))の範囲の圧力において、495~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、5.7~16.3分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記ピッチ収率は、25~35%の範囲である、前記〔12〕に記載の方法。
〔15〕前記温度は約495℃であり、前記圧力は約4.5bar(g)(約65.1psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約16.3分間発生して、約35%のピッチを生じる、前記〔12〕に記載の方法。
〔16〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約7.7bar(g)(約111.5psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約5.7分間発生して、約25%のピッチを生じる、前記〔12〕に記載の方法。
〔17〕前記出発原料は、約5.8bar(g)(約83.9psi(g))の圧力において約500℃の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔1〕に記載の方法。
〔18〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約7.4分間発生して、約30%のピッチを生じる、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記出発原料は、-5~0の範囲のAPI比重を有する石油系デカント油であり、前記出発原料は、約5.5~20.7bar(g)(80~300psi(g))の圧力を、ほぼ一定の温度で、次式による時間にわたって適用され:
25=0.1((1.8×T r +32)-T c )+0.1(R t
[式中、T r は摂氏単位の反応温度であり、T c は653であり、R t は分単位の保持時間である]、少なくとも25%のピッチ収率増加を生じ、前記ピッチは少なくとも47質量%のコークス値を有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔20〕前記出発原料は、約5.5~20.7bar(g)(80~300psi(g))の範囲の圧力において、459~496℃の範囲の温度に上昇された石油系デカント油である、前記〔1〕に記載の方法。
〔21〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、1~25分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記ピッチ収率は40~54.3%の範囲であり、コークス値は47.3~50.5質量%である、前記〔20〕に記載の方法。
〔23〕前記温度は約496℃であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約1分間発生して、約47.3質量%のコークス値を有するピッチを約54%生じる、前記〔20〕に記載の方法。
〔24〕前記温度は468~482℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約10分間発生して、47.3~50.5質量%の範囲のコークス値を有するピッチを約43~54.3%の範囲で生じる、前記〔20〕に記載の方法。
〔25〕前記温度は459~471℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約20分間発生して、47.7~50.1質量%の範囲のコークス値を有するピッチを約40~47.5%の範囲で生じる、前記〔20〕に記載の方法。
〔26〕前記導管は、前記出発原料が乱流でその中を流れる熱伝導セクションと、前記出発原料が近似等流でその中を流れる反応器セクションとを更に備える、前記〔1〕に記載の方法。
〔27〕前記出発原料の前記温度は、前記熱伝導性セクションで上昇され、前記反応器セクションで、ほぼ均一レベルに維持される、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記導管への導入前に前記出発原料を加温する追加ステップを更に含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔29〕前記加温ステップ及び前記温度低下ステップは、共通の熱交換器内で同時に達成される、前記〔28〕に記載の方法。
〔30〕(i)石油系デカント油と(ii)コールタール系重質留出油とからなる群から選択される出発原料から誘導される、0.7%未満のメソフェーズ含有量を有するピッチ生成物であって、
前記出発原料を、流動可能な液相中で、熱伝達を促進する伝導性材料で少なくとも部分的に構築された導管に導入するステップと、
前記出発原料を収容した前記導管の前記熱伝導性部分に、制御された方法で熱を適用し、前記出発原料の温度を、約3.2~20.7bar(g)(46~300psi(g))の圧力において459~535℃に上昇させるステップと、
前記導管の前記熱伝導性部分の少なくとも一部を通る前記出発原料の近似等流を、前記出発原料の一部をピッチに変換するのに十分な時間にわたって、ほぼ一定の温度に維持するステップと、
前記併合ストリームの温度を275~385℃に低下させるステップと、
前記ピッチ部分を前記併合ストリームから分離するステップと、
を含む方法によって誘導される、ピッチ生成物。
〔31〕前記出発原料は、約43.2~10.7bar(g)(46~155psi(g))の範囲の圧力において、475~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔30〕に記載の方法。
〔32〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、3.0~49.2分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔31〕に記載の方法。
〔33〕前記ピッチの収率は、15~45%の範囲である、前記〔31〕に記載の方法。
〔34〕前記温度は約475℃であり、前記圧力は約3.2bar(g)(約46.2psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約49.2分間発生して、約45%のピッチを生じる、前記〔31〕に記載の方法。
〔35〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約10.7bar(g)(約155psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約3分間発生して、約15%のピッチを生じる、前記〔31〕に記載の方法。
〔36〕前記出発原料は、約4.2~8.7bar(g)(60.7~126psi(g))の範囲の圧力において、490~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔30〕に記載の方法。
〔37〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、4.3~23.6分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔36〕に記載の方法。
〔38〕前記ピッチ収率は、20~40%である、前記〔36〕に記載の方法。
〔39〕前記温度は約490℃であり、前記圧力は約4.2bar(g)(約60.7psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約23.6分間発生して、約40%のピッチを生じる、前記〔36〕に記載の方法。
〔40〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約8.7bar(g)(約126psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約4.3分間発生して、約20%のピッチを生じる、前記〔36〕に記載の方法。
〔41〕前記出発原料は、約4.5~7.7bar(g)(65.1~111.5psi(g))の範囲の圧力において495~510℃の範囲の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔30〕に記載の方法。
〔42〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、5.7~16.3分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔41〕に記載の方法。
〔43〕前記ピッチ収率は25~35%の範囲である、前記〔41〕に記載の方法。
〔44〕前記温度は約495℃であり、前記圧力は約4.5bar(g)(約65.1psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約16.3分間発生して、約35%のピッチを生じる、前記〔41〕に記載の方法。
〔45〕前記温度は約510℃であり、前記圧力は約7.7bar(g)(約111.5psi(g))であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約5.7分間発生して、約25%のピッチを生じる、前記〔41〕に記載の方法。
〔46〕前記出発原料は、約5.8bar(g)(約83.9psi(g))の圧力において約500℃の温度に上昇されたコールタール系重質留出油である、前記〔30〕に記載の方法。
〔47〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約7.4分間発生して、約30%のピッチを生じる、前記〔46〕に記載の方法。
〔48〕前記出発原料は、-5~0の範囲のAPI比重を有する石油系デカント油であり、前記出発原料は、約5.5~20.7bar(g)(80~300psi(g))の圧力を、ほぼ一定の温度で、次式による時間にわたって適用され:
25=0.1((1.8×T r +32)-T c )+0.1(R t
[式中、T r は摂氏単位の反応温度であり、T c は653であり、R t は分単位の保持時間である]、少なくとも25%のピッチ収率増加を生じ、前記ピッチは少なくとも47質量%のコークス値を有する、前記〔30〕に記載の方法。
〔49〕前記出発原料は、約5.5~20.7bar(g)(80~300psi(g))の範囲の圧力において459~496℃の範囲の温度に上昇された石油系デカント油である、前記〔30〕に記載の方法。
〔50〕前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、1~25分の範囲の時間にわたって発生する、前記〔49〕に記載の方法。
〔51〕前記ピッチ収率は40~54.3%の範囲であり、コークス値は47.3~50.5質量%である、前記〔49〕に記載の方法。
〔52〕前記温度は約496℃であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約1分間発生して、約47.3質量%のコークス値を有するピッチを約54%生じる、前記〔49〕に記載の方法。
〔53〕前記温度は468~482℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約10分間発生して、47.3~50.5質量%の範囲のコークス値を有するピッチを約43~54.3%の範囲で生じる、前記〔49〕に記載の方法。
〔54〕前記温度は459~471℃の範囲であり、前記近似等流は、前記ほぼ一定の温度で、約20分間発生して、47.7~50.1質量%の範囲のコークス値を有するピッチを約40~47.5%の範囲で生じる、前記〔49〕に記載の方法。
〔55〕前記導管は、前記出発原料が乱流でその中を流れる熱伝導セクションと、前記出発原料が近似等流でその中を流れる反応器セクションとを更に備える、前記〔30〕に記載の方法。
〔56〕前記出発原料の前記温度は、前記熱伝導性セクションで上昇され、前記反応器セクションで、ほぼ均一レベルに維持される、前記〔55〕に記載の方法。
〔57〕前記出発原料を前記導管への導入前に加温する追加ステップを更に含む、前記〔30〕に記載の方法。
〔58〕前記加温ステップ及び前記温度低下ステップは、共通の熱交換器内で同時に達成される、前記〔57〕に記載の方法。
〔59〕前記併合ストリームからの前記ピッチ部分の前記分離は、蒸留によって達成される、前記〔1〕に記載の方法。
〔60〕予め選択された出発原料からピッチを誘導するための連続方法であって、前記ピッチ部分を前記出発原料として分離した後で、前記〔1〕に記載の前記併合ストリームをリサイクルするステップを含む、方法。
〔61〕(i)石油系デカント油と(ii)コールタール系重質留出油とからなる群から選択される出発原料からピッチを誘導するための熱処理システムであって、前記熱処理システムは、
少なくとも1つの成分セクションを有する導管を含み、前記少なくとも1つの成分セクションは、少なくとも部分的に、熱伝達を促進する伝導性材料で構成され、前記導管は、 前記導管の前記熱伝導性材料部分の少なくとも一部を選択的に含み得る第1端部と、第2端部と、その間の中間部分とを有し、
前記導管の前記熱伝導性部分は、459~535℃の最大温度及び約3.2~20.7bar(g)(46~300psi(g))の最大圧力を有し、
前記導管の前記中間部分は、前記出発原料の連続する近似等流を、ほぼ一定の温度で、併合ストリームにおけるメソフェーズ生成を0.7%以下に制限しながら、前記出発原料の少なくとも一部をピッチに変換するのに十分な時間にわたって、維持するようなサイズ及び形状であり、(i)前記石油系デカント油に関して少なくとも25%、及び(ii)前記コールタール系重質留出油に関して少なくとも15%、のピッチ収率を得る、
熱処理システム。
〔62〕前記導管の前記中間部分は、反応器セクションを更に含む、前記〔61〕に記載の熱処理システム。
〔63〕前記熱伝導性セクションは、加熱セクションを更に含む、前記〔61〕に記載の熱処理システム。
〔64〕前記加熱セクションは、誘導加熱される、前記〔63〕に記載の熱処理システム。
〔65〕前記加熱セクションは、細長いコイル導管である、前記〔63〕に記載の熱処理システム。
〔66〕前記加熱セクションはそれを通して前記出発原料の乱流を誘発するようなサイズである、前記〔63〕に記載の熱処理システム。
〔67〕前記反応器セクションは、前記出発原料をほぼ一定の温度で維持するための少なくとも1つの保持容器を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔68〕前記反応器セクションは、それを通して前記出発原料の近似等流を維持するための少なくとも1つの保持容器を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔69〕前記反応器セクションは、複数の容器を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔70〕前記反応器セクションは、少なくとも1つの細長い円筒形状の容器を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔71〕前記反応器セクションは、不活性雰囲気を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔72〕非凝縮性ガスの回収のための空間を更に含む、前記〔62〕に記載の熱処理システム。
〔73〕前記導管に導入の前に、前記併合ストリームから前記出発原料へ熱エネルギーを交換するための熱交換器を更に含む、前記〔61〕に記載の熱処理システム。
〔74〕前記複数の容器は、第1及び第2の容器を更に含み、前記第1容器は前記第2容器よりも大容量のサイズである、前記〔69〕に記載の熱処理システム。
〔75〕前記第2容器は最小限のサイズである、前記〔74〕に記載の熱処理システム。
〔76〕前記容器は細長く、長さ対直径比が10:1以上である、前記〔68〕に記載の熱処理システム。
〔77〕前記ほぼ一定の温度は、プラス又はマイナス30℃の範囲内である、前記〔61〕に記載の熱処理システム。
〔78〕前記ほぼ一定の温度は、プラス又はマイナス10℃の範囲内である、前記〔76〕に記載の熱処理システム。
〔79〕前記ほぼ一定の温度は、プラス又はマイナス5℃である、前記〔76〕に記載の熱処理システム。
〔80〕0.7%以下のメソフェーズ含有量を有するピッチを石油系デカント油から誘導して、ピッチ収率を少なくとも25%増加するための蒸留システムであって、
前記石油系デカント油を回収及び処理してそこからピッチを誘導するための前記〔61〕に記載の熱処理システムと、
前記熱処理された石油系デカント油を受け取って、ピッチを含む成分留分に分留するため、前記熱処理システムと流体連通した少なくとも1つの蒸留塔と、
を含む、蒸留システム。
〔81〕複数の蒸留塔を更に含む、前記〔80〕に記載の蒸留システム。
〔82〕前記蒸留塔のうちの少なくとも1つがフラッシュ蒸留を更に含む、前記〔81〕に記載の蒸留システム。
〔83〕前記デカント油は、前記蒸留塔における前記ピッチの除去の後に、前記熱処理システムに再循環される、前記〔80〕に記載の蒸留システム。
〔84〕コールタール系重質留出油から0.7%以下のメソフェーズ含有量を有するピッチを誘導して、少なくとも15%のピッチ収率を得るための蒸留システムであって、
コールタールを受け取り、ピッチ及びコールタール系重質留出油を含む成分留分に分留するための少なくとも1つの蒸留塔と、
前記コールタール系重質留出油を受け取り、処理して、そこからピッチを誘導するための、前記少なくとも1つの蒸留塔システムと流体連通した前記〔61〕に記載の熱処理システムと、
を含む、蒸留システム。
〔85〕複数の蒸留塔を更に含む、前記〔84〕に記載の蒸留システム。
〔86〕前記蒸留塔のうちの少なくとも1つがフラッシュ蒸留を更に含む、前記〔85〕に記載の蒸留システム。
〔87〕前記蒸留塔のうちの少なくとも1つが脱水器を更に含む、前記〔85〕に記載の蒸留システム。
〔88〕前記コールタール系重質留出油は、前記蒸留塔における前記ピッチの除去の後に、前記熱処理システムに再循環される、前記〔84〕に記載の蒸留システム。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B