7649618 船舶

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-03-12

(45)【発行日】2025-03-21

(54)【発明の名称】船舶

(51)【国際特許分類】

   B63H 9/061 20200101AFI20250313BHJP

   B63B 15/02 20060101ALI20250313BHJP

   B63H 9/06 20200101ALI20250313BHJP

【ＦＩ】

B63H9/061

B63B15/02 B

B63H9/06 C

【請求項の数】 15

(21)【出願番号】P 2021081991

(22)【出願日】2021-05-13

(65)【公開番号】P2022175525

(43)【公開日】2022-11-25

【審査請求日】2024-03-25

(73)【特許権者】

【識別番号】391058082

【氏名又は名称】株式会社名村造船所

(74)【代理人】

【識別番号】110004059

【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100091443

【弁理士】

【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴

(74)【代理人】

【識別番号】100130720

【弁理士】

【氏名又は名称】▲高▼見 良貴

(74)【代理人】

【識別番号】100130432

【弁理士】

【氏名又は名称】出山 匡

(72)【発明者】

【氏名】徳留 祐二

【審査官】熊谷 健治

(56)【参考文献】

【文献】特表２０１４－５１６８７４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６３－０２５１９５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭５７－１７８９９４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１１－０９８６６９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭５６－１１６５９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭５８－００４６９６（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１２／０５７１７８（ＷＯ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６３Ｈ １／００－２５／５２

Ｂ６３Ｂ １／００－８５／００

Ｂ６３Ｊ １／００－９９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

風を受けて推進力を発生し、使用時には甲板上において垂直方向に延び、不使用時には前記甲板下に設けられた格納庫に格納される風力推進力発生部と、前記風力推進力発生部を上下方向に昇降させる昇降装置を有する１以上の風力推進装置を備えた船舶であって、
前記風力推進装置は、前記風力推進力発生部が固定された装置本体を備え、
前記昇降装置は、進行方向と直交する幅方向に位置する前記装置本体の両端部を同期した状態で一緒に昇降させる一対の昇降機構を備えており、
前記甲板には、前記格納庫の入り口を塞ぐ蓋部材が開放位置と閉鎖位置との間で移動可能に配置されており、
前記昇降機構は、前記装置本体の前記両端部にそれぞれ連結された吊り上げ用の複数本の線状体からなる一対の線状体群と、
前記入り口の幅方向の両側に配置されて、前記一対の線状体群に含まれる前記複数本の線状体を巻き上げ又は巻き下げる一対のウインチと、
前記複数本の線状体を対応する前記ウインチに案内する一対の滑車装置と、
前記一対のウインチを同期して相反する方向に回転駆動する同期駆動装置を備えている船舶。

【請求項2】

前記格納庫の入り口近傍部及び前記装置本体には、前記装置本体が上昇定位置に居る状態で、前記装置本体を前記入り口近傍部に固定するための固定装置が分配されている請求項１に記載の船舶。

【請求項3】

前記固定装置は、前記入り口近傍部及び前記装置本体の一方に設けられた１以上のピストンと、前記入り口近傍部及び前記装置本体の他方に設けられて前記１以上のピストンの延伸部分を受け入れる１以上のシリンダとからなる請求項２に記載の船舶。

【請求項4】

前記格納庫内には、収納された前記装置本体及び前記風力推進力発生部の前記進行方向両側に配置されて、前記装置本体が昇降する際に、少なくとも前記装置本体と接触して、前記装置本体が前記進行方向の両方向に振動するのを抑制する複数の振動抑制リブフレームが設けられている請求項１に記載の船舶。

【請求項5】

前記一対のウインチと前記入り口との間には、前記一対の滑車装置が配置され、
前記一対の滑車装置と前記入り口との間には、前記線状体群を構成する前記複数本の線状体を前記格納庫内から対応する前記滑車装置に導出する線状体導出部が設けられている請求項１に記載の船舶。

【請求項6】

前記一対のウインチはそれぞれ回転軸を有しており、
前記同期駆動装置は、
駆動軸を有する１台の原動機と、
前記原動機の前記駆動軸と前記一対のウインチの一方の前記回転軸との間に設けられて、前記駆動軸の回転を前記一対のウインチの一方の前記回転軸に該回転軸が前記駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する第１の力伝達機構と、
前記原動機の前記駆動軸と前記一対のウインチの他方の前記回転軸との間に設けられて、前記駆動軸の回転を前記一対のウインチの他方の前記回転軸に該回転軸が前記駆動軸と逆方向に回転するように伝達する第２の力伝達機構とを備えている請求項１に記載の船舶。

【請求項7】

前記第１の力伝達機構は、
前記駆動軸に設けられた第１の駆動スプロケットと、
前記一方の回転軸に設けられた第１の被駆動スプロケットと、
前記第１の駆動スプロケットと前記第１の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第１のチェーンとを備えており、
前記第２の力伝達機構は、
前記駆動軸に設けられた第２の駆動スプロケットと、
前記他方の回転軸の近傍に配置された被駆動軸に設けられた第２の被駆動スプロケットと、
前記第２の駆動スプロケットと前記第２の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第２のチェーンと、
前記他方の回転軸と前記被駆動軸との間に設けられて、前記被駆動軸の回転力で前記被駆動軸の回転方向とは逆方向に前記他方の回転軸を回転させる逆転機構とを備えていることを特徴とする請求項６に記載の船舶。

【請求項8】

前記一対のウインチはそれぞれ一対の端部を有する回転軸を有しており、
前記同期駆動装置は、
第１の駆動軸を有する第１の原動機と、
前記第１の原動機の前記第１の駆動軸と前記一対のウインチの一方の前記回転軸の一方の前記端部との間に設けられて、前記駆動軸の回転を前記一対のウインチの一方の前記回転軸に該回転軸が前記第１の駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する第１の力伝達機構と、
前記第１の原動機の前記第１の駆動軸と前記一対のウインチの他方の前記回転軸の一方の前記端部との間に設けられて、前記第１の駆動軸の回転を前記一対のウインチの他方の前記回転軸に該回転軸が前記第１の駆動軸と逆方向に回転するように伝達する第２の力伝達機構と、
第２の駆動軸を有する第２の原動機と、
前記第２の原動機の前記第２の駆動軸と前記一対のウインチの他方の前記回転軸の他方の前記端部との間に設けられて、前記第２の駆動軸の回転を前記一対のウインチの一方の前記回転軸に該回転軸が前記第２の駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する第３の力伝達機構と、
前記第２の原動機の前記第２の駆動軸と前記一対のウインチの一方の前記回転軸の他方の前記端部との間に設けられて、前記第２の駆動軸の回転を前記一対のウインチの他方の前記回転軸に該回転軸が前記第２の駆動軸と逆方向に回転するように伝達する第４の力伝達機構とを備え、
前記第１の原動機と前記第２の原動機が、同期運転される請求項１に記載の船舶。

【請求項9】

前記第１の力伝達機構は、
前記第１の駆動軸に設けられた第１の駆動スプロケットと、
前記一方の回転軸の一方の端部に設けられた第１の被駆動スプロケットと、
前記第１の駆動スプロケットと前記第１の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第１のチェーンとを備えており、
前記第２の力伝達機構は、
前記第１の駆動軸に設けられた第２の駆動スプロケットと、
前記他方の回転軸の一方の端部の近傍に配置された第１の被駆動軸に設けられた第２の被駆動スプロケットと、
前記第２の駆動スプロケットと前記第２の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第２のチェーンと、
前記他方の回転軸と前記第１の被駆動軸との間に設けられて、前記第１の被駆動軸の回転力で前記第１の被駆動軸の回転方向とは逆方向に前記他方の回転軸を回転させる第１の逆転機構とを備えており、
前記第３の力伝達機構は、
前記第２の駆動軸に設けられた第３の駆動スプロケットと、
前記他方の回転軸の他方の端部に設けられた第３の被駆動スプロケットと、
前記第３の駆動スプロケットと前記第３の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第３のチェーンとを備えており、
前記第４の力伝達機構は、
前記第２の駆動軸に設けられた第４の駆動スプロケットと、
前記一方の回転軸の他方の端部の近傍に配置された第２の被駆動軸に設けられた第４の被駆動スプロケットと、
前記第４の駆動スプロケットと前記第４の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第４のチェーンと、
前記一方の回転軸と前記第２の被駆動軸との間に設けられて、前記第２の被駆動軸の回転力で前記第２の被駆動軸の回転方向とは逆方向に前記一方の回転軸を回転させる第２の逆転機構とを備えており、
前記第１の原動機の回転方向と前記第２の原動機の回転方向は、前記一方の回転軸を同じ方向に回転させるように定められている請求項８に記載の船舶。

【請求項10】

前記格納庫の前記入り口を塞ぐ蓋部材を、前記入り口を開放する開放位置と前記入り口を閉じる閉鎖位置との間で移動させる蓋移動機構を更に備えている請求項１に記載の船舶。

【請求項11】

前記甲板下に設けられ、前記進行方向に複数並んだ船倉を備えており、
前記船倉の船舷側上部に一対の上部ホッパータンクが設けられており、
前記一対の上部ホッパータンクの間の前記甲板に前記入り口が設けられており、
前記一対の昇降機構の前記一対のウインチが、前記甲板上の前記入り口の前記幅方向の両側に設けられている請求項１に記載の船舶。

【請求項12】

前記風力推進装置の前記格納庫は、前記進行方向に並ぶ２つの前記船倉の間に配置されている請求項１１に記載の船舶。

【請求項13】

前記風力推進力発生部は、硬帆であり、
前記風力推進装置の前記装置本体は、前記硬帆を回転可能に支持する軸部と、該軸部を回動させる回動駆動源を含んだ駆動装置を備えている請求項１に記載の船舶。

【請求項14】

前記硬帆は、幅方向寸法が可変になる構造を有している請求項１３に記載の船舶。

【請求項15】

前記風力推進力発生部は、ローター帆であり、
前記風力推進装置の前記装置本体は、前記ローター帆を回転可能に支持する軸部と、該軸部を回動させる回動駆動源を含んだ駆動装置を備えている請求項１に記載の船舶。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、船舶に関するものであり、特に、風を受けて推進力を発生し、使用時には甲板上において垂直方向に延び、不使用時には甲板下に設けられた格納庫に格納される風力推進力発生部と、風力推進力発生部を上下方向に昇降させる昇降装置を有する１以上の風力推進装置を備えた船舶に関するものである。

【背景技術】

【0002】

ばら積み貨物船（バルク・キャリア（bulk carrier）ともいう）等の大型船舶は、大量の化石燃料を消費するため、ＣＯ₂の排出源となっている。化石燃料の消費を抑えるため、大型船舶に、硬帆やローター帆の風力推進力発生部を有する風力推進装置を設け、推進力を補助して、ＣＯ₂の排出を削減する試みが進められている。「硬帆」は、風力を利用するために布地等の柔らかい素材を使わず、鋼製材料等を用いて製造した帆のことである。また、「ローター帆」は、甲板上に垂直方向に立てた柱状のローター帆を垂直方向に延びる軸を中心にして回転させて、マグヌス効果により推進力を得る帆のことである。

【0003】

例えば、特許第５８２８４０９号公報（特許文献１）の図１には、甲板上に複数の硬帆を設置し、風力を用いて、補助的に推進力を得る船舶が開示されている。複数の硬帆は、舷（船の側面）側に配置されている。各硬帆は、船体中心に向かって倒して甲板下に配置された格納庫に収納可能な可倒式になっている。

【0004】

また、特許文献１の図１７には、甲板の下に配置された上下方向に延びる昇降装置によって硬帆が上下動して格納庫に収納される収納構造が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特許第５８２８４０９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

特許文献１の図１のように、硬帆の配置位置を舷側として可倒式による格納構造とした場合、硬帆を格納する際に、舷側に配置している硬帆をバラストタンクまたは燃料油タンクに干渉しないようにすると、各々のタンク容量を十分に確保できなくなる。また、船舶の進行方向に延びる、甲板下に配置される上部ホッパータンクの連続性が途切れてしまうため、船舶の強度が落ちてしまうという課題もある。

【0007】

また、風を受けやすくするために風力推進装置の大型化が求められるが、風力推進装置を大きくするとかなりの重量物となるため、特許文献１の図１７に記載の昇降装置では風力推進装置を支持したり、昇降したりすることが困難である。

【0008】

本発明の目的は、大型で重量物である風力推進装置を安定した状態で、また、船舶が揺れている状態でも確実に昇降させることができる船舶を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明が改良の対象とする船舶は、風を受けて推進力を発生し、使用時には甲板上において垂直方向に延び、不使用時には甲板下に設けられた格納庫に格納される風力推進力発生部と、風力推進力発生部を上下方向に昇降させる昇降装置を有する１以上の風力推進装置を備えている。本発明の船舶の風力推進装置は、風力推進力発生部が固定された装置本体を備えており、昇降装置は、進行方向と直交する幅方向に位置する装置本体の両端部を同期した状態で一緒に昇降させる一対の昇降機構を備えている。

【0010】

上述のように、相当な重さの重量物である風力推進装置を安定した状態で昇降させる必要があり、しかも船舶が揺れている状態でも確実に昇降させる必要がある。このような条件で、片持ち構造で昇降させたり、１本の昇降装置で昇降させるためには、堅牢で大型の昇降機構を用意する必要があり、現実的ではない。本発明のように一対の昇降機構で、装置本体の両端部を一緒に昇降させる構造を採用すると、１台の昇降機構の負担が小さくて済み、しかも装置本体と風力推進力発生部を安定した状態で昇降せることができる。さらに昇降動作時に装置本体が横揺れするのを抑制できる。

【0011】

甲板には、格納庫の入り口を塞ぐ蓋部材が開放位置と閉鎖位置との間で移動可能に配置されており、格納庫の入り口近傍部及び装置本体には、装置本体が上昇定位置に居る状態で、装置本体を入り口近傍部に固定するための固定装置が分配されていてもよい。このようにすれば、風力推進装置を格納庫に格納した状態では、蓋部材で格納庫の入り口を塞ぐことで、また、風力推進装置を甲板上に展開した状態では、装置本体で格納庫の入り口を塞ぐことで、格納庫内への海水や雨の浸入を防いだり、甲板上の人員の安全を確保することができる。固定装置は、例えば、入り口近傍部及び装置本体の一方に設けられた１以上のピストンと、入り口近傍部及び装置本体の他方に設けられて１以上のピストンの延伸部分を受け入れる１以上のシリンダとから構成することができる。

【0012】

さらに、入り口を開放する開放位置と入り口を閉じる閉鎖位置との間で移動させる蓋移動機構を更に備えていてもよい。

【0013】

格納庫内には、収納された装置本体及び風力推進力発生部の進行方向両側に配置されて、装置本体が昇降する際に、少なくとも装置本体と接触して、装置本体が進行方向の両方向に振動するのを抑制する複数の振動抑制リブフレームが設けられていてもよい。このようにすることで、船舶が揺れている状態でも風力推進装置を、より安定して確実に昇降させることができる。

【0014】

甲板に、格納庫の入り口を塞ぐ蓋部材が開放位置と閉鎖位置との間で移動可能に配置されている場合、昇降機構は、装置本体の両端部にそれぞれ連結された吊り上げ用の複数本の線状体からなる一対の線状体群と、甲板上の入り口の幅方向の両側に配置されて、一対の線状体群に含まれる複数本の線状体を巻き上げ又は巻き下げる一対のウインチと、複数本の線状体を対応するウインチに案内する一対の滑車装置と、一対のウインチを同期して相反する方向に回転駆動する同期駆動装置を備えるようにしてもよい。

【0015】

一対の滑車装置は、甲板上の一対のウインチと入り口との間に配置し、一対の滑車装置と入り口との間に、線状体群を構成する複数本の線状体を格納庫内から対応する滑車装置に導出する線状体導出部が設けられていてもよい。

【0016】

一対のウインチがそれぞれ回転軸を有している場合において、同期駆動装置は、駆動軸を有する１台の原動機と、第１の力伝達機構と、第２の力伝達機構とを備えるようにしてもよい。第１の力伝達機構は、原動機の駆動軸と一対のウインチの一方の回転軸との間に設けられて、駆動軸の回転を一対のウインチの一方の回転軸に該回転軸が駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する。第２の力伝達機構は、原動機の駆動軸と一対のウインチの他方の回転軸との間に設けられて、駆動軸の回転を一対のウインチの他方の回転軸に該回転軸が駆動軸と逆方向に回転するように伝達する。このようにすれば、１台の原動機で、同期駆動装置を実現することができる。なお、原動機は、例えば、電動機や油圧モータ等が想定される。

【0017】

より詳細には、第１の力伝達機構は、駆動軸に設けられた第１の駆動スプロケットと、一方の回転軸に設けられた第１の被駆動スプロケットと、第１の駆動スプロケットと第１の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第１のチェーンとを備えていてもよい。また、第２の力伝達機構は、駆動軸に設けられた第２の駆動スプロケットと、他方の回転軸の近傍に配置された被駆動軸に設けられた第２の被駆動スプロケットと、第２の駆動スプロケットと第２の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第２のチェーンと、他方の回転軸と被駆動軸との間に設けられて、被駆動軸の回転力で被駆動軸の回転方向とは逆方向に他方の回転軸を回転させる逆転機構とを備えるようにしてもよい。

【0018】

一対のウインチはそれぞれ一対の端部を有する回転軸を有している場合において、同期駆動装置は、同期運転される第１の駆動軸を有する第１の原動機及び第２の駆動軸を有する第２の原動機と、第１の力伝達機構と、第２の力伝達機構と、第３の力伝達機構と、第４の力伝達機構とを備えるようにしてもよい。第１の力伝達機構は、第１の原動機の第１の駆動軸と一対のウインチの一方の回転軸の一方の端部との間に設けられて、駆動軸の回転を一対のウインチの一方の回転軸に該回転軸が第１の駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する。第２の力伝達機構は、第１の原動機の第１の駆動軸と一対のウインチの他方の回転軸の一方の端部との間に設けられて、第１の駆動軸の回転を一対のウインチの他方の回転軸に該回転軸が第１の駆動軸と逆方向に回転するように伝達する。第３の力伝達機構は、第２の原動機の第２の駆動軸と一対のウインチの他方の回転軸の他方の端部との間に設けられて、第２の駆動軸の回転を一対のウインチの一方の回転軸に該回転軸が第２の駆動軸と同じ方向に回転するように伝達する。第４の力伝達機構は、第２の原動機の第２の駆動軸と一対のウインチの一方の回転軸の他方の端部との間に設けられて、第２の駆動軸の回転を一対のウインチの他方の回転軸に該回転軸が第２の駆動軸と逆方向に回転するように伝達する。

【0019】

このようにすることで、２台の原動機を用いて同期駆動装置を実現することができ、負荷の分散が可能である。また、原動機を２台にすることで、２台のうち、１台の原動機が故障等したとしても、同期駆動装置を駆動させることができ、冗長化することもできる。

【0020】

より詳細には、第１の力伝達機構は、第１の駆動軸に設けられた第１の駆動スプロケットと、一方の回転軸の一方の端部に設けられた第１の被駆動スプロケットと、第１の駆動スプロケットと第１の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第１のチェーンとを備えていてもよい。第２の力伝達機構は、第１の駆動軸に設けられた第２の駆動スプロケットと、他方の回転軸の一方の端部の近傍に配置された第１の被駆動軸に設けられた第２の被駆動スプロケットと、第２の駆動スプロケットと第２の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第２のチェーンと、他方の回転軸と第１の被駆動軸との間に設けられて、第１の被駆動軸の回転力で第１の被駆動軸の回転方向とは逆方向に他方の回転軸を回転させる第１の逆転機構とを備えていてもよい。第３の力伝達機構は、第２の駆動軸に設けられた第３の駆動スプロケットと、他方の回転軸の他方の端部に設けられた第３の被駆動スプロケットと、第３の駆動と第３の被駆動との間に張り渡された第３のチェーンとを備えていてもよい。第４の力伝達機構は、第２の駆動軸に設けられた第４の駆動スプロケットと、一方の回転軸の他方の端部の近傍に配置された第２の被駆動軸に設けられた第４の被駆動スプロケットと、第４の駆動スプロケットと第４の被駆動スプロケットとの間に張り渡された第４のチェーンと、一方の回転軸と第２の被駆動軸との間に設けられて、第２の被駆動軸の回転力で第２の被駆動軸の回転方向とは逆方向に一方の回転軸を回転させる第２の逆転機構とを備えていてもよい。そして、第１の原動機の回転方向と第２の原動機の回転方向は、一方の回転軸を同じ方向に回転させるように定めるようにしてもよい。

【0021】

甲板下に設けられ、進行方向に複数並んだ船倉を備えており、船倉の船舷側上部に一対の上部ホッパータンクが設けられており、一対の上部ホッパータンクの間の甲板に入り口が設けられており、一対の昇降機構の１以上のウインチが、甲板上の入り口の幅方向の両側に設けられていてもよい。このような位置に格納庫及びその入り口を設ければ、一つの上部ホッパータンクと格納庫が干渉しないため、上部ホッパータンクの連続性が途切れることがなく、船舶の強度を保つことができる。また、風力推進装置の格納庫は、進行方向に並ぶ２つの船倉の間に配置されていてもよい。このようにすれば、２つの船倉の間の壁部を利用して、格納庫を配置することができる。

【0022】

上述のように、風力推進力発生部は、例えば、硬帆であってもよい。この場合、風力推進装置の装置本体は、硬帆を回転可能に支持する軸部と、該軸部を回動させる回動駆動源を含んだ駆動装置を備えていてもよい。また、硬帆の場合には、硬帆の幅方向寸法が可変になる構造を有していてもよい。このようにすれば、格納庫を小さくしながら、硬帆の面積を大きくとることができる。

【0023】

また、上述のように、風力推進力発生部は、例えば、ローター帆であってもよい。この場合、風力推進装置の装置本体は、ローター帆を回転可能に支持する軸部と、該軸部を回動させる回動駆動源を含んだ駆動装置を備えていてもよい。

【図面の簡単な説明】

【0024】

【図1】本実施の形態の一例の船舶である、ばら積み貨物船の斜視図である。

【図2】本実施の形態のばら積み貨物船の左側面図（右舷側から見た側面図）である。

【図3】本実施の形態のばら積み貨物船の平面図である。

【図4】第７船倉～第９船倉が設けられた船体の後方部分を示した図である。

【図5】格納庫及び硬帆装置の部分を船体から切り出した状態で示した斜視図である。

【図6】格納庫の入り口の近傍部と、硬帆装置の装置本体を模式的に示した平面図である。

【図7】同期駆動装置の詳細を説明するための模式図である。

【図8】格納庫内に硬帆を格納した状態を示す模式図であり、（Ａ）は、正面図、（Ｂ）は平面図である。

【図9】硬帆を格納庫から出して使用状態にした状態を示す模式図であり、（Ａ）は、正面図、（Ｂ）は平面図である。

【図10】幅方向寸法が可変になる構造を有した硬帆の例を示す図である。

【図11】幅方向寸法が可変になる構造を有した硬帆の例を示す図である。

【図12】風力推進装置の風力推進力発生部として、ローター帆を採用した第２の実施の形態を示す図である。

【図13】風力推進装置の風力推進力発生部として、ローター帆を採用した第２の実施の形態を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0025】

以下、図面を参照して、本発明の船舶の実施の形態を詳細に説明する。

【0026】

図１は、本実施の形態の一例の船舶である、ばら積み貨物船の斜視図であり、図２は、本実施の形態のばら積み貨物船の左側面図（右舷側から見た側面図）であり、図３は、平面図である。また図４は、後述する第７船倉～第９船倉が設けられた船体の後方部分の一部切り欠き斜視図である。

【0027】

＜全体構成＞
本実施の形態のばら積み貨物船１は、船舶の安全性確保のための規則を定める多国間条約「海上における人命の安全のための国際条約（International Convention for the Safety of Life at Sea）（ＳＯＬＡＳ条約）」の対象となる、全長５５ｍ以上の大型船舶である。ばら積み貨物船１は、船体３の進行方向の一方の端部に船首５を有し、他方の端部に船尾７を有し、船体３上に甲板（上甲板）９を有している。ばら積み貨物船１は、船体３内が複数の区画に区切られており、甲板９の下に、図４に一部を示すように、貨物を積載する船倉１１（第１船倉１１Ａ～第９船倉１１Ｉ）が形成されている。なお、図１には、第１船倉～第９船倉が内部に存在する位置に、符号１１Ａ～１１Ｉを付してある。第１船倉１１Ａ～第９船倉１１Ｉのそれぞれは、甲板９に開口した開口部１３Ａ～１３Ｉと、開口部１３Ａ～１３Ｉの周囲を取り囲む縁材（ハッチコーミング）１５Ａ～１５Ｉと、船体の幅方向にスライドし、開口部１３Ａ～１３Ｉを閉じるハッチカバー１７Ａ～１７Ｉを備えている。船尾７には、船橋１９と、レーダーマスト２１と、煙突２３が設けられている。

【0028】

本実施の形態のばら積み貨物船１は、８台の風力推進装置２５を備えている。本実施の形態では、具体的には、８台の風力推進装置２５は、８台の硬帆装置２５Ａ～２５Ｈである。８台の硬帆装置２５Ａ～２５Ｈは、それぞれ風力推進力発生部である硬帆２７Ａ～２７Ｈを備えている。図１乃至図３では、硬帆装置２５Ａ～２５Ｈは、使用状態にあり、甲板９上において垂直方向に硬帆２７Ａ～２７Ｈが延びた状態になっている。８台の硬帆装置２５Ａ～２５Ｈは、船舶の進行方向ＦＤに並ぶ２つの船倉１１の間（例えば、第１船倉１１Ａと第２船倉１１Ｂの間、第２船倉１１Ｂと第３船倉１１Ｃの間・・・）に配置された格納庫（２９Ａ～２９Ｈ）とセットになっている。なお図１には、格納庫が存在する位置に符号２９Ａ～２９Ｈを付してある。後述のように、硬帆２７Ａ～２７Ｈは、甲板９下に設けられた格納庫２９Ａ～２９Ｈ内に格納可能な構成となっている。

【0029】

＜船橋からの視界を確保するための設計＞
本実施の形態では、硬帆２７Ａ～２７Ｈは、甲板９上に平面視で船橋１９の監視位置ＷＰと船首５の頂部を通る中心線ＣＬに沿って間隔をあけて８個〔一般化した場合、ｎ個（ｎは３以上の整数）〕配置し、船首５に最も近い硬帆２７Ａを１番目の硬帆とし、監視位置ＷＰに最も近い硬帆をｎ番目の硬帆と定めたときに、次の３つの条件を満たすように設計してある。

【0030】

第１条件：全ての硬帆の高さ寸法は、硬帆を除く船体構造物のうち最も高さ寸法の高いもの以下の高さ寸法である。本実施の形態では、図２に示すように、レーダーマスト２１が最も高さ寸法の高いもの（図２に示す高さ寸法Ｚｍａｘ）であるため、１番目から８番目の硬帆（硬帆２７Ａ～２７Ｈ）は、全て、レーダーマスト２１の高さ寸法以下になっている。

【0031】

第２条件：監視位置ＷＰから見た場合に、ｎ番目の硬帆からｍ＋１番目（但し２≦ｍ＜ｎの整数）の硬帆までは、ｎ番目の硬帆からｍ番目の硬帆までの高さ方向の先端が監視位置ＷＰの仮想視点から全て見えるように、高さ寸法が定められている。なお本明細書において「仮想視点」とは、監視位置に平均的な身長を有する船員が立った状態における両目の視点の位置である。本実施の形態では、ｎ＝８、ｍ＝３であり、硬帆２７Ａが１番目の硬帆、硬帆２７Ｃが３（＝ｍ）番目の硬帆、硬帆２７Ｄが４（＝ｍ＋１）番目の硬帆、硬帆２７Ｈが８（＝ｎ）番目の硬帆である。図２に示すように、８番目の硬帆２７Ｈから４番目の硬帆２７Ｄまでは、８番目の硬帆２７Ｈから３番目の硬帆２７Ｃまでの高さ方向の先端が監視位置ＷＰの仮想視点から全て見える（１番目及び２番目の先端は見えない）ように高さ寸法が定められている。

【0032】

第３条件：ｍ－１番目の硬帆から船首方向に設置されている１以上の硬帆の幅方向の両端部が、監視位置ＷＰの仮想視点からｍ番目の硬帆の両端を見たときの仮想視線ＩＬを越えないように、幅寸法が定められている。本明細書における「仮想視線ＩＬ」とは、仮想視点と、ｍ番目の硬帆の幅方向の両端の上端及び下端を結んだ２面を含むものを言い、ｍ番目の硬帆の幅方向の両端が甲板に対して垂直に上下方向に延びる場合には、仮想視点とｍ番目の硬帆の幅方向の両端の上端から下端までのいずれかの部分とを結んだ線に相当する。本実施の形態では、ｎ＝８、ｍ＝３であり、硬帆２７Ｂが２（＝ｍ－１）番目の硬帆、硬帆２７Ｃが３（＝ｍ）番目の硬帆である。図３に示すように、１番目と２番目の硬帆２７Ａ及び２７Ｂの幅方向の両端部が、監視位置ＷＰの仮想視点から３番目の硬帆２７Ｃの両端を見たときの仮想視線ＩＬを越えないように、幅寸法が定められている。なお、ここで「越えない」とは、硬帆の幅方向の端部が仮想視線と一致している状態を含むものである。また、ｍは、２≦ｍ＜ｎの範囲において、設計者が任意に定めるものである。

【0033】

ｎ番目の硬帆からｍ＋１番目の硬帆（本実施の形態では、８番目の硬帆２７Ｈから４番目の硬帆２７Ｄ）の高さ寸法Ｈｎは、下記の式を満たすものと表現することができる：
高さ寸法Ｈｎ≦Ｚｐ－（Ｘｎ－Ｘｐ）ｔａｎθ－Ｚｍｉｎ
ただし、
Ｘｐ：監視位置（船橋）の後部垂線（Aft perpendicular）からの船長方向長さ寸法
Ｚｐ：監視位置（船橋）のベースライン（船底基準線）からの高さ寸法
Ｘｎ：船首からｎ番目の硬帆の後部垂線（Aft perpendicular）からの船長方向長さ寸法
Ｚｍｉｎ：硬帆の下端のベースライン（船底基準線）からの高さ寸法
θ：監視位置（船橋）から船首を結ぶ直線と満載喫水線（LWL）がなす角度である。

【0034】

同様に、ｍ番目の硬帆から１番目の硬帆（本実施の形態では、３番目の硬帆２７Ｃから１番目の硬帆２７Ａ）の幅寸法Ｂｎは、下記の式を満たすものと表現することができる： 幅寸法Ｂｎ≦（（Ｘｎ－Ｘｐ）ｔａｎ２．５）×２
ただし、
Ｘｐ：監視位置（船橋）の後部垂線（Aft perpendicular）からの船長方向長さ寸法
Ｘｎ：船首からｎ番目の硬帆の後部垂線（Aft perpendicular）からの船長方向長さ寸法である。

【0035】

このようにｎ個の硬帆の寸法を定めると、特別な計算を必要とすることなく、船橋から船首の先を見たときの視界に、ｎ個の硬帆が安全な視界を遮る障害物として存在することがない、すなわち、ＳＯＬＡＳ条約に準拠した、船橋からの視界を確保可能な硬帆の形状寸法を定めることができる。

【0036】

＜硬帆装置の昇降機構＞
図４には、第７船倉１１Ｇ～第９船倉１１Ｉが設けられた船体３の後方部分を示してある。図示したように、第７船倉１１Ｇと第８船倉１１Ｈの間や、第８船倉１１Ｈと第９船倉１１Ｉの間には、船倉同士を隔てる隔壁（３０Ａ～３０Ｈ）が設けられている。なお図４には、隔壁３０Ｇと隔壁３０Ｈを示してあり、その他の図には隔壁３０Ａ～３０Ｆは図示していない。この隔壁３０Ａ～３０Ｈは、船舶の進行方向に間隔をあけて並ぶ２枚の隔壁板によって構成されている。この２枚の隔壁板の間に硬帆を収納する格納庫２９が設けられている。

【0037】

図４には全ては図示していないが、第１船倉１１Ａと第２船倉１１Ｂの間には格納庫２９Ａ、第２船倉１１Ｂと第３船倉１１Ｃの間には格納庫２９Ｂ・・・というように、船体３には計８個の格納庫２９Ａ～２９Ｈ（図１参照）が設けられており、それぞれが硬帆装置２５Ａ～２５Ｈとセットになっている。図４に示した例では、硬帆２７Ｇは、格納庫２９Ｇから出された使用状態であり、硬帆２７Ｈは、格納庫２９Ｈ内に格納された不使用状態である。必要に応じて硬帆を格納庫内に収納することができるため、風力が航行の妨げになる場合は全ての硬帆を格納庫に格納する事で通常の船舶として航行可能であり、また港にて硬帆を格納庫に格納すれば、硬帆が荷役クレーンの妨げにならない。

【0038】

図５は、格納庫２９Ｈ及び硬帆装置２５Ｈの部分を船体３から切り出した状態で示した斜視図である。他の格納庫及び硬帆装置も、基本的な構造は同一であるため、以下では、説明の便宜上、区別することなく、格納庫は符号２９、硬帆装置は符号２５として説明し、他の格納庫及び硬帆装置については、説明を省略する。図６は、格納庫２９の入り口３１の近傍部と、硬帆装置２５の装置本体４５を模式的に示した平面図である。

【0039】

格納庫２９は、船体３の幅方向ＷＤ、上下方向ＶＤ及び進行方向ＦＤに延びる形状をしており、その入り口３１を塞ぐ蓋部材３３が、甲板９上に開放位置と閉鎖位置との間で移動可能に配置されている。本実施の形態では、蓋部材３３は、入り口３１を開放する開放位置と入り口３１を閉じる閉鎖位置との間で移動させる蓋移動機構を更に備えている。格納庫２９内には、後述の装置本体４５が昇降する際に接触する複数の振動抑制リブフレーム３５が進行方向ＦＤ両側に配置されている。複数の振動抑制リブフレーム３５は、前述の隔壁３０を構成する２枚の隔壁板に溶接されている。格納庫２９の周囲には、二重底３７と、船舷側下部に設けられた一対の下部ホッパータンク３９，３９´と、船舷側上部に設けられた一対の上部ホッパータンク４１，４１´とが設けられている。格納庫２９の入り口３１の近傍部には、後述の装置本体４５の固定装置を構成する複数の（本実施の形態では一例として計８本の）ピストン４３が配置されている（図６参照）。

【0040】

硬帆装置２５は、風力推進力発生部である硬帆２７と、硬帆２７が固定された装置本体４５と、硬帆２７を上下方向に昇降させる昇降装置４７とを備えている。装置本体４５は、硬帆２７を回転可能に支持する軸部４９と、該軸部４９を回動させる回動駆動源を含んだ駆動装置５１を備えている。また、装置本体４５の側面には、ピストン４３の延伸部分を受け入れる計８つのシリンダ５３（図６では、破線で示してある）と、格納庫２９の壁面に接触する４つの第１のローラ５５と、振動抑制リブフレーム３５に接触する４つの第２のローラ５７が設けられている（図６参照）。昇降装置４７は、幅方向ＷＤに位置する装置本体４５の両端部を同期した状態で一緒に昇降させる一対の昇降機構５９，５９´を備えている。

【0041】

［昇降機構の詳細］
図５に示すように、一対の昇降機構５９，５９´は、一対の線状体群６１，６１´と、一対のウインチ６３，６３´と、一対の滑車装置６５，６５´と、一対の線状体導出部６６，６６´と、同期駆動装置６７を備えている。一対の線状体群６１，６１´は、装置本体４５の両端部にそれぞれ連結された吊り上げ用の複数本の線状体（本実施の形態では複数本のチェーン）からなる。一対のウインチ６３，６３´は、甲板９上の入り口３１の幅方向ＷＤの両側に配置されて、一対の線状体群６１，６１´に含まれる複数本の線状体を巻き上げ又は巻き下げる。一対の滑車装置６５，６５´は、複数本の線状体を対応するウインチ６３，６３´に案内する。一対の線状体導出部６６，６６´は、複数本の線状体を格納庫内から対応する滑車装置に導出する。同期駆動装置６７は、一対のウインチ６３，６３´を同期して相反する方向に回転駆動する。

【0042】

図７は、同期駆動装置６７の詳細を説明するための模式図である。図７では、一対のウインチ６３，６３´は回転軸６９，６９´のみを図示している。回転軸６９，６９´は一対の端部６９ａ，６９ｂ及び６９´ａ，６９´ｂを有している。本実施の形態では、同期駆動装置６７は、同期運転される２台の原動機（２つの電動機７１及び７３）と、第１の力伝達機構７５、第２の力伝達機構７７、第３の力伝達機構７９及び第４の力伝達機構８１の計４つの力伝達機構によって構成されている。軸の回転方向は、矢印で明示した通りである。

【0043】

具体的には、第１の原動機７１は、第１の駆動軸７１ａを有しており、第１の力伝達機構７５は、第１の原動機７１の第１の駆動軸７１ａとウインチ６３の回転軸６９の一方の端部６９ａとの間に設けられて、第１の駆動軸７１ａの回転を、ウインチ６３の回転軸６９が、第１の駆動軸７１ａと同じ方向に回転するように伝達する。第２の力伝達機構７７は、第１の原動機７１の第１の駆動軸７１ａとウインチ６３´の回転軸６９´の一方の端部６９´ａとの間に設けられて、第１の駆動軸７１ａの回転を、ウインチ６３´の回転軸６９´が、第１の駆動軸７１ａと逆方向に回転するように伝達する。

【0044】

より詳細には、第１の力伝達機構７５は、第１の駆動軸７１ａに設けられた第１の駆動スプロケット８３と、回転軸６９の一方の端部６９ａに設けられた第１の被駆動スプロケット８５と、第１の駆動スプロケット８３と第１の被駆動スプロケット８５との間に張り渡された第１のチェーン８７とを備えており、第２の力伝達機構７７は、第１の駆動軸７１ａに設けられた第２の駆動スプロケット８９と、回転軸６９´の一方の端部６９´ａの近傍に配置された第１の被駆動軸９１に設けられた第２の被駆動スプロケット９３と、第２の駆動スプロケット８９と第２の被駆動スプロケット９３との間に張り渡された第２のチェーン９５と、回転軸６９´と第１の被駆動軸との間に設けられて、第１の被駆動軸９１の回転力で第１の被駆動軸９１の回転方向とは逆方向に回転軸６９´を回転させる第１の逆転機構９７とを備えている。

【0045】

また、第２の原動機７３は、第２の駆動軸７３ａを有しており、第３の力伝達機構７９は、第２の原動機７３の第２の駆動軸７３ａとウインチ６３´の回転軸６９´の他方の端部６９´ｂとの間に設けられて、第２の駆動軸７３ａの回転を、ウインチ６３´の回転軸６９´が、第２の駆動軸７３ａと同じ方向に回転するように伝達する。第４の力伝達機構８１は、第２の原動機７３の第２の駆動軸７３ａとウインチ６３の回転軸６９の他方の端部６９ｂとの間に設けられて、第２の駆動軸７３ａの回転を、ウインチ６３の回転軸６９が、第２の駆動軸７３ａと逆方向に回転するように伝達する。

【0046】

より詳細には、第３の力伝達機構７９は、第２の駆動軸７３ａに設けられた第３の駆動スプロケット９９と、回転軸６９´の他方の端部６９´ｂに設けられた第３の被駆動スプロケット１０１と、第３の駆動スプロケット９９と第３の被駆動スプロケット１０１との間に張り渡された第３のチェーン１０３とを備えており、第４の力伝達機構８１は、第２の駆動軸７３ａに設けられた第４の駆動スプロケット１０５と、回転軸６９の他方の端部６９ｂの近傍に配置された第２の被駆動軸１０７に設けられた第４の被駆動スプロケット１０９と、第４の駆動スプロケット１０５と第４の被駆動スプロケット１０９との間に張り渡された第４のチェーン１１１と、回転軸６９と第２の被駆動軸１０７との間に設けられて、第２の被駆動軸１０７の回転力で第２の被駆動軸１０７の回転方向とは逆方向に回転軸６９を回転させる第２の逆転機構１１３とを備えている。

【0047】

このようにすることで、２台の原動機７１及び７３を用いて同期駆動装置６７を実現することができ、負荷の分散が可能である。また、原動機を２台にすることで、２台のうち、１台の原動機が故障等したとしても、同期駆動装置を駆動させることができ、冗長化することもできる。

【0048】

［昇降機構の動作］
図８は、格納庫２９内に硬帆２７を格納した状態を示す模式図であり、（Ａ）は、正面図、（Ｂ）は平面図であり、図９は、硬帆２７を格納庫２９から出して使用状態にした状態を示す模式図であり、（Ａ）は、正面図、（Ｂ）は平面図である。図８（Ｂ）及び図９（Ｂ）では、蓋部材３３は省略してあり、また、硬帆部分については、説明の便宜上、一部透明なものとして図示してある。なお図８及び図９には、図１乃至図７に示した部材と同一の部材には、図１乃至図７に付した符号と同じ符号を付してある。

【0049】

格納庫２９内に硬帆２７を格納した状態（図８Ａ及び図８Ｂ）では、蓋部材３３は入り口３１を閉じる閉鎖位置に存在する。硬帆を使用状態にする場合は、蓋部材３３を開放位置に移動させてから、第１及び第２の電動機７１，７３を駆動させる。第１及び第２の電動機７１，７３を駆動させると、一対のウインチ６３，６３´が一対の線状体群６１，６１´を巻き取ることで、装置本体４５の両端部が同期した状態で上昇する。そして装置本体４５が入り口３１の近傍部まで上昇したところで、ピストン４３を作動させ、ピストン４３の延伸部分をシリンダ５３内に挿入し、装置本体４５を固定し、硬帆を使用状態にする（図９Ａ及び図９Ｂ）。

【0050】

［硬帆の拡張］
本実施の形態では、図１に示した硬帆２７Ｄ～２７Ｈは、それぞれ幅方向寸法が可変になる構造も有している。具体的には、図１０及び図１１に示すように、内側に第１の拡張部２７ａ及び第２の拡張部２７ｂを収納している。甲板９上に硬帆２７を出した状態で、第１の拡張部２７ａ及び第２の拡張部２７ｂを繰り出すことにより、風を受ける硬帆２７の面積を拡張させることが可能である。

【0051】

＜第２の実施の形態＞
図１２及び図１３は、風力推進装置の風力推進力発生部として、ローター帆を採用した第２の実施の形態の要部を示す図である。「ローター帆」は、甲板上に垂直方向に立てた柱状のローター帆を垂直方向に延びる軸を中心にして回転させて、マグヌス効果により推進力を得る帆のことである。図１２は、ローター帆２２７を格納庫２２９に収納した状態を示す図であり、図１３は、ローター帆２２７を格納庫２２９から出して使用状態にした図である。図１２及び図１３では、図１乃至図９に示した第１の実施の形態と共通する部分については、図８Ａ及び図８Ｂに付した符号に２００を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。

【0052】

上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本発明は本実施例に限定されるものではない。

【0053】

例えば、上記第１の実施の形態では、冗長性等も考慮して、２台の原動機を用いて同期駆動装置を実現した例を示したが、電動機７３と第３の力伝達機構７９及び第４の力伝達機構８１を省略した同期駆動装置でもよいのはもちろんである。

【産業上の利用可能性】

【0054】

本発明によれば、大型で重量物である風力推進装置を安定した状態で、また、船舶が揺れている状態でも確実に昇降させることができる船舶を提供することができる。

【符号の説明】

【0055】

１ ばら積み貨物船
３ 船体
５ 船首
７ 船尾
９ 甲板（上甲板）
１１（１１Ａ～１１Ｉ） 船倉
１３（１３Ａ～１３Ｉ） 開口部
１５（１５Ａ～１５Ｉ） 縁材
１７（１７Ａ～１７Ｉ） ハッチカバー
１９ 船橋
２１ レーダーマスト
２３ 煙突
２５（２５Ａ～２５Ｈ） 風力推進装置（硬帆装置）
２７（２７Ａ～２７Ｈ） 風力推進力発生部（硬帆）
２９（２９Ａ～２９Ｈ） 格納庫
３１ 入り口
３３ 蓋部材
３５ 振動抑制リブフレーム
３７ 二重底
３９，３９´ 一対の下部ホッパータンク
４１，４１´ 一対の上部ホッパータンク
４３ ピストン
４５ 装置本体
４７ 昇降装置
４９ 軸部
５１ 駆動装置
５３ シリンダ
５５ 第１のローラ
５７ 第２のローラ
５９，５９´ 一対の昇降機構
６１，６１´ 一対の線状体群
６３，６３´ 一対のウインチ
６５，６５´ 一対の滑車装置
６７ 同期駆動装置
６９，６９´ 回転軸
７１ 第１の電動機
７３ 第２の電動機
７５ 第１の力伝達機構
７７ 第２の力伝達機構
７９ 第３の力伝達機構
８１ 第４の力伝達機構
８３ 第１の駆動スプロケット
８５ 第１の被駆動スプロケット
８７ 第１のチェーン
８９ 第２の駆動スプロケット
９１ 第１の被駆動軸
９３ 第２の被駆動スプロケット
９５ 第２のチェーン
９７ 第１の逆転機構
９９ 第３の駆動スプロケット
１０１ 第３の被駆動スプロケット
１０３ 第３のチェーン
１０５ 第４の駆動スプロケット
１０７ 第２の被駆動軸
１０９ 第４の被駆動スプロケット
１１１ 第４のチェーン
１１３ 第２の逆転機構

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】