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  • 特許-冷感付与用シート状化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】冷感付与用シート状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20250313BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20250313BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61Q15/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020175306
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2021088547
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019212676
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】竹原 千賀
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203000(JP,A)
【文献】特開2014-118352(JP,A)
【文献】特開2017-178841(JP,A)
【文献】特開2007-176850(JP,A)
【文献】特開2016-112343(JP,A)
【文献】特開2012-97052(JP,A)
【文献】特開2011-156319(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170376(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/、9/、47/
A61Q
A41D23/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
首にかけて使用する際に冷感付与するために用いられるシート状化粧料であり、
不織布と、前記不織布に含浸された化粧料組成物とを含み、
前記不織布への前記化粧料組成物の含浸率が、300質量%以上490質量%以下であり、
前記化粧料組成物が、以下の成分(A)および(B):
(A)清涼成分、
(B)エタノールならびに
水を含有し、
前記成分(A)が、メントールおよびその誘導体からなる群から選択される1または2以上の化合物を含み、
前記化粧料組成物中の前記成分(A)の含有量が、前記化粧料組成物全体に対して0.015質量%以上0.25質量%以下であり、
前記化粧料組成物中の前記成分(A)および(B)の濃度(質量%)をそれぞれAおよびBとしたとき、A1.1×Bが0.20以上1.50以下であり、
前記水の含有量が、前記化粧料組成物全体に対して45質量%以上96質量%以下である、シート状化粧料。
【請求項2】
前記化粧料組成物が、成分(C):多価アルコールをさらに含有する、請求項1に記載のシート状化粧料。
【請求項3】
前記化粧料組成物中の成分(C)に対する成分(A)の含有質量比((A)/(C))が、0.01以上5以下である、請求項2に記載のシート状化粧料。
【請求項4】
前記化粧料組成物が、成分(D):界面活性剤をさらに含有する、請求項1乃至3いずれか1項に記載のシート状化粧料。
【請求項5】
前記不織布の平面形状が矩形であり、前記不織布の長さが35cm以上80cm以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載のシート状化粧料。
【請求項6】
前記不織布の平面形状が矩形であり、前記不織布の幅が3cm以上12cm以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載のシート状化粧料。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項に記載のシート状化粧料が包装材内に収容されている、包装体。
【請求項8】
請求項1乃至6いずれか1項に記載のシート状化粧料を首にかけることを含む、シート状化粧料の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感付与用シート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
汗拭きや体臭除去に用いられるシート化粧料に関する技術として、特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1(特開2015-93859号公報)には、l-メントール、l-メンチルグリセリルエーテル、ユーカリプトール及び/又はボルネオール、乳酸メンチル及び/又はシュウ酸メンチルエチルアミド、ならびに、PCAメンチル及び/又はコハク酸モノメンチルを含む化粧料について記載されている。同文献によれば、かかる化粧料は、使用の初期において、使用者に対して高い清涼感を与え、清涼感の持続性に優れ、さらに、使用後に汗をかいたときには、清涼感が向上し、使用者により快適な清涼感を与えることができ、なおかつ、使用時の刺激感などの不快な刺激が十分に低減されているとされている。
【0003】
特許文献2(特開2018-115123号公報)には、人体洗浄用組成物を含むシート状体臭除去剤について記載されており、人体洗浄用組成物を含むシート状体臭除去剤を皮膚に1分間以上接触させたまま固定する工程を含む、体臭除去方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-93859号公報
【文献】特開2018-115123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、背景技術の項で前述した各特許文献においては、シート状化粧料を所定の時間連続して肌に冷感を付与するという観点からの検討はなされていない。たとえば特許文献1においては、化粧料を拭き取り用シートとし得ることが記載されている一方、かかるシートを継続して肌に接触させておくことは検討されていない。また特許文献2においては、シートを数分程度継続して肌に接触させておくことについての記載はあるが、肌への冷感付与に用いることについての検討はされていない。
【0006】
一方、本発明者は、首にかけて使用する冷感付与用シート状化粧料を提供することを新たに考えた。具体的には、本発明は、首に長時間かけておいても、刺激感が抑制されつつ冷感が持続し、汗拭きシートとしても使用できるシート状化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
首にかけて使用する冷感付与用シート状化粧料であり、
不織布と、前記不織布に含浸された化粧料組成物とを含み、
前記不織布への前記化粧料組成物の含浸率が、300質量%以上490質量%以下であり、
前記化粧料組成物が、以下の成分(A)および(B):
(A)清涼成分、
(B)エタノールならびに
水を含有し、
前記化粧料組成物中の前記成分(A)の含有量が、前記化粧料組成物全体に対して0.015質量%以上0.3質量%以下であり、
前記化粧料組成物中の前記成分(A)および(B)の濃度(質量%)をそれぞれAおよびBとしたとき、A1.1×Bが0.20以上3.8以下である、シート状化粧料が提供される。
【0008】
本発明によれば、前記本発明におけるシート状化粧料が包装材内に収容されている、包装体が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記本発明におけるシート状化粧料を首にかけることを含む、シート状化粧料の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、首に長時間かけておいても、刺激感が抑制されつつ冷感が持続し、汗拭きシートとしても使用できるシート状化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態におけるシート状化粧料の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、組成物に含まれる各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。また、本明細書中、数値範囲を表す「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、上限値および下限値をいずれも含む。
【0013】
(冷感付与用シート状化粧料)
本実施形態において、冷感付与用シート状化粧料は、首にかけて使用するものであり、さらに具体的には、首にかけて使用して肌に冷感を付与するものであり、好ましくは首にかけて使用して肌を冷却するものである。シート状化粧料は、不織布と、不織布に含浸された化粧料組成物とを含み、不織布への化粧料組成物の含浸率が、300質量%以上490質量%以下である。化粧料組成物は、以下の成分(A)および(B)ならびに水を含有する。
(A)清涼成分、
(B)エタノール
化粧料組成物中の成分(A)の含有量が、化粧料組成物全体に対して0.015質量%以上0.3質量%以下である。化粧料組成物中の成分(A)および(B)の濃度(質量%)をそれぞれAおよびBとしたとき、A1.1×Bが0.20以上3.8以下である。
【0014】
本発明者は、首にかけて使用するシート状化粧料を、長時間肌に接触しつづける際にも刺激感は抑制される一方、冷感は持続し、また所望のタイミングで汗ふきシートとしても使用できるものとすべく検討した。その結果、シート状化粧料が不織布と、成分(A)、(B)および水を含む化粧料組成物とを含むものとし、化粧料組成物の含浸率、成分(A)の含有量およびA1.1×Bで表される指標がそれぞれ特定の範囲にある構成とすることにより、上述の要求特性を達成できることを新たに見出した。
以下、各構成をさらに具体的に説明する。
【0015】
(不織布)
不織布は、具体的にはシート状化粧料の基材となる。
不織布の材料として、具体的には、リヨセル、キュプラ、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、コットン、パルプおよびこれらを混綿したものが挙げられる。他の例として、パルプ、レーヨンおよびコットンの少なくとも1つが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂で強化されたシート等が挙げられる。このとき、パルプ、レーヨン、コットンおよび熱可塑性樹脂の割合において、パルプ、レーヨン、コットンが全体に占める質量比は、長時間首にかけておく際の使用感を好ましいものとする観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、また、100質量%未満である。
【0016】
化粧料組成物の保持性に優れる観点から、不織布の材料は、好ましくはコットンおよびレーヨンからなる群から選択される1または2以上の材料である。コットン、レーヨンが全体に占める質量比は、化粧料組成物の保持性と放出性の観点から、好ましくはコットンが50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0017】
不織布の平均坪量は、化粧料組成物の保持性や、清拭時の感触が良好である観点から、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは40g/m2以上である。
同様の観点から、不織布の坪量は、好ましくは150g/m2以下であり、より好ましくは100g/m2以下である。
なお、平均坪量は、JIS L 1913に準拠し、不織布を一定面積の寸法に切り出してその質量(g)を測定し、これを1m2の質量に換算して求めることができる。
【0018】
不織布の厚さは、拭きごたえがあり、清拭時に良好な使用感を与える点から、好ましくは0.15mm以上であり、より好ましくは0.30mm以上である。
同様の観点から、不織布の厚さは、好ましくは1.30mm以下であり、より好ましくは0.90mm以下である。
ここで、不織布の厚さは、押圧20gf/cm2荷重のダイアルゲージによる測定により得られる。
【0019】
不織布の形状は、具体的にはシート状であり、首にかけた際に首から外れにくい形状とすることが好ましく、たとえば矩形状とすることができる。
不織布の長手方向の大きさ、たとえば矩形の長さは、首にかけやすくする観点、および、首から外れにくくする観点から、好ましくは30cm以上であり、より好ましくは35cm以上、さらに好ましくは45cm以上である。
また、首にかけた際に衣類に干渉しすぎないようにする観点から、不織布の長手方向の大きさ、たとえば矩形の長さは、好ましくは90cm以下であり、より好ましくは80cm以下、より好ましくは70cm以下である。
【0020】
不織布の短手方向の大きさ、たとえば矩形の幅は、首に巻きやすくする観点から、好ましくは2cm以上であり、より好ましくは3cm以上であり、さらに好ましくは4cm以上である。
不織布の短手方向の大きさ、たとえば矩形の幅の上限に制限はないが、たとえば12cm以下、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下である。また、シート状化粧料の使用時に、不織布を短手方向に折りたたんで幅を調整してもよい。不織布を折りたたんで厚さを増すことにより、たとえば首にかけた際の安定感を高めることもできる。
【0021】
(化粧料組成物)
化粧料組成物は、以下の成分(A)および(B)ならびに水を含む。
(A)清涼成分
(B)エタノール
化粧料組成物は、たとえば皮膚外用剤であってもよい。また、化粧料組成物の性状として、不織布への含浸性を高める観点から、好ましくは液状である。
【0022】
(成分(A))
成分(A)の清涼成分として、たとえば、l-メントール、メンチルアセテート、乳酸メンチル、l-メンチルグリセリルエーテル、メンチルピロリドンカルボン酸等のメントールまたはその誘導体;N-エチル-p-メンタンカルボキシアミド等のメントール類縁体;dl-カンファー、イソプレゴール、シネオール、ボルネオール、チモールおよびこれらの誘導体や、3-l-メトキシプロパンジオールや、ハッカ油、ペパーミント油等のメントールを含有した精油等が挙げられる。
なお、成分(A)は、清涼成分としての機能に加えて他の機能を有するものであってもよい。たとえば成分(A)は、香料としても機能してもよい。
【0023】
首にかけて使用する際の冷感の持続性を高める観点から、成分(A)は、好ましくはメントールおよびその誘導体からなる群から選択される1または2以上の化合物を含み、より好ましくはl-メントールである。
【0024】
化粧料組成物中の成分(A)の含有量は、冷感の持続性を高める観点から、化粧料組成物全体に対して0.015質量%以上であり、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。
また、シート状化粧料を所定時間継続して首にかけた際の刺激感を抑制する観点から、成分(A)の含有量は、化粧料組成物全体に対して0.3質量%以下であり、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0025】
(成分(B))
成分(B)はエタノールである。
化粧料組成物中の成分(B)の含有量は、化粧料組成物中の成分(A)の含有量に応じて、A1.1×Bが所定の範囲となるように設定される。
また、冷感を高める観点から、化粧料組成物中の成分(B)の含有量は、化粧料組成物全体に対して好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上である。
また、シート状化粧料を所定時間継続して首にかけた際の刺激感を抑制する観点から、成分(B)の含有量は、化粧料組成物全体に対して好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0026】
本実施形態においては、化粧料組成物中の成分(A)および(B)の濃度(質量%)をそれぞれAおよびBとしたとき、A1.1×Bで表される指標が特定の範囲にある。ここで、A1.1×Bは、所定の時間継続して首にかけて用いる際のシート状化粧料の状態を反映する指標であり、本発明者が新たに見出したものである。A1.1×Bを特定の範囲とすることにより、シート状化粧料を長時間首にかけて用いたときの冷感および刺激感、ならびに、清拭した際の使用感のバランスを好ましいものとすることができる。
具体的には、A1.1×Bは、首にかけて用いる際に持続的な冷感を得る観点、および、清拭時のふきとり感を向上する観点から、0.20以上となるものであり、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.80以上である。
また、長時間首にかけておいた際の刺激感を抑制する観点から、A1.1×Bは、3.8以下となるものであり、好ましくは1.50以下、より好ましくは1.00以下、さらに好ましくは0.90以下である。
【0027】
(水)
化粧料組成物中の水の含有量は、たとえば化粧料組成物中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。
また、化粧料組成物中の水の含有量は、シート状化粧料を所定時間継続して首にかけた際の刺激感を抑制する観点から、化粧料組成物全体に対して好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上である。
また、シート状化粧料を首にかけて用いた際の経時的な冷感を向上する観点から、化粧料組成物中の水の含有量は、化粧料組成物全体に対して具体的には99.7質量%未満であり、好ましくは96質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、さらにより好ましくは80質量%以下である。
【0028】
また、化粧料組成物は、成分(A)、(B)および水以外の成分を含んでもよい。たとえば、化粧料組成物が以下の成分(C)および(D)の少なくとも一方を含んでもよい。
【0029】
(成分(C))
成分(C)は、多価アルコールである。成分(C)の具体例として、グリセリン;1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール等のプロパンジオールおよびその誘導体;ソルビトール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;数平均分子量100以上3000以下のポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;1,3-ブタンジオールおよびイソプレングリコール;からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
化粧料組成物の保持性に優れ、シートを首にかけた際に、長時間にわたってシートの乾燥を抑制することで、冷感の持続性をより持続し、さらに、肌のべたつきを抑制しつつ、潤い感に優れる観点から、成分(C)は、ポリエチレングリコール、プロパンジオールおよびその誘導体からなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくはポリエチレングリコールを含み、数平均分子量100以上3000以下のポリエチレングリコールを含むことがより更に好ましく、数平均分子量200以上1000以下のポリエチレングリコールを含むことがより一層好ましく、数平均分子量250以上700以下のポリエチレングリコールを含むことがより一層好ましい。
同様の観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、また、好ましくは3000以下であり、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは700以下である。
【0030】
化粧料組成物中の成分(C)の含有量は、肌感を良好にし、潤いを与える観点、化粧料組成物の保持性向上の観点から、化粧料組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
また、清拭時のぬるつき感および清拭後のべたつき感抑制の観点から、化粧料組成物中の成分(C)の含有量は、化粧料組成物全体に対して好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
【0031】
化粧料組成物中の成分(C)に対する成分(A)の含有質量比((A)/(C))は、シートを首にかけた際に、長時間にわたってシートの乾燥を抑制することで、冷感の持続性をより持続し、さらに、肌のべたつきを抑制しつつ、潤い感に優れる観点から好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、さらにより好ましくは0.05以上であり、また、好ましくは5以下であり、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.4以下である。
【0032】
化粧料組成物中の成分(A)と成分(C)の含有量の総和は、シートを首にかけた際に、長時間にわたってシートの乾燥を抑制することで、冷感の持続性をより持続し、さらに、肌のべたつきを抑制しつつ、潤い感に優れる観点から、化粧料組成物全体に対して好ましくは0.025質量%以上であり、より好ましくは0.06質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.3質量%以下であり、より好ましくは1.25質量%以下、さらに好ましくは0.85質量%以下、よりさらに好ましくは0.6質量%以下である。
【0033】
(成分(D))
成分(D)は、界面活性剤である。
製剤の安定性を向上させる観点、化粧料組成物の保持性向上の観点、また肌感触を良好にする観点から、成分(D)は、好ましくはノニオン界面活性剤を含む。ノニオン界面活性剤として、たとえば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシドが挙げられる。
このうち、清拭時のぬるつき感および清拭直後のべたつき感抑制や、不織布への液保持性の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシアルキレンC8-C20脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドが好ましい。
【0034】
より具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。
アルキルグリコシドとしては、アルキル基の炭素数8~14で、糖(グルコース)の縮合度1~2のもの等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンヤシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、炭素数8~18、中でも炭素数10~16のアシル基を有するものが好ましく、またモノアルカノールアミド、ジアルカノールアミドのいずれでもよいが炭素数2~3のヒドロキシアルキル基を有するものが好ましい。
脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド等が挙げられる。
【0035】
ノニオン界面活性剤は、清拭時のぬるつき感および清拭直後のべたつき感抑制の観点や、不織布への化粧料組成物の保持性向上の観点から、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択せれる1種または2種以上であり、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
【0036】
化粧料組成物中の成分(D)の含有量は、皮膚清拭性、製剤の安定性を向上させる観点から、化粧料組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
また、清拭時のぬるつき感および清拭直後のべたつき感抑制の観点から、化粧料組成物中の成分(D)の含有量は、化粧料組成物全体に対して好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
【0037】
また、化粧料組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよい。
たとえば化粧料組成物はpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤として、たとえばコハク酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸およびその塩;リン酸等の無機酸およびその塩、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
このうち、化粧料組成物中の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの含有量は、化粧料組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、殊更好ましくは0.3質量%以下である。
【0038】
化粧料組成物のpHは、肌への刺激性を低減する観点から、好ましくは4.3以上であり、より好ましくは4.5以上であり、また、好ましくは8.0以下である。
【0039】
次に、シート状化粧料の製造方法を説明する。
シート状化粧料の製造方法は、たとえば、化粧料組成物および不織布を準備する工程と、化粧料組成物を不織布に含浸させる工程と、を含む。
化粧料組成物を不織布に含浸させる工程において、含浸方法に制限はなく、たとえば、スプレーやエアーガン等を用いて化粧料組成物を不織布に噴霧して含浸させる方法や、スリット型のノズル等を用いて化粧料組成物を直接シート基材に塗布して含浸させる方法が挙げられる。
【0040】
不織布への化粧料組成物の含浸率は、首にかけて長時間経過した後においても清拭時に好ましいウエット感および冷感を得る観点から、不織布の質量に対して300質量%以上であり、好ましくは330質量%以上、より好ましくは360質量%以上、さらに好ましくは390質量%以上である。
また、首にかけた際の使用感の観点から、化粧料組成物の含浸率は、不織布の質量に対して490質量%以下であり、好ましくは480質量%以下、より好ましくは460質量%以下である。
【0041】
(包装体)
本実施形態において、包装体は、たとえば本実施形態におけるシート状化粧料が包装材に収容されたものであり、好ましくは密封されたものである。
包装体の材料に制限はなく、たとえばアルミシート(アルミ箔)やシリカ蒸着フィルム等のバリア層を挟んでその表裏両面を例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等により構成された合成樹脂フィルム層で覆った積層フィルム等とすることができる。
また、包装体の形状に制限はなく、たとえばピロー袋、ガゼット袋、パウチ、箱、ボトル、ジャー等とすることができる。
1つの包装材内に、1枚のシート状化粧料が収容されていてもよいし、2枚以上のシート状化粧料が収容されていてもよい。また、1つの包装材内に、2枚以上のシート状化粧料が連結した状態で収容されていてもよい。このとき、たとえば不織布にミシン目が設けられていてよく、使用する分のシート状化粧料をミシン目に沿って切り取って用いることができる。
シート状化粧料は、たとえば折りたたんだ状態または巻いた状態で収納される。
【0042】
包装体からシート状化粧料を取り出してから1時間経過後の不織布への化粧料組成物の含浸率は、シート状化粧料の好ましい使用感の持続性を高める観点から、不織布の質量に対して好ましくは80質量%以上、より好ましくは120質量%以上、さらに好ましくは150質量%以上である。
包装体からシート状化粧料を取り出してから1時間経過後の不織布への化粧料組成物の含浸率に制限はなく、たとえば包装体からシート状化粧料を取り出した時点における含浸率以下であり、また、たとえば200質量%以下であってもよい。
【0043】
次に、シート状化粧料の使用方法を説明する。シート状化粧料の使用方法は、具体的にはシート状化粧料を首にかけることを含む。このとき、シート状化粧料をそのまま首にかけてもよいし、使用者の首のサイズに応じてシート状化粧料を折りたたんで首にかけてもよい。また、シート状化粧料が首から外れることを抑制する観点から、たとえばシート状化粧料を首に巻いてもよい。
本実施形態においては、長時間連続して首にかけて使用する際にも肌への刺激感を抑制することができるとともに、冷感を持続的に得ることができる。また、本実施形態によれば、たとえば、実際に皮膚の温度を低下させることも可能となる。
【0044】
図1(a)および図1(b)は、シート状化粧料の構成例を示す図であり、それぞれシート状化粧料が首にかけられた状態を示す正面図および斜視図である。図1(a)および(b)においては、シート状化粧料100の幅を半分に折って使用者の首にかけた例が示されている。
【0045】
また、シート状化粧料で肌を拭いてもよい。肌を拭くタイミングに制限はなく、首にかける前、中、後のいずれとしてもよいが、好ましくは首にかけている途中または首にかけて用いた後である。また、肌を拭く際、シート状化粧料を首にかけたままにしてもよいし、首から外してもよい。
また、シート状化粧料によって清拭される肌は、たとえば頭皮以外の肌であり、全身であってもよく、好ましくは顔;首;手、腕等の上半身;または脚等の下半身、より好ましくは顔;首または上半身である。
本実施形態においては、化粧料組成物が成分(B)および水を含んでおり、成分(A)の含有量、A1.1×Bおよび含浸率がそれぞれ特定の範囲にあるため、首にかけて一定時間経過した後においても、たとえば、清拭中、皮膚に転写した化粧料組成物に含まれる成分(B)や水が揮発する際の気化熱により実際に皮膚の温度を低下させるとともに、清拭後も感覚的な冷感を与えることも可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0047】
(実施例1~21、比較例1~16)
表1~表5に示す配合で各例の化粧料組成物を調製し、これを表1~表5に記載の含浸率となるように不織布に含浸させて、各例のシート状化粧料を得た。得られたシート状化粧料について、1時間後の冷感、経時の刺激感のなさ、1時間後の拭き取り感を評価した。評価結果を表1~表5にあわせて示す。
【0048】
(化粧料組成物の調製方法)
常温(25℃)にて(A)清涼成分を(B)エタノールに溶解させたのち、水相にその他の成分を投入して調製した。
【0049】
(シート状化粧料の製造方法)
不織布(コットン70質量%/レーヨン30質量%、幅23cm、長さ46cm、平均厚さ0.33mm、平均坪量45g/m2)に、各例で得られた化粧料組成物をまんべんなく染み込ませた後、液をなじませて均一に含浸させた。
【0050】
(評価方法)
(1時間後の冷感)
各例で得られたシート状化粧料を2つ折りの状態で首にかけ、室温(25℃)にて1時間経過後の首裏の冷感を3段階で評価した。評価は、専門パネリスト4名が以下の基準に従っておこない、表1~表5に各パネリストの評点および平均点を示した。判定が○および◎のものを合格とした。
評価基準
3点:冷感あり
2点:やや冷感あり
1点:若干冷感あり
0点:冷感なし
判定基準
◎:評点の平均点が、2.00以上3.00以下
〇:評点の平均点が、1.00以上2.00未満
×:評点の平均点が、0.00以上1.00未満
【0051】
(経時の刺激感のなさ)
各例で得られたシート状化粧料を2つ折りの状態で首にかけ、室温(25℃)にて1時間経過する間の経時の刺激感を評価した。評価は、専門パネリスト4名が以下の基準に従っておこない、表1~表5に各パネリストの評点および平均点を示した。判定が○および◎のものを合格とした。
評価基準
2点:刺激感なし
1点:やや刺激感があるが許容範囲内
0点:許容範囲を超える刺激感あり
判定基準
◎:評点の平均点が、1.50以上2.00以下
〇:評点の平均点が、0.50以上1.50未満
×:評点の平均点が、0.00以上0.50未満
【0052】
(1時間後のふきとり感)
各例で得られたシート状化粧料を2つ折りの状態で首にかけ、室温(25℃)にて1時間経過した後、上腕内側を清拭し、ふきとり感を評価した。評価は、専門パネリスト4名が以下の基準に従っておこない、表1~表5に各パネリストの評点および平均点を示した。判定が△、○および◎のものを合格とした。
評価基準
4点:ふき取り感高い
3点:ふき取り感やや高い
2点:ふき取り感やや低い
1点:ふき取り感低い
0点:ふき取り感なし
判定基準
◎:評点の平均点が、3.00以上4.00以下
〇:評点の平均点が、2.00以上3.00未満
△:評点の平均点が、1.00以上2.00未満
×:評点の平均点が、0.00以上1.00未満
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
ここで、表1に記載の実施例7を表4および表5にも記載した。また、表1~表5において、各成分の含有量はアクティブ量である。
表1~表5より、各実施例で得られたシート状化粧料は、首にかけて1時間後の冷感、経時の刺激感のなさ、および、1時間後のふき取り感の効果のバランスに優れていた。
【0059】
(実施例22)
実施例7のシート状化粧料について、不織布の長さおよび幅を変えて、首へのかけやすさおよび首への巻きやすさを以下の基準で評価した。評価は、専門パネリスト5名が以下の基準に従っておこない、その平均点を示した。評価結果を表6および表7に示す。
【0060】
(首へのかけやすさ)
不織布の幅を12cmとし、長さを変えて評価した。
評価基準
3:首にかけて使用でき、首へのかけ心地がとても良い
2:首にかけて使用でき、首へのかけ心地が良い
1:首にかけて使用できる
0:首にかけて使用できない
(首への巻きやすさ)
評価基準
不織布の長さを46cmとし、幅を変えて評価した。
3:首に巻いて使用でき、首への巻き心地がとても良い
2:首に巻いて使用でき、首への巻き心地が良い
1:首に巻いて使用できる
0:首に巻いて使用できない
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
(実施例23、24)
表8に示す配合で各例の化粧料組成物を調製し、これを表8記載の含浸率となるように不織布に含浸させて、各例のシート状化粧料を得た。得られたシート状化粧料について、首へかけて評価したところ、1時間後の冷感に優れ、経時の刺激感がなく、1時間後の拭き取り感に優れていた。
【0064】
【表8】
【符号の説明】
【0065】
100 シート状化粧料
図1