(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20250313BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20250313BHJP
H04R 3/12 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R1/40 310
H04R3/12 Z
(21)【出願番号】P 2020180266
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】▲イェ▼ 載憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜一
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141276(JP,A)
【文献】特開2007-104712(JP,A)
【文献】特表2002-524946(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105046(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/053032(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216711(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 3/14
H04R 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の音声信号に応じて振動し、第1振動素子及び第2振動素子を含む複数の振動素子と、
前記複数の振動素子が同一の主面に接続されている振動部材と、
前記第1振動素子および前記振動部材を接続する第1接続部材と、
前記第2振動素子および前記振動部材を接続する複数の第2接続部材と、
を備え、
前記第1振動素子及び前記第2振動素子は、互いに異なる位相の振動を前記振動部材に伝達し、
前記第1振動素子および前記第2振動素子は、矩形の平板であり、
前記第1接続部材は前記平板の中心と前記振動部材とを直接に接続し、
前記複数の第2接続部材は前記平板の長手方向の両端部と前記振動部材とを直接に接続する、
ことを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記第1振動素子及び前記第2振動素子は、互いに逆位相の振動を前記振動部材に伝達する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記第1振動素子及び前記第2振動素子には、前記音声信号が互いに
同位相で入力される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記第1振動素子及び前記第2振動素子の各々は、第1電極及び第2電極を有し、
前記音声信号を出力する信号源は、互いに逆位相の信号を出力する第1端子及び第2端子を有し、
前記第1端子が、前記第1振動素子の前記第1電極及び前記第2振動素子の前記第
1電極と接続されており、
前記第2端子が、前記第1振動素子の前記第2電極及び前記第2振動素子の前記第
2電極と接続されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記第1振動素子上において前記第1振動素子と前記振動部材が接続される第1接続部の位置と前記第2振動素子上において前記第2振動素子と前記振動部材が接続される第2接続部の位置とが互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項6】
前記複数の振動素子は、矩形の平板であり、
前記第1接続部は前記平板の中心を含み、前記第2接続部は、前記平板の前記中心から前記平板の長手方向に離れた位置を含む
ことを特徴とする請求項
5に記載の音響装置。
【請求項7】
前記複数の振動素子の各々は、圧電素子である
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項8】
前記複数の振動素子の各々は、圧電素子であり、
前記第1振動素子が有する圧電体の分極方向と、前記第2振動素子が有する圧電体の分極方向とが互いに
同じである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項9】
前記第1振動素子及び前記第2振動素子には、前記音声信号が互いに同位相で入力される
ことを特徴とする請求項
5、
6又は
8に記載の音響装置。
【請求項10】
前記複数の振動素子は、第3振動素子を更に含み、
前記第1振動素子及び前記第3振動素子は、互いに同位相の振動を前記振動部材に伝達する
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項11】
前記第2振動素子は、前記主面に対する平面視において、前記第1振動素子と前記第3振動素子の間に配されている
ことを特徴とする請求項
10に記載の音響装置。
【請求項12】
前記振動部材は矩形の平板状であり、
前記第1振動素子、前記第2振動素子及び前記第3振動素子は、前記振動部材の長手方向に並んで配されている
ことを特徴とする請求項
11に記載の音響装置。
【請求項13】
前記振動部材は、表示装置の表示パネルであり、
前記振動部材は、画像が表示される画像表示面と、前記画像表示面に対向する前記主面とを有し、
前記第1振動素子及び前記第2振動素子の振動は、前記表示パネルの前記主面に伝達される
ことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の音響装置。
【請求項14】
前記表示パネルは、有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode;OLED)を含む
ことを特徴とする請求項
13に記載の音響装置。
【請求項15】
前記表示パネルは、液晶パネルを含む
ことを特徴とする請求項
13に記載の音響装置。
【請求項16】
前記振動部材は、サイネージであり、
前記振動部材は、前記サイネージのコンテンツが視認可能に配されるコンテンツ配置面と、前記コンテンツ配置面に対向する前記主面とを有し、
前記第1振動素子及び前記第2振動素子の振動は、前記サイネージの前記主面に伝達される
ことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示パネルと、アクチュエータとを備える表示装置が開示されている。特許文献1の表示装置は、アクチュエータを制御して表示パネルを振動させる機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0077582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている構造は音響装置にも適用可能である。しかしながら、特許文献1の構造による音響装置においては、音質が十分ではない場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、音質が向上された音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、共通の音声信号に応じて振動する複数の振動素子と、前記複数の振動素子が同一の主面に接続されている振動部材と、を備え、前記複数の振動素子は、第1振動素子及び第2振動素子を含み、前記第1振動素子及び前記第2振動素子は、互いに異なる位相の振動を前記振動部材に伝達することを特徴とする音響装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音質が向上された音響装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る音響装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧電素子の配置を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る圧電素子の配置を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る圧電素子の配置を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る圧電素子の構造をより詳細に示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態に係る圧電素子への音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。
【
図9】第1実施形態に係る音響装置による効果を説明する模式図である。
【
図10】第1実施形態に係る音響装置による効果を説明するグラフである。
【
図11】第2実施形態に係る圧電素子の配置を示す平面図である。
【
図12】第2実施形態に係る圧電素子の配置を示す断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る圧電素子の構造をより詳細に示す断面図である。
【
図14】第2実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図15】第2実施形態に係る圧電素子に電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
【
図16】第2実施形態に係る圧電素子への音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。
【
図17】第3実施形態に係る圧電素子の構造をより詳細に示す断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る圧電素子への音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。
【
図19】第4実施形態に係る表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面を通じて共通する機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化することがある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る音響装置1の概略構成図である。本実施形態の音響装置1は、単独でスピーカとして用いられるものであってもよく、他の装置に内蔵されるものであってもよい。例えば、音響装置1は、広告用看板、ポスター、案内板等のサイネージに内蔵されるものであってもよい。この場合、サイネージから案内等の音声を発することができる。また、音響装置1は、表示装置、コンピュータ、テレビジョン受像機等に内蔵されるものであってもよい。しかしながら、本実施形態の音響装置1の用途は、特に限定されるものではない。
【0011】
図1に示されているように、音響装置1は、複数の圧電素子10a、10b、10c、振動部材20及び制御部40を有する。音響装置1は、入力された音声信号等に基づいて音を発する装置である。
【0012】
圧電素子10a、10b、10cは、入力された音声信号に基づく電圧が印加されると、逆圧電効果により変位する素子である。圧電素子10a、10b、10cは、例えば、バイモルフ(Bimorph)、ユニモルフ(Unimorph)等の電圧に応じて屈曲変位する素子であり得る。入力される音声信号は通常は交流電圧であるため、圧電素子10a、10b、10cは、入力された音声信号に応じて振動する振動素子として機能する。
【0013】
振動部材20は、圧電素子10a、10b、10cに入力された共通の音声信号に基づく音を発するように振動する部材である。圧電素子10a、10b、10cの各々は、弾性部材を介して機械的に振動部材20に接続されている。振動部材20の材料は、特定の材料に限定されない。しかしながら、振動部材20の材料は、圧電素子10a、10b、10cから伝わる振動の伝達に適した材料特性を有しているガラス、樹脂、硬質紙、圧縮紙等であることが望ましい。
【0014】
ホストシステム2は、音声信号を供給することにより音響装置1を制御する装置又は複数の装置を含むシステムである。しかしながら、ホストシステム2は、音響装置1の用途に応じて、画像信号(例えばRGBデータ)、タイミング信号(垂直同期信号、水平同期信号、データイネーブル信号等)等の他の信号を更に供給する場合もある。ホストシステム2は、例えば、音源再生装置、構内放送装置、ラジオ放送再生システム、テレビシステム、セットトップボックス、ナビゲーションシステム、光ディスクプレーヤー、コンピュータ、ホームシアターシステム、ビデオ電話システム等であり得る。なお、音響装置1とホストシステム2は一体の装置であってもよく、別の装置であってもよい。
【0015】
制御部40は、圧電素子10a、10b、10cに、共通の音声信号に基づく電圧を供給する。制御部40は複数の半導体集積回路によって構成され得る。より具体的には、制御部40は、プリアンプ、パワーアンプ等の増幅回路を含み得る。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cの配置を示す平面図である。
図3及び
図4は、第1実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cの配置を示す断面図である。
図2乃至
図4を相互に参照しつつ、圧電素子10a、10b、10cの配置を説明する。
図2における振動部材20の矩形の外枠は、振動部材20の外形を模式的に示している。
図2に示されているように、振動部材20は、平板状であり、主面に垂直な方向からの平面視において矩形をなしている。
【0017】
図3に示されているように、振動部材20の面音源に相当する面を音源面20a、音源面20aに対向する面を裏面20bとする。このとき、
図2は、裏面20b側から振動部材20を見た透視平面図として図示されている。
図2には、音源面20aの水平方向をx軸、音源面20aの垂直方向をz軸、音源面20aの奥行方向をy軸とした座標軸が示されている。また、裏面20bから音源面20aに向かう方向をy軸の正方向としている。
図3は、
図2のA-A’線における断面図であり、
図4は、
図2のB-B’線における断面図である。
【0018】
図2乃至
図4に示されているように、振動部材20の裏面20bの外周には、平面視において矩形の枠状をなしているフレーム22の一面が接続されている。フレーム22の振動部材20が接続されている側と反対の面には、バックカバー24が接続されている。振動部材20とバックカバー24は、空隙を介して対向している。これにより、振動部材20、フレーム22及びバックカバー24は、音響装置1の筐体をなしている。圧電素子10a、10b、10cは、この筐体内に配される。
【0019】
バックカバー24は、圧電素子10a、10b、10cの振動により生じた音が筐体の背面方向から外部に漏出しないように、筐体の内部空間を遮蔽する。また、バックカバー24は、圧電素子10a、10b、10cに外部から物体が接触しないようにする保護の機能を有している。振動部材20及びバックカバー24とフレーム22との間は、例えば、不図示の圧着樹脂材料、接着剤、接着テープ等により接続され得る。フレーム22は、例えば、金属、樹脂等の材料で構成され得る。バックカバー24は、例えば、金属、樹脂、ガラス、硬質紙等の材料で構成され得る。しかしながら、フレーム22及びバックカバー24の材料は、特定の材料に限定されない。
【0020】
振動部材20が発音機能に加えてサイネージの機能を兼ねている場合には、サイネージにおける文章、絵、記号等のコンテンツは、振動部材20の音源面20a側から視認可能に配されている。すなわち、音源面20aは、コンテンツ配置面としての機能をも有している。コンテンツは、音源面20aに直接付されていてもよく、印刷等によりコンテンツが付された紙等の媒体が音源面20aに貼付されていてもよい。なお、コンテンツは、振動部材の音源面20a以外の場所に付されていてもよい。例えば、バックカバー24の外側面(振動部材20に向かい合う面とは反対側の面)の面に配されていてもよい。この場合、バックカバー24の外側面は、コンテンツ配置面としての機能をも有し得る。また、コンテンツは、音源面20aとバックカバー24の外側面の両方に付されていてもよく、この場合、音源面20aとバックカバー24の外側面の両方がコンテンツ配置面であり、両側から視認可能なサイネージが実現される。
【0021】
圧電素子10a、10b、10cの各々は、平板状をなしている。
図2に示されているように、圧電素子10a、10b、10cは平面視において、長手方向(図中のx方向)及び短手方向(図中のz方向)を有する矩形をなしている。これにより、電圧印加時の圧電素子10a、10b、10cには、長手方向に沿う断面(A-A’線)から見て屈曲するような変形が生じる。圧電素子10a、10b、10cの長手方向は、振動部材20の端部と垂直になるように配置されている。
【0022】
圧電素子10a、10b、10cの各々は2つの弾性部材30を介して振動部材20の裏面20bに接続されている。すなわち、圧電素子10a、10b、10cの各々は、振動部材20の同一の主面に接続されている。
【0023】
弾性部材30は、弾性を有する材料により構成された部材である。弾性部材30の材料には、典型的には、圧電素子10a、10b、10c及び振動部材20よりも小さい弾性率を有する、ゴム等の材料が用いられる。圧電素子10aの長手方向の両端部と、振動部材20の一部とは、弾性部材30により接続されている。同様に、圧電素子10b、10cの各々の長手方向の両端部と、振動部材20の一部とは、弾性部材30により接続されている。これにより、圧電素子10a、10b、10cの振動が振動部材20に伝達され、振動部材20は、入力された音声信号に基づく音を発する。圧電素子10a、10b、10cの長手方向の両端は、屈曲振動の腹になる部分である。そのため、弾性部材30が圧電素子10a、10b、10cの長手方向の両端の近傍に接続されていることにより、振動が効率よく振動部材20に伝達される。
【0024】
図5は、第1実施形態に係る圧電素子10aの構造をより詳細に示す断面図である。
図5は、
図3とは向きが異なっているが、
図3と同様に
図2におけるA-A’線における断面図を示している。また、
図5では、圧電素子10aの近傍のみを拡大して示しているが、他の圧電素子10b、10cも同様の構造を有している。また、
図5では、圧電素子10aへの音声信号の入力方法を説明するため、圧電素子10aに含まれる各電極の接続関係を回路図により模式的に示している。
【0025】
図5に示されている圧電素子10aは、2層の圧電層が積層されたバイモルフと呼ばれる構造をなしている。圧電素子10aは、電極101、103、105及び圧電層102、104を含む。最も振動部材20に近い側に設けられている電極101は、弾性部材30に接続されている。電極101及び電極103は、圧電層102を厚さ方向に挟むように配されている。電極103及び電極105は、圧電層104厚さ方向に挟むように配されている。圧電層102、104の内部に図示されている矢印は、圧電層102、104の分極方向を示している。すなわち、圧電層102及び圧電層104の分極方向は同一である。なお、電極101、103、105には、ハンダ付けなどにより各電極に電圧を印加するための配線が接続され得るが、
図5においては配線の図示は省略されている。
【0026】
圧電素子10aに印加される電圧は、音声信号に基づくものであるため、生成すべき音声の周波数に応じた交流電圧と考えることができる。
図5では、この交流電圧を交流電源Vの回路記号で示している。交流電源Vの一方の端子は、電極101、105に接続されており、他方の端子は、電極103に接続される。言い換えると、電極101と電極105には同位相の電圧が印加され、電極101と電極103には逆位相の電圧が印加され、電極103と電極105にも逆位相の電圧が印加される。これにより、圧電層102と圧電層104には逆向きの電圧が印加される。
【0027】
圧電層102、104の材料は、特に限定されるものではないが、変位量を大きくすることができるため、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電性が良好な材料であることが望ましい。また、
図5の構成では不図示であるが、圧電素子10aの外周は他の部材とのショートを避けるために樹脂等の絶縁体で覆われていてもよい。
【0028】
図6及び
図7は、第1実施形態に係る圧電素子10aに電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
図5に示されているように圧電層102、104の分極方向は同じ向きであり、圧電層102、104の印加電圧は逆向きである。これにより、圧電層102と圧電層104の伸縮方向は逆になる。
【0029】
図6に示されているように、圧電層102が横方向に収縮するように変形するタイミングでは、圧電層104は、横方向に伸長する方向に変形する。これにより、圧電素子10aの端部は、振動部材20に近づく方向に屈曲する。このとき、振動部材20は、圧電素子10aから離れる方向に向かう応力を受けて変形する。
【0030】
図7に示されているように、圧電層102が横方向に伸張するように変形するタイミングでは、圧電層104は、横方向に収縮する方向に変形する。これにより、圧電素子10aの端部は、振動部材20から離れる方向に屈曲する。このとき、振動部材20は、圧電素子10aの側に向かう応力を受けて変形する。
【0031】
音声信号に基づく交流電圧が圧電素子10aに印加されると、音声の周波数で
図6の状態と
図7の状態が交互に繰り返される。このようにして、圧電素子10aの振動が振動部材20に伝達され、振動部材20が振動する。したがって、振動部材20からは音声信号に基づく音が発せられるため、振動部材20はスピーカの駆動ユニットとして機能する。なお、実際の音声には、可聴帯域の様々な周波数の音が重畳しているため、実際の振動の態様は図示したものよりも複雑なものであり得る。
【0032】
本実施形態においては、複数の圧電素子10a、10b、10cのうちの一部が他の一部と異なる位相で振動するように構成されている。その具体例として、圧電素子10b(第2振動素子)が、圧電素子10a(第1振動素子)及び圧電素子10c(第3振動素子)と逆位相で振動するように音声信号が入力される構成について、
図8を参照して説明する。
【0033】
図8は、第1実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cへの音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。制御部40は、音声信号に基づく交流電圧を信号源の端子t1(第1端子)及び端子t2(第2端子)から出力するものとする。端子t1と端子t2の出力電位は互いに逆位相である。端子t1は、圧電素子10aの電極101、105(第1電極)、圧電素子10bの電極103(第2電極)及び圧電素子10cの電極101、105に接続されている。端子t2は、圧電素子10aの電極103(第2電極)、圧電素子10bの電極101、105(第1電極)及び圧電素子10cの電極103に接続されている。
【0034】
この接続関係により、圧電素子10aの電極間に印加される電圧と、圧電素子10bの電極間に印加される電圧の位相は互いに逆位相になっている。また、圧電素子10aの電極間に印加される電圧と、圧電素子10cの電極間に印加される電圧の位相は互いに同位相になっている。これにより、例えば、圧電素子10a、10cが
図6のような状態に変位しているとき、圧電素子10bは、
図7のような状態で変位し、圧電素子10a、10cが
図7のような状態に変位しているとき、圧電素子10bは、
図6のような状態で変位する。このように、圧電素子10a、10cと、圧電素子10bは、互いに逆位相の振動を振動部材20に伝達する。
【0035】
このように圧電素子10a、10cと圧電素子10bとを互いに逆位相で振動させることの効果について、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。
図9は、第1実施形態に係る音響装置1による効果を説明する模式図である。一般的に、振動板を振動させることにより音を発するスピーカにおいては、振動板の固有振動数と周波数に応じた振動板の振動状態が音圧レベルの周波数特性に大きな影響を与える。特に、高次の固有振動モード等に起因して、振動板が細かく波打つような振動姿態の分割振動が生じると、音圧レベルの低下、周波数特性におけるピーク及びディップの発生等の音質劣化が生じ得る。
【0036】
本実施形態のような矩形平板状の振動部材20においては、縦方向と横方向の共振が2次元的に結合した固有振動モードが生じるため、厳密には2次元又は3次元のモデルによる検討を行う必要がある。しかしながら、モデルの単純化のため、ここでは1次元のモデルで説明する。
図9においては、振動部材20の長手方向(x方向)の1次元のみを考慮したモデルにおける振動姿態が、1次(n=1)から5次(n=5)までの5つの固有振動モードについて図示されている。これらの固有振動モードの各々の固有周波数は、高次のものほど高い。なお、この固有振動モードは、
図2から
図4に示されているように、振動部材20の端部がフレーム22によって支持されている境界条件を前提としたものである。
【0037】
図9に示されているように、固有振動モードの次数に応じて振動の節と腹の位置が変化するとともに、変位の位相の位置依存性も変化する。例えば、1次の固有振動モードでは、振動部材20の全体にわたって位相の符号が同一であるのに対し、2次の固有振動モードでは、振動部材20の中心を境にして位相の符号が逆になっている。
【0038】
ここで、3次の固有振動モードにおいては、振動部材20の両端付近においては位相が同符号であり、振動部材20の中心付近においては両端付近と位相の符号が逆である。この位相の関係は、
図8の説明で述べたような圧電素子10a、10cと圧電素子10bとの振動が逆位相であるという位相の関係と一致している。また、
図9に示されているように、圧電素子10a、10b、10cの各々の位置が3次の固有振動モードの腹の位置と対応している。したがって、本実施形態における各圧電素子の位相の関係は、他の固有振動モードと比較して3次の固有振動モードを強く励起しやすいものとなっている。一方、2次及び4次以上の固有振動モードは、位相の関係が圧電素子10a、10b、10cと一致していないことから、励起されにくい。
【0039】
このように、本実施形態のように、複数の圧電素子の一部を逆位相で振動させることにより、比較的低い次数の固有振動モードを励起しやすくしつつ、より高次の固有振動モードが励起されにくくなるように制御される。そのため、高次の固有振動モード等に起因して振動板が細かく波打つような分割振動が生じにくくなる。したがって、本実施形態によれば、このような分割振動に起因する音質劣化が軽減され得る。
【0040】
図10は、第1実施形態に係る音響装置1による効果を説明するグラフである。
図10は、本実施形態の構成と、2つの比較例(第1比較例及び第2比較例)の音圧レベルの周波数特性を示している。
図10の縦軸は、所定の電圧を音響装置1に印加したときに、音響装置1から発せられる音圧を任意単位により示したものである。
図10の横軸は、圧電素子に印加される電圧の周波数を示したものである。ここで、周波数の単位はヘルツ(Hz)である。なお、
図10は、両対数グラフである。
【0041】
第1比較例は、圧電素子10bに電圧を印加しないことにより、圧電素子10a、10cのみを同位相で振動させ、圧電素子10bを振動させないようにした例である。第2比較例は、圧電素子10a、10b、10cをいずれも同位相で振動させるように、3つの圧電素子に同位相の電圧を印加した例である。
【0042】
まず、
図10において、第1実施形態の特性と第1比較例の特性とを比較すると、第1実施形態の方が100Hzから500Hz付近及び600Hzから1500Hz付近の低音域から中音域にわたる帯域において顕著に音圧が向上していることがわかる。したがって、逆位相で振動する圧電素子10bを追加することにより、音圧を向上させる効果が得られていることがわかる。
【0043】
また、第1実施形態の特性と第2比較例の特性とを比較すると、同じく低音域から中音域にわたる帯域において、第1実施形態の特性の方が高い音圧が得られることがわかる。したがって、圧電素子10bの位相は、圧電素子10a、10cと同位相ではなく逆位相であることが望ましいことがわかる。以上のように、
図10のグラフによれば、第1実施形態に係る音響装置1は、圧電素子10a、10cと逆位相で振動する圧電素子10bを設けたことにより、低音域から中音域にわたる帯域において音圧を向上させる効果が得られることがわかる。このように、本実施形態によれば、可聴帯域における音圧の周波数特性がフラットに近づき、音質が向上された音響装置1が提供される。
【0044】
なお、第2比較例の低音域から中音域における音圧は、第1比較例のそれよりも低い。すなわち、圧電素子10a、10cに対し同位相で振動する圧電素子10bを追加すると、動作する圧電素子の個数が増加したにもかかわらず音圧が低下する。このように第1比較例と第2比較例のグラフを対比することにより、位相の関係を考慮することなく単に同位相の圧電素子10bを設けて圧電素子の個数を増加させるという手法では音質が向上しない場合、あるいは劣化する場合があることがわかる。そして、第1実施形態と第2比較例のグラフを対比することにより、圧電素子10bと圧電素子10a、10cとの位相の関係を適切に設定して固有振動モードを制御することが音圧向上に寄与する重要な要素であることが理解される。本実施形態においては、これらの知見を踏まえて圧電素子10a、10b、10cの位相の関係を設定することで、音響装置1の音質向上が実現されている。
【0045】
[第2実施形態]
本実施形態では、第1実施形態に係る音響装置1の変形例を説明する。第1実施形態と共通する要素については説明を省略又は簡略化することがある。
【0046】
図11は、第2実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cの配置を示す平面図である。
図12は、第2実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cの配置を示す断面図である。
図11及び
図12を相互に参照しつつ、圧電素子10a、10b、10cの配置を説明する。
図12は、
図11のA-A’線における断面図である。
図11のB-B’線における断面図は、
図4と同様であるため図示及び説明を省略する。
【0047】
図11及び
図12に示されているように、圧電素子10aと圧電素子10cの各々は、第1実施形態と同様の構造により、圧電素子の長手方向の両端部(第1接続部)において弾性部材30を介して振動部材20に接続されている。これに対し、圧電素子10bは、圧電素子10bの中心付近(第2接続部)において、弾性部材30を介して振動部材20に接続されている。この点が、本実施形態と第1実施形態との相違点である。圧電素子10bの中心付近も、屈曲振動の腹になる部分である。そのため、弾性部材30が圧電素子10bの中心付近に接続されていることにより、振動が効率よく振動部材20に伝達される。
【0048】
図13は、第2実施形態に係る圧電素子10bの構造をより詳細に示す断面図である。
図13は、
図12とは向きが異なっているが、
図12と同様に
図11におけるA-A’線における断面図を示している。また、
図13では、圧電素子10bの近傍のみを拡大して示している。なお、他の圧電素子10a、10cは、第1実施形態の
図5と同様の構造を有している。また、
図13では、圧電素子10bへの音声信号の入力方法を説明するため、圧電素子10bに含まれる各電極の接続関係を回路図により模式的に示している。
図13において、圧電素子10bと振動部材20とを接続する弾性部材30の配置以外の構造、電圧の印加方向等は、
図5に示すものと同様であるため、説明を省略する。
【0049】
図14及び
図15は、第2実施形態に係る圧電素子10bに電圧が印加されたときの変形を示す模式図である。
図5に示されているように圧電層102、104の分極方向は同じ向きであり、圧電層102、104の印加電圧は逆向きである。これにより、圧電層102と圧電層104の伸縮方向は逆になる。
【0050】
図14に示されているように、圧電層102が横方向に収縮するように変形するタイミングでは、圧電層104は、横方向に伸長する方向に変形する。これにより、圧電素子10bの端部は、振動部材20に近づく方向に屈曲する。このとき、振動部材20は、圧電素子10bの側に向かう応力を受けて変形する。
【0051】
図15に示されているように、圧電層102が横方向に伸張するように変形するタイミングでは、圧電層104は、横方向に収縮する方向に変形する。これにより、圧電素子10bの端部は、振動部材20から離れる方向に屈曲する。このとき、振動部材20は、圧電素子10bから離れる方向に向かう応力を受けて変形する。
【0052】
図14の圧電素子10bの両端に弾性部材30が配されている構造と、
図6の圧電素子10a中心付近に弾性部材30が配されている構造とを比較する。このとき、
図6と
図14では、圧電素子10a、10bの変位は、端部が振動部材20に近づく方向に屈曲している点で同一である。一方、振動部材20に着目すると、
図6の振動部材20は圧電素子10aから離れる方向に向かう応力を受けて変形しているのに対し、
図14の振動部材20は圧電素子10bの側に向かう応力を受けて変形している。すなわち、
図6の圧電素子10aと
図14の圧電素子10bの変位は同位相であるのに対し、
図6の振動部材20と
図14の振動部材20の変位は逆位相になっている。
【0053】
また、
図7と
図15を比較した場合も上述と同様の位相の関係となっている。すなわち、
図7の圧電素子10aと
図15の圧電素子10bの変位は同位相であるのに対し、
図7の振動部材20と
図15の振動部材20の変位は逆位相になっている。
【0054】
図16は、第2実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cへの音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。制御部40は、音声信号に基づく交流電圧を端子t1及び端子t2から出力するものとする。端子t1は、圧電素子10a、10b、10cの各々の電極101、105に接続されている。端子t2は、圧電素子10a、10b、10cの各々の電極103に接続されている。
【0055】
この接続関係により、圧電素子10a、10b、10cの電極間に印加される電圧の位相はいずれも同位相になっている。このとき、上述のように、圧電素子10a、10cが振動部材20に与える応力と、圧電素子10bが振動部材20に与える応力とは逆位相である。すなわち、圧電素子10a、10cと、圧電素子10bは、互いに逆位相の振動を振動部材20に伝達する。
【0056】
このように、本実施形態においては、音響装置1の構成が第1実施形態と異なっており、印加される電圧の位相も異なっているものの、圧電素子10a、10b、10cが振動部材20に与える振動の位相の関係は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
[第3実施形態]
本実施形態では、第1実施形態に係る音響装置1の変形例を説明する。第1実施形態と共通する要素については説明を省略又は簡略化することがある。
【0058】
図17は、第3実施形態に係る圧電素子10bの構造をより詳細に示す断面図である。
図17は、
図5と同様に
図2におけるA-A’線における断面図を示している。また、
図17では、圧電素子10bの近傍のみを拡大して示している。なお、他の圧電素子10a、10cは、第1実施形態の
図5と同様の構造を有している。また、
図17では、圧電素子10bへの音声信号の入力方法を説明するため、圧電素子10bに含まれる各電極の接続関係を回路図により模式的に示している。圧電層102、104の内部の矢印は、圧電層102、104の分極方向を示している。本実施形態では、
図5に示されている圧電素子10a、10cにおいては、分極方向が上向き(y軸の負方向)であるのに対し、
図17に示されている圧電素子10bにおいては、分極方向が下向き(y軸の正方向)である。すなわち、圧電素子10bは、圧電素子10a、10cに対して分極方向が逆向きである。なお、
図17において、圧電素子10bの分極方向以外に関しては、
図5に示すものと同様であるため、説明を省略する。
【0059】
図18は、第3実施形態に係る圧電素子10a、10b、10cへの音声信号の入力方法をより詳細に示す模式図である。制御部40は、音声信号に基づく交流電圧を端子t1及び端子t2から出力するものとする。端子t1は、圧電素子10a、10b、10cの各々の電極101、105に接続されている。端子t2は、圧電素子10a、10b、10cの各々の電極103に接続されている。
【0060】
この接続関係により、圧電素子10a、10b、10cの電極間に印加される電圧の位相はいずれも同位相になっている。圧電素子に生じる変位の向きは、電圧の印加方向と分極方向によって決まる。2つの同構造の圧電素子において、電圧の印加方向が同一で、かつ圧電体の分極方向が逆である場合、電圧により生じる力の向きが逆になるため、圧電素子に生じる変位の向きも逆向きとなる。したがって、
図18の構成において、圧電素子10a、10cが振動部材20に与える応力と、圧電素子10bが振動部材20に与える応力とは逆位相である。すなわち、圧電素子10a、10cと、圧電素子10bは、互いに逆位相の振動を振動部材20に伝達する。
【0061】
このように、本実施形態においては、音響装置1の構成が第1実施形態と異なっており、印加される電圧の位相も異なっているものの、圧電素子10a、10b、10cが振動部材20に与える振動の位相の関係は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
[第4実施形態]
本実施形態では、第1乃至第3実施形態に係る音響装置1が表示装置であり、振動部材20が表示装置の表示パネルの機能を兼ねている場合の具体的な構成例を説明する。第1乃至第3実施形態と共通する要素については説明を省略又は簡略化することがある。
【0063】
図19は、第4実施形態に係る表示装置3の概略構成図である。本実施形態の表示装置3の用途は、例えば、電子ポスター、デジタル掲示板、電子広告板、コンピュータのスクリーン、テレビジョン受像機等であり得る。ホストシステム2、圧電素子10a、10b、10c、制御部40の構造は第1乃至第3実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0064】
図19に示されているように、表示装置3は、圧電素子10a、10b、10c、制御部40、パネル制御部60、データ駆動回路70、ゲート駆動回路80及び表示パネル90を有する。表示装置3は、入力されたRGBデータ等に基づいて表示パネル90に画像を表示し、入力された音声信号等に基づいて音声を発する装置である。
【0065】
パネル制御部60は、ホストシステム2から入力された画像データ及びタイミング信号に基づいてデータ駆動回路70及びゲート駆動回路80を制御する。データ駆動回路70は、複数の画素Pの列ごとに配された駆動線71を介して複数の画素Pにデータ電圧等を供給する。ゲート駆動回路80は、複数の画素Pの行ごとに配された駆動線81を介して複数の画素Pに制御信号を供給する。なお、駆動線71及び駆動線81の各々は、複数の配線により構成されていてもよい。
【0066】
表示パネル90は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素Pを含む。表示装置3は、例えば、画素Pの発光素子として有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode;OLED)が配された表示パネル90を用いたOLEDディスプレイであり得る。あるいは、表示装置3は、液晶材料、偏光板等を備える液晶パネルを表示パネル90として用いた液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)であってもよい。これらの構造によれば、表示パネル90を薄くすることができるため、表示装置3の薄型化に好適である。表示装置3がカラー画像を表示可能である場合には、画素Pは、カラー画像を構成する複数の色(例えばRGB)のいずれかを表示する副画素であり得る。
【0067】
制御部40、パネル制御部60、データ駆動回路70及びゲート駆動回路80の各々は、1又は複数の半導体集積回路によって構成され得る。また、制御部40、パネル制御部60、データ駆動回路70及びゲート駆動回路80のうちの一部又は全部は、1つの半導体集積回路として一体に構成されていてもよい。
【0068】
本実施形態の表示装置3は、ホストシステム2から画像信号(例えばRGBデータ)、音声信号及びタイミング信号(垂直同期信号、水平同期信号、データイネーブル信号等)が供給されることにより、画像を表示し、かつ音を発する。表示パネル90は、画像の表示を行う画像表示面と、画像表示面と対向する裏面を有する。表示パネル90の裏面には、弾性部材30を介して圧電素子10a、10b、10cが接続されている。これにより表示パネル90は、画像表示の機能と、第1乃至第3実施形態における振動部材20の機能とを有する。そのため、本実施形態では、表示パネル90から表示された画像から音が発せられるような音響効果を有する表示装置3を提供することができる。
【0069】
[その他の実施形態]
上述の実施形態は、本発明を適用しうるいくつかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲は、上述の実施形態によって限定的に解釈されてならない。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行って様々な態様で実施可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。以下、上述の実施形態に適用されうる変形例を列挙する。
【0070】
上述の実施形態において、圧電素子10a、10b、10cの構造例として、2層の圧電層102、104が積層されているバイモルフを例示したが、これに限られるものではない。例えば、圧電素子10a、10b、10cは、1層の圧電層と圧電層を挟む2層の電極を含むユニモルフであってもよい。この場合、バイモルフと比べて素子構造が単純化される利点がある。また、圧電素子10a、10b、10cは、3層以上の複数層の圧電層と、各圧電層を挟む4層以上の電極を含むマルチモルフであってもよい。この場合、ユニモルフ及びバイモルフと比べて、同じ印加電圧に対する変位が大きくなり、音圧が向上する。
【0071】
また、圧電素子10a、10b、10cの構造は、ユニモルフ、バイモルフ又はマルチモルフを複数個積層したものであってもよい。この構造では、複数個の素子で生じる変位が重畳されるため、音圧が向上する。
【0072】
上述の実施形態において、圧電素子10a、10b、10cの平面形状は、屈曲変位をさせやすくする観点から縦横の比率が異なる矩形である例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、圧電素子10a、10b、10cの平面形状は、円形、正多角形等の対称性を有する形状であってもよい。この場合、振動の分布が2次元的に均一になりやすくなり、振動部材20での共振を生じにくくする効果が得られる。また、圧電素子10a、10b、10cの平面形状は、辺の長さが均一でない多角形であってもよく、曲線を含む図形であってもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、3個の圧電素子10a、10b、10cが設けられている例を示しているが、互いに異なる位相の振動を前記振動部材に伝達することが可能であればその個数は適宜変更可能である。例えば、圧電素子10a、10bの2個のみであってもよく、4個以上であってもよい。4個以上である場合には、対応する次数の固有振動モードを効果的に励振するため、圧電素子10aと同様の構成を有する圧電素子と、圧電素子10bと同様の構成を有する圧電素子とが交互に設けられていることが望ましい。
【0074】
また、上述の実施形態では、圧電素子10a、10cと圧電素子10bとの間の変位は逆位相であるが、位相差が厳密に逆位相(すなわち、位相差が180°)であることは必須ではない。圧電素子10a、10cと圧電素子10bの位相差が180°から多少ずれていてもよく、その場合であっても音質向上の効果が得られる。
【0075】
また、上述の実施形態では、振動部材20を振動させる振動素子の例として、圧電素子10a、10b、10cを挙げているが、音声振動に応じた振動を振動部材20に伝達可能なものであれば振動素子の駆動方式は圧電型に限定されない。例えば、圧電素子10a、10b、10cに代えて、ダイナミック型、静電型等の他の方式の振動素子を用いてもよい。しかしながら、圧電素子は、他の方式の振動素子と比べて薄くすることが可能であるため、サイネージ、表示装置等の薄型化が求められる用途においてより好適である。
【符号の説明】
【0076】
1 音響装置
10a、10b、10c 圧電素子
20 振動部材
30 弾性部材
40 制御部