(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】有機重合体の製造方法、並びに、有機重合体、硬化性組成物、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/336 20060101AFI20250313BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20250313BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20250313BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
C08G65/336
C08L71/02
C08L83/12
C08K5/3465
(21)【出願番号】P 2021035118
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 美伸
(72)【発明者】
【氏名】若林 克勇
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-158711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189491(WO,A1)
【文献】特開2002-080585(JP,A)
【文献】特開平08-143660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/336
C08K 5/3465
C08L 71/02
C08L 83/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有有機重合体と、下記式(1)で表される化合物を反応させる工程を含む、下記式(2)で表される構造を有する有機重合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(各式中、R
1、R
2、及びR
3のうちいずれか1つの基が、式:-SiR
aY
3-aで表される加水分解性シリル基を表し、残り2つの基が、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。nは、1~5の整数を表す。Rは、炭素数1~20の置換又は無置換の炭化水素基を表す。Yは、水酸基又は加水分解性基を表す。aは、0、1又は2である。)
【請求項2】
前記反応の前に、式(1)で表される化合物を精製して、前記式(1)で表される化合物全体のうちR
1が前記加水分解性シリル基を表す化合物の占める割合を高める工程を更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記式(2):
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3のうちいずれか1つの基が、式:-SiR
aY
3-aで表される加水分解性シリル基を表し、残り2つの基が、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。nは、1~5の整数を表す。Rは、炭素数1~20の置換又は無置換の炭化水素基を表す。Yは、水酸基又は加水分解性基を表す。aは、0、1又は2である。)
で表される構造を有する有機重合体であって、
R
1、R
2、及びR
3によって表される加水分解性シリル基全体のうち、R
1によって表される加水分解性シリル基の占める割合が、55モル%以上100モル%以下である、有機重合体。
【請求項4】
前記有機重合体の重合体骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体である、請求項3に記載の有機重合体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の有機重合体を含有する硬化性組成物。
【請求項6】
シラノール縮合触媒を更に含有する、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性シリル基を有する有機重合体の製造方法、並びに、加水分解性シリル基を有する有機重合体、該重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素原子上に水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成し得るケイ素含有基(以下、「加水分解性シリル基」という)を有する有機重合体は、湿分反応性ポリマーとして知られており、接着剤、シーリング材、コーティング材、塗料、粘着剤などの多くの工業製品に含まれ、幅広い分野で利用されている。このような加水分解性シリル基含有有機重合体としては、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体などの各種重合体が知られている。
【0003】
加水分解性シリル基含有有機重合体の製造方法として、例えば、エポキシ化合物を開環重合して末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体を合成した後、前記水酸基を炭素-炭素二重結合に変換し、該炭素-炭素二重結合とシラン化合物とのヒドロシリル化反応を行うことにより加水分解性シリル基を重合体に導入する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、当該方法によって得られた加水分解性シリル基含有重合体は、硬化性が必ずしも十分ではなく、これを改善することが求められている。
【0004】
特許文献2では、ポリオキシアルキレン系重合体が有する水酸基を炭素-炭素三重結合に変換した後、該炭素-炭素三重結合にシラン化合物をヒドロシリル化反応させることによって加水分解性シリル基を重合体に導入する方法が記載されており、得られた重合体は、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有しており、速硬化性を示すと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭52-73998号公報
【文献】国際公開第2019/189491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された製造方法によると、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有し速硬化性を示す重合体を製造できるものの、その硬化性は未だ十分なものではなく、改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する有機重合体であって、硬化性が改善された有機重合体の新規製造方法、並びに、該製造方法によって取得可能な重合体、該重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特許文献2に記載されているような炭素-炭素三重結合に対するヒドロシリル化反応ではなく、イソシアネート化合物を利用したウレタン化反応を利用することによって、加水分解性シリル基と、該シリル基中のケイ素原子に隣接する炭素-炭素二重結合とを有する重合体を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、水酸基含有有機重合体と、下記式(1)で表される化合物を反応させる工程を含む、下記式(2)で表される構造を有する有機重合体の製造方法に関する。
【化1】
【化2】
(各式中、R
1、R
2、及びR
3のうちいずれか1つの基が、式:-SiR
aY
3-aで表される加水分解性シリル基を表し、残り2つの基が、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。nは、1~5の整数を表す。Rは、炭素数1~20の置換又は無置換の炭化水素基を表す。Yは、水酸基又は加水分解性基を表す。aは、0、1又は2である。)
好ましくは、前記反応の前に、式(1)で表される化合物を精製して、前記式(1)で表される化合物全体のうちR
1が前記加水分解性シリル基を表す化合物の占める割合を高める工程を更に含む。
また本発明は、下記式(2):
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3のうちいずれか1つの基が、式:-SiR
aY
3-aで表される加水分解性シリル基を表し、残り2つの基が、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。nは、1~5の整数を表す。Rは、炭素数1~20の置換又は無置換の炭化水素基を表す。Yは、水酸基又は加水分解性基を表す。aは、0、1又は2である。)
で表される構造を有する有機重合体であって、R
1、R
2、及びR
3によって表される加水分解性シリル基全体のうち、R
1によって表される加水分解性シリル基の占める割合が、55モル%以上100モル%以下である、有機重合体にも関する。
好ましくは、前記有機重合体の重合体骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体である。
さらに本発明は、前記有機重合体を含有する硬化性組成物、又は、該硬化性組成物を硬化させた硬化物にも関する。好ましくは、前記硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を更に含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する有機重合体であって、硬化性が改善された有機重合体の新規製造方法、並びに、該製造方法によって取得可能な重合体、該重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物を提供することができる。
本発明の好適な態様によると、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する有機重合体として、加水分解性シリル基全体のうちR1によって表される加水分解性シリル基の占める割合が高い有機重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係る製造方法によると、水酸基を有する有機重合体に対し、イソシアネート基、炭素-炭素二重結合、及び、該二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する化合物(式(1)で表される化合物)を反応させて、ウレタン結合を形成させることで、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する有機重合体(式(2)で表される構造を有する有機重合体)を製造する。
【0012】
(水酸基含有有機重合体)
出発物質である有機重合体は、水酸基を有する重合体である。前記有機重合体は、複数の繰り返し単位から構成される重合体骨格を有するものである。前記有機重合体の重合体骨格は、直鎖状のものであってもよいし、分岐鎖状のものであってもよい。水酸基が重合体骨格に結合する位置は特に限定されないが、重合体骨格の末端であることが好ましい。
【0013】
前記有機重合体の重合体骨格には特に制限はなく、各種の重合体骨格を使用することができる。重合体骨格の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などのポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンなどとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレンなどとの共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよびスチレンなどとの共重合体、ならびにこれらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体などの飽和炭化水素系重合体;ポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ならびに(メタ)アクリル酸系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、およびスチレンなどのモノマーをラジカル重合して得られる重合体などのビニル系重合体;前述の重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;などの有機重合体が挙げられる。上記各重合体はブロック状、グラフト状などに混在していてもよい。これらの中でも、飽和炭化水素系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、比較的ガラス転移温度が低いことと、得られる硬化物が耐寒性に優れることとから好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体がより好ましく、ポリオキシプロピレンが特に好ましい。
【0014】
前記有機重合体は、1種類の重合体骨格を有する重合体であってもよいし、異なる重合体骨格を有する2種類以上の重合体の混合物でもよい。また、混合物については、それぞれ別々に製造された重合体の混合物でもよいし、任意の混合組成になるように同時に製造された混合物でもよい。
【0015】
前記有機重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、GPCにおけるポリスチレン換算分子量において好ましくは3,000~100,000であり、より好ましくは3,000~50,000であり、さらに好ましくは3,000~30,000である。数平均分子量が3,000以上であると、重合体全体に対する加水分解性シリル基の相対量が適切な範囲にあり、製造コストの点で望ましい。また、数平均分子量が100,000以下であると、作業性の点から望ましい粘度を達成しやすい。当該数平均分子量はGPC測定によってポリスチレン換算で求めることができる。
【0016】
前記有機重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、狭いことが好ましい。具体的には2.0未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましい。また、硬化物の耐久性や伸びなどの機械的特性を向上させる観点から、1.2以下が好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定によってポリスチレン換算で求められる数平均分子量と重量平均分子量から算出することができる。
【0017】
次に、水酸基を有する有機重合体を製造する方法について説明する。
(ポリオキシアルキレン系重合体)
前記水酸基含有有機重合体の重合体骨格がポリオキシアルキレン系重合体である場合、当該重合体は、従来公知の方法によって、水酸基を有する開始剤にエポキシ化合物を重合させることで製造できる。これによって水酸基末端ポリオキシアルキレン系重合体が得られる。具体的な重合方法としては特に限定されないが、分子量分布(Mw/Mn)の小さい重合体が得られることから、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体等の複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合方法が好ましい。
【0018】
水酸基を有する開始剤としては特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、低分子量のポリオキシプロピレングリコール、低分子量のポリオキシプロピレントリオール、アリルアルコール、低分子量のポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、低分子量のポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、等の、水酸基を1個以上有する有機化合物が挙げられる。
【0019】
前記エポキシ化合物としては特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等が挙げられる。好ましくはプロピレンオキサイドである。
【0020】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体)
前記水酸基含有有機重合体の重合体骨格が(メタ)アクリル酸エステル系重合体である場合、前記水酸基含有有機重合体の製造方法としては、(I)重合性不飽和基と水酸基を有する化合物(例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル)を、(メタ)アクリル構造を有するモノマーと共に共重合して重合体を得る方法、(II)原子移動ラジカル重合などのリビングラジカル重合法によって(メタ)アクリル構造を有するモノマーを重合して重合体を得た後、得られた重合体中のいずれかの位置(好ましくは分子鎖末端)に水酸基を導入する方法などが挙げられる。
【0021】
(飽和炭化水素系重合体)
前記水酸基含有有機重合体の重合体骨格が飽和炭化水素系重合体である場合には、前記水酸基含有有機重合体の製造方法としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、およびイソブチレンなどの炭素原子数2~6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させて重合体を得た後、得られた重合体のいずれかの位置(好ましくは分子鎖末端)に水酸基を導入する方法などが挙げられる。
【0022】
(式(1)で表されるシラン化合物)
前記水酸基含有有機重合体に反応させる化合物は、下記式(1)で表される化合物であり、イソシアネート基、炭素-炭素二重結合、及び、該二重結合を形成する炭素原子に直接結合した加水分解性シリル基を有する化合物(以下、略してシラン化合物ともいう)である。
【化1】
【0023】
式中、R1、R2、及びR3のうちいずれか1つの基が、式:-SiRaY3-aで表される加水分解性シリル基を表し、残り2つの基が、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。nは、1~5の整数を表す。
【0024】
前記シラン化合物は、R1が前記加水分解性シリル基を表す化合物、R2が前記加水分解性シリル基を表す化合物、及び、R3が前記加水分解性シリル基を表す化合物のいずれであってもよいし、また、R1が前記加水分解性シリル基を表す化合物、R2が前記加水分解性シリル基を表す化合物、及び、R3が前記加水分解性シリル基を表す化合物の混合物であってもよい。
【0025】
製造される加水分解性シリル基含有有機重合体の硬化性の観点から、前記シラン化合物全体のうち、R1が前記加水分解性シリル基を表す化合物の占める割合は55モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上100モル%以下がより好ましく、80モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下が特に好ましい。特に、前記シラン化合物は、R1が前記加水分解性シリル基を表す化合物のみであることが最も好ましい。
【0026】
前記加水分解性シリル基を表す式:-SiRaY3-aにおいて、Rは、炭素数1~20の置換又は非置換の炭化水素基を表す。前記炭素数は1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3がより更に好ましく、1又は2が特に好ましい。前記炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基としては特に限定されないが、例えば、クロロ基等のハロゲン基、メトキシ基等のアルコキシ基、N,N-ジエチルアミノ基等のアミノ基が挙げられる。
【0027】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等の無置換のアルキル基;クロロメチル基、メトキシメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基等の置換アルキル基;ビニル基、イソプロペニル基、アリル基などの不飽和炭化水素基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トルイル基、1-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。好ましくは置換又は無置換のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基であり、さらに好ましくは、メチル基、メトキシメチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。R1としては、一種類の基のみを使用してよいし、二種類以上の基を併用してもよい。
【0028】
Yは水酸基又は加水分解性基を表す。Yとしては、例えば、水酸基、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。前記のアルコキシ基等は、置換基を有していてもよい。加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が特に好ましい。Yとしては、一種類の基のみを使用してよいし、二種類以上の基を併用してもよい。
【0029】
前記式中のaは、0、1、又は2を表す。好ましくは0又は1である。
【0030】
前記式(1)中、R1、R2、及びR3のうち2つの基は、加水分解性シリル基ではない基であって、水素原子、又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。当該2つの基は同一でもよいし、異なっていてもよい。前記炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6~20の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数7~20の置換若しくは無置換のアラルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。アリール基の炭素数は、6~12が好ましく、6~10がより好ましい。アラルキル基の炭素数は、7~12が好ましい。
【0031】
前記式(1)中、加水分解性シリル基ではない2つの基としては、具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基が挙げられる。これらの中では、水素原子、およびメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0032】
前記式(1)中、nは、1~5の整数を表す。1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1が最も好ましい。
【0033】
前記シラン化合物の具体例としては、例えば、3-イソシアナト-1-(トリメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(トリメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(トリエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(トリエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(トリス(2-プロペニルオキシ))-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(トリス(2-プロペニルオキシ))-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(トリアセトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(トリアセトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(メチルジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(メチルジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(メチルジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(メチルジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(ジメトキシエチルシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(ジメトキシエチルシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-(ジエトキシエチルシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-(ジエトキシエチルシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((クロロメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((クロロメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((クロロメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((クロロメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((メトキシメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((メトキシメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((メトキシメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((メトキシメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-1-((N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン、3-イソシアナト-2-((N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル)-1-プロペン等が挙げられる。シラン化合物は1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記シラン化合物の使用量は、前記水酸基含有有機重合体が有する水酸基の量と、目的とする加水分解性シリル基の導入量を考慮して適宜決定することができ、特に限定されないが、例えば、前記水酸基含有有機重合体が有する水酸基に対して0.1~10モル倍であることが好ましく、0.3~5モル倍がより好ましく、0.5~3モル倍がさらに好ましい。
【0035】
前記シラン化合物は例えば次のようにして合成することができる。まず、プロパルギルクロライドなどの炭素-炭素三重結合含有ハロゲン化炭化水素に対し、トリメトキシシランなどの加水分解性シリル基含有シラン化合物をヒドロシリル化反応によって付加させる。得られた生成物に、アルコール化合物の存在下、シアン酸アルカリ金属塩を反応させて、ハロゲン基をカルバメート基に変換する。得られたカルバメート基をイソシアネート基に変換(イソシアネート化)することで、前記式(1)で表されるシラン化合物を得ることができる。
【0036】
前記式(1)で表されるシラン化合物は、次に説明するウレタン化反応に供する前に、精製を行って、前記シラン化合物のうち、R1が前記加水分解性シリル基を表す化合物の占める割合を高めることが好ましい。このような精製工程は、従来公知の手法、例えば蒸留や再結晶などを利用して実施できる。
【0037】
(ウレタン化反応)
前記水酸基含有有機重合体に対し、式(1)で表される化合物が有するイソシアネート基を反応させて、ウレタン化反応によってウレタン結合を形成させることで、目的の加水分解性シリル基を有する有機重合体を製造することができる。
【0038】
前記ウレタン化反応は、ウレタン化触媒を使用せずに実施してもよいが、反応速度を向上させたり反応率を向上させる目的で、ウレタン化触媒の存在下で実施してもよい。このようなウレタン化触媒としては、例えば、Polyurethanes: Chemistry and Technology,Part I,Table 30,Chapter 4,Saunders and Frisch,Interscience Publishers,New York,1963に列挙されている触媒など、従来公知のウレタン化触媒を使用できる。具体的には、有機錫化合物、ビスマス化合物、有機アミン等の塩基触媒等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ウレタン化触媒としては、活性が高いことから、有機錫化合物が好ましい。具体的には、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジオレイルマレート、ジブチルスズジブチルマレート、ジブチルスズジラウレート、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニルジスタノキサン、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズビス(o-フェニルフェノキサイド)、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビス(トリエトキシシリケート)、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビス(イソノニル-3-メルカプトプロピオネート)、ジブチルスズビス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズオキサイド、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジバーサテート等が挙げられる。さらに、加水分解性シリル基に対して活性の低いウレタン化触媒が好ましく、この観点から、硫黄原子を含有する有機錫化合物が好ましく、なかでも、ジブチルスズビス(イソノニル-3-メルカプトプロピオネート)、ジブチルスズビス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)が特に好ましい。
【0040】
ウレタン化触媒の添加量は当業者が適宜設定できるが、反応活性の点から、前記水酸基含有有機重合体100重量部に対して1~1000ppmが好ましく、10~100ppmがより好ましい。この範囲では、十分な反応活性が得られることに加えて、製造される加水分解性シリル基含有有機重合体の物性を良好に保持することができる。
【0041】
前記ウレタン化反応は、溶媒を使用せずに実施することができるが、水酸基含有有機重合体、シラン化合物、及び、ウレタン化触媒を均一に溶解させる目的で、また、反応系の温度制御や、ウレタン化触媒の添加を容易に実現するため、有機溶媒を添加して実施してもよい。
【0042】
有機溶媒を使用する場合、その種類としては特に限定されず、適宜選択すればよいが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素や、ジクロロエタン、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン化炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素や、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)等のエーテル溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
ウレタン化反応の温度は、当業者が適宜設定できるが、50℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がより好ましい。反応時間も適宜設定すればよいが、意図しない重合体間の縮合反応が進行しないように、温度条件とともに反応時間を調整することが好ましい。具体的には、反応時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上3時間以下がより好ましい。
【0044】
(加水分解性シリル基含有有機重合体)
以上で詳述した製造方法によって、加水分解性シリル基を有する有機重合体として、式(2)で表される構造を有する重合体を製造することができる。
【化2】
式(2)中、R
1、R
2、R
3、及びnは、前記式(1)について上述したものと同じである。
【0045】
前記式(2)で表される構造を有する有機重合体は、加水分解性シリル基と、該シリル基中のケイ素原子に隣接した炭素-炭素二重結合とを有し、これらが、ウレタン結合を介して重合体骨格に結合している。本実施形態によって製造され得る加水分解性シリル基含有有機重合体は、特許文献2で開示されている加水分解性シリル基含有有機重合体よりも速硬化性を示し得るものである。
【0046】
本実施形態に係る有機重合体が有する加水分解性シリル基は、前記シラン化合物中の加水分解性シリル基に相当し、-SiRaY3-aで表すことができる。式中、R、Y、及びaは、それぞれ上述した通りである。前記有機重合体が有する加水分解性シリル基の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基等が挙げられる。加水分解性シリル基は1種類のみであってもよいし、2種以上が併存していてもよい。
【0047】
加水分解性シリル基含有有機重合体の硬化性の観点から、前記式(2)において、R1、R2、及びR3によって表される加水分解性シリル基全体のうち、R1によって表される加水分解性シリル基の占める割合が、55モル%以上100モル%以下であることが好ましい。このように前記式(2)においてR1によって表される加水分解性シリル基の割合が高い有機重合体はこれまで報告されていない。このような有機重合体も、本実施形態の一態様を構成する。尚、R1が加水分解性シリル基を表す場合、重合体骨格と加水分解性シリル基が、炭素-炭素二重結合を構成する2個の炭素原子のうち、同一の炭素原子に結合していることになる。
【0048】
更に、前記R1によって表される加水分解性シリル基の占める割合は、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下が特に好ましい。以上のようなR1によって表される加水分解性シリル基の高い割合は、原料である前記シラン化合物における加水分解性シリル基の位置を制御することによって、即ち、前記シラン化合物全体のうちR1が前記加水分解性シリル基を表す化合物が占める割合を高めることで、達成できる。
【0049】
前記加水分解性シリル基含有有機重合体の重合体骨格の詳細や、数平均分子量、及び分子量分布の範囲は、水酸基含有有機重合体と同様であるので、記載を省略する。
【0050】
(硬化性組成物)
上述した加水分解性シリル基含有有機重合体は、これを含む硬化性組成物を構成することができる。
【0051】
(シラノール縮合触媒)
本実施形態に係る硬化性組成物は、加水分解性シリル基を加水分解・縮合させる反応、即ち硬化反応を促進する目的で、シラノール縮合触媒を含有することが好ましい。
【0052】
シラノール縮合触媒としては、従来公知のものを使用することができ、具体的には、有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アミン化合物、カルボン酸、アルコキシ金属、無機酸等を使用することができる。
【0053】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物などが挙げられる。近年の環境への関心の高まりから、ジオクチル錫化合物が好ましい。しかし、本実施形態に係る加水分解性シリル基含有有機重合体は速硬化性を示し得るため、本実施形態に係る硬化性組成物は有機錫化合物を含有せず、有機錫化合物よりも一般的に活性が低いとされるシラノール縮合触媒(特に、アミン系化合物等)を含有するものとすることができる。本実施形態に係る硬化性組成物はアミン系化合物を含有するものであっても、良好な硬化性を示すことができる。
【0054】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウムなどが挙げられる。カルボン酸基としては下記のカルボン酸と各種金属を組み合わせることができる。
【0055】
アミン化合物の具体例としては、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、などのアミン類;ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、などの含窒素複素環式化合物;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのビグアニド類;ケチミン化合物などが挙げられる。
【0056】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸などが挙げられる。
【0057】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネートチタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類が挙げられる。
【0058】
その他のシラノール縮合触媒として、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤や光塩基発生剤も使用できる。
【0059】
シラノール縮合触媒は、異なる2種類以上の触媒を併用して使用してもよく、例えば、前記のアミン化合物とカルボン酸を併用することで、反応性が向上する効果が得られる可能性がある。
【0060】
また、本実施形態に係る重合体が有する加水分解性シリル基は活性が高いため、シラノール縮合触媒の量を減らしたり、活性の低いシラノール縮合触媒を使用したり、またアミノ基含有シランカップリング剤であるアミノシランをシラノール縮合触媒として使用することも出来る。アミノシランは通常接着性付与剤として添加することが多いため、アミノシランをシラノール縮合触媒として利用する場合には、通常使われるシラノール縮合触媒を使用しない硬化性組成物を作製できる。そのため、他のシラノール縮合触媒を添加しないほうが好ましい。特に、加水分解性シリル基が、トリメトキシシリル基、又はメトキシメチルジメトキシシリル基を含む場合に、アミノシランのみをシラノール縮合触媒として使用しても優れた硬化性を示す。
【0061】
シラノール縮合触媒の配合量としては、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.001~20重量部が好ましく、0.01~15重量部がより好ましく、0.01~10重量部が特に好ましい。シラノール縮合触媒の配合量が0.001重量部を下回ると反応速度が不十分となる可能性がある。一方、シラノール縮合触媒の配合量が20重量部を上回ると反応速度が速すぎるため組成物の使用可能な時間が短くなることにより作業性が悪くなったり、貯蔵安定性が悪くなる傾向がある。さらに、シラノール縮合触媒の中には、硬化性組成物が硬化した後で、硬化物の表面に染み出したり、硬化物表面を汚染する場合がある。このような場合には、シラノール縮合触媒の使用量を0.01~3.0重量部とすることで、硬化性を確保しながら、硬化物の表面状態を良好に保てる。
【0062】
本実施形態に係る硬化性組成物には、その他の添加剤として、シリコン化合物、接着性付与剤、可塑剤、溶剤、希釈剤、シリケート、充填剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、表面性改良剤、エポキシ樹脂、その他の樹脂、難燃剤、発泡剤を添加しても良い。また、本実施形態に係る硬化性組成物には、該組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、防かび剤等が挙げられる。
【0063】
(充填剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、種々の充填剤を配合することができる。充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、PVC粉末、PMMA粉末、ガラス繊維およびフィラメント等が挙げられる。
【0064】
充填剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、1~300重量部が好ましく、10~250重量部がより好ましい。
【0065】
組成物の軽量化(低比重化)の目的で、有機バルーン、無機バルーンを添加してもよい。バルーンは、球状体充填剤で内部が中空のものであり、このバルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、および、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの有機系の材料が挙げられる。
【0066】
バルーンの使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~100重量部が好ましく、1~20重量部がより好ましい。
【0067】
(接着性付与剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、接着性付与剤を添加することができる。接着性付与剤としては、シランカップリング剤、シランカップリング剤の反応物を添加することができる。
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類等が挙げられる。上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0068】
シランカップリング剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0069】
(可塑剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、可塑剤を添加することができる。可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレートなどのテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの非フタル酸エステル化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなどの不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル;リン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤等が挙げられる。
【0070】
また、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系重合体;ポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられる。可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
可塑剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、5~150重量部が好ましく、10~120重量部がより好ましく、20~100重量部がさらに好ましい。
【0072】
(溶剤、希釈剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には溶剤または希釈剤を添加することができる。溶剤及び希釈剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、エーテルなどを使用することができる。溶剤または希釈剤を使用する場合、組成物を屋内で使用した時の空気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。上記溶剤または希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0073】
(タレ防止剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、必要に応じてタレを防止し、作業性を良くするためにタレ防止剤を添加しても良い。タレ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらタレ防止剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0074】
タレ防止剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましい。
【0075】
(酸化防止剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できる。酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。
酸化防止剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0076】
(光安定剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。
【0077】
光安定剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0078】
(紫外線吸収剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましく、市販名チヌビンP、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン571、チヌビン1600、チヌビンB75(以上、BASF製)が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0079】
(物性調整剤)
本実施形態に係る硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、フェノキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン;トリス(トリメチルシリル)ボレート、トリス(トリエチルシリル)ボレートなどのトリアルキルシリルボレート類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本実施形態に係る硬化性組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0080】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、ヘキサノール、オクタノール、フェノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのアルコールの誘導体であって加水分解によりシランモノオールを生成するシリコン化合物を挙げることができる。
【0081】
物性調整剤の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.5~5重量部がより好ましい。
【0082】
(粘着付与樹脂)
本実施形態に係る硬化性組成物には、基材への接着性や密着性を高める目的、あるいはその他必要に応じて粘着付与樹脂を添加できる。粘着付与樹脂としては、特に制限はなく通常使用されているものを使うことが出来る。
【0083】
具体例としては、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、DCPD樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0084】
粘着付与樹脂の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して2~100重量部が好ましく、5~50重量部であることがより好ましく、5~30重量部であることがさらに好ましい。
【0085】
(エポキシ基を含有する化合物)
本実施形態に係る硬化性組成物においてはエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレート、エポキシブチルステアレート等が挙げられる。エポキシ化合物は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して0.5~50重量部の範囲で使用するのがよい。
【0086】
(光硬化性物質)
本実施形態に係る硬化性組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物資を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや硬化物の耐候性を改善できる。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、代表的なものとしては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物である不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。
【0087】
光硬化性物質の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して0.1~20重量部であることが好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0088】
(酸素硬化性物質)
本実施形態に係る硬化性組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、C5~C8ジエンの重合体などの液状重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0089】
酸素硬化性物質の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体100重量部に対して0.1~20重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。特開平3-160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
【0090】
(エポキシ樹脂)
本実施形態に係る硬化性組成物にはエポキシ樹脂を併用することができる。エポキシ樹脂を添加した組成物は特に接着剤、殊に外壁タイル用接着剤として好ましい。エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類またはノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0091】
エポキシ樹脂と加水分解性シリル基含有有機重合体の使用割合は、重量比で、加水分解性シリル基含有有機重合体/エポキシ樹脂=100/1~1/100の範囲であることが好ましい。加水分解性シリル基含有有機重合体/エポキシ樹脂の割合が1/100未満になると、エポキシ樹脂硬化物の衝撃強度や強靱性の改良効果が得られがたくなり、加水分解性シリル基含有有機重合体/エポキシ樹脂の割合が100/1を超えると、重合体硬化物の強度が不十分となる。
【0092】
エポキシ樹脂を添加する場合、本実施形態に係る硬化性組成物には、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を併用できる。使用し得るエポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はなく、一般に使用されているエポキシ樹脂硬化剤を使用できる。
【0093】
エポキシ樹脂の硬化剤を使用する場合、その使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1~300重量部の範囲であることが好ましい。
【0094】
<<硬化性組成物の調製>>
本実施形態に係る硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途、シラノール縮合触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と有機重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
【0095】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。また、脱水乾燥法に加えてn-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0096】
<用途>
本実施形態に係る硬化性組成物は、粘着剤、建造物・船舶・自動車・道路などのシーリング材、接着剤、防水材、塗膜防水材、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材として使用することができる。本実施形態に係る硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、柔軟性および接着性に優れることから、シーリング材または接着剤として好適に使用することができる。
【0097】
また本実施形態に係る硬化性組成物は、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気・電子部品、装置の電気絶縁材料、音響学的絶縁材料、弾性接着剤、バインダー、コンタクト型接着剤、スプレー型シール材、クラック補修材、タイル張り用接着剤、アスファルト防水材用接着剤、粉体塗料、注型材料、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療用粘着シート、医療機器シール材、歯科印象材料、食品包装材、サイジングボードなどの外装材の目地用シーリング材、コーティング材、防滑被覆材、緩衝材、プライマー、電磁波遮蔽用導電性材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、コンクリート補強材、仮止め用接着剤、各種成形材料、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車部品、トラック、バスなど大型車両部品、列車車両用部品、航空機部品、船舶用部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤などの様々な用途に利用可能である。自動車を例にすると、プラスチックカバー、トリム、フランジ、バンパー、ウインドウ取付、内装部材、外装部品などの接着取付など多種多様に使用可能である。更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの如き広範囲の基質に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。また、本実施形態に係る硬化性組成物は、内装パネル用接着剤、外装パネル用接着剤、タイル張り用接着剤、石材張り用接着剤、天井仕上げ用接着剤、床仕上げ用接着剤、壁仕上げ用接着剤、車両パネル用接着剤、電気・電子・精密機器組立用接着剤、皮革、繊維製品、布地、紙、板およびゴムを結合するための接着剤、反応性後架橋感圧性接着剤、ダイレクトグレージング用シーリング材、複層ガラス用シーリング材、SSG工法用シーリング材、または、建築物のワーキングジョイント用シーリング材、土木用、橋梁用材料としても使用可能である。さらに、粘着テープや粘着シートなどの粘着材料としても使用可能である。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0099】
合成例に示す化合物の同定、並びに、反応率、及び異性体割合の算出は、下記の核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、1H NMR測定により行った。
装置:AVANCE III HD500型デジタル装置(BRUKER社製)
【0100】
(合成例1)
撹拌機、温度計、及び還流冷却機を備えた300mLフラスコに、トルエン150g、プロパルギルクロライド15.0g(201.3mmol)、及び白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)0.072gを仕込み、窒素雰囲気下で60℃まで加温した。次いで、トリメトキシシラン27.1g(221.4mmol)を仕込み、80℃まで加温し1時間反応させた後、混合物を1H-NMRスペクトル測定で分析し、原料のプロパルギルクロライドとトリメトキシシランが消失していることを確認した。蒸留し、生成物である3-クロロプロパ-1-エニルトリメトキシシラン(化合物1)28.5g(収率72%)を2つの異性体の混合物として得た。
これら2つの異性体は、シリル基が結合する炭素原子が異なっている。下記化学式で示すように、炭素-炭素二重結合を形成する2つの炭素原子のうち、塩素原子から数えて2本の結合で隔てられた炭素原子にシリル基が結合した異性体をα体、塩素原子から数えて3本の結合で隔てられた炭素原子にシリル基が結合した異性体をβ体と呼ぶ。化合物1はα体とβ体を82:18のモル比で有することを確認した。
尚、β体はシス体を含まずトランス体のみを含むことを確認した。
【0101】
【0102】
(合成例2)
撹拌機、温度計、及び還流冷却機を備えた200mLフラスコに、シアン酸カリウム14.8g(182.4mmol)、ジメチルホルムアミド104g、化合物1を30.6g(155.4mmol)、及びメタノール10.4g(323.3mmol)を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃まで加温し、その後4時間かけて120℃まで加温し、さらに120℃で3時間反応させた。固体を濾過により除去した後、液体混合物を蒸留することにより、カルバメート基及びトリメトキシシリル基を有する化合物2(収率47%)を2つの異性体の混合物として、17.2gの量で得た。これらの異性体を1H-NMRスペクトル測定で分析し、α体とβ体を81:19のモル比で有することを確認した。
【0103】
【0104】
(合成例3)
連結管とリービッヒ冷却器を接続した50mlナスフラスコに、化合物2を17.0g(72.2mmol)、及びジラウリン酸ジブチル錫1.7gを入れ、マグネチックスターラーと攪拌子を用いて攪拌しながら、220℃まで加温した後、真空ポンプを用いて系を減圧し、混合物を気化させた後、リービッヒ冷却器によって冷却され液化して別のナスフラスコに回収された混合物を1H-NMRスペクトル測定で分析した。その結果、混合物は、化合物2と、カルバメート基がイソシアネート基に変換された化合物3’を69:31の割合で含むことを確認した。化合物3’はα体とβ体を81:19のモル比で有していた。さらに混合物を蒸留することにより、β体を含まずα体のみを含む化合物3を単離した。化合物3は、前記式(1)で表されるシラン化合物に該当し、その中でも、R1が加水分解性シリル基を表す化合物に該当する。
【0105】
【0106】
(合成例4)
数平均分子量が約4,500のポリオキシプロピレングリコールと数平均分子量が約4,500のポリオキシプロピレントリオールの重量比60:40の混合物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、末端に水酸基を有する数平均分子量17,300、分子量分布Mw/Mn=1.28の水酸基末端ポリオキシプロピレン(以下、重合体Aと記す)を得た。
【0107】
(合成例5)
撹拌機と温度計を備えた100mLフラスコに、合成例4で得られた重合体Aを25g、及び、メルカプト錫系触媒であるネオスタンU-360(日東化成(株)製)2.5mgを入れて、窒素雰囲気下で加温し、90℃で、重合体Aの水酸基に対して0.61モル当量の化合物3を添加し、45分間攪拌することで、重合体Aの水酸基と化合物3のイソシアネート基との反応でウレタン結合を形成させ、下記式で表される構造を末端に有する重合体Bを得た。重合体Bは、前記式(2)で表される構造を有する有機重合体に該当し、その中でも、R1が加水分解性シリル基を表す場合の有機重合体に該当する。重合体Bにおいて、加水分解性シリル基全体のうち、R1によって表される加水分解性シリル基の占める割合は100モル%である。
1H NMR分析により、重合体Bの水酸基の反応率を算出した結果、66%であった。
【0108】
【0109】
(合成例6)
重合体Aの水酸基に対して0.95モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、重合体Aの水酸基に対して、0.15モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換し、さらに0.75モル当量の臭化プロパルギルを添加して末端の水酸基をプロパルギル基に変換した。未精製のプロパルギル基末端ポリオキシプロピレンをn-ヘキサンに溶解させ、珪酸アルミニウム(協和化学社製キョーワードR700SEN-S)を混合攪拌することで、重合体中の金属塩を珪酸アルミニウムに吸着させた後、珪酸アルミニウムを濾過により除去し、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮した。以上により、末端にプロパルギル基を有するポリオキシプロピレンを得た(以下、重合体Cと記す)。
【0110】
(合成例7)
重合体C100重量部に対して、90℃でトリメトキシシラン1.60重量部、続いて白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)100ppmを添加し、ヒドロシリル化反応を実施した。90℃でトリメトキシシランが完全に消費されるまで反応させた後、揮発成分を留去し、下記式で表される構造を末端に有するポリオキシプロピレンを得た(以下、重合体Dと記す)。重合体Dは、特許文献2で開示されている加水分解性シリル基含有有機重合体に該当する。
【0111】
【0112】
(実施例1および比較例1)
表1に記載の各重合体100重量部に対して、DINP((株)ジェイプラス製:ジイソノニルフタレート)90重量部、白艶華CCR(白石カルシウム(株)製:沈降炭酸カルシウム)160重量部、ホワイトン SB(白石カルシウム(株)製:重質炭酸カルシウム)54重量部、タイペークR820((株)石原産業製:酸化チタン)5重量部、ディスパロン6500(楠本化学(株)製:脂肪酸アマイドワックス)2重量部、チヌビン770(BASF製:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート)1重量部、及びチヌビン326(BASF製:2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)1重量部を混合して、A-171(Momentive製:ビニルトリメトキシシラン)2重量部、A-1120(Momentive製:N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)3重量部、及びDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7)0.1重量部を添加し混合した後、得られた組成物を厚さ約5mmの型枠にスパチュラを用いて充填し、表面を平面状に整えた時間を硬化開始時間とし、表面をスパチュラで触り、スパチュラに評価用組成物が付着しなくなった時間を皮張り時間として硬化時間の測定を行った。結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
表1から明らかなように、重合体Bを含む実施例1の硬化性組成物は、重合体Dを含む比較例1の硬化性組成物と比べ、良好な硬化性を示した。