(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】インプラントの送達及び回収システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/375 20060101AFI20250313BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20250313BHJP
A61N 1/36 20060101ALN20250313BHJP
【FI】
A61N1/375
A61M25/00 540
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2021106494
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2019560157の分割
【原出願日】2018-05-04
【審査請求日】2021-06-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-31
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595181449
【氏名又は名称】ペースセツター、インコーポレイテツド
【氏名又は名称原語表記】PACESETTER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カべ、アルンダティ
(72)【発明者】
【氏名】エビー、トーマス・ビー
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】土田 嘉一
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0100582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0103047(US,A1)
【文献】特表2014-501136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112361(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
ルーメンを画定するシャフトに取り付けられたキャップを有する外側カテーテルであって、前記ルーメンは長手方向軸を有し、前記キャップは、リードレスペースメーカーのドッキング延出部を受容するように構成され、前記ドッキング延出部は、ポストによって前記リードレスペースメーカーの本体部に取り付けられたドッキングボタンを含み、前記キャップは遠位側面部分及び近位側面部分を含む側面部を有し、前記側面部の前記遠位側面部分は、周方向に沿ったそれぞれの位置に配置された1個以上のキーを備え、前記近位側面部分は前記1個以上のキーより近位側に位置する、該外側カテーテルと、
前記シャフトの前記ルーメン内に前記長手方向軸に沿って延在するフレキシブルなマンドレルと、ベース部と、前記ベース部から延出する複数のアームとを有する内側カテーテルであって、中央ルーメンが、前記フレキシブルなマンドレル及び前記ベース部を貫通して延び、前記キャップの前記側面部の形状は、前記ドッキング延出部が前記キャップ内に受容されたとき、前記遠位側面部分の前記1個以上のキーが、前記リードレスペースメーカーの前記本体部の近位側の前記ポストを外囲し、前記近位側面部分が、前記ドッキングボタンを外囲し、かつ前記複数のアームを前記ドッキングボタンの外周に対して横方向から押し付けた状態で保持する形状である、該内側カテーテルと、
前記中央ルーメンを通して遠位ループまで延びる細長い本体部を有するテザーであって、前記遠位ループは、前記細長い本体部から径方向外側に延びる第1部分と、前記第1部分の径方向の端部から前記細長い本体部の中心軸を中心に周回する形状を有する第2部分とを有する、該テザーとを備え
、
前記テザーは、前記ドッキング延出部に係合させて使用可能であることを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記キャップは、近位チャンバ面とレッジ面との間に延びる前記側面部を含み、前記側面部は前記チャンバを画定することを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記内側カテーテルは、前記ドッキング延出部を受容するように構成されたドッキング空間を含み、
前記ドッキング延出部の少なくとも一部は、前記ベース部及び前記ドッキング空間より遠位側に延びることを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記内側カテーテルの少なくとも一部は、前記ドッキング延出部の外縁の周りに延在し得ることを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項5】
請求項
4に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記内側カテーテルは、前記ドッキング延出部を受容するように構成されたドッキング空間を含み、前記ドッキング延出部が前記ドッキング空間内に受容されたときに前記ドッキング延出部の前記外縁を越えて延びるリップ部を含むことを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
リードレスペースメーカーをさらに含むことを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項7】
請求項
6に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記ドッキングボタンは、前記ドッキング面に開口を有することを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項8】
請求項
6に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記ドッキング面は、丸みを帯びた面を含むことを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【請求項9】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のリードレスペースメーカーカテーテルシステムであって、
前記リードレスペースメーカーカテーテルシステムの近位端で前記外側カテーテル及び内側カテーテルに結合されたハンドルと、
前記リードレスペースメーカーとをさらに備え、
前記ドッキングボタンは、前記リードレスペースメーカーの前記本体部に、前記ポストと第2のポストとによって取り付けられ、
前記ドッキングボタンは、前記ドッキングボタンを貫通して前記ポストと前記第2のポストの間に開口するボタンルーメンと、前記ボタンルーメンに通じる径方向のギャップ開口とを有し、
前記テザーは、前記ハンドルから前記中央ルーメンを通して遠位に延び、
前記テザー
が、前記リードレスペースメーカーカテーテルシステムの遠位端に係合
されるとき、前記テザーの前記細長い本体部は、前記ボタンルーメンを通して延び、前記遠位ループは、前記ドッキング延出部
の前記ポスト及び前記第2のポストの周囲に延びることを特徴とするリードレスペースメーカーカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許協力条約(PCT)特許出願は、2017年5月5日出願の米国許出願第15/588、277号(表題「IMPLANT DELIVERY AND RETRIEVAL SYSTEMS AND METHODS」)、及び2017年5月5日出願の米国許出願第15/588、307号(表題「IMPLANT DELIVERY AND RETRIEVAL SYSTEMS AND METHODS」)に関連し、その優先権を主張するものである(上記出願の開示内容の全体は、全ての目的のために参照により本明細書に援用される)。
【0002】
(技術分野)
本開示は、リードレスペースメーカ、並びにそれに関連する送達及び回収システム及び方法に関する。より詳細には、本開示は、植え込み部位への送達、または植え込み部位からの回収のために、リードレスペースメーカをカテーテルシステムに取り付けるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人工ペースメーカによる心臓ペーシングは、患者の心臓の自然のペースメーカ及び/または伝導系が、患者の健康に十分な速度及び間隔で同期した心房収縮及び心室収縮を提供できない場合に、心臓の電気刺激を提供する。このような抗徐脈ペーシングは、何十万人もの患者に対して、症状の緩和、さらには生命維持さえも提供する。心臓ペーシングはまた、電気的オーバードライブ刺激を提供することによって頻拍性不整脈を抑制または変換し、この場合も、症状の緩和を提供したり、心臓突然死をもたらす恐れがある不整脈を防止または終了させたりする。
【0004】
現在入手可能なペースメーカまたは従来のペースメーカによる心臓ペーシングは通常、患者の胸部またはその近傍において皮下または筋肉下に植え込まれたパルスジェネレータによって行われる。パルスジェネレータのパラメータは通常、体内に一方のインダクタンスを有し体外に他方のインダクタンスを有する疎結合変圧器を介して、または体内に一方のアンテナを有し体外に他方のアンテナを有する電磁放射器を介して、体外のプログラミング装置によって問い合わされ修正される。パルスジェネレータは通常、1以上の植え込まれたリードの近位端に接続されており、リードの遠位端には、心室の内壁または外壁に隣接して配置される1以上の電極が設けられている。リードは、パルスジェネレータを心臓に配置された電極に接続するための絶縁された導電体を有している。このような電極リードは、一般的に、50~70cmの長さを有している。
【0005】
毎年10万個を超える従来の心臓ペーシングシステムが植え込まれるが、様々な良く知られた問題が存在する。例えば、パルスジェネレータを皮下に配置した場合は皮膚に隆起部が存在することとなるが、患者がそれを見苦しく思ったり、不快または不愉快に感じたりして、無意識にまたはしきりに触る恐れがある。しきりに触らなかったとしても、皮下のパルスジェネレータが侵食、突出または感染したり、あるいは、リード線が断線、絶縁損傷または導体破損したりする恐れがある。筋肉下または腹部に配置すればいくつかの懸念事項を解決することができるが、そのような配置は、植え込み及び調節のためのより困難な外科手術を伴い、またその外科手術によって患者の回復が長引く恐れがある。
【0006】
従来のパルスジェネレータは、その配置位置が胸部であろうと腹部であろうと、心臓との間で信号を伝達する電極リードに対して着脱可能なインタフェースを有する。通常、インタフェースとして用いられる少なくとも1つのオス型コネクタ成形品は、電極リードの近位端において少なくとも1つの端子ピンを有する。このオス型コネクタは、パルスジェネレータに設けられた対応するメス型コネクタ成形品及び該コネクタ成形品内のターミナルブロックと嵌合する。電気的接続及び機械的接続を確実にするために、通常、電極リード1本当たり少なくとも1つのターミナルブロックにセットスクリューが螺入される。コネクタ成形品間の電気的絶縁を維持するのを助けるために、通常、1以上のOリングが用いられる。セットスクリューの電気的絶縁を提供するために、通常、セットスクリューキャップまたはスロット付きカバーが用いられる。上記の簡単に説明したコネクタ及びリード間の複雑な接続に起因して、誤動作の機会が多くなる。
【0007】
従来のペースメーカの他の問題点は、互いに離間して植え込まれたパルスジェネレータ及びペーシングリードに関連している。別の例として、特にペーシングリードは、感染及び罹患の部位となる恐れがある。従来のペースメーカに関連する問題の多くは、自己完結型かつ自立型のペースメーカ、すなわち、いわゆるリードレスペースメーカの開発によって解決される。
【0008】
従来のパルスジェネレータで使用される植込み可能な能動的固定リードと同様に、リードのレスペースメーカは通常、心筋内に螺入されるスクリュー部材またはヘリカル部材などの能動的係合機構によって、心臓内の植込み部位に固定される。リードレスペースメーカは、多くの場合、送達カテーテルを含む送達システムを用いて、心臓内の植え込み部位に送達される。従来の送達カテーテルシステムは通常、長く(例えば約42mm以上)、患者の解剖学的構造のナビゲーションを困難にし、植込み部位における送達カテーテルシステムのフットプリントを増大させる。
【0009】
いくつかの従来の送達システムは、リードレスペースメーカの送達カテーテルへの取り付けがテザーアライメントに依存しているテザーベースのシステムである。とりわけ、システムの許容誤差または解剖学的干渉に起因してテザーアライメントが失われると、リードレスペースメーカは、送達カテーテルから自然発生的に解放される恐れがある。このような自然発生的な解放(脱離)は、塞栓症、リードレスペースメーカを回収する必要性、及び/または他の患者リスクを引き起こし得る。リードレスペースメーカの回収は、送達カテーテルを除去し、回収カテーテルを導入し、回収カテーテルによってリードレスペースメーカを取り出すことにより行われる。送達カテーテルシステムは、一般的に、回収カテーテルシステムとは構造及び操作が異なり、このため、手術時間、複雑さ、及びコストが増加する。回収カテーテルシステムを使用して回収を行うことができない場合、リードレスペースメーカは通常、手術によって回収され、この場合、外科処置はさらに複雑になる。さらに、多くの従来のカテーテルシステムは、以前使用されたカテーテルシステム上へのリードレスペースメーカのベッドサイドローディングに適合しないため、第2のリードレスペースメーカを患者に埋め込む場合は、しばしば第2のカテーテル送達システムを使用する必要がある。代わりに、多くの従来のカテーテルシステムは、製造中に予めローディングされる。とりわけ、これらの所見を念頭に置いて、本開示の技術が発明及び開発された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載及び特許請求される実施形態は、リードレスペースメーカ送達及び回収するためのシステム及び方法を提供することによって、上記課題を解決する。一実施形態では、リードレスペースメーカを備えるカテーテルシステムが提供される。リードレスペースメーカは、ドッキング端部を含み、ドッキング端部はその表面から延出するドッキング延出部を有する。本開示のカテーテルシステムは、チャンバを画定する本体部、及びチャンバに通じる近位開口部を有するドッキングキャップであって、近位開口部がカテーテルのルーメンの長手方向軸と同軸をなしている、該ドッキングキャップをさらに備える。本開示のカテーテルシステムは、互いに対向して配置された第1のアーム及び第2のアームを有するフレキシブルな把持器を含むレトリーバをさらに備える。第1のアーム及び第2のアームの各々は、長手方向軸から半径方向外方に付勢されるヒンジ部を形成する。レトリーバのフレキシブルな把持器がチャンバ内に位置するまでドッキングキャップの本体部でレトリーバを覆ったときに、ドッキングキャップは、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部にロックする。
【0011】
本開示のカテーテルシステムのいくつかの実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバに対して配置された1以上のキャップ面を有し、ドッキングキャップは、1以上のキャップ面によって、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部にロックする。1以上のキャップ面は、第1のアーム及び第2のアームを半径方向内方に変位させると共に、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部の周りに押し付けた状態に維持する。
【0012】
別の実施形態では、第1のアームは、第1のフレキシブルなループ部を含み、第2のアームは、第2のフレキシブルなループ部を含む。このような実施形態では、第1のアーム及び第2のアームは、それぞれ、カテーテルのルーメン内に延在する少なくとも1つのマンドレルに結合される。
【0013】
いくつかの実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバに対して配置され、かつ、ドッキング延出部の1以上のドッキング面と嵌合係合することによってトルク伝達を提供するように構成された1以上のキャップ面を有する。このような実施形態では、1以上のドッキング面は、1以上の平坦な半径方向面を含むか、及び/または、半径方向に対称であり得る。他の実施形態では、1以上のキャップ面及び1以上のドッキング面の少なくとも一方は、1以上のキー部を有し得る。1以上のキャップ面の少なくとも1つは、平坦であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、ドッキング延出部は、ドーム形状を形成する丸みを帯びた面を含む。ドッキング延出部は、第1のアーム及び第2のアームと係合するように構成されたネック部を含み得る。
【0015】
別の実施形態では、第1のアーム及び第2のアームは、ベース部から延出している。このような実施形態では、ベース部は、該ベース部に結合され、かつ、近位開口部を通ってカテーテルのルーメン内に延在するマンドレルを含む。このような実施形態は、マンドレル内のルーメンからベース部を貫通して延在するテザーをさらに備える。
【0016】
さらに別の実施形態では、ドッキング延出部は、テザー、スネア、またはケーブルを受容するように構成されたループ部を含む。
【0017】
別の実施形態では、リードレスペースメーカを備える別のカテーテルシステムが提供される。リードレスペースメーカは、ドッキング端部を含み、ドッキング端部はその表面から延出するドッキング延出部を有する。本開示のカテーテルシステムは、チャンバを画定する本体部、及びチャンバに通じる近位開口部を有するドッキングキャップであって、近位開口部が、カテーテルのルーメンの長手方向軸と同軸をなしている、該ドッキングキャップをさらに備える。本開示のカテーテルシステムは、チャンバから遠位方向に延びる第1のシース及び第2のシースを有するレトリーバであって、第1のシースが第1のルーメンを有し、第2のシースが第2のルーメンを有する、該レトリーバをさらに備える。本開示のカテーテルシステムは、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを含むスネアをさらに備える。第1のスネアワイヤは、第1のスネアルーメンから第2のスネアルーメン内まで延びて、第1の方向を向いた第1のスネアループを形成し、第2のスネアワイヤは、第1のスネアルーメンから第2のスネアルーメン内まで延びて、第1の方向とは異なる第2の方向を向いた第2のスネアループを形成する。第1のスネアループ及び第2のスネアループは、ドッキング空間を形成する。スネアは、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを第1のスネアルーメン及び第2のスネアルーメン内で変位させることによって、係合位置と係合解除位置との間で変位可能である。第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤは、係合位置において、ドッキング空間内のドッキング延出部の周りに締め付けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のシース及び第2のシースは、それぞれ、チャンバ及び近位開口部内で変位可能である。
【0019】
別の実施形態では、第1のシース及び第2のシースは、長手方向軸を中心にして、互いに半径方向の反対側の位置に配置されている。
【0020】
さらに別の実施形態では、係合位置におけるスネアとドッキング延出部との係合は、長手方向軸に対するリードレスペースメーカの変位を可能にする。
【0021】
他の実施形態では、長手方向軸線に対するリードレスペースメーカの変位は、長手方向軸に対して平行な変位、及び、長手方向軸に対して或る角度をなす方向の変位の少なくとも一方を含む。
【0022】
さらに別の実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバ内に配置された第1のトラッカー及び第2のトラッカーを含む。このような実施形態では、第1のシースは、第1のトラッカー内で変位可能であり、第2のシースは、第2のトラッカー内で変位可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバに対して配置され、かつ、ドッキング延出部の1以上のドッキング面と嵌合係合することによってトルク伝達を提供するように構成された1以上のキャップ面を有する。
【0024】
さらに別の実施形態では、ドッキング延出部は、ドッキングボタンを含む。
【0025】
本開示の別の実施形態では、リードレスカテーテルを係合させる方法が提供される。本開示の方法は、フレキシブルな把持器をリードレスペースメーカの本体部の表面から延出するドッキング延出部に対して配置するステップを含む。フレキシブルな把持器は、互いに対向して配置された第1のアーム及び第2のアームを有し、第1のアーム及び第2のアームの各々は、長手方向軸線から半径方向外方に付勢されるヒンジ部を形成する。本開示の方法は、ドッキング延出部を第1のアーム及び第2のアーム間に配置するステップと、ドッキングキャップの本体部でフレキシブルな把持器を覆うステップとをさらに含む。ドッキングキャップは、チャンバに対して配置された1以上のキャップ面によって第1のアーム及び第2のアームを半径方向内方に変位させると共に、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部の周りに押し付けた状態に維持することにより、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部にロックする。
【0026】
本開示の方法は、ドッキングキャップに結合されたカテーテルを変位させることによってリードレスペースメーカを送達するステップと、カテーテルを変位させること及びカテーテルにトルクを加えることの少なくとも一方によってリードレスペースメーカを回収するステップとの少なくとも一方のステップをさらに含み得る。
【0027】
本開示のさらに別の実施形態では、リードレスペースメーカを備えるさらに別のカテーテルシステムが提供される。リードレスペースメーカは、ドッキング端部を含み、ドッキング端部はその表面から延出するドッキング延出部を有する。本開示のカテーテルシステムは、中央ルーメンを中心として互いに対向して配置された第1のアーム及び第2のアームを有するレトリーバをさらに備える。第1のアーム及び第2のアームの各々は、中央ルーメンに向かって半径方向内方に付勢されるヒンジ部を形成する。第1のアーム及び第2のアームは、マンドレルを中央ルーメン内でドッキング端部に向けて変位させることよって、半径方向外方に変位可能である。第1のアーム及び第2のアームは、半径方向外方への変位により、開口部内でドッキング端部の表面と係合する。
【0028】
本開示の別の実施形態では、リードレスペースメーカを備えるさらに別のカテーテルシステムが提供される。リードレスペースメーカは、ドッキング端部を含み、ドッキング端部はその表面から延出するドッキング延出部を有する。本開示のカテーテルシステムは、チャンバを画定する本体部、及びチャンバに通じる近位開口部を有するドッキングキャップと、近位開口部を通ってチャンバ内に延びるプッシュプルアクチュエータと、をさらに備える。本開示のカテーテルシステムは、第1のアーム及び第2のアームを有するフレキシブルな把持器を含むレトリーバをさらに備える。第1のアーム及び第2のアームの各々は、1以上のヒンジピンによってドッキングキャップに結合される。プッシュプルアクチュエータを変位させたときに、プッシュプルアクチュエータによって、第1のアーム及び第2のアームがドッキング延出部にロックされる。
【0029】
一実施形態では、ドッキング延出部は、該延出部に形成されたスロットを有し、第1のアーム及び第2のアームの各々は、切欠部を画定し、かつリップ部を有する把持部を含む。第1のアーム及び第2のアームの切欠部は、プッシュプルアクチュエータを変位させたときに、リップ部がスロット内に挿入されることよって延出部を把持する。
【0030】
別の実施形態では、ドッキング延出部は、多角形の形状を形成する1以上の縁部ドッキング面を有し、第1のアーム及び第2のアームは、それぞれ、ドッキング面を有する。プッシュプルアクチュエータを変位させたときに、第1のアーム及び第2のアームのドッキング面は、縁部ドッキング面に対して押し付けられる。
【0031】
本開示のさらに別の実施形態では、チャンバを画定する本体部を有するドッキングキャップを備えるさらに別のカテーテルシステムが提供される。本開示のカテーテルシステムは、チャンバから遠位方向に延びる第1のシース及び第2のシースを有するレトリーバをさらに備える。第1のシース及び第2のシースは、中心軸を中心にして互いに半径方向の反対側の位置に配置され、第1のシースは第1のルーメンを有し、第2のシースは第2のルーメンを有する。本開示のカテーテルシステムは、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを含むスネアをさらに備える。第1のスネアワイヤは、第1のスネアルーメンから第2のスネアルーメン内まで延びて、中心軸で第1のピークを有する第1のスネアループを形成する。第2のスネアワイヤは、第1のスネアルーメンから第2のスネアルーメン内まで延びて、中心軸で第2のピークを有する第2のスネアループを形成する。スネアは、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを第1のスネアルーメン及び第2のスネアルーメン内で変位させることによって、係合位置と係合解除位置との間で変位可能である。第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを変位させることによって、第1のピークを第2のピークに向けて係合位置まで半径方向内方に変位させるか、または、第2のピークから離間するように係合解除位置まで半径方向外方に変位させる。
【0032】
一実施形態では、第1のシース及び第2のシースの各々は、端部コイルを有する。端部コイルの各々は、任意選択で、放射線不透過性を有する。
【0033】
別の実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバ内に配置された第1のトラッカー及び第2のトラッカーを含む。このような実施形態では、第1のシースは、第1のトラッカー内で変位可能であり、第2のシースは、第2のトラッカー内で変位可能である。
【0034】
さらに別の実施形態では、第1のスネアループ及び第2のスネアループは、ドッキング空間を形成し、ドッキング空間は、係合位置において、係合解除位置よりも小さいサイズを有する。
【0035】
さらに別の実施形態では、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤは、係合位置において、ドッキング空間内に配置されたリードレスペースメーカのドッキング延出部の周りに締め付けられる。このような実施形態では、ドッキング延出部は、チャンバ内に受容可能であり得る。
【0036】
他の実施形態では、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤの各々は、少なくとも1つのマンドレルに結合される。
【0037】
本開示のさらに別の実施形態では、リードレスカテーテルを係合させる方法が提供される。本開示の方法は、リードレスペースメーカの本体部の表面から延びるドッキング延出部に対してドッキング空間を配置するステップを含む。ドッキング空間は、第1の方向を向いた第1のスネアループ及び第1の方向とは異なる第2の方向を向いた第2のスネアループにより形成される。第1のスネアループは、第1のシースの第1のスネアルーメンから第2のシースの第2のスネアルーメン内まで延在する第1のスネアワイヤから形成される。第2のスネアループは、第1のシースの第1のスネアルーメンから第2のシースの第2のスネアルーメン内まで延在する第2のスネアワイヤから形成される。本開示の方法は、ドッキング延出部がドッキング空間内に配置されるまで、第1のスネアループ及び第2のスネアループをリードレスペースメーカに沿って前進させるステップをさらに含む。本開示の方法は、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤがドッキング延出部の周りに締め付けられるまで、第1のスネアワイヤ及び第2のスネアワイヤを第1のスネアルーメン及び第2のスネアルーメン内に後退させて、ドッキング空間のサイズを縮小させるステップをさらに含む。本開示の方法は、ドッキング延出部がドッキングキャップのチャンバ内に配置されるまで、第1のシース及び第2のシースをカテーテルのルーメン内に後退させるステップをさらに含む。
【0038】
本開示の方法の一実施形態では、ドッキングキャップは、チャンバ内に配置された第1のトラッカー及び第2のトラッカーを含み、第1のシースは、第1のトラッカーに沿って後退可能であり、第2のシースは、第2のトラッカーに沿って後退可能である。
【0039】
別の実施形態では、本開示の方法は、カテーテルを変位させることによってリードレスペースメーカを回収するステップをさらに含む。
【0040】
さらに別の実施形態では、本開示の方法は、カテーテルを変位させることによってリードレスペースメーカを送達するステップをさらに含む。
【0041】
他の実施形態もまた、本明細書中に記載及び列挙される。さらに、複数の実施形態が開示されているが、本開示の技術の例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、本開示の技術のさらなる別の実施形態が当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本開示の技術はすべて、本開示の技術の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な態様で修正することができる。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定するものではないと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】患者の心臓の概略的な内側/側方断面図であり、1以上のリードレスペースメーカを有する例示的な心臓ペーシングシステムを示す。
【
図2】リードレスペースメーカを送達及び/または回収するための例示的なカテーテルシステムを示す。
【
図3】カテーテルシステムの遠位端の詳細図である。
【
図4A】
図4A~
図4Cはそれぞれ、リードレスペースメーカとのドッキング位置に位置したリトリーバを示す。
【
図4B】側面図であり、ドッキングキャップは想像線で示している。
【
図4C】上面図であり、ドッキングキャップは想像線で示している。
【
図5】トルクシャフトまたはカテーテルなどのフレキシブルな構成要素の例示的な変位を示す。
【
図6】リードレスペースメーカを解放または捕捉するレトリーバの側面図を示す。
【
図7】リードレスペースメーカを解放または捕捉するレトリーバの斜視図を示す。
【
図8】リードレスペースメーカを解放するために半径方向に展開するように構成されたフレキシブルな把持体の形態のレトリーバの一例を示す。
【
図9】リードレスペースメーカを解放するために側外方に回動変位するように構成されたフレキシブルな把持体の形態のレトリーバの別の例を示す。
【
図10A】リードレスペースメーカの例示的なドッキング端部の斜視図を示す。
【
図10B】リードレスペースメーカの例示的なドッキング端部の背面図を示す。
【
図11】リードレスペースメーカのドッキング突出部と係合した例示的なフレキシブルな把持部を示す。
【
図12】例示的なドッキングキャップの斜視正面図を示す。
【
図13】表面に形成された例示的なキー部を有するリードレスペースメーカのドッキング端部を示す。
【
図14A】十字形状を有する例示的なドッキング突出部の斜視図である。
【
図14B】十字形状を有する例示的なドッキング突出部の上面図である。
【
図15A】丸みを帯びた面を有するドッキング突出部の例を示す。
【
図15B】丸みを帯びた面を有するドッキング突出部の例を示す。
【
図15C】丸みを帯びた面を有するドッキング突出部の例を示す。
【
図16A】ドッキング突出部の表面に形成された例示的なキーの組の斜視図を示す。
【
図16B】ドッキング突出部の表面に形成された例示的なキーの組の上面図を示す。
【
図17A】一組のキーを有する丸みを帯びたドッキング突出部を含む例示的なリードレスペースメーカの上面図を示す。
【
図17B】一組のキーを有する丸みを帯びたドッキング突出部を含む例示的なリードレスペースメーカの斜視図を示す。
【
図18】例示的なリードレスペースメーカに対して配置された例示的なドッキングキャップを示す。ドッキングキャップは、ドッキング突出部の1以上のドッキング面と嵌合係合するように構成された1以上のキャップ面を含む。
【
図19A】リードレスペースメーカに対して係合または脱離される例示的なドッキングキャップを示す。ドッキングキャップは、ドッキングキャップとリードレスペースメーカとの間の大きい摩擦によってトルクを伝達するように構成されたオーバーモールディングを有する。
【
図19B】リードレスペースメーカに対して係合または脱離される例示的なドッキングキャップを示す。ドッキングキャップは、ドッキングキャップとリードレスペースメーカとの間の大きい摩擦によってトルクを伝達するように構成されたオーバーモールディングを有する。
【
図20】ドッキングボタンと係合可能なフレキシブルな把持部の形態のレトリーバの別の例を示す。
【
図21】フレキシブルな把持器のドッキングキャップ保持アームの断面図であり、該アームがチャンバ内でドッキングボタンの周りに押し付けられた状態を示す。
【
図22】例示的なフレキシブルな把持体の詳細図である。
【
図23】例示的なフレキシブルな把持器のルーメンを通って延びるテザーを示す。
【
図25B】フレキシブルなドッキングボタンを示す。
【
図26A】リードレスペースメーカのドッキングボタンに対して配置されたフレキシブルな把持部を示す。
【
図26B】フレキシブルな把持器の第1のアームと第2のアームとの間に配置されたドッキングボタンを示す。
【
図26C】フレキシブルな把持部を覆い、第1アーム及び第2アームをドッキングボタンの周りに押し付けた状態に保持するドッキングキャップを示す。
【
図27】テザー、スネア、またはケーブルを受容するように構成されたループを有する例示的なドッキング突出部を示す。
【
図28】レトリーバが、リードレスペースメーカのドッキング端部の表面の開口部に係合した状態を示す断面図である。
【
図29】内向きに付勢されたアームを有するレトリーバを示す。
【
図30A】一組のシースから延びるスネアの形態のレトリーバの一例を示す。
【
図30B】一組のシースから延びるスネアの形態のレトリーバの一例を示す。
【
図32】リードレスペースメーカのドッキング突出部に対して配置されたドッキング空間の一例を示す。
【
図33A】ドッキング空間内に配置されたドッキング突出部を有するリードレスペースメーカに沿って前進させたスネアを示す。
【
図33B】係合位置においてドッキング突出部の周りに締め付けられたスネアを示す。
【
図34】係合位置においてドッキング突出部の周りに締め付けられたスネアの詳細図である。
【
図35】係合位置における、カテーテルの長手方向軸線に対するリードレスペースメーカの変位を示す。
【
図36】ドッキングキャップにドッキングされたリードレスペースメーカを示す。
【
図37】第1のトラッカー及び第2のトラッカーを有する例示的なドッキングキャップを示す。
【
図38】ドッキングキャップのチャンバ内に配置されたスネアの形態のレトリーバの断面図である。
【
図39】カテーテルシステムの遠位端の断面図であり、リードレスペースメーカのドッキング突出部と係合したスネアを示す。
【
図40】カテーテルシステムの遠位端の断面図であり、リードレスペースメーカのドッキング突出部と係合したスネアを示す。
【
図41】ヒンジ式の把持体の形態のリトリーバの正面図であり、ヒンジ式の把持体が、リードレスペースメーカのスロット付きドッキング突出部と係合した状態を示す。ヒンジ式の把持体は、プッシュプルアクチュエータによって変位可能である。また、ドッキングキャップは想像線で示している。
【
図43】
図41のヒンジ式の把持体の詳細な斜視図であり、ヒンジ式の把持体のアームは想像線で示されている。
【
図44】プッシュプルアクチュエータで変位可能な別のヒンジ式の把持体の形態のレトリーバが、リードレスペースメーカの多角形ドッキング突出部に係合した状態を示す正面図であり、ドッキングキャップは想像線で示されている。
【
図46】
図44のヒンジ式の把持体の詳細な斜視図であり、ヒンジ式の把持体のアームは想像線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の態様は、リードレスペースメーカなどのリードレス生体刺激装置を送達及び回収するためのシステム及び方法に関する。一般的に、リードレスペースメーカは、カテーテルシステムを使用して、患者の植え込み位置に送達されるか、または植え込み位置から回収される。したがって、本開示のシステム及び方法は、単一のカテーテル送達及び回収システムを使用することによって、リードレスペースメーカの繰り返しの植え込み及び/または回収を容易にし、これにより、それらに関連する無駄及びコストを低減させる。加えて、本明細書中に記載されるシステム及び方法は、単一のカテーテルシステムによって、様々な構成を有する種々のリードレスペースメーカを送達及び回収することを可能にし、これにより、様々な構成に適用可能な種々のシステムをストックする作業負担をさらに低減させる。
【0044】
一態様では、本開示のカテーテルシステムは、把持器(grasper)やスネアなどの形態のレトリーバ(retriever)を備える。レトリーバは、リードレスペースメーカのドッキング端部と解放可能に係合可能であり、リードレスペースメーカとの係合及び係合解除並びにリードレスペースメーカの送達及び回収を提供するだけでなく、リードレスペースメーカの植え込み中にリードレスペースメーカに対してトルク伝達を提供する。レトリーバは、リードレスペースメーカの送達中または回収中に、カテーテルシステムとリードレスペースメーカとの係合が、自然発生的にまたは他の望ましくない形態で解除されるリスクを低減させる。さらに、レトリーバは、二重テザーシステムの相対的位置から独立した確実な係合解除を提供する。また、レトリーバは、二重テザーシステムにおけるバインディング及び/またはトルクワインドを引き起こし得るリードレスペースメーカの回転力をカテーテルシステムから分離する。工具を必要としないベッドサイドローディングが、本開示の技術によって容易になり、レトリーバが半径方向に展開することに起因して、患者の解剖学的構造への様々なリードレスペースメーカの植え込みを、リードレスペースメーカの植え込み中の患者の解剖学的構造に対する組織外傷を減少させて行うことを可能にする。
【0045】
本明細書中に記載されるシステム及び方法は、一般的に、医療用インプラントのドッキング延出部と解放可能に係合するためのレトリーバを有するローディングツール、並びに、医療用インプラントを送達及び回収する方法に関する。本開示は、リードレス心臓ペースメーカ、及びローディング技術としてのトルクに関して説明されるが、本開示の技術は、他の生体刺激装置及び/または医療用インプラントシステム及び方法並びにローディング技術にも適用可能であることは明らかであろう。
【0046】
図1を参照して、1以上のリードレスペースメーカ104を有する例示的な心臓ペーシングシステム100の詳細な説明を開始する。リードレスペースメーカ104は各々、患者の心臓102の一時的リードレスペーシング用に構成され得る。一実施形態では、リードレスペースメーカ104の各々は、患者の心臓102の右心房及び/または右心室などの心臓チャンバの内側または外側に配置されるか、またはそれらに取り付けられるように構成される。リードレスペースメーカ104は、例えば、心筋層を貫通するヘリカルアンカー106を使用して、患者の心臓102の心臓組織に取り付けられ得る。なお、別の主要固定機構、場合によっては補助固定機構を使用して、リードレスペースメーカ104を組織に取り付けたり、植え込み中のリードレスペースメーカ104の変位を制限したりできることは明らかであろう。
【0047】
リードレスペースメーカ104は、
図2に示すようなカテーテルシステム108を使用して、患者の心臓102に送達されるか、または患者の心臓102から回収される。一般的に、カテーテルシステム108は、患者の心臓102内への静脈内前進のために、リードレスペースメーカ104と解放可能に係合する。カテーテルシステム108は、例えばヘリカルアンカー106を使用した心臓組織への固定を容易にするような態様で、リードレスペースメーカ104と係合する。本明細書中に記載されるように、例えばヘリカルアンカー106などによる回転によって固定機構が心臓組織と係合する場合、カテーテルシステム108は、リードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供するように構成される。換言すれば、カテーテルシステム108は、リードレスペースメーカ104の構成要素と係合してリードレスペースメーカ104に対してトルクを加えることにより、ヘリカルアンカー106を心臓組織内にねじ込む。
【0048】
カテーテルシステム108は、その遠位端110でリードレスペースメーカ104と係合し、その近位端112に、リードレスペースメーカ104の送達及び/または回収の操作を行うためのハンドルを有する。一実施形態では、カテーテルシステム108は、トルクシャフト114、スリーブ116、及びイントロデューサシース120を含む。カテーテルシステム108はまた、カテーテルシステム108の向きを変えるための操作可能カテーテル118、及び/または、カテーテルシステム108を通じて生理食塩水または他の流体を流すための1以上のフラッシュポート128及び130を含み得る。
【0049】
トルクシャフト114は、操作可能カテーテル118からリードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供するか、または、ハンドル本体部122に配置された1以上の操作ノブ(例えば、第1の操作ノブ124及び第2の操作ノブ126)によって制御されてリードレスペースメーカ104を変位させる。イントロデューサシース120は、リードレスペースメーカ104の送達中及び/または回収中に、操作可能カテーテル118に対して別の操作及び支持を提供するために、並びに、リードレスペースメーカ104がトロカールまたはイントロデューサを介して患者の解剖学的構造に導入されるときにリードレスペースメーカ104を取り囲むために、操作可能カテーテル118に沿って遠位方向に前進させることができる。同様に、スリーブ116も、操作可能カテーテル118に沿って変位可能であり、リードレスペースメーカ104の送達中及び/または回収中に患者の組織及び解剖学的構造を保護するべく、トルクシャフト114、リードレスペースメーカ104、及びヘリカルアンカー106を覆うために、リードレスペースメーカ104に沿って遠位方向に変位可能である。
【0050】
図3を参照すると、カテーテルシステム108の遠位端110の詳細図が示されている。一実施形態では、操作可能カテーテル118は、スリーブキャップ134を通ってスリーブ116内に延在し、スリーブ116内でトルクシャフト114と結合している。スリーブ116は、リードレスペースメーカ104がスリーブ116内に位置し、かつスリーブ116の遠位端132に近位するように、トルクシャフト114及びリードレスペースメーカ104に沿って変位可能である。また、スリーブ116も、操作可能であり得る。
【0051】
一実施形態では、トルクシャフト114の遠位端に、リードレスペースメーカ104と解放可能に係合するように構成されたドッキングキャップ136が結合されている。トルクシャフト114及びドッキングキャップ136の各々は、リードレスペースメーカ104の送達及び/または回収中に、リードレスペースメーカ104にトルクを伝達する。
図4A~
図4Cは、ドッキングキャップ136でリードレスペースメーカ104のドッキング端部が覆われた、ドッキング位置(docked position)すなわち係合位置(engaged position)にあるカテーテルシステム108を示す。一実施形態では、ドッキングキャップ136は、本体部138と、トルクシャフト114の遠位端146に結合するように構成された受容部140とを含む。使用中、トルクシャフト114の遠位端146は、受容部140に強固に結合された状態に維持される。
【0052】
ドッキングキャップ136の本体部138は、チャンバ142を画定する。
図4B~
図4Cから理解できるように、ドッキング位置では、リードレスペースメーカ104のドッキング端部から延出するドッキング延出部148が、チャンバ142内に位置する。レトリーバ144は、トルクシャフト114のルーメン内で変位可能であり、ドッキング延出部148と解放可能に係合するように構成されている。より具体的には、レトリーバ144は、ドッキング延出部148に対して配置するために、ドッキングキャップ136の本体部138を通って延在可能である。そして、ドッキングキャップ136の本体部138でドッキング延出部148を覆うことにより、チャンバ142内でレトリーバ144によってドッキング延出部148が捕捉される。
【0053】
ドッキング位置では、カテーテルシステム108は、リードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供する。
図5は、テストモード中、またはリードレスペースメーカ104の植え込み中にリードレスペースメーカ104を再配置または他の方法で操作するために、トルクシャフト114がトルク可能(torqueable)であり、複数の方向における変位の自由度を有して調節可能であることを示す。トルクシャフト114は、フレキシブルであるか、及び/または、様々な材料から作製され得る。例えば、トルクシャフト114は、ポリマーや金属などから作製され得る。トルクシャフト114は、中空ヘリカルケーブルとして形成されたカテーテル積層構造、及び/または、トルク伝達及びステアリングのための他の構造で作製され得る。一実施形態では、トルクシャフト114及び/または操作可能カテーテル118は、ハイポチューブである。他の実施形態では、トルクシャフト114及び/または操作可能カテーテル118は、フレキシビリティを高めるために、ケーブルチューブ、レーザカットチューブ、押出成形品、ワイヤ、ワイヤケーブルなどを含む。
【0054】
図6から理解できるように、ドッキングキャップ136は、レトリーバ144に沿って変位可能であり、これにより、レトリーバ144を、チャンバ142内でレトリーバ144とドッキング延出部148とが係合してカテーテルシステム108がリードレスペースメーカ104にドッキングされる係合位置と、レトリーバ144とドッキング延出部148との係合が解除され、レトリーバ144がチャンバ142の外側に位置しその自然状態に戻る係合解除位置(disengaged position)との間で変位させる。
図6及び
図7に示すように、一実施形態では、ドッキングキャップ136が近位方向に後退することによって、レトリーバ144は半径方向に展開してその自然状態に戻り、これにより、レトリーバ144とドッキング延出部148との係合が解除され、リードレスペースメーカ104がカテーテルシステム108から解放される。回収や再配置などのためにリードレスペースメーカを再度捕捉するためには、レトリーバ144をドッキング延出部148に対して配置し、ドッキングキャップ136でレトリーバ144を覆うことによって、チャンバ142内でレトリーバ144を半径方向に閉じてドッキング延出部148を覆う。
【0055】
一実施形態では、レトリーバ144は、互いに対向して配置された第1のアーム及び第2のアームを有し、第1のアーム及び第2のアームが各々、レトリーバ144の長手方向軸から半径方向外方に付勢されたヒンジ部を形成するように構成されたフレキシブルな把持器(grasper)である。換言すれば、レトリーバ144は、
図6及び
図7に示すように、自由空間において展開してその自然状態に戻るように付勢される。一実施形態では、自然状態のレトリーバ144においては、第1のアーム及び第2のアームによって、ドッキング延出部148の直径、いくつかの例ではリードレスペースメーカ104の本体部の直径よりも大きい内径を有する開口部が画定される。フレキシブルな把持器の形態のレトリーバ144は、これに限定しないが、ニチノールまたは他の形状記憶ワイヤ、ケーブル、チューブなどを含む、様々な弾性または他のフレキシブルな材料から作製され得る。
【0056】
図4A~
図7から理解できるように、ドッキングキャップ136がレトリーバ144に沿って軸方向に変位することにより、カテーテルシステム108はドッキング位置と解放位置(released position)との間で変位する。一実施形態では、ドッキングキャップ136の本体部138は、チャンバ142に対して配置された1以上のキャップ面を含む。キャップ面は、レトリーバ144の第1のアーム及び第2のアームを半径方向内方に変位させ、かつ、第1のアーム及び第2のアームをドッキング延出部148の周りに押し付けた状態に維持する。このように、ドッキングキャップ136及びリードレスペースメーカ104のドッキング端部は、ドッキングキャップ136でレトリーバ144を覆っているときに、レトリーバ144がドッキング延出部148にロック(固定)された状態に維持されるように構成されている。このドッキング状態(docked position)により、患者の解剖学的構造を通じた、患者の心臓102内の植え込みのための標的位置へのリードレスペースメーカの送達が容易になる。リードレスペースメーカが植え込まれると、ドッキングキャップ136を近位方向に後退させることによって、レトリーバ144の第1のアーム及び第2のアームは半径方向外方に展開して自然状態に戻ることが可能となり、これにより、ドッキング延出部148がレトリーバ144から係合解除されて解放される。その後、カテーテルシステム108は、患者から取り出される。ドッキング延出部148は、レトリーバ144をドッキングキャップ136で覆うことによって、回収または再配置のために再度捕捉することができる。解放中及び捕捉中、患者組織へのタギングまたは外傷は、係合位置と係合解除位置との間での、レトリーバ144の第1のアーム及び第2のアームの半径方向の変位によって低減または除去される。
【0057】
図8及び
図9は、第1のアーム200及び第2のアーム202を有し、第1のアーム200及び第2のアーム202の各々がフレキシブルなループ部を形成するフレキシブルな把持器の形態のレトリーバ144の例を示す。フレキシブルなループ部は、トルクシャフト114のルーメンを通って延在する1以上のマンドレルに取り付けられる。一実施形態では、第1のアーム200は、1以上の細長い本体部(例えば、第1の細長い本体部206及び第2の細長い本体部208)を含む。第1の細長い本体部206は、第1の平面内で第2の細長い本体部208に対して平行に延在し、第2の細長い本体部208との間にギャップを形成する。第1の組のテーパ部によって、1以上の細長い本体部が、第1の組の把持部に接続される。一実施形態では、第1の把持部214は、第1の平面内で第1のテーパ部210によって第1の細長い本体部206に接続され、第2の把持部216は、第1の平面内で第2のテーパ部212によって第2の細長い本体部208に接続される。第1の把持部214は、第2の把持部216、第1の細長い本体部206、及び第2の細長い本体部208に対して略平行である。第1の把持部214と第2の把持部216との間の距離は、第1の細長い本体部206と第2の細長い本体部208との間の距離よりも大きく、第1のテーパ部210及び第2のテーパ部212は、第1の把持部214及び第2の把持部216から第1の細長い本体部206及び第2の細長い本体部208まで内向きに延びる。第1のアーム200のフレキシブルなループ部が、第1の把持部214と第2の把持部216との間に曲線状に延在する第1のループ部218によって形成される。
【0058】
第2のアーム202は、第1のアーム200と対称的であり得る。一実施形態では、第2のアーム202は、1以上の細長い本体部(例えば、第3の細長い本体部220及び第4の細長い本体部222)を含む。第3の細長い本体部220は、第2の平面内で第4の細長い本体部222に対して平行に延在し、第4の細長い本体部222との間にギャップを形成する。第2の平面は第1の平面に対して平行である。第2の組のテーパ部によって、1以上の細長い本体部が、第2の組の把持部に接続される。一実施形態では、第3の把持部228は、第2の平面内で第3のテーパ部224によって第3の細長い本体部220に接続され、第4の把持部230は、第2の平面内で第4のテーパ部226によって第4の細長い本体部222に接続される。第3の把持部228は、第4の把持部230、第3の細長い本体部220、及び第4の細長い本体部222に対して略平行である。第3の把持部228と第4の把持部230との間の距離は、第3の細長い本体部220と第4の細長い本体部222との間の距離よりも大きく、第3のテーパ部224及び第4のテーパ部226は、第3の把持部228及び第4の把持部230から第3の細長い本体部220及び第4の細長い本体部222まで内向きに延びる。第2のアーム202のフレキシブルなループ部が、第3の把持部228と第4の把持部230との間に曲線状に延在する第2のループ部232によって形成される。
【0059】
レトリーバ144のドッキング状態及び自然状態をそれぞれ示す
図8及び
図9から理解できるように、一実施形態では、第1のアーム200及び第2のアーム202はそれぞれ、レトリーバ144の長手方向軸から半径方向外方に付勢されたヒンジ部を形成する。レトリーバ144がドッキング状態にあるときは、第1の組の把持部214及び把持部216は、第1の平面及び第2の平面内で、第2の組の把持部228及び把持部230に隣接して位置する。このドッキング状態では、第1のループ部218及び第2のループ部232は互いに対して反対方向に延び、第1のループ部218と第2のループ部232との間に、ドッキング空間234を画定するリングが形成される。ドッキング空間234は、ドッキング延出部148のサイズ及び形状と一致するようなサイズ及び形状に形成される。本明細書中に記載されるように、第1のアーム200及び第2のアーム202は、ドッキング延出部148の構成要素と嵌合係合(matingly engage)するように構成される。
【0060】
レトリーバ144が自然状態に変化するときは、第1の組の把持部214及び216が第2の組の把持部228及び把持部230に対して或る角度をなすように、あるいは、第1の組の把持部214及び216が第1の平面に対して或る角をなし、かつ第2の組の把持部228及び把持部230が第2の平面に対して或る角度をなすように、第1のアーム200及び第2のアーム202は、長手方向軸から半径方向外方に回動変位する。一実施形態では、ドッキングキャップ136を近位方向に後退させると、第1のループ部218及び第2のループ部232によって形成されたリングが半径方向外方に展開してリングの直径がより大きくなり、これにより、ドッキング延出部148がレトリーバ144から係合解除されて解放される。
【0061】
図10A~
図10Bを参照すると、ドッキング延出部148は、第1のアーム200及び第2のアーム202、並びにドッキングキャップ136と嵌合係合して、レトリーバ144による捕捉を容易にし、かつトルク伝達を提供するように構成された構成要素を有する。一実施形態では、リードレスペースメーカ104は、本体部300のドッキング端部の表面302から延出するドッキング延出部148を含む。ドッキング延出部148は、ドッキングキャップ136のチャンバ142に対して配置され、対応するキャップ面に嵌合係合するように構成された縁部ドッキング面306、及び端面308などを含む1以上のドッキング面を有し、これらにより、リードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供する。一実施形態では、縁部ドッキング面306は、ドッキング延出部148を中心にして半径方向に対称であり得る1以上の平坦な半径方向面を含む。縁部ドッキング面306は、端面308に対して直交して延在するレッジ部を形成するように、端面308に対して配置され得る。一実施形態では、端面308は平坦であり、本体部300の表面302は平坦であり、端面308及び本体部300の表面302は、トルク伝達のための追加の表面を提供する。
【0062】
ドッキング面は、ドッキングキャップ136及び/またはレトリーバ144の対応する構成要素と嵌合係合するように構成された1以上のキー部を有し得る。本体部300のドッキング端部のドッキング延出部148及び/または表面302は、1以上のキー部を有し得る。一実施形態では、ドッキング延出部148は、ドッキング延出部148を貫通して本体部300の表面302から端面308まで延在するサイドキー310を有する。サイドキー310は、半径方向において互いに対称になるように、半径方向において互いに対して反対側に配向され得る。
図11に示すように、一実施形態では、サイドキー310は、係合位置において、レトリーバ144の第1のアーム200及び第2のアーム202の一部と係合するように構成されている。例えば、ドッキングキャップ136でドッキング延出部148を覆っているときに、把持部214、把持部216、把持部228、及び把持部230は変位してサイドキー310内に位置し、かつドッキングキャップ136によって係合位置に保持される。サイドキー310は、レトリーバ144の第1のアーム200及び第2のアーム202を介してトルクを伝達するための1以上のキー面312を含み得る。
【0063】
同様に、ドッキング延出部148は、縁部ドッキング面306から凹設され、レトリーバ144の第1のアーム200及び第2のアーム202の少なくとも一部と嵌合係合するように構成されたネック部304を含み得る。例えば、ドッキングキャップ136は、第1のループ部218及び第2のループ部232を半径方向内方に回動変位させてネック部304に嵌合係合させることができる。また、ドッキングキャップ136は、係合位置において、第1のループ部218及び第2のループ部232をドッキング延出部148の周りに押し付けた状態に維持する。凹設されたネック部304は、第1のアーム200及び第2のアーム202が長手方向に変位してドッキング延出部148から係合解除されることを防止する。ドッキング延出部148の幾何学的形状は、ドッキングキャップ136が遠位方向に変位してドッキング延出部148を覆うとき、またはドッキングキャップ136がドッキング延出部148から近位方向に後退するときに、レトリーバ144による円滑な捕捉及び解放を容易にする。
【0064】
図12を参照すると、ドッキングキャップ136の本体部138は、チャンバ142に対して配置された1以上のキャップ面を含み、この1以上のキャップ面は、リードレスペースメーカ104のドッキング端部のドッキング面及び/またはレトリーバ144の構成要素と嵌合係合するように構成されている。一実施形態では、1以上のキャップ面は、遠位端面400と、近位チャンバ面402と、チャンバ142内で遠位端面400の近位に配置された1以上のレッジ面406と、近位チャンバ面402及びレッジ面406間に延在する1以上の側面404とを含む。遠位端面400は、チャンバ142に通じる開口部を画定し、近位チャンバ面402は、受容部140を貫通してチャンバ142に通じる近位開口部408を画定する。近位開口部408は、トルクシャフト114のルーメン及びレトリーバ144の長手方向軸と同軸をなしている。
【0065】
レッジ面406は、リードレスペースメーカ104の本体部300のドッキング端部の表面302のサイズ及び形状を反映し得る。例えば、レッジ面406及び表面302の両方は、平坦であり得る。同様に、近位チャンバ面402は、ドッキング延出部148の端面308と嵌合係合するように、かつ側面404が縁部ドッキング面306と係合するようなサイズ及び形状に形成され得る。様々なキャップ面の各々と、それに対応するドッキング面との嵌合係合により、トルク伝達が提供される。ドッキング状態にあるとき、ドッキング延出部148とドッキングキャップ136との係合により、約500gの嵌合垂直力で約1.5インチ-オンスのトルクが発生する。したがって、発生したトルクは、リードレスペースメーカをヒト組織に埋め込むために一般に必要とされる0.125インチ-オンス以下のトルクよりも一桁高い。
【0066】
リードレスペースメーカ104のドッキング端部の様々な幾何学的形状の例を
図13~
図18に示す。幾何学的形状は、ドッキングキャップ136の対応する構成要素と嵌合係合する、トルク伝達キー、ディンプル、及び/または幾何学的構成要素の形態の1以上のキー部を含む。まず
図13を参照すると、一実施形態では、本体部300の表面302は、該表面に形成された1以上のアンダーカットキー314を有する。代替的または追加的に、ドッキング延出部148は、
図14A~
図14Cに示すように、角度付き切欠部を形成するサイドキー310を含む十字形状を有し得る。
【0067】
別の実施形態では、
図15A~
図18に示すように、ドッキング延出部148の端面308は、丸みを帯びた形状に形成される。端面308の輪郭は、低い輪郭曲線から高いドーム形状の輪郭までの様々な長さを有することができ、いずれの場合でも端面308は非外傷性の滑らかな丸みを帯びた面である。ドッキングキャップ136は、端面308のサイズ及び形状を反映した対応するキャップ面を含み、係合位置において、レトリーバ144をドッキング延出部148に対して押し付けた状態に維持する。キャップ面と端面308との摩擦接触によって、トルク伝達が提供される。
図16A~
図18から理解できるように、トルク伝達をさらに容易にするために、端面308は、キャップキー410と嵌合係合するように構成されたサイドキー310を有し得る。
図19A~
図19Bに示すように、嵌合面の摩擦を増大させるために、シリコーンまたは同様の材料から作られたオーバーモールディング412を、チャンバ142内のキャップ面及び/またはドッキング延出部148に適用してもよい。
【0068】
図17A~
図18を参照すると、ヘリカルアンカー106は、ドッキング端部と反対側に位置する、リードレスペースメーカ104の固定端部に設けられる。一実施形態では、固定端部は、リードレスペースメーカ104の遠位端に位置し、ドッキング端部は、リードレスペースメーカ104の近位端に位置する。これらの構成要素の一部または全部は、リードレスペースメーカ104のサイズ制限に応じて逆にしてもよい(それらの表面から突出してもよい)ことは明らかであろう。
【0069】
図20~
図26Cを参照して、フレキシブルな把持器の形態のレトリーバ144の別の例、及びそれに対応するドッキング延出部148の例について詳細に説明する。まず
図20を参照すると、一実施形態では、ドッキング延出部148は、1以上のポスト(例えば、第1のポスト316及び第2のポスト318)によって端面308に取り付けられたドッキングボタン320を含む。
図21から理解できるように、ドッキングボタン320は、ポスト316及び318と一体化され得る。また、ドッキングボタン320は、第1の端部322と第2の端部324との間に延在する丸みを帯びた面であり得る。
【0070】
図21及び
図22に示すように、レトリーバ144は、ベース部504に結合されたマンドレル500を含む。マンドレル500はベース部504に、直接的に結合されていてもよいし、レトリーバシャフト502を介して間接的に結合されていてもよい。マンドレル500は、近位開口部408を通ってトルクシャフト114のルーメン内に延在する。レトリーバ144は、様々な弾性または他のフレキシブルな材料、これに限定しないが、例えば、ポリマー(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))や、ニチノールまたは他の形状記憶ワイヤ、ケーブル、チューブなどから作製され得る。
【0071】
レトリーバ144は、ベース部504から延出する第1のアーム506及び第2のアーム508を含み、第1のアーム506及び第2のアーム508は、それらの間にドッキング空間514を画定する。一実施形態では、第1のアーム506及び第2のアーム508は、ドッキングキャップ136でレトリーバ144を覆って、レトリーバ144をドッキング状態に変化させたときに、ドッキング空間514内でドッキングボタン320などのドッキング延出部148の少なくとも一部を把持するように構成されたヒンジ部を有する顎部を形成する。別の実施形態では、1以上のヒンジ部が、第1のアーム506及び第2のアーム508とベース部504との接続点に設けられる。第1のアーム506は第1のリップ部510を有し、第2のアーム508は第2のリップ部512を有する。第1のリップ部510及び第2のリップ部512の各々は、レトリーバ144のルーメン516の長手方向軸に向かって内向きに延びている。
【0072】
図23に示すように、一実施形態では、とりわけ、閾値をチェックするために、テザーモード中またはテストモード中にテザー518が導入され得る。テザー518は、これに限定しないが、スネアやフレキシブルなシャフトなどであり得る。例えば、テザー518は、遠位ループ522と、レトリーバ144のルーメン516を通って遠位ループ522まで遠位方向に延びる細長い本体部520とを含み得る。
【0073】
図24を参照すると、ドッキングキャップ136の別の例が示されている。本明細書中に記載されるように、ドッキングキャップ136の本体部138は、リードレスペースメーカ104のドッキング端部のドッキング面を介してリードレスペースメーカ104に対してトルクを提供するように、かつ、第1のアーム506及び第2のアーム508をドッキング延出部148の周りの係合位置に変位させるように構成された1以上のキャップ面を有する。一実施形態では、1以上のキャップ面は、チャンバ142に対して配置され、かつ、レトリーバ144のドッキング面及び/または構成要素と係合するように構成される。1以上のキャップ面は、遠位端面400と、近位チャンバ面402と、チャンバ142内で遠位端面400の近位に位置するレッジ面406と、近位チャンバ面402及びレッジ面406間に延在する側面404とを含み得る。遠位端面400は、チャンバ142に通じる開口部を画定し、近位チャンバ面402は、受容部140を貫通してチャンバ142に通じる近位開口部408を画定する。近位開口部408は、トルクシャフト114及び/または操作可能カテーテル118のルーメン、並びに、レトリーバ144のルーメン516の長手方向軸と同軸をなしている。
【0074】
レッジ面406は、リードレスペースメーカ104の本体部300のドッキング端部の表面302のサイズ及び形状を反映し得る。例えば、レッジ面406及び表面302の両方は、平坦であり得る。様々なキャップ面の各々と、それに対応するドッキング面との嵌合係合により、トルク伝達が提供される。トルク伝達をさらに容易にするために、1以上のキャップ面は、キャップキー410を有し得る。一実施形態では、キャップキー410は、レッジ面406から遠位端面400に向かって延びる遠位側面414の周方向に沿って複数設けられる。キャップキー410は、トルク伝達のためにドッキング延出部148に画定された対応するサイドキー310と嵌合係合するように構成され得る。
【0075】
ドッキング延出部148のさらなる実施例を
図25A~
図25Bに示す。一実施形態では、サイドキー310は、本体部300の表面302から端面308まで延在する、ドッキング延出部148の縁部ドッキング面306に形成される。サイドキー310は、半径方向において互いに対称になるように、半径方向において互いに反対側に配向され得る。一実施形態では、ドッキングキャップ136は、縁部ドッキング面306を遠位側面414に沿って配置し、キャップキー410をサイドキー310内に配置することによって、ドッキング延出部148と嵌合係合するように構成される。
【0076】
レッジ面406は、第1のアーム506及び第2のアーム508を、半径方向外方に付勢されているそれらの自然状態から半径方向内方に変位させるように構成されている。一実施形態では、レッジ面406は、
図21に示す係合位置において、第1のアーム506及び第2のアーム508がドッキングボタン320の周りに閉じるまで、第1のアーム506及び第2のアーム508を変位させる。側面404は、第1のリップ部510及び第2のリップ部512がドッキングボタン320の外縁を越えて内方に延びた状態で、第1のアーム506及び第2のアーム508をドッキングボタン320の周りに保持し、これにより、ドッキングボタン320がドッキング空間514から遠位方向に変位してレトリーバ144から解放される(脱離する)ことを防止する。
【0077】
ドッキングボタン320は、第1のポスト316及び第2のポスト318によって、端面308に取り付けられ得る。
図25A~
図25Bから理解できるように、ドッキングボタン320は、ポスト316及び318と一体化されるか、強固に結合されるか、及び/またはフレキシブルに接続され得る。一実施形態では、ドッキングボタン320は、第1の端部322と第2の端部324との間に延在する丸みを帯びた面であり、第1の端部322及び第2の端部324は、ボタンルーメン326に通じるギャップ開口によって互いに分離される。ドッキングボタン320は、第1のポスト316及び第2のポスト318をそれぞれ受容し係合するように構成された第1のスロット328及び第2のスロット330を有する。
【0078】
図26A~
図26Cを参照して、送達及び/または回収のためのリードレスペースメーカ104の係合及び脱離について詳細に説明する。一実施形態では、レトリーバ144は、ドッキング延出部148に対して配置される。
図26Aは、係合のためにドッキング延出部148に接近するレトリーバ144を示す。ドッキング延出部148は、第1のアーム506と第2のアーム508との間のドッキング空間514内に配置される。例えば、
図26Bに示すように、ドッキング延出部148のドッキングボタン320は、ドッキング空間514内に配置され得る。そして、ドッキングキャップ136の本体部138でレトリーバ144を覆うことにより、ドッキング延出部148を含むリードレスペースメーカ104のドッキング端部がチャンバ142内に配置される。ドッキングキャップ136は、レトリーバ144をドッキングボタン320の周りに押し付けた状態で保持して、リードレスペースメーカ104を
図26Cに示すドッキング状態にロックする。これにより、リードレスペースメーカ104は、カテーテルシステム108とドッキングされ、患者の解剖学的構造を通じた、例えば患者の心臓102内の植え込み部位への送達のための準備が整う。ドッキングキャップ136とリードレスペースメーカ104のドッキング端部との係合は、重力に抗してリードレスペースメーカ104をドッキング状態に維持するのに十分な強度であり得る。
【0079】
植え込み部位に配置されると、カテーテルシステム108は、ハンドル本体部122を使用して回転させられる。この回転のトルクは、1以上のキャップ面と1以上のドッキング面との嵌合係合によってリードレスペースメーカ104に伝達され、これにより、ヘリカルアンカー106を使用してリードレスペースメーカ104が植え込み部位の組織に固定される。いくつかの実施では、テザー518は、閾値をチェックするために使用される。リードレスペースメーカ104が植え込み部位に固定されると、カテーテルシステム108は、リードレスペースメーカ104を解放する。一実施形態では、ドッキングキャップ136の本体部138を、レトリーバ144がチャンバ142の外側に位置するまで近位方向に後退させて、第1のアーム506及び第2のアーム508を半径方向外方に弾性復帰させて展開させることにより、レトリーバ144とドッキングボタン320との係合を解除する。その後、カテーテルシステム108は、患者の解剖学的構造に沿って後退させることにより、患者の身体から取り出される。
【0080】
リードレスペースメーカ104の回収時には、カテーテルシステム108を患者の体内に導入し、レトリーバ144がドッキング延出部148に対して配置されるまで、患者の解剖学的構造を通じて植え込み部位に向けて前進させる。次いで、レトリーバ144を、ドッキングボタン320が第1のアーム506と第2のアーム508との間のドッキング空間514内に配置されるまで前進させる。そして、本明細書中に記載されるように、ドッキングキャップ136の本体部138でレトリーバ144を覆うことにより、リードレスペースメーカ104をドッキング状態にあるカテーテルシステム108にロックする。その後、カテーテルシステム108を、ドッキング延出部148とドッキングキャップ136との嵌合係合により回転させて、リードレスペースメーカ104にトルクを伝達することによって、植え込み部位の組織からヘリカルアンカー106を脱離させる。レトリーバ144、または切断エッジなどのカテーテルシステム108の他の構成要素を使用して、リードレスペースメーカ104上で過成長した組織を除去することができる。リードレスペースメーカ104は、ドッキング状態に維持され、カテーテルシステム108を、患者の解剖学的構造を通じて後退させることにより、リードレスペースメーカ104は回収される。
【0081】
レトリーバ144を、ドッキング延出部148の周りで係合位置にロックするように構成されたドッキングキャップの別の例について、
図27を参照して説明する。一実施形態では、ドッキングキャップは、細長い本体部524を含む。細長い本体部524は、その内部に画定されたルーメン526を有する。スネア、ケーブル、または他のテザーであり得るテザー528が、細長い本体部524のルーメン526、及び、レトリーバ144のルーメン516を通って延在している。テザー528は、ドッキング延出部148に通してカテーテルシステム108のハンドル本体部122に戻すことによってループ状にされる。
【0082】
一実施形態では、リードレスペースメーカ104のドッキング延出部148は、リードレスペースメーカ104の本体部300の表面302にポスト316によって取り付けられたドッキングボタン320を含む。ドッキングボタン320は、平坦な遠位面と、その遠位面から延出するフック332とを含む。テザー528は、フック332に通すことによってループ状にされる。
【0083】
本明細書中で説明されるように、ドッキング状態にあるレトリーバ144をドッキング延出部148と係合させる場合は、細長い本体部524を第1のアーム506及び第2のアーム508に沿って遠位方向に変位させることによって、ドッキング空間514でドッキングボタン320を係合位置にロックする。レトリーバ144からリードレスペースメーカ104を解放する場合は、細長い本体部524を、第1のアーム506及び第2のアーム508が半径方向外方に弾性復帰して自然状態に戻るまで近位方向に変位させることによって、レトリーバ144とドッキングボタン320との係合を解除する。
【0084】
図28及び
図29を参照すると、レトリーバ144の別の例が示されている。一実施形態では、レトリーバ144は、レトリーバベース600を含み、レトリーバベース600から、中央ルーメン604を中心として互いに対向配置された第1のアーム及び第2のアームを含む一組のアーム602が延びている。一実施形態では、一組のアーム602は、レトリーバベース600を貫通して延在するレトリーバシャフト606上に設けられるか、及び/またはレトリーバシャフト606と一体化されている。中央ルーメン604は、レトリーバシャフト606、レトリーバベース600、及び一組のアーム602を貫通して延在している。
【0085】
一組のアーム602は、自然状態では、中央ルーメン604に向かって半径方向内方に付勢されている。一実施形態では、中央ルーメン604内でマンドレル608を変位させることにより、一組のアーム602がドッキング延出部148に対する係合位置と係合解除位置との間で変位する。より具体的には、ドッキング延出部148は、リードレスペースメーカ104の本体部300のドッキング端部の表面302またはその一部から延びるドッキング面306に画定されたドッキング面開口部334を有し得る。一組のアーム602は、中央ルーメン604から半径方向外方に延びる第1のタブ610及び第2のタブ612を有する。自然状態すなわち非係合状態では、一組のアーム602は半径方向内方に付勢されており、これにより、一組のアーム602はドッキング面開口部334を通って前進することができる。マンドレル608を、中央ルーメン604を通じて遠位方向に前進させることによって、一組のアーム602を互いに対して弾性的に離間させることができる。その結果、第1のタブ610及び第2のタブ612が半径方向外方に変位して、ドッキング面開口部334を画定する縁部と係合し、これにより、レトリーバ144をドッキング延出部148にロックする。
【0086】
レトリーバ144とドッキング延出部148との係合を解除してリードレスペースメーカ104を解放する場合は、マンドレル608を中央ルーメン604内で近位方向に後退させ、一組のアーム602を半径方向内方に向けて弾性復帰させて自然状態に戻す。これにより、第1のタブ610及び第2のタブ612と、ドッキング面開口部334を画定する縁部との係合が解除され、カテーテルシステム108を後退させることが可能となる。
【0087】
図30A~
図40を参照して、スネアループの形態のレトリーバ144の例について詳細に説明する。まず
図30A~
図30Bを参照すると、一実施形態では、ドッキングキャップ136の本体部138は、カテーテルシステム108の構成要素、例えばトルクシャフト114に固定される。ドッキングキャップ136のチャンバ142は、カテーテルシステム108のルーメン、例えばトルクシャフト114のルーメンと同軸をなしている。
【0088】
一実施形態では、レトリーバ144は、チャンバ142から遠位方向に延びる第1のシース702及び第2のシース704を含む。第1のシース702及び第2のシース704は、チャンバ142を通ってカテーテルシステム108のルーメン内まで近位方向に延びる。第1のシース702及び第2のシース704は各々、チャンバ142及びトルクシャフト114のルーメンを通って長手方向に変位可能である。
【0089】
スネア700が、第1のシース702及び第2のシース704から遠位方向に延びている。スネア700は、第1のシース702及び第2のシース704内で変位可能である。スネア700は、ドッキング延出部148と解放可能に係合するために、係合位置と係合解除位置との間で変位可能に構成される。第1のシース702及び第2のシース704は、これに限定しないが、スチール、弾性ケーブルチューブ、編状またはコイル状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)含浸ポリイミドチューブなどを含む様々な材料から作製され得る。スネア700は、ニチノールまたは他の弾性材料などの様々なフレキシブルな材料から作製され得る。
【0090】
図31A及び
図31Bを参照すると、一実施形態では、スネア700は、第1のシース702の第1のスネアルーメン710及び第2のシース704の第2のスネアルーメン712から延びており、かつ、第1のスネアルーメン710及び第2のスネアルーメン712内で変位可能である。スネア700は、第1のスネアルーメン710及び第2のスネアルーメン712内の係合位置と係合解除位置との間で変位して、リードレスペースメーカ104のドッキング延出部148を捕捉または解放する。一実施形態では、第1のシース702は第1の端部コイル706を有し、第2のシース704は第2の端部コイル708を有する。放射線不透過性は、第1の端部コイル706及び第2の端部コイル708を放射線不透過性にすることによって得ることができる。代替的または追加的に、ニチノールとチタンまたは白金とを様々なシース/コア比で組み合わせたNiTi DFT複合ワイヤや、NiTiケーブル中のタングステンまたはタンタルストランドなどを放射線不透過性のために使用してもよい。さらに、放射線不透過性コイル及び/またはマーカーバンドをスネア700にクリンプするか、または他の方法で取り付けてもよい。また、放射線不透過性コイルは、NiTiコアなどに巻き付けてもよい。
【0091】
一実施形態では、スネア700は、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716を含む。第1のスネアワイヤ714は、第1のスネアルーメン710から第2のスネアルーメン712内まで延びて、第1の方向を向いた第1のスネアループを形成し、第2のスネアワイヤ716は、第1のスネアルーメン710から第2のスネアルーメン712内まで延びて、第2の方向を向いた第2のスネアループを形成する。一実施形態では、第1の方向は第2の方向とは異なり、第1のスネアループと第2のスネアループとの間にドッキング空間が形成される。第1の方向は、スネア700がダックビル形状を形成するように、第2の方向に対して方向付けされてもよい。
【0092】
図32~
図36から理解できるように、ドッキング延出部148をカテーテルシステム108と係合させ、かつ、カテーテルシステム108によってリードレスペースメーカ104をドッキング位置にロックするために、スネア700によって形成されたドッキング空間は、
図32に示すように、ドッキング延出部148の少なくとも一部、例えばドッキングボタン320などに対して配置される。その後、スネア700を、ドッキング延出部148がドッキング空間内に配置されるまで、リードレスペースメーカ104に沿って遠位方向に前進させる。例えば、
図33Aに示すように、ドッキングボタン320がスネア700のドッキング空間内に配置されるまで、第1のスネアループ及び第2のスネアループを遠位方向に前進させる。スネア700の前進は、カテーテルシステム108、スネア700、及び/または、第1のシース702及び第2のシース704を前進させることによって行うことができる。第1のシース702及び第2のシース704は、ドッキングキャップ136を通って変位可能であり、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716は各々、第1のスネアルーメン710及び第2のスネアルーメン712内で変位可能である。
【0093】
スネア700は、第1のスネアルーメン710及び第2のスネアルーメン712内で第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716を近位方向に変位させることによって、係合解除位置から係合位置(
図33B及び
図34参照)に変位可能である。換言すれば、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716は各々、第1のスネアルーメン710及び第2のスネアルーメン712内に引き込まれる。第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716の近位方向への変位により、スネア700を締めて、第1のスネアループ及び第2のスネアループを狭めてより小さなループにする。換言すれば、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716によって形成される各スネアループの先端(ピーク)を、第1のシース702及び第2のシース704の遠位端に向けて近位方向に変位させることにより、各スネアループのサイズを小さくする。加えて、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716によって形成されるスネアループの各ピークは、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716の近位方向への変位中に、互いに向かって、かつドッキング空間の中心軸に向かって同時に変位する。各ピークが、互いに向かって、かつ中心軸に向かって半径方向内方に変位することによってドッキング空間のサイズが小さくなり、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716がドッキング延出部148の少なくとも一部の周りに締め付けられ、これにより、ドッキング延出部148を係合位置にロックする。例えば、
図33B及び
図34に示すように、ドッキング空間のサイズは、第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716が第1のポスト316及び第2のポスト318を取り囲むまで、及び/またはドッキング空間のサイズがドッキングボタン320のサイズより小さくなるまで、小さくすることができる。
【0094】
スネア700は、ドッキング延出部148を捕捉するとともに、リードレスペースメーカ104が変位の自由度を有する状態でドッキング延出部148を係合位置にロックする。より詳細には、
図35に示されるように、スネア700とドッキング延出部148との係合は、チャンバ142、及び/またはカテーテルシステム108の1以上のルーメンを通って延びる長手方向軸に対するリードレスペースメーカ104の変位を可能にする連結部(junction)を提供する。上記の変位は、カテーテルシステム108からリードレスペースメーカ104を解放することなく行われる、長手方向軸に対して平行な変位、または長手方向軸に対して或る角度をなす変位であり得る。例えば、
図35に示すように、上記の連結部はヒンジのように作用して、リードレスペースメーカ104を解放することなく、リードレスペースメーカ104を再配置することを可能にする。
【0095】
図36に示すように、スネア700がドッキング延出部148と共に係合位置に位置したとき、リードレスペースメーカ104をカテーテルシステム108とのドッキング位置に変位させるために、ドッキング延出部148がドッキングキャップ136のチャンバ142内に配置されるまで、第1のシース702及び第2のシース704を近位方向に後退させる。ドッキング位置では、リードレスペースメーカ104は、患者の解剖学的構造を通じて、植え込み部位へ及び/または植え込み部位から変位することができる。リードレスペースメーカ104の回収中、スネア700、及び/またはレトリーバ144の他の構成要素は、切断エッジまたは同様の構成要素を使用して、リードレスペースメーカ104上で過成長した組織を除去することができる。さらに、例えば、ドッキング延出部148とスネア700との係合が維持されるように、第1のシース702及び第2のシース704を第1のスネアワイヤ714及び第2のスネアワイヤ716と共に前進させることによって閾値をテストするために、レトリーバ144をテザーモード及び/またはテストモードで使用してもよい。
【0096】
図37~
図40を参照して、レトリーバ144とドッキングキャップ136との相互作用を詳細に説明する。一実施形態では、本明細書中に記載されるように、ドッキングキャップ136の本体部138は、リードレスペースメーカ104のドッキング端部のドッキング面を介してリードレスペースメーカ104にトルクを提供するように構成された1以上のキャップ面を有する。一実施形態では、1以上のキャップ面は、チャンバ142に対して配置され、ドッキング面及び/またはレトリーバ144の構成要素と嵌合係合するように構成される。1以上のキャップ面は、遠位端面400と、近位チャンバ面402と、近位チャンバ面402及び遠位端面400間に延在する側面404とを含み得る。遠位端面400は、チャンバ142に通じる開口部を画定し、近位チャンバ面402は、受容部140を通って延びるチャンバ142に通じる近位開口部408を画定する。近位開口部408は、トルクシャフト114及び/または操作可能カテーテル118のルーメンの長手方向軸、及びスネア700の中心軸と同軸であり得る。
【0097】
様々なキャップ面の各々と、それに対応するドッキング面との嵌合係合により、トルク伝達が提供される。トルク伝達をさらに容易にするために、1以上のキャップ面はキャップキー410を有し得る。一実施形態では、キャップキー410は、側面404の周方向に沿って、例えば長手方向軸の半径方向において互いに反対側に位置するように複数設けられる。キャップキー410は、本明細書中に記載されるように、トルク伝達のために、ドッキング延出部148に画定された対応するサイドキー310と嵌合係合するように構成され得る。
【0098】
一実施形態では、ドッキングキャップ136は、レトリーバ144の1以上のシースに対応する1以上のトラッカーをさらに含む。例えば、ドッキングキャップ136は、第1のシース702に対応する第1のトラッカー416と、第2のシース704に対応する第2のトラッカー418とを含み得る。一実施形態では、第1のトラッカー416及び第2のトラッカー418は、第1のシース702及び第2のシース704の互いに対する配向(向き)、及び近位開口部408を通って延びる長手方向軸と同軸の中心軸に対する配向を維持する。上記の配向は、例えば、第1のシース702及び第2のシース704を、中心軸を中心として互いに半径方向の反対側の位置に維持することを含み得る。換言すれば、第1のシース702及び第2のシース704は、中心軸を中心として、互いに対して約180度の角度をなして配置され得る。
【0099】
第1のシース702及び第2のシース704は、それぞれ、第1のトラッカー416及び第2のトラッカー418内で変位可能である。一実施形態では、
図38~
図40に示すように、第1のトラッカー416は、第1のシース702が変位可能な第1のトラッカールーメン420を有し、第2のトラッカー418は、第2のシース704が変位可能な第2のトラッカールーメン422を有する。これにより、第1のトラッカー416及び第2のトラッカー418は、第1のシース702及び第2のシース704を、ドッキング延出部148を捕捉するためにスネア700を配置するのに適した向きに維持する。その結果、第1のシース702及び第2のシース704をトルクシャフト114のルーメン内に引き込むことによって、スネア700をチャンバ142内のドッキング位置に変位させることができる。
【0100】
一実施形態では、
図39~
図40に示すように、ドッキングボタン320は、第1のポスト316及び第2のポスト318に固定された一組のドッキングボールによってドッキング延出部148に取り付けられる。第1のポスト316は、第1の近位ボール336と第1の遠位ボール340との間に延在し得る。第1の近位ボール336は第1のスロット328内に配置され、第1の遠位ボール340は端面308の開口部を通って延びており、これにより、ドッキングボタン320は第1のポスト316によってドッキング延出部148に取り付けられる。同様に、第2のポスト318は、第2の近位のボール338と第2の遠位のボール342との間に延在し得る。第2の近位ボール338は第2のスロット330内に配置され、第2の遠位ボール342は端面308の別の開口部を通って延びており、これにより、ドッキングボタン320は第2のポスト318によってドッキング延出部148に取り付けられる。一実施形態では、第1のポスト316は、半径方向において第2のポスト318と対称となるように、ドッキング延出部148及びドッキングボタン320に取り付けられる。
【0101】
本明細書中に記載されるように、ドッキングキャップ136を使用して、レトリーバ144を変位させてドッキング延出部148と係合させることができるのは明らかであろう。追加的または代替的に、プッシュプルアクチュエータ826を使用して、レトリーバ144をドッキング延出部148に対して係合及び係合解除させてもよい。例えば、
図41~
図46を参照すると、一実施形態では、レトリーバ144は、ヒンジ式の把持器の形態であり、プッシュプルアクチュエータ826によって係合位置と係合解除位置との間で変位可能である。
【0102】
まず
図41~
図43を参照すると、一実施形態では、リードレスペースメーカ104は、本体部300のドッキング端部の表面302から延出するドッキング延出部148を含む。ドッキング延出部148は、スロット802を画定する延出部800を含む。一実施形態では、延出部800は、表面302を横切って第1の方向に延びる長さを有し、この長さは、表面302の直径と略同一である。また、延出部800は、表面302を横切って第2の方向に延びる狭い幅を有し、この幅は、表面302の直径よりも小さい。
【0103】
延出部800は、スロット802を画定し、かつ、レトリーバ144の対応する構成要素と嵌合係合するように構成された1以上のドッキング面を含み、このドッキング面によって、リードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供する。一実施形態では、ヒンジ式の把持部の形態のレトリーバ144は、第1のアーム804及び第2のアーム806を有して構成される。第1の把持部808が、第1のアーム804の先端に配置される。また、第1の把持部808は、第1の切欠部812を含む。同様に、第2の把持部810が、第2のアーム806の先端に配置される。また、第2の把持部810は、第2の切欠部814を含む。
【0104】
第1の切欠部812及び第2の切欠部814は、延出部800と係合するように構成されたドッキング空間816を協働的に画定する。より具体的には、リードレスペースメーカ104を係合位置に係合させる場合は、延出部800の近位部分をドッキング空間816内に配置した状態で、第1の把持部808及び第2の把持部810のリップ部をスロット802内に挿入することにより、レトリーバ144によってドッキング延出部148が把持される。第1のアーム804及び第2のアーム806を、半径方向外方に向けて係合解除位置まで変位させると、第1の把持部808及び第2の把持部810はドッキング空間816を広げて延出部800を解放する。一実施形態では、第1のアーム804及び第2のアーム806は各々、第1の把持部808及び第2の把持部810から基部818にかけて、近位方向に向かって幅が先細になっている。
【0105】
第1のアーム804及び第2のアーム806を係合位置と係合解除位置との間で変位させる場合、プッシュプルアクチュエータ826を、チャンバ142内でドッキングキャップ136に対して変位させる。プッシュプルアクチュエータ826は、トルクシャフト114のルーメンを通って延在しており、トルクシャフト114のルーメン内で変位することができる。一実施形態では、プッシュプルアクチュエータ826は、プッシュプルアクチュエータ826の本体部から遠位方向に延びるネック部824を含む。ネック部824は、プッシュプルアクチュエータ826の長手方向軸から半径方向外方に延びる1以上のノブ822を有する。ネック部824は、第1のアーム804及び第2のアーム806の各々に形成されたギャップ830内に配置され、ノブ822の各々は、第1のアーム804及び第2のアーム806の各々の対応するトラック820と係合する。1以上のヒンジピン828が、ドッキングキャップ136及びアーム804、806に形成された孔を通って延在し、これにより、レトリーバ144がドッキングキャップ136に回転可能に取り付けられる。トラック820内でのノブ822と第1のアーム804及び第2のアーム806との係合により、プッシュプルアクチュエータ826の本体部を遠位方向または近位方向に変位させたときに、第1のアーム804及び第2のアーム806をヒンジピン828の回転軸を中心として半径方向内方または半径方向外方に向けて変位させることができる。
【0106】
同様に、
図44~
図46を参照すると、第1のアーム804及び第2のアーム806は、プッシュプルアクチュエータ826との係合位置と係合解除位置との間で変位可能である。一実施形態では、ドッキング延出部148は、第1のアーム804及び第2のアーム806の対応する構成要素と係合するように構成された1以上のドッキング面、例えば縁部ドッキング面306などを含み、このドッキング面によって、リードレスペースメーカ104にトルク伝達を提供する。ドッキング面306は、ドッキング延出部148の六角形または他の多角形の形状を形成することができる。第1のアーム804は、第1のドッキング面832を有し得る。また、第2のアーム806は、第2のドッキング面834を有し得る。第1のドッキング面832及び第2のドッキング面834の各々は、縁部ドッキング面306の形状に対応する平面または他の形状であり得る。
【0107】
第1のドッキング面832及び第2のドッキング面834は、ドッキング延出部148の1以上の縁部ドッキング面306と係合するように構成される。より具体的には、リードレスペースメーカ104を係合位置に係合させるために、第1のドッキング面832及び第2のドッキング面834は、縁部ドッキング面306に対して押し付けられ、これにより、ドッキング延出部148はレトリーバ144によって把持される。第1のアーム804及び第2のアーム806を、半径方向外方に向けて係合解除位置まで変位させると、第1の把持部808及び第2の把持部810はドッキング延出部148を解放する。
【0108】
上述の説明は単に、本開示の技術の原理を示しているにすぎない。説明された実施形態に対する様々な修正及び変更は、本明細書の教示を考慮すれば当業者には明らかであろう。したがって、当業者であれば、本明細書中に明示的に図示または説明されていないが本開示の技術の原理を具現化する、様々なシステム、構成及び方法を考案しことができ、それらは本開示の技術の精神及び範囲に含まれることは明らかであろう。上記の説明及び図面から、図示及び説明された特定の実施形態は、例示のみを目的としており、本開示の技術の範囲を制限することを意図していないことは、当業者には理解されるであろう。特定の実施形態の詳細への参照は、本開示の技術の範囲を制限することは意図していない。