(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】合成部材の耐火構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20250313BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/94 E
E04B1/94 D
(21)【出願番号】P 2021112307
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】奥山 孝之
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155413(JP,A)
【文献】特開2018-003475(JP,A)
【文献】特開2019-056202(JP,A)
【文献】特許第7529486(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04C 3/292
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面の第一領域を被覆する厚肉の木質被覆材と、第一領域に近接する鉄骨部材の表面の第二領域を被覆する薄肉の非木質系の耐火被覆材とを備える合成部材における第一領域と第二領域の間の取合い部の耐火構造であって、
第二領域の耐火被覆材の厚さ以上の厚さで取合い部付近の鉄骨部材の表面を被覆する非木質系の耐火被覆材と、
木質被覆材の小口面と取合い部の耐火被覆材を連続的に被覆する無機系の耐火材とを有することを特徴とする合成部材の耐火構造。
【請求項2】
非木質系の耐火被覆材を耐火塗料とし、その厚さを増したものであることを特徴とする請求項1に記載の合成部材の耐火構造。
【請求項3】
無機系の耐火材は、木質被覆材の小口面に張り付けられる強化石膏ボードであり、この強化石膏ボードと鉄骨部材の間の隙間に無機系の充填材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の合成部材の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材と鋼材からなる木鋼ハイブリッド部材を含む合成部材の耐火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本特許出願人は、鉄骨梁を木材(以下、木質被覆材という。)で耐火被覆した、1時間の耐火性能を有する構造部材である木鋼ハイブリッド梁(以下、木鋼梁という。)を開発している(例えば、特許文献1を参照)。この木質被覆材は、火災中に0.7~1.0mm/分で燃え進むが、火災後に燃え止まることで、荷重を支持する鉄骨梁の温度上昇を抑制し、崩壊を防ぐ役割を担っている。
【0003】
木鋼梁を建物に適用する場合、木質被覆材と他の耐火被覆材が取り合う箇所が生じることがある。例えば、鉄骨造の外周部等では、配管を通すために鉄骨梁に貫通孔が設けられるが、施工しやすさ・コスト削減・見栄えといった観点から、木質被覆材以外の耐火被覆材(例えば、耐火塗料や吹付けロックウール等)で貫通孔部分およびその周辺を耐火被覆することが考えられる。
【0004】
上記のように梁の材軸方向で耐火被覆材の種類が切り替わる場合、異種耐火被覆材の境界部において耐火性能を確保するような技術がいくつか知られている。(例えは、特許文献2~3を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2020-148315号(現時点で未公開)
【文献】特開2020-143528号公報
【文献】特開2020-172808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の木鋼梁を建物に適用する場合、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材が取り合う箇所では、所定の耐火性能を達成できないおそれがある。鉄骨部材を、耐火塗料や吹付けロックウール等といった耐火被覆材で被覆する場合、鋼材温度が平均350℃以下、最高450℃以下程度となるように耐火被覆材の厚みや仕様を決定する。一方、木材の着火温度は約200~260℃である。したがって、木質被覆材と他の耐火被覆材が取り合う箇所では、非木質系の他の耐火被覆材で被覆された鉄骨部材側から木質被覆材で被覆された鉄骨部材側に伝熱することで、木質被覆材側の鉄骨部材の鋼材温度が200~260℃まで達する可能性がある。すると、木質被覆材が内部から燃焼して燃え止まらず、鉄骨部材の鋼材温度が450℃以上に達するおそれがある。また、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との取合い部において、木質被覆材の小口面が露出したり、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との間に隙間が生じたりすることで、所定の耐火性能を確保できないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との取合い部の耐火性能を確保することができる合成部材の耐火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明に係る合成部材の耐火構造は、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面の第一領域を被覆する厚肉の木質被覆材と、第一領域に近接する鉄骨部材の表面の第二領域を被覆する薄肉の非木質系の耐火被覆材とを備える合成部材における第一領域と第二領域の間の取合い部の耐火構造であって、第二領域の耐火被覆材の厚さ以上の厚さで取合い部付近の鉄骨部材の表面を被覆する非木質系の耐火被覆材と、木質被覆材の小口面と取合い部の耐火被覆材を連続的に被覆する無機系の耐火材とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の合成部材の耐火構造は、上述した発明において、非木質系の耐火被覆材を耐火塗料とし、その厚さを増したものであることを特徴とする。
【0010】
また、上述した発明において、本発明に係る他の合成部材の耐火構造における無機系の耐火材は、木質被覆材の小口面に張り付けられる強化石膏ボードであり、この強化石膏ボードと鉄骨部材の間の隙間に無機系の充填材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る合成部材の耐火構造によれば、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面の第一領域を被覆する厚肉の木質被覆材と、第一領域に近接する鉄骨部材の表面の第二領域を被覆する薄肉の非木質系の耐火被覆材とを備える合成部材における第一領域と第二領域の間の取合い部の耐火構造であって、第二領域の耐火被覆材の厚さ以上の厚さで取合い部付近の鉄骨部材の表面を被覆する非木質系の耐火被覆材と、木質被覆材の小口面と取合い部の耐火被覆材を連続的に被覆する無機系の耐火材とを有するので、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との取合い部の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の合成部材の耐火構造によれば、非木質系の耐火被覆材を耐火塗料とし、その厚さを増すことで、木質被覆材と耐火塗料との取合い部の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の合成部材の耐火構造によれば、無機系の耐火材は、木質被覆材の小口面に張り付けられる強化石膏ボードであり、この強化石膏ボードと鉄骨部材の間の隙間に無機系の充填材が設けられるので、小口面からの熱の流入と燃焼を抑えるとともに、木質被覆材側の鉄骨部材の鋼材温度の上昇を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る合成部材の耐火構造の実施の形態を示す側面図である。
【
図5】
図5(1)は、各断面位置における平均温度推移を示すグラフ図であり、(2)は各断面位置における最高温度を示すテーブル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る合成部材の耐火構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1~
図4に示すように、本発明の実施の形態に係る合成部材の耐火構造10は、鉄骨梁12(鉄骨部材)と、この鉄骨梁12の表面の第一領域R1を被覆する厚肉の木質被覆材14と、第一領域R1に近接する鉄骨梁12の表面の第二領域R2を被覆する薄肉の耐火塗料16(非木質系の耐火被覆材)とを備える合成部材18における第一領域R1と第二領域R2の間の取合い部20の耐火構造である。
【0017】
この耐火構造10は、第二領域R2の耐火塗料16の塗膜厚さ以上の塗膜厚さで取合い部20の鉄骨梁12の表面を被覆する耐火塗料22と、木質被覆材14の小口面24と取合い部20の耐火塗料22を連続的に被覆する強化石膏ボード26(無機系の耐火材)とを有する。なお、本実施の形態では、木質被覆材14の小口面24から第二領域R2内の所定の長さ範囲(耐火被覆材42に至るまでの長さ範囲)に、耐火塗料16、22を必要塗膜厚さ以上の同一厚さで塗布している。木質被覆材14の小口面24の側方向および下方向外側部分には、強化石膏ボード26に隣接する態様で仕上木28と普通石膏ボード30が積層して設けられる。なお、仕上木28と普通石膏ボード30を設ける代わりに、強化石膏ボードを木質被覆材14の小口面24全面に張ってもよい。
【0018】
鉄骨梁12は、略水平方向に延びたH形鋼からなり、ウェブ32、上フランジ34、下フランジ36を有する。第一領域R1の鉄骨梁12と第二領域R2の鉄骨梁12は、取合い部20で突き合わされており、ウェブ32に設けたプレート38とボルト40によって互いに接合している。第一領域R1の鉄骨梁12と木質被覆材14によって形成される梁が、木鋼梁に相当する。なお、図の例では、第二領域R2側の鉄骨梁12に、けい酸カルシウム板からなる耐火被覆材42と、配管を通すための貫通孔44を設けた例を示しているが、これらは省略することもできる。なお、第一領域R1と第二領域R2の鉄骨梁12はボルト40とプレート38で突き合わせになっていなくてもよい。例えば、第一領域R1と第二領域R2の鉄骨梁12は梁軸方向に連続していてもよい。
【0019】
木質被覆材14は、鉄骨梁12の上下左右を被覆する態様で設けられる集成材からなり、例えば1時間の耐火性能を持つヒバやカラマツなどの樹種で形成される。木質被覆材14は、ラグスクリュー等の固定部材46で鉄骨梁12のウェブ32に固定される。この固定部材46は、
図4に示すように、板状の頭部48と軸状のねじ部50を有する金属製の棒状体である。ねじ部50は先端が尖っており、外周面にはねじ山が設けられている。固定部材46は、同一断面内でウェブ32の上側と下側に設けた貫通穴52から木質被覆材14にねじ込まれている。貫通穴52は埋木54で塞がれている。固定部材46は、
図1に示すように、鉄骨梁12が延在する水平方向に所定の間隔で複数配置されるとともに、ねじ込まれる向きが水平方向に互い違いになるように配置されている。
【0020】
耐火塗料16、22は、加熱により所定の温度帯で発泡して鋼材の温度上昇を抑制する発泡性の耐火材料で構成される。このような耐火塗料としては、例えば、火災時に熱を受けると250℃前後で発泡を開始して、20~30倍に発泡して断熱層を形成する耐火塗料がある。本実施の形態では、第二領域R2の耐火塗料16の塗膜厚さと、取合い部20の耐火塗料22の塗膜厚さは、いずれも2時間の耐火性能を満たす塗膜厚さに設定しているが、本発明はこれに限るものではない。また、本実施の形態では、木質被覆材14の小口面24から耐火被覆材42に至るまでの長さ範囲に2時間の耐火性能を満たす塗膜厚さの耐火塗料16、22を設けているが、本発明はこれに限るものではない。例えば、木質被覆材14の小口面24から上記範囲を超える長さ範囲について、2時間の耐火性能を満たす塗膜厚さの耐火塗料16、22を設けるとともに、それより先の範囲に1時間の耐火性能を満たす塗膜厚さの耐火塗料を設けてもよい。
【0021】
強化石膏ボード26は、木質被覆材14の小口面24に張り付けられる板状のものである。この強化石膏ボード26と鉄骨梁12との間には、施工上、一定の隙間(クリアランス)が必要となる。この隙間から熱が流入してくるのを防ぐため、隙間には無機系の充填材56(例えば炭酸カルシウム系充填材)が設けられる。
【0022】
以上のように、本実施の形態では、木鋼梁の木質被覆材14と耐火塗料16(非木質系の耐火被覆材)が取合う箇所において、1時間の耐火性能を満たすように、耐火塗料の塗膜厚さを増し、木質被覆材14と耐火塗料22との取合い部20に強化石膏ボード26(無機系の耐火材)を設けている。本実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0023】
(1)耐火塗料の塗膜厚さを1時間耐火仕様から2時間耐火仕様にすることで、耐火塗料16側(第二領域R2)の鋼材温度の上昇を低減し、木質被覆材14側(第一領域R1)の鉄骨梁12への伝熱による鋼材温度の上昇を抑える。
(2)木質被覆材14の小口面24に強化石膏ボード26を張ることで、小口面24からの熱の流入を抑える。また、木質被覆材14の小口面24が直接火炎を受けて燃焼するのを防ぐ。
(3)木質被覆材14と耐火塗料16との間に強化石膏ボード26を設けることで、耐火塗料16側の鉄骨梁12の熱を強化石膏ボード26が吸熱して、木質被覆材14側の鋼材温度の上昇を抑える。
【0024】
<実施例>
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に述べるのは、1時間の耐火試験で耐火性能を検証した仕様である。耐火試験で検証した木鋼梁における耐火塗料との取合い部の仕様は
図1~
図4のとおりである。試験体に使用した鉄骨梁の寸法および鋼種は、BH-900×150×16×19、全長3450mm(SS400)である。木質被覆材は、ヒバ集成材(対称異等級E95-F270)、被覆材厚さ80mm、木鋼梁の断面寸法1067mm×317mmである。なお、耐火試験では鉄骨梁に貫通孔を設ける場合を想定した。
【0025】
(耐火塗料の塗膜厚さ)
一般的には、1時間の耐火構造であれば、1時間耐火として規定された塗膜厚さの耐火塗料を施せばよい。しかし、木鋼梁と取り合う耐火塗料においては、耐火塗料側の鋼材温度の上昇を低減し、木質被覆材側の鉄骨梁への伝熱による鋼材温度の上昇を抑えるために、2時間耐火を達成できる塗膜厚さの耐火塗料を塗布した。この耐火塗料は、木質被覆材の小口面から650mmの長さ範囲に塗布した。
【0026】
(強化石膏ボードの取付け)
木質被覆材の小口面に強化石膏ボードを複数設けた。耐火試験では強化石膏ボード(厚さ21mm×3枚)と強化石膏ボード(厚さ12.5mm)を重ね張りして、合計厚さ75.5mmとした。なお、強化石膏ボードの厚みを増すことで、断熱性能が向上し、強化石膏ボードの吸熱量も増加するため、耐火性能が向上すると考えられる。したがって、木質被覆材の小口面に設ける強化石膏ボードの合計厚さを75.5mm以上とすれば、強化石膏ボードの枚数や厚みを変えても耐火性能は担保されると考えられる。
【0027】
(隙間の充填)
木質被覆材の小口面に取り付ける強化石膏ボードと鉄骨梁との間には、施工上、クリアランスが必要となる。この隙間から熱が流入してくるのを防ぐため、無機系の充填材(例えば炭酸カルシウム系充填材)を注入し、隙間を埋めた。
【0028】
また、耐火試験では強化石膏ボードと鉄骨梁とのクリアランスが3mmになるように試験体を製作した。ただし、強化石膏ボードと鉄骨梁とのクリアランスを小さくすることで、鉄骨梁の熱を強化石膏ボードが吸熱しやすくなるとともに、隙間からの熱の流入を最小限に抑えることができると考えられる。したがって、強化石膏ボードと鉄骨梁とのクリアランスが3mm以下となるように製作すれば耐火性能は担保されると考えられる。
【0029】
(仕上木の取付け)
見栄えをよくするために、木質被覆材の小口面の外周部に仕上木(ヒバ集成材、厚さ55mm)と普通石膏ボード(厚さ12.5mm)を積層して設けた。また、仕上木を取り付けない場合には、木質被覆材の小口面の全面に強化石膏ボードを取り付けることで耐火性能は担保されると考えられる。
【0030】
(耐火試験結果)
次に、上記の試験体を用いた取合い部における1時間の耐火試験の結果について説明する。耐火試験は、試験体を1時間加熱後、48時間炉内で放冷して試験を終了した。試験終了時、赤熱や発煙は確認されず、木質被覆材は燃え止まった。また、仕上木(厚さ55mm)や仕上用の普通石膏ボード(厚さ12.5mm)は脱落していたが、小口面の強化石膏ボード(厚さ21mm×3枚+厚さ12.5mm)は残存していた。
【0031】
図5(1)に、上下フランジ、ウェブに設けた熱電対により測定された各断面位置の平均温度の時間推移を示す。図中の凡例は、木質被覆材の小口面の位置からの水平距離で示している。
図5(2)に、各断面位置における最高温度を示す。
図5(2)に示すように、耐火塗料で被覆された鉄骨梁の鋼材最高温度は341.5℃、木質被覆材で被覆された鉄骨梁の鋼材最高温度は202.0℃であり、耐火試験における鋼材の許容温度である350℃以下となった。したがって、本実施例の仕様は1時間の耐火性能を有するといえる。
【0032】
本実施の形態によれば、木質被覆材と耐火塗料との取合い部に強化石膏ボードを用いることで、現場で加工および施工しやすい仕様を実現することができる。また、耐火塗料の使用や、仕上木の取り付けを想定した仕様とすることで、仕上がり時の見栄えに配慮することができる。
【0033】
なお、上記の実施の形態においては、木質被覆材と取り合う非木質系の耐火被覆材に耐火塗料を使用した場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。1時間の耐火試験で鋼材温度が340℃以下となるような非木質系の耐火被覆材の仕様であれば、耐火塗料以外の非木質系の耐火被覆材(例えば吹付けロックウールや湿式セラミック系耐火被覆材等)を用いてもよい。
【0034】
以上説明したように、本発明に係る合成部材の耐火構造によれば、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面の第一領域を被覆する厚肉の木質被覆材と、第一領域に近接する鉄骨部材の表面の第二領域を被覆する薄肉の非木質系の耐火被覆材とを備える合成部材における第一領域と第二領域の間の取合い部の耐火構造であって、第二領域の耐火被覆材の厚さ以上の厚さで取合い部付近の鉄骨部材の表面を被覆する非木質系の耐火被覆材と、木質被覆材の小口面と取合い部の耐火被覆材を連続的に被覆する無機系の耐火材とを有するので、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との取合い部の耐火性能を確保することができる。
【0035】
また、本発明に係る他の合成部材の耐火構造によれば、非木質系の耐火被覆材を耐火塗料とし、その厚さを増すことで、木質被覆材と耐火塗料との取合い部の耐火性能を確保することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の合成部材の耐火構造によれば、無機系の耐火材は、木質被覆材の小口面に張り付けられる強化石膏ボードであり、この強化石膏ボードと鉄骨部材の間の隙間に無機系の充填材が設けられるので、小口面からの熱の流入と燃焼を抑えるとともに、木質被覆材側の鉄骨部材の温度の上昇を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る合成部材の耐火構造は、鉄骨部材と木質被覆材を備える合成部材に有用であり、特に、木質被覆材と非木質系の他の耐火被覆材との取合い部の耐火性能を確保するのに適している。
【符号の説明】
【0038】
10 合成部材の耐火構造
12 鉄骨梁(鉄骨部材)
14 木質被覆材
16,22 耐火塗料(非木質系の耐火被覆材)
18 合成部材
20 取合い部
24 小口面
26 強化石膏ボード(無機系の耐火材)
28 仕上木
30 普通石膏ボード
32 ウェブ
34 上フランジ
36 下フランジ
38 プレート
40 ボルト
42 耐火被覆材
44 貫通孔
46 固定部材
48 頭部
50 ねじ部
52 貫通穴
54 埋木
56 充填材
R1 第一領域
R2 第二領域