(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】光造形用樹脂組成物、モデル材組成物、およびその光硬化物、ならびに光造形用組成物セット
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20250313BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20250313BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250313BHJP
【FI】
B29C64/112
C08F220/10
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2021545589
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034322
(87)【国際公開番号】W WO2021049576
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2019166550
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 克幸
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-334152(JP,A)
【文献】特開2004-059601(JP,A)
【文献】特開2016-160372(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102695(WO,A1)
【文献】特開2017-165804(JP,A)
【文献】特表2018-528999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
B29C 64/00 - 64/40
C08L 1/00 - 101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材組成物であって、前記モデル材組成物100質量部に対して
少なくとも1種の単官能エチレン性不飽和単量体(A)19~59質量部;
イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)5~50質量部;および
イソシアヌレート環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(C)5~50質量部
を含み、
前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、分子内に環構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体であり、
前記イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)および前記イソシアヌレート環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(C)の含有量の合計は、前記モデル材組成物100質量部に対して、35質量部以上である、モデル材組成物。
【請求項2】
前記イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体である、請求項1に記載のモデル材組成物。
【請求項3】
前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、そのホモポリマーのガラス転移温度Tgが80℃以上である、請求項1または2に記載のモデル材組成物。
【請求項4】
前記イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、JIS K 7197に従って、そのホモポリマーのガラス転移温度以下で測定される線膨張係数が200ppm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のモデル材組成物。
【請求項5】
前記イソシアヌレート環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(C)は、JIS K 7197に従って、そのホモポリマーのガラス転移温度以下で測定される線膨張係数が200ppm以下である、請求項1~4のいずれかに記載のモデル材組成物。
【請求項6】
前記モデル材組成物100質量部に対して、1~15質量部の光重合開始剤(D)をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載のモデル材組成物。
【請求項7】
前記モデル材組成物100質量部に対して、0.005~3質量部の表面調整剤(E)をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のモデル材組成物。
【請求項8】
前記モデル材組成物100質量部に対して、0.05~3質量部の保存安定化剤(F)をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載のモデル材組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のモデル材組成物の光硬化物
であるモデル材。
【請求項10】
JIS K 7197に従って、ガラス転移温度以下で測定される線膨張係数は、150ppm以下である、請求項9に記載の
モデル材。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載のモデル材組成物と、前記モデル材組成物と共に使用されるサポート材組成物とを含む、マテリアルジェット光造形用組成物セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は日本国特許出願第2019-166550号(出願日:2019年9月12日)についてパリ条約上の優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本発明は、光造形法において使用される光造形用樹脂組成物、および前記光造形用樹脂組成物の光硬化物に関する。また、本発明は、マテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材組成物、および前記モデル材組成物の光硬化物、ならびに前記モデル材組成物を含むマテリアルジェット光造形用組成物セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光硬化性樹脂組成物に紫外線などの光を照射して所定の形状を有する硬化層を連続的に形成することにより、立体造形物を作製する方法が広く知られている。光造形法としては、例えば、液体状の光硬化性樹脂に紫外線などの光を照射して、一層ずつ硬化させて積層していく液槽光重合方式による光造形法、マテリアルジェットノズルから光硬化性樹脂組成物を吐出させ、その直後に紫外線などの光を照射して樹脂組成物を硬化させることにより、所定の形状を有する硬化層を積層して立体造形物を作製するマテリアルジェット方式(インクジェット方式)による光造形法(以下、「マテリアルジェット光造形法」ともいう)などが知られている。中でも、マテリアルジェット光造形法は、CAD(Computer Aided Design)データに基づいて自由に立体造形物を作製できる小型の造形装置(3Dプリンタ)により実現可能な造形法として、広く注目されている。そのようなマテリアルジェット光造形法に用い得るモデル材組成物として、例えば、特許文献1には、ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(C)、および光重合開始剤(D)を含み、かつ、前記単量体(A)および(B)のホモポリマーが、それぞれ所定のガラス転移温度を有する、モデル材組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光造形法に使用する光造形用樹脂組成物の光硬化物、特にマテリアルジェット光造形法に用いるモデル材組成物の光硬化物(以下、「モデル材」ともいう)を、例えば、電子機器のプリント基板用部材として、100℃を超えるような高温環境下で使用する用途が期待されている。例えば、上記特許文献1に記載されるように、これまでにもモデル材の耐熱性を向上させる手法が提案されているが、より過酷な温度環境下における耐熱性は必ずしも十分なものではなかった。このため、高温環境下にさらされると熱膨張による寸法変化が生じやすく、前記用途へ適用するためには、従来求められていたものより、より高い温度において熱膨張に起因する寸法変化を生じにくい高い耐熱性を必要とすることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、高い耐熱性を有し、高温環境下であっても熱膨張が生じにくく、高い寸法安定性を維持できる光硬化物を形成し得る光造形用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]光造形用樹脂組成物であって、
重合性化合物を含み、
前記重合性化合物は、
イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B);および
イソシアヌレート環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(C)
を含み、
前記単量体(C)の含有量は、前記光造形用樹脂組成物100質量部に対して、5~80質量部であり、単官能エチレン性不飽和単量体(A)の含有量が、前記光造形用樹脂組成物100質量部に対して、70質量部未満である、光造形用樹脂組成物。
[2]前記重合性化合物は、少なくとも1種の単官能エチレン性不飽和単量体(A)をさらに含む、[1]に記載の光造形用樹脂組成物。
[3]前記単量体(A)の含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、59質量部以下である、[1]または[2]に記載の光造形用樹脂組成物。
[4]前記単量体(B)の含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、5~65質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[5]マテリアルジェット光造形法において使用されるモデル材組成物であって、前記モデル材組成物100質量部に対して
少なくとも1種の単官能エチレン性不飽和単量体(A)19~59質量部;
イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)5~50質量部;および
イソシアヌレート環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(C)5~50質量部
を含む、モデル材組成物。
[6]前記イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体である、[5]に記載のモデル材組成物。
[7]前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、そのホモポリマーのガラス転移温度Tgが80℃以上である、前記[5]または[6]に記載のモデル材組成物。
[8]前記イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、JIS K 7197に従って、そのホモポリマーのガラス転移温度以下で測定される線膨張係数が200ppm以下である、前記[5]~[7]のいずれかに記載のモデル材組成物。
[9]前記イソシアヌレート環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(C)は、JIS K 7197に従って、そのホモポリマーのガラス転移温度以下で測定される線膨張係数が200ppm以下である、前記[5]~[8]のいずれかに記載のモデル材組成物。
[10]前記モデル材組成物100質量部に対して、1~15質量部の光重合開始剤(D)をさらに含む、前記[5]~[9]のいずれかに記載のモデル材組成物。
[11]前記モデル材組成物100質量部に対して、0.005~3質量部の表面調整剤(E)をさらに含む、前記[5]~[10]のいずれかに記載のモデル材組成物。
[12]前記モデル材組成物100質量部に対して、0.05~3質量部の保存安定化剤(F)をさらに含む、前記[5]~[11]のいずれかに記載のモデル材組成物。
[13]前記[1]~[4]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物、または前記[5]~[12]のいずれかに記載のモデル材組成物の光硬化物。
[14]JIS K 7197に従って、ガラス転移温度以下で測定される線膨張係数は、150ppm以下である、前記[13]に記載の光硬化物。
[15]前記[5]~[12]のいずれかに記載のモデル材組成物と、前記モデル材組成物と共に使用されるサポート材組成物とを含む、マテリアルジェット光造形用組成物セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光造形法により、高い耐熱性を有し、高温環境下であっても熱膨張が生じにくく、高い寸法安定性を維持できる光硬化物を形成し得る光造形用樹脂組成物、およびその光硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0010】
<光造形用樹脂組成物>
本発明の光造形用樹脂組成物は、光造形法において使用される組成物であり、光硬化により光硬化物を構成する。ここで、光造形法とは、液槽光重合方式(SLA、DLP、LCD)、マテリアルジェット方式(MJM)等の方式による方法を含む。本発明において、「光造形用樹脂組成物」は、光造形法において使用される組成物を意味し、「光硬化物」は、光造形用樹脂組成物の光硬化物を意味する。本明細書において、光造形用樹脂組成物に関する各構成、特性などの説明は、特記しない限り、マテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物にも適用される。同様に、本明細書における光硬化物に関する各構成、特性など説明は、特記しない限り、モデル材組成物の光硬化物であるモデル材にも適用される。
【0011】
本発明の光造形用樹脂組成物は、重合性化合物を含み、前記重合性化合物は、イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(B)(以下、「単量体B」ともいう)およびイソシアヌレート環構造を有する少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和単量体(C)(以下、「単量体C」ともいう)を含む。本発明において、エチレン性不飽和単量体は、エネルギー線により硬化する特性を有するエチレン性二重結合を分子内に少なくとも1個有する重合性モノマーである。単官能エチレン性不飽和単量体は、分子内にエチレン性二重結合を1個有する重合性モノマーであり、多官能エチレン性不飽和単量体は、分子内にエチレン性二重結合を2個以上有する重合性モノマーである。
【0012】
〔イソシアヌレート環構造以外の環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)(単量体B)〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、単量体Bを含むことにより、該光造形用樹脂組成物の過度な粘度上昇を抑制しやすく、また、得られる光硬化物の寸法安定性を高めやすい。特に、単量体Bを、後述の単量体Cとの組み合わせで含むことにより、得られる光硬化物の高温環境下における熱膨張を抑制して、寸法安定性を向上しやすい。
【0013】
単量体Bとしては、例えば、脂環式構造、または芳香族炭化水素環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらの単量体は単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。本明細書において、脂環式構造は炭素原子が環状に結合した脂肪族の環状構造をいう。
【0014】
脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、脂環式構造を有するジまたはトリ(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの双方またはいずれかを表す。
【0015】
芳香族炭化水素環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体としては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
これらの多官能エチレン性不飽和単量体のなかでも、寸法安定性の観点から、脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。好ましい脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体は、脂環式構造を有するジまたはトリ(メタ)アクリレートであり、より好ましくは炭素数5~30の脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、さらに好ましくは炭素数6~20の脂環式構造を有するジまたはトリ(メタ)アクリレート、特に好ましくは炭素数8~15の脂環式構造を有するジまたはトリ(メタ)アクリレートである。単量体Bが、脂環式構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体であると、熱膨張しにくく、高温環境下であっても寸法安定性の高い光硬化物を形成し得る光造形用樹脂組成物を得やすい。また、単量体Bが芳香族炭化水素環を有する多官能エチレン性不飽和単量体である場合よりも、光造形用樹脂組成物の粘度の過度な上昇を抑制しやすい。
【0017】
単量体Bは、そのホモポリマーの線膨張係数が200ppm以下であることが好ましい。前記線膨張係数は、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは130ppm以下、特に好ましくは120ppm以下、とりわけ好ましくは100ppm以下である。線膨張係数が低いほど、熱膨張抑制効果が高まる傾向にあるため、下限値は特に制限されず、0ppmであってもよい。前記線膨張係数が上記上限値以下であると、光造形用樹脂組成物から得られる光硬化物の高温環境下における熱膨張を抑制して、光硬化物の寸法安定性が向上しやすい。前記線膨張係数は、単量体Bのホモポリマーを試験片として用い、JIS K 7197に従って、ガラス転移温度以下の温度範囲、例えば、常温からそのホモポリマーのガラス転移温度-30℃の範囲で測定できる。詳細には、例えば、実施例に記載の方法で測定でき、例えば、単量体Bのホモポリマーは、単量体Bに光重合開始剤を添加し、次いで、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させることにより得られる。
【0018】
前記単量体Bの含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは5~65質量部である。前記単量体Bの含有量が、上記下限値以上であると、得られる光硬化物の寸法安定性を高めやすく、上記上限値以下であると、光造形用樹脂組成物の粘度の過度な上昇を抑制して、光造形法に適した粘度に調整しやすい。また、前記単量体Bの含有量は、寸法安定性の観点から、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、光造形用樹脂組成物の粘度の観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましく45質量部以下である。
【0019】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、マテリアルジェット光造形法に好適な前記単量体Bの含有量は、モデル材組成物100質量部に対して、5~50質量部である。前記単量体Bの含有量が上記下限値未満であると、得られるモデル材に十分に高い寸法安定性を付与しにくく、上記上限値を超えると、モデル材組成物の粘度が過度に上昇しやすい。また、前記単量体Bの含有量は、寸法安定性の観点から、モデル材組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、モデル材組成物の粘度の観点から、好ましくは45質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましく30質量部以下である。
【0020】
〔イソシアヌレート環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(C)(単量体C)〕
単量体Cを含むことにより、得られる光硬化物の高温環境下における寸法安定性を向上させることができる。これは、イソシアヌレート環構造という剛直な構造を有する多官能単量体を含むことにより、該光造形用樹脂組成物から得られる光硬化物中の分子の振動を抑制し得るためであると考えられる。このような光硬化物の寸法安定性を向上させる効果は、単量体Cを単量体Bと組み合わせることによって、より効果的に高めることができる。
【0021】
単量体Cとしては、イソシアヌレート環構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体である限り特に制限されず、例えば、イソシアヌレート環構造を有する多官能(メタ)アクリレート、イソシアヌレート環構造を有するアリル化合物などが挙げられる。これらの単量体は単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。イソシアヌレート環構造を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジまたはトリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレートなどが挙げられる。イソシアヌレート環構造を有するアリル化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0022】
これらの多官能単量体のなかでも、寸法安定性の観点から、好ましくはイソシアヌレート環構造を有する多官能(メタ)アクリレート、さらに好ましくはイソシアヌレート環構造を有するトリ(メタ)アクリレート、特に好ましくはトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートである。
【0023】
単量体Cは、そのホモポリマーの線膨張係数が200ppm以下であることが好ましい。前記線膨張係数は、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは120ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、とりわけ好ましくは80ppm以下である。線膨張係数が低いほど、熱膨張抑制効果が高まる傾向にあるため、下限値は特に制限されず、0ppmであってもよい。前記線膨張係数が上記上限値以下であると、光造形用樹脂組成物から得られる光硬化物の熱膨張を抑制しやすく、高温環境下における光硬化物の寸法安定性が向上しやすい。前記線膨張係数は、単量体Cのホモポリマーを試験片として用い、JIS K 7197に従って、ガラス転移温度以下の温度範囲、例えば、常温からそのホモポリマーのガラス転移温度-30℃の範囲で測定できる。詳細には、例えば、実施例に記載の方法で測定でき、例えば、単量体Cのホモポリマーは、単量体Cに光重合開始剤を添加し、次いで、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させることにより得られる。
【0024】
前記単量体Cの含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、5~80質量部である。前記単量体Cの含有量が、上記下限値未満であると、得られる光硬化物に十分に高い寸法安定性を付与しにくく、上記上限値を超えると、光造形用樹脂組成物の粘度が過度に上昇しやすい。また、前記単量体Cの含有量は、寸法安定性の観点から、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、光造形用樹脂組成物の粘度の観点から、好ましくは75質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましく60質量部以下である。
【0025】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、マテリアルジェット光造形法に好適な前記単量体Cの含有量は、モデル材組成物100質量部に対して、5~50質量部である。前記単量体Cの含有量が、上記下限値未満であると、得られるモデル材に十分に高い寸法安定性を付与しにくく、上記上限値を超えると、モデル材組成物の粘度が過度に上昇しやすく、マテリアルジェット光造形法に適用しにくい。また、前記単量体Cの含有量は、寸法安定性の観点から、モデル材組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、モデル材組成物の粘度の観点から、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましく30質量部以下である。
【0026】
本発明の光造形用樹脂組成物において、単量体Bの総質量と単量体Cの総質量との割合、単量体B:単量体C(質量比)は、好ましくは1:20~10:1、より好ましくは1:10~5:1、さらに好ましくは1:5~2:1、特に好ましくは1:1.2~1.2:1である。単量体Bと単量体Cとの質量割合が上記範囲内であると、得られる光硬化物に優れた寸法安定性を付与しやすい。光造形用樹脂組成物が単量体Bと単量体Cとを同程度の質量割合で含む場合、より得られる光硬化物中の分子の振動を抑制しやすく、より寸法安定性を向上しやすい。
【0027】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、マテリアルジェット光造形法に好適な単量体Bの総質量と単量体Cの総質量との割合、単量体B:単量体C(質量比)は、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1、さらに好ましくは1:2~2:1、特に好ましくは1:1.2~1.2:1である。単量体Bと単量体Cとの質量割合が上記範囲内であると、得られるモデル材に優れた寸法安定性を付与しやすい。モデル材組成物が単量体Bと単量体Cとを同程度の質量割合で含む場合、より得られるモデル材中の分子の振動を抑制しやすく、より寸法安定性を向上しやすい。
【0028】
〔単官能エチレン性不飽和単量体(A)(単量体A)〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、採用する光造形法に応じて適度な粘度に調整しやすい観点から、前記単量体Bおよび前記単量体Cに加えて、単官能エチレン性不飽和単量体(A)(以下、「単量体A」ともいう)を含むことが好ましい。本発明の光造形用樹脂組成物は、単量体Aを含む場合、マテリアルジェット光造形法に適した粘度に調整しやすい。本発明において、単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;分子内に、脂環式構造、芳香環構造または複素環構造などの環構造を有する(メタ)アクリレート;ならびに(メタ)アクリルアミドおよびN-ビニルラクタム類などの窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。これらの単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方またはいずれかを表す。本明細書において、芳香環構造は炭素原子が環状に結合した芳香族の環状構造を、複素環構造は炭素原子および1以上のヘテロ原子が環状に結合した構造をいう。
【0029】
直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数4~30の、より好ましくは炭素数6~20の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-コハク酸などが挙げられる。
【0030】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数6~20の、より好ましくは炭素数8~15の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数6~20の、より好ましくは炭素数8~15の芳香環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ベンジルアクリレート、フェニルフェノールアクリレート、フルオレンアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
複素環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、好ましくは炭素数5~20の、より好ましくは炭素数7~15の複素環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソランなどが挙げられる。
【0033】
また、上記(メタ)アクリレートとは異なる、窒素原子を含有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド〔例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N,N-アクリロイルモルホリンなど〕、N-ビニルラクタム類〔例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなど〕、N-ビニルホルムアミドなどが挙げられる。
【0034】
これらの単官能単量体の中でも、単量体Aとしては、分子内に環構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体が好ましい。単量体Aが分子内に環構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体であると、寸法安定性の高い光硬化物を得やすくなる。これは、環構造を有さない単量体Aと比較して、光造形用樹脂組成物から得られる光硬化物中の分子の振動を抑制しやすくなるためと推測される。本発明の光造形用樹脂組成物において、分子内に環構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体の含有量は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)の総質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、光造形用樹脂組成物に含まれる全ての単官能エチレン性不飽和単量体(A)が分子内に環構造を有するものであってもよい。
【0035】
また、前記単量体Aは、耐熱性の観点から、そのホモポリマーのガラス転移温度Tgが、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。また、前記単量体Aのガラス転移温度Tgは、光造形用樹脂組成物が硬化するときの硬化収縮の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。なお、前記ガラス転移温度は、単量体Aのホモポリマーを試験片として用いて、示差走査熱量計(DSC)により測定される。詳細には、例えば、実施例に記載の方法で測定される。
【0036】
前記単量体Aの含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して70質量部未満である。前記単量体Aの含有量が、上記上限値以下であると、得られる光硬化物の寸法安定性を高めやすい。また、前記単量体Aの含有量の下限値は特に限定されないが、光造形用樹脂組成物に光造形法に適した粘度を付与する観点から、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは19質量部以上である。また、寸法安定性の観点から、好ましくは65質量部以下、より好ましくは59質量部以下、さらに好ましくは55質量部以下、さらにより好ましくは53質量部以下、特に好ましく48質量部以下である。
【0037】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、該モデル材組成物は、単量体Bおよび単量体Cに加えて、単量体Aを含む。マテリアルジェット光造形法に好適な前記単量体Aの含有量は、モデル材組成物100質量部に対して19~59質量部である。前記単量体Aの含有量が、上記下限値未満であると、モデル材組成物の粘度を適度な範囲に調整しにくく、上記上限値を超えると、得られるモデル材に十分に高い寸法安定性を付与しにくくなる。また、前記単量体Aの含有量は、モデル材組成物に、マテリアルジェット光造形法に適した粘度を付与する観点から、モデル材組成物100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上である。また、寸法安定性の観点から、好ましくは55質量部以下、より好ましくは53質量部以下、さらに好ましく48質量部以下である。
【0038】
本発明の光造形用樹脂組成物が単量体Aを含む場合、該光造形用樹脂組成物において、単量体Aの総質量と単量体Bの総質量との割合、単量体A:単量体B(質量比)は、好ましくは10:1~1:8、より好ましくは5:1~1:4、さらに好ましくは2:1~1:2である。単量体Aと単量体Bとの質量割合が上記範囲内であると、光造形用樹脂組成物の適度な粘度と、得られる光硬化物の高温環境下における高い寸法安定性とを両立しやすい。
【0039】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、マテリアルジェット光造形法に好適な前記単量体Aの総質量と単量体Bの総質量との割合、単量体A:単量体B(質量比)は、好ましくは10:1~1:3、より好ましくは5:1~1:2、さらに好ましくは2:1~1:1である。単量体Aと単量体Bとの質量割合が上記範囲内であると、モデル材組成物の適度な粘度と、得られるモデル材の高温環境下における高い寸法安定性とを両立しやすい。
【0040】
本発明の光造形用樹脂組成物が単量体Aを含む場合、該光造形用樹脂組成物において、単量体Aの総質量と単量体Cの総質量との割合、単量体A:単量体C(質量比)は、好ましくは10:1~1:10、より好ましくは5:1~1:5、さらに好ましくは2:1~1:2である。単量体Aと単量体Cとの質量割合が上記範囲内であると、光造形用樹脂組成物の適度な粘度と、得られる光硬化物の高温環境下における高い寸法安定性とを両立しやすい。
【0041】
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、マテリアルジェット光造形法に好適な単量体Aの総質量と単量体Cの総質量との割合、単量体A:単量体C(質量比)は、好ましくは10:1~1:3、より好ましくは5:1~1:2、さらに好ましくは2:1~1:1である。単量体Aと単量体Cとの質量割合が上記範囲内であると、モデル材組成物の適度な粘度と、得られるモデル材の高温環境下における高い寸法安定性とを両立しやすい。
【0042】
本発明の光造形用樹脂組成物は、単量体Bと単量体Cとの両方を含むことにより、得られる光硬化物の熱膨張を抑制して、高温環境下における寸法安定性を十分に向上しやすい。本発明の光造形用樹脂組成物が単量体Aを含む場合、該光造形用樹脂組成物において、単量体Aの総質量に対する単量体Bおよび単量体Cとの総質量の割合(単量体B+単量体C)/単量体A(質量比)は、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.5~5、さらに好ましくは0.8~4、さらにより好ましくは0.8~3、とりわけ好ましくは1~2、特に好ましくは1~1.5である。単量体Aの総質量に対する単量体Bおよび単量体Cとの総質量の割合が上記範囲内であると、光造形用樹脂組成物の適度な粘度と、得られる光硬化物の高温環境下における高い寸法安定性とを両立しやすい。また、本発明の光造形用樹脂組成物において、単量体Bおよび単量体Cの含有量の合計は、寸法安定性の観点から、光造形用樹脂組成物中の全ての重合性化合物の総量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。また、光造形用樹脂組成物の粘度の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましく60質量%以下である。なお、本明細書において「重合性化合物」は、重合性モノマー、重合性オリゴマーなどの重合性基を有する化合物を表す。
また、本発明の光造形用樹脂組成物において、単量体Bおよび単量体Cの含有量の合計は、寸法安定性の観点から、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは30質量部を超え、より好ましくは35質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。また、光造形用樹脂組成物の粘度の観点から、好ましくは95質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、特に好ましく60質量部以下である。
【0043】
〔他の重合性化合物〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、単量体Bおよび単量体C、ならびに場合により含まれる単量体A以外の他の重合性化合物を含んでもよい。他の重合性化合物としては、例えば、環構造を有しない多官能重合性モノマー、および重合性オリゴマーが挙げられる。なお、本明細書において、「重合性オリゴマー」は、エネルギー線により硬化する特性を有する光硬化性成分であり、重量平均分子量Mwが1,000~10,000のものをいう。重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて、標準ポリスチレン換算で測定される。
【0044】
環構造を有しない多官能重合性モノマーとしては、例えば、分子内に環構造を有さない多官能エチレン性不飽和単量体として、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン基を有するポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能重合性モノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。これらの重合性オリゴマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。重合性オリゴマーを含むことにより、光造形用樹脂組成物から得られる光硬化物に、柔軟性を付与しやすくなる。好ましい重合性オリゴマーは、ウレタン基を有する重合性オリゴマーであり、より好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0046】
光造形用樹脂組成物が他の重合性化合物を含む場合、その含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば制限されず、例えば、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~15質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0047】
光造形用樹脂組成物中に含まれる重合性化合物の総量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10~99質量部、より好ましくは29~99質量部、さらに好ましくは50~98質量部、特に好ましくは80~95質量部である。
【0048】
〔その他の添加剤〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、光重合開始剤、表面調整剤、着色剤、保存安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤、希釈溶媒、増粘剤などが挙げられる。
【0049】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤は、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射することにより、ラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、炭素数14~18のベンゾイン化合物〔例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなど〕、炭素数8~18のアセトフェノン化合物〔例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど〕、炭素数14~19のアントラキノン化合物〔例えば、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなど〕、炭素数13~17のチオキサントン化合物〔例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなど〕、炭素数16~17のケタール化合物〔例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど〕、炭素数13~21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノンなど〕、炭素数22~28のアシルフォスフィンオキサイド化合物〔例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス-(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド〕、α-アミノアルキルフェノン化合物〔例えば、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンなど〕、これらの化合物の混合物などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、光造形用樹脂組成物を光硬化して得られる光硬化物および光造形物が黄変しにくい点、および得られる光硬化物および光造形物が高い耐光性などを有し経時的に黄変しにくい点から、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドが好ましい。また、入手可能なアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、BASF社製のDAROCURE TPOなどが挙げられる。
【0050】
光造形用樹脂組成物が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1~15質量部であり、より好ましくは3質量部以上であり、また、より好ましくは12質量部以下である。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、未反応の重合成分の量を十分に低減させて、光硬化物の硬化性を十分に高めやすい。一方、光重合開始剤の含有量が上記の上限値以下であると、光硬化物中に未反応のまま残存する光重合開始剤の量を低減しやすく、未反応の光重合開始剤が残存することにより生じる光硬化物の黄変を抑制しやすい。
【0051】
(表面調整剤(E))
表面調整剤は、光造形用樹脂組成物の表面張力を適切な範囲に調整する成分であり、その種類は特に限定されない。光造形用樹脂組成物の表面張力を適切な範囲にすることで、光造形用樹脂組成物をマテリアルジェット光造形法に使用する場合において、吐出性を安定化させることができるとともに、モデル材組成物とサポート材組成物との界面混じりを抑制することができる。その結果、寸法精度が良好な光造形物を得やすい。
【0052】
表面調整剤としては、例えば、シリコーン系化合物などが挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物などが挙げられる。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらとして、商品名でBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-344、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570(以上、ビックケミー社製);TEGO-Rad2100、TEGO-Rad2200N、TEGO-Rad2250、TEGO-Rad2300、TEGO-Rad2500、TEGO-Rad2600、TEGO-Rad2700(以上、エボニック・ジャパン社製);グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B-1484、ポリフローATF-2、KL-600、UCR-L72、UCR-L93(共栄社化学社製)などを用いてもよい。また、シリコーン系化合物以外の表面調整剤(例えば、フッ素系表面調整剤など)を用いてもよい。これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0053】
光造形用樹脂組成物が表面調整剤を含む場合、その含有量は、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.005~3質量部であり、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、より好ましくは1.5質量部以下である。表面調整剤の含有量が上記の範囲内である場合、光造形用樹脂組成物の表面張力を適切な範囲に調整しやすい。
【0054】
(保存安定化剤(F))
保存安定化剤は、光造形用樹脂組成物の保存安定性を高めることができる成分である。また、光造形用樹脂組成物をマテリアルジェット光造形法に用いるモデル材組成物である場合、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。
【0055】
保存安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p-メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、TEMPOL、H-TEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)、クペロンAl;ALBEMARLE社製のIRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST-1;t-ブチルカテコール、ピロガロール;BASF社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60、TINUVIN 400などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
光造形用樹脂組成物が保存安定化剤を含む場合、上記効果を得やすい観点から、その含有量は光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.05~3質量部であり、より好ましくは0.08質量部以上であり、また、より好ましくは2質量部以下である。
【0057】
〔着色剤〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としては特に限定されないが、本発明の光造形用樹脂組成物は非水系であることから、非水溶性媒体に均一に分散しやすい顔料、溶解しやすい染料が好ましい。
【0058】
上記顔料としては、無機顔料、有機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、リトポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系などの有機顔料が挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子なども有機顔料として用いてもよい。
【0059】
本発明の光造形用樹脂組成物には、通常、黒色、並びにシアン、マゼンタ、およびイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相を有する顔料や、金、銀色などの金属光沢顔料、無色または淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0060】
上記着色剤は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。また、本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。また、打滴する液滴および液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0061】
上記着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミルなどの分散装置を用いることができ、また、ラインミキサーなどの混合機を用いてもよい。さらに、上記着色剤の分散後、着色剤の粗大粒子を除去する目的で、遠心分離機、フィルター、クロスフローなどを用いて分級処理を行ってもよい。
【0062】
上記着色剤の分散を行う際には、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、公知の高分子分散剤を用いることが好ましい。
【0063】
上記分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5質量部であってもよい。
【0064】
また、上記着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いてもよい。
【0065】
上記着色剤の含有量は、色、および使用目的により適宜選択されるが、画像濃度および保存安定性の観点から、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0066】
本発明の光造形用樹脂組成物の製造方法は特に限定されず。例えば、混合攪拌装置などを用いて、光造形用樹脂組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
【0067】
〔光造形用樹脂組成物およびその光硬化物の特性〕
本発明の光造形用樹脂組成物の粘度は、採用する光造形法に応じて、その光造形法に適した粘度を有していればよく、25℃において、例えば10~2500mPa・s、好ましくは20~1500mPa・sであってよい。
本発明の一実施形態において、光造形用樹脂組成物がマテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物である場合、本発明のモデル材組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、さらに好ましくは35mPa・s以上であり、また、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは90mPa・s以下、さらに好ましくは85mPa・s以下である。上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
光造形用樹脂組成物の粘度は、エチレン性不飽和単量体の種類およびその配合比率、希釈溶媒や増粘剤の種類およびその添加量などを調整することにより制御することができる。
【0068】
本発明の光造形用樹脂組成物を光硬化させることにより得られる本発明の光硬化物の線膨張係数は、150ppm以下であることが好ましい。前記線膨張係数は、より好ましくは130ppm以下、さらに好ましくは120pm以下、特に好ましくは100ppm未満である。線膨張係数が低いほど、熱膨張抑制効果が高まる傾向にあるため、下限値は特に制限されず、0ppmであってもよい。前記線膨張係数が上記上限値以下であると、例えば、100℃を超えるような高温環境下であっても、光硬化物の熱膨張を抑制しやすく、高い寸法安定性を確保し得る。前記線膨張係数は、例えば、JIS K 7197に従って、ガラス転移温度以下の温度範囲、例えば、常温からそのホモポリマーのガラス転移温度-30℃の範囲で測定される。詳細には、例えば、光造形用樹脂組成物に全照射光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射して硬化させた光硬化物を試験片として用い、実施例に記載の方法で測定される。前記全照射光量は、例えば、UV METER UVPF-36(アイグラフィックス(株)製)により測定される。
【0069】
本発明の光硬化物は線膨張係数が低く、高温環境下における寸法変化が小さいため、高温環境下で使用する用途に好適である。そのような用途として、例えば、電子機器の筐体および電子機器を構成する部材が挙げられる。特に、本発明の光硬化物は、電子機器のプリント基板用部材(例えば、プリント配線用絶縁板)に好適である。一般に、プリント基板用部材は、プリント基板を製造する際に、液体状の金属を前記プリント基板用部材上に、線状に配置して焼成することで、金属配線とする工程に供される。このような工程は、通常、100℃を超える高温環境下で行われる。プリント基板用部材が十分な耐熱性を有していない光硬化物から構成されている場合、このような高温環境下において熱膨張しやすくなり、該部材上に配置された金属線に引張応力を与えることにより、前記金属線の割れを生じる可能性がある。本発明の光硬化物を用いて形成されるプリント基板用部材は、そのような高温環境下においても熱膨張しにくく、高い寸法安定性を有するため、上記のような金属線の割れなどの不具合が生じにくい。
【0070】
前記プリント基板用部材は、本発明の光造形用樹脂組成物を用いて、光造形法により、所望のプリント基板用部材の形状に成形し、光硬化させることにより製造できる。例えば、本発明のモデル材組成物を用いて、マテリアルジェット光造形法により、所望のプリント基板用部材の形状を有する光造形物(または立体造形物)を形成することにより製造し得る。光造形物の製造は、例えば後述の方法により行ってよい。
本発明の光造形用樹脂組成物を用いて形成されるプリント基板用部材上に、直接または間接に、金属線や電子部品をはんだ付け等の公知の方法により配線することにより製造されるプリント基板は、プリント基板用部材が高温環境下においても熱膨張しにくく、高い寸法安定性を有するため、従来の光造形用樹脂組成物を用いて製造されるプリント基板よりも、金属線の割れなどの不具合が生じにくい。
【0071】
<マテリアルジェット光造形用組成物セット>
複雑な形状や緻密な形状を高い精度で造形するために、本発明のモデル材組成物は、立体造形中にモデル材を支持するためのサポート材と組み合わせて用いることが好ましい。したがって、本発明は、本発明のモデル材組成物と、前記モデル材組成物と共に使用されるマテリアルジェット光造形法によりサポート材を造形するためのサポート材組成物とを含んでなるマテリアルジェット光造形用組成物セットも対象とする。
【0072】
〔サポート材組成物〕
サポート材組成物は、マテリアルジェット光造形法において使用される組成物であり、光硬化によりサポート材を構成する。モデル材を作製後、サポート材をモデル材から物理的に剥離することにより、または、サポート材を有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、モデル材からサポート材を除去することができる。本発明のモデル材組成物は、サポート材組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができるが、サポート材を除去する際にモデル材を破損することがなく、環境に優しく、細部まできれいにかつ容易にサポート材を除去することができるため、本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットを構成するサポート材組成物は水溶性であることが好ましい。
【0073】
(オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール)
水溶性のサポート材組成物としては、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールを含むものが挙げられる。オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールは水溶性ではあるが、サポート材を形成した時の、サポート材のサポート力を低下させるほどの親水性を有さない。ただし、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールは水溶性であるため、サポート材を形成した時の、サポート材の水除去性に優れている。
【0074】
オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールは、サポート材に適度の親水性を付与するための水溶性樹脂であり、これを添加することによりに水除去性とサポート力とを兼ね備えたサポート材を得ることができる。
【0075】
オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールは、オキシブチレン基を含んでいれば、特にそのアルキレン部分の構造は限定されず、例えば、オキシブチレン基(オキシテトラメチレン基)のみ有するポリブチレングリコール単体であってもよく、また、オキシブチレン基と他のオキシアルキレン基とを共に有するポリブチレンポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリブチレンポリエチレングリコール)であってもよい。
【0076】
ポリブチレングリコールは、下記化学式(1)で示され、ポリブチレンポリエチレングリコールは、下記化学式(2)で示される。
【0077】
HO(CH2CH2CH2CH2O)nH (1)
HO(CH2CH2CH2CH2O)m(C2H4O)nH (2)
【0078】
化学式(2)において、mは5~300の整数であることが好ましく、nは2~150の整数であることが好ましい。より好ましくは、mは6~200、nは3~100である。また、化学式(1)および化学式(2)中のオキシブチレン基は、直鎖であってもよいが、分岐していてもよい。
【0079】
オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、好ましくは15~75質量部、より好ましくは17~72質量部、さらに好ましくは20~70質量部である。前記含有量が上記下限値以上であると、サポート材の親水性が向上して、サポート材の水除去性を向上しやすい。また、含有量が上記上限値以下であると、サポート材の軟化が抑制され、自立性を保ちやすいため、サポート材のサポート力を向上しやすい。
【0080】
オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは300~3,000、より好ましくは800~2,000である。オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの重量平均分子量が上記下限値以上であると、サポート材組成物を硬化した際のサポート材のブリーディングを抑制しやすい。なお、ブリーディングとは、硬化したサポート材内部から液体成分がサポート材表面に浸みだす現象である。また、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの重量平均分子量が上記上限値以下であると、サポート材組成物の吐出安定性を高めやすい。
【0081】
オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールは、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。2種類以上のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールが使用される場合、上記範囲内の重量平均分子量を有するオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの含有量は、好ましくは、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールの総量の80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0082】
(水溶性単官能エチレン性不飽和単量体)
本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットに含まれるサポート材組成物は、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコールに加えて、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を含むことが好ましい。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体は、重合してサポート材の構成成分となりサポート力を発揮するものである。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体は、水溶性ではあるが、サポート材に硬さを付与し、サポート能力を向上させる傾向にある。
【0083】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、炭素数(C)5~15の水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど];数平均分子量(Mn)200~1000のアルキレンオキサイド付加物含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1~4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1~4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びPEG-PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレートなど];C3~15の(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-(エチルメタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなど]、および(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。これらの水溶性単官能エチレン性不飽和単量体は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0084】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、好ましくは15~80質量部、より好ましくは22~76質量部、さらに好ましくは25~73質量部である。前記含有量が上記下限値以上であると、サポート材のサポート力を向上しやすく、前記含有量が上記上限値以下であると、サポート材の水除去性を向上しやすい。
【0085】
(光重合開始剤)
本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットに含まれるサポート材組成物は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
【0086】
サポート材組成物に含まれる光重合開始剤としては、特に制限されず、上述のモデル材組成物と同様の光重合開始剤が挙げられ、好ましい光重合開始剤もモデル材組成物と同様である。
【0087】
光重合開始剤の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。
【0088】
(連鎖移動剤)
本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットに含まれるサポート材組成物は、連鎖移動剤をさらに含むことが好ましい。連鎖移動剤は、ラジカル反応の連鎖移動剤として機能する化合物であれば特に限定されない。連鎖移動剤を使用することにより、組成物に光を照射して光硬化させるときに、硬化物の分子量が低下する。低分子化されたサポート材硬化物は、モデル材組成物が混合した場合でも、水に対する溶解性を保持しやすい。そのため、低分子化されたサポート材硬化物は、水除去処理時にモデル材の光硬化物の表面に残存し難くなる。
【0089】
連鎖移動剤の好ましい具体例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、γ-メルカプトキシプロピルトリメトキシシランなどのチオール化合物、2,4-ジフェニル-4-メチル-ペンテンなどが挙げられる。
【0090】
連鎖移動剤の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部の量である。前記含有量が上記下限値以上であると、モデル材組成物が混合した場合にも水に対する溶解性の低下を抑制しやすい。また、前記含有量が上記上限値以下であると、サポート材が硬化しやすく、サポート力を向上しやすい。
【0091】
(水溶性有機溶剤)
本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットに含まれるサポート材組成物は、水溶性有機溶剤をさらに含むことが好ましい。水溶性有機溶剤には、サポート材組成物の粘度をマテリアルジェット光造形法による吐出に適するように調節する効果がある。
【0092】
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、スルホラン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-チオジエタノール、3-ピリジルカルビノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールt-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールn-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0093】
水溶性有機溶剤の含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、好ましくは30質量部以下であり、また、好ましくは5質量部以上である。水溶性有機溶剤の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上しやすい。
【0094】
前記サポート材組成物は、上記成分に加えて、表面調整剤、保存安定化剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。前記表面調整剤および前記保存安定化剤としては、モデル材組成物に含まれ得る表面調整剤および保存安定化剤と同様の化合物が挙げられる。
【0095】
前記サポート材組成物が表面調整剤を含む場合、その含有量は、サポート材組成物100質量部に対して、0.005~3.0質量部であることが好ましい。前記含有量が上記下限値以上であると、サポート材組成物の表面張力を適切な範囲に調整しやすい。また、前記含有量が上記上限値以下であると、サポート材組成物における未溶解物の生成を抑制し、泡立ちにくくしやすい。
【0096】
前記サポート材組成物が保存安定化剤を含む場合、その含有量は、好ましくはサポート材組成物100質量部に対して、0.005~1質量部、より好ましくは、0.05~0.5質量部である。
【0097】
本発明におけるサポート材組成物の粘度は、マテリアルジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において1~500mPa・sであることが好ましく、20~400mPa・sであることがより好ましい。上記粘度の測定は、JIS Z 8 803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
【0098】
本発明において、サポート材組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置などを用いて、サポート材組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
【0099】
<光造形物の製造方法>
本発明の光造形用樹脂組成物、本発明のモデル材組成物、または、本発明のマテリアルジェット光造形用組成物セットから、光造形法、例えばマテリアルジェット光造形法により、光造形物(または立体造形物)を形成し得る。以下、マテリアルジェット光造形法による光造形物の製造方法について詳述する。
【0100】
本発明のモデル材組成物または光造形用組成物セットから光造形物を製造する方法は特に制限されず、例えば、モデル材組成物を光硬化させてモデル材を得ると共に、サポート材組成物を光硬化させてサポート材を得る工程と、モデル材からサポート材を除去する工程とを含む方法が挙げられる。
【0101】
前記製造方法において、例えば、作製する物体の3次元CADデータをもとに、マテリアルジェット方式で積層して立体造形物を構成するモデル材組成物のデータ、および、作製途上の立体造形物を支持するサポート材組成物のデータを作製し、さらにマテリアルジェット方式の3Dプリンタで各組成物を吐出するスライスデータを作製し、作製したスライスデータに基づきモデル材組成物およびサポート材組成物の各組成物を吐出後、光硬化処理を層ごとに繰り返し、モデル材組成物の光硬化物(モデル材)およびサポート材組成物の光硬化物(サポート材)からなる光造形物を作製してもよい。
【0102】
モデル材組成物およびサポート材組成物を硬化させる光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線などの活性エネルギー線が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性および効率性の観点から、近紫外線または紫外線であることが好ましい。
【0103】
光源としては、従来公知の高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LEDなどが挙げられる。これらの中でも、設備を小型化することができ、かつ、消費電力が小さいという観点からは、LED方式であることが好ましい。光量は、造形品の硬度および寸法精度の観点から、200~500mJ/cm2が好ましい。光源としてUV-LEDを用いる場合、光が深層まで届きやすくなり、造形物の硬度および寸法精度を向上させることができることから、中心波長が385~415nmのものを用いることが好ましい。
【0104】
光造形物を構成する各層の厚みは、造形精度の観点からは薄いほうが好ましいが、造形速度とのバランスからは5~30μmが好ましい。
【0105】
得られた光造形物は、モデル材とサポート材とが組み合わされたものである。かかる光造形物からサポート材を除去してモデル材である光造形品を得ることができる。サポート材の除去は、例えば、サポート材を溶解させる除去溶剤に得られた造形品を浸漬し、サポート材を柔軟にした後、ブラシなどでモデル材表面からサポート材を除去して行うことが好ましい。サポート材の除去溶剤には水、水溶性溶剤、例えばグリコール系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてもよい。これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0106】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0107】
実施例および比較例において使用した原料の略号および詳細を下記表1に示す。
【0108】
【0109】
表1中の単量体Aのガラス転移温度Tgは、以下の方法に従い測定した。
〔単量体Aのホモポリマーの作製およびガラス転移温度の測定〕
単量体Aに5質量%の光重合開始剤(D)を混合し、単量体Aのガラス転移温度(Tg)測定用組成物を作製した。測定用アルミニウム容器に、該Tg測定用組成物を滴下し、次いで、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を該Tg測定用組成物に照射して硬化させ、測定用サンプルを作製した。得られた測定用サンプルのガラス転移温度を、示差走査熱量計(DSC)により、以下の条件で測定した。
(測定条件)
測定装置:DSC8230(Rigaku社製)
昇温速度:10℃/分
走査温度:30~200℃
【0110】
表1中の単量体Bおよび単量体Cの線膨張係数は、以下の方法に従い測定した。
〔単量体Bおよび単量体Cのホモポリマーの作製および線膨張係数の測定〕
単量体Bおよび単量体Cの各モノマーに各々5質量%の光重合開始剤(D)を混合し、単量体Bおよび単量体Cの線膨張係数測定用組成物をそれぞれ作製した。ガラス板(商品名「GLASS PLATE」、アズワン社製、200mm×200mm×厚さ5mm)の上面四辺に厚さ5mmのスペーサーを配し、10mm×5mmの長方形に仕切った。該長方形内に各線膨張係数測定用組成物を注型した後、別の上記ガラス板を重ねて載せた。次いで、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させた。その後、硬化物をガラス板から離型して、単量体Bおよび単量体Cの各測定用ホモポリマーを得た。得られた各ホモポリマーを試験片として用い、各単量体のホモポリマーの線膨張係数を、JIS K 7197で規定される熱機械分析法(TMA法)に従い、25~200℃の範囲で測定した。
【0111】
(1)光造形用樹脂組成物の調製
表2および表3に示す各組成に従い、各光造形用樹脂組成物を構成する成分を、それぞれ混合攪拌装置を用いて均一に混合した。攪拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、得られた混合物を吸引ろ過し、実施例1~14および比較例1~4の光造形用樹脂組成物を調製した。
【0112】
(2)光造形用樹脂組成物の物性評価
上記実施例および比較例において調製した各光造形用樹脂組成物の粘度を、以下に示す方法に従い測定した。結果を表2および表3に示す。
【0113】
〔粘度の測定〕
各光造形用樹脂組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数5rpmの条件下測定した。結果を表2および表3に示す。
【0114】
(3)光造形用樹脂組成物の硬化物の物性評価
〔光硬化物の作製および線膨張係数の測定〕
ガラス板(商品名「GLASS PLATE」、アズワン社製、200mm×200mm×厚さ5mm)の上面四辺に厚さ5mmのスペーサーを配置し、10mm×5mmの長方形に仕切った。該長方形内に各光造形用樹脂組成物を注型した後、別の上記ガラス板を重ねて載せた。次いで、照射手段としてメタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させた。その後、硬化物をガラス板から離型し試験片を得た。得られた前記試験片を用いて、各光硬化物の線膨張係数を、JIS K 7197で規定される熱機械分析法(TMA法)に従い、25~200℃の範囲で測定し、以下の基準で評価した。結果を表2および表3に示す。
(線膨張係数の評価基準)
〇:100ppm未満
△:100ppm以上~150ppm以下
×:150ppmより大きい
【0115】
【0116】
【0117】
表2および表3の結果から明らかなように、単量体Bおよび単量体Cを、それぞれ特定の割合で含む実施例1~14では、線膨張係数の低い光造形用組成物の光硬化物が得られた。なかでも、光造形用樹脂組成物100質量部に対して、単量体Aを19~59質量部、単量体Bを5~50質量部および単量体Cを5~50質量部の割合で含む実施例1~10では、線膨張係数の低い光造形用樹脂組成物の光硬化物が得られ、かつ、光造形用樹脂組成物の粘度は100mPa・s未満であり、マテリアルジェット光造形法に適用可能である適度な粘度を有していた。すなわち、実施例1~10の光造形用樹脂組成物は、マテリアルジェット光造形法に使用されるモデル材組成物として使用可能であった。一方、単量体Bおよび/または単量体Cを含まない比較例2~4では、得られた光硬化物の線膨張係数は高かった。