IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レニショウ パブリック リミテッド カンパニーの特許一覧

特許7649751較正方法およびワークピース情報の取得方法
<>
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図1
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図2
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図3
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図4a
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図4b
  • 特許-較正方法およびワークピース情報の取得方法 図4c
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】較正方法およびワークピース情報の取得方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/20 20060101AFI20250313BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
B23Q17/20 Z
B23B27/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021557535
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 GB2020050583
(87)【国際公開番号】W WO2020193944
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】19165429.2
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール マックステッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ アーサー ハートレー
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-353643(JP,A)
【文献】特表2011-518048(JP,A)
【文献】特開2018-089738(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053837(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030033(WO,A1)
【文献】特開2006-107073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q17/00-23/00
B23B27/00
G05B19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1時間において、工作機械に取り付けられた工具でワークピースを処理させる工程であって、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサが、前記処理の間にセンサデータを収集する工程と、
b)工程a)で処理されたワークピースの部分を測定装置で検査して測定データを取得する工程と、
c)センサデータと測定データに基づいて、センサからワークピースへのデータ較正情報を計算する工程と、
d)第2時間において、工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じ工作機械に取り付けられた工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じ工具で工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じワークピースを処理させる工程であって、
同じまたは名目的に同じ工具および/または同じまたは名目的に同じ工作機械の1つまたは複数の状況に関するセンサデータは、工程a)で用いたものと同じまたは名目上同一のセンサによって前記第2時間に収集され、
e)工程c)で決定された前記センサからワークピースへのデータ較正情報と工程d)で収集された前記センサデータを用いて、工程d)で処理される同じまたは名目的に同じワークピースに関する測定データを推測する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ワークピースに関する前記推測された情報を用いて、ワークピースまたは名目的に同じワークピースの処理を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサデータは、振動、たわみおよび/または荷重のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
測定データおよび/または推測された情報は、ワークピースの位置、寸法、表面粗さ、表面うねりのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ワークピースの処理は、切削、穴あけ、研削、研磨、旋削、リーマ加工、およびフライス加工のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工具は、少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工具は、工具インサートと、それを介して前記工具インサートが工作機械装置に取り付けられる工具本体とを含み、前記工具本体が少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのセンサは、工具インサートの近位にある工具ホルダの端部に面して配置されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)は、工作機械に取り付けられた測定装置によって実行されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
測定装置は、ワークピースの寸法特性を測定するための測定プローブを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程c)は、センサデータおよび測定データに基づいて、事前に決定されたセンサからワークピースへのデータ較正情報を調整することを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工作機械に取り付けられた工具によって処理されたワークピースに関する測定データを推測する方法であって、
a)第1時間において、少なくとも1つのセンサによって得られたセンサデータを取得する工程であって、前記センサデータが、ワークピースが工具によって処理されている間に工具および/または工作機械の1つまたは複数の特性に関連するものである、工程と、
b)工程a)で取得された前記センサデータと工程a)で処理された前記ワークピースに関する測定データからセンサからワークピースへのデータ較正情報を取得する、工程と、
c)第2時間において、工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じ工作機械に取り付けられた工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じ工具で工程a)で用いたものと同じまたは名目的に同じワークピースを処理させる工程であって、同じまたは名目的に同じ工具および/または同じまたは名目的に同じ工作機械の1つまたは複数の状況に関するセンサデータは、工程a)で用いたものと同じまたは名目上同一のセンサによって前記第2時間に収集され、
d)工程b)で決定された前記センサからワークピースへのデータ較正情報と工程c)で収集された前記センサデータを用いて、工程c)で処理される同じまたは名目的に同じワークピースに関する測定データを推測する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に取り付けられた工具が処理するワークピースに関する情報が、工具による処理中に機械および/または工具の状況を監視するように構成されたセンサによって得られたデータに基づいて推測できるように、センサの較正情報を取得することに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工具によるワークピースの機械加工中の、たわみ、温度、荷重および/または振動など、工具の特性/状況または切削プロセスを監視するため、センサを、工具本体、工具インサートまたは刃先の極めて近くで、工具の本体に埋め込むことが知られている。このような工具は、業界では”インテリジェント工具”として知られている。機械加工作業中に工作機械の状況を監視するために、スピンドルなどの工作機械の部品にセンサを埋め込むことも知られている。このようなセンサの出力は、工具の設定を支援し、機械加工の稼働に問題があるかどうかを評価し、措置を講じるため(例えば、センサ出力が不利な状況を示している場合に機械加工の運転を停止する)、またワークピースの表面仕上げの一般的な予測を提供するためにも、監視され得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、そのようなデータを新しい方法で使用する方法に関し、それによって、処理されるワークピースの部分(例えば、表面)の測定データを、そのようなセンサから推測することができる。特に、以下でより詳細に説明するように、方法は、例えば、工具が処理するワークピースの一部に関する測定データ(測定装置がワークピースのその部分を検査することによって得られる測定データ)を、ワークピースのその一部を工具が処理している間に取得されたセンサデータに関連づける較正情報を定めることを含むことができる。そして、そのような較正情報を用いて、続いて、他の(例えば、後続の)機械加工の工程/操作の間に得られたそのようなセンサデータに基づいて、処理されるワークピースの一部に関する測定データを推測することができる。
【0004】
本発明の第1の態様によれば、a)工作機械に取り付けられた工具をワークピースに対して処理するようにし(換言すれば”機械加工し”)、ここで、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況/特性を測定(例えば、監視)する少なくとも1つのセンサが、前記処理(”機械加工”)中にセンサデータを収集する工程と、b)測定データを取得するために、測定装置で、工程a)で処理(”機械加工”)したワークピースの一部を検査する工程と、c)センサデータと測定データに基づいて、センサからワークピースへのデータ較正情報を計算する工程と、を含む方法が提供される。
【0005】
本発明の利点は、センサからワークピースへのデータ較正情報(“較正情報”)を用いて、そのような処理/機械加工中に取得されたセンサデータとは異なる(例えば、後続またはそれ以前の)時間で、処理される(例えば、機械加工される)ワークピースの一部に関する情報(例えば、測定データ)を(自動的に)推測することができることである。結果として、換言すれば、工程c)は、(“センサからワークピースへの較正情報”の代わりに)“センサデータからワークピースデータへの変換情報”を定める工程と言うことができる。任意選択で、センサからワークピースへのデータの較正情報は、単に“センサ較正情報”と称することができる。これにより、さまざまな異なる利点が得ることができる。例えば、生産サイクル時間を大幅に短縮できる。例えば、接触測定プローブなどの専用の測定工具を用いて、インテリジェント工具が処理したワークピースの総ての関連する状況を直接測定するのではなく、本発明では、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いて、ワークピースの処理中に、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定(例えば、監視)するように構成されたセンサによって取得されたセンサデータに基づいて、ワークピースに関する情報(例えば、測定データ)を高い信頼性で推測することが可能である。すなわち、センサデータに基づいて推定された、ワークピースに関連した情報(例えば、測定データ)は、あたかも、専用の測定プローブで、処理したワークピースの一部を検査することによって得られる実際の情報(例えば、測定データ)であるかのように用い/出力することができる。これにより、特に一連の名目的に同じ加工品を作成する場合に、大幅な時間の節約が可能になる。例えば、名目的に同じ一連の非常に多くのワークピースの情報は、一部または1つのワークピースのみを測定して取得した、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いることによって、処理/加工中に取得したセンサデータに基づいて推測することができる。
【0006】
さらに、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いて、専用の測定装置を用いて直接測定することが困難なまたは不可能な、ワークピースの部分に関する情報を推測できる。例えば、長い穴の遠位端に面して配置されている特徴部を正確に直接測定することは難しい場合がある。例えば、穴の中には、数メートルの深さ(例えば、少なくとも1つの1m(メートル)、例えば、少なくとも2m、例えば、少なくとも3m)の穴があり得、その穴の下端に近づくことは困難なことがある。そこで、本発明を用いることにより、そのような特徴部への処理中に得られたセンサデータに基づいてそのような特徴部に関する測定情報を推測することができる。
【0007】
換言すれば、方法は、センサからワークピースへのデータ較正情報(例えば、測定データ)を用いて、ワークピースの異なる一部に対する処理中に(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するよう構成された少なくとも1つのセンサによって)得られるセンサデータに基づいて上記異なる一部に関する情報(例えば、測定データ)を推測することを含むことができる。前記異なる一部は、穴の底端、例えば、穴の閉じた端部に面して配置されたものであり得る。穴は、少なくとも2mの長さ(ないし”深さ”)、例えば、少なくとも3mの長さであり得る。方法は、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いて、穴の第1の端部(例えば、開放端、または穴の加工を開始する側の端部)から少なくとも1mの位置、任意選択で、穴の第1の端部から少なくとも1.5m、例えば、穴の第1の端部から少なくとも2mまたはさらに3mにある穴の一部に関する情報を推測することを含むことができる。
【0008】
工具の長さ(例えば、i)工具が工具ホルダによって保持される点とii)工具インサートとの間の距離)は、少なくとも1m、例えば、少なくとも2m、例えば、少なくとも3mであり得る。方法は、センサからワークピースへのデータ較正情報および、(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサによって、)ワークピースの処理中に収集された、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況/特性に関するセンサデータに基づいて、ワークピース(例えば、同じ、または名目的に同じワークピース)に関する情報(例えば、測定データ)を推測することを含むことができる。上述のように、本発明は、長い工具によって形成された特徴部に測定装置が近づくことが困難な場合があるため、ワークピースが長い工具によって処理(”機械加工”)される場合に特に有利であり得る。
【0009】
明らかなように、工程c)は、センサおよび測定データの複数のセット(例えば、複数の異なる動作または工程a)およびb)の繰り返し)に基づいて、センサからワークピースへのデータ較正情報を計算することができ、これらは同じワークピースから得られる場合やそうでない場合がある。例えば、較正情報は、同じワークピースに対して複数回実行された(例えば同じ)機械加工操作から、および/または異なるワークピースに対して実行された(例えば同じ)機械加工操作から得られたセンサおよび測定データに基づいて取得することができる。
【0010】
明らかなように、方法は、最初に工程a)から工程c)を実行し、次に、ワークピースに対する後続の処理(機械加工)を実行し、その後、センサからワークピースへのデータ較正情報、およびワークピースに対するその後の処理の間に(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサによって)収集される工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況/特性に関連するセンサデータを用いて、その後に処理するワークピースの少なくとも1つの部分に関する情報を推測することができる。任意選択で、方法は、1つのワークピース(または複数の名目上のワークピース)に対して複数回の機械加工操作を実行し、次に、機械加工された1つの部分だけ(またはいくつかの部分だけ)を測定し(または例えば、ワークピースの1つだけを測定し)、それらに基づいて較正情報を決定し、その後、その較正情報を用いて、すでに加工されたワークピースの他の部分(または他のワークピース)に関する情報を推測する。その結果として、例えば、情報が推側されるべき部分が処理され/機械加工される前に、較正情報が必ずしも決定される必要はない。
【0011】
情報(例えば、測定データ)が推測されるワークピースに対する処理中に使用される工具、工作機械および/またはセンサは、工程a)の間に使用されるものと同じ、工具、工作機械および/またはセンサとすることができる。もちろん、同じ、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いて、名目的に同じ工具および工作機械によって処理されたワークピースについて、名目的に同じセンサによって取得されたセンサデータに基づいて情報(例えば、測定データ)を推測できることを想定することができる。明らかなように、名目的に同じセンサ、工具、および工作機械は、例えば、同じ性能/機能を有するように構成され、また実質的に同じ構成要素から形成される、実質的に同じ仕様を有する、センサ、工具、および工作機械とすることができる。例えば、名目的に同じであるとは、それらが同じ製造業者からのものであり、同じモデル/部品番号を持っていることを意味することができる。結果として、例えば、工具が(名目的に)同じ工具と交換された場合、工程a)、b)およびc)を繰り返す必要を避けることができる。それでもやはり、工具が(名目的に)同じ工具と交換された場合、および/または工具または名目的に同じ工具を用いて異なる工作機械上の名目的に同じワークピース加工する場合でも、工程a)、b)、およびc)を繰り返すことが好ましいことがある。このような場合に、工程a)~c)を繰り返すことは、最も正確な推定情報(例えば、測定データ)をもたらすのに役に立つ。それに応じて、方法は、工具またはその一部(例えば、工具インサート)が交換された場合に、工程a)~c)を繰り返すことを含むことができる。
【0012】
任意選択で、工具が変更/交換されていない場合でも、工程a)~c)が繰り返される。例えば、工程a)~c)は、定期的および/または所定の間隔で繰り返すことができる。例えば、工程a)~c)は、所定の時間(例えば、工具を用いた機械加工時間)の後、および/または所定回数の機械加工操作が工具を用いて実行された後に繰り返され得る。
【0013】
任意選択で、環境要因に大きな変化が検出された場合に、工程a)~c)が繰り返される。例えば、方法は、動作環境の温度が所定の閾値を超えて変化する場合、工程a)~c)を繰り返すことを含むことができる。
【0014】
工程a)のワークピースは、(例えば、一連の名目的に同じ加工品を形成するために)処理される、一連の名目的に同じワークピースのうちの1つとすることができる。結果として、前記一連のワークピースにおける少なくとも1つのさらなるワークピースについて、それに関する情報は、センサからワークピースへのデータ較正情報、およびその処理中に得られるセンサデータに基づいて推測することができる。例えば、方法は、一連の名目的に同じワークピースを処理して、一連の名目的に同じ加工品(例えば、工程aのワークピース/加工品と名目的に同じである)を形成することをさらに含むことができる。少なくとも一部のワークピースについて、センサからワークピースへのデータ較正情報、およびワークピースに対する処理中に(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサによって)得られた、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況/特性に関連するセンサデータに基づいて情報(例えば、測定データ)を推測できる。
【0015】
例えば、方法は、工程a)のものと同じまたは名目的に同じワークピースに処理する工程d)を含むことができる。このような処理は、工程a)で用いたものと、同じまたは名目的に同じ工具、および/または同じまたは名目的に同じ工作機械を用いて行うことができる。方法は、センサからワークピースへのデータ較正情報を用いて、ワークピースへの処理中に(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するよう構成された)(例えば、同じまたは名目的に同じ)センサよって収集されたセンサデータに基づいてワークピースに関する情報(例えば、測定データ)を推測する工程e)を含むことができる。工程d)は、工程b)および/または工程c)の後に、またはその前に実行できる。
【0016】
明らかなように、名目的に同じワークピースは、工程a)におけるワークピースと同じ材料を含むワークピースであり得る。名目的に同じワークピースは、工程a)におけるワークピースと実質的に同じ寸法を有するワークピースであり得る。名目的に同じワークピースは、同じ設計仕様(例えば、同じコンピュータ支援設計(CAD)仕様)に対して形成されたまたは形成されるべきワークピースであり得る。例えば、名目的に同じワークピースは、工程a)におけるワークピースと同じ機械加工命令に従って機械加工されたまたは機械加工されるべきものであり得る。
【0017】
推測された情報は、測定データ(例えば、絶対/数値化された測定データ)を含み得る。例えば、測定データは、穴の直径などの寸法測定を含むことができる。測定データは、測定誤差を含み得る。測定データは、表面粗さおよび/または表面うねりの測定データを含み得る。
【0018】
任意選択で、推測された情報は、処理されたワークピースの一部が許容できるかどうか、例えば、所定の公差に適合するかどうかに関する情報を含むことができる。例えば、方法は、表面粗さに関する絶対測定データを決定するのではなく、センサからワークデータへのデータ較正情報および(例えば、その後の)処理中に、(工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況/特性を測定/監視するように構成されている)少なくとも1つのセンサによって取得されたセンサデータを用いて、ワークピースおよび/またはその後の機械加工操作について決定することを含むことができる。例えば、センサからワークピースへのデータ較正情報およびそのようなセンサデータを用いて、ワークピース(例えば、そのワークピースまたは名目的に同じワークピース)について、機械加工プロセスが正しく動作しているかどうか、および/またはワークピースの一部が許容範囲外になっているかどうかを自動的に決定することができる。この情報は、自動フィードバック制御ループの一部として使用でき、それによって、例えば、ワークピースの機械加工の調整をリアルタイムで行うことができ、および/または同じまたは名目的に同じワークピースの後に続く機械加工工程の調整を行うことができる。これは、例えば、センサからワークピースへのデータ較正情報から生成/決定されたしきい値に基づいて可能となる。
【0019】
工具は、静止工具または動く(例えば回転)工具を含むことができる。例えば、工具は、中ぐり棒、フライス工具、研削工具、リーマ工具、研磨工具、または穴あけ工具のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0020】
明らかなように、較正情報は、関数、モデル、ルックアップテーブル、および/またはデータを含むことができる。上述したように、センサからワークピースへのデータ較正情報は、センサからワークピースへのデータ変換情報(または単にセンサ較正情報)と称することもある。
【0021】
工具および/または工作機械の前記状況/特性は、振動、たわみ、温度、および/または負荷のうちの少なくとも1つ(すなわち、センサデータを含むことができる)を含むことができる。
【0022】
結果として、少なくとも1つのセンサは、振動、たわみ、温度、および/または負荷のうちの少なくとも1つを測定するように構成されたセンサを含むことができる。例えば、少なくとも1つのセンサは、加速度計、温度センサ、および/またはひずみゲージ(例えば、力センサ)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0023】
測定データおよび/または推定された測定データは、ワークピースの位置、寸法、表面粗さ、表面うねりのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0024】
ワークピースに対する処理(言い換えれば”機械加工”)には、切削、穴あけ、研削、研磨、旋削、リーマ加工、フライス加工の少なくとも1つを含むことができる。
【0025】
工作機械は、少なくとも1つのセンサを含むことができる。例えば、工作機械の工具ホルダおよび/またはスピンドルは、少なくとも1つのセンサを含むことができる。有利には、工具は、少なくとも1つのセンサを含むことができる。これにより、より正確で再現性のあるセンサデータがもたらされる。工具は、ワークピースを処理するためにワークピースと相互作用するように構成された工具インサート(または刃先)を含むことができる。工具は、工具インサートを保持するための工具本体を含むことができる。結果として、工具インサートは、工具本体を介して工作機械に取り付けることができる。工具本体は、少なくとも1つのセンサを備えることができる。好ましくは、少なくとも1つのセンサは、工具インサートの近位の、工具本体の端部に向いて配置される。
【0026】
工程b)は、工作機械に取り付けられた測定装置によって実行することができる。任意選択で、工程b)は、異なる位置決め装置、例えば、座標測定機(CMM)に取り付けられた測定装置によって実行される。
【0027】
測定装置は、測定プローブを含むことができる。プローブは、ワークピースの寸法特性を測定するように構成することができる。例えば、プローブは、3次元測定体積における特定の点の位置(例えば、座標)を測定するように構成することができる。任意選択で、プローブは、表面粗さおよび/または表面うねりを測定するように構成される。測定プローブは、接触測定プローブを含むことができる。プローブは、偏向可能なスタイラスを含むことができる。プローブは、スタイラスの偏位の程度を決定して出力するように構成できる。このようなプローブは、一般に走査プローブまたはアナログプローブとして知られている。このようなプローブは、スタイラスが特定の/しきい値の値を超えて偏位するのに応答して”トリガー”信号を生じるように構成されたタッチトリガープローブとは対比されるものである。明らかなように、測定装置は工具とは別のものである。結果として、方法は、工具および測定装置を、工具ホルダに対して、および/または工具ホルダの中から、(例えば、収納ラック/カルーセルから自動的に)交換することを含むことができる。これは、工作機械に工具ホルダが1つしかない場合に特に当てはまる。
【0028】
方法は、推測された情報(例えば、測定データ)を用いることをさらに含むことができる。これは、推測された情報(例えば、測定データ)を用いて、その後の、またはその後の名目的に同じ、ワークピースに対する処理を調整することを含み得る。そのような調整としては、推測された情報(例えば、測定データ)を用いて、その後の、またはその後の名目的に同じ、ワークピースに対して自動的に調整することが含まれ得る。
【0029】
工程c)は、センサデータおよび測定データに基づいて、事前に決定されたセンサからワークピースへのデータ較正情報を調整すること(例えば、情報をそのときのワークピース/一連のワークピースに固有のものとすること、および/または工具、工作機械および/または動作環境の変化を補正すること)を含むことができる。例えば、そのような調整には、事前に決定されたセンサからワークピースへのデータ較正情報を補うことを含むことができる。そのような事前に決定されたセンサからワークピースへのデータ較正情報は、一般的なセンサからワークピースへのデータ較正情報、例えば工具(および任意選択で工作機械、例えば工具/工作機械の組み合わせ)に一般的な情報であるが、ワークピースに固有な情報ではない。結果として、工程c)は、(センサおよび測定データに基づいて)一般的なセンサからワークピースへのデータ較正情報を調整/更新して、特定のワークピース、工具と工作機械の組み合わせに固有の/特有の、センサからワークピースへのデータ較正情報を決定することを含むことができる。結果として、方法は、特定の工具(および任意選択で工作機械)の組み合わせに対する一般的なセンサからワークピースへのデータ較正情報を決定し、次に一般的な較正情報を更新/調整するために工程a)~c)を実行することを含むこととができる。
【0030】
工程a)は、空間および/または時間の異なる点で工具に異なる機械加工特性(例えば、異なる負荷、異なる振動量)を感知させるやり方で、工具でワークピースに処理させることを含むことができる。工程b)は、そのような異なる機械加工特性の対象とされたワークピースの部分を検査する測定装置を含むことができる。結果として、工程c)は、異なる機械加工特性に関連するセンサデータおよび測定データに基づいて、センサからワークピースへのデータ較正情報を計算することを含むことができる。
【0031】
換言すれば、工程a)は、i)工作機械に取り付けられた工具を第1の加工パラメータに従ってワークピースに処理させ、第1の加工パラメータに従って前記処理中に少なくとも1つのセンサによって得られたセンサデータを収集し、およびii)工作機械に取り付けられた工具を(第1の加工パラメータとは異なる)第2の加工パラメータに従ってワークピースに処理させ、第2の加工パラメータに従って前記処理中に少なくとも1つのセンサによって得られたセンサデータを収集する、ことを含むことができる。第1および第2の加工パラメータは、ワークピースの処理中に工具が異なる特性(例えば、異なる負荷、異なる振動量)を感知するように、異なって構成され得る。工程b)は、工程i)およびii)によって(例えば、少なくとも1つの測定装置によって)形成されたワークピースの部分/表面を検査することを含むことができる。工程c)は、工程i)およびii)で得られたセンサデータおよび工程b)で得られた測定データに基づいて、センサからワークピースへのデータ較正情報を計算することを含むことができる。明らかなように、工程b)は、工程i)およびii)の両方が実行された後に一回実行され得る(この場合、工程i)およびii)は、ワークピースの異なる位置で実行され得る)。任意選択で、工程i)およびii)をワークピースの同じ部分で実行でき、この場合、工程b)は、工程i)の後、および工程ii)の前に実行されて、工程i)によって形成されたワークピースの部分/表面を検査し、次に、工程b)が、工程ii)によって形成されたワークピースの部分/表面を検査するために、工程ii)の後に再び繰り返される。
【0032】
センサからワークピースへのデータ較正情報は、ワークピース固有とすることができる。換言すれば、センサからワークピースへのデータ較正情報は、工程a)で処理されたワークピースおよび名目的に同じワークピース(すなわち、一連の名目的に同じワークピースのうちのワークピース)について決定することができる。結果として、異なる/名目的に同じでないワークピースには、異なるセンサ較正情報が決定され得る。センサからワークピースへのデータ較正情報は、(例えば、特有の)特定の工具と工作機械の組み合わせについて決定することができる。特に、センサからワークピースへのデータ較正情報は、(例えば、固有の)特定のワークピース、工具、および工作機械の組み合わせについて決定することができる。
【0033】
本願は、工作機械および/またはそれに取り付けられた工具の1つまたは複数の状況/特性に関連するセンサデータに基づいて、工作機械装置に取り付けられた工具によって処理されるワークピースに関する情報を推測する方法を記載したものである。方法は、(任意の適切な順序で)a)i)工具によって処理されたワークピースの部分の実際の測定データ、およびii)i)で測定された部分の、工具による処理中に得られる、工作機械および/またはそれに取り付けられた工具の1つまたは複数の特性に関連するセンサデータに基づいてセンサ較正情報を決定する工程を含むことができる。方法はまた、b)ワークピースが工作機械装置に取り付けられた工具によって処理されている間に得られた、工作機械および/またはそれに取り付けられた工具の1つまたは複数の特性に関連するセンサデータを取得する工程を含むことができる。方法はまた、センサ較正情報を用いて、c)工程b)の間に取得されたセンサデータに基づいてワークピースに関する推測情報(例えば、測定データ)を取得する工程を含むことができる。
【0034】
本発明の別の態様によれば、工作機械に取り付けられた工具が処理するワークピースに関する測定データを推測する方法であって、任意の適切な順序で、a)ワークピースが、工具によって処理されている間に、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサによって得られたセンサデータを取得する工程と、b)特定の工具とワークピースの組み合わせに対して構成されたセンサ較正情報を用いて、前記センサデータに基づいてワークピースに関する情報を推測する工程と、を含む方法が提供される。
【0035】
明らかなように、上述の方法のいずれも、コンピュータで実行することができる。従って、本発明の別の態様によれば、コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに上述の方法のいずれかを実行させるコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が提供される。本発明の別の態様によれば、上述したコンピュータプログラムコードを担持するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、ワークピースを処理するための工具と、前記ワークピースの処理中に、工具および/または工作機械の1つまたは複数の状況を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、(例えば、コンピュータプログラムコードを用いて)工作機械装置に上述の方法のいずれかを実行させるように構成されたコントローラと、を備える工作機械装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
ここで、本発明の実施形態は、以下の図面を参照して、例としてのみ説明される。
図1図1は、ワークピースを処理するための工具が取り付けられた工作機械装置を模式的に示している。
図2図2は、図1の工作機械装置を模式的に示しているが、工作機械には工具の代わりに測定プローブが取り付けられている。
図3図3は、本発明による例示的な処理のフローチャートである。
図4a図4aは、可能な較正モデルを示すグラフである。
図4b図4bは、可能な較正モデルを示すグラフである。
図4c図4cは、可能な較正モデルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1を参照すると、工作機械4、数値制御装置6(NC)(例えば、コンピュータ数値制御装置ないし”CNC”)、PC8、および送受信装置インターフェース10を備える工作機械装置2が示されている。工作機械4は、スピンドル18に取り付けられたワークピース16に対して、工具20を保持および移動させる工具ホルダ12を備える。NC6は、モータおよびエンコーダ(不図示)などを用いて、工作機械の作業領域内で、スピンドル18の回転および工具ホルダ12のx、y、z方向の動きを制御する。NC6は、例えばPC8を介して、機械加工操作のプログラムをすることができる。
【0039】
記載される実施形態では、工具20は中ぐり棒であり、工具本体22および工具インサート24(ワークピースと相互作用(例えば、切削)してワークピースを処理するように構成された切削インサートなど)を備える。中ぐり棒20、特に工具本体22は、ワークピースに対する処理中に工具の1つまたは複数の状況/特性を測定/監視するための少なくとも1つのセンサ26を備える。例えば、本実施形態では、工具本体は、(振動を測定/監視するための)加速度計、温度センサ、およびひずみゲージを備え、これらは、図では、箱26によってまとめて示されている。図示されるように、センサ26は、工具インサート24の近位の工具本体22の端部に配置されている。代替の実施形態では、ワークピースへの処理中に工作機械の1つまたは複数の状況/特性を測定/監視するための1つまたは複数のセンサを、例えば、工具ホルダ12および/またはスピンドル18に(工具20のセンサに加えてまたは代わりに)設けることができる。
【0040】
ワークピース16は、スピンドル18によって回転されている間に、工具インサート24をワークピース16内に移動させることによって、工具20によって加工することができる。同時に、工具本体22の少なくとも1つのセンサ26からのデータを取得することができる。例えば、工具の温度、振動、荷重およびたわみのうちの少なくとも1つに関連するデータを取得することができる。そのようなデータは、例えば無線リンクおよびインターフェースユニット10を介して、外部デバイス、例えば、NC6および/またはPC8に送信することができる。例えば、少なくとも1つのセンサ26は、ブルートゥース(登録商標)無線技術標準によってインターフェースユニット10と通信することができる。記載される実施形態では、データは瞬時にかつ連続的にストリーミング配信される。ただし、理解されるように、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、データは、間隔を置いて(定期的にまたは不定期で)、または要求された場合にのみ、送信することができる。他の例示的な実施形態では、少なくとも1つのセンサ26からのデータは、工具20のメモリ内に局所的に格納され、後で、例えば、工具による処理の後、例えば、有線または無線リンクを介して、NC6および/またはPC8にダウンロードされ得る。
【0041】
図2は、測定プローブ30が、工具20(図1)の代わりに工作機械4の工具ホルダ12に装填され得ることを示している。本実施形態では、プローブ30は、工具ホルダ12に取り付けられた本体32、本体32から延びるスタイラス34、および本体32の遠位にあるスタイラス34の端部のスタイラス先端36を含む接触プローブである。記載される実施形態では、スタイラス34は、(例えば、スタイラス先端36が表面に接触するとき)本体32に対して偏位することができ、そのような偏位は、本体32のセンサによって検出することができる。特に、記載された実施形態では、プローブは、静止位置からのスタイラスの偏位の程度/量/程度がプローブ30によって感知および報告され得るという点で、(スタイラスが例えば所定のしきい値量だけ偏位したときにのみ報知するタッチトリガープローブとは対照的に)走査プローブ(当技術分野ではアナログプローブとしても知られている)である。工作機械用のそのような走査プローブとしては、例えば、本出願人から入手可能なSPRINTTM技術を備えたOSP60プローブが知られている。明らかなように、他のプローブおよび他の技術も用いることができる。
【0042】
結果として、スタイラス先端36をワークピース16の表面に接触させることにより、加工されたワークピースの部分を測定することができる。プローブ30からのスタイラス偏位データは、インターフェース10を介して、例えば無線で、NC6および/またはPC8に瞬時かつ連続的にストリーミング配信することができる。上述の工具のように、この配信はブルートゥース接続を介して行うことができる。明らかなように、他の技術を用いて、スタイラスの偏位データを転送することもできる。例えば、データは、間隔を置いて(定期的にまたは不定期で)、または要求された場合にのみ、送信することができる。他の例示的な実施形態では、スタイラスの偏位データは、プローブ30のメモリ内に局所的に格納され、後で、例えば有線または無線のリンクを介して、NC6および/またはPC8にダウンロードされ得る。
【0043】
必要に応じて、プローブ30からのデータは、工作機械の位置データと組み合わせること、例えば、プローブ30とワークピース16の相対位置に関するデータと組み合わせることができる。例えば、プローブ30からのデータは、x、yおよびz軸のいずれかまたは総てにおける、工具ホルダ12の位置を監視するエンコーダ(不図示)から取得され得る工具ホルダ12の位置データと組み合わせることができる。
【0044】
結果として、明らかなように、処理されるワークピースの部分に関する測定データは、プローブ30によって取得/出力された生データであるか、またはプローブ30によって取得/出力された生データを(例えば、工具ホルダ12の位置に関するデータなど、他のデータと組み合わせる)処理することによって得られたデータであり得る。
【0045】
明らかなように、走査スタイラス偏位プローブ以外の測定プローブを用いることもできる。例えば、接触トリガー測定プローブまたは表面仕上げプローブを用いることができる。任意選択で、非接触プローブを用いることもできる。任意選択で、ワークピースの部分を同じ工作機械で測定しなくてもよい。例えば、部分を工作機械から取り外して、座標測定機(CMM)などで測定することができる。本発明による例示的な処理100を図3に示す。
【0046】
例示的な処理100は、ワークピース16が工具20によって処理されるステップ102で始まり、少なくとも1つのセンサ26の工具20からのデータが、ワークピースの処理中に取得される。図3に概略的に示されているように、工具センサデータは、後で用いるために(PC8などにおける)メモリに保存される。明らかなように、データは、他の場所、例えば、NC6、インターフェース10、またはその他の場所、例えば、ネットワークストレージまたはクラウドに格納することができる。次に、ステップ104で、工具20によって処理されたワークピース16の部分が、測定プローブ30を用いて測定され、部分に関する測定データ(例えば、寸法および/または表面粗さ/うねりデータ)が得られる。図3に模式的に示されるように、測定データは後で用いるためにメモリに保存される。
【0047】
ステップ106において、ステップ102およびステップ104で得られた工具センサデータおよび測定データは、センサからワークピースへのデータ較正情報を決定するために用いられる。この決定は、さまざまな方法で実現できる。例えば、i)工具の特定の特性(例えば、ひずみゲージによって測定される工具の負荷など)と、ii)部分の寸法誤差(例えば、穴の直径)との関係を成すモデルを、1つまたは複数の試験切削とワークピースの測定値から決定することができる。このようなモデルは、例えば、関数またはルックアップテーブルの形態にすることができる。図4aは、2つの異なる負荷で実行された2つの異なる試験穴切削から、およびそれらの2つの試験切削によって形成された穴の直径の誤差から決定されたモデルを示すグラフである。これらの結果は、図4aのグラフにプロットされて示されている。図示されるように、2つの試験切削の結果から直線に適合するモデル(関数など)を決定できる。このモデルは、ワークピースの較正モデル(またはその基礎を形成するもの)とすることができる。その結果として、ワークピース(または名目的に同じワークピース)のその後の切削では、穴の直径の誤差(従って穴の実際の寸法)は、切削処理中に測定された荷重から推測できることになる。
【0048】
この実施形態では、2つの試験切削が得られた。ただし、十分に理解されるように、より多くのまたはより少ない試験切削を取得することもできる。例えば、3つ以上の試験切削が取得される場合、較正モデルは、異なる試験切削から得られた測定値を介した最適な線(直線または曲線)に基づくことができる。
【0049】
代替の実施形態では、工具(および任意選択で工作機械、例えば工具/工作機械の組み合わせ)に対して一般的な、センサからワークピースへのデータ較正情報が既に得られている場合がある。例えば、図4bの実線で示されているように、荷重と加工誤差の関係の一般的なモデルが、工具(および任意選択で工作機械、例えば工具/工作機械の組み合わせ)に対して既に決定されている場合がある。それにもかかわらず、本発明者等は、そのような一般的なモデルを用いることが、与えられたワークピースに対して必ずしも正確な測定をもたらすとは限らないことを見出した。その結果として、本発明者等は、ワークピース(または名目的に同じもの)に対して1つまたは複数の試験切削を実行し、切削された部分を測定し、そのワークピース(および一連の名目的に同じワークピースにおける後続のワークピース)のための較正のモデル/機能を決定する、ことの重要な利点があり得ることを見出している。結果として、センサからワークピースへのデータ較正情報は、ワークピースに固有であり得る。例えば、これには、試験切削を1回だけ実行し、それに基づいて一般モデルを適合させることが含まれ得る。例えば、図4bに示すように、穴の機械加工中に測定された“x”の荷重の場合、穴の直径の実際の誤差は、一般モデルが予測するe1ではなく、e2であると判断することができる。この誤差の違いは一定であると見なすことができ、図4bのグラフの破線で示されているように、e2とe1の差だけ一般モデルをオフセットすることによって適合した較正モデルを決定できる。明らかなように、必要に応じて、複数の試験切削およびその測定を実行することができ、これにより、より正確なオフセット情報をもたらすことができる。
【0050】
同様に、図4cに示すように、負荷以外の特性についても同じ手法をとることができる。例えば、測定された、振動に対する表面粗さ(Ra)の一般モデルは、特定の測定された振動レベル“y”で感知する表面粗さの実際の読み取り値に基づいて適合させることができる。
【0051】
較正情報(例えば、機能、モデル、データまたはその他の適切な情報)は、後で用いるためにメモリ(例えば、PC)に保存される。
【0052】
その後のある時点で、ワークピース(または、例えば、名目的に同じワークピース)は、処理100のステップ108によって表されるように、工具(または、例えば、名目的に同じ工具)によって再び処理される。図3に示されるように、少なくとも1つのセンサ26における工具20からの工具センサデータは、ワークピースの処理中に取得され、その後の使用のためにメモリ(例えば、PC)に格納される。
【0053】
ステップ110では、ステップ106で得られた較正情報およびステップ108で得られた工具センサデータを用いて、ステップ108で処理されたワークピースの部分に関する測定データを推測する。例えば、穴を形成する場合、また図4aおよび図4bに関連して、この推測処理は、ステップ106で決定されたモデルを用いて、ステップ108の機械加工処理中にセンサ26によって測定された、工具に作用する荷重に基づいて推定される直径の誤差を検索することを含むことができる。あるいは、またはさらに、図4cに関連して、この推測処理は、ステップ106で決定されたモデルを用いて、ステップ108の機械加工処理中にセンサ26によって測定された振動に基づいて部分の表面粗さを決定することを含み得る。決定がなされると、推測された測定データは、その後の使用、例えば、ステップ112での使用のために、メモリ(例えば、PC)に格納される。例えば、推測された測定データのそのような使用には、ワークピースを容認するか拒否するかを決定すること、リアルタイムでまたは後続の処理ステップ中のどちらかで、ワークピースの後続の処理をどのように調整するかを決定すること、および/または処理を停止することを決定すること、のうちの少なくとも1つが含まれ得る。
【0054】
結果として、本発明の技術を用いれば、実際に測定工具を用いて部分を直接測定することなく、処理されたワークピースの部分に関する測定データを決定することができる。
【0055】
明らかなように、方法は、機械加工された表面の測定データを推測するのではなく、ステップ106で決定された較正情報を用いて、(同じまたは名目的に同じワークピースの)後続の機械加工ステップを制御する際に用いるプロセス制御パラメータを決定することを含むことができる。例えば、方法は、それを超えたときには修正措置をとるべきである閾値振動レベルを決定することを含むことができる。
【0056】
明らかなように、メモリにデータを格納することへの本明細書での言及は、永久記憶媒体および/または一時的なメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ”RAM”)にデータを格納することを含み得る。さらに、上述の格納工程プは任意とすることができる。例えば、推測された測定データは、外部デバイスに送信され、および/または記憶装置に格納されることなく直ちに(例えば、決定を下すためにNC6によって)使用され得る。
【0057】
明らかなように、NC6およびPC8に対して、共通の1つのインターフェース10が示されているが、それらはそれぞれ独自の別個のインターフェース10を有することができる。さらに、そのようなインターフェースは、図示されているように分離されたものではなく、NC6および/またはPC8内に組み込まれたものとすることができる。
【0058】
上述の実施形態では、測定プローブ30は、工具20に代わって工具ホルダ12に取り付けられている。しかしながら、明らかなように、代替の実施形態では、測定プローブは、工作機械の別の工具ホルダまたは他の部分に取り付けることもできる。この場合、工具を測定プローブと交換する必要がなくなる。
【0059】
上述の実施形態では、同じ部分、同じ工具、および同じ機械を総てのステップで用いられる。しかしながら、必ずしもそうとは限られない。例えば、ステップ102および104で用いられるワークピース、工具、および/または工作機械は、ステップ108で用いられるワークピース、工具、および/または工作機械とは(名目的に同じであるが)異なることがあり得る。例えば、一実施形態では、較正情報は、異なる工作機械で取得することができる。例えば、ステップ102および104は、ステップ108とは異なる工作機械で実行することが可能である。別の例示的な実施形態では、ステップ102および108は、同じ工作機械で実行することができるが、ステップ104は、異なる装置、例えば、異なる工作機械または座標測定機(CMM)などの専用測定装置で得ることができる。
【0060】
明らかなように、代替の実施形態では、中ぐり棒以外の工具を用いることができる。例えば、工具は、ドリル、砥石車、またはフライス、リーマ、またはフライス盤の工具を含むことができる。
【0061】
明らかなように、代替の実施形態では、x、yおよびz次元のいずれかまたは総てにおける相対運動は、工具ホルダ12の代わりに、または工具ホルダ12とともに、スピンドル18の動きによってもたらすことができる。さらに、運動はより少ない次元、例えばxおよび/またはyのみに制限される場合がある。さらに、記載された実施形態は、デカルト工作機械を含むが、これは必ずしもそうである必要はなく、例えば、非デカルト工作機械であり得ることが理解されるであろう。さらに、明らかなように、本発明は旋盤工作機械と併せて示されているが、本発明は、フライス工作機械装置(例えば、工具は移動可能なスピンドルに保持される)などの他の多くのタイプの工作機械装置およびマシニングセンターに使用することができる。その結果、本発明は、工具が回転し、部分が静止状態に保たれている実施形態で使用することができる。
【0062】
明らかなように、ステップ102および104は、例えば、異なる(例えば、名目的に同じ)ワークピースに対して繰り返され得、それによって、ステップ106で較正情報が取得される。
【0063】
上述の実施形態では、方法は、最初の試験切削および測定を実行して、後続の機械加工が行われる前に較正情報を決定することを含む。それにもかかわらず、明らかなように、これは必ずしもそうである必要はなく、情報が推測される機械加工操作が、較正情報が決定される前に行われることも可能である。例えば、方法は、1つのワークピース(または複数の名目的に同じワークピース)に対して複数回の機械加工操作を実行し、機械加工された1つの部分だけ(またはいくつかの部分だけ)を測定して(または例えば、ワークピースの1つまたはいくつかだけを測定して)、その結果から較正情報を決定し、その後、較正情報を用いて、既に加工されたワークピースの他の部分(または他のワークピース)に関する情報を推測することを含む。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c