(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用リチウム複合酸化物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/66 20250101AFI20250313BHJP
C01G 53/42 20250101ALI20250313BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250313BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250313BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250313BHJP
【FI】
C01G53/66
C01G53/42
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2022154709
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2021025715の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2016-0098646
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0130564
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, モンホウ
(72)【発明者】
【氏名】シン, ジョンセウン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン, スクヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ヒュンジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ, キョウンジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ユンナム
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018827(JP,A)
【文献】特表2014-528891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0181611(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0081663(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1555594(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の1次粒子が凝集して形成されるリチウム複合酸化物2次粒子であって、
前記1次粒子において結晶構造の面間距離が前記2次粒子の中心から表面方向に減少し、
前記2次粒子の表面にCoコーティング層を含み、
前記表面における前記Coコーティング層の厚さは、80nm~140nmであり、
前記2次粒子は、リチウム、ニッケル及びコバルトを含み、
前記リチウム複合酸化物2次粒子は六方構造であり、
前記2次粒子は、XRD分析時、(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)位置で少なくとも1つのピークが表れ、
前記2次粒子は以下の<化学式1>で示されることを特徴とする、リチウム複合酸化物2次粒子。
【化1】
(前記<化学式1>でM1
はAlであり、M2はCoであり、M3はAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択され、0.95≦X1≦1.05、1.50≦a≦2.1、0.02≦x1≦0.25、0.01≦y1≦0.20、0<z1≦0.20、0≦r1≦0.20)
【請求項2】
前記2次粒子の中心での前記1次粒子の前記結晶構造の面間距離d1は、4.8nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子。
【請求項3】
前記2次粒子の表面での前記1次粒子の結晶構造の面間距離d2は、4.7nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子。
【請求項4】
前記2次粒子はXPS測定を通じて得られたCo 2p core-levelスペクトル分析時、spin-orbit-spit 2p3/2ピークの束縛エネルギー(P1)及び2p1/2ピークの束縛エネルギー(P2)の範囲が次の通りであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子。
779eV≦(P1)≦780eV
794eV≦(P2)≦795eV
【請求項5】
前記2次粒子はXPS測定を通じて得られたO 1s core-levelスペクトル分析時、531eV付近のピーク強度(I531)及び528.5eV付近のピーク強度(I528)の比が次の通りであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子。
(I531)/(I528)≦2
【請求項6】
前記2次粒子はXPS測定を通じて得られたC 1s core-levelスペクトル分析時、289eV付近のピーク強度(I289)及び284.5eV付近のピーク強度(I284)の比が次の通りであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子。
(I289)/(I284)≦0.9
【請求項7】
請求項1によるリチウム複合酸化物2次粒子の製造方法であって、前記製造方法は:
リチウム二次電池用正極活物質前駆体を製造する第1のステップと;
前記リチウム二次電池用正極活物質前駆体をリチウム化合物と反応させ、第1熱処理して正極活物質を製造する第2ステップと;
前記正極活物質を蒸溜水またはアルカリ水溶液で水洗する第3ステップと;
前記水洗された正極活物質をAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、Zrから選択される1つまたは複数を含む溶液でコーティング反応させる第4ステップと;
前記正極活物質粒子を乾燥させる第5ステップと;
前記乾燥された正極活物質をCoと混合し、第2熱処理して前記粒子の内部にドーピングさせる第6ステップと、
を包含し、
前記2次粒子は以下の<化学式1>で示されることを特徴とする、製造方法。
【化2】
(前記<化学式1>でM1
はAlであり、M2はCoであり、M3はAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択され、0.95≦X1≦1.05、1.50≦a≦2.1、0.02≦x1≦0.25、0.01≦y1≦0.20、0<z1≦0.20、0≦r1≦0.20)
【請求項8】
請求項1に記載のリチウム複合酸化物2次粒子を包含する、リチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム二次電池は残留リチウムが6000ppm以下であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム複合酸化物及びその製造方法に関し、より詳しくは、従来の結晶構造のa軸、c軸方向にリチウムイオンの拡散経路(Li ion pathway)が形成される正極活物質において、残留リチウムを改善するために製造工程で水洗を実施したが、水洗結果、残留リチウムは減少するが、性能の低下が誘導されるにつれて、表面に異種元素のコーティングを進行して2次粒子の内部に位置する1次粒子と2次粒子の表面部に位置する1次粒子での結晶構造の面間距離が変わるにつれて、容量特性、抵抗特性、及び寿命特性が改善される効果を示すリチウム複合酸化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術と需要が増加するにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使われている。
リチウム二次電池の正極活物質にはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)が主に使われており、その他に層状結晶構造のLiMnO2、スピネル結晶構造のLiMn2O4などのリチウム含有マンガン酸化物と、リチウム含有ニッケル酸化物であるLiNiO2の使用も考慮されている。
前記正極活物質のうち、LiCoO2は寿命特性及び充放電効率が優れて最も多く使われているが、容量が小さく、原料として使われるコバルトの資源的限界によって高価であるので、電気自動車などの中大型電池分野の動力源として大量使用するには価格競争力に限界があるという短所がある。前記正極活物質のうち、LiMnO2、LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物は原料として使われるマンガン資源が豊富であるので、価格が低廉で、環境親和的であり、熱的安全性が優れるという長所があるが、容量が小さく、高温特性及びサイクル特性などが劣るという問題がある。
【0003】
リチウム複合酸化物を製造する方法は、一般的に転移金属前駆体を製造し、前記転移金属前駆体とリチウム化合物とを混合した後、前記混合物を焼成するステップを含む。この際、前記リチウム化合物には、LiOH及び/又はLi2CO3が使われる。一般的に、正極活物質のNi含有量が65%以下の場合にはLi2CO3を使用し、Ni含有量が65%以上の場合には低温反応であるのでLiOHを使用することが好ましい。
しかしながら、Ni含有量が65%以上のニッケルリッチシステム(Ni rich system)は低温反応であるので正極活物質の表面にLiOH、Li2CO3形態に存在する残留リチウム量が高いという問題点があった。このような残留リチウム、即ち、未反応LiOH及びLi2CO3は電池内で電解液などと反応してガス発生及びスウェリング(swelling)現象を誘発することによって、高温安全性が深刻に低下する問題を引き起こす。また、未反応LiOHは極板製造前、スラリーミキシング時、粘度が高くてゲル化を引き起こすこともある。
【0004】
このような未反応Liを除去するために一般的に活物質製造後、水洗工程を実施して、残留リチウムが格段に減少したが、この場合、水洗工程で正極活物質の表面損傷が発生して容量及び効率特性が低下し、また高温貯蔵時、抵抗が増加する更に他の問題が引き起こされて、残留リチウムを減少させ、かつ容量特性、効率特性、及び寿命特性を改善するための方法が必要な状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2011-0108566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するために、残留リチウムが減少し、かつ容量特性、抵抗特性、及び寿命特性が改善される効果を示す新たな構造のリチウム複合酸化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するために、複数個の1次粒子が凝集して形成されるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記1次粒子の結晶構造の面間距離が2次粒子の中心から表面方向に減少することを特徴とする、リチウム複合酸化物2次粒子を提供する。
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記面間距離d1、d2は、正極活物質のTEM分析など、結晶構造分析結果から測定する部分の面間距離を中心に隣接した面間距離10個の平均を意味する。2次粒子の中心から表面方向に面間距離が減少することが1次粒子内での中心から表面方向に面間距離が減少することと、2次粒子内で中心に位置する1次粒子での面間距離より表面部に位置する1次粒子での面間距離が減少することを全て含む。
【0008】
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記2次粒子の内部での結晶構造の面間距離d1は、4.8nm以上であることを特徴とする。
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記2次粒子の表面での結晶構造の面間距離d2は、4.75nm以下であることを特徴とする。
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記リチウム複合酸化物2次粒子は六方構造(hexagonal structure)であり、粒子の表面から中心方向にリチウムイオン拡散経路が形成されることを特徴とする。
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、前記2次粒子は表面部にCoコーティング層を含み、前記表面部の厚さは0.3~1umであることを特徴とする。即ち、本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、表面部に位置する1次粒子は2次粒子の最外郭で0.3~1um厚さ以内に位置する1次粒子をいう。
【0009】
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子において、XDR分析時、(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)の位置で少なくとも一つのピークが表れることを特徴とする。(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)の位置で表れるピークはLiCoO2粒子で表れる特徴的なピークであり、本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子は、水洗工程後、Coコーティングにより前記のような特徴的なピーク表れるようになる。
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子は、XPS測定を通じて得られたCo 2p core-levelスペクトル分析時、spin-orbit-spit 2p3/2ピークの束縛エネルギー(P1)及び2p1/2ピークの束縛エネルギー(P2)の範囲が次の通りであることを特徴とする。
779eV≦(P1)≦780eV
794eV≦(P2)≦795eV
【0010】
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子は、XPS測定を通じて得られたO 1s core-levelスペクトル分析時、531eV付近のピーク強度(I531)及び528.5eV付近のピーク強度(I528)の比が次の通りであることを特徴とする。
(I531)/(I528)<2
【0011】
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子は、XPS測定を通じて得られたC 1s core-levelスペクトル分析時、289eV付近のピーク強度(I289)及び284.5eV付近のピーク強度(I284)の比が次の通りであることを特徴とする。
(I289)/(I284)<0.9
【0012】
本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子は、以下の<化学式1>で示されることを特徴とする。
【化1】
(前記<化学式1>で、M1はMnまたはAlであり、M2及びM3はAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択される金属であり、0.95≦X1≦1.05、1.50≦a≦2.1、0.02≦x1≦0.25、0.01≦y1≦0.20、0≦z1≦0.20、0≦r1≦0.20)
【0013】
また本発明は、
以下の<化学式2>で示されるリチウム二次電池用正極活物質前駆体を製造する第1ステ
ップ;
【化2】
(前記<化学式2>で、M1はMnまたはAlであり、M2はAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、Zrからなるグループから選択される金属であり、(0≦x2≦0.25、0≦y2≦0.20、0≦z2≦0.20)
【0014】
前記リチウム二次電池用正極活物質前駆体をリチウム化合物と反応させ、第1熱処理して正極活物質を製造する第2ステップ;
前記正極活物質を蒸溜水またはアルカリ水溶液で水洗する第3ステップ;
前記水洗された正極活物質をAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択される金属M2を含む溶液でコーティング反応させる第4ステップ;
前記正極活物質粒子を乾燥させる第5ステップ;
前記乾燥された正極活物質をAl、Ba、B、Co、Ce、Cr、F、Li、Mg、Mn、Mo、P、Sr、Ti、Zrからなるグループから選択される金属M3と混合し、第2熱処理して金属M3を粒子の内部にドーピングさせる第6ステップ;から構成される、本発明による正極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
本発明による正極活物質の製造方法において、前記第4ステップではCoを含む溶液でコーティング反応させることを特徴とする。
また本発明は、本発明によるリチウム複合酸化物2次粒子を含むリチウム二次電池を提供する。
本発明によるリチウム二次電池は、残留リチウムが6000ppm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリチウム複合酸化物は、水洗工程及び異種金属コーティング工程により2次粒子の内部と表面部での結晶構造の面間距離が異なり、これによって、本発明のリチウム複合酸化物を含む二次電池は、残留リチウムが減少し、かつ容量特性、抵抗特性、及び寿命特性が改善される効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の比較例1のLiCoO
2正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図2】本発明の一実施例で製造された正極活物質のTEM写真及びEDX写真を測定した結果を示す。
【
図3】本発明の一実施例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図4】本発明の一実施例で製造された正極活物質のTEM写真及びEDX写真を測定した結果を示す。
【
図5】本発明の一実施例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図6】本発明の一実施例で製造された正極活物質の表面部で中心部方向へのNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定した結果を示す。
【
図7】本発明の一実施例で製造された正極活物質のEDX写真を測定した結果を示す。
【
図8】本発明の一実施例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図9】本発明の一実施例で製造された正極活物質のTEM写真及びEDX写真を測定した結果を示す。
【
図10】本発明の一実施例で製造された正極活物質の表面部で中心部方向へのNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定した結果を示す。
【
図11】本発明の一実施例で製造された正極活物質の表面部の3地点で中心部方向へのNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定した結果を示す。
【
図12】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図13】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図14】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図15】本発明の比較例で製造された活物質のEDX写真を測定した結果を示す。
【
図16】本発明の比較例で製造された活物質のEDX写真を測定した結果を示す。
【
図17】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図18】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図19】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質の回折パターン及び面間距離を測定した結果を示す。
【
図20】本発明の一実施例で製造された正極活物質の表面部で中心部方向へのNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定した結果を示す。
【
図21】本発明の一実施例で製造された正極活物質の表面部で中心部方向へのNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定した結果を示す。
【
図22】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質のXRDを測定した結果を示す。
【
図23】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質のXRDを測定した結果を示す。
【
図24】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質のXRDを測定した結果を示す。
【
図25】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質のXRDを測定した結果を示す。
【
図26】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質のXPSを測定した結果を示す。
【
図27a】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図27b】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図27c】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図27d】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図27e】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図28a】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図28b】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図28c】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図28d】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図28e】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図29a】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図29b】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図29c】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図29d】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図29e】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図30a】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図30b】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図30c】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図30d】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図30e】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図31a】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図31b】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図31c】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図31d】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【
図31e】本発明の一実施例及び比較例で製造された正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施例により、一層詳細に説明する。しかしながら、本発明が以下の実施例により限定されるものではない。
<比較例1>
比較例1に商業的に販売されるLiCoO2正極活物質を使用した。
【0019】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記比較例1のLiCoO
2正極活物質の2次粒子の表面部に位置する1次粒子及び粒子の内部に位置する1次粒子に対して各々回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図1に示した。
LiCoO
2正極活物質粒子をカーボングリッドに載せて、カーボンコーティングし、PTコーティングし、イオンビームでスライスするTEM前処理過程を経て2000万倍~2500万倍の割合で拡大した後、測定しようとする部分の面間距離は測定しようとする面間距離を中心とする左右10個の面間距離の平均距離として測定した。
図1に示すように、LiCoO
2正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子及び表面に位置する1次粒子の回折パターンは全て六方構造であり、2次粒子の内部に位置する1次粒子及び表面に位置する1次粒子の面間距離は全て4.70nmに測定された。
【0020】
<実施例1>正極活物質製造
まず、共沈反応によりNiCo(OH)2前駆体を製造した。製造された前駆体にリチウム化合物としてLi2CO3及びLiOHを添加し、M1としてAl、Mgを添加し、第1熱処理してリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
蒸溜水を準備し、前記製造されたリチウム二次電池用正極活物質を蒸溜水に投入して温度を維持させながら前記製造されたリチウム二次電池用正極活物質を水洗した。
以後、前記正極活物質水洗液に0.03モル(mol)硫酸コバルト水溶液を一定の割合で1時間の間投入しながら正極活物質を攪拌して正極活物質の表面をM2にCoでコーティングしながら水洗し、真空条件で120℃で乾燥した。
コーティングされた正極活物質にM3としてTiを添加し、450℃で第2熱処理してリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0021】
<実験例>TEM、EDX測定
前記実施例1で製造された正極活物質のTEM写真及びEDX写真を測定し、その結果を
図2に示した。
図2に示すように、本発明の実施例1で製造された正極活物質の場合、2次粒子の表面でCoの濃度が高く、2次粒子の表面から内部に行くほどCoの濃度が低くなり、2次粒子内でCoの濃度が一定でなく、濃度が勾配を示すことが分かる。
【0022】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記実施例1で製造された正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子及びCo、Tiがコーティングされた表面部分に位置する1次粒子に対し、各々1次粒子の回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図3に示した。
図3に示すように、Coコーティング層の厚さは約80nmであり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の回折パターンは六方構造であり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の場合、TEM写真で隣接する10個の面間距離の平均が4.88nmに測定されることに比べて、Coコーティング層が存在する表面に位置する1次粒子の場合、回折パターンは六方構造であるが、面間距離は4.73nmに測定された。
これからコバルトがコーティングされない2次粒子の内部に位置する1次粒子に比べて表面に位置する1次粒子の面間距離が減少し、表面に位置する1次粒子の面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するように変更されたことが分かる。
【0023】
<実施例2>正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記正極活物質水洗液に添加されるコバルト水溶液の濃度を4mol%にすることを除いては、前記実施例1と同一に水洗及びコーティング工程を実施して実施例2の正極活物質を製造した。
【0024】
<実験例>TEM、EDX測定
前記実施例2で製造された正極活物質のTEM写真及びEDX写真を測定し、その結果を
図4に示した。
図4に示すように、本発明の実施例2で製造された正極活物質の場合、2次粒子の表面のCoの濃度が高く、2次粒子の内部に行くほどCoの濃度が低くなって粒子内でCoの濃度が一定でなく、勾配を示すことが分かる。
【0025】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記実施例1で製造された正極活物質2次粒子の内部に位置する1次粒子及びCo、Ti
がコーティングされた表面部分に位置する1次粒子に対し、各々1次粒子の回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図5に示した。
図5で、表面Coコーティング層の厚さは約90nmであり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の回折パターンは六方構造であり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の場合、TEM写真で隣接する10個の面間距離の平均が4.85nmに測定されることに比べて、Coコーティング層が存在する表面に位置する1次粒子の場合、回折パターンは六方構造であるが、面間距離は4.73nmに測定された。
コバルトがコーティングされない2次粒子の内部に位置する1次粒子に比べて表面に位置する1次粒子の面間距離が減少し、表面に位置する1次粒子の面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するように変更されたことが分かる。
【0026】
<実施例3>NCM系列の正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記正極活物質水洗液に添加されるコバルト水溶液の濃度を5mol%でコーティングを実施して実施例3の正極活物質を製造した。
【0027】
<実験例>濃度scanning
前記実施例3で製造された正極活物質の2次粒子の表面部から粒子中心方向にNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定し、その結果を
図6に示した。
図6で、本発明の実施例3で製造された正極活物質の場合、CoがコーティングされるCoコーティング層では表面から中心方向に行くほどCoの濃度が高まるが、以後、中心方向に行くほどCoの濃度が減少し、Coコーティング層の厚さが0.1umであることが分かる。
【0028】
<実験例>TEM、EDX
前記実施例3で製造された正極活物質の2次粒子の表面部から粒子中心方向にNi、Co、Alの各々に対するEDX写真を測定し、その結果を
図7に示した。
図7で、本発明の実施例3で製造された正極活物質の場合、Coがコーティングされるコーティング層では表面から中心方向に行くほどCoの濃度が高まるが、以後、中心方向に行くほどCoの濃度が減少し、1次粒子の境界部に沿ってCo濃度が高く表れることが分かる。
【0029】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記実施例3で製造された正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子及びCo、Tiがコーティングされた表面部分に位置する1次粒子に対し、各々1次粒子の回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図8に示した。
図8に示すように、Coコーティング層の厚さは約100nmであり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の回折パターンは六方構造であり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の場合、TEM写真で隣接する10個の面間距離の平均が4.84nmに測定されることに比べて、Coコーティング層が存在する表面に位置する1次粒子の場合、回折パターンは六方構造であるが、面間距離は4.67nmに測定された。
Coがコーティングされない2次粒子の内部に位置する1次粒子に比べてCoがコーティングされた表面に位置する1次粒子の面間距離が減少し、表面に位置する1次粒子の面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するように変更されたことが分かる。
【0030】
<実施例4>NCM系列の正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記正極活物質水洗液に添加されるコバルト水溶液の濃度を10mol%にして水洗及びコーティングを実施して、実施例4の正極活物質を製造した。
【0031】
<実験例>TEM、EDX測定
前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面でのTEM写真及びEDX写真を測定し、その結果を
図9に示した。
図9に示すように、本発明の実施例4で製造された正極活物質の場合、2次粒子の表面にCoの濃度が高く、2次粒子の内部に行くほどCoの濃度が低くなって、Coの濃度が一定でなく、勾配を示すことが分かる。
また、EDX測定結果ではCoが棒形態の1次粒子形状に分布することによって、棒形態の1次粒子の周辺部でCoの濃度が高く測定されることが分かる。
【0032】
<実験例>粒子内部での濃度scanning
前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面から中心方向にNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定し、その結果を
図10に示した。
図10で、本発明の実施例4で製造された正極活物質の場合、2次粒子のCoがコーティングされるコーティング層部分では表面から中心方向に行くほどCoの濃度が高まるが、以後、中心方向に行くほどCoの濃度が減少し、CoがコーティングされるCoコーティング層の厚さが0.14umであることが分かる。
【0033】
<実験例>濃度scanning
前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面の3地点で粒子の表面から中心方向にNi、Co、Alの各々の濃度の変化を測定し、その結果を
図11に示した。
図11に示すように、前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面の互いに独立した3部分でコーティング層の厚さが0.14umに濃度勾配層が均一に形成されることが分かる。
【0034】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子及びCo、Tiがコーティングされた表面部分に位置する1次粒子に対し、各々1次粒子の回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図12に示した。
図12に示すように、Coコーティング層の厚さは140nmであり、2次粒子の内部に位置する1次粒子の回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.85nmに測定されることに比べて、Co及びTiがコーティングされた表面部に位置した1次粒子の場合、回折パターンは六方構造であるが、面間距離は4.69nmに測定された。
Coがコーティングされない2次粒子の内部に位置する1次粒子に比べてCoがコーティングされた表面に位置する1次粒子の面間距離が減少し、表面に位置する1次粒子の面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するように変更されたことが分かる。
【0035】
<実験例>コーティング境界面での結晶構造間面間距離測定
前記実施例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面に位置する1次粒子の内部及び2次粒子の表面に位置する1次粒子内でコーティング層の境界面に位置する部分での回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図13に示した。
図13に示すように、正極活物質の2次粒子の表面に位置する1次粒子の内部及び2次粒子の表面に位置する1次粒子内でCo、Tiがコーティングされたコーティング層との境界部分での回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.71nmに測定された。
前記2次粒子の内部に位置する1次粒子の場合、面間距離は4.85nmであり、コバルト及びTiがコーティングされた2次粒子の表面に位置する1次粒子の場合、面間距離は4.69nmに測定されたことと対比する時、コバルト及びTiがコーティングされた2次粒子の表面に位置する1次粒子内でのコーティング境界面部分での面間距離である4.71nmは、2次粒子の内部に位置する1次粒子での面間距離とコバルト及びTiがコーティングされた2次粒子の表面に位置する1次粒子の面間距離の中間値が測定されることが分かる。
また、コーティング境界面での面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するよ
うに変更されたことが分かる。
【0036】
<実験例>1次粒子境界面での結晶構造間距離測定
前記実施例4で製造された正極活物質のCo、Tiがコーティングされた2次粒子の表面に位置した1次粒子の境界面での回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図14に示した。
図14に示すように、正極活物質の2次粒子の表面部に位置する1次粒子の境界部での1次粒子の回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.69及び4.71nmに測定されて、コア部分及びコーティング層部分の面間距離との中間値に測定されることが分かる。
また、1次粒子の境界部での面間距離が比較例のLiCoO
2の面間距離と類似するように変更されたことが分かる。
【0037】
<実施例5>正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.02Ni0.816Co0.15Al0.034O2で製造し、Tiを添加せず、実施例5の正極活物質を製造した。
【0038】
<実施例6>正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.02Ni0.903Co0.08Al0.014Mg0.003O2で製造して、実施例6の正極活物質を製造した。
【0039】
<実施例7>正極活物質製造
前記実施例1と同一に実施し、かつ前記第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.00Ni0.965Co0.02Al0.014Mg0.001O2で製造して、実施例7の正極活物質を製造した。
【0040】
<実施例8>正極活物質製造
前記実施例7と同一に実施し、かつ前記正極活物質水洗液に添加されるコバルト水溶液の濃度を4mol%でコーティングを実施して、実施例8の正極活物質を製造した。
【0041】
<実施例9>正極活物質製造
前記実施例7と同一に実施し、かつ前記正極活物質水洗液に添加されるコバルト水溶液の濃度を5mol%でコーティングを実施して、実施例9の正極活物質を製造した。
【0042】
<実施例10>正極活物質製造
前記実施例7と同一に実施し、かつ前記第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi
1.00Ni
0.985Al
0.014Mg
0.001O
2で製造して、実施例10の正極活物質を製造した。
前述した実施例1から10での最終組成式を各々以下の<表1>に整理した。
【表1】
【0043】
<比較例2>
前記実施例4と同一に実施し、かつ0.1molのコバルト水溶液に活物質粒子を入れて攪拌してコーティング後に乾燥して比較例2の正極活物質を製造した。
【0044】
<比較例3>
前記実施例4と同一に実施し、かつ水洗時にCoを含まず、Ti添加工程及び第2熱処理を実施しないことを除外して、比較例3の正極活物質を製造した。
【0045】
<実験例>TEM、EDX測定
前記比較例2で製造された正極活物質の2次粒子の表面でのTEM写真及びEDX写真を測定し、その結果を
図15に示した。
図15に示すように、本発明の比較例2で製造された正極活物質の場合、コバルト水溶液に活物質粒子を入れて攪拌する工程によりCoが粒子の表面に集中して分布するが、以後、熱処理工程を実施しなくて表面が平坦でなく、内部にドーピングされないことが分かる。
【0046】
<比較例4>
前記比較例3と同一に実施し、かつTi 0.001molの濃度で添加し、第2熱処理して比較例4の正極活物質を製造した。
【0047】
<比較例5>
前記比較例3と同一に実施し、かつ第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の製造後、水洗工程を実施せず、比較例5の正極活物質を製造した。
【0048】
<比較例6>
前記比較例3と同一に実施し、かつ第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.00Ni0.815Co0.15Al0.014O2で製造して、比較例6の正極活物質を製造した。
【0049】
<比較例7>
前記比較例4と同一に実施し、かつ第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組
成をLi1.02Ni0.903Co0.08Al0.014Mg0.003O2で製造して、比較例7の正極活物質を製造した。
【0050】
<比較例8>
前記比較例4と同一に実施し、かつ第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.00Ni0.965Co0.02Al0.014Mg0.001O2で製造して、比較例8の正極活物質を製造した。
【0051】
<比較例9>
前記比較例4と同一に実施し、かつ第1熱処理されたリチウム二次電池用正極活物質の組成をLi1.00Ni0.985Al0.014Mg0.001O2で製造して、比較例9の正極活物質を製造した。
前述した比較例1から9での1次焼成での最終組成式を各々以下の<表2>に整理した。
【表2】
【0052】
<実験例>TEM、EDX測定
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面でのTEM写真及びEDX写真を測定し、その結果を
図16に示した。
図16で、本発明の比較例4で製造された正極活物質の場合、活物質製造後、Coがコーティングされる工程を遂行しなくてCoの濃度が粒子内に均等に分布し、表面部から粒子の内部へのCo濃度勾配は観察できないことが分かる。
【0053】
<実験例>結晶構造間距離測定
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面部分に対し、各々回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図17に示した。
図17に示すように、表面部分の回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.85nmに測定された。
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子に対し、各々回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図18に示した。
図18に示すように、正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子の回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.83nmに測定されて、Coコーティングを実施しない場合、第2熱処理を遂行しても正極活物質の2次粒子の内部に位置する1次粒子と表面に
位置する1次粒子の面間距離がほぼ類似することが分かる。
【0054】
<実験例>1次粒子境界面での結晶構造間距離測定
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面に位置する1次粒子の境界面での回折パターン及び面間距離を測定した結果を
図19に示した。
図19に示すように、2次粒子の表面に位置する1次粒子の境界での回折パターンは六方構造であり、面間距離は4.81nm及び4.88nmに測定された。
また、前記
図18及び
図19でCoコーティングを実施しない場合、1次粒子の内部及び境界面での回折パターン及び面間距離が類似することが分かる。
【0055】
<実験例>濃度scanning
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面からコア方向にNi、Co、Alの各々の濃度を測定し、その結果を
図20に示した。
図20で本発明の比較例4で製造された正極活物質の場合、Ni、Co、Alの濃度が粒子内で一定であることを確認することができる。
【0056】
<実験例>濃度scanning
前記比較例4で製造された正極活物質の2次粒子の表面に位置する1次粒子の表面方向と水平な方向にNi、Co、Alの各々の濃度を測定し、その結果を
図21に示した。
図21で本発明の比較例4で製造された正極活物質の場合、Ni、Co、Alの濃度が粒子内で一定であり、Coコーティングを遂行しなくてCo濃度が勾配を示さず、面間距離も表面と内部で類似することを確認することができる。
【0057】
<実験例>XRD測定
前記実施例4及び比較例1のLiCoO
2正極活物質に対してXRDを測定し、その結果を
図22及び
図23に示した。
図22及び
図23に示すように、本発明の実施例4で製造されたCo及びTiがコーティングされた正極活物質の場合、比較例1のLiCoO
2のように(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)ピークが検出されることが分かる。
【0058】
<実験例>XRD測定
前記比較例2の正極活物質に対してXRDを測定し、その結果を
図24に示した。
図24に示すように、本発明の比較例2で製造された正極活物質の場合、Co(OH)2によるピークのみ検出されるだけであり、LiCoO
2で特徴的に検出される(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)ピークが検出されないことが分かる。
【0059】
<実験例>XRD測定
Coコーティングを実施しない前記比較例4とCoコーティングを実施した後、熱処理を遂行した実施例4の正極活物質に対してXRDを測定し、その結果を
図25に示した。
図25に示すように、本発明のCoコーティングを実施しない前記比較例4の正極活物質の場合、LiCoO
2で特徴的に検出される(104)、(110)、(113)、(101)、(102)、及び(003)ピークが検出されないことが分かる。
【0060】
<実験例>XPS測定
Coコーティングを実施しない前記比較例4とコバルト水溶液の濃度を5mol%にしてコーティングを実施した実施例3の正極活物質に対してXPSを測定し、その結果を
図26に示した。
図26に示すように、本願発明により水洗過程でコバルトコーティングを実施する場合、
Co 2pピークの強度が比較例4に比べて大きく表れることが分かり、このようなピークは大部分Co+3によるものであることが分かる。また、比較例4に比べてLI
2CO
3によるピークの強度が減少することが分かる。
【0061】
<実験例>残留リチウム測定
前記実施例1~10及び比較例4~9で製造された複合酸化物の残留リチウムを測定し、その結果を以下の<表3>に示した。
残留リチウムを測定するために活物質1gを蒸溜水5gに浸漬させた後、5分間攪拌し、濾過液を取って、0.1M HClに適正し、前記濾過液のpHが5になるまで投入されたHClの体積を測定することによって、活物質の残留リチウムを分析した。
以下の<表3>で本発明の実施例により製造された活物質の場合、比較例5のように焼成過程を実施しない場合に比べて残留リチウムが格段に減少することを確認することができる。
【表3】
【0062】
<製造例>電池製造
前記実施例1~10及び比較例4、6~9の製造された正極活物質と導電剤にsuper-P、結合剤にはポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:5:3の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを15μm厚さのアルミ箔に均一に塗布し、135℃で真空乾燥してリチウム二次電池用正極を製造した。
前記正極と、リチウムホイールを相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(セルガルドLLC製、Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレータにし、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にLiPF6が1.15M濃度
で溶けている液体電解液を使用して通常的に知られている製造工程によりコイン電池を製造した。
【0063】
<実験例>電池特性測定-初期容量
前記実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の初期容量を測定し、その結果を
図27a(実施例1~4、比較例4)、
図27b(実施例5、比較例6)、
図27c(実施例6、比較例7)、
図27d(実施例7~9、比較例8)、及び
図27e(実施例10、比較例9)に図示した。
図27aから
図27eを参照すると、本発明の実施例によりCoコーティングを実施した場合、比較例より容量と効率特性が優れるに測定された。
前述した実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の初期容量測定結果を以下の<表4>に整理した。
【表4】
【0064】
<実験例>電池特性測定-効率特性
前記実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の効率特性を測定し、その結果を
図28a(実施例1~4、比較例4)、
図28b(実施例5、比較例6)、
図28c(実施例6、比較例7)、
図28d(実施例7~9、比較例8)、及び
図28e(実施例10、比較例9)に図示した。
図28aから
図28eを参照すると、本発明の実施例によりCoコーティングを実施した場合、比較例より容量と効率特性が優れるに測定された。
前述した実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の効率特性測定結果を以下の<表5>に整理した。
【表5】
【0065】
<実験例>電池特性測定-寿命特性
前記実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の寿命特性を測定し、その結果を
図29a(実施例1~4、比較例4)、
図29b(実施例5、比較例6)、
図29c(実施例6、比較例7)、
図29d(実施例7~9、比較例8)、及び
図29e(実施例10、比較例9)に示した。
図28aから
図28eを参照すると、本発明の実施例によりCoコーティングを実施した場合、比較例より寿命特性が改善されることが分かる。
前述した実施例1~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の寿命特性測定結果を以下の<表6>に整理した。
【表6】
【0066】
<実験例>電池特性測定-高温貯蔵特性
前記実施例1~3、5~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の高温貯蔵特性を測定し、貯蔵前の結果を
図30a(実施例1から3、比較例4)、
図30b(実施例5、比較例6)、
図30c(実施例6、比較例7)、
図30d(実施例7~9、比較例8)、及び
図30e(実施例10、比較例9)に図示し、貯蔵後の結果を
図31a(実施例1~3、比較例4)、
図31b(実施例5、比較例6)、
図31c(実施例6、比較例7)、
図31d(実施例7~9、比較例8)、及び
図31e(実施例10、比較例9)に図示した。
図30aから
図30e、
図31aから
図31eを参照すると、本発明の実施例によりCoコーティングを実施した場合、比較例より高温貯蔵後にインピーダンスが格段に増加しないので高温貯蔵特性が格段に改善されることが分かる。
前述した実施例1~3、5~10及び比較例4、6~9で製造された活物質で製造された電池の高温貯蔵特性測定結果を以下の<表7>に整理した。
【表7】