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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】ソフトスイッチング電流型インバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250313BHJP
   H02M 5/10 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 R
H02M5/10
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022512754
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 US2020047882
(87)【国際公開番号】W WO2021041465
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】62/891,791
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】メイジャー,ミカエル ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】カンデュラ,ラジェンドラ プラサド
(72)【発明者】
【氏名】ディバン,ディーパック エム.
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/201209(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0085510(US,A1)
【文献】米国特許第04942511(US,A)
【文献】E.R. da Silva, Y. Murai, T.A. Lipo, L.P. de Oliveria, and C.B. Jacobina,Pulsed DC-Link Current Converters - a Review,IAS'97. Conference Record of the 1997 IEEE Indstry Applications Conference Thirty-Second IAS Annual Meeting,米国,IEEE,1997年10月,volume 2,p.146-148, Figs. 1(c),3(e),ISBN:0-7803-4067-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流型インバータ(current source inverter:CSI)であって、
第1のパワーバンクに動作可能に接続された第1のCSIブリッジと、
第2のパワーバンクに動作可能に接続された第2のCSIブリッジと、
前記第1および第2のCSIブリッジの間に直列に接続されたDCリンクインダクタと、
振タンクと、
前記共振タンクに直列に接続された漏れ管理ダイオードと、を備えたCSI。
【請求項2】
前記第1のパワーバンクは、電力を供給する、電力を受け取る、および電力を供給し、かつ受け取ることからなる群から選ばれるように構成されている、請求項1に記載のCSI。
【請求項3】
前記第2のパワーバンクは、電力を供給する、電力を受け取る、および電力を供給し、かつ受け取ることからなる群から選ばれるように構成されている、請求項1または請求項に記載のCSI。
【請求項4】
前記共振タンクは、共振コンデンサを備え、
前記漏れ管理ダイオードは、前記DCリンクインダクタと前記共振タンクの間に直列に接続されており、前記DCリンクインダクタによって生成された電流が前記漏れ管理ダイオードを流れて前記共振コンデンサを放電するように構成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のCSI。
【請求項5】
前記共振タンクは、
前記DCリンクインダクタと並列に接続されている共振コンデンサと、
共振スイッチと、
前記共振スイッチと直列に接続されている共振インダクタとを備え、
前記直列に接続された共振インダクタと共振スイッチは、前記共振コンデンサと並列に接続されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のCSI。
【請求項6】
前記共振スイッチは、逆阻止スイッチである、請求項に記載のCSI。
【請求項7】
1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備え、
前記第1のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備え、
前記1つ以上のフィルタコンデンサは前記第1のCSIブリッジの前記2つ以上のレッグの間に接続されており、
前記2つの逆阻止スイッチのうち1つ以上は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含むダイオードに直列に接続された、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む制御可能スイッチを備える、請求項1からのいずれかに記載のCSI。
【請求項8】
前記制御可能スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである、請求項に記載のCSI。
【請求項9】
1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備え、
前記第2のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、2つの逆阻止スイッチを備え、
前記1つ以上のフィルタコンデンサは前記第2のCSIブリッジの前記2つ以上のレッグの間に接続されており、
前記2つの逆阻止スイッチのうち1つ以上は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含むダイオードに直列に接続された、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む制御可能スイッチを備える、請求項1から請求項のいずれかに記載のCSI。
【請求項10】
前記CSIは、アクティブ・フェーズとフリーホイーリング・フェーズとを含むスイッチング・サイクルで動作するように構成されており、
前記アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、
前記第1のCSIブリッジを介して、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間、および
前記第2のCSIブリッジを介して、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間
に、同時に転送され、
前記フリーホイーリング・フェーズにおいて、前記DCリンクインダクタと前記第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されない、請求項1から請求項のいずれかに記載のCSI。
【請求項11】
前記第1および第2のCSIブリッジのそれぞれは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを備え、
前記フリーホイーリング・フェーズの間、前記第1のCSIブリッジの第1のレッグの前記第1および第2のスイッチがゲートオンされ、前記第2のCSIブリッジの第1のレッグの前記第1および第2のスイッチがゲートオンされる、請求項1に記載のCSI。
【請求項12】
前記共振タンクは、
前記DCリンクインダクタと並列に接続されている共振コンデンサと、
共振スイッチと、
前記共振スイッチと直列に接続されている共振インダクタとを備え、
前記直列に接続された共振インダクタと共振スイッチは、前記共振コンデンサと並列に接続されており、
前記CSIは、アクティブ・フェーズとフリーホイーリング・フェーズとを含むスイッチング・サイクルで動作するように構成されており、
前記アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、
前記第1のCSIブリッジを介して、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間、および
前記第2のCSIブリッジを介して、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間
に、同時に転送され、
前記フリーホイーリング・フェーズにおいて、前記DCリンクインダクタと前記第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されず、
前記第1のCSIブリッジは、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備え、
前記第2のCSIブリッジは、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備え、
前記スイッチング・サイクルは、前記複数の第1および第2のスイッチがゲートオフされ、前記共振スイッチがゲートオンされ、前記共振コンデンサと前記共振インダクタとの共振を開始する、共振フェーズをさらに含む、請求項に記載のCSI。
【請求項13】
前記スイッチング・サイクルは、スイッチング周期をさらに含み
前記共振フェーズは、前記スイッチング周期の10%未満を含む、請求項12に記載のCSI。
【請求項14】
前記共振タンクは、
前記DCリンクインダクタと並列に接続されている共振コンデンサと、
共振スイッチと、
前記共振スイッチと直列に接続されている共振インダクタとを備え、
前記直列に接続された共振インダクタと共振スイッチは、前記共振コンデンサと並列に接続されており、
前記CSIは、アクティブ・フェーズとフリーホイーリング・フェーズとを含むスイッチング・サイクルで動作するように構成されており、
前記アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、
前記第1のCSIブリッジを介して、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間、および
前記第2のCSIブリッジを介して、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間
に、同時に転送され、
前記フリーホイーリング・フェーズにおいて、前記DCリンクインダクタと前記第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されず、
前記第1のCSIブリッジは、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備え、
前記第2のCSIブリッジは、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備え、
前記スイッチング・サイクルは、前記複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、前記共振スイッチがゲートオフされ、前記DCリンクインダクタによって生成された電流が前記共振コンデンサを流れる、1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態をさらに含む、請求項に記載のCSI。
【請求項15】
前記CSIは、0.9~1.0のDCリンク電流使用率を有する、請求項1から請求項14のいずれかに記載のCSI。
【請求項16】
前記DCリンクインダクタは、第1のDCリンクインダクタであり
前記共振タンクは、前記第1のCSIブリッジと並列に接続された第1の共振タンクであり
前記漏れ管理ダイオードは、第1の漏れ管理ダイオードであり、
前記CSIは、
前記第2のCSIブリッジと並列に接続された第2の共振タンクと、
前記第2の共振タンクに直列に接続された第2の漏れ管理ダイオードと、さらに備え、
前記CSIは、アクティブ・フェーズとフリーホイーリング・フェーズとを含むスイッチング・サイクルで動作するように構成されてり、
前記アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、
前記第1のCSIブリッジを介して、前記第1のパワーバンクと前記第1のDCリンクインダクタの間、および
前記第2のCSIブリッジを介して、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間
に、同時に転送され
前記フリーホイーリング・フェーズにおいて、前記第1のDCリンクインダクタと前記第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されない請求項1に記載のCSI。
【請求項17】
前記第1のパワーバンクは、電力源、電力負荷、および電力源かつ電力負荷から構成される群から選ばれ、
前記第2のパワーバンクは、電力源、電力負荷、および電力源かつ電力負荷から構成される群から選ばれる、請求項16に記載のCSI。
【請求項18】
前記第1の共振タンクは、第1の共振コンデンサ、第1の共振インダクタ、および第1の共振スイッチを備え、
前記第2の共振タンクは、第2の共振コンデンサ、第2の共振インダクタ、および第2の共振スイッチを備え、
前記第1の共振コンデンサは、直列に接続された前記第1の漏れ管理ダイオードを介して前記第1のCSIブリッジと並列に接続されており、
前記第2の共振コンデンサは、直列に接続された前記第2の漏れ管理ダイオードを介して前記第2のCSIブリッジと並列に接続されており、
前記第1の共振インダクタは、前記第1の共振スイッチと直列に接続されており、
前記第2の共振インダクタは、前記第2の共振スイッチと直列に接続されている、請求項16または請求項17に記載のCSI。
【請求項19】
直列に接続された前記第1の共振スイッチと前記第1の共振インダクタは、前記第1の共振コンデンサと並列に接続されており、
直列に接続された前記第2の共振スイッチと前記第2の共振インダクタは、前記第2の共振コンデンサと並列に接続されている、請求項18に記載のCSI。
【請求項20】
前記第1の共振スイッチは、逆阻止スイッチであり、
前記第2の共振スイッチは、逆阻止スイッチである、請求項18に記載のCSI。
【請求項21】
1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備え、
前記第1のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備え、
前記1つ以上のフィルタコンデンサは、前記第1のCSIブリッジの前記2つ以上のレッグの間に接続されており、
前記2つの逆阻止スイッチのうち1つ以上は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含むダイオードに直列に接続された、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む制御可能スイッチを備える、請求項16から請求項20のいずれかに記載のCSI。
【請求項22】
前記制御可能スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである、請求項21に記載のCSI。
【請求項23】
1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備え、
前記第2のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備え、
前記1つ以上のフィルタコンデンサは、前記第2のCSIブリッジの前記2つ以上のレッグの間に接続されており、
前記2つの逆阻止スイッチのうち1つ以上は、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含むダイオードに直列に接続された、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む制御可能スイッチを備える、請求項16から請求項20のいずれかに記載のCSI。
【請求項24】
前記制御可能スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである、請求項23に記載のCSI。
【請求項25】
前記第1および第2のCSIブリッジの間に直列に接続された第2のDCリンクインダクタをさらに備え、
当該第2のDCリンクインダクタは、前記第1のDCリンクインダクタと直列に接続されていない、請求項16から請求項24のいずれかに記載のCSI。
【請求項26】
前記第1および第2のCSIブリッジのそれぞれは、2つ以上のレッグを備え、
当該2つ以上のレッグのそれぞれは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを備え、
前記フリーホイーリング・フェーズの間、前記第1のCSIブリッジの第1のレッグの前記第1および第2のスイッチがゲートオンされ、前記第2のCSIブリッジの第1のレッグの前記第1および第2のスイッチがゲートオンされる、請求項16に記載のCSI。
【請求項27】
前記第1のCSIブリッジは、前記第1のパワーバンクと前記第1のDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備え、
前記第2のCSIブリッジは、前記第2のパワーバンクと前記第1のDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備え、
前記スイッチング・サイクルは、前記複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、前記第1および第2の共振スイッチのうちの少なくとも1つがゲートオンされ、前記第1の共振コンデンサと前記第1の共振インダクタとの共振および前記第2の共振コンデンサと前記第2の共振インダクタとの共振のうち少なくとも1つを開始する、共振フェーズをさらに含む、請求項16に記載のCSI。
【請求項28】
前記スイッチング・サイクルは、スイッチング周期を有し、前記共振フェーズは、前記スイッチング周期の10%未満を含む、および
前記CSIは、0.9~1.0のDCリンク電流使用率を有する
ことのうちの少なくとも1つである、請求項27に記載のCSI。
【請求項29】
前記第1のCSIブリッジは、前記第1のパワーバンクと前記第1のDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備え、
前記第2のCSIブリッジは、前記第2のパワーバンクと前記第1のDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備え、
前記スイッチング・サイクルは、前記複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、前記第1および第2の共振スイッチがゲートオフされ、前記第1のDCリンクインダクタによって生成された電流が前記第1の共振コンデンサおよび前記第2の共振コンデンサのうちの少なくとも1つを流れる、1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態をさらに含む、請求項16に記載のCSI。
【請求項30】
前記CSIは、1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態、アクティブ・フェーズ、フリーホイーリング・フェーズ、共振フェーズ、およびスイッチング周期を含むスイッチング・サイクルで動作するように構成されており、
前記共振タンクは、共振スイッチと、前記共振スイッチと直列に接続されている共振インダクタとをさらに備え、
前記直列に接続された共振スイッチと共振インダクタは、前記共振コンデンサと並列に接続されており、
前記第1のCSIブリッジは、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備え、
前記第2のCSIブリッジは、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備え、
1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態において、前記複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、前記共振スイッチがゲートオフされ、前記DCリンクインダクタによって生成された電流が前記共振コンデンサを流れ、
前記アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、
前記第1のCSIブリッジを介して、前記第1のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間、および
前記第2のCSIブリッジを介して、前記第2のパワーバンクと前記DCリンクインダクタの間
に、同時に転送され、
前記フリーホイーリング・フェーズにおいて、前記DCリンクインダクタと前記第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されず、
前記共振フェーズでは、前記複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、前記共振スイッチがゲートオンされ、前記共振コンデンサと前記共振インダクタとの共振を開始する、請求項4に記載のCSI。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2019年8月26日に出願された「ソフトスイッチング電流型インバータ」と題された米国仮出願第62/891,791号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は電力インバータに関し、より具体的には、ソフトスイッチング電流型インバータに関する。
【背景技術】
【0003】
可変速モータ駆動(variable speed motor drive:VSD)は、年間200億ドル以上の産業であり、産業プロセスの大部分から輸送用電化に至るまで、数多くの用途がある。可変速モータ駆動により、モータは特定の用途に必要な速度、および/または、トルクで動作できる。VSDは、入力において3相ACシステム、単相ACシステム、またはDC電源(電気自動車)に接続することができ、出力において3相ACシステムを生成して、モータに電力を供給し制御できる。一般的なVSD構成では、共通電圧DCリンクで接続された2つのバックツーバックの電圧型コンバータ(VSC)を用いる。従来の3相から3相へのVSCベースの実装が図1に示されている。
【0004】
VSCを適切に制御し、達成可能な電力密度を制限するには、多くの場合、大型のDCリンクコンデンサが必要であり、これは輸送用電化の用途において特に重要である。さらに、電圧型というコンバータの性質により、DCバスの短絡やモータ巻線の障害が発生した場合に大きな短絡電流が発生することになり、半導体の短絡保護が困難になり、VSDの信頼性を損なう。
【0005】
VSCベースのVSDは、入力/出力で高周波スイッチング電圧を生成し、繊細な電子機器やプロセスを妨害する可能性のある多くの電磁干渉(electromagnetic interferences:EMI)を引き起こす。また、通常、出力側にはラインインダクタフィルタがなく、スイッチング電圧を、利用可能なライン電流へとフィルタリングするのにモータインダクタンスを用いるため、追加のモータ損失が発生し、またモータ設計が複雑になる。
【0006】
また、VSCベースのVSDは高レベルのコモンモード電圧を生成し、モータのベアリングと巻線の絶縁を早期に劣化させ、嵩張る高価なコモンモード緩和フィルタを追加で必要とすることが多いことが、よく知られている。
【0007】
さらには、近年、業界において、既存のVSCトポロジの単なる「差し込み式」の代替品として炭化ケイ素(SiC)デバイスなどの新しいワイドバンドギャップ技術を用いて推進している高性能化が、これらの新しいデバイスの非常に高いスイッチング速度によって妨げられている。従来のシリコンデバイスよりも1桁大きいスイッチングdv/dtが一般的に報告されており、さらなる電磁干渉(EMI)、さらなるモータ損失、および電圧反射という形の一連の問題を引き起こしたり悪化させたりする。これらは、複雑で高価で高損失で嵩張る緩和技術を、典型的には、コンバータの容積の最大30%を占めるEMIフィルタという形で必要とし、これらの新しい電源スイッチ技術によって提供される、より低いスイッチング損失とより高い動作温度から得られる可能性のあるシステムレベルの利益を大幅に制限する。
【0008】
電流型インバータ(current source inverter:CSI)は、かつての好ましい変換構造であり、モータ駆動の用途では、例えば、生成されるコモンモード電圧が低く、ラインインダクタを必要としない正弦波フィルタ出力電圧波形により機械損失が低くなり、本質的に短絡故障に対して耐性があるなど、VSIに比べて多くの利点がある。これらの固有の品質にもかかわらず、当該トポロジは、これに対応するVSIよりも大きな導通損失があり、同じ処理電力に対して低効率であることが定期的に観測される。また、CSIは、通常、低スイッチング周波数で動作し、大きな受動素子を必要とし、かつ動的性能が低い。その結果、VSIが今日の駆動系の用途に適したトポロジであるが、前述の欠点を伴う。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、電流型インバータ(current source inverter:CSI)に関し、より具体的には、ソフトスイッチング電流型インバータ(soft-switching current source inverter:SSCSI)に関する。本開示の例示的な実施形態は、第1のCSIブリッジ、第2のCSIブリッジ、DCリンクインダクタ、および共振タンクを備えるCSIを提供する。第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクに動作可能に接続することができる。第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクに動作可能に接続することができる。DCリンクインダクタは、第1および第2のCSIブリッジの間に直列に接続することができる。共振タンクは、DCリンクインダクタと並列に接続することができる。
【0010】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のパワーバンクは、電力を供給するように構成することができる。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のパワーバンクは、電力を受け取るように構成することができる。
【0012】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のパワーバンクは、電力を供給し、かつ受け取るように構成することができる。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第2のパワーバンクは、電力を供給するように構成することができる。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第2のパワーバンクは、電力を受け取るように構成することができる。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第2のパワーバンクは、電力を供給し、かつ受け取るように構成することができる。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、共振タンクとDCリンクインダクタの間に直列に接続される漏れ管理ダイオードをさらに備えることができる。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、共振タンクは、共振コンデンサ、共振インダクタ、および共振スイッチを備えることができる。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、共振コンデンサは、DCリンクインダクタと並列に接続することができる。
【0019】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、共振コンデンサは、共振スイッチと直列に接続することができる。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、直列に接続された共振スイッチと共振インダクタは、共振コンデンサと並列に接続することができる。
【0021】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、共振スイッチは、逆阻止スイッチであり得る。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備えることができ、当該2つ以上のレッグのそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備えるができる。
【0023】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第2のCSIブリッジは、2つ以上のレッグを備えることができ、当該2つ以上のレッグのそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備えるができる。
【0024】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第1のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグの間に接続された1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備えることができる。
【0025】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第2のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグの間に接続された1つ以上のフィルタコンデンサをさらに備えることができる。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第1のパワーバンクと第1のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグの間に直列に接続された1つ以上のインダクタをさらに備えることができる。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第2のパワーバンクと第2のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグの間に直列に接続された1つ以上のインダクタをさらに備えることができる。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、上記逆阻止スイッチのうち1つ以上は、ダイオードに直列に接続された制御可能スイッチを備えることができる。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、上記制御可能スイッチのうちの1つ以上は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、およびサイリスタのうちの1つであり得る。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、上記制御可能スイッチのうちの1つ以上は、炭化ケイ素または窒化ガリウムを含むことができる。
【0031】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、上記ダイオードのうちの1つ以上は、炭化ケイ素または窒化ガリウムを含むことができる。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、スイッチング・サイクルで動作するように構成することができる。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、スイッチング・サイクルは、アクティブ・フェーズを含むことができ、当該アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、(a)第1のCSIブリッジを介して、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタの間、および(b)第2のCSIブリッジを介して、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタの間に、同時に転送される。
【0034】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、スイッチング・サイクルは、DCリンクインダクタと第1および第2のパワーバンクとの間に電力が転送されないフリーホイーリング・フェーズを含むことができる。
【0035】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備えることができ、第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備えることができ、スイッチング・サイクルは、当該複数の第1および第2のスイッチがゲートオフされ、共振スイッチがゲートオフされ、DCリンクインダクタによって生成された電流が共振コンデンサを流れる、1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態を含むことができる。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1および第2のCSIブリッジのそれぞれは、2つ以上のレッグを備えることができ、当該2つ以上のレッグのそれぞれは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを備えることができ、フリーホイーリング・フェーズの間、第1のCSIの第1のレッグの第1および第2のスイッチがゲートオンされ、第2のCSIの第1のレッグの第1および第2のスイッチがゲートオンされる。
【0037】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備えることができ、第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備えることができ、スイッチング・サイクルは、当該複数の第1および第2のスイッチがゲートオフされ、共振スイッチがゲートオンされ、共振コンデンサと共振インダクタとの共振を開始する、共振フェーズを含むことができる。
【0038】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、スイッチング・サイクルは、スイッチング周期を有することができ、共振フェーズは、スイッチング周期の10%未満を含むことができる。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、0.9~1.0のDCリンク電流使用率を有することができる。
【0040】
本開示の別の例示的な実施形態は、第1のCSIブリッジ、第2のCSIブリッジ、DCリンクインダクタ、第1の共振タンク、および第2の共振タンクを備えるCSIを提供する。第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクに動作可能に接続することができる。第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクに動作可能に接続することができる。DCリンクインダクタは、第1および第2のCSIブリッジの間に直列に接続することができる。共振タンクは、第1のCSIブリッジと並列に接続することができる。第2の共振タンクは、第2のCSIブリッジと並列に接続することができる。
【0041】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第1の共振タンクと直列に接続された第1の漏れ管理ダイオードをさらに備えることができる。
【0042】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第2の共振タンクと直列に接続された第2の漏れ管理ダイオードをさらに備えることができる。
【0043】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1の共振タンクは、第1の共振コンデンサ、第1の共振インダクタ、および第1の共振スイッチを備えることができ、第2の共振タンクは、第2の共振コンデンサ、第2の共振インダクタ、および第2の共振スイッチを備えることができる。
【0044】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1の共振コンデンサは、第1のCSIブリッジと並列に接続することができ、第2の共振コンデンサは、第2のCSIブリッジと並列に接続することができる。
【0045】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1の共振インダクタは、第1の共振スイッチと直列に接続することができ、第2の共振インダクタは、第2の共振スイッチと直列に接続することができる。
【0046】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、直列に接続された第1の共振スイッチと第1の共振インダクタは、第1の共振コンデンサと並列に接続することができ、直列に接続された第2の共振スイッチと第2の共振インダクタは、第2の共振コンデンサと並列に接続することができる。
【0047】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1の共振スイッチは、逆阻止スイッチであり得、また、第2の共振スイッチは、逆阻止スイッチであり得る。
【0048】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備えることができ、第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備えることができ、スイッチング・サイクルは、当該複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、上記第1および第2の共振スイッチのうちの少なくとも1つがゲートオンされ、第1の共振コンデンサと第1の共振インダクタとの共振および第2の共振コンデンサと第2の共振インダクタとの共振のうち少なくとも1つを開始する、共振フェーズを含むことができる。
【0049】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、第1のCSIブリッジは、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第1のスイッチを備えることができ、第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタとの間に電力を供給するための複数の第2のスイッチを備えることができ、スイッチング・サイクルは、当該複数の第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つがゲートオフされ、第1および第2の共振スイッチがゲートオフされ、第1のDCリンクインダクタによって生成された電流(または第1および第2のDCリンクインダクタの両方によって生成された電流)が第1の共振コンデンサおよび第2の共振コンデンサのうちの少なくとも1つを流れる、1つ以上のゼロ電圧スイッチング遷移状態を含むことができる。
【0050】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、CSIは、第1および第2のCSIブリッジの間に直列に接続された第2のDCリンクインダクタをさらに備えることができ、第2のDCリンクインダクタは、第1のDCリンクインダクタと直列に接続されていない。
【0051】
本開示のこれらおよび他の態様が、以下の詳細な説明および添付の図面に記載されている。実施形態の他の態様および特徴は、特定の例示的な実施形態の以下の説明を図面と併せて検討することにより、当業者に明らかになるであろう。本開示の特徴は、特定の実施形態および図に関連して論じることができるが、本開示のすべての実施形態は、本明細書で論じられる特徴の1つまたは複数を含むことができる。さらには、1つまたは複数の実施形態が、特定の有利な特徴を有するものとして論じられ得るが、そのような特徴の1つまたは複数は、本明細書で論じる様々な実施形態とともに用いることもできる。同様に、例示的な実施形態は、デバイス、システム、または方法の実施形態として以下で説明され得るが、そのような例示的な実施形態は、本開示の様々なデバイス、システム、および方法で実施され得ることが理解されるべきである。
【0052】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことにより、より理解されるであろう。本開示を説明する目的で、特定の実施形態が図面に示されている。しかしながら、本開示は、図面に示される実施形態の正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、モータ駆動用途に用いることができるバックツーバック構成の従来の電圧型インバータを示す。
図2図2は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図3図3は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図4図4は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図5図5は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図6図6は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図7図7は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図8図8は、本開示の一実施形態による、ソフトスイッチング電流型インバータを示す。
図9図9は、本開示の一実施形態による、電流型インバータの例示的なスイッチング・サイクルを示す。
図10A図10Aは、本開示の一実施形態による、ゼロ電圧スイッチング遷移の前のコンバータスイッチング状態を示す。
図10B図10Bは、本開示の一実施形態による、ゼロ電圧スイッチング遷移の後のコンバータスイッチング状態を示す。
図10C図10Cは、本開示の一実施形態による、ゼロ電圧スイッチング遷移の最中のコンバータスイッチング状態を示す。
図11図11は、本開示の一実施形態による、ゼロ電圧スイッチング遷移中のスイッチング波形およびゲートシーケンスを示す。
図12図12は、本開示の一実施形態による、DCから3相ACへの変換モードにおける、電気自動車駆動系の用途のV/f制御下での25kVA SSCSIのシミュレーション波形を示し、安定した降圧および昇圧動作を示す。
図13A図13Aは、本開示の一実施形態による、スイッチング期間にわたるSSCSI DCリンク電流idc、およびDCリンク電圧vLdcを示す。
図13B図13Bは、本開示の一実施形態による、スイッチング期間にわたるSSCSI DCリンク電流idc、およびDCリンク電圧vLdcを示す。
図13C図13Cは、本開示の一実施形態による、スイッチング期間にわたるSSCSI DCリンク電流idc、およびDCリンク電圧vLdcを示す。
図14図14は、標準的な2レベル電圧型インバータに結合されたDC-DC双方向ブーストコンバータを用いる従来の電気自動車駆動系を示す。
図15図15は、本開示の例示的なSSCSI電気自動車駆動系および25kVA設計を考慮した従来のVSI電気自動車駆動系について、定格出力電圧および可変負荷条件下で算出した効率プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の原理および特徴の理解を容易にするために、様々な例示的な実施形態を以下に説明する。本明細書に開示される実施形態の様々な要素を構成するものとして以下に記載される構成要素、ステップ、および材料は、例示的であって限定的ではないことを意図している。本明細書に記載の構成要素、ステップ、および材料と同じまたは同様の機能を実行する多くの適切な構成要素、ステップ、および材料は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素、ステップ、および材料は、本明細書に開示される実施形態の開発後に開発される同様の構成要素またはステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
本開示は、電流型インバータ(current source inverter:CSI)に関する。図2に示すように、本開示の別の例示的な実施形態は、第1のCSIブリッジ105、第2のCSIブリッジ110、DCリンクインダクタ125、および共振タンク130を備えるソフトスイッチングCSI(SSCSI)を提供する。第1のCSIブリッジ105は、第1のパワーバンク115に動作可能に接続され得る。第2のCSIブリッジは、第2のパワーバンク120に動作可能に接続することができる。DCリンクインダクタ125は、第1(105)および第2(110)のCSIブリッジの間に直列に接続することができ、ある量のエネルギーを貯蔵することができる。共振タンク130は、DCリンクインダクタ125と並列に接続することができる。共振タンク130は、第1および第2のCSIブリッジの各スイッチにゼロ電圧スイッチング条件を提供することができる。
【0056】
第1および第2のパワーバンク115、120は、電力を供給(例えば、単相ACグリッド、3相ACグリッド、3相4線ACグリッド、DC電源、バッテリなど)するように、または受け取る(電気負荷、電気モータ、ACグリッド、バッテリなど)ように構成することができる。各パワーバンクは、ACおよび/またはDC電源を使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のパワーバンクはDCバッテリであり得、第2のパワーバンクは電気モータであり得る(図8参照)。図2図7は、様々なパワーバンクとの仲介を行うように構成された本開示のCSIを示している。いくつかの実施形態では、SSCSIは双方向性を有し、その結果、第1のパワーバンク115および第2のパワーバンク120は、異なる時間に、電源およびパワーシンクの両方として機能することができる。したがって、電力は、ある時間、DCリンクインダクタ125を介して第1のパワーバンク115から第2のパワーバンク120に流れることができ、また、電力は、別の時間、DCリンクインダクタを介して第2のパワーバンク120から第1のパワーバンク115に流れることができる。そのような実施形態は、パワーシンク(例えば、電気モータ)からの電源(例えば、DCバッテリ)の回生充電が望まれる用途、または双方向の電力の流れが望まれる用途に特に有用であり得る。
【0057】
DCリンクインダクタは、当該技術分野で知られている高周波での動作に適した多くの異なるインダクタであり得、これには空芯インダクタ、ギャップコアインダクタなどが含まれるが、これらに限定されない。磁性コア材料は、高周波での動作に適した多くの異なる磁性材料であり得、これにはフェライトコア、アモルファスコア、ナノ結晶コア、粉末コア、軟磁性材料などが含まれるが、これらに限定されない。当業者が理解するように、DCリンクインダクタのインダクタンスは、用途およびSSCSIの動作サイクル中に求められるエネルギー貯蔵量に応じて選択/変化させることができる。
【0058】
共振タンク130は、共振コンデンサ133、共振インダクタ132、および共振スイッチ131を備えることができる。図2に示すように、共振コンデンサ133は、DCリンクインダクタ125と並列に接続することができ、共振インダクタ132は、共振スイッチ131と直列に接続することができ、直列接続された共振スイッチ131と共振インダクタ132は、共振コンデンサ133と並列に接続することができる。共振タンクは、すべてのCSIブリッジのすべてのスイッチにゼロ電圧スイッチング条件(ZVS)を提供するために使用できる。共振コンデンサ133は、ZVS遷移状態(後述)の間にDCリンク電流が流れるための追加の経路を提供することができる。結果として生じる共振コンデンサの放電率は、転流イベントを受けるスイッチのdv/dtスイッチング率を決定/制御できるため、すべてのCSIブリッジのすべてのスイッチにZVS条件を提供できる。
【0059】
図2に示すように、SSCSIは、共振タンク130とDCリンクインダクタ125の間に直列に接続される漏れ管理ダイオード134をさらに備えることができる。漏れ管理ダイオードは、当該技術分野で知られている低逆回復の多くの異なるダイオードであり得、これには高速回復ダイオード、ショットキーダイオード(Si、SiCなど)などが含まれるが、これらに限定されない。漏れ管理ダイオード134は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)遷移(後述)中の共振タンクの動作における望ましくない深刻な共振の問題を解消するのに用いることができる。この問題は共振コンデンサとDCリンクインダクタの相互接続によって生じる漏れ/寄生インダクタンスを十分に低く保つことができない場合に発生する。漏れ管理ダイオード134は、共振タンク130への逆極性の電流の流れを防ぐことができ、その結果、漏れ管理ダイオード134は、前述の望ましくない共振の問題を低減/防止するのに効果的であり得る。漏れ管理ダイオード134は、主インダクタ電流を流さず、ZVS遷移中および/または共振期間のみ漏れ管理ダイオード134を電流が流れるため、伝導損失の増加を最小限に抑えながら前述の望ましくない共振の問題を解消するのに用いることができる。
【0060】
共振インダクタ132は、当該技術分野で知られている多くの異なる高品質値インダクタであり得、これには空芯インダクタ、コアベースのインダクタなどが含まれるが、これらに限定されない。また、当技術分野で知られている多くの異なる高周波巻線構成を有することができ、これには磁石ワイヤ、撚り線、リッツ線、銅箔などが含まれるが、これらに限定されない。DCリンクインダクタ125とは異なり、共振インダクタ132はエネルギー貯蔵を提供せず、そのサイズは定格において著しく小さくすることができる。共振コンデンサ133は、当該技術分野で知られている多くの異なる高品質値コンデンサであり得、これにはフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサなどが含まれるが、これらに限定されない。共振コンデンサ133は、エネルギー貯蔵を提供せず、ZVS遷移および共振フェーズ中にのみ電流を伝導するので、そのサイズは、当該トポロジの他の反応性の構成要素よりも著しく小さくすることができる。共振スイッチ131は、逆阻止スイッチであり得る。本明細書で使用される場合、「逆阻止スイッチ」という用語は、一方向に電流を伝導し、両方向の電圧を阻止するスイッチまたはスイッチアセンブリを指す。本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、逆阻止スイッチは、一方向に電流を伝導し、両方向の電圧を阻止する、当該技術分野で知られている多くの異なるスイッチから選択された単一の制御可能スイッチであり得、これにはサイリスタ、集積ゲート転流サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(RB-IGBT)などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、逆阻止スイッチはまた、ダイオードと直列に接続された逆導通制御可能スイッチ(例えば、IGBTまたはMOSFET)を含むスイッチアセンブリであり得る。制御可能スイッチおよびダイオードは、多くの異なる半導体構造に依存することができ、多くの異なる材料を含むことができる。これには、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ワイドバンドギャップ半導体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
第1のCSIブリッジ105は、2つ以上のレッグ106、107を備えることができる。様々な実施形態は、異なる数のレッグ(例えば、2個、3個、4個、またはそれ以上)を用いて、図2図7に示すように、単端子または多端子DCおよび単端子または多端子ACパワーバンクおよびシステムとの仲介を行うことができる。レッグ106、107のそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備えることができる。例えば、第1のCSIブリッジ105の第1のレッグ106は、第2のスイッチ106bと直列に接続された第1のスイッチ106aを備えることができ、第1のCSIブリッジ105の第2のレッグ107は、第2のスイッチ107bと直列に接続された第1のスイッチ107aを備えることができる。
【0062】
同様に、図2図7に示すように、第2のCSIブリッジ110は、2つ以上のレッグ111、112、113を備えることができる。様々な実施形態は、異なる数のレッグ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)を用いて、単端子または多端子DCおよび単端子または多端子ACパワーバンクおよびシステムとの仲介を行うことができる。例えば、図2に示すように、第2のCSIブリッジ110は、3つのレッグ111、112、113を備える。レッグ111、112、113のそれぞれは、直列に接続された2つの逆阻止スイッチを備えることができる。例えば、第2のCSIブリッジ110の第1のレッグ111は、第2のスイッチ111bと直列に接続された第1のスイッチ111aを備えることができ、第2のCSIブリッジ110の第2のレッグ112は、第2のスイッチ112bと直列に接続された第1のスイッチ112aを備えることができ、第2のCSIブリッジ110の第3のレッグ113は、第2のスイッチ113bと直列に接続された第1のスイッチ113aを備えることができる。
【0063】
図2に示すように、SSCSIは、第1のCSIブリッジ105の2つ以上のレッグ106、107の間に接続された1つ以上のフィルタコンデンサ116をさらに備えることができる。フィルタコンデンサは、高周波スイッチング電流の経路を提供し、低高調波で、フィルタリングされた端子電圧を合成することができる。
【0064】
図2に示すように、SSCSIは、第2のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグの間に接続された1つ以上のフィルタコンデンサ121をさらに備えることができる。フィルタコンデンサは、高周波スイッチング電流の経路を提供し、低高調波で、フィルタリングされた端子電圧を合成することができる。
【0065】
図2に示すように、SSCSIは、第1のパワーバンクと第1のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグとの間に直列に接続された1つ以上のフィルタインダクタ117と、第2のパワーバンクと第2のCSIブリッジの上記2つ以上のレッグとの間に直列に接続された1つ以上のフィルタインダクタ122とをさらに備えることができる。フィルタインダクタは、高調波をさらに抑制するのに役立つ。
【0066】
SSCSIは、スイッチング・サイクルで動作するように構成することができる。スイッチング・サイクル中のSSCSIの動作は、CSI内のさまざまなスイッチを制御するコントローラによって実現できる。コントローラは、当該技術分野で知られている多くのコントローラであり得る。コントローラは、メモリと、プロセッサによって実行されるとCSI内の様々なスイッチをコントローラに制御させることができる命令とを備えることができる。
【0067】
スイッチング・サイクルは、通常、3つのフェーズと1つ以上の遷移状態を含むことができる。例示的なスイッチング・サイクルが図9に示されている。スイッチング・サイクルは、アクティブ・フェーズ、フリーホイーリング・フェーズ、共振フェーズ、および1つ以上のZVS遷移状態を含むことができる。アクティブ・フェーズの少なくとも一部の期間において、電力は、(a)第1のCSIブリッジを介して、第1のパワーバンクとDCリンクインダクタの間、および(b)第2のCSIブリッジを介して、第2のパワーバンクとDCリンクインダクタの間に、同時に転送される。
【0068】
フリーホイーリング・フェーズでは、DCリンクインダクタと第1および第2のパワーバンク間に電力は転送されない。これは、第1のCSIブリッジ105の第1のレッグ106の直列に接続されたスイッチ106a、106bの両方と、第2のCSIブリッジ110の第1のレッグ111の直列に接続されたスイッチ111a、111bの両方とをゲートオンすることによって達成することができる。第1のCSIブリッジ105のレッグ106、107のいずれにおいても、また第2のCSIブリッジ110のレッグ111、112、113のいずれにおいても、その直列に接続されたスイッチは、フリーホイーリング・フェーズにおいてゲートオンすることができる。いくつかの実施形態では、第1のCSIブリッジの単一のレッグおよび第2のCSIブリッジの単一のレッグのみにおける直列に接続されたスイッチが、フリーホイーリング・フェーズ中にゲートオンすることができる。フリーホイーリング・フェーズを用いてスイッチング・サイクルを「パッド」し、一定のスイッチング周波数でSSCSIを動作させることができる。
【0069】
共振フェーズ中は、第1のCSIブリッジ105のレッグ106、107および第2のCSIブリッジ110のレッグ111、112,113におけるスイッチをゲートオフし、共振スイッチ131をゲートオンすることができる。これにより共振コンデンサ133と共振インダクタ132との間の共振を開始することができる。いくつかの実施形態では、共振フェーズの持続時間を最小に保って、SSCSIの効率を高めることができる。例えば、いくつかの実施形態では、共振フェーズは、スイッチング・サイクルの周期の25%未満を構成する。いくつかの実施形態では、共振フェーズは、スイッチング・サイクルの周期の20%未満を構成する。いくつかの実施形態では、共振フェーズは、スイッチング・サイクルの周期の15%未満を構成する。いくつかの実施形態では、共振フェーズは、スイッチング・サイクルの周期の10%未満を構成する。いくつかの実施形態では、共振フェーズは、スイッチング・サイクルの周期の5%未満を構成する。共振フェーズを用いて共振コンデンサの電圧を負の値から正の値に「フリップ」させ、コンバータのソフトスイッチング動作を本質的に「リセット」することができる。
【0070】
ZVS遷移状態の間、コンバータのすべてのスイッチ(第1のCSIブリッジ105のすべてのスイッチ、第2のCSIブリッジ110のすべてのスイッチ、および共振スイッチ131を含む)をゲートオフすることができ、DCリンク電流は、共振回路130の共振コンデンサ133を流れることができる。この電流の流れにより共振コンデンサ133を放電することができ、結果として生じる共振コンデンサの放電率を制御することができ、スイッチがオフにされた後、スイッチがオフになる前に、ZVS遷移状態の間のすべてのスイッチのdv/dtスイッチング速度を制限する。ZVS遷移状態を用いて、スイッチング・サイクル中の任意の時点で、すべてのコンバータの動作条件下で、すべてのスイッチがオフになり、すべてのスイッチがオンになるZVS条件を提供できる。
【0071】
例示的なスイッチング・サイクルのフェーズおよびZVS遷移状態のより詳細な説明は、以下の実施例に記載されている。
【0072】
当該技術分野の他の共振コンバータとは異なり、本明細書に開示されるソフトスイッチングCSIは、ソフトスイッチング動作で、高いDCリンク電流利用率を提供することができる。DCリンク電流利用率は、ブリッジによってパワーバンクに供給される最大瞬時電流のDCリンク電流の平均に対する比として定義できる。いくつかの実施形態では、CSIは、0.7~1.0のDCリンク電流利用率を提供することができる。いくつかの実施形態では、CSIは、0.8~1.0のDCリンク電流利用率を提供することができる。いくつかの実施形態では、CSIは、0.9~1.0のDCリンク電流利用率を提供することができる。いくつかの実施形態では、CSIは、0.95~1.0のDCリンク電流利用率を提供することができる。
【0073】
図5に示すように、本開示の別の例示的な実施形態は、第1のCSIブリッジ205、第2のCSIブリッジ210、第1のDCリンクインダクタ225、第1の共振タンク230、および第2の共振タンク235を備えるSSCSIを提供する。第1のCSIブリッジ205は、第1のパワーバンク215に動作可能に接続することができる。第2のCSIブリッジ210は、第2のパワーバンク220に動作可能に接続することができる。第1のDCリンクインダクタ225は、第1(205)および第2(210)のCSIブリッジの間に直列に接続することができる。第1の共振コンデンサ230は、第1のCSIブリッジ205と並列に接続することができる。第2の共振コンデンサ235は、第2のCSIブリッジ210と並列に接続することができる。
【0074】
第1の共振タンク230は、第1の共振コンデンサ233、第1の共振インダクタ232、および第1の共振スイッチ231を備えることができ、第2の共振タンク235は、第2の共振コンデンサ238、第2の共振インダクタ237、および第2の共振スイッチ236を備えることができる。共振コンデンサ、インダクタ、およびスイッチは、上記の共振コンデンサ、インダクタ、およびスイッチと同様とすることができる。第1の共振コンデンサ233は、第1のCSIブリッジ205と並列に接続することができ、第2の共振コンデンサ238は、第2のCSIブリッジ210と並列に接続することができる。第1の共振インダクタ232は、第1の共振スイッチ231と直列に接続することができ、第2の共振インダクタ237は、第2の共振スイッチ236と直列に接続することができる。直列接続された第1の共振スイッチ231および第1の共振インダクタ232は、第1の共振コンデンサ233と並列に接続することができ、直列に接続された第2の共振スイッチ236および第2の共振インダクタ237は、第2の共振コンデンサ238と並列に接続することができる。
【0075】
図5に示すように、SSCSIは、第1の共振タンク230と直列に接続された第1の漏れ管理ダイオード234と、第2の共振タンク235と直列に接続された第2の漏れ管理ダイオード239とをさらに備えることができる。漏れ管理ダイオード234、239は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)遷移中の共振タンクの動作における望ましくない深刻な共振の問題を解消するのに用いることができる。この問題は共振コンデンサとCSIブリッジの接続によって生じる漏れ/寄生インダクタンスを十分に低く保つことができない場合に発生する。2つの共振タンク間の望ましくない共振と振動も、特定の条件下で誘発される可能性がある。漏れ管理ダイオード234、239は、共振タンク230、235への逆極性の電流の流れを防ぐことができ、その結果、漏れ管理ダイオード234、239は、前述の望ましくない共振の問題を低減/防止するのに効果的であり得る。漏れ管理ダイオード234、239は、主インダクタ電流を流さず、ZVS遷移中および/または共振期間のみ漏れ管理ダイオード234、239を電流が流れるため、伝導損失の増加を最小限に抑えながら前述の望ましくない共振の問題を解消するのに用いることができる。
【0076】
図5に示すように、SSCSIは、第1のDCリンクインダクタ225の反対側に、第1(205)および第2(210)のCSIブリッジの間に直列に接続された第2のDCリンクインダクタ226をさらに備えることができる。すなわち、第2のDCリンクインダクタ226は、第1のDCリンクインダクタ225と直列に接続されていない。DCリンク電流経路に2つのDCリンクインダクタ225、226を有する「スプリット」DCリンクインダクタ構成を用いて、コモンモード電流経路、および当該トポロジによって生成されるコモンモード電圧を、低下させ、対称化することができる。この構成を用いて、複数のSSCSIコンバータの並列化して共通のパワーバンクとするのを容易にし、インターリーブを可能にすることもできる。
【0077】
上述の図2に示されるSSCSI同様、図5のSSCSIは、スイッチング・サイクルで動作できる。スイッチング・サイクルは、アクティブ・フェーズ、フリーホイーリング・フェーズ、共振フェーズ、およびZVS遷移状態を含むことができる。図5に示されるCSIのスイッチング・サイクルの共振フェーズの間、第1および第2のCSIブリッジのレッグを構成するスイッチがゲートオフされ、第1の共振スイッチ231および第2の共振スイッチ236のうちの少なくとも1つがゲートオフされ、第1の共振コンデンサと第1の共振インダクタとの共振、および第2の共振コンデンサと第2の共振インダクタとの共振のうちの少なくとも1つを開始する。例えば、第1の共振スイッチ231がゲートオンされている場合、共振は、第1の共振コンデンサ233と第1の共振インダクタ232との間で開始される。第2の共振スイッチ236がゲートオンされている場合、共振は、第2の共振コンデンサ238と第2の共振インダクタ237との間で開始される。
【0078】
図2図7に開示されたコンバータのトポロジは、以下を含む標準的なCSIの利点を維持することができる:(1)双方向の電力流、(2)電圧のステップアップとステップダウン、(3)対応する電圧型インバータ(VSI)よりも低いコモンモード電圧生成、(4)フィルタリングされた出力電圧波形、(5)突入電流の排除、(6)シュートスルー条件の排除、および(7)短絡電流に対する耐性。さらに、開示されたコンバータのトポロジは、従来のCSIを改善し、次の追加機能を提供できる:(1)CSIブリッジのすべてのスイッチのZVSソフトスイッチング動作、(2)より高い変換効率、(3)より高いスイッチング周波数、(4)DCリンクインダクタンスの低減、(5)フィルタ容量の削減、(6)dv/dtスイッチング速度の低減と制御、(7)より低いEMI生成とEMIフィルタ要件、(8)コンバータの動的な高速化、(9)効率を最大化するためのコンバータ負荷レベルの関数としての高速動的DCリンク電流レベル調整、(10)意図的にオーバーラップ時間を追加しないことによるデバイスのスイッチングと遷移メカニズムの簡易化、および(11)DCリンク電流経路を開くときにデバイスが壊滅的な電圧ストレスを受けない。
【0079】
開示されたコンバータトポロジはまた、他の従来の共振コンバータとは異なり、以下の機能を提供することができる。(1)パルス幅変調(PWM)と空間ベクトル変調(SVM)が可能なシンプルでロバストな制御、(2)コンバータの電圧、電流、および電力範囲全体にわたるソフトスイッチング動作、(3)固定スイッチング周波数動作、(4)単一の共振タンクを用いて両方のCSIブリッジのZVS動作を提供可能、(5)共振タンクは主電源経路の外側にあり、スイッチング・サイクルのごく一部で動作するため、共振要素は主コンバータの反応性の要素の一部で定格が定められ、共振タンクの損失が制限される、(6)0.8を超える高いDCリンク電流利用率でソフトスイッチング動作が可能。
【0080】
以下の実施例は、本開示の態様をさらに説明する。しかしながら、それらは本明細書に記載される本開示の教示または開示を制限するものではない。
【0081】
(実施例)
図8は、電気自動車の駆動系に用いるための例示的なソフトスイッチングCSI(SSCSI)を提供する。図8に示すように、SSCSIは、直列DCリンクインダクタを介して接続された2つの標準的なCSIブリッジを備える。ブリッジのフェーズレッグ、あるいはレッグは、SiCダイオードと標準的なSi IGBT、または高性能用途用のSiC MOSFETの直列接続によって実現される、2つの逆阻止スイッチを備える。コンバータのソフトスイッチング動作は、DCリンクインダクタの両端に接続された単一の共振タンクまたは共振回路によって可能になる。この最小共振回路は、すべて処理された電力の一部のみを処理するための定格である共振コンデンサC、共振インダクタL、および補助スイッチSに依拠して、スイッチング・サイクル全体において、また電圧、電流、および電力範囲全体にわたって、CSIブリッジのすべてのパワーデバイスのゼロ電圧スイッチング(ZVS)条件を設定する。
【0082】
ソフトスイッチング動作は、スイッチング損失を大幅に削減(および実質的に排除)することで、モータ駆動用途における前述のすべての利点を維持しながら、従来のCSIが抱える高い変換損失に対処する。また、PWM変調によるより高いスイッチング周波数動作が可能であり、DCリンクインダクタとフィルタコンデンサのサイズを縮小し、優れたコンバータダイナミクスを実現する。最後に、SSCSIトポロジは、昇降圧電圧変換機能を備えた完全な双方向性を有し、EMIを低減し最新のSiCデバイスを最大限に活用するための固有のdv/dt制御を提供し、高い動作周波数で非常に高い効率を示す。次に、トポロジの基本的な動作原理について説明する。
【0083】
動作原理
スイッチング・サイクル:DCから3相ACへの構成におけるSSCSIの例示的なスイッチング・サイクルが図9に示されている。コンバータの動作は、サイクル全体で3つの主要なフェーズに分類できる。すなわちアクティブ、フリーホイーリング、および共振である。
【0084】
アクティブ・フェーズ中、CSIブリッジは一連の電圧レベルをDCリンクに適用する。これは、以降、「アクティブ・ベクトル」と呼ばれ、使用可能なレッグツーレッグ電圧の1つまたはフリーホイーリング状態に対応する。図8で使用されている規則では、ブリッジ1、vBr1、およびブリッジ2、vBr2の可能なアクティブ・ベクトルは次のとおりである。
【数1】
【数2】
【0085】
ここで、VdcはバッテリのDC電圧、Vab、Vbc、Vcaは三相モータのライン間AC電圧であり、0はブリッジのフルレッグをオンにしてDCリンク電流をフリーホイールすることによって適用されるゼロ電圧ベクトルである。結果として得られるDCリンクインダクタと共振コンデンサの間の電圧vLdcは次のようになる。
【数3】
【0086】
シャント磁化インダクタンスがブリッジ間でエネルギーを順次転送するための貯蔵要素として用いられる既存のソフトスイッチング固体変圧器(S4T)とは異なり、SSCSIの両方のブリッジが同時に動作するため、DCリンク電流と半導体の利用率が高くなる。(3)から、アクティブ・フェーズ中にDCリンクインダクタと共振コンデンサの両端で発生する可能性のある電圧レベルは、セット(1)と(2)の直積によって与えられるアクティブ・ベクトル対の電圧合計から得られる。1つのスイッチング・サイクルにわたって、各ブリッジからのアクティブ・ベクトルの選択、順序付け、および適用時間は、変調方式によって決定できる。したがって、vLdcの電圧レベルの数とアクティブ・フェーズ中のそれらの極性は任意で、スイッチング・サイクルを通してコンバータのスイッチング状態に依存し得る。この用途の最も一般的なケースでは、3つの電圧レベルがvLdcで観測され、図9ではVact1、Vact2、およびVact3として識別されている。しかしながら、以下に詳述するソフトスイッチングの原理の導出においては、特定のスイッチング・サイクル構造は想定されておらず、提示されたメカニズムはすべてのSSCSI実装の変形例に有効である。
【0087】
DCリンク電流コントローラは、インダクタと共振コンデンサの両端にボルト秒バランスを強制するため、定常状態では次の制約が成り立つ。
【数4】
【0088】
ここで、<vLdcTswは、1つのスイッチング期間にわたるvLdcの平均である。
【0089】
これまでに説明した形式では、アクティブ・フェーズ中のSSCSIの動作原理は、標準的なパルス幅変調CSIの動作原理と類似している。しかしながら、以下に詳述するように、追加の考慮事項を用いてソフトスイッチング動作を有効にできる。
【0090】
一定のスイッチング周波数動作を保証するために、スイッチング・サイクルをフリーホイーリング・フェーズで埋めることができ、この場合、両方のブリッジにゼロ電圧ベクトルを選択することにより、DCリンク電流がバイパスされる。これは、ブリッジごとに1つのレッグをオンにすることで実現される。フリーホイーリング・フェーズではエネルギー伝達が不可能であるため、コンバータの導通損失を減らし、DCリンクの使用率を高めるために、その持続時間を最小限に抑える必要があることは明らかである。従来のCSIでは、導通損失とスイッチング損失のバランスを取り、許容可能な効率レベルで動作するように、スイッチング周波数は通常低く保たれている。これには大きなDCリンクインダクタが必要であり、動的性能が低下する。その結果、負荷変動下で良好なコンバータ応答を維持するために、DCリンク電流レベルは、通常一定に保たれるか、負荷要件よりも十分大きくなるよう制御される。しかしながら、SSCSIでは、ソフトスイッチング機能により、スイッチング損失が実質的に排除されるため、より高いスイッチング周波数動作が可能であり、DCリンク電流レベルを数スイッチング・サイクル内で動的に変更して、コンバータの負荷レベルに調整し、フリーホイーリング時間を最小限に抑えることができる。これにより、以下に詳述するように、固有の効率プロファイルが得られる。
【0091】
最後のコンバータ動作モードは共振フェーズである。このモードでは、CSIブリッジのすべての電源スイッチがオフになっている間、補助スイッチSはゼロ電流スイッチング(ZCS)状態でゲートオンされ、共振コンデンサCと共振インダクタLの間の共振を開始する。次のスイッチSを流れる共振電流のゼロ交差で、直列ダイオードが自然にオフになり、スイッチのZCSがオフになる。一次近似として、この瞬間はLタンクの共振周期の半分に相当し、共振コンデンサの両端の電圧は、共振フェーズの開始時の初期電圧の逆である。このように、この動作モードは、本質的に、共振コンデンサ電圧を反転させるための単純なメカニズムを提供し、以下に詳述するように、スイッチング・サイクル全体で自由に開始してソフトスイッチング動作を可能にすることができる。フリーホイーリング・フェーズに関しては、共振フェーズ中にソースおよび負荷とのエネルギー交換がないため、合計共振期間を最小限に抑えることができる。これは、このフェーズ中の電圧および電流のストレスレベルを考慮しながら、共振要素LおよびCを適切に選択することで可能になる。
【0092】
ソフトスイッチングメカニズム:図8に示すSSCSIは、アクティブ・ベクトル間のスイッチング遷移中に単一の共振回路によってソフトスイッチング動作が可能になるという点で、共振遷移コンバータである。DCリンク電流がブリッジを流れる経路を継続的に提供するためにゲートシーケンスに細心の注意を払う必要がある従来のPWMCSIとは異なり、図8のSSCSIの共振コンデンサは追加の電流循環経路を提供する。この追加の経路は、「ZVS遷移状態」と呼ばれる固有のコンバータ状態で用いられ、図9に示すように、任意の2つの隣接するアクティブ・ベクトルの間に挿入される。
【0093】
一般性を失わないように、ブリッジ2がvBr2=VacからvBr2=Vabに転流しブリッジ1が任意のベクトルvBr1を適用する場合のZVS遷移状態の例を挙げる。vBr1=+Vdcとした場合の対応するコンバータのスイッチング状態を図10A図10Cに示す。さらに、次のように仮定する。
【数5】
【0094】
図10Aに示す(vBr1,vBr2)=(+Vdc,Vac)の初期アクティブ・フェーズから、スイッチScpをゲートOFF、スイッチSanをONにしたままスイッチSbpをゲートONしてZVS移行状態を開始させる。スイッチング・ループにキルヒホッフの電圧法則を適用すると、対象の2つのスイッチ位置間の電圧は次のようになる。
【数6】
【0095】
ここでVScpとVSbpはそれぞれスイッチ位置SbpとScpの間の電圧、VacとVabはモータの線間電圧、vBr1はブリッジ1によって印加されるアクティブ・ベクトルである。
【0096】
(5)と(6)から、前のスイッチング状態からの初期条件VScp=0のとき、ZVS遷移状態の開始時にVSbp<0である。これは、スイッチ位置Sbpの直列ダイオードが逆バイアスされており、SbpをゲートONしてもスイッチ位置を効果的にオンにしないことを意味する。したがって、Scpがオフになるとすぐに、DCリンク電流idcは、図10Cに示されるように、共振コンデンサCを通って流れるように強制され、それを次のように放電する:
【数7】
【0097】
(6)と(7)から、また、負荷電圧と電源電圧のダイナミクスはZVS遷移状態のタイムスケールでは無視できることを認識すると、対象の2つのスイッチ間の電圧の変化率は次のようになる:
【数8】
【0098】
このように,ZVS遷移状態では2つの整流スイッチ位置間のdv/dtが制御され,(8)に従ってCを適切に選択することで任意の目標値に設定することができる。共振コンデンサが入力される結合されたアクティブ・ベクトル電圧レベル(この場合はVdc+Vab)に放電されると、スイッチSbpの直列ダイオードが順方向にバイアスされ、スイッチの位置が導通し始め、図10Bに示す(vBr1,vBr2)=(+Vdc,Vab)の後続のコンバータ・アクティブ・フェーズになる。これでZVS状態遷移が完了し、アクティブ・ベクトル間の転流は、この例ではScpである発信スイッチのZVSがオフ、およびここではSbpである受信スイッチのZVSがオンで発生する。この例のZVS遷移状態中のスイッチング波形およびゲートシーケンスは、図11にまとめられている。
【0099】
上記の導出は、仮定(5)が当てはまることに基づく。これは、次のようにSSCSIのソフトスイッチングメカニズムを有効にするための必要十分条件に一般化できる。
【数9】
【0100】
ここで、VBr incomingは、ブリッジによって適用される入力アクティブ・ベクトルの電圧レベルであり、VBr outgoingは、ブリッジが切り替わるアクティブ・ベクトルの電圧レベルである。
【0101】
条件(9)は、SSCSIに固有の制約であり、スイッチング・サイクル全体でアクティブ・ベクトルを適切にシーケンスすることにより、ブリッジベースで適用できる。これは、修正した空間ベクトル変調(SVM)スキームを用いて実装できる。
【0102】
スイッチング・サイクルでは、ブリッジ用に選択されたすべてのアクティブ・ベクトルが適用されると、条件(9)を検証できず、共振フェーズは、共振コンデンサの電圧を反転させるのに用いることができ、よって、DCリンク電圧vLdcは、次に入力される結合されたアクティブ・ベクトル電圧レベルよりも高い電圧になる。これは、上述したように補助スイッチをオンにすることで実現され、その後、vLdcが入力電圧レベルまで低下するZVS遷移状態が続く。共振フェーズ前の初期共振コンデンサ電圧が、共振終了時のDCリンク電圧が入力電圧レベルよりも大きくなることを保証するのに十分な大きさでない場合、図9に示すように、ゲートをオンにする前に追加のZVS遷移状態を挿入して、共振コンデンサをさらに放電させることができる。この柔軟性により、SSCSIのZVS動作が入力電圧と出力電圧から切り離され、電圧、電流、および電力範囲全体にわたるソフトスイッチング動作が可能になる。DCリンクの使用率を最大化するために、両方のブリッジがそれぞれのアクティブ・ベクトル・シーケンスを同時に適用している。したがって、最も一般的なケースでは、ブリッジ1とブリッジ2に条件(9)を適用できない瞬間は同期せず、図9に示すように、各スイッチング・サイクルに2つ、各ブリッジに1つの共振フェーズが用いられる。
【0103】
本提案のトポロジの検証
SSCSIトポロジの基本的な動作原理を示すために、図8に示すEV駆動系構成の25kVA SSCSIを、表Iに示すパラメータを用いてシミュレーションする。V/f制御は、電圧の大きさが公称値の480Vrmsまで上昇するときに、0~500Hzの周波数範囲でAC出力電圧のセットを生成するために実装される。
【表1】
【0104】
このシミュレーションでは、DCリンク電流レベルは公称値60Aで一定に保たれている。入力電圧Vdcおよびバッテリ電流Ibatとともに出力ブリッジのライン間電圧Vab、Vbc、Vca、ライン電流I、I、I、および結果として生じる見かけの電力Sout図12に示す。DCリンク電流idcと電圧vLdcも示されている。結果は、V/f制御下でのSSCSIの適切な動作を立証しており、安定し制御されたDCリンク電流を0Aからソフトスタートし、出力電圧の大きさと周波数は130msで0puから1puに増加する。立ち上げ時間は、このシミュレーションにおいてはコンバータの動的機能を示すために任意に選択されており、モータおよび車両のダイナミクスに合わせて調整できる。なお、コンバータの立ち上げ時間を短縮することは可能であるが、システムには適さない場合がある。
【0105】
入力バッテリ電流は出力電力に比例して増加し、DCリンク電流を公称値に調整し続け、起動時に突入電流は観測されない。図12で特定されているように、このシミュレーションの調査では、降圧型電圧変換モードと昇圧型電圧変換モードの両方でのSSCSIの動作も裏付けており、出力電圧の大きさがバッテリDC電圧を超えてシームレスに増加する。また、SSCSIは、このシミュレーションとこの設計において、定格電力と周波数で、それぞれ5%と2%の出力電圧と電流THD、および5.5%の入力バッテリ電流THDを有する高品質の波形を生成する。予想どおり、DCリンク電流リップルは供給される出力電力が公称値に達すると増加するが、フルパワーでピークツーピークの60%という設計目標は下回っている。これは、350μHの小さなDCリンクインダクタで実現され、これは25kVAの動作点で1Jを少し下回る蓄積エネルギーを表し、同等の定格のVSIベースの駆動系のDCバスに蓄積されたエネルギーよりも1桁以上低いため、電力密度が高く費用効果の高い設計が約束される。同様の観測結果は、入力フィルタと出力フィルタにも当てはまり、合計フィルタエネルギーが10Jを少し超える場合の合計静電容量は112μFである。
【0106】
図12に示すように、DCリンク電圧vLdcは、シミュレーション全体にわたって±850Vの範囲内に制御され、出力電圧は、初期値0Vから定格線間電圧480Vrmsまで上昇する。したがって、この調査では、DCリンクの電圧ストレスは、電圧と負荷の全範囲にわたって1.25puと低く、一定に保たれる。また、異なるコンバータ動作条件下でのソフトスイッチング動作を確認するために、DCリンク電流と電圧を、図12で特定された3つの瞬間で1つのスイッチング・サイクルにわたって観測する。線間出力電圧Vout、出力見かけ電力Sout、および変換モードを3つの観測値について表IIにまとめ、結果の波形を図13に示す。
【表2】
【0107】
これら3つのケースでは、スイッチング・パターンは上記の概念的な導出と同様であり、アクティブ・フェーズ、2つの共振フェーズ、およびフリーホイーリング・フェーズが図で明確に識別されている。観測1、図13A、および観測2、図13Bはともに降圧変換モードで行われ、スイッチング・サイクルのシーケンスは同一である。出力電力が1kVAから10kVAの間で増加すると、一定のDCリンク電流を用いたこのシミュレーションの調査で予想されるように、アクティブ・フェーズの期間が増加し、フリーホイール・フェーズの期間が短くなる。重要なのは、出力電圧が90Vrmsから300Vrmsに3倍以上増加する一方で、共振フェーズ中のvLdcの電圧ストレスは一定のままであり、ソフトスイッチング動作は、ZVS遷移状態の間、0.6kV/μsのdv/dtレートで維持されることである。
【0108】
定格出力電圧および電力、それぞれ480Vrmsおよび25kVAでの観測3のDCリンク波形を図13Cに示す。この場合、SSCSIは昇圧変換モードで動作し、Vact1、Vact2、およびVact3のシーケンスは図13A図13Bとは異なる。これらの根本的に異なる動作条件にもかかわらず、共振フェーズ中のvLdcの電圧ストレスは変化せず、ソフトスイッチング動作が再び達成される。
【0109】
これらの3つの観測は一般化でき、共振フェーズの柔軟性と共振スイッチ制御を活用して、すべての負荷、電流、および電圧の条件下ですべてのパワーデバイスのZVS動作を保証するSSCSIの固有の機能を示す。これは、広い出力電圧範囲と負荷範囲が予想されるEV駆動系用途にとって非常に重要である。
【0110】
本提案のSSCSIと従来のVSIのプロファイルの効率の比較
SSCSI駆動系の魅力的な属性の1つであり、有効な機能は、トポロジ固有の効率プロファイルである。図14に示す双方向DC/DC昇圧コンバータに接続された従来のVSIベースの駆動系は、商用電気自動車で広く使用されており、このセクションのベースラインケースとして取り上げられている。これらのVSIベースのトポロジでは、スイッチング損失を調節し変換効率を向上させるために、DC-バス電圧をある程度制御することができる。しかしながら、最小DC-バス電圧は、バッテリと出力電圧の大きさによって制約されるため、さまざまな負荷条件でバス電圧を動的に制御する余地はほとんどない。さらには、効率の向上は、必要な出力電圧が定格値を大幅に下回るモータの低速領域に限定される。これとは非常に対照的に、トポロジの電流源の性質と結合したSSCSIコンバータの高速なダイナミクスは、入力および出力電圧レベルに関係なく、システムの電流負荷の関数としてDCリンク電流レベルを正確に調整できる。これにより、次に示す固有のSSCSI効率プロファイルが実現する。
【0111】
表IIIに指定されたパラメータを用いて、本提案のSSCSI駆動系と従来のVSIベースの駆動について、公称出力電圧および可変負荷での効率プロファイルを算出し、図15に示した。3つの市販のデバイスがモデル化され、パワー半導体損失の算出に用いられる。対象となるパラメータを表IVに示す。この比較調査では、接合部温度は125℃で一定であると想定されている。図15にラベル付けしたように、SSCSIでは2つの機器構成シナリオが考えられている。VSI駆動系では、スイッチング損失と導通損失の両方が評価されるが、ソフトスイッチングSSCSIの変形例ではスイッチング損失が排除されている。磁気のコア損失と巻線損失が考慮され、コンデンサ損失はどちらのケースでも無視されている。最後に、VSI駆動系のDCリンク電圧は、公称出力電圧を生成するとき、定格値で一定に保たれるが、SSCSIのDCリンク電流は出力電力と電流に比例して動的に変化する。
【表3】
【表4】
【0112】
図15に示すように、同じSi IGBTとSiCダイオードを用いて、SSCSIの直列構成とVSIの逆並列構成において、本提案のSSCSI電力系の効率は全体を通して従来のVSIソリューションよりも高くなっている。したがって、逆阻止スイッチを実現するための2つのデバイスの直列接続によるSSCSIトポロジの明らかな二重電圧降下ペナルティにもかかわらず、スイッチング損失を排除することで、考慮されるスイッチング周波数におけるより高い変換効率が得られる。また、標準的ではないが、この直列スイッチ構成は、ダイの相互接続を簡単に再構成することで既存の電源モジュール技術を用いて簡単に実現でき、コンバータの統合性を高める。
【0113】
固有のdv/dt制御によるソフトスイッチング動作により、SSCSIトポロジではSi IGBTをSiC MOSFETに置き換えるのが非常に容易になり、図15に示すようにさらに高い効率が得られる。さらには、従来のVSIモータ駆動は最大電力領域の近くでピーク効率で動作するが、動的DCリンク電流調整により、SSCSI駆動系の効率は出力電力の減少とともに増加する。この傾向は、通常は公称負荷の30%で連続導通モードの限界に達するまで続くが、DCリンク電流をそれ以上減らすことはできず、その時点で効率が低下し始める。また、ソフトスイッチング動作により、SSCSIの損失プロファイルは基本的に出力電圧に依存せず、モータ速度にも依存しないため、全体で同様の効率傾向が期待できることに留意することが重要である。したがって、SSCSIは、通常の駆動サイクルにおいて、既存のソリューションよりも優れたパフォーマンスを発揮することが期待できる。
【0114】
なお、本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、それらの適用に関して、明細書で説明され図面に示された構成要素の構造と配置の詳細に限定されない。むしろ、明細書および図面は、想定される実施形態の例を提供する。本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、他の実施形態がさらに可能であり、様々な方法で実施および実行することができる。また、本明細書で採用されている語句や用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものと見なしてはならないことを理解されたい。
【0115】
したがって、当業者は、本願および特許請求の範囲の基礎となる構想が、本願で提示した実施形態および特許請求の範囲のいくつかの目的を遂行するための他の構造、方法およびシステムの設計のための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲が、このような均等物を含むとみなされることが重要である。
【0116】
さらに、上述の要約書の目的は、米国特許商標庁および一般の人々、特に特許および法律用語や表現に精通していない当該技術分野の実務家を含む人々に対し、本願の技術的開示の性質と本質を大まかに調査して迅速に判断できるようにすることである。要約書は、本願の特許請求の範囲を定義することを意図しておらず、また、いかなる意味においても特許請求の範囲を限定することを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15