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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20250313BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
H05K13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022556288
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039533
(87)【国際公開番号】W WO2022085107
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩平
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102244(JP,A)
【文献】特開2019-061311(JP,A)
【文献】特開2020-035808(JP,A)
【文献】特開2013-238909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産用の部材を用いて基板の生産工程を実行する実行システムと、前記基板の生産予定に基づいて前記生産工程を含む各種工程の計画を作成する計画作成システムと、を備える生産システムであって、
前記計画作成システムは、前記基板の納期や生産枚数を定めた生産予定に基づく生産情報を前記実行システムへ送信し、
前記実行システムは、前記生産情報に基づいて前記生産工程のシミュレーションを実行して該生産工程中に前記部材の供給が必要となる供給タイミングを導出して前記計画作成システムへ送信し、
前記計画作成システムは、導出された前記供給タイミングに間に合うように供給対象の前記部材を準備させる準備工程の計画を作成する
生産システム。
【請求項2】
生産用の部材を用いて基板の生産工程を実行する実行システムと、前記基板の生産予定に基づいて前記生産工程を含む各種工程の計画を作成する計画作成システムと、を備える生産システムであって、
前記実行システムは、前記生産予定に基づいて前記生産工程のシミュレーションを実行して該生産工程中に前記部材の供給が必要となる供給タイミング及び回収すべき部材の回収タイミングを導出し、
前記計画作成システムは、導出された前記供給タイミング及び前記回収タイミングに間に合うように供給対象の前記部材を準備させる準備工程の計画を作成し、前記回収に伴う回収時間や回収した部材を収納する収納時間を含む各種時間を前記準備工程の計画に反映させる
生産システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生産システムであって、
前記回収すべき部材には、メンテナンスが必要となり回収する部材を含み、
前記準備工程の計画に前記回収した部材をメンテナンスする時間を反映させる
生産システム。
【請求項4】
請求項3に記載の生産システムであって、
メンテナンスに伴い回収する前記回収すべき部材の回収タイミングは、本来のメンテナンスのタイミングより前の、実装工程の開始タイミングを前記回収タイミングとする
生産システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の生産システムであって、
前記計画作成システムは、前記部材を保管する所定の保管部から供給対象の前記部材を取り出す時間と、該部材を前記実行システムで使用可能な状態とする作業を行う時間と、該部材を前記実行システムまで運搬する時間とを、前記供給タイミングから逆算するように反映して前記準備工程の計画を作成する
生産システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の生産システムであって、
前記部材は、前記基板に実装される部品を複数収容すると共に前記部品を順次送り出して供給する部材であり、
前記実行システムは、前記部材に収容されている部品の残数と、前記生産予定に基づく部品の実装予定数とを用いた前記シミュレーションの実行により、前記生産工程中に前記部材が部品切れとなるタイミングを前記供給タイミングとして導出する
生産システム。
【請求項7】
請求項1または2に記載の生産システムであって、
前記部材は、使用回数または使用時間が所定値に到達するとメンテナンスが必要となる部材であり、
前記実行システムは、前記部材の使用回数または使用時間と、前記生産予定に基づく前記部材の使用予定回数または使用予定時間とを用いた前記シミュレーションの実行により、前記生産工程中に前記部材のメンテナンスが必要となるタイミングを前記供給タイミングとして導出する
生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、生産システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を基板に実装するなどの実装システムにおいて、生産計画の実行可否を判定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、実装が予定される部品の種類や数量に基づいてそれらの部品の残数が十分か否かを判定したり、部品を供給するフィーダユニットのメンテナンスの必要性を予測してフィーダユニットの不足の可能性を判定することで、生産計画の実行可否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-243242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した実装システムのような生産を実行する実行システムと、生産計画などを作成する計画作成システムとが、別々に構成されるものがある。そのような構成では、計画作成システムが、フィーダユニットなどの生産に用いられる部材の状況を把握して上述したような判定を行うことが困難であるため、適切な計画を作成することができない場合がある。その場合、生産の実行中に部品の残数不足やメンテナンスの必要性などが判明しても、供給が必要な部材の準備が間に合わず、生産に影響を及ぼすことがある。
【0005】
本開示は、実行システムと計画作成システムとが別々に構成されるものにおいて、計画通りに生産が行える適切な計画を作成することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の生産システムは、
生産用の部材を用いて基板の生産工程を実行する実行システムと、前記基板の生産予定に基づいて前記生産工程を含む各種工程の計画を作成する計画作成システムと、を備える生産システムであって、
前記実行システムは、前記生産予定に基づいて前記生産工程のシミュレーションを実行して該生産工程中に前記部材の供給が必要となる供給タイミングを導出し、
前記計画作成システムは、導出された前記供給タイミングに間に合うように供給対象の前記部材を準備させる準備工程の計画を作成する
ことを要旨とする。
【0008】
本開示の生産システムでは、実行システムが、基板の生産予定に基づいて生産工程のシミュレーションを実行して生産工程中に部材の供給が必要となる供給タイミングを導出する。また、計画作成システムは、導出された供給タイミングに間に合うように供給対象の部材を準備させる準備工程の計画を作成する。このため、準備工程に従って供給対象の部材を準備すれば、供給タイミングに部材の供給を間に合わせることができる。したがって、部材の供給遅れにより生産に影響が生じるのを防止して、計画通りに生産が行える適切な計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】生産システム1の一例を示す説明図。
図2】実装システム30と収納装置60の一例を示す説明図。
図3】APSシステム20と実装システム30の処理の一例を示すシーケンス。
図4】生産情報の一例を示す説明図。
図5】フィーダ情報の一例を示す説明図。
図6】実装システム30の導出結果の一例を示す説明図。
図7】APSシステム20の出力結果の一例を示す説明図。
図8】変形例のAPSシステム20と実装システム30の処理を示すシーケンス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は、生産システム1の一例を示す説明図である。図2は、実装システム30と収納装置60の一例を示す説明図である。生産システム1は、図1図2に示すように、ERP(Enterprise Resource Planning)システム10と、APS(Advanced Planning and Scheduling)システム20と、実装システム30と、収納装置60とを備える。
【0011】
ERPシステム10は、ERPソフトウェアを用いて、受注情報や生産情報、在庫情報、購買情報などの各種情報を管理するERP管理装置11を備える。ERP管理装置11は、CPU12を中心とするマイクロプロセッサとして構成され、各種データやソフトウェアなどを記憶する記憶部14と、通信を行う通信部16と、各種情報を表示する表示部17と、各種指示を入力する入力部18とを備える。ERP管理装置11は、通信部16を介して、APSシステム20と情報をやり取り可能であり、図示しない顧客の工場や販売店などとも情報をやり取り可能である。このERPシステム10では、ERP管理装置11が例えば顧客から基板の受注情報を受けて、基板の納期や生産枚数などを定めた生産予定を作成し、APSシステム20に出力する。また、ERPシステム10は、APSシステム20を介して、実装システム30の生産情報や収納装置60の在庫情報などを取得する。
【0012】
APSシステム20は、APSソフトウェアを用いて、ERPシステム10で作成された生産予定に基づく各種工程の計画を作成して管理するAPS管理装置21を備える。APS管理装置21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサとして構成され、各種データやソフトウェアなどを記憶する記憶部24と、通信を行う通信部26と、各種情報を表示する表示部27と、各種指示を入力する入力部28とを備える。APS管理装置21は、通信部26を介して、ERPシステム10や実装システム30、収納装置60などと情報をやり取りする。このAPSシステム20では、APS管理装置21が例えば生産予定に基づく生産を実行するために細分化された各工程のスケジュールを作成し、実装システム30や作業者M、収納装置60などに出力する。工程のスケジュールとしては、例えば、実装システム30の工程である実装工程のスケジュールや、実装に必要な部材の準備を行うための準備工程のスケジュールなどがある。
【0013】
実装システム30は、APSシステム20により作成された実装工程のスケジュールに基づいて部品を基板Sに実装するための各種作業を行うものである。実装システム30は、印刷装置41と、印刷検査装置42と、実装装置50と、実装検査装置43と、実装管理装置31とを備える。印刷装置41は、スクリーンマスクに形成されたパターン孔にはんだを押し込むことで基板Sに印刷する。印刷検査装置42は、印刷装置41で印刷されたはんだの状態を検査する。実装検査装置43は、実装装置50で基板Sに実装された部品Pの実装状態を検査する。また、実装システム30は、図示しないリフロー装置やリフロー検査装置、基板搬送装置などを備える。
【0014】
実装装置50は、実装制御部51と、搬送部52と、供給部53と、実装部54と、操作パネル58とを備える。実装制御部51は、CPU51aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種データを記憶する記憶部51bと、実装管理装置31などと通信を行う通信部51cとを備える。この実装制御部51は、搬送部52や供給部53、実装部54と情報のやり取りを行い、これらを制御する。搬送部52は、基板Sを搬送固定するユニットである。供給部53は、実装部54へ部品Pを供給するユニットである。この供給部53は、例えば、部品Pをテープに収容するリール75(収容部材)が組み付けられたフィーダ70を装着する複数のスロットなどを有する。また、供給部53は、部品Pが載置されたトレイを収容したトレイユニットなども有する。実装部54は、部品Pを供給部53から採取し、搬送部52に固定された基板Sへ実装する。この実装部54は、ヘッド移動部55と、実装ヘッド56と、吸着ノズル57とを備える。ヘッド移動部55は、ガイドレールに導かれてXY方向へ移動するスライダと、スライダを駆動するモータとを備える。実装ヘッド56は、スライダに取り外し可能に装着されており、ヘッド移動部55によりXY方向へ移動する。実装ヘッド56の下面には、1以上の吸着ノズル57が取り外し可能に装着されている。吸着ノズル57は、負圧を利用して部品Pを採取する。なお、部品Pの採取は、吸着ノズル57のほか、部品Pを機械的に保持するメカニカルチャックなどにより行ってもよい。操作パネル58は、画面を表示するディスプレイとしての表示部と、作業者Mからの入力を受け付ける操作部とを備える。
【0015】
実装管理装置31は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成され、各種データやソフトウェアなどを記憶する記憶部34と、通信を行う通信部36と、各種情報を表示する表示部37と、各種指示を入力する入力部38とを備える。実装管理装置31は、通信部36を介して、実装システム30の各装置やAPSシステム20などと情報をやり取りする。
【0016】
収納装置60は、部品Pを収容したテープが巻き付けられたリール75などを収納する自動倉庫であり、収納制御を行う収納制御部65を備える。収納装置60は、リール75を自動で出し入れ可能なゲート61と、各種入力や表示を行う操作パネル62などを備える。収納制御部65は、CPU65aを中心とするマイクロプロセッサとして構成され、各種データを記憶する記憶部65bと、APSシステム20などと通信を行う通信部65cとを備える。収納装置60でのリール75の受け入れは、作業者Mにより行われる。作業者Mは、図示しない読取装置に、リール75に付されたバーコードや二次元コードなどの識別情報(IDラベル)を読み取らせる。読取装置は、収納制御部65の通信部65cなどと情報をやり取り可能であり、読み取った識別情報を収納制御部65に送信する。
【0017】
本実施形態では、図示しない工場内などに、実装システム30が配置され基板Sの生産を行う生産エリアA1と、収納装置60が配置された収納エリアA3と、生産エリアA1と収納エリアA3との間で作業者Mが生産の準備作業などを行う作業エリアA2とが設けられている。作業者Mは、収納エリアA3の収納装置60から取り出されたリール75を作業エリアA2に運搬してフィーダ70に組み付け、リール75を組み付けたフィーダ70を生産エリアA1に運搬して実装装置50の供給部53のスロットに取り付ける。また、作業者Mは、実装装置50から取り出されたフィーダ70を作業エリアA2に回収してリール75を組み外したり、必要に応じてフィーダ70のメンテナンスを行ったり、リール75を収納エリアA3に運搬して収納装置60に収容したりする。なお、本実施形態では、実装処理に用いられる部材の供給や回収として、フィーダ70やリール75を例示して説明するが、実装部54が備える実装ヘッド56、吸着ノズル57などの採取部材、はんだの収容部材、スクリーンマスクなどの部材の供給や回収を行うものでもよい。
【0018】
以下は、こうして構成された生産システム1のAPSシステム20と実装システム30の処理の説明である。図3は、APSシステム20と実装システム30の処理の一例を示すシーケンスである。なお、APSシステム20の処理は、APS管理装置21により実行され、実装システム30の処理は、実装管理装置31により実行される。APSシステム20は、まず、ERPシステム10により生成された生産予定に基づく生産情報を実装システム30に送信する(S100)。また、APSシステム20は、その生産情報に基づく実装工程で必要となるフィーダ70の供給タイミングの導出指示を実装システム30に送信する(S110)。
【0019】
図4は、生産情報の一例を示す説明図である。図示するように、生産情報には、オーダ名(例えばWO1)と、基板Sの生産枚数である基板枚数SN、基板1枚当たりの部品Pの実装予定数である部品数などが定められている。部品数は、例えば部品種Aの部品数Naや部品種Bの部品数Nbのように部品種毎に定められると共に合計の部品数PNが定められている。なお、図示は省略するが、生産情報には、各部品の基板Sへの配置位置なども含まれる。S100では、これらの基板枚数SNや実装予定の部品種、部品数Nなどが生産情報に含めて送信される。
【0020】
実装システム30は、生産情報とフィーダ70の供給タイミングの導出指示をAPSシステム20から受信すると、実装装置50に取り付けられている各フィーダ70のフィーダ情報を取得する(S200)。図5は、フィーダ情報の一例を示す説明図である。なお、図5は、1台の実装装置50のフィーダ情報を例示するが、同様なフィーダ情報が実装装置50毎に取得される。図示するように、実装装置50の供給部53の各スロットにセットされている各フィーダ70について、その部品種や識別情報、部品Pの残数R、送り回数Fなどが取得される。なお、各フィーダ70の図示しない制御部は、フィーダ70が部品Pを供給する度に、残数Rを値1だけデクリメントすると共に送り回数Fを値1ずつインクリメントする。実装制御部51は、各フィーダ70の制御部との通信を介して残数Rや送り回数Fを取得可能であり、実装システム30の実装管理装置31は、その残数Rや送り回数Fを実装制御部51から取得する。フィーダ70は、送り回数Fが、所定の基準回数(所定値)に到達したことに基づいてメンテナンスが必要と判断されて、作業者Mによるメンテナンスやメンテナンス装置によるメンテナンスが行われる。
【0021】
次に、実装システム30は、生産情報とフィーダ情報とに基づいて実装工程のシミュレーションを実行する(S210)。また、実装システム30は、シミュレーションの実行により、部品切れに伴うフィーダ70の供給タイミングや回収タイミングを導出し(S220)、メンテナンスに伴うフィーダ70の供給タイミングや回収タイミングを導出する(S230)。図6は、実装システム30の導出結果の一例を示す説明図である。ここで、S210のシミュレーションでは、部品種や部品数、各部品の配置位置、フィーダ70の部品種やスロット位置、フィーダ70から供給された各部品Pの配置位置への移送時間などに基づいて、1枚の基板Sに部品数PNの部品を実装するためのサイクルタイムCTが算出される。また、実装システム30は、基板Sの1枚当たりのサイクルタイムCTに基板枚数SNを乗じて、生産オーダ(例えばWO1)の工程時間を算出する(図6参照)。図6のt1~t10の各タイミングは、実装工程の開始を基準(t1)とする相対的なタイミングである。なお、実装システム30が基板Sの生産実績を生産情報に対応付けて記憶するものとし、新たに受信した生産情報に関連する生産実績を記憶している場合には、その生産実績に基づくサイクルタイムCTを用いたり、算出したサイクルタイムCTを生産実績に基づいて調整したりしてもよい。
【0022】
また、シミュレーションでは、基板Sの1枚当たりの部品種および部品数Nと、各フィーダ70の部品種および残数Rとに基づいて、部品切れとなるフィーダ70が発生するか否かが判定される。また、部品切れとなるフィーダ70については、サイクルタイムCTに基づいて実装工程の開始から部品切れとなるまでの予想時間が算出される。実装システム30は、S220では、その予想時間を部品切れに伴う新たなフィーダ70の供給タイミングとして導出すると共に(例えば図6のt4)、部品切れのフィーダ70を回収すべき回収タイミングを導出する(例えば図6のt5)。
【0023】
さらに、シミュレーションでは、基板Sの1枚当たりの部品種および部品数Nと、各フィーダ70の部品種および送り回数Fと、部品数Nに基づく送り予定回数と、メンテナンスの基準回数とに基づいて、メンテナンスが必要となるフィーダ70が発生するか否かが判定される。また、メンテナンスが必要となるフィーダ70については、サイクルタイムCTに基づいて実装工程の開始からメンテナンスが必要となるまでの予想時間が算出される。実装システム30は、S230では、その予想時間をメンテナンスに伴う新たなフィーダ70の供給タイミングとして導出すると共に(例えば図6のt7)、メンテナンスが必要となるフィーダ70を回収すべき回収タイミングを導出する(例えば図6のt8)。
【0024】
なお、実装システム30は、フィーダ情報に基づいて必要な部品種のフィーダ70がセットされていないと判断すれば(例えば図6の部品種D)、その部品種のフィーダ70の供給タイミングを実装工程の開始タイミングとする(例えば図6のt1)。また、実装システム30は、そのフィーダ70の供給に伴って回収すべき不用な部品種のフィーダ70があれば、その回収タイミングを導出する(例えば図6のt2)。実装システム30は、このようにして導出した供給タイミングや回収タイミング、工程時間などのシミュレーションの結果をAPSシステム20に送信する(S250)。
【0025】
APSシステム20は、実装システム30から受信した供給タイミングから、フィーダ70の供給に必要となる各作業時間を逆算するように反映して、フィーダ70の準備工程の計画を作成する(S120)。図7は、APSシステム20の準備工程の計画の一例を示す説明図である。図示するように、作業時間には、リール75を収納装置60から取り出す取出時間(a)と、リール75を作業エリアA2に運搬する運搬時間(b)と、リール75をフィーダ70に組み付ける組付時間(c)と、そのフィーダ70を生産エリアA1に運搬する運搬時間(d)などがある。APSシステム20は、各作業時間(d),(c),(b),(a)を順に供給タイミングから逆算して(図7の矢印参照)、各作業のタイミングを設定する。また、APSシステム20は、実装システム30の生産状況などから、オーダWO1の開始タイミング(図6のt1)の日時である開始日時(図7のT5)を定め、その開始日時と、設定した各作業のタイミングとに基づいて、各作業日時T1~T14を定める。
【0026】
また、APSシステム20は、実装システム30から受信した回収タイミングから、フィーダ70の回収に伴う各種時間を準備計画に反映させる(S130)。図7に示すように、生産エリアA1からフィーダ70を作業エリアA2へ回収する回収時間(e)と、必要に応じて作業エリアA2でメンテナンスする時間(f)と、作業エリアA2でフィーダ70から取り外したリール75を収納エリアA3に運搬し収納装置60に収納する運搬時間(g)などを準備計画に反映させる。なお、メンテナンスの時間(f)は、メンテナンスが必要とされたフィーダ70を回収した際に反映される。APSシステム20は、こうして作成した準備工程の計画を表示部27などに表示(出力)することにより作業者Mに準備工程の作業を指示して(S140)、処理を終了する。作業者Mは、表示部27に表示された準備工程の計画に基づいて、必要なフィーダ70の準備などを行うことにより、供給タイミングに間に合うようにフィーダ70を準備することができる。なお、準備工程の計画は、表示部27以外に、実装装置50の操作パネル58や収納装置60の操作パネル62、作業者Mの携帯端末の表示部など他の表示部に表示してもよい。
【0027】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の実装システム30が本開示の実行システムに相当し、APSシステム20が計画作成システムに相当し、生産システム1が生産システムに相当する。
【0028】
以上説明した生産システム1では、実装システム30が、基板Sの生産予定に基づいて実装工程のシミュレーションを実行してフィーダ70(リール75)の供給タイミングを導出する。また、APSシステム20は、導出された供給タイミングに間に合うようにフィーダ70を準備させる準備工程の計画を作成する。このため、準備工程に従って供給対象のフィーダ70を準備すれば、供給タイミングにフィーダ70の供給を間に合わせることができる。したがって、フィーダ70の供給遅れにより、部品の供給待ちなどの影響が生じるのを防止することができる。
【0029】
また、APSシステム20は、リール75が収納装置60から取り出される取出時間と、リール75が運搬される運搬時間と、リール75がフィーダ70に組み付けられる組付時間などを、供給タイミングから逆算するように反映して準備工程の計画を作成する。このため、フィーダ70(リール75)の準備に必要な時間を過不足なく準備工程の計画に反映して、供給タイミングでフィーダ70を確実に供給させることができる。
【0030】
また、実装システム30は、フィーダ70の部品の残数Rと実装予定の部品数Nとを用いたシミュレーションの実行により、部品切れのタイミングを供給タイミングとして導出する。このため、部品切れにより生産に影響が生じるのを確実に防止することができる。
【0031】
また、実装システム30は、フィーダ70の送り回数Fと、実装予定の部品数Nに基づく送り予定回数とを用いたシミュレーションの実行により、フィーダ70のメンテナンスのタイミングを供給タイミングとして導出する。このため、メンテナンスにより生産に影響が生じるのを確実に防止することができる。
【0032】
また、APSシステム20は、フィーダ70の回収を含めて準備工程の計画を作成するから、準備工程に従ってフィーダ70の回収を効率よく行うことができる。また、回収したフィーダ70が次に使用されるまでに、メンテナンスなどの作業を確実に行うこともできる。
【0033】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、部品切れのタイミングとメンテナンスのタイミングとをいずれも供給タイミングとしたが、これに限られず、いずれか一方(例えば部品切れのタイミング)を供給タイミングとして準備工程の計画を作成してもよい。また、メンテナンスについては、メンテナンスが必要となるタイミングより前のタイミングをフィーダ70の供給タイミングとしてもよい。
【0035】
図8は、変形例のAPSシステム20と実装システム30の処理を示すシーケンスである。なお、変形例では、実施形態と同じ処理には同じステップ番号を付してその説明を省略する。この変形例では、APSシステム20は、実装システム30からフィーダ供給タイミングを受信すると、メンテナンスに伴うフィーダ70の供給タイミングおよび回収タイミングを実装開始時に設定して(S115)、以降の処理を実行する。即ち、本来のメンテナンスのタイミングより前の、実装工程の開始タイミングが、供給タイミングおよび回収タイミングとされる。これにより、実装工程中にメンテナンスが必要となるフィーダ70については、実装工程の開始前に予め準備して交換することが可能となる。このため、実装工程中にメンテナンスに伴うフィーダ70の供給準備をする必要がないから、実装工程中の準備作業の負担を軽減することができる。
【0036】
また、例えばこの変形例の処理を、フィーダ70のメンテナンスのタイミングが他のフィーダ70の部品切れのタイミングやメンテナンスのタイミングと重複した場合に行うものとしてもよい。即ち、メンテナンスのタイミングが他の供給タイミングと重ならない場合には、メンテナンスのタイミングを変更することなく供給タイミングとし、メンテナンスのタイミングが他の供給タイミングと重なる場合には、実装工程の開始タイミングなど、メンテナンスのタイミングよりも前のタイミングを供給タイミングとするように準備工程の計画を作成すればよい。
【0037】
上述した実施形態では、フィーダ70の送り回数Fなど部材の使用回数に基づいてメンテナンスのタイミングを判定したが、これに限られず、部材の使用時間に基づいてメンテナンスのタイミングを判定してもよい。
【0038】
上述した実施形態では、準備工程の計画にフィーダ70の回収や回収に伴うメンテナンスなどの時間を含めたが、これに限られず、フィーダ70の準備に必要な時間(図7の上段の項目)で準備工程の計画を作成し、回収に必要な時間(図7の下段の項目)などを含めなくてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、生産システム1が、ERPシステム10と、APSシステム20と、実装システム30との3つのシステムを備えたが、これに限られるものではない。生産システム1は、少なくとも、生産用の部材を用いて基板Sの生産工程を実行する実行システムと、基板Sの生産予定に基づいて各種工程の計画を作成する計画作成システムとを備えていればよい。例えば、生産システム1が、ERPシステムの機能とAPSシステムの機能とを含む計画作成システムと、実装システム30とを備えてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、作業者Mが準備工程の作業を行ったが、これに限られるものではない。例えば、生産システム1が、自動搬送車や自動組付装置などによりフィーダ70(リール75)の準備作業を自動で行うように構成されている場合、自動搬送車や自動組付装置の各制御部などに準備工程の計画を送信して作業を行わせてもよい。
【0041】
ここで、本開示の生産システムは、以下のように構成してもよい。本開示の生産システムにおいて、前記計画作成システムは、前記部材を保管する所定の保管部から供給対象の前記部材を取り出す時間と、該部材を前記実行システムで使用可能な状態とする作業を行う時間と、該部材を前記実行システムまで運搬する時間とを、前記供給タイミングから逆算するように反映して前記準備工程の計画を作成するものとしてもよい。こうすれば、部材の準備に必要な時間を過不足なく準備工程の計画に反映することができるから、供給タイミングで部材を確実に供給することができる。
【0042】
本開示の生産システムにおいて、前記部材は、前記基板に実装される部品を複数収容すると共に前記部品を順次送り出して供給する部材であり、前記実行システムは、前記部材に収容されている部品の残数と、前記生産予定に基づく部品の実装予定数とを用いた前記シミュレーションの実行により、前記生産工程中に前記部材が部品切れとなるタイミングを前記供給タイミングとして導出するものとしてもよい。こうすれば、生産工程中に部材の部品切れが生じても生産に影響が生じるのを確実に防止することができる。
【0043】
本開示の生産システムにおいて、前記部材は、使用回数または使用時間が所定値に到達するとメンテナンスが必要となる部材であり、前記実行システムは、前記部材の使用回数または使用時間と、前記生産予定に基づく前記部材の使用予定回数または使用予定時間とを用いた前記シミュレーションの実行により、前記生産工程中に前記部材のメンテナンスが必要となるタイミングを前記供給タイミングとして導出するものとしてもよい。こうすれば、生産工程中に部材のメンテナンスが必要となっても生産に影響が生じるのを確実に防止することができる。
【0044】
本開示の生産システムにおいて、前記計画作成システムは、前記生産工程中にメンテナンスが必要となる前記部材については、導出された前記供給タイミングより前の、前記生産工程の開始タイミングに間に合うように前記準備工程の計画を作成するものとしてもよい。こうすれば、生産工程中にメンテナンスが必要となる部材については、生産工程の開始前に予め準備して交換することが可能となる。このため、生産工程中にメンテナンスに伴って部材を交換する必要がないから、生産工程中の準備作業の負担を軽減することができる。
【0045】
本開示の生産システムにおいて、前記計画作成システムは、前記供給タイミングで供給される前記部材と交換されるために前記実行システムで不要となる前記部材の回収を含めて、前記準備工程の計画を作成するものとしてもよい。こうすれば、準備工程に従って部材の回収を効率よく行うことができる。また、回収した部材が次に供給されるまでに、部材のメンテナンスなどの作業を進めておくこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示は、生産工程の実行システムと、工程の計画作成システムとを備える生産システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 生産システム、10 ERPシステム、11 ERP管理装置、12,22,32 CPU、14,24,34 記憶部、16,26,36 通信部、17,27,37 表示部、18,28,38 入力部、20 APSシステム、21 APS管理装置、30 実装システム、31 実装管理装置、41 印刷装置、42 印刷検査装置、43 実装検査装置、50 実装装置、51 実装制御部、51a CPU、51b 記憶部、51c 通信部、52 搬送部、53 供給部、54 実装部、55 ヘッド移動部、56 実装ヘッド、57 吸着ノズル、58 操作パネル、60 収納装置、61 ゲート、62 操作パネル、65 収納制御部、65a CPU、65b 記憶部、65c 通信部、70 フィーダ、75 リール、A1 生産エリア、A2 作業エリア、A3 収納エリア、M 作業者、P 部品、S 基板。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8