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特許7649825PDL1を標的とする抗体及びそれを用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】PDL1を標的とする抗体及びそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250313BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250313BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250313BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250313BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250313BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20250313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250313BHJP
   G01N 21/41 20060101ALN20250313BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20250313BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20250313BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20250313BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20250313BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
G01N21/41 101
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023131574
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2020520150の分割
【原出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2023166403
(43)【公開日】2023-11-21
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】17195781.4
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18167094.4
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18180816.3
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520119851
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティックス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グンデ, ティー
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, マシアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘス, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シモニン, アレクサンダー
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500207(JP,A)
【文献】国際公開第2017/118321(WO,A1)
【文献】特表2017-507650(JP,A)
【文献】特表2013-511959(JP,A)
【文献】国際公開第2017/123650(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPDL1との結合特異性を有する単離された抗体であって、
それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列と、
それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
を含み、
前記抗体が、
(i)配列番号46のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号58のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、又は、
(ii)配列番号47のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号57のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体。
【請求項2】
前記(i)に記載の抗体が、少なくとも2S、25A、44V、56A、82K、89V及び105F(AHo付番)を含む重鎖可変領域と、少なくとも2F、4L及び51P(AHo付番)を含む軽鎖可変領域を含み、
前記(ii)に記載の抗体が、少なくとも25A、44V、56A、82K、及び89V(AHo付番)を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(i)配列番号46のVH配列及び配列番号58のVL配列、又は、
(ii)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列、
を含む、請求項に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、
(i)表面プラズモン共鳴(SPR)により測定したとき、ヒトPDL1に対して、100pM未満の解離定数(KD)で結合し、
(ii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-3-1以下のKoffで結合し、
(iii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-1-1以上のKonで結合し、
(iv)カニクイザル(Cynomolgus)PDL1との交差反応性を有し、SPRにより測定したとき、カニクイザルPDL1に対して、100pM未満のKDで結合し、(v)SPRにより測定したとき、マウスPDL1との交差反応性を有さず、
(vi)SPRにより測定したとき、ヒトPDL2と結合しない、
(vii)ELISA法で測定したとき、アベルマブ(avelumab)と比較し、2超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、ここで前記抗体がscFvであり、
(viii)NFATレポーター遺伝子アッセイで測定したとき、アベルマブと比較し、2超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、前記相対的な力価が、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定されるアベルマブのng/mLのIC50、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、ここで前記抗体がscFvであり、及び/又は、
(ix)ELISA法で測定したとき、アベルマブと比較し、2超の力価(相対的な力価)で、PDL1/B7-1相互作用を中和する能力を有し、前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、ここで前記抗体がscFvである、
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、
(i)scFvフォーマットであるとき、前記抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸-クエン酸バッファにおいて調製されるとき、示差走査蛍光測定により測定したとき、65℃以上の融解温度(Tm)を有する、
(ii)scFvフォーマットであるとき、前記抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸クエン酸バッファにおいて調製されるとき、前記抗体を10mg/mlの開始濃度で、5回の連続する凍結融解サイクルに供した後、5%未満のモノマー含量の損失を示し及び/又は、
(iii)scFvフォーマットであるとき、前記抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸クエン酸バッファにおいて調製されるとき、前記抗体を10mg/mlの開始濃度で、4℃で2週間以上の貯蔵後、15%未満のモノマー含量の損失を示す、
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、及びscAbらなる群から選抜される、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
scFvであり、前記scFvが、配列番号61及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、多重特異性分子であり、該多重特異性分子が1つ以上の第2機能性分子を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の単離された抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項10】
薬剤として使用するための、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
癌の治療に使用するための、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体の産生方法であって、請求項12の核酸を含む宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトPDL1と特異的に結合する単離された抗体、並びにその医薬組成物及び使用方法に関する。本発明は更に、前記抗体をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、及び前記抗体を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PDL1(CD274、B7-H1)は、40kDaのI型膜貫通タンパク質である。PDL1は、PD-1に対する膜表面糖タンパク質リガンドであり、活性化T細胞及びB細胞により発現される主要な免疫チェックポイント受容体であり、免疫抑制を媒介する。PDL1は、慢性感染症、妊娠、組織同種異系移植、自己免疫疾患及び癌の間、免疫系の反応の抑制に関係する。PDL1は、抗原提供細胞、並びにヒトの頭頸部の扁平上皮癌、黒色腫、及び脳腫瘍、甲状腺、胸腺、食道、肺、胸部、消化管、結直腸、肝臓、膵臓、腎臓、副腎皮質、膀胱、尿路上皮、卵巣及び皮膚などにおける癌細胞、の両方で発現することが知られている(非特許文献1~7)。PDL1は、正常組織では発現されることは殆どなく、腫瘍部位において誘導的に発現される(非特許文献8及び9)。PDL1は、PD-1と結合することにより、T細胞の活性化及びサイトカインの分泌を下方制御する(非特許文献10)。PDL1により活性化されたPD-1は、腫瘍発生及び増殖に免疫寛容的な環境を潜在的に提供する。PDL1はまた、他の受容体B7.1(B7-1、CD80)との相互作用を通じてT細胞機能に対する負の制御を行う。
【0003】
PDL1/PD-1相互作用の抑制は、強力な抗腫瘍活性をもたらす。PDL1に対する各種の抗体は既に公知であり(特許文献1及び2参照)、PD-1シグナリングを破壊する多くの臨床用抗体が開発されている。これらの抗体は、PD-1を標的とするもの(ニボルマブ(nivolumab、Bristol-Myers Squibb社)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab、Merck社、ホワイトハウスステーション、NJ)、ピジリズマブ(pidilizumab、CureTech社、Yavne、イスラエル))、並びにPDL1を目標とするもの(MPDL3280A(Genentech社、サウスサンフランシスコ、CA)、MEDI4736(MedImmune/AstraaZeneca社)、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb社)、MSB0010718C(EMD Serono社、Rockland、MA))、の2つの主要なカテゴリーに属する(レビューについては非特許文献11を参照)。PDL1のターゲティングとPD-1のターゲティングでは、結果としての生物学的効果が異なるようである。PD-1抗体は、PD-1とそのリガンドであるPDL1及びPDL2の両方との相互作用を防止する。PDL1抗体は、PD-1のPDL2との相互作用を防止しないが、この相互作用の効果については解っていない。しかしながら、PDL1抗体は、PDL1の、PD-1のみならずB7-1との相互作用も妨害し(非特許文献12)、それはT細胞に対する負のシグナリングを生じさせると考えられている。PDL1のブロックによる有望な初期データが示されており、現在4つの抗PDL1 mAb、すなわちアテゾリズマブ(atezolizumab)及びMEDI4736(いずれもヒトIgG1のFcヌル変異体)、MSB001078C(IgG1)及びBMS-936559(IgG4)、が臨床試験に供されている(非特許文献13)。
【0004】
現在まで、癌患者において強力な免疫応答を誘導するための満足な方法が開示されていない。ゆえに、本技術分野では、PDL1/PD-1相互作用を改善する治療的モジュレーターを得、癌患者において観察される免疫抑制機構を克服するための方法を得ることに対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/079174号
【文献】国際公開第2017/118321号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Katsuya Y,et al.,Lung Cancer.88(2):154-159(2015)
【文献】Nakanishi J,et al.,Cancer Immunol Immunother.56(8):1173-1182(2007)
【文献】Nomi T,et al.,Clin Cancer Res.13(7):2151-2157(2007)
【文献】Fay AP,et al.,J Immunother Cancer.3:3(2015)
【文献】Strome SE,et al.,Cancer Res.63(19):6501-6505(2003)
【文献】Jacobs JF,et al.Neuro Oncol.11(4):394-402(2009)
【文献】Wilmotte R,et al.Neuroreport.16(10):1081-1085(2005)
【文献】Dong H,et al.,Nat Med.8(8):793-800(2002)
【文献】Wang et al.,Onco Targets Ther.9:5023-5039(2016)
【文献】Freeman et al.,2000;Latchman et al,2001
【文献】Postow MA et al.,J Clin Oncol.Jun 10;33(17):1974-82(2015)
【文献】Butte MJ,et al.,Immunity 27:111-122,(2007)
【文献】Chester C.,et al.,Cancer Immunol Immunother Oct;65(10):1243-8(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヒトPDL1タンパク質と特異的に結合し、例えば高い親和性や改善された有効性などの、治療用途における有益な特性、並びに、例えば溶解性、展開性及び安定性などの、改善された生物物理学的特性、を有する抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、新規なPDL1抗体に関する。
【0009】
一態様では、本発明は、本発明の抗体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための、本発明の抗体又は本発明の組成物に関する。
【0011】
一態様では、本発明は、癌の治療を必要とする被験者の該治療において使用するための、本発明の抗体又は本発明の組成物に関する。
【0012】
一態様では、本発明は、癌の治療を必要とする被験者の該治療用の薬剤の製造における、本発明の抗体又は本発明の組成物の使用に関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、癌の治療を必要とする被験者に対し、治療的有効量の本発明の抗体又は本発明の組成物を投与することを含む、該被験者の癌の治療方法に関する。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸に関する。更なる態様では、本発明は、前記核酸を含むベクターに関する。更なる態様では、本発明は、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、本発明の抗体を産生する方法に関し、該方法は、本発明の核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養するステップを含む。
【0016】
以下の項目にまとめる本発明の態様、有利な特徴及び好ましい実施形態は、それぞれ単独で、又は組み合わせにおいて、本発明の課題の解決に更に貢献するものである:
【0017】
1.ヒトPDL1に対する結合特異性を有する、以下を含む単離された抗体:
(a)配列番号1、4、5、8、11、32、35、36、39及び42のいずれか1つから選択される、好ましくは配列番号1又は32の、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR1と、
(b)配列番号2、6、9、12、33、37、40及び43のいずれかから選択される、好ましくは配列番号2又は33の、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR2と、
(c)配列番号3、7、10、13、34、38、41及び44のいずれかから選択される、好ましくは配列番号3又は34の、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR3と、
(d)配列番号17、20、23、48、51及び54のいずれかから選択される、好ましくは配列番号17又は48の、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR1と、
(e)配列番号18、21、24、49、52及び55のいずれかから選択される、好ましくは配列番号18又は49の、より好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR2と、
(f)配列番号19、22、25、50、53及び56のいずれかから選択される、好ましくは配列番号19又は50の、より好ましくは配列番号19のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR3。
【0018】
2.抗体が以下を含む、項目1の抗体:
(a)それぞれ、配列番号1、2及び3の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(b)それぞれ、配列番号4、6及び7の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(c)それぞれ、配列番号5、6及び7の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(d)それぞれ、配列番号8、9及び10の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(e)それぞれ、配列番号11、12及び13の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号23、24及び25の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(f)それぞれ、配列番号32、33及び34の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(g)それぞれ、配列番号35、37及び38の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(h)それぞれ、配列番号36、37及び38の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53の、LLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(i)それぞれ、配列番号39、40及び41の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(j)それぞれ、配列番号42、43及び44の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号54、55及び56の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列。
【0019】
3.以下を含む、項目1の抗体:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号17のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号18のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3。
【0020】
4.以下を含む、項目1の抗体:
(a)配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号7のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号20のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号21のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号22のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3。
【0021】
5.以下を含む、項目1の抗体:
(a)配列番号32のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号33のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号34のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号48のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号49のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号50のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3。
【0022】
6.以下を含む、項目1の抗体:
(a)配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号37のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号38のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号51のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号52のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号53のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3。
【0023】
7.抗体が、重鎖可変領域(VH)を含み、前記VHが、VH1、VH3又はVH4、好ましくはVH3又はVH4、より好ましくはVH3である、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0024】
8.抗体が、軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VLが、
VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3のFR1からFR3、好ましくはVκ1のFR1からFR3と、
Vκ FR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλFR4から選択され、特に配列番号64から配列番号70のいずれかから選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号64から配列番号70のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号64又は65に記載のVλ FR4、より好ましくは、配列番号64に記載のVλ FR4である、フレームワークFR4と、
を含む、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0025】
9.抗体が、
配列番号14、15、16、45、46及び47からなる群から選択される、好ましくは配列番号14又は16の、より好ましくは配列番号16のアミノ酸配列と、90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号26、27、57及び58からなる群から選択される、好ましくは配列番号26又は27の、より好ましくは配列番号27のアミノ酸配列と、90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0026】
10.抗体が、
(a)アミノ酸配列番号14と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号26と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)アミノ酸配列番号15と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号26と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)アミノ酸配列番号16と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号27と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(d)アミノ酸配列番号45と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号57と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(f)アミノ酸配列番号46と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号58と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(g)アミノ酸配列番号47と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及びアミノ酸配列番号57と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0027】
11.抗体が、
配列番号14、15、16、45、46及び47からなる群から選択されるいずれかの、好ましくは配列番号14又は16の、より好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号26、27、57及び58からなる群から選択されるいずれかの、好ましくは配列番号26又は27の、より好ましくは配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0028】
12.抗体が、
(a)配列番号14のVH配列及び配列番号26のVL配列、
(b)配列番号15のVH配列及び配列番号26のVL配列、
(c)配列番号16のVH配列及び配列番号27のVL配列、
(d)配列番号45のVH配列及び配列番号57のVL配列、
(f)配列番号46のVH配列及び配列番号58のVL配列、又は
(g)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列
を含む、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0029】
13.抗体が、
(i)表面プラズモン共鳴(SPR)により測定したとき、ヒトPDL1に対して、5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、特に100pM未満、好ましくは50pM未満、より好ましくは10pM未満の解離定数(KD)で結合し、特に、前記抗体がscFv(一価の親和性)である、
(ii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-3-1以下、10-4-1以下、又は10-5-1以下のKoffで結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(iii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-1-1以上、10-1-1以上、10-1-1以上、又は10-1-1以上のKonで結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(iv)カニクイザル(Cynomolgus)PDL1との交差反応性を有し、特に、SPRにより測定したとき、カニクイザルPDL1に対する5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、特に100pM未満、好ましくは10pM未満のKDで結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(v)特に、SPRにより測定したとき、マウスPDL1との交差反応性を有さず、
及び/又は
(vi)特に、SPRにより測定したとき、ヒトPDL2と結合しない、
前記のいずれかの項目の抗体。
【0030】
14.抗体が、以下の特性:
(i)ELISA法で測定したとき、アベルマブ(avelumab)と比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvであり、及び/又は、
(ii)任意に、NFATレポーター遺伝子アッセイで測定したとき、アベルマブと比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvであり、及び/又は、
(iii)ELISA法で測定したとき、アベルマブ(avelumab)と比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/B7-1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvである、
前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0031】
15.前記抗体が、
(i)scFvフォーマットであるとき、示差走査蛍光定量で測定したとき、60℃以上、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上の融解温度(Tm)を有し、
特に、前記抗体が、50mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファ、pH 6.4、150mMのNaCl中で製剤化される、
(ii)scFvフォーマットであるとき、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度であるとき、5回の連続する凍結融解サイクルの後、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含量の損失を示し、
特に、前記抗体が、50mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファ、150mMのNaCl、pH6.4中で製剤化される、及び/又は、
(iii)scFvフォーマットであるとき、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度であるとき、4℃で2週間以上、特に4週間以上の貯蔵後、15%未満、例えば12%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満のモノマー含量の損失を示し、
特に、本発明の抗体が、50mMのリン酸塩クエン酸塩バッファ、150mMのNaCl、pH6.4中で製剤化される、
前記のいずれかの項目の抗体。
【0032】
16.前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、及びアンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチンに限られる足場代替物に基づいている結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えばF-star’s Modular Antibody Technology(商標))からなる群から選抜される、前記のいずれかの項目の抗体。
【0033】
17.前記抗体が、単鎖可変部分断片(scFv)又はFvである、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0034】
18.前記scFvが、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号60、配列番号61及び配列番号62、好ましくは配列番号29及び配列番号31、からなる群から選択される、より好ましくは、配列番号31のアミノ酸配列を有する、項目17の抗体。
【0035】
19.前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択されるIgGであり、好ましくは、前記抗体がIgG1である、項目16の抗体。
【0036】
20.前記抗体が、キメラであるか又はヒト化されている、前記のいずれかの項目の抗体。
【0037】
21.項目1~20のいずれか1つの抗体と基本的に同じエピトープに対して結合する抗体。
【0038】
22.多重特異性分子であり、特に、1つ以上の第2機能性分子を有する多重特異性分子である、前記のいずれか1つの項目の抗体。
【0039】
23.前記抗体が、単鎖diabody(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、直鎖二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体のscDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞結合部(BiTE;タンデム-ジ-scFv)、タンデム-トリ-scFv、tribody(Fab-(scFv)2)又はbibody(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(Morrison)(IgG CH-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、triabody、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジ-ミニ抗体、tetrabody、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジ-diabody、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、bsAb(軽鎖のC末端に連結されるscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端基に連結されるscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端基に連結されるscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されるscFv)、Ts1Ab(重鎖及び軽鎖のN末端基に連結されるscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されるdsscFv)などのIgG-scFv融合体、Knob-into-Hole抗体(KiHs)などのヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、Fv、scFv、scDb、タンデム-ジ-scFv、タンデム-トリ-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、1つのヘテロ二量体Fcドメイン又は他方のヘテロ二量体ドメインのいずれかの鎖のN及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH及びDuoBodie、からなる群から選択されるフォーマットである、項目22の抗体。
【0040】
24.項目1~23のいずれか1つの抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【0041】
25.薬剤として使用するための、項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物。
【0042】
26.癌の治療を必要とする被験者における該治療に使用するための、項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物。
【0043】
27.項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物の、癌の治療を必要とする被験者における該治療への使用。
【0044】
28.項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物の、癌の治療を必要とする被験者における該治療用薬剤の製造のための使用。
【0045】
29.癌の治療を必要とする被験者に対し、治療的有効量の項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物を投与することを含む、該被験者の癌の治療方法。
【0046】
30.項目1~23のいずれか1つの抗体をコードする核酸。
【0047】
31.項目31の核酸を含むベクター。
【0048】
32.項目31の核酸又は項目32のベクターを含む宿主細胞。
【0049】
33.項目1~23のいずれか1つの抗体の産生方法であって、項目31の核酸又は項目31のベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
【0050】
34.項目1~23のいずれか1つの抗体又は項目24の組成物を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】PDL1に対し最良の親和性を有するウサギIgGクローンによる、PDL1/PD-1相互作用の中和を示す。ELISAにより測定される吸光度を、33-03-G02(A)又は37-20-B03(B)の分子濃度の関数としてng/mlで表わす。アベルマブを対照として用いた。
図2】PDL1に対し最良の親和性を有するウサギIgGクローン33-03-G02(A)又は37-20-B03(B)による、PDL1/B7-1相互作用の中和を示す。ELISAにより測定される吸光度を、分子濃度の関数としてng/mlで表わす。アベルマブを対照として用いた。
図3】細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて、PDL1に対し最良の親和性を有する選抜されたウサギIgGクローンによる、PDL1/PD-1相互作用の中和を示す。アッセイにおいて得られた発光シグナルに対応する%阻害の比率を、分子濃度の関数としてng/mlで表す。アベルマブを対照として用いた。
図4図4Aは、CDRセット及びフレームワークの選択による、NFAT-ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおける、PDL1/PD-1相互作用の中和に対する効果を示す。アッセイにおいて得られた発光シグナルに対応する%阻害の比率を、scFv濃度の関数としてng/mlで表す。アベルマブを対照として用いた。図4Bは、ドメイン最適化による、NFAT-ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおける、PDL1/PD-1相互作用の中和力価に対する効果を示す。アッセイにおいて得られた発光シグナルに対応する%阻害の比率を、scDbs濃度の関数としてng/mlで表す。アベルマブを対照として用いた。
図5】レポーター遺伝子アッセイにおける、組換えヒト血清アルブミンの存在下における、scDb-scFvs PRO963及びPRO1057(A)、PRO1186及びPRO1430(B)、PRO1431及びPRO1432(C)、PRO1473(D)、PRO1476(E)、PRO1479(F)及びPRO1482(G)による、PDL1/PD-1相互作用の中和力価を示す。アッセイにおいて得られた発光シグナルに対応する%阻害の比率を、分子濃度の関数としてng/mlで表す。アベルマブを対照として用いた。
図6】二価分子の力価、及び、モリソンフォーマットのLC又はHC scFv融合体の、NFAT-ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおけるPDL1/PD-1相互作用の中和力価に対する影響を示す。アッセイにおいて得られた発光シグナルに対応する%阻害の比率を、分子濃度の関数としてng/mlで表す。アベルマブを対照として用いた。
図7】PD-1/PDL1競合ELISA。全ての分子は、対照IgGであるアベルマブと同程度又はより少ないIC50値で、PD-1とPDL1との間の相互作用を強力にブロックした。
図8】B7-1/PDL1競合ELISA。全ての分子は、アベルマブと同様に、B7-1とPDL1との間の相互作用を強力にブロックした。
図9】エクスビボT細胞活性化アッセイ。PBMCは、10ng/mlのSEAにより刺激し、scFv PRO997又はscDb PRO885での系列希釈で、96時間処理した。T細胞の活性化は、回収された上清のELISAによるIL-2定量により評価した。PRO885及びPRO997による処理により、顕著なIL-2分泌がもたらされた。PRO997は、アベルマブより高い力価を示した。アベルマブと比較し、PRO885は非常に高い効果を示した。シグモイド4PLフィット(GraphPad Prism社)を使用して、データをフィットさせた。
図10】免疫不全NOGマウス系統及び同種異系ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を使用した、ヒトHCC827 NSCLC異種移植における抗PDL1 IgG1(PRO1137)治療の抗腫瘍活性を示す。マウスに対し、0、3、7及び10日目において、抗PDL1 IgG1(PRO1137)又はビヒクルをi.p.投与した。腫瘍体積を週当たり2回測定し、マウスを17及び18日目に安楽死させた。腫瘍体積を、処理開始時の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として正規化した。(A)2匹のドナー由来のPBMCにより再構成された、マウスにおける平均相対腫瘍体積(群当たりn=8匹のマウス)。点線は処理の回数を示す。(B)ドナーB(群当たりn=4匹のマウス)由来のPBMCにより再構成された、マウスにおける平均相対腫瘍体積。(C)2匹のドナー由来のPBMCにより再構成された、マウスにおける個々の相対腫瘍体積。各記号は、同じ処理群内の個々の動物を表す。(D)ドナーB由来のPBMCにより再構成された、マウスにおける個々の相対腫瘍体積。各記号は、同じ処理群内の個々の動物を表す。
図11】hPBMCで置換したNOGマウスにおけるHCC827異種移植を示す。抗PDL1 IgG1(PRO1137)治療による処置後の、HCC827を負荷させたNOGマウスの体重を示す。体重を週当たり2回測定し、マウスを17及び18日目に安楽死させた。体重を、処置開始時の体重に対する相対体重として正規化した。
図12】ヒトの臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフト化したNOGマウスにおける、ヒトHCC827 NSCLC異種移植における抗PDL1 IgG1(PRO1196)の抗腫瘍効果の評価を示す。PRO1196(0.1mg)の抗腫瘍活性を、アベルマブ(0.1mg)又はビヒクル処理(パリビズマブ(palivizumab)、0.1mg)と比較した。0、5、10、15及び20日目(点線)においてマウスを処置した。腫瘍増殖及び体重を週2回記録した。腫瘍体積を、処理開始時の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、ヒトPDL1タンパク質に特異的結合する抗体、及び医薬組成物、製造方法、並びにかかる抗体及び組成物の使用方法を提供する。
【0053】
特に定義されない限り、本願明細書において用いられるすべての専門的及び科学的用語は、一般に、本発明に関連する当業者により理解されるのと同じ意味を有する。
【0054】
用語「含む」こと及び「包含する」は、特に明記しない限り、本願明細書においては、それらのオープンエンドな、非限定的な意味において使用される。したがって、かかる後者の実施形態に関しては、「含む」という用語は、その下位概念である「~からなる」という狭義の用語を包含するものである。
【0055】
本発明を記載する文脈における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の用語は、本願明細書において明記されるか、又は文脈から明らかに否定されない限り、(特に後述する請求項の文脈においては)単数形及び複数形を包含するものとする。例えば、用語「細胞」には複数の細胞が包含され、またそれらの混合物も包含するものである。化合物、塩等について複数形が用いられる場合、これはまた、単一の化合物、塩等を意味することもある。
【0056】
第1の態様において、本発明は、ヒトPDL1と特異的に結合する抗体に関する。
【0057】
本明細書で用いられる用語「抗体」等には、以下のものが包含される:
全部抗体又はその単鎖、並びに、あらゆるその抗原結合性断片(すなわち「抗原結合性部分」)又はその単鎖、並びに、抗体CDR、VH領域又はVL領域を含む分子(限定されないが、複数特異性抗体を包含する)。天然に存在する「全部抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合している、2つ以上の重(H)鎖及び2つ以上の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(VHとして本願明細書において略記)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLとして本願明細書において略記)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域と、フレームワーク領域(FR)と称される点在するより保存された領域と、に更に分割することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される、3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)などの、イムノグロブリンの宿主組織又は因子に対する結合を媒介すると考えられる。
【0058】
本明細書で用いられる「抗原結合性断片」、「その抗原結合性断片」、「抗原結合部分」等の用語は、所定の抗原(例えばPDL1)に特異的に結合する能力を保持する完全な全部抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」の用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片、F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2つのFab断片を含む二価断片、VH及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、並びに、アンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチンに限られる足場代替物に基づいている結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えばF-star’s Modular Antibody Technology(商標))が挙げられる。
【0059】
「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、Kabat et al.(1991),”Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」付番方式)、Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」付番方式)、ImMunoGenTics(IMGT)付番方式(Lefranc,M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999)、Lefranc,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)(「IMGT」付番方式)、及びHonegger&Pluckthun,J.Mol.Biol.309(2001)657-670(「AHo」付番)などに記載の、多くの周知の方式のいずれかを用いて決定される一定領域のアミノ酸配列のことである。例えば、Kabatの古典的なフォーマットでは、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基は、31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)として付番され、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基は、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)として付番される。Chothiaでは、VHのCDRアミノ酸残基は、26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)及び95-102(HCDR3)として付番され、VLのCDRアミノ酸残基は、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)として付番される。Kabat及びChothiaのCDR定義を組合わせると、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)と、ヒトVLのアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)と、からなる。IMGTでは、VHのCDRアミノ酸残基は、およそ26-35(HCDR1)、51-57(HCDR2)及び93-102(HCDR3)と付番され、VLのCDRアミノ酸残基は、およそ27-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)及び89-97(LCDR3)(「カバット」による付番)と付番される。IMGTでは、抗体のCDRは、IMGT/DomainGap Alignのプログラムを使用して決定することができる。本発明の文脈においては、特に言及されない限り、Honegger&Pluckthun(「AHo」)により提案された(Honegger&Pluckthun,J.Mol.Biol.309(2001)657-670)付番方式を用いる。
【0060】
更に、以下の残基は、AHo付番方式によるCDRとして定義される:
LCDR1(またCDR-L1と称する):L24-L42;
LCDR2(またCDR-L2と称する):L58-L72;
LCDR3(またCDR-L3と称する):L107-L138;
HCDR1(またCDR-H1と称する):H27-H42;
HCDR2(またCDR-H2と称する):H57-H76;
HCDR3(またCDR-H3と称する):H108-H138。
【0061】
念のため述べると、Honegger&Pluckthunによる付番方式は、天然に存在する抗体において、異なるVH及びVLサブファミリーにおいて、特にCDRにおいて見られる、長さにおける若干の増減、並びに配列中のギャップを説明するのに好都合である。したがって、所定の抗体可変ドメインでは、通常、1~149の全ての位置がアミノ酸残基により占められる訳ではない。
【0062】
抗原結合部分は、maxibody、minibody、intrabody、diabody、triabody、tetrabody、scDb-scFv、v-NAR及びビス-scFvに組み込んでもよい(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology,23,1126-36を参照)。例えばフイブロネクチンタイプIII(Fn3)(米国特許第6,703,199号参照、フィブロネクチンポリペプチドのmonobodyを記載)などのポリペプチドに基づく足場に、抗体の抗原結合部分を融合させてもよい。一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子に、補完的な軽鎖ポリペプチドと共に、抗原結合部分を組み込んで、一対の抗原結合領域を形成させてもよい(Zapata et al.,1995 Protein Eng.8(10):1057-1062;及び米国特許第5,641,870号)。
【0063】
本明細書中で使用する「結合特異性」なる用語は、1つの抗原決定基に対して反応し、異なる抗原決定基に対しては反応しない、個々の抗体の能力を意味する。本願明細書において使用する用語「特異的に結合する」又は「特異的である」とは、顕著な、及び再現性のある相互作用、例えば、標的と抗体との間の結合を指し、それは生体分子を含む不均一な分子集団の存在下における、標的の存在を決定づけるものである。例えば、それが標的(エピトープでありうる)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するより強い親和性、結合活性にて、該標的とより容易に、及び/又はより強い程度で結合する抗体である。「特異的結合」とは、その最も広義の意味では(また特に定義されない場合には)、例えば、公知技術の特異性アッセイ方法に従い決定される、目的とする標的と無関係な分子とを識別する抗体の能力を指す。かかる方法としては、限定されないが、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、SPR(表面プラズモン共鳴)試験及びペプチドスキャンなどが挙げられる。例えば、標準的なELISAアッセイを実施できる。スコアリングは、標準的な発色反応(例えば、過酸化水素を用いた、西洋ワサビペルオキシドを有する二次抗体とテトラメチルベンジジンとの反応)により実施されうる。特定のウェルにおける反応は、光学密度(例えば450nmにおける)により記録される。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は、約0.1のODであり、典型的な陽性反応は、約1のODでありうる。これは、陽性と陰性のスコア間の比率が10倍以上でありうることを意味する。更なる例としては、SPRアッセイを行うこともでき、それは、特異的な結合が、バックグラウンドとシグナルとの間で、10倍以上、好ましくは100倍以上の違いとなって指示されるものである。典型的には、結合特異性の決定は、単一の対照分子の使用でなく、約3~5個の無関係な分子(例えばスキムミルク、トランスフェリン等)を併用することにより行われる。本発明の抗体は、ヒトPDL1との結合特異性を有する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、特にSPRによる測定において、ヒトPDL1との結合特異性を有するが、ヒトPDL2とは結合しない。
【0064】
適切には、本発明の抗体は単離された抗体である。本明細書で用いられる用語「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない(例えば、PDL1と特異的に結合する単離された抗体は、PDL1以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)抗体のことを指す。しかしながら、PDL1と特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種由来のかかるPDL1分子)との交差反応性を有してもよい。したがって、一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトPDL1及びカニクイザル(別名Cynomolgusサル又は「Cynomolgus」)のPDL1との結合特異性を有する。さらに、単離された抗体は、他の細胞由来の材料及び/又は化学物質を実質的に含まないものであってもよい。
【0065】
適切には、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書中で使用する「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、同じ遺伝子源由来のアミノ酸配列と実質的に同一であるか、又はそれから誘導された抗体を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定の1つのエピトープとの結合特異性及び親和性、又は特定の複数のエピトープとの結合特異性及び親和性を示す。
【0066】
本発明の抗体は、限定されないが、キメラ及びヒト化されたものを包含する。
【0067】
用語「キメラ抗体」は、
(a)定常領域又はその部分が、改変され、置換され、又は交換されることにより、抗原結合部位(可変領域)が、異なる又は改変されたクラスの、エフェクター機能の、及び/若しくは種の定常領域と、又は完全に異なる分子(例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤など)と連結されて、新規な特性を付与されたキメラ抗体とされたもの、又は、
(b)可変領域又はその部分が、改変され、置換され、又は異なる若しくは改変された抗原特異性を有する可変領域と交換されたもの、
のいずれかの抗体分子である。例えば、マウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンの定常領域に置換することにより修飾することができる。ヒト定常領域による置換により、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比較し、ヒトにおける抗原性が低下すると共に、抗原を認識する際のその特異性が維持されうる。
【0068】
本明細書で用いられる「ヒト化」抗体は、ヒトにおいて免疫原性が低い一方、ヒト以外の抗体の反応性が維持された抗体である。これは例えば、ヒト以外のCDR領域を維持し、抗体の残りの部分(すなわち定常領域及び可変領域のフレームワーク部分)をそれらのヒト相対物に置換することにより得られる。更なるフレームワーク領域の修飾は、ヒトのフレームワーク配列内で行ってもよく、また、他の哺乳動物種の生殖細胞系から誘導されるCDR配列内で行ってもよい。本発明のヒト化抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基を(例えばインビトロでのランダム又は部位特異的な変異導入により、又はインビボでの体細胞突然変異により、又は安定性若しくは高産生を促進する保存的置換により)含めてもよい。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855,1984、Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65-92,1988、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536,1988、Padlan,Molec.Immun.,28:489-498,1991、及びPadlan,Molec.Immun.,31:169-217,1994を参照。他のヒト化技術の例としては、米国特許第5,766,886号に開示されるXoma技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される用語「組換えヒト化抗体」は、組換え手段により調製され、発現され、構築され又は単離される全てのヒト抗体を包含し、例えば、ヒト化抗体を発現するために形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトームから単離された抗体、並びに、ヒト免疫グロブリン遺伝子(他のDNAの塩基配列に対する配列)の全部又は一部のスプライシングを含むいずれかの他の手段により調製され、発現され、構築され又は単離された抗体、を包含する。
【0070】
「PDL1」という用語は、特に、UniProt ID番号Q9NZQ7を有するヒトPDL1のことを指し、配列番号63として本願明細書において表す。適切には、本発明の抗体はPDL1を標的とし、特に、UniProt ID番号Q9NZQ7で示すヒトPDL1であって、本願明細書において配列番号63として表すものを標的とする。適切には、本発明の抗体は、特に、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定したとき、ヒト及びカニクイザル(Macaca fascicularis)のPDL1を標的とし、好ましくはマウスPDL1と交差反応しない。適切には、本発明の抗体は、ヒトPDL1との結合特異性を有する。特に、本発明の抗体は、SPRにより測定したとき、ヒトPDL2と結合しない。
【0071】
本発明の抗体は、PDL1阻害剤である。「ブロッカー」又は「ブロッキング抗体」又は「阻害剤」又は「阻害抗体」又は「アンタゴニスト」又は「アンタゴニスト抗体」という用語は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減させる抗体を意味する。いくつかの実施形態では、ブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。本発明の抗体は、PDL1の、その結合パートナーとの結合能力を標的とし、低減し、阻害し、それによりPDL1の機能を妨げる。特に、本発明の抗体は、PDL1のPD-1との相互作用をブロックする。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、PDL1のPD-1及びB7-1との相互作用をブロックする。
【0072】
本願明細書において記載される本発明の抗体は、実施例に記載されるような単離されたヒト化モノクローナル抗体を包含するが、これに限定されない。かかる抗ヒトPDL1抗体の例は、表1に列挙される配列を有する抗体である。本願明細書において記載される抗体の作製及び特徴解析に関する更なる詳細は、実施例において記載する。
【0073】
ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、以下の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは、順番に、HCDR1、HCDR2及びHCDR3の3つの相補的決定領域を含み、
(b)前記VLは、順番に、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の3つの相補的決定領域を含む。
【0074】
本発明は、PDL1タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、PDL1タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVH CDRのいずれか1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸配列のVH CDRを有する。
【0075】
本発明はまた、PDL1タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本発明は、PDL1タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVL CDRのいずれか1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸配列のVL CDRを有する。
【0076】
本発明の他の抗体としては、変異したアミノ酸を含むが、PDL1タンパク質と特異的に結合し、表1に記載される配列で表されるCDR領域と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するCDR領域を有するものが包含される。一態様では、本発明の他の抗体としては、PDL1タンパク質と特異的に結合する変異体アミノ酸配列であって、表1に記載される配列で表されるCDR領域と比較し、1、2、3、4又は5つのアミノ酸のみが変異したCDR領域を有するものが包含される。
【0077】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における用語「同一の」又は「同一性」とは、2つ以上の配列又はサブ配列が同一であることを指す。核酸、ペプチド、ポリペプチド又は抗体配列に関する「パーセント(%)配列同一性」及び「ホモロジー」とは、特定の核酸、ペプチド又はポリペプチド配列のヌクレオチド又はアミノ酸残基との同一性を有する、候補配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージとして定義され、その際、配列のアラインメントを作成し、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性%を達成させており、また配列同一性の一部としていかなる保守的置換も考慮しないものである。アミノ酸配列同一性%を決定することを目的としたアラインメントは、種々の方法で行うことができ、それらは従来技術において当業者の技術の範囲内であり、例えば一般公開されているコンピュータソフトウェア(例えばBLAST、BLAST-2又はALIGNソフトウェア)を用いるものである。当業者はアラインメント算出のための適切なパラメータを決定することができ、その際、比較しようとする配列の完全長にわたり最大のアラインメントを達成するために必要なあらゆるアルゴリズムが含まれる。
【0078】
配列比較のため、典型的には、試験配列を比較しようとする対照配列として、1つの配列を用いる。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験及び対照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブ配列座標を割り当て、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを割り当てる。デフォルトプログラムパラメータを使用することもでき、又は、代替的なパラメータを割り当てることもできる。配列比較アルゴリズムは次に、プログラムパラメータに基づき、対照配列との比較における試験配列の配列同一性%を算出する。
【0079】
配列同一性及び配列類似性のパーセンテージを決定するのに適するアルゴリズムの2つの例として、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムが挙げられ、それらは、それぞれAltschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389-3402,1977、及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410,1990に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて一般公開されている。2つのアミノ酸配列間の同一性%は、E.Meyers及びW.Millerのアルゴリズムを使用して決定することもでき(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17,1988)、それは、PAM120ウエイト残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ及び4つのギャップペナルティを用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性%は、Needleman及びWunschアルゴリズム(J.Mol,Biol.48:444-453,1970)を使用して決定することができ、それはGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれ(www.gcg.comで入手可能)、Blossom 62マトリックス又はPAM250マトリックスと、16、14、12、10、8、6又は4つのギャップウエイト及び1、2、3、4、5又は6つの長さウエイトと、を用いる。
【0080】
用語「アミノ酸」は、天然及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と類似の方法で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸擬態物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるもの、並びに、事後的に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO‐ホスホセリンを指す。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーに関連する場合には本願明細書において交換可能に用いられる。該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸を模倣した人工的化学的擬態物であるアミノ酸ポリマーにも、また天然のアミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーにも適用される。特に明記しない限り、特定のポリペプチド配列には、その保守的に修飾された変異体が暗に包含される。
【0081】
本発明は、ヒトPDL1との結合特異性を有する単離された抗体を提供し、該抗体は、
(a)配列番号1、4、5、8、11、32、35、36、39及び42のいずれか1つから選択される、好ましくは配列番号1又は32の、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR1(HCDR1)と、
(b)配列番号2、6、9、12、33、37、40及び43のいずれかから選択される、好ましくは配列番号2又は33の、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR2(HCDR2)と、
(c)配列番号3、7、10、13、34、38、41及び44のいずれかから選択される、好ましくは配列番号3又は34の、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR3(HCDR3)と、
(d)配列番号17、20、23、48、51及び54のいずれかから選択される、好ましくは配列番号17又は48の、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR1(LCDR1)と、
(e)配列番号18、21、24、49、52及び55のいずれかから選択される、好ましくは配列番号18又は49の、より好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR2(LCDR2)と、
(f)配列番号19、22、25、50、53及び56のいずれかから選択される、好ましくは配列番号19又は50の、より好ましくは配列番号19のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)と、
を含む。
【0082】
適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、
(a)配列番号1、4、5、8、11、32、35、36、39及び42のいずれか1つから選択される、好ましくは配列番号1又は32の、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR1(HCDR1)と、
(b)配列番号2、6、9、12、33、37、40及び43のいずれかから選択される、好ましくは配列番号2又は33の、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR2(HCDR2)と、
(c)配列番号3、7、10、13、34、38、41及び44のいずれかから選択される、好ましくは配列番号3又は34の、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、重鎖可変領域CDR3(HCDR3)と、
(d)配列番号17、20、23、48、51及び54のいずれかから選択される、好ましくは配列番号17又は48の、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR1(LCDR1)と、
(e)配列番号18、21、24、49、52及び55のいずれかから選択される、好ましくは配列番号18又は49の、より好ましくは配列番号18のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR2(LCDR2)と、
(f)配列番号19、22、25、50、53及び56のいずれかから選択される、好ましくは配列番号19又は50の、より好ましくは配列番号19のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有する配列を含む、好ましくはそれからなる、軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)と、
を含む。
【0083】
一実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)それぞれ、配列番号1、2及び3の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(b)それぞれ、配列番号4、6及び7の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列
、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(c)それぞれ、配列番号5、6及び7の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(d)それぞれ、配列番号8、9及び10の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(e)それぞれ、配列番号11、12及び13の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号23、24及び25の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(f)それぞれ、配列番号32、33及び34の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(g)それぞれ、配列番号35、37及び38の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(h)それぞれ、配列番号36、37及び38の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53の、LLCDR1、LCDR2及びCDR3配列と、
(i)それぞれ、配列番号39、40及び41の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
(j)それぞれ、配列番号42、43及び44の、HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号54、55及び56の、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、
を含む。
【0084】
一実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列と、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、を含む。他の実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列と、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、を含む。
【0085】
適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)それぞれ、配列番号1、2及び3と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(b)それぞれ、配列番号4、6及び7と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(c)それぞれ、配列番号5、6及び7と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(d)それぞれ、配列番号8、9及び10と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(e)それぞれ、配列番号11、12及び13と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号23、24及び25と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(f)それぞれ、配列番号32、33及び34と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(g)それぞれ、配列番号35、37及び38と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(h)それぞれ、配列番号36、37及び38と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(i)それぞれ、配列番号39、40及び41と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(j)それぞれ、配列番号42、43及び44と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号54、55及び56と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
を含む。
【0086】
一実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号1、2及び3と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列と、
それぞれ、配列番号17、18及び19と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、を含む。他の実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号32、33及び34と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列と、
それぞれ、配列番号48、49及び50と60以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一性を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列と、を含む。
【0087】
適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号17のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号18のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3と、
を含む。適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号1に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR1と、
(b)配列番号2に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR2と、
(c)配列番号3に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR3と、
(d)配列番号17に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR1と、
(e)配列番号18に対する少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR2と、
(f)配列番号19に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR3と、
を含む。
【0088】
更なる実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号7のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号20のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号21のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号22のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3と、
を含む。適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号4又は配列番号5に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR1と、
(b)配列番号6に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR2と、
(c)配列番号7に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR3と、
(d)配列番号20に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR1と、
(e)配列番号21に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR2と、
(f)配列番号22に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR3と、
を含む。
【0089】
適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号32のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号33のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号34のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号48のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号49のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号50のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3と、
を含む。適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号32に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR1と、
(b)配列番号33に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR2と、
(c)配列番号34に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR3と、
(d)配列番号48に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR1と、
(e)配列番号49に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR2と、
(f)配列番号50のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR3と、
を含む。
【0090】
更なる実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR1と、
(b)配列番号37のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR2と、
(c)配列番号38のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、HCDR3と、
(d)配列番号51のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR1と、
(e)配列番号52のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR2と、
(f)配列番号53のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、LCDR3と、
を含む。適切には、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、
(a)配列番号35又は配列番号36に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR1と、
(b)配列番号37に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR2と、
(c)配列番号38に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるHCDR3と、
(d)配列番号51に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR1と、
(e)配列番号52に対する60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR2と、
(f)配列番号53のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるLCDR3と、
を含む。
【0091】
更なる実施形態では、本発明は、PDL1(例えばヒトPDL1タンパク質)と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、VHドメイン及びVLドメインを含む。本発明の文脈において、用語「VH」(可変重鎖)、「VL」(可変軽鎖)、「Vκ」及び「Vλ」は、配列同一性及びホモロジーに従い分類される、抗体の重鎖及び軽鎖配列のファミリーを指す。例えばBLOSUMなどのホモロジー検索マトリックスを使用した配列相同性の決定方法(Henikoff,S.& Henikoff,J.G.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)10915-10919)、及びホモロジーによる配列のグループ化方法は、当業者に周知である。VH、Vκ及びVλの様々なサブファミリーは、例えばKnappik et al.,J.Mol.Biol.296(2000)57-86に示すように同定することができ、それによると、VHをVH1A、VH1B及びVH2からVH6に分類し、VκをVκ1からVκ4に分類し、VλをVλ1からVλ3に分類する。インビボでは、抗体のVκ鎖、Vλ鎖及びVH鎖は、それぞれ、生殖細胞系κ鎖のV及びJ部位、生殖細胞系λ鎖のV及びJ部位、並びに重鎖のV、D及びJ部位、のランダムな再編成の結果である。所定の抗体可変鎖がいずれのサブファミリーに属するかは、対応するV部位によって、特にフレームワーク領域FR1からFR3により決定される。したがって、本発明において、フレームワーク領域HFR1からHFR3の特定のセットのみによって特徴づけられるいかなるVH配列も、例えば、重鎖生殖細胞系のJ部位の1つに由来するHFR4配列、又は再編成されたVH配列に由来するHFR4配列など、いかなるHFR4配列と組み合わされてもよい。
【0092】
適切には、本発明は、PDL1(例えばヒトPDL1タンパク質)と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、VH1A、VH1B、VH3又はVH4を含む。
【0093】
VH1ファミリーに属するVHの具体例は、配列番号15で表される。特に、配列番号15に由来するフレームワーク領域FR1からFR4は、VH1ファミリーに属する(表1の、太字以外でマークされる領域)。適切には、本明細書で用いられるVH1ファミリーに属するVHは、配列番号15のFR1からFR4と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有する、FR1からFR4を含むVHである。
【0094】
VH3ファミリーに属するVHの具体例は、配列番号16で表される。特に、配列番号16に由来するフレームワーク領域FR1からFR4は、VH3ファミリーに属する(表1の、太字以外でマークされる領域)。最適には、本明細書で用いられるVH3ファミリーに属するVHは、配列番号16のFR1からFR4と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有する、FR1からFR4を含むVHである。
【0095】
VH4ファミリーに属するVHの具体例は、配列番号14で表される。特に、配列番号14に由来するフレームワーク領域FR1からFR4は、VH4ファミリーに属する(表1の、太字以外でマークされる領域)。最適には、本明細書で用いられるVH4ファミリーに属するVHは、配列番号14のFR1からFR4と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有する、FR1からFR4を含むVHである。
【0096】
VH配列の代替物の例は、Knappik et al.,J.Mol.Biol.296(2000)57-86に記載されている。
【0097】
一実施形態では、本発明の単離された抗体は、VH4又はVH3ドメインを含む。
【0098】
適切には、本発明は、PDL1(例えばヒトPDL1タンパク質)と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3フレームワーク、好ましくはVκ1フレームワークFR1から3と、VκFR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4と、を含む。適切なVκ1フレームワークFR1から3を、配列番号26に記載する(表1では、FR領域を太字以外でマークする)。適切なVκ1フレームワークFR1から3は、FR1から3に対応し、配列番号26に由来するアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む(表1では、FR領域は太字以外でマークする)。
【0099】
代替的なVκ1配列の例、並びにVκ2、Vκ3及びVκ4配列の例は、Knappik et al.,J.Mol.Biol.296(2000)57-86に記載されている。
【0100】
適切なVλ FR4は、配列番号64から配列番号70で表される。好ましい実施形態では、Vλ FR4は、配列番号64又は65で表され、より好ましくは、Vλ FR4は、配列番号64で表される。一実施形態では、本発明は、PDL1(例えばヒトPDL1タンパク質)と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、配列番号64から配列番号70のいずれかから選択される、好ましくは配列番号64又は65の、より好ましくは配列番号64のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。
【0101】
したがって、一実施形態では、本発明は以下を含む抗体を提供する:
(i)以下のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列:
a.それぞれ、配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
b.それぞれ、配列番号35、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、又は
c.それぞれ、配列番号36、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列、及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3のFR1からFR3、好ましくはVκ1のFR1からFR3と、
VκFR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4及びVλ FR4、特に配列番号64から配列番号70のいずれかから選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号64から配列番号70のいずれかで表されるVλ FR4、より好ましくは配列番号64で表されるVλ FR4、から選択される、フレームワークFR4と、
を含むVLフレームワークを含むVLドメイン。
【0102】
他の実施形態では、本発明は、ヒトPDL1との結合特異性を有する抗体を提供し、それは以下を含む:
(i)それぞれ、配列番号5、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(ii)VH1A、VH1B、VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列、好ましくはVH1A又はVH1Bドメインフレームワーク配列、及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3のFR1からFR3、好ましくはVκ1のFR1からFR3と、
VκFR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4及びVλ FR4、特に配列番号64から配列番号70のいずれかから選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号64から配列番号70のいずれかのアミノ酸配列を含むVλ FR4、より好ましくは配列番号64で表されるVλ FR4、から選択される、フレームワークFR4と、
を含むVLフレームワークを含むVLドメイン。
【0103】
具体的実施形態では、本発明は、以下を含む抗体を提供する:
(i)それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列、好ましくはVH4ドメインフレームワーク配列、及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3のFR1からFR3、好ましくはVκ1のFR1からFR3と、
VκFR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4及びVλ FR4、特に配列番号64から配列番号70のいずれかから選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号64から配列番号70のいずれかで表されるVλ FR4、より好ましくは配列番号64で表されるVλ FR4、から選択される、フレームワークFR4と、
を含むVLフレームワークを含むVLドメイン。
【0104】
好ましい具体的実施形態では、本発明は、以下を含む抗体を提供する:
(i)それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列、好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列、及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3のFR1からFR3、好ましくはVκ1のFR1からFR3と、
VκFR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4及びVλ FR4、特に配列番号64から配列番号70のいずれかから選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号64から配列番号70のいずれかで表されるVλ FR4、より好ましくは配列番号64で表されるVλ FR4、から選択される、フレームワークFR4と、
を含むVLフレームワークを含むVLドメイン。
【0105】
一実施形態では、本発明は、ヒトPDL1との結合特異性を有し、
(i)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3、
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1からFR3、特にヒトVκ1フレームワーク領域FR1からFR3、
(iii)
(a)FR4のためのヒトVλ生殖細胞系の配列、特に配列番号64から70から選択される、好ましくは配列番号64のVλ生殖細胞系の配列、及び
(b)配列番号64から配列番号70のいずれかから選択される、好ましくは配列番号64の、アミノ酸配列を含む、FR4に最も近いヒトVλ生殖細胞系配列と比較し、1つ又は2つの変異、特に1つの変異を有するVλベースの配列、
から選択されるFR4、
を含むVLを含む抗体を提供する。
【0106】
本発明は、PDL1(例えばヒトPDL1タンパク質)と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVHドメインを含む。
【0107】
本発明はまた、PDL1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えばCDRでない配列)の変異(変異の各種の非限定的な例として、追加、置換又は削除)は、約10アミノ酸以下である。
【0108】
本発明はまた、PDL1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えばCDRでない配列)の変異(変異の各種の非限定的な例として、追加、置換又は削除)は、約20アミノ酸以下である。
【0109】
本発明の他の抗体としては、変異したアミノ酸を含むが、PDL1と特異的に結合し、表1に記載される配列で表されるVH領域と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するVH領域を有するものが包含される。
【0110】
本発明は、PDL1タンパク質と特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVLドメインを含む。
【0111】
本発明はまた、PDL1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えばCDRでない配列)の変異(変異の各種の非限定的な例として、追加、置換又は削除)は、約10アミノ酸以下である。
【0112】
本発明はまた、PDL1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、表1に列挙されるVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えばCDRでない配列)の変異(変異の各種の非限定的な例として、追加、置換又は削除)は、約20アミノ酸以下である。
【0113】
本発明の他の抗体としては、変異したアミノ酸を含むが、PDL1と特異的に結合し、表1に記載される配列で表されるVL領域と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するVL領域を有するものが包含される。
【0114】
本発明はまた、PDL1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、前記抗体は、
配列番号14、15、16、45、46及び47からなる群から選択される、好ましくは配列番号14又は16の、より好ましくは配列番号16のアミノ酸配列と、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号26、27、57及び58からなる群から選択される、好ましくは配列番号26又は27の、より好ましくは配列番号27のアミノ酸配列と、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む。
【0115】
一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトPDL1との結合特異性を有し、
配列番号14、15、16、45、46及び47からなる群から選択されるいずれかの、好ましくは配列番号14又は16の、より好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号26、27、57及び58からなる群から選択されるいずれかの、好ましくは配列番号26又は27の、より好ましくは配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む。
【0116】
一実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
(a)それぞれ、配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号14と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(b)それぞれ、配列番号5、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号15と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(c)それぞれ、配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号16と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列であって、好ましくは、G56A及びY105F変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号27と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列であって、好ましくは、S9A及びA51P変異(AHo付番)を含む、前記VL、
(d)それぞれ、配列番号35、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号45と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(e)それぞれ、配列番号36、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号46と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列であって、好ましくは、V2S、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V及びY105F変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号58と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列であって、好ましくは、I2F、M4L及びA51P変異(AHo付番)を含む、前記VL、
又は
(f)それぞれ、配列番号35、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号47と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一のVH配列であって、好ましくは、V25A及びI44V変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列。
【0117】
一実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
(a)それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号14と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(b)それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号15と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(c)それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号16と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列であって、好ましくは、G56A及びY105F変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号27と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列であって、好ましくは、S9A及びA51P変異(AHo付番)を含む、前記VL、
(d)それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号45と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、
(e)それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号46と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列であって、好ましくは、V2S、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V及びY105F変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号58と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列であって、好ましくは、I2F、M4L及びA51P変異(AHo付番)を含む、前記VL、
又は
(f)それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号47と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一のVH配列であって、好ましくは、V25A及びI44V、G56A、V82K及びF89V変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列。
【0118】
好ましい実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号16と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列であって、好ましくは、G56A及びY105F変異(AHo付番)を含む、前記VH、並びに
配列番号27と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列であって、好ましくは、S9A及びA51P変異(AHo付番)を含む、前記VL。
【0119】
更なる実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、以下を含む:
(a)配列番号14のVH配列及び配列番号26のVL配列、
(b)配列番号15のVH配列及び配列番号26のVL配列、
(c)配列番号16のVH配列及び配列番号27のVL配列、
(d)配列番号45のVH配列及び配列番号57のVL配列、
(e)配列番号46のVH配列及び配列番号58のVL配列、又は
(f)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列。好ましい実施形態では、ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、配列番号14のVH配列及び配列番号26のVL配列を含む。より好ましい実施形態では、ヒトPDL1のための結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、配列番号16のVH配列及び配列番号27のVL配列を含む。
【0120】
一実施形態では、PDL1と特異的に結合する抗体は、表1に記載される抗体である。一実施形態では、PDL1と特異的に結合する抗体は、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号60、配列番号61及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PDL1と特異的に結合する抗体は、配列番号29又は配列番号30又は配列番号31、好ましくは配列番号29、より好ましくは配列番号31で表される。一実施形態では、PDL1と特異的に結合する抗体は、配列番号60又は配列番号61又は配列番号62、好ましくは配列番号60、より好ましくは配列番号62で表される。
【0121】
ヒトPDL1との結合特異性を有する本発明の他の抗体は、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が変異したそれらを含むが、表1に記載される配列と、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の同一性を有する。一実施形態では、それは表1に記載されている可変領域の配列と比較したとき、1、2、3、4又は5個のアミノ酸のみが可変領域において変異している変異アミノ酸配列を含むが、実質的に同じ活性が維持されている。本明細書で用いられる用語「実質的に同じ活性」とは、親抗体において測定された活性、例えば本発明の抗体、特に表1に記載される本発明の抗体と比較し、実質的に、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は100%以上、又は110%以上、又は120%以上、又は130%以上、又は140%以上、又は150%以上、又は160%以上、又は170%以上、又は180%以上、又は190%以上、例えば多くとも200%同等の活性により示される活性のことを指す。
【0122】
これらの抗体が各々、PDL1と結合することができ、その抗原結合特異性が主にCDR1、2及び3の領域により提供される限りにおいて、VH CDR1、2及び3の配列、並びにVL CDR1、2及び3の配列は、「混合及びマッチング」することができる(すなわち、異なる抗体由来のCDRを混合及びマッチングすることができる)が、但し、各抗体は、VH CDR1、2及び3、並びにVL CDR1、2及び3を含まなければならず、また本発明の他のPDL1-結合分子を形成させるものでなければならない。かかる「混合及びマッチングした」PDL1-結合抗体は、周知の結合実験であって、実施例にも記載されているもの(例えばELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列が混合及びマッチングされるとき、特定のVH配列に由来するCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似するCDR配列(複数含む)と置換されるべきである。同様に、VL CDR配列が混合及びマッチングされるとき、特定のVL配列に由来するCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似するCDR配列(複数含む)と置換されるべきである。当業者にとり自明であるように、新規なVH及びVL配列は、本発明のモノクローナル抗体に関して本願明細書に示されるCDR配列から、構造的に類似する配列を有するように1つ以上のVH及び/又はVL CDR領域配列を変異させることにより作製することができる。
【0123】
また別の実施形態では、本発明は、表1に記載されている配列と相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体を提供し、前記抗体は、PDL1と結合し、また表1に記載されるそれらの抗体の所望の機能的特性が維持されている。
【0124】
例えば、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含んでいる単離されたモノクローナル抗体を提供し、
前記重鎖可変領域は、配列番号14、15、16、45、46及び47からなる群から選択される、好ましくは配列番号14又は16、より好ましくは配列番号16のアミノ酸配列と80%以上、90%以上又は95%以上同一のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号26、27、57及び58からなる群から選択される、好ましくは配列番号26又は27、より好ましくは配列番号27のアミノ酸配列と80%以上、90%以上又は95%以上同一のアミノ酸配列を含み、
前記抗体は、ヒトPDL1にタンパク質と特異的に結合する。
【0125】
一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、表1に記載される配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であってもよい。一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸のみのアミノ酸置換を除き同一であってもよい。
【0126】
一実施形態では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を有し、
これらのCDR配列の1つ以上は、本願明細書において記載される抗体又はその保存的修飾に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記抗体は、本発明のPDL1-結合抗体の所望の機能的特性が維持されている。
【0127】
用語「保存的に修飾された変異体」又は「保存的な変異体」は、アミノ酸及び核酸配列に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一の若しくは基本的に同一のアミノ酸配列をコードすることを指すか、又は、核酸がアミノ酸配列をコードしない核酸の場合には、基本的に同一の配列のことを指す。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、いずれかの所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、いずれもアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定されるいかなる位置においても、コードされるポリペプチドを変化させずに、コドンを記載される対応するいずれかのコドンに変更することができる。かかる核酸変異は「サイレント変異」であり、それは保存的に修飾される変異の1つの種類である。ポリペプチドをコードする本願明細書におけるあらゆる核酸配列は、あらゆる使用可能な核酸のサイレント変異を記載するものである。当業者であれば、核酸中の各コドン(但し、AUG(通常メチオニンの唯一のコドン)及びTGG(通常トリプトファンの唯一のコドン)を除く)が、機能的に同一の分子の産生のために修飾できることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載されている各配列に暗示的に存在する。
【0128】
ポリペプチド配列に関する「保存的に修飾された変異体」又は「保存的な変異体」には、化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす、ポリペプチド配列への個々の置換、削除又は追加が包含される。機能的に同等のアミノ酸をもたらす保存的置換の表が公知である。かかる保守的に修飾された変異体は、それに加えて、本発明の多形性変異体、種間ホモログ及びアレルであってもよく、それらを排除するものではない。以下の8つのグループは、相互に保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)(Creighton,Proteins(1984)を参照)。一実施形態では、「保存的な配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響を及ぼさないか又は変化させないアミノ酸修飾を指すために用いられる。
【0129】
したがって、本発明は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含むか又はそれからなる、単離されたモノクローナル抗体を提供し、
重鎖可変領域CDR1は、配列番号1、4、5、8、11、32、35、36、39及び42のいずれかから選択される、好ましくは配列番号1又は32の、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列、又はそれらの保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
重鎖可変領域CDR2は、配列番号2、6、9、12、33、37、40及び43のいずれかから選択される、好ましくは配列番号2又は33の、より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列、又はそれらの保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
重鎖可変領域CDR3は、配列番号3、7、10、13、34、38、41及び44のいずれかから選択される、好ましくは配列番号3又は34の、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列、又はその保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
軽鎖可変領域CDR1は、配列番号17、20、23、48、51及び54のいずれかから選択される、好ましくは配列番号17又は48の、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列、又はその保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
軽鎖可変領域CDR2は、配列番号18、21、24、49、52及び55のいずれかから選択される、好ましくは配列番号18又は49の、より好ましくは配列番号18のアミノ酸配列、又はその保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
軽鎖可変領域CDR3は、配列番号19、22、25、50、53及び56のいずれかから選択される、好ましくは配列番号19又は50の、より好ましくは配列番号19のアミノ酸配列、又はその保存的な変異体を含み、好ましくはそれからなり、
該抗体は、PDL1と特異的に結合し、PD-1/PDL1相互作用をブロックすることができる。
【0130】
一実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、これらの配列の1つ以上は、本願明細書において記載される抗体又はその保存的な修飾に基づく特定のアミノ酸配列を有し、該抗体は、本発明のPDL1-結合抗体の所望の機能的特性が保持される。したがって、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、哺乳動物細胞における発現のために最適化された単離されたモノクローナル抗体を提供し、
該重鎖可変領域は、配列番号14、15、16、45、46及び47のいずれかから選択される、好ましくは配列番号14又は16の、好ましくは配列番号16のアミノ酸配列、及びその保存的な修飾配列を含み、
該軽鎖可変領域は、配列番号26、27、57及び58のいずれかから選択される、好ましくは配列番号26又は27の、好ましくは配列番号27のアミノ酸配列、及びその保存的な修飾配列を含み、
該抗体は、PDL1と特異的に結合し、PD-1/PDL1相互作用をブロックすることができる。
【0131】
一実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化された完全長重鎖配列及び完全長軽鎖配列を有し、これらの配列の1つ以上は、本願明細書において記載される抗体又はその保存的な修飾に基づく特定のアミノ酸配列を有し、該抗体は、本発明のPDL1-結合抗体の所望の機能的特性が維持されている。
【0132】
本明細書において、用語「最適化された」とは、産生細胞又は生物(一般に、例えば真核細胞ピキア属の細胞、チャイニーズ=ハムスター卵巣細胞(CHO)又はヒト細胞)において好ましいコドンを用いてアミノ酸配列をコードするよう、ヌクレオチド配列が改変されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、完全に、又は可能な限り、「親の」配列として知られる当初の開始ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を保持するよう加工される。本願明細書において、最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するよう加工されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も、本発明においては想起される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は、最適化されたものとも呼ばれる。
【0133】
他のタイプの可変領域の修飾は、「親和性成熟」として知られるVH及び/又はVLのCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることにより、目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改善することである。変異(複数含む)の導入は、部位特異的変異導入又はPCRにより媒介される変異導入により行うことができ、それによる、抗体結合に対する効果、又は他の目的の機能的特性は、本願明細書に記載され、実施例に例示されるインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価できる。(上記のような)保存的な修飾を導入することもできる。変異は、アミノ酸置換、追加又は削除であってもよい。更に、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ又は、5つの残基のみを改変する。
【0134】
「親和性成熟された」抗体は、かかる改変を有さない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、1つ以上の可変ドメインにおける1つ以上の改変を有するものである。一実施形態では、親和性成熟された抗体は、標的抗原に対するナノモル又はピコモル単位の親和性を有することもある。親和性成熟された抗体は、周知の手順により作製される。例えば、Marks et al,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH-及びVL-ドメインのシャフリングによる親和性成熟を記載する。超可変領域(「HVR」)及び/又はフレームワーク残基のランダムな変異導入は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Jackson et al,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)に記載される。
【0135】
一実施形態では、本発明は、G56A及びY105F変異を含み、特に配列番号16で表されるアミノ酸配列を含むVH3と、好ましくは、S9Aを含むVL、A51P変異を含み、特に配列番号27で表されるアミノ酸配列と、を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
【0136】
一実施形態では、本発明の「親和性成熟された」抗体は、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V変異、特に配列番号47で表されるアミノ酸配列を含むVH4と、好ましくは、配列番号57で表されるアミノ酸配列を含むVLと、を含む。更に別の実施形態では、本発明の「親和性成熟された」抗体は、V2S、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V、Y105F変異、特に配列番号46で表されるアミノ酸配列を含むVH4と、I2F、M4L、A51P変異、特に配列番号58で表されるアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0137】
本発明の抗体は更に、開始材料として、本願明細書において示される1つ以上のVH及び/又はVL配列を有する抗体を、修飾された抗体への加工に用いて調製することができ、該修飾された抗体は、開始抗体よりも改変された特性を有しうる。抗体の加工は、可変領域(すなわちVH及び/又はVL)の一方又は両方、例えば1つ以上のCDR領域及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより行うことができる。更に、又はその代わりに、定常領域内の残基を修飾することにより抗体を加工し、例えば抗体のエフェクター機能を改変することもできる。
【0138】
行いうる可変領域の加工の1つとして、CDRグラフトが挙げられる。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基により、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間で多様性を有する。CDR配列がほとんどの抗体-抗原相互作用の原因となるため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に、特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を融合させた発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能となる(例えば、Riechmann,L.et al.,1998 Nature 332:323-327、Jones,P.et al.,1986 Nature 321:522-525、Queen,C.et al.,1989 Proc.Natl.Acad.,U.S.A.86:10029-10033、米国特許第5,225,539号(Winter)、並びに米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号及び第6,180,370号(Queen et al.))。
【0139】
かかるフレームワーク配列は、公的DNAデータベース、又は生殖細胞系の抗体の遺伝子配列や再編成された抗体配列を記載する公知文献から取得することが可能である。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域の遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseとしてインターネットで利用可能)、並びに、Kabat,E.A.,et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Tomlinson,I.M.,et al.,1992 J.fol.Biol.227:776-798、及びCox,J.P.L.et al.,1994 Eur.J Immunol.24:827-836に存在し、その開示内容を参照により本願明細書に援用する。例えばヒト重鎖及び軽鎖可変領域の遺伝子及び再編成された抗体配列のための生殖細胞系DNA配列は、「IMGT」データベースに存在する(www.imgt.orgとしてインターネットで入手可能、Lefranc,M.P.et al.,1999 Nucleic Acids Res.27:209-212、これらの開示内容を参照により本願明細書に援用する)。
【0140】
本発明の抗体に用いられるフレームワーク配列の例としては、本発明の選択された抗体により用いられるフレームワーク配列と構造的に類似するもの、例えば本発明のモノクローナル抗体により用いられるコンセンサス配列及び/又はフレームワーク配列が挙げられる。VH CDR1、2及び3配列、並びにVL CDR1、2及び3の配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子に存在するのと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトすることもでき、又は、生殖細胞系配列と比較し、1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にCDR配列をグラフトすることもできる。例えば特定の例としては、抗体の抗原結合能力を維持する又は強化するために、フレームワーク領域中の残基を変異させることが有用であることが知られている(例えば、米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号及び第6,180,370号明細書(Queen et al)を参照)。
【0141】
得られるポリペプチドがPDL1に特異的に結合する1つ以上の結合領域を含む限り、多種多様な抗体/イムノグロブリンのフレームワーク又は足場を使用できる。かかるフレームワーク又は足場としては、ヒト免疫グロブリン、その抗原結合性断片の5つの主なイディオタイプを含むものや、他の動物種のイムノグロブリン、好ましくはヒト化された態様のそれらを含むものが挙げられる。
【0142】
一態様では、本発明は、本発明のCDRをグラフト化できる非イムノグロブリン足場を用いる、非イムノグロブリンベースの抗体の産生方法に関する。標的PDL1タンパク質に対する特異的な結合領域を含む限り、公知の又は将来開発されうる非イムノグロブリンフレームワーク及び足場を使用できる。公知の非イムノグロブリンフレームワーク又は足場としては、限定されないが、フィブロネクチン(Conpound Therapeutics社、ウォルサム、マサチューセッツ)、アンキリン(Molecular Partners AG、チューリッヒ、スイス)、リポカリン(Pieris Proteolab AG、Freising、ドイツ)、小分子免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals社、シアトル、ワシントン)、maxybody(Avidia社、マウンテンビュー、カリフォルニア)、プロテインA(Affibody AG、スウェーデン)及びアフィリン(affilin)(γ-クリスタリン又はユビキチン)(Scil Proteins社、ハレ、ドイツ)が挙げられる。
【0143】
適切には、本発明の抗体は、PDL1と特異的に結合し、以下の1つ以上のパラメータにより特徴づけられる:
(i)特に表面プラズモン共鳴(SPR)により測定したとき、ヒトPDL1に対して、10nM未満、特に5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、特に100pM未満、好ましくは50pM未満、より好ましくは10pM未満、より好ましくは5pM未満の解離定数(KD)で結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(ii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-3-1以下、10-4-1以下、又は10-5-1以下のKoffで結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(iii)SPRにより測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-1-1以上、10-1-1以上、10-1-1以上、又は10-1-1以上のKonで結合し、特に、前記抗体がscFvである、
(iv)カニクイザル(Cynomolgus)PDL1との交差反応性を有し、特に、表面プラズモン共鳴により測定したとき、カニクイザルPDL1に対する5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、特に100pM未満、好ましくは10pM未満のKDで結合し、特に、前記抗体がscFvであり、特に、表面プラズモン共鳴により測定したとき、マウスPDL1との交差反応性を有さず、及び/又は
(v)特に、SPRにより測定したとき、ヒトPDL2と結合しない。
【0144】
本明細書中で用いる「親和性」という用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原との間の相互作用の強さを意味する。各抗原性部位の範囲内で、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位で弱い非共有結合力により抗原と相互作用し、相互作用が多くなる程、親和性はより強くなる。
【0145】
「結合親和性」は、広義には、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との非共有結合的な相互作用の総計としての強さのことを指す。特に明記しない限り、本願明細書において用いられる「結合親和性」、「~に結合する」、「~と結合する」又は「~との結合」とは、結合対の構成要素(例えば抗体断片及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYとの親和性は通常、解離定数(K)により表することができる。親和性は公知技術の一般的な方法により測定することができ、本願明細書において記載される方法が含まれる。低い親和性の抗体は通常、抗原との結合が遅く、かつ解離が迅速である傾向がある一方、高い親和性の抗体は通常、抗原との結合が迅速であり、かつ長く結合を維持する傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が公知であり、そのいずれかを、本発明の課題解決のために用いることができる。結合親和性(すなわち結合の強さ)を測定するための特定の例示的な実施形態を、以下に記載する。
【0146】
本明細書で用いられる用語「Kassoc」、「Ka」又は「Kon」とは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すものとする一方、本明細書で用いられる用語「Kdis」、「Kd」又は「Koff」とは、特定の抗体-抗原相互作用の分離速度を指すものとする。一実施形態では、本明細書で用いられる用語「KD」とは、解離定数を指すものとし、それはKdとKaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。本発明の「KD」又は「KD値」又は「K」又は「K値」は、一実施形態では、MASS-1 SPR装置(Sierra Sensors社)を用いた表面-プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。親和性を測定する際、Fc領域に特異的な抗体を、標準的なアミン-カップリング手順を用い、センサーチップ(SPR-2 Affinity Sensor、High Capacity Amine、Sierra Sensors社)にウサギIgG(Bethyl Laboratories社、カタログ番号A120-111A)を固定化する。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体を、固定化した抗ウサギIgG抗体により捕捉する。B細胞上清中の最小のIgG濃度は、充分な捕捉を行わせるために必要である。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトPDL1(Peprotech社)を90nMの濃度でフローセルに3分間にわたり注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の分離を5分間にわたり行わせる。各注入サイクルの後、表面を10mMのグリシン-HClを2回注入して再生する。見かけの分離(kd)及び会合(ka)定数、並びに見かけの分離平衡定数(KD)は、1対1のラングミュア結合モデルを用い、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors社)により算出し、Chiの相対値(外挿された検体の最大結合レベルで正規化したChi)に基づき、フィットの品質をモニターし、それをカーブフィッティングの品質保持のための指標とする。Chiの該値が小さいとき、1対1のラングミュア結合モデルに対するフィッティングの正確性が高いことを意味する。リガンド結合における反応単位(RU)が、抗体捕捉のRUの2%以上である場合、結果は有効であると判断される。抗体捕捉のRUに対し2%未満のリガンド結合のRUを示すサンプルは、捕捉された抗体へのPDL1の特異的な結合がないことを示すものと考えられる。平衡解離定数(K)は、比率koff/konとして算出される。例えばChen et al,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照。
【0147】
適切には、本発明のPDL1に対する抗体の親和性は、PDL1のPD-1に対する親和性より高い場合がある。PD-1に対するPDL1の親和性と比較しPDL1抗体の親和性が高いことは、予め形成されたPD-1/PDL1複合体を解離させる又は中和するために特に有用でありうることはいうまでもない。一実施形態では、本発明のPDL1抗体は、PD-1/PDL1相互作用を中和する。他の実施形態では、本発明のPDL1抗体は、B7-1/PDL1相互作用を中和する。適切には、PDL1に対する本発明のPDL1抗体の親和性は、PD-1に対するアベルマブの親和性と同等又は高くてもよい。一実施形態では、本発明のPDL1抗体は、アベルマブに等しい又は高い力価でPD-1/PDL1相互作用を中和する。更に別の実施形態では、本発明のPDL1抗体は、アベルマブに等しい又は高い力価でB7-1/PDL1相互作用を中和する。抗体の結合親和性は、例えば解離定数(KD)により決定されうる。強い親和性は低いKDにより表され、一方、弱い親和性は高いKDにより表される。
【0148】
したがって、適切な実施形態では、本発明の抗体は、1~50,000pM、1~40,000pM、1~30,000pM、1~20,000pM、1~10,000pM、1~5,000pM、1~2,500pM、1~1,000pM、1~750pM、1~500pM、1~250pM、1~100pM、1~50pM、1~10pMのKDを有しうる。適切な実施形態では、本発明の抗体は、特にSPRで測定したとき、約50nM未満、約45nM未満、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満、100pM未満、10pM未満又は5pM未満のKDを有してもよく、特に前記抗体はscFvである。適切には、特にSPRにより測定したとき、本発明の抗体は5nM未満のKDを有する。適切には、特にSPRにより測定したとき、本発明の抗体は1nM未満のKDを有する。適切には、特にSPRにより測定したとき、本発明の抗体は100pM未満のKDを有する。適切には、特にSPRにより測定したとき、本発明の抗体は50pM未満のKDを有する。好ましくは、特にSPRにより測定したとき、本発明のPDL1-BDはヒトPDL1に10pM未満のKDで結合する。好ましくは、特にSPRにより測定したとき、本発明のPDL1-BDはヒトPDL1に5pM未満のKDで結合する。
【0149】
適切には、本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-1-1以上、10-1-1以上、5×10-1-1以上、10-1-1以上、5×10-1-1以上、10-1-1以上、5×10-1-1以上、10-1-1以上、5×10-1-1以上のKon速度で結合する。好ましくは、本発明の抗体は、SPRで測定したとき、10-1-1以上、特に10-1-1以上のKon速度を有する。
【0150】
適切には、本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定したとき、ヒトPDL1に対して、10-3-1以下、3×10-3-1以下、5×10-3-1以下、10-4-1以下、5×10-4-1以下、10-5-1以下、5×10-5-1以下、10-6-1以下又は10-7-1以下のKoff速度で結合する。好ましくは、本発明の抗体は、SPRで測定したとき、10-3-1以下、10-4-1以下、特に10-5-1以下のKoff速度を有する。
【0151】
適切には、本発明の抗体は、PDL1と特異的に結合し、以下の1つ以上のパラメータにより特徴づけられる:
(i)ELISA法で測定したとき、アベルマブ(avelumab)と比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvであり、及び、
(ii)任意に、NFATレポーター遺伝子アッセイで測定したとき、アベルマブと比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/PD-1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、NFATレポーター遺伝子アッセイにおいて測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvであり、及び、
(iii)ELISA法で測定したとき、アベルマブ(avelumab)と比較し、1.5超、例えば2超、2.5超、好ましくは3超、より好ましくは4超の力価(相対的な力価)で、PDL1/B7.1相互作用を中和する能力を有し、
前記相対的な力価が、ELISA法で測定されるアベルマブのng/mLのIC50値の、ELISA法で測定される前記抗体のng/mLのIC50値との比であり、
特に、前記抗体がscFvである。
【0152】
適切には、本発明の抗体は、有用な生物物理学的な特性を有する。
【0153】
適切には、本発明の抗体は、scFvフォーマットであるとき、特に前記抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸-クエン酸バッファにおいて調製されるとき、示差走査蛍光測定により測定したとき、55℃以上、例えば60℃以上、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上の融解温度(Tm)を有する。DSFは、既に報告されている(Egan,et al.,MAbs,9(1)(2017),68-84、Niesen,et al.,Nature Protocols,2(9)(2007)2212-2221)。scFv構築物の熱的変性の遷移中間点は、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orange(Wong&Raleigh,Protein Science 25(2016)1834-1840参照)を用いた示差走査蛍光測定により測定される。pH6.4のリン酸-クエン酸バッファのサンプルは、50μg/mLの最終タンパク質濃度で、及び5×SYPRO(登録商標)オレンジの最終濃度で、100μlの総体積において調製される。調製された25μlのサンプルを、白色壁のAB gene PCRプレートに3回添加する。アッセイは、サーマルサイクラーとして用いられるqPCR装置において行われ、蛍光放出をソフトウェアのカスタム色素校正ルーチンを用いて検出する。試験用サンプルを含むPCRプレートを、25℃から96℃への1℃ずつ温度を上昇させ、各温度上昇の後30秒停止させる。全アッセイ時間は約2時間である。Tmは数学的2次導関数を用いたソフトウェアGraphPad Prismにより算出され、曲線の変曲点が算出される。出力されるTmは、3つの測定値の平均である。
【0154】
適切には、本発明の抗体は、scFvフォーマットであるとき、本発明の抗体10mg/mlの開始濃度で、5回の連続する凍結融解サイクルに供した後、特に前記抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸クエン酸バッファにおいて調製されるとき、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含量の損失を示す。
【0155】
適切には、本発明の抗体は、scFvフォーマットであるとき、本発明の抗体10mg/mlの開始濃度で、4℃で2週間以上、特に4週間以上の貯蔵後、特に本発明の抗体がpH6.4、150mMのNaClの50mMのリン酸クエン酸バッファにおいて調製されるとき、15%未満、例えば12%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満のモノマー含量の損失を示す。
【0156】
モノマー含量の損失は、SE-HPLCクロマトグラムの曲線下面積算出により測定する。SE-HPLCは、USP第621章に概説される、固体安定相及び液体移動相に基づく分離技術である。この方法は、疎水性安定相及び水性移動相を利用し、それらのサイズ及び形状に基づき分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムの空隙体積(V0)及び全浸透体積(VT)との間で生じる。SE-HPLCによる測定は、自動サンプル注入装置及び280nmの検出波長に設定した紫外線検出器を装備したChromaster HPLCシステム(株式会社日立ハイテク社)において行われる。該装置は、ソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies社、Version 3.3.2 SP2)により制御され、またこれにより得られるクロマトグラムの解析がサポートされる。タンパク質サンプルは、遠心により清澄にされ、注入前にオートサンプラー内で4~6℃の温度で維持される。scFvサンプルの分析の際、カラムShodex KW403-4F(昭和電工社、#F6989202)を用い、その際、0.35mL/分の推奨流速で、標準化された緩衝食塩水移動相(50mMのリン酸ナトリウム、pH6.5、300mMの塩化ナトリウム)を用いる。注入当たりの標的なサンプル添加量は5μgであった。280nmの波長においてサンプルを紫外線検出器により検出し、適切なソフトウェアセットによりデータを記録する。得られるクロマトグラムをV0からVTの範囲で分析し、その際10分間より長い溶出時間のマトリックス関連するピークが除外される。
【0157】
本願明細書において用いられる用語「認識する」とは、抗体がその構造的エピトープを発見し、それと相互作用する(例えば結合する)ことを指す。
【0158】
本願明細書において用いられる用語「競合する」又は「交差競合(cross-compete)する」及び関連する用語は、本願明細書では交換可能に用いられ、標準的な競合結合アッセイにおいてPDL1に対する他の抗体又は結合剤の結合を妨げる抗体の能力を意味する。
【0159】
本発明による抗体が他の抗体又は結合分子のPDL1への結合を妨げることができる能力又は範囲、すなわち交差競合することができるか否かは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。特に適切な定量的交差競合アッセイでは、FACS-又はAlphaScreenベースの方法を用いて、標識した(例えばHisタグ付加、ビオチン化又は放射性標識)抗体又はその断片と、そうでない抗体又はその断片との間で競合させ、標的に対するそれらの結合を測定する。一般に、交差競合抗体又はその断片は、例えば、交差競合アッセイにおいて、アッセイの間、第二抗体又はその断片単独の存在下で、本発明のイムノグロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドにより記録される置換が、試験しようとする所定量で存在する交差ブロック能力を有する抗体又はその断片による置換(例えば交差ブロックに必要とされる未処理(例えば非標識)抗体又はその断片による置換)の最大理論置換度に対して(例えばFACSベースの競合アッセイにおいて)最大100%となる態様で、標的と結合するものである。好ましくは、交差競合抗体又はその断片は、10%~100%の記録される置換を有し、好ましくは50%~100%である。
【0160】
用語「エピトープ」とは、抗体と特異的な結合ができるタンパク質の決定因子を意味する。エピトープは通常、アミノ酸や糖側鎖などの化学的に活性な表面グルーピング(grouping)を有する分子からなり、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。「立体構造的な」及び「直鎖状の」エピトープは、後者でなく前者に対する結合が、変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。本明細書で用いられる用語「立体構造エピトープ」は、ポリペプチド鎖がフォールディングされて天然のタンパク質を形成したときに表面上に位置し、Fab結合によりHD置換の速度が著しく低下する、抗原中のアミノ酸残基を指す。立体構造エピトープは、限定されないが機能的エピトープを含む。用語「直鎖状エピトープ」は、タンパク質及び相互作用する分子(例えば抗体)との間の相互作用の全ての位置が、(連続的な)タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に存在するエピトープを意味する。
【0161】
本発明はまた、表1に列挙されるPDL1-結合抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。したがって、更なる抗体は、PDL1結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合できる(例えば統計的に有意に競合的に結合を阻害する)それらの能力に基づいて同定される。
【0162】
適切には、本発明の単離された抗体は、以下からなる群から選択される:
モノクローナル抗体、キメラ抗体、IgG抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、及び代替足場に基づく結合ドメイン、例えば、限定されないがアンキリンベースのドメイン、フィノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン及び抗体の定常領域に組み込まれた結合部位(例えばF-starのModular Antibody Technology(商標))が挙げられる。
【0163】
適切には、本発明の単離された抗体はFvである。適切には、本発明の単離された抗体はscFv抗体断片である。「単鎖Fv」又は「scFv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは更に、sFvが標的結合のための望ましい構造を形成することを可能にする、VHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを含む。「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは更に、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成することを可能にする、VHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを含む(例えばPluckthun,The pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照)。具体的実施形態では、前記機能性断片は、配列番号28で表されるリンカーを含むscFvフォーマットである。更に別の実施形態では、本発明の単離された抗体は、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号60、配列番号61又は配列番号62で示す単鎖可変領域断片(scFv)である。好ましい実施態様においては、本発明の単離された抗体は、配列番号31で示す単鎖可変領域断片(scFv)である。
【0164】
適切には、本発明の単離された抗体は、IgG抗体断片である。用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子の違いにより生じる、例えばIgM、IgE、IgG(例えばIgG1又はIgG4)などの抗体クラスのことを指す。アイソタイプにはまた、Fc機能を改変するための修飾、例えばエフェクター機能又はFc受容体への結合を強化するか又は低減させるために行った、これらのいずれか1つのクラスに対する修飾を含む。一実施形態では、本発明の単離された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択されるIgG、好ましくはIgG1である。
【0165】
適切には、本発明の単離された抗体は、
それぞれ、配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号14と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。より具体的な実施形態では、本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号20、21及び22のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号93と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含む重鎖配列、並びに
配列番号92と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、を含むIgG1である。適切には、本発明の単離された抗体は、
それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号14と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号26と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。より具体的な実施形態では、本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号17、18及び19のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号16と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号27と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。
【0166】
適切には、本発明の単離された抗体は、
それぞれ、配列番号35、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号45と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。より具体的な実施形態では、本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号35、37及び38のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号51、52及び53のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号91と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含む重鎖配列、並びに
配列番号90と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、を含むIgG1である。
【0167】
適切には、本発明の単離された抗体は、
それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号45と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。より具体的な実施形態では、本発明の抗体は、
それぞれ、配列番号32、33及び34のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、並びに、それぞれ、配列番号48、49及び50のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、
配列番号47と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVH配列、並びに
配列番号57と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上、好ましくは90%以上同一のアミノ酸配列を含むVL配列、を含むIgG1である。
【0168】
本発明の他の具体的実施形態では、本発明の単離された抗体は多重特異性分子、特に、少なくとも第2の機能性分子を有する多重特異性分子、例えば2重特異性分子、3重特異性分子、4重特異性、5重特異性、6重特異性分子である。
【0169】
本明細書で用いられる用語「多重特異性分子」又は「多重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる標的(例えばPDL1及びPDL1と異なる他の標的)の2つ以上の異なるエピトープと結合する抗体、又は同一の標的の2つ以上の異なるエピトープと結合する抗体を指す。「多重特異性分子」の用語には、2重特異性、3重特異性、4重特異性、5重特異性及び6重特異性の抗体が包含される。本明細書中で用いられる「2重特異性抗体」なる用語は、2つの異なる標的上の、又は同じ標的上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。本明細書中で用いる「3重特異性抗体」なる用語は、3つの異なる標的上の、又は同じ標的上の3つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0170】
本発明の抗体は、誘導体化させることもでき、又は他のペプチド若しくはタンパク質などの他の機能性分子(例えば他の抗体又は受容体に対するリガンド)に連結させることもでき、それらにより、2つ以上の結合部位及び/又は異なる標的分子に結合する多重特異性分子を生じさせることもできる。本発明の抗体は、実際に、誘導体化するか、又は複数の他の機能性分子に連結させ、それにより、2つ以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子となりうる。本発明の多重特異性分子を得るために、本発明の抗体は、(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有結合性の会合等により)1つ以上の他の結合分子(例えば他の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合模倣物)と機能的に連結させ、それにより多重特異性分子とすることができる。
【0171】
したがって、本発明には、PDL1に対する1つ以上の第1結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2結合特異性と、を含む多重特異性分子が包含される。例えば、第2の標的エピトープは、PDL1とは異なる他の標的分子に存在する。したがって、本発明には、PDL1に対する1つ以上の第1結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2結合特異性と、を含む多重特異性分子が包含される。例えば第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるPDL1の他のエピトープである。多重特異性分子は更に、第1及び第2の標的エピトープに加えて、第3結合特異性を更に含むことができる。
【0172】
更に別の実施形態では、本発明には、PDL1に対して1価の、2価の又は多価の特異性、好ましくは1価の特異性を含む多重特異性分子が包含される。
【0173】
本発明の他の具体的実施形態では、本発明の単離された抗体は、1価の、又は例えば2価、3価、4価、5価、6価の多価PDL1特異性分子である。
【0174】
本明細書で用いられる用語「1価分子」又は「1価抗体」とは、標的分子(例えばPDL1)上の単一のエピトープと結合する抗体を指す。
【0175】
用語「多価抗体」は、複数の価数を有する単一の結合分子を指し、該「価数」は、同一の標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数のことである。このように、単一の結合分子は、複数の標的分子と、又は複数コピーのエピトープを含む標的分子上の複数の結合部位と結合できる。多価抗体の例としては、2価抗体、3価抗体、4価抗体、5価抗体等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語「2価抗体」とは、(各々同一のエピトープに結合する)2つの抗原結合部分を有する抗体を指す。
【0176】
適切には、本発明の単離された抗体は、多重特異性分子(例えば二重特異性分子)及び/又は、多価分子(例えばPDL1について一価の特異性分子、PDL1について二価の特異性分子)であり、それは本技術分野において公知のいずれの適切な多重特異性、例えば二重特異性の抗体フォーマットから選択されてもよく、かかるフォーマットとしては、限定されないが、単鎖diabody(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、直鎖二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体のscDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞結合部(BiTE;タンデム-ジ-scFv)、タンデム-トリ-scFv、tribody(Fab-(scFv)2)又はbibody(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(Morrison)(IgG CH-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、triabody、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジ-ミニ抗体、tetrabody、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジ-diabody、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、bsAb(軽鎖のC末端に連結されるscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端基に連結されるscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端基に連結されるscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されるscFv)、Ts1Ab(重鎖及び軽鎖のN末端基に連結されるscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されるdsscFv)などのIgG-scFv融合体、Knob-into-Hole抗体(KiHs)(KiH技術により調製される二重特異性IgG)などのヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、Fv、scFv、scDb、タンデム-ジ-scFv、タンデム-トリ-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、1つのヘテロ二量体Fcドメイン又は他方のヘテロ二量体ドメインのいずれかの鎖のN及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH(国際公開第2016/0202457号、Egan T.,et al.,mAbs 9(2017)68-84に記載)及びDuoBodie(Duobody技術によって調製される二重特異性IgG)(MAbs.2017 Feb/Mar;9(2):182-212.doi:10.1080/19420862.2016.1268307)に基づくフォーマットである。単鎖diabody(scDb)又はscDb-scFvは、特に本発明における使用に適している。
【0177】
「diabody」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖中に、VLに連結されたVHを含む(VH-VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を行わせるにはあまりに短いリンカーを用いることにより、それらのドメインは、他の鎖の補完的ドメインと対形成し、2つの抗原結合部位を形成させるというものである。具体的実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは、4つのグリシンアミノ酸残基と1つのセリンアミノ酸残基とからなる1つ又は2つのユニット(GGGGS)、n=1又は2を含み、好ましくは1つ含む。diabodyは、2価又は2重特異性であってもよい。diabodyの詳細については、例えば欧州特許第404097号明細書、国際公開第93/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHolliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)に記載されている。Triabody及びtetrabodyもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0178】
2重特異性scDb(特に2重特異性モノマーscDb)は、特に、2つの可変領域重鎖ドメイン(VH)又はその断片と、2つの可変領域軽鎖ドメイン(VL)又はその断片とを、リンカーL1、L2及びL3により連結される形で含み、それらの順序は、VHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB又はVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHBであり、VLA及びVHAドメインは、第1抗原に対する抗原結合部位を一緒に形成し、VLB及びVHBは、第2抗原に対する抗原結合部位を一緒に形成する。
【0179】
リンカーL1は、特に2~10アミノ酸、より具体的には3~7アミノ酸、更に具体的には5アミノ酸のペプチドであり、リンカーL3は、特に1~10アミノ酸、より具体的には2~7アミノ酸、更に具体的には5アミノ酸のペプチドである。具体的実施形態では、リンカーL1及び/又はL3は、4つのグリシンアミノ酸残基及び1つのセリンアミノ酸残基からなる1つ又は2つのユニット((GGGGS)、n=1又は2、好ましくはn=1)を含む。
【0180】
中間のリンカーL2は、特に10~40アミノ酸、具体的には15~30アミノ酸、更に具体的には20~25アミノ酸のペプチドである。具体的実施形態では、前記リンカーL2は、4つのグリシンアミノ酸残基及び1つのセリンアミノ酸残基からなる1つ以上のユニット((GGGGS)、n=1、2、3、4、5、6、7又は8、好ましくはn=4)を含む。
【0181】
本発明の一実施実施形態では、単離された抗体は、scDb-scFvフォーマットの多重特異性及び/又は多価抗体である。用語「scDb-scFv」は、単鎖Fv(scFv)断片が単鎖diabody(scDb)と可撓性Gly-Serリンカーにより融合した抗体フォーマットを指す。一実施形態では、前記可撓性Gly-Serリンカーは、2~40アミノ酸、例えば2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、2~10アミノ酸、特に10アミノ酸のペプチドである。具体的実施形態では、前記リンカーは、4つのグリシンアミノ酸残基及び1つのセリンアミノ酸残基((GGGGS)、n=1、2、3、4、5、6、7又は8、好ましくはn=2)を含む。
【0182】
本発明の一実施形態では、単離された抗体は、国際公開第2016/0202457号、Egan T.ら、mAb 9(2017)68-84に記載されるMATCHフォーマットの多重特異性及び/又は多価抗体である。
【0183】
本発明の多重特異性及び/又は多価分子は、従来技術において周知のいずれかの有用な抗体製造法を用いて製造することができる(例えば、2重特異性構築物の作製に関しては、Fischer,N.&Leger,O.,Pathobiology 74(2007)3-14を、2重特異性diabody及びタンデム型scFvsに関しては、Hornig,N.& Farber-Schwarz,A.,Methods Mol.Biol.907(2012)713-727及び国際公開第99/57150号を参照)。本発明の2重特異性構築物の調製のための好適な方法の具体例としては更に、Genmab(Labrijn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110(2013)5145-5150を参照)及びMerus(de Kruif et al.,Biotechnol.Bioeng.106(2010)741-750を参照)の技術が挙げられる。機能性抗体のFc部分を含む2重特異性抗体の作製方法も公知技術である(例えばZhu et al.,Cancer Lett.86(1994)127-134)及びSuresh et al.,Methods Enzymol.121(1986)210-228を参照)。
【0184】
本発明の多重特異性及び多価分子において使用できる他の抗体は、マウス、キメラ、及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0185】
本発明の多重特異性分子は、従来技術において公知の方法を用いて、幾つかの結合特異性部分をコンジュゲートすることにより調製できる。例えば2重特異性分子の各結合特異性部分は、別々に調製し、次に互いにコンジュゲートすることができる。結合特異性部分がタンパク質又はペプチドであるとき、様々なカップリング又は架橋剤を用いて共有結合的なコンジュゲート形成を行うことができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)(例えばKarpovsky et al.,1984 J.Exp.Med.160:1686、Liu,M A et al.,1985 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)が挙げられる。他の方法としては、Paulus,1985 Behring Ins.Mitt.No.78,118-132、Brennan et al.,1985 Science 229:81-83、及びGlennie et al.,1987 J.Immunol.139:00:002367-2375が挙げられる。コンジュゲート剤としては、SATA及びスルホ-SMCCが挙げられ、いずれもPierce Chemical社(ロックフォード、イリノイ)から入手可能である。
【0186】
結合特異性部分が抗体であるとき、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域をスルフヒドリルにより結合するコンジュゲートを行うことができる。具体的実施形態では、コンジュゲートの前に奇数個の(例えば1つの)スルフヒドリル残基を含むようヒンジ領域を修飾する。
【0187】
あるいは、2以上の結合特異性部分を同じベクターにおいてコードし、発現させ、同じ宿主細胞内で組み立てることもできる。この方法は、2重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)2又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合、特に有用である。本発明の多重特異性分子は、1つの単鎖抗体及び1つの結合決定要素を含む単鎖状分子、又は2つの結合決定要素を含む単鎖状多重特異性分子でありうる。多重特異性分子は、2つ以上の単鎖状分子を含んでもよい。例えば多重特異性分子を調製する方法は、米国特許第5,260,203号明細書、米国特許第5,455,030号明細書、米国特許第4,881,175号明細書、米国特許第5,132,405号明細書、米国特許第5,091,513号明細書、米国特許第5,476,786号明細書、米国特許第5,013,653号明細書、米国特許第5,258,498号明細書及び米国特許第5,482,858号明細書に記載される。
【0188】
2重特異性分子のそれらの特定の標的に対する結合は、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば増殖阻害)又はウエスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらの各々のアッセイは通常、目的の複合体に対して特異的な標識試薬(例えば抗体)を用いることにより、タンパク質-抗体複合体の存在を特異的に検出する。
【0189】
更なる態様において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を提供する。本発明はまた、PDL1タンパク質と特異的に結合する抗体のCDR、VH、VL、完全長重鎖及び完全長軽鎖をコードする核酸配列を提供する。かかる核酸配列は、哺乳動物細胞における発現のために最適化することができる。
【0190】
用語「核酸」は、本願明細書においては「ポリヌクレオチド」という用語と交換可能に用いられ、一本鎖又は二本鎖の形態の、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、並びにそのポリマーを指す。該用語は、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾された主鎖残基若しくは結合を含む核酸を包含するものであり、それらは合成物、天然物及び非天然物であってもよく、そられは参照核酸として同様の結合特性を有し、それらは参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。かかるアナログの例としてはホスホロチオネート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。特に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、明記される配列に加えて、その保存的に修飾された変異体(例えばコドン縮重置換)及びその相補配列を暗に包含する。具体的には、後述するように、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置を混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基により置換された配列とすることにより、縮重コドン置換を生じさせてもよい(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081,1991、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608,1985及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98,1994)。
【0191】
本発明は、上記のPDL1-結合抗体鎖のセグメント又はドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。適切な発現ベクターから発現されるとき、これらの核酸分子によりコードされるポリペプチドは、PDL1抗原との結合能力を示すことができる。
【0192】
また、本発明では、表1に記載されるPDL1-結合抗体の重鎖又は軽鎖に由来する1つ以上のCDR領域、通常全3つのCDR領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。幾つかの他のポリヌクレオチドは、表1に記載されるPDL1-結合抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列の全部又は実質的に全部をコードする。コードの縮重のため、様々な核酸配列が各イムノグロブリンアミノ酸配列をコードする。
【0193】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成により、又はPDL1-結合抗体をコードする既存の配列(例えば下記の実施例にて説明される配列)のPCR変異導入により調製できる。核酸の直接の化学合成は、公知技術の方法(例えばホスホトリエステル法(Narang et al.,1979,Meth.Enzymol.68:90)、ホスホジエステル法(Brown et al.,Meth.Enzymol.68:109,1979)、ジエチルホスホロアミダイト法(Beaucage et al.,Tetra.Lett.,22:1859,1981)、及び固相法(米国特許第4,458,066号明細書))により実施できる。例えばPCRによるポリヌクレオチド配列への変異導入は、例えばPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich(Ed.),Freeman Press,NY,N.Y.,1992、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.(Ed.),Academic Press,San Diego,Calif,1990、Mattila et al.,Nucleic Acids Res.19:967,1991及びEckert et al.,PCR Methods and Applications 1:17,1991に記載されるように行うことができる。
【0194】
本発明ではまた、上記のPDL1-結合抗体を産生するための発現ベクター及び宿主細胞が提供される。
【0195】
用語「ベクター」とは、それが連結された他のポリヌクレオチドを輸送できるポリヌクレオチド分子を指すことを目的とする。ベクターの一種として「プラスミド」が挙げられ、それは更なるDNA断片をライゲートしうる環状の二本鎖DNAループを指す。他のタイプのベクターはウイルスベクターであり、更なるDNA断片をウイルスのゲノムにライゲートしうるものである。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自律的増殖が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソームの哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソームの哺乳動物ベクター)を、宿主細胞に導入し、宿主細胞のゲノムに組み込ませ、それにより宿主ゲノムとともに複製させることができる。
【0196】
更に、特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書において「組換え型発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形を採る。本明細書においては、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが殆ど一般的に用いられるベクターの形態であるため、交換可能に用いられる。しかしながら、本発明では、発現ベクターには他の形態のもの(例えばウイルスベクター(例えば複製能を欠くレトロウイルス、アデノウィルス及びアデノ関連ウィルス)が含まれるものとし、またそれらは同等の機能を果たすものである。
【0197】
用語「可動可能に連結される」とは、2以上のポリヌクレオチド(例えばDNA)セグメントの機能性関連性のことを指す。典型的には、それは転写制御配列の転写される配列への機能性関連性のことを指す。例えば、プロモータ又はエンハンサー配列については、それらが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコーディング配列の転写を刺激又は調節する場合、コーディング配列に作動可能な状態で連結されている。一般に、転写される配列に作動可能な状態で連結されるプロモータ転写制御配列は、転写される配列に物理的に隣接、すなわちそれらはシスに作用している。しかしながら、幾つかの転写制御配列(例えばエンハンサー)については、それらが転写を強化しようとするコーディング配列に物理的に接近又は隣接する必要がない。
【0198】
PDL1-結合抗体鎖又は結合断片をコードするポリヌクレオチドを発現させるために、各種の発現ベクターを使用できる。ウイルスベースの及び非ウイルス性の発現ベクターは、哺乳動物宿主細胞において抗体を産生させるために使用できる。非ウイルス性のベクター及び系としては、プラスミド、典型的にタンパク質又はRNAを発現させるための発現カセットを有するエピソームベクター、及びヒト人工染色体(例えばHarrington et al.,Nat Genet.15:345,1997)を参照。例えば哺乳動物(例えばヒト)細胞におけるPDL1-結合ポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現のために有用な非ウイルスベクターとしては、pThioHis A、B及びC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B及びC(Invitrogen社、サンディエゴ、カリフォルニア)、MPS Vベクター、及び本技術分野で公知の他のタンパク質発現用の様々なベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40ベースのベクター、乳頭腫ウイルス、HBPイプシュタインバーウィルス、ワクシニアウイルスベクター及びSemlikiフォレストウイルス(SFV)ベースのベクターが挙げられる。Brent et al.,supra;Smith,Annu.Rev.Microbiol.49:807,1995及びRosenfeld et al.,Cell 68:143,1992を参照。
【0199】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させようとする宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、PDL1-結合抗体をコードするポリヌクレオチドに作動可能な状態で連結されるプロモータ及び他の制御配列(例えばエンハンサー)を含む。一実施形態では、誘導性プロモータを用いることで、誘導条件以外の条件では挿入した配列の発現が防止される。誘導性プロモータとしては、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモータ又はヒートショックプロモーターが挙げられる。非誘導条件下で形質転換された生物の培養を行うことで、産生物の発現が宿主細胞にとり許容される程度となるため、コーディング配列を有する集団を偏らせることなく増殖させることができる。プロモータに加え、他の制御エレメントが、PDL1-結合抗体の効率的な発現のために必要とされ、又は望ましくなる場合もある。これらのエレメントとしては、典型的にはATG開始コドン及び隣接するリボソーム結合部位又は他の配列が挙げられる。加えて、使用する細胞系に適するエンハンサー(例えばScharf et al.,Results Probl.Cell Differ.20:125,1994及びBittner et al.,Meth.Enzymol.,153:516,1987を参照)により発現効率を増強してもよい。例えばSV40エンハンサー又はCMVエンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増強させてもよい。
【0200】
発現ベクターには、分泌シグナル配列を配置して、挿入されたPDL1-結合抗体配列によりコードされるポリペプチドを融合タンパク質として発現させてもよい。多くの場合、挿入されたPDL1-結合抗体配列は、ベクターに挿入する前に、シグナル配列に連結される。また、PDL1-結合抗体の軽鎖及び重鎖可変領域ドメインをコードする配列を受容するために用いるベクターは、場合によっては定常領域又はその部分をもコードする。かかるベクターにより、定常領域との融合タンパク質として可変領域の発現がなされ、それにより完全な抗体及びその抗原結合性断片の生成がもたらされる。典型的には、かかる定常領域はヒト由来である。
【0201】
「組換え宿主細胞」又は単に「宿主細胞」という用語は、組換え発現ベクターを導入された細胞を意味する。かかる用語は、特定の細胞のみならず、かかる細胞の子孫のことも指すことを理解すべきである。かかる子孫は、変異又は周囲条件による影響のため、特定の修飾が次第になされうることから、実際上は、親細胞と同一でなくてもよいが、但し「宿主細胞」という本明細書で用いられる用語の範囲内には含まれるものとする。
【0202】
PDL1-結合抗体鎖を収容し発現するための宿主細胞は、原核生物であってもよく、又は真核生物であってもよい。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び発現に有用な原核生物の宿主の1つである。使用に適する他の微生物宿主としては、バチルス属細菌(例えば枯草菌)及び他の腸内細菌(例えばサルモネラ属菌、セラチア属菌及び各種のシュードモナス属種)が挙げられる。これらの原核生物の宿主において、発現ベクターを構築することもでき、それは宿主細胞と適合性を有する発現調節配列(例えば複製開始点)を典型的に含む。更に、ラクトースプロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、βラクタマーゼプロモータ系又はλファージ由来のプロモータ系などの、様々な公知のプロモータが挙げられる。これらのプロモータは、典型的には、必要に応じてオペレーター配列と共に発現を制御し、またリボソーム結合部位配列などを有することにより転写及び翻訳を開始し、そして終了させる。また、他の微生物(例えば酵母)を用いて、本発明のPDL1-結合ポリペプチドを発現させることもできる。バキュロウイルスベクターとの組み合わせで昆虫細胞を用いることもできる。
【0203】
一実施形態では、本発明のPDL1-結合ポリペプチドを発現及び製造するために、哺乳動物宿主細胞が用いられる。例えば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系であってもよく、又は外因性発現ベクターを担持する哺乳動物細胞系であってもよい。これらは、あらゆる通常の致命的な又は通常の又は異常な不死化した動物若しくはヒト細胞をも包含する。例えばCHO細胞、各種のCos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換されたB細胞及びハイブリドーマなど、完全なイムノグロブリンを分泌できる多くの適切な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチドを発現する哺乳動物の組織細胞培養系の使用については、その概要が、例えばWinnacker,FROM GENES TO CLONES,VCH Publishers,N.Y.N.Y.1987で述べられている。哺乳動物宿主細胞様の発現ベクターは、発現調節配列、例えば複製開始点、プロモータ及びエンハンサー(Queen,et al.,Immunol.Rev.89:49-68,1986)、及び必要となるプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写ターミネーター配列を含むことができる。これらの発現ベクターは通常、哺乳動物の遺伝子に由来する、又は哺乳動物のウイルスに由来するプロモータを含む。適切なプロモータは、構成的、細胞特異的、段階特異的、及び/又は、調節可能若しくは制御可能なプロモータである。有用なプロモータとしては、従来技術において公知のメタロチオネインプロモータ、構成的アデノウィルス主要後期プロモータ、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモータ、SV40プロモータ、MRP polIIIプロモータ、構成的MPS Vプロモータ、テトラサイクリン誘導性CMVプロモータ(例えばヒト初期CMVプロモータ)、構成的CMVプロモータ及びプロモータ-エンハンサーの組み合わせ、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞の宿主のタイプに応じて異なる。例えば塩化カルシウムトランスフェクションは原核細胞に一般に用いられるが、リン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーションは他の宿主細胞に用いられうる。(概要については上記Sambrookらを参照)。他の方法としては、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソームによる形質転換、インジェクション及びマイクロインジェクション、バリスティック、ビロソーム(virosomes)、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合(Elliot and O’Hare,Cell 88:223,1997)、薬剤によるDNAの取り込み増強、及びエクスビボトランスダクションが挙げられる。組換えタンパク質の長期的、高収率での産生のために、安定な発現が通常要求される。例えば、ウイルス複製開始点又は内因性発現エレメント、及び選抜可能なマーカー遺伝子を含む本発明発現ベクターを用いて、PDL1-結合抗体鎖又は結合断片を安定的に発現する細胞系を調製することができる。ベクターの導入後、それらを選抜培地に切り替える前に、細胞をリッチな培地で1~2日間増殖させてもよい。選抜可能マーカーを用いる目的は、選抜に対する耐性を付与することであり、その存在により、導入された配列を好適に発現する細胞は、選抜培地において増殖することができる。耐性を有する、安定にトランスフェクションされた細胞は、細胞のタイプに適する組織培養技術を用いて増殖させることができる。したがって、本発明は、本発明の抗体を産生する方法を提供するものであり、前記方法は、本発明の抗体をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する、特に発現させるステップを含み、それにより、本発明の前記抗体又はその断片が発現される。
【0205】
更なる態様では、本発明は、本発明の抗体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体は、組成物を強化し又は安定させ、又は組成物の調製を容易にする。薬学的に許容される担体には、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗かび剤、等張剤及び吸収遅延剤及び生理的適合性を有するその他の媒体が挙げられる。
【0206】
本発明の医薬組成物は、周知の各種の方法により投与することができる。投与の経路又は方法は、所望する効果により変化する。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下、又は標的の部位の近傍に投与することができる。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注入又は灌注)に適していなければならない。投与の経路に応じて、活性化合物(すなわち抗体及び多重特異性分子)は、化合物を酸の作用から、及び化合物の不活性化をもたらしうる他の天然条件から保護する材料でコーティングされてもよい。
【0207】
本発明の医薬組成物は、公知の、従来技術においてルーチン的に実施される方法に従い調製できる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000及びSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、PDL1-結合抗体の治療的有効量又は有効量を、本発明の医薬組成物において使用する。PDL1-結合抗体は、当業者に公知の従来法により、薬学的に許容される投与形態で調製される。投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供するよう調整される。例えば単回ボーラスを投与してもよく、幾つかに分割して一定時間おきに投与してもよく、又は治療的状況の緊急性に応じて用量を漸減若しくは漸増させてもよい。投与を容易にし、かつ用量を均一化する上では、該成分を単位投与形態に組成することが特に有用である。本明細書中で用いられる「単位投与形態」とは、治療しようとする被験者のための投与単位として適宜調整した、物理的に別々の単位のことを指し、各単位は、必要な医薬用担体との関連で所望の治療効果を生じさせるために算出された活性化合物を所定量で含む。
【0208】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性を発揮させずに、特定の患者において所望の治療応答を達成するのに効果的である量の活性成分、組成及び投与方法となるよう、変化させることができる。選択される投与量レベルは、様々な薬物動態的要因に依存し、例えば使用される本発明の特定の組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与の時期、投与経路、使用する特定の化合物の排出速度、処置期間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬剤、化合物及び/又は材料、年齢、性別、体重、症状、一般的な健康状態、治療される患者の過去の診療履歴、及びその他の要因等に依存する。
【0209】
抗体は通常、複数回に投与される。単回投与の間隔は、週ごと、月ごと又は年ごとでありえる。患者のPDL1-結合抗体の血中濃度の測定結果により、投与間隔が不規則となる場合もある。あるいは、抗体を持続的放出製剤として投与することもでき、その場合には、投与を頻繁に行う必要がない。投与の量及び頻度は、患者における抗体の半減期により変化する。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体及びヒト以外の抗体のそれより長い半減期を示す。投与量及び投与頻度は、処置が予防的か又は治療的かに依存し変化しうる。予防的な投与では、比較的低い投与量を、長期間にわたり、比較的少ない間隔で投与される。患者によっては、余生の間処置を受け続けることもある。治療的な投与では、疾患の進行が減速又は終了するまで、好ましくは患者が疾患の兆候の部分的な又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量を必要とする場合がある。その後、患者は予防的レジメンでの投与を受けることができる。
【0210】
本発明の抗体は、インビトロ及びインビボでの診断及び治療へのユーティリティを有する。例えば、これらの分子は、様々な障害の治療、予防又は診断のために、例えばインビトロ又はインビボで培養細胞中に、又は、インビボで被験者に、投与することができる。
【0211】
一態様では、本発明は、薬剤として使用するための、本発明の抗体又は本発明の組成物に関する。
【0212】
一態様では、本発明は、増殖性障害、特に癌の治療を必要とする被験者の該治療において使用するための、本発明の抗体又は本発明の組成物に関する。
【0213】
他の態様では、本発明は、増殖性障害、特に癌の治療を必要とする被験者の該治療のための、本発明の抗体又は本発明の組成物の使用に関する。
【0214】
更なる態様では、本発明は、増殖性障害、特に癌の治療を必要とする被験者の該治療用の薬剤の製造における、本発明の抗体又は本発明の組成物の使用に関する。
【0215】
一態様では、本発明は、増殖性障害、特に癌の治療を必要とする被験者に対し、治療的有効量の本発明の抗体又は本発明の組成物を投与することを含む、該被験者の治療方法を提供する。
【0216】
用語「被験者」とは、ヒト及びヒト以外の動物を包含する。ヒト以外の動物としては、例えば全ての脊椎動物である哺乳動物及び非哺乳動物(例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、犬、ウシ、ニワトリ、両生類及び爬虫類)が挙げられる。特に断りのない限り、用語「患者」又は「被験者」は本願明細書において交換可能に用いられる。
【0217】
本明細書で用いられる用語「治療」、「治療すること」、「治療する」、「処理された」等は、所望の薬理学的及び/又は生理的効果を得ることを指す。該効果は、疾患及び/又は疾患に起因する悪影響を部分的又は完全に治癒する意味において治療的であってもよく、又は疾患進行を遅延させる意味において治療的であってもよい。本明細書で用いられる「治療」とは、哺乳動物の(例えばヒトの)疾患のあらゆる処置をも包含するものであり、例えば:(a)疾患を阻害し、すなわちその進行を抑制すること、及び(b)疾患を緩和させ、すなわち疾患の後退を生じさせること、が包含される。
【0218】
「治療的有効量」又は「有効量」という用語は、疾患の治療対象となる哺乳動物又はその他に投与されるときに、疾患のかかる処置を遂行するのに十分である薬剤の量のことを指す。「治療上有効量」は、薬剤、治療される被験体の疾患及びその重症度、並びに年齢、体重などに応じて変化する。
【0219】
一実施形態では、増殖疾患は癌である。用語「癌」は、迷走細胞の迅速な抑制できない増殖を特徴とする疾患を意味する。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を通じて身体の他の部分まで拡散することがある。各種の癌の例を以下のとおり本願明細書に記載するが、これらに限定されない:乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌等。「腫瘍」及び「癌」の用語は本願明細書においては交換可能に用いられ、例えば両用語は、固形腫瘍、及び例えば拡散若しくは循環する液性の腫瘍を包含する。本明細書において、用語「癌」又は「腫瘍」は、前癌、ならびに悪性癌及び腫瘍を包含する。用語「癌」は、本願明細書においては、腫瘍の広域性を意味するものとして用いられ、全ての固形及び血液学的な悪性病変が包含される。かかる腫瘍の例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:良性の又は特に悪性の腫瘍、固形腫瘍、脳癌、腎臓癌、肝癌、副腎癌、膀胱癌、乳癌、胃癌(例えば胃腫瘍)、食道癌、卵巣癌、子宮頸癌、大腸癌、直腸癌、前立腺癌、膵癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、膣癌、甲状腺癌、黒色腫(例えば除去不能な又は転移性黒色腫)、腎細胞癌、肉腫、グリア芽細胞腫、多発性骨髄腫、又は胃腸癌、特に大腸癌若しくは結腸直腸アデノーマ、頭頸部腫瘍、子宮内膜癌、カウデン症候群、レルミット-デュクロ疾患、Bannayan-Zonana症候群、前立腺の肥厚、腫瘍形成、特に上皮、好ましくは乳房癌又は扁平上皮癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(例えばフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病)、急性リンパ性白血病(例えばフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病)、非ホジキンリンパ腫、形質細胞性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、白血病及びそれらの組み合わせ。好ましい実施態様においては、癌は、肺癌、好ましくは非小細胞性肺癌(NSCLC)である。他の実施形態では、前記癌は結腸直腸癌である。
【0220】
本発明の抗体又は本発明の組成物は、固形腫瘍の増殖を阻害するが、また液腫瘍をも阻害する。更に別の実施形態では、増殖疾性患は固形腫瘍である。用語「固形腫瘍」とは、特に乳癌、卵巣癌、大腸癌、直腸癌、前立腺癌、胃腸癌(特に胃癌)、子宮頸癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、及び頭頸部の腫瘍を意味する。更に、腫瘍タイプ及び用いる特定の組み合わせに応じて、腫瘍体積を減少させることが可能となる。本発明の抗体又は本発明の組成物は、腫瘍の転移の予防、並びに癌を有する被験者の微小転移巣の増殖又は成長の予防にも適する。
【0221】
用語「予防する」又は「予防」とは、疾患の進行又は疾患のいかなる二次的影響の完全な抑制のことを指す。本明細書で用いられる用語「予防する」又は「予防」とは、疾患に罹患する素因を有するとは診断されたが、疾患に罹患しているとは診断されていない個人において、疾患又は症状が発症することを予防することを包含する。
【0222】
一態様では、本発明は、本発明の抗体又は本発明の医薬組成物を含むキットに関する。該キットは、以下のような1つ以上の他の内容物を含みうる:取扱説明書、他の試薬(例えば、ラベル、治療薬又はラベル又は治療薬に対して抗体をキレート化若しくはその他カップリングするのに有用な薬剤、又は放射線防護組成物)、投与用の抗体分子を調製するための装置又はその他の材料、薬学的に許容される担体、並びに被験者に対する投与のための装置又はその他の材料。特定の実施形態では、該キットは、薬学的に有効量の本発明の抗体を含む。更に別の実施形態では、該キットは、薬学的に有効量の凍結乾燥された本発明の抗体、及び希釈剤、及び任意の取扱説明書を含む。前記キットは更に、再調製のためのフィルタニードル及び注入用のニードルを含んでもよい。
【0223】
【表1】
【0224】
【表2】
【0225】
【表3】
【0226】
【表4】
【0227】
【表5】
【0228】
【表6】
【0229】
【表7】
【0230】
【表8】
【0231】
【表9】
【0232】
【表10】
【0233】
【表11】
【0234】
【表12】
【0235】
【表13】
【0236】
【表14】
【0237】
【表15】
【0238】
【表16】
【0239】
本願の書類全体にわたり、明細書(例えば表1~3)の記載と配列表との間の相違が存在する場合もあるが、かかる場合は明細書の記載が正文であるものとする。
【0240】
明確化のため、本発明の特定の特徴を別々の実施形態の文脈において記載しているが、1つの実施形態中にそれらを組み合わせてもよいことは自明である。逆に、1つの実施例の説明中に記載される本発明の様々な形態を、簡潔さのため、それらを分割し、また適切なサブコンビネーションとして適用してもよい。本発明に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本発明に具体的に包含され、またあたかもあらゆる組み合わせが個々に及び明確に開示されるかのように、本願明細書において開示されるものとする。加えて、各種の実施形態及びその構成要素の全てのサブコンビネーションも、本発明に具体的に包含され、またあたかもかかるあらゆるサブコンビネーションも、本願明細書において個々に及び明確に開示されるかのように、本願明細書において開示されるものとする。
【0241】
本発明は、本願明細書において記載される特定の実施形態によりその範囲を限定されるものではない。実際、本願明細書において記載される以外の本発明の各種の変更は、前述の説明から当業者にとり明らかである。かかる変更は、添付の特許請求の範囲に含まれるものである。
【0242】
各国の特許法が許容する限りにおいて、本願明細書において引用される全ての特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献及びその他の材料は、参照により本願明細書に組込まれる。
【0243】
以下の実施例では、上記の本発明を例示するが、いかなる形であれ、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。本関連技術分野の当業者に公知の他の試験モデルを用いて、特許請求された本発明の有用性を確認することもできる。
【実施例
【0244】
ヒトPDL1に対する新規な抗体:
実施例1:ヒトPDL1に対するウサギ抗体の生成:
【0245】
リコンビナント的に産生させ、精製されたヒトPDL1細胞外ドメインによりウサギを免疫した。免疫処理中に、抗原に対する最大希釈(力価)を測定することにより、未だポリクローナル血清抗体の検出可能な結合を生じさせる各ウサギの血清中の、抗原に対する体液免疫応答の強度を質的に評価した。固定化抗原(組換えヒトPDL1細胞外ドメイン)に対する血清抗体力価を、ELISA(ELISA)を用いて評価した。免疫した全てのウサギは、血清の少なくとも1:2.64×10の希釈において非常に高い力価を示した。最初の抗原注入前の同じウサギから得た血清を、バックグラウンドコントロールとして用いた。
【0246】
実施例2:Hitによる同定及び選抜:
Hit同定手順の際、高親和性hPDL1結合B細胞を特異的に検出及び単離することを可能にする、フローサイトメトリーベースのソーティング手順を開発した。hPDL1結合B細胞を同定するため、hPDL1 ECDを、蛍光色素R-フィコエリスリン(R-PE)により標識した。標識PDL1上のPD-1結合部位並びに抗PDL1中和抗体の結合部位は、嵩高いR-PE標識により潜在的にブロックされるため、エピトープのアクセス性をフローサイトメトリーにより確認することができた。ヒトIgG1のFc部分又はアベルマブに融合するPD-1細胞外ドメインをプロテインGビーズに捕捉し、R-PE標識したPDL1の結合をフローサイトメトリーにより確認した。蛍光強度は、ビーズに固定された受容体と結合する標識PDL1の量に対する比例関係を示していた。PD-1及び中和抗体に対するPDL1の結合が確認された一方、抗PDL1抗体に対する無関係なサイトカインの結合は検出されなかった。
【0247】
スクリーニング:
ハイスループットな培養スケールでは、個々のウサギ抗体の精製が困難であることから、スクリーニングフェーズの間に得られた結果は、抗体分泌細胞(ASC)の培養液上清からの非精製抗体により行われるアッセイに基づくものであった。かかる上清は、大規模な数の各々の抗体どうしのランク付けは可能であるが、結合能以外の絶対的な数値は得られない。4週間以上にわたり、あらゆる個々に培養されたクローンから得た上清を回収した。培養期間の終わりに、各細胞培養上清中のウサギモノクローナル抗体を用い、組換えヒトPDL1細胞外ドメインへの結合についてのハイスループットELISAにおいて特徴解析を行った。PDL1-結合上清を用い、ヒト及びカニクイザルPDL1に対する結合動態について、更に特徴解析を行った。加えて、PDL1/PD-1相互作用の中和可能性を、細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイ、並びに競合ELISAにより測定した。また、PDL1/B7-1相互作用の中和について、競合ELISAにより評価した。結合動態を除いて、ハイスループットスクリーニングの報告値は「有」又は「無」の結果として解釈するものとし、それは単回測定(用量反応でない)に基づくものとした。上清のマウスPDL1結合可能性は、直接ELISAにより分析し、結合動態は、陽性の上清のみについて測定した。
【0248】
hPDL1結合についての直接ELISA:
ELISAプレートに、500ng/mlのPDL1を含むPBS 50μlを添加し、4℃で一晩被覆した。翌日、ウェルあたり450μlの洗浄バッファ(PBS、0.005%のTween 20)によりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、ウェル当たり300μlのブロッキングバッファ(PBS、1%のBSA、0.2%のTween 20)を添加し、旋回(nutating)ミキサー上で室温で1時間処理した。次に、450μl洗浄バッファによりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、50μlの各上清を添加し、プレートを穏やかに振動しながら室温で1.5時間インキュベートした。450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードで3回洗浄した後、HRPコンジュゲートされたヤギ及びウサギIgG抗体50μlを各ウェルに添加した。回転ミキサー上で室温で1時間インキュベートした後、ウェル当たり450μlの洗浄バッファによりプレートを洗浄し、次に50μlのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、KPL、カタログ番号53-00-00)を添加した。5~10分間発色させた後、ウェルあたり50μlの1MのHClの添加により酵素反応を停止させ、690nmを基準波長として用いてプレートを450nmで測定した。
【0249】
SPRによる、hPDL1に対する親和性:
MASS-1 SPR機器(Sierra Sensors社)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により、ヒトPDL1に対する抗体の結合親和性を測定した。親和性スクリーニングにおいて、標準的なアミンカップリング手順を用いて、センサーチップ(SPR-2アフィニティーセンサー、High Capacity Amine、Sierra Sensors社)に、ウサギIgG(Bethyl Laboratories社、カタログ番号A120-111A)のFc領域に特異的な抗体を固定化した。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体を、固定化した抗ウサギIgG抗体により捕捉した。B細胞上清中の最小のIgG濃度は、充分な捕捉を行わせるために必要である。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトPDL1(Peprotech社)を90nMの濃度でフローセルに3分間にわたり注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の分離を5分間にわたり行わせた。各注入サイクルの後、表面を10mMのグリシン-HClを2回注入して再生した。見かけの分離(kd)及び会合(ka)定数、並びに見かけの分離平衡定数(K)は、1対1のラングミュア結合モデルを用い、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors社)により算出し、Chiの相対値(外挿された検体の最大結合レベルで正規化したChi)に基づき、フィットの品質をモニターし、それをカーブフィッティングの品質保持のための指標とした。Chiの該値が小さいとき、1対1のラングミュア結合モデルに対するフィッティングの正確性が高いことを意味する。ほとんどのHitsでは、Chiの相対値は10%以下であった。リガンド結合における反応単位(RU)が、抗体捕捉のRUの2%以上である場合、結果は有効であると判断した。抗体捕捉のRUに対し2%未満のリガンド結合のRUを示すサンプルは、捕捉された抗体へのPDL1の特異的な結合がないことを示すものと考えられた。
【0250】
PDL1/PD-1ブロッキングELISA:
2μg/mlのPD-1を含む50μlのPBSを添加し、ELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、ウェルあたり450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、ウェル当たり300μlのブロッキングバッファを添加し、旋回ミキサー上で室温で1時間処理した。次に、PDL1を、250ng/mlの所望の最終濃度より20倍高い濃度で、ブロッキングバッファで希釈した。アッセイ感度を更に調整し、幾つかのクローンを、40ng/mlのPDL1の存在下において解析した。次に、非結合型のプレート中で114μlの各上清を、6μlのPDL1を含むブロッキングバッファで希釈し、プレートを回転ミキサー上で室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートをウェルあたり450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードで3回洗浄し、50μlの各希釈液をELISAプレートに添加した。プレートを穏やかに振とうしながら室温で1.5時間インキュベートした。ウェル当たり450μlの洗浄バッファにより3回洗浄した後、50μlの10ng/mlのストレプトアビジン-ポリHRP40をELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分の間発色させた。最後に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いてプレートを450nmで測定した。
【0251】
PDL1/B7-1ブロッキングELISA:
4μg/mlのB7-1を含む50μlのPBSを添加し、ELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、ウェルあたり450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、ウェル当たり300μlのブロッキングバッファを添加し、旋回ミキサー上で室温で1時間処理した。次に、PDL1を、500ng/mlの所望の最終濃度より20倍高い濃度で、ブロッキングバッファで希釈した。次に、非結合型のプレート中で114μlの各上清を、6μlのPDL1を含むブロッキングバッファで希釈し、プレートを回転ミキサー上で室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートをウェルあたり450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードで3回洗浄し、50μlの各希釈液をELISAプレートに添加した。プレートを穏やかに振とうしながら室温で1.5時間インキュベートした。ウェル当たり450μlの洗浄バッファにより3回洗浄した後、50μlの10ng/mlのストレプトアビジン-ポリHRP40をELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分の間発色させた。最後に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いてプレートを450nmで測定した。
【0252】
細胞ベースのアッセイ(レポーター遺伝子)におけるPDL1/PD-1のブロッキング:
更にHitsを解析するため、両方の相互作用分子を細胞表面に発現されたときのPDL1/PD-1相互作用を中和するそれらの能力を、CHO/PDL1/TCR活性化因子及びJurkat/PD-1細胞を用いて試験した。細胞培地(DMEM/F12、10%のFCS)100μl中の35,000個のCHO/PDL1/TCR活性化細胞を、白色の培養プレートの内側ウェルに添加し、37℃及び5%COで16~20時間インキュベートした。翌日、95μlの細胞培養培地を各ウェルから除去し、50μlのスクリーニングされたB細胞の上清、又は最大シグナルの0%、50%及び100%を生じさせるとして測定された濃度の陽性コントロールであるアベルマブを添加し、プレートを30分間37℃でインキュベートした。次に、アッセイバッファ(10%のFCSを有するRPMI1640)で400,000細胞/mlに希釈したエフェクターJurkat細胞を、各ウェルに50μlで添加し、プレートを37℃及び5%のCOで6時間インキュベートした。最後に、製造業者のプロトコルに従い調製したルシフェラーゼ基質(BPS Bioscience)を、ウェル当たり50μLで添加し、プレートを暗所で30分間インキュベートし、発光をTopcountを用いて測定した。
【0253】
SPRによる種特異性:cyno及びマウス
また、ヒトPDL1への結合について記載したのと同様のSPRセットアップを用いて、カニクイザル及びマウスのPDL1に対する結合動態を測定したが、その際、ヒトPDL1を、それぞれカニクイザル又はマウスPDL1で置き換えた。
【0254】
スクリーニングHitsの選抜:
B細胞上清における最終的なクローンのモノクローナル抗体の薬理学的特性を表4に示す。
【0255】
実施例3:Hitの確認:
クローニング及び産生:
Hitの確認のために選抜されたクローンの同定に続き、これらのウサギ抗体をクローニング、発現及び精製し、更なる特徴解析に供した。対応する軽鎖及び重鎖可変ドメインのクローニングでは、適切な哺乳動物発現ベクターにDNA断片のインビトロライゲーションを行った。ウサギIgGの軽鎖及び重鎖の不変領域のコンセンサス配列を含むこれらの発現ベクターを同時発現させ、それらを会合させ、完全に機能的なウサギモノクローナルIgGを分泌させた。ベクター構築後、得られた構築物の配列を再度確認し、プラスミドDNAを増幅及び精製し、哺乳動物細胞へのトランスフェクションに供した。
【0256】
ウサギ抗体重鎖及び軽鎖のための発現ベクターを、脂質ベースのトランスフェクション試薬によりトランジェントな異種発現用の哺乳動物の浮遊細胞系にトランスフェクションした。分泌されるモノクローナルIgGの発現レベルを高めるため、重鎖及び軽鎖ベクターの比などの条件を最適化した。発現用培養細胞を振とう培養装置で7日間培養した。異種発現期間の終わりに、細胞培養上清を遠心分離により回収した。次に、分泌されたウサギIgGを、プロテインAビーズによりアフィニティ精製した。IgGロードしたビーズを洗浄し、精製された抗体をpHのシフトにより溶出させた。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、280nmでの紫外線吸収、及びサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)を用い、溶出分画の同一性、含量及び純度を解析した。表5は、rIgGの製造及び特徴解析をまとめたものである。
【0257】
【表17】
【0258】
【表18】
【0259】
SPRによる、hPDL1に対する親和性:
MASS-1 SPR装置(Sierra Sensors社)を用い、表面プラズモン共鳴(SPR)により、ヒトPDL1に対する精製されたモノクローナルウサギ抗体の結合動態を測定した。抗体のほとんどが非常に遅いoff速度を示したため、高塩濃度を含むバッファ中で37℃で実験を実施し、抗体の違いによる結合親和性の違いを明瞭にした。標準的なアミンカップリング手順を用いて、センサーチップ(SPR-2アフィニティーセンサー、High Capacity Amine、Sierra Sensors社)に、ウサギIgG(Bethyl Laboratories社、カタログ番号A120-111A)のFc領域に特異的な抗体を固定化した。ウサギモノクローナル抗体を、固定化抗ウサギIgG抗体により捕捉した。モノクローナル抗体を捕捉した後、150mMのNaCl及び150mMのMgClを含むHEPESバッファで、90~0.35nMの範囲で二倍段階希釈したPDL1を試験に用い、バイオセンサーチップに捕捉されるIgGへの結合、及びセンサーチップに捕捉されるIgGからのタンパク質の分離の試験を、5分間にわたり行った。各注入サイクルの後、10mMのグリシン-HClを2回注入して表面を再生した。見かけの分離(kd)及び会合(ka)定数、並びに見かけの分離平衡定数(K)は、1対1のラングミュア結合モデルを用い、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors社)により算出し、Chiの相対値(外挿された検体の最大結合レベルで正規化したChi)に基づき、フィットの品質をモニターし、それをカーブフィッティングの品質保持のための指標とした。Chiの該値が小さいとき、1対1のラングミュア結合モデルに対するフィッティングの正確性が高いことを意味する。ほとんどのHitsは、Chiの相対値は10%以下であった。表6は、更なる開発のために選抜されたウサギIgG抗体を示す。
【0260】
【表19】
【0261】
PDL1/PD-1ブロッキングELISAにおける力価:
PD-1へのPDL1の結合を中和する力価を、競合ELISAにおいて評価した。ELISAプレートに、4μg/mlのPD-1を含むPBS 50μlを添加し、4℃で一晩被覆した。翌日、ウェルあたり450μlの洗浄バッファ(PBS、0.005%のTween 20)によりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、ウェル当たり300μlのブロッキングバッファ(PBS、1%のBSA、0.2%のTween 20)を添加し、旋回(nutating)ミキサー上で室温で1時間処理した。次に、ブロッキングバッファでPDL1を、1ng/mlの最終濃度に希釈した。次に、非結合型のプレート中で、試験するrIgGを300~0.005ng/mlの範囲のPDL1の系列希釈を含むバッファ120μlをウェル毎に調製し、プレートを室温で30分間インキュベートした。ELISAプレートを450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードで3回洗浄し、50μlの各希釈液をELISAプレートの隣接するウェルに添加し、反復サンプルとした。プレートを穏やかに振とうしながら室温で90分間インキュベートした。450μlの洗浄バッファにより3回洗浄した後、50μlの10ng/mlのストレプトアビジン-ポリHRP40をELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分の間発色させた。最後に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いてプレートを450nmで測定した。
【0262】
クローン33-03-G02及び37-20-B03に由来するウサギIgGはPDL1/PD-1相互作用を中和する高い力価を示した。クローン37-20-B03は、アベルマブより約2倍高い力価を有した(表7)。選抜されたクローンにおいて得られた用量応答曲線を図1に示す。
【0263】
【表20】
【0264】
PDL1/B7-1ブロッキングELISAにおける力価:
PDL1/B7-1相互作用を中和する力価を、競合ELISAにおいて評価した。ELISAプレートに、4μg/mlのB7-1を含むPBS 50μlを添加し、4℃で一晩被覆した。翌日、ウェルあたり450μlの洗浄バッファ(PBS、0.005%のTween 20)によりオーバフローモードでプレートを3回洗浄し、ウェル当たり300μlのブロッキングバッファ(PBS、1%のBSA、0.2%のTween 20)を添加し、旋回(nutating)ミキサー上で室温で1時間処理した。次に、ブロッキングバッファでPDL1を、40ng/mlに希釈した。次に、非結合型のプレート中で、試験するrIgGを900~0.015ng/mlの範囲のPDL1の系列希釈を含むバッファ120μlをウェル毎に調製し、プレートを室温で30分間インキュベートした。ELISAプレートを450μlの洗浄バッファによりオーバフローモードで3回洗浄し、50μlの各希釈液を2回ELISAプレートの隣接するウェルに添加し、反復サンプルとした。プレートを穏やかに振とうしながら室温で90分間インキュベートした。450μlの洗浄バッファにより3回洗浄した後、50μlのストレプトアビジン-ポリHRP40をELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分の間発色させた。最後に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いてプレートを450nmで測定した。選抜されたウサギIgGは、表8で示すように、アベルマブと同等の力価でPDL1/B7-1相互作用をブロックすることができた。選抜されたクローンにおいて得られた用量応答曲線を図2に示す。
【0265】
【表21】
【0266】
細胞ベースのPDL1/PD-1ブロッキングアッセイにおける力価(レポーター遺伝子):
PD-1にPDL1結合を中和する力価を、細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて評価した。細胞培地(DMEM/F12、10%のFCS)100μl中の35,000個のCHO/PDL1/TCR活性化細胞を、白色の細胞培養プレートの内側のウェルに添加し、37℃及び5%COで16~20時間インキュベートした。翌日、95μlの細胞培地を各ウェルから除去し、試験しようとする分子の2倍の希釈系列(3,000~0.46ng/mlまで)、及び対照アベルマブ溶液を50μl添加した。次に、アッセイバッファ(10%のFCSを有するRPMI1640)中に400,000細胞/mlに希釈したエフェクターJurkat細胞を50μlで各ウェルに添加し、プレートを37℃及び5%のCOで6時間インキュベートした。最後に、製造業者のプロトコルに従い調製したルシフェラーゼ基質(BPS Bioscience)を、ウェル当たり50μLで添加し、プレートを暗所で30分間インキュベートし、発光をTopcountを用いて測定した。選抜されたクローンは、細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて、PDL1/PD-1相互作用をブロックすることができた(表9参照)。選抜されたクローンにおいて得られた用量反応曲線を図3に示す。
【0267】
【表22】
【0268】
FACSによる、PDL1発現細胞に対する結合:
PDL1発現細胞に対する結合力価を、選抜されたIgGについて測定した。50,000個のCHO-PDL1発現細胞を、丸底の組織培養処理されていないた96ウェルプレートに分配した。100μlのPBSにより、5分間、400×gの遠心分離により細胞を2回洗浄した。試験するrIgGs及びコントロールIgGアベルマブを、染色バッファ(PBS、加熱により不活化したBCS2%、2mMのEDTA)中で2,000~0.128ng/mlに調製した系列希釈調製100μl中に細胞を再懸濁した。回転ミキサー上で4℃で1時間インキュベートした後、100μlの染色バッファ及び400×gでの5分間の遠心ステップにより、3回、細胞を洗浄した。次に、ウサギIgGで処理した細胞を、2μg/mlのヤギ抗ウサギIgG(APC標識)を含む染色バッファ100μl中に再懸濁し、またアベルマブ(ヒトIgG1)で処理した細胞を、2μg/mlのヤギ抗ヒトIgG(APC標識)を含む染色バッファ100μl中に再懸濁した。プレートを回転ミキサー上で4℃で1時間インキュベートした。プレートを、100μlの染色バッファで3回洗浄し、最終50μlの体積で染色バッファ中に再懸濁した。最後に、ウェル当たりの20,000のイベントのAPCシグナルを、Novocyteフローサイトメーターシステム(ACEA Bioscience社)を用いたフローサイトメトリーにより解析した。PDL1発現細胞の結合が、全ての評価したウサギIgGについて確認できた。選抜されたウサギIgGの細胞内PDL1に対する結合力価を表10に示す。
【0269】
【表23】
【0270】
SPRによる種特異性:cyno:
ヒトPDL1に対する結合について記載したのと同様の設定を用いて、カニクイザルPDL1に対する結合動態も測定したが、この場合、ヒトPDL1をカニクイザルPDL1と置き換えた。カニクイザルPDL1に対する結合は、全ての選抜されたIgGについて確認した(表11)。
【0271】
【表24】
【0272】
SPRによる種特異性:マウス:
ヒトPDL1に対する結合について記載したのと同様の設定を用いて、カニクイザルPDL1に対する結合動態も測定したが、この場合、ヒトPDL1をマウスPDL1と置き換えた。クローン33-03-G02及び37-20-B03に由来する選抜されたウサギIgGについては、マウスPDL1に対する結合は検出されなかった。
【0273】
実施例4:ヒト化のためのクローンの選抜
Hit確認において得られたデータに基づき、CDRをVH3、VH4又はVH1A若しくはVH1Bベースのフレームワークに融合させることにより、全てのクローンをヒト化した。最良の親和性及び力価を得るため、rIgG、33-03-G02及び37-20-B03としてのヒトPDL1に最良の親和性を示した2つのクローンについて、グラフト化により異なる構造を付与し、更なる最適化を行った。以下のグラフト変異体を、クローン33-03-G02及び37-20-B03のために適用した:
CDRグラフト - ヒトフレームワーク上へのウサギCDRのグラフト、
IFグラフト - CDRグラフト+全てのウサギVL/VH界面の残基のグラフト、
完全グラフト - CDRグラフト+AHoヒト化プロトコルに従っているフレームワーク残基(抗原界面(AIF)残基(潜在的に抗原(AHoに従う)と接触するウサギ残基)は、界面形成の際の溶媒のアクセスしやすさを考慮し、20%以上の残基変更に限定し、それにより変異数(ウサギフレームワーク残基)を減少させた)。
【0274】
大腸菌における誘導を伴う一晩の小スケール発現により、不溶性封入体としてタンパク質を異種発現させた(但し、PRO997については、上記のrIgG発現と同様、哺乳動物CHO-S細胞において産生させた)。幾つかの洗浄段階を含む、細胞残渣及び他の宿主細胞由来の不純物を除去する遠心分離プロトコルにより、ホモジナイズした細胞ペレットから封入体を単離した。精製された封入体を変性バッファにおいて可溶化し、天然にフォールティングされたモノマーscFvをミリグラム単位で生じさせるスケーラブルなリフォールディングプロトコルに従い、scFvsをリフォールディングさせた。この際、標準化されたプロトコルを用いscFvsを精製した。リフォールディング後の生成物を親和性クロマトグラフィにより捕捉し、精製されたscFvsを得た。サンプルのSECポリッシングに利用できる量が確保できなかったため、所望の純度を有する主フラクションのみを用いた。加えて、示差走査蛍光測定(DSF)により、scFvsの融解温度を測定した(詳細は後述する)。表12は、VH4 CDRグラフトscFv分子の製造を要約する。2つのクローンがそれらのCDR-ループに不対のシステイン残基を含んでいたため、C57S変異を、表12に示すようにクローン37-20-B03に導入した。
【0275】
更なるグラフト変異体を、幾つかの選抜されたクローンについて設計し、それらの最初の調製及び特徴解析について、表13(AHo付番)及び表14に要約する。
【0276】
実施例5:ヒト化scFvsの薬物動態解析:
次に、Hit確認フェーズについて記載したのと同様のアッセイ系を用いて、ヒト化scFvsの主要な薬物動態特性を解析したが、但しscFv分子の異なるフォーマットに応じて適宜改良を行った。
【0277】
5.1 ヒトPDL1に対する親和性
ヒトPDL1に対するヒト化scFvsの親和性は、T200装置(Biacore、GE Healthcare社)によるSPR分析により測定した。この実験では、Fcタグを付されたヒトPDL1を、GE Healthcare社製のHuman Antibody Captureキットを用いて捕捉した。各検体注入サイクルの後、CM5センサーチップを再生し、新たに抗原を捕捉した。ランニングバッファにおいて希釈した0.12~30nMの変動する検体濃度による用量応答マルチサイクル反応速度アッセイを用い、検体としてscFvsを5分間にわたり注入し、タンパク質の解離を12分間にわたり進行させた。得られたサンサーグラムを、1:1の結合モデルを使用してフィットさせた。表15に示す通り、ヒトPDL1に対する結合が、試験したヒト化scFvsにおいて確認された。
【0278】
5.2.競合ELISAによるPDL1/PD-1相互作用の中和:
前述したのと同様の手順に従い、競合ELISAにより、PDL1のPD-1への結合を中和する力価を評価した。各プレートにおける個々のIC50値を、各プレートに添加した対照分子であるアベルマブのIC50に対してキャリブレーションした(相対IC50:(IC50アベルマブ/IC50試験scFv))。表16に力価についてまとめるように、本アッセイにおいて、アベルマブに対して最大5倍のIC50が算出できることが明らかである。試験した全てのscFvsが、アベルマブと同等又はより高い力価を有した。
【0279】
5.3.競合ELISAによるPDL1/B7-1相互作用の中和
前述したのと同じ手順に従い、競合ELISAにより、B7-1へのPDL1の結合を中和する力価を評価した。各プレートにおける個々のIC50値を、各プレートに添加した対照分子であるアベルマブのIC50に対してキャリブレーションした(相対IC50:(IC50アベルマブ/IC50試験scFv))。表17に力価についてまとめるように、本アッセイにおいて、アベルマブに対して最大10倍のIC50が算出できることが明らかである。試験したscFvsは、アベルマブより高い又は同等の力価を有した。
【0280】
5.4.NFATレポーター遺伝子アッセイにおけるPDL1/PD-1相互作用の中和
PD-1へのPDL1の結合を中和する能力について、上記の通りの細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて評価した。対照アベルマブと同様、試験する各分子を、系列希釈としてプレートに添加した。各プレートにおける個々のIC50値を、各プレートに添加した対照分子であるアベルマブのIC50に対してキャリブレーションした(相対IC50:(IC50アベルマブ/IC50試験scFv))。表18に力価についてまとめるように、本アッセイにおいて、アベルマブに対して最大5倍のIC50が算出できることが明らかである。試験したscFvsは、より高い又は同等の力価を有した。
【0281】
【表25】
【0282】
【表26】
【0283】
【表27】
【0284】
【表28】
【0285】
【表29】
【0286】
【表30】
【0287】
【表31】
【0288】
5.5.フローサイトメトリーによるhPDL1発現細胞に対する結合:
PDL1発現細胞に対する結合力価を、幾つかの分子について測定した。Hit確認の間、同じ細胞系を(CHO-PDL1及びCHO-K1)用いたが、scFvは、APC標識されたプロテインLにより検出された。対照アベルマブと同様、試験する各分子を、系列希釈にてプレートに添加した。各プレートにおける個々のIC50値を、各プレートに添加した対照分子であるアベルマブのIC50に対してキャリブレーションした(相対IC50:(IC50アベルマブ/IC50試験scFv))。力価を表19にまとめる。
【0289】
【表32】
【0290】
5.6.種による交差反応性(SPRによる、カニクイザル及びマウスPDL1に対する結合)
カニクイザルPDL1に対する交差反応性を、ヒトPDL1において用いたのと同様のアッセイにおいて測定し、その際、Shino Biological社製の組換えPDL1を用いた。表20は、全ての試験したscFvsについて得られた親和性を要約する。ヒトPDL1に対する結合を示す試験した全てのscFvは、カニクイザルPDL1にも結合を示した。
【0291】
【表33】
【0292】
5.7.SPRによる、PDL1 対 PDL2の選択性
T200装置(Biacore、GE Healthcare社)を用いたSPR分析により、ヒト化scFvのPDL2への結合について試験した。この実験では、Fcタグを付されたヒトPDL2を、GE Healthcare社製のHuman Antibody Captureキットを用い捕捉した。各検体注入サイクルの後、CM5センサーチップを再生し、新たに抗原を捕捉した。ランニングバッファにおいて180nMの濃度に希釈された検体としてscFvを5分間にわたり注入し、タンパク質の分離を12分間進行させた。表21に列挙される試験した全てのヒト化scFvは、PDL2に対する結合が観察されなかった。
【0293】
【表34】
【0294】
実施例6:ヒト化scFvの生物物理学的特徴解析:
アベルマブより良好な親和性を有する選抜されたドメインについて、より大規模なスケール(0.2L~1.2Lの発現体積)で製造した。更に、精製後、5kDの分子量カットの遠心濃縮チューブを用いて、タンパク質サンプルを10mg/mL以上まで濃縮した。安定性評価のための材料の製造を、表22にまとめる。
【0295】
6.1.保存安定性試験:
ヒト化scFvを安定性試験(例えば4週間の安定性試験)に供し、その際、scFvを10mg/mlで、緩衝水溶液(最終的なバッファ組成は、50mMのNaCiP、150mMのNaCl、pH6.4)中に調製し、4週間、-80℃以下、4℃及び40℃で保存した。最低限、製剤中のモノマー及びオリゴマーのフラクションを用い、1週間後、2週間後、及び各試験終了後の、SE-HPLCピーク面積の積分により評価した。その他の時点については、幾つかの分子において記録した。表23は、試験の7日目と、28日目のエンドポイントにおいて得られた測定値を比較したものである。
【0296】
【表35】
【0297】
【表36】
【0298】
6.2.凍結融解安定性試験:
前述の保存安定性試験に加えて、性能の優れたscFv分子の適合性について、凍結融解(F/T)サイクルにより評価した(コロイド安定性)。F/T安定性評価のため、保存安定性試験と同じ分析法(SE-HPLC、SDS-PAGE)及びパラメータ(%モノマー含量及び%モノマー損失)を適用し、5F/Tサイクルにおける分子の品質をモニターした。表24は、5回の反復するF/Tサイクルにおける%モノマー含量損失の過程を例示する。特段の凍結融解試験を行わなかったため、28日にわたり得られた、保存安定性試験で用いた-80℃サンプルにより得られた凍結融解データを後記のグラフに示す。F/Tサイクル反復の後、モノマー含量損失が4%より大きい分子はなかった。
【0299】
【表37】
【0300】
6.3.熱変性:
選抜されたscFv構築物の熱変性データをDSF測定から得、表25に示す。得られたTm値は、ボルツマンの式へのデータのフィッティングにより測定した。表25に、DSFにより算出された融解温度をまとめる。
【0301】
【表38】
【0302】
本発明の抗体を含む多重特異性分子:
本発明の抗体を含む例示的な多重特異性分子を、表3に示す。
【0303】
実施例7:PDL1、CD137、HSA及びMSAに対する親和性:
方法:
Biacore T200装置(GE Healthcare)を用いたSPR測定により、異なる種のPDL1に対する親和性を測定した。ヒトIgGのFc領域に特異的な抗体を、アミンカップリングにより、センサーチップ(CM5センサーチップ、GE Healthcare社)に固定した。全てのフォーマットにおいて、Fcを含むモリソンフォーマットを除き、異なる種由来のPDL1-Fcキメラタンパク質を、固定化抗体により捕捉した。PDL1特異的分子の3倍系列希釈(0.12~90nM)を、3分間にわたりフローセルに注入し、分離を10分間にわたりモニターした。各注入サイクルの後、3MのMgCl溶液を1回注入して表面を再生した。見かけの分離(k)及び会合(k)速度定数、並びに見かけの分離平衡定数(KD)は、1対1のラングミュア結合モデルを用いて算出した。異なる種由来のCD137-Fcキメラタンパク質を固定化抗体により捕捉したことを除き、PDL1の場合と同一の設定を用いて、異なる種のCD137に対する親和性を測定した。
【0304】
Fcを含むフォーマットは、ヒトIgGのFc領域に特異的な抗体により直接捕捉した。PDL1細胞外ドメイン又はCD137細胞外ドメインの90~0.35nMの範囲の2倍階段希釈を用い、バイオセンサーチップに捕捉されるIgGへの結合について試験した。各注入サイクルの後、3MのMgCl溶液を1回注入して表面を再生した。
【0305】
Biacore T200装置(GE Healthcare)を用いたSPR測定により、異なる種の血清アルブミン(SA)に対する分子の親和性を測定した。アミンカップリング化学的方法を用いて、CM5センサーチップ(GE Healthcare社)にSAを直接カップリングさせた。再生スカウンティング及び表面性能試験を行い最良のアッセイ条件を検討した後、用量応答を測定し、得られた結合曲線をダブルリファレンス(空の基準チャネル及び検体注入なし)し、1:1のラングミュアモデルを用いてフィットさせ、速度論的パラメーターを取得した。アッセイは、pH5.5の1×PBS-Tweenバッファにおいて実行した。
【0306】
結果:
ヒト化構築物の結合動態の測定の結果、クローン33-03-G02のCDRと構造グラフト(STR)とを比較したとき、PDL1に対する親和親和性の違いが示され、STRグラフトは、同じクローンのCDRグラフトと比較し20倍の親和性の向上が示される(表26のPRO885 対 PRO1126)。クローン33-03-G02のSTRグラフトと比較したとき、クローン37-20-B03(PRO997)由来のCDRグラフトは約2倍高い親和性を示す。33-03-G02のCDRグラフトの結合親和性は、それらを異なる多重特異性のフォーマットに組み合わせたとき、親のscFvの結合能と同等となる(PRO830を、PRO885、PRO951、PRO1123、PRO1124、PRO963、PRO966、PRO1057、PRO1058、PRO1059及びPRO1060と比較したとき、表26)。両クローン由来のscFvは、ヒト及びカニクイザルPDL1とほとんど同等の親和性を示す(表26のPRO977及びPRO830を参照)。
【0307】
【表39】
【0308】
【表40】
【0309】
実施例8:PDL1及びTCR活性化因子分子を発現するCHO細胞と、及びPD-1を発現しNFAT応答エレメント下のルシフェラーゼ遺伝子を含むJurkat細胞と、を用いる細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおける、PDL1/PD-1相互作用のブロック:
方法:
生物発光レポーター遺伝子アッセイにおいて、NFAT(活性化T細胞の核内因子)-ルシフェラーゼレポーターと、ヒトPD-1を安定発現する加工されたJurkat T細胞を、エフェクターT細胞として機能させる。ヒトPDL1及びT細胞レセプター(TCR)活性化因子を安定発現する細胞を、抗原提示細胞として機能させる。2つの細胞系を共培養することにより、TCR活性化因子/TCR複合体の結合を介して、Jurkat NFAT経路の活性化が誘導される。PDL1発現細胞の結合に応じて、PD-1エフェクターT細胞におけるPD-1シグナリングが、T細胞機能を阻害し、NFAT経路が阻害される。PD-1及びPDL1受容体の相互作用のブロックは、NFAT経路の再活性化につながる。
【0310】
細胞培地(DMEM/F12、10%のFCS)100μl中の35,000個のCHO/PDL1/TCR活性化因子(BPS Bioscience社)細胞を、白色の細胞培養プレートの内側ウェルに添加し、37℃及び5%のCOで16~20時間インキュベートした。翌日、95μlの細胞培地を各ウェルから除去し、試験する各分子を、3,000~0.46ng/mlの2倍希釈系列にて、対照アベルマブと共に、50μl添加した。次に、PD-1を発現するエフェクターJurkat細胞(BPS Bioscience社)をアッセイバッファ(10%のFCSを有するRPMI1640)中に400,000細胞/mlで希釈し、各ウェルに50μl添加し、プレートを37℃及び5%のCOで6時間インキュベートした。最後に、製造業者のプロトコルに従い調製したルシフェラーゼ基質(BPS Bioscience)を、ウェル当たり50μLで添加し、プレートを暗所で30分間インキュベートし、発光をTopcountを用いて測定した。
【0311】
結果:
PD-1へのPDL1の結合を中和する力価に対する、CDRセット及びフレームワーク選抜の影響を評価するため、3つの抗PDL1 scFvを、NFATレポーター遺伝子細胞ベースアッセイにおいて試験した。PRO830は、VH4フレームワークにグラフトするクローン33-03-G02のCDRセットを含み、PRO997及びPRO1013は、それぞれ、VH4又はVH1フレームワークにグラフトするクローン37-20-B03のCDRセットを含む。PRO830は、試験した3つのscFvの中で最も低い力価を有し、42.88ng/mlのIC50値であり、34.09ng/mlのIC50値を有するアベルマブと同等の力価を有する。PRO997は、最も強力な分子である。VH1フレームワークではなくVH4フレームワークにグラフトしたとき、同じCDRセットの力価が約2倍高かった。それぞれ、IC50値は11.12ng/ml 対 21.29ng/mlであった。(図4A及び表27)
【0312】
PD-1に対するPDL1の結合を中和する力価は、33-03-G02 PDL1ドメインを有する二重特異性分子を用い、ドメイン最適化の前(CDRグラフト)及び後(構造グラフト)に測定した。CDRグラフト(PRO885)を、構造グラフト(PRO1126)と比較した。ドメイン最適化は、IC50値がPRO885では137.2ng/ml、及びPRO1126では48.15ng/mlと、中和力価を3倍に向上させた。(図4B及び表27)。
【0313】
また、クローン33-03-G02のCDRグラフトを行った抗PDL1ドメインを有する2つの3重特異性分子、及び2つの異なるヒト血清アルブミン結合ドメインを用い、PDL1/PD-1相互作用を中和する力価、特に半減期の延長について評価した。PRO1057のHSAドメインもまた、マウス血清アルブミンと結合している。実験は、25mg/mlのHSAの存在下で行った。中和力価(IC50=665.1ng/ml)は、アベルマブより低かった。(図5及び表27)。
【0314】
【表41】
【0315】
血清において、いわゆるモリソンフォーマットを、細胞ベースの力価レポーター遺伝子アッセイにおいて試験した。このフォーマットでは、1つの特異性がIgG部分(二価)により生じ、第2の標的に対する特異性を有する2つのscFvが可撓性ペプチドリンカーを介して、IgGの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)に連結されている。試験する全てのモリソン分子は、IgGの両アーム上にクローン33-03-G02のCDRグラフトによる抗PDL1ドメインを担持するものとした。2つの構築物PRO1059及びPRO1060は、重鎖(HC)又は軽鎖(LC)のいずれかに、2つの抗CD137 scFvが融合している点で異なる。PRO1062は、PRO1060とは同じ構成を有するが、異なるCD137ドメインを有する。全ての分子の中和力価は同等であった(図6及び表27)。
【0316】
実施例9:競合ELISAを用いた、PD-1及びB7-1とのPDL1の相互作用のブロック
PDL1阻害剤の、PDL1とPD-1との、又はPDL1とB.71との間の相互作用をブロックする能力を評価するため、これらのアッセイを実施した。scFv、scDb、scDb-scFv及びモリソンを含む異なるフォーマットについて、競合ELISAにおいて解析し、対照IgGアベルマブと比較した。
【0317】
PDL1/PD-1競合ELISA:
4μg/mlのヒトPD-1を用い、4℃で一晩ELISAマイクロプレートをコーティングし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファで3回洗浄した。各ウェルに、1%BSA及び0.2%のTweenを含むPBS(希釈バッファ)を300μl添加し、プレートを室温で1時間ブロッキングした。1ng/mlのビオチン化ヒトPDL1を含む希釈バッファ中、300~0.005ng/mlの範囲の最終濃度となるよう、阻害剤の3倍連続希釈系列を調製した。混合物を回転ミキサー(21rpm)で穏やかに振とうしながら、室温で1時間プレインキュベートし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファによる3回の洗浄サイクルの後、マイクロプレートに添加した。プレートを穏やかに振とうしながら室温で1.5時間インキュベートし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファで3回洗浄した後、10ng/mlのストレプトアビジン-ポリHRP40を各マイクロプレートのウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、TMBを添加した。6分後、1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いて吸光度を450nmで測定した。IC50値の算出のため、対照を差し引いた値を用いGraph Pad Prismにおいて4-パラメータロジスティック(4PL)曲線フィットを行った。
【0318】
図7及び表28に例示するように、競合ELISAにおいて試験したときに、全てのPDL1阻害剤は、PDL1とPD-1との相互作用をブロックした。scFv PRO830は同等の力価で相互作用をブロックし、一方、PRO997及びPRO1013は、アベルマブより著しく低いIC50値を示し、すなわち強力な阻害剤であった。多重特異性フォーマット(すなわちscDbs又はモリソン)と組み合わせたとき、全ての分子はそれらの阻害特性を維持していた。PRO885はアベルマブより強力でなかったのに対し、改善された抗PDL1ドメインを含むPRO1126では低いIC50値が測定された。アベルマブと比較したとき、モリソンフォーマットはわずかに力価が低かった。ヒト血清アルブミンの存在下でのPRO1057の中和効果も示したが、IC50値が約2倍高かった。
【0319】
PDL1/B7-1競合ELISA:
4μg/mlのヒトB7-1を用い、4℃で一晩ELISAマイクロプレートをコーティングし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファで3回洗浄した。各ウェルに、1%BSA及び0.2%のTweenを含むPBS(希釈バッファ)を300μl添加し、プレートを室温で1時間ブロッキングした。40ng/mlのビオチン化PDL1を含む希釈バッファ中、900~0.015ng/mlの範囲の最終濃度となるよう、阻害剤の3倍連続希釈系列を調製した。混合物を回転ミキサー(21rpm)で穏やかに振とうしながら、室温で1時間プレインキュベートし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファによる3回の洗浄サイクルの後、マイクロプレートに添加した。プレートを穏やかに振とうしながら室温で1.5時間インキュベートし、ウェル当たり450μlの洗浄バッファで3回洗浄した後、10ng/mlのストレプトアビジン-ポリHRP40を各マイクロプレートのウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファで3回洗浄し、TMBを添加した。6分後、1M HClを添加して酵素反応を停止させ、基準波長として690nmを用いて450nmで吸光度を測定した。IC50値の算出のため、対照を差し引いた値を用いGraph Pad Prismにおいて4-パラメータロジスティック(4PL)曲線フィットを行った。
【0320】
PRO1126を除く、全てのPDL1阻害剤について、B7-1とPD-1との相互作用をブロックするそれらの能力を試験した。PRO830はアベルマブと同等の力価を示したが、PRO997及びPRO1013は低いIC50測定値であった。全てのscDb及びモリソンも、PDL1とB.7-1との間の相互作用を阻害した。scDb PRO885はアベルマブと同等の力価を示したが、モリソンのIC50値は約2~3.4倍低かった。図8及び表28にデータを示す。
【0321】
【表42】
【0322】
実施例10:細胞ベースのアッセイを用いた、超抗原SEAで刺激したヒトPBMCにおけるPDL1ブロック及び同時のCD137刺激による刺激効果の評価:
この実験では、PD-1/PDL1の阻害及びCD137アゴニズムの相乗効果を評価した。アッセイでは、超抗原であるStaphylococcalエンテロトキシンA(SEA)により刺激した末梢血単核細胞(PBMC)を用い、それぞれ抗原提供細胞(APC)及びT細胞上でのPDL1、並びにT細胞上でのCD137の発現を誘導した。抗PDL1×CD137分子を適用することにより、2つのT細胞制御シグナル伝達経路を同時に標的とし、すなわち、二重特異性抗PDL1×CD137分子(PRO885)により媒介される免疫学的シナプス形成を経た、阻害的PD-1/PDL1経路の阻害及びCD137経路の活性化を行った。インターロイキン-2(IL-2)の分泌によるT細胞の活性化を評価し、ベンチマーキング対照抗体であるアベルマブにより媒介されるPDL1阻害により媒介される効果と比較した。加えて、抗PDL1 scFvであるPRO997を試験し、同じ実験的セットアップにおいてアベルマブと比較した。
【0323】
末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心法により新鮮なヒト全血から単離した。次に、抗CD56抗体及びMACS細胞分離キット(Miltenyi Biotec社)を用い、PBMCからNK細胞を減少させた。次に、96ウェルプレートにウェル当たり100,000個のPBMCを添加し、続いて10ng/mlの濃度でSEAを含むアッセイバッファ中の、PRO885、PRO997及びアベルマブの希釈系列を調製し、添加した。37℃及び5%のCOで96時間培養の後、細胞上清を回収し、培養上清中のヒトインターロイキン-2(IL-2)レベルを、キットの取扱説明に従い、BioLegend社製のIL-2ヒトELISA MAXアッセイを用いて定量した。IL-2標準曲線からIL-2濃度を補間し、逆算し、EC50値の算出のため、アベルマブ及びPRO885の濃度に対してプロットした。
【0324】
図9に示すとおり、PD-1/PDL1相互作用のブロック及び同時の二重特異性分子PRO885の添加によるCD137の刺激に続き、T細胞によりIL-2が分泌された。アベルマブと比較したときに、PRO885は高いT細胞活性化及びより良好な力価を示した(PRO885:EC50=39.92ng/ml、アベルマブ:EC50=69.89ng/ml、表29)。この発見は、二重特異性抗PDL1×CD137 scDb PRO885は、アベルマブによる単なるPDL1のブロックよりも強力にT細胞刺激を誘導できることを証明するものである。更に、高親和性抗PDL1 scFv PRO997は、T細胞の刺激において、アベルマブより強力であることが明らかとなった(PRO997:EC50=40.86ng/ml、アベルマブ:EC50=90.18ng/ml、表29)。
【0325】
【表43】
【0326】
実施例11:ヒト細胞系由来の肺癌異種移植モデルHCC827における、抗PDL1抗体の抗腫瘍有効性の評価:
抗PDL1 IgG1抗体PRO1137(配列番号90及び91)の抗腫瘍活性を、Taconic社製の免疫不全NOGマウス系統及び同種異系ヒト末梢血単核細胞を用いた、ヒトHCC827 NSCLC異種移植において評価した。移植されたヒトTリンパ球は、マウス細胞由来の外来の主要組織適合(MHC)クラスI及びII及び他の抗原に対する異物反応性を示す。その結果、Tリンパ球は様々な器官への炎症性の浸潤を示し、数週間後に動物の死をもたらし、またこのプロセスは異種移植対宿主病(xGVHD)として公知である。免疫調節性抗体(例えば抗PDL1及び抗CD137)による処理の結果、xGVHDを悪化させることが示されている(Sanmamed MF et al.Nivolumab and urelumab enhance antitumor activity of human T lymphocytes engrafted in Rag2-/-IL2Rgnull immunodeficient mice.Cancer Res 2015;75(17):3466-3478)。
【0327】
試験セットアップ及び処理スケジュール:雌のNOGマウスに、5×10個のHCC827細胞を片肢に注入した。細胞は、50%のPBS中の細胞懸濁液と50%のマトリゲルとの混合物中、100μlの全注入体積で注入した。腫瘍細胞をNOGマウスへ注入し、腫瘍移植(80~100mmのメジアン群腫瘍体積)を成功させた後、マウスへの静脈内注射を、5×10ヒトPBMCで置換した。ランダム割り当ての日、各群の4匹のマウスはドナーAのPBMCで再構成し、さらに4匹のマウスはドナーBのPBMCで再構成した。処理はPBMC注入の1~2時間後に開始し、以下の通り適用した。
【0328】
【表44】
【0329】
NF-ATレポーター遺伝子アッセイにおいてPD-1/PDL1相互作用をブロックする抗体のインビトロ活性に基づき、(マウス当たり)アベルマブ0.1mgの用量をモデルとして同じ相対活量を得るためのPRO1137の用量を0.2mgと設定した。したがって、0.2mgのPRO1137の用量は、アベルマブの0.1mgの用量に匹敵し、1相対単位(1r.U)として示すことができる。体重測定及び腫瘍体積のカリパス副木測定を週2回行った。試験結果に応じて動物を所定の時点で屠殺した。全ての動物を、「同じ」時点(17日目及び18日目)に屠殺した。処理能力上の理由から、第1日目に各群の第1の半分についてサンプル回収及び処理を行い、翌日に各群の残りの第2の半分について同じサンプル回収及び処理を行った。2人の異なるドナー由来のPBMCにより再構成した動物は、2つのサンプリングコホートを適切に反映するものであった。
【0330】
結果:免疫不全NOGマウス系統及び同種異系ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を使用した、ヒトHCC827 NSCLC異種移植における抗PDL1 PRO1137による抗腫瘍活性を、腫瘍体積を測定することにより評価した(図10)。腫瘍体積を週当たり2回測定し、マウスを17及び18日目に安楽死させた。腫瘍体積を、処理開始時の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として正規化した。図10に示すとおり、PRO1137モノクローナル抗体による処理は、ビヒクルコントロール群と比較し腫瘍成長の低減を示した。特に、PRO1137による処理は、体重(メジアン値)の減少をもたらさず、それはすなわち、該分子は試験投与レベルでは十分許容されるものであることを示唆する(図11)。
【0331】
実施例12:ヒトの臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフト化したNOGマウスにおける、ヒトPRO1137の抗腫瘍効果の評価:
ヒトPRO1196(抗PDL1 IgG1、配列番号92及び93)の抗腫瘍活性を、ヒトの臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフト化したNOGマウスを用いたヒトHCC827 NSCLC異種移植において、ビヒクル治療又はアベルマブと比較した。
【0332】
試験セットアップ及び処理スケジュール:ヒト臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフト化した雌のNOGマウスの皮下に、HCC827 NSCLC細胞を注射した。マウスの片肢に、5×10個のHCC827細胞を注入した。細胞を、50%のPBS中細胞懸濁液と、50%のマトリゲルと、の混合物として、100μlの全注入体積で注入した。腫瘍細胞をNOGマウスへ注入し、腫瘍移植を成功させた後(群あたり80~100mmの腫瘍体積メジアン値)、マウス(n=10)を処理群にランダム化した。
【0333】
【表45】
【0334】
体重測定及びカリパスによる腫瘍体積測定を週2回行った。腫瘍を、処理後25、29及び30日目に回収した。
【0335】
結果:ヒトのさい帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植した免疫不全NOGマウス系統を用いた、ヒトHCC827 NSCLC異種移植における、PRO1196(抗PDL1 IgG1、配列番号92及び93)の抗腫瘍活性を、腫瘍体積を測定することにより評価した(図12)。腫瘍体積を週当たり2回測定し、マウスを25、29及び30日目に安楽死させた。腫瘍体積を、処理開始時の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として正規化した。図12に示すとおり、PRO1196及びアベルマブによる処理は、対照群と比較し、腫瘍成長の鎮静化をもたらした。
【0336】
実施例13:担癌のMC38大腸癌モデルにおける、PDL1ブロックの抗腫瘍有効性及びCD137の局所的刺激との組み合わせの評価:
加えて、本発明のPDL1ドメインを含む多重特異性抗体の抗腫瘍活性完全な免疫系を有する担癌C57BL/6マウスのMC38大腸癌モデルにおいて試験しうる。このモデルは他においても用いられており、CD137アゴニスト及びPD-1/PDL1アンタゴニストによる併用処理により強化された抗腫瘍活性が示されている(Chen S et al.Combination of 4-1BB agonist and PD-1 antagonist promotes antitumor effector/memory CD8 T cells in a poorly immunogenic tumor model.Cancer Immunol Res 2014;3(2):149-160及びRodriguez-Ruiz ME et al.Abscopal effects of radiotherapy are enhanced by combined immunostimulatory mAbs and are dependent on CD8 T cells and crosspriming.Cancer Res 2016;76(20):5994-6005)。
【0337】
試験する多重特異性抗体の抗CD137ドメイン及び抗PDL1ドメインのいずれも、マウスPDL1及びマウスCD137と交差反応しないため、CrownBio社により確立された加工されたヒトCD137ノックインモデルを用いうる。このモデルでは、マウスCD137の細胞外及び膜貫通ドメインを、CRISPR/Cas9システムを用いて、C57BL/6マウスバックグラウンドにおいてヒトCD137のそれぞれの配列と置き換えた。加えて、CMVプロモータの制御下でマウスPDL1の代わりにヒトPDL1を発現する修飾されたMC38腫瘍細胞系統を用いうる。腫瘍体積に対する前記多重特異性抗体の効果を、前記多重特異性抗体と同じPDL1特異的可変ドメインを含むヒト化IgG1との、及び同じCD137特異的可変ドメインを有するヒト化IgG4との、併用療法と比較しうる。局所的な抗腫瘍免疫応答の更なる証拠を得るため、腫瘍浸潤リンパ球(例えばCD8+、CD4+及び制御T細胞)の数をフローサイトメトリーにより解析しうる。抗CD137/抗PDL1処理に続く免疫系の調節を全身的に試験するため、肝臓及び脾臓のCD4+及びCD8+T細胞の数をフローサイトメトリー及びおそらくは免疫組織化学により解析しうる。更に、全身性のIFNγレベルを、定量的ELISA法を用いて解析しうる。更に抗CD137/抗PDL1併用療法の安全プロファイルを特徴づけるため、主に(診療の際の抗CD137療法において観察される)肝臓毒性、例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ、グルタイン酸デヒドロゲナーゼ及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの高いレベルに関連する臨床化学病理学パラメータを評価しうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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