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7649838耐火ウレタンフォーム組成物、耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、耐火ウレタンフォーム目地材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】耐火ウレタンフォーム組成物、耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、耐火ウレタンフォーム目地材
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/02 20060101AFI20250313BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20250313BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
C09K21/02
A62C3/16 B
A62C2/00 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023204140
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-070155(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047762(WO,A1)
【文献】特開2021-137345(JP,A)
【文献】特表2014-528396(JP,A)
【文献】特開2006-160858(JP,A)
【文献】特表2014-527093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 21/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン化合物100質量部に対し、ラジカル発生剤40~400質量部を含み、
前記ラジカル発生剤は、カリウム塩系ラジカル発生剤及びナトリウム塩系ラジカル発生剤の少なくとも一方を含み、
前記カリウム塩系ラジカル発生剤及び前記ナトリウム塩系ラジカル発生剤は、炭酸塩である、耐火ウレタンフォーム組成物。
【請求項2】
ウレタン化合物が、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む、請求項1に記載の耐火ウレタンフォーム組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の耐火ウレタンフォーム組成物を用いた防火用目地材である、耐火ウレタンフォーム目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火ウレタンフォーム組成物、耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、耐火ウレタンフォーム目地材に関する。耐火ウレタンフォーム目地材は、例えば、防火区画体に設けられた貫通口の隙間の一部もしくは全部、または建造物の免震装置と耐火パネルの間もしくはその耐火パネルの端部などに使用される。
【背景技術】
【0002】
防火区画体を貫通する電力ケーブル、通信ケーブル等のケーブル類や空調設備等の配管類と防火壁の間には目地材として、柔軟性を生かした耐火ウレタンフォームが使用されてきている。
【0003】
難燃性に優れた耐火ウレタンフォームとして、難燃剤にリン化合物や臭素化合物を配合したウレタンフォーム製造方法が開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-109641
【文献】特開2023-121573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術では難燃性は十分ではなかった。本発明は、柔軟性及び難燃性に優れる耐火ウレタンフォーム組成物、当該耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、当該耐火ウレタンフォーム組成物による耐火ウレタンフォーム目地材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有する耐火ウレタンフォーム組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ウレタン化合物100質量部に対し、ラジカル発生剤10~400質量部を含む、耐火ウレタンフォーム組成物。
[2]ウレタン化合物が、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む、[1]に記載の耐火ウレタンフォーム組成物。
[3]前記ラジカル発生剤が、炭酸塩を含む、[1]又は[2]に記載の耐火ウレタンフォーム組成物。
[4] [1]~[3]の何れか1つに記載の耐火ウレタンフォーム組成物を用いた防火用目地材である、耐火ウレタンフォーム目地材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性に優れる耐火ウレタンフォーム組成物、当該耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、当該耐火ウレタンフォーム組成物による耐火ウレタンフォーム目地材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.耐火ウレタンフォームの組成物
本発明の一実施形態に係る耐火ウレタンフォーム組成物(以下、単に「ウレタンフォーム組成物」とも称する)は、ウレタン化合物、ラジカル発生剤、を含有する。
【0011】
<ウレタン化合物>
ウレタン化合物は、ウレタン結合を有する化合物である。ウレタン化合物は、ウレタンフォーム(発泡体)を形成していることが好ましい。ウレタンフォームは、例えば、ウレタン原料と発泡剤を反応させることで得られる。例えば、ウレタン原料のイソシアネート基と水が反応することにより二酸化炭素が発生し、これにより発泡した結果ウレタンフォームが得られる。ウレタンフォームは、好ましくは、発泡倍率が2~20倍であり、密度が120~500kg/mである。
【0012】
ウレタン原料は、イソシアネート化合物を含む。ウレタン化合物は、イソシアネート化合物を含むか、又はイソシアネート化合物に由来する構造を含む。ウレタン化合物は、好ましくは、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む。
【0013】
耐火ウレタンフォーム組成物は、ウレタン化合物を20~91質量%含むことができ、好ましくは25~71質量%含み、より好ましくは33~59質量%含む。このような範囲を満たす場合、ウレタンフォームとして適した柔度となる一方で、難燃を遅らせることができる。ウレタン化合物の含有量は、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,91質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
<イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物は、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物である。イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート、及び、ポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られる高分子であって分子末端にイソシアネート基を有する化合物(ウレタンプレポリマー)からなる群から選択される1種以上を含む。
【0015】
ウレタン原料は、イソシアネート化合物に加えて、ポリオールを含んでいてよい。ウレタン原料は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールを含むことができる。ウレタン原料が複数の成分を含む場合には、一部の成分又は全ての成分について反応系中で混合するようにしてもよい。
【0016】
ウレタン原料としてポリイソシアネートとポリオールが添加される場合、ポリイソシアネート100質量部に対し、例えばポリオールを10~200質量部添加することができ、ポリオールを50~150質量部添加することが好ましい。ポリオールの添加量は、具体的には例えば、ポリイソシアネート100質量部に対し、50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0018】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネートは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0022】
<ウレタンプレポリマー>
ウレタンプレポリマーとは、ポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られる高分子で、分子末端にイソシアネート基を有する化合物である。
【0023】
<ポリオール>
ポリオールとしては、例えばポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0024】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
【0025】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0026】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0027】
脂環族ポリオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、ジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0030】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0032】
ポリオールは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0033】
<発泡剤>
発泡剤は、ウレタンの発泡を促進する。発泡剤としては、トランス-1-クロロ-3,3,3- トリフルオロプロペン等の炭素数3または4のハイドロフルオロオレフィン、水が挙げられる。この中で、珪酸ナトリウムが溶解しやすい水が好ましい。
【0034】
<ラジカル発生剤>
ラジカル発生剤は、ウレタン化合物等の燃焼により生じた熱エネルギーにより、エアロゾル(ラジカル)を発生させるための成分である。ラジカル発生剤として、カリウム塩系ラジカル発生剤と、ナトリウム塩系ラジカル発生剤が挙げられる。
【0035】
カリウム塩系ラジカル発生剤としては、例えば、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0036】
ナトリウム塩系ラジカル発生剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
これらの中で、難燃性の観点から、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩が好ましい。また、これらラジカル発生剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
ラジカル発生剤の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して10~400質量部であり、40~300質量部が好ましく、70~200質量部がさらに好ましい。ラジカル発生剤の含有量が少なすぎると、難燃性が悪くなる。ラジカル発生剤の含有量が多すぎると、ウレタンフォームの硬度が硬くなる。ラジカル発生剤の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して、具体的には例えば、10,50,60,70,80,90,100,150,200,250,300,350,400質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
耐火ウレタンフォーム組成物は、特性を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を配合することもできる。例えば、ラジカル発生剤以外の無機化合物、界面活性剤、整泡剤、触媒、発泡剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、等である。
【0040】
ラジカル発生剤以外の無機化合物としては、例えば、アルミナ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、等の金属水酸化物;ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、パリゴルスカイト等の繊維状粘土、絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、沸石(ゼオライト)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、クリストパライト、スメクタイト、カオリン、ハイドロタルサイト等の粘土鉱物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;ガラス繊維(Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維)、岩綿、セラミック繊維(シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維)、ジルコニア繊維、カーボン繊維、バルクアルカリアースシリケート繊維、石膏繊維、炭素繊維、金属繊維、スラグ繊維、バサルト繊維等の繊維状無機化合物;硫酸カルシウム、けい酸カルシウム等のカルシウム塩、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、シリカ、酸化チタン、無機系酸化剤、リン酸系化合物、熱膨張性黒鉛、バーミキュライト、等が挙げられる。これら無機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
ラジカル発生剤以外の無機化合物の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して0~400質量部であり、0~200質量部が好ましく、0~100質量部がさらに好ましい。
【0042】
<無機系酸化剤>
無機系酸化剤とは、液状有機化合物とともに燃焼して熱エネルギーを発生する成分である。無機系酸化剤としては、例えば、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸マグネシウム及び過塩素酸カリウム、などが挙げられる。これらのうち、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<リン酸系無機化合物>
リン酸系無機化合物には、リン酸系化合物以外にも、亜リン酸系化合物、次亜リン酸系化合物、メタリン酸系化合物、ピロリン酸系化合物及びポリリン酸系化合物がある。
【0044】
リン酸系化合物としては、例えば、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、第3リン酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0045】
亜リン酸系化合物としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛などが挙げられる。
【0046】
次亜リン酸系化合物としては、例えば、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛などが挙げられる。
【0047】
メタリン酸系化合物としては、例えば、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
ピロリン酸系化合物としては、例えば、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
ポリリン酸系化合物としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムなどが挙げられる。
【0050】
なお、高温時の形状安定性の観点から、リン酸系無機化合物としては、亜リン酸水素アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム等が好ましい。
【0051】
リン酸系無機化合物の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して5~140質量部が好ましい。この範囲にあることで、高温時になってもウレタン化合物の形状が崩れず、かつ難燃性の両立化が図れる。
【0052】
また、ラジカル発生剤以外の無機化合物は、金属水酸化物を含むことが好ましい。これによって、難燃性を高めることができる。
【0053】
<熱膨張性黒鉛>
熱膨張性黒鉛とは、天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末を、硫酸や硝酸等の無機酸と、濃硝酸や過マンガン酸塩等の強酸化剤とを用いて表面処理したものであり、かつグラファイト層状構造を維持した結晶化合物である。これらは常圧下で膨張開始温度(200℃程度)以上の温度に曝されると、100倍以上に熱膨張する。なお、前記天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末は、脱酸処理を施したものや、更に中和処理したもの等であってもよい。
【0054】
熱膨張性黒鉛の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して、例えば3~100質量部であり、5~75質量部が好ましく、10~50質量部がさらに好ましい。この範囲であることで、耐火ウレタン組成物が燃焼しても貫通部を塞ぐことが出来る。
【0055】
<耐火ウレタンフォーム組成物の特性>
耐火ウレタンフォーム組成物は、加重1kg、21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定したショアE硬度が、25未満であることが好ましく、20未満であることがより好ましく、15未満であることがさらに好ましい。当該ショアE硬度の下限は特に制限されないが、例えば1以上である。
【0056】
<製造方法>
本発明の一実施形態に係る耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、例えば、ラジカル発生剤及び発泡剤を含む混合物(例えば、水溶液等の混合液)に、イソシアネート化合物を含むウレタン原料を配合する配合工程を備える。配合工程では、添加や撹拌等を伴う配合により発泡成形が行われる。なお、イソシアネート化合物100質量部に対し、混合物に含まれる発泡剤(例えば、水)の含有量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは80~200質量部である。ラジカル発生剤及び発泡剤を含む混合物には、ラジカル発生剤以外の無機化合物等その他の添加剤を含めてもよい。
【0057】
また、耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、発泡剤として水を用いた場合等には、発泡成形後のウレタンフォーム組成物(発泡体)を乾燥させる乾燥工程を備えることができる。乾燥工程は、例えば50~100℃(一例においては80℃)で行われうる。
【0058】
2.耐火ウレタンフォーム目地材
本発明の一実施形態に係る耐火ウレタンフォーム目地材は、上記ウレタンフォーム組成物を用いた防火用目地材である。耐火ウレタンフォーム目地材は、上記ウレタンフォーム組成物から構成されうる。当該耐火ウレタンフォーム目地材は、その弾性、柔軟性、断熱性、耐火性、制振性、防音性等の特性が要求される様々な分野に利用できるが、防火材料を用いる公知の工法にも適用でき、各工法における使用方法に従って用いればよい。使用部位も特に制限されず、防火性が要求される箇所に幅広く用いることができる。
【0059】
耐火ウレタンフォーム目地材材は、防火区画体に設けられた貫通口の隙間の一部もしくは全部を閉塞するために用いられる。また、建造物の免震装置の防火部位にも好適に用いられる。具体的には、防火壁、床スラブ等の防火区画体に設けられた貫通口を通る電源ケーブルや通信ケーブル、パイプ等と防火壁の隙間を本発明の防火用目地材で被覆したり、施工部分に適合する形状に成形したガスケットを装着して用いたりすることが出来る。また、本防火用目地材は、免震装置本体とそれを覆う耐火パネルの間もしくはその耐火パネルの端部に使用され、粘着剤や接着剤で貼り付けたり、ボルトや釘などで固定したりして用いられる。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。
【0061】
<耐火ウレタンフォーム組成物の作製>
(A:イソシアネート化合物としてポリイソシアネートを用いた場合[実施例1~2])
表に示す配合量で、ラジカル発生剤に水(発泡剤)を配合して、ラジカル発生剤混合水溶液を調製した。この水溶液にポリイソシアネートおよびポリオールを加えて攪拌し、直径10cm×高さ15cmの円筒状型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させてウレタンフォーム組成物の試料原体を得た。なお、水の量は、ポリイソシアネート50質量部に対し100質量部とした。
【0062】
(B:イソシアネート化合物としてウレタンプレポリマーを用いた場合[実施例3~12、比較例1~4])
表に示す配合量で、ラジカル発生剤または難燃剤に水(発泡剤)を配合して、ラジカル発生剤混合水溶液または難燃剤混合水溶液を調製した。この水溶液にウレタンプレポリマーを加えて攪拌し、直径10cm×高さ15cmの円筒状型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させてウレタンフォーム組成物の試料原体を得た。なお、水の量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対し200質量部とした。
【0063】
実施例および比較例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。
【0064】
<ポリイソシアネート>
・トルエン-2,4-ジイソシアネート:三井化学株式会社製「コスモネートT100」
・ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン:三井化学株式会社製「コスモネートPH」
【0065】
<ポリオール>
・ポリエーテルポリオール:三洋化成工業株式会社製「サンニックスFA-195」
【0066】
<ウレタンプレポリマー>
・ポリエーテル系:三井化学株式会社製「ハイプレンEGH-401」
【0067】
<ラジカル発生剤>
・炭酸水素カリウム:林純薬工業株式会社製
・炭酸カリウム:林純薬工業株式会社製
・炭酸水素ナトリウム:林純薬工業株式会社製
・クエン酸三カリウム:扶桑化学工業株式会社製
【0068】
<難燃剤>
・リン酸エステル系難燃剤トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート:大八化学工業株式会社製「TMCPP」
・臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモ2-メチルプロピル)エーテル:第一製薬工業株式会社製「ピロガードSR-130」
【0069】
<発泡剤>
・水
【0070】
実施例及び比較例において下記の各特性を評価し、表にまとめた。各特性の測定方法を以下に示す。
【0071】
<硬度>
実施例及び比較例の試料原体を、縦30mm×横30mm×厚み10mmの試験片とし、その縦30mm×横30mm面を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した。そして、測定値に基づいて、硬度を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:ショアE硬度が15未満である。
○:ショアE硬度が15以上、20未満である。
△:ショアE硬度が20以上、25未満である。
×:ショアE硬度が25以上である。
【0072】
<難燃性>
実施例及び比較例の試料原体を、縦30mm×横30mm×厚み10mmの試験片とし、これを700℃で保持された雰囲気内に放置し、発火までの時間を目視で観察した。
◎:発火までの時間が5分以上
〇:発火までの時間が1分以上、5分未満
△:発火までの時間が30秒以上、1分未満
×:発火までの時間が30秒未満
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【要約】
【課題】柔軟性及び難燃性に優れる耐火ウレタンフォーム組成物、当該耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、当該耐火ウレタンフォーム組成物による耐火ウレタンフォーム目地材を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ウレタン化合物100質量部に対し、ラジカル発生剤10~400質量部を含む、耐火ウレタンフォーム組成物が提供される。
【選択図】なし