(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】可燃性廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/20 20060101AFI20250313BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20250313BHJP
F23C 1/00 20060101ALI20250313BHJP
F23C 5/08 20060101ALI20250313BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
F23G5/20 A
C04B7/44
F23C1/00 301
F23C5/08
F23G5/00 A
(21)【出願番号】P 2023504985
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009606
(87)【国際公開番号】W WO2022190284
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】下田 翔
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-292200(JP,A)
【文献】特開2012-202618(JP,A)
【文献】特開2003-090522(JP,A)
【文献】特開2003-130549(JP,A)
【文献】特開平08-283052(JP,A)
【文献】特開平07-277788(JP,A)
【文献】特開2008-222504(JP,A)
【文献】特開平11-182825(JP,A)
【文献】特開昭57-055312(JP,A)
【文献】特開平09-196330(JP,A)
【文献】特開2013-237571(JP,A)
【文献】特開2003-192406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 7/14
F23C 1/00 - 99/00
C04B 7/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物の処理方法であって、
主燃料の吹き込みを行う主バーナよりも鉛直上方の位置に配置された第一廃棄物バーナから易燃性の第一可燃性廃棄物を
、セメントクリンカ焼成用のキルン内に吹き込み、
前記第一廃棄物バーナよりも鉛直上方の位置に配置された第二廃棄物バーナから難燃性の第二可燃性廃棄物を前記キルン内に吹き込むことを特徴とする、可燃性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記第一可燃性廃棄物は、樹脂割合が60質量%以上の廃棄物であり、
前記第二可燃性廃棄物は、樹脂割合が60質量%未満の廃棄物であることを特徴とする、請求項1に記載の可燃性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記キルンの軸方向に見たときに、前記第一廃棄物バーナ及び前記第二廃棄物バーナのそれぞれの軸心位置は、前記主バーナの軸心位置から鉛直方向に延長した第一基準線と、前記第一基準線を前記主バーナの軸心位置を中心に前記キルンの回転方向とは逆方向に60°回転させて得られる第二基準線との間の領域に位置することを特徴とする、請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記主バーナは、前記主燃料の吹き込み箇所よりも内側から前記第一可燃性廃棄物を吹き込むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の可燃性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記第一可燃性廃棄物及び前記第二可燃性廃棄物は、いずれも固体であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の可燃性廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物の処理方法に関し、特に主燃料と共に可燃性廃棄物をロータリーキルンに投入して焼成することで可燃性廃棄物を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチック、木屑、自動車シュレッダーダスト(ASR)等の可燃性廃棄物は、焼成用燃料として利用可能な程度の熱量を有している。そこで、セメントクリンカの焼成に利用されるロータリーキルンにおいて、主燃料である微粉炭の補助燃料として、可燃性廃棄物の有効利用が推進されている。以下では、セメントクリンカの焼成に用いられるロータリーキルンを、単に「キルン」と略記することがある。
【0003】
従来、可燃性廃棄物をキルンに投入するに際しては、セメントクリンカの品質への影響が小さい、窯尻及び仮焼炉での利用が進められていた。しかし、窯尻及び仮焼炉から廃棄物を投入する際には、廃棄物の後燃えによって後段のガス温度が上昇するため、後段に配置されている設備保護の観点から、散水処理を行って適正温度まで低下させている。この結果、熱量原単位が低下することから、更に可燃性廃棄物をキルンに受け入れるに当たっては、窯前での処理が必要となる。
【0004】
本出願人は、これまで主燃料(微粉炭)をキルンに吹き込むバーナ(以下、「主バーナ」と称する。)において、主燃料用の流路の内側に、廃プラ等の可燃性廃棄物の流路を設けた主バーナを開発している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/034626号
【文献】特開2001-114539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今後、セメント工場における可燃性廃棄物の受け入れ量が増加することが予想されるところ、特許文献1の構造の下で可燃性廃棄物の処理能力を高めるためには、廃プラ用の流路の先端断面積を大きくする必要がある。しかしながら、特許文献1の構造では、廃プラ用の流路の外側に空気用流路が設けられていることから、廃プラ用の流路の先端断面積を拡大する余地が小さい。
【0007】
特許文献1の構造を採用しつつ、可燃性廃棄物の処理能力を高める方法として、主バーナ全体の直径を大きくする方法が考えられる。しかし、主バーナ全体を大型化すると、主バーナを支える支持鋼材を強化する必要が生じ、設置コストが増大する。また、主バーナに設けられていたそれぞれの流路の断面積が変化することから、運転時のパラメータ(固気比や風速等)の再設計が必要となる。このような観点から、可燃性廃棄物の処理能力を高めるために、単に主バーナを大型化するという方法は導入しにくい事情がある。
【0008】
かかる観点から、主バーナとは別に可燃性廃棄物用の補助バーナを付設する方法が検討されている。上記特許文献2には、主バーナの鉛直上方の位置に、可燃性廃棄物用の補助バーナが設置された燃焼装置が開示されている。
【0009】
特許文献2に開示された構造の場合、導入される可燃性廃棄物が、粉砕された軟質廃プラ等の燃焼性の良い(易燃性の)廃棄物である場合には、特段の問題なく燃焼が可能であると考えられる。しかし、セメント工場において受け入れ可能な廃棄物の量を増加させる観点からは、今後は、比較的燃焼性の悪い(難燃性の)廃棄物についても、易燃性の廃棄物と同様に受け入れることができる方が好ましい。特許文献2に開示された燃焼装置において、可燃性廃棄物用の補助バーナから難燃性の廃棄物を投入すると、燃焼が完了する前に廃棄物がセメントクリンカ上に着地してしまい、白色化やフリーライム(f.CaO)の増加等のセメントクリンカの品質異常を引き起こす懸念がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、従来の主バーナの構造をそのまま採用しながらも、比較的燃焼性の悪い可燃性廃棄物であっても燃焼中のクリンカへの落下率を抑制できる、可燃性廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る可燃性廃棄物の処理方法は、
主燃料の吹き込みを行う主バーナよりも鉛直上方の位置に配置された第一廃棄物バーナから易燃性の第一可燃性廃棄物をキルン内に吹き込み、
前記第一廃棄物バーナよりも鉛直上方の位置に配置された第二廃棄物バーナから難燃性の第二可燃性廃棄物を前記キルン内に吹き込むことを特徴とする。
【0012】
本明細書内における「可燃性廃棄物」は、廃プラスチック、木屑、ASR、廃タイヤ、炭素繊維(カーボンファイバ)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、肉骨粉又はバイオマス等の有機質を主体とする燃焼性を有する一般廃棄物及び産業廃棄物であって、微粉炭等の固体粉末燃料(主燃料)と共に補助燃料として利用されることが想定されているものを指す。なお、「バイオマス」とは、化石燃料を除いた燃料として利用可能な生物由来の有機質資源であり、例えば、廃畳の粉砕物、建設廃木材の粉砕物、木粉及びおが屑等が該当する。
【0013】
上記で例示した可燃性廃棄物のうち、例えばカーボンファイバやCFRPは、燃料比(固定炭素/揮発分)が1.0を大きく上回っており、廃プラスチックやASRと比較して燃焼性が悪い。このような難燃性の可燃性廃棄物を、主バーナの近くに配置された補助バーナからキルン内に吹き込むと、上述したように、燃焼が完了する前にクリンカの上面に落下する可能性があり、好ましくない。
【0014】
一方で、主バーナから鉛直方向にある程度離れた位置に補助バーナを設置し、この補助バーナから多量の可燃性廃棄物を投入することを考えた場合、熱源となる補助バーナがキルンの内壁に近くに位置することから、キルンの内壁に形成されている耐火レンガが熱損耗する懸念が生じる。これに対する対策としては、耐火レンガ自体を従来よりも耐熱性の高いものに変更する方法が考えられる。しかし、従来利用しているレンガとは異なるレンガを利用する必要があるため、設置コストが増大したり、レンガ材料の選択性が狭まる等の問題を内在しており、可燃性廃棄物の処理量を増加させるための補助バーナの導入を躊躇させる懸念がある。
【0015】
これに対し、上記の方法によれば、主バーナよりも鉛直上方の位置に複数の補助バーナが設置される。そして、この複数の補助バーナのうち、鉛直方向に関して主バーナに近い側の位置に配置されている第一廃棄物バーナからは、比較的燃焼性の良い廃棄物(第一可燃性廃棄物)がキルン内に吹き込まれ、鉛直方向に関して第一廃棄物バーナよりも主バーナから離れた位置に配置されている第二廃棄物バーナからは、比較的燃焼性の悪い廃棄物(第二可燃性廃棄物)がキルン内に吹き込まれる。
【0016】
第二廃棄物バーナは、第一廃棄物バーナよりも鉛直上方に位置しているため、主バーナの位置を基準とすると、鉛直方向に十分高い位置に配置されている。このため、難燃性を示す第二可燃性廃棄物が吹き込まれた場合であっても浮遊時間を長く確保できるため、キルン内のセメントクリンカに落下する迄の間に燃え切らせることができる。
【0017】
一方、易燃性を示す第一可燃性廃棄物は、難燃性を示す第二可燃性廃棄物と比べて、燃え切りに必要な時間が短い。このため、第一可燃性廃棄物は、鉛直方向に関して第二廃棄物バーナよりも主バーナの近くに配置されている第一廃棄物バーナから吹き込まれても、セメントクリンカに落下する迄の間に燃え切らせることができる。
【0018】
第二廃棄物バーナは、処理対象である可燃性廃棄物のうち、難燃性を示す第二可燃性廃棄物のみを吹き込む構成である。このため、両者の可燃性廃棄物を区別せずに吹き込む場合を比べて、第二廃棄物バーナを通じて吹き込まれる可燃性廃棄物の量は低くなり、温度上昇は抑制される。この結果、第二廃棄物バーナに近いキルン内壁の温度上昇が抑制され、従来使用している耐火レンガを引き続き利用することが可能である。
【0019】
前記第一可燃性廃棄物は、樹脂割合が60質量%以上の廃棄物であり、
前記第二可燃性廃棄物は、樹脂割合が60質量%未満の廃棄物であるものとしても構わない。
【0020】
また、粒径が20mmを超える可燃性廃棄物については、燃え切りに要する時間がかかる傾向にあるため、第二可燃性廃棄物として扱っても構わない。より詳細には、20mm篩の通過率が80質量%未満であるものは、第二可燃性廃棄物として取り扱っても構わない。
【0021】
前記キルンの軸方向に見たときに、前記第一廃棄物バーナ及び前記第二廃棄物バーナのそれぞれの軸心位置は、前記主バーナの軸心位置から鉛直方向に延長した第一基準線と、前記第一基準線を前記主バーナの軸心位置を中心に前記キルンの回転方向とは逆方向に60°回転させて得られる第二基準線との間の領域に位置するものとしても構わない。
【0022】
上記の態様とすることで、キルン内におけるガスの旋回流れに乗って、可燃性廃棄物の浮遊時間が確保されるため、可燃性廃棄物がセメントクリンカに着地する前に燃え切らせられる確率が更に高められる。
【0023】
前記主バーナは、前記主燃料の吹き込み箇所よりも内側から前記第一可燃性廃棄物を吹き込むものとしても構わない。
【0024】
これにより、主バーナの設計変更を行うことなく、可燃性廃棄物の処理可能量を増加できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、主バーナを大型化することなく、可燃性廃棄物の処理量を増加できる。特に、比較的燃焼性の悪い可燃性廃棄物であっても、燃え切り前に燃焼中のセメントクリンカに対して落下する割合を低下できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の処理方法を利用した燃焼装置の一実施形態の模式的な断面図である。
【
図2】
図1に示す各バーナ(2,10,11)の先端面を+X側から見たときの模式的な平面図である。
【
図3】第一廃棄物バーナ及び第二廃棄物バーナの設置可能位置を説明するための模式的な図面である。
【
図4】シミュレーションで想定した主バーナの先端構造を示す横断面図である。
【
図5A】比較例1~4及び実施例1が想定する、主バーナ、第一廃棄物バーナ及び第二廃棄物バーナの位置関係を、
図2にならって模式的に図示した図面である。
【
図5B】実施例2が想定する、主バーナ、第一廃棄物バーナ及び第二廃棄物バーナの位置関係を、
図5Aにならって模式的に図示した図面である。
【
図5C】実施例3が想定する、主バーナ、第一廃棄物バーナ及び第二廃棄物バーナの位置関係を、
図5Aにならって模式的に図示した図面である。
【
図5D】実施例4が想定する、主バーナ、第一廃棄物バーナ及び第二廃棄物バーナの位置関係を、
図5Aにならって模式的に図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の可燃性廃棄物の処理方法の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面は模式的に示されたものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0028】
図1は、本発明の処理方法を利用した燃焼装置の一実施形態の模式的な断面図である。セメントクリンカ5を焼成するためのロータリーキルン1に対して、窯前側から微粉炭等の主燃料を投入する主バーナ2と、同じく窯前側から可燃性廃棄物(RF1,RF2)を投入する補助バーナ10とが設置されている。焼成後のセメントクリンカ5は、クリンカクーラ3に落下して冷却される。
【0029】
以下では、鉛直方向をZ方向とし、ロータリーキルン1の軸方向をX方向として説明される。
図2は、
図1に示す各バーナ(2,10,11)の先端面を+X側から見たときの模式的な平面図である。
【0030】
図1及び
図2に示すように、補助バーナ10は、主バーナ2よりも鉛直上方(+Z側)に位置している。補助バーナ10は、鉛直方向(Z方向)に関して主バーナ2に対して近い位置に配置された第一廃棄物バーナ11と、Z方向に関して第一廃棄物バーナ11よりも主バーナ2から離れた位置に配置された第二廃棄物バーナ12とを備える。すなわち、第二廃棄物バーナ12は、ロータリーキルン1の内壁1aに近い位置に設置されている。
【0031】
第一廃棄物バーナ11からは、比較的燃焼性の良い、すなわち易燃性の可燃性廃棄物(第一可燃性廃棄物RF1)がロータリーキルン1内に吹き込まれる。一方、第二廃棄物バーナ12からは、第一可燃性廃棄物RF1よりも燃焼性の悪い、すなわち難燃性の可燃性廃棄物(第二可燃性廃棄物RF2)がロータリーキルン1内に吹き込まれる。
【0032】
易燃性を示す第一可燃性廃棄物RF1としては、例えば樹脂割合が60質量%以上の廃棄物や、燃料比が1.0未満である廃棄物とすることができる。ただし、これらの条件に合致する場合であっても、粒径の大きい廃棄物については、燃え切りまでに比較的時間を要する可能性があるため、難燃性を示す第二可燃性廃棄物RF2として取り扱っても構わない。第一可燃性廃棄物RF1の具体例としては、例えば廃プラスチック、木屑、ASR、廃タイヤ、廃畳、肉骨粉又はバイオマス等の有機質を主体とする燃焼性を有する廃棄物が挙げられる。
【0033】
難燃性を示す第二可燃性廃棄物RF2としては、例えば樹脂割合が60質量%未満の廃棄物や、燃料比が1.0を超える廃棄物とすることができる。難燃性を示す第二可燃性廃棄物RF2としては、例えばカーボンファイバやCFRPが挙げられる。また、上述したように、粒径が極めて大きいものは第二可燃性廃棄物RF2として取り扱っても構わない。典型的には、20mm篩の通過率が80質量%未満であるものは第二可燃性廃棄物RF2として取り扱っても構わない。
【0034】
難燃性の第二可燃性廃棄物RF2を、Z方向の高い位置からロータリーキルン1内に吹き込むことで、ロータリーキルン1内における浮遊時間が確保できる。この結果、難燃性であっても、セメントクリンカ5の表面に着地する迄に燃え切らせることが可能となる。一方、易燃性の第一可燃性廃棄物RF1は、第二可燃性廃棄物RF2よりも低い位置からロータリーキルン1内に投入しても、セメントクリンカ5の表面に着地する迄に燃え切らせることができる。
【0035】
セメントクリンカ5の焼成用の補助燃料として受け入れる対象となる可燃性廃棄物(RF1,RF2)は、受け入れの際に、樹脂割合や燃料比に関する情報が提供されている場合には、この情報に基づいて、第一可燃性廃棄物RF1か第二可燃性廃棄物RF2かが識別されて投入先の補助バーナ(11,12)が決定される。また、受け入れの際に前記情報が提供されていない場合には、例えば、ロータリーキルン1が設置されているセメント工場において、手選別による樹脂以外の混入率の計測や、各種機器分析による成分分析などを用いて樹脂割合が測定されるものとして構わない。また、セメント工場において、篩を通過させることで粒径を測定したり、JIS M 8812「石炭類及びコークス類-工業分析方法」に基づいて固定炭素と揮発分を測定して燃料比を算出するものとしても構わない。
【0036】
ロータリーキルン1の内壁1aの近くに位置する第二廃棄物バーナ12からは、可燃性廃棄物のうちの、難燃性の第二可燃性廃棄物RF2のみが投入される。この結果、第二廃棄物バーナ12から投入される可燃性廃棄物の流量は一定量以内に抑制できるため、ロータリーキルン1の内壁1aの過剰な温度上昇を招くことがない。よって、ロータリーキルン1の内壁1aとしては、従来の耐火レンガをそのまま利用できる。
【0037】
図3は、補助バーナ10(11,12)の設置可能位置を説明するための模式的な図面であり、
図2と同様に、X方向(ロータリーキルン1の軸方向)から見たときの平面図である。
【0038】
第一廃棄物バーナ11の軸心11aは、主バーナ2の軸心2aから鉛直方向(Z方向)に延長した第一基準線P1と、主バーナ2の軸心2aを中心に第一基準線P1をロータリーキルン1の回転方向r1とは逆回転方向r2に60°回転させて得られる第二基準線P2とに挟まれた領域A1内に存在していても構わない。第二廃棄物バーナ12の軸心12aも同様に、領域A1内に存在していても構わない。
【0039】
軸心11a及び/又は軸心12aが領域A1内に位置するように、第一廃棄物バーナ11及び第二廃棄物バーナ12を設置することで、ロータリーキルン1内の旋回流れに乗って、可燃性廃棄物(RF1,RF2)を浮遊させることができる。これにより、可燃性廃棄物(RF1,RF2)の浮遊時間がより確保されるため、燃え切り前にセメントクリンカ5に着地する割合を更に低下できる。
【0040】
なお、上述した実施形態では、補助バーナ10として、第一廃棄物バーナ11と第二廃棄物バーナ12の2本のバーナを有するものとしたが、本発明は3本以上のバーナを備える場合を排除するものではない。補助バーナ10が3本以上のバーナを備える場合であっても、鉛直方向に関して主バーナ2に近い側のバーナからは易燃性の第一可燃性廃棄物RF1が吹き込まれ、鉛直方向に関して主バーナ2に遠い側に位置する、すなわちより鉛直上方に位置するバーナからは難燃性の第二可燃性廃棄物RF2が吹き込まれるものとすればよい。
【実施例】
【0041】
第一廃棄物バーナ11及び第二廃棄物バーナ12から投入される廃棄物の性状を異ならせた場合に、廃棄物の落下率及びロータリーキルン1の内壁1a近傍の温度に与える影響につき、燃焼シミュレーションを行った。以下にシミュレーション条件を説明する。
【0042】
図4は、シミュレーションで想定した主バーナ2の先端構造を示す、横断面図である。横断面図とは、主バーナ2の軸に直交する平面で切断した断面図に対応する。
【0043】
主バーナ2は、微粉炭等の主燃料用流路21と、主燃料用流路21に隣接して内側に配置され旋回空気流を形成する第一空気流路22と、主燃料用流路21に隣接して外側に配置され旋回空気流を形成する第二空気流路23と、第二空気流路23に隣接して外側に配置され直進空気流を形成する第三空気流路24と、第一空気流路22よりも内側に配置された廃プラ用流路25とを備える。
【0044】
図5Aは、比較例1~比較例4及び実施例1が想定する、主バーナ2及び補助バーナ10の位置関係を、
図2にならって模式的に図示した図面である。
図5B~
図5Dは、それぞれ実施例2~実施例4が想定する、主バーナ2及び補助バーナ10の位置関係を、
図5Aにならって模式的に図示した図面である。
【0045】
ただし、表2を参照して後述されるように、比較例1は補助バーナ10から廃棄物(RF1,RF2)を投入しておらず、実質的には補助バーナ10を備えない構成に対応する。また、比較例2は、補助バーナ10のうちの第二廃棄物バーナ12のみから廃棄物(RF1,RF2)を投入する態様であり、比較例3は、補助バーナ10のうちの第一廃棄物バーナ11のみから廃棄物(RF1,RF2)を投入する態様である。つまり、比較例2及び比較例3は、実質的には補助バーナ10として単一のバーナを備える構成に対応する。
【0046】
シミュレーションで想定されたロータリーキルン1の寸法は、内径5m×軸方向の長さ100mであった。また、比較例1~比較例4及び実施例1~実施例4のそれぞれの一次空気比は、表1のように設定された。
【0047】
【0048】
表1に示す条件で設定された一次空気比の下で、主バーナ2及び補助バーナ10(11,12)から、それぞれ下記の表2に示す量で燃料(主燃料,可燃性廃棄物)を投入し、可燃性廃棄物の落下率及びロータリーキルン1の内壁1a近傍(レンガ付近)の温度をシミュレーションにより算出した。二次空気条件としては、風量が1800Nm3/分、ガス温度が800℃と設定された。また、シミュレーションに際しては、ANSYS社製のソフトウェア FLUENT ver.2019R2が利用された。
【0049】
易燃性の第一可燃性廃棄物RF1としては、熱変形温度80℃、厚み1mm×15mm角のシート状の廃プラ(易燃性廃プラ)が採用された。この廃プラは、20mm篩を通過させた場合に、80質量%以上の割合で篩を通過するため、易燃性の廃棄物に分類される。一方、難燃性の第二可燃性廃棄物RF2としては、熱変形温度80℃、厚み1mm×30mm角のシート状の廃プラ(難燃性廃プラ)が採用された。この廃プラは、20mm篩を通過させた場合に、ほとんどが篩を通過しないため、燃え切りに時間を要することから難燃性の廃棄物に分類される。
【0050】
シミュレーション結果を表2に示す。
【0051】
【0052】
上述したように、比較例1は、第一廃棄物バーナ11及び第二廃棄物バーナ12の双方から廃プラが投入されていない。このため、廃プラ落下率は低く、レンガ付近最高温度も1850℃以下を示している。しかし、この方法では、従来と同様の仕様であるため、処理可能な廃プラ量(可燃性廃棄物量)が少なく、可燃性廃棄物の処理能力が高められていない。
【0053】
比較例2~比較例4及び実施例1~実施例4では、いずれも、補助バーナ(第一廃棄物バーナ11,第二廃棄物バーナ12)から投入される廃プラの合計流量が共通化されている(4.0t/h)。
【0054】
比較例2は、第一廃棄物バーナ11からは廃プラを投入せず、第二廃棄物バーナ12から、易燃性の廃プラと難燃性の廃プラをそれぞれ2.0t/hずつの流量で投入した場合に対応する。また、比較例3は、比較例2とは逆に、第二廃棄物バーナ12からは廃プラを投入せず、第一廃棄物バーナ11から、易燃性の廃プラと難燃性の廃プラをそれぞれ2.0t/hずつの流量で投入した場合に対応する。
【0055】
比較例2と比較例3を対比すると、鉛直方向の上側に位置する第二廃棄物バーナ12から、廃プラが投入されている比較例2では、比較例3と比べて、廃プラ落下率が大幅に低下されていることが確認できる。比較例2によれば、比較例3と比べて、難燃性の廃プラの浮遊時間が確保できたものと考えられる。
【0056】
しかしながら、比較例2の場合、レンガ付近の最高温度が1900℃を超えており、比較例3よりも極めて高温である。比較例2の場合、主バーナ2よりもかなり鉛直上方の位置から、易燃性の廃プラと難燃性の廃プラがそれぞれ2.0t/hずつ、すなわち合計4.0t/hの流量で投入されたことで、高温の熱源がロータリーキルン1内の内壁の近くに存在することになり、比較例1や比較例3よりも高温化したものと考えられる。この場合、従来の耐火レンガを用いた場合には、高温による熱損耗が懸念される。
【0057】
つまり、比較例2の場合には、レンガ付近の最高温度が高すぎるため好ましくなく、比較例3の場合には、廃プラ落下率が高すぎるため好ましくない。この結果を踏まえ、表2では、比較例2及び比較例3の総合評価が「C」と表記されている。
【0058】
比較例4は、第一廃棄物バーナ11と第二廃棄物バーナ12の双方から、易燃性の廃プラと難燃性の廃プラをそれぞれ1.0t/hずつの流量で投入した場合に対応する。すなわち、比較例4では、補助バーナ10として鉛直方向の異なる位置に2つのバーナ(第一廃棄物バーナ11,第二廃棄物バーナ12)を備えつつも、各バーナから投入される廃棄物の区別が行われなかった場合に対応する。
【0059】
比較例4は、比較例3を対比して、廃プラ落下率とレンガ付近の最高温度が共に上昇しており、いずれの要素についても比較例3より悪化している。この結果を踏まえ、表2では、比較例4の総合評価が「C」よりも低い「D」と表記されている。
【0060】
実施例1は、鉛直方向(Z方向)に関し、主バーナ2に近い位置に設置された第一廃棄物バーナ11からは易燃性の廃プラを2.0t/hの流量で投入し、第一廃棄物バーナ11よりも鉛直上方に位置する第二廃棄物バーナ12からは難燃性の廃プラを2.0t/hの流量で投入した場合に対応する。表2によれば、実施例1の方法で廃プラを投入することで、廃プラ落下率とレンガ付近の最高温度に関して共に低い値が実現できている。この結果を踏まえ、表2では、実施例1の総合評価が「C」よりも高い「A」と表記されている。
【0061】
実施例2~実施例4は、第一廃棄物バーナ11と第二廃棄物バーナ12の双方から投入される廃プラの性状及び量は、実施例1と共通にし、第一廃棄物バーナ11と第二廃棄物バーナ12の相対的な位置関係のみを変化させた場合に対応する。ただし、X方向(ロータリーキルン1の軸方向)に見たときに、ロータリーキルン1の回転方向が時計回りであるものとした。
【0062】
実施例2は、実施例1と比べて、第一廃棄物バーナ11を、主バーナ2の軸心2aを中心として、ロータリーキルン1の回転方向とは逆回転方向(
図5Bでは反時計回り)に60°回転させた位置に設置した点が異なる。表2によれば、レンガ付近最高温度については、実施例1とほぼ同等の値を示しつつ、廃プラ落下率については更に低い値が実現できている。
【0063】
実施例3は、実施例1と比べて、第二廃棄物バーナ12を、主バーナ2の軸心2aを中心として、ロータリーキルン1の回転方向とは逆回転方向(
図5Cでは反時計回り)に60°回転させた位置に設置した点が異なる。表2によれば、実施例1と比べて、レンガ付近最高温度及び廃プラ落下率共に、実施例1よりも更に低い値が実現できている。この結果を踏まえ、表2では、実施例3の総合評価が「A」よりも更に高い「A+」と表記されている。
【0064】
鉛直上方に位置する第二廃棄物バーナ12を、ロータリーキルン1の回転方向とは逆方向に回転させた位置に設置したことで、第二廃棄物バーナ12の+Z方向に係る座標位置が実施例1よりも少し主バーナ2側に近づいている。この結果、熱源としての第二廃棄物バーナ12が、ロータリーキルン1の内壁1aに対して少し遠ざかり、実施例1よりもレンガ付近最高温度が低下したものと推定される。
【0065】
また、第二廃棄物バーナ12を、ロータリーキルン1の回転方向とは逆方向に回転させた位置に設置したことで、第二廃棄物バーナ12から吹き込まれる難燃性の廃プラ(第二可燃性廃棄物RF2に対応)が、ロータリーキルン1内の旋回流れに乗って浮遊しやすくなる。この結果、着地する迄に燃え切ることのできる割合が更に高まったことで、実施例1と比べて落下率の値が更に低下したものと推定される。なお、表2では、廃プラ落下率が0.0%であり、落下する前に全ての廃プラの燃え切りが確認された。
【0066】
実施例4は、実施例3と比べて、第一廃棄物バーナ11から第二廃棄物バーナ12を+Z側に離した上で(
図5D内の符号12jに対応)、主バーナ2の軸心2aを中心として、ロータリーキルン1の回転方向とは逆方向(
図5Dでは反時計回り)に60°回転させた位置に設置した点が異なる。表2によれば、落下率については実施例3と同様に0.0%が実現できているが、レンガ付近最高温度は実施例3より少し上昇した。ただし、実施例4におけるレンガ付近最高温度は、実施例1~実施例2に比べると十分低下できていることから、表2では、実施例4の総合評価が、実施例3と同様の「A+」と表記されている。
【0067】
実施例4では、実施例3と比べて第二廃棄物バーナ12が鉛直上方に位置しており、ロータリーキルン1の内壁1aに対して少し近づいた結果、実施例3よりもレンガ付近最高温度が少し上昇したものと推定される。実施例3~実施例4の結果からは、難燃性の第二可燃性廃棄物RF2を吹き込む第二廃棄物バーナ12を第一廃棄物バーナ11に対して必要以上に離さなくても、廃プラ落下率を十分低下できることが分かる。
【符号の説明】
【0068】
1 :ロータリーキルン
1a :ロータリーキルンの内壁
2 :主バーナ
2a :主バーナの軸心
3 :クリンカクーラ
5 :セメントクリンカ
10 :補助バーナ
11 :第一廃棄物バーナ
11a :第一廃棄物バーナの軸心
12 :第二廃棄物バーナ
12a :第二廃棄物バーナの軸心
21 :主燃料用流路
22 :第一空気流路
23 :第二空気流路
24 :第三空気流路
25 :廃プラ用流路
P1 :第一基準線
P2 :第二基準線
RF1 :第一可燃性廃棄物
RF2 :第二可燃性廃棄物