(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20250313BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20250313BHJP
F24F 3/167 20210101ALI20250313BHJP
F24F 11/75 20180101ALI20250313BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20250313BHJP
F24F 110/40 20180101ALN20250313BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/007 B
F24F3/167
F24F11/75
F24F11/74
F24F110:40
(21)【出願番号】P 2023525323
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021407
(87)【国際公開番号】W WO2022254705
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 典俊
(72)【発明者】
【氏名】今口 信弘
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038484(WO,A1)
【文献】特開2017-048940(JP,A)
【文献】特開2017-048941(JP,A)
【文献】特開2018-009713(JP,A)
【文献】特開2014-070748(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110307603(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111829103(CN,A)
【文献】特開平10-096332(JP,A)
【文献】特開平06-307108(JP,A)
【文献】特開2000-337675(JP,A)
【文献】特開2005-114317(JP,A)
【文献】特開2003-083578(JP,A)
【文献】特開昭61-291848(JP,A)
【文献】特開2010-107064(JP,A)
【文献】特開平08-327106(JP,A)
【文献】特開平05-060356(JP,A)
【文献】特許第6810301(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/111550(WO,A1)
【文献】特開2022-034851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部屋の内部に設けられるクリーンルームへの給気を行う第1ファンと、当該第1ファンの吹出側に設けられる第1フィルタと、を有する第1ユニットを備えるとともに、
前記クリーンルームからの還気を行う第2ファンを有する第2ユニットと、
前記クリーンルームから前記所定の部屋に空気を導くダクトシャフトと、
前記クリーンルームに設けられる圧力センサと、
前記第1ファン及び前記第2ファンのうち一方を前記圧力センサの検出値に基づいて制御し、他方を一定速で制御する制御部と、を備え、
前記所定の部屋は、側壁と、天井と、床面と、で形成される空間であり、
前記クリーンルームは、縦断面視において、前記所定の部屋の前記側壁、前記天井、及び前記床面で囲まれるように設けられ、
前記ダクトシャフトは
前記クリーンルームの側面に沿って上下方向に延びており、当該ダクトシャフトの上端が開口しており、
前記第1ファンを介して前記クリーンルームに導かれた空気が、前記第2ファン及び前記ダクトシャフトを順次に介して、前記所定の部屋に戻され
、
前記第1ファン及び前記第2ファンのうち、前記圧力センサの検出値に基づいて制御されるものと、一定速で制御されるものと、が切替可能である、空調システム。
【請求項2】
前記所定の部屋の天井に設けられるフィルタユニットを備え、
前記フィルタユニットの
高さ位置よりも前記第1ユニット
の高さ位置の方が低いこと
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記所定の部屋には、エアハンドリングユニットで温度が調整された空気が供給されること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記クリーンルームの室圧を陽圧及び陰圧の一方から他方に切替可能
であること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療や医薬品の製造の他、半導体や精密機械の製造等において、空気の清浄度の高いクリーンルームが用いられている。このようなクリーンルームの室圧調整に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「・・・差圧計25によって計測される差圧を所定の範囲に維持させるように各FFU20の給気ファン22を個別に制御する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、給気ファンが個別に制御される一方、排気ファンの回転速度は特に調整されない。したがって、例えば、それまで陰圧室として使っていたクリーンルームを、別の用途で陽圧室として使うといったことは、特許文献1に記載の技術では困難である。
【0005】
そこで、本発明は、使い勝手のよい空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る空調システムは、所定の部屋の内部に設けられるクリーンルームへの給気を行う第1ファンと、当該第1ファンの吹出側に設けられる第1フィルタと、を有する第1ユニットを備えるとともに、前記クリーンルームからの還気を行う第2ファンを有する第2ユニットと、前記クリーンルームから前記所定の部屋に空気を導くダクトシャフトと、前記クリーンルームに設けられる圧力センサと、前記第1ファン及び前記第2ファンのうち一方を前記圧力センサの検出値に基づいて制御し、他方を一定速で制御する制御部と、を備え、前記所定の部屋は、側壁と、天井と、床面と、で形成される空間であり、前記クリーンルームは、縦断面視において、前記所定の部屋の前記側壁、前記天井、及び前記床面で囲まれるように設けられ、前記ダクトシャフトは前記クリーンルームの側面に沿って上下方向に延びており、当該ダクトシャフトの上端が開口しており、前記第1ファンを介して前記クリーンルームに導かれた空気が、前記第2ファン及び前記ダクトシャフトを順次に介して、前記所定の部屋に戻され、前記第1ファン及び前記第2ファンのうち、前記圧力センサの検出値に基づいて制御されるものと、一定速で制御されるものと、が切替可能であることを特徴とする。なお、その他については実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使い勝手のよい空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る空調システムの各部屋の間取りを示す説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る空調システムが備える複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る空調システムが備える複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る空調システムの説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る空調システムが備える給気側のファンフィルタユニット、及び、還気側のファンフィルタユニットの制御に関する構成図である。
【
図6】第1実施形態に係る空調システムが備える還気ファンの回転速度と風量との関係を示す特性図である。
【
図7】第2実施形態に係る空調システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る空調システムSの各部屋の間取りを示す説明図である。
なお、
図1では、所定のドア(例えば、ドアDm)が開かれた場合に空気が流れる向きを白抜きの破線矢印で示している。第1実施形態では、主に、各クリーンルームの室圧調整について説明するが、室圧の他に空気の温度や湿度を調整する場合も「空調」に含まれるものとする。また、室圧のみの調整も「空調」に含まれるものとする。
本明細書において、第1実施形態は参考形態であるものとする。
【0010】
空調システムSは、前処理室R3や調製室R7といった複数のクリーンルームの室圧等を調整するシステムであり、例えば、再生医療施設に設けられる。このような空調システムSでは、空気の清浄度の異なる部屋が複数設けられることが多い。そして、清浄度の低い部屋から清浄度の高い部屋への空気の漏れを抑制するために、隣り合う部屋の室圧に差を設けるようにしている。
【0011】
その一例を挙げると、
図1に示す前処理室R3は、1次更衣室R2よりも空気の清浄度が高く、また、その室圧も高い。したがって、作業員が1次更衣室R2から前処理室R3に入る際にドアDeを開くと、
図1の破線矢印で示すように、高圧側の前処理室R3から低圧側の1次更衣室R2へと空気が流れ込むが、逆向きの流れが生じることはほとんどない。これによって、1次更衣室R2から前処理室R3への塵埃の侵入が抑制され、前処理室R3の清浄度が保たれる。
【0012】
しかしながら、前記した空気の移動によって、1次更衣室R2の室圧が一時的に高くなる一方、前処理室R3の室圧は一時的に低くなる。ドアDeが開閉されるたびに、このような室圧の変動が生じる。そこで、第1実施形態では、後記する各機器の制御によって、各クリーンルームの室圧の変動を抑制するようにしている。
【0013】
なお、
図1において、隣り合う2つのクリーンルームの一方から他方に向かう白抜きの破線矢印を記載しているものは、前記した一方のクリーンルームの方が、他方よりも室圧が高いものとする。また、
図1で符号を付した複数のクリーンルームやドアのうち、適宜に説明を省略するものがあるものとする。例えば、複数のドアDa~Dz,Dα,Dβ,Dγ,Dδのうち、その一部については説明を省略する。
【0014】
図1の例では、着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。例えば、作業員が前処理室R3で作業を行う場合には、前記した順で各クリーンルームを通り抜ける。前処理室R3には、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC1が設けられている。バイオハザードキャビネットBSC1で用いられる試料は、前室R4及びパスボックスPB1を順次に介して、搬入される。一方、バイオハザードキャビネットBSC1で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB2及び前室R5を順次に介して、搬出される。なお、パスボックスPB1,PB2は、コンタミネーション(試料汚染)を抑制するための空間である。
【0015】
また、着脱室R1、1次更衣室R2、2次更衣室R6、エアロックAL1、調製室R7、エアロックAL2、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。例えば、作業員が調製室R7で作業を行う場合には、前記した順で各クリーンルームを通り抜ける。エアロックAL1,AL2は、清浄度が高い調製室R7への塵埃の侵入を抑制するための空間であり、他のクリーンルームに比べて室圧が高くなっている。
【0016】
また、調製室R7と前処理室R3との間も、パスボックスPB5を介して、試料等の出し入れが可能になっている。調製室R7は、その清浄度が前処理室R3よりも高く、また、室圧も前処理室R3よりも高くなっている。これによって、ドアDxやドアDyが開けられた場合のコンタミネーション(試料汚染)を抑制できる。
【0017】
図1の例では、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC2,BSC3が調製室R7に設けられている。バイオハザードキャビネットBSC2,BSC3で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB3及び前室R8を順次に介して、搬出される。一方、廃棄物等は、パスボックスPB4及び前室R9を順次に介して、搬出される。
【0018】
なお、
図1に示す着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、前室R4,R5、2次更衣室R6、調製室R7、前室R8,R9、脱衣室R10、前室R11、及びエアロックAL1,AL2のそれぞれが、「クリーンルーム」に相当する。また、
図1に示すファンフィルタユニット3,7,9,11,13,18の他、エアハンドリングユニット50については後記する。
【0019】
図2は、複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
なお、
図2では、空気の流れを実線矢印で示す一方、信号線を破線矢印で示している。また、
図2には、
図1(間取り図)の各クリーンルームのうちの一部を図示し、残りのクリーンルームについては
図3に示している。これらの
図2、
図3は、例えば、調製室R7からダクトシャフトDS2を介して、チャンバCに空気が導かれるといったように、空気の流れに着目した模式的な断面図になっている。
【0020】
図2に示すダクトシャフトDS1は、
図1には図示していないが、調製室R7からチャンバCに空気を導く空間である。また、他のダクトシャフトDS2~DS5も、
図1には図示していないが、所定のクリーンルームからチャンバCに空気を導く空間である。これらのダクトシャフトDS1~DS5は、隣り合うクリーンルームの間の隙間等に設けられている風導管(図示せず)である。
【0021】
図2に示すように、空調システムSは、エアハンドリングユニット50と、ファンフィルタユニット1~11と、圧力センサ31~36と、を備えている。
エアハンドリングユニット50は、空気の温度等を調整する装置である。
図2に示すように、エアハンドリングユニット50は、フィルタ51と、冷却コイル52と、ファン53と、インバータ54と、を備えている。
【0022】
フィルタ51は、調製室R7からダクトシャフトDS1を介して冷却コイル52に向かう空気から塵埃を捕集するものである。冷却コイル52は、フィルタ51を通過した空気と、伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。ファン53は、冷却コイル52で熱交換した空気を、ダクトD1を介して、チャンバCに圧送する送風機である。インバータ54は、ファン53のモータ(図示せず)を制御する。
【0023】
図2に示すように、ファン53の吹出口と、チャンバCと、はダクトD1を介して接続されている。ダクトD1は、エアハンドリングユニット50で温度等が調整された空気をチャンバCに導く風導管である。このダクトD1には、ダンパB1が設けられている。そして、例えば、空調システムSの試運転時にダンパB1が所定開度に設定され、その後の空調運転中は、前記した所定開度で維持されるようになっている。また、ダクトD1の他に、別のダクトD2を介して、温度等が調整された空気がチャンバCに導かれるようになっている。このようにして、ダクトD1,D2を介して供給された空気は、チャンバCにおいて合流する。
【0024】
チャンバCは、調製室R7等の各クリーンルームの天井裏の空間である。具体的に説明すると、チャンバCは、調製室R7等の各クリーンルームの天井Eと、上板Taと、側板Tb,Tcと、を含んで構成されている。
図2の例では、天井Eよりも高い位置に上板Taが設けられ、上板Taの板面が天井Eの面に対して略平行になっている。また、天井Eと上板Taの横方向一方側の縁を接続するように、側板Tbが設けられている。同様に、天井Eと上板Taの横方向他方側の縁を接続するように、側板Tcが設けられている。
【0025】
図2に示すように、複数のクリーンルームのそれぞれの天井裏の空間が、一つのチャンバC(共通の空間)として形成されている。そして、温度等が所定に調整された空気がチャンバCに導かれ、さらに、給気側のファンフィルタユニット1,2(第1ユニット)によって、チャンバCから調製室R7に導かれるようになっている。なお、他のクリーンルームについても同様である。また、複数のクリーンルームには、室圧の目標圧力(設定圧力)の異なるものが混在している。
【0026】
このような構成によれば、ファンフィルタユニット1,2等に空気を導くダクトをチャンバCに設ける(又はチャンバCの代わりに設ける)必要が特にないため、空調システムSの構成を簡素化できる。したがって、チャンバCにガス配管を設けたり、通信線や電力線を引き回したりする作業が容易になる他、コストの削減を図ることができる。
【0027】
図2に示すファンフィルタユニット1(第1ユニット)は、チャンバCから調製室R7への給気を行う機器であり、天井Eに埋設されている。ファンフィルタユニット1は、給気ファン1a(第1ファン)と、フィルタ1bと、を備えている。給気ファン1aは、チャンバCから調製室R7(クリーンルーム)への給気を行う送風機である。
図2に示すように、給気ファン1aの吸込側は、チャンバC(共通の空間)に連通している。
【0028】
フィルタ1bは、給気ファン1aから調製室R7に向かう空気から塵埃を捕集するものであり、給気ファン1aの吹出側に設けられている。このようなフィルタ1bとして、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)やULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)が用いられる。そして、給気ファン1a及びフィルタ1bを収容する筐体(図示せず)が、調製室R7の天井Eの開口部に嵌め込まれて、金具等で固定されている。なお、調製室R7の天井Eに設けられている別のファンフィルタユニット2も、前記したファンフィルタユニット1と同様の構成になっている。
【0029】
図2に示すファンフィルタユニット3(第2ユニット)は、調製室R7からの排気及び及び還気を行う機器である。なお、調製室R7からの「還気」とは、調製室R7から流出する空気の少なくとも一部を、この調製室R7に戻すことである。また、
図2では簡略化して、調製室R7の床Gの紙面下側にファンフィルタユニット3を図示しているが、
図1に示すように、調製室R7にドアDpを介して隣り合っている空間R12の壁にファンフィルタユニット3が埋設されている。
【0030】
図2に示すように、ファンフィルタユニット3は、還気ファン3a(第2ファン)と、フィルタ3bと、を備えている。還気ファン3aは、調製室R7(クリーンルーム)からの排気及び還気を行う送風機である。
図2に示すように、還気ファン3aの吸込側は、ダクトシャフトDS2を介して、チャンバC(共通の空間)に連通している。
【0031】
フィルタ3bは、調製室R7から還気ファン3aに向かう空気から塵埃を捕集するものであり、還気ファン3aの吸込側に設けられている。このようなフィルタ3bとして、例えば、HEPAやULPAが用いられる。なお、フィルタ3bは、調製室R7から空気が流出する際の抵抗体(空気抵抗)としても機能するため、調製室R7を比較的高い室圧で維持しやすくなる。また、還気ファン3a及びフィルタ3bを収容する筐体(図示せず)が、前記した空間R12(
図1参照)を形成している壁の開口部に嵌め込まれて、金具等で固定されている。
【0032】
図2に示す圧力センサ31は、調製室R7(クリーンルーム)の室圧を検出するセンサであり、調製室R7に設けられている。そして、調製室R7の室圧を所定の目標圧力(設定圧力)にするように、給気ファン1a,2aや還気ファン3aが制御される。なお、調製室R7の室圧を検出する際の基準圧として、各クリーンルームの外部に設けられる一般室(図示せず)の室圧が用いられてもよい。また、チャンバCの圧力の検出値の他、予め設定された所定の圧力値が基準圧として用いられてもよい。
【0033】
図2に示す隙間K1,K2は、調製室R7から空気が出ていく際の通風路である。一方の隙間K1は、例えば、調製室R7と空間R13(
図1参照)とを仕切るドアDq(
図1参照)の下端部のパッキン(図示せず)と、調製室R7の床面と、間の隙間である。なお、
図1に示す空間R13は、ダクトシャフトDS1(
図2参照)を介して、エアハンドリングユニット50の吸込側に連通している。また、隙間K1の大きさを適宜に調整できるように、ドアDqのパッキンの下端の高さ位置が調整可能になっている。
【0034】
図2に示す他方の隙間K2は、例えば、調製室R7と空間R12(
図1参照)とを仕切るドアDpの下端部のパッキン(図示せず)と、調製室R7の床面と、間の隙間である。なお、
図1に示す空間R12は、還気ファン3a(
図2参照)の吸込側に設けられ、ダクトシャフトDS2(
図2参照)を介して、チャンバC(
図2参照)に連通している。そして、隙間K2の大きさを調整できるように、ドアDpのパッキンの下端の高さ位置が調整可能になっている。隙間K1,K2の大きさ(開口率)は、調製室R7の容積の他、単位時間当たりの換気回数や目標圧力等に基づいて、空調システムSの設計時や試運転時に適宜に調整される。
【0035】
また、
図2の例では、複数の孔を有する薄板H2が、ダクトシャフトDS2の上端に設置されている。そして、給気ファン1a,2aや還気ファン3aの駆動中、調製室R7から隙間K2を介してダクトシャフトDS2に導かれた空気の一部が、薄板H2の複数の孔を介して、チャンバCに戻される(つまり、還気される)ようになっている。一方、ダクトシャフトDS2の下部に導かれた空気の残りは、還気ファン3aに吸い込まれて、外部に排気される。
【0036】
このように、還気ファン3a(第2ファン)が、調製室R7(クリーンルーム)からの排気及び還気を行う場合において、給気ファン1a(第1ファン)の吸込側、及び還気ファン3a(第2ファン)の吸込側が、それぞれ、チャンバC(共通の空間)に連通している。これによって、清浄度の高い調製室R7の空気の一部を各クリーンルームの空調に再利用できる。なお、還気ファン3aによるチャンバCへの還気によって、チャンバCの圧力が若干変動するものの、各クリーンルームの室圧の維持に悪影響を与えるおそれはほとんどない。
【0037】
図2に示すように、前室R9の天井Eには、ファンフィルタユニット4が埋設されている。また、前室R9には、圧力センサ32が設けられている。そして、圧力センサ32の検出値に基づいて、前室R9の室圧を所定の目標圧力にするように、給気ファン4aが制御される。なお、
図2には、前室R9の床Gから紙面下側に抜けるように矢印を示しているが、例えば、ドアDw(
図1参照)の下端のパッキン(図示せず)と、前室R9の床面と、の間の隙間を介して、前室R9の空気が排気されるようになっている。なお、他の前室R8についても同様である。
【0038】
図2に示すエアロックAL2の天井Eには、給気ファン6a(第1ファン)やフィルタ6bを備えるファンフィルタユニット6(第1ユニット)が埋設されている。また、エアロックAL2の側壁には、還気ファン7a(第2ファン)やフィルタ7bを備えるファンフィルタユニット7(第2ユニット)が埋設されている。エアロックAL2には、室圧を検出する圧力センサ34が設けられている。そして、エアロックAL2の室圧を所定の目標圧力にするように、給気ファン6a及び還気ファン7aが制御される。還気ファン7aから吹き出された空気は、ダクトシャフトDS3、及び薄板H3の複数の孔を順次に介して、チャンバCに戻される。
【0039】
このように、還気ファン7a(第2ファン)が、エアロックAL2(クリーンルーム)からの還気を行う一方、エアロックAL2からの排気を行わない場合において、給気ファン6a(第1ファン)の吸込側、及び、還気ファン7a(第2ファン)の吹出側が、それぞれ、チャンバC(共通の空間)に連通している。なお、別のエアロックAL1や2次更衣室R6の室圧調整に関する構成については、エアロックAL2のものと同様であるから、説明を省略する。次に、
図1に示す各室のうち、
図2には図示していない残りの各室の室圧調整に関する構成を、
図3を用いて説明する。
【0040】
図3は、複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
なお、
図3に示す天井Eは、
図2に示したものと同一である。また、
図3に示すチャンバCも、
図2に示したものと同一である。
図3に示すファンフィルタユニット12(第1ユニット)は、チャンバCから1次更衣室R2(クリーンルーム)への給気を行う機器であり、天井Eに埋設されている。ファンフィルタユニット12は、給気ファン12a(第1ファン)と、フィルタ12bと、を備えている。
【0041】
ファンフィルタユニット13(第2ユニット)は、1次更衣室R2(クリーンルーム)からの排気を行う機器である。このように、
図3の例では、ファンフィルタユニット13が還気には用いられない点で、前記したファンフィルタユニット3,7,9,11(
図2参照)とは異なっている。また、
図3では簡略化して、1次更衣室R2の床Gの紙面下側にファンフィルタユニット13を図示しているが、
図1に示すように、1次更衣室R2と外部とを仕切る壁にファンフィルタユニット13が埋設されている。
【0042】
図3に示すように、ファンフィルタユニット13は、排気ファン13a(第2ファン)と、フィルタ13bと、を備えている。また、1次更衣室R2には、室圧を検出するための圧力センサ37が設けられている。そして、1次更衣室R2の室圧を所定の目標圧力にするように、給気ファン12aや排気ファン13aが制御される。
【0043】
図3に示す着脱室R1の他、前室R4,R5,R11の室圧調整に関する構成については、前記した前室R9(
図2参照)と同様であるから、説明を省略する。また、
図3に示す脱衣室R10の室圧調整に関する構成については、前記した1次更衣室R2と同様であるから、説明を省略する。
【0044】
図3に示す前処理室R3の天井Eには、ファンフィルタユニット20~22がそれぞれ埋設されている。ファンフィルタユニット20,21(第1ユニット)が備える給気ファン20a,21aの吸込側は、チャンバCに連通している。一方、ファンフィルタユニット22(第2ユニット)が備える排気ファン22aの吹出側は、外部に開放されている。また、前処理室R3には、圧力センサ43が設けられている。そして、前処理室R3の室圧を所定の目標圧力にするように、給気ファン20a,21aや排気ファン22aが制御される。
【0045】
なお、給気ファン20a,21aの駆動で前処理室R3に供給された空気の一部は、排気ファン22aによって排出される。また、前記した空気の残りは、
図3に示す隙間K3、ダクトシャフトDS6、及びダクトD3を順次に介して、エアハンドリングユニット(図示せず)に導かれる。なお、ダクトD3に設けられているダンパB3の開度は、試運転時等に所定に設定された状態で維持される。
【0046】
なお、「クリーンルーム」への給気を行う「第1ファン」を有する「第1ユニット」には、
図2に示すファンフィルタユニット1,2,4~6,8,10の他、
図3に示すファンフィルタユニット12,14~17,19~21も含まれる。
また、「クリーンルーム」からの排気又は還気のうち少なくとも一方を行う「第2ファン」を有する「第2ユニット」には、
図2に示すファンフィルタユニット3,7,9,11の他、
図3に示すファンフィルタユニット13,18,22(
図5参照)も含まれる。次に、各クリーンルームの室圧調整の詳細について、
図4を用いて説明する。
【0047】
図4は、空調システムSの説明図である。
なお、
図4では、説明を分かりやすくするために、
図2、
図3に示した複数のクリーンルームの中から任意の2つのクリーンルームRs,Rtを取り出して示している。クリーンルームRs,Rtの室圧調整に関する構成としては、前記した2次更衣室R6(
図2参照)やエアロックAL1,AL2(
図2参照)と同様になっている。つまり、給気ファンUaによってクリーンルームRsに送り込まれた空気が、還気ファンVaによって、ダクトシャフトDS7を介してチャンバCに戻されるようになっている。
なお、他方のクリーンルームRtの給気・還気についても同様である。また、ダクトシャフトDS7,DS8の上端付近に、空気抵抗としてのダンパ(図示せず)が設けられることもある。
【0048】
ただし、以下の説明は、還気ファン3a(
図2参照)によって排気及び還気の両方が行われる調製室R7(
図2参照)の他、排気ファン13a(
図3参照)が設けられる1次更衣室R2(
図3参照)等の各クリーンルームの室圧調整にも適用できる。
【0049】
以下では一例として、一方のクリーンルームRsが「陽圧室」として用いられ、他方のクリーンルームRtが「陰圧室」として用いられる場合について説明する。ここで、「陽圧室」とは、ドアを介して隣り合っている他のクリーンルームからの空気の流入を抑制するために、室圧が比較的高く設定されるクリーンルームである。また、「陽圧」とは、予め設定される基準圧力よりも高い室圧のことである。
【0050】
一方、「陰圧室」とは、例えば、伝染病のウイルスを扱ったり、放射性物質を扱ったりする際、ドアを介して隣り合っている他のクリーンルームにウイルス等が流出しないように、室圧が比較的低く設定されるクリーンルームである。また、「陰圧」とは、予め設定される基準圧力よりも低い室圧のことである。なお、「陽圧」や「陰圧」の基準圧力として、所定のクリーンルームの室圧の他、クリーンルーム以外の一般室(図示せず)の室圧が用いられてもよい。
【0051】
図5は、給気側のファンフィルタユニットU、及び、還気側のファンフィルタユニットVの制御に関する構成図である。
図5に示すように、給気側のファンフィルタユニットU(第1ユニット)は、給気ファンUa(第1ファン)と、フィルタUbと、を備えている。給気ファンUaは、クリーンルームRs(
図4参照)への給気を行う送風機であり、ファン本体Uafと、ファンモータUamと、を備えている。
還気側のファンフィルタユニットV(第2ユニット)は、還気ファンVa(第2ファン)と、フィルタVbと、を備えている。還気ファンVaは、クリーンルームRs(
図4参照)からの還気を行う送風機であり、ファン本体Vafと、ファンモータVamと、を備えている。
【0052】
なお、ファン本体Uaf,Vafとして、例えば、プロペラファン等の軸流ファンが用いられる。また、ファンモータUam,Vamとして、例えば、直流モータが用いられる。
図5に示す圧力センサ30sは、クリーンルームRs(
図4参照)の室圧を検出するセンサであり、クリーンルームRsに設けられる。
【0053】
制御装置60(制御部)は、給気ファンUaや還気ファンVaを制御する装置である。
図5の例では、制御装置60は、その入力側が配線を介して圧力センサ30sに接続される一方、出力側が配線を介して給気ファンUa及び還気ファンVaに接続されている。制御装置60は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。なお、制御装置60は、PLC(Programmable Logic Controller:図示せず)を含む構成であってもよい。
【0054】
図5には、給気ファンUa及び還気ファンVaが一つの制御装置60に接続される例を示しているが、給気ファンUaの制御装置(図示せず)と、還気ファンVaの制御装置(図示せず)と、が個別に設けられていてもよい。また、一つの制御装置が、複数のクリーンルームの給気ファンや還気ファンを制御するようにしてもよい。
【0055】
クリーンルームRs(
図4参照)を陽圧室として使用する場合、制御装置60は、例えば、給気ファンUaを一定速で駆動させつつ、還気ファンVaを圧力センサ30sの検出値に基づいて制御する。ここで、給気ファンUaを「一定速」で駆動させるとは、圧力センサ30sの検出値に関わらず、給気ファンUaの回転速度を一定にすることを意味している。制御装置60は、給気ファンUaを所定の回転速度(固定値)で駆動させる際、クリーンルームRsの換気が単位時間当たりに所定回数行われるように、給気ファンUaの回転速度(つまり、風量)を設定する。これによって、クリーンルームRsの清浄度を所定レベルで維持できる。なお、「一定速」における「一定」の程度は、効果を奏する程度であれば、厳密に「一定」でなくてもよい。
【0056】
また、制御装置60は、圧力センサ30sの検出値に基づいて、クリーンルームRs(
図4参照)の室圧が所定の目標圧力(設定圧力)になるように、還気ファンVaを制御する。例えば、クリーンルームRsの室圧が目標圧力を超えた場合、制御装置60は、還気ファンVaの回転速度を所定に上昇させる。これによって、クリーンルームRs(
図4参照)からダクトシャフトDS7(
図4参照)に流れ出る空気の流量が大きくなる。一方、給気ファンUaは、前記したように、一定速で駆動される。その結果、クリーンルームRsで一時的に上昇した室圧が目標圧力に戻される。
【0057】
また、クリーンルームRs(
図4参照)の室圧が目標圧力を下回った場合、制御装置60は、還気ファンVaの回転速度を所定に低下させる。その結果、クリーンルームRsにおいて、一時的に上昇した室圧が目標圧力に戻される。このように、制御装置60が圧力センサ30sの検出値に基づいて、還気ファン3aの回転速度を変化させることで、クリーンルームRsの室圧を所定の目標圧力で維持するようにしている。クリーンルームRsを陽圧室として使用する際には、前記したように、給気ファンUaを一定速にする一方、還気ファンVaを室圧に基づく可変速にしたほうがよいことが多い。
【0058】
図6は、還気ファンの回転速度と風量との関係を示す特性図である。
なお、
図6の横軸は、還気ファンVa(
図5参照)の回転速度であり、縦軸は、還気ファンVaの風量である。
図6に示すように、還気ファンVaの回転速度が高いほど、その風量も大きくなる。また、還気ファンVaのファンモータVam(
図5参照)には、例えば、直流モータが用いられるため、その回転速度と風量とが線形の関係(比例関係)になっている。したがって、開度-風量特性が非線形の関係であるダンパ(図示せず)で風量調整を行う場合に比べて、還気ファンVaで風量の微調整が行いやすいという利点がある。なお、還気ファンVaの他、給気ファンUa(
図5参照)も
図6と同様の特性を有している。
【0059】
還気ファンVa(
図5参照)には、
図6に示す回転速度の下限値N1と、これに対応する風量の下限値Q1と、が予め設定されている。同様に、還気ファンVaの回転速度の上限値N2と、これに対応する風量の上限値Q2も予め設定されている。特に、還気ファンVaの風量の下限値Q1に着目すると、その具体的な数値例は、50[m
3/h]であり、従来のダンパ(図示せず)で風量調整を行う場合の風量の下限値(150[m
3/h]程度)の3分の1程度の大きさである。前記したように、還気ファンVaは、回転速度‐風量特性が線形の関係であるため、制御装置60は、還気ファンVaの風量を下限値Q2付近で微調整できる。したがって、ダンパ(図示せず)で風量調整を行う場合に比べて、室圧を高精度に調整できる他、空調システムS(
図4参照)の消費電力量を大幅に削減できる。
【0060】
次に、
図4に示すクリーンルームRtが陰圧室として使用される場合の制御について説明する。制御装置60(
図5参照)は、クリーンルームRtを陰圧室として使用する場合、例えば、給気ファンWa(
図4参照)を圧力センサ30t(
図4参照)の検出値に基づいて制御しつつ、還気ファンZa(
図4参照)を一定速で駆動させる。なお、給気ファンWaも、回転速度-風量特性が線形になっているため(
図6参照)、風量の下限値Q1(
図6参照)付近で給気ファンWaの回転速度の微調整が行いやすい。したがって、空調システムS(
図4参照)の消費電力量を削減しつつ、クリーンルームRtの室圧を高精度で維持できる。
【0061】
なお、クリーンルームRtの容積の他、清浄度・室圧の目標値、給気ファンWaや還気ファンZaの能力等を考慮すると、クリーンルームRtを陰圧室として使用する際には、給気ファンWaを室圧に基づく可変速にする一方、還気ファンZaを一定速にしたほうがよいことが多い。
【0062】
また、例えば、
図4に示すクリーンルームRsを陽圧室として使っていたが、ある時期から用途を変えて、このクリーンルームRsを陰圧室として使いたいということがある。このような場合、制御装置60は、それまで一定速で駆動させていた給気ファンUaを圧力センサ30sの検出値に基づいて制御し、それまで可変速で駆動させていた還気ファンVaを一定速で駆動させるように切り替える。
【0063】
また、例えば、
図4に示す他方のクリーンルームRtを陰圧室として使っていたが、ある時期から用途を変えて、このクリーンルームRtを陽圧室として使いたいということがある。このような場合、制御装置60は、それまで可変速で駆動させていた給気ファンWaを一定速で駆動させ、それまで一定速で駆動させていた還気ファンZaを圧力センサ30tの検出値に基づいて制御するように切り替える。
【0064】
このように、制御装置60(制御部)は、給気ファンUa(第1ファン)及び還気ファンVa(第2ファン)のうち一方を圧力センサ30sの検出値に基づいて制御し、他方を一定速で制御する。また、制御装置60は、給気ファンUa及び還気ファンVaのうち、圧力センサ30sの検出値に基づいて制御されるものと、一定速で制御されるものと、を切替可能に構成されている。言い換えると、クリーンルームRsの室圧を陽圧及び陰圧の一方から他方に切替可能になっている。なお、入力手段(図示せず)を介したユーザの操作によって、前記した「切替」が行われるようにしてもよい。
これによって、その用途に応じて、クリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できる。また、別のクリーンルームRtについても同様のことがいえる。したがって、陽圧室又は陰圧室のクリーンルームを別途設ける場合に比べて、作業負担やコストを大幅に削減できる。
【0065】
なお、クリーンルームRsを陽圧室・陰圧室の一方から他方に切り替える際には、制御装置60が、給気ファンUa及び還気ファンVaを一旦停止させた後に再び駆動させるようにしてもよい。また、制御装置60が、給気ファンUa及び還気ファンVaを駆動させ続けながら、各ファンの制御方法を切り替えるようにしてもよい。
【0066】
<効果>
第1実施形態によれば、給気ファンUa(
図4参照)及び還気ファンVa(
図4参照)のうち、圧力センサ30s(
図4参照)の検出値に基づいて制御するものと、一定速で制御するものと、が切替可能に構成されている。したがって、一つのクリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できるため、使用者にとって使い勝手のよい空調システムSを提供できる。また、陽圧室又は陰圧室のクリーンルーム(図示せず)を別途設ける場合に比べて、作業負担やコストを大幅に削減できるため、社会貢献に寄与できる。
【0067】
また、クリーンルームRs,Rtに空気を導くダクト(図示せず)や、クリーンルームRs,Rtから外部に空気を導くダクト(図示せず)を設ける必要が特にないため、空調システムSの構成を簡素化できる。また、ダクト(図示せず)をチャンバCに設ける(又は、チャンバCの代わりに設ける)場合に比べて、空調システムSを設置する際の工期を短縮し、ひいては、設置に要するコストを削減できる。
【0068】
また、これまでのように、ダクト(図示せず)に設けられたダンパ(図示せず)で室圧を調整する構成では、ダクトにおける空気の圧力損失の他、ダンパの開度-風量特性の非線形性等に起因して、クリーンルームの室圧調整において応答遅れやオーバーシュートが生じやすかった。これに対して、第1実施形態では、例えば、クリーンルームRs(
図4参照)の室圧が還気ファンVa又は給気ファンUaによって調整されるため、前記した圧力損失や応答遅れが生じることがほとんどない。また、還気ファンVaや給気ファンUaの回転速度-風量特性が線形であるため(
図6参照)、クリーンルームRsの室圧を高精度に維持できる。なお、他の各クリーンルームについても同様のことがいえる。
【0069】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、クリーンルームの天井裏にチャンバが特に設けられていない点が、第1実施形態とは異なっている。また、第2実施形態は、比較的大きな大部屋Ro(
図7参照)の中に2つのクリーンルームRs,Rt(
図7参照)が設けられている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、給気側のファンフィルタユニットU,Wや還気側のファンフィルタユニットV,Zの構成・制御については、第1実施形態(
図4、
図5参照)と同様である。また、制御装置60が、クリーンルームRs,Rtを陽圧室・陰圧室の一方から他方に切替可能である点も、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0070】
図7は、第2実施形態に係る空調システムSAの説明図である。
図7の例では、大部屋Roの中に2つのクリーンルームRs,Rtが設けられている。大部屋Roの天井には、フィルタユニットF4が設けられている。フィルタユニットF4は、ダクトD4を通流する空気から塵埃を捕集するものである。このようなフィルタユニットF4として、例えば、HEPAやULPAが用いられる。フィルタユニットF4を通過した空気は、大部屋Roの空間に導かれる。なお、ダクトD4において、フィルタユニットF4の付近にダンパB4が設けられている。そして、例えば、空調システムSAの試運転時にダンパB4が所定開度に設定され、その後の空調運転中は、前記した所定開度で維持されるようになっている。
【0071】
図7に示す隙間Ka,Kbは、大部屋Roから空気が流出する際の通風路である。そして、隙間Ka,Kb及びダクトD5を順次に介して、エアハンドリングユニット(図示せず)に空気が導かれるようになっている。このエアハンドリングユニット(図示せず)で温度等が調整された空気は、別のダクトD4を介して、大部屋Roに戻される。
【0072】
図7に示すように、クリーンルームRsの天井には、給気側のファンフィルタユニットU(第1ユニット)が設けられている。また、クリーンルームRsの側壁には、還気側のファンフィルタユニットV(第2ユニット)が設けられている。そして、給気ファンUaを介してクリーンルームRsに導かれた空気が、還気ファンVa及びダクトシャフトDS7を順次に介して、大部屋Roの空間に戻されるようになっている。なお、他方のクリーンルームRtについても同様である。
【0073】
図7に示すように、還気ファンVa(第2ファン)が、クリーンルームRsからの還気を行う一方、クリーンルームRsからの排気を行わない場合において、給気ファンUa(第1ファン)の吸込側、及び還気ファンVa(第2ファン)の吹出側が、大部屋Roの空間(共通の空間)に連通している。
【0074】
制御装置60(
図5参照)は、給気ファンUa(第1ファン)及び還気ファンVa(第2ファン)のうち、圧力センサ30sの検出値に基づいて制御するものと、一定速で制御するものと、を切替可能に構成されている。これによって、クリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できる。なお、クリーンルームRs,Rtの室圧調整については、第1実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0075】
<効果>
第2実施形態によれば、大部屋Roの中にクリーンルームRs,Rtが設けられた構成でも、クリーンルームRs,Rtを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できるため、使用者にとって使い勝手のよい空調システムSAを提供できる。また、陽圧室又は陰圧室のクリーンルームを別途設ける場合に比べて、作業負担やコストを大幅に削減できる。
【0076】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空調システムS,SAについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、給気ファンUa(
図5参照)又は還気ファンVa(
図5参照)が一定速で制御される場合の回転速度の設定については特に言及しなかったが、次のようにしてもよい。すなわち、給気ファンUa(第1ファン)及び還気ファンVa(第2ファン)のうち、一定速で制御されるファンの風量が、クリーンルームRsの目標圧力に基づいて設定されるようにしてもよい。なお、一定速で制御されるファンの風量設定については、制御装置60が行ってもよいし、また、入力手段(図示せず)を介したユーザの操作に基づいて行うようにしてもよい。
具体例を挙げると、給気ファンUaを一定速で制御する場合、制御装置60は、クリーンルームRsの目標圧力が高いほど、給気ファンUaの風量が大きくなるように設定する。また、還気ファンVaを一定速で制御する場合、制御装置60は、クリーンルームRsの目標圧力が高いほど、還気ファンVaの風量が小さくなるように設定する。これによって、クリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として用いる際、室圧を目標圧力に近づけやすくなる。
【0077】
また、各実施形態では、クリーンルームRs(
図4参照)を陽圧室として使用する場合、制御装置60が、給気ファンUaを一定速で駆動させつつ、還気ファンVaを室圧に基づく可変速とする場合について説明したがこれに限らない。すなわち、使用条件によっては、クリーンルームRsを陽圧室として使用する場合、給気ファンUaを室圧に基づく可変速で駆動させつつ、還気ファンVaを一定速としたほうがよいこともある。
【0078】
また、各実施形態では、クリーンルームRs(
図4参照)を陰圧室として使用する場合、制御装置60が、給気ファンUaを室圧に基づく可変速で駆動させつつ、還気ファンVaを一定速とする場合について説明したがこれに限らない。すなわち、使用条件によっては、クリーンルームRsを陰圧室として使用する場合、給気ファンUaを一定速で駆動させつつ、還気ファンVaを室圧に基づく可変速としたほうがよいこともある。
【0079】
また、第1実施形態と、第2実施形態と、を適宜に組み合わせることも可能である。例えば、第2実施形態で説明した還気ファンVa(
図4参照)に代えて、クリーンルームRs(
図4参照)からの排気及び還気を行う還気ファン(図示せず)を設けるようにしてもよい。このように、還気ファン(第2ファン)が、クリーンルームRsからの排気及び還気を行う場合において、給気ファン(第1ファン)の吸込側、及び還気ファン(第2ファン)の吸込側は、それぞれ、大部屋Roの空間(共通の空間)に連通している。これによって、クリーンルームRsの清浄な空気の一部を大部屋Roの空間に戻しつつ、残りの空気を排気できる。また、前記した構成において、給気ファン(第1ファン)及び還気ファン(第2ファン)のうち、圧力センサ30sの検出値に基づいて制御されるものと、一定速で制御されるものと、が切替可能であってもよい。これによって、クリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できる。
【0080】
その他にも、例えば、第2実施形態で説明した還気ファンVaに代えて、クリーンルームRsからの排気を行う排気ファン(図示せず)を設けるようにしてもよい。このような構成において、給気ファン(第1ファン)及び排気ファン(第2ファン)のうち、圧力センサ30sの検出値に基づいて制御されるものと、一定速で制御されるものと、が切替可能であってもよい。これによって、クリーンルームRsを陽圧室又は陰圧室として選択的に使用できる。
【0081】
また、各実施形態では、一例として、空調システムS,SAが再生医療施設に用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、工業品の製造や食品産業、医薬品の製造等、他の様々な分野にも実施形態を適用できる。
【0082】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0083】
U,W ファンフィルタユニット(第1ユニット)
V,Z ファンフィルタユニット(第2ユニット)
Ua,Wa 給気ファン(第1ファン)
Ub,Wb フィルタ(第1フィルタ)
Va,Za 還気ファン(第2ファン)
13a,18a,22a 排気ファン
30s,30t 圧力センサ
50 エアハンドリングユニット
60 制御装置(制御部)
C チャンバ
AL1,AL2 エアロック
DS7,DS8 ダクトシャフト
F4,F5 フィルタユニット
R1 着脱室
R2 1次更衣室
R3 前処理室
R4,R5,R8,R9,R11 前室
R6 2次更衣室
R7 調製室
R10 脱衣室
Rs,Rt クリーンルーム
Ro 大部屋(所定の部屋)
S,SA 空調システム