(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】液体加熱器具
(51)【国際特許分類】
A47J 27/21 20060101AFI20250313BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
A47J27/21 101B
A47J27/00 109L
A47J27/21 101Z
(21)【出願番号】P 2023527098
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 GB2021052837
(87)【国際公開番号】W WO2022090748
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-08-21
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】323012519
【氏名又は名称】ストリックス(チャイナ)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コリンソン、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ポール、アンドルー
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】モートン、コリン
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/176952(WO,A1)
【文献】中国実用新案第200945093(CN,Y)
【文献】国際公開第2016/074743(WO,A1)
【文献】中国実用新案第202051519(CN,U)
【文献】欧州特許第01117318(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21 - 27/212
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁調理器上に載置される液体加熱器具であって、
液体容器と、
前記液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートと、
前記強磁性加熱プレートと熱的に連通し、当該強磁性加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出するように構成された感熱アクチュエータと、
前記加熱プレートが取り付けられ、当該加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを前記感熱アクチュエータが検出すると当該加熱プレートを前記液体容器内で上方に移動させるように動作可能な持ち上げ機構と、を備える
ことを特徴とする液体加熱器具。
【請求項2】
前記持ち上げ機構は、下端に前記加熱プレートが取り付けられたプランジャと、当該持ち上げ機構が動作したときに上端で前記プランジャに作用して前記加熱プレートを上方に移動させるように構成された持ち上げ付勢部材とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の液体加熱器具。
【請求項3】
前記持ち上げ機構は、前記プランジャの上端に配置されたラッチ及びラッチ解除部を備え、
前記ラッチは、前記ラッチ解除部によって、当該ラッチが前記プランジャの上方へ
の動きを制限するように構成されたラッチ構成と、当該ラッチが前記プランジャの動きを許容するように構成されたラッチ解除構成とに移動され、
当該液体加熱器具は、前記感熱アクチュエータの作用を受けて前記ラッチ解除部を動かすことにより前記持ち上げ機構を動作させるように構成された中間機構をさらに備える
ことを特徴とする
請求項2に記載の液体加熱器具。
【請求項4】
前記中間機構は、前記プランジャの内部に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の液体加熱器具。
【請求項5】
前記液体容器内の液体が沸騰したことを検出し、それに応じて前記持ち上げ機構を操作するように構成された蒸気感知装置をさらに備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項6】
前記持ち上げ機構は、
下端に前記加熱プレートが取り付けられたプランジャと、
前記プランジャの上端に配置されたラッチ及びラッチ解除部とを備え、
前記蒸気感知装置は、前記プランジャの前記上端に配置され、前記ラッチ解除部を動かすことにより前記持ち上げ機構を操作する
ことを特徴とする請求項5に記載の液体加熱器具。
【請求項7】
当該器具の前記持ち上げ機構を操作するように構成された手動介入部をさらに備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項8】
前記持ち上げ機構は、
下端に前記加熱プレートが取り付けられたプランジャと
前記プランジャの上端に配置されたラッチ及びラッチ解除部とを備え、
前記手動介入部は、前記プランジャの前記上端に配置され、前記ラッチ解除部を動かすことにより前記持ち上げ機構を操作する
ことを特徴とする請求項7に記載の液体加熱器具。
【請求項9】
前記加熱プレートを下向きに付勢するよう構成されたプレート付勢部材をさらに備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項10】
前記持ち上げ機構は、下端に前記加熱プレートが取り付けられたプランジャを備え、前記プレート付勢部材は、上端で前記プランジャに作用して前記加熱プレートを下方に付勢するように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体加熱器具。
【請求項11】
前記プランジャは、外側スリーブ内で移動可能な内側シャフトであって、前記外側スリーブが前記内側シャフトを取り囲む、内側シャフトを備え、前記プレート付勢部材は、前記内側シャフトに作用して前記加熱プレートを下方に付勢するように構成され、前記持ち上げ機構は、当該持ち上げ機構が動作するときに前記外側スリーブに作用して前記加熱プレートを上方に移動させるように構成された持ち上げ付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の液体加熱器具。
【請求項12】
前記加熱プレートが前記持ち上げ機構によって上方に動かされるときに前記加熱プレートの動きを遅くするように構成された減衰機構をさらに備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項13】
前記加熱プレートは、当該加熱プレートを通って延伸する1つまたは複数の開口を備え、当該1つまたは複数の開口は、前記感熱アクチュエータの周囲に配置されている
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項14】
前記加熱プレートは、当該加熱プレートの1つまたは複数の部分から前記感熱アクチュエータに熱を伝導するように構成されたヒートブリッジを備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項15】
前記感熱アクチュエータは、前記加熱プレートの上側の前記ヒートブリッジに取り付けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の液体加熱器具。
【請求項16】
前記加熱プレートは、長軸と短軸を有し、前記ヒートブリッジは、前記加熱プレートの前記短軸に沿って延伸する
ことを特徴とする請求項14または請求項15に記載の液体加熱器具。
【請求項17】
前記加熱プレートが取り付けられた前記持ち上げ機構は、前記液体容器から取り外し可能である
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項18】
前記強磁性加熱プレートは、長軸と短軸を有する
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項19】
当該器具は、前記強磁性加熱プレートと前記液体容器の側壁との間に配置された保護部品をさらに備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項20】
前記保護部品は、前記強磁性加熱プレートの外周の周りに延伸する
ことを特徴とする請求項
19に記載の液体加熱器具。
【請求項21】
前記保護部品は、同一平面内に、前記強磁性加熱プレートの外縁の半径方向外側に、配置されている
ことを特徴とする請求項
19または請求項20に記載の液体加熱器具。
【請求項22】
前記保護部品は、前記強磁性加熱プレートに取り付けられた加熱プレートカバーを備える
ことを特徴とする請求項
19~請求項
21のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項23】
前記加熱プレートカバーは、前記強磁性加熱プレートから離間するように当該加熱プレートに取り付けられている
ことを特徴とする請求項
22に記載の液体加熱器具。
【請求項24】
前記加熱プレートカバーは、当該加熱プレートカバーの上側と当該加熱プレートカバーの下側との間の流体連通を提供するための1つまたは複数の開口を画定する
ことを特徴とする請求項
22または請求項
23に記載の液体加熱器具。
【請求項25】
前記保護部品は、前記加熱プレートカバーに取り付けられ、かつ、当該加熱プレートカバーの外周の周りに延伸する、バンパーリングを備える
ことを特徴とする請求項
22~請求項
24のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項26】
前記バンパーリングの外縁は、前記強磁性加熱プレートの外縁の半径方向外側に配置されている
ことを特徴とする請求項
25に記載の液体加熱器具。
【請求項27】
当該器具は、前記強磁性加熱プレートと前記液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータを備える
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項28】
前記1つまたは複数のセパレータは、当該器具が電磁調理器上に載置され、当該電磁調理器が通電されて前記加熱プレートを誘導加熱したとき、前記1つまたは複数のセパレータが前記加熱プレートの誘導加熱領域よりも加熱の少ない強磁性加熱プレートの領域に接するように配置されている
ことを特徴とする請求項
27に記載の液体加熱器具。
【請求項29】
前記1つまたは複数のセパレータは、前記強磁性加熱プレートの内側半分内に位置する
ことを特徴とする請求項
28に記載の液体加熱器具。
【請求項30】
電磁調理器上に載置される液体加熱器具であって、
基部を有する液体容器と、
前記液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートと、
前記加熱プレートと前記液体容器の前記基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータと、を備え、
前記1つまたは複数のセパレータは、前記強磁性加熱プレートの内側半分内に位置するか、または当該内側半分に接するように配置されている
ことを特徴とする液体加熱器具。
【請求項31】
前記1つまたは複数のセパレータは、前記強磁性加熱プレートに配置されている
ことを特徴とする請求項
30に記載の液体加熱器具。
【請求項32】
前記強磁性加熱プレートが取り付けられ、かつ、前記液体容器内で前記強磁性加熱プレートを上方に移動させるように動作可能な、持ち上げ機構をさらに備える
ことを特徴とする請求項
30または請求項
31に記載の液体加熱器具。
【請求項33】
前記液体容器は、当該容器の下端に配置された基部と、当該容器の上端に配置された上部開口部と、を備え、前記基部の幅は前記上部開口部の幅よりも大きい
ことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具。
【請求項34】
電磁調理器と、上記請求項のいずれかに記載の液体加熱器具とを備える液体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体加熱器具に関し、特に電磁調理器と共に用いる液体加熱器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ケトルなどの液体加熱器具は、多くの家庭で一般的に用いられる。従来のケトルは、当該ケトルの基部の素子を加熱するように配置された電源を備える。加熱された基部と良好に熱接触するように取り付けられた1つまたは複数の感熱アクチュエータを含む感熱制御を用いて、空焚き防止機能をケトルに提供することが知られている。アクチュエータは、例えば沸騰して器具が空になったか、中に水が入っていない状態でオンにされたことによる過熱状態を検出すると、自動的に電源を遮断するように動作する。したがって、このような保護メカニズムは、電源へのアクセス可否に依存する。
【0003】
電磁調理器は、食品や飲料を準備する家庭のキッチンでますます人気が高まっている。電磁調理器は、電流が供給されると磁場を発生させるコイルを備えている。磁場内に配置された強磁性材料が、磁場によって材料内に誘導された渦電流によって加熱される。典型的な電磁誘導加熱容器(なべやケトルなど)は強磁性部品を含み、当該強磁性部品は、液体と接触するように配置され、通電された電磁調理器に容器が載置されると加熱され、それにより容器内の液体を加熱するように作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱装置の制御がケトルではなく調理器によって提供され、ケトルがソースパンのように主にパッシブである電磁誘導ケトルがすでに提案されている。この制御装置とケトルの分離には、自動温度制御とスイッチオフ、特に空焚き防止に関して課題がある。上述したような公知の空焚き防止機構は、電磁誘導ケトルには適していない。ケトル自体には電源が備えられていないため、ケトル内の温度を感知するように構成されたアクチュエータは、調理器内の誘導コイルへの電力供給を遮断するには適切でない位置に配置される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、改良された器具を提供することを目的としており、第1の側面から見た場合、本発明は、電磁調理器上に載置される液体加熱器具を提供し、当該液体加熱器具は、
液体容器と、
液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートと、
強磁性加熱プレートと熱的に連通し、当該強磁性加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出するように構成された感熱アクチュエータと、
加熱プレートが取り付けられ、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを感熱アクチュエータが検出すると加熱プレートを液体容器内で上方に移動させるように動作可能な持ち上げ機構と、を備える。
【0006】
本発明は、強磁性加熱プレートが所定の温度となったことを検出すると(例えば、空焚きシナリオを示す)、持ち上げ機構が加熱プレートを電磁調理器の磁場から離れるように上向きに移動させるように構成された、「空焚きスイッチオフ」機能を提供することが理解されるであろう。したがって、電磁調理器が通電され続けても、加熱プレートがそれ以上加熱されることはない。これは、加熱プレートが過熱状態になると、誘導加熱が自動的に中断され、ユーザの介入を必要としないことを意味する。過熱防止という文脈において、感熱アクチュエータは、強磁性加熱プレートの温度が少なくとも120℃、125℃、130℃、135℃、または140℃の所定の温度を超えたことを検出するように構成されてもよい。本明細書で使用する「熱的に連通」という表現は、直接的な熱的連通を意味することを意図している(すなわち、熱伝導を含む)。
【0007】
出願人は、器具の空焚き防止を電磁調理器から分離することにより、器具の独立したパッシブな性質を維持することができ、これにより、機械的か電気的に関わらず、ケトルと電磁調理器との間の複雑な接続の必要性が回避される。これは、本発明による器具が、調理器の改造を必要とせず、家庭用電磁調理器での使用に適していることを意味する。
【0008】
液体容器は、加熱される液体の受け入れ容積を画定する、任意の適切な、または所望の形状であってもよい。好ましくは、液体容器は、沸騰するまで加熱された液体、特に水を安全に収容できる。好ましくは、液体容器は、非強磁性材料からなる。いくつかの実施形態において、液体容器は、非強磁性金属、例えばアルミニウム、銅、または真鍮からなってもよい。いくつかの実施形態において、液体容器は、プラスチック、プラスチック複合材(例えば、ガラス強化プラスチック)、ガラス、セラミックなどの非金属材料からなってもよい。好ましくは、液体容器は透明または半透明である。好ましい一連の実施形態において、液体容器は、ガラスからなる。これにより、液体容器の中身がユーザに見えるようになり、非常に高い温度にも耐えることができる。強磁性加熱プレートを液体に浸さずに誘導加熱すると、500℃まで到達することがある。
【0009】
好ましくは、液体容器は、電磁調理器の上面に接触するように構成された基部を有する。好ましくは、基部(例えばその下面)は、器具の安定性を高めるために、略平坦である。液体容器は、円筒形であってもよい。いくつかの実施形態において、液体容器は、円錐台形である。液体容器は、基部(例えば、器具が載置される電磁調理器に対して容器の下端に配置される)および上部開口部(例えば、容器の上端に配置される)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、基部の幅(例えば直径)は上部開口部の幅(例えば直径)よりも大きい。これにより、例えば液体容器が伝統的なガラス製の水差しのような外観になるなど、美しい形状の器具が実現される。しかしながら、以下に説明するように、そのような形状は、強磁性加熱プレートの設置を困難にする可能性がある。
【0010】
容器の上部開口部は、取り外し可能な蓋を受け入れるように構成されてもよい。上部開口部は、(例えば、それに応じて蓋も)円形であってもよい。蓋は、液体を容器に導入するための開口を画定してもよい。いくつかの実施形態において、蓋は、容器に液体を導入するために取り外されるように構成されている。いくつかの実施形態において、液体容器は、注ぎ口を含んでもよい。液体は、蓋によって閉じられる上部開口部を用いることに加えて、あるいはその代わりに、注ぎ口を介して容器に導入してもよい。
【0011】
強磁性加熱プレートは、鉄、コバルト、ニッケル、およびそれらの強磁性合金から選ばれる1つまたは複数、例えばスチールからなってもよい。強磁性加熱プレートは、複合材料、例えば強磁性粒子を埋め込んだセラミックからなってもよい。好ましくは、液体容器内に配置される器具の部品は、液体容器内で加熱された液体が安全に摂取可能なように、食品に対して安全な材料から製造される。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態において、持ち上げ機構は、強磁性加熱プレートに、その上側から取り付けられるように構成される。これは、持ち上げ機構が、加熱プレートを下から上に押すのではなく、加熱プレートを液体容器内で上方に引っ張るように構成されることを意味する。
【0013】
いくつかの実施形態において、強磁性加熱プレートが取り付けられた持ち上げ機構は、液体容器から取り外し可能である。持ち上げ機構(および、いくつかの実施形態においては以下に説明するプランジャ)は、器具の、取り外し可能な蓋に取り付けられてもよい。これにより、容器に液体を入れる作業がしやすくし、器具を洗浄する作業もしやすくすることができる。
【0014】
強磁性加熱プレートは、任意の適切な、または所望の形状であってもよい。例えば、加熱プレートは概ね正方形、長方形、または多角形であってもよい。いくつかの実施形態において、加熱プレートは円形である。容器が上部開口部を画定する実施形態においては、加熱プレートは、上部開口部を介して容器内に挿入されてもよい。そのような実施形態においては、加熱プレートの寸法は、上部開口部の最大寸法によって制限され得る。これは、プレートの表面積が制限され得ることを意味し、加熱プレートの有効加熱力を制限し得る。器具は、500W~4000W、例えば2000W~3000W、例えば約2200Wの加熱力を提供するように構成されてもよい。これは、器具が載置される調理器の出力に依存することが理解されるであろう。
【0015】
好ましくは、加熱プレートは略平面(すなわち平坦)である。平坦な形状により、プレートの製作が容易かつより安価となる。さらに、平坦なプレートは、プレート全体が確実に電磁調理器の磁場内に配置され、それによって、電磁調理器の磁場によるプレート全体の加熱を確実にするのに役立つ。
【0016】
好ましい実施形態の集合においては、加熱プレートは、長軸と短軸を有する。「長軸」および「短軸」という用語は、プレートの平面部分(すなわち、加熱プレートの厚さに垂直な平面内)を横切って延伸する軸を指すことを意図し、長軸に沿った加熱プレートの寸法は、短軸に沿った加熱プレートの寸法よりも大きいことが理解されるであろう。したがって、加熱プレートは非円形であってもよい。
【0017】
加熱プレートは、回転対称ではなく2回回転対称(rotational symmetry of order two)であってもよい。長軸および短軸は、曲線的である加熱プレートの外形(例えば楕円形の外形)または曲線部分および直線部分の両方を含む加熱プレートの外形(例えば長円形の外形)によって定められてもよい。いくつかの実施形態においては、加熱プレートは概ね楕円形または長円形である。楕円形の加熱プレートは、所定長さの長軸に対して、より大きな表面積を持つことができるが、長円形の加熱プレートは、製造、取り扱い、あるいは設置が容易であり得る。
【0018】
非円形(例えば長円形)の加熱プレートは、液体容器が、基部より小さい上部開口部を含む実施形態において特に有利である。加熱プレートは、短軸が上部開口部の幅以下になるような寸法にしてもよい。しかしながら、加熱プレートが、加熱プレートの長軸と凡そ同一直線上にある方向で容器内に挿入される場合、長軸は上部開口部の幅よりも広くなり得る。加熱プレートは、容器の(より幅の広い)基部に近づくと回転させることができる。このようにして、加熱プレートについて、所与の上部開口部サイズに対して、より大きな表面積を提供することができる。加熱プレートの表面積が大きいほど、器具の有効加熱力が高くなる。
【0019】
これは、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられる。したがって、第2の側面から見た場合、本発明は液体加熱器具を提供し、当該器具は、
液体容器と、
長軸と短軸を有する強磁性加熱プレートと、
加熱プレートが取り付けられ、液体容器内で当該加熱プレートを動かすことが可能な持ち上げ機構と、を備える。
【0020】
したがって、本発明のこの側面は、加熱プレート(長軸および短軸を有する)が持ち上げ機構によって移動可能な液体加熱器具を提供する。本器具は、電磁調理器と共に用いるのが望ましい。
【0021】
上述したように、強磁性加熱プレートは、概ね楕円形または長円形であってもよい。本発明のこの第2の側面による少なくともいくつかの実施形態においては、液体容器は、容器の下端に配置された基部と、容器の上端に配置された上部開口部と、を備え、基部の幅は上部開口部の幅よりも大きい。
【0022】
本発明のこの第2の側面による少なくともいくつかの実施形態において、器具は、強磁性加熱プレートと熱的に連通し、当該強磁性加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出するように構成された感熱アクチュエータをさらに備え、持ち上げ機構は、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを感熱アクチュエータが検出すると加熱プレートを液体容器内で上方に移動させるように動作可能である。さらには、加熱プレートは、加熱プレートの1つまたは複数の部分から感熱アクチュエータに熱を伝導するように構成されたヒートブリッジを備えてもよく、ヒートブリッジは、加熱プレートの短軸に沿って延伸する。この構成では、以下でより詳細に説明するように、加熱プレートが非円形形状であることにより短軸に沿って形成される、より多くの加熱領域を利用する。
【0023】
次に、本発明の第1または第2の側面のいずれかによる実施形態に、単独で、または組み合わせて適用され得る種々の特徴について説明する。
【0024】
いくつかの実施形態において、器具は、加熱プレートと液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータを備える。(1つまたは複数の)セパレータは、加熱プレートと液体容器の基部との間の止め具(stop)として機能するように構成されてもよい。当該(1つまたは複数の)セパレータは、液体容器(例えばその基部の上面)に配置されてもよい。いくつかの実施形態においては、セパレータは、加熱プレート(例えばその下面)に配置される。例えば、以下に説明するように、加熱プレートは、その下面に配置された(すなわち、容器の基部に接触して当該基部と加熱プレートとを隔てるように配置された)複数の脚を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、(1つまたは複数の)セパレータは、加熱プレートの少なくとも一部が液体容器の基部の上面に直接載るのを防止する。これにより、加熱プレートと液体容器との間に隙間ができ、これは、液体が液体容器に供給されるとき、当該液体が加熱プレートの下を流れることができることを意味する。これにより、加熱容器内の液体と接触可能な加熱プレートの総表面積が増加し、容器内の対流が促進されて、液体が均一に加熱されるのを助ける。
【0025】
(1つまたは複数の)セパレータは、加熱プレートと液体容器(の基部)との間に0.5mm~3mm、例えば0.7mm~1.2mm、例えば1mmの隙間を提供するように配置されてもよい。出願人は、そのような距離は、加熱プレートが誘導加熱の効果が減少しない程度に電磁調理器に十分近く、かつ液体が加熱プレートの表面全体に流れる程度に液体容器の基部から離れていることを意味するので、有益であることを確認した。
【0026】
いくつかの実施形態においては、加熱プレートの形状が非円形であるため、誘導加熱中のプレートの温度が均一ではない。すなわち、加熱プレートのいくつかの部分がより高い温度に加熱される場合がある。加熱プレートが円形であり得る第1の側面の実施形態であっても、器具が電磁調理器の中央に載置されていない場合、加熱プレートの熱分布が不均一となる。このバラツキにより、感熱アクチュエータを最適に配置して加熱プレート全体における最高温度の迅速な検出を確実にするのが困難になる。いくつかの実施形態においては、加熱プレートは、加熱プレートの1つまたは複数の部分から感熱アクチュエータに熱を伝導するように構成されたヒートブリッジを備える。これは、感熱アクチュエータが、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことの検出に失敗するリスクを減らすのに役立つ。
【0027】
いくつかの実施形態においては、ヒートブリッジは、(加熱プレートの平面を横切って)加熱プレートの中心を通って延伸する。いくつかの実施形態においては、ヒートブリッジは、加熱プレートの長軸に沿って延伸してもよい。好ましくは、ヒートブリッジは、加熱プレートの短軸に沿って延伸する。いくつかの実施形態においては、ヒートブリッジは、加熱プレートの短軸に沿って加熱プレートの(全)幅に沿って延伸する。発明者は、加熱プレートが長軸と短軸を備える場合、円形コイルによる誘導加熱中の加熱プレートの最も高温の領域は、短軸に沿った加熱プレートの端部にあることに気付いた。したがって、このように短軸に沿ってヒートブリッジを配置することは、ヒートブリッジが加熱プレートの最も高温の領域と直接、熱的に連通することを意味する。これにより、これらの領域における加熱プレートの熱が、ヒートブリッジの長さに沿って伝導される。
【0028】
ヒートブリッジは、加熱プレートと一体化されていてもよい。いくつかの実施形態においては、ヒートブリッジは、加熱プレートの表面に取り付けられる。いくつかの好ましい実施形態においては、感熱アクチュエータは、加熱プレートの上側のヒートブリッジに取り付けられる。これは、上述のように、感熱アクチュエータおよびヒートブリッジが、容器の基部からの分離距離がわずかしかない加熱プレートの下側と干渉しないことを意味する。ヒートブリッジは、例えば、ろう付け、はんだ付け、またはリベット留めによって加熱プレートに取り付けられてもよい。ヒートブリッジは、加熱プレートに溶接(例えば、レーザービーム溶接またはスポット溶接)されるのが好ましい。ヒートブリッジは高い熱伝導率を有することが好ましい。例えば、ヒートブリッジは銅またはアルミニウムであってもよい。
【0029】
器具内の液体の加熱中に、蒸気層が容器の基部と加熱プレートとの間の領域に閉じ込められる場合がある。蒸気層は、液体容器内の液体から加熱プレートを断熱するように機能し得る。これにより、この領域の温度が急速に上昇する可能性がある一方で、プレートの残りの部分の温度と液体の温度は比較的低いままとなる。その結果、感熱アクチュエータが所定の温度よりも高い温度を検出し、これに応じて持ち上げ機構が加熱プレートを移動させ得る。これは、器具内の液体が沸騰する前に器具の電源が切られ得ることを意味する(いわゆる「空焚き干渉(dry boil interference)」)。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態においては、加熱プレートは、加熱プレートを通って延伸する1つまたは複数の開口を画定する。当該1つまたは複数の開口は、加熱プレートの周囲に等間隔に配置されてもよい。当該1つまたは複数の開口は、加熱プレートの下で発生した蒸気を液体容器内で放散させ、断熱層が発生するリスクを低減する。開口はまた、液体容器内に液体が収容されている場合、液体容器内での加熱プレートの移動を補助することができる。なぜなら、加熱プレートが液体中を移動すると、液体は、プレートの外周の周りだけでなく、上記(1つまたは複数の)開口を通って流れることができるからである。その結果、より力の弱い持ち上げ機構が必要になりうる。さらには、持ち上げ機構によるプレートの移動に続いて、使用者がプレートの位置をより容易にリセットすることができる。
【0031】
少なくともいくつかの実施形態において、上記1つまたは複数の開口は感熱アクチュエータの周囲に配置される。これは、熱が加熱プレートを介して放散されず確実に感熱アクチュエータに伝導されるようにするのに役立つ。
【0032】
いくつかの実施形態においては、感熱アクチュエータは、加熱プレートに(例えば直接)取り付けられる。感熱アクチュエータは、加熱プレートの上面に取り付けても(例えば、溶接しても)よい。加熱プレートは、液体容器内の液体から感熱アクチュエータを遮断するように加熱プレートに取り付けられたケーシングを備えてもよい。加熱プレートがヒートブリッジを備える実施形態においては、感熱アクチュエータは、(例えば、加熱プレートの上側の)ヒートブリッジに取り付けられてもよい。したがって、そのような実施形態においては、感熱アクチュエータは、加熱プレートのヒートブリッジを介して加熱プレートと熱的に連通している。
【0033】
そのような実施形態においては、ヒートブリッジを用いて、加熱プレートのより多くの加熱領域から感熱アクチュエータに向かって熱を伝導することができる。これにより、感熱アクチュエータを配置できる場所の範囲が広がり、器具の設計の自由度が高まる。
【0034】
器具内の他の場所ではなく、加熱プレート(例えば、加熱プレートのヒートブリッジ)に感熱アクチュエータを配置することは、感熱アクチュエータが、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことをより確実に検出できることを意味する。
【0035】
感熱アクチュエータは、電子温度センサ(例えば、サーミスタ)を備えていてもよい。感熱アクチュエータは、電気信号を持ち上げ機構に送信して持ち上げ機構を動作させるように構成されてもよい。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態においては、感熱アクチュエータはバイメタルアクチュエータを含む。感熱アクチュエータは、プレートの温度が所定の温度を超えたことを感熱アクチュエータが検出したときに(例えば、スナップ動作で)撓むように構成されてもよい。感熱アクチュエータは、感熱アクチュエータの温度が所定の温度を超えたときに撓むように構成されてもよい。
【0037】
持ち上げ機構は、加熱プレートを上方に、すなわち容器の基部から離れる方向に動かすように構成される。器具の基部が、通電された電磁調理器上に載置されたとき、加熱プレートを基部から遠ざけることは、電磁調理器によって生成される磁場から加熱プレートを遠ざけ、加熱プレートが電磁調理器の磁場に結合されないようにすることができることが理解されるであろう。その結果、加熱プレートのさらなる加熱を防止することができる。
【0038】
いくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は、加熱プレートを加熱位置と非加熱位置との間で移動させるように配置される。加熱位置では、加熱プレートは、液体容器の基部の上面(内面)に隣接して(例えば、その1.5mm以内に)配置される。この位置では、器具が電磁調理器上に載置され、当該調理器が通電されると、加熱プレートは誘導コイルの磁場内に配置され、よって加熱され始める。非加熱位置では、加熱プレートは容器の基部から離される(例えば、20mm以上離される)。この位置では、通電された電磁調理器に器具が載置されると、加熱プレートが磁場によって加熱されないように、加熱プレートは電磁調理器から十分に離される。このように、少なくともいくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は、加熱プレートを液体容器内で少なくとも10mm、12mm、14mm、16mm、18mm、または20mmの距離だけ上方に移動させるように動作可能である。これは、加熱プレートの加熱位置と非加熱位置との間の垂直距離であってもよい。
【0039】
持ち上げ機構は、加熱プレートの一部のみを上方に移動させるように構成されてもよい。持ち上げ機構は、加熱プレートの一部が器具の基部から離れて上方に移動するように、加熱プレートを傾斜させるように構成されてもよい。このように、加熱プレートの傾斜部分を電磁調理器によって生成された磁場から遠ざけ、加熱プレートのより小さな領域が磁場にさらされるようにすることができる。これにより、加熱プレートの有効加熱力を低下させ、加熱プレートのさらなる加熱を制限できる。ただし、持ち上げ機構は、加熱プレート全体を上方に移動させるように構成されることが好ましい。これは、加熱プレートを、傾けるのではなく、まっすぐ上に移動させることを意味する。加熱プレートは、上方に持ち上げられている間、概ね水平な向きのままであってもよい。これは、調理器の磁場から加熱プレートを遠ざけるためのより迅速で信頼性の高い方法である。
【0040】
持ち上げ機構は容器の基部に配置されていてもよい。いくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は器具の蓋に取り付けられる。持ち上げ機構は、器具の蓋に対して加熱プレートを移動させるように構成されてもよい。
【0041】
持ち上げ機構は、液体容器内に加熱プレートを取り付けるプランジャを備えてもよい。加熱プレートは、プランジャが加熱プレートの表面から垂直に延びるように、プランジャの下端でプランジャに取り付けられても(例えば、溶接されても)よい。加熱プレートが液体容器内に配置される場合、プランジャの上端は、液体容器の上部開口部を通って延伸してもよい(すなわち、液体容器の上部開口部は、蓋を受け入れるように配置されてもよい)。蓋は、プランジャがそこを通って延伸するように配置された開口を画定してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は、加熱プレートに作用して加熱プレートを移動させるように構成された持ち上げ付勢部材を備える。持ち上げ付勢部材は、感熱アクチュエータとは独立して動作すること、すなわち、プレートを持ち上げるために持ち上げ付勢部材によって生成される付勢力は、感熱アクチュエータによって生成されるいかなる動き(例えば、所定の温度に達したときの形状変化によるもの)とも無関係であることが理解されるであろう。持ち上げ付勢部材は、加熱プレート(例えばその一部)を器具の基部から離れる方向に付勢するように構成されてもよい。持ち上げ付勢部材は、加熱プレートに直接的または間接的に作用するように構成されてもよい。持ち上げ機構がプランジャを備える実施形態においては、持ち上げ付勢部材は、プランジャに作用して加熱プレートを移動させるように構成されてもよい。したがって、いくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は、加熱プレートが取り付けられたプランジャと、プランジャに作用して加熱プレートを移動させるように構成された少なくとも1つの持ち上げ付勢部材とを備える。持ち上げ付勢部材は、プランジャの上端でプランジャに作用するように構成されてもよい。もちろん、持ち上げ機構は、プランジャの両側に作用するように構成された一対の持ち上げ付勢部材(ばねなど)など、複数の持ち上げ付勢部材を備えていてもよい。これは、プランジャが傾くことなく確実に上方に動くようにするのに役立つ。
【0043】
いくつかの実施形態においては、持ち上げ機構は、ラッチ構成(latched configuration)とラッチ解除構成(unlatched configuration)との間で移動可能なラッチを備える。ラッチは、ラッチ構成では、加熱プレートの動きを、(例えば、プランジャの上方への動きを制限することによって)制限するように構成されてもよい。感熱アクチュエータが加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出すると、(例えば、プランジャの移動を可能にすることによって)加熱プレートの移動を可能にするように、持ち上げ機構は、ラッチをラッチ解除構成に移動させるように構成されてもよい。ラッチは、ラッチがラッチ構成にあるときに、上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材の付勢力による(例えば、プランジャを介した)加熱プレートの移動を防止するように構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、ラッチはプランジャの上端に配置されてもよい。
【0044】
持ち上げ機構は、ラッチを、ラッチ構成とラッチ解除構成との間で移動させるように構成されたラッチ解除部を備えていてもよい。いくつかの実施形態においては、ラッチ解除部はプランジャの上端に配置されてもよい。ラッチ解除部は、ラッチ解除部の枢動運動によってラッチがラッチ解除構成に移動するように、器具に枢動可能に取り付けられてもよい。
【0045】
上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、ポテンシャルエネルギーを蓄積するように構成されてもよい。上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、感熱アクチュエータが加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出すると蓄積したポテンシャルエネルギーを解放するように構成されてもよい。上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、らせん(例えば、圧縮)ばねを備えてもよい。
【0046】
上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、加熱プレートに直接的に作用してプレートを動かすように構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、プランジャに作用してプランジャを移動させ、それにより加熱プレートを移動させるように構成されている。好ましくは、プランジャは、加熱プレートの位置を手動でリセットするためにユーザにより移動可能である。加熱プレートの位置は、プランジャが持ち上げ機構によって動かされるように構成されている方向とは反対の方向にプランジャを動かすことによって手動でリセットしてもよい。プランジャは、加熱プレートをリセットするためにプランジャを動かすことができるボタンを備えてもよい。持ち上げ機構がラッチを備える実施形態においては、加熱プレートの手動リセットは、好ましくは、ラッチをラッチ解除構成からラッチ構成に動かす。
【0047】
いくつかの実施形態においては、プランジャはピストンヘッドを備える。ピストンヘッドは、プランジャの外面から延伸してもよい。プランジャは、複数(例えば、2つ)のピストンヘッドを備えていてもよい。複数のピストンヘッドは、プランジャの周囲に等間隔に配置してもよい。上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、(1つまたは複数の)ピストンヘッド(例えば、それぞれのピストンヘッド)に作用するように構成されてもよい。プランジャの周囲に複数のピストンヘッドを等間隔に配置することは、プランジャに対する上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材の付勢力をバランスさせるのに役立ち、プランジャが(よって加熱プレートが)持ち上げ機構によって持ち上げられるのをより容易にする。これはまた、上記(1つまたは複数の)加熱プレートを、(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材の力に逆らって、その初期位置に戻すのをより容易にする。いくつかの実施形態においては、上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材は、上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの第1の表面に作用して、プランジャを(よって加熱プレートを)移動させるように作用する持ち上げ付勢力を提供するように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態においては、器具は、加熱プレートが持ち上げ機構によって上方に動かされるときに加熱プレートの動きを遅くするように構成された減衰機構を備える。減衰機構は、加熱プレートが「非加熱」位置に近づくにつれて加熱プレートの動きを遅くするように構成されてもよい。これは、加熱プレートの動きによって引き起こされる衝撃力を軽減することにより、器具の部品の寿命を延ばすのに役立つ。また、器具の美観を向上させるのに役立つ。
【0049】
減衰機構は、上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの第2の表面(例えば、上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの上記第1の表面とは反対側の面)に作用するように構成された減衰ばねを備えてもよい。減衰ばねは、上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢ばねとは別個の部品であってもよい。いくつかの実施形態においては、上記(1つまたは複数の)持ち上げ付勢ばねと減衰ばねは、単一のばねの異なる部分である。付勢/減衰ばねは、ばねの下部が上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの第1の表面から延伸する(そして第1の表面に作用する)ように(すなわち、持ち上げ付勢ばねとして作用するように)、上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの周囲に配置されて(例えば、ねじ込まれて)いてもよい。ばねの上部は、上記(1つまたは複数の)ピストンヘッドの第2の表面から延伸(そして第2の表面に作用)してもよい(すなわち、減衰ばねとして作用するように)。
【0050】
様々な実施形態において、器具は、加熱プレートの加熱を中断するための手動介入部を備えてもよい。手動介入部は、加熱プレートを移動させるためのそれ自体の持ち上げ手段を備えてもよい。好ましくは、手動介入部は、持ち上げ機構(すなわち、感熱アクチュエータが所定の温度を検出すると加熱プレートを移動させるように操作可能な同じ持ち上げ機構)を操作するように構成される。これにより、器具の複雑さを軽減することができる。いくつかの実施形態においては、手動介入部は、ラッチ解除部を動かす(例えば、それによりラッチをラッチ解除構成に移動させる)ことによって、持ち上げ機構を操作するように構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、手動介入部は、持ち上げ機構のラッチ解除部に作用してラッチをラッチ解除構成に移動させるように構成された延長部材を備える。
【0051】
手動介入部は、プランジャに配置してもよい。いくつかの実施形態においては、手動介入部はプランジャの上端に配置される。手動介入部は、ラッチ解除部に対して移動可能にプランジャに取り付けられた延長部材を備える押しボタンを備えてもよい。押しボタンおよび延長部材は、押しボタンの操作により延長部材がラッチ解除部に作用し、ラッチをラッチ解除構成に移動させるように構成されてもよい。
【0052】
様々な実施形態において、器具は、液体容器内の液体が沸騰したことを検出するように構成された蒸気感知装置を備えてもよい。器具は、液体容器内の液体の沸騰によって発生した蒸気を受けるための蒸気室を備えてもよい。蒸気室は、器具の蓋に画定されてもよい。蒸気感知装置は、蒸気室内に配置されてもよい。いくつかの実施形態においては、蒸気感知装置はプランジャの上端に配置される。
【0053】
蒸気感知装置は、蒸気感知アクチュエータ(例えばバイメタルアクチュエータ)を備えてもよい。蒸気感知装置は、容器内の液体が沸騰していることを検知すると、加熱プレートを独立して持ち上げるように構成されてもよい。いくつかの好ましい実施形態においては、蒸気感知装置(例えばその蒸気感知アクチュエータ)は、容器内の液体が沸騰していることを検出すると、持ち上げ機構(すなわち、感熱アクチュエータが所定の温度を検出すると、加熱プレートを動かすように動作可能な同じ持ち上げ機構)を動作させるように構成される。これにより、器具の複雑さを軽減することができる。蒸気感知装置は、ラッチ解除部を動かす(例えば、ラッチをラッチ解除構成に移動させる)ことによって、持ち上げ機構を操作するように構成されてもよい。したがって、容器内の液体が沸騰していること、または加熱プレートが所定の温度に達したこと(例えば、空焚きシナリオを示す)のいずれかを検知すると、加熱プレートを持ち上げるのに、同じ持ち上げ機構を使用できることが理解されるであろう。しかし、いくつかの実施形態においては、別個の持ち上げ機構が提供されてもよい。
【0054】
器具は、持ち上げ機構を操作するための1つまたは複数の中間機構を備えていてもよい。いくつかの実施形態においては、感熱アクチュエータは、中間機構に作用することによって持ち上げ機構を操作するように構成される。中間機構は、ラッチ解除部を動かす(例えば、それによりラッチをラッチ解除構成に移動させる)ことによって、持ち上げ機構を操作するように構成されてもよい。これは、感熱アクチュエータが、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出するとラッチに(例えば直接)作用(して、ラッチを解除)するように構成する必要がないことを意味する。したがって、感熱アクチュエータは、持ち上げ機構のラッチおよびラッチ解除部から離れた位置に配置することができる。いくつかの実施形態においては、既に上述したように、ラッチおよびラッチ解除部はプランジャの上端に配置される。感熱アクチュエータは、加熱プレートが取り付けられているプランジャの下端に配置される。
【0055】
中間機構は、感熱アクチュエータによって動かされる(例えば、持ち上げられる)ように構成されたロッドを備えてもよい。ロッドは、第1の端部および第2の端部を備えてもよい。ロッドの第1の端部は感熱アクチュエータに隣接して配置されてもよく、ロッドの第2の端部はラッチ解除部に隣接して配置されてもよい。感熱アクチュエータは、ロッドの第1の端部に作用してロッドの第2の端部をラッチ解除部に作用させて、ラッチをラッチ解除構成に移動させるように構成されてもよい。ロッドは中空であってもよい。これによりロッドの重量が減少し、感熱アクチュエータはロッドをより簡単に動かせるようになる。中間機構は、レバーをさらに備えてもよい。ロッドは、レバーを介してラッチ解除部に作用するように構成されてもよい。中間機構は、ロッドの垂直方向の動き(例えば、感熱アクチュエータの作用を受けたとき)をラッチ解除部の水平方向の動きに変換する(例えば、ラッチをラッチ解除構成に移動させる)ように構成されてもよい。
【0056】
中間機構の使用により、感熱アクチュエータと持ち上げ機構を器具の異なる部分に配置すること、すなわち、液体容器内で互いから離すことが可能になる。感熱アクチュエータが加熱プレート上に配置される実施形態においては、感熱アクチュエータと持ち上げ機構との間で作用する中間機構により、持ち上げ機構を器具内の他の場所に配置することができる。これにより、器具の複雑さを軽減し、温度が変化する加熱プレートに近接して配置される部品の数を制限することができる。中間機構は、プランジャにまたはプランジャ内に配置することができる。いくつかの実施形態においては、中間機構はプランジャの内部に配置される。これにより、中間機構が容器内の液体の影響を受けるのを防ぐことができる。
【0057】
感熱アクチュエータがバイメタルアクチュエータを備える実施形態においては、バイメタルアクチュエータの撓み部は、感熱アクチュエータが加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出すると中間機構(例えば、そのロッド)に作用するように構成されてもよい。
【0058】
様々な実施形態において、器具は、加熱プレートを下方に(例えば、容器の基部の方向に)付勢するように構成されたプレート付勢部材を備える。プレート付勢部材は、加熱プレートを押して液体容器の基部と係合(engagement)させる付勢力を加熱プレートに加えてもよい。これは、加熱プレートの加熱中に加熱プレートが確実に電磁調理器にできるだけ近くなるようにするのに役立つ。加熱プレートを液体容器の基部から離すように構成された1つまたは複数のセパレータを器具が備える実施形態においては、プレート付勢部材は、正確な分離の維持を確実にするのにも役立つ。いくつかの実施形態においては、プレート付勢部材は、例えばプランジャの上端で、プランジャに作用して、加熱プレートを下方に付勢するように構成されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態においては、プレート付勢部材は、加熱プレートを容器の基部に向かって付勢するように、プランジャに対して構成される。いくつかの実施形態においては、プランジャは、外側スリーブ内で移動可能な内側シャフトであって、当該外側スリーブが当該内側シャフトを取り囲む、内側シャフトを備える。内側シャフトは、加熱プレートに取り付けても(例えば、溶接しても)よい。プレート付勢部材は、内側シャフトに作用して加熱プレートを下方に付勢するように構成されてもよい。持ち上げ機構(例えば、その(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材)は、持ち上げ機構が動作するとき、外側スリーブに作用して加熱プレートを上方に移動させるように構成されてもよい。
【0060】
持ち上げ機構のラッチは、加熱プレートがその加熱位置にあるときに、容器の基部に対して所定の垂直位置にプランジャが保持されることを確実にすることができる。しかしながら、プランジャとは独立して加熱プレートを容器の基部の方向に付勢するようにプレート付勢部材が設けられた実施形態においては、プレート付勢部材は、持ち上げ機構に干渉することなく、加熱プレートが液体容器の基部の近くに押し付けられるのを確実にするのに役立つ。プレート付勢部材は、付勢機構(例えば、その(1つまたは複数の)持ち上げ付勢部材)に抗うことなく加熱プレートに付勢力を加えることができる。
【0061】
いくつかの実施形態においては、加熱プレートを容器の基部に向かって下方に付勢するように構成されたプレート付勢部材は、手動介入部の押しボタンを上方に付勢するように機能してもよい。手動介入部の押しボタンは、手動介入を開始するために、プレート付勢部材の付勢に抗って押し下げられるように構成されてもよい。これは手動介入部を元の位置に戻すのに役立つ。
【0062】
出願人は、加熱プレートが容器の1つまたは複数の側壁と接触する可能性があることを確認した。これは、持ち上げ機構の作動中、あるいは、加熱プレートを容器に挿入している間または容器から取り外している間に発生し得る。また、加熱プレートが、例えば輸送中に、意図せず横方向に動く危険性もある。例えば、液体容器内に加熱プレートを取り付けるプランジャなどの持ち上げ機構は、加熱プレートを容器の側壁と接触させる振り子として機能し得る。
【0063】
加熱プレートと容器の側壁とのそのような接触を避けることは、有益であり得る。加熱プレートと容器との衝突は、容器に損傷を与え、それにより容器内に障害点が形成される可能性がある。さらには、加熱プレートが著しく高温に加熱された場合(例えば、空焚きシナリオ中)、加熱プレートと容器との物理的接触により、容器に熱衝撃が生じる可能性がある。これは容器材料の破損につながる可能性があり、これは当然のことながら安全上問題がある。
【0064】
したがって、いくつかの実施形態においては、器具は、強磁性加熱プレートと液体容器の側壁との間に配置された保護部品を備える。保護部品は、加熱プレートおよび/または持ち上げ機構に取り付けてもよい。保護部品は、好ましくは、液体容器が加熱プレートと接触するのを防ぐように構成される。そのような保護部品は、強磁性加熱プレートのあらゆる形状について有用である。
【0065】
これは、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられる。したがって、さらなる側面から見た場合、本発明は電磁調理器上に載置される液体加熱器具を提供し、当該器具は、
液体容器と、
液体容器内に取り付けられ、当該液体容器の側壁から間隔を空けて配置された強磁性加熱プレートと、
強磁性加熱プレートと液体容器の側壁との間に配置された保護部品と、を備える。
【0066】
いくつかの実施形態においては、器具は、加熱プレートが取り付けられた持ち上げ機構を備える。持ち上げ機構は、液体容器内で加熱プレートを上方に移動させるように動作可能であってもよい。
【0067】
持ち上げ機構は、手動操作可能であってもよい。いくつかの実施形態においては、器具は、強磁性加熱プレートと熱的に連通し、当該強磁性加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを検出するように構成された感熱アクチュエータを備える。持ち上げ機構は、上述のように、加熱プレートの温度が所定の温度を超えたことを感熱アクチュエータが検出すると加熱プレートを液体容器内で上方に移動させるように動作可能であってもよい。
【0068】
側壁はガラス壁であることが好ましい。いくつかの実施形態においては、液体容器(例えばその全体)がガラス容器である。
【0069】
強磁性加熱プレートは、円形や多角形を含む任意の適切な形状であってもよい。いくつかの実施形態において、強磁性加熱プレートは非円形である。いくつかの実施形態においては、強磁性加熱プレートは、長軸および短軸を有する。いくつかの実施形態においては、上述のように、加熱プレートは回転対称ではない。例えば、加熱プレートは、2回回転対称であってもよい。長軸および短軸は、曲線的である加熱プレートの外形(例えば楕円形の外形)または曲線部分および直線部分の両方を含む加熱プレートの外形(例えば長円形の外形)によって定められてもよい。いくつかの実施形態においては、加熱プレートは概ね楕円形または長円形である。楕円形の加熱プレートは、所定長さの長軸に対して、より大きな表面積を持つことができるが、長円形の加熱プレートは、製造、取り扱い、あるいは設置が容易であり得る。
【0070】
保護部品は、強磁性加熱プレートの外周の周りに延伸してもよい。好ましくは、保護部品は、同一平面内に、加熱プレートの外縁の半径方向外側に(例えば、液体容器の(1つまたは複数の)側壁に向かって)、配置される。これは、保護部品は、加熱プレートよりも先に容器の側壁に接触するように構成されることを意味し、好ましくは、保護部品は、強磁性加熱プレートが容器の側壁に直接接触するのを防止するように構成される。これにより、(使用中や使用後に非常に高い温度になることがある)加熱プレートとの接触によって容器が破損する可能性が低減される。
【0071】
いくつかの実施形態においては、追加的または代替的に、保護部品が、強磁性加熱プレートに取り付けられた加熱プレートカバーを備える。加熱プレートカバーは、加熱プレートに直接または間接的に(例えば、加熱プレートを支持するステムにまたは上述のような持ち上げ機構に)取り付けられてもよい。加熱プレートカバーは、加熱プレートの上面の一部を少なくとも覆うように取り付けられてもよい。
【0072】
保護部品の一部として加熱プレートカバーを設けることは、加熱プレートと容器の側壁との間の相対的な移動により保護部品が外れる可能性を低減できるため、保護部品をより確実に加熱プレートに装着できることを意味する。加熱プレートカバーは、加熱プレートを器具のユーザの視界から遮ることができるため、美的な利点も提供し得る。これは、加熱プレートが使用により変色する可能性があるため、望ましい場合がある。
【0073】
加熱プレートカバーは、任意の適切な、または所望の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、加熱プレートカバーは、ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態においては、加熱プレートカバーは、ステンレス鋼を含む。
【0074】
いくつかの実施形態においては、加熱プレートカバーは、加熱プレート(例えばその上面)から離間するように加熱プレートに取り付けられる。このため、加熱プレートと加熱プレートカバーとの間の熱伝導が制限され、これは、加熱プレートよりも融点が低い材料で加熱プレートカバーが作られている場合に特に有利になり得る。
【0075】
加熱プレートカバーは、強磁性材料を含んでもよい。したがって、加熱プレートカバーは、通電された電磁調理器に器具が載置されたときに加熱され得ることが理解されるであろう。これは、いくつかの実施形態において有益である可能性がある。しかしながら、好ましくは、通電された電磁調理器に器具が載置されたときに、加熱プレートが電磁調理器の結果として誘導加熱を受けないように、あるいは加熱プレートよりも(例えば実質的に)誘導加熱が少なくなるように、加熱プレートカバーは加熱プレートから離間される。
【0076】
好ましくは、加熱プレートカバーは、加熱プレートカバーの上側と加熱プレートカバーの下側との間の流体連通を提供するための1つまたは複数の開口を画定する。これにより、液体容器内の液体は加熱プレートの上面にさらされる。上述のように加熱プレートカバーを加熱プレートから離間させることにより、液体容器内の対流を改善することができ、それによって容器内の液体を均一に加熱するのに役立つ。加熱プレートカバー(および上述したように加熱プレート)に開口を設けることによっても、液体容器内の対流を促がすことができる。
【0077】
上記1つまたは複数の開口は、任意の適切なまたは所望の形状であってもよい。上記(1つまたは複数の)開口は、円形であってもよい。好ましくは、開口は(例えば、角度的に離間した)スロットである。いくつかの実施形態においては、加熱プレートカバーに画定された上記(1つまたは複数の)開口の総面積は、加熱プレートに画定された上記(1つまたは複数の)開口の総面積以上である。これにより、液体容器内の対流が加熱プレートカバーによって阻害される可能性を低くすることができる。
【0078】
加熱プレートカバーは、任意の適切な、または所望の形状であってもよい。加熱プレートカバーは、例えば、(上述のように)強磁性加熱プレートと熱的に連通する感熱アクチュエータを収容するように、ドーム型の形状であってもよい。いくつかの実施形態においては、加熱プレートは略平坦である。好ましくは、加熱プレートカバーは、加熱プレートの上面の輪郭に略一致する形状とされる。
【0079】
好ましくは、保護部品は、弾性材料、例えばシリコンを含む。いくつかの実施形態においては、保護部品はバンパーリングを含む。バンパーリングは、加熱プレートに直接取り付けてもよい。しかしながら、好ましくは、バンパーリングは保護部品の加熱プレートカバーに取り付けられる。カバーにバンパーリングを取り付けることは、加熱プレートに誘導される高温からバンパーリングを保護するのに役立つ。
【0080】
いくつかの実施形態においては、バンパーリングは、水平上側リップおよび水平下側リップを画定するC字形の断面を含み、上側リップおよび下側リップは垂直リムによって接続される。上側リップは、加熱プレートカバーの上面に配置されてもよい。下側リップは、加熱プレートカバーの下面に配置されてもよい。下側リップは、加熱プレートカバーを加熱プレートから離すように配置することができる。加熱プレートカバーを加熱プレートから離すことは、上述の理由から有益であり得る。
【0081】
好ましくは、バンパーリング(例えばその垂直リム)は、加熱プレートカバーと液体容器の側壁との間で、加熱プレートカバーの外周の周りに延伸する。好ましくは、バンパーリング(例えばその垂直リム)の外縁は、加熱プレートの外縁の半径方向外側に(液体容器に向かって)配置される。これは、加熱プレートより前にバンパーリングが容器の壁に接触することを意味し、容器が損傷する可能性が低くなることを意味する。
【0082】
保護部品は、加熱プレート上の対応する係合機構と係合するための係合機構を備えてもよい。係合機構は、加熱プレートカバーまたはバンパーリング(例えば、その下側)から、下向きに延伸してもよい。保護部品を加熱プレートに固定するために、保護部品は、加熱プレートにおける対応する開口に係合するための係合機構を備えていてもよい。好ましくは、保護部品は、保護部品の周りに周方向に間隔を空けて配置された複数の係合機構を含み、加熱プレートにおける対応する複数の係合機構にそれぞれ係合する。
【0083】
いくつかの実施形態においては、上記(1つまたは複数の)係合機構は、バンパーリング(例えば、その上側リップまたは下側リップ)から延伸する。(1つまたは複数の)係合機構は、対応する開口またはスロットに受容されるように構成されたリベットまたはタブを備えてもよい。当該(1つまたは複数の)係合機構とそれに対応する(1つまたは複数の)係合機構は、それぞれ保護部品と加熱プレートに設けられてもよく、またはその逆に設けられてもよいことが理解されるであろう。
【0084】
出願人は、容器の側壁に関して上述したのと同様の理由で、加熱プレートから液体容器の基部への熱伝導を防止することが望ましいことを確認した。加熱プレートと液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータ(例えば脚)を器具が備える本発明の実施形態においては、セパレータは、加熱プレートと容器の基部との間に熱伝導経路を提供することができる。
【0085】
したがって、実施形態の集合では、1つまたは複数のセパレータは、器具が電磁調理器上に載置され、電磁調理器が通電されて強磁性加熱プレートを誘導加熱するとき、1つまたは複数のセパレータが強磁性加熱プレートの誘導加熱領域よりも加熱の少ない強磁性加熱プレートの領域に接する(abut)ように配置される。
【0086】
この特徴は、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられている。したがって、さらなる側面から見た場合、本発明は電磁調理器上に載置される液体加熱器具を提供し、当該器具は、
基部を有する液体容器と、
液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートであって、長軸と短軸を有する加熱プレートと、
加熱プレートと液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータと、を備え、
上記1つまたは複数のセパレータは、使用時において、強磁性加熱プレートが電磁調理器の上方の中央に配置されるように、通電された当該電磁調理器上に器具が載置され、かつ、強磁性加熱プレートの領域が誘導加熱されたときに、当該1つまたは複数のセパレータが、強磁性加熱プレートの誘導加熱領域よりも加熱の少ない強磁性加熱プレートの領域内に位置するか、または当該領域に接するように配置される。
【0087】
この態様は、電磁調理器と、当該電磁調理器上に配置される液体加熱器具とを備える液体加熱装置に拡張され、当該器具は、
基部を有する液体容器と、
液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートであって、長軸と短軸を有する加熱プレートと、
加熱プレートと液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータと、を備え、
上記1つまたは複数のセパレータは、強磁性加熱プレートが電磁調理器の上方の中央に配置されるように器具が電磁調理器上に載置され、強磁性加熱プレートの領域が誘導加熱されるように電磁調理器が通電されたときに、当該1つまたは複数のセパレータが、強磁性加熱プレートの誘導加熱領域よりも加熱の少ない強磁性加熱プレートの領域内に位置するか、または当該領域に接するように配置される。
【0088】
1つまたは複数のセパレータを、それらが、加熱プレートのうちの誘導加熱(がより多い)領域と比較して強磁性加熱プレートのうちの加熱の少ない領域内に配置されるか、または当該領域に接するように配置されるように提供することによって、使用時に、液体容器は、上記(1つまたは複数の)セパレータを介した加熱プレートからの高レベルの熱伝導から保護される可能性があることが理解されるであろう。これにより、器具の寿命とともに安全性が向上する。加熱プレートと容器の基部との間の熱伝導が減少する可能性もまた、器具の効率を高め得る。
【0089】
上述の通り、当該1つまたは複数のセパレータは、加熱プレートと液体容器の基部との間の止め具(stop)として機能するように構成されてもよい。当該(1つまたは複数の)セパレータは、液体容器(例えば、その基部の上面)に、(すなわち、当該(1つまたは複数の)セパレータが加熱プレートのうちの加熱の少ない領域に接するように配置されるように)構成されてもよい。好ましくは、当該(1つまたは複数の)セパレータは、加熱プレート(例えば、その下面)に、(すなわち、それらが加熱プレートのうちの加熱の少ない領域内に配置されるように)構成されてもよい。例えば、上述のように、加熱プレートは、その下面に配置された(すなわち、容器の基部に接触して当該基部と加熱プレートとを隔てるように配置された)複数の脚を含んでもよい。
【0090】
出願人は、電磁調理器が典型的には円形のコイルを含むことを確認した。これは、電磁調理器の中央に載置された加熱プレートの加熱領域が、典型的には加熱プレートの中心の周りに延びる環状であることを意味する。一部の非円形(例えば、楕円形)の加熱プレートでは、プレートの誘導加熱領域の領域は、(例えば、概ね環状の加熱領域の外縁から)プレートの周辺まで延伸してもよい。これは、プレートの周囲から離れたより中央に(1つまたは複数の)セパレータを配置することが有益である可能性があることを意味する。したがって、いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のセパレータは、加熱プレートの内側半分内に位置するか、または当該内側半分に接するように配置される。
【0091】
(1つまたは複数の)セパレータを加熱プレートの内側半分内に配置すること、または当該内側半分に接するように配置することは、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられる。したがって、さらなる側面から見た場合、本発明は電磁調理器上に載置される液体加熱器具を提供し、当該器具は、
基部を有する液体容器と、
液体容器内に取り付けられた強磁性加熱プレートと、
加熱プレートと液体容器の基部との間に配置された1つまたは複数のセパレータと、を備え、
当該1つまたは複数のセパレータは、強磁性加熱プレートの内側半分内に位置するか、または当該内側半分に接するように配置される。
【0092】
したがって、幅w、高さhの強磁性加熱プレートの場合、当該1つまたは複数のセパレータは、w/2の幅およびh/2の高さを有し、加熱プレートの中心と同軸である中心を有する加熱プレートの領域内に配置されるか、または当該領域に接するように配置される。出願人は、このように当該1つまたは複数のセパレータを配置することにより、使用中に加熱プレートの誘導加熱領域に脚がさらされる可能性を低減できることを確認した。安定性のためにはセパレータ(例えば、脚)は典型的には可能な限り広く配置されるものであることから、これは常識に反する配置である。
【0093】
電磁調理器に通電し、器具を電磁調理器上に載置すると、加熱プレートの加熱の少ない領域の温度上昇は、加熱プレートの加熱領域よりも小さくなる。上述の通り、電磁調理器は磁場を発生させるためのコイルを備える。加熱プレートの加熱領域は、典型的には電磁調理器のコイルの真上にある。器具が電磁調理器の中心に載置されたとき、加熱プレートの加熱領域は、加熱プレートの中心と同軸である実質的に環状の領域を含んでもよい。好ましくは、上記1つまたは複数のセパレータは、当該環状の領域の半径方向内側に配置される。
【0094】
これは、当該(1つまたは複数の)セパレータが、器具の通常の使用において典型的に加熱プレートのうち誘導加熱が少ない領域内に配置されるか、またはそれに接するように配置されることを意味する。その結果、加熱プレートと液体容器の基部との間の熱伝導が減少する可能性がある。これは、過熱による損傷から液体容器を保護するのに役立つ。
【0095】
好ましくは、当該1つまたは複数のセパレータは、加熱プレートまたは液体加熱容器の基部の周りに等角度間隔で配置される。いくつかの実施形態において、液体容器は、ガラス基部を含んでもよい。液体容器は、1つまたは複数のガラス側壁を含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態においては、上記1つまたは複数のセパレータは、加熱プレートから離されている。当該1つまたは複数のセパレータは、加熱プレートの下面および/または液体容器の基部の上面に取り付けられてもよい。当該(1つまたは複数の)セパレータは、任意の適切な手段または所望の手段によって加熱プレートおよび/または容器の基部に取り付けてもよい。いくつかの実施形態においては、上記1つまたは複数のセパレータは、加熱プレート自体に画定される。当該(1つまたは複数の)セパレータは、液体容器の基部(例えばその上面)に画定されてもよい。当該(1つまたは複数の)セパレータは、任意の適切なまたは所望の材料からなってもよい。いくつかの実施形態においては、当該(1つまたは複数の)セパレータは、加熱プレートと同じ材料を含む。いくつかの実施形態においては、当該(1つまたは複数の)セパレータは、液体容器(例えば、その基部)と同じ材料を含む。
【0097】
当業者には理解されるように、本発明のすべての態様は、本明細書で論じた実施形態の好ましい特徴および任意の特徴のいずれか1つまたは複数またはすべてを適宜含むことができ、好ましくは含む。
【図面の簡単な説明】
【0098】
次に、本発明のいくつかの好ましい実施形態について、添付の図面を参照しながら、例示としてのみ説明する。図面において、
図1は、本発明の一実施形態に係る液体加熱器具を示す斜視図である。
【0099】
図2aは、
図1に示す器具の蓋と持ち上げ機構の断面側面図である。
【0100】
図2bは、
図1に示す器具の持ち上げ装置および蒸気感知装置の一部の斜視図である。
【0101】
図3aは、
図1に示す器具のプランジャと加熱プレートの側面図である。
【0102】
図3bは、
図1に示す器具のプランジャと加熱プレートの正面図である。
【0103】
図3cは、
図1に示す器具の手動押しボタンの第1の断面側面図である。
【0104】
図4は、電磁調理器の中央に載置されたときの長円形の加熱プレートの概略ヒートマップを示す。
【0105】
図5は、電磁調理器の中央から外れた位置に載置されたときの
図4の長円形の加熱プレートの概略ヒートマップを示す。
【0106】
図6は、
図1に示す器具が電磁調理器の中央に載置されたときの当該器具の加熱プレートの概略ヒートマップを示す。
【0107】
図7は、
図1に示す器具が電磁調理器の中央から外れた位置に載置されたときの当該器具の加熱プレートの概略ヒートマップを示す。
【0108】
図8は、
図1に示す器具の空焚きスイッチオフ機構の断面斜視図である。
【0109】
図9aは、加熱プレートが非加熱位置にあるときの
図1に示す器具の断面側面図である。
【0110】
図9bは、加熱プレートがプランジャによって下方に動かされたときの
図1に示す器具の断面側面図を示す。
【0111】
図9cは、加熱プレートが加熱位置にあるときの
図1に示す器具の第1の断面側面図である。
【0112】
図9dは、加熱プレートが加熱位置にあるときの
図1に示す器具の第2の断面側面図である。
【0113】
図9eは、加熱プレートが加熱位置にあるときの
図1に示す器具の断面正面図である。
【0114】
図10aは、加熱プレートが蒸気感知装置の動作により持ち上げられた後の
図1に示す器具の第1の断面側面図である。
【0115】
図10bは、加熱プレートが蒸気感知装置の動作により持ち上げられた後の
図1に示す器具の第2の断面側面図である。
【0116】
図10cは、加熱プレートが蒸気感知装置の動作により持ち上げられた後の
図1に示す器具の断面正面図である。
【0117】
図11は、空焚きスイッチオフ機構が起動された後であって加熱プレートが持ち上げられる前の
図1に示す器具の断面側面図である。
【0118】
図12は、
図1に示す器具の手動押しボタンの第2の断面側面図である。
【0119】
図13は、手動介入装置が操作された後であって加熱プレートが持ち上げられる前の
図1に示す器具の断面側面図である。
【0120】
図14aは、
図1に示す器具の手動リセットが行われた後の当該器具の第1の断面側面図である。
【0121】
図14bは、
図1に示す器具の手動リセットが行われた後の当該器具の第2の断面側面図である。
【0122】
図15は、本発明の他の実施形態に係る液体加熱器具の下面図である。
【0123】
図16は、
図15に示す器具の加熱プレートの概略ヒートマップを示す。
【0124】
【0125】
図18は、
図15に示す器具の加熱プレートカバーの下面の斜視図である。
【0126】
【発明を実施するための形態】
【0127】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体加熱器具1(以下、器具1)の斜視図である。器具1は、注ぎ口4を含む液体容器2を画定する透明なガラスハウジングを備える。器具1は、使用中、電磁調理器(不図示)上に直接、載置してもよい。容器2は器具を持ち上げる取っ手8を備える。容器2は、略円錐台形であり、円形の基部3と円形の頂部を有する。円形の頂部の円周は、そこから注ぎ口4が延伸し、基部3の円周よりも小さく、円形の蓋5を受け入れるための円形の開口を画定する。
【0128】
器具1は、強磁性(例えばスチール製)加熱プレート6が取り付けられ、かつ、液体容器2内で加熱プレート6を移動させるように動作可能な、持ち上げ機構7をさらに備える。持ち上げ機構7の主要な部品の1つは、(蓋5を容器2上に配置したとき)蓋5の上方から、蓋5に画定された中央の開口5aを通って、液体容器2内へと延伸する、プランジャ58である。加熱プレート6は、プランジャ58の下端に溶接されている。加熱プレート6は非円形であり、長軸および短軸を画定する概して長円形の外形を有することが分かる(
図6および
図7を参照して以下に説明する)。加熱プレート6の短軸は、蓋5を受け入れる円形の上部開口部の直径に凡そ等しく、これは、傾けたときに円形の上部開口部を通して加熱プレート6を取り付けることができることを意味する。
【0129】
そうではなく加熱プレート6が円形である場合、プレート6の直径は(よってプレート6の表面積も)、円形の上部開口部の直径によって制限されるであろう。より大きなプレート6を開口部から液体容器2に挿入することができないためである。しかし、長円形の加熱プレート6の場合、プレート6はその長軸に沿ってさらに延伸することができ(よって、より大きな表面積を提供でき)、かつ、加熱プレート6の短軸を円形の開口の平面と平行になるように位置合わせし、次いでプレート6を液体容器2の内部へと下げながら、プレート6をその短軸の周りに回転させることにより、依然として容器2に挿入可能であることが理解されるであろう。加熱プレート6のより大きな表面積は、より大きな加熱出力に対応する。プレート6のより大きな領域が磁場にさらされ、電磁調理器によって加熱されるためである。
【0130】
持ち上げ機構7は、加熱プレート6を加熱位置(
図1参照)と非加熱位置との間で移動させるように構成され、非加熱位置では、加熱プレート6は容器2の基部3から離れるように持ち上げられ(
図10a~
図10c参照)、よって器具1が載置される電磁調理器の磁場から離れるため、誘導によるさらなる加熱を受けない。プランジャ58は、加熱位置と非加熱位置との間で加熱プレート6を持ち上げるためにプランジャ58が垂直に移動できるように、開口5a内に取り付けられる。
【0131】
器具1は、プランジャ58の基部の加熱プレート6上に配置されて持ち上げ機構7と相互作用する空焚きスイッチオフ(dry switch-off (DSO) )機構10をさらに備える。液体容器2が液体で満たされ、加熱プレート6が加熱されると、DSO機構10および液体の温度は、概ね液体の沸騰温度(例えば、液体が水の場合は100℃)に限定される。しかしながら、液体容器2内に液体が存在しない場合、器具1が調理器から取り除かれていなければ、加熱プレート6の温度は危険なレベルまで急速に上昇する可能性がある。これを「空焚き(dry boil)」と呼ぶ。器具1のガラス容器2は、典型的には、560℃~600℃の温度に耐えることができる。DSO機構10がなければ、加熱プレート6の一部の領域は、空焚きの状況において、これらの温度を超える可能性がある。
【0132】
以下でより詳細に説明するように、DSO機構10は、加熱プレート6のいずれかの部分が危険な温度に達する前に、「空焚き」シナリオを検出し、それに応じて器具1の誘導加熱を中断するように構成される。
【0133】
図2aは、
図1に示す器具1の蓋5の断面側面図を示す。説明を容易にするために、器具1のその他の部品は取り除かれている。
【0134】
円形の蓋5は、器具1のガラス容器2の円形の上部開口部内に受容される形状である。したがって、蓋5の円周は、容器2の上部によって規定される開口の円周に凡そ等しい。蓋5は、(蓋5が容器2上に配置されたとき)蓋5の下面から液体容器2内へと延伸する蒸気室ハウジング56を備える。蒸気室ハウジング56には、後述するように、持ち上げ機構7の各種部品が含まれる。
【0135】
蒸気室22は、蒸気室ハウジング56内に画定される。蒸気室ハウジング56は、液体容器2と蒸気室22との間の流体連通を提供する蒸気入口24をさらに画定する。蒸気室22は、液体容器2内の液体の沸騰時に発生する蒸気を蒸気入口24を介して受け入れるように構成される。蒸気は、中央の開口5aを介して蒸気室22から出る。
【0136】
蒸気感知装置25は、蒸気室22内に配置され、バイメタル蒸気センサ26、ラッチ解除部(本実施形態ではアーマチュア)28、およびラッチアーム30を備える。バイメタル蒸気センサ26は、蒸気入口24に隣接して蒸気室22内に配置される。バイメタル蒸気センサ26は、液体容器2内の液体が沸騰し始めたことを示す蒸気室22内の蒸気の存在により所定の温度に達するとスナップする(すなわち撓む)ように構成される。この例示的な実施形態においては、器具1は水を沸騰させるのに用いられるため、バイメタル蒸気センサ26の所定の温度は約85℃である。バイメタル蒸気センサ26は、バイメタル蒸気センサ26の撓みがバイメタル蒸気センサ26の自由端(
図2aに示す上端)を蒸気室22の中心に向かって移動させるように構成される。
【0137】
蒸気感知装置25のアーマチュア28は、蒸気室22内に枢動可能に取り付けられる。アーマチュア28は、上端28aと下端28bとを備える。アーマチュア28は、上端28aと下端28bとの間の点を中心に回動するように構成されている。アーマチュア28の上端28aはバイメタル蒸気センサ26に隣接し、バイメタル蒸気センサ26が撓むとバイメタル蒸気センサ26の自由端がアーマチュア28の上端28aを蒸気室22の中心に向かって押すように構成されている。これによりアーマチュア28が枢動し、それによってアーマチュアの下端28bを蒸気室22の中心から離れるように移動させる。
【0138】
蒸気感知装置25のラッチアーム30は、蒸気室ハウジング56上のピボット30aに取り付けられている。ラッチアーム30は、アーマチュア28の下端28bに当接し、バイメタル蒸気センサ26が撓んだ結果としてアーマチュア28が枢動すると、ラッチアーム30が蒸気室22の中心から離れるように枢動するように構成されている。ワイヤばね29(
図2bにより明確に示されている)が蒸気室ハウジング56に設けられ、枢動アーム30とアーマチュア28の下端28bとがより確実に密接に係合するようにする。
【0139】
バイメタル蒸気センサ26の温度が低下して、バイメタル蒸気センサ26がその「撓みのない」位置に戻りアーマチュア28が元の位置に戻るとき(以下でより詳細に説明するように)、アーマチュア28が最初の位置に戻る際に、ラッチアーム30に対するワイヤばね29の付勢力により、ラッチアーム30はアーマチュア28と共に移動することができる(すなわち、ラッチアーム30とアーマチュア28の下端28bとは、共に蒸気室22の中心に向かって移動する)。
【0140】
図2aと
図2bの両方を参照すると、蒸気室ハウジング56は、プランジャ58(
図2aでは不図示)を受け入れるように構成された下側開口56bをさらに画定する。したがって、プランジャ58は、蓋5の上側から、中央の開口5aに入り、蒸気室22を通って、下側開口56bから出て(蓋5が容器2上に配置されている場合、液体容器2内へ)延伸する。
【0141】
蒸気室ハウジング56はさらに2つの主ばね室56aを画定し、その中に2つの持ち上げ付勢部材(本実施形態では主ばね)34がそれぞれ配置される。第2の主ばね34および第2の主ばね室56aは、第1の主ばね34および第1の主ばね室56aから蒸気室22の中心の周りに180°離れている。したがって、
図2aの断面図には、主ばね34および主ばね室56aのうちの第1のものだけが示されている。両方の主ばね室は
図2bに、より明確に示されており、両方の主ばね34は
図9eに、より明確に示されている。
【0142】
図2bは、持ち上げ機構7の一部および蒸気感知装置25の一部の斜視図である。
図2bは、蒸気室ハウジング56の基部に画定された下側開口56b、両方の主ばね室56a、およびワイヤばね29をより明確に示している。ワイヤばね29は、ばね室ハウジング56に取り付けられ、ラッチアーム30に付勢力を与え、アーマチュアが枢動するときにラッチアーム30とアーマチュア28の下端28bとが確実に密接に係合するように構成されている。本質的に、ワイヤばね29は、ラッチアーム30が確実に常にアーマチュア28と共に(接触して)移動するようにする。
【0143】
図3aは、プランジャ58および強磁性加熱プレート6の側面図である。プランジャ58は、プランジャ58の下端にスチールケーシング52を備える。加熱プレート6の上面は、ケーシング52の下面に溶接されている。ケーシング52は、DSO機構10を収容する。
【0144】
本実施形態では、プランジャ58は、加熱プレート6の平面に垂直でプレート6の中心と交差する軸に沿ってケーシング52の上面から垂直上向きに延伸する中空シャフト50をさらに備える。しかしながら、プランジャ58は、代わりに加熱プレート6を中心から外れた配置で取り付け、加熱プレート6を片持ち式に持ち上げることができると考えられる。シャフト50の上端は、支持部材48に固定して取り付けられている。プランジャ58はシャフトスリーブ51をさらに含み、シャフト50はシャフトスリーブ51を通って延伸する。以下により詳細に説明するように、シャフト50は、シャフトスリーブ51に対して移動可能である。プランジャ58は、その上端に手動押しボタン40をさらに備えている。これは
図3cにより詳細に示されており、以下で説明する。シャフトスリーブ51は、以下により詳細に説明するように、プランジャ58が液体容器2の基部に向かって下方に移動されるときにアーマチュア28の上端28aに当接するように構成された傾斜面49を規定する。
【0145】
プランジャ58は、第1のラッチ32aおよび第1のピストン36aをさらに備え、これらはシャフトスリーブ51の外面から半径方向に、第1の方向に延伸する。第2のラッチ32aおよび第2のピストン36aは、シャフトスリーブ51の外面から半径方向に、第1の方向とは正反対の第2の方向に延伸する。言い換えれば、第1のラッチ32aおよび第1のピストン36aは、第2のラッチ32bおよび第2のピストン36bから180°離れている。
図3aには、第1のラッチ32aと第1のピストン36aのみが示されている。ラッチ32a、32bおよびピストン36a、36bは、
図3bにより明確に示されている。
【0146】
持ち上げ機構7はDSOレバー38をさらに備える。その動作は以下により詳細に説明する。DSOレバー38は、シャフト50内に枢動可能に取り付けられ、シャフトスリーブ51の開口から部分的に突出する。使用中(プランジャ58が液体容器2内に配置されているとき)、DSOレバー38は、シャフトスリーブ51から
図2に示す蒸気感知装置25に向かって突出する。DSOレバー38と蒸気感知装置25との相互作用については、
図9cと
図11を参照して以下でより詳細に説明する。
【0147】
図3bは、プランジャ58の正面図である。第1のラッチ32aおよび第1のピストン36aは、第2のラッチ32bおよび第2のピストン36bと共に
図3bに示されている。第1のピストン36aは、第1のラッチ32aの外面から半径方向に(第1の方向に)延伸する。第2のピストン36bは、第2のラッチ32bの外面から半径方向に(第2の方向に)延伸する。
【0148】
図2aおよび
図2bには示されていないが、第1のピストン36aおよび第2のピストン36bは、それぞれ第1および第2の主ばね室56a内へと延伸する。これは
図9eにより明確に示されている。第1の主ばね34は、当該ばね34の一部が第1のピストン36aの上方に、器具1の蓋5に向かって延びるように、第1のピストン36aの周囲にねじ込まれている一方で、第1の主ばね34の残りの部分は、第1のピストン36aの下面と第1の主ばね室56aの基部との間に延在する。
【0149】
図3cは、
図1に示す器具1の手動介入部(本実施形態では押しボタン)40の断面側面図である。
【0150】
プランジャ58の手動押しボタン40は、円形の内側ボタン41が移動可能に取り付けられた中央円形溝40aを画定する。円形溝40aの基部は、中央の円形開口40bと、円形開口40bの周囲に延在する3つの副開口40cとを画定する。
【0151】
内側ボタン41は、当該内側ボタン41の下面から垂直に延伸し、3つの副開口40cをそれぞれ垂直にシャフト50に向かって通過する3つのフック部41aを備える。各フック部41aの下端は、半径方向外側に突出し、内側ボタン41が上昇位置にあるとき(
図3cに示す)、円形溝40aの基部の下面と係合するように構成される。これは、手動押しボタン40の下方への移動が、内側ボタン41をそれに応じて下方へ移動させることを意味する。しかしながら、内側ボタン41は、
図13に関連して以下で説明するように、手動介入中に手動押しボタン40とは独立して押し下げることができる。
【0152】
支持部材48は、シャフト50の上端に固定して取り付けられている。支持部材48は、シャフトスリーブ51の上面に載るように延伸する、半径方向に突出した3つのローブ48aを備える。プランジャ58は、内側ボタン41の下面と支持部材48との間で、中央の円形開口40bを通って延伸するプレート付勢部材(本実施形態では圧縮ばね)46をさらに備える。したがって、圧縮ばね46は、シャフト50を下向きに付勢し、内側ボタン41を上向きに(すなわち反対方向に)付勢するように作用する。
【0153】
この構成から、手動押しボタン40に下向きの力がかかると、(フック部41aと円形溝40aの基部の下面との係合により)内側ボタン41にかかる下向きの力とともに、(バネ46を介して支持部材48に伝達される力により)シャフト50にかかる下向きの力と、(支持部材48のローブ48aによってシャフトスリーブ51に伝達される力により)シャフトスリーブ51にかかる下向きの力とが生じることが理解されるであろう。
【0154】
したがって、手動押しボタン40を押し下げて加熱プレート6を加熱位置に戻すと、シャフト50とシャフトスリーブ51が一体となって下方に移動する。これについては、
図14aおよび
図14bを参照して後述する。
【0155】
さらには、上述の構成から、シャフトスリーブ51の上面と支持部材48のローブ48aとの係合により、シャフトスリーブ51の上向きの動きが、シャフト50の対応する上向きの動きをもたらし、シャフト50が支持部材48のローブ48aを介してシャフトスリーブ51によって持ち上げられることも理解されるであろう。
【0156】
図1に戻って、器具1は、使用中、電磁調理器(不図示)上に載置される。電磁調理器のコイルに電流を流すことによって電磁調理器が通電されると、強磁性加熱プレート6を通る磁場が誘導され、加熱プレート6の温度が上昇する。電磁調理器内の円形の誘導コイルによって誘導される磁場の形状は、略トロイダル形状であり、磁場の中心は誘導コイルの中心に位置する。したがって、磁場にさらされる加熱プレート6の外側部分(器具1が電磁調理器の中央に載置された場合)は、中央の磁場にさらされない領域よりも大きな加熱を受ける。
【0157】
図4は、
図1に示す器具1の非円形加熱プレート6が器具1から分離され電磁調理器の中央に載置された場合の加熱プレート6の概略ヒートマップを示す。加熱プレート6は、長軸60および短軸62を有する。加熱プレート6の典型的な寸法は、長軸60に沿った長さが約150mmであり、短軸62に沿った幅が約136mmである。電磁調理器の中心Cが
図4に示されている。
【0158】
第1の低加熱領域6aは、加熱プレート6の中央(長軸60と短軸62との交点)に位置する。この構成では、加熱プレート6の中心は、電磁調理器の中心Cと一致する。第1の低加熱領域6aも非円形であり、加熱プレート6の長軸60および短軸62とそれぞれ同軸である長軸および短軸を有する。
【0159】
加熱プレート6の加熱領域6bは、
図4における斜線領域によって示されている。加熱領域6bは第1の低加熱領域6aから半径方向外側に略環状に延在する。加熱領域6bは、加熱プレート6aの短軸62に沿って、第1の低加熱領域6aの縁から加熱プレート6の外周まで延伸する。しかしながら、加熱領域6bは、加熱プレート6aの長軸60に沿った方向には、加熱プレート6の外周まで延伸していない。したがって、第2の低加熱領域6cおよび第3の低加熱領域6dが、長軸60に沿って加熱領域6bの両側(それぞれ
図4の左側および右側)の、加熱領域6bと加熱プレート6の外周との間に、それぞれ画定される。加熱パターンは、加熱プレート6の長軸60および短軸62に関して略対称である。
【0160】
したがって、加熱プレート6の短軸62に沿った加熱プレート6の縁は、加熱プレート6の長軸60に沿った加熱プレート6の縁よりも大きな加熱を受けることが分かるであろう。この不均一な加熱パターンは、加熱プレート6の非円形形状の結果として生じる。
【0161】
図5は、電磁調理器の中央から外れた位置に載置されたときの
図4の非円形の加熱プレート6の概略ヒートマップを示す。電磁調理器の中心Cを
図5に示す。図から分かるように、第1の低加熱領域6aは、ここでは、加熱プレート6の短軸62に沿って加熱プレート6の中心からずれている。これに対応して、環状の加熱領域6bも、加熱プレート6の短軸62に沿って加熱プレート6の中心からずれているため、加熱パターンは、プレート6の長軸60に関してもはや対称ではないが、短軸62に関しては対称であり続ける。第2の低加熱領域6cは、加熱プレート6の残りの面にわたって延在する。
【0162】
電磁調理器に対して加熱プレート6が配置される場所に応じて、加熱領域6bは、加熱プレート6上のどこにでも配置することができる。器具1のDSO機構10が加熱プレート6の最高温度を感知してプレート6の任意の部分が危険な温度に達する前に器具1のスイッチを切ることができるようにすることが望ましいため、発明者は、加熱領域6bの位置の変化が、信頼できるDSO機構10を提供する上での困難につながる可能性があることを認識した。DSO機構10が、電磁調理器上の器具1の配置に応じて異なる応答時間を有するのは望ましくない。
【0163】
器具1の製造および操作の観点からは、DSO機構10を加熱プレート6の中央に配置することが好都合である。しかしながら、器具1が電磁調理器の中央に載置されると、この配置は、
図4に示すような熱分布の形状により、DSO機構10が加熱プレート6の加熱領域6bの高温にさらされないことを意味する。したがって、加熱プレート6の加熱領域6bの温度が危険なほど高い場合でも、中央に配置されたDSO機構10が器具1のスイッチを切らない危険性がある。
【0164】
したがって、
図6~
図8に示すように、器具1のDSO機構10は、加熱プレート6の上面と良好な熱伝達で接続される(例えば、加熱プレート6に溶接される)熱伝導性ヒートブリッジ12を備える。ヒートブリッジ12は、その長さに沿って均一に熱を伝導するように構成される。本実施形態では、ヒートブリッジ12は、概ね長方形の細長い一片として示されているが、他の形状、例えば、加熱プレート6の端部で加熱領域6bとより広く重なる犬の骨の形状(dog bone shape)を有することができる。
【0165】
図6は、電磁調理器上の概ね中央に載置されたときの、ヒートブリッジ12を備える
図1の非円形の加熱プレート6の概略ヒートマップを示す。電磁調理器の中心Cを
図6に示す。
【0166】
ヒートブリッジ12は、加熱プレート6の短軸62に沿って延伸する。したがって、器具1が電磁調理器の概ね中央に載置されると、ヒートブリッジ12は、
図4を参照して上述したように、プレートの最も加熱される領域(すなわち、短軸62に沿って加熱領域6bの最も離れた部分)の間に延在するように構成される。その結果、プレート6の最も加熱された領域とプレート6の中心との間にヒートブリッジ12に沿って高い温度勾配が存在し、それは、熱がプレート6の中心に効果的に伝達されることを意味する。ヒートブリッジ12のこの配置は、ヒートブリッジ12の縁が確実に加熱プレート6上に配置されるようにし、最大の誘導加熱効果が得られるようにすることによって、加熱プレート6の非円形形状によって引き起こされる不均一な熱分布を利用する。
【0167】
図1に示すように、DSO機構10が加熱プレート6の中心に配置される場合、ヒートブリッジ12は、DSO機構10に熱を伝達する役割を果たす。これにより、加熱プレート6の加熱領域6bの温度が許容閾値を超えたときに、DSO機構10が器具1の誘導加熱を中断し損ねるリスクが低減される。
【0168】
器具1の液体容器2内の液体の加熱により、蒸気層が容器2の基部3と加熱プレート6の下面との間の領域に閉じ込められ得る。蒸気層は、液体容器2内の液体から加熱プレート6を断熱するように機能し得る。これにより、当該下面の温度が急速に上昇する一方で、プレート6の残りの部分の温度と液体の温度は比較的低いままとなる。これにより、器具1内の液体が沸点に達する前に、DSO機構10が器具1の誘導加熱を中断しうる。
【0169】
したがって、加熱プレート6は、本実施形態では加熱プレート6の中心の周りに円周方向に延伸する複数の開口(すなわち貫通孔)64からなる列を画定する。開口64は、感熱アクチュエータがヒートブリッジ12に取り付けられる中心点Cの周りに配置される。孔64は、加熱プレート6の下で発生した蒸気を、加熱プレート6上方の液体容器2の主容積内に上向きに逃がし、それにより断熱層が成長するリスクを低減する。
【0170】
図7は、電磁調理器上の中心から外れた位置に載置されたときの、ヒートブリッジ12を備える
図1の非円形の加熱プレート6の概略ヒートマップを示す。電磁調理器の中心Cを
図7に示す。この構成では、加熱プレート6の加熱領域6bは、加熱プレート6の中心を通って延在し、したがって、器具1のDSO機構10の下に延在する。したがって、DSO機構10は、加熱プレート6の最高温度をヒートブリッジ12を介さず、直接、感知することができる。しかしながら、プレート6の中央の加熱領域6bの温度は、誘導加熱量を減少させる孔64の存在によってある程度制限される可能性がある。
【0171】
図6および
図7から、ヒートブリッジ12は、器具1が電磁調理器の中央に載置されたときに最も効果的であることが理解されるであろう。何故なら、このシナリオでは、器具1のDSO機構10が加熱プレート6の最高温度を直接感知することができず、加熱プレート6の縁から中心に向かって熱を伝導するヒートブリッジ12に頼らなければならないからである。これはまた、器具1を電磁調理器上の中央に配置する傾向がある典型的なユーザによる、器具1の最も一般的な配置である可能性が高い。
【0172】
長軸の長さが約150mmの加熱プレートの場合、ヒートブリッジ12の幅は16mm~24mm(例えば約18mm)である。この幅は、ヒートブリッジ12が加熱プレート6から大量の熱を収集できるようにするのに十分な幅であるが、熱が中央のDSO機構10に到達する前に放散されるほどは広くはない。
【0173】
図8は、
図1に示す器具1の空焚きスイッチオフ(dry switch off(DSO))機構10の断面斜視図である。
【0174】
上述の通り、DSO機構10は、加熱プレート6の短軸に沿って延伸する銅製のヒートブリッジ12を備える。DSO機構10は、中空シャフト50の下端およびヒートブリッジ12の上面に溶接された取付プレート18をさらに備える。中間機構(本実施形態では剛性ロッド)16が、中空シャフト50内に移動可能に配置され、取付プレート18の開口を通って延伸している。円形のポリマーまたはセラミック製のビーズ20が、ロッド16の下端の周りに固定して取り付けられ、取付プレート18の上面と係合して、ロッド16の止め具として機能し、これにより、ロッド16の下端とヒートブリッジ12の上面との間に所定の距離が維持される。ビーズ20はまた、ロッド16をシャフト50内の中心に配置するように作用する。
【0175】
DSO機構10は、スナップアクション式バイメタルアクチュエータ14という形態の感熱アクチュエータをさらに備える。アクチュエータ14は、ヒートブリッジ12に取り付けられ、加熱プレート6の中心より上方に位置している。よって、アクチュエータ14は、強磁性加熱プレート6と熱的に連通するように取り付けられ、強磁性加熱プレート6の温度が所定の温度を超えたことを検出するように構成される。ロッドビーズ20は、液体がシャフト50を伝わってバイメタルアクチュエータ14に接触するのを防ぐシール材として機能する。器具1は、プランジャ58の上端に配置されて液体がシャフト50に入るのを防ぐ同様のシール部品を備えてもよい。アクチュエータ14およびヒートブリッジ12は、加熱プレート6の下面ではなく上面に配置され、これにより、加熱プレート6を、容器の基部3に、したがって器具1の動作中に電磁調理器に、できるだけ接近して配置することが可能になる。アクチュエータ14は、特定の所定の温度(典型的には125℃から140℃の間で選択される)に達するとスナップし、それによりバイメタルアクチュエータ14の自由端をヒートブリッジ12から離れるように上向きに撓ませる。
【0176】
アクチュエータ14の自由端は、アクチュエータ14がスナップしてアクチュエータ14の自由端が上方に動かされるとアクチュエータ14の自由端がロッド16の下端に当接してロッド16を押し上げるように、ロッド16の下端の下に配置される。したがって、この動きにより、アクチュエータ14の自由端は、ロッド16をシャフト50および取付プレート18に対して持ち上げる。アクチュエータ14の自由端は、そのスナップ動作で約2.1mmだけ移動するように構成される。したがって、ロッド16はそれに応じて(例えば約1.1mmから1.5mm)上方に移動される。
【0177】
図8は、アクチュエータ14が所定の温度に達する前のアクチュエータ14およびロッド16の位置を示している。本構成では、アクチュエータ14の自由端は、ロッド16の基部から約0.7mm~1mmである。この距離は、ロッドビーズ20が取付プレート18の上面に係合することによって維持され、バイメタルアクチュエータ14の少量のクリープを許容する。このクリープは、アクチュエータ14の温度が上昇するにつれて発生するが、十分に小さく、スナップ時のアクチュエータ14の撓みは依然としてロッド16を持ち上げるように作用する。
【0178】
ケーシング52は、ヒートブリッジ12、取付プレート18、バイメタルアクチュエータ14、およびシャフト50の下端を覆うように、加熱プレート6の上面およびシャフト50の外面に溶接される。ケーシング52は、液体容器2内の液体からDSO機構10を遮断して、バイメタルアクチュエータ14が確実に動作するようにする。
【0179】
図9aは、加熱プレート6が器具1の基部3から離して持ち上げられた状態の
図1に示す器具1の断面側面図を示す。図から分かるように、アーマチュア28は枢動された位置にある(アーマチュア28の上端28aが蒸気室22の中心に向かって動かされた状態である)。
【0180】
図9bは、プランジャ58が押されて加熱プレート6を器具1の基部3に向かって下方に移動させた後の器具1を示す。この位置では、シャフトスリーブ51の上端の傾斜面49がアーマチュア28の上端28aに接触してこれを押し、それにより上端28aを蒸気室22の中心から離れるように移動させ、バイメタル蒸気センサ26上に載せる。したがって、プランジャ58を押し下げると、蒸気感知装置25を器具1を用いるための準備状態にすることができる。これにより、持ち上げ機構7は、加熱プレート6が加熱位置に下げられたラッチ構成となる。ユーザは、容器2に水を入れ、通電された電磁調理器に器具1を載置して、加熱を開始することができる。もちろん、加熱プレート6は、器具1を調理器上に載置する前または後に加熱位置に押し下げてもよい。
【0181】
図9aに示すように、アーマチュア28は、最初は枢動構成にあり、これは、ラッチアーム30が蒸気室22の中心から離れるように移動されたことを意味する。これは、プランジャ58が下方に移動されると、第1および第2のラッチ32a、32bが、ラッチアーム30と係合することなく、ラッチアーム30を通り越して移動できることを意味する。プランジャ58がさらに下方に移動されると、シャフトスリーブ51の傾斜面49がアーマチュア28の上端28aに接触する。シャフトスリーブ51の傾斜面49がアーマチュア28の上端28aを蒸気室22の中心から離れるように押し、バイメタル蒸気センサ26上に載せる。これにより、アーマチュア28の位置が「リセット」される。上述の通り、ラッチアーム30はアーマチュアの下端28bと共に移動され、よって蒸気室22の中心に向かって移動される。
【0182】
図9bに示すように、プランジャ58の最も低い位置で、加熱プレート6の脚54は、液体容器2の基部3と係合する。ユーザが手動押しボタン40に対する下向きの力を解放すると、プランジャ58は、第1および第2のラッチ32a、32bが(
図9dに示すように)ラッチアーム30と係合するまで、主ばね34の付勢力によって上方に(
図9c~
図9eに示す位置へと)移動される。これで器具1は加熱準備状態となる。
【0183】
図9cおよび
図9dは、
図1に示す器具の第1および第2の断面側面図を示し、持ち上げ機構7がラッチ構成にあり、加熱プレートが加熱位置に下げられている。
図9cに示す断面は、器具1の中心を通る平面内にある。
図9dに示す断面は、器具1の中心からわずかにずれた平面内にある。
【0184】
加熱位置では、加熱プレート6は、器具1の基部3に隣接する。加熱プレート6は、加熱プレート6の下面から容器2の基部3に向かって突出するセパレータ(本実施形態では脚)54を備え、加熱プレート6の下面と基部3の上面との間に約1mmの均一なクリアランスを与える。加熱中、加熱プレート6をできるだけ電磁調理器の近くに配置することが誘導効率の理由から有益であるが、この1mmのクリアランスにより、液体が加熱プレート6の周りを流れることができる。これにより、液体と接触する加熱プレート6の表面積が増加し、液体容器2内の液体内の対流が促進される。
【0185】
図9cは、バイメタル蒸気センサ26が撓む前の最初の「ラッチ」位置にある持ち上げ機構7のアーマチュア28を示す。DSOレバー38は、アーマチュア28の下端28bとの接触を離れて、下方に枢動されている。
図9dでは、第2の側断面図は、ここでも蒸気室22内に配置されたアーマチュア28とラッチアーム30との相互作用を示している。図をわかりやすくするために、蒸気室ハウジングおよび、その他の多数の部品が取り除かれている。
【0186】
図3aおよび
図3bで前に示した第1のラッチ32aを
図9dに示す。ラッチアーム30は、プランジャ58が基部3から離れて上向きに垂直移動するのを防ぐために、第1のラッチ32aおよび第2のラッチ32b(
図9dの断面図では不図示)の両方と係合するように形成されている。バイメタル蒸気センサ26が撓んだ結果としてのアーマチュア28の動作によってラッチアーム30が枢動すると、ラッチアーム30は、第1および第2のラッチ32a、32bとの係合を解除される(これにより、プランジャ58が器具1の基部3から離れて垂直方向に移動できるようになる。これについては、以下でさらに説明する)。
【0187】
図9eは、持ち上げ機構7がラッチ構成にあり、かつ、加熱プレート6が加熱位置にある、
図1に示す器具1の断面正面図を示す。
【0188】
図9eでは、持ち上げ機構7は、加熱プレート6の脚54が液体容器2の基部3に当接するように加熱プレート6が下げられた状態でプランジャ58が保持されるようにラッチされている。このラッチ構成では、主ばね34のそれぞれの下部は、第1および第2のピストン36a、36bによって圧縮され、それにより第1および第2のピストン36a、36bに、ピストン36a、36b、ひいてはプランジャ58を基部3から離れて上向きに付勢するように作用する付勢力を加える。しかし、
図9dから想起されるように、図に示すラッチ構成では、プランジャ58は、第1および第2のラッチ32a、32bとラッチアーム30との係合によって、垂直方向の上向きへの移動が防止される。
【0189】
図9eは、加熱プレート6が加熱位置にある状態で器具1が正常に動作しているときのDSO機構10の構成も示している。図から分かるように、このラッチ構成では、ロッド16の下端を取り囲むビーズ20が取付プレート18の上面に当接し、DSOバイメタルアクチュエータ14が撓んでいないことを示している。
【0190】
ここで、沸騰中における器具1の動作について、
図9c~
図9eを参照して説明する。
【0191】
電磁調理器のコイルに電流を流すと、強磁性加熱プレート6を通る磁場が生成される。加熱プレート6は、磁場にさらされることにより加熱される。その結果、加熱プレート6に接する液体容器2内の液体の温度が上昇し始める。
【0192】
液体の温度が沸点に達すると、液体は蒸発して蒸気になり、蒸気入口24を介して蒸気室22に流入する。蒸気室22に流入した蒸気がバイメタル蒸気センサ26を通過すると(
図9c参照)、蒸気からの熱がバイメタルセンサに伝達され、バイメタルセンサ26の温度が上昇する。
【0193】
上述のように、バイメタルセンサ26の温度が所定の温度(例えば、85℃)に達すると、バイメタルセンサ26が撓み、それによってアーマチュア28が枢動する。アーマチュア28のこの動作の結果として、アーマチュア28の下端28bが、シャフトスリーブ51から離れて半径方向外向きに枢動される。これにより、ラッチアーム30が枢動して、第1および第2のラッチ32a、32bとの係合が解除される。
【0194】
その結果、主ばね34の圧縮された下部の力によって上向きに付勢されたプランジャ58は、もはや上方への移動を妨げられない。したがって、主ばね34は、第1および第2のピストン36a、36bを押し、それによりプランジャ58および加熱プレート6は、
図10a~
図10cに示されるように、容器2の基部3から離れて非加熱位置まで上方に移動する。したがって、器具1は、沸騰が感知されると誘導加熱を自動的に中断するように動作し、持ち上げ機構7を操作したり器具1全体を調理器から持ち上げたりするといった手動介入は必要ない。
【0195】
図10aおよび
図10bは、上記したように、加熱プレート6が持ち上げ機構7の蒸気感知装置25の動作により持ち上げられた後の
図1に示す器具の第1および第2の断面側面図である。
図10aに示される断面は、器具1の中心を通る平面(すなわち、
図9cと同じ平面)内にある。
図10bに示す断面は、器具1の中心からわずかにずれた平面(すなわち
図9dと同じ平面)内にある。
【0196】
図10aに示されるように、加熱プレート6は、第1および第2のピストン36a、36bに作用する主ばね34の力によって、容器2の基部3から離れて非加熱位置に持ち上げられている。これは、加熱プレート6が電磁調理器によって生成された磁場にもはや十分にさらされておらず、加熱プレート6はもはや誘導によって加熱されないことを意味する。これにより、バイメタル蒸気センサ26が沸騰を検出した後も器具1(すなわち加熱プレート6)が液体容器2内の液体を加熱し(すなわち沸騰させ)続けることが防止される。
【0197】
持ち上げ機構7のアーマチュア28は、枢動された位置にある状態で示されており、このときアーマチュア28の上端28aはシャフトスリーブ51に向かって枢動され、アーマチュア28の下端28bはシャフトスリーブ51から離れるように枢動され、それによってラッチアーム30に作用し、ラッチアーム30(
図10b参照)が枢動して第1および第2のラッチ32a、32bとの係合が解除されている。これにより、第1および第2のラッチ32a、32bが配置されたシャフトスリーブ51が、
図10a~
図10cに示される位置まで上方に移動することが可能になる。ラッチアーム30が枢動した位置が
図10bに示されている。図を簡単にするために、蒸気室ハウジングおよびその他の多くの部品は取り除かれている。
【0198】
図10cは、器具1の断面正面図であり、第1および第2のラッチ32a、32bがラッチアーム30との係合から解放された後の主ばね34の下部の伸張を示す。第1および第2のピストン36a、36bの上方に延伸する主ばね34の上部は、圧縮状態で示されている。主ばね34の上部は、第1および第2のラッチ32a、32bが解放され、第1および第2のピストン36a、36bがプランジャ58とともに上昇することが許容されたときに蒸気室ハウジング56の上壁に当接するように構成されている。これにより、第1および第2のラッチ32a、32bが解放されたときに蒸気室ハウジング56の上壁に対する第1および第2のピストン36a、36bの衝撃を低減し、それによりプランジャ58が最大高さに達するときのプランジャ58の減速を緩和する減衰機構(すなわち、主ばね34の上部)が提供される。これは、ユーザ体験と安全性を向上させ、器具1の部品の寿命を延ばすのに役立つ。
【0199】
図10cはまた、加熱プレート6が持ち上げ機構7上の蒸気感知装置25の動作により持ち上げられたときのDSO機構10の構成を示す。DSOバイメタルアクチュエータ14は撓んでいないため、ロッド16の下端を取り囲むビーズ20は取付プレート18の上面に当接し続けている。
【0200】
図9~
図10に関連して説明したシナリオの代替シナリオとして、器具1は、容器2内に液体が存在しない状態で通電された電磁調理器上に載置される。
図11は、加熱プレート6が加熱位置に下げられDSO機構10が始動されたときの
図1に示す器具の側断面図を示す。
【0201】
図11では、加熱プレート6は加熱位置に戻されており、加熱プレート6の脚54が液体容器2の基部3に当接している。したがって、器具1が電磁調理器上に載置され誘導コイルが通電されると、上述のように、加熱プレート6の温度が上昇し始める。ヒートブリッジ12は、加熱プレート6の端部からDSOバイメタルアクチュエータ14に向かって熱を伝導し、アクチュエータ14の温度を上昇させるように構成されている。
【0202】
DSOバイメタルアクチュエータ14の温度が所定の温度に達する前において、DSO機構10は
図8に示すように構成されている。すなわち、DSOバイメタルアクチュエータ14の自由端がまだ器具1の基部3から離れて上向きに撓んでいないため、ロッド16の下端を取り囲むビーズ20は取付プレート18の上面に当接している。
【0203】
DSOバイメタルアクチュエータ14の温度が所定の温度に達すると、アクチュエータ14は、アクチュエータ14の自由端が器具1の基部3から離れて上向きに移動するように撓む。その結果、アクチュエータ14の自由端はロッド16の下端に当接し、ロッド16をシャフト50内で、容器2の基部3から離れるように上方に垂直に持ち上げる。これは
図11に示されている。図から分かるように、ビーズ20が取付プレート18の上面に載らないように、ロッド16が持ち上げられる。代わりに、ロッド16の下端は、DSOバイメタルアクチュエータ14の自由端に載っている。
【0204】
図11は、DSOレバー38がロッド16によってどのような作用を受けて
図9cに示される位置から上方に枢動するかを示す。DSOレバー38は、断面が略三角形であり、軸に沿って第1の方向に延伸する第1のローブと、その軸に沿って反対方向に延伸する第2のローブと、第1および第2のローブが沿う軸から垂直に延伸する第3のローブとを備える。
図11に示すように、第1のローブ38aは、シャフト50からアーマチュア28の下端28bに向かって(シャフトスリーブ51の開口を通って)突出し、第2のローブ38bはシャフト50内を延伸してロッド16の上端に当接し、第3のローブ38cは、シャフト50から(シャフトスリーブ51の開口を通って)液体容器2の基部3に向かって突出する。
【0205】
DSOレバー38は、プランジャ58のシャフト50に(直接的または間接的に)、枢動可能に取り付けられる。ロッド16がDSOバイメタルアクチュエータ14の撓みによって持ち上げられると、ロッド16の上端がDSOレバー38の第2のローブ38bの下側を押し、DSOレバー38を反時計回りに回転させる。その結果、DSOレバー38の第1のローブ38aがアーマチュア28の下端28bを押し、それによってアーマチュア28をスリーブ51から離れるように枢動させ、持ち上げ機構7を「ラッチ」構成から「ラッチ解除」構成に移動させる。DSOレバー38の第3のローブ38cは、シャフトスリーブ51の外面と係合することによって、DSOレバー38が過度に回転するのを防止する止め具として機能する。
【0206】
図11は、持ち上げ機構7内のアーマチュア28およびDSOレバー38の「ラッチ解除」構成を示す。上述のように、アーマチュア28の枢動により、アーマチュア28の下端28bがラッチアーム30を動かして、第1および第2のラッチ32a、32bとの係合を解除する。その結果、プランジャ58は、
図9a~
図10cを参照して上述したのと同じように、圧縮された主ばね34の力によって自由に持ち上げられるようになる。これにより、加熱プレート6が電磁調理器の磁場から離れて非加熱位置に移動し、それにより、加熱プレート6および液体容器2内の液体のさらなる加熱が防止される。
【0207】
したがって、DSOレバー38は、DSO機構10の動作によって引き起こされるロッド16の動きを、第1および第2のラッチ32a、32bのラッチを解除するアーマチュア28の枢動運動に変換することが理解されるであろう。これは、加熱プレート6を持ち上げるのに、持ち上げが蒸気感知装置25によって引き起こされるかDSO機構10によって引き起こされるかにかかわらず、同じ持ち上げ機構7(すなわち、アーマチュア28、ラッチアーム30、第1および第2のラッチ32a、32b、および主ばね34)が用いられることを意味する。蒸気スイッチオフと空焚きスイッチオフの両方に単一の持ち上げ機構7を用いることにより、器具1の複雑さが大幅に軽減され、安全性が向上する。
【0208】
図12は、
図1に示す器具1の手動押しボタン40の断面側面図である。この図は
図3cに示されるものと似ているが、別の平面に沿って断面がとられている。この断面図において、内側ボタン41は、フック部41aと平行に、内側ボタン41の下面から垂直に延伸する延長アーム42をさらに備えることが分かる。延長アーム42は、円形溝40aの基部に画定された延長開口40dを通って延伸し、支持部材48を通過する。持ち上げ機構が「ラッチ」構成にあるとき、延長アーム42は、器具の蒸気室内へと延伸する。
【0209】
図13は、手動介入部(すなわち内側ボタン41)が操作された後の
図12に示す断面側面図の広域図である。電磁調理器による加熱プレート6の加熱中、器具1は、ユーザにより、内側ボタン41を押し下げることによって、誘導加熱を中断するように手動で操作することができる。内側ボタン41が圧縮ばね46の付勢に逆らって下方に移動されると、内側ボタン41の延長アーム42は、シャフトスリーブ51の外面に設けられた突起44に沿ってスライドする。突起44の基部では、突起44がアーマチュア28の下端28bに向かって突出するように、当該突起の表面が傾斜している。したがって、延長アーム42が突起44の基部に達すると、延長アーム42は半径方向外側に撓み、アーマチュア28の下端28bを押す。その結果、アーマチュア28が枢動し、それによりラッチアーム30の第1および第2のラッチ32a、32bとの係合が解除され、ラッチ解除された持ち上げ機構7は、プランジャ58と加熱プレート6が主ばね34によって持ち上げられるように作動可能になる。
【0210】
このように、内側ボタン41の延長アーム42は、内側ボタン41の動きをアーマチュア28の枢動運動に変換する。加熱プレート6の持ち上げが蒸気感知装置25またはDSO機構10によって引き起こされるときに当該加熱プレート6を持ち上げるのに用いられるのと同じ持ち上げ機構7(すなわち、アーマチュア28、ラッチアーム30、第1および第2のラッチ32a、32b、および主ばね34)が、内側ボタン41を押し下げることによって手動介入が開始されたときに加熱プレート6を持ち上げる機能も果たすことが理解されるであろう。
【0211】
圧縮ばね46は、ユーザが内側ボタン41に圧力を加えるのをやめると当該内側ボタン41を
図12に示す位置に確実に復帰させる。
【0212】
蒸気感知装置25による沸騰の検出の結果として、またはDSO機構10による「空焚き」シナリオの検出の結果として、または上記のような手動介入の結果として、加熱プレート6が
図10a~
図10cに示す非加熱位置に持ち上げられた後、液体容器2内の液体をさらに加熱するには、器具1をリセットしなければならない。持ち上げ機構7は、プランジャ58、更には加熱プレート6、を下降させることによりリセットされ、それにより加熱プレート6が再び加熱位置で容器2の基部3に隣接するようになる。これは
図14aに示されている。
【0213】
プランジャ58を下げるために、ユーザは手動押しボタン40を押し下げる。上述のように、これにより、プランジャ58およびそれに関連する部品が、この動きによって圧縮される主ばね34の下部による反対方向の付勢力に逆らって、基部3に向かって一体的に下向きに移動する(
図9e参照)。
【0214】
図14aおよび
図14bに示すように、加熱プレート6の脚54が容器2の基部3に当接するまで、プランジャ58を下方に移動させる。加熱プレート6の脚54が基部3に接触すると、シャフト50は圧縮ばね46の付勢に逆らって上方に押される。これにより、加熱プレート6が容器2の基部3に近い加熱位置に確実に押し付けられ、それによってそれらの間に所望の距離1mmが確実に維持される。ユーザが手動押しボタン40に下向きの圧力を加えているときばね46が過度に圧縮されているのが
図14aに示されている。この圧力が解放されると、ばね46はその自然長へと緩み(
図9c参照)、押しボタン40は蓋から離れて持ち上げられ、ばね46の付勢力がシャフト50に作用して、ラッチ32a、32b(
図14b参照)と容器2の基部3との垂直距離の小さな変動(例えば、ガラス製基部3の厚みの変動の結果として)に関係なく、加熱プレート6をその加熱位置に下げたままにする。
【0215】
プランジャ58が下向きに動かされると、第1および第2のラッチ32a、32bの下側傾斜面がラッチアーム30の対応する上側傾斜面を押し、これにより、第1および第2のラッチ32a、32bが通過する際に、ラッチアーム30を半径方向外側に枢動させる(
図14b参照)。第1および第2のラッチ32a、32bがラッチアーム30の下に移動されると、ラッチアーム30は、ラッチアーム30に作用するワイヤ付勢ばね(図示せず)によって、半径方向内側に枢動し戻される。持ち上げ機構7は、それによってラッチ構成に戻る。
【0216】
図14bは、プランジャ58が手動で押し下げられて器具1が手動リセットされた後の器具1の第2の断面側面図である。この断面図は、加熱プレート6が最も低い位置にある状態のラッチアーム30および第1のラッチ32aの相対的な位置を示し、加熱プレート6の脚54が容器2の基部3に当接している。
【0217】
図14bでは、第1および第2のラッチ32a、32b(ただし、第2のラッチ32bはこの図には示されていない)と、第1および第2のラッチ32a、32bが係合するラッチアーム30の表面との間に隙間があることが分かる。ユーザが手動押しボタン40を押し下げるのを止めると、主ばね(図示せず)の下部の上方への付勢力が、第1および第2のピストン(図示せず)を介してプランジャ58に作用し、プランジャ58を持ち上げる。これにより、第1および第2のラッチ32a、32bとラッチアーム30との間の隙間が閉じられ、これらの部品が「ラッチ」係合状態になり、プランジャ58がさらに上方へ動くのが防止される。このように、持ち上げ機構7は、
図9c~
図9eに示されるような「ラッチ」構成に戻される。
【0218】
上記の実施形態では、持ち上げ機構7は、容器2内に加熱プレート6を取り付けるプランジャ58を備えていることが分かる。持ち上げ機構7は、蓋5に対して移動するのに都合良いように構成される。器具1およびその様々な部品の洗浄を容易にするために、蓋5は、持ち上げ機構7を所定の位置に残したまま取り外すことができ、あるいは、持ち上げ機構7全体を液体容器2から(例えば、蓋5とともに)取り外すことができる。
【0219】
図15は、本発明の他の実施形態に係る液体加熱器具101の下面図である。
【0220】
器具101は、以下に説明する相違点を除いて、
図1に示す器具1と実質的に同様である。器具101は、液体容器102を画定する透明なガラスハウジングを備える。器具101は、
図1に示す加熱プレート6と実質的に同じように持ち上げ機構(図示せず)によって液体容器102内に取り付けられた強磁性加熱プレート106をさらに備える。
【0221】
加熱プレート106は、加熱プレート106の下面から容器102の基部に向かって突出する4つの脚154(セパレータを具現化したもの)を備え、それにより加熱プレート106の下面と基部の上面との間に約1mmの均一なクリアランスを与える。加熱プレート106に画定された開口164は、加熱プレート106の下側と加熱プレート106の上側との間の流体連通を可能にし、それにより器具101内の対流を改善するのに役立つ。
【0222】
図1に示す器具の加熱プレート6の脚54が加熱プレート6の外周に隣接して配置されているのとは対照的に、加熱プレート106の脚154は、加熱プレート106の領域の内側半分内の、より中央に配置されている。
【0223】
図16は、電磁調理器上の中央に置かれたときの、
図15に示す器具の加熱プレート106の概略ヒートマップを示す。ヒートブリッジ112の位置が参考のために示されている。
【0224】
加熱プレート106は、長軸160および短軸162を有する。電磁調理器の中心Cを
図16に示す。
【0225】
第1の低加熱領域106a、加熱領域106b、および第2の低加熱領域106cが、
図4および
図6を参照して上述したのと同様に加熱プレート106上に配置される。
【0226】
図から分かるように、加熱プレート106の脚154は、加熱領域106bおよび第2の低加熱領域106cの半径方向内側にある第1の低加熱領域106a内に配置される。これは、器具101が通電された電磁調理器の中心に配置されたとき、脚154は、最高温度に加熱される加熱プレート106の領域106bにさらされないことを意味する。
【0227】
脚154は、加熱プレート106がその加熱位置に下げられたときにガラス容器102の基部と接触するように、加熱プレート106の下面に配置される。したがって、脚は、加熱プレート106とガラス容器102との間に熱伝導経路を提供する。脚154を加熱プレート106の第1の低加熱領域106aに配置することにより、加熱プレート106からガラス容器102に伝達される熱エネルギーを減少させ、それにより過熱または熱衝撃によってガラス容器102が損傷する危険性を減少させることができる。
【0228】
図17は、
図15に示す液体加熱器具101の斜視図である。分かりやすくするために、持ち上げ機構および器具101の上部部品は取り除かれている。
【0229】
器具101は、加熱プレート106の上面に取り付けられたステンレス鋼製の加熱プレートカバー109を備える。加熱プレートカバー109は、加熱プレート106の上面全体にわたって延伸し、加熱プレート106の上側(および加熱プレート106の開口164を介して加熱プレート106の下側)と加熱プレートカバー109の上方のガラス容器102によって画定される液体容積との間の流体連絡を可能にする複数の開口111を備える。これは、器具101内の対流を改善するのに役立つ。加熱プレートカバー109の提供はまた、加熱プレート106を器具101の使用者の視界から隠すのに役立ち、加熱プレート106が使用中に変色することがあるので、審美的に有益であり得る。
【0230】
器具101は、加熱プレートカバー109の外周の周りに延伸するシリコンのバンパーリング113をさらに備える。バンパーリング113は、ガラス容器102の壁が、加熱プレート106が容器102内を移動する際に加熱プレート106によって傷つけられるのを防ぐのに役立つ。これにより、ガラス容器102の壁に、高温で、例えば空焚きシナリオにおいて、ガラスの障害点となり得る欠陥が生じるリスクを低減することができる。バンパーリング113は、加熱プレート106ではなく、加熱プレートカバー109に取り付けられる。これは、バンパーリング113を、加熱プレート106内の高温による熱損傷から保護するのに役立つ。
【0231】
図18は、加熱プレートカバー109の下面の斜視図である。分かりやすくするために、加熱プレートは
図18から取り除かれている。
【0232】
図から分かるように、加熱プレートカバー109は、加熱プレートカバー109の中心の周りに、加熱プレートカバー109の下面から加熱プレート106に向かって下方に延伸する4つのタング(tang)115を備える。タング115は、加熱プレート106(
図15参照)における対応するスロット119と係合するように構成され、それによって加熱プレートカバー109を加熱プレート106に取り付ける。タング115はまた、加熱プレートカバー109の下面と加熱プレート106の上面との間の間隔を維持する働きをし、これは、器具101の使用中において、加熱プレート106から加熱プレートカバー109への熱エネルギーの伝導流を減少させるのに役立つ。
【0233】
加熱プレートカバー109は、加熱プレートカバー109の下側の外周から加熱プレート106に向かって下方に延伸する6つの外側離間タブ117備える。外側離間タブ117は、加熱プレートカバー109と加熱プレート106との間の間隔を維持するのを助ける。この間隔は約1mmである。
【0234】
バンパーリング113は、加熱プレートカバー109の各開口111を通って加熱プレートカバー109の上面から加熱プレートカバー109の下側まで延びる6つのリベット121をさらに備える。リベット121は、バンパーリング113を加熱プレートカバー109に固定するのに役立つ。
【0235】
図19は、
図15に示す器具101の断面側面図である。バンパーリング113のリベット121が、加熱プレートカバー109の上面の外周に位置するように配置されたバンパーリング113の上側リップ113aから延伸していることが図から分かる。バンパーリング113は、加熱プレートカバー109の側面の周囲、および下方に延びて、下側リップ113bを形成している。したがって、バンパーリング113は、C字型の断面を有することが理解されるであろう。
【0236】
外側離間タブ117のうちの4つは、バンパーリング113の下側リップ113bのそれぞれの開口を通って延伸し、それによって、バンパーリング113を加熱プレートカバー109に固定するのを助ける。外側離間タブ117とリベット121は共に、加熱プレートカバー109の容器102内での移動中にバンパーリング113が加熱プレートカバー109から外れることがないようにするのに役立つ。
【0237】
図19に示すように、バンパーリング113は加熱プレート106よりも半径方向外側に延伸しており、これは、加熱プレート106と容器102の壁との間に相対的な横方向の動きがあった場合に、バンパーリング113が加熱プレート106よりも先にガラス容器102の壁面に接触することを意味する。これは、容器102のガラス壁を損傷から保護するのに役立つ。