(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】半導体デバイス、半導体デバイスの製造方法および製造装置、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20250313BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
(21)【出願番号】P 2023529850
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2022023567
(87)【国際公開番号】W WO2022264954
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021100395
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】神川 剛
(72)【発明者】
【氏名】川口 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐基
(72)【発明者】
【氏名】村川 賢太郎
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-046038(JP,A)
【文献】特開平11-163402(JP,A)
【文献】特開2003-234502(JP,A)
【文献】特開2021-048427(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190030(WO,A1)
【文献】特開平11-266058(JP,A)
【文献】特開2015-035541(JP,A)
【文献】特開2009-158709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0067532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部とを備
え、
前記第2光反射部は、前記ホール内の中空部に接する、半導体デバイス。
【請求項2】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部とを備え、
前記主基板および前記ベース半導体部の間に、マスク部および開口部を含むマスクパターンと、下地部との少なくとも一方が配され、
前記ホールの底面が、前記下地部または前記マスク部に含まれ、
前記ベース半導体部は前記ホールの底面を含まない
、半導体デバイス。
【請求項3】
前記第2光反射部の少なくとも一部は前記主基板の内側面に接する、請求項1
または2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第2光反射部は、前記ホールの底面上から前記主基板の内側面上にわたって位置する、請求項1
または2に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記化合物半導体部よりも上方に位置し、平面視で前記第1光反射部と重なる第1電極を含む、請求項1
または2に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記ベース半導体部よりも上方に位置する第2電極を含む、請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記第1および第2電極が、ベース半導体部の<1-100>方向または<11-20>方向に並ぶ、請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記ベース半導体部は、第1部分と、厚み方向において前記第2光反射部と重なり、貫通転位密度が前記第1部分の1/5以下である第2部分とを含む、請求項1
または2に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記第2部分は、平面視で前記第1光反射部および前記第2光反射部と重なる、請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記化合物半導体部の上面に接する絶縁膜を含み、
前記絶縁膜は、平面視において前記第1光反射部、前記第2部分、および前記第2光反射部と重なるアパーチャー部を含む、請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置し、平面視で前記第1光反射部と重なる第1電極と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する第2電極と、を含み、
前記ベース半導体部は、第1部分と、厚み方向において前記第2光反射部と重なり、貫通転位密度が前記第1部分の1/5以下である第2部分とを含み、
平面視において、前記第1電極および前記第2電極は、前記第1部分と重ならな
い、半導体デバイス。
【請求項12】
前記第1光反射部および前記第2光反射部の少なくとも一方が、1以上の低屈折部と1以上の高屈折部とが交互に重ねられた反射鏡である、請求項1
、2、11のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記主基板よりも上方に位置し、マスク部および開口部を含むマスクパターンを備え、
前記ベース半導体部は、前記開口部から前記マスク部上にわたって配されている、請求項
1に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記半導体基板は、前記主基板と前記マスクパターンとの間に下地部を含む、請求項13に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記下地部は、平面視で前記マスクパターンの開口部と重なるシード部を含む、請求項14に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
前記ホールの底部の少なくとも一部が、前記下地部または前記マスク部に含まれる、請求項14に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
前記ホールが前記マスク部を貫通する、請求項13に記載の半導体デバイス。
【請求項18】
前記主基板が、シリコン基板または炭化ケイ素基板である、請求項1
、2、11のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項19】
前記第2部分の貫通転位密度が5×10
6/cm
2以下である、請求項
8に記載の半導体デバイス。
【請求項20】
前記化合物半導体部は、第1型半導体層、活性層、および第2型半導体層をこの順に含む、請求項1
、2、11のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項21】
前記ベース半導体部、前記化合物半導体部並びに前記第1および第2光反射部を含む、面発光型の半導体レーザ素子を1以上備える、請求項1
、2、11のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項22】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記主基板よりも上方に位置し、マスク部および開口部を含むマスクパターンと、
前記主基板および前記マスクパターンの間に位置する下地部とを備え、
前記下地部は、前記マスクパターンの開口部と重なるように局所的に設けられている
、半導体デバイス。
【請求項23】
前記マスク部は、前記主基板の熱酸化膜である、請求項22に記載の半導体デバイス。
【請求項24】
前記化合物半導体部は、平面視において前記第1光反射部、前記第2部分、および前記第2光反射部と重なるアパーチャー部と、前記アパーチャー部を取り囲み、前記アパーチャー部よりも電流抵抗が大きな高抵抗部とを含む、請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項25】
前記ホールの底面の面積は、前記アパーチャー部の面積よりも大きい、請求項1
0に記載の半導体デバイス。
【請求項26】
前記第2光反射部は、前記ホールのボトムおよび側壁に接する、請求項1
、2、11、22のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項27】
前記主基板および前記ベース半導体部の間に、前記主基板の上方に位置する下地部と、前記下地部の上方に位置するマスクパターンとが配されている、請求項
2に記載の半導体デバイス。
【請求項28】
前記ホールに蛍光体が配され、
前記第2光反射部は、前記蛍光体よりも前記ホールのボトム側に位置する、請求項1
、2、11、22のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項29】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部とを備え、
前記第2光反射部は、前記主基板の下面に接する
、半導体デバイス。
【請求項30】
前記第2電極は、前記ベース半導体部に接する、請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項31】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置し、平面視で前記第1光反射部と重なる第1電極と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する第2電極とを備え、
前記第2電極は、前記ベース半導体部に接し、
前記第2電極は凹部を有し、前記凹部が絶縁体で埋められている
、半導体デバイス。
【請求項32】
前記第1電極に接触する第1パッドと、前記第2電極に接触する第2パッドとを含む、請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項33】
前記第1および第2パッドの上面レベルが一致する、請求項32に記載の半導体デバイス。
【請求項34】
前記第1および第2パッドの上面レベルが前記第1光反射部の上面レベルよりも高い、請求項33に記載の半導体デバイス。
【請求項35】
前記第2パッドの少なくとも一部は、平面視で前記ホールと重ならない、請求項3
2に記載の半導体デバイス。
【請求項36】
前記第1パッドの少なくとも一部は、平面視で前記ホールと重ならない、請求項3
2に記載の半導体デバイス。
【請求項37】
前記第1パッドは、前記第1光反射部の上面に接する、請求項3
2に記載の半導体デバイス。
【請求項38】
前記化合物半導体部と前記第1光反射部との間に、透光性の第1電極を有する、請求項10に記載の半導体デバイス。
【請求項39】
前記第1電極は前記絶縁膜の上面と接触し、
前記アパーチャー部では、前記第1電極および前記化合物半導体部が接触する、請求項38に記載の半導体デバイス。
【請求項40】
前記化合物半導体部がGaN系半導体を含み、前記第1電極が酸化ガリウムを含む、請求項3
8に記載の半導体デバイス。
【請求項41】
前記第2光反射部の反射率は、第1光反射部の反射率よりも小さい、請求項1
、2、11、22、29、31のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項42】
前記低屈折部および前記高屈折部それぞれが誘電体で構成されている、請求項12に記載の半導体デバイス。
【請求項43】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記主基板よりも上方に位置し、マスク部および開口部を含むマスクパターンと、
光反射性を有し、平面視で前記マスクパターンの開口部と重なる第1隔壁部
とを含む
、半導体デバイス。
【請求項44】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記主基板よりも上方に位置し、マスク部および開口部を含むマスクパターンと、
光反射性を有し、平面視で前記マスク部の中央と重なる第2隔壁部
とを含む
、半導体デバイス。
【請求項45】
前記主基板は、GaNバルク基板よりも熱伝導率が大きい、請求項1
、2、11、22、29、31、43、44のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項46】
主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部と、
前記主基板よりも上方に位置し、マスク部および開口部を含むマスクパターンと、
前記主基板および前記マスクパターンの間に位置する下地部とを備え、
前記下地部は、前記ベース半導体部よりも熱伝導率が大きい
、半導体デバイス。
【請求項47】
前記下地部が炭化ケイ素を含む、請求項46に記載の半導体デバイス。
【請求項48】
前記ホールは、前記マスクパターン側に向けて細くなるテーパ形状である、請求項13に記載の半導体デバイス。
【請求項49】
前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードである、請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項50】
前記第1電極と電気的に接続する回路基板を含む、請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項51】
請求項1
、2、11、22、29、31、43、44、46のいずれか1項に記載の半導体デバイスを含む電子機器。
【請求項52】
主基板およびマスクパターンを含むテンプレート基板上に、ELO法を用いてベース半導体部を形成する工程と、
前記ベース半導体部よりも上方に化合物半導体部を形成する工程と、
前記化合物半導体部よりも上方に第1光反射部を形成する工程と、
前記主基板を厚み方向に貫通し、平面視で前記第1光反射部と重なるホールを形成する工程と、
前記ホールに第2光反射部を形成する工程とを含
み、
前記第2光反射部は、前記ホール内の中空部に接する、半導体デバイスの製造方法。
【請求項53】
請求項52に記載の各工程を行う、半導体デバイスの製造装置。
【請求項54】
シード部と、
前記シード部よりも上方に位置し、マスク部および開口部を有するマスクパターンと、
前記マスクパターンよりも上方に位置するベース半導体部と、
前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、
前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、
前記シード部よりも下方に位置し、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部とを備える、半導体デバイス。
【請求項55】
前記第1光反射部よりも上方に位置する支持基板を備える、請求項54に記載の半導体デバイス。
【請求項56】
主基板およびマスクパターンを含むテンプレート基板上に、ELO法を用いてベース半導体部を形成する工程と、
前記ベース半導体部よりも上方に化合物半導体部を形成する工程と、
前記化合物半導体部よりも上方に第1光反射部を形成する工程と、
前記主基板を除去する工程と、
前記マスクパターンを基準として前記第1光反射部が位置する側の反対側に第2光反射部を形成する工程とを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項57】
前記主基板を除去する前に、前記テンプレート基板、前記ベース半導体部および化合物半導体部を支持基板に保持させる、請求項56に記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GaN基板上にDBR(Distributed Bragg Reflector)層および発光層を設けた面発光型の半導体レーザ素子が開示されている。GaN基板上にDBRを設ける構造は放熱性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る半導体デバイスは、主基板および前記主基板よりも上方に位置するベース半導体部を有し、前記主基板を厚み方向に貫通するホールを含む半導体基板と、前記ベース半導体部よりも上方に位置する化合物半導体部と、前記化合物半導体部よりも上方に位置する第1光反射部と、前記ホールに配され、前記第1光反射部の下方において前記第1光反射部と重なる第2光反射部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態に係る半導体デバイスの構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態に係る半導体デバイスの製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る半導体デバイスの構成を示す断面図である。
【
図5】実施例1に係る半導体デバイスの構成を示す断面図である。
【
図6】実施例1に係る半導体デバイスの構成を示す他の断面図である。
【
図7】実施例1に係る半導体デバイスの構成を示す平面図である。
【
図8】実施例1に係る半導体デバイスの構成を示す部分拡大断面図である。
【
図9】実施例1に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施例1に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示す工程断面図である。
【
図11】ベース半導体部の横方向成長の一例を示す断面図である。
【
図12】実施例1に係る半導体デバイスの構成を示す断面図である。
【
図13】実施例1の半導体デバイスの別構成を示す平面図である。
【
図14】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図15】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図16】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図17】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図18】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図19】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図20】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図21】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図22】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図23】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図24】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図25】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図26】実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図27】実施例2に係る半導体デバイスの、X方向に沿った断面図である。
【
図28】実施例2に係る半導体デバイスの、Y方向に沿った断面図である。
【
図29】
図27の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図30】実施例2に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
【
図31】
図30の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図32】
図30の半導体デバイスの製造方法の一例を示す工程断面図である。
【
図33】実施例4に係る電子機器の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
〔半導体デバイス〕
図1は、本実施形態に係る半導体デバイスの構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体デバイス30は、(i)主基板1、主基板1よりも上方に位置するマスクパターン6、およびマスクパターン6よりも上方に位置するベース半導体部8を有し、主基板1を貫通するホールHを含む半導体基板15と、(ii)ベース半導体部8よりも上方に位置する化合物半導体部9と、(iii)化合物半導体部9よりも上方に位置する第1光反射部10と、(iv)ホールHに配され、第1光反射部10の下方において第1光反射部10と重なる第2光反射部11とを備える。第2光反射部11は、平面視で第1光反射部10と重なる。化合物半導体部9の上方には第1電極E1を設けることができる。マスクパターン6は開口部Kおよびマスク部5を含む。マスクパターン6がマスク層6であってもよく、ベース半導体部8がベース半導体層8であってよく、化合物半導体部9が化合物半導体層9であってもよい。半導体基板15は、主基板1(例えば、バルク結晶基板)と半導体部(半導体層)とを含んでいればよく、主基板1は半導体であってもよいし、非半導体であってもよい。説明の便宜上、主基板1からベース半導体部8に向かう方向を「上方向」と称する(よって、鉛直方向上向きあるいは図面の上方向と異なる場合がある)。
【0007】
半導体基板15は、主基板1を厚み方向(Z方向、上下方向)に貫通し、平面視で、ベース半導体部8および化合物半導体部9に重なるホールHを含む。平面視で2つの構成要素が重なるとは、主基板1の法線方向の視認(透視的視認を含む)において一方の構成要素の少なくとも一部が他方の構成要素に重なることを意味する。
【0008】
第1光反射部10と第1電極E1とが平面視で重なっていてもよい。第2光反射部11の少なくとも一部がホールH内に形成されていてもよい。さらに、第2光反射部11、ベース半導体部8、化合物半導体部9、第1電極E1、および第1光反射部10は、平面視で互いに重なっていてもよい。半導体デバイス30では、化合物半導体部9で発生した光が、第1および第2光反射部10・11間を往復することでレーザ発振し、例えば第2光反射部11からレーザ光として出射してもよい。半導体デバイス30では、第2光反射部11が主基板1のホールHに設けられているため、放熱性が向上し、半導体デバイス30の信頼性が高められる。
【0009】
半導体デバイス30では、主基板1およびベース半導体部8の格子定数が異なる場合でも、マスク部5上においてはベース半導体部8および化合物半導体部9の貫通転位(欠陥)が低減する。そのため、化合物半導体部9の発光効率(例えば、第1電極E1からの電荷注入量に対する光量の比)が高められる。貫通転位は、ベース半導体部8から化合物半導体部9に延びる転位(欠陥)であり、電荷移動を阻害し、発熱の原因となるからである。
【0010】
ベース半導体部8および化合物半導体部9は、例えば窒化物半導体を含む。窒化物半導体は、例えば、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)と表すことができ、具体例として、GaN系半導体、AlN(窒化アルミニウム)、InAlN(窒化インジウムアルミニウム)、InN(窒化インジウム)を挙げることができる。GaN系半導体とは、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)を含む半導体であり、典型的な例として、GaN、AlGaN、AlGaInN、InGaNを挙げることができる。ベース半導体部8は、ドープ型(例えば、ドナーを含むn型)でもノンドープ型でもよい。ベース半導体部8および化合物半導体部9が窒化物半導体層であってもよい。
【0011】
窒化物半導体を含むベース半導体部8は、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法によって形成することができるが、低欠陥を実現できる手法であれば別の手法でもよい。ELO法では、例えば、主基板1としてベース半導体部8と格子定数の異なる異種基板を用い、マスク部5に無機化合物膜を用い、開口部Kに下地部4の上面を露出させることで、マスク部5上にベース半導体部8を横方向(Y方向)成長させることができる。
【0012】
以下では、主基板1および下地部4を含めて下地基板と称し、主基板1、下地部4およびマスクパターン6を含めてテンプレート基板7と称することがある。また、ELO法で形成された半導体層(半導体部)をELO半導体層と称することがある。
【0013】
〔半導体デバイスの製造〕
図2は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2の半導体デバイスの製造方法では、テンプレート基板(ELO成長用基板)7を準備する工程の後に、ELO法を用いてベース半導体部8を形成する工程と、化合物半導体部9を形成する工程と、第1光反射部10を形成する工程と、第2光反射部11を形成する工程とを行う。
【0014】
図3は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造装置の一例を示すブロック図である。
図3の半導体デバイスの製造装置70は、テンプレート基板7上にベース半導体部8、化合物半導体部9、第1光反射部10、および第2光反射部11を形成する成膜部72と、主基板1に対してその裏面1Uからエッチングを行う加工部73と、成膜部72および加工部73を制御する制御部74とを備える。
【0015】
成膜部72はMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を含んでいてもよく、制御部74がプロセッサおよびメモリを含んでいてもよい。制御部74は、例えば、内蔵メモリ、通信可能な通信装置、またはアクセス可能なネットワーク上に格納されたプログラムを実行することで成膜部72および加工部73を制御する構成でもよい。上記プログラムおよび上記プログラムが格納された記録媒体等も本実施形態に含まれる。
【0016】
〔半導体デバイス〕
図4は、本実施形態に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図4に示すように、半導体デバイス30は、主基板1の反対側に位置し、第1電極E1と電気的に接続する回路基板CBを備えていてよい。
【0017】
〔実施例1〕
(全体構成)
図5は、実施例1に係る半導体デバイスの、X方向に沿った断面図である。
図6は、実施例1に係る半導体デバイスの、Y方向に沿った断面図である。
図7は、実施例1に係る半導体デバイスの平面図である。
図5、
図6および
図7に示すように、実施例1に係る半導体デバイス30は、(i)主基板1と、主基板1上に位置する下地部4と、下地部4上に位置し、マスク部5および開口部Kを含むマスクパターン6と、マスクパターン6上に位置するベース半導体部8とを有し、主基板1を貫通するホールHを含む半導体基板15と、(ii)ベース半導体部8上に位置する化合物半導体部9と、(iii)化合物半導体部9上に位置する絶縁膜KFと、(iv)第1電極E1および第2電極E2と、(v)第1電極E1上に位置する第1光反射部10と、(vi)ホールHに設けられた第2光反射部11とを備える。ベース半導体部8および化合物半導体部9は、窒化物半導体(例えば、GaN系半導体)を含む。例えば、X方向はベース半導体部8の<11-20>方向、Y方向はベース半導体部8の<1-100>方向、Z方向はベース半導体部8の<0001>方向である。
【0018】
主基板1は、ベース半導体部8と格子定数の異なる異種基板である。主基板1は遮光基板、例えば、シリコン基板であってもよい。半導体基板15は、主基板1の下面および上面間を貫通し、平面視で化合物半導体部9に重なるホールHを含む。ホールHは、ベース半導体部8側に向けて先細りとなるテーパ形状であってよい。ホールHに設けられた第2光反射部11は、平面視で第1光反射部10と重なっていてよい。第2光反射部11は、ホールHの少なくともボトム(底面)に接していてよく、ホールHの側壁に接していてもよい。
【0019】
ホールHは、主基板1の裏面(下面)1Uに、レーザ光の出射面となる開口KRを有する。開口KRの形状は、矩形、菱形、六角形、円形、楕円形等であるが、これに限定されない。実施例1では、ホールHの底部の少なくとも一部が下地部4に含まれる。
図5に示すように、ホールHの底部全体が下地部4内に位置してもよい。
【0020】
第1電極E1は、化合物半導体部9上に設けられるアノードである。化合物半導体部9はベース半導体部8上に設けられるが、ベース半導体部8の一部の上方には化合物半導体部9が位置しておらず、このベース半導体部8の一部と接するように、カソードである第2電極E2を設けることができる。第1電極E1は光透過性を有していてもよい。
【0021】
半導体デバイス30では、ベース半導体部8、化合物半導体部9、絶縁膜KF、第1および第2電極E1・E2、並びに第1および第2光反射部10・11を含む、面発光型の半導体レーザ素子20(VCSEL素子:a vertical cavity surface emitting laser element)が1つ以上構成される。具体的には、第1および第2電極E1・E2間の電流によって化合物半導体部9で発生した光は、第1および第2光反射部10・11間における誘導放出および帰還作用によってレーザ発振し、例えば第2光反射部11からレーザ光として出射する。半導体デバイス30では、第2光反射部11が主基板1のホールHに設けられているため、放熱性が向上し、信頼性が高まる。第2光反射部11が、ホールH内の中空部VDに接していてもよい。主基板1によって半導体デバイスとしての剛性が維持される。第2光反射部11が、主基板1の裏面にまで延伸していてもよい。
【0022】
第1電極E1の周囲端部と化合物半導体部9との間には、絶縁膜KFが設けられる。絶縁膜KFによって第1および第2電極E1・E2間の電流経路がアノード側で狭窄され、発光効率が高められる(後述)。
【0023】
ベース半導体部8は、n型の半導体(例えば、シリコンドープの窒化ガリウム)で構成することができる。ベース半導体部8は、開口部K上に位置する第1部分HDと、マスク部5上に位置する、貫通転位密度が5×106/cm2以下の第2部分(低欠陥部)SDとを含み、第2部分SDは平面視で化合物半導体部9と重なる。化合物半導体部9のうち、平面視で第2部分SDと重なる部分は低転位性(低欠陥性)を引き継ぐため、この部分における発光効率を高めることができる。
【0024】
実施例1では、第1および第2電極E1・E2はY方向に並ぶ。第1電極E1には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等を含む透明電極を用いることができ、第2電極E2には光反射電極を用いることができる。化合物半導体部9がGaN系半導体を含み、第1電極E1が酸化ガリウムを含んでいてもよい。
【0025】
半導体デバイス30は、第1電極E1の上面に接触する第1パッドP1と、第2電極E2の上面に接触する第2パッドP2とを含む。平面視において、第1パッドP1の少なくとも一部は、ホールHと重ならない。このため、第1パッドP1への押圧が化合物半導体部9およびベース半導体部8に与える影響が低減する。なお、
図7においては、化合物半導体部9上の各部材の位置を明確に示すため、後述する第1パッドP1および第2パッドP2の図示を省略している。
【0026】
平面視において、第2パッドP2の少なくとも一部は、ホールHと重ならない。このため、第2パッドP2への押圧(例えば、回路基板CBとの接合時の押圧)が化合物半導体部9およびベース半導体部8に与える影響が低減する。また、平面視において、第1パッドP1の少なくとも一部は、ホールHと重ならない。このため、第1パッドP1への押圧が化合物半導体部9およびベース半導体部8に与える影響が低減する。第1パッドP1は、第1光反射部10の上面に接していてもよい。第1パッドP1は第1光反射部10よりも熱伝導率が大きいため、放熱性が高まる。
【0027】
半導体デバイス30では、第1および第2パッドP1・P2の上面レベル(高さ位置)が一致し、かつ、第1および第2パッドP1・P2の上面が、第1光反射部10の上面よりもより上方に位置する。このため、回路基板CB(
図4参照)への実装が容易になる。
【0028】
第2電極E2の周囲端部と、ベース半導体部8との間には、絶縁膜DFを設けることができる。絶縁膜DFにより、第2電極E2と化合物半導体部9とが接触せず、電気的に分離される。第2電極E2が凹部EHを有し、凹部EHに絶縁体DHで埋められていてもよい。絶縁体DHによって第2パッドP2の上面を平坦化することができる。
【0029】
半導体デバイス30は、平面視でマスクパターン6の開口部Kと重なる第1隔壁部QFと、平面視でマスクパターン6のマスク部5と重なる第2隔壁部QSと、化合物半導体部9をY方向に分割する第3隔壁部QTとを含む。第1隔壁部QFおよび第2隔壁部QS並びに第3隔壁部QTが、光反射性を有していてもよい。第1隔壁部QFおよび第2隔壁部QSは、Y方向に延伸し、第3隔壁部QTは、X方向に延伸する。
【0030】
図8は、
図6に示す半導体デバイス30の部分拡大図である。
図8に示すように、化合物半導体部9は、下層側から順に、第1型半導体層としてのn型半導体層34と、活性層35と、第2型半導体層としてのp型半導体層36とを含む。活性層35は、例えばMQW(Multi-Quantum Well)構造であり、InGaN層およびGaN層を含んでいてもよい。n型半導体層34は、例えば、n-GaN層およびn-AlGaN層の少なくとも一方を含む。p型半導体層36は、例えば、p-GaN層およびp-AlGaN層の少なくとも一方を含む。アノードである第1電極E1は、p型半導体部36と接触するように配される。
【0031】
p型半導体層36上に形成される絶縁膜KFには、アパーチャー部AP(電流狭窄部)が形成され、アパーチャー部APにおいて露出したp型半導体層36と第1電極E1とが接触する。絶縁膜KFには、SiOx、SiNx、AlOx等を用いることができる。
【0032】
実施例1では、アパーチャー部APが、平面視において、第1光反射部10、化合物半導体部9、ベース半導体部8の第2部分SD(低欠陥部)、および第2光反射部11と重なる。すなわち、第1電極E1からベース半導体部8への電流経路(特に電流狭窄部)がベース半導体部8および化合物半導体部9の低欠陥部に形成される。したがって、活性層35の発光効率が高められる。第2光反射部11が形成されるホールHの底面の面積を、アパーチャー部APの面積よりも大きくしてもよい。
【0033】
なお、絶縁膜DFを設けることで、第2電極E2と化合物半導体部9とは直接接触せず、特に、第2電極E2とp型半導体部36とは直接接触しない。このため、第1電極E1からp型半導体部36に注入されたホールが、活性層35を経由せずに第2電極E2に移動するおそれが低減する。
【0034】
化合物半導体部9の一部をエッチング等で掘り込んでベース半導体部8を露出させ、ベース半導体部8と接するように第2電極E2を設けてもよいし、化合物半導体部9の一部をエッチング等で掘り込むことで、例えば化合物半導体部9内のn型半導体層34を露出させ、n型半導体層34と接するように第2電極E2を設けてもよい。
【0035】
第1光反射部10は、例えば、
図8に示すように、低屈折部31と高屈折部32とが交互に積み重ねられた反射鏡(例えば、Distributed Bragg Reflector)である。低屈折部31が第1屈折部であり、高屈折部32が、第1屈折部よりも光屈折率の大きな第2屈折部であってもよい。低屈折部31は、例えば、SiO
2等を含む。高屈折部32は、低屈折部31よりも高い屈折率を有する材料を含む層であり、例えば、Ta
2O
5、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、Al
2O
3、Nb
2O
5、ZnO、AlN、SiNまたはMgO等を含む。高屈折部32と低屈折部31との界面に臨界角以上の角度で入射した光は、この界面において全反射するため、第1光反射部10においては高い光反射率が実現される。第2光反射部11は、第1光反射部10と同様の構造(DBR)とすることができる。
【0036】
ここで、活性層35の発光波長に対し、第1光反射部10は略100%、例えば、99%程度の反射率を有していてもよく、第2光反射部11は、第1光反射部10よりも低い反射率、例えば、98%程度の反射率を有していてもよい。この場合、第1光反射部10と第2光反射部11との間を往復する光は、主基板1の開口KRからレーザ光として出射される。第1隔壁部QFおよび第2隔壁部QSが光反射性を有しているため、光の利用効率が高められる。
【0037】
なお、レーザ光が第2光反射部11側(ホールH)から出射する構成に限定されない。第1光反射部10側から出射する構成でもよいし、第1および第2光反射部10・11それぞれからレーザ光が出射する構成でもよい。
【0038】
(製造方法)
図9は、実施例1に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10は、実施例1に係る半導体デバイスの製造方法の一例を示す工程断面図である。
図9および
図10に示すように、半導体デバイスの製造方法では、テンプレート基板7を準備する工程の後に、ELO法を用いてベース半導体部8を形成する。次いで、化合物半導体部9を形成する工程を行い、その後、絶縁膜DF、第1および第2電極E1・E2を形成する工程を行う。その後、第1光反射部10を形成する工程を行い、その後、第1および第2パッドP1・P2を形成する工程を行う。その後、主基板1に対してその裏面1Uからエッチングを行い、ホールHを形成する工程を行う。その後、ホールHに第2光反射部11を形成する工程を行う。なお、マスクパターン6を用いてELO成膜を行った後、例えば、第1および第2電極E1・E2を形成する前に、マスク部5をウェットエッチング等によって除去しておいてもよい。
【0039】
(主基板)
主基板1には、GaN系半導体と異なる格子定数を有する異種基板を用いることができる。異種基板としては、単結晶のシリコン(Si)基板、サファイア(Al2O3)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板等を挙げることができる。主基板1の面方位は、例えば、シリコン基板の(111)面、サファイア基板の(0001)面、SiC基板の6H-SiC(0001)面である。これらは例示であって、ベース半導体部8をELO法で成長させることができる主基板および面方位であれば何でもよい。GaNバルク基板よりも熱伝導性に優れるという観点から、Si基板あるいはSiC基板を採用してもよい。
【0040】
(下地部)
下地部4として、主基板1側から順に、バッファ部(バッファ層)2およびシード部3を設けることができる。バッファ部2は、例えば、主基板1とシード部3とがダイレクトに接触して互いに溶融することを低減する機能を有する。例えば、主基板1にシリコン基板を用い、シード部3にGaN系半導体を用いた場合、両者(主基板とシード部)が溶融し合うため、例えば、AlN層およびSiC(炭化シリコン)層の少なくとも一方を含むバッファ部2を設けることで、溶融が低減される。バッファ部2の一例であるAlN層は、例えばMOCVD装置を用いて、厚さ10nm程度~5μm程度(例えば150nm)に形成することができる。バッファ部2が、シード部3の結晶性を高める効果、ベース半導体部8の内部応力を緩和する(半導体デバイス30の反りを緩和する)効果、および放熱性を高める効果の少なくとも1つを有していてもよい。シード部3と溶融し合わない主基板1を用いた場合には、バッファ部2を設けない構成も可能である。熱伝導性に優れるという観点から、シード部3あるいはバッファ部2にSiC層を採用してもよい。
図5のように、シード部3がマスク部5の全体と重なる構成に限定されない。シード部3はマスク6の開口部Kから露出すればよいため、シード部3を、マスク部5の少なくとも一部と重ならないように局所的に形成してもよい。
【0041】
バッファ部2(例えば、窒化アルミニウム)およびシード部3(例えば、GaN系半導体)の少なくとも一方をスパッタ装置(PSD:pulse sputter deposition,PLD: pulse laser depositionなど)を用いて成膜することもできる。
【0042】
(マスクパターン)
マスクパターン6の開口部Kは、シード部3を露出させ、ベース半導体部8の成長を開始させる成長開始用ホールの機能を有し、マスクパターン6のマスク部5は、ベース半導体部8を横方向成長させる選択成長用マスクの機能を有する。マスクパターン6は、ベース半導体部8の形成(ELO成膜)後に除去してもよい。開口部Kはマスク部5がない部分であって、開口部Kがマスク部5で囲まれていなくてもよい。
【0043】
マスク部5として、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)、窒化チタン膜(TiN等)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiON)、および高融点(例えば1000℃以上)をもつ金属膜のいずれか1つを含む単層膜、またはこれらの少なくとも2つを含む積層膜を用いることができる。
【0044】
例えば、下地部4上に、スパッタ法を用いて厚さ100nm程度~4μm程度(好ましくは150nm程度~2μm程度)のシリコン酸化膜を全面形成し、シリコン酸化膜の全面にレジストを塗布する。その後、フォトリソグラフィ法を用いてレジストをパターニングし、ストライプ状の複数の開口部を持ったレジストを形成する。その後、フッ酸(HF)、バッファードフッ酸(BHF)等のウェットエッチャントによってシリコン酸化膜の一部を除去して複数の開口部Kとし、レジストを有機洗浄で除去することでマスクパターン6が形成される。
【0045】
開口部Kは長手形状(スリット状)であり、ベース半導体部8のa軸方向(X方向)に周期的に配列される。開口部Kの幅は、0.1μm~20μm程度とすることができる。各開口部の幅が小さいほど、各開口部からベース半導体部8に伝搬する貫通転位の数は減少する。また、低欠陥部SDを大きくすることができる。
【0046】
シリコン酸化膜は、ベース半導体部8の成膜中に微量ながら分解、蒸発し、ベース半導体部8に取り込まれてしまうことがあるが、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜は、高温で分解、蒸発し難いというメリットがある。
【0047】
そこで、マスク部5を、シリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜の単層膜としてもよいし、下地部4上にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した積層膜としてもよいし、下地部4上にシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜をこの順に形成した積層体膜としてもよいし、下地部4上にシリコン窒化膜、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜をこの順に形成した積層膜としてもよい。
【0048】
マスク部5のピンホール等の異常個所は、成膜後に有機洗浄などを行い、再度成膜装置に導入して同種膜を形成することで、異常個所を消滅させることができる。一般的なシリコン酸化膜(単層)を用い、このような再成膜方法を用いて良質なマスクパターン6を形成することもできる。
【0049】
(テンプレート基板の具体例)
主基板1には、(111)面を有するシリコン基板を用い、下地部4のバッファ部2は、AlN層(例えば、30nm)とした。下地部4のシード部3は、第1層であるAl0.6Ga0.4N層(例えば、300nm)と、第2層であるGaN層(例えば、1~2μm)とがこの順に形成されたグレーデット層とした。
【0050】
マスク部5には、酸化シリコン膜(SiO2)と窒化シリコン膜(SiN)とをこの順に形成した積層体を用いた。酸化シリコン膜の厚みは例えば0.3μm、窒化シリコン膜の厚みは例えば70nmである。酸化シリコン膜および窒化シリコン膜それぞれの成膜には、プラズマ化学気相成長(CVD)法を用いた。
【0051】
(ベース半導体部)
実施例1では、ベース半導体部(ELO半導体層)8をGaN層とし、MOCVD装置を用いて前述のテンプレート基板7上に窒化ガリウム(GaN)のELO成膜を行った。ELO成膜条件の一例として、基板温度:1120℃、成長圧力:50kPa、TMG(トリメチルガリウム):22sccm、NH3:15slm、V/III=6000(III族原料の供給量に対する、V族原料の供給量の比)を採用することができる。
【0052】
この場合、開口部Kに露出したシード部3(例えばGaN層)上にベース半導体部8が選択成長(縦方向成長)し、引き続いてマスク部5上に横方向成長する。そして、マスク部5上においてその両側から横方向成長するベース半導体部8が会合する前にこれらの横成長を停止させた。
【0053】
マスク部5の幅Wmは50μm、開口部Kの幅は5μm、ベース半導体部8の横幅は53μm、低欠陥部SDの幅(X方向のサイズ)は24μm、ベース半導体部8の層厚は5μmであった。ベース半導体部8のアスペクト比は、53μm/5μm=10.6となり、非常に高いアスペクト比が実現された。
【0054】
実施例1におけるベース半導体部8の形成では、横方向成膜レートを高めている。横方向成膜レートを高める手法は、以下のとおりである。まず、開口部Kから露出したシード部3上に、Z方向(c軸方向)に成長する縦成長層を形成し、その後、X方向(a軸方向)に成長する横成長層を形成する。この際、縦成長層の厚みを、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下とすることで、横成長層の厚みを低く抑え、横方向成膜レートを高めることができる。
【0055】
図11は、ベース半導体部8の横方向成長の一例を示す断面図である。
図11に示すように、シード部3上に、イニシャル成長層SLを形成し、その後、イニシャル成長層SLからベース半導体部8を横方向成長させることができる。イニシャル成長層SLは、ベース半導体部8の横方向成長の起点となる。ELO成膜条件を適宜制御することによって、ベース半導体部8をZ方向(c軸方向)に成長させたり、X方向(a軸方向)に成長させたりする制御が可能である。
【0056】
ここでは、イニシャル成長層SLのエッジが、マスク部5の上面に乗りあがる直前(マスク部5の側面上端に接している段階)、またはマスク部5の上面に乗り上がった直後のタイミングでイニシャル成長層SLの成膜を止めてもよい(すなわち、このタイミングで、ELO成膜条件を、c軸方向成膜条件からa軸方向成膜条件に切り替えてもよい)。こうすれば、イニシャル成長層SLがマスク部5からわずかに突出している状態から横方向成膜を行なうため、ベース半導体部8の厚み方向への成長に材料が消費されることを低減し、ベース半導体部8を高速で横方向成長させることができる。イニシャル成長層SLは、例えば、2.0μm以上3.0μm以下の厚さに形成すればよい。
【0057】
実施例1では、マスク部5上においてその両側から横方向成長するベース半導体部8が会合する前にこれらの横成長を停止させているが、これに限定されない。マスク部5上においてその両側から横方向成長するベース半導体部8同士が会合した後に、これらの横成長を停止させてもよい(
図18参照)。この場合、会合部の転位(結晶欠陥)が多くなるため、半導体レーザ素子20のアパーチャー部APは、平面視で会合部と重ならないように構成する。
【0058】
ELO法を用いてベース半導体部8を形成する場合、主基板1および主基板1上のマスクパターン6を含むテンプレート基板7を用いてよい。テンプレート基板7が、マスク部5に対応する成長抑制領域(例えば、Z方向の結晶成長を抑制する領域)と、開口部Kに対応するシード領域とを有してよい。例えば、主基板1上に成長抑制領域およびシード領域を形成し、成長抑制領域およびシード領域上に、ELO法を用いてベース半導体部8を形成することもできる。
【0059】
(化合物半導体部および電極)
ベース半導体部8および化合物半導体部9は、同一装置(例えば、MOCVD装置)で連続形成してもよいし、ベース半導体部8形成後に一旦基板を装置から取り出し、ベース半導体部8の表面研磨等を行った後に化合物半導体部9を形成してもよい。この場合、ベース半導体部8上に、再成長の際のバッファとなるn型のGaN系半導体層(例えば、厚さ0.1μm程度~3μm程度)を形成した後に、化合物半導体部9を形成してもよい。化合物半導体部9の形成には、MOCVD装置のほか、スパッタ装置、リモートプラズマCVD装置(RPCVD)、PSD(Pulse Sputter Deposition)装置等を用いることができる。リモートプラズマCVD装置、PSD装置では、水素をキャリアガスとして用いないため、低抵抗のp型GaN系半導体部を形成することができる。
【0060】
活性層35のMQW構造は、例えば、InGaN/GaNの5~6周期の構造とすることができる。In組成は目的とする発光波長で異なり、青色(450nm付近)であれば15~20%程度のIn濃度、緑色(530nm付近)であれば30%程度のIn濃度とすることができる。必要に応じて、電子ブロッキング層(例えば、AlGaN層)を活性層35上に形成してもよい。また、低抵抗化のために、p型半導体層36の表面(10nm程度)をp型ハイドープ層としてもよい。
【0061】
図12は、実施例1の半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図8では、絶縁膜KFにアパーチャー部APを設けているが、これに限定されない。
図12のように、p型半導体層36に環状の高抵抗部HR(p型ドープ濃度が小さい領域)を設け、高抵抗部HRの内側をアパーチャー部AP(電流狭窄部)とする構成(高抵抗部HRがアパーチャー部APを取り囲む構成)でもよい。高抵抗部HRは、イオンインプランテーション等で、p型半導体層36の一部領域を高抵抗化させることで形成してもよい。
【0062】
第1電極E1は、光透過性を有する透明導電性材料によって形成されている。透明導電性材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(結晶性ITO,アモルファスITO,SnドープのIn2O3を含む)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)、IFO(FドープのIn2O3)、酸化錫(SnO2、SbドープのSnO2、FドープのSnO2を含む)、酸化亜鉛(ZnO,AIドープのZnO,BドープのZnOを含む)をあげることができる。
【0063】
第1電極E1は、Ga(ガリウム)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Nb(ニオブ)酸化物、Ni(ニッケル)酸化物の少なくとも1つを母層として含んでいてもよい。第1電極E1のアパーチャー径(p型半導体部に接触する、電流注入領域の径)は、例えば、2μm以上100μm以下とすることができる。
【0064】
第1電極E1と接触する第1パッドP1は、例えば、Au、Ag、Pd、Pt、Ni、Ti、V、W、Cr、Al、Cu、Zn、SnおよびInの少なくとも1つ含む、単層構造または複層構造であってもよい。複層構造については、例えば左側を下層側として、Ti層/Au層、Ti層/Al層、Ti層/Al層/Au層、Ti層/Pt層/Au層、Ni層/Au層、Ni層/Au層/Pt層、Ni層/Pt層、Pd層/Pt層、Ag層/Pd層等の構成を採用することができる。
【0065】
(個片化)
図13は、実施例1の半導体デバイスの別構成を示す平面図である。
図13に示すように、
図7の半導体デバイス30を個片化し、それぞれが1つの半導体レーザ素子20を含む複数の半導体デバイス30としてもよい。それぞれが複数の半導体レーザ素子20を含むように個片化してもよい。
【0066】
(変形例)
図14は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図14に示すように、半導体デバイス30は、主基板1の反対側に配され、第1および第2パッドP1・P2と電気的に接続する回路基板CBを備える。回路基板CBが半導体レーザ素子20を駆動する構成でもよい。
【0067】
なお、半導体デバイス30と回路基板CBを接合後に、主基板1の開口KRを形成してもよい。主基板1にSi基板を用いた場合、一般的なSi基板の厚みは、300μm程度から、2.0mm程度となる。厚いSi基板に貫通孔を形成することは容易でないため、Si基板の反対側に回路基板CBを接合した後に、Si基板(主基板1)をウェットエッチング、ドライエッチング、研磨、CMPなどの方法で薄板化し(例えば、厚み300μm以下)、その後に開口KRを有する貫通孔を形成してもよい。VCSEL等の半導体レーザ素子を作製する場合は、出射するレーザ光が主基板1の孔壁に遮られないように、ホールHの深さおよび開口KRのサイズを設定することができる。
【0068】
図15および
図16は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図15の半導体デバイス30では、ホールHが下地部4を貫通し、ホールHの底部がマスク部5に含まれる(接する)。こうすれば、下地部4への光の伝播を抑制することができる。
図16の半導体デバイス30では、ホールHが下地部4およびマスク部5を貫通する。こうすれば、下地部4およびマスク部5への光の伝播を抑制することができる。
【0069】
図16では、ホールHの底部をベース半導体部8内に形成することで、キャビティ長が短くなり、かつマスク部5および半導体界面での光散乱が低減するため、内部ロスαiが小さくなる。これにより、発光効率を向上させることができる。
【0070】
図17および
図18は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図17に示すように、第1隔壁部QFおよび第2隔壁部QSを設けない構成も可能である。
図5および
図17等では、ベース半導体部8および化合物半導体部9それぞれが複数形成されているが、これに限定されない。
図18のように、隣り合う開口部Kからマスク部5上に成長したベース半導体部8同士が会合し、一体化されている構成でもよい。
【0071】
図19は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図5および
図17等では、第1および第2電極E1・E2がY方向(ベース半導体部の<1-100>方向)に並んでいるが、これに限定されない。
図19に示すように、第1および第2電極E1・E2をX方向(ベース半導体部の<1-100>方向)に並べて形成することもできる。
【0072】
図20は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図20のように、ホールHに蛍光体EK(波長変換体)が配され、第2光反射部11は、蛍光体EKよりもホールHのボトム側に位置していてもよい。こうすれば、活性層35で生じる光とは異なる波長(例えば、可視光域)を有する光を、開口KRから出射させることができる。
【0073】
図21は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図21のように、第2光反射部11が主基板1の下面1U(ホールでない部分)に接する構成でもよい。こうすれば、プロセスを簡易化することができる。
【0074】
図22および
図23は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図22のように、下地部4が、全面的ではなく、開口部Kと重なるように局所的に設けられていてもよい。こうすれば、下地部4からの応力を低減することができる。この場合、
図23に示すように、マスクパターン6が主基板1表面(例えば、SiあるいはSiC)の加工によって得られる基板加工膜SK(例えば、シリコンあるいは炭化シリコンの熱酸化膜である酸化シリコン)であってもよい。
【0075】
図24および
図25は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図5等では下地部4を設けているがこれに限定されない。
図24のように、主基板1にGaN基板(バルク結晶)、6H-SiC基板(バルク結晶)等を用いることで、下地部4を設けることなく、主基板1上にベース半導体部8を成長させることができる。この場合も、
図25に示すように、ホールHのボトムをベース半導体部8の内部に形成することができる。
【0076】
図26は、実施例1に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図26に示すように、実施例1に係る半導体デバイスは、ベース半導体部8の形成後にマスク部5を除去することで、マスクパターン6をもたない構成とすることもできる。この場合、ベース半導体部8の下面は中空部TUに接する。なお、中空部TUに、成長選択マスクとは異なる透光性材料を配してもよい。例えば、シード部3あるいは主基板1とベース半導体部8との間に透光性材料が充填されている構成でもよい。
【0077】
〔実施例2〕
図27は、実施例2に係る半導体デバイスの、X方向に沿った断面図である。
図28は、実施例2に係る半導体デバイスの、Y方向に沿った断面図である。
図27および
図28に示すように、実施例2に係る半導体デバイス30は、シード部3と、シード部3よりも上方に位置し、マスク部5および開口部Kを含むマスクパターン6と、マスクパターン6よりも上方に位置するベース半導体部8と、ベース半導体部8よりも上方に位置する化合物半導体部9と、化合物半導体部9上に位置する絶縁膜KFと、第1電極E1および第2電極E2と、第1電極E1上に位置する第1光反射部10と、下地部4の下方に設けられ、平面視で第1光反射部10と重なる第2光反射部11とを備える。主基板1とシード部3との間にバッファ部2が設けられ、下地部4はバッファ部2およびシード部3を含む。バッファ部2がバッファ層であってもよく、シード部3がシード層であってもよい。バッファ部2が、主基板1とシード部3との接触による溶融現象を抑制する機能を有していてもよい。バッファ部2を設けずに、下地部4をシード部3で構成することもできる。シード部3が、全面的ではなく、開口部Kと重なるように局所的に(例えば、Y方向に伸びる畝状に)設けてもよい。
【0078】
第1電極E1は、化合物半導体部9上に設けられるアノードである。化合物半導体部9はベース半導体部8上に設けられるが、ベース半導体部8の一部の上方には化合物半導体部9が形成されておらず、このベース半導体部8の一部と接するように、カソードである第2電極E2が設けられる。第1電極E1は光透過性を有する。
【0079】
半導体デバイス30では、ベース半導体部8、化合物半導体部9、絶縁膜KF、第1および第2電極E1・E2、並びに第1および第2光反射部10・11を含む、面発光型の半導体レーザ素子20(VCSEL:vertical cavity surface emitting laser element
)が1つ以上構成される。具体的には、第1および第2電極E1・E2間の電流によって化合物半導体部9で発生した光は、第1および第2光反射部10・11間における誘導放出および帰還作用によってレーザ発振し、例えば第2光反射部11からレーザ光として出射する。半導体デバイス30では、第2光反射部11が下方の外部空間GKと接しているため、放熱性が向上し、信頼性が高まる。
【0080】
第1電極E1の周囲端部と化合物半導体部9との間には、絶縁膜KFが設けられる。絶縁膜KFによって第1および第2電極E1・E2間の電流経路がアノード側で狭窄され、発光効率が高められる。
【0081】
ベース半導体部8は、n型の半導体(例えば、シリコンドープの窒化ガリウム)で構成することができる。ベース半導体部8は、開口部K上に位置する第1部分HDと、マスク部5上に位置する、貫通転位密度が5×106/cm2以下の第2部分(低欠陥部)SDとを含み、第2部分SDは平面視で化合物半導体部9と重なる。化合物半導体部9のうち、平面視で第2部分SDと重なる部分は低転位性(低欠陥性)を引き継ぐため、この部分における発光効率を高めることができる。
【0082】
図29は、
図27の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図29の半導体デバイスの製造方法では、テンプレート基板7を準備する工程の後に、ELO法を用いてベース半導体部8を形成する。次いで、化合物半導体部9を形成する工程を行い、その後、絶縁膜DF(電流狭窄層)、第1および第2電極E1・E2を形成する工程を行う。その後、第1光反射部10を形成する工程を行い、その後、第1および第2パッドP1・P2を形成する工程を行う。その後、ウェットエッチングあるいはドライエッチング、研磨、CMP(Chemical machinery polish)等によって主基板1を除去する工程と、マスクパターン6を基準として第1光反射部10が位置する側の反対側に(下地部4上に)第2光反射部11を形成する工程とを行う。主基板1を除去する前に、回路基板CBに接合しておいてもよい。このようにすることで、薄膜化した半導体デバイス30の機械的強度を保持することができる。
【0083】
図30は、実施例2に係る半導体デバイスの別構成を示す断面図である。
図30に示すように、半導体デバイス30は、化合物半導体部9よりも上方に位置する支持基板SKを備える。支持基板SKは、マスクパターン6を基準として第1光反射部11が位置する側の反対側に配され、第1および第2パッドP1・P2と電気的に接続する。支持基板SKが半導体レーザ素子20を駆動する回路基板であってもよい。
【0084】
図31は、
図30の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図32は、
図30の半導体デバイスの製造方法の一例を示す工程断面図である。
図30の半導体デバイスの製造方法では、テンプレート基板7を準備する工程の後に、ELO法を用いてベース半導体部8を形成する。次いで、化合物半導体部9を形成する工程を行い、その後、絶縁膜DF(電流狭窄層)、第1および第2電極E1・E2を形成する工程と、第1光反射部10を形成する工程と、第1および第2パッドP1・P2を形成する工程とを行う。その後、第1および第2パッドP1・P2に支持基板SKを接合し、ベース半導体部8および化合物半導体部9等を支持基板SKに保持させる工程と、ウェットエッチングあるいはドライエッチングによって主基板1を除去する工程と、マスクパターン6を基準として支持基板SKが位置する側の反対側に(下地部4上に)第2光反射部11を形成する工程とを行う。
【0085】
〔実施例3〕
実施例1~2のベース半導体部8をGaNで構成してもよいが、これに限定されない。ベース半導体部8を、GaN系半導体であるInGaNで構成してもよい。InGaNの横方向成膜は、例えば1000℃を下回るような低温で行う。高温ではインジウムの蒸気圧が高くなり、膜中に有効に取り込まれないためである。成膜温度が低温になることで、マスク部5とベース半導体部8との相互反応が低減される効果がある。また、InGaNは、GaNよりもマスク部5(シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等)との反応性が低いという効果もある。ベース半導体部8にインジウムがIn組成レベル1%以上で取り込まれるようになると、マスク部5との反応性がさらに低下するため、望ましい。ガリウム原料ガスとしては、トリエチルガリウム(TEG)が用いられてよい。
【0086】
〔実施例4〕
図33は、実施例4に係る電子機器の構成を示す模式図である。
図33の電子機器40は、実施例1~3の半導体デバイス30と、半導体デバイス30を制御するプロセッサを含む制御部80とを備える。電子機器40としては、通信装置、光学装置、表示装置、照明装置、センサ装置、情報処理装置、医療機器、電気自動車(EV)等を挙げることができる。
【0087】
〔付記事項〕
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0088】
1 主基板
2 バッファ部
3 シード部
4 下地部
5 マスク部
6 マスクパターン
8 ベース半導体部
9 化合物半導体部
10 第1光反射部
11 第2光反射部
15 半導体基板
20 半導体レーザ素子
30 半導体デバイス
K 開口部
E1 第1電極
E2 第2電極
H ホール
CB 回路基板
SK 支持基板