(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/20 20060101AFI20250313BHJP
C07D 231/52 20060101ALI20250313BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20250313BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20250313BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20250313BHJP
C07D 413/04 20060101ALI20250313BHJP
C07D 417/04 20060101ALI20250313BHJP
A01N 43/56 20060101ALN20250313BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/415 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/4155 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/427 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/454 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/5377 20060101ALN20250313BHJP
A61K 31/5415 20060101ALN20250313BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20250313BHJP
【FI】
C07D231/20 Z CSP
C07D231/52
C07D401/04
C07D403/04
C07D405/12
C07D413/04
C07D417/04
A01N43/56 Z
A01P3/00
A61K31/415
A61K31/4155
A61K31/427
A61K31/454
A61K31/5377
A61K31/5415
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023554653
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2022038421
(87)【国際公開番号】W WO2023068200
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021171113
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/079457(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016372(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/050160(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/095577(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 231/20
A61K 31/415
A61K 31/4155
A61K 31/427
A61K 31/454
A61K 31/5377
A61K 31/5415
A61P 43/00
C07D 231/52
C07D 401/04
C07D 403/04
C07D 405/12
C07D 413/04
C07D 417/04
A01N 43/56
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
前記複素環が、脂環式複素環基、環原子数が5つの芳香族複素環基、あるいは、ヘテロ原子の環原子数が1個、2個、3個、または4個であって複環構造を有する芳香族複素環基であり、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子
、炭素数1~10の炭化水素基、複素環基、または含酸素置換基を表す)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化2】
(上記一般式(2)~(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化3】
(上記一般式(1)~(3)および(5)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子
、炭素数1~10の炭化水素基、複素環基、または含酸素置換基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化4】
(上記一般式(3)、(4)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化5】
(上記一般式(1)、(3)、(5)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子
、炭素数1~10の炭化水素基、、複素環基、または含酸素置換基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピラゾール化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピラゾール環の3位に含窒素置換基を有し、5位にメトキシ基を有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。具体的には、3-ヘテロアリールアミノ-5-メトキシ-ピラゾール構造を有する化合物について、非特許文献1ではヤヌスキナーゼjak2およびjak3の阻害活性を有することが報告され、非特許文献2ではトロポミオシン受容体キナーゼAの阻害活性を有することが報告されている。また、ピラゾール環の3位に含窒素置換基を有し、4位にトリフルオロメチル基を有し、5位に水酸基を有する化合物の製法が特許文献1に報告されていた。
【0003】
上記のような観点から、活性のさらなる向上を期待して、ピラゾール環の3位にハロゲン原子、含酸素置換基、または含窒素置換基を有し、4位にトリフルオロメチル基を有し、5位に含酸素置換基を有する化合物の開発に興味が持たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2013年、23巻、3105~3110頁
【文献】ACS Medicinal Chemistry Letters,2012年、3巻、705~709頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピラゾール環の3位にハロゲン原子、含酸素置換基、または含窒素置換基、5位に含酸素置換基を有する化合物に対して、4位にトリフルオロメチル基を導入する反応例は未だ報告されていない。これは、トリフルオロメチル基の導入工程において、基質の反応性や反応の選択性の制御が問題となるためである。一方、特許文献1に報告されている、ピラゾール環の3位に含窒素置換基を有し、4位にトリフルオロメチル基を有し、5位に水酸基を有する化合物に対して、メチル化剤を反応させることで、5位上の置換基をメトキシ基へと変換することが考えられる。このような反応では、ピラゾール環の1位または2位に対してもメチル基が導入されることが予想され、選択率といった、反応効率の点で更なる向上の余地があった。
【0007】
そこで、本発明者は、特定の原料を反応させることにより、ピラゾール環の3位にハロゲン原子、含酸素置換基、または含窒素置換基、4位にトリフルオロメチル基、5位に含酸素置換基を有するピラゾール化合物を合成できることを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、3位にハロゲン原子、含酸素置換基、または含窒素置換基、4位にトリフルオロメチル基、5位に含酸素置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す)
[2]下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化2】
(上記一般式(2)~(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[3]下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化3】
(上記一般式(1)~(3)および(5)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[4]下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化4】
(上記一般式(3)、(4)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[5]下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程、
【化5】
(上記一般式(1)、(3)、(5)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
3位にハロゲン原子、含酸素置換基、または含窒素置換基、4位にトリフルオロメチル基、5位に含酸素置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(含フッ素ピラゾール化合物)
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は下記一般式(1)で表される。
【化6】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す)
【0011】
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は、ピラゾール環の3位、4位、および5位上に特定の置換基(-X、-CF3、-OR)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、ホルモンや酵素の阻害活性、殺菌活性、殺虫活性、除草活性)を期待できる。特に、殺菌活性としては、人体、イネ等の農作物に有害な作用を及ぼす菌の殺菌活性を挙げることができる。また、ピラゾール環の3位および5位上の置換基は異なる基(-Xと-OR)であるため、これらの基が脱離または反応して非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待することができる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-Xを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野においても有用である。
【0012】
Rは炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、分岐した鎖状炭化水素基であっても、分岐していない鎖状炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は合計の炭素数が5~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0013】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0014】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0015】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0016】
好ましくはRは、炭素数1~10のアルキル基であるのがよい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピラゾール化合物の原料である一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(6)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0017】
基Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA1、または-NA1A2を表し、A1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。基Xがハロゲン原子である場合、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)を挙げることができるが、フッ素原子が好ましい。基Xが複素環基である場合、該複素環基は環原子として窒素、酸素、または窒素および酸素の両方を含む。また、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子の環原子数は1個以上であれば特に限定されず、1個であっても2個以上であってもよく、例えば、該ヘテロ原子の環原子数として1個、2個、3個、または4個を挙げることができる。基Xである複素環基を構成する環原子数は特に限定されず、環原子数は3~14であることが好ましく、4~10がより好ましく、5~6が更に好ましい。基Xである複素環基は単環構造であっても複環構造であってもよく、また、芳香族複素環基であっても脂環式複素環基であってもよい。基Xである複素環基はさらに環原子に結合した置換基を有していても有していなくてもよく、ヘテロ原子の数・種類、環の大きさ、環原子数、置換基の数・種類・有無等により、含フッ素ピラゾール化合物に所望の特性を付与することができる。
【0018】
より具体的には、基Xである複素環基として、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンズイミダゾリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、カルバゾリル基、キサンテニル基、フェナントリジニル基、フェノキサジニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、アゾナニル基、チアゾリル基、フェノチアジニル基等を挙げることができる。基Xである複素環基中の環原子にはさらに置換基が結合していても、置換基が結合していなくてもよい。環原子に結合する置換基としては例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、含酸素置換基、含窒素置換基、含硫黄置換基を挙げることができる。
【0019】
基Xである-OA1に含まれるA1は水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。また、基Xである-NA1A2に含まれるA1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。A1、A2が炭素数1~10の有機基を表す場合、A1、A2は炭素原子、水素原子以外の原子を有していてもよく、A1、A2としては例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基、複素環基、含酸素置換基とすることができ、炭素数が1~10の炭化水素基としては芳香族炭化水素基、アルキル基等を挙げることができる。より具体的には、A1、A2としてはオキサニル基、置換基を有するまたは置換基を有さないフェニル基、置換基を有するまたは置換基を有さないフェニルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、チアゾリル基等を挙げることができる。
【0020】
一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物としては具体的に以下の化合物を挙げることができる。
【化7】
【0021】
(含フッ素ピラゾール化合物の製造方法)
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する。
【化8】
(上記一般式(2)~(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表す)
好ましくは、上記(a)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。上記一般式(2)および(4)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0022】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化9】
【0023】
上記反応式(A)において、一般式(3)の化合物は塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)がカチオン化され(-NH3
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0024】
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では上記(A)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(4)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(a)の反応では、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来するF、CF3、および-ORが位置する。
【0025】
上記(a)の反応はハロゲン化水素捕捉剤の存在下で行わせることが好ましい。ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタン、ホスファゼン塩基といった有機窒素誘導体を用いることができる。
【0026】
上記(a)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~80℃がより好ましく、10~40℃がさらに好ましい。上記(a)の反応時の反応時間は、1~36時間が好ましく、2~24時間がより好ましく、4~18時間がさらに好ましい。
【0027】
上記(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0028】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(b)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する。
【化10】
(上記一般式(1)~(3)および(5)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す)
好ましくは、上記(b)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩および上記一般式(5)で表される化合物とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、上記工程(a)で使用するフッ化物イオン捕捉剤と同様のフッ化物イオン捕捉剤を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。上記一般式(1)および(2)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0029】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)および(5)で表される化合物との、上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化11】
【0030】
上記反応式(B)において、一般式(3)の化合物は塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)がカチオン化され(-NH3
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0031】
基Xがハロゲン原子である場合、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)を挙げることができるが、フッ素原子が好ましい。基Xが複素環基である場合、該複素環基は環原子として窒素、酸素、または窒素および酸素の両方を含む。また、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子の環原子数は1個以上であれば特に限定されず、1個であっても、2個以上であってもよく、例えば、該ヘテロ原子の環原子数として1個、2個、3個、または4個を挙げることができる。基Xである複素環基を構成する環原子数は特に限定されず、環原子数は3~14であることが好ましく、4~10がより好ましく、5~6が更に好ましい。基Xである複素環基は単環構造であっても複環構造であってもよく、また、芳香族複素環基であっても脂環式複素環基であってもよい。基Xである-OA1に含まれるA1は水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。また、基Xである-NA1A2に含まれるA1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。A1、A2が炭素数1~10の有機基を表す場合、A1、A2は炭素原子、水素原子以外の原子を有していてもよく、A1、A2としては例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基、複素環基、含酸素置換基とすることができ、炭素数が1~10の炭化水素基としては芳香族炭化水素基、アルキル基等を挙げることができる。
【0032】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では上記(B)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(b)の反応では、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、一般式(5)で表される化合物に由来するX、フルオロイソブチレン誘導体に由来するCF3、および-ORが位置する。
【0033】
上記(b)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~80℃がより好ましく、10~40℃がさらに好ましい。上記(b)の反応時の反応時間は、1~36時間が好ましく、2~24時間がより好ましく、4~18時間がさらに好ましい。上記(b)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤および溶媒を使用できる。
【0034】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(c)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する。
【化12】
(上記一般式(3)、(4)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
好ましくは、上記(c)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(4)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。上記工程(c)の一般式(4)および(6)の化合物におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0035】
一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(c)の反応は、下記反応式(C)として表される。
【化13】
【0036】
上記反応式(C)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)がカチオン化され(-NH3
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0037】
Yであるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができる。Yである-OA3、-SOmA3(mは0~3の整数である)に含まれるA3は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Yである-NA3A4に含まれるA3、A4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A3、A4が炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0038】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では上記(C)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(4)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(c)の反応では、一般式(6)のフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来するF、CF3、および-ORが位置する。
【0039】
上記(c)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~80℃がより好ましく、10~40℃がさらに好ましい。上記(c)の反応時の反応時間は、1~36時間が好ましく、2~24時間がより好ましく、4~18時間がさらに好ましい。上記(c)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤および溶媒を使用できる。
【0040】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(d)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物もしくはその塩および下記一般式(5)で表される化合物と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する。
【化14】
(上記一般式(1)、(3)、(5)および(6)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を環原子として含む複素環基、-OA
1、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表し、
Yは、ハロゲン原子、-OA
3、-SO
mA
3(mは0~3の整数である)、または-NA
3A
4を表し、
A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)
好ましくは、上記(d)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩および上記一般式(5)で表される化合物とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては上記(c)で用いたフッ化物イオン捕捉剤と同様のフッ化物イオン捕捉剤を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。上記工程(d)の一般式(1)および(6)の化合物におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。
【0041】
一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)および(5)で表される化合物との、上記(d)の反応は、下記反応式(D)として表される。
【化15】
【0042】
上記反応式(D)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)がカチオン化され(-NH3
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0043】
基Xがハロゲン原子である場合、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)を挙げることができるが、フッ素原子が好ましい。基Xが複素環基である場合、該複素環基は環原子として窒素、酸素、または窒素および酸素の両方を含む。また、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子の環原子数は1個以上であれば特に限定されず、1個であっても、2個以上であってもよく、例えば、該ヘテロ原子の環原子数として1個、2個、3個、または4個を挙げることができる。基Xである複素環基を構成する環原子数は特に限定されず、環原子数は3~14であることが好ましく、4~10がより好ましく、5~6が更に好ましい。基Xである複素環基は単環構造であっても複環構造であってもよく、また、芳香族複素環基であっても脂環式複素環基であってもよい。基Xである-OA1に含まれるA1は水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。また、基Xである-NA1A2に含まれるA1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の有機基を表す。A1、A2が炭素数1~10の有機基を表す場合、A1、A2は炭素原子、水素原子以外の原子を有していてもよく、A1、A2としては例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基、複素環基、含酸素置換基とすることができ、炭素数が1~10の炭化水素基としては芳香族炭化水素基、アルキル基等を挙げることができる。
【0044】
Yであるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができる。Yである-OA3、-SOmA3(mは0~3の整数である)に含まれるA3は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Yである-NA3A4に含まれるA3、A4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A3、A4が炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0045】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では上記(D)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(d)の反応では、一般式(6)のフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、一般式(5)で表される化合物に由来するX、フルオロイソブタン誘導体に由来するCF3、および-ORが位置する。
【0046】
上記(d)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~80℃がより好ましく、10~40℃がさらに好ましい。上記(d)の反応時の反応時間は、1~36時間が好ましく、2~24時間がより好ましく、4~18時間がさらに好ましい。上記(d)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用できる。
【0047】
上記(d)の反応では、上記(c)の反応と同様の溶媒および触媒を使用することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
5-メトキシ-3-(4-モルホリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、MeOH 30gにヒドラジン二塩酸塩 2.0g(19mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン 4.0g(19mmol)を加えて溶液1を得た。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 5.4g(42mmol)をMeOH 15gに溶かした溶液2を、溶液1に滴下し、得られた混合溶液を室温まで昇温した。約16時間後、氷水冷し、モルホリン 9.1g(105mmol)をMeOH 20gに溶かした溶液3を、該混合溶液に滴下し、室温まで昇温した。約8時間後、反応混合物をヘキサン-酢酸エチル=7:3混合溶媒を用いたシリカゲルカラム精製により、下記式(E)で表される5-メトキシ-3-(4-モルホリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを1.2g、単離した。5-メトキシ-3-(4-モルホリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は25%であった。
【化16】
【0051】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):251([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:3.91(s,3H)、3.81(dd,4H)、3.14(dd,4H)
【0052】
(実施例2)
3-フルオロ-5-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF 30gにヒドラジン二塩酸塩 2.0g(19mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン 4.0g(19mmol)を加えて溶液1を得た。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 14g(105mmol)をTHF 30gに溶かした溶液2を、溶液1に滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、反応混合物をヘキサン-酢酸エチル=7:3混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(F)で表される3-フルオロ-5-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールを70mg、単離した。3-フルオロ-5-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は2%であった。
【化17】
【0053】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):184([M]+)
【0054】
(実施例3)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、5-メトキシ-3-(4-モルホリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、MeOH 30gにヒドラジン二塩酸塩 2.0g(19mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン 4.4g(19mmol)を加えて溶液1を得た。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 8.1g(63mmol)をMeOH 20gに溶かした溶液2を、溶液1に滴下し、得られた混合溶液を室温まで昇温した。約16時間後、氷水冷し、モルホリン 9.1g(105mmol)をMeOH 20gに溶かした溶液3を、該混合溶液に滴下し、室温まで昇温した。約8時間後、反応混合物をヘキサン-酢酸エチル=7:3混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して5-メトキシ-3-(4-モルホリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを単離した。得られた目的物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0055】
(実施例4)
5-メトキシ-3-(1-ピラゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、MeOH 30gにヒドラジン二塩酸塩 2.0g(19mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン 4.0g(19mmol)を加えて溶液1を得た。続いて、内温が10℃を越えないようにトリエチルアミン 3.8g(38mmol)をMeOH 15gに溶かした溶液2を、溶液1に滴下し、得られた混合溶液を室温まで昇温した。約16時間後、氷水冷し、ピラゾール 1.3g(19mmol)とトリエチルアミン 8.5g(84mmol)をMeOH 30gに溶かした溶液3を、該混合溶液に滴下し、室温まで昇温した。約8時間後、反応混合物をヘキサン-酢酸エチル=7:3混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(G)で表される5-メトキシ-3-(1-ピラゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを0.2g、単離した。5-メトキシ-3-(1-ピラゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は5%であった。
【化18】
【0056】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):232([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:7.90(d,1H)、7.78(d,1H)、6.52(dd,1H)、4.03(s,3H)
【0057】
(実施例5)
1-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)アゾナンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却した後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.6mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないようにオクタメチレンイミン3.1g(24.0mmol)を加えて室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(H)で表される1-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)アゾナンを0.6g(1.9mmol)単離した。1-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)アゾナンの単離収率は41%であった。
【化19】
【0058】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):292.6([M+H]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:3.90(s,3H),3.25-3.32(m,4H),1.62-1.72(m,8H),1.49-1.59(m,4H)
【0059】
(実施例6)
3-メトキシ-N-(オキサン-4-イル)-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却した後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.7mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないように4-アミノテトラヒドロピラン塩酸塩0.7g(4.8mmol)とトリエチルアミン2.4g(23.9mmol)を加え室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(I)で表される3-メトキシ-N-(オキサン-4-イル)-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンを0.1g(0.5mmol)単離した。3-メトキシ-N-(オキサン-4-イル)-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの単離収率は10%であった。
【化20】
【0060】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):266.5([M+H]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:4.11-4.16(m,1H),4.00(ddd,J=11.9,3.7,3.3Hz,2H),3.90(s,3H),3.47(ddd,J=11.9,11.3,2.1Hz,2H),3.28-3.39(m,1H),1.95-2.02(m,2H),1.51-1.62(m,2H)
【0061】
(実施例7)
N,N-ビス[(2,4-ジメトキシフェニル)メチル]-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却した後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.6mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないようにビス(2,4-ジメトキシベンジル)アミン1.5g(4.8mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.1mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(J)で表されるN,N-ビス[(2,4-ジメトキシフェニル)メチル]-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンを0.3g(0.6mmol)単離した。N,N-ビス[(2,4-ジメトキシフェニル)メチル]-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの単離収率は13%であった。
【化21】
【0062】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):483.0([M+H]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:9.19(br,1H),7.15(d,J=8.3Hz,2H),6.42-6.48(m,4H),4.24(s,3H),3.87(s,3H),3.80(s,1H)
【0063】
(実施例8)
3-メトキシ-N-(4-メトキシフェニル)-N-メチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却した後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.8mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないようにN-メチル-p-アニシジン0.7g(4.8mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.3mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(K)で表される3-メトキシ-N-(4-メトキシフェニル)-N-メチル-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの混合物0.1gを得た。
【化22】
【0064】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):302.6([M+H]+)
【0065】
(実施例9)
3-メトキシ-5-(4-メトキシピペリジン-1-イル)-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾールの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.7mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を17時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないように4-メトキシピペリジン0.6g(4.8mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.2mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(L)で表される3-メトキシ-5-(4-メトキシピペリジン-1-イル)-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾールの混合物0.2gを得た。
【化23】
【0066】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):280.8([M+H]+)
19F-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:-55.85(s,3F)
【0067】
(実施例10)
N,N-ビス(2-エトキシエチル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.6mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないようにビス(2-エトキシエチル)アミン0.8g(4.9mmol)とトリエチルアミン2.0g(19.4mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(M)で表されるN,N-ビス(2-エトキシエチル)-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-アミンの混合物0.1gを得た。
【化24】
【0068】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):327.0([M+H]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:10.38(br,1H),3.90(s,1H),3.61(t,J=4.7Hz,4H),3.53(q,J=7.0Hz,4H),3.46(t,J=4.9Hz,4H),1.23(t,J=7.0Hz,6H)
【0069】
(実施例11)
4-[ブチル(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]-1-ブタノールの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.7mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないように4-(ブチルアミノ)-1-ブタノール0.7g(5.0mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.2mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(N)で表される4-[ブチル(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]-1-ブタノールの混合物0.1gを得た。
【化25】
【0070】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):311.0([M+H]+)
19F-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:-54.59(s,3F)
【0071】
(実施例12)
N-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)-N-メチル-2-チアゾールアミンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.5mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を17時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないようにN-メチル-2-チアゾールアミン0.5g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.2mmol)を加え、還流するまで昇温した。次いで、溶液を8時間攪拌後、室温まで空冷し、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(O)で表されるN-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)-N-メチル-2-チアゾールアミンの混合物0.03gを得た。
【化26】
【0072】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):279.8([M+H]+)
【0073】
(実施例13)
2-(エチルチオ)-10-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)-10H-フェノチアジンの製造
ヒドラジン二塩酸塩0.5g(4.8mmol)をメタノール13mlに溶解させ、0℃に冷却後、室温を超えないように1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン1.0g(4.7mmol)とトリエチルアミン1.0g(9.6mmol)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液を16時間攪拌後、0℃に冷却し、室温を超えないように2-エチルチオフェノチアジン1.2g(4.8mmol)とトリエチルアミン1.9g(19.1mmol)を加え、室温まで昇温した。次いで、溶液を25時間攪拌後、得られた反応混合物をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製して、下記式(P)で表される2-(エチルチオ)-10-(3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-5-イル)-10H-フェノチアジンの混合物0.02gを得た。
【化27】
【0074】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(EI、m/z):423.1([M]+)
【0075】
イネいもち病に対する評価試験(500ppm)
実施例2、9で作製した含フッ素ピラゾール化合物をそれぞれ、50,000ppmとなるようにDMSO(ジメチルスルホキシド)中に溶解させて、DMSO溶液を得た。3mLの溶解したPDA培地に、実施例2または9で作製した含フッ素ピラゾールを含むDMSO溶液およびDMSOをそれぞれ30μL添加してピペットで撹拌し、6穴プレートのウェルに入れて固化させた(実施例2、9で作製した含フッ素ピラゾール化合物について、それぞれ3つのウェルに入れた)。PDA培地で生育させた、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae, MAFF101511)を直径0.4cmの生研パンチで培地ごと切り抜き、これらを実施例2または9の含フッ素ピラゾール化合物を含む6穴プレートのPDA培地の中央に置床し、27℃で生育させた。3日後に菌糸の直径を測定した。
また、別途、実施例2および9の含フッ素ピラゾール化合物で処理しなかった以外は上記と同様に、DMSOを添加した3つのPDA培地上でイネいもち病菌を生育させて3日後の菌糸の直径を測定した。このようにして得られた3つの菌糸伸長の平均値を「無処理の菌糸伸長の長さ平均」とした。
菌糸伸長の阻害率(%)を次のように算出した。
阻害率={(無処理の菌糸伸長の長さ平均-実施例2または9で作製した含フッ素ピラゾール化合物で処理済みの菌糸伸長の長さ平均)/無処理の菌糸伸長の長さ平均}×100
【0076】
【0077】
実施例2または9で作製した含フッ素ピラゾール化合物による阻害率を上記表1に示す。上記表1に示すように、実施例2および9の含フッ素ピラゾール化合物を用いた場合には高い阻害率を示し、これらの含フッ素ピラゾール化合物はイネいもち病に対する優れた殺菌活性を有すると言える。