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  • 特許-デファレンシャル用クラッチ装置 図1
  • 特許-デファレンシャル用クラッチ装置 図2
  • 特許-デファレンシャル用クラッチ装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】デファレンシャル用クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/34 20120101AFI20250313BHJP
【FI】
F16H48/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023570620
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048941
(87)【国際公開番号】W WO2023127147
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小松 寿明
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238783(JP,A)
【文献】特開2010-78137(JP,A)
【文献】特開2009-228840(JP,A)
【文献】特開2007-92990(JP,A)
【文献】特開2010-133518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアにベアリングを介して支持されて軸の周りに回転するケースから一対のサイドギアへ差動的にトルクを分配するデファレンシャルギア組に利用されるクラッチ装置であって、
前記ケースと共に回転するべく前記ケースに嵌合し、前記デファレンシャルギア組から離脱した脱連結位置と前記デファレンシャルギア組の何れかを前記ケースに駆動的に連結させる連結位置との間で軸方向に移動可能なクラッチ部材と、
磁束を生ずる電磁コイルと、前記磁束を導くべく前記電磁コイルを囲むコアと、前記磁束を受容して軸方向に推力を発生するべく前記コアに接して軸方向に摺動可能に嵌合したプランジャと、を備えたアクチュエータであって、前記コアは前記ケースに摺動可能に接し前記ベアリングの軸方向に内側の端より軸方向に外方に突出し、前記プランジャは前記ベアリングと前記クラッチ部材との間に位置して前記クラッチ部材に当接して前記推力を前記クラッチ部材へ伝える、アクチュエータと、
前記コアに固定され、前記キャリアに係合して前記コアを回り止めするべく前記キャリアに向けて延長された回り止め部材と、
前記ベアリングより軸方向に外方において前記コアから径方向に内方に延長され、前記プランジャを軸方向に抜け止めするバンプと、
を備えたクラッチ装置であって、
前記プランジャが前記ベアリングに接しても前記プランジャは前記バンプから離れているように前記バンプは寸法づけられている、クラッチ装置
【請求項2】
前記コアは前記ベアリングおよび前記キャリアに接しないように寸法づけられている、請求項1のクラッチ装置。
【請求項3】
前記バンプは、前記コアから、または前記回り止め部材から径方向に延長された突起である、請求項のクラッチ装置。
【請求項4】
前記コアは径方向に開いたギャップを有し、前記プランジャは前記ギャップに面して前記コアに嵌合し、以って前記プランジャは前記ギャップを跳躍する前記磁束を受容して前記推力を発生する、請求項1のクラッチ装置。
【請求項5】
前記クラッチ部材は前記デファレンシャルギア組に向いた面にクラッチ歯を備える、請求項1のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、デファレンシャルに組み込まれてその機能を制御するためのクラッチ装置に関し、特に、ベアリングに対して十分な余裕がなくても組み込むことができ、しかもアクチュエータは十分な推力を発揮することができるデファレンシャル用クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デファレンシャルは一対の出力軸へ、典型的には車軸へ、差動を許容しながらトルクを出力する目的で、車両に利用される。デファレンシャルがコンパクトであることは車体の設計の自由度を高め、また車両の重量を軽減するなど、様々な利益をもたらす。
【0003】
デファレンシャルには、差動をロックする機能を有するもの(例えばロックアップデファレンシャルなどと呼ばれる)や、出力軸を動力源から切り離す機能を有するもの(例えばフリーランニングデファレンシャルなどと呼ばれる)がある。これらの機能を制御するべく、通常、デファレンシャルにはクラッチ装置が組みこまれる。クラッチ装置を伴いながらその全体をコンパクトにすること、特に軸方向にコンパクトにすることには、一定の技術的な困難性がある。
【0004】
特許文献1は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際特許出願公開WO2021/192046A1
【発明の概要】
【0006】
軸方向の寸法に限れば、クラッチを駆動するアクチュエータをデファレンシャルから離れた外部に配置し、アクチュエータとクラッチとを適宜の仲介部材で連結すれば、装置を小型化することができる。しかし、かかる構造はもちろん装置全体の寸法の増大を免れない。アクチュエータを小型化してデファレンシャルに隣り合わせることが穏当な解決策だが、アクチュエータの小型化には限界があるし、また発生する推力を必然的に限定してしまう。推力が不足すればクラッチの連結を保持するのに不安が生じ、意図しない脱連結が生じれば車両は運転者が予期しない挙動を示すことがある。以下に開示する装置は、これらの問題を解決するべく工夫されたものである。
【0007】
一の局面によれば、キャリアにベアリングを介して支持されて軸の周りに回転するケースから一対のサイドギアへ差動的にトルクを分配するデファレンシャルギア組に利用されるクラッチ装置は、前記ケースと共に回転するべく前記ケースに嵌合し、前記デファレンシャルギア組から離脱した脱連結位置と前記デファレンシャルギア組の何れかを前記ケースに駆動的に連結させる連結位置との間で軸方向に移動可能なクラッチ部材と、磁束を生ずる電磁コイルと、前記磁束を導くべく前記電磁コイルを囲むコアと、前記磁束を受容して軸方向に推力を発生するべく前記コアに接して軸方向に摺動可能に嵌合したプランジャと、を備えたアクチュエータであって、前記コアは前記ケースに摺動可能に接し前記ベアリングの軸方向に内側の端より軸方向に外方に突出し、前記プランジャは前記ベアリングと前記クラッチ部材との間に位置して前記クラッチ部材に当接して前記推力を前記クラッチ部材へ伝える、アクチュエータと、前記コアに固定され、前記キャリアに係合して前記コアを回り止めするべく前記キャリアに向けて延長された回り止め部材と、前記ベアリングより軸方向に外方において前記コアから径方向に内方に延長され、前記プランジャを軸方向に抜け止めするバンプと、を備え、前記プランジャが前記ベアリングに接しても前記プランジャは前記バンプから離れているように前記バンプは寸法づけられている
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態によるクラッチ装置が組みこまれたデファレンシャル装置の斜視図である。
図2図2は、クラッチ装置が組みこまれたデファレンシャル装置の立面断面図である。
図3図3は、クラッチ装置およびその周辺を主に見せる立面断面図である。
図4図4は、クラッチとキャリアとの関係を主に見せる側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して以下に幾つかの例示的な実施形態を説明する。以下の説明および添付の請求の範囲において、特段の説明がなければ軸はデファレンシャルの回転軸を意味し、通常にはクラッチの中心軸とも一致する。図面は必ずしも正確な縮尺により示されておらず、従って相互の寸法関係は図示されたものに限られないことに特に注意を要する。
【0010】
主に図1を参照するに、本実施形態によるクラッチ装置1は、デファレンシャル装置と組み合わせて利用される。図1に組み合わせて図2,3を参照するに、デファレンシャル装置は、概して、キャリア3にベアリング5を介して軸X周りに回転可能なケース7と、ケース7から一対のサイドギア11,13へ差動的にトルクを分配するデファレンシャルギア組9と、よりなる。
【0011】
ケース7は、例えばその両端から軸方向にそれぞれ延びるボス部7Bを備え、ボス部7Bとキャリア3との間にベアリング5が介在することにより、回転可能にキャリア3に支持される。ケース7は、また、その外周から径方向に外方に延びるフランジ7Fを備え、フランジ7Fにはリングギア49が固定される。リングギア49は動力源に駆動的に連結したプロペラシャフトと駆動的に噛合してトルクを受容し、以ってケース7は軸X周りに回転する。あるいはリングギアによらずに、例えばケース7は直接に動力源に駆動されてもよい。動力源は例えば内燃機関だが、内燃機関は電気モータと組み合わされてもよく、あるいは電気モータ単独でありうる。
【0012】
デファレンシャルギア組9はケース7に支持されてトルクを受容し、トルクをサイドギア11,13へ差動的に分配する。図示の例ではデファレンシャルギア組9は、ケース7に支持されたピニオンシャフト31に回転可能に支持されたピニオン33と、これに噛合したサイドギア11,13と、よりなるベベルギア式だが、これに代えてフェースギア式やプラネタリギア式であってもよい。
【0013】
クラッチ装置1は、クラッチ部材15とこれを駆動するアクチュエータ17とを備え、例えばクラッチ部材15により一方のサイドギア11をケース7に駆動的に連結することにより、デファレンシャルギア組9の差動をロックする目的に利用される。あるいはこれに代えて、ケース7からデファレンシャルギア組9へのトルク伝達をオン・オフする(いわゆるフリーランニングデファレンシャル)目的に利用することもできる。後者の場合には、例えばケース7はトルクを受容するアウタケースと、アウタケースから自由に回転できるインナケースとよりなり、デファレンシャルギア組9はインナケースに支持されていてもよい。クラッチ部材15がインナケースに噛合しなければデファレンシャルギア組9は動力源から自由になり(フリーランニング)、噛合すればクラッチ部材15がアウタケースからインナケースへのトルク伝達を担ってデファレンシャルギア組9が差動的にトルクを出力軸へ分配する。
【0014】
アクチュエータ17は、磁束を発生するソレノイドと、ソレノイドが発生する磁束によって軸方向に駆動されるプランジャ25と、を備える。ソレノイドは、例えば投入された電力に応じて磁束を発生する電磁コイル21と、磁束を導くべく電磁コイル21を囲むコア23とを備える。
【0015】
コア23は、ケース7の一方の端壁に摺動可能に接する。ケース7はコア23に対応する周溝を備えてもよい。例えばケース7は端壁から軸方向に延びたボス部7Bおよび周壁7Wを備え、ボス部7B,周壁7Wおよび端壁により囲まれた周溝にコア23が嵌合し、以ってコア23はケース7に支持され、またケース7に対して相対的に回転可能である。コア23を抜け止めするべく係止部材43を利用することができ、係止部材43は例えばボルト45によりケース7に固定される。コア23は例えばその外周に周溝41を備え、係止部材43が周溝41に摺動可能に係合することにより、コア23は抜け止めされる。
【0016】
コア23には、回り止め部材19が固定される。回り止め部材19は、例えば比較的に薄い板状片であり、例えば軟鋼のごとき磁性材料よりなる。回り止め部材19がコア23から軸方向に突出しないよう、固定に先立ってコア23には回り止め部材19に対応した窪みが設けられていてもよく、好ましくはコア23の表面と回り止め部材19の表面は揃えられる。回り止め部材19が磁性材料である場合には磁束を導く磁路の一部を構成しうる。固定は溶接、スポット溶接、ろう付け、圧接、係合、締結等の何れの手段によってもよく、あるいは両者は一体に成形されていてもよい。図示の例では回り止め部材19は単一だが、二以上の回り止め部材を利用してもよく、好ましくはこれらは軸X周りに対称的に配置される。
【0017】
回り止め部材19はキャリア3に向けて延長され、図3,4に例示するごとくキャリア3の凹所3Pに係合することによりコア23を回り止めする。すなわち稼働状態において、電磁コイル21およびコア23は静止しているが、ケース7、クラッチ部材15および他の関連部材は軸X周りに回転する。図示の例では回り止め部材19は概ね径方向外方に延長されているが、他の方向に延長されていてもよく、またキャリア3に係合するに過ぎないが、あるいはキャリア3に挟まれ、または適宜の固定具により、キャリア3に固定されていてもよい。さらに回り止め部材19が固定されていれば、コア23の位置決めの役割を担うことができる。
【0018】
コア23は、図2に示すごとく、例えばその一方の端に、周方向に内方に僅かに突出したバンプ27を備えてもよい。装置をキャリア3に組み込む前において、バンプ27はプランジャ25に当接してこれを抜け止めする。バンプ27はコア23と一体であってもよいが、別体であってコア23に固定されたものであってもよい。あるいはコア23が突起を有する代わりに、図1に最もよく示されるごとく、回り止め部材19の内方の端部29がコア23の内周よりも突出してプランジャ25にまで達し、これを抜け止めしてもよい。端部29はバンプ27の均等物である。バンプ27ないし端部29がプランジャ25を抜け止めするので、ボス部7Bは抜け止めのための部材を備える必要がなく、これはケース7を軸方向に小型化するに有利である。
【0019】
何れにせよ、バンプ27ないし端部29は装置をキャリア3に組み込む前にのみプランジャ25に当接するのであり、組み込まれた後にはプランジャ25はベアリング5と、特にそのインナレースと、クラッチ部材15との間に規制されるので、図3に最もよく示されるごとく、バンプ27ないし端部29から離れている。換言すれば、プランジャ25がベアリング5のインナレースの軸方向に内側の端5Wに接してもバンプ27ないし端部29からは離れているように、バンプ27ないし端部29は寸法づけられている。
【0020】
コア23の、ケース7から遠い側の端部は、ベアリング5のインナレースの軸方向に内側の端5Wよりも軸方向に外方に突出している。それにも関わらず、当該端部は当該インナレースや転動体には接しない。それゆえケース7が回転してもコア23がベアリング5のインナレースや転動体に摺動することはなく、エネルギ損失を生ずることはない。一方、コア23は軸方向に外方に突出できるので、十分な磁束を発生するために必要な寸法を確保することができる。これはアクチュエータ17が十分な推力を発揮するに有利である。
【0021】
一方、ベアリング5は例えば円錐ころ軸受であって、そのアウタレースはインナレースより軸方向に外方にずれている。それゆえコア23は、軸方向に外方に突出していても、アウタレースへの当接を避けることができる。磁束の漏洩を防止する観点からも、好ましくはコア23はベアリング5のアウタレースにも接しないし、キャリア3にも接しない。ただし、仮に接したとしても、これらはコア23と同じく静止部材であるから、摺動によるエネルギ損失を生ずることはない。
【0022】
コア23は電磁コイル21の全体を覆ってもよいが、部分的に覆わなくてもよく、またケース7が部分的にコア23に代わって磁束を導く磁路の役割を果たしていてもよい。さらにこれらコア23およびケース7よりなる磁路によっても覆われないギャップ39が残されていてもよい。図3の例ではコア23の内周にギャップ39が径方向に開いており、磁束はかかるギャップ39を跳躍するように導かれる。
【0023】
プランジャ25は、好ましくはギャップ39を跨ぐようにこれに面し、コア23に接して摺動可能に嵌合する。かかる構造によれば、ギャップ39を跳躍する磁束はプランジャ25に迂回し、プランジャ25はかかる磁束を受容して軸方向に推力を発生する。プランジャ25は、少なくともコア23に面した側において磁性材料よりなる磁性部材25Mを含む。また磁束の漏れを防止するべく、他の部分は非磁性部材25Nよりなっていてもよい。ベアリング5、ボス部7Bおよびクラッチ部材15へは非磁性部材25Nが接し、磁性部材25Mは磁束を受容する部分に限ることができる。
【0024】
プランジャ25は、既に述べた通り、ベアリング5とクラッチ部材15との間に配置されており、最も後退してもベアリング5のインナレースの端5Wに当接することにより停止する。プランジャ25の位置を規制するに、例えばボス部7Bに係合した停止リングを必要としない。これは軸方向の寸法を抑制するに有利である。前進したときにはプランジャ25はクラッチ部材15に当接してこれを連結位置へ駆動する。
【0025】
図2,3に示す例ではプランジャ25はコア23の内周に嵌合するが、これに代えてプランジャ25はコア23の外周に嵌合してもよい。かかる形態では、バンプ27はコア23の外周から径方向に外方に突出してプランジャ25を抜け止めしてもよく、あるいは延長された回り止め部材19が当接してプランジャ25を抜け止めしてもよい。またかかる形態では、言うまでもなくギャップ39はコア23の外周に開いていてもよく、プランジャ25はギャップ39を跨ぐようにこれに面する。
【0026】
クラッチ部材15はケース7と共に回転するべくこれに嵌合しており、またプランジャ25に当接して推力を受けて軸方向に駆動される。クラッチ部材15において一方の端は軸方向に延びる一以上の脚を備える。これらの脚はそれぞれケース7に開けられた開口7Aを通って軸方向に外方に延び、プランジャ25の端に当接する。あるいはプランジャ25の端が延びてクラッチ部材15に当接してもよいし、プランジャ25とクラッチ部材15は直接に当接しなくてもよく、適宜の他の部材が介在していてもよい。クラッチ部材15において他方の端はデファレンシャルギア組9に面し、クラッチ歯37を備える。クラッチ歯37はサイドギア11が備えるクラッチ歯35に噛合するように構造づけられている。
【0027】
クラッチ部材15は、通常、デファレンシャルギア組9から離脱した脱連結位置に待機している。クラッチ部材15がプランジャ25に軸方向に駆動されて連結位置に移動するとクラッチ歯35,37が噛合する。もちろんクラッチ部材15は定常的に連結位置にあって時限的に脱連結位置に移動することもありうる。連結位置にあるときにはクラッチ部材15はサイドギア11をケース7に駆動的に連結し、以ってデファレンシャルギア組9の差動がロックされる。また既に述べた通り、クラッチ歯35がインナケースに刻まれておりクラッチ歯37がこれに噛合することにより、クラッチ部材15はアウタケースからデファレンシャルギア組9へのトルク伝達を仲介してもよい。
【0028】
開口7Aの側面とクラッチ部材15の脚の側面とは対応して傾き、以ってケース7に付与されたトルクの一部を軸方向推力に変換するカムを構成していてもよい。かかる構造はトルクの一部を利用してクラッチ部材15の噛合を保持するのに有利であり、ひいてはアクチュエータ17の推力への要求を下げてその小型化に有利である。あるいは噛合を保持するのに電力を要さず、以ってエネルギ効率の向上に有利である。他方、脱連結を促すべく、例えば図3に示すごとく、サイドギア11とクラッチ部材15との間にスプリング47が介在していてもよい。もちろん連結を促す向きにスプリングを利用してもよく、また既に述べた通りアクチュエータ17はクラッチ部材15を脱連結させる向きに推力を発生してもよい。
【0029】
上述の何れの実施形態によっても、軸方向の寸法を低減しようとの要求に反してコアを軸方向に突出させている。それにも関わらずベアリング間の距離としては軸方向の寸法を低減しており、一方コアに十分な寸法を確保しているので、アクチュエータは十分な推力を発揮することができる。かかる構造はデファレンシャルのケースの肉厚を損なわず、従ってその強度剛性を犠牲にすることがない。
【0030】
幾つかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正ないし変形をすることが可能である。
図1
図2
図3
図4