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特許7649915点火プラグ火花ギャップ調整装置、点火プラグ火花ギャップ調整方法
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  • 特許-点火プラグ火花ギャップ調整装置、点火プラグ火花ギャップ調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】点火プラグ火花ギャップ調整装置、点火プラグ火花ギャップ調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 21/06 20060101AFI20250313BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H01T21/06
F02P13/00 301J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024168189
(22)【出願日】2024-09-27
【審査請求日】2024-11-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 啓之
(72)【発明者】
【氏名】堀邉 将人
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-020247(JP,A)
【文献】実開昭50-058132(JP,U)
【文献】特開2011-196268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 21/06
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台座と、
周方向に回転可能となるように前記固定台座の上部に結合されるギャップ調整部と、
を備え、
前記固定台座は、接地部と、
前記接地部の上側に筒状に配置され、内部に点火プラグを設置する点火プラグ設置部と、
前記点火プラグ設置部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグを押し付ける複数の固定ネジを有し、
前記ギャップ調整部は、前記ギャップ調整部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグのギャップ調整箇所を押し付ける調整ネジを有する点火プラグ火花ギャップ調整装置であって、
前記接地部は、内部に設置される点火プラグを突起物で押し上げて前記点火プラグ火花ギャップ調整装置から取り外すための貫通孔を有することを特徴とする点火プラグ火花ギャップ調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の点火プラグ火花ギャップ調整装置であって、
前記固定ネジおよび前記調整ネジは、押付位置の先端部が球状に加工されていることを特徴とする点火プラグ火花ギャップ調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の点火プラグ火花ギャップ調整装置であって、
前記点火プラグ設置部の内部に高さ位置調整用のスペーサを設置することで、前記固定ネジの押付位置と、内部に設置される点火プラグの固定ネジ押付面の高さ位置とを合わせることを特徴とする点火プラグ火花ギャップ調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の点火プラグ火花ギャップ調整装置であって、
前記ギャップ調整部が前記固定台座と結合された際に、前記ギャップ調整部と前記固定台座の当接面に設けた前記固定台座の貫通孔を介して、前記ギャップ調整部の位置を固定する止めネジを備えることを特徴とする点火プラグ火花ギャップ調整装置。
【請求項5】
以下のステップを含む点火プラグ火花ギャップ調整方法:
(a)固定台座の点火プラグ設置部の内部に点火プラグを設置するステップ、
(b)前記(a)ステップの後、前記固定台座の上部にギャップ調整部を取り付けるステップ、
(c)前記(b)ステップの後、固定ネジにより前記点火プラグを押し付けて固定するステップ、
(d)前記(c)ステップの後、前記ギャップ調整部の上方から目視にて確認しながら前記ギャップ調整部を周方向に回転させ、前記点火プラグのギャップ調整箇所と、調整ネジとの位置を合わせるステップ、
(e)前記(d)ステップの後、止めネジにより前記固定台座に対する前記ギャップ調整部の位置を固定するステップ、
(f)前記(e)ステップの後、所定の厚さの隙間ゲージを前記ギャップ調整箇所のギャップに挿入し、前記調整ネジにより前記ギャップ調整箇所を押し付けるステップ、
(g)前記(f)ステップの後、前記隙間ゲージを前記ギャップから抜き取り、前記調整ネジを緩めて前記ギャップ調整箇所の押し付けを解放するステップ、
(h)前記(g)ステップの後、前記固定ネジを緩めて前記点火プラグの押し付けを解放するステップ、
(i)前記(h)ステップの後、前記止めネジを緩め、前記固定台座の上部から前記ギャップ調整部を取り外すステップ、
(j)前記(i)ステップの後、前記固定台座の接地部の貫通孔に突起物を挿入し、前記点火プラグを前記突起物で押し上げて前記点火プラグ設置部から取り外すステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火プラグの火花ギャップを調整する火花ギャップ調整装置の構成とその方法に係り、特に、スカート型の外側電極を有する点火プラグに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
点火プラグは、エンジン等の内燃機関において、ガソリンと空気の混合気に電気的に点火するライターの役目をする装置であり、自動車やオートバイのエンジン用から航空機のジェットエンジン用、コージェネレーションシステムや非常用電源のガスタービンエンジン用等、幅広い用途に応じて、様々な種類の点火プラグが用いられている。
【0003】
点火プラグでは、適切な隙間を設けた電極間に高電圧を掛けることで火花放電を起こし、圧縮された混合気に点火する。点火プラグに供給される電圧は、イグニッションコイルや点火装置で発生させ、点火プラグの中心電極をイグニッションコイル等に接続し、接地電極(もしくは外側電極)をエンジンのブロックに接触させてアースとしている。
【0004】
最も一般的な自動車やオートバイのエンジン用点火プラグは、凸型の中心電極の外側にL字型の外側電極(接地電極)を配置した構造となっているが、例えば、発電機のガスエンジン用点火プラグでは、確実な始動性・信頼性が求められるため、より強力な火花を発生させるよう、一定の面積を有する中心電極の外側にスカート型の外側電極(接地電極)を配置した構造が採用されている。
【0005】
一方、中心電極と外側電極(接地電極)の隙間は、「火花ギャップ」と呼ばれ(単に「ギャップ」や「放電ギャップ」等とも呼ばれる)、エンジンの点火時期や燃焼効率に大きく影響するため、適正な値に調整する必要がある。火花ギャップが広すぎたり狭すぎたりした場合、点火が不十分になり易く、エンジンの失火に繋がる可能性がある。
【0006】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「中心電極と接地電極との間隔(放電ギャップ)を外部から確認することができ、放電ギャップが広がっているか否かの確認作業、及び、放電ギャップがどのような間隔となっているかを確認しながら、放電ギャップを適正な間隔に調整する調整作業を適切に行うことができる点火プラグ」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-196268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スカート型の外側電極を有する点火プラグの従来の火花ギャップ調整作業においては、先端にギャップゲージが設けられた専用ツールを用いているが、点火プラグを保持する機能が無く、ツール先端のギャップゲージを差し込むのが難しいため作業性が悪いという問題がある。
【0009】
また、スカート型の外側電極を有する点火プラグでは、火花ギャップ2か所を同時に調整する必要があるため、火花ギャップが不均一になり易いという問題がある。
【0010】
さらに、上記の専用ツールを用いた火花ギャップ調整では、調整値を変更する際には、先端のギャップゲージの交換及び取り付けが必要になり、調整値の変更が容易ではない。
【0011】
上記特許文献1は、凸型の中心電極の外側にL字型の外側電極(接地電極)を配置した構造の点火プラグを対象としており、上記のような課題については何ら考慮されていない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、スカート型の外側電極を有する点火プラグにおいて、比較的簡単な構成で、点火プラグを確実に保持固定しつつ、複数の調整箇所に対して1か所ずつ正確に調整できる点火プラグ火花ギャップ調整装置及びそれを用いた点火プラグ火花ギャップ調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の点火プラグ火花ギャップ調整装置は、固定台座と、周方向に回転可能となるように前記固定台座の上部に結合されるギャップ調整部と、を備え、前記固定台座は、接地部と、前記接地部の上側に筒状に配置され、内部に点火プラグを設置する点火プラグ設置部と、前記点火プラグ設置部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグを押し付ける複数の固定ネジを有し、前記ギャップ調整部は、前記ギャップ調整部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグのギャップ調整箇所を押し付ける調整ネジを有する点火プラグ火花ギャップ調整装置であって、前記接地部は、内部に設置される点火プラグを突起物で押し上げて前記点火プラグ火花ギャップ調整装置から取り外すための貫通孔を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の点火プラグ火花ギャップ調整方法は、(a)固定台座の点火プラグ設置部の内部に点火プラグを設置するステップ、(b)前記(a)ステップの後、前記固定台座の上部にギャップ調整部を取り付けるステップ、(c)前記(b)ステップの後、固定ネジにより前記点火プラグを押し付けて固定するステップ、(d)前記(c)ステップの後、前記ギャップ調整部の上方から目視にて確認しながら前記ギャップ調整部を周方向に回転させ、前記点火プラグのギャップ調整箇所と、調整ネジとの位置を合わせるステップ、(e)前記(d)ステップの後、止めネジにより前記固定台座に対する前記ギャップ調整部の位置を固定するステップ、(f)前記(e)ステップの後、所定の厚さの隙間ゲージを前記ギャップ調整箇所のギャップに挿入し、前記調整ネジにより前記ギャップ調整箇所を押し付けるステップ、(g)前記(f)ステップの後、前記隙間ゲージを前記ギャップから抜き取り、前記調整ネジを緩めて前記ギャップ調整箇所の押し付けを解放するステップ、(h)前記(g)ステップの後、前記固定ネジを緩めて前記点火プラグの押し付けを解放するステップ、(i)前記(h)ステップの後、前記止めネジを緩め、前記固定台座の上部から前記ギャップ調整部を取り外すステップ、(j)前記(i)ステップの後、前記固定台座の接地部の貫通孔に突起物を挿入し、前記点火プラグを前記突起物で押し上げて前記点火プラグ設置部から取り外すステップ、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スカート型の外側電極を有する点火プラグにおいて、比較的簡単な構成で、点火プラグを確実に保持固定しつつ、複数の調整箇所に対して1か所ずつ正確に調整できる点火プラグ火花ギャップ調整装置及びそれを用いた点火プラグ火花ギャップ調整方法を実現することができる。
【0016】
これにより、火花ギャップ調整作業の作業品質向上と作業時間短縮、エンジンの点火に関する不具合防止、点火プラグの損傷防止と長寿命化に寄与できる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る点火プラグ火花ギャップ調整装置の概略構成を示す図である。
図2A図1のA-A’方向矢視図(上面図)である。
図2B図1のB-B’方向矢視図(底面図)である。
図3】本発明の実施例2に係る点火プラグ火花ギャップ調整装置の概略構成を示す図である。
図4図1の固定台座2の構造を示す図である。
図5図1のギャップ調整部3の構造を示す図である。
図6図1の固定ネジ7及び調整ネジ9の一例を示す図である。
図7図1の止めネジ11の一例を示す図である。
図8図1のディープソケット12の構造を示す図である。
図9A】本発明の対象となる点火プラグの一例を示す図である。
図9B図9AのC部拡大図である。
図9C図9AのD-D’方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
先ず、図9Aから図9Cを参照して、本発明の対象となるスカート型の外側電極を有する点火プラグについて説明する。図9Aは、本発明の対象となる点火プラグの一例を示す図である。図9Bは、図9AのC部拡大図である。図9Cは、図9AのD-D’方向矢視図である。
【0021】
図9Aに示すように、スカート型の外側電極を有する点火プラグ14は、点火プラグ本体18の一端にターミナル19を有しており、他端に固定ネジ押付面16と、ネジ部20と、外側電極(スカート)21とを有している。ターミナル19には、高圧電流を受けるためのプラグコードが接続され、イグニッションコイル等でつくられた電圧が供給される。固定ネジ押付面16は、火花ギャップ調整の際に、後述する固定ネジ7が押し付けられる面である。ネジ部20は、点火プラグ14をエンジン筐体等に取り付ける際の固定ネジ部である。外側電極(スカート)21は、後述する中心電極25に対する接地電極である。
【0022】
図9Bに示すように、外側電極(スカート)21には、火花ギャップを調整するための穴22a,22b,22cと、切り欠き23が設けられている。穴22a,22b,22cと切り欠き23は、外側電極(スカート)21の周方向に90°ピッチで4か所配置されている。火花ギャップ調整の際に、後述する調整ネジ9により外側電極(スカート)21の押付部24を内側に押し込むことで、火花ギャップを調整する。
【0023】
図9Cに示すように、外側電極(スカート)21の内側には、隙間(ギャップ)を介して、一定の面積を有する中心電極25が配置されている。各ギャップ調整箇所では、押付部24を後述する調整ネジ9で押し込むことにより、切り欠き23が倒れるようにして中心電極25に近づき、火花ギャップが調整される。図9Cの例では、各ギャップ調整箇所は、外側電極(スカート)21の周方向の0°、90°、180°、270°の各位置に、90°ピッチで計4か所配置されている。
【0024】
火花ギャップ調整の際に、調整ネジ9でギャップ調整箇所の押付部24を押し込み、隙間ゲージ(ギャップゲージ)でギャップを確認する作業を、所望の火花ギャップになるまで繰り返す。なお、各ギャップ調整箇所は、弾性変形により元に戻ろうとするが、それを考慮の上で所望の火花ギャップに調整する。
【0025】
図9Cに示すように、火花ギャップの調整では、例えば0.35mm程度とシビアな調整が要求される。ギャップ調整を適切に行わなかった場合、外側電極(スカート)21の変形や破損に至る可能性がある。
【0026】
次に、図1から図2B,及び図4から図8を参照して、本発明の実施例1に係る点火プラグ火花ギャップ調整装置及びそれを用いた点火プラグ火花ギャップ調整方法について説明する。図1は、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1の概略構成を示す図である。図2Aは、図1のA-A’方向矢視図(上面図)である。図2Bは、図1のB-B’方向矢視図(底面図)である。図4は、図1の固定台座2の構造を示す図である。図5は、図1のギャップ調整部3の構造を示す図である。図6は、図1の固定ネジ7及び調整ネジ9の一例を示す図である。図7は、図1の止めネジ11の一例を示す図である。図8は、図1のディープソケット12の構造を示す図である。
【0027】
図1に示すように、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1は、主要な構成として、固定台座2と、ギャップ調整部3とを備えている。ギャップ調整部3は、周方向に回転可能となるように固定台座2の上部に取り付けられる。固定台座2は、床面15に接地される接地部4と、接地部4の上側に筒状に配置され、内部に点火プラグ14を設置する点火プラグ設置部5と、点火プラグ設置部5に設けられた貫通孔6を介して、内部に設置される点火プラグ14を押し付ける複数の固定ネジ7とを有している。
【0028】
ギャップ調整部3は、ギャップ調整部3に設けられた貫通孔8を介して、内部に設置される点火プラグ14のギャップ調整箇所を押し付ける調整ネジ9を有している。また、固定台座2は、点火プラグ設置部5に設けられた貫通孔10を介して、ギャップ調整部3の位置を固定する止めネジ11を有している。
【0029】
図2A及び図5に示すように、ギャップ調整部3には、その周方向のギャップ調整箇所に対応する位置に、4つの貫通孔8が設けられており、貫通孔8を介して調整ネジ9で外側電極(スカート)21の押付部24を押し込むことにより、火花ギャップを調整する。
【0030】
図2B及び図4に示すように、固定台座2の接地部4には、貫通孔13が設けられており、調整作業終了後に、貫通孔13から突起物等で点火プラグ14を押し上げて、点火プラグ14を点火プラグ火花ギャップ調整装置1から取り外すことができる。
【0031】
図6に示すように、固定ネジ7及び調整ネジ9には、押付位置の先端部が球状にR加工されているネジを用いる。これは固定ネジ7及び調整ネジ9により点火プラグ14を押し付ける際に、点火プラグ14の損傷を防止するためである。一方、図7に示すように、止めネジ11は、対象となるギャップ調整部3が動かないようにしっかりと押し付けることが目的であるため、先端部の球状加工を行わないネジを用いる。
【0032】
図8に示すように、ディープソケット12は、空洞を有する形状となっており、点火プラグ14は、点火プラグ設置部5内に配置されたディープソケット12の空洞内に納まるように設置される。ディープソケット12を配置することで、点火プラグ14を点火プラグ設置部5内に確実に保持することができる。
【0033】
図1を用いて、点火プラグ火花ギャップ調整装置1を用いた点火プラグ火花ギャップ調整方法について説明する。
【0034】
先ず、点火プラグ設置部5の内部に点火プラグ14を設置する。次に、固定台座2の上部にギャップ調整部3を取り付ける。次に、固定ネジ7により点火プラグ14を押し付けて固定する。点火プラグ設置部5に点火プラグ14を設置した際には隙間があるためガタが生じる。火花ギャップを正確に調整するためには点火プラグ14の中央軸が点火プラグ設置部5の中央軸に合うように「芯出し」を行う必要があり、この調整作業が行いやすいように、複数の水平方向角度から複数の固定ネジ7を用いて点火プラグ14の固定ネジ押付面16を押し付けて点火プラグ14を固定する。この際の押付角度は実用上3方向(120°ピッチ)または4方向(90°ピッチ)が好ましい。次に、ギャップ調整部3の上方から目視にて確認しながらギャップ調整部3を周方向に回転させ、点火プラグ14のギャップ調整箇所と、調整ネジ9との位置を合わせる。次に、止めネジ11により固定台座2に対するギャップ調整部3の位置を固定する。
【0035】
続いて、所定の(所望の)厚さの隙間ゲージをギャップ調整箇所のギャップに挿入し、調整ネジ9によりギャップ調整箇所(押付部24)を押し付けて、火花ギャップを所望の幅に調整する。次に、隙間ゲージをギャップから抜き取り、調整ネジ9を緩めてギャップ調整箇所の押し付けを解放する。次に、固定ネジ7を緩めて点火プラグ14の押し付けを解放する。次に、止めネジ11を緩めた後、固定台座2の上部からギャップ調整部3を取り外す。最後に、接地部4の貫通孔13に突起物を挿入し、点火プラグ14を突起物で押し上げて点火プラグ火花ギャップ調整装置1から取り外す。これは、ギャップ調整後に点火プラグ14を点火プラグ火花ギャップ装置1から取り外す際、作業者が指で掴みやすい外側電極(スカート)21の切り欠き23に誤って触れないようにするためである。
【0036】
以上説明した本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1によれば、固定台座2の筒状の内部に点火プラグ設置部5を設けることで、点火プラグ14を設置して垂直姿勢で保持することができる。また、例えば120°ピッチで周方向の複数の方向から固定ネジ7で締め付けることで、点火プラグ14の芯合わせをした上で確実に固定することができる。また、ギャップ調整部3を周方向に回転させ、調整ネジ9を適切な箇所(任意の押付位置)に合わせることができる。
【0037】
また、作業者が片手で火花ギャップに隙間ゲージ(ギャップゲージ)を入れ、もう一方の手で調節ネジ9を締め込むことで火花ギャップを調節することが可能となる。また、ギャップ調整箇所毎に適切に押し付ける構造のため、調整作業に際し、外側電極(スカート)21の変形や、中心電極25の曲がりによる断線の可能性を低減することができる。また、火花ギャップ調整作業の作業性及び正確性が向上し、適切な火花ギャップとなり、点火に関するエンジンの不具合発生を防止できる。
【0038】
図9Bに示すように、点火プラグ14のギャップ調整箇所は、外側電極(スカート)21に90°ピッチで切り欠き23が配置されている。ギャップ調整の際は、押付部24を調整ネジ9により点接触で押し込むことにより、切り欠き23が倒れるように中心電極25に近づくことで、ギャップが調整される。したがって、以下の条件を満たす必要がある。
【0039】
(1)押し付け面積が狭いため、押し付け時の接触面積を小さくする必要があり、調整ネジ9の先端部を球状にR加工することにより、接触面積を小さくする、(2)外側電極(スカート)21を損傷させないためには、調整ネジ9の先端部にエッジがあってはいけない。そのため、調整ネジ9の先端部を球状にR加工することにより、エッジを無くす必要がある。
【0040】
そこで、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1では、固定ネジ7及び調整ネジ9に、先端部が球状にR加工されているネジを用いている。
【0041】
また、ギャップ調整部3を周方向に回転させ、調整ネジ9を適切な箇所(任意の押付位置)に合わせた後、ギャップ調整部3が周方向に回転しないように位置を固定する必要がある。作業者がギャップ調整の過程で、誤ってギャップ調整部3に触れてしまうと、ギャップ調整部3が回転してしまうため、調整ネジ9の押し付け位置が変わらないように位置を固定する必要がある。
【0042】
そこで、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1では、固定台座2の上部において、点火プラグ設置部5の貫通孔10を介して、止めネジ11でギャップ調整部3を押し付けることでギャップ調整部3の回転を防止する。止めネジ11は、しっかりと押し付けることが目的のため、先端部の球状加工を行わないネジを用いている。
【実施例2】
【0043】
図3を参照して、本発明の実施例2に係る点火プラグ火花ギャップ調整装置について説明する。図3は、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置の概略構成を示す図である。
【0044】
実施例1で説明したように、固定台座2の筒状の内部に市販の規定サイズのディープソケット12を設置することで、点火プラグ設置部5とすることができる。その場合、設置する点火プラグ14の形状・寸法に合わせて設計して点火プラグ設置部5を製作するよりも簡易かつ安価で代用できる。
【0045】
しかしながら、規定サイズのディープソケット12を用いる場合、図3の左図に示すように、固定ネジ7の押付位置と、点火プラグ14の固定ネジ押付面16の高さが異なる問題が発生することがある。これは規定サイズのディープソケット12が設置する点火プラグ14の形状に合わせた寸法になっていないために発生する問題であり、点火プラグ14が未使用状態における形状・寸法に合わせて設計し点火プラグ設置部5を製作する場合には発生しない。また、設計品として点火プラグ設置部5を製作した場合であっても、使用した点火プラグ14において経年劣化や摩耗等により未使用状態に比べて点火プラグ14の高さが変化した場合に、この問題が発生する。
【0046】
そこで、図3の右図に示すように、本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1では、点火プラグ設置部5の内部に高さ位置調整用のスペーサ17を設置することで、固定ネジ7の押付位置と、内部に設置される点火プラグ14の固定ネジ押付面16の高さ位置とを合わせている。スペーサ17の条件は「点火プラグ設置部5の内部に設置可能なこと」および「点火プラグ設置部5に点火プラグ14を設置する際に阻害要因にならないこと」であり、高さが異なる寸法量を把握した上で前記条件を満たすものを新規に製作するか、既製品で代用する。(例:点火プラグ14を取付け時に使用するシーリングワッシャを複数重ねた状態で使用する等)
また、スペーサ17で高さ調整を行った際には、調整ネジ9の押し付け位置が図9Bの外側電極(スカート)21の押付部24と高さ位置が合っているか都度確認する必要がある。
【0047】
なお、高さ位置調整用のスペーサ17は、点火プラグ設置部5の内壁に接着剤等で固定しても良い。
【0048】
以上説明した本実施例の点火プラグ火花ギャップ調整装置1によれば、点火プラグ14を垂直姿勢で保持する際、固定ネジ7の押付位置と、点火プラグ14の固定ネジ押付面16の高さを合わせることができる。
【0049】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…点火プラグ火花ギャップ調整装置
2…固定台座
3…ギャップ調整部
4…接地部
5…点火プラグ設置部
6…(固定ネジ用)貫通孔
7…固定ネジ
8…(調整ネジ用)貫通孔
9…調整ネジ
10…(止めネジ用)貫通孔
11…止めネジ
12…ディープソケット
13…(底面の)貫通孔
14…点火プラグ
15…床面
16…固定ネジ押付面
17…スペーサ
18…点火プラグ本体
19…ターミナル
20…ネジ部
21…外側電極(スカート)
22a,22b,22c…穴
23…切り欠き
24…押付部
25…中心電極。
【要約】
【課題】
スカート型の外側電極を有する点火プラグにおいて、比較的簡単な構成で、点火プラグを確実に保持固定しつつ、複数の調整箇所に対して1か所ずつ正確に調整できる点火プラグ火花ギャップ調整装置を提供する。
【解決手段】
固定台座と、周方向に回転可能となるように前記固定台座の上部に結合されるギャップ調整部と、を備え、前記固定台座は、接地部と、前記接地部の上側に筒状に配置され、内部に点火プラグを設置する点火プラグ設置部と、前記点火プラグ設置部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグを押し付ける複数の固定ネジと、を有し、前記ギャップ調整部は、前記ギャップ調整部の貫通孔を介して、内部に設置される点火プラグのギャップ調整箇所を押し付ける調整ネジを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C