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特許7649924水中または地下の環境で導管を測定するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】水中または地下の環境で導管を測定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20250313BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20250313BHJP
   G01N 17/04 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
G01N27/00 L
G01N17/04
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024534041
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022085145
(87)【国際公開番号】W WO2023110665
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】2030136
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523295512
【氏名又は名称】アイセンスプロ エヌヴィー
【氏名又は名称原語表記】iSensPro NV
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デスメット, イヴ マリー‐ルイス ガブリエル
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0193577(US,A1)
【文献】米国特許第04922232(US,A)
【文献】実開昭58-030864(JP,U)
【文献】特表2021-502569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064092(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391097(US,A1)
【文献】特表2010-502964(JP,A)
【文献】特開2001-183328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中または地下の環境(E)に配置されており、絶縁体層によって取り囲まれている導管(10)の電気的特性を測定するための装置(100)であって、
第1の電極(120)と、
前記導管(10)の表面に配置され、前記表面に対して筐体を作り出すように構成されている取付けユニット(110)であって、前記筐体が、前記第1の電極(120)を包含し、前記第1の電極(120)と前記環境(E)との間に誘電体を形成するように構成されている、取付けユニット(110)と、
前記表面からある距離で、および前記第1の電極(120)からある距離で配置されるように構成されている第2の電極(130)であって、前記環境と接触する第2の電極(130)と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスを表す値を決定するように構成されている測定器(140)と
を備える装置(100)。
【請求項2】
前記筐体が、前記表面と密封接触する下縁部(112)を有する少なくとも1つの周壁(111)によって形成されており、前記周壁(111)が、前記第1の電極(120)を包含する前記筐体の境界を定める、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記筐体が、前記周壁(111)を接合する上壁(114)によってさらに境界を定められており、前記第1の電極(120)が、前記上壁に当たってまたは前記上壁内に配置されている板である、請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記筐体が、前記取付けユニットが前記表面上に配置されているときに、前記環境の一部を包囲する、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記第2の電極(130)が、前記取付けユニット(110)に一体化されている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記第2の電極が、前記取付けユニット(110)の周側部に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記筐体が、弾性的な圧縮性材料で作られている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記弾性的な圧縮性材料がエラストマーである、請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記エラストマーが、シロキサン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリレート系エラストマーの群から選択される1つまたは複数である、請求項8に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記第1の電極(120)および/または前記第2の電極(130)が、耐腐食性材料から少なくとも部分的に製造されている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記取付けユニットが、前記測定器を収容するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記測定器(140)によって決定された前記値に基づいて、前記導管内の水分および/もしくは結露の存在ならびに/または前記導管の腐食の進行を分析するように構成されているコントローラ(150)をさらに備える請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記測定器(140)が、前記決定された値を、前記環境を通して無線で送信するように構成されている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記水中もしくは地下の環境(E)の前記表面の上方または近くに配置されている接続インターフェース(160)をさらに備え、前記接続インターフェース(160)が、前記接続インターフェースから前記測定器(140)まで延在する接続ケーブル(161)を備える、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記接続ケーブル(161)が、前記決定された値の光ファイバ通信のための光ファイバケーブルである、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記接続インターフェース(160)が、ワイヤ供給源、エネルギー収率供給源、および電池供給源のうちの少なくとも1つの電源を備える、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記接続インターフェースが、前記決定された値を無線で送信するように構成されているアンテナを備える、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記取付けユニット(110)が、前記取付けユニットを前記表面に締め付けるように構成されておりまたは前記取付けユニットを前記表面に対して押圧するように構成されている固定手段によって、前記表面に固定されている、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項19】
水中または地下の環境に配置されており、絶縁体層によって取り囲まれている導管の電気的特性を測定するための方法であって、
前記環境を通して、取付けユニット、第1の電極、および第2の電極を移動させるステップと、
前記導管の表面に対して筐体を作り出すように、前記導管の表面上に前記取付けユニットを配置するステップと、
前記筐体が前記第1の電極と前記環境との間に誘電体を形成するように、前記第1の電極を前記筐体に包含するステップと、
前記表面からある距離で、および前記第1の電極からある距離で前記第2の電極を配置するステップであって、前記第2の電極を前記環境と接触させて配置するステップを含む、ステップと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスを表す値を決定するステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記筐体に下縁部を有する少なくとも1つの周壁を設けるステップであって、前記周壁が、前記第1の電極を包含する凹部の境界を定め、前記下縁部を前記表面上に密封係合する、ステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記取付けユニットを配置する前記ステップが、前記環境の一部を前記筐体に包含するステップを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記取付けユニットを配置する前記ステップが、前記取付けユニットを前記表面に押圧しまたは締め付けるステップを含む、請求項19または20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中または地下の環境に配置されているアンビリカルなどの導管を測定するための装置に関する。さらに、本発明は、水中または地下の環境に配置されているアンビリカルなどの導管を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスまたは油などの流体のバルク輸送のため、導管が使用されており、流体が導管を通って輸送されている。同様に、電力または信号のバルク輸送のためには、例えば電気導管または光ファイバケーブルなどの導管も使用されている。流体用および電力用の導管は構造的に異なるが、それらは共通の目的を共有し、同様の方法および環境で配置されている。導管は、通常、例えばチャネルの底部、海底、または地面の下などの、水中環境および/または地下環境に配置されている。未処理のままにした場合、通常、水中環境および/または地下環境により、導管の外面が酸化し、損傷が生じる。また、水分が導電体間に侵入して、短絡、またはより一般的には損傷を引き起こす可能性がある。そのような腐食または侵入から導管を保護するために、導管の外側にはコーティングまたは保護カバーが塗布されている。しかしながら、コーティングまたは保護カバーも損傷を受けやすく、コーティングまたはカバーの凹みまたは切り込みにより、覆われている導管が環境に曝されることになり、そうして水分の侵入または腐食が生じる可能性がある。さらに、水中導管は、海洋動物による損傷を受けやすく、サメが電気導管を噛むことはこの問題のよく文書化された例である。
【0003】
導管は、これらの理由のために維持管理されなければならない。しかしながら、導管に到達するのが困難であるだけでなく、水中または地下の環境において、導管が腐食しておりまたは導管とその保護カバーとの間に水分を備えることを判定するのは困難である。
【0004】
本発明の実施形態の目的は、腐食および/または水分を正確に検出することを可能にする装置および方法、ならびに1つには使用が容易で費用効率の高い装置を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、この目的のために、水中または地下の環境に配置されており、絶縁体層によって取り囲まれている導管を測定するための装置を提供する。装置は、第1の電極と、導管の表面に配置され、表面に対して筐体を作り出すように構成されている取付けユニットであって、前記筐体が、第1の電極を包含し、第1の電極と環境との間に誘電体を形成するように構成されている、取付けユニットと、表面からある距離で、および第1の電極からある距離で配置されるように構成されている第2の電極であって、環境と接触するように意図されている第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスを表す値を決定するように構成されている測定機器とを備える。
【0006】
取付けユニットは、第1の電極と環境との間に、そうしてまた第1の電極と第2の電極との間に、誘電体を形成する。このようにして、第1および第2の電極ならびに取付けユニットは、コンデンサを形成し、第1および第2の電極は、前記コンデンサの2つの極を形成する。この利点は、2つの極間のインピーダンスが複数の成分を含むという洞察に基づいている。複数の成分のうちの第1のインピーダンス成分は、実質的に、取付けユニットによって形成される誘電体および/または第1の電極と第2の電極との間に位置する周囲によって決定される。特に、取付けユニットおよび/または周囲環境の抵抗ならびにリアクタンスはほとんどまたは全く変化しないので、第1のインピーダンス成分は比較的一定である。言い換えると、環境の組成は実質的に変化せず、したがってその抵抗およびリアクタンスは実質的に変化しない。取付けユニットにも、同様の論法が適用可能である。第2の成分は、絶縁体層および周囲環境によって形成される誘電体によって実質的に決定される。導管が良好な条件にある場合、複数の成分によって形成されているインピーダンスは既知である。しかしながら、絶縁体層の下または中に水分が存在し、または導管の表面に腐食が形成されているときには、絶縁体層のインピーダンスまたは絶縁体の下の導管のインピーダンスが変化する。インピーダンスの値のこの変化は、例えば腐食による、導管の表面層の劣化を示し、または絶縁体内の水分の存在を示す。したがって、装置は、腐食および/または水分を正確に検出することを可能にし、また、使用が容易で費用効率が高い。
【0007】
筐体は、表面と密封接触するように意図されている下縁部を有する少なくとも1つの周壁を備え、前記周壁は、第1の電極を包含する筐体の境界を定めることが好ましい。下縁部は、筐体を環境から密封する。このようにして、第1の電極と第2の電極との間で、間にいずれの誘電体もない直接短絡測定が実質的に回避されて、装置の精度がさらに改善される。
【0008】
筐体は、周壁を接合する上壁によってさらに境界を定められており、第1の電極は、上壁に当たってまたは上壁内に配置されている板であることが好ましい。上壁は、筐体を完全に密封し、そうして筐体は、環境から密封されて装置の精度をさらに改善する。第1の電極が板であることは、第1の電極の表面積が実質的に大きいという利点を有する。これにより、インピーダンス値の決定が促進される。
【0009】
筐体は、取付けユニットが表面上に配置されているときに、環境の一部を包囲するように意図されていることが好ましい。導管は、典型的には円筒形状であるが、異なる直径を有してもよい。導管の周面における導管の曲率は、異なっていてもよい。第1の電極が周面に暖かく嵌合することを確実にするのは困難である。環境の一部を包囲する利点は、環境、例えば土または水が導電性であることである。また、環境、特に水性環境は順応性がある。環境の包囲された部分は、筐体を満たして、第1の電極と導管の周面との間に接触する導電層を形成する。このようにして、第1の電極は、導管の筐体が覆う部分の略全体に電気的に接続される。
【0010】
第2の電極は、取付けユニットに一体化されていることが好ましい。このようにして、第2の電極と第1の電極との間の距離が縮小される。したがって、装置をよりコンパクトに作製することができる。また、第2の電極が取付けユニットに一体化されているとき、インピーダンスの第1のインピーダンス成分は、もはや環境によって影響を受けず、装置の精度をさらに高める。
【0011】
第2の電極は、取付けユニットの周側部に配置されていることが好ましい。このようにして、第2の電極は比較的簡単な方法で環境に曝される。
【0012】
筐体は、弾性的な圧縮性材料で作られることが好ましい。このようにして、取付けユニットならびに筐体は、導管に容易に設置可能である。弾性的な圧縮性材料は、配置されるそれぞれ導管に従って対応して形状を定められる。より好ましくは、弾性的な圧縮性材料はエラストマーである。より好ましくは、エラストマーは、シロキサン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリレート系エラストマーの群から選択される1つまたは複数である。
【0013】
第1の電極および/または第2の電極は、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、またはグラファイトなどの耐腐食性材料から少なくとも部分的に製造されていることが好ましい。このようにして、第1および第2の電極は、腐食に対してより耐性がある。
【0014】
取付けユニットは、測定器を収容するようにさらに構成されていることが好ましい。このようにして、装置は、一体化されて容易に輸送可能なように形成されている。
【0015】
装置は、測定器によって決定された値に基づいて、導管内の水分および/もしくは結露の存在ならびに/または導管の腐食の進行を分析するように構成されているコントローラをさらに備えることが好ましい。このようにして、装置は、スタンドアローンであるようにさらに設計されている。
【0016】
測定器は、決定された値を、環境を通して無線で送信するように構成されていることが好ましい。この利点は、導管が、到達困難な位置、例えば海底または地下に配置されていることが多いという洞察に基づいている。装置が、決定された値を、環境を通して無線で送信するように構成されている測定器を備えることによって、装置は、導管上に配置され、環境によって覆われ、さらなる労力なしに決定された値を依然として送信することができる。装置は、例えば、導管が海洋に配置されるとき、または導管が地中に配置されるときに、同時に沈められる。
【0017】
装置は、水中もしくは地下の環境の表面の上方または近くに配置されている接続インターフェースをさらに備え、接続インターフェースは、接続インターフェースから測定器まで延在する接続ケーブルを備えることが好ましい。より好ましくは、接続ケーブルは、決定された値の光ファイバ通信のための光ファイバケーブルである。このようにして、装置によって決定された情報は、環境の外側から測定されることができる。例えば、ユーザは、現場に到着し、接続インターフェースにコンピュータを接続し、インピーダンスを表す値を自分のコンピュータに入力し得る。
【0018】
接続インターフェースは、以下の電源、ワイヤ供給源、エネルギー収率供給源、および電池供給源のうちの少なくとも1つを備えることが好ましい。ワイヤ供給源では、非常に長い寿命の測定を得ることができる一方で、電池供給源は、安価で設置が簡単であることができる。エネルギー収率供給源は、非常にエネルギー効率がよく、自律的であり得、到達するのが困難な導管(長距離導管など)の場合に有利であることができる。
【0019】
接続インターフェースは、決定された値を無線で送信するように構成されているアンテナを備えることが好ましい。このようにして、使用の利便性を高めることができる。さらに、中央制御が可能となる。
【0020】
取付けユニットは、取付けユニットを表面に締め付けるように構成されておりまたは取付けユニットを表面に対して押圧するように構成されている固定手段によって、表面に固定されていることが好ましい。
【0021】
当業者は、装置の実施形態について本明細書の上記で説明した技術的考察および利点が、以下に説明する対応する方法の実施形態にも準用することを理解するであろう。
【0022】
第2の態様によれば、水中または地下の環境に配置されている導管を測定するための方法が提供される。方法は、環境を通して、取付けユニット、第1の電極、および第2の電極を移動させるステップと、表面に対して筐体を作り出すように、導管の表面上に前記取付けユニットを配置するステップと、筐体が第1の電極と環境との間に誘電体を形成するように、第1の電極を第1の筐体に包含するステップと、表面からある距離で、および第1の電極からある距離で第2の電極を配置するステップであって、第2の電極を環境と接触させて配置するステップを含む、ステップと、第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスを表す値を決定するステップとを含む。
【0023】
方法は、筐体に下縁部を有する少なくとも1つの周壁を設けるステップであって、前記周壁が、第1の電極を包含する凹部の境界を定め、下縁部を表面上に密封係合する、ステップをさらに含むことが好ましい。
【0024】
取付けユニットを配置するステップは、環境の一部を筐体に包含するステップを含むことが好ましい。
【0025】
取付けユニットを配置するステップは、取付けユニットを表面に押圧しまたは締め付けるステップを含むことが好ましい。
【0026】
添付の図面は、本発明の装置の現在好ましい非限定的で例示的な実施形態を説明するために使用される。添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明より、本発明の特徴ならびに目的の上記および他の利点がより明らかになり、本発明がよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】地下の環境に配置された導管上に配置されている好ましい一実施形態による装置の概略図である。
図2】水中環境において導管上に配置されているさらなる好ましい一実施形態による一体化された第2の電極を有する装置の概略図である。
図3】好ましい一実施形態による測定器およびコントローラを収容する装置の概略図である。
図4】好ましい一実施形態による遠隔コントローラを有する装置の概略図である。
図5】好ましい一実施形態による、値を無線送信するように構成されている測定器を備える装置の概略図である。
図6】好ましい一実施形態による、地下の環境の表面の上方に配置されている接続インターフェースを備える装置の概略図である。
図7】好ましい一実施形態による複数の取付けユニットを備える装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のこのおよび他の態様は、本発明の現在好ましい一実施形態を示す添付の図面を参照して、ここでより詳細に説明される。図面全体を通して、同様の番号は同様の特徴を指す。
【0029】
説明および図面は、本発明の原理を単に例示するものである。したがって、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を具体化し、本発明の範囲内に含まれる様々な構成を考案することができると当業者には理解されよう。さらに、本明細書に列挙されたすべての例は主に、本発明の原理、および当分野を前進させるために本発明者が貢献した概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためにすぎないことが明確に意図されており、そのような具体的に列挙された例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0030】
本発明において、「備える」、「含む」、「有する」、「備え得る」、「含み得る」、または「有し得る」などの表現は、対応する特徴の存在を示すが、追加の特徴の存在を排除するものではない。
【0031】
図1は、地下の環境に配置されている導管10を測定するための装置100の例示的な一実施形態を概略的に示す。
【0032】
図1に示す導管10は、水、油またはガスなどの流体を輸送するための導管である。このような導管は、パイプラインとも呼ばれる。導管10は、図1に示すように地下に配置されていることが多く、導管10を腐食から保護するために絶縁体層10’によって取り囲まれている。絶縁体層10’は、導管10の周面に塗布されたコーティングであってもよく、またはカソード防食などの別の保護表面層であってもよい。本発明の原理を説明するために、絶縁体層10’は実質的に拡大されている。
【0033】
図1に示す導管10を測定するための装置100は、取付けユニット110、第1の電極120、第2の電極130、および測定機器140を備える。取付けユニット110は、導管10の表面、特に絶縁層10’の外側表面に配置されるように構成されている。導管10の外側表面または絶縁層の外側表面は、そうではないと明示的に述べられていない限り、本明細書の文脈において交換可能に使用される。取付けユニット100はさらに、導管10の表面に対して筐体を作り出すように構成されている。本明細書の文脈において、筐体は、取付けユニット110および導管10の表面によって境界を定められている領域である。しかしながら筐体はまた、図3に関して詳述されるように、取付けユニット110の一部を指す。取付けユニット110は、筐体内に第1の電極120を包含し、第1の電極120と環境Eとの間に誘電体を形成するように構成されている。したがって、取付けユニット110は、第1の電極120を環境Eから電気的に絶縁するが、その電気誘電率は、本明細書で以下に示すようにインピーダンス値に影響する。第2の電極130は、導管10’の表面からある距離で、および第1の電極120からある距離で配置されるように構成されている。第2の電極130は、環境と接触するように意図されている。言い換えると、第2の電極130は、少なくとも部分的に環境に曝されるように配置されている。第2の電極130はまた、図1に示すように、全体が環境Eに曝されてもよい。測定機器140は、第1の電極120と第2の電極130との間のインピーダンスを表す値を決定するように構成されている。本明細書において上記で説明したように、取付けユニット110は、第1の電極120と環境Eとの間に、そうしてまた第1の電極120と第2の電極130との間に、誘電体を形成する。環境Eが水分およびイオンの存在によって少なくとも部分的に導電性であっても、第1の電極120および第2の電極130はコンデンサの2つの極を形成する。第1の電極120と第2の電極130との間のインピーダンスは、複数の成分を含む。複数の成分のうちの第1のインピーダンス成分C1A+C1Bは、主に、取付けユニット110によって形成される誘電体および/または第1の電極120と第2の電極130との間に位置する周囲環境Eによって決定される。第1のインピーダンス成分C1A+C1bが、例示の目的のために図1に容量の記号として示されている第1のインピーダンスサブ成分C1Aおよび第2のインピーダンスサブ成分C1Bを含むので、第1のインピーダンス成分は、比較的一定である。第1のインピーダンスサブ成分C1Aは、主に、取付けユニット110の誘電特性によって決定され、実質的に変化しない。特に、取付けユニット110の抵抗およびリアクタンスは一定であるので、取付けユニット110に対する磨耗および破損をいずれも防止する。第2のインピーダンスサブ成分C1Bは、周囲環境Eの誘電率によって決定される。環境Eの組成の変化が限られており、変化があっても、例えば地下の環境における取付けユニット110を取り囲む土壌の組成は実質的に変化しないので、環境Eのリアクタンスおよび抵抗は実質的に一定のままである。第1のインピーダンス成分C1A+C1Bの第1のインピーダンスサブ成分も第2のインピーダンスサブ成分も変化しないため、第1のインピーダンス成分C1Aは実質的に一定のままである。第2の成分C2A+C2Bは、絶縁体層10’および周囲環境Eにより形成されている誘電体によって実質的に決定される。特に、絶縁体層10’が第1のインピーダンスサブ成分C2Aを決定し、環境が第2の成分C2A+C2Bの第2のインピーダンスサブ成分C2Bを決定した。第2の成分C2A+C2Bの第2のインピーダンスサブ成分C2Bは、第1のインピーダンス成分C1A+C1Bの第2のインピーダンスサブ成分C1Bと、同一でない場合には同様である。導管が良好な条件にある場合、複数の成分によって形成されているインピーダンスは既知であり、一定である。しかしながら、絶縁体層10’の下または中に水分が存在し、または導管10の表面に腐食が形成されているときには、絶縁体層10’または絶縁体の下の導管のインピーダンスが変化する。特に、水分または腐食によって、絶縁体層のインピーダンスが変化するので、第1のインピーダンスサブ成分2CAが変化し、これにより、位相測定の変化および振幅測定の変化が引き起こされる。インピーダンスの値のこの変化は、例えば腐食による、導管の表面層の劣化を示し、または絶縁体内の水分の存在を示す。したがって、装置100は、腐食および/または水分を正確に検出することを可能にし、また使用が容易で費用効率が高い。(図1の簡略化されたモデルに示される)他のインピーダンスサブ成分C1A、C1B、C2Bもまた測定値に影響するが、測定値の変化は、表面層の劣化を表す。測定機器140は、電気化学インピーダンス分光測定機器または任意の他のACインピーダンス測定を備え得る。そのような測定を使用すると、インピーダンスの位相および振幅は、周波数の関数として得られる。他のACまたはDC測定機器もまた、絶縁体2の前記部分の下の第1の電極120と第2の電極130との間のインピーダンスを表す値を決定することが可能である限り可能である。
【0034】
第1の電極120および/または第2の電極130は、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、またはグラファイトなどの耐腐食性材料から少なくとも部分的に製造されていることが好ましい。このようにして、第1および第2の電極は、腐食に対してより耐性がある。
【0035】
図2は、水中環境に配置されている導管10を測定するための装置の例示的な一実施形態を概略的に示す。
【0036】
導管10’は、2つの場所間で電力、ビデオ、および/またはデータ信号を搬送する導電体および/または光ファイバの群を包含し得る海底通信または電力ケーブルとして示されている。
【0037】
図2は、測定機器140が環境の外側、例えば水面上に配置され得ることを示している。
【0038】
図2の装置10は、第2の電極130が好ましくは取付けユニット110に一体化されていることをさらに示している。このようにして、第2の電極130と第1の電極120との間の距離が縮小される。したがって、装置100をよりコンパクトに作製することができる。また、第2の電極130が取付けユニット110に一体化されているとき、第1のインピーダンス成分C1Aは、もはや第2のインピーダンスサブ成分を含まない。既知の第1のインピーダンスサブ成分C1Aのみが存在する。このようにして環境を取り囲んでいるものの影響が低減され、装置100の精度がさらに向上する。
【0039】
さらに、図2は、取付けユニット110が導管10の表面上に配置されているときに、取付けユニットによって形成された筐体が、環境Eの一部を包囲するように意図され得ることを示している。その利点は、導管がすべての形状および大きさで利用可能であるという洞察に基づいている。第1の電極120が導管10’の周面に暖かく嵌合することを確実にするのは困難である。環境Eの一部を包囲する利点は、環境、例えば土または水が導電性であることである。また、環境、特に水性環境は順応性がある。環境の包囲された部分は、凹部を満たして、第1の電極120と導管10’の周面との間に接触する導電層を形成する。このようにして、第1の電極120は、導管の筐体が覆う部分の略全体に電気的に接続される。言い換えると、筐体によって包囲される環境は、第1の電極120の一部を形成する。
【0040】
取付けユニット110を導管10’の表面に固定するために、固定手段が使用され得る。固定手段は、導管の表面上に取付けユニット110を押圧する潜水艦であってもよい。固定手段はまた、表面に取付けユニットを締め付けるように構成されているクランプであってもよい。
【0041】
図3は、例示的な一実施形態による、一体化された第2の電極130および筐体を有する装置100を概略的に示す。
【0042】
図3に示す装置100は、導管(図示せず)の表面と密封接触するように意図されている下縁部112を有する少なくとも1つの周壁111を備える。周壁111は、第1の電極120を包含する筐体を形成する。下縁部112は、筐体を環境から密封する。このようにして、第1の電極と第2の電極との間で、間にいずれの誘電体もない直接短絡測定が実質的に回避されて、装置の精度がさらに改善される。
【0043】
図示の例示的な実施形態によれば、筐体は、周壁111を接合する上壁114によってさらに境界を定められている。さらに、第1の電極120は、上壁114に当たってまたは上壁内に配置されている板である。上壁114は、筐体を完全に密封し、そうして筐体は、環境から密封されて装置の精度をさらに改善する。第1の電極120が板であることは、第1の電極120の表面積が実質的に大きいという利点を有する。これにより、インピーダンス値の決定が促進される。さらに、図1に示す実施形態と比較して、第1の電極120を包含する筐体は、第1の電極120が包含されているときでも、空いている空間113が保持されるように構成されている。このようにして、板状電極の利点と環境を包囲する利点が組み合わされる。
【0044】
第2の電極130は、取付けユニット110の周側部に配置されていることが好ましい。このようにして、第2の電極130は比較的簡単な方法で環境に曝される。第2の電極130は、取付けユニット110のいずれの周側部に配置されてもよい。図2および図3は、第2の電極が配置され得る異なる箇所を示す。
【0045】
筐体は、弾性的な圧縮性材料で作られ得る。このようにして、取付けユニット110ならびに筐体は、導管に容易に設置可能である。弾性的な圧縮性材料は、配置されるそれぞれ導管に従って対応して形状を定められる。好ましい一実施形態によれば、取付けユニットは、全体が弾性的な圧縮性材料から作られている。より好ましくは、弾性的な圧縮性材料はエラストマーである。より好ましくは、エラストマーは、シロキサン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリレート系エラストマーの群から選択される1つまたは複数である。
【0046】
図4は、導管を測定するための装置100の例示的な一実施形態を示し、取付けユニット110は、測定器140を収容するようにさらに構成され得る。このようにして、装置100は、一体化されて容易に輸送可能なように形成されている。
【0047】
装置100は、測定器によって決定された値に基づいて、導管内の水分および/もしくは結露の存在ならびに/または導管の腐食の進行を分析するように構成されているコントローラ150をさらに備え得る。このようにして、装置100は、スタンドアローンであるようにさらに設計されている。コントローラ150は、取付けユニット110に一体化されてもよく、または遠隔地もしくは遠隔装置、例えば船舶に配置されてもよい。
【0048】
図5は、遠隔地に配置されているコントローラ150の例示的な一実施形態を示す。
【0049】
そのような例示的な一実施形態では、測定器140は、決定された値を、環境を通して無線で送信するように構成され得る。この利点は、導管が、到達困難な位置、例えば海底または道路の下の地下に配置されていることが多いという洞察に基づいている。装置100が、決定された値を、環境を通して無線で送信するように構成されている測定器140を備えることによって、装置100は、導管上に配置され、環境によって覆われ、実質的な労力なしに決定された値を依然として送信することができる。装置100は、例えば、導管が海洋に配置されるとき、または導管が地中に配置されるときに、同時に沈められる。
【0050】
図6は、接続インターフェース160をさらに備える装置100の例示的な一実施形態を示す。
【0051】
接続インターフェース160は、水中もしくは地下の環境Eの表面の上方または近くに配置されており、接続インターフェースから測定器まで延在する接続ケーブル161を備える。より好ましくは、接続ケーブル161は、決定された値の光ファイバ通信のための光ファイバケーブルである。このようにして、装置によって決定された情報は、環境の外側から測定されることができる。例えば、ユーザは、現場に到着し、接続インターフェースにコンピュータを接続し、インピーダンスを表す値を自分のコンピュータに入力し得る。接続インターフェースは、ワイヤ供給源、エネルギー収率供給源、および電池供給源のうちの少なくとも1つの電源、を備え得る。ワイヤ供給源では、非常に長い寿命の測定を得ることができる一方で、電池供給源は、安価で設置が簡単であることができる。エネルギー収率供給源は、非常にエネルギー効率がよく、自律的であり得、到達するのが困難な導管(長距離導管など)の場合に有利であることができる。接続インターフェース160は、決定された値を無線で、例えば監視システムに送信するように構成されているアンテナを備え得る。このようにして、使用の利便性を高めることができる。さらに、中央制御が可能となる。
【0052】
図7は、装置100が複数の取付けユニット110を備える好ましい一実施形態を示す。図7は、導管の表面層に配置されている2つの取付けユニット110を示す。複数の取付けユニットを配置することによって、水分や腐食を検出することができる面積の大きさを増加させることができる。同様の効果が、単一の取付けユニットに配置された2つの第1電極(図示せず)によって実現されてもよい。複数の取付けユニット110は、図7に示すように、共通の第2の電極を共有してもよい。代替的に、測定器は、取付けユニットの一方の第1の電極と、別の取付けユニット110の別の第1の電極(図示せず)との間のインピーダンスを表す値を決定してもよい。3つ以上の取付けユニット110が表面110上に配置されてもよいことが明らかであろう。
【0053】
図面には示されていないが、本発明はさらに、水中または地下の環境に配置されている導管を測定する方法に関する。方法は、取付けユニット110、第1の電極120、および第2の電極130を、環境を通して移動させることを含む。これは、導管を地下にまたは水中環境に敷設するときに行われ得る。土環境を通して取付けユニットを移動させることは、水性環境を通して取付けユニットを移動させることと同様であると考えられる。水性環境を通して取付けユニットを移動させることは、潜水艦または潜水式装置を使用して行われ得る。
【0054】
取付けユニット110は、導管の表面に配置されており、したがって表面に対して筐体を作り出す。第1の電極は、筐体が第1の電極と環境との間に誘電体を形成するように、第1の筐体に包含されている。第2の電極は、表面からある距離で、および第1の電極からある距離で配置されており、第2の電極を配置するステップは、第2の電極を環境と接触させて配置するステップを含む。最後に、第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスを表す値が決定される。取付けユニットを配置するステップは、環境の一部を筐体に包含するステップを含み得る。これは、水中環境で特に有用である。さらに、取付けユニットを配置するステップは、取付けユニットを表面に押圧しまたは締め付けるステップをさらに含み得る。このことは、例えば、海底ロボットなどを用いて、または導管が地中または水中に配置されるときに取付けユニットを導管に締め付けることを用いて、実行されてもよい。
【0055】
上記で例示した実施形態が水中または地下の導管と組み合わせて説明された場合に、装置は、最上部の絶縁材における水分の侵入を判定するためにも使用されることができると本発明者が発見したことに留意されたい。そのような一実施形態では、第1の電極は、絶縁材、例えばミネラルウール上に配置されている。第2の電極は、一般に住宅または建物において通常容易に入手可能である接地システムによって形成され得る。
【0056】
上述の例示的な実施形態は、本発明を限定するのではなく例示し、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく代替実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に置かれたいずれの参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備える」および「含む」という語は、特許請求の範囲に列挙されていない要素またはステップの存在を排除するものではない。要素に先行する単語「a」または「an」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。「第1」、「第2」、「第3」などの単語の使用は、いずれの順序または優先順位を示すものではない。これらの単語は、便宜上使用される名称として解釈されるべきである。
【0057】
本発明の原理は、特定の実施形態に関連して上記に記載されたが、この説明は単なる例としてなされたもので、添付の特許請求の範囲によって決定される保護範囲の限定としてなされたものではないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7