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  • -ウイルス結合阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】ウイルス結合阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/535 20060101AFI20250314BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250314BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20250314BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250314BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250314BHJP
【FI】
A61K36/535
A61P31/14
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020177625
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068767
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304003251
【氏名又は名称】美容薬理株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦義
(72)【発明者】
【氏名】金井 誠一
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111317798(CN,A)
【文献】特開2015-044755(JP,A)
【文献】特開2016-008196(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111021(WO,A1)
【文献】特開2020-103172(JP,A)
【文献】特開2008-100928(JP,A)
【文献】Pharmacological Research,2020年08月,Vol.161, No.105126,pp.1-7
【文献】Diversity,2020年04月,Vol.12, No.175,pp.1-10
【文献】中薬大辞典,第二巻,1985年,pp.1079-1081
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
A61P 31/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 19/00-19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカジソの葉の水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載の結合阻害剤を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための外用剤。
【請求項3】
請求項1に記載の結合阻害剤を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための化粧料。
【請求項4】
請求項1に記載の結合阻害剤を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための機能性食品。
【請求項5】
請求項1に記載の結合阻害剤を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための実験用の試薬。
【請求項6】
アカジソの葉の水またはエタノール抽出物のSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害するためのウイルス結合阻害剤としての、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための外用剤、化粧料、機能性食品又は実験用の試薬への加工における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルス結合阻害剤に関し、より具体的には、SARS-CoV-2のACE2への結合阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年末頃から2020年に至り、世界は、新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019:COVID-19)の拡大に見舞われている。
【0003】
新型コロナウイルス感染症は、SARSコロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)を病原体とする感染症であり、接触感染や飛沫感染を主な感染経路としつつ、場合によってはエアロゾル感染も成立しうるものと考えられている。
【0004】
典型的な症状としては発熱や空咳、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛、頭痛、下痢などが挙げられるが、症状がない場合や重症の肺炎を起こす場合、更には死亡する場合など感染者個々人によって多様である。
【0005】
各国政府や当局は、更なる感染拡大を防止すべく、消毒薬やマスク、ゴーグルなどの適切な利用を呼びかると共に、ワクチンや治療薬などの開発を随時進めている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“新型コロナウイルス感染症について”,[online],令和2年10月20日,厚生労働省,[令和2年10月20日検索],インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、SARSコロナウイルス2は、主に鼻や目、口、喉などの粘膜において、細胞表面に存在するアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)に結合して感染するとみられている。
【0008】
従って、ACE2に対するSARSコロナウイルス2の結合を阻害できれば、効果的に新型コロナウイルス感染症を予防できると考えられる。
【0009】
また、予防はSARSコロナウイルス2にまだ感染していない状態において実施されるため、ACE2に対するSARSコロナウイルス2の結合阻害剤は、日常の食生活において摂取される食品素材に由来したものであるのが望ましい。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、日常の食生活において摂取される食品素材に由来するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤や、同阻害剤を含む外用剤、化粧料、食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る結合阻害剤では、アカジソの葉の水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤とした。
【0012】
また、本発明に係る外用剤や化粧料、機能性食品、実験用の試薬は、上記アカジソの葉の水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤を含むSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のためのものとした。
【0014】
また本発明では、アカジソの葉の水またはエタノール抽出物をSARS-CoV-2のACE2への結合を阻害するためのウイルス結合阻害剤として、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための外用剤、化粧料、機能性食品又は実験用の試薬への加工において使用することとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る結合阻害剤によれば、アカジソの葉の水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤としたため、日常の食生活において摂取される食品素材に由来するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る外用剤や化粧料、機能性食品、実験用の試薬によれば、上記アカジソの葉の水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤を含むSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のためのものとしたため、SARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害可能な外用剤や化粧料、機能性食品、実験用の試薬を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る機能性食品では、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための機能食品であることとすれば、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害機能を備えた食品として提供することができる。
【0018】
また、アカジソの葉の水またはエタノール抽出物をSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害するためのウイルス結合阻害剤として、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害のための外用剤、化粧料、機能性食品又は実験用の試薬への加工において使用すれば、ACE2を表面タンパクとして発現する細胞へのSARSコロナウイルス2の感染を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ACE2阻害活性測定試験結果を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、SARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤に関するものであり、また、同結合阻害剤を含有する外用剤や化粧料、食品等について提供するものでもある。
【0021】
2020年現在において、世界中で流行している新型コロナウイルス感染症に対しては、現在のところ、有効な薬剤やワクチンなどは確認されていない。
【0022】
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の原因であるSARSコロナウイルス2がどのように人体へ感染するのかについては徐々に解明されつつある。
【0023】
SARSコロナウイルス2は、ヒトの細胞内に侵入する際に、アンジオテンシン変換酵素II(ACE2)が足掛かりとなる。
【0024】
そしてヒトの場合、ヒト細胞上に存在するACE2にウイルスの持つスパイクタンパク質が結合することにより、ウイルスのヒト細胞への侵入が開始される。
【0025】
このACE2を阻害することができれば、ウイルスはヒト細胞内に侵入することができないため、新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が期待できる。
【0026】
一方で本発明者らは、これまでに様々な天然素材が持つ生理活性について研究を行う中で、アカジソのエキスがSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害することを見出し、本発明に係るウイルス結合阻害剤を完成させた。
【0027】
ここでアカジソは、シソ科シソ属に属するPerilla frutescens var. frutescens form. purpureaとして知られる植物であり、本邦では赤紫蘇として広く一般的に栽培されている植物である。
【0028】
本実施形態に係る結合阻害剤に含まれるアカジソのエキスは、乾燥させたアカジソの葉の抽出物である。
【0029】
具体的には、アカジソの水抽出物は、所定温度の水を抽出溶媒として乾燥したアカジソの葉から抽出されたものである。抽出温度は特に限定されるものではないが、例えば4℃~100℃、限定的には10℃~50℃、更に限定的には15℃~30℃程度の水を使用することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る結合阻害剤は、アカジソのエタノール抽出物を含むものであっても良い。アカジソのエタノール抽出物は、所定温度のエタノールを抽出溶媒として乾燥したアカジソの葉から抽出されたものである。抽出温度は特に限定されるものではないが、例えば4℃~100℃、限定的には10℃~50℃、更に限定的には15℃~30℃程度のエタノールを使用することができる。
【0031】
水抽出物やエタノール抽出物を得る際の抽出処理の手法は特に限定されないが、一例としては所定の容器に抽出溶媒と乾燥アカジソ葉とを収容して振盪抽出する方法が挙げられる。
【0032】
また、抽出処理後の抽出液は、そのまま本実施形態に係る結合阻害剤の水抽出物やエタノール抽出物としても良いが、乾燥させた上で水抽出物やエタノール抽出物とすることもできる。
【0033】
乾燥方法は特に限定されるものではなく、抽出規模や精度に応じて適宜選択することが可能であるが、水抽出液の乾燥は、例えば凍結乾燥を採用することができ、また、エタノール抽出液の乾燥は、例えばロータリーエバポレータによる乾燥やデシケータでの乾燥を採用することもできる。なお、ロータリーエバポレータにて乾燥する場合、必要に応じて加温減圧下としたり、沸騰の有無など目的や状況に応じて乾燥条件を適宜調整しても良い。
【0034】
このようにして抽出された水またはエタノールの抽出物は、固体(粉体)や液体などの状態を問わず、そのまま本実施形態に係る結合阻害剤として利用することが可能であるが、必要に応じて補助成分を添加することも可能である。
【0035】
ここで補助成分とは、例えば、例えばウイルスの結合を阻害する成分の経時的な機能喪失を抑制するための成分や、剤形を整える上で必要な成分、香味を整えるための成分、その他必要な成分などが挙げられる。
【0036】
現時点では、ウイルスの結合を阻害する成分または成分群が何であって、どのような機序によるものなのかは今後の研究が待たれるところではあるが、例えばこの成分が酸化によって経時的に結合阻害機能を喪失してしまうならば、これを抑制するための酸化防止剤は補助成分に該当する。また、変性によって結合阻害機能を喪失するのであれば、所定の変性防止剤が補助成分に該当する。
【0037】
その他、賦形剤や香料など、外用剤や化粧料、食品、試薬等に加工する上で必要に応じて補助成分を添加しても良い。
【0038】
ここで外用剤は、皮膚や粘膜に塗ったり貼ったり噴霧したりして使うものであり、医薬品や医薬部外品を含むと共に、化粧料や食品に分類されないものも含む概念である。外用剤には軟膏・クリーム剤・外用液剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤、貼付剤、吸入剤、舌下剤などが含まれ、理解に供すべく具体例を挙げるならば、例えば、洗口液や洗眼液、うがい液などが挙げられる。
【0039】
化粧料は、いわゆるメーキャップ化粧品の他、基礎化粧品やヘアトニック、香水、歯磨き、シャンプー、リンス、身体の洗浄等に用いられる石鹸や洗浄料、入浴剤などのトイレタリー製品も含むものであり、また、予防効果等を謳う、薬用化粧品も含まれる。
【0040】
また、メーキャップ化粧品としては、ファンデーションや眉墨(アイブロー)、マスカラ、アイシャドー、アイライン、口紅、グロス、頬紅(チーク)、白粉、マニキュアなどが挙げられ、基礎化粧品としては、例えば化粧水や乳液、洗顔料、クレンジング、美容液、クリームなどが挙げられる。なお化粧水には、リフレッシュミストの如く顔や手肌に対して噴霧する液剤(噴霧液)も含まれる。
【0041】
また機能性食品は、医薬品成分を含まない健康の保持増進に寄与するとされる食品全般を包含する概念であり、例えば、栄養補助食品や健康補助食品、栄養調整食品のほか、所謂サプリメントなどの一般食品であったり、特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品の如き保健機能食品も含まれる。
【0042】
なお、上述した外用剤や化粧料、食品についての説明は、本発明の理解に供すべくこれらに相当する物品等の一例を列挙したものであり、各語句の解釈はこれら列挙された物品等に限定されるものではない。ただし、本出願人が本願を権利化するにあたり、本発明をこれら物品等に限定することを妨げない。
【0043】
また、本実施形態に係る結合阻害剤は、実験用の試薬や臨床検査薬として使用することも可能である。
【0044】
このように、アカジソの水またはエタノール抽出物をSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害するために使用することで、日常の食生活において摂取される食品素材に由来するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤や、同阻害剤を含む外用剤、化粧料、食品を提供することができる。
【0045】
ところで、本実施形態に係る結合阻害剤はSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害するための剤であるが、ACE2を発現する細胞、すなわち、SARSコロナウイルス2の感染対象であって結合阻害剤によって結合が阻害される細胞は、ヒトを構成する細胞であっても良いのは勿論のこと、非ヒト動物を構成する細胞であっても良い。
【0046】
すなわち、ヒトはSARSコロナウイルス2に感染するが、2020年時点においてネコ科の動物もまた宿主となりうることが示唆されている。宿主特異性の高いウイルスにおいてネコ科動物細胞も宿主になり得るということは、ネコ科動物細胞表面にもヒトACE2(hACE2)に似た膜タンパク(ここでは、ネコ科ACE2様膜タンパクという。)が発現している蓋然性が高く、従って、本実施形態に係る結合阻害剤が、SARSコロナウイルス2のネコ科ACE2様膜タンパクへの結合を阻害するための剤として機能し得る蓋然性も高い。
【0047】
付言すれば、本実施形態に係る結合阻害剤や、同阻害剤を含む外用剤、化粧料、食品は、宿主細胞を備えた生物に対する外用剤、化粧料、食品としても機能しうる点に留意すべきである。
【0048】
また、ヒトACE2やネコ科ACE2様膜タンパクを発現する宿主細胞は、生体を構成する細胞のみならず、培養細胞であっても良い。in vitroにおいても、何ら変わりなくSARSコロナウイルス2の宿主細胞への感染を防止することが可能である。
【0049】
以下、本実施形態に係る結合阻害剤に関し、評価サンプルがACE2とウイルススパイクタンパク質の結合を阻害するかについて検討した過程を参照しつつ説明する。
【0050】
(1.評価サンプルの調製)
福岡県遠賀郡芦屋町の赤紫蘇畑で栽培されたアカジソから葉を採取し、60℃にて乾燥させ、乾燥葉をミルにて粉砕した。
【0051】
次に、2つの三角フラスコにそれぞれ1gずつ粉砕葉を分取し、一方のフラスコには100mlの水を分注し、もう一方のフラスコには100mlのエタノールを分注した。
【0052】
そして、密栓した上で両フラスコを振盪抽出機に装着し、室温にて200rpmで24時間に亘り振盪抽出処理を行った。
【0053】
振盪抽出処理を終えた後、水抽出のフラスコの内容物を3000rpmで10分間の遠心分離に供し、上澄みを得て凍結乾燥処理を施した。得られた凍結乾燥物を、アカジソの水抽出物とした。
【0054】
また振盪抽出処理後のエタノール抽出のフラスコは、内容物をNo.2の濾紙にて濾過し、ロータリーエバポレータを用いて濃縮・乾固させた。得られた乾燥物を、アカジソのエタノール抽出物とした。
【0055】
次に、各抽出物を用いて結合阻害剤の調製を行った。水抽出物を含む結合阻害剤は、水に水抽出物を0.64 mg/mLの濃度で溶解させることにより調製した。また、エタノール抽出物を含む結合阻害剤は、エタノールにエタノール抽出物を0.8 mg/mLの濃度で溶解させることにより調製した。
【0056】
(2.ACE2阻害活性測定試験)
次に、調製した両結合阻害剤を用いてACE2阻害活性測定試験を行うことにより、結合阻害剤がACE2とウイルススパイクタンパク質の結合を阻害するかについて検討を行った。
【0057】
ACE2阻害活性は、ACE2:SARS-CoV-2 Spike Inhibitor Screening Assay kit (BPS Bioscience)にて測定した。まず、ACE2-Hisをプレートにコーティングした。次に、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質および評価サンプルを加えてプレート上でインキュベートし、SARS-CoV-2スパイクタンパク質とACE2-Hisを結合させた。
【0058】
最後に、HRP標識Anti-His抗体を加え、HRPの化学発光基質を追加して発光量を測定することで、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質とACE2-Hisの相互作用および評価サンプルによる阻害活性を評価した。
【0059】
なお、ポジティブコントロールとして、中国やロシアで抗インフルエンザ薬として用いられているアルビドールの0.52μg/mL溶液を使用して比較した。また、更なる比較対照として、バラ科の植物Aの葉を同様に処理して水抽出した比較抽出物A1と、サンゴハリタケ科の菌類Bを同様に処理して水抽出した比較抽出物B1についても試験に供した。
【0060】
(3.結果及び考察)
各結合阻害剤が新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が期待できるか検討するため、結合阻害剤がACE2とウイルススパイクタンパク質の結合を阻害するかを評価した。
【0061】
図1は、水抽出物を含む結合阻害剤とエタノール抽出物を含む結合阻害剤とによるACE2-ウイルススパイクタンパク質の結合阻害活性(%)を示した説明図である。図1からも分かるように、水抽出物を含む結合阻害剤とエタノール抽出物を含む結合阻害剤のいずれについても、90%以上のACE2-ウイルススパイクタンパク質結合阻害活性を示した。
【0062】
したがって、本実施形態に係る結合阻害剤は、宿主細胞に存在するACE2とウイルススパイクタンパク質の結合を阻害することにより、SARSコロナウイルス2の細胞内への侵入を阻害する物質を含むことが確認された。
【0063】
また、本実施形態に係る結合阻害剤を含む外用剤や化粧料、食品、実験用の試薬、臨床検査薬についても、SARSコロナウイルス2のヒトACE2への結合を阻害できることが示された。
【0064】
上述してきたように、本実施形態に係る結合阻害剤によれば、アカジソの水またはエタノール抽出物を含有するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤としたため、日常の食生活において摂取される食品素材に由来するSARSコロナウイルス2のACE2への結合阻害剤を提供することができる。
【0065】
また、アカジソの水またはエタノール抽出物をSARSコロナウイルス2のACE2への結合を阻害するために使用すれば、ACE2を表面タンパクとして発現する細胞へのSARSコロナウイルス2の感染を抑制することができる。
【0066】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
図1