(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】レーザエネルギーのマルチエミッタを備えたデバイス及び加温処置を行うための関連アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/22 20060101AFI20250314BHJP
A61N 5/067 20060101ALN20250314BHJP
【FI】
A61B18/22
A61N5/067
(21)【出願番号】P 2023573230
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 FR2022050564
(87)【国際公開番号】W WO2022248778
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-27
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】500025477
【氏名又は名称】アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
(73)【特許権者】
【識別番号】523375467
【氏名又は名称】フォンダシオン ボルドー ユニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ケッソン
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0151639(US,A1)
【文献】国際公開第2020/247016(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0125447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/22
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の標的領域を加温処置するために提案されるレーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイス(1)であって、
-長手方向軸(AA’)を有し、近位端(151)と、前記標的領域に面して配置されるように意図された遠位端(152)と、を備える少なくとも1つのシース(150)と、
前記シース内で、前記近位端と前記遠位端との間に延在する少なくとも2つの光ファイバ(123、124、125、126、127)であって、前記光ファイバの各々は、加温処置レーザビームを前記標的領域に誘導し、前記標的領域にレーザエネルギーを蓄積させるのに適しており、少なくとも2つの光ファイバの前記遠位端は、各々が前記シースの前記長手方向軸に対して異なる放射方向にレーザビームを放射するように構成された、少なくとも2つの光ファイバと、
複数の単色レーザ源(23、24、25、26、27、28)を備え、少なくとも2つのレーザビームを生成するように構成されたレーザ源のシステム(19)であって、前記少なくとも2つのレーザビームは、調整可能な光パワーを有して異なった波長又は同一の波長を有する、レーザ源のシステム(19)と、
前記標的領域の幾何学的形状に一致する前記幾何学的形状を有する3D熱分布を動的に生成し調整するように、前記標的領域の方向に前記光ファイバによって誘導され放射される前記レーザビームの各々の前記波長と、前記光パワーと、前記レーザエネルギーの蓄積の持続時間と、前記放射の時点とを選択するように、前記レーザ源のシステムを制御するように構成されたレーザビーム制御ユニット(31)と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
少なくとも2つの光ファイバの前記遠位端は、前記シース(150)の前記遠位端の表面から異なる距離に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光ファイバの前記遠位端は、前記シース(150)の前記長手方向軸に対して0度から180までの間の角度αで向けられた放射方向にレーザビームを放射するように構成される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記レーザ源のシステム(19)は、複数の
レーザダイオードを備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記レーザ源のシステムは、各光ファイバに対して異なったレーザ波長の少なくとも2つのレーザビームを生成するように適合される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記レーザ源のシステム(19)によって生成された前記レーザビームを、前記シース(150)の前記光ファイバ(123、124、125、126、127、128)に伝送することができる複数の光伝送ファイバ(43、44、45、46、47、48)を更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
温度センサを更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記温度センサは、前記標的領域の温度変化を検出できる検出用光ファイバ(128)である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記光ファイバ(123、124、125、126、127)は、加温処置に用いられるとき、前記検出用光ファイバ(128)の周りに半径方向対称に沿って分布している、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記シース(150)の前記光ファイバ(123、124、125、126、127、128)を前記レーザ源のシステム(19)の前記光伝送ファイバ(43、44、45、46、47、48)と接続することができる接続手段(30、130)を更に備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
前記シース(150)は、前記標的領域に向かって放出されるように意図された圧力下で、治療物質を注入するように適合された少なくとも1つのルーメン(158)を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記シース(150)は、前記シース(150)の前記遠位端(152)の一部を冷却するように意図された冷却液を輸送するように適合された閉冷却回路を備える、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記閉冷却回路は、前記シース内に設けられた少なくとも2つのルーメン(158、159、160)によって形成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記閉冷却回路は、前記光ファイバを備える前記シース(150)を囲んでいる冷却シース(161)と、前記シース(150)内に設けられたルーメン(158)と、によって形成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
生体組織の標的領域の加温処置のためのアセンブリ(500)であって、
-前記標的領域を治療するための、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のデバイスと、
前記標的領域の解剖学的画像及び測温画像を生成するように構成された磁気共鳴撮像システム(50)と、
を備える、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術中撮像による誘導下での温度の局所的変動を使用して生体組織を処置する分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、複数のレーザビームを放射して、任意の形状であり、潜在的に非対称である所定の標的領域に対応する3D温度変化を生体組織に誘導することができるレーザエネルギーのマルチエミッタを有するデバイスに関する。
【0003】
本発明はまた、MRI撮像デバイスに結合されたレーザエネルギーのマルチエミッタを有するそのようなデバイスを備える加温処置アセンブリに関する。
【背景技術】
【0004】
エネルギー源による温度上昇(温熱療法)又は温度低下(低体温療法)の標的投与によって、病的な生物組織を局所的に処置することが知られている。例えば、エネルギーは、レーザ、マイクロ波、高周波、集束超音波によって、又は寒冷療法によって提供されることがある。
【0005】
これらの技術の中で、遠隔に配置されたエネルギー発生器手段(誘導による集束超音波又は無線周波数波)を介して生体組織の標的領域にエネルギー用量を蓄積することからなる第1の加温処置カテゴリと、経皮若しくは血管経路(無線周波数、レーザ、マイクロ波、寒冷療法)によって標的領域にエネルギー用量を蓄積することからなる第2の加温処置カテゴリとが区別される。本発明の加温処置システムは、第2のカテゴリに属する。
【0006】
加温処置の前の、「術前計画段階」と称される段階は、標的領域のサイズ、数、位置、及び形状を決定することができる、例えばコンピュータ断層撮影(「TDM」と呼ばれることがある)による又は磁気共鳴撮像(Magnetic Resonance Imaging)(「MRI」と呼ばれることがある)による好適な撮像技術のおかげで、標的領域の3D拡張を評価することが意図されている。
【0007】
この術前計画段階中に、標的領域の寸法のグローバルインジケータ、それらの数、及び識別可能な解剖学的基準に対するそれらの相対位置が、一般に規定される。
【0008】
計画段階はまた、処置命令を定義、すなわち、処置されることになる生体組織の機能的特性、標的領域のサイズ、及び病理組織の重症度の関数として、ある体積において送達されることになる熱エネルギーの用量を定義することからなる処置を準備することを目的とする。
【0009】
処置を有効にするために、標的領域は、映し出すとき可視である病理組織と、任意選択で、病理組織の周囲で医師によって規定される、観察されるべき最小安全マージンとを含むように規定される。この標的領域は、病理組織を処置するために適合された温度変化を受けるべきである。
【0010】
標的領域は、一般に、組織が健康であり、理想的には加温処置中に有害な熱変動を受けるべきではない領域によって囲まれている。標的領域を囲むこの領域において、保存されるべき1つ以上の重大な領域(重要な器官及び/又は構造)が区別され得る。
【0011】
組織が健康であり、重大な領域を含まない領域では、組織は、理想的には、加温処置中に温度変化を受けるべきではない。それにもかかわらず、起こり得る温度変化は、患者にとって重大であるとは考えられない。
【0012】
加温処置技術は外科手術よりもはるかに侵襲性が低いが、いくつかの欠点がある。
【0013】
この技術の効率の主な制限の1つは、処置されることになる標的領域の任意の形状によるものである。実際、既知の温熱処置デバイスでは、蓄積されるエネルギーは、一般的に、適用点の周りの球状又は楕円状の体積を加熱することを目的としている。しかしながら、提案されたデバイスは、アプリケータによって生成された損傷の形状を、処置されることになる標的領域の形状に調整することを可能にしない。一方、組織における熱の分布は、それらの固有の熱特性(吸収、熱拡散率、灌流)に依存し、多くの場合、医師によって計画された熱分布に関する温度の空間分布の修正をもたらす。したがって、蓄積されたエネルギーは、全ての標的領域の完全な処置を保証することを可能にしない。
【0014】
有効温度分布の形状と標的領域の形状との間の適合性の欠如は、標的領域の特定のエリアにおける不十分なエネルギー蓄積及び/又は保存されることになる重大な領域における任意の望ましくないエネルギー蓄積につながる可能性がある。損傷の形状の適合性の欠如の結果の1つは、不完全な処置の数の増加であり、関連する局所再発のリスクである。同様に、健康な生体組織を変化させるリスクが強調され、潜在的に重篤な副作用のリスクが増大する。
【0015】
標的領域と接触してレーザエネルギー用量を蓄積させるために、光ファイバ又は光ファイバのセットを使用することが知られている。実際、光ファイバの使用は、その遠位端を標的領域と直接接触させ、レーザ源を使用して放射された光エネルギーを吸収することによって、必要とされる熱エネルギーを標的領域に蓄積することを可能にする。
【0016】
知られている例示的な実施形態は、光ファイバ又は光ファイバのセットを組み込む主シースを備えるデバイスである。シースの遠位端は開口部を備え、この開口部を通して、光ファイバ又は光ファイバのセットの端部が、標的領域を局所的に処置することが意図された照射光エネルギーを放射する。この解決策は、光ファイバを標的ゾーンに可能な限り近づけることを可能にする。しかしながら、上述した全ての技術的な制約を満たすことはできない。
【0017】
したがって、本発明の目的の1つは、処置目的に従って処置を生み出すことができるように、放射方向がファイバごとに異なり、処置中に動的に調整可能であることが可能である複数の光ファイバを有する放射デバイスを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、独立して放射される各レーザファイバの光パワー及び波長を制御すること及び調整することができるデバイスを提案することができることである。波長の調整は、生体組織がそれらの波長の関数として光を異なって吸収するので、誘発される加温深さを調節することを可能にする。
【0019】
本発明の別の目的は、標的領域の幾何学的形状に適合された幾何学的形状を有する3D分布を処置中にリアルタイムで生成し調整するために、各光ファイバの光パワー及び放射時点を制御すること及び調整することができるデバイスを提案することができることである。
【0020】
本発明の別の目的は、デバイスの遠位端における温度をリアルタイムで測定するためのデバイスを提供し、したがって、温度測定撮像システムに加えて温度を測定するための手段を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明から明らかになるが、しかしながら、以下の説明は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。
【発明の概要】
【0022】
レーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイスは、生体組織の標的領域を加温処置するために提案され、
-長手方向軸(AA’)を有し、近位端と、標的領域に面して配置されるように意図された遠位端と、を含む少なくとも1つのシースと、
-シース内で、近位端と遠位端との間に延在する少なくとも2つの光ファイバであって、光ファイバの各々は、加温処置レーザビームを標的領域に誘導し、標的領域にレーザエネルギーを蓄積させるのに適している、少なくとも2つの光ファイバと、
-少なくとも2つの光ファイバの遠位端は、各々がシースの長手方向軸に対して異なる放射方向にレーザビームを放射するように構成され、
-少なくとも2つのレーザビームを生成するように構成されたレーザ源のシステムであって、少なくとも2つのレーザビームは、調整可能な光パワーを有して異なった又は同一の波長を有する、レーザ源のシステムと、
-標的領域の幾何学的形状に一致する幾何学的形状を有する3D熱分布を動的に生成し調整するように、光ファイバによって、標的領域の方向に誘導され放射されるレーザビームの各々の波長、光パワー、レーザエネルギーの蓄積の持続時間、及び放射時点を選択するように、レーザ源のシステムを制御するように構成されたレーザビーム制御ユニットと、
を備える。
【0023】
次の段落で開示される特徴は、任意選択で実装されることがある。これらは、互いに独立して、又は互いに組み合わせて実装されることがある。
【0024】
少なくとも2つの光ファイバについての遠位端は、シースの遠位端の表面から異なる距離に配置される。
【0025】
光ファイバの遠位端は、シースの長手方向軸に対して0度から180度までの間の角度αで向けられた放射方向にレーザビームを放射するように構成される。
【0026】
レーザ源のシステムは、複数の単色レーザ源を備える。
【0027】
レーザ源のシステムは、各光ファイバに対して異なるレーザ波長の少なくとも2つのレーザビームを生成するように適合される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、デバイスは、レーザ源のシステムによって生成されたレーザビームを、シースの光ファイバに伝送することができる複数の光伝送ファイバを更に備える。
【0029】
好ましくは、デバイスは温度センサを更に備える。
【0030】
一実施形態によれば、温度センサは、標的領域の温度変化を検出可能な検出用光ファイバ(detection optical fiber)である。
【0031】
一実施形態によれば、複数の加温処置用光ファイバ(heat-treatment optical fiber)は、検出用光ファイバの周りに半径方向対称に従って分布している。
【0032】
有利には、デバイスは、シースの光ファイバを、レーザ源のシステムの光伝送ファイバと接続することができる接続手段を更に備える。
【0033】
特に有利な実施形態によれば、シースは、標的領域に向かって放出されるように意図された圧力下で、治療物質を注入するように適合された少なくとも1つのルーメンを備える。
【0034】
別の実施形態によれば、シースは、シースの遠位端の一部を冷却するように意図された冷却液を輸送するのに適合された閉冷却回路(closed cooling circuit)を備える。
【0035】
一変形例によれば、閉冷却回路は、シースに設けられた少なくとも2つの開口部によって形成される。
【0036】
好ましくは、冷却回路は、光ファイバを含むシースを囲んでいる冷却シースと、シース内に設けられたルーメンとによって形成される。
【0037】
別の態様によれば、加温処置アセンブリは、生体組織の標的領域に関して提供され、
-標的領域を治療するための、上記で定義されたレーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイスと、
-標的領域の解剖学的画像及び測温画像を生成するように構成された磁気共鳴撮像システムと、
を備える。
【0038】
他の特徴、詳細及び利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイスを示す。
【
図2】本発明の別の実施形態に係るレーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイスを示す。
【
図3】光ファイバのアセンブリを含むシースの斜視図を概略的に示す。
【
図4】一実施形態に係るシース内の3本の処置用光ファイバのセットの側面図及び断面図を概略的に示す。
【
図5】デバイスが3つのシースを備え、シースの各々が5つの光ファイバのアセンブリを備える一実施形態の斜視図を概略的に示す。
【
図6A】処置用光ファイバを受け取るための5つのルーメンと、温度センサを受け取ることを意図した、又は冷却液若しくは治療物質を注入することを意図した第6の中央ルーメンとが提供されたシースの一実施形態の断面図及び正面断面図を示す。
【
図6B】閉冷却回路を形成するために2つの追加のルーメンが提供された
図6Aのシースの一実施形態の断面図及び正面図を示す。
【
図6C】中央ルーメンを有する閉冷却回路を形成するために冷却シースによって囲まれた
図6Aの光学シースの例示的実施形態の断面及び正面断面図を示す。
【
図7】MRI撮像デバイスに結合されたマルチエミッタを有するレーザデバイスを備える本発明の一実施形態に係る加温処置アセンブリを示す。
【
図8A】6つの光エネルギーを放射することが可能な6つの処置用光ファイバを備えるシースを概略的に示す。
【
図8B】
図8Aのシースを用いたMRI温度測定によって得られた6つの温度画像を示し、各温度画像が、単一の光ファイバのアクティベーション(activation)と同時に得られ、各光ファイバが、次々と連続的にアクティベート(activate)される。
【
図8C】同じパワーを有する6本の光ファイバについての同時のアクティベーション(activation)の間に
図8Aのシースで得られた温度画像を示す。
【
図9】遠位端が標的領域の両側に位置付けられる2つのシースを伴う使用の実施例を概略的に示す。
【
図10】処置用光ファイバごとに異なる波長の2つのレーザビームを生成することができるレーザ源システムの一実施形態を概略的に示す。
【
図11】6本の光ファイバを備えるレーザ源のシステムの正面図を概略的に示す。
【
図12】
図11の6本の光ファイバの各々によって放射された個々のレーザビームの写真を示す。
【
図13】各々の光ファイバの連続したアクティベーション(activation)の間のMRI温度測定によって得られた温度画像を示し、グラフの曲線が、6つの画素における温度の変化を示し、各画素が、異なる光ファイバによってカバーされた角度セクタにおいて選択される。
【
図14】三角形(a)、楕円形(b)、及び半円形(c)の3つの幾何学的熱分布形状を生成する3つの異なったアクティベーションコンフィグレーション(activation configuration)についてMRI温度測定によって得られた温度画像を示し、表示された各画像が、選択されたダイオードによる温度の最大増加に対応するレーザ放射の終了時に選択され、各画像上に示された番号が付けられた点が、右のグラフ上に経時的な温度の曲線を表示するために選択された画素である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
本発明の文脈において、「標的領域(target region)」とは、映し出すとき可視である処置されるべき病理組織を含む領域及び病理組織を囲む領域であると理解されるべきである。病理組織の周りの近傍の範囲は、医師によって規定される。標的領域は、病理組織を処置するために温度変化を受けるべきである。この領域は
図7においてRcと示されている。
【0041】
本発明の文脈では、3D解剖学的画像は、標的領域及びその環境の解剖学的構造を表す再構成画像である。この3D解剖学的画像は、異なる撮像技術によって得られることがある。
【0042】
本発明の文脈において、3D温度画像は、標的領域の及びそれを囲む領域の温度の空間分布を表す3D画像である。3D温度画像は、MRI磁気共鳴撮像デバイスによって、感温撮像シーケンスと、標的領域及びそれを囲む領域における温度変化を計算し表示するリアルタイム画像処理デバイスと、を使用して取得される。
【0043】
本開示の文脈において、「近位(proximal)」は、操作者又は医師がデバイスを使用しているときに操作者又は医師の近くに位置するデバイスの部品又は部分を指し、「遠位(distal)」は、この使用中に操作者から離れているデバイスの部品又は部分を意味する。
【0044】
実施形態の説明
大部分について、図面及び以下の説明は、特定の要素を含む。したがって、それらの要素は、本開示をよりよく理解するために使用され得るだけでなく、適用可能な場合、その定義にも寄与し得る。
【0045】
以下において、本発明は、標的領域の加温処置と、加温処置中の温度変化の検出との場合に、より詳細に説明される。しかしながら、これは、システムが、この目的のために提供されたシースのルーメンに導入される処置溶液又は他のタイプの流体の注入と共に使用され得る限り、限定的ではない。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態によるレーザエネルギーのマルチエミッタを有するデバイス1を概略的に示す。
【0047】
デバイス1は、複数のレーザビームを生体組織の標的領域に向けて輸送するように意図された複数の光ファイバ123、124、125,126、127、128と、レーザ源のシステム19と、主制御ユニット10とを備える。レーザ源のシステム19は、光ファイバに注入され、光ファイバによって標的領域に誘導されるように意図された複数のレーザビームを生成するように構成される。複数のレーザビームの一部は、標的領域を照射して、温度変化を誘発し、及び/又は標的領域に先に蓄積された溶液中に存在する分子をアクティベート(activate)するように意図されている。主制御ユニット10は、レーザ源のシステム19を制御して、光ファイバの各々に対する処置用レーザビームの各々の波長、光パワー、レーザエネルギー蓄積の持続時間、及び放射時点を選択させるように構成される。
【0048】
デバイスはまた、シースと接触している標的領域の温度を測定する機能を有する1つ以上の温度センサを備える。
【0049】
一実施形態によれば、温度センサは、光ファイバのうちの1つによって形成され、光ファイバによって放射される複数のレーザビームのうちの少なくとも1つのレーザビームは、加温処置中の標的領域の温度の変動を検出するように意図される。レーザビームの制御ユニット10はまた、温度の測定に専用のこの光ファイバから来る検出レーザビームを受信するように構成される。
【0050】
一変形例によれば、温度センサは、例えば、シースのルーメンの1つに挿入された熱電対であり得る。熱電対は、レーザビームの制御ユニット10に接続される。
【0051】
図3を参照すると、光ファイバ123、124、125、126、127、128は、光ファイバを一緒に保持する働きをするシース150内に保持される。シース150は、対象とする治療用途に応じて、長手方向軸AA’を有する実質的に円筒形状の可撓性又は剛性本体の形態である。シースは、近位端151と、標的領域に面して配置されるように意図された遠位端152とを備える。シース150は、外科的処置に適合する材料で作られ、光ファイバによって放射された光ビームが通過することを可能にするように適合される。シースはルーメンが提供され、各々のルーメンは、シース150の遠位端152と近位端151との間に延びる光ファイバを収容している。
【0052】
特に有利な形態によれば、シースは、レーザ源のシステム19に取り外し可能に接続されることが可能なエンドピースの形態である。シースは、例えば、1.8mmの外径及び1.2mmの内径を有する。シースは、光線の吸収により黒くなり得る保護表面で覆われてもよく、光ファイバのセットを変更することなく保護表面を変更することが可能である。
【0053】
一実施形態によれば、光処置用ファイバ及び光検出用ファイバは、50μmから1000μmまでの間の、好ましくは100から400ミクロンまでの間の直径を有する。
【0054】
図1、
図2、及び
図3において、5本の光ファイバ123、124、125、126、127は、例えば、各々が標的領域を処置するように適合された波長を有する光ビームを伝送するように適合された処置用光ファイバであり、第6の光ファイバ128は検出用ファイバであり、標的領域の温度変化を測定する機能を有する。以下の説明では、「処置用ファイバ」又は「エミッタ」という用語は、加温処置に専用の光ビームを伝送するように意図された光ファイバを指すために使用され、「検出用ファイバ」という用語は、温度変化の検出に専用の光ファイバを指すために使用される。
【0055】
5つのエミッタ又は処置用ファイバによって放射される5つの光ビームは、各々、例えば72°の角度を有する角度セクタをカバーして、360°の完全な一回転に従って放射することができる。別の変形形態によれば、シース150は、各々が36°の角度セクタをカバーすることを可能にする10個の光エミッタを備えることがある。エミッタの数は限定されない。
図1、
図2、
図3及び
図4に示された構成の例は限定的なものではなく、要件に応じて変更することができる。
【0056】
一実施形態によれば、処置用ファイバの各々の遠位端は、シースの遠位端に関して異なる距離Lに位置決めすることができ、シースの長さ方向における光ファイバの各々の相対位置を調整することを可能にする。
【0057】
一実施形態によれば、エミッタの各々の遠位端は、異なる方向に向けられた光ビームを放射するように構成される。光ファイバの各々の遠位端は、例えば、放射方向が、光ファイバの主軸AA’に関して定義された角度αに向けられたレーザビームを放射するように研磨される。この角度は、0度から180度までの間であり得る。したがって、各々が所定の角度セクタを照らす光ビームのセットを放射することができる光ファイバのセットを得ることが可能である。
【0058】
異なる放射方向を有し、シースに沿った異なる遠位位置にある、エミッタの各々の遠位端によって放射される異なる光ビームの組み合わせは、標的領域の形状に適合された寸法及び幾何学形状の損傷を生成することを可能にする。
【0059】
図4は、3つの処置用ファイバ又はエミッタ123、124、125を備えるシース150の例を示す。処置エミッタ123、124、125の各々の遠位端は、シースの遠位端152からそれぞれ異なる距離L1、L2、L3に位置付けられる。エミッタの各々は、異なる方向に光ビームを放射し、したがって、異なる角度セクタをカバーする。3つの方向の各々は、本明細書では、ビームの対称軸と光ファイバの主軸AA’との間に含まれる異なる角度α1、α2、α3によって定義される。角度αは、0度から180度までの間であり得る。
【0060】
別の実施形態によると、デバイスはまた、複数の光学シースを備えることもある。
【0061】
図5を参照すると、デバイスは、例えば、3つの光学シース210、220、230を備えることがある。光学シース210、220、230の各々は、ここでは、それぞれ5つの処置用光ファイバ211、212、213、214、215、221、222、223、224、225、231、232、233、234、235と、中央検出用光ファイバ216、226、236とを備える。同じセットのファイバによって輸送される光ビームは、例えば、異なる波長、異なるパワー、異なる放射時間、及び異なる放射時点を有することができる。光ファイバの遠位端の形状と、シースの遠位端に関するそれらの遠位位置とに応じて、それらは、シースに沿って異なる放射方向及び異なる遠位放射位置を有することがある。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、
図6Aを参照すると、シースは、中央ルーメン158の周りに半径方向対称に沿って配置された5つのルーメン153、154、155、156、157を備える。周辺ルーメン153、154,155、156、157は、例えば、各々が処置用光ファイバを受け取るように意図されている。シースの中央ルーメン158は、温度センサ、例えば、温度を測定する機能を有する検出用光ファイバ128又は熱電対を通すように意図されている。この温度測定は、光ファイバの端部で測定された温度とMRI磁気共鳴撮像デバイスによって測定された温度との間の任意の偏差を制御することを可能にする。既知の技術は、ファイバのコア内に刻まれたブラッグ格子が提供された光ファイバを使用することからなる。ブラッグ格子は、シングルモードファイバのコアの屈折率の周期的かつ長手方向の調整からなる。ブラッグ格子は、ブラッグ波長の光を反射する。光ファイバが温度変化を受けると、ファイバは屈折率の変化と共に相対的な伸びを受け、反射波長の変化に帰着する。したがって、反射光の波長の変化を測定することによって温度を測定することが可能である。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、シースは、例えば、標的領域に蓄積されるように意図された治療溶液を運ぶことを可能にする追加のルーメンを備える。注入される溶液は、例えば温度活性化可能(temperature-activatable)な分子、例えば感熱性ナノビヒクルに封入された抗癌剤を含む溶液である。この実施形態によれば、溶液が蓄積されると、エミッタ又は処置用ファイバは各々、溶液の分子を熱的にアクティベートするために、標的領域に向かって光ビームを放射する。
【0064】
更に別の実施形態によれば、
図6Bを参照すると、シース150は、閉回路を形成することによって冷却液を循環させるように意図された2つのルーメン159、160と、治療物質を搬送するように意図された別のルーメン158とを備えることがある。ルーメン160は冷却流体の到達のために、ルーメン159は冷却流体の戻りのために、意図される。
【0065】
一変形例によれば、中央ルーメン158を冷却流体の入口として使用し、他の2つのルーメン159、160を冷却流体の戻りとして使用することができる。3つのルーメンは全て閉回路を形成する。
【0066】
更に別の実施形態によれば、
図6Cを参照すると、光ファイバのセットを含む光学シース150は、冷却シース161によって囲まれている。冷却流体は、中央ルーメン158を介して到達し、冷却シース161を介して戻される。冷却回路のこの構成は、シースの遠位部分全体にわたってより均一な冷却を有することを可能にする。
【0067】
治療物質の注入の文脈において、ルーメンは、シースの近位端表面に位置する入口オリフィスと、シースの遠位端の表面上の出口又は注入オリフィスとを備える。入口ポートは、この目的のために設けられたルーメン内に治療物質を注入するように意図されたピストンに接続される。ルーメン内を循環する溶液の注入流量は、治療物質が標的領域に向けられて放出され得るように制御される。物質を標的領域に放出するために、他の実施形態を想定することができる。
【0068】
図1及び
図2を参照して、レーザ源のシステム19及び主制御ユニット10を以下に説明する。
【0069】
レーザ源のシステム19は、標的領域の加温処置のための複数のレーザビームを生成し、温度センサが光ファイバである場合には任意選択的に温度変化を検出するように適合される。
【0070】
レーザ源のシステム19によって生成されるレーザビームの数は限定されない。一実施形態によれば、
図10を参照すると、レーザ源のシステム19は、例えば、処置用光ファイバ123、124、125、126、127によって異なる波長の2つのレーザビームを生成することができる。したがって、5つの処置用光ファイバと1つの検出用光ファイバ128とを備える
図1のデバイスでは、レーザ源のシステムは、10本の処置用レーザビームと1本の検出用レーザビームとを生成するように構成される。
【0071】
好ましくは、各光ファイバに対して生成されるレーザビームは、同一の又は異なる波長及び光パワーを有することができる。レーザ源のシステム19が各処置用光ファイバに対して2つのレーザビームを生成する例示的な実施形態では、したがって、2つの波長λ1又はλ2のうちの1つと、処置用光ファイバによって輸送され放射される処置用光ビームの2つの光パワーのうちの1つとを選択することが可能である。
【0072】
一実施形態によれば、レーザビームは、複数の単色レーザ源を用いて生成される。単色レーザ源の各々は、所与の波長の光ビームを生成する。複数の処置波長の使用は、標的領域の組織へのビームの浸透深さを調整することを可能にする。
【0073】
図1及び
図2の例では、光源システムは、5つのレーザ処置ビーム及び検出1つのレーザビームを生成する6つのレーザダイオード23、24、25、26、27、28を備え、ビームの各々は、それ自体の波長及びそれ自体の光パワーを有することができる。光源システムはまた、例えば、976nmで放射する3つのダイオードと、793nmで放射する3つのダイオードとを備えることもある。ダイオードの各々は、それ自体の電源ユニット13、14、15、16、17、18に関連付けられ、電子制御ユニット12によって個別に制御することができる。
【0074】
図示されていない別の実施形態によれば、システムは、各光ファイバに関連付けられた複数の単色レーザ源、例えばレーザダイオードを備えることがある。このようにして、光ファイバによって輸送され放射されるように意図されたレーザビームについて、複数の波長から所与の波長を選択することが可能である。
【0075】
中央制御ユニット10は、制御ユニット12に制御信号を送信してダイオードを個別に、互いに独立して制御するように、電子制御ユニット12に接続される。中央制御ユニット10は、レーザビーム31用の制御ユニットと、表示ユニット32とを備える。ビーム制御ユニット31は、波長、レーザビームの放射の持続時間、レーザビームの放射時点、及びレーザビームの光パワーである、レーザビームの各々についての加温処置パラメータを調整するために、電子制御ユニット12に制御信号を送信するように構成される。
【0076】
レーザビーム31の制御ユニットはまた、温度センサによって、例えば、検出用ファイバの遠位端によって又は熱電対によって、測定された温度測定値を取得するためのユニットから来るデータを受信する。温度測定値取得ユニットは、光源システム19内に収容される。表示ユニット32は、温度センサから来るこれらの温度データを表示することを可能にする。
【0077】
ビーム制御ユニット31は、各エミッタに送信されるレーザビームの光パワーを選択するように構成される。例えば、各光ファイバに対して生成された2つのレーザビームがある場合、例えば、各光ファイバに対して2つの光パワーのうちの1つを選択することが可能である。
【0078】
レーザビーム制御ユニット31は、標的領域の組織内へのレーザビームの侵入深さを調整することができるように、エミッタの各々によって向けられ放射される光ビームの波長を選択するように構成される。例えば、各光ファイバに対して生成された2つのレーザビームがある場合、例えば、各光ファイバに対して2つの波長のうちの1つを選択することが可能である。
【0079】
ビーム制御ユニット31は、特定の幾何学的形状を有する熱分布を生成するように、各処置用ファイバの放射持続時間及び各処置用ファイバの放射時点を選択するように構成され、特に、温度変化を誘発するために標的領域の幾何学的形状に適合される。一実施形態によれば、処置用光ファイバの一部について、処置用光ファイバを連続的に又は同時にアクティベートすることが可能である。可能な使用例を
図8A~
図8C、
図11~
図14に示す。
【0080】
したがって、
図4のシースの場合、3つの処置用光ファイバの各々は、それ自体の光パワーP1、P2、P3、それ自体の波長λ1、λ2、λ3、及びそれ自体の放射持続時間t1、t2、t3を有する光ビームを向けて放射する。また、3つの処置用光ファイバについて、3つの異なる放射時点及び3つの異なる放射時間を考慮することも可能である。
【0081】
光ファイバは、シースの近位端からシースの遠位端へーザビームを各々輸送するように適合される。このために、シースの光ファイバの近位端は、この目的のためにシースの近位領域に設けられた接続部によってレーザ源のシステム19に接続され、これについては以下で詳述する。
【0082】
図1は、光ファイバとレーザ源のシステム19とを接続するように意図された接続コネクタの一例を概略的に示す。
図1において、接続コネクタは、互いから取り外されて示されている。シース150は、その近位端に、レーザ源のシステム19の接続コネクタ30に係合するように意図された単一のコネクタ130を備える。
【0083】
有利には、レーザ源のシステム19によって生成された光ビームは、複数の光伝送ファイバ43、44、45、46、47、48によって光コネクタ30に向かって誘導される。光伝送ファイバは、シース内の光ファイバと同等のファイバであり、同一構造のファイバであり得る。これらの光伝送ファイバの使用は、レーザ源のシステム19及び主制御ユニット10を、MRI撮像デバイスを含む部屋から離れた部屋に設置することを可能にする。シースが医師によって患者の体内に配置されると、医師は、中央制御ユニット10を使用して、処置段階中にレーザビームの様々なパラメータを調整することができる。
【0084】
伝送ファイバの使用は、制御部から患者に近い距離まで光ビームを伝達することを可能にし、したがって、MRIデバイスとレーザ源のシステム19の電子構成要素との間に干渉を生み出すことなく、本発明のレーザエネルギーのマルチエミッタを有するデバイスをMRIデバイスと共に使用することを可能にする。一実施形態によれば、光伝送ファイバの長さは、10メートルから15メートルまでの間である。光伝送ファイバは、起こり得る外乱からそれらを保護するためにプラスチックシースによって保護される。
【0085】
図示されていない一実施形態によれば、シース150のコネクタ130は、平坦な接続面上に接続タブを備える。光源システムのコネクタ30は、接続面上に接続オリフィスを備える。接続タブは、2つの接続コネクタを係合するために、オリフィスに挿入されることができる。更に、接続タブがオリフィスに挿入されると、シースの光ファイバの端部が光伝送ファイバの端部とそれぞれ接触して光ファイバを一体にして接続するように、2つの接続面が接触する。光コネクタは、シースの複数の光ファイバをレーザ源のシステム19の複数の光伝送ファイバに光学的に結合するために、相互に係合することができる。
【0086】
シース150は、したがって、光コネクタ30、130を介してレーザ源のシステム19に着脱可能に接続され、光コネクタ30、130は、容易な手動接続及び手動分離を可能にする。好ましくは、コネクタは、MRIと適合するように作られる。
【0087】
図2は、光学シース150と光源システム19との間の光接続の別の例を示す。処置用光ファイバ及び検出用光ファイバは各々、それらの近位端に個別の光コネクタ133、134、135、136、137、138を有して提出され、さらに光伝送ファイバは、それらの遠位端に個別の光コネクタ33、34、35、36、37、38を有して提供される。コネクタは、光学シースと光源システム19との間の容易な手動接続及び手動分離を可能にする。
【0088】
本発明のレーザエネルギーのマルチエミッタを有するデバイスは、加温処置アセンブリに組み込むことができる。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、
図7を参照すると、そのような加温処置アセンブリは、
-
図1及び
図2に示すようなマルチエミッタを有するデバイスと、
-処置の持続時間を通して標的領域の3D解剖学的画像並びに標的領域の温度画像を提供するように構成されたMRI撮像デバイス50と、
を備える。
【0090】
アセンブリはまた、MRIデバイスによって取得されたデータから3D解剖学的画像及び3D温度画像を提供するように構成された画像構築ユニット51を含む。一実施形態によれば、マルチエミッタを有するデバイスの中央制御ユニット10及び画像構築ユニット51は、単一のエンティティに統合することができる。
【0091】
中央制御ユニット10の表示ユニット32は、画像構築ユニット51に接続され、さらに、処置の間のリアルタイムによる温度画像と、マルチエミッタを有するデバイス1の温度センサによって送信された温度測定値とを表示することを可能にする。表示ユニット32は、データ入力インタフェースを備え、したがって、医師が、レーザ源のシステムによって生成された、および、光ファイバによって輸送され放射されるように意図された、光ビームの各々の波長、光パワー、放射持続時間、及び伝送時点を調整するためのデータを入力することを可能にする。
【0092】
標的領域は、生体組織が温度変化を受ける領域である。この領域は、標的領域の近傍の組織を保存しながら、病理組織全体の破壊を確実にするのに適したサイズを有していなければならない。標的領域の空間的広がりの評価は、いわゆる「術前計画段階」において、標的領域の解剖学的画像に関するデータから医師によって実行される。この段階はまた、標的領域の複雑な幾何学的形状及び場所を決定することを可能にする。
【0093】
一例として、
図7は、健康な領域によって囲まれたRcと呼ばれる標的領域を含む器官を概略的に示す。
【0094】
術前計画段階中に、標的領域の解剖学的画像から、医師は、
-標的領域に関する光学シースの遠位端の位置と、
-エミッタの各々によってカバーされる角度セクタと、
-エミッタの各々の遠位位置と、
-処置用レーザビームの各々に対する波長と、
-処置用レーザビームの各々に対する光パワーと、
-エミッタの各々について標的領域におけるレーザエネルギーの蓄積の持続時間であって、この持続時間はエミッタごとに異なり得る、持続時間と、
-エミッタの各々について潜在的に異なる放射時間と、
を定義することからなる干渉戦略を定義する。
【0095】
加温処置段階の間、医師は、MRI撮像デバイス50によって伝送される温度画像の関数として、光エミッタ又はファイバによって放射されるビームの光パワー、波長、放射時間、及び放射時点を個別に調整することができる。
【0096】
図8A、8B及び8Cを参照して、同じ光学シースの使用の2つの可能な例が説明される。
図8Aは、シースの遠位端に配置された6本の光ファイバの半径方向分布を有する光学シース150を概略的に示す。光ファイバの各々は、デジタル的に参照されるF1、F2、F3、F4、F5及びF6で示されるレーザビームを放射することができる。
図8Bは、MRI撮像デバイスによって得られた6つの温度画像を示す。各温度画像は、単一の光ファイバのアクティベーションと同時に得られ、各光ファイバは次々と連続的にアクティベートされる。温度画像は、はっきり認識できる角度セクタ内の6つの加熱ゾーンを明確に示す。更に、光学シースの周囲の温度分布は、各光ファイバにわたって送達される異なるパワーに起因して、多かれ少なかれ拡張される。
図8Cは、同じパワーで6本の光ファイバについての同時のアクティベーションの間に得られた温度画像を示す。温度画像は、光学シース150の周りの実質的に円形の温度上昇を示す。
【0097】
遠位端が標的領域Rcの両側に配置される2つのシース240、250の可能な使用の一例、
図9を参照すること。シース240、250の各々は、ここでは、それぞれ3つの光ファイバ241、242、243、251、252、253を備える。したがって、本発明の技術的解決策によって、レーザビームが標的領域の方向に放射される2つの光ファイバ241、242、251、252のみをアクティベートし、放射されたレーザビームが、生体組織の保存されるべき健康な領域に位置する角度セクタをカバーする第3の光ファイバをインアクティブのままにすることが可能である。更に、標的領域の3D幾何学的形状に対応する3D熱分布を生成することができるように、放射される4つのレーザビームの各々について異なる波長、光パワー、及びレーザエネルギー蓄積持続時間を選択することも可能である。
【0098】
図11~14を参照して、生体組織の標的領域を加温処置するための6本の光ファイバを備えるレーザエネルギーのマルチエミッタを有するレーザデバイス1の例示的な使用を以下に説明する。
【0099】
図11を参照すると、レーザデバイスは、単一のシース内に封入された6本の光ファイバを含む。各光ファイバの直径は200μmであり、シースの最終直径は2mmである。各ファイバの遠位端は、各ファイバについて60度の角度範囲を達成することを可能にするために、異なる方向における各個別のレーザビームの半径方向伝搬を確実にするように機械加工され、6つのファイバが、360度にわたって半径方向対称に沿って分散されている。提示された例の文脈において、各レーザファイバは、976nmの波長及び9Wの最大パワーを有するレーザダイオードに接続される。各レーザダイオードは、レーザダイオードを制御するように構成されたレーザビーム制御ユニットによって個別に命令されて、発射中に光ファイバによって標的領域に向かって放射される誘導されたレーザビームの各々の波長、光パワー、レーザエネルギー蓄積持続時間、及び放射時点を動的に調整する。この調整は、制御ユニットによる伝送の開始時に可能であり、伝送中に調整可能である。
【0100】
図12は、
図11のデバイスの各光ファイバの個別の放射ビームの6枚の写真を示す。各個別のレーザビームは、可視領域、例えば532nmの波長でレーザダイオードを接続することによって視覚化される。
【0101】
特性が放射チャネルの関数としてわずかに異なるように見える光ビームにより、各光ファイバが異なる角度セクタを明るく照らすことを、6枚の写真は定性的に示す。
【0102】
次いで、
図11のレーザデバイスの動作は、MRI温度測定によって検証される。本明細書でプローブと呼ばれるシースを囲むファイバの遠位端は、ゼラチンを含むゲルに導入される。1.5Tで動作する磁気共鳴撮像(MRI)装置の中心に配置される。スカウト撮像は、プローブ及びゲルを観察するために、および、全てのファイバによって照らされたゾーンを包含することによってプローブの軸に垂直に温度測定カットを配置するために、アセンブリは実行される。MRI温度撮像は、高速エコー平面撮像シーケンスを用いて実行され、2秒のリフレッシュレートで数分の全持続時間にわたって連続的に記録される(動的イメージング)10個のカット(1.4mmに等しい平面における解像度、3mmに等しい切断厚さ)を含む。以下の例では、温度測定取得技術のパラメータは、18msのエコー時間、180mm×180mmの視野、60度のチルト角、2の係数によるグラッパ加速、1446Hzの画素当たりの帯域幅である。画像は、位相画像から温度マップを得るために計算ユニットによってリアルタイムで処理される。これらの温度マップは、グラフィックインタフェースにおいてリアルタイムで色分けされて表示される。特徴点を画像内で識別して、1つ以上の画素を選択することができ、温度の時間的進展も表示される。
【0103】
第1の使用例では、各ダイオードに30秒間4.2Wの電力が順次供給され、各ダイオードの放射の間に10秒の休止がある。
【0104】
図13は、6つの光ファイバの各々の放射が停止したとき(最大温度上昇)に対応する時点における、各放射チャネルの連続したアクティベーションの間のMRIによって得られた6つの温度画像を示す。各画像に対して、アクティベートされたダイオードについて、ファイバによってカバーされる角度セクタが示されている。右側のグラフは、1から6まで1で参照される6つの画素における温度の変化を示し、各画素は、異なるファイバによってカバーされる角度セクタにおいて選択される。
【0105】
結果は、
図12(レーザ放射の定性的特徴付け)と一致して、各ファイバの異なる角度セクタにおける温度上昇を示す。温度の上昇は、ファイバ番号5(
図13の角度セクタ2π/3)ではそれほど顕著ではなく、これは、
図12のこのファイバによって生成される照明の写真と一致する。右側のグラフは、ファイバの各々によってカバーされる6つの角度セクタの各々に位置する6つの異なる画素の変化を示す。温度の連続的な上昇が、アクティベートされたレーザダイオードの関数として観察される。
【0106】
図14は、三角形、楕円形、又は半円形の形状の熱分布を生成するために、光ファイバの各々に供給するレーザダイオードを別々にアクティベートすることによって得られた3つの結果を示す。
【0107】
図14は、3つの異なるアクティベーションコンフィグレーション(activation configuration)についてMRI温度測定によって得られた3つの温度画像(a)、(b)、(c)を示す。加熱領域における温度の変化は、画像の左側に表示されたグレーレベルの変化によって表される。コンフィグレーション(a)は、2Wの電力で60秒の持続時間の間、3つのファイバ2、4、6の同時のアクティベーションに対応する。温度画像は三角形状である。コンフィグレーション(b)は、1.5Wの電力で25秒の持続時間の間、2つのファイバ3、6の同時のアクティベーションに対応する。温度画像は楕円形状である。コンフィグレーション(c)は、1.5Wの電力で30秒の持続時間の間、4つのファイバ1、2、3、6の同時のアクティベーションに対応する。温度画像は半円形状である。
【0108】
産業上の利用可能性
各々が異なった角度セクタをカバーし、シースに沿って異なった位置にある複数のレーザエネルギーエミッタを使用することにより、標的領域の任意の幾何学的形状に関して調整可能な3D温度分布を生成することが可能になる。生み出される熱損傷の幾何学的形状に関するこの柔軟性のために、本発明は、心臓細動の治療に、様々な器官の、例えば腹部及び病理学的脳領域などの腫瘍の治療に特に適している。
【0109】
更に、制御は、エミッタの各々によって放射されるビームの波長を調整することによって、標的領域の組織内への光ビームの浸透の深さに関してより正確である。
【0110】
最後に、レーザエネルギーのマルチエミッタを有するデバイスが、加温処置アセンブリ内のMRI撮像デバイスと結合されると、MRI撮像デバイスによって得られる温度画像から、経時的に及び空間的にレーザエネルギーの蓄積を調整するために、エミッタの各々の光パワー、放射持続時間、及び伝送時点を調整することが可能である。
【0111】
本発明は、非限定的な例として上述した実施形態に限定されない。本発明は、当業者によって想定され得る全ての代替実施形態を包含する。特に、論理的な変更を行うことができることを理解されたい。加えて、本発明の詳細な説明において提示される実施形態は、ステップ及びサブステップの順序を限定するものとして解釈されるべきではない。