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特許7650042ペルチェ素子モジュールの配置構造、及び該配置構造を備えた座席、及び自動車用座席
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】ペルチェ素子モジュールの配置構造、及び該配置構造を備えた座席、及び自動車用座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20250314BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019139151
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021020593
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】SUMINOE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】宮村 佳成
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 友昭
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】草野 顕子
【審判官】横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-122588(JP,A)
【文献】特開2014-15145(JP,A)
【文献】特開2018-176847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材とペルチェ素子モジュールとを備え、
前記表皮材の裏面に接触して少なくと2個以上の前記ペルチェ素子モジュールのそれぞれが配置され、
前記ペルチェ素子モジュールが配置されていない前記表皮材の裏面に接触して前記ペルチェ素子モジュールと同じ厚みの断熱材が配置され、
最も下層にシートパッドが積層され、
前記ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに4cm~24cm離間しかつ前記表皮材の座面又は背もたれ面の略中心部を対称の中心として点対称に配置されて構成され、
前記表皮材の座面又は背もたれ面の面積に対する前記ペルチェ素子モジュールの配置面積の比率が、15%~43%の範囲であり、
前記表皮材が、織物、編物、不織布、又は合成皮革もしくは人工皮革からなる群より選ばれる1もしくは複数からなることを特徴とするペルチェ素子モジュールの配置構造。
【請求項2】
座面及び背もたれを有する座席において、
前記座席は、表皮材と、前記表皮材の裏面に接触した少なくと2個以上のペルチェ素子モジュールとを備え、
前記ペルチェ素子モジュールが配置されていない前記表皮材の裏面に接触して前記ペルチェ素子モジュールと同じ厚みの断熱材が配置され、
最も下層にシートパッドが積層され、
前記ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに4cm~24cm離間しかつ前記表皮材の座面又は背もたれ面の略中心部を対称の中心として点対称に配置されて構成され、
前記表皮材の座面又は背もたれ面の面積に対する前記ペルチェ素子モジュールの配置面積の比率が、15%~43%の範囲であり、
前記表皮材が、織物、編物、不織布、又は合成皮革もしくは人工皮革からなる群より選ばれる1もしくは複数からなることを特徴とする自動車用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が着座する座席に備えるペルチェ素子モジュールの配置構造、及びペルチェ素子モジュールの配置構造を備える座席に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の冷暖房装置として、座席の座面又は背面、或いはステアリングホイールの内側に冷暖房ユニットを設けたものがある。そして、冷暖房ユニットとしてペルチェ素子を用い、このペルチェ素子を伝熱部材(金属製)に装着し、この伝熱部材(金属製)を介して冷房又は暖房作用を乗員が接触する部位に伝達する冷暖房装置が公知である(特許文献1)。
【0003】
また、乗用シートにおいて、一つの送風機でペルチェ素子によるシート冷却とシートベンチレーションシステムを両立させることが可能な乗用シートが公知である(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、上述の冷暖房装置や乗物用シートでは、十分な冷暖房を行うには十分な電力消費が必要であることから、電力消費量が増加する恐れがあった。
【0005】
また、特許文献1の図2に示されているように、冷暖房ユニットを乗員が接触する部位の内側、座席の座面や背もたれの内側に配置した場合、乗員に冷暖房ユニットが直接あたることからまるで異物のように感じてしまうことや、冷暖房ユニットを構成する伝熱部材(金属製)が座席の通気性を著しく損なう懸念があった。
【0006】
さらに、冷暖房ユニット内の伝熱部材及び熱伝導部材が金属製であることから、電気自動車の総重量が増加することにより、エネルギー負担が増加してしまう懸念があった。また、特許文献2の図2に示される自動車用シートのシートバック内の熱伝導部材も重量を増加させてしまうことから同様の懸念があった。
【0007】
また、いずれの文献にもこれらの懸念等を払拭するための手段、すなわち、金属製の伝熱部材を介して乗員が接触する部位に冷房又は暖房作用を伝達するという構成による異物感を感じることのない座席や、エネルギー負担の抑制と電力消費量の低減、さらに効果的に人が体感できるペルチェ素子モジュールの配置構造については開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-006738号公報
【文献】特開2018-008622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、電力消費量の低減、及び重量の増加を抑制しつつ人が体感できるペルチェ素子モジュールの効果的な配置構造を提供すること、及び人が着座した際の異物感のない快適な座席、及び自動車用座席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]表皮材と、
ペルチェ素子モジュールと、を備え、
少なくとも2個以上の前記ペルチェ素子モジュールのそれぞれが、前記表皮材の裏面に接触するとともに、
前記ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに離間するように配置されて構成され、
前記表皮材の面積に対する前記ペルチェ素子モジュールの配置面積の比率が、3%~45%の範囲であることを特徴とするペルチェ素子モジュールの配置構造。
【0012】
[2]離間する前記ペルチェ素子モジュール同士の最短距離が4cm~24cmの範囲である前項1に記載のペルチェ素子モジュールの配置構造。
【0013】
[3]前記表皮材の略中心部を対称の中心として、ペルチェ素子モジュールの配置が点対称である前項1又は2に記載のペルチェ素子モジュールの配置構造。
【0014】
[4]前項1~3のいずれか1項に記載のペルチェ素子モジュールの配置構造を備え、
前記表皮材が、繊維を含んでなる織物、編物、不織布、又は合成樹脂を含んでなる合成皮革もしくは人工皮革からなる群より選ばれる1もしくは複数からなることを特徴とする座席。
【0015】
[5]座面及び背もたれを有する座席において、
前記座席は、表皮材と、
ペルチェ素子モジュールと、を備え、
少なくとも2個以上の前記ペルチェ素子モジュールのそれぞれが、前記表皮材の裏面に接触するとともに、
前記ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに離間するように配置されて構成され、
前記表皮材の面積に対する前記ペルチェ素子モジュールの配置面積の比率が、3%~45%の範囲で、かつ
離間する前記ペルチェ素子モジュール同士の最短距離が4cm~24cmの範囲であることを特徴とする自動車用座席。
【0016】
[6]前記表皮材の略中心部を対称の中心として、ペルチェ素子モジュールの配置が点対称である前項5に記載の自動車用座席。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、ペルチェ素子モジュールの総電力消費量を確実に低減することができるとともに、ペルチェ素子モジュールが表皮材の裏面に接触していることから、冷たさや、暖かさを効果的に人が体感できる。すなわち、必ずしも人体に触れる部分の全てを冷やしたり、又は温めたりしなくても、十分に冷たさや温かさを体感できるペルチェ素子モジュールの配置構造とすることができる。さらに、ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに離間するように配置されて構成されていることから、表皮材の裏面の全面にペルチェ素子モジュールを並べる構成と比較して、50%~96%と大幅に電力消費量及び重量を低減することができるうえに、異物感を緩和することがきる。すなわち、電力消費量の低減、及び重量の増加を抑制しつつ人が体感できるペルチェ素子モジュールの効果的な配置構造とすることができる。
【0018】
[2]の発明では、略平面内において互いに離間するように配置したペルチェ素子モジュール同士の最短距離が4cm~24cmの範囲内とすることで、人体の皮膚のみならず血流等を通して冷たさや、暖かさを伝え、人は十分に冷感又は温感を十分実感することができるとともに、ペルチェ素子モジュールの総電力消費量を確実に低減することができるペルチェ素子モジュールの配置構造とすることができる。
【0019】
[3]の発明では、意図しない不均一な効果を招くことなく、効果的なペルチェ素子モジュールの配置構造を実現することができる。
【0020】
[4]の発明では、[1]~[3]の少なくともいずれかの効果に加え、人が着座した際に異物感のないより快適な座席を提供することができる。
【0021】
[5]の発明では、ペルチェ素子モジュールが表皮材の裏面に接触していることから、冷たさや、暖かさを効果的に人が体感できる。すなわち、必ずしも人体に触れる部分の全てを冷やしたり、又は温めたりしなくても、十分に冷たさや温かさを体感でき、ペルチェ素子モジュール同士が、略平面内において互いに離間するように配置されて構成されていることから、表皮材の裏面の全面にペルチェ素子モジュールを並べる構成と比較して、50%~96%と大幅に電力消費量及び重量を低減することができるうえに、異物感を緩和することがきる。すなわち、電力消費量の低減、及び重量の増加を抑制しつつ人が体感できる人が着座した際に快適な自動車用座席を提供することができる。加えて、ペルチェ素子モジュール同士の最短距離が4cm~24cmの範囲内で、略平面内において互いに離間するように配置したペルチェ素子モジュール間においても、人体の皮膚のみならず血流等を通して冷たさや、暖かさを伝えることから、人は十分に冷感又は温感を十分実感することができるとともに、ペルチェ素子モジュールの総電力消費量を確実に低減することができる人が着座した際に快適な自動車用座席を提供することができる。
【0022】
[6]の発明では、意図しない不均一な効果を招くことなく、効果的に冷感又は温感を人に対して与えることができる自動車用座席を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第一の実施形態を示す平面図である。
図2】本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第二の実施形態を示す平面図である。
図3】本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第三の実施形態を示す平面図である。
図4】本発明に係る座席の一実施形態を示す断面図である。
図5図4に示す座席の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造、及び該配置構造を備えた座席、及び自動車用座席の実施形態について詳しく説明する。なお、本発明のペルチェ素子モジュールは、p型及びn型半導体を有するペルチェ素子を複数個配列し構成した単位を意味し、例えば、外観は板状であってプラス極、マイナス極の端子がそれぞれ設けられている。ペルチェ素子モジュールを電源に接続し、給電することでペルチェ素子モジュールの一方の面が暖かくなり、反対面が冷たくなる。なお、電流の向きを入れ替えることで、暖かくなる面と冷たくなる面を反転させることができる。
【0025】
本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造について、各実施例を図1図3に示す。なお、ペルチェ素子モジュール3が表皮材2の裏面に接触するとともに、ペルチェ素子モジュール3同士が、略平面内において互いに離間するように配置された構成され、表皮材2の面積に対する配置面積の比率が3%~45%の範囲内に配置した。さらに好ましい配置面積の比率は15%~43%である。また、離間する前記ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離が4cm~24cmの範囲が好ましく、より好ましくは最短距離が4cm~12cmの範囲である。また、表皮材2の略中心部を対称の中心として、ペルチェ素子モジュール3の配置が点対称であるのが好ましい。
【0026】
図1は、本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第一の実施形態を示す平面図であり、図1において表皮材2の裏面に接触してペルチェ素子モジュール3を12個備え、表皮材2はたて×よこが24cm×30cmの大きさで、ペルチェ素子モジュール3は4cm角の大きさであり、ペルチェ素子モジュール3の表皮材2に対して占める面積比率は27%となり、また、離間する前記ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離は、4cm~24cmの範囲であった。
【0027】
図2は、本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第二の実施形態を示す平面であり、図2において表皮材2の裏面に接触してペルチェ素子モジュール3を4個備え、表皮材2はたて×よこが40cm×40cmの大きさで、ペルチェ素子モジュール3は4cm角の大きさであり、ペルチェ素子モジュール3の表皮材2に対して占める面積比率は4%となり、また、離間する前記ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離は、4cm~24cmの範囲であった。
【0028】
図3は、本発明に係るペルチェ素子モジュールの配置構造の第三の実施形態を示す平面であり、図3において表皮材2の裏面に接触してペルチェ素子モジュール3を16個備え、表皮材2はたて×よこが40cm×40cmの大きさで、ペルチェ素子モジュール3は4cm角の大きさであり、ペルチェ素子モジュール3の表皮材2に対して占める面積比率は16%となり、また、離間する前記ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離は、4cm~24cmの範囲であった。
【0029】
本発明の表皮材2としては、特に限定はされないが、例えば繊維を含んでなる織物、編物、不織布、又は合成樹脂を含んでなる合成皮革もしくは人工皮革からなる群より選ばれる1もしくは複数からなることが好ましい。また、繊維としても特に限定されないが、例えば熱伝導繊維を含むことが好ましく、熱伝導繊維を含むことでペルチェ素子モジュールとの熱の交換が効率的に行える。熱伝導繊維としては、例えば、レーヨン繊維、キュプラ繊維、麻、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維等を挙げることができる。なかでもポリエチレン繊維が好ましい。
【0030】
ペルチェ素子モジュール3としては、外観の形状、大きさ、筐体の材質、ペルチェ素子の数も特に限定されることなく、一般に入手可能なものを用いればよく、例えば4cm角、5cm角等の大きさがある。
【0031】
ペルチェ素子モジュール3の筐体の材質としては、セラミック、熱可塑性樹脂、弾性樹脂を挙げることができ、これらを組合せてもよい。
【0032】
ペルチェ素子モジュール3を構成するペルチェ素子の数(カップル数)としては、適宜ペルチェ素子モジュール3の大きさや、形状に見合う数にすればよい。
【0033】
以上のようにして、電力消費量の低減、及び重量の増加を抑制しつつ人が体感できるペルチェ素子モジュールの効果的な配置構造を提供することができる。
【0034】
本発明に係る座席について、実施例を図4図5を示し説明する。
【0035】
図4は、本発明に係る座席の一実施形態を示す断面図である。図4において、座席4は、表皮材2の裏面に接触してペルチェ素子モジュール3が配置され、最下層にシートパッド6が積層され、ペルチェ素子モジュール3が配置されていないところには、通気性のある断熱材5(目付60g/mの不織布で、厚みはペルチェ素子モジュールの厚み(3.3mm)と同じ))が配置されている。すなわち、ペルチェ素子モジュール3が表皮材2の裏面に接触するとともに、ペルチェ素子モジュール3同士が、略平面内において互いに離間するように配置された構成を備えており、表皮材2の面積に対する配置面積の比率が3%~45%の範囲内で配置した。なお、さらに好ましい配置面積の比率は15%~43%である。
【0036】
図5は、図4に示す座席の平面図であり、表皮材2はたて×よこが24cm×30cmの大きさで、ペルチェ素子モジュール3は4cm角の大きさであり、ペルチェ素子モジュール3の表皮材2に対して占める面積比率は27%となり、また、離間する前記ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離は、4cm~24cmの範囲であった。なお、2つのペルチェ素子モジュールを1つのグループとし、まずAグループとし、同様にB~Fグループまで配置した。すなわち、同一のアルファベットは同じグループである。このようにグループ分けし、後述する官能評価試験Bによって評価した。
【0037】
前記シートパッド6としては、特に限定されず、綿、固綿、軟質ウレタンフォーム等を挙げることができる。座席の形状に合わせて、シートパッド6を所望の形に成形、又は成型すればよい。
【0038】
前記断熱材5としては、放熱又は冷熱を通さないものであれば特に限定されない、例えば、発泡ポリエチレン、ポリウレタン、不織布、スタイロフォーム(登録商標)、自然布、合成布、天然スポンジ、合成スポンジ、クッション材料等が挙げることができる。
【0039】
以上のようにして、人が着座した際に異物感のない快適な座席を提供することができる。なお、座面もしくは背もたれ、または、座面と背もたれに適用することで、自動車用座席を提供することができる。
【0040】
本願発明のペルチェ素子モジュールの配置構造について、次の官能評価試験Aを行い、結果を表1に示した。
【0041】
<官能評価試験A>
(ペルチェ素子モジュール)
外形4cm角(型番TEC1-12710、最大電流10A、最大電圧15.2V、抵抗1.16Ω、ペルチェ素子カップル数127個)
(表皮材)
織物(ポリエステル繊維100%、目付158g/cm、経糸、緯糸とも太さ100デニール、経密度、緯密度とも:65本/インチの平織物(繊維表面の毛羽を除去した織物))
(電源)
安定化電源(「DPS-3003」(株式会社カスタム))を用い、3V、2Aを給電

室温25℃、相対湿度50%の環境のもとで、ペルチェ素子モジュール9個を吸熱側が表皮材に接触するように、表皮材上に直線状に並べて表皮材が被験者の皮膚に触れるようにし、5人(男)の被験者の肩甲下部、腰部、大腿裏面の測定部位のそれぞれについて官能評価試験Aを実施した。この時、被験者は両目にアイマスクを付けて行い、各試験はペルチェ素子モジュールの離間距離4cm、8cm、12cm、16cm、20cm、24cm、28cmの7種類について、直線状に並んだ9個のペルチェ素子モジュールを被験者の各測定部位にセットした後に、試験者がそのうちから任意の2個を選んで電源をオンにした。
被験者の回答をもとに、次の基準で数値化した。
「+1」:2個のペルチェ素子モジュールを個別に冷たいと知覚できた
「-1」:2個のペルチェ素子モジュールを個別に冷たいと知覚できず、広く冷たいと知覚した
「0」 :「+1」、「-1」のいずれとも判断できず、判断に迷った
なお、各測定部位について各離間距離をランダムに2回行い、回答が「-1」と「+1」となった場合には3回目を行い、3回目の回答を採用した。すなわち、各被験者の数値の集計は、回答が「-1」と「-1」の組合せの場合は「-1」とし、「-1」と「0」の組合せの場合も「-1」とし、「-1」と「+1」の組合せの場合は、3回目の回答が「-1」」の場合「-1」とし、「-1」と「+1」の組合せの場合は、3回目の回答が「0」の場合「0」とし、「-1」と「+1」の組合せの場合は、3回目の回答が「+1」の場合「+1」とし、「0」と「0」の組合せの場合は「0」とし、「0」と「+1」の組合せの場合は「+1」とし、そして、「+1」と「+1」の組合せの場合も「+1」とした。
こうして集計した値について測定部位の離間距離毎に被験者全員分を合計し、次の基準で評価し、「○」、「△」、「×」の3つに分類した。評価「○」と「△」は2個のペルチェ素子モジュールを個別に冷たいと知覚できた離間距離、「×」は知覚できない距離と評価した。
「○」:合計が-1以下
「△」:合計が0
「×」:合計が1以上
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、2個のペルチェ素子モジュールの離間距離が24cm以下に配置された際には、人体の別々のところがそれぞれ冷たく感じるというよりは、全体が冷たいと感じた。すなわち、局部的な冷感ではなく、一体とした冷たさを感じるペルチェ素子モジュール配置構造であった。
【0044】
次に、図4に示す本発明に係る座席について、次の官能評価試験Bを行い、結果を表2に示した。
【0045】
<官能評価試験B>
(ペルチェ素子モジュール)
官能評価試験Aで用いたものと同一のペルチェ素子モジュールを12個を配置した。
(表皮材)
合成皮革(目付760g/cm、厚み650μm、塩化ビニル樹脂、熱抵抗35℃・m/W)
(電源)
100V交流電源からACアダプタにより9V、2.5A給電

被験者:被験者Aと被験者Bは、上衣は肌着(ポリエステル94%、ポリウレタン6%、熱抵抗0.022℃・m/W)にポロシャツ(綿65%、ポリエステル35%、熱抵抗0.025℃・m/W)を着て、チノパン(綿60%、ポリエステル37%、ポリウレタン3%、熱抵抗0.033℃・m/W)を着用していた。また、被験者Cと被験者Dは、上衣はポロシャツ(綿65%、ポリエステル35%、熱抵抗0.025℃・m/W)を着て、チノパン(綿60%、ポリエステル37%、ポリウレタン3%、熱抵抗0.033℃・m/W)を着用していた。
室温26℃、相対湿度60%の環境のもとで、4人(男)の被験者(被験者A、被験者B、被験者C、被験者D)が座席に深く座り、腰と背中が背もたれに当るように座り、座面(大腿裏面)、背もたれ(腰部)のそれぞれについて官能評価試験Bを実施した。12個のペルチェ素子モジュールを、離間するように配置した(図4図5参照)座席を用意した。図4図5に示すように、ペルチェ素子モジュール3が表皮材2の裏面に接触するとともに、ペルチェ素子モジュール3同士が、略平面内において互いに離間するように配置された構成を備えており、表皮材2の面積に対する配置面積の比率が3%~45%の範囲内であり、ペルチェ素子モジュール3同士の最短距離が4cm~24cmの範囲内に配置した。図5において、2つのペルチェ素子モジュールを1つのグループとし、まずAグループとし、同様にB~Fグループまで配置した。座席の中心付近において互いに対向するAグループとDグループ、BグループとEグループ、CグループとFグループのそれぞれの離間距離は8cmであった。
同一グループ内は電気的に直列に接続され、それぞれ対向するAグループとDグループのペルチェ素子モジュール4個を同時に電流を流し駆動させ、10秒経過後に電流を停止させ、続いてBグループとEグループのペルチェ素子モジュール4個を、その後CグループとFグループのペルチェ素子モジュール4個を同様にして駆動と停止を繰り返すサイクルで3分間連続して官能評価試験Bを実施した。なお、ペルチェ素子モジュールの設定温度は、「冷たさ」の評価では座席の表皮材の温度より5℃低く、「暖かさ」の評価では座席の表皮材の温度より5℃高い温度に設定した。着座ののちにペルチェ素子モジュールの電源をオンした。ここで、同時に駆動するペルチェ素子モジュールは4個であることから、座席の座面表皮材に対する面積比率は8.9%で、座席の背もたれ表皮材に対する面積比率も8.9%であった。
4人の被験者について、「冷たさ」と「暖かさ」という温度変化について次の基準で評価した。
「◎」:温度変化を強く感じた
「○」:温度変化を感じた
「×」:温度変化を感じなかった
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、いずれの被験者も座面(大腿裏面)、背もたれ(腰部)の両方とも「冷たさ」と「暖かさ」という温度変化を実感することができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のペルチェ素子モジュールの配置構造、及び該配置構造を備えた座席、及び自動車用座席は、電力消費量の低減に貢献し、人が感じる冷感又は温感を効果的に体感できることから、座席及び自動車用座席に好適である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・ペルチェ素子モジュールの配置構造
2・・・表皮材
3・・・ペルチェ素子モジュール
4・・・座席
5・・・断熱材
6・・・シートパッド
図1
図2
図3
図4
図5