(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】検体回収容器及び検体採取セット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20250314BHJP
【FI】
G01N1/10 V
(21)【出願番号】P 2020162595
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167842
【氏名又は名称】広陵化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中西 勝
(72)【発明者】
【氏名】豆崎 正和
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090131(JP,A)
【文献】特開2009-036732(JP,A)
【文献】特表2017-516980(JP,A)
【文献】特開2008-032541(JP,A)
【文献】特開2009-014365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有し、
前記検体回収容器は、前記筒状体の前記底部に液体保持部を有し、前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し、
前記検体回収容器は、側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状であり、
前記絞り部は、その形状に沿って凸部を備え、
前記検体採取部を前記絞り部の内側で挟み込むことによって、前記検体採取部に付着した検体が絞られる、検体回収容器。
【請求項2】
前記絞り部は、前記筒状体の長軸方向に伸びる一対の楕円形の形状を有する請求項1に記載の検体回収容器。
【請求項3】
筒状体の外部から外力が加えられた際の、前記絞り部における内側への変形度は、絞り部以外の部分における内側への変形度よりも大きい、請求項1又は2のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項4】
樹脂成型品である請求項1~3のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項5】
前記絞り部は、可撓性材料からなる請求項1~4のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項6】
前記可撓性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つである請求項5に記載の検体回収容器。
【請求項7】
透明又は半透明の材料からなる請求項1~6のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の検体回収容器と、前記検体回収容器に挿入され、前記絞り部により検体採取部が絞られる検体採取具とを備える検体採取セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体回収容器及び検体採取セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床及び診断分析の分野において、簡易検査法としてイムノクロマトグラフト法が普及している。イムノクロマトグラフト法は、例えば、所定の部位に標識物質や抗体が含浸された試験片の一端に検体を含む試験溶液を滴下することにより、検体に抗原が含まれている場合に、試験片の検出領域に特有の表示が現れるようになっている。
【0003】
検査対象となる生物学的検体は、検査対象者の鼻腔や咽喉等から採取することが一般的である(特許文献1)。イムノクロマトグラフト法を行うためには、生物学的検体を所定の溶液に溶解して使用する必要がある。この場合、綿棒等の検体採取具を用いて生物学的検体を採取した後、所定の溶媒が入った検体回収容器に綿棒を挿入し、前記溶媒にて生物学的検体を移動(溶解)させて回収し、試験溶液を得るという工程が必要であった。
【0004】
例えば、特許文献2には筒体の内側に凹凸部を設けた容器が記載されており、前記容器が検体回収容器として使用されている。具体的には、前記容器に検体を回収するための溶液(以下、「回収溶液」と称する)を入れ、前記回収溶液に綿棒の綿球部を浸した後、容器を指で絞ることにより綿棒の綿球部に付着した検体を回収溶液に移動(溶解)させ、試験溶液を調製するという手法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2002-508193号公報
【文献】特開2007-218903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の容器は筒体の内側に凹凸部を設けることにより、容器に対し柔軟性を付与するものであるところ、検体回収の際に指で絞ると容器全体が内側に変形してしまい、回収溶液があふれ出すという問題が生じていた。この問題を解決するため、容器の容量を大きくすることや、回収溶液を少量とする手当てがとられている。しかし、前者はコストの増大、後者は綿棒の綿球部に付着した検体が充分に回収溶液に移動しないという問題があった。また、前記容器は柔軟性に乏しく、多数の検体を検査する場合には指が腱鞘炎を起こすなどの問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、柔軟性(スクイズ性)に富みつつ、指で絞った場合であっても回収溶液があふれ出すことがなく、さらに、多数の検体を検査する場合であっても指を痛めにくい検体回収容器を提供することにある。また、前記検体回収容器と棒状体の検体採取具とを含む検体採取セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の形状を備える検体回収容器を使用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明では、
棒状体である検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有する検体回収容器を提供する。
【0010】
前記絞り部は、前記筒状体の長軸方向に伸びる一対の楕円形の形状を有することが好ましい。
【0011】
前記容器は筒状体の底部に液体保持部を有し、絞り部を液体保持部側面よりも開口部側の筒状体側面に有することが好ましい。
【0012】
筒状体の外部から外力が加えられた際の、前記絞り部における内側への変形度は、絞り部以外の部分における内側への変形度よりも大きいことが好ましい。
【0013】
前記検体回収容器は、樹脂成型品であることが好ましい。
【0014】
前記絞り部は、可撓性材料よりなることが好ましい。
【0015】
前記可撓性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
前記検体回収容器は、透明又は半透明の材料からなることが好ましい。
【0017】
また、本発明では、前記検体回収容器と、前記検体回収容器に挿入され、前記絞り部により検体採取部が絞られる棒状体の検体採取具とを備える検体採取セットについても提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検体回収容器は、柔軟性(スクイズ性)に富むことから、多数の検体を検査する場合であっても指を痛めにくく、また、指で絞った(スクイズした)場合であっても回収溶液があふれ出すことがない検体回収容器を提供することにある。また、前記検体回収容器と棒状体の検体採取具とを含む検体採取セットを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検体回収容器の側面図(A)及び正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<検体回収容器>
本発明の検体回収容器は、棒状体である検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するためのものである。前記検体回収容器は、一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有することを特徴とする。すなわち、筒状体の一端に開口部、他端に底部、前記開口部と前記底部の間に存在する筒状体の側面に絞り部を有する。
【0021】
本発明の検体回収容器について、イムノクロマトグラフト法を一例として、以下に具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されず、他の臨床及び診断分析の分野における検査方法において使用され得る。なお、本発明の検体回収容器は、臨床及び診断分析以外の分野、例えば、動物、植物、及び微生物等に由来する生体試料や、鉱物等の無機試料を所定の検査に付する際にも使用されてもよい。
【0022】
特定の疾患に対する診断分析としてイムノクロマトグラフト法を行うに際し、検査対象者の鼻腔や咽喉等から検体採取具(例えば綿棒)を用いて生物学的検体を採取し、前記検体を所定の回収溶液に移動(溶解)させることにより、試験溶液を調製する必要がある。本発明の検体回収容器は、筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有する。なお、「筒状体の側面の一部に絞り部を有する」とは、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する部位が、筒状体の側面の一部にあることを意味し、外部からの外力によりその筒状体の(側面の)全体が内側に変形する特許文献2とは異なる形状を意味する。より具体的に説明すると、本発明の検体回収容器では、筒状体の外部から外力が加えられた際の、前記絞り部における内側への変形度が、絞り部以外の部分における内側への変形度よりも大きいということを意味している。
【0023】
本発明の検体回収容器は前記絞り部を有することにより、前記回収溶液に検体採取具を浸した後、容器を指で絞ることにより検体採取部に付着した検体を回収溶液に移動(溶解)させ、試験溶液を調製することが可能となる。また、前記絞り部が筒状体の一部にあること、すなわち、外部から外力が加えられると内側に変形する部位が筒状体の一部にあることにより、外部からの外力によりその全体が内側に変形する容器で生じていた、回収溶液があふれ出すという問題を解決することが可能である。
【0024】
前記絞り部は、前記筒状体の長軸方向に伸びる一対の楕円形の形状を有することが好ましい。上記の様な形状とすることにより、例えば、親指と人差し指で絞り部を挟んで力を加える際に、絞り部に対して効率的に力が加わると共に、絞り部以外の部位に対しては外部からの外力が伝わりにくく、容器(筒状体)の全体が内側に変形しにくくなる。
【0025】
本発明の検体回収容器において、絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法は特に限定されないが、例えば、(1)絞り部の材質を、絞り部以外の部分の材質よりも柔軟性が高いものとすること、(2)絞り部の厚みを絞り部以外の部分の厚みよりも薄くすること、(3)開口部及び/又は底部の強度を上げること、等が挙げられる。
【0026】
前記(1)は、絞り部の材質を、絞り部以外の部分の材質よりも柔軟性が高いものとする方法である。つまり、絞り部に柔軟性の高い材質を使用すると共に、絞り部以外の部分に、絞り部に使用したものと比較して柔軟性の低い材質を使用することにより、絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法である。絞り部以外の部分は、絞り部以外の筒状体の側面部分であってもよい。すなわち、絞り部の材質を、絞り部以外の筒状体の側面部分の材質よりも柔軟性が高いものとしてもよい。
【0027】
前記(2)は、絞り部の厚みを絞り部以外の部分の厚みよりも薄くする方法である。つまり、絞り部の厚みを薄くすることにより柔軟性を向上させ、絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法である。絞り部以外の部分は、絞り部以外の筒状体の側面部分であってもよい。すなわち、絞り部の厚みを、絞り部以外の筒状体の側面部分の厚みよりも薄くしてもよい。
【0028】
前記(3)は、開口部及び/又は底部の強度を上げる方法である。これは、絞り部と離れた部位に存在する開口部又は底部の強度(すなわち、外力が加えられた際の変形しにくさ)を上げると、開口部や底部だけでなく、その付近の部位も変形しにくくなることを利用した方法である。つまり、開口部及び/又は底部の強度を上げることにより、開口部、底部、及びその付近の部位、すなわち、絞り部以外の部分の変形度が、絞り部の変形度と比較して小さくなることを利用した方法である。開口部や底部の強度を上げる方法は特に限定されないが、(i)検体回収容器を、開口部から底部にかけて、底部向きに細くなる錐台状の形状とすること、(ii)開口部や底部の材質を絞り部の材質より強度が高いものとすること、(iii)開口部や底部の厚みを厚くすること等が挙げられ、特に(i)検体回収容器を、開口部から底部にかけて、底部向きに細くなる錐台状の形状とすることが好ましく、さらに、後述の通り、
図1の様に、側面図(A)から見ると台形状、正面図(B)から見ると柱状となる様な形状(円錐台状)とすることが好ましい。
【0029】
本発明の検体回収容器において、開口部から底部までの長さは、例えば、20~80mmが好ましく、より好ましくは30~60mmである。筒状体胴部の厚みは、例えば、0.3~2.0mmが好ましく、より好ましくは0.5~1.2mmである。絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法として、前記(2)の方法を採用する場合、筒状体胴部の絞り部の厚みは、0.3~1.2mm(好ましくは0.5~1.0mm)であり、筒状体胴部の絞り部以外の部分の厚みは0.5~2.0mm(好ましくは0.8~1.2mm)であり、「筒状体胴部の絞り部の厚み」<「筒状体胴部の絞り部以外の部分の厚み」である。絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法として、前記(3)の方法を採用する場合、開口部と連続する筒状体胴部の厚みは、0.5~2.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.8~1.6mmである。底部の厚みは、例えば、0.5~2.5mmが好ましく、より好ましくは1.0~2.0mmである。絞り部の変形度を絞り部以外の部分の変形度よりも大きくする方法として、前記(3)の方法を採用する場合、底部の厚みは、例えば、1.0~2.5mmが好ましく、より好ましくは1.2~2.5mmである。
【0030】
本発明の検体回収容器は、筒状体の底部に液体保持部を有していてもよい。前記液体保持部は、筒状体において絞り部より底部側にあることが好ましい。すなわち、前記容器は、筒状体の底部に液体保持部を有し、絞り部を液体保持部側面よりも開口部側の筒状体側面に有することが好ましい。
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る検体回収容器(以下、単に「容器1」と称する)の側面図(A)及び正面図(B)である。容器1は、一端(図では上端部)に開口部2を、他端(図では下端部)に底部3をそれぞれ有する筒状体であって、容器1の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部4を備える。絞り部4は前記筒状体の長軸方向に伸びる一対の楕円形の形態を有すること、特に楕円形であることが指とのフィット感の向上の観点からも好ましい。
図1では一対の楕円形の形態を有する絞り部4を表している。
【0033】
容器1は、開口部から底部にかけて、底部向きに細くなる錐台状(より具体的には円錐台状)の形状をとる。すなわち、底部は平面状である。容器1の開口部から底部にかけての形状は錐台状に限られず、円錐状(すなわち先細り)の形状や円柱状でもよい。容器1の形状が錐台状であることにより、絞り部を内側に変形するために必要な外力が小さくて済み、また、回収溶液の量を少なくすることが可能である。
【0034】
容器1は、開口部と連続する筒状体胴部に把持部を有していてもよい。把持部と絞り部は、後述の理由から独立した部位であること、すなわち、離れた位置にあることが好ましい。
【0035】
把持部は、容器1を移動する際や、イムノクロマトグラフト法等の検査に付する際に把持する部分である。したがって、絞り部と比較すると、筒状体の外部から外力が加えられた際の、内側への変形度が小さいことが望ましい。内側への変形度が絞り部と同等又は大きい場合、容器(筒状体)の全体が内側に変形することになり、内容される回収溶液があふれ出す可能性がある。
【0036】
図1の様に、側面図(A)から見ると台形状、正面図(B)から見ると柱状(円柱状)となる様な形状をとることが、絞り部4の柔軟性を向上し、且つ絞り部4を指で絞った際に容器1の絞り部以外の部位が変形しにくく、回収溶液が容器1からあふれ出すことがない点で好ましい。上記形状をとる場合、
図3で表される通り底部3の形状は楕円形となる。開口部と連続する筒状体胴部には把持部8が備えられている。
【0037】
開口部2から底部3に至るまで、検体採取具及びその検体採取部の挿入が可能であり、検体採取具を最も下まで挿入すると、底部3に当接し得る。
【0038】
絞り部4、すなわち容器1の長軸方向に伸びる一対の楕円形部は、容器1の外部から外力が加えられると内側に変形する。したがって、例えば、親指と人差し指で絞り部4を挟んで力を加えることにより、容器1の内部壁同士を容易に当接することが可能である。このため、容器1に検体採取具を挿入した場合は、その検体採取部を変形部分、すなわち絞り部4の内側で挟み込むことが可能となる。このため、検体採取部に付着した検体を絞ることが可能となる。絞り部4と底部3の間とは検体採取具の検体採取部が挿入され得る空隙5(液体保持部)がある。回収する検体の種類によっては、回収溶液を用意する必要があり、空隙5はこれを満足させるため容量を有する。
【0039】
絞り部4は、その形状に沿って凸部7を備えている。また、絞り部4は、容器の長軸方向又は短軸方向に沿って複数の凸部(図示無し)を備えていてもよい。これにより、容器を把持する使用者の指が滑りにくくなるとともに、一見して絞り部の位置が認識することが可能となる。上記の凸部は凹凸形状を有していてもよい。
【0040】
容器1は、透明又は半透明の材料からなることが好ましい。本構成により、作業者は試料の状態を観察しながら効率よく検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収溶液に移すことができる。
【0041】
絞り部4は、柔軟性(スクイズ性)の向上の観点から、可撓性材料より形成されていることが好ましい。また、絞り部4を含む容器1の全部が可撓性材料より形成されていてもよい。可撓性材料は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。この中でも、耐候性、耐熱性、及び耐水性(バリア性)の観点からスチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーであることが好ましく、さらに透明性及び柔軟性(スクイズ性)の観点からスチレン系エラストマーが特に好ましい。
【0042】
開口部2には、外径方向へ突出するフランジ6が周設されている。また、フランジと容器1の外側面とを連結するリブ(図示無し)が周設されていてもよい。
【0043】
底部3には、外径方向へ突出するフランジ9が周設されている。フランジ9が周設されていることにより、底部の強度を上げることができ、また、容器1を水平面上に安定に置くことができる。また、フランジと容器1の外側面とを連結するリブ(図示無し)が周設されていてもよい。
【0044】
図2において、開口部2から底部3までの長さ(T
1)は、20~80mmである。筒状体胴部の厚み(T
2、図示無し)は、0.3~2.0mmである。筒状体胴部の絞り部4の厚み(T
21)は、0.3~1.2mmであり、筒状体胴部の絞り部以外の部分の厚み(T
22)は、0.5~2.0mmであって、T
21<T
22である。把持部8の厚み(T
23)は、0.5~2.0mmである。底部3の厚み(T
3)は、0.5~2.5mmである。
【0045】
容器1の開口部2の外側面には、雄ねじ部(図示無し)が形成されていてもよく、また、容器1は前記雄ねじ部に対応する雌ねじ部が形成されたキャップを備えていてもよい。容器1が雄ねじ部を備え、且つ前記キャップを備えている場合、容器1の開口部2はキャップによって封じられ、容器は密閉される。
【0046】
容器1は、安価に製造できることや、使い捨ての使用態様を採用できるという観点からは射出成型品であることが好ましく、射出成型品による一体成型品であることが好ましい。
【0047】
容器1は、圧縮強度が10N以下であることが好ましく、より好ましくは8N以下、さらに好ましくは5N以下、特に好ましくは4N以下である。圧縮強度は実施例にて説明される圧縮試験により測定される。
【0048】
<検体採取セット>
本発明の検体採取セットは、一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有する検体回収容器と、前記検体回収容器に挿入され、前記絞り部により検体採取部が絞られる棒状体の検体採取具とを備えることを特徴とする。前記検体回収容器は、上記の検体回収容器の項で説明したものである。
【0049】
前記検体採取具は棒状体であり、軸部と、軸部の端に検体採取部を有する。また、軸部の一端又は両端に検体採取部を有していてよい。前記軸部は、持ちやすくするために柄を設けてもよいし、設けなくてもよい。また、柄は軸部と材質が異なっていてもよいが同一であることが好ましい。また、その断面の形態は異なっていても同一であってもよい。
【0050】
前記軸部には、一般的に材質(例えば、紙、木、金属、プラスチック等)を用いることができる。その中でも、加工等の観点から、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等のプラスチックを用いることが好ましい。
【0051】
前記検体採取具の全長は特に制限されないが、例えば、40~250mmであることが好ましく、より好ましくは60~200mmである。
【0052】
検体採取部は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、レーヨン、炭素繊維、アルギネート、綿、絹等の繊維から形成されることが好ましい。また、検体採取部の形状は特に限定されないが、例えば、略三角形状、略球形状、略矩形状、略正方形状、略半円形状、及び略卵形状である。
【0053】
検体採取部の縦方向の長さは、例えば、4~30mmであり、好ましくは8~25mm、さらに好ましくは10~20mmである。検体採取部の縦方向の長さとは、軸部の先端方向(長軸)に沿った検体採取部部分の長さを指す。検体採取部の断面が四角形断面である場合、断面の横幅の長さは、例えば、0.5~5mmであり、好ましくは0.8~4mm、さらに好ましくは1~3mmである。さらに、断面の縦幅は、例えば、0.5~5mmであり、好ましくは0.8~4mm、さらに好ましくは1~3mmである。また、軸部の断面が円形断面である場合、その直径は、例えば、0.5~5mmであり、好ましくは0.8~4mm、さらに好ましくは1~3mmである。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
スチレン系エラストマーを用い、射出成型により以下の形状を有する検体回収容器を作製した。
図1~3に示される形状を有する検体回収容器であって、開口部2から底部3までの長さ(T
1)は50mmである。開口部2から絞り部4までの長さは30mmである。把持部8の長さは5mmである。開口部2は楕円形となっており、フランジを含めた長軸は17mm、短軸は17mmである。フランジを含めない場合の長軸は12mm、短軸は12mmである。底部3は略円形となっており、フランジを含めた直径は12.8mm、含めない場合の直径は10.8mmである。筒状体胴部の絞り部の厚み(T
21、最薄部)は0.8mm、筒状体胴部の絞り部以外の部分の厚み(T
22)は1.0mmである。把持部8の厚み(T
23)は1.3mmである。底部の厚み(T
3)は1.5mmである。絞り部4を形成する楕円形形状の長軸は9.0mm、短軸は7.0mmである。
【0056】
実施例1にて得られた検体回収容器について、下記の圧縮試験で圧縮強度を測定した結果、圧縮強度は3.13Nとなった。
<圧縮試験>
測定装置:型式名:インストロン5565、インストロン・ジャパン社製
分析方法:φ20.0mmの半円柱状の圧子の円形面を、検体回収容器の側面の両方から押し当て、検体回収容器の内側が当接した際の強度を測定した。5回測定を行い、これらの平均値を圧縮強度とした。
【0057】
圧縮試験からも明らかな通り、本発明の検体回収容器は、柔軟性(スクイズ性)に富む。したがって、例えばインフルエンザ等の検査の際に、多数の検体を検査する場合であっても指を痛めにくく、腱鞘炎を起こさない。また、指で絞った(スクイズした)場合であっても容器全体の変形が抑えられているために回収溶液があふれ出すことがない。
【符号の説明】
【0058】
1.容器
2.開口部
3.底部
4.絞り部
5.空隙
6.フランジ
7.凸部
8.把持部
9.フランジ