(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】植物体再生におけるストリゴラクトン生合成阻害剤および作用阻害剤の利用
(51)【国際特許分類】
A01H 4/00 20060101AFI20250314BHJP
【FI】
A01H4/00
(21)【出願番号】P 2021053109
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】梅原 三貴久
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 夏鈴
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】OKAZAKI, Karin et al.,“Strigolactone signaling inhibition increases adventitious shoot formation on internodal segments of ipecac”,Planta,2021年05月20日,Vol. 253,Article No. 123,DOI: 10.1007/s00425-021-03640-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00- 17/00
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物組織培養物または植物器官培養物から不定芽を形成させる方法であって、
(1)植物の組織または器官を用意し;および
(2)上記(1)の植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で、当該植物組織または器官の維持または生育に適した条件下で培養する;
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ストリゴラクトン阻害剤が、ストリゴラクトン生合成阻害剤またはストリゴラクトン作用阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン生合成阻害剤であって、以下の式:
【化1】
で示されるTIS108である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン生合成阻害剤であって、以下の式:
【化2】
で示されるKK5である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン作用阻害剤であって、以下の式:
【化3】
で示されるKK094である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記(2)の植物組織または器官の培養が、ストリゴラクトン阻害剤を含む培地を用いて行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ストリゴラクトン阻害剤を含む培地がサイトカイニンを含まない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記(1)の植物の組織または器官が節間切片に由来する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記(1)の植物が食用植物、薬用植物または観賞用植物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記(1)の植物が遺伝子組換え植物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
植物の増殖または再生方法であって、
(1)植物の組織または器官を用意し;
(2)上記(1)の植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で、当該植物組織または器官の維持または生育に適した条件下で培養して、該植物組織培養物または植物器官培養物から不定芽を形成させ;および
(3)上記(2)で形成した不定芽を、植物の生育に適した条件下で栽培または培養する;
ことを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の再生、特に植物組織培養による植物体再生技術におけるストリゴラクトン生合成阻害剤および/またはストリゴラクトン作用阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
頂芽優勢および不定芽形成機構
通常、植物の一番上に位置する芽(頂芽)が成長しているとき脇芽は休眠状態にあり、この現象は「頂芽優勢」と呼ばれている。そして、このような現象にはオーキシンとサイトカイニンの2つの植物ホルモンが関与すると考えられてきた。すなわち、頂芽を除去するとそのすぐ下の脇芽が伸長するが、頂芽を除去した部分にオーキシンを含ませた寒天をのせると脇芽の伸長が抑制されるものの、脇芽にオーキシンを直接与えても脇芽の伸長は抑制されないことなどから、頂芽で合成されたオーキシンの基部方向への移動(オーキシンの極性輸送)により脇芽の伸長が間接的に抑制されると考えられている。一方、サイトカイニンを脇芽に直接与えると、頂芽が存在しても脇芽は伸長することから、サイトカイニンは脇芽の伸長に対して直接的に作用すると考えられている。
【0003】
植物組織や器官の培養における不定芽の形成においても、オーキシンとサイトカイニンの関与が知られている。不定芽とは、通常は芽の形成が見られない器官(茎の節間、根、葉など)やそれら器官の培養物から分化する芽であるが、多くの植物の組織・器官培養では、定性的に、培地に添加するオーキシン:サイトカイニンの比率を小さくする(オーキシン<サイトカイニン)と不定芽の形成が促進されることが知られている。一方、その比率を大きくすれば不定根の形成が誘発され、また両者の濃度を高くするとカルスの形成が誘発されることが知られている。
【0004】
このような不定芽形成時のオーキシンおよびサイトカイニンの作用原理の解明もなされてきている。トコン(Carapichea ipecacuanha(Brot.) L.Andersson)は、去痰剤、催吐剤および抗アメーバ剤として有用なアルカロイド類(エメチンおよびセファエリン)を含有する薬用植物であるが、その節間切片の培養ではオーキシンやサイトカイニンを培地に添加しなくとも比較的容易に不定芽が形成されることが知られている。非特許文献1は、そのようなトコン節間切片の培養実験から、不定芽は節間切片の茎頂側に局在的に形成されること;内生オーキシン(インドール酢酸)は当該節間の基部側に蓄積すること;およびサイトカイニンは節間切片全体に分布することを見出した。そして、これらの結果から、不定芽の形成位置と内生オーキシンの分布には負の相関が認められ、当該節間切片の茎頂側では、オーキシンの極性輸送により、該植物ホルモンの濃度が不定芽形成に適切な量に維持されていることが示唆された。
【0005】
非特許文献2は、上記の結果をうけて、トコン節間切片にオーキシンの極性輸送阻害剤の投与したところ、不定芽の形成位置が節間切片の茎頂側から中間部に移動し、また内生オーキシン(インドール酢酸)が当該節間切片の基部側に蓄積もしなかったことを見出し、少なくとも部分的に、節間切片の茎頂側から基部側に向かうオーキシンの極性輸送が、不定芽の形成位置を決定していることを示した。
【0006】
さらに、非特許文献1および非特許文献2では、トコン節間切片からの不定芽形成には頂芽優勢との類似点があることが見出された。すなわち、非特許文献1では、前述のように不定芽は節間切片の茎頂側に局在的に形成されるが、1つの不定芽が伸長すると別の不定芽の形成または伸長が抑制されること(つまり、1つの不定芽の成長だけが優勢になること);および優勢となった不定芽を除去すると別の不定芽が伸長し、再びその1つが優勢になることが観察された。また、非特許文献2では、優勢となった不定芽の除去面にオーキシンを投与すると次の不定芽の成長が強く阻害された。これらのことから、頂芽優勢と類似して、優勢となった不定芽からのオーキシンの極性輸送が別の不定芽の形成および伸長を抑制していると考えられている。
【0007】
このように、植物組織・器官培養についても、オーキシンおよびサイトカイニンの不定芽形成に対する作用原理は解明されつつあるものの、所与の植物の培養組織・器官から不定芽を形成させるための具体的な培養方法、特にオーキシンとサイトカイニンの最適な比率および濃度を決定するためには、依然として多くの試行錯誤を伴う困難が存在する。実際に、現在でも、組織ないし器官培養によって不定芽を効率的に形成させることができない植物は多い。また、前記のトコンのように比較的容易に不定芽を形成する植物であっても、頂芽優勢と類似の現象により、1つの培養物から多数の不定芽を形成させることが困難なこともある。
【0008】
ストリゴラクトン類
頂芽優勢については、前記のオーキシンおよびサイトカイニンとは別の新たな植物ホルモンが関与していることが予想されていた。非特許文献3は、そのような新規植物ホルモンを同定すべく、野生型に比べて多数の分げつ(すなわち、脇芽の伸長)を起こすイネの分矮変異体(d10およびd17など)や、野生型と比べて脇芽が著しく伸長するシロイナズナの分枝増加変異体(max3およびmax4など)を用いた実験を行い、ストリゴラクトン類ないしその代謝産物が当該植物ホルモンであることを明らかにした。すなわち、前記の変異体ではストリゴラクトンの生合成に必要な酵素(カロテノイド酸化開裂酵素)の機能が欠損していること、およびそれらの変異体にストリゴラクトンの作動性アナログ(GR24)を投与すると、脇芽の伸長が有意に抑制されることが明らかとなった。そして、これらの結果から、ストリゴラクトン類ないしその代謝産物が脇芽の伸長を抑制する植物ホルモンであることが示された。
【0009】
しかし、ここで重要なことは、非特許文献3が、植物の分枝を「脇芽の形成」と「脇芽の伸長」という2つの過程として明確に区別しており、そのうちの後者に対するストリゴラクトン作動性アナログの効果についてのみ記載していることである。すなわち、分枝の際、まずは未分化細胞からなる分裂組織(メリステム)が既存の植物組織(例えば表皮組織)内に発生してそれが芽に分化し(脇芽の形成)、ついで分化した芽が生育する(脇芽の伸長)。この2つの過程は、特異遺伝子の発現などのように分子生物学的にも明らかに異なる事象であるため、非特許文献3では一貫して後者、つまり「脇芽の伸長」に対するストリゴラクトン類の効果だけを特定して記載していることに留意する必要がある。
【0010】
なお、ストリゴラクトンは、(+)-5-デオキシストリゴール((+)-5-deoxystrigol)、(+)-オロバンコール((+)-orbanchol)および(+)-ストリゴール((+)-strigol)などを含むテルペノイドラクトン系化合物である。この化合物は、上記のとおりに植物の脇芽伸長を抑制する植物ホルモンであることが判明するのに先立って、当初はストライガ(Striga)種やオロバンキ(Orobanche)種のような根寄生植物の種子発芽を刺激する物質として単離されていた。また、宿主植物による土壌栄養の吸収を促進する共生菌であるアーバスキュラー菌根菌を活性させるシグナルとして機能していることも報告されていた(非特許文献3)。
【0011】
さらに、前記のGR24のほかにもストリゴラクトンの作動性アナログおよびその生物学的作用が知られていた。例えば、特許文献1には、2-メチル-3-(4-メチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イルオキシ)アクリル酸メチルに代表されるジヒドロフラン基を持つアクリル酸誘導体類が、ストリゴラクトンと同様にイネの分矮変異体の分げつおよびシロイナズナの分枝増加変異体の分枝を抑制したことが記載されている。ただし、非特許文献3と同様に、当該文献に示されている分枝抑制効果はいずれも「脇芽の伸長」に対する阻害効果を観察したものであり(同文献の段落[0085]および[0111]参照)、したがって、同文献にも植物体からの新たな「脇芽の形成」(メリステムの発生ないし分化)に対するストリゴラクトンの効果については何も記載されていない。
【0012】
特許文献2には、一群のストリゴラクトン誘導体が記載されている。同文献にはそれらの誘導体が、前記のストリゴラクトン作動性アナログ(GR24等)に比べて種子の発芽をいっそう促進したことが記載されている。すなわち、同文献の誘導体で処理したコーン種子は、未処理の種子に比べて、またGR24等で処理した種子に比べても早く発芽し、各種子がより同期的に発芽したことが記載されている。しかし、同文献にも、脇芽伸長に対する阻害効果はもとより、脇芽の形成(メリステムの発生ないし分化)に対する効果については何も記載されていない。
【0013】
一方、ストリゴラクトンの阻害剤も知られている。特許文献3には、4-(2-フェノキシエトキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK5)に代表される一群の化合物が、植物によるストリゴラクトンの生合成を阻害する作用を有することが記載されている。また、当該文献には、それらのストリゴラクトン生合成阻害剤をシロイナズナに処理すると、枝分かれの数が増加したことが記載されている。しかし、ここで調べられた枝分かれ数は2mm以上伸長した脇芽の数(すなわち、脇芽の伸長)であるから、同文献は、脇芽の伸長に先立つ脇芽の形成(メリステムの発生ないし分化)に対するストリゴラクトン阻害剤の効果については何も記載していない(同文献の段落[0039]参照)。
【0014】
その他のストリゴラクトン生合成阻害剤としては、TIS108等が知られている(非特許文献4)。しかし、この文献は脇芽に対する当該化合物の効果を何ら記載していない。また、ストリゴラクトンの作用阻害剤としてKK094等が知られている(非特許文献5)。しかし、この文献も、伸長した脇芽の数を指標として分枝数の増加(脇芽の伸長)を観察しているだけであり、脇芽の形成(メリステムの発生ないし分化)に対するストリゴラクトン阻害剤の効果を何ら記載も示唆もしていない。
【0015】
非特許文献6には、オランダカイヨウ属に属するZantedeschia sprengeri (Paco)の芽を、ベンジルアミノプリン(合成サイトカイニン)、イマザリルおよびフルリドンを含む培地で8週間培養し、それに続いてベンジルアミノプリンのみを含む培地に当該植物体を移植して8週間培養した場合、伸長した脇芽の数が増加したことを記載している。この文献では、イマザリルがモノオキシゲナーゼを標的とする抗真菌剤であることなどから、ベンジルアミノプリンやジベレリン等の代謝に影響を与えた可能性があるとされている。また、この文献は、フルリドンがストリゴラクトンの生合成阻害剤として作用した可能性があると推測している。しかしながら、同文献では伸長した脇芽の数(と長さ)を観察しているだけなので、脇芽の形成(メリステムの発生ないし分化)に対するストリゴラクトン阻害剤の効果は明らかではない。加えて、同文献では、脇芽数の増加が、第2の8週間培養(すなわち、ベンジルアミノプリンだけを含む培地上での培養)の際にのみ観察されている。実際に、同文献には、第1の8週間培養(すなわち、フルリドンの存在下での培養)の間には、脇芽数の増加が観察されないか、わずかに増加しただけであったと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第WO2010/137662号パンフレット
【文献】特表2019-532045号公報
【文献】特開2020-83853号公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】Koikeら,J.Plant Growth Regul.,36(4):805-813(2017)
【文献】Koikeら,Planta,251(3):73(2020)
【文献】Umeharaら,Nature,455(7210):195-200(2008)
【文献】Itoら,PLoS ONE,6(7):e21723(2011)
【文献】Nakamuraら,Mol.Plant,12(1):44-58(2019)
【文献】Shahinら,Egypt.J.Bot.,60(1):1-7(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
不定芽から植物体を再生し得るので、植物組織または器官培養により効率的に不定芽を形成することができれば、商業的に重要な植物の増殖や遺伝子組換え植物の再生において極めて有用な技術となり得る。したがって、本発明は植物組織培養物または植物器官培養物から不定芽を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ストリゴラクトン阻害剤を植物組織培養物または植物器官培養物(特に注記しない場合、本明細書では両者を包括的に「植物組織培養物」という。)に処理することで、容易に不定芽を形成できることが見出された。すなわち、ストリゴラクトン阻害剤により処理された植物組織培養物から新たにメリステムが形成され、不定芽が分化することが見出された。ストリゴラクトン阻害剤処理により、そのようにして植物組織培養物からの不定芽形成が促進(不定芽形成数の増加を含む)されたことは予想外の発見であった。
【0020】
したがって、本発明の第1の局面は、
[1] 植物組織培養物または植物器官培養物から不定芽を形成させる方法であって、
(1)植物の組織または器官を用意し;および
(2)上記(1)の植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で、当該植物組織または器官の維持または生育に適した条件下で培養する;
ことを含む前記方法である。
【0021】
上記のストリゴラクトン阻害剤は、ストリゴラクトン生合成阻害剤であってもストリゴラクトン作用阻害剤であってもよい。したがって、本発明の1つの実施形態は、
[2] 前記ストリゴラクトン阻害剤が、ストリゴラクトン生合成阻害剤またはストリゴラクトン作用阻害剤である、上記[1]の方法である。
【0022】
上記のストリゴラクトン生合成阻害剤は、植物によるストリゴラクトンの生合成を阻害し得る化合物であればいずれのものでも使用することができるが、以下のものを非限定的に例示することができる。すなわち、本発明の更なる実施形態は、
[3] 前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン生合成阻害剤であって、以下の式:
【化1】
で示されるTIS108である、上記[2]の方法、および
[4] 前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン生合成阻害剤であって、以下の式:
【化2】
で示されるKK5である、上記[2]の方法である。
【0023】
上記のストリゴラクトン作用阻害剤は、植物や植物組織/器官内でストリゴラクトンの作用を阻害し得る化合物であればいずれのものでも使用することができるが、以下のものを非限定的に例示することができる。すなわち、本発明の別の実施形態は、
[5] 前記ストリゴラクトン阻害剤がストリゴラクトン作用阻害剤であって、以下の式:
【化3】
で示されるKK094である、上記[2]の方法である。
【0024】
本発明において、植物組織または器官のストリゴラクトン阻害剤の存在下での培養は、当該植物組織または器官におけるストリゴラクトンの作用が全部または少なくとも部分的に阻害される程度に、植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤と十分に接触させることにより実施できる。具体的には、植物組織または器官を培養する培地にストリゴラクトン阻害剤を添加することが比較的簡便であり、よって好ましい。したがって、本発明の1つの実施形態は、
[6] 前記(2)の植物組織または器官の培養が、ストリゴラクトン阻害剤を含む培地を用いて行われる、上記[1]~[5]のいずれかの方法である。
【0025】
また、本発明によれば、植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で培養するだけで十分な数の不定芽が形成されるので、それ以外の植物ホルモン、例えばサイトカイニンを培地に添加することは必ずしも要求されない。したがって、本発明の更なる実施形態は、
[7] 前記ストリゴラクトン阻害剤を含む培地がサイトカイニンを含まない、上記[6]の方法である。
【0026】
前述のように、本発明によれば、植物組織または器官の培養物から新たにメリステムが形成され、不定芽が分化する。したがって、本発明で培養される植物組織または器官が芽の組織(茎頂および脇芽)を有している必要はない。そのような組織または器官として、例えば節間部を使用することが便利である。したがって、本発明の1つの実施形態は、
[8] 前記(1)の植物の組織または器官が節間切片に由来する、上記[1]~[7]のいずれかの方法である。
【0027】
本発明の方法は、商業的に重要な植物、例えば食用植物、薬用植物および観賞用植物など)の増殖や遺伝子組換え植物の再生において特に有用であり得る。したがって、本発明の特定の実施形態は、
[9] 前記(1)の植物が食用植物、薬用植物または観賞用植物である、上記[1]~[8]のいずれかの方法、および
[10] 前記(1)の植物が遺伝子組換え植物である、上記[1]~[8]のいずれかの方法を含む。
【0028】
さらに、本発明者らは、上記のようにして得られた不定芽がさらに伸長し、その不定芽から正常な植物体が再生されることも確認した。したがって、本発明の第2の局面は、
[11] 植物の増殖または再生方法であって、
(1)植物の組織または器官を用意し;
(2)上記(1)の植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で、当該植物組織または器官の維持または生育に適した条件下で培養して、該植物組織培養物または植物器官培養物から不定芽を形成させ;および
(3)上記(2)で形成した不定芽を、植物の生育に適した条件下で栽培または培養する;
ことを含む前記方法である。
【0029】
なお、本発明の第2の局面(つまり、上記[11])に関しても、第1の局面について記述した上記[2]~[10]の実施形態がそのまま適用し得ることを当業者は容易に理解するであろう。
【0030】
さらに本発明の別の局面は、
[12] 植物組織または器官培養物から不定芽を形成させるためのストリゴラクトン阻害剤、
[13] 植物組織または器官培養物から植物を増殖または再生させるためのストリゴラクトン阻害剤、および
[14] 上記[1]~[10]の不定芽を形成させる方法、或いは上記[11]の植物の増殖または再生方法によって得られた植物である。
【0031】
なお、これらの別の局面(つまり、上記[12]~[14])のいずれに関しても、第1の局面について記述した上記[2]~[10]の実施形態がそのまま適用し得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、植物組織または器官培養物から効率的に不定芽を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、不定芽形成に対するGR24の効果を示す。a:記載された条件下で5週間培養した後の節間切片上の不定芽(矢印)の代表的な画像。バーは2mmに相当する。b:GR24を処理した節間切片上に形成された不定芽の数。データは平均±SE(n=3)である。8~10個の切片を各実験で使用した。
*、+(ダガー)および#は、対照(0μMのGR24)に対して、それぞれ0.1、1μMおよび10μMのGR24についてP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。c:培養5週間後の節間切片の各領域I~IVにおける不定芽の数。データは平均±SE(n=3)である。各実験において8つの切片を使用した。
*は、対照(0μMのGR24)に対してP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。
【
図2】
図2は、GR24を処理した節間切片におけるインドール-3-酢酸(IAA)およびサイトカイニン(CK)レベルを示す。記載された条件下での培養1週間後に節間切片を収集した。データは平均±SE(n=4)である。4つの切片を各実験で使用した。
*は、対照(0μMのGR24)に対してP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。n.d.:検出されない。FWは新鮮重量の略。
【
図3】
図3は、不定芽形成に対するTIS108の効果を示す。a:記載された条件下で8週間培養した後の節間切片上の不定芽の代表的な画像。バーは2mmに相当する。b:TIS108を処理した節間切片上に形成された不定芽の数。データは平均±SE(n=3)である。8~10個の切片を各実験で使用した。
*、+(ダガー)および#は、対照(0μMのTIS108)に対して、それぞれ5μM、10μMおよび20μMのTIS108についてP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。
【
図4】
図4は、不定芽形成に対するKK5の効果を示す。a:記載された条件下で8週間培養した後の節間切片上の不定芽の代表的な画像。バーは2mmに相当する。b:KK5を処理した節間切片上に形成された不定芽の数。データは平均±SE(n=3)である。8~10個の切片を各実験で使用した。
*は、対照(0μMのKK5)に対する20μMのKK5についてP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。
【
図5】
図5は、不定芽形成に対するKK094の効果を示す。a:記載された条件下で8週間培養した後の節間切片上の不定芽の代表的な画像。バーは2mmに相当する。b:KK094を処理した節間切片上に形成された不定芽の数。データは平均±SE(n=3)である。8~10個の切片を各実験で使用した。
*、#および+(ダガー)は、対照(0μMのKK094)に対して、それぞれ1μM、5μMおよび10μMのKK094についてP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。
【
図6】
図6は、ストリゴラクトン(SL)関連阻害剤(TIS108およびKK094)を処置した節間切片におけるIAAおよびCKレベルを示す。培養1、3、および5週間後に節間切片を収集した。データは平均±SE(n=4)である。4つの切片を各実験で使用した。
*は、対応する対照(0μMの阻害薬)に対してP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。n.d.:検出されない。FWは新鮮重量の略。
【
図7】
図7は、SL関連阻害剤であるTIS108(a)、KK5(b)およびKK094(c)の、節間切片の4つの領域(茎頂側から基部側の方向にI~IV)内での不定芽形成に対する効果を示す。培養8週間後に節間切片の各領域に形成された不定芽の数が示されている。データは平均±SE(n=3)である。8~10個の切片を各実験で使用した。
*は、対応する対照(0μMの阻害薬)に対してP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。n.s.:有意差なし。
【
図8】
図8は、不定芽の成長に対するSL関連阻害剤の効果を示す。10μMのTIS108、KK5またはKK094で10週間培養した後の節間切片上の不定芽の代表的な画像である。バーは2mmに相当する。
【
図9】
図9は、対照条件あるいは10μMのTIS108、KK5またはKK094処理条件下で8週間培養した後に節間切片から取り出した後の不定芽の成長を示す。取り出したシュートを、植物ホルモンを含まない培養培地上で8週間さらに培養した。バーは2mmに相当する。
【
図10】
図10は、不定芽形成に対するカイネチンの効果を示す。a:培養8週間後の不定芽。バーは2mmに相当する。b:カイネチンで処理した節間切片上に形成された不定芽の数。データは平均±SD(n=10)である。
*は、対照(0μMのカイネチン)に対する1μMのカイネチンについてP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。c:節間切片の各領域における不定芽の数。データは平均±SD(n=10)である。
*は、対照に対してP<0.05であることを示す(スチューデントのt検定)。n.s.:有意差なし。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ストリゴラクトン阻害剤
本発明で用いることのできるストリゴラクトン阻害剤とは、植物組織または器官において、植物に対するストリゴラクトンの作用を減少または阻止し得る化合物を意味する。典型的な本発明のストリゴラクトン阻害剤は、ストリゴラクトン生合成阻害剤またはストリゴラクトン作用阻害剤である。そのような化合物としては多くのものが知られている。
【0035】
本発明のストリゴラクトン生合成阻害剤は、植物によるストリゴラクトンの生合成のいずれかのステップを阻害することにより、生物学的に活性なストリゴラクトン類の合成を減少または阻止することができる化合物である。そのような化合物は、例えば特開2020-83853号公報に記載されている(その全文が引用により本明細書に組み込まれる。)。したがって、本発明では同文献に記載のいずれの化合物も使用することができ、そのような化合物の例は以下のものを含む:
6-フェノキシ-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)4-ヘキセン-1-オン(KK3);
4-(2-フェノキシエトキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK5);
4-[2-(2,6-ジクロロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK12);
4-[2-(3-クロロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK13);
4-[2-(4-ブロモフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK14);
4-[2-(4-メトキシフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK15);
4-[2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK16);
4-[2-(3-トリフルオロメチルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK17);
4-[2-(2-フルオロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK18);
4-[2-(4-フェノキシフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK19);
4-[2-(4-フェニルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK20);
6-(2-メチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK101);
6-(2,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK102);
6-(3,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK103);および
6-(4-ニトロフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK106)など。
【0036】
例えば、上記のもののうち、本発明では以下の式で示されるKK5を使用することができる。
【化4】
【0037】
本発明で使用することができる他のストリゴラクトン生合成阻害剤は、Itoら,PLoS ONE,6(7):e21723(2011)に記載されている(その全文が引用により本明細書に組み込まれる。)。例えば、以下の式で示されるTIS108を使用することができる。
【化5】
【0038】
本発明のストリゴラクトン作用阻害剤は、植物や植物組織/器官内でストリゴラクトンの作用を減少または阻止することができる化合物であり、その作用機序は如何なるものでもよい。そのような化合物は、例えばNakamuraら,Mol.Plant,12(1):44-58(2019)に記載されている(その全文が引用により本明細書に組み込まれる。)。代表的な化合物は、以下の式で示されるKK094である。
【化6】
【0039】
なお、上記の名称や構造式で示した具体的な化合物は本発明の特定の実施形態の例示であり、いかなる意味においても本発明をそれらのみに限定するものではない。
【0040】
植物組織または器官培養
本発明の効果は、任意の植物に由来する組織または器官を、上記のストリゴラクトン阻害剤の存在下で培養することにより達成される。本発明において、「ストリゴラクトン阻害剤の存在下」で培養するとは、当該組織ないし器官が、不定芽を形成するのに十分な方式(例えば量および期間)でストリゴラクトン阻害剤と接触することを意味する。そのような接触は、好ましくは、植物から採取した組織または器官を、ストリゴラクトン阻害剤を含む培地上で培養することにより実施され得る。
【0041】
具体的に、そのような培地は、滅菌済みの後述する培地に対してストリゴラクトン阻害剤を無菌的に添加して作製することができる。添加するストリゴラクトン阻害剤の量は、種々の条件、例えば用いる阻害剤の種類、植物の種類、植物組織または器官の大きさや形状、培養期間などに応じて適宜変更し得る。典型的には、ストリゴラクトン阻害剤の培地内の濃度が0.01μM~1mMとなるように、好ましくは0.1~100μMとなるように、最も好ましくは1~20μMとなるように、ストリゴラクトン阻害剤を培地に添加する。
【0042】
重要な点の1つとして、後述するとおりに、本発明者らは、植物組織または器官をストリゴラクトン阻害剤の存在下で培養するだけで、不定芽形成が顕著に促進されることを見出した。つまり、植物組織または器官を、ストリゴラクトン阻害剤を添加したが、他の植物ホルモン(例えば、サイトカイニン)は添加していない培地上で培養した場合でさえも、そして当該培養の後にその他の植物ホルモンを更に該植物組織培養物に処理したりもせず、あるいは他の植物ホルモンを含む培地上で該植物組織培養物の培養を継続したりしない場合でさえも、有意に多数の不定芽が形成された。したがって、本発明の方法に用いる培地に植物ホルモン類、特にサイトカイニンを添加することは必須でない。
【0043】
植物組織または器官は、植物のいずれの個所から採取してもよい。本発明によれば、植物組織培養物が、最終的に不定芽に分化するメリステムを新たに形成するので、採取する組織または器官に芽の組織が存在している必要はない。すなわち、本発明で培養する組織または器官は、通常は芽が形成されない器官、例えば葉、葉柄、茎の節間、根のなどの器官に由来するものであってよい。採取が容易な場合は、節間部を使用することが便利である。組織または器官の採取は、例えば、植物の該当する器官を切り出すことにより実施することができる。採取した組織ないし器官は、当業者が通常用いる方法によって表面を殺菌または抗生物質による除菌後、培地に移植する。
【0044】
本発明で用いる培地には、当業者に周知のいずれの植物組織培養培地も用いることができる。培地の非限定的な例示としては、MS培地、White培地、N6培地、SB培地、SH培地およびB5培地などが挙げられる。それらの植物組織培養培地は市販されているか、文献に従って調製することができる。培養する組織または器官に適した培地を選択することができ、そのような選択は当業者の通常の技術の範囲内である。
【0045】
本発明の植物組織または器官の培養には、当業者に周知のいずれの培養条件も適用することができる。培養する組織または器官に適した培養条件を選択することができ、この選択も当業者の通常の技術の範囲内である。
【0046】
例えば、培養は15~30℃の範囲内、好ましくは23~27℃の範囲内で実施することができる。また、培養は全暗所および全明所(弱光化または強光化)のいずれで実施してもよいし、或いは適当な長さの明期と暗期のサイクル下で実施してもよい。そのような明期と暗期のサイクルは、例えば6~20時間の連続した明期、好ましくは10~18時間の連続した明期、より好ましくは12~16時間の連続した明期により構成され得る。
【0047】
培養期間は、培養する植物種、組織や器官の種類や状態などに応じて変化させることができる。すなわち、培養は、不定芽形成が観察(例えば、目視および実体顕微鏡観察で)されるまで継続してもよいし、不定芽が十分に伸長するまで継続してもよい。培養は、例えば1~16週間、好ましくは2~12週間、より好ましくは3~8週間継続することができる。培地は、培養の継続期間中の適切なタイミングで新しいものに交換してもよいし、交換しなくてもよい。
【0048】
植物体の再生
本発明者らは、本発明により形成された不定芽から正常な植物体が再生されることも確認した。したがって、本発明の不定芽は、上記の植物組織培養物から分離した後に、種苗として利用することができる。或いは、本発明の不定芽をさらに培養ないし栽培して、植物体や種子、果実などを得てもよい。
【0049】
植物組織培養物からの不定芽の分離は、例えば無菌的に不定芽を切取ることによって実施することができる。分離した不定芽は、それをさらに培養するために、無菌的に植物組織培養培地に移植することが好ましい。植物組織または器官培養について前記した培地および培養温度は、不定芽のさらなる培養に適用することができる。但し、この不定芽のさらなる培養において、本発明のストリゴラクトン阻害剤を培地に添加する必要はない。
【0050】
好ましくは、分離した不定芽のさらなる培養を、適当な長さの明期と暗期のサイクル下で実施する。そのような明期と暗期のサイクルは、例えば6~20時間の連続した明期、好ましくは10~18時間の連続した明期、より好ましくは12~16時間の連続した明期により構成され得る。分離した不定芽の培養期間は、培養する植物種や不定芽の状態(大きさや形状など)によって変わり得る。一般に、不定芽が土壌や栽培施設(水耕栽培施設など)に移植できる程度の形態(大きさや形状など)に成長するまで、培養を継続することが好ましい。当業者は、そのような培養の終期を容易に判断することができるであろう。土壌や栽培施設への移植後の植物の栽培条件の決定も、当業者の通常の技術の範囲内である。
【0051】
有用な植物
本発明の方法に従って任意の植物に不定芽を形成することができる。例えば、商業的な観点から、本発明の植物は食用植物、薬用植物および観賞用植物などであり得る。また、本発明の方法は、遺伝子組換え植物の再生において好適に使用することができる。さらに、本発明の方法は、希少植物の増殖にも利用できる。
【0052】
食用植物の非限定的な例としては、アブラナ科(キャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、ダイコン、ワサビなど);マメ科(ダイズ、エンドウ、ソラマメ、インゲンマメ、ラッカセイなど);ナス科(ナス、ジャガイモ、トマト、ピーマン、トウガラシなど);ウリ科(キュウリ、スイカ、カボチャ、ズッキーニ、メロンなど);バラ科(アンズ、プラム、リンゴ、ナシ、サクランボ、モモ、イチゴなど);キク科(レタス、リーフレタス、アーティチョーク、シュンギク、ゴボウなど);セリ科(ニンジン、パセリ、セロリ、フェンネルなど);アカザ科(ホウレンソウ、フダンソウなど);シソ科(シソ、バジル、ローズマリー、ミント類など);ミカン科(レモン、ユズ、キンカン、グレープフルーツ、ライムなど);ゴマ科(ゴマなど);ヒルガオ科(サツマイモなど);イネ科(トウモロコシ、イネ、ムギ類など);ユリ科(アスパラガス、ネギ、タマネギ、ニンニク、リーキなど);サトイモ科(サトイモ、コンニャクなど);アヤメ科(サフランなど):ショウガ科(ショウガ、ミョウガなど);ブドウ科(ブドウなど);ツツジ科(ベリー類など);バショウ科(バナナなど);パイナップル科(パイナップルなど)の植物が挙げられる。
【0053】
薬用植物の非限定的な例としては、アカネ科(トコン、クチナシなど);ユリ科(アミガサユリ、アロエなど);バラ科(サンザシ、ホンアンズなど);トウダイグサ科(アカメガシワなど);ウコギ科(エゾウコギ、オタネニンジン、トチバニンジンなど);マメ科(ウビスグサ、キバナオウギ、クララ、カンゾウ類など);ミカン科(ゴシュユ、サンショウなど);キク科(オオヨモギ、カミツレ、カワラヨモギなど);シソ科(ウツボグサ、ケイガイ、コガネバナなど);ナス科(クコなど);セリ科(トウキ、ミシマサイコなど);ショウガ科(ウコン、ガジュツなど)の植物が挙げられる。
【0054】
観賞用植物の非限定的な例としては、切り花用植物(バラ、カーネーション、ガーベラ、ユリ、マーガレット、キクなど);花壇や鉢植え用植物(スミレ、ゼラニウム、チューリップ、ヒマワリ、ベゴニアなど);潅木および針葉樹(シャクナゲ、モミ、トウヒ、マツ、イチイなど)が挙げられる。
【0055】
組成物
以上から明らかなように、本発明の方法に用いるためのストリゴラクトン阻害剤が提供される。この目的のために、ストリゴラクトン阻害剤が組成物として提供されることが好ましい。そのような組成物は、典型的にはストリゴラクトン阻害剤の1種以上および植物学的に許容され得る不活性担体(例えばアセトンなどの有機溶媒)、並びに所望により界面活性剤および安定化剤などを含んでもよい。本発明の組成物は、植物組織または器官を培養する培地にストリゴラクトン阻害剤を添加する際に使用することができる。
【0056】
以下の実施例は、本発明がより完全に理解されるように提供される。これらの実施例は単なる例示であり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。なお、本明細書において、特筆しない限り%の記載は、w/wでの%を意味する。
【実施例】
【0057】
実験方法
1.植物材料および培養条件
以下の実施例(実施例1~5)は、トコン(Carapichea ipecacuanha(Brot.) L.Andersson)を用いて行われた。前述のように、トコンは、オーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンを処理しなくとも節間切片上に不定芽を形成することができる。したがって、トコンの組織培養を用いることによって、不定芽形成中の内生植物ホルモンの効果を容易に研究することができる。また、外部から投与した化学物質の直接的な効果を評価するのにも適している。
【0058】
以下の実施例で用いたトコン培養系は下村教授らにより確立され(YoshimatsuおよびShimomura,Plant Cell Rep.,9(10):567-570(1991))、東洋大学で維持されているものを用いた。無菌植物を、シュート先端、節、および節間から増殖させた。不定芽を誘導するために、節間切片(5mm)を切断し、ペトリ皿(内径90mm;高さ20mm)中で0.2%のGelrite(登録商標;富士フイルム和光純薬(株)製(大阪、日本))で固化させた25mlの植物ホルモンを含まないB5培養培地(Gamborgら,Exp.Cell Res.,50(1):151-158(1968))上に水平に置き、14時間の明期/10時間の暗期の光周期(13~17μmol光子、m-2s-1)で、24℃で培養した。各節間切片上に形成された0.3mmを超える長さを有する不定芽の数を、デジタル顕微鏡(DHS1000;Leica Microsystems,Wetzlar,Germany)下で計数した。
【0059】
2.化学物質による処理
GR24は、Chiralix(Nijmegen,Netherlands)から購入した。TIS108、KK5およびKK094は、(Itoら,PLoS ONE,6(7):e21723(2011);Kawadaら,J.Agric.Food Chem.,67(22):6143-6149(2019))(Nakamuraら,Mol.Plant,12(1):44-58(2019))に記載されているように合成した。GR24、TIS108、KK5およびKK094をアセトンに溶解して100mMストックを調製し、-30℃で保存した。TIS108およびKK094の有効濃度を推定するために、各化学物質を0.1、1、10、20、50、および100μMで予備試験した(データは示さず)。KK5はまた、0.1、1、10、20、および100μMで試験した(データは示さず)。化学物質をオートクレーブ処理したB5培養培地に添加した。
【0060】
IAA(インドール-3-酢酸)およびtrans-ゼアチンリボシド(tZR)は、富士フイルム和光純薬(株)から購入した。イソペンテニルアデニン(iP)およびtrans-ゼアチン(tZ)はSigma(St.Louis,MO,USA)から購入し、カイネチンおよびイソペンテニルアデニンリボシド(iPR)は関東化学工業(株)(東京、日本)から購入した。D5-IAA、D5-tZ、D5-tZR、D6-iP、およびD6-iPRなどの重水素標識植物ホルモンは、内部標準として使用するためにOlChemIm(Olomouc,Czech Republic)から購入した。カイネチンをアルカリ水に溶解して10mMストックを調製し、4℃で保存した。他の植物ホルモンをアセトニトリルに溶解し、100μg/μlのストック溶液を調製し、これを用いて液体クロマトグラフィー-タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)解析における検量線を作成した。
【0061】
3.IAAおよびサイトカイニン(CK)の抽出および精製
節間切片を、植物ホルモンを含まないB5培地(対照)または10μMのGR24を含有するB5培地上で1週間培養した。ストリゴラクトン(SL)阻害剤処理において、節間切片を、B5培地上で、または10μMのTIS108もしくは10μMのKK094を含有するB5培地上で、1、3または5週間培養した。培養した切片を4切片(茎頂側から基部側の方向にI~IV)に切断した。各切片(約5~16mg)を、ジルコニアビーズ(直径5mm)を添加した2.0mlチューブに入れ、液体窒素中で凍結した。凍結試料をTissueLyser II(製品名;QIAGEN,Hilden,Germany)で粉砕し、1%酢酸;500pgのD5-IAA、D5-tZR、D6-iPおよびD6-iPR;ならびに1.5ngのD5-tZを含む1mlのアセトニトリルに懸濁した。試料を暗所で4℃で1時間インキュベートし、室温で5分間3,500×gで遠心分離した。沈殿物を1%(v/v)酢酸を含有する80%(v/v)アセトニトリルで洗浄し、再び遠心分離した。両方の上清を合わせ、1%(v/v)酢酸を含有する600μlの水を添加した。試料中のアセトニトリルを窒素ガス流によって蒸発させた後、水性試料を平衡化したOasis MCXカートリッジカラム(製品名;Waters,Milford,MA,USA)に負荷した。カートリッジを1%(v/v)酢酸で洗浄した後、1%(v/v)酢酸を含有する30%(v/v)アセトニトリルの2mlでIAAを溶出した。カラムを1%(v/v)酢酸を含有する80%(v/v)アセトニトリルの2mlで洗浄した。CK類を、5%(v/v)アンモニア水を含む60%(v/v)アセトニトリルの2mlで溶出した。すべてのIAAおよびCK画分を蒸発させ、LC-MS/MS解析まで-30℃で保存した。
【0062】
4.LC-MS/MS分析
IAA画分を0.5%(v/v)酢酸を含有する10%(v/v)アセトニトリルの20μlに溶解し、CK画分を1%(v/v)酢酸を含有する20μlの水に溶解した。IAAおよびCK分析のために、サンプルを、トリプル四重極質量分析計(3200 QTRAP(登録商標);SCIEX,Framingham,MA,USA)とAcquity(製品名) BEH C18カラム(直径2.1mm;高さ50mm;Waters)を装備した高速液体クロマトグラフィーシステム(Prominence(製品名);島津製作所(京都、日本))とで構成されたLC-MS/MSシステムによって、Analyst v.1.5.1 spectrometer software(製品名;SCIEX)の制御下で分析した。0.05%(v/v)酢酸を含有する水および0.05%(v/v)酢酸を含有するアセトニトリルを液体クロマトグラフィーの移動相として使用した。IAA解析において、移動相は、0.4ml/minの流速でサンプル注入後6分までに10%(v/v)から55%(v/v)アセトニトリルに直線的に増加した。CK解析において、移動相の勾配は0.4ml/minの流速で、サンプル注入後4分間にわたって2%(v/v)アセトニトリルから15%(v/v)アセトニトリルへ、および7分までに40%(v/v)アセトニトリルへ直線的に増加した。カラムオーブンの温度を40℃に設定した。IAAおよびCK分析のためのイオン源パラメータは以前に記載されたとおりに設定した(Koikeら,J.Vis.Exp.(133):e56902(2018))。IAAおよびCKを、MultiQuant v.2.0.2 software(製品名;SCIEX)を使用することによって、重水素標識標準に対する各非標識化合物の比の曲線上で定量した。
【0063】
5.統計解析
統計解析は、IBM SPSS Statistics 26.0 software(IBM SPSS Inc,Armonk,NY,USA)を用いて行った。F検定による分散の等価性の評価に引き続き、スチューデントのt検定により群間を比較し、P値が0.05未満の場合を統計学的有意差ありとみなした。全ての実験は、完全に無作為化された設計として実施した。
【0064】
実施例1: 投与したストリゴラクトン(SL)が不定芽形成に及ぼす影響
投与したSLの効果を評価するために、SL合成類似体GR24をトコン節間切片の培養培地に添加した。5週間の培養後、対照サンプル(無処理)では節間部の茎頂側に主に不定芽(シュート)が形成されたが、GR24を施用した場合には中間部に不定芽(シュート)が形成された(
図1a)。シュート形成は、GR24濃度に従って抑制された(
図1a、b)。シュートの平均総数は、対照サンプルでは11.2であり、この数は10μMのGR24処理サンプルでは74%減少して2.9になった(
図1b)。不定芽が節間切片のどこで形成されたかを確認するために、培養5週間後に切片を4つの領域(茎頂側から基部側の方向にI~IV)に分割し、各領域のシュートを数えた(
図1c)。対照サンプルでは領域Iに平均7.9シュート、領域IIに3.3シュート、領域IIIに0.5シュートが存在したが、10μMのGR24処理サンプルでは領域Iに0.3シュート、領域IIに1.6シュート、領域IIIに0.9シュートが存在した。対照サンプルおよび処理サンプルのいずれでも、領域IVにシュートは形成されなかった。したがって、10μMのGR24処理は、対照と比較して、領域Iにおいてシュート数を約95%減少させ、領域IIIにおいてシュート数をほぼ2倍にした。
【0065】
本発明者らの以前の研究において、トコン節間切片における内生IAAおよびCKレベルは培養の1週間後に一時的に増加した(非特許文献1)。そこで、内生オーキシンおよびCKに対するSLの効果を調べるために、対照または10μM・GR24条件における培養の1週間後の領域I~IVにおけるIAAおよびCK(tZ、tZR、iPおよびiPR)の内生レベルを測定した。IAAは、対照サンプルにおいて主に領域IVに蓄積した(I~IIIでは、~4.9pg/mg 新鮮重量(FW);IVでは、16.7pg/mg FW)。10μMのGR24での処理は、対照と比較して、領域IV中のIAAレベルを有意に約60%減少させた(I~IIIでは、~3.3pg/mg FW;IVでは、6.4pg/mg FW)(
図2)。tZ、tZR、およびiPRのレベルは、対照サンプルとGR24処理サンプルとの間で有意差がなかった。しかしながら、節間切片を10μMのGR24で処理した場合、iPレベルは対照と比較して領域Iにおいて有意に減少し(対照では、0.66pg/mg FW;10μM・GR24では、0.1pg/mg FW)、一方、対照と比較して領域IIIにおいて有意に増加した(対照では、0.08pg/mg FW;10μM・GR24では、0.38pg/mg FW)。iPRレベルは、対照と比較して領域IIおよびIIIにおいてわずかであるが有意に増加した(
図2)。
【0066】
実施例2: 不定芽形成に対する投与したSL関連阻害剤の効果
節間切片における内生SL生合成を抑制するために、種々の濃度(1~20μM)のSL生合成阻害剤であるTIS108を培養培地に添加した。5μM、10μMまたは20μMのTIS108での処理の8週間後に、多くの小さなシュートが節間切片上に観察された(
図3a)。5μMより多い量でTIS108を適用した場合、培養6週間後に形成された不定芽の総数は対照と比較して有意に増加し、培養8週間後のシュート数は対照サンプルの約2倍にさらに増加した(
図3b)。次に、培地に1~20μMの別のSL生合成阻害剤であるKK5を添加し、不定芽形成への影響を評価した(
図4a)。20μMのKK5処理サンプル中のシュートの総数は、培養5週間後に対照と比較して有意に増加した(
図4b)。8週間の培養後、シュート数は対照サンプルの約3倍に達した(
図4b)。これらの結果は、TIS108およびKK5の両方がトコン節間切片における不定芽形成を促進したことを示す。
【0067】
節間切片におけるSLシグナル伝達を抑制するために、種々の濃度(1~20μM)のSLアンタゴニストであるKK094を培養培地に添加した(
図5a)。1μMのKK094で処理した場合、培養4週間後のシュートの総数は対照サンプルよりも有意に多く(
図5b)、シュート増殖はSL生合成インヒビターのいずれを投与した場合よりも1週間早かったことを示唆した(
図3b、
図4b)。10μMのKK094処理サンプルの培養6週間後のシュート数は対照サンプルよりも有意に多く、培養8週間後には対照サンプルの1.7倍に達した(
図5b)。20μMのKK094処理後に形成されたシュート数も、培養8週後に対照サンプルのそれより多い傾向があったが、その差は統計学的に有意ではなかった(Studentのt検定、P=0.051)。全体として、結果は、KK094処理が不定芽形成を促進したことを示す。
【0068】
GR24処理は不定芽形成の主な位置を領域IとIIから領域IIとIIIに変化させたので(
図1)、SL関連阻害剤(SL生合成阻害剤およびSLアンタゴニスト)で処理した後の芽の位置を評価した。TIS108、KK5またはKK094処理に続いて、不定芽形成の促進が節間切片の領域I、IIおよびIIIで観察され(
図7)、シュートの主な位置は変化しなかったことを示唆した。
【0069】
実施例3: SL関連阻害剤投与後のIAA、CK値の変動
SL関連阻害剤による処理後の不定芽形成中に、オーキシンおよびCKレベルがどのように変化したかを理解するために、10μMのTIS108またはKK094による処理を行い、1、3および5週間培養した後に、LC-MS/MSによって内生IAA、tZ、tZR、iPおよびiPRレベルを測定した。培養1週間後、内生IAAレベルは、対照サンプル並びにTIS108およびKK094処理サンプルにおいて、主に領域IVに蓄積した(
図6)。節間切片の全領域において、対照サンプルとSL関連阻害剤処理サンプルのIAAレベル間に有意差はなかった。培養3週間後、TIS108処理サンプルの領域IVのIAAレベルは対照サンプルより有意に高かった。培養5週間後、KK094処理サンプルの領域IのIAAレベルは対照サンプルよりわずかであるが有意に高かった。しかし、全体として、IAAレベルに対するSL関連阻害剤の大きな効果を見出すことはできなかった。
【0070】
領域IIIにおけるtZレベルは、培養1週間後のKK094処理切片および培養5週間後のTIS108処理切片において有意に減少した(
図6)。しかしながら、培養3または5週間後のTIS108およびKK094処理切片のtZは低レベルだったため、分析することが困難であった。培養1、3および5週間後、対照サンプルとTIS108またはKK094処置サンプルとの間でtZRレベルに大きな変化はなかった。対照的に、iPおよびiPRレベルはTIS108またはKK094処理後に節間切片の茎頂領域で増加する傾向があった(
図6)。TIS108処理切片では、iPレベルは培養3週後に領域Iで有意に増加し、iPRレベルは培養1週後に領域IおよびIIで有意に増加した。KK094処理切片では、培養1週間後にiPレベルが領域Iで有意に増加し、培養3週間後に領域IおよびIIで有意に増加し、培養5週間後に領域I~IIIで増加し、培養1または5週後に領域Iで増加した。しかし、iPRレベルも1または5週間の培養後に領域IVで有意に増加した。
【0071】
上記のように、iPとiPRレベルのパターンは10μMのTIS108と10μMのKK094処理の間で異なっていたが、それらのレベルと不定芽の数は主に節間切片の頂端領域で増加した(
図5および6)。特に、iPの分布パターンは節間切片上の不定芽形成の位置と関連していた(
図1c、7、2および6)。これらの結果は、iPが不定芽形成の刺激に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
【0072】
実施例4: 不定芽の生育に及ぼすSL関連阻害剤の影響
対照条件下で8週間培養した後には単一の優勢シュートが各節間切片で観察されたが、多くの小さなシュートが種々の濃度でTIS108、KK5またはKK094で処理した切片上に形成された(
図3a、4a、5a)。これらの節間切片上の小さなシュートが正常に増殖できるかどうかを確認するために、SL関連阻害剤(TIS108、KK5、またはKK094)上で培養した切片を、同じ阻害剤を10μMで含む培地上で2週間さらに培養した。対照サンプルでは優勢シュートのみが活発に成長し続けたが、TIS108、KK5またはKK094処理後、複数シュートが成長した(
図8)。節間切片から切り出した後に小さなシュートが増殖できるかどうかを調べるために、切片を最初に対照条件下で培養するか、または10μMのTIS108、KK5またはKK094を含有する培地中で8週間培養し、次いで不定芽を切り出し、植物ホルモンを含まない新鮮な培地上でさらに8週間培養した。切り出されたシュートは正常に成長した(
図9)。
【0073】
実施例5: 投与したカイネチンが不定芽形成に及ぼす影響
次に、サイトカイニンの一種であるカイネチンが不定芽形成を促進するかどうかを調べた。1μMのカイネチンを投与した場合、シュートの総数は培養3週間後に対照と比較して有意に増加し、そして培養8週間まで徐々に増加し(
図10a、b)、その時点で、1μMのカイネチン処理サンプルにおけるシュートの平均総数(12.2シュート)は、対照サンプル(7.9シュート)におけるもの約1.5倍になった(
図10b)。節間切片の各領域におけるシュート数を計数したところ、対照サンプルでは領域Iで平均2.8、領域IIで4.0、領域IIIで1.1であったのに対し、1μMのカイネチン処理サンプルでは領域Iでは9.2、領域IIで2.3、領域IIIでは0.7であり、対照サンプルも処理サンプルも領域IVでシュートを形成しなかった(
図10c)。したがって、1μMのカイネチン処理サンプルにおけるシュート形成の促進は、主に節間切片の領域Iで起こった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、商業的に重要な植物の増殖や遺伝子組換え植物の再生において極めて有用な技術となり得る。したがって、本発明は、例えば、種苗産業、農業(植物工場などの施設農業を含む)および植物組織培養関連産業(例えば、試薬製造業者および組織培養受託業者)などで利用可能であり得る。また、本発明は植物に関する研究機関においても利用可能である。