IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アスクレピクス セラピューティクス エルエルシー.の特許一覧

<>
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図1A
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図1B
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図2
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図3
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図4
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図5
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図6
  • 特許-眼疾患を治療するための組成物及び方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】眼疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20250314BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250314BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250314BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250314BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250314BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
A61K38/39
A61P27/02
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 121
C07K7/08 ZNA
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021557369
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 US2020024972
(87)【国際公開番号】W WO2020198481
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】62/824,017
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518172082
【氏名又は名称】アスクレピクス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンディ ニランジャン ビー.
【審査官】星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535224(JP,A)
【文献】国際公開第2018/208829(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/028427(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における眼の血管透過性を伴う網膜疾患を治療するための組成物であって、配列番号1のアミノ酸配列を有するコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を250μg~700μgの単位用量で含み、前記単位用量が6か月に1回以下の頻度で眼内注射により投与され、前記ペプチドが粒子カプセル化を伴わないで生理食塩水で製剤化されており、前記単位用量が100μL以下の体積を有する組成物。
【請求項2】
前記患者が、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、滲出型加齢性黄斑変性症(滲出型AMD)、または背景糖尿病性網膜症から選択される状態を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単位用量が、250μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単位用量が、300μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記単位用量が、500μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記単位用量が、600μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法が成功しなかった後に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記患者の状態がVEGF遮断療法もしくは阻害剤療法に抵抗性であるかまたは部分的にのみ応答性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法の代替として投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法と組み合わせて投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記単位用量が、25μL~100μLの範囲の体積を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2019年3月26日出願の米国仮特許出願第62/824,017号に対する優先権及びその利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)及び滲出型加齢性黄斑変性症(AMD)は、成人における失明の主な原因である。AMDの進行は、読書、運転、及び顔の識別などの日常的な活動に必要な中心視力の低下につながる。萎縮型AMDでは徐々に視力を喪失するが、滲出型AMDではより速い視力喪失がもたらされ、滲出型AMDは本疾患の最も進行した形態である。
【0003】
注射用血管内皮増殖因子(抗VEGF)阻害剤(抗VEGF薬)の導入により、AMD関連の失明の発生率が大幅に低下し、多くの患者が視力を維持できるようになっている。これらの抗VEGF薬には、ラニビズマブ(LUCENTIS)及びアフリベルセプト(EYLEA)が含まれる。治療中、眼科医は麻酔点眼液及び消毒点眼液を点眼し、次に、硝子体(例えば、眼球奥にある網膜に隣接)に注射することによって抗VEGF薬を投与する。これらの注射の推奨頻度は、数週間ごとから数か月ごとまでさまざまである。患者は多くの場合、数か月にわたって複数回用量を必要とし、継続的な利益のために反復治療が必要である。米国では、治療あたりの費用は非常に高く、注射あたり約2000ドルになる可能性がある。さらに、硝子体内注射の潜在的合併症としては、感染症(Streptococcus endophthalmitisによって引き起こされるものなど)、網膜剥離、高眼圧症、白内障、炎症などが挙げられる。
【0004】
したがって、滲出型AMD及び糖尿病性黄斑浮腫などの網膜疾患を含む、眼疾患に対する強力で安全かつ患者に優しい治療法が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
種々の態様及び実施形態では、本発明は、血管透過性及び/または炎症を伴う網膜疾患を含む眼疾患を治療するための方法及び医薬組成物を提供する。種々の態様及び実施形態では、本発明は、約1μg~約1mgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、眼内注射によって患者に投与することを含む。注射は、およそ月1回の頻度~およそ2年に1回以下の頻度で提供される。本明細書に開示されるように、ペプチドは、眼内注射時に透明なゲルを形成し、驚くほど少量の活性剤で、長期間にわたって持続放出を提供する。したがって、ペプチドは、少量の硝子体内注射を不定期に行うことで、強力な作用及び長期間の作用を提供することができる。
【0006】
例示的なコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドは、アミノ酸配列LRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号1)を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドは、アンジオポエチン2(Ang2)のTie2アゴニスト活性を促進し、それによって血管系を安定化させる。ペプチドは、α5β1及びαVβ3インテグリンを標的として破壊し、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、及び上皮増殖因子受容体(EGFR)を含む複数の受容体を介したシグナル伝達を阻害する。配列番号1のペプチドは、本明細書ではAXT107と呼ばれる。
【0007】
いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩は、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、AMD(例えば、滲出型AMD)、または背景糖尿病性網膜症から選択される状態を有する患者に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、眼の急性または慢性の炎症を有する。いくつかの実施形態では、患者は、眼に現れるブドウ膜炎または自己免疫もしくは炎症状態を有する。
【0008】
本発明の種々の実施形態では、約1mg以下のコラーゲンIV由来生体模倣ペプチド、またはその塩を、眼内注射によって投与する。例えば、コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩は、眼内注射当たり約800μg以下、または約500μg以下、または約250μg以下(例えば、50~150μg)の用量で投与される。少量の活性剤は驚くほど長期間の作用を提供し、これにより必要な注射の頻度が大幅に削減される。例えば、ペプチドまたはその塩を、眼内注射によって、およそ3か月に1回以下の頻度で、またはおよそ4か月に1回以下の頻度で、またはおよそ6か月に1回以下の頻度で、およそ8か月に1回以下の頻度で、およそ1年に1回以下の頻度で、およそ1.5年に1回以下の頻度で、またはおよそ2年に1回以下の頻度で、またはおよそ3年に1回以下の頻度で投与してもよい。
【0009】
さらに、本発明によれば、ペプチドは、高度な製剤技術(例えば、粒子カプセル化)、例としてナノ粒子もしくはマイクロ粒子カプセル化、またはリポソームカプセル化を使用せずに送達される。つまり、ペプチドは、カプセル化技術を用いることなく送達される(例えば、ペプチドは、水溶液中の「裸の(naked)ペプチド」として送達される)。硝子体で透明なゲルを形成することが観察されるペプチドの物理的特性は、強力で長期間の作用に十分である。
【0010】
種々の実施形態では、ペプチドを、血管内皮増殖因子(VEGF)遮断療法もしくは阻害剤療法に対して抵抗性であるかまたは部分的にのみ応答性である状態(黄斑浮腫、滲出型AMDを含む)のために送達することができる。
【0011】
他の態様では、本発明は、硝子体内注射に好適な医薬組成物を提供する。医薬組成物は、約1μg~約1mgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩(本明細書に開示される)を、薬剤充填済み注射器内の単位用量として含む。例えば、単位用量は、約700μg以下のペプチドもしくはその塩、または約500μg以下のペプチドもしくはその塩、または約250μg以下のペプチドもしくはその塩、または約100μg以下のペプチドもしくはその塩であり得る。例示的な組成物は、50~150μgの用量のペプチド(例えば、約100μg)を含む。
【0012】
本発明の他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】ダッチベルト(Dutch-Belted)ウサギにおける12か月にわたる100μgのAXT107の投与によるVEGF誘発性血管漏出のAXT107阻害を示すグラフである。「VEGF」の棒は、非AXT107対照を示し、AXT107による治療がない状態で発生する漏出を示すために使用される。
図1B】ダッチベルトウサギにおける12か月にわたる500μgのAXT107の投与によるVEGF誘発性血管漏出のAXT107阻害を示すグラフである。「VEGF」の棒は、非AXT107対照であることを示し、AXT107による治療がない状態で発生する漏出を示すために使用される。
図2】硝子体内投与後の種々の時点でダッチベルトウサギの網膜に存在する1グラムあたりのナノグラム(ng/g)として表されるAXT107の量を示すグラフである。AXT107は、単回注射の225、271、及び315日後に網膜内に有意なレベルで見出される。
図3】AXT107がウサギの眼に注射されるとゲルを形成することを示す画像である。ゲルは視軸下に留まり、視軸も視神経もブロックしていない。
図4】単回注射後の100μg、250μg、500μg、及び1000μgのAXT107用量での301日間にわたるゲルの画像を示す。
図5】100μg、250μg、500μg、及び1000μgでの、ゲルからのAXT107の放出を経時的に示すグラフである。破線は、361日にわたるAXT107レベルの推定値を示す。
図6】異なる年齢のヒト硝子体におけるAXT107ゲル形成を示す画像である。
図7】投与6か月後のダッチベルトつまり、ウサギからの異なる用量のAXT107 PK毒物学研究からのウサギの眼においてAXT107によって形成されたゲルを示す画像である。矢印は、単離されたAXT107ゲルを指す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
種々の態様及び実施形態では、本発明は、血管透過性及び/または炎症を伴う網膜疾患を含む眼疾患を治療するための方法及び医薬組成物を提供する。種々の態様及び実施形態では、本発明は、約1μg~約1mgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、眼内注射によって患者に投与することを含む。注射は、およそ月1回~およそ2年に1回以下の頻度で提供される。本明細書に開示されるように、ペプチドは、眼内注射時にゲルを形成し、驚くほど少量の活性剤で、長期間にわたって持続放出を提供する。したがって、ペプチドは、少量の硝子体内注射を不定期に行うことで、強力な作用及び長期間の作用を提供することができる。
【0015】
本発明の態様によれば、活性剤は、アンジオポエチン2(Ang2)のTie2アゴニスト活性を促進し、それによって血管系を安定化し、抗炎症作用を提供するコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2018/067646を参照のこと。
【0016】
コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドは、IV型コラーゲンのα5フィブリルに由来する。例示的なペプチドは、アミノ酸配列LRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号1)もしくはその誘導体を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。ペプチドは、α5β1及びαVβ3インテグリンを標的として破壊し、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、及び上皮増殖因子受容体(EGFR)を含む複数の受容体を介したシグナル伝達を阻害する。配列番号1のペプチドは、本明細書ではAXT107と呼ばれる。
【0017】
コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,056,923号及び米国特許第9,802,984号に記載されているものをさらに含む。例えば、以下の開示によるペプチドは、アミノ酸配列LRRFSTXPXXXXNINNVXNF(配列番号2)(式中、Xは、標準アミノ酸または非遺伝的にコードされたアミノ酸である)を含むペプチドを含む。いくつかの実施形態では、位置7のXは、M、A、またはGである;位置9のXは、F、A、Y、またはGである;位置10のXは、M、A、G、D-アラニン(dA)、またはノルロイシン(Nle)である;位置11のXは、F、A、Y、G、または4-クロロフェニルアラニン(4-ClPhe)である;位置12及び位置18のXは、2-アミノ酪酸(Abu)、G、S、A、V、T、I、L、またはアリルグリシン(AllylGly)から独立して選択される。種々の実施形態では、ペプチドは、約30個以下のアミノ酸、または約25個以下のアミノ酸、または約24個のアミノ酸、または約23個のアミノ酸、または約22個のアミノ酸、または約21個のアミノ酸、または約20個のアミノ酸を含む。さらに他の実施形態では、配列番号2の1、2、3、4、または5個のアミノ酸が欠失している。いくつかの実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列LRRFSTAPFAFININNVINF(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列LRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号1)もしくはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、配列番号1のペプチドの誘導体は、配列番号1に関して、位置13及び16のAspは維持されているが、1~5個のアミノ酸置換、挿入、または欠失(例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸がまとめて置換され、挿入され、または欠失している)を有するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、配列DINDVは、誘導体において維持される。ペプチドは、LRRFSTXPXXXXDINDVXNFのアミノ酸配列(式中、Xは、標準アミノ酸または非遺伝的にコードされたアミノ酸である)(配列番号4)を有してもよい。いくつかの実施形態では、位置7のXは、M、A、またはGである;位置9のXは、F、A、Y、またはGである;位置10のXは、M、A、G、D-アラニン(dA)、またはノルロイシン(Nle)である;位置11のXは、F、A、Y、G、または4-クロロフェニルアラニン(4-ClPhe)である;位置12及び位置18のXは、2-アミノ酪酸(Abu)、G、S、A、V、T、I、L、またはアリルグリシン(AllylGly)から独立して選択される。種々の実施形態では、ペプチドは、約30個以下のアミノ酸、または約25個以下のアミノ酸、または約24個のアミノ酸、または約23個のアミノ酸、または約22個のアミノ酸、または約21個のアミノ酸、または約20個のアミノ酸を含む。さらに他の実施形態では、配列番号4または配列番号1の1、2、3、4、または5個のアミノ酸が欠失している。
【0019】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1または3のペプチドの任意の位置で行われ、保存的または非保存的置換から独立して選択され得る、これらの実施形態またはその他の実施形態では、ペプチドは、(まとめて)一方または両方の末端に付加された1~10個のアミノ酸を含む。N末端及び/またはC末端は、任意に、別の化学基(アミンまたはカルボキシ以外、例えば、アミドまたはチオール)によって占められていてもよい。
【0020】
保存的置換は、例えば、関係するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、及び/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われてもよい。20個の遺伝的にコードされたアミノ酸は、以下の6つの標準的なアミノ酸グループに分類することができる:
(1) 疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2) 中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln;
(3) 酸性:Asp、Glu;
(4) 塩基性:His、Lys、Arg;
(5) 鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び
(6) 芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「保存的置換」は、上で示した6つの標準的なアミノ酸グループの同じグループ内に列挙されている別のアミノ酸によるアミノ酸の交換と定義される。例えば、AspのGluによる交換では、そのように改変されたポリペプチドにおいて1つの負電荷が保持される。加えて、グリシン及びプロリンは、α-ヘリックスを妨害する能力に基づいて互いに置換されてもよい。上記6つのグループ内のいくつかの好ましい保存的置換は、以下のサブグループ内における交換である:(i)Ala、Val、Leu及びIle;(ii)Ser及びThr;(iii)Asn及びGln;(iv)Lys及びArg;ならびに(v)Tyr及びPhe。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「非保存的置換」は、上で示した6つの標準的なアミノ酸グループ(1)~(6)の異なるグループに列挙されている別のアミノ酸によるアミノ酸の交換と定義される。
【0023】
種々の実施形態では、生体模倣ペプチドまたはペプチド薬剤は、約8~約30個のアミノ酸、または約10~約20のアミノ酸のペプチドであり、配列番号1または3の少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの連続したアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つのD-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、1~約5つ(例えば、1、2、または3つ)の遺伝的にコードされていないアミノ酸を含み、これは、2-アミノ酪酸(Abu)、ノルロイシン(Nle)、4-クロロフェニルアラニン(4-ClPhe)、及びアリルグリシン(AllylGly)から任意に選択される。
【0024】
本開示による例示的な生体模倣ペプチドとしては、以下のものが挙げられる:
LRRFSTMPFMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号5)、
LRRFSTMPAMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号6)、
LRRFSTMPFAF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号7)、
LRRFSTMPFMA(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号8)、
LRRFSTMPF(Nle)F(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号9)、
LRRFSTMPFM(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号10)、
LRRFSTMPFMFSNINNVSNF(配列番号11)、
LRRFSTMPFMFANINNVANF(配列番号12)、
LRRFSTMPFMFININNVINF(配列番号13)、
LRRFSTMPFMFTNINNVTNF(配列番号14)、
LRRFSTMPFMF(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号15)、
LRRFSTMPFMFVNINNVVNF(配列番号16)、
LRRFSTMPFdAFININNVINF(配列番号17)、
LRRFSTMPFAFININNVINF(配列番号18)、
LRRFSTAPFAFININNVINF(配列番号19)、
LRRFSTAPFdAFIDINDVINF(配列番号20)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINW(配列番号21)、
dLRRdLRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号22)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号23)、
dLRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号24)、
F(Abu)NINNV(Abu)N(配列番号25)、
FTNINNVTN(配列番号26)、
FININNVINF(配列番号27)、
FSNINNVSNF(配列番号28)、
FANINNVANF(配列番号29)、
F(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号30)、
FVNINNVVNF(配列番号31)、
FIDINDVINF(配列番号32)、
FIDINDVINW(配列番号33)、
FTDINDVTN(配列番号34)、
A(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号35)、または
(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号36)。
【0025】
種々の実施形態では、生体模倣ペプチドは、ヒト硝子体においてゲルを形成する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩は、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、AMD(例えば、滲出型AMD)、または背景糖尿病性網膜症から選択される状態を有する患者に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、眼の急性または慢性の炎症を有する。いくつかの実施形態では、患者は、眼に現れるブドウ膜炎または自己免疫もしくは炎症状態を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、患者は黄斑浮腫を有する。黄斑浮腫は、眼の黄斑(網膜の黄色い中心領域)上または下に体液及びタンパク質沈着が集中したときに生じ、これにより黄斑が肥厚して、膨張する。黄斑浮腫の原因としては、慢性またはコントロール不良の2型糖尿病(例えば、糖尿病性網膜症)が挙げられ、この場合、網膜の血管を含む末梢血管により、体液が網膜へ漏出する。その他の原因及び/または関連する障害としては、加齢性黄斑変性症(AMD)、慢性ブドウ膜炎、アテローム性動脈硬化症、高血圧、及び緑内障が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者は、網膜静脈閉塞症を有するか、またはそのリスクがあり、それにより、虚血及び浮腫のために網膜に対する重度の損傷及び失明に至る可能性がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、患者はAMDを有し、これは任意に滲出型AMDであるか、またはいくつかの実施形態では萎縮型AMDである。
【0029】
種々の実施形態における本発明は、コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドの硝子体内注射による網膜疾患の治療を提供し、該治療は、少量の活性剤を不定期に注射により投与することのみを必要とする。一般に、硝子体内注射は、眼、特に、眼を満たすゼリー状の体液である硝子体への注射である。処置中、例えば、抗VEGF薬を投与するために従来から使用されているように、医療提供者は、眼球奥にある網膜に隣接した硝子体に薬を注射する。多くの場合、この処置には約15~30分かかる。例えば、この処置は一般に、点眼液を点眼して瞳孔を拡張し、麻酔点眼液を点眼し、薬物を小さな針で眼に注射することを含む。感染を予防するために、抗生物質点眼液を使用することもできる。処置は定型的であるが、リスク及び潜在的な合併症がないというわけではない。これらのリスク及び潜在的な合併症としては、全身性の副作用に加えて、眼内炎、眼内炎症、網膜剥離、眼圧上昇、眼出血が挙げられる。Falavarjani KG and Nguyen QD, Adverse events and complications associated with intravitreal injection of anti- VEGF agents: a review of literature. Eye 2013 Jul;27(7): 787-794、を参照のこと。さらに、従来の抗VEGF薬を投与するための処置は、頻繁な注射が一般的に必要とされるため、費用がかかり、好都合なものではない。
【0030】
本発明の種々の実施形態では、約1mg以下のコラーゲンIV由来生体模倣ペプチド、またはその塩を、眼内注射によって投与する。種々の実施形態では、5:00~7:00の間などにペプチドの単位用量を眼底に投与し、その結果、ゲルが眼底に形成される。例えば、コラーゲンIV由来生体模倣ペプチド、またはその塩を、約25μg~約1000μgの用量で投与する。例えば、眼内注射当たり約800μg以下、または約700μg以下、または約500μg以下、または約250μg以下、または約100μg以下のペプチドまたはその塩を投与する。そのような実施形態では、眼内注射当たり少なくとも約25μgまたは少なくとも約50μgを投与する。いくつかの実施形態では、単位用量は、1mgより多く、例として、1mg~約2mgである。少量の活性剤は驚くほど長期間の作用を提供し、これにより必要な注射の頻度が大幅に削減される。例えば、ペプチドまたはその塩は、眼内注射によって、およそ3か月に1回以下の頻度で、またはおよそ4か月に1回以下の頻度で、またはおよそ6か月に1回以下の頻度で、およそ8か月に1回以下の頻度で、およそ1年に1回以下の頻度で、およそ1.5年に1回以下の頻度で、またはおよそ2年に1回以下の頻度で、またはおよそ3年に1回以下の頻度で投与してもよい。
【0031】
さらに、本発明によれば、ペプチドは、高度な製剤技術(例えば、粒子カプセル化)、例としてナノ粒子もしくはマイクロ粒子カプセル化、またはリポソームカプセル化を使用せずに送達される。つまり、ペプチドは、カプセル化技術を用いることなく送達される(例えば、ペプチドは、水溶液中の「裸の(naked)ペプチド」として送達される)。硝子体内でゲルを形成することが観察されるペプチドの物理的特性は、強力で長期間の作用に十分である。
【0032】
具体的に指定されていない限り、または文脈から明らかでない限り、本発明で使用される場合、「約」という用語は、指定された値のプラスまたはマイナス10%以内の値を含む。
【0033】
種々の実施形態では、眼内注射当たり約10μg~約50μgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、およそ1か月に1回またはおよそ隔月に1回の頻度で投与する。例えば、約25μgのペプチドまたはその塩を、およそ月1回の眼内注射によって投与してもよい。あるいは、眼内注射あたり約50μg~約150μgを、およそ3か月に1回以下の頻度で、またはおよそ4か月に1回以下の頻度で、またはおよそ6か月に1回以下の頻度で投与する。例えば、ペプチドまたはその塩を、約50μgで、およそ3か月または4か月に1回の頻度で投与してもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、注射あたり約100μg~約150μgで、およそ5~7か月に1回、及び任意におよそ6か月に1回の頻度で投与する。いくつかの実施形態では、100~150μgの用量を、およそ8か月に1回またはおよそ9か月に1回投与する。
【0034】
他の実施形態では、注射当たりに送達される活性剤の量が増加し作用期間が予測外となる。例えば、コラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、眼内注射あたり約150μg~約250μgで、およそ6か月に1回以下の頻度で投与してもよい。例えば、これらの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、およそ8か月に1回以下の頻度で投与してもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、およそ10か月に1回以下またはおよそ12か月に1回以下の頻度で投与する。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、約200μgで、およそ6~8か月に1回の頻度で投与する。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、約250μgで、およそ6~12か月に1回の頻度で投与する。
【0035】
さらに他の実施形態では、ペプチドまたはその塩を、眼内注射あたり約250μg~約1mgで、およそ6か月に1回以下の頻度で投与する。これらの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、注射あたり約300μg~約700μgで投与するか、注射あたり約400μg~約700μgで投与するか、または注射あたり約500μg~約700μgで投与するか、または注射あたり約600μg~約700μgで投与する。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、およそ6~12か月に1回の頻度で投与する。例えば、ペプチドまたはその塩を、およそ7か月に1回、およそ8か月に1回、およそ9か月に1回、およそ10か月に1回、およそ11か月に1回、またはおよそ12か月に1回、またはおよそ18か月に1回投与する。
【0036】
さらに別の実施形態では、ペプチドまたはその塩を、眼内注射あたり約700μg~約1mgで、12か月に1回以下または15か月に1回以下の頻度で投与する。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、注射あたり約800μg~約1mgで投与するか、注射あたり約900μg~約1mgで投与するか、または12~18か月に1回の頻度で投与する。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、およそ2年に1回またはおよそ3年に1回投与する。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記のように投与されるペプチドは、配列番号1(AXT107)からなるペプチドである。
【0038】
種々の実施形態では、患者は、複数回用量を受け、いくつかの実施形態では、治療は、疾患の制御または管理のために推奨される注射の頻度で継続することができる。いくつかの実施形態では、症状または疾患が実質的に緩和されている場合、治療は継続的である必要はない。種々の実施形態では、患者は、少なくとも2回の注射、または少なくとも4回の注射、または少なくとも6回の注射、または少なくとも8回の注射、または少なくとも10回の注射を受ける。いくつかの実施形態では、注射は、4~10回の注射のレジメンで提供される。
【0039】
コラーゲンIV由来ペプチドは、アンジオポエチン2(Ang2)のTie2アゴニスト活性を促進し、それによって血管系を安定化させる。ペプチドは、α5β1及びαVβ3インテグリンを標的として破壊し、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、及び上皮増殖因子受容体(EGFR)を含む複数の受容体を介したシグナル伝達を阻害する。したがって、本明細書に開示されるペプチドは、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法、または強力な併用療法に対する強力な代替法を提供する。
【0040】
種々の実施形態では、ペプチドを、血管内皮増殖因子(VEGF)遮断療法または阻害剤療法に対して抵抗性であるかまたは部分的にのみ応答性である状態(黄斑浮腫、滲出型AMDを含む)のために送達することができる。VEGFを遮断する薬剤としては、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びラムシルマブ、ならびに血管新生を遅らせるまたは遮断するために投与される同様の薬剤が挙げられる。VEGF媒介生物学的活性を標的とする他の薬剤としては、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、ポナチニブ、レンバチニブ、バンデタニブ、レゴラフェニブ、及びカボザンチニブなどのキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0041】
アフリベルセプト(EYLEA)は、滲出型黄斑変性症の治療のためのバイオ医薬品である。アフリベルセプトはVEGFの阻害剤であり、ヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインの血管内皮増殖因子(VEGF)結合部分からなる組換え融合タンパク質であり、これは、ヒトIgG1免疫グロブリンのFc部分に融合している。アフリベルセプトはVEGFに結合し、「VEGFトラップ」のように作用して、血管内皮増殖因子サブタイプVEGF-A及びVEGF-B、ならびに胎盤増殖因子(PGF)の活性を阻害する。
【0042】
ベバシズマブ(AVASTIN)は血管新生阻害剤であり、新しい血管の増殖を遅らせる薬物である。ベバシズマブは、VEGF-Aを阻害することにより血管新生を阻止する組換えヒト化モノクローナル抗体である。ベバシズマブは、結腸癌、肺癌(NSCLCなど)、腎癌、卵巣癌、乳癌、及び膠芽腫を含むある特定の転移性がんを治療するために投与される。ベバシズマブは、AMD及び糖尿病性網膜症を含む眼疾患の治療にも使用することができる。
【0043】
ラニビズマブ(LUCENTIS)はモノクローナル抗体断片(Fab)であり、滲出型AMDの治療用に投与される。薬物は、およそ1か月に1回硝子体内に(眼の硝子体液に)注射される。ラニビズマブは、ベバシズマブと同様に、VEGFAを阻害することにより血管新生を阻害するモノクローナル抗体である。
【0044】
VEGF遮断療法が成功しなかった後に、つまり、血管新生、リンパ管新生、及び/または浮腫の減少が観察されなかった場合に、この生体模倣ペプチドを投与してもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、VEGF遮断療法の代替として投与される。さらに別の実施形態では、ペプチドをVEGF遮断療法と組み合わせて、VEGF遮断レジメンと同時に、VEGFレジメンの前に、または後に、投与する。Tie2シグナル伝達を活性化することにより、生体模倣ペプチドまたはペプチド剤は、VEGF遮断療法ではまたはVEGF遮断療法単独では観察されない場合がある治療上の利点を提供する。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、ペプチドまたはその塩を、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法が成功しなかった後に投与する。いくつかの実施形態では、患者は、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法に対して抵抗性であるかまたは部分的にのみ応答性である状態を有する。
【0046】
他の態様では、本発明は、硝子体内注射に好適な医薬組成物を提供する。医薬組成物は、約1μg~約1mgまたは約25μg~約800μgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩(本明細書に開示される)を、薬剤充填済み注射器内の単位用量として含む。例えば、単位用量は、約700μg以下のペプチドもしくはその塩、または約500μg以下のペプチドもしくはその塩、または約250μg以下のペプチドもしくはその塩、または約100μg以下のペプチドもしくはその塩であり得る。例示的な単位用量には、約100μg、約250μg、約500μg、及び約750μgが含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物は、約10μg~約50μgのペプチドまたはその塩の単位用量を有する。他の実施形態では、組成物は、約50μg~約150μg(例えば、約100μg)のペプチドまたはその塩の単位用量を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約150μg~約250μgのペプチドまたはその塩の単位用量を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約250μg~約700μg、または約300μg~約700μg、または約400μg~約700μg、または約500μg~約700μg、または約600~約700μgのペプチドもしくはその塩の単位用量を有する。
【0048】
さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約700μg~約1mg、または約800μg~約1mgのペプチドまたはその塩の単位用量を有する。いくつかの実施形態では、単位用量は約1mgである。いくつかの実施形態では、単位用量は、1mgより多く、例として、約1mg~約2mgである。
【0049】
単位用量体積(unit dose volume)(本明細書に記載の組成物及び方法による)は、約1μl~約1mL、または約10μL~約0.5mL、または約10μL~約250μL、または約10μL~約50μLの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約25μL~約0.5mLの単位体積、または約25μL~約200μLの単位体積、または約25μL~約100μLの単位体積を含む。いくつかの実施形態では、単位体積は、約100μL未満、または約50μL未満、または約25μL未満である。種々の実施形態では、体積は約50μLである。
【0050】
生体模倣ペプチドまたはペプチド剤は、固相合成などの周知の技術を使用して化学的に合成及び精製することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,051,349号を参照のこと。
【0051】
ペプチドは、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩の形態で提供され得る。薬学的に許容されるペプチド塩は、一般に当業者に周知である。
【0052】
生体模倣ペプチドまたはペプチド剤は、水、生理食塩水、デキストロース溶液などを含むがこれらに限定されない様々な薬学的に許容される担体を使用して、眼内注射(すなわち、硝子体内注射)用に製剤化することができる。生体模倣ペプチドは、生理学的に適合性のある緩衝液などの水溶液中で製剤化及び希釈することができる。
【0053】
ある特定の態様では、本発明は、患者におけるTie2関連血管透過性に関与する眼の疾患または状態を予防または治療するための方法を提供する。方法は、本明細書に記載の医薬組成物を、本明細書に記載の投薬スケジュール(すなわち、頻度)で患者に投与することを含む。本発明の実施形態によれば、少量の活性剤及び不定期な単位用量の注射のみで、強力で長時間作用するTie2活性化の回復を達成することができる。
【0054】
種々の実施形態では、方法は、黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME)を含む浮腫または血管透過性に関連する状態、及び急性または慢性の眼の炎症を特徴とする状態を含む他の状態において治療上の利益を提供する。Tie2関連の状態としては、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、滲出型AMD、背景糖尿病性網膜症が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、関連する数値の±10%を含む。
【0056】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0057】
具体的に指定されていない限り、または文脈から明らかでない限り、本発明で使用される場合、「また」という用語は、包括的であると理解され、「また」と「及び」の両方を包含する。
【0058】
本発明は、次の態様を包含する。
[項1]
患者における眼の血管透過性または炎症を伴う状態を予防または治療するための方法であって:単位用量のコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、およそ1か月に1回以下の頻度で眼内注射によって前記患者に投与すること、を含む、前記方法。
[項2]
前記単位用量が約10μg~約1mgの前記ペプチドを含む、項1に記載の方法。
[項3]
前記単位用量が、粒子カプセル化を伴わないで水溶液中の裸のペプチドとして製剤化される、項2に記載の方法。
[項4]
前記患者が、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、滲出型加齢性黄斑変性症(滲出型AMD)、または背景糖尿病性網膜症から選択される状態を有する、項1に記載の方法。
[項5]
前記患者が、前記眼の急性または慢性の炎症を有する、項1に記載の方法。
[項6]
前記患者が、ブドウ膜炎を有する、項5に記載の方法。
[項7]
前記炎症が自己免疫状態に関連している、項5に記載の方法。
[項8]
前記単位用量が、約700μg以下、または約500μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項7に記載の方法。
[項9]
前記単位用量が、約250μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項8に記載の方法。
[項10]
前記単位用量が、約100μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項9に記載の方法。
[項11]
前記単位用量が、3か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項1~10のいずれか1項に記載の方法。
[項12]
前記単位用量が、4か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項13]
前記単位用量が、6か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項14]
前記単位用量が、8か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項15]
前記単位用量が、1年に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項16]
前記単位用量が、18か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項17]
前記単位用量が、2年に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項11に記載の方法。
[項18]
前記単位用量が約10μg~約50μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、およそ月1回以下の頻度で投与される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項19]
前記単位用量が約25μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、前記単位用量がおよそ月1回の眼内注射によって投与される、項18に記載の方法。
[項20]
前記単位用量が約50μg~約150μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、前記単位用量が3か月に1回以下の頻度で眼内注射によって投与される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項21]
前記単位用量が、4か月に1回以下の頻度で投与される、項20に記載の方法。
[項22]
前記単位用量が、6か月に1回以下の頻度で投与される、項20に記載の方法。
[項23]
前記単位用量が約50μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、前記単位用量が3か月または4か月に1回の頻度で投与される、項20に記載の方法。
[項24]
前記単位用量が約100μg~約150μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、前記単位用量が5~7か月に1回、任意に6か月に1回の頻度で投与される、項20に記載の方法。
[項25]
前記単位用量が約150μg~約250μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、6か月に1回以下の頻度で投与される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項26]
前記単位用量が、8か月に1回以下の頻度で投与される、項25に記載の方法。
[項27]
前記単位用量が、12か月に1回以下の頻度で投与される、項25に記載の方法。
[項28]
前記単位用量が約200μg~約250μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、6~12か月に1回の頻度で投与される、項25に記載の方法。
[項29]
前記単位用量が約250μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含み、6か月に1回以下の頻度で投与される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項30]
前記単位用量が、約300μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項29に記載の方法。
[項31]
前記単位用量が、約400μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項29に記載の方法。
[項32]
前記単位用量が、約500μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項29に記載の方法。
[項33]
前記単位用量が、約600μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項29に記載の方法。
[項34]
前記単位用量が、6~18か月に1回の頻度で投与される、項29~33のいずれか1項に記載の方法。
[項35]
前記単位用量が、およそ7か月に1回、およそ8か月に1回、およそ9か月に1回、およそ10か月に1回、およそ11か月に1回、またはおよそ12か月に1回、またはおよそ18か月に1回投与される、項34に記載の方法。
[項36]
前記単位用量が約700μg~約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含み、前記単位用量が12か月に1回以下の頻度で投与される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項37]
前記単位用量が、約800μg~約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項36に記載の方法。
[項38]
前記単位用量が、約900μg~約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項36に記載の方法。
[項39]
前記単位用量が、12か月に1回~2年に1回の頻度で投与される、項36~38のいずれか1項に記載の方法。
[項40]
前記単位用量が、およそ18か月に1回~およそ2年に1回投与される、項39に記載の方法。
[項41]
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法が成功しなかった後に投与される、項1~40のいずれか1項に記載の方法。
[項42]
前記患者の状態がVEGF遮断療法もしくは阻害剤療法に抵抗性であるかまたは部分的にのみ応答性である、項1~40のいずれか1項に記載の方法。
[項43]
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法もしくは阻害剤療法の代替として投与される、項1~40のいずれか1項に記載の方法。
[項44]
前記ペプチドまたはその塩が、VEGF遮断療法と組み合わせて投与される、項1~40のいずれか1項に記載の方法。
[項45]
前記ペプチドが、配列番号1~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、項1~44のいずれか1項に記載の方法。
[項46]
前記ペプチドが、コラーゲンIVのα5フィブリル、またはその生体模倣物に由来する、項1~44のいずれか1項に記載の方法。
[項47]
前記ペプチドが:
LRRFSTMPFMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号5)、
LRRFSTMPAMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号6)、
LRRFSTMPFAF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号7)、
LRRFSTMPFMA(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号8)、
LRRFSTMPF(Nle)F(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号9)、LRRFSTMPFM(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号10)、
LRRFSTMPFMFSNINNVSNF(配列番号11)、
LRRFSTMPFMFANINNVANF(配列番号12)、
LRRFSTMPFMFININNVINF(配列番号13)、
LRRFSTMPFMFTNINNVTNF(配列番号14)、
LRRFSTMPFMF(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号15)、
LRRFSTMPFMFVNINNVVNF(配列番号16)、
LRRFSTMPFdAFININNVINF(配列番号17)、
LRRFSTMPFAFININNVINF(配列番号18)、
LRRFSTAPFAFININNVINF(配列番号19)、
LRRFSTAPFdAFIDINDVINF(配列番号20)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINW(配列番号21)、
dLRRdLRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号22)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号23)、または
dLRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号24)、
である、項45または46に記載の方法。
[項48]
前記ペプチドが:
F(Abu)NINNV(Abu)N(配列番号25)、
FTNINNVTN(配列番号26)、
FININNVINF(配列番号27)、
FSNINNVSNF(配列番号28)、
FANINNVANF(配列番号29)、
F(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号30)、
FVNINNVVNF(配列番号31)、
FIDINDVINF(配列番号32)、
FIDINDVINW(配列番号33)、
FTDINDVTN(配列番号34)、
A(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号35)、または
(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号36)、
である、項45または46に記載の方法。
[項49]
前記ペプチドが、アミノ酸配列LRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号1)を有する、項46に記載の方法。
[項50]
前記単位用量が、約1μl~約1mLの範囲の体積、または約10μL~約0.5mLの範囲の体積、または約10μL~約250μLの範囲の体積、または約10μL~約50μLの範囲の体積を有する、項1~49のいずれか1項に記載の方法。
[項51]
前記単位用量が、約25μL~約0.5mLの範囲の体積、または約25μL~約200μLの範囲の体積、または約25μL~約100μLの範囲の体積を有する、項50に記載の方法。
[項52]
単位体積が、約100μL未満、または約50μL未満、または約25μL未満である、項50に記載の方法。
[項53]
硝子体内注射に好適な医薬組成物であって、約1μg~約1mgのコラーゲンIV由来生体模倣ペプチドまたはその塩を、薬剤充填済み注射器内の単位用量として含み、前記ペプチドは粒子カプセル化を伴わないで水溶液中に製剤化される、前記医薬組成物。
[項54]
前記単位用量が、約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項55]
前記単位用量が、約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項56]
前記単位用量が、約500μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項57]
前記単位用量が、約250μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項58]
前記単位用量が、約100μg以下の前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項59]
前記単位用量が、約10μg~約50μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項60]
前記単位用量が、約50μg~約150μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項61]
前記単位用量が、約150μg~約250μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項62]
前記単位用量が、約250μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項63]
前記単位用量が、約300μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項64]
前記単位用量が、約400μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項65]
前記単位用量が、約500μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項66]
前記単位用量が、約600μg~約700μgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項67]
前記単位用量が、約700μg~約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項68]
前記単位用量が、約800μg~約1mgの前記ペプチドまたはその塩を含む、項53に記載の医薬組成物。
[項69]
前記単位用量が、約1μl~約1mLの範囲の体積、または約10μL~約0.5mLの範囲の体積、または約10μL~約250μLの範囲の体積、または約10μL~約50μLの範囲の体積を有する、項53~68のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項70]
前記単位用量が、約25μL~約0.5mLの範囲の体積、または約25μL~約200μLの範囲の体積、または約25μL~約100μLの範囲の体積を有する、項69に記載の医薬組成物。
[項71]
前記単位用量が、約100μL未満、または約50μL未満、または約25μL未満の体積を有する、項70に記載の医薬組成物。
[項72]
前記ペプチドが、配列番号1~36のいずれか1つのアミノ酸配列またはその誘導体を含む、項53~71のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項73]
前記ペプチドが、配列番号1の前記アミノ酸配列を有する、項72に記載の医薬組成物。
[項74]
前記ペプチドが、
LRRFSTMPFMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号5)、
LRRFSTMPAMF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号6)、
LRRFSTMPFAF(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号7)、
LRRFSTMPFMA(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号8)、
LRRFSTMPF(Nle)F(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号9)、LRRFSTMPFM(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号10)、
LRRFSTMPFMFSNINNVSNF(配列番号11)、
LRRFSTMPFMFANINNVANF(配列番号12)、
LRRFSTMPFMFININNVINF(配列番号13)、
LRRFSTMPFMFTNINNVTNF(配列番号14)、
LRRFSTMPFMF(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号15)、
LRRFSTMPFMFVNINNVVNF(配列番号16)、
LRRFSTMPFdAFININNVINF(配列番号17)、
LRRFSTMPFAFININNVINF(配列番号18)、
LRRFSTAPFAFININNVINF(配列番号19)、
LRRFSTAPFdAFIDINDVINF(配列番号20)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINW(配列番号21)、
dLRRdLRRFSTAPFAFIDINDVINF(配列番号22)、
LRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号23)、または
dLRRFSTAPFAFIDINDVINdF(配列番号24)、
から選択されるアミノ酸配列を有する、項72に記載の医薬組成物。
[項75]
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、
F(Abu)NINNV(Abu)N(配列番号25)、
FTNINNVTN(配列番号26)、
FININNVINF(配列番号27)、
FSNINNVSNF(配列番号28)、
FANINNVANF(配列番号29)、
F(AllyGly)NINNV(AllyGly)NF(配列番号30)、
FVNINNVVNF(配列番号31)、
FIDINDVINF(配列番号32)、
FIDINDVINW(配列番号33)、
FTDINDVTN(配列番号34)、
A(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号35)、または
(4-ClPhe)(Abu)NINNV(Abu)NF(配列番号36)、
から選択される、項72に記載の医薬組成物。
本発明は、以下の非限定的な実施例に従ってさらに説明される。
【実施例
【0059】
以下の実施例は、AXT107及びその誘導体ペプチドが強力で安全であり、少量の硝子体内注射を不定期に行うことで、作用期間が驚くほど長いことを実証している。それにより、本発明は、滲出型AMD及び糖尿病性黄斑浮腫などの網膜疾患を含む、眼疾患に対する強力で安全かつ患者に優しい治療法を提供する。
【0060】
これらの実験では、ダッチベルトウサギを、ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(2.5mg/kg)の筋肉内注射により麻酔にかけ、瞳孔を2.5%フェニレフリンにより拡張した。結膜を5%ポビドンヨードで洗浄し、片方の眼に100μgまたは500μgのAXT107を硝子体内注射した。AXT107の注射の23日後、10μgのVEGFを硝子体に注射し、7日後、すなわち最初のAXT107注射の30日後に、動物アダプターを取り付けたFluorotron Master(商標)眼球蛍光光度計(OcuMetrics、Mountain View、CA)を用いて硝子体蛍光光度法(VFP)を実行した。VFPの場合、15mgのフルオレセインナトリウム(AK-Fluor 10%, Akorn, Lake Forest, IL)を耳の静脈に注射し、1時間後、網膜から角膜までの視軸に沿って蛍光を測定した。網膜の前面の5~7mmの間のフルオレセイン濃度曲線下面積を計算して、漏出の程度を決定した。VEGF注射及びVFP測定のこのプロトコルを、その後の毎月23日目及び30日目に12か月間行った。AXT107を投与された眼の各月の漏出を、同じ時点で、VEGFのみを注射された動物に対して正規化した。図1A及び図1Bを参照のこと。
【0061】
これらの実験の結果は、AXT107が、そのサイズにより、マウスの眼よりもヒトの眼のより良好な代理になっているウサギの眼におけるVEGF誘発性血管漏出を強力に阻害することを示している。加えて、AXT107は、ウサギの眼におけるVEGF誘発性血管漏出を少なくとも12か月間強力に阻害する。
【0062】
図2では、AXT107をダッチベルトウサギの硝子体に注射した。次に、ウサギを種々の時点で犠死させて、種々の眼組織を分離した。網膜の薬物レベルを、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS/MS)によって測定した。薬物レベルを、ng/gとしてプロットした。AXT107のインテグリン標的への結合のKdは1~2nMである。AXT107は100ng/g以上で存在し、225、271、及び315日の時点で網膜においてこのKdよりも有意に高い濃度になる。
【0063】
図3では、AXT107をダッチベルトウサギの硝子体に注射した。翌日、注射部位にゲルが見えた。ゲルは、図3中で矢印により印が付けけられている。視神経を伴う網膜が、眼球奥に見える。ゲルは密集しており、視軸をブロックしていない。
【0064】
図4では、AXT107は、注射部位で硝子体にゲルを形成した。ゲルは所定位置に留まり、持続的にペプチドを放出した。図4は、経時的にゲルが所定位置で小さくなることを示している。すべての時点で、眼球奥は透明であり、ペプチドが視軸をブロックせず、したがって視覚を妨げないことを示している。この実験のデータは、ペプチドが所定位置に留まり、ウサギの眼球内で15か月間、分解したり移動したりしていないことを示す。図4は、100μg、250μg、500μg、及び1000μgのAXT107用量での301日間にわたるゲルの画像を示す。図5は、ゲルからのAXT107の放出を経時的に示すグラフである。破線は、361日にわたるAXT107レベルの推定値を示す。
【0065】
図6のチューブでは、AXT107を、5歳のヒト及び89歳のヒトからの硝子体に入れた。これらの写真は、ペプチドがウサギの硝子体内で見られるものと同様のゲルをヒトの硝子体内で形成することを示している。
【0066】
図7では、PK毒物学研究において、AXT107をダッチベルトウサギの硝子体に注射した。動物を剖検して眼を検査したとき、すべての用量で、ペプチドによって形成されたゲルが硝子体内で見えた。ゲルのサイズは、図7の下部で定規(矢印で印をつけた)を用いて見られるように、用量と相関していた。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
0007650074000001.app