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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20250314BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
H04R19/02
H04R1/10 104Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023578108
(86)(22)【出願日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2023025906
(87)【国際公開番号】W WO2024034321
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022128394
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入井 広一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友亮
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-98957(JP,A)
【文献】特開2011-49686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106170106(CN,A)
【文献】特開2004-72368(JP,A)
【文献】特開2021-154436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/02
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を外部に放出する導管部が連結されたハウジングと、
前記ハウジング内に固定された固定極と、
前記ハウジング内の空間を2分割するように設けられ、対向する前記固定極との間に生じた電位差に応じて振動する振動膜と、
前記振動膜の一部が前記固定極に接触するように、前記振動膜を支持している支持部と、
前記ハウジングにおいて前記振動膜から見て前記導管部とは反対側の壁を貫通するように形成され、前記ハウジング内の圧力を調整するための調整孔部と、
を備え、
前記振動膜の前記一部に、前記振動膜を貫通している膜貫通孔が形成されており、
前記支持部は、前記振動膜の前記一部の前記固定極に接触する側とは反対側を覆っており、内部を空気が通過可能な通気性を有する弾性材から成る、
イヤホン。
【請求項2】
前記弾性材は、スポンジである、
請求項に記載のイヤホン。
【請求項3】
音を外部に放出する導管部が連結されたハウジングと、
前記ハウジング内に固定された固定極と、
前記ハウジング内の空間を2分割するように設けられ、対向する前記固定極との間に生じた電位差に応じて振動する振動膜と、
前記振動膜の一部が前記固定極に接触するように、前記振動膜を支持している支持部と、
前記ハウジングにおいて前記振動膜から見て前記導管部とは反対側の壁を貫通するように形成され、前記ハウジング内の圧力を調整するための調整孔部と、
を備え、
前記振動膜の前記一部に、前記振動膜を貫通している膜貫通孔が形成されており、
前記支持部は、中央部が前記固定極に接触する前記振動膜を支持し、
前記膜貫通孔は、前記振動膜の前記中央部に形成されており、
前記支持部は、前記膜貫通孔を覆っている、
イヤホン。
【請求項4】
音を外部に放出する導管部が連結されたハウジングと、
前記ハウジング内に固定された固定極と、
前記ハウジング内の空間を2分割するように設けられ、対向する前記固定極との間に生じた電位差に応じて振動する振動膜と、
前記振動膜の一部が前記固定極に接触するように、前記振動膜を支持している支持部と、
前記ハウジングにおいて前記振動膜から見て前記導管部とは反対側の壁を貫通するように形成され、前記ハウジング内の圧力を調整するための調整孔部と、
を備え、
前記振動膜の前記一部に、前記振動膜を貫通している膜貫通孔が形成されており、
前記支持部は、前記振動膜の前記一部の前記固定極に接触する側とは反対側を覆っており、
前記膜貫通孔は、前記振動膜に一つ又は複数形成されており、
前記支持部において前記膜貫通孔のうちの少なくとも一つに対向する部分が、切り欠き部となっている、
イヤホン。
【請求項5】
前記切り欠き部は、円柱形状の前記支持部を平面視した際にU字形状となるように、軸方向に沿って切り欠かれている、
請求項に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記切り欠き部は、円柱形状の前記支持部の前記振動膜に接する上面に形成された溝部であり、
前記溝部は、前記膜貫通孔に対向する前記支持部の中心を通り径方向に沿って形成されている、
請求項に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記支持部は、弾性を有し、前記振動膜と前記ハウジングの間で前記振動膜の変位に伴い変形可能に設けられている、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記導管部が連結された第1ハウジングと、前記第1ハウジングとで前記空間を囲んでいる第2ハウジングとで構成され、
前記調整孔部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうちの前記第2ハウジングのみに設けられている、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項9】
音を外部に放出する導管部が連結されたハウジングと、
前記ハウジング内に固定された固定極と、
前記ハウジング内の空間を2分割するように設けられ、対向する前記固定極との間に生じた電位差に応じて振動する振動膜と、
前記振動膜の一部が前記固定極に接触するように、前記振動膜を支持している支持部と、
前記ハウジングにおいて前記振動膜から見て前記導管部とは反対側の壁を貫通するように形成され、前記ハウジング内の圧力を調整するための調整孔部と、
を備え、
前記振動膜の前記一部に、前記振動膜を貫通している膜貫通孔が形成されており、
前記固定極の前記振動膜の前記一部が接触する部分には、貫通孔が形成されており、
前記固定極から見て前記振動膜とは反対側に設けられ、前記固定極に電気信号を供給するための端子と、
前記固定極と前記端子の間にて前記貫通孔を覆うように設けられ、内部を空気が通過可能な通気性を有する導電部材と、
を更に備える、
イヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を音に変換するイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンは、平板状の固定電極(以下、固定極とも呼ぶ)と、固定極に対向して設けられた振動膜と有する。下記の特許文献1には、薄膜の振動膜が、ハウジング内の空間を上下に分けるように設けられたコンデンサ型のイヤホンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-98957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内で振動膜の両側の圧力が均等になることが望ましいイヤホンにおいて、例えばイヤホンをユーザの耳に装着したり外したりする際に、ハウジング内の圧力が変化する。このような圧力変化を調整するために、ハウジングの両側に圧力調整孔を設けることが提案されている。しかし、ハウジングの両側に圧力調整孔を設ける場合には、ハウジングの構造が複雑になり、ハウジングの製造コストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易なハウジング構成で内部の圧力を調整可能なイヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、音を外部に放出する導管部が連結されたハウジングと、前記ハウジング内に固定された固定極と、前記ハウジング内の空間を2分割するように設けられ、対向する前記固定極との間に生じた電位差に応じて振動する振動膜と、前記振動膜の一部が前記固定極に接触するように、前記振動膜を支持している支持部と、前記ハウジングにおいて前記振動膜から見て前記導管部とは反対側の壁を貫通するように形成され、前記ハウジング内の圧力を調整するための調整孔部と、を備え、前記振動膜の前記一部に、前記振動膜を貫通している膜貫通孔が形成されている、イヤホンを提供する。
【0007】
また、前記支持部は、前記振動膜の前記一部の前記固定極に接触する側とは反対側を覆っており、内部を空気が通過可能な通気性を有する弾性材から成ることとしてもよい。
また、前記弾性材は、スポンジであることとしてもよい。
また、前記支持部は、中央部が前記固定極に接触する前記振動膜を支持し、前記膜貫通孔は、前記振動膜の前記中央部に形成されており、前記支持部は、前記膜貫通孔を覆っていることとしてもよい。
【0008】
また、前記支持部は、前記振動膜の前記一部の前記固定極に接触する側とは反対側を覆っており、前記膜貫通孔は、前記振動膜に一つ又は複数形成されており、前記支持部において前記膜貫通孔のうちの少なくとも一つに対向する部分が、切り欠かれていることとしてもよい。
また、前記切り欠き部は、円柱形状の前記支持部を平面視した際にU字形状となるように、軸方向に沿って切り欠かれていることとしてもよい。
また、前記切り欠き部は、円柱形状の前記支持部の前記振動膜に接する上面に形成された溝部であり、前記溝部は、前記膜貫通孔に対向する前記支持部の中心を通り径方向に沿って形成されていることとしてもよい。
【0009】
また、前記支持部は、弾性を有し、前記振動膜と前記ハウジングの間で前記振動膜の変位に伴い変形可能に設けられていることとしてもよい。
【0010】
また、前記ハウジングは、前記導管部が連結された第1ハウジングと、前記第1ハウジングとで前記空間を囲んでいる第2ハウジングとで構成され、前記調整孔部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうちの前記第2ハウジングのみに設けられていることとしてもよい。
【0011】
また、前記固定極の前記振動膜の前記一部が接触する部分には、貫通孔が形成されており、前記固定極から見て前記振動膜とは反対側に設けられ、前記固定極に電気信号を供給するための端子と、前記固定極と前記端子の間にて前記貫通孔を覆うように設けられ、内部を空気が通過可能な通気性を有する導電部材と、を更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易なハウジング構成で内部の圧力を調整可能なイヤホンを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一の実施形態に係るイヤホン1の外観構成を説明するための模式図である。
図2】電気音響変換部10の構成を説明するための模式図である。
図3図2のA-A方向から見た際の模式図である。
図4】振動膜21及び支持部材27の構成を説明するための模式図である。
図5】振動膜21の膜貫通孔22を介した空気の流れを説明するための模式図である。
図6】比較例を説明するための模式図である。
図7】変形例に係る支持部材37の構成を説明するための模式図である。
図8】変形例に係る支持部材47の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<イヤホンの概要>
一の実施形態に係るイヤホンの概要について、図1を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、一の実施形態に係るイヤホン1の外観構成を説明するための模式図である。イヤホン1は、ここではカナル型のイヤホンであるが、これに限定されず、例えばインナーイヤー型イヤホンであってもよい。イヤホン1は、図1に示すように、ケーブル4と、連結部5と、ハウジング6と、イヤピース7を有する。
【0016】
ケーブル4は、音源から供給される電気信号を伝送するためのケーブルである。
連結部5は、ケーブル4とハウジング6を連結する部材である。連結部5は、例えばケーブル4を覆うよう樹脂等で形成されている。
【0017】
ハウジング6は、連結部5とイヤピース7の間に設けられている。ハウジング6には、ケーブル4を介して伝送された電気信号を音に変換する電気音響変換部が設けられている。電気音響変換部の詳細構成については、後述する。
【0018】
イヤピース7は、イヤホン1においてユーザの耳に挿入される部分である。イヤピース7は、ハウジング6から突出している導管部(具体的には、図2の導管部15)に装着されている。イヤピース7は、電気音響変換部が発生した音を放出するための開口7aを有する。
【0019】
上記のイヤホン1においては、イヤホン1をユーザの耳に装着したり外したりする際に、ハウジング6内の圧力が変化する。このような圧力変化を調整するために、ハウジング6の圧力調整孔を設ける必要がある。本実施形態のイヤホン1においては、詳細は後述するが、ハウジング6内の振動膜に膜貫通孔を設けることで、簡易なハウジング6の構成で内部の圧力を適切に調整可能となっている。
【0020】
<電気音響変換部の詳細構成>
電気音響変換部の詳細構成について、図2図4を参照しながら説明する。
【0021】
図2は、電気音響変換部10の構成を説明するための模式図である。図3は、図2のA-A方向から見た際の模式図である。
電気音響変換部10は、図2に示すように、ハウジング11と、導管部15と、固定極17と、端子19と、振動膜21と、絶縁部材23と、第1導電部材25と、支持部材27と、第2導電部材29を有する。
【0022】
ハウジング11は、電気音響変換部10の筐体を成しており、内部に固定極17や振動膜21等が配置される内部空間を有する。ハウジング11は、図1に示すハウジング6に該当する。ハウジング11は、ここでは樹脂製である。ハウジング11は、図2に示すように、耳側ハウジング12と外側ハウジング13で構成されている。外側ハウジング13は、耳側ハウジング12とで内部空間を囲んでいる。
【0023】
耳側ハウジング12は、イヤホン1がユーザの耳に装着された際に、耳側に位置する部位である。外側ハウジング13は、イヤホン1がユーザの耳に装着された際に、耳から離れる側に位置する部位である。本実施形態では、耳側ハウジング12が第1ハウジングに該当し、外側ハウジング13が第2ハウジングに該当する。
【0024】
外側ハウジング13には、ハウジング11内の圧力を調整するための調整孔部14が形成されている。調整孔部14は、図2に示すように、ハウジング11において振動膜21から見て導管部15とは反対側の壁である外側ハウジング13を貫通するように形成されている。調整孔部14は、外側ハウジング13から内部空間に向かって突出するように形成されており、外側ハウジング13の外周面に突起等が形成されていない。本実施形態では、調整孔部14は、耳側ハウジング12と外側ハウジング13のうちの外側ハウジング13のみに設けられている。これにより、耳側ハウジング12の構成も簡易なものとなっている。
【0025】
導管部15は、音を外部に放出させる管路として機能する。導管部15は、図2に示すように、ハウジング11の耳側ハウジング12に連結されている。具体的には、導管部15は、耳側ハウジング12から突出するように形成されている。導管部15の先端には、イヤピース7(図1)に着脱可能に装着される。
【0026】
固定極17は、平板状の導電性部材(例えばアルミニウム)により形成されている。固定極17は、ハウジング11内に固定されている。固定極17は、例えば端子19を介してバイアス電圧が印加されることにより、振動膜21との間に電場を発生する。また、固定極17及び振動膜21には、それぞれ端子19及び第1導電部材25を介して、音源から入力された電気信号が入力される。
【0027】
固定極17には、複数の貫通孔17aが形成されている。複数の貫通孔17aは、図3に示すように所定間隔で形成されている。固定極17の振動膜21の中央部が接触する部分(具体的には、振動膜21の中央部と第2導電部材29で挟まれた部分)には、図2に示すように、貫通孔18が形成されている。貫通孔18の直径は、ここでは貫通孔17aの直径よりも大きい。
【0028】
端子19は、固定極17に電気信号を供給するための導電性の端子である。端子19は、固定極17と電気的に結合されており、例えばバイアス電圧に重畳されて音源から供給される電気信号が入力される。端子19は、固定極17から見て振動膜21とは反対側に設けられている。
【0029】
振動膜21は、固定極17に対向して設けられており、音源から供給される電気信号に基づいて振動する振動板である。振動膜21は、導電性を有する薄膜で形成されている。振動膜21は、例えば金属箔又は金が蒸着された高分子フィルムにより形成されている。振動膜21は、ハウジング11内の空間を2分割するように設けられている。具体的には、ハウジング11内の空間が、図2に示すように、振動膜21の下側の下領域R1と振動膜21の上側の上領域R2とに分けられる。
【0030】
振動膜21は、電気信号により生じる端子19と第1導電部材25との間の電位差に応じて振動する。具体的には、振動膜21は、端子19及び第1導電部材25に印加される電気信号に基づいて固定極17との間に生じた電位差に応じて振動する。より具体的には、振動膜21は、端子19と第1導電部材25との間に生じた電位差の交流成分の大きさの変化に応じて振動する。
【0031】
図4は、振動膜21及び支持部材27の構成を説明するための模式図である。図4には、下面21b側から見た振動膜21が示されている。振動膜21には、膜を貫通している膜貫通孔22が形成されている。膜貫通孔22は、ここでは振動膜21の中央部に一つ形成されている。膜貫通孔22の直径は、ここでは厚さが2μmの振動膜21において、0.1mm以下である。膜貫通孔22の直径の大きさによって、膜貫通孔22を通過する空気の通気量が調整される。
【0032】
膜貫通孔22は、ここではレーザーによって熱で瞬間的に振動膜21を溶かして孔を開けて形成されている。この場合、孔の周囲が熱で溶かされ補強されることになるので、膜貫通孔22の大きさを調整しやすくなると共に、イヤホン1を耳に抜き差しする時の圧力変化の際に負荷を受けることによる振動膜21の破れや破損等を防止できる。
【0033】
上記では、膜貫通孔22が振動膜21の中央に一つ形成されているが、これに限定されず、例えば、膜貫通孔22は複数形成されていてもよい。膜貫通孔22の数や直径は、空気の通気量、音響設計及び製造方法を考慮して、適宜選択されうる。また、上記では、ガスレーザーを使用して円形状の膜貫通孔22を形成しているが、これに限定されず、例えば、半導体レーザーを使用して楕円形状の膜貫通孔22を形成してもよい。このように、膜貫通孔22は、様々な形状をとりうる。
【0034】
絶縁部材23は、振動膜21が振動する空間を確保するために設けられており、例えば樹脂により形成されている。絶縁部材23は、例えば環状の形状を有しており、図2に示すように振動膜21の周縁部と固定極17との間に挟まれている。その結果、振動膜21の周縁部が固定極17に接触しない状態で固定され、振動膜21において絶縁部材23に接触していない領域(振動膜21の中央部を除く領域)は、電気信号に応じて振動する。
【0035】
第1導電部材25は、振動膜21に電気信号を印加するための部材である。第1導電部材25は、例えば導電性シートにより形成されている。第1導電部材25は、図2に示すように、振動膜21の周縁部に接触する環状部25aと、環状部25aの少なくとも一部から上方へ延伸する延伸部25bを有する。延伸部25bは、実際には、連結部5にまで延伸している。
【0036】
支持部材27は、振動膜21の一部が固定極17に接触するように、振動膜21を支持している支持部である。支持部材27は、図2に示すように、振動膜21の下面21b側に位置しており、振動膜21の下面21bに接触して振動膜21を支持する。支持部材27は、振動膜21の一部である中央部の固定極17に接触する側とは反対側を覆っている。支持部材27が振動膜21の下面21bを支持することで、振動膜21の上面21aの中央部が固定極17に押し当てられている。
【0037】
支持部材27は、振動膜21とハウジング11の耳側ハウジング12との間に、振動膜21の下面21bと耳側ハウジング12とに接するように配置されている。支持部材27は、弾性を有する弾性材から成り、振動膜21の変位に伴い変形可能に設けられている。例えば、ユーザが耳からイヤホン1を取り外す際にハウジング11の内部が減圧して振動膜21が変位する際に、振動膜21の変位に伴い支持部材27が変形する。
【0038】
支持部材27は、図4に示すように、膜貫通孔22を覆っている。支持部材27は、内部を空気が通過可能な通気性を有する弾性材から成る。ここで、弾性材は、例えばスポンジである。このように支持部材27が通気性を有することにより、例えば、振動膜21の膜貫通孔22を通過した空気が、当該膜貫通孔22に接する支持部材27を通過可能となる。
【0039】
第2導電部材29は、図2に示すように、固定極17と端子19の間に挟まるように設けられている。第2導電部材29は、固定極17の貫通孔18を覆うように配置されている。第2導電部材29は、固定極17と端子19の間で音響抵抗になる機能を有することで、音響特性の調整が可能となる。特に、前述した第1導電部材25と第2導電部材29の両方を用いることで、幅広い音響特性の調整が可能となる。
【0040】
第2導電部材29は、内部を空気が通過可能な通気性を有する。例えば、第2導電部材29は、導電布で形成されている。このように第2導電部材29が通気性を有することで、下領域R1の空気は、振動膜21の膜貫通孔22、第2導電部材29の順に通過して、上領域R2へ流れやすくなる。同様に、上領域R2の空気も、第2導電部材29、膜貫通孔22の順に通過して、下領域R1へ流れやすくなる。
【0041】
<膜貫通孔22を経由した空気の流れ>
本実施形態では、振動膜21に膜貫通孔22を設けたことによって、ハウジング11内の空気が膜貫通孔22を経由した流れが生じてハウジング11内の圧力が調整される。
【0042】
例えば、イヤホン1のユーザの耳への装着の伴い下領域R1の圧力が高くなった場合には、下領域R1の空気が膜貫通孔22を経由して調整孔部14からハウジング11外へ流れることで、下領域R1の圧力が低下し下領域R1と上領域R2の圧力が均衡する。上述した空気の流れについて、図5を参照しながら説明する。
【0043】
図5は、振動膜21の膜貫通孔22を介した空気の流れを説明するための模式図である。図5では、空気の流れが破線の矢印で示されている。下領域R1の空気は、まず、支持部材27へ向かう。支持部材27が通気性を有するため、支持部材27へ至った空気は、支持部材27内を通過する。その後、空気は、振動膜21の支持部材27が接している膜貫通孔22を通過する。膜貫通孔22を通過した空気は、固定極17の貫通孔18を経由して第2導電部材29へ向かう。第2導電部材29が通気性を有するため、第2導電部材29に至った空気は、第2導電部材29内を通過する。その後、空気は、上領域R2を流れて外側ハウジング13の調整孔部14へ向かう。そして、空気は、調整孔部14を通過して、ハウジング11外へ排出される(図2参照)。
【0044】
なお、上領域R2の圧力が高い場合には、上述した流れとは逆の流れ(すなわち、上領域R2の空気が、膜貫通孔22及び導管部15を経由してハウジング11外へ流れる)が生じると共に、調整孔部14からハウジング11外へ空気が排出されることで、下領域R1と上領域R2の圧力が均衡する。
【0045】
振動膜21の中央部(支持部材27に支持された部分)に膜貫通孔22を設けた場合には、振動膜21の振動しない中央部を活用して空気の流れる経路を形成することができる。また、ハウジング11内を下領域R1と上領域R2に2分割する振動膜21に膜貫通孔22を設けることで、図6に示す比較例に比べて、ハウジング11の構成が簡易なものとなる。以下では、比較例と対比しながら、本実施形態の有効性について更に説明する。
【0046】
図6は、比較例を説明するための模式図である。比較例に係る電気音響変換部110の振動膜121には、上述した振動膜21とは異なり膜貫通孔が形成されていない。このため、比較例においては、上領域R2の空気をハウジング外へ流出させるための調整孔部14を外側ハウジング13に設けたのに加えて、下領域R1の空気をハウジング外へ流出させるための調整流路部130を耳側ハウジング112に設けている。また、支持部材127及び第2導電部材129は、通気性を有しない点で、支持部材27及び第2導電部材29とは異なる。
【0047】
調整流路部130は、空気が流れる流路となっている。例えば下領域R1の圧力を調整する際には、下領域R1の空気が、調整流路部130を介してハウジング11外へ流れる。調整流路部130を流れる空気がユーザの耳に向かうことを避ける観点等から、調整流路部130は、図6に示すように耳側ハウジング112の外面に沿って細長く形成されている。特に、音響特性への影響を軽減するために、調整流路部130の直径を小さくし、かつ調整流路部130の流路長を長くしている。このような調整流路部130を形成するためには、耳側ハウジング112の構造が複雑になってしまい、耳側ハウジング112の製造コストが高くなってしまう。例えば、調整流路部130の直径としては0.1mm程度が望ましいが、この場合には、精密な金型が必要になり、また金型の組み立て時に細心の注意が必要となる。これに対して、本実施形態の場合には、耳側ハウジング12に調整流路部130を設けることなく、下領域R1の空気が膜貫通孔22を経由してハウジング11外へ流れる。これにより、耳側ハウジング12の構造が簡易なものとなる。
【0048】
<変形例>
図7は、変形例に係る支持部材37の構成を説明するための模式図である。図7には、振動膜21の膜貫通孔22と支持部材37の関係が示されている。
【0049】
上述した実施形態の支持部材27は、振動膜21の膜貫通孔22の全体を覆うように配置されていることとした(図4参照)。これに対して、変形例においては、図7に示すように、円柱形状の支持部材37において膜貫通孔22に対向する部分に切り欠き部38が形成されており、膜貫通孔22が露出するようになっている。すなわち、切り欠き部38は、支持部材37を平面視した際にU字形状となるように、軸方向に沿って切り欠かれている。このような支持部材37である場合には、膜貫通孔22への通気性が良く、かつ支持部材37の素材の選択性が広がる。例えば、他の素材の支持部材37を変更しても、通気性の影響が少ない。
【0050】
支持部材37に切り欠き部38を設けることによって、例えば、下領域R1の空気は、切り欠き部38を介して膜貫通孔22に至りやすくなる。すなわち、変形例においては、空気が支持部材37内を通過せずに膜貫通孔22に至りやすくなる。このため、支持部材37は、通気性を有する部材で形成する必要がなくなる。ただし、これに限定されず、支持部材37は、通気性を有する部材で形成されてもよい。
【0051】
支持部材37の形状は、図7に示す形状に限定されず、例えば、円柱形状の支持部材37の中心部を軸方向に沿って貫通する孔(当該孔の直径は、膜貫通孔22の直径よりも大きい)が形成されていてもよい。このような形状の支持部材37の場合には、膜貫通孔22が支持部材37に当接しないため、例えば支持部材37の個体差や振動膜21への押し付け強さの違いなどにより、小さい膜貫通孔22が想定以上に塞がれることによる通気性のばらつきの発生を抑制できる。
【0052】
図7では、一つの膜貫通孔22のみが示されているが、膜貫通孔22が複数あってもよく、この場合に、支持部材37の切り欠き部38は、複数の膜貫通孔22のうちの少なくとも一つの膜貫通孔22(例えば、5個の膜貫通孔22のうちの2つの膜貫通孔22)に対向するように形成されている。
【0053】
図8は、変形例に係る支持部材47の構成を説明するための模式図である。図8(a)には支持部材47の平面図が示され、図8(b)には図8(a)のB-B断面図が示されている。支持部材47において、振動膜21の下面21b(図2参照)に接する上面47aに、切り欠き部としての溝部48が形成されている。溝部48は、円柱形状の支持部材47の上面47aにおいて、支持部材47の中心を通り径方向に沿って直線状に形成されている。また、溝部48は、膜貫通孔22に対向する位置に形成されている。このため、下領域R1の空気は、溝部48を介して膜貫通孔22に至りやすくなる(図5参照)。支持部材47に溝部48を設けることで、図7に示す支持部材37と同様に、膜貫通孔22への通気性が良く、かつ支持部材47の素材の選択性が広がる。
【0054】
変形例の場合にも、ハウジング11内の空気の膜貫通孔22を経由して流れが生じることになる。例えば、下領域R1の空気が、膜貫通孔22を経由してハウジング11外へ流れることになる。
【0055】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のイヤホン1は、ハウジング11内の空間を2分割するように設けられた振動膜21と、振動膜21の中央部が固定極17に接触するように振動膜21を支持している支持部材27と、外側ハウジング13に形成されハウジング11内の圧力を調整するための調整孔部14を有する。そして、振動膜21の中央部に、振動膜21を貫通している膜貫通孔22が形成されている。
これにより、振動膜21の中央部(支持部材27に支持された部分)に膜貫通孔22を設けることになり、振動膜21の振動しない中央部を活用して空気の流れる経路を形成することができる。また、ハウジング11内を下領域R1と上領域R2に2分割する振動膜21に膜貫通孔22を設けることで、例えば下領域R1の空気が外側ハウジング13の調整孔部14からハウジング11外へ流れてハウジング11内の圧力が調整されるので、耳側ハウジング12の構成を簡易にすることができる。
【0056】
また、膜貫通孔22を設けたことによって、耳側ハウジング12に調整流路部(例えば、図6に示す調整流路部130)を設ける必要がなくなる。これにより、ハウジング11の調整流路部の直径や流路長の調整も不要となるため、ハウジング11内の空気の流入及び流出のための設計が容易になる。また、調整流路部を設ける必要がないため、音質を損なわずにイヤホン1の一層の小型化を実現できる。さらに、調整流路部の直径や流路長の調整も不要となることで、音響特性に影響する(低周波数域が出力され難くなる)パラメータが減り、音響設計のしやすさも向上する。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0058】
1 イヤホン
11 ハウジング
12 耳側ハウジング
13 外側ハウジング
14 調整孔部
17 固定極
19 端子
21 振動膜
22 膜貫通孔
27 支持部材
29 第2導電部材
37 支持部材
47 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8