(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを可視光媒介の一段階法で製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/48 20060101AFI20250314BHJP
C07C 39/04 20060101ALI20250314BHJP
C07C 49/403 20060101ALI20250314BHJP
C07C 45/32 20060101ALI20250314BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250314BHJP
【FI】
C07C37/48
C07C39/04
C07C49/403 A
C07C45/32
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2024538150
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2022137617
(87)【国際公開番号】W WO2023124881
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】202111613495.1
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518384803
【氏名又は名称】フーダン ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】FUDAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻 生明
(72)【発明者】
【氏名】喩 浩
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】施 章杰
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-051197(JP,A)
【文献】米国特許第04532360(US,A)
【文献】国際公開第2015/094530(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第107586270(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0130276(US,A1)
【文献】国際公開第2014/043188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキシルベンゼンを原料として、光照射下、臭化水素溶液を触媒として用い、酸素を酸化剤として使用し、有機溶媒中でシクロヘキシルベンゼンを直接酸化し、炭素-炭素結合を切断してフェノールとシクロヘキサノンを生成することを含み;前記反応プロセスは反応式(1)に示すとおりであることを特徴とする、シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを光媒介の一段階法で製造するための方法。
【化3】
【請求項2】
前記触媒が臭化水素水溶液であり、前記臭化水素の質量分率が40%である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記臭化水素とシクロヘキシルベンゼンとのモル比が(0.1~100):100である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光は可視光である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジブロモメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、及びアセトンのうちの1種又は複数の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸素の供給源が純酸素または空気中の酸素である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フェノールを反応添加剤として添加してもよく、前記添加剤がフェノール、または置換基を有するフェノールであり、フェノール、フッ素置換フェノール、塩素置換フェノール、臭素置換フェノール、ニトロ置換フェノール、トリフルオロメチル置換フェノール、アセチル置換フェノール、tert-ブチル置換フェノール、メチル置換フェノール、シアノ置換フェノールを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記添加剤とシクロヘキシルベンゼンとのモル比が(0~100):100である、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応の反応時間が6~24時間である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成応用の技術分野に属し、シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを可視光媒介の一段階方法で製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール及びシクロヘキサノンはいずれも重要な基礎有機化学原料である。フェノールは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びポリカーボネートなどの製造における重要な中間体であり、医薬品、農薬及び染料などの分野でも重要な用途があり、世界の需要量は1100万トン/年に達しており、将来的にはフェノールの消耗量が年平均2.5%の速度で成長すると予想されている。シクロヘキサノンは主にカプロラクタム及びアジピン酸などの重要なモノマー原料の製造に使用され、ひいてはナイロン及びポリウレタンなどのポリマー材料の製造に使用され、同時に、シクロヘキサノンは重要な産業用溶剤としても使用可能であり、世界の需要量は490万トン/年に達している。
【0003】
現在、産業的に最も重要なフェノールの製造方法はクメンの酸化分解法(Hock法)であり、その生産能力はフェノール全生産能力の90%以上を占めている。クメン法の最初のステップは、ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを製造することであり、プロピレン原料の供給問題により、生産装置全体の経済性が大幅に制限される。また、クメン法では多量のアセトンが副生するが、アセトンが余剰となり、産品の付加価値が低いとの問題がある。シクロヘキシルベンゼン法は、フェノール製造の代替プロセスルートを提供すると同時に、反応によって生成される副生成物は付加価値の高いシクロヘキサノンであるため、クメン法における過剰なアセトン副生成物の問題が回避される。以前に開発されたフェノールとシクロヘキサノンを製造するシクロヘキシルベンゼン法には、主にベンゼンの一段階ヒドロアルキル化によるシクロヘキシルベンゼン(CHB)の製造と、シクロヘキシルベンゼンの酸化によるシクロヘキシルベンゼン-1-ヒドロペルオキシド(1-CHBHP)の製造と、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの酸分解によるフェノールとシクロヘキサノンの製造との3つの反応プロセスが含まれる(式A)。
【化1】
【0004】
シクロヘキシルベンゼン法に関する技術は、国内外の化学会社や研究機関によって研究開発され、一定の進歩を遂げている。その中で、エクソンモービルは、一連の特許を出願し(例えば、CN105829273B、CN105793222A、CN105461535A、CN103664534A、CN102083777B、CN102015604A)、シクロヘキシルベンゼンのプロセスを報告し、ここで、シクロヘキシルベンゼン(CHB)の酸化プロセスとシクロヘキシルベンゼン-1-ヒドロペルオキシド(1-CHBHP)の酸分解プロセスには、シクロヘキシルベンゼンの酸分解過程1-ヒドロペルオキシド(1-CHBHP)には、酸素、純空気、またはその他の酸素含有混合物などの酸素含有ガスを酸化剤として使用し、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を触媒として使用し、反応温度を90-130℃とし、反応圧力を50~10000kPaとすることが含まれる。酸分解反応は、硫酸を触媒として使用し、反応温度を40~120℃とし、反応圧力を100~1000kPaとする。しかし、当該プロセスフローが長く、かつ過酸化反応における過酸化アルキルの蓄積も潜在的な安全上のリスクを引き起こす。さらに、シクロヘキシルベンゼン-1-ヒドロペルオキシド(1-CHBHP)の酸分解反応では、フェノールとシクロヘキサノンの生成に加えて、他の副生成物も生成され、これによりプロセス全体の選択性がさらに低下し、その後の生成物分離の難易度が向上する。酸分解反応における硫酸触媒は装置の腐食を引き起こし、反応の後処理では大量のフェノール含有廃水が発生する。
【0005】
シクロヘキサノンの製造には、主にシクロヘキサンの酸化分解法及びシクロヘキセンの水和-脱水素法がある。そのうち、シクロヘキサンの酸化分解法には、1.ベンゼンの水素化によるシクロヘキサンの生成;2.シクロヘキサンの空気酸化によるシクロヘキサンヒドロペルオキシドの生成;3.シクロヘキサンヒドロペルオキシドが触媒の作用下で分解され、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールが生成され;4.シクロヘキサノールの脱水素によるシクロヘキサノンの生成という4つの反応プロセスがある。しかし、この方法には、プロセスフローが長く、単流転化率が低く(3~5%)、生成物の選択性が低く、及び3つの廃棄物の排出量が多いなどの欠点がある。シクロヘキセンの水和-脱水素法は、シクロヘキセンと水を触媒の作用下で水和反応させ、シクロヘキサノールを生成し、シクロヘキサノールを触媒作用で脱水素し、精製して、産品としてシクロヘキサノンを得る方法である。しかし、この方法にはシクロヘキセンのコストが高く、反応の単流転化率が低く、プロセスフローが長いなどの問題がある。
【0006】
可視光には、低コスト、豊富な貯蔵量、環境に優しい、無毒、再生可能という利点があり、近年、可視光を媒介とする光触媒戦略は、温和な条件下で有機分子の効率的な活性化を達成できる強力な合成プラットフォームとなっており、ひいては以前は困難であったいくつかの選択的化学変換が可能になった(Capaldo,L.;Ravelli,D.;Fagnoni,M.Chem.Rev.2021.doi.org/10.1021/acs.chemrev.1c00263;Marzo,L.;Pagire,S.K.;Reiser,O.;Konig,B.Angew.Chem.Int.Ed.2018,57,10034;Shaw,M.H.;Twilton,J.;MacMillan,D.W.C.J.Org.Chem.2016,81,6898.)。
【発明の概要】
【0007】
既存の技術の欠点を克服するために、本発明の目的は、シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを、簡単なプロセスで、温和な反応条件下で、低コストで、操作が簡単で、制御が容易で、産業生産に適し、酸素を酸化剤として用いて環境に優しい光媒介の一段階法で製造するための方法を提供することである。本発明は、シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを一段階法で製造することができ、従来技術のシクロヘキシルベンゼン法において、最初にシクロヘキシルベンゼン(CHB)を酸化してシクロヘキシルベンゼン-1-ヒドロペルオキシド(1-CHBHP)を得、酸化反応生成物の混合物を処理した後に、酸性条件下でシクロヘキシルベンゼン-1-ペルオキシドを分解させてフェノールとシクロヘキサノンを得るとのプロセスを回避することができる。
【0008】
本発明は、光を媒介とし、臭化水素溶液により触媒され、酸化剤として酸素を使用してシクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを一段階法で製造する方法を提供し、フェノールとシクロヘキサノンは、光照射及び大気圧での酸素の条件下で、有機溶媒中、原料としてシクロヘキシルベンゼン、触媒として安価で入手しやすい臭化水素溶液、酸化剤として酸素を用いて直接製造され、反応プロセスは反応式(1)に示すとおりである:
【化2】
【0009】
ここで、
本発明の方法において、前記光は可視光である。
【0010】
本発明の方法において、前記反応に使用する光源は白色LEDランプであることが好ましく、出力は60Wであることが好ましい。
【0011】
本発明の方法において、前記触媒は臭化水素水溶液であることが好ましく、前記臭化水素の質量分率は40%であることが好ましい。
【0012】
本発明の方法において、反応添加剤としてフェノール類を添加してもよい。
【0013】
本発明の方法において、前記添加剤はフェノール、または電子求引性置換基を有するフェノールであり、フェノール、フッ素置換フェノール、塩素置換フェノール、臭素置換フェノール、ニトロ置換フェノール、トリフルオロメチル置換フェノール、アセチル置換フェノール、tert-ブチル置換フェノール、メチル置換フェノール、シアノ置換フェノール等を含み;好ましくは、フェノール、p-フルオロフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、p-ニトロフェノール、p-トリフルオロメチルフェノール、p-アセチルフェノール、p-シアノフェノールであり、さらに好ましくはフェノールである。
【0014】
本発明の方法において、前記シクロヘキシルベンゼンと、臭化水素と、添加剤とのモル比は100:(0.1~100):(0~100)であり、反応スケールが1mmolである場合、シクロヘキシルベンゼンと、臭化水素と、添加剤とのモル比は100:(20~30):(0~7.5)が好ましく、反応時間は9~24時間が好ましい。
【0015】
本発明の方法において、前記シクロヘキシルベンゼンと、臭化水素と、添加剤とのモル比は、100:(0.1~100):(0~100)であり、反応スケールが36mmolである場合、シクロヘキシルベンゼンと、臭化水素と、添加剤とのモル比は100:(5~15):(0~3)が好ましく、反応時間は6~15時間が好ましい。
【0016】
本発明の方法において、前記有機溶媒は、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジブロモメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル、及びアセトンなどのうちの1種または複数の混合物である。好ましくは、前記有機溶媒はアセトンである。
【0017】
本発明の方法において、前記酸素の供給源は純酸素または空気中の酸素である。
【0018】
本発明の方法において、前記反応は室温の条件下で行うことが好ましい。
【0019】
本発明の有利な効果は、シクロヘキシルベンゼンからフェノールとシクロヘキサノンを、簡単なプロセスで、温和な反応条件下で、低コストで、操作が簡単で、制御が容易で、産業生産に適し、酸素を酸化剤として用いて環境に優しい光媒介の一段階法で製造するための方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の具体的な実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明を実施するためのプロセス、条件、実験方法等は、以下に特に述べる内容を除き、当該分野における普通知識や公知常識であり、その内容が本発明を特に限定するものではない。
【0021】
実施例1~4
シクロヘキシルベンゼン(CHB、0.17mL、1.0mmol)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、45μL)、フェノール類添加剤(0.01mmol)及びアセトン(90μL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコにフリップトップ栓で蓋をし、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて24時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液にジブロモメタン(35μL、0.5mmol)、重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表1に示す。
【表1】
【0022】
実施例5~7
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、Xmg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表2に示す。
【表2】
【0023】
実施例8~9
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、XmL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表3に示す。
【表3】
【0024】
実施例10~13
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて一定時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表4に示す。
【表4】
【0025】
実施例14~16
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて一定温度で12時間反応させた。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表5に示す。
【表5】
【0026】
実施例17~18
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプの照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表6に示す。
【表6】
【0027】
実施例19~23
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及び反応溶媒を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(90W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表7に示す。
【表7】
【0028】
実施例24~27
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後にさまざまな光源(60W)の照射下に置いて6時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表8に示す。
【表8】
【0029】
実施例28~32
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化リチウム(347.4mg)、酸添加剤(4mmol)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表9に示す。
【表9】
【0030】
実施例33~36
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、濃塩酸(0.34mL)、臭化物(4mmol)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後、酸素バルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表10に示す。
【表10】
【0031】
実施例37~38
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを異なる空気雰囲気に置いた後、白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。結果を表11に示す。
【表11】
【0032】
実施例39
シクロヘキシルベンゼン(CHB、6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを酸素雰囲気に置換した後に、酸素バルーンを挿入し、その後に暗所で50℃のオイルバスに置いて12時間反応させた。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。フェノールの収率は4.2%、シクロヘキサノンの収率は4.0%、シクロヘキシルベンゼンの転化率は7.3%であった。
【0033】
実施例40
クメン(6.0mL)、臭化水素酸溶液(40重量%水溶液、0.6mL)、フェノール(PhOH、88.5mg)及びアセトン(1.0mL)を反応フラスコに順次に加えた。反応フラスコを空気雰囲気に置換した後、エアバルーンを挿入し、その後に白色LEDランプ(60W)の照射下に置いて12時間反応させ、反応温度をファンで室温に制御した。反応完了後、反応液0.2mLを取り、ジブロモメタン(35μL、0.5mmol)及び重水素化クロロホルム(0.5mL)を加えた。混合後、混合溶液100μLをNMRチューブに取り、重水素化クロロホルム(0.5mL)で希釈し、粗NMRに送った。フェノールの収率は19.6%、クメンの転化率は26.6%であった。
【0034】
本発明の保護内容は上記実施例に限定されるものではない。本発明の概念の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考えられる変更及び利点はすべて本発明に含まれ、添付の特許請求の範囲が保護範囲である。