(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】シート給送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20250314BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H3/48 310B
(21)【出願番号】P 2020109539
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀内 圭
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/14
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが所定の積載方向に積載される積載手段と、
前記積載手段に積載され、所定の取出位置にあるシートを給送方向に取り出すシート取出手段と、
前記シート取出手段によりシートを取り出したのち、シートが前記取出位置に達するよう前記積載手段を前記積載方向に上昇移動させる移動手段と、
前記取出位置にあるシートを捌くよう前記積載方向及び前記給送方向の双方と交差する方向から送風する送風手段と、
前記積載手段に収納されるシートが前記取出位置にあるかを検知する検知手段と、
前記積載手段に積載されるシートの坪量情報を認識する坪量認識手段と、
前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記坪量認識手段によって認識された坪量情報が所定の坪量未満であるときには、前記検知手段によりシートが前記取出位置にないと検知されたとき、前記積載手段に収納されたシートを前記取出位置に位置させるべく前記移動手段を制御し、前記坪量認識手段によって認識された坪量情報が所定の坪量以上であるときには、前記検知手段による検知結果にかかわらず、前記シート取出手段が前記送風手段からの送風を受けるシートを所定枚数取り出したのち、前記積載手段に収納されているシートを前記取出位置に位置させるべく前記移動手段を所定量上昇させるよう制御する事を特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記シート取出手段は、前記積載手段に収納されている最上位のシートの高さ位置に応じて前記積載方向に移動し、
前記検知手段は、前記シート取出手段があらかじめ設定された移動範囲の下限に到達したとき、前記積載手段に収納されるシートが前記取出位置にないことを検知する
請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送風手段の送風停止時においては、前記シート取出手段がシートを取り出したとき、前記積載手段に収納されたシートを前記取出位置に位置させるべく前記移動手段を制御する請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の
何れか一項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から供給されるシートに画像を形成する画像形成装置と、
を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に供給するシートを収納するシート給送装置、特に、積層されたシートに風を吹き付けることにより積層されたシートを一枚ずつ分離して供給可能にしたシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置においては、シートを重ねて収納しているデッキからシートを1枚ずつ分離して取り出し画像形成処理を行って、排出するよう構成されている。しかしながら、デッキに重ねて積載しているときシート間の密着力が大きくなると、シートの分離性が悪化する。その結果、デッキからシートを供給するときに、複数枚のシートが重なった状態で送られる重送や、シートの搬送遅れなどのミスフィードが発生しやくなる。特に、高湿下の環境では、シート間により大きな密着力が作用するため、重送やミスフィードが発生しやすくなる。
【0003】
そのため、シートの幅方向側面位置を規制するためのサイドフェンスにエア噴出口を設けて該エア噴出口に繋がるファンからのエアを噴出させ、シート側面にエアを吹き付けることにより給紙前のシート間にエアが入り込み、分離を補助するようにした、いわゆるエア捌き分離機構を搭載することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート給送装置は、昇降可能なシート積載装置に支持されたシート束の上面がシート給送装置による給送が可能な位置に達したことをシート位置検知手段が検知すると、シートをシート積載装置から取り出して給送するように構成されている。
【0006】
しかしながら、エア捌き分離機構を用いたとき、シートの種類によってはエアの吹き付けの強さで積載している最上位のシートを押し上げてしまうことがあり、取出位置を検知する検知手段の精度を下げてしまい安定した給紙ができないという問題があった。特に、一定以上の坪量を有するシートは、最上位のシートがエアの吹き付けで浮き上がり次のシートとの間隔を大きく空けてしまい、次のシートの供給が不安定となることがある。
【0007】
本発明は、シート給送時の分離性能を損なうことなく、エアの吹き付けによる次のシートの取出位置の不安定さを解消したシート給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るシート給送装置は、シートが所定の積載方向に積載される積載手段と、前記積載手段に積載され、所定の取出位置にあるシートを給送方向に取り出すシート取出手段と、前記シート取出手段によりシートを取り出したのち、シートが前記取出位置に達するよう前記積載手段を前記積載方向に上昇移動させる移動手段と、前記取出位置にあるシートを捌くよう前記積載方向及び前記給送方向の双方と交差する方向から送風する送風手段と、前記積載手段に収納されるシートが前記取出位置にあるかを検知する検知手段と、前記積載手段に積載されるシートの坪量情報を認識する坪量認識手段と、前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記坪量認識手段によって認識された坪量情報が所定の坪量未満であるときには、前記検知手段によりシートが前記取出位置にないと検知されたとき、前記積載手段に収納されたシートを前記取出位置に位置させるべく前記移動手段を制御し、前記坪量認識手段によって認識された坪量情報が所定の坪量以上であるときには、前記検知手段による検知結果にかかわらず、前記シート取出手段が前記送風手段からの送風を受けるシートを所定枚数取り出したのち、前記積載手段に収納されているシートを前記取出位置に位置させるべく前記移動手段を所定量上昇させるよう制御する事を特徴とする。
【0009】
また、前記シート取出手段は、前記積載手段に収納されている最上位のシートの高さ位置に応じて前記積載方向に移動し、前記検知手段は、前記シート取出手段があらかじめ設定された移動範囲の下限に到達したとき、前記積載手段に収納されるシートが前記取出位置にないことを検知するよう制御する。
【0010】
これにより、収納しているシート種類の坪量が小さいときには、積載シートの高さ位置に応じた昇降手段によるリニアな積載手段の昇降を制御できるため、効率的なシートの給送が行える。
【0011】
或る実施形態では、前記シート取出手段は、前記シート取出手段が前記積載手段に収納されている最上位の前記シートの高さ位置に応じて移動し、前記検知手段は、前記シート取出手段が移動可能範囲の限界に到達したとき、前記積載手段に収納される前記シートが前記取出位置にないことを検知するものである。
【0012】
また、前記制御手段は、前記送風手段の送風停止時においては、前記シート取出手段が前記シートを取り出したとき、前記積載手段に収納された前記シートを前記取出位置に位置させるべく前記昇降手段を制御する。シートが送風により浮き上がることが無い設定の時には、積載シートの高さ位置に応じた昇降手段によるリニアな積載手段の昇降制御とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートの取り出し枚数に応じて、昇降手段による積載手段の昇降を制御することで、エアの吹き付けで最上位のシートと次のシートとの間隔が大きく空いたときでも、確実に次のシートを取出位置に位置させるため、シートを安定して給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略構成図を示す。
【
図2】実施形態に係る複数段給送デッキの正面図を示す。
【
図3】実施形態に係る複数段給送デッキの収納庫を引き出した状態で示す側面図を示す。
【
図4】実施形態に係る複数段給送デッキの収納庫を引き出した状態で示す拡大側面図を示す。
【
図5】実施形態に係る複数段給送デッキの収納庫を引き出した状態で示す拡大斜視図を示す。
【
図6】実施形態に係る複数段給送デッキの収納庫にシートをセットした状態の説明図を示す。
【
図7】本発明のシート給送装置の要部構成の説明図を示す。
【
図8】本発明のシート給送装置の動作に係るフローチャートを示す。
【
図9】本発明のシート給送装置の動作に係るフローチャートを示す。
【
図10】本発明が解決しようとする課題の説明図を示す。
【
図11】本発明が解決しようとする課題の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
[画像形成システム]
図1は、本発明に係るシート給送装置を上下に複数備える多段デッキ200と、画像形成装置100とを備える画像形成システム1000の一例を概略的に示す断面図である。以下の説明では、画像形成部を有する画像形成装置として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステム(以下単にプリンタと呼ぶ)を例に挙げて説明する。なお、画像形成システムを構成する画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。また、画像形成装置は、電子写真方式に関らず、インクジェット方式などの他の方式の構成であっても良い。
【0017】
多段デッキ200は、擬態的な構成は後述するが、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数のシート給送装置から画像形成装置100へシートを給送可能である。シートとしては、普通紙、薄紙、厚紙などの紙、プラスチックシートなどが挙げられる。
【0018】
画像形成装置100は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)をシートに形成する。
【0019】
画像形成装置100は、画像形成部110、複数のシート収納装置120、シート搬送装置130等を備える。画像形成装置100は、制御部140により各部が制御される。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only MemoRy)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0020】
複数のシート収納装置120は、それぞれシートSを収納するカセット121と、ピックアップローラ122と、フィードローラ123及びリタードローラ124から構成される分離搬送ローラ対125とを備えている。カセット121内に収納されたシートSは、所定のタイミングで昇降動作して回転するピックアップローラ122と分離搬送ローラ対125とによって1枚ずつ分離されて給送される。
【0021】
シート搬送装置130は、搬送ローラ対131、プレレジストローラ対132、及びレジストローラ対133を備えている。シート収納装置120から給送されたシートSは、搬送ローラ対131及びプレレジストローラ対132により、シート搬送路134を通過させられた後、レジストローラ対133に導かれる。この後、シートSは、レジストローラ対133によって、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0022】
なお、後述する多段デッキ200から搬送ローラ対201を介して搬送されるシートは、画像形成装置100との接続経路202を介して画像形成装置100内に搬送される。そして、多段デッキ200から画像形成装置100内に搬送されたシートは、画像形成装置100内のシート収納装置120から搬送されるシートと同様に、プレレジストローラ対132及びレジストローラ対133を介して、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0023】
画像形成部110は、感光ドラム111、帯電器112、レーザスキャナ113、現像器114、転写帯電器115、分離帯電器116、クリーナ117等を備えている。画像形成時には、感光ドラム111が図の矢印方向に回転駆動され、まず、帯電器112により感光ドラム111の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて発光されるレーザスキャナ113からのレーザ光が、ミラー118で折り返されて帯電された感光ドラム111に照射されることで、感光ドラム111上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム111上に形成された静電潜像は、この後、現像器114によってトナー像として顕像化される。
【0024】
この後、感光ドラム111上のトナー像は、転写部115aにおいて転写帯電器115によりシートSに転写される。さらに、このようにトナー像が転写されたシートSは、分離帯電器116により感光ドラム111から静電分離される。転写後に感光ドラム111上に残った転写残トナーは、クリーナ117により除去される。トナー像が転写されたシートSは、搬送ベルト119により定着装置150に搬送されてトナー像の定着が行われ、この後、排出ローラ151によって機外に排出される。
【0025】
[多段デッキ]
多段デッキ200は、それぞれが複数枚のシートを収納して画像形成装置100へ送り出す本発明に係るシート送給装置210を複数有する。複数のシート給送装置210は、鉛直方向に複数段に並べて配置されている。それぞれのシート給送装置210は、多段デッキ200の筐体204に対して引き出し及び挿入可能である。また、各シート給送装置210は、収納可能なシートの枚数が異なるだけで基本的な構成は同じである。なお、収納可能なシートの枚数が同じ場合もある。
【0026】
各シート給送装置210から給送されるシートは、不図示の搬送路を経由して接続経路202(
図1)に搬送される。また、多段デッキ200は、制御部203(
図1)により各部が制御される。制御部203は、上記制御部140と同様、CPU、ROM、RAMを有している。そして、制御部203は、画像形成装置100の制御部140と通信可能であり、制御部140と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0027】
多段デッキ200は、シート給送装置210の引き出し動作を行うための操作部としてのボタン205を有する。ボタン205は、各シート給送装置210の前面にそれぞれ設けられている。例えば、操作者がボタン205を押すと、シート給送装置210を装着位置にロックしていたロック機構が解除され、不図示のバネによりシート給送装置210が筐体204から押し出される。これにより、操作者がシート給送装置210を、
図3ないし
図5に示すように、シートを収納可能な位置まで引き出すことができる。なお、ボタン205を押すことで、モータなどにより収納庫が自動でシートを収納可能な位置まで移動する構成であっても良い。
【0028】
シート給送装置210は、
図4ないし
図7に示すように、シートSを収納可能な収納部220と、収納部220から画像形成装置100に向けてシートSを給送するシート給送部230とを有する。収納部220は、
図5に示すように、シートSが積載される積載トレイ221、突き当て部222、後端規制板223、サイド規制部材224R等を有する。積載トレイ221は、図示しないモータの駆動にてプーリーに接続されたワイヤを巻き取ることで積載トレイ221の高さを変えるリフタ243により上下方向に昇降可能である。
【0029】
突き当て部222は、シートが収納される収納空間225において、シート給送方向下流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの給送方向下流端(先端)が突き当てられる。後端規制板223は、収納空間225において、シート給送方向上流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの給送方向上流端(後端)が突き当てられることで、シートの後端位置を規制する。後端規制板223は、シート給送方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの後端規制位置を調整可能である。サイド規制部材224は、収納空間225のシート給送方向と直交する幅方向両側にそれぞれ配置され、シートの幅方向両端位置を規制する。サイド規制部材224Rおよび224Fは、幅方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの幅方向の規制位置を調整可能である。
【0030】
図6に示すように、一方のサイド規制部材224Rには、上部に送風口240が2つ設けられている。これはサイド規制部材224Rの内部に設けられた送風手段241によって送りこまれた空気を、シートPの側端部分に吹き付けるためのものである。本実施例では送風口241が2つ設けられているが、本発明は、このような実施例に限定するものではない。
【0031】
シート給送部230は、
図7に示すように、シート取出手段としてのピックアップローラ231、搬送ローラ232とリタードローラ233から構成される分離搬送ローラ対234、搬送ローラ対235等を有する。ピックアップローラ231や分離搬送ローラ対234は、
図5に示すように、収納空間225の上方のシート給送方向下流端部で、且つ、幅方向略中央に配置されている。
【0032】
ピックアップローラ231は、積載トレイ221の上方に設けられ、上昇した積載トレイ221に積載されたシートSの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231は、
図7に示すように、シート給送方向に関してシートSの先端部近傍に、積載トレイ221上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるようにシートの積載方向、すなわち上下方向に揺動自在に枢支されている。揺動範囲は、
図11の矢印で示す給紙可能範囲であり、この範囲に位置するシートは、ピックアップローラ231の回転により、積載トレイ221から取り出されて、給送方向に送り出される。
【0033】
分離搬送ローラ対234は、ピックアップローラ231から2枚以上のシートが重なって取り出された場合に、分離してシートの1枚のみを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234の搬送ローラ232は、シートを搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231により取り出されたシートを搬送する。一方、リタードローラ233は、搬送ローラ232とは逆方向に回転して、ピックアップローラ231から送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221側に戻す。尚、リタードローラ233には不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234に送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232の駆動が伝わり、搬送されるシートを挟んで連れ回るようになっている。
【0034】
分離搬送ローラ対234に分離搬送されたシートは、搬送ローラ対235により多段給送装置200内の不図示の搬送路に搬送され、上述のように接続経路202(
図1)を介して画像形成装置100に搬送される。
【0035】
送風手段241は風を送るファン機構であり、空気を送る送風口240はサイド規制部材224Rのシートが当接する面に配置されている。送風手段241から送られてくる空気は、送風路を通り、送風口240から最上位にあるシートP及びその下に積載されているシートの数枚に吹き付けられる。吹き出されたエアを、シート間に吹き込むことにより、シートが一枚一枚に浮上して捌かれる。なお、エアを吹き付ける動作を行う前に予め画像形成装置100よりシートの種類の情報を取得し、その情報によって吹き出されるエアの強さを異ならせて、適切な風量に調整してもよい。尚、本実施例においては、一つの収納空間に2つの送風手段を備えた装置を開示しているが、一つの送風手段からの空気を複数の送風口から送ることや、複数の送風手段を備えるなど種々の形態を採用可能である。
【0036】
浮上規制部材242は送風口240の上部に4通り配置され、サイド規制部材224側に設けられる揺動回転軸を中心に回動可能に設けられており、サイド規制部材224に当接したシートPの浮上を規制することができるようシートPの上方へ突出した状態で設けられる。これにより、送風口240から送られる空気を吹き付けられて浮き上がったシートPは浮上規制部材242に当接し、その位置よりも高く浮きあがることが抑制される。従って、紙間に充分な空気が送り込まれ、シートSが捌かれながら給紙可能な適正位置にシートが抑えられるため重送を防止できる。
【0037】
シート収納部220は、シートSが積載される昇降可能な積載トレイ221と、シートSのシート給送方向上流側端である後端の位置を規制する規制部材である後端規制板223を備えている。後端規制部材223は、シート給送方向と平行な方向に移動可能に支持されて、積載トレイ221の中央部に形成された図示しない長穴部に沿って移動し、経路に設けられたサイズ検知手段14によって後端規制部材223の位置情報をシートのサイズとして検知する手段を備えている。
【0038】
シートSを給送する際、下降して積載トレイ221に積載されたシートSの最上位シートS1を給送する昇降可能なピックアップローラ231は、取出位置(高さ)に積載トレイ221を停止させるための給紙位置センサフラグの役割も有している。すなわち、リフタ243の持ち上げ動作による積載トレイ221の上昇に伴いピックアップローラ231が持ち上げられて、既定の範囲にまで積載トレイ221が上昇し、給紙位置センサ231Sがピックアップローラ231を検知したとき、リフタ243を停止させて積載トレイ221の上昇を止めるようになっている。
【0039】
次に、シート給送装置1の給紙動作について説明する。ピックアップローラ231が下降して積載トレイ221上のシートに接し、回転することで積載トレイ221上の積層されたシートSの最上位シートを給送方向に送り出す。このようなシートの送り出しの前に、送風手段241により送風口240からエアが吹き出され、吹き出されたエアはシートSの端部に吹き付けられ、給紙動作中は送風し続け、給紙動作が終わると同時に送風も終了する。尚、送風手段241にはファンと少なくとも一方にはヒータが設けられており、ファンの回転によりエアが送風される。ヒータはファンの吸引口に設置されており、シートの種類が指定されると同時にヒータの動作の必要性が判断され、動作の必要な場合にはヒータを指定温度まで上昇させる。送風時には温調されたヒータ内部を通ることで適切な温度に温められたエアがファンに吸引され送風口240から排出される。
【0040】
これにより、シート間に送風口240から吹き出されたエアが入り込み、エアが吹き込まれる範囲のシートSが一枚ずつ浮上することによりシートSが捌かれる。このエアの吹き出しは、シートを給送する間、連続して行われるが、間欠的に行っても良い。
【0041】
そして、このようにエアを吹き付けて、積載されているシートの上部のシートSを一枚ずつ捌いた後、ピックアップローラ231が下降して最上位シートに当接する。この後、ピックアップローラ231が、最上位シートをフィードローラ232及びリタードローラ7233により形成される分離ニップ部まで送り出す。そして、最上位シートS1が、その次のシートとエアにより完全に捌かれていない場合には、この分離ニップ部を通過する際、最上位シートS1が次のシートから分離されて搬送される。
【0042】
シート有無判別センサ10は、回動軸を支点に上下方向に回動可能なシート有無判別フラグ11を検出することで、積載トレイ221上のシートSの有無を検知する。積載トレイ221のシート有無判別フラグ11に対応する位置には開口部12が形成されており、積載トレイ221上にシートSが積載されていない場合、シート有無判別フラグ11は回動軸を支点に下方回動し、先端部が開口部12に入り込む。そして、このようにシート有無判別フラグ11が下方回動すると、シート有無判別センサ10の光軸が開放される。そして、シート有無判別センサ10からの検知信号に基づいて、制御部203はシートSが積載トレイ221上に積載されてないことを判断する。
【0043】
次にシート給送装置1の、シート給送時の動作を説明する。シートSの給送を開始する前に、送風手段241により送風口240からエアを吹き出すことで、シートは、サイド規制部材224に沿って全体が浮上し、シートSが吹き付けられるエアの流路に対し全体が略垂直方向に浮上するため、確実に積載されたシートを捌くことができる。
【0044】
また、例えば塗工紙は、高平滑度・低通気性・高吸湿性という特性を有するため、積層状態ではシート間密着力が高まる傾向にあり、高湿度環境下ではこの傾向が顕著となり普通紙に比べて分離性が悪く、給紙時に重送や不送りが発生しやすい。この為、加熱手段13を用いて送風口240から出る空気を温めて、温風を当てることでシートの水分量を飛ばしエア捌きの効果を高めることもできる。
【0045】
しかし、
図10に示すように、エア捌きの効果により積載トレイ221上の最上位シートS1は、エア捌きが働いていない状態(シートの間に空気層が無い状態)で検知した給送面よりも高い位置に浮き上がる。特に、最上位シートS1と次のシートS2との位置の開きは、坪量が大きく、剛度の高いシートの場合に顕著である。
【0046】
最上位シートS1の下にある次に給送される待機中のシートS2も最上位シートS1と同様にエア捌きの効果により浮き上がるが、浮き上がり量は常に不安定な状態となる。また、エア捌きの効果が発揮されるのは給送面から一定範囲内のシートのみであり、エア捌きの効果が出る範囲外のシートは浮き上がらず、シートS1との開きは大きくなる。
【0047】
これにより
図11のように大きく浮上していたシートS1が給送された直後にエア捌きの効果を得られない範囲外に位置するシートS2を給送しようとしても、ピックアップローラ231の位置が図示の給紙可能範囲よりも大きく下方となってしまい、送給されない不具合が発生する可能性が高くなる。その結果、画像形成装置へ送るシート間隔が狂いジャムすることもある。さらに、積載トレイ221の上昇が適切に行われないことでシートS2よりも下方に位置する待機中のシートにエア捌きを十分に得る時間が与えられず、ジャム解除を行った後にも、重送が発生する可能性が増す。
【0048】
かかる不具合を解消するため、制御部203は、実際の紙面を検知する方法と、実際の紙面検知は行わず、シートの情報に応じて一定枚数の給紙ごとに積載トレイ221を上昇するという二通りの紙面位置制御を使い分ける。以下、制御部203による紙面位置制御について、
図8および
図9のフローチャートに沿って詳述する。
【0049】
まず、
図8を参照して、イニシャル動作について説明する。既に説明したように、シート給装装置1は、装置筐体から引き出し可能な構成となっており、シート収納部220にシートが収納されて、装置筐体内にセットされると(収納庫クローズ)、制御部203は、クローズによる開閉センサの閉信号をトリガーにしてシート給送装置1のイニシャル動作を開始する(St1)。
【0050】
イニシャル動作では、制御部203は、シート給送装置1が引き出される前に一定の高さまで下降させている積載トレイ221をリフタ243により上昇させる(St2)。そして、ピックアップローラ231がシート上面と接触することで、給紙位置センサ231Sがオンになるまで上昇させ(St3)、リフタ243による積載トレイ221の持ち上げを停止する(St4)。これでイニシャル動作は完了する。給紙位置センサ231Sは、ピックアップローラ231がシート上面と接触することでオンするセンサであるから、図および
図9のフローチャートでは、給紙位置センサ231Sを「上面検知センサ」と呼称している。
【0051】
画像形成システム1000にジョブが入力されて開始される給紙動作について、
図9を参照して説明する。
【0052】
制御部203は、給紙動作の開始(St10)により、画像形成装置100の制御部140からシートの情報を取得する(St11)。シートの情報は、エア捌きが必要か否かの情報及びシートが所定の坪量(350g/m2未満)を超えている種類であるか否か等の情報である。エア捌きの不要は、ユーザーが事前に画像形成装置100の操作パネルの操作により制御部140に入力される。
【0053】
そして、制御部203は、取得したシート情報からエア捌きを必要とするときには(St12の「Y」)、送風手段241を動作させてエア捌きをオンする(St13)。尚、エア捌きが不要なときは(St12の「N」)、後述するSt19の処理に進む。
【0054】
次に、制御部203は、シート種類が所定の坪量を超えないシートであるか否かの判定を行う(St14)。エア捌きによってシートS間には空気が入り込むが、所定坪量を超えない、具体的には350g/m2未満の坪量のシートである場合は、シートが浮き上がろうとしてもピックアップローラ231に押さえられるため、シート面の高さが大きくずれることは無い。しかし、350g/m2以上の坪量のシートである場合は、ピックアップローラ231を押し上げるためシート面の高さを大きくずらすことになる。
【0055】
制御部203は、350g/m2未満の坪量のシートである場合(St14の「N」)、画像形成装置100へのシートの給紙動作を開始し、各搬送ローラを駆動してシート給紙動作となる(St19)。
【0056】
このとき、給紙位置センサ241S(上面検知センサ)がピックアップローラ231を検知していると(St20の「Y」)、必要な枚数のシート供給が終了したかを判別し(St23)、終了してないとSt19の処理に戻る。よって、必要な枚数のシート供給が終了するまでシート給紙動作が継続されるが、この間、シートを給紙するに従い、積載トレイ221に収納しているシート面は徐々に低下し、ピックアップローラ231も徐々に下降していき、給紙位置センサ241Sのセンシング範囲から外れると、給紙位置センサ241Sがオフとなるため(St20の「Y」)、給紙位置センサ241Sがオンに復帰する所定の高さまでリフタ243(積載トレイ221)を上昇させる(St21,St22)。
【0057】
そして、制御部203は、必要な枚数のシート供給が終了したことを判別すると(St23の「Y」)、シート給紙動作終了となり各ローラが停止し、エア捌きのための送風も停止する。
【0058】
一方、制御部203は、エア捌きが必要であると判別し(St12の「Y」)、エア捌きをオン(St13)した後、所定の坪量(350g/m2)以上のシートであるかを判別する(St14)。所定の坪量以上のシートであるときには、上述のシート識別情報からシートを何枚搬送するごとにリフタ243(積載トレイ221)を所定距離、例えば1mm上昇させるかを決定する(St15)。そして、各搬送ローラを駆動して画像形成装置100へのシート給紙動作となる(St16)。
【0059】
そして、予め設定されているこの所定枚数のシートを画像形成装置100へ給紙すると、制御部203は、リフタ243を駆動して積載トレイ221を1mm上昇させる(St17)。したがって、エア捌きが必要で且つ所定の坪量以上のシートであるときは、制御部203は、給紙位置センサ241Sからの検知信号に依らずにリフタ243の持ち上げ動作を制御する。
【0060】
制御部203は、画像形成装置100への必要な枚数のシート供給が終了したかを判別して(St18)、終了してないとSt16の処理に戻る。よって、必要な枚数のシート供給が終了するまでシート給紙動作が継続されて、給紙完了までの間、随時所定枚数給紙するごとにリフタ243(積載トレイ221)を上昇し続け、必要枚数を給紙したところで(St18の「Y」)、給紙動作を終了し、送風ファンも停止する(St24)。
【0061】
一方、前述でシートの情報がエア捌きが不要であることを示しているときには、St12の処理は「N」の判定でSt19の処理に進み、給紙位置センサ241Sにより給送面を検知しながら積載トレイ221の上昇量を制御することになる。
【0062】
本実施例においては所定の坪量(350g/m2)を超えるシートに対してエア捌きを行う場合には、紙面検知の結果を使わずに所定枚数搬送するごとにリフタ243(積載トレイ221)を上昇させることで説明したが、この動作はシートの浮き上がりによる次シートとの開きが大きくなってしまう場合に適用することで効果を得るものである。したがって、坪量の大きなシートやシート面にコーティングが施されたシート、或いは合成紙など分離性能を高める必要があるシートに対しては、エアの風量を通常シートの場合より強く設定し、エア風量が強くなったことをトリガーにして、所定枚数搬送するごとにリフタ243(積載トレイ221)を上昇させ動作を開始するようにしても良い。
【0063】
なお、この制御はシート自身の厚さの誤差や機械的なバラツキが加味されない。これにより実際に検知される給送面とのずれが生じる可能性があるため、この制御によって一定回数の上昇を行った後に、エアの送風を止めた状態で給送面の検知を行い、給送面のリセット制御を行っても良い。
【0064】
また、シートの情報取得方法は本体からの情報を基に、プリインストールされたシート種別に応じた制御テーブルで行ってもよく、外部入力によって制御を行ってもよい。
【0065】
このように、本実施の形態においては、シートサイズや種類によって予め算出される情報によって積載トレイ221の移動を制御することにより、エアの送風を行っても、取出位置の不安定さを解消し安定したエア捌きと給紙動作を行うことが可能となる。
【0066】
なお、これまでの説明においては、積載トレイ221に積載されたシートの端部に向けてエアを吹き出すことによりシートを浮上させながらシートを分離させた後、ピックアップローラ231によりシートを送り出す構成のシート給送装置について説明した。しかし、本発明は、これに限らず、エアによりシートを浮上させながら一枚一枚に分離し、この後、浮上した最上位シートを搬送ベルトに吸着させて搬送する構成のシート給送装置にも適用することができる。さらに、これまでの説明においては、エアをシートの側面に向けて吹き出すようにしたシート給送装置について説明したが、シートの先端、又は後端に向けてエアを吹き出すようにしてもよい。
【0067】
また、本実施例ではリフタ243(積載トレイ221)の上昇量は1mmずつとし、シート情報に応じ何枚給送するごとに1mm上昇させるかを変更することで各種シートに対応しているが、上昇させる回数を増減させるとともに一回の上昇量を2mmないし3mm等に異ならせることも考えられる。これにより、坪量が大きなシートの中でも比較的エア捌きでのばらつきが少なく、搬送不良が起きづらいケースではリフタ243の動作回数を減らせるメリットがある。
【0068】
また、シートの状況は装置が設置される環境によって大きく変化するため、温度や湿度といった設置環境の状況も考慮して制御テーブルを設定してもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 画像形成装置
203 制御部(制御手段)
210 シート給送装置
221 積載トレイ(積載手段)
231 ピックアップローラ(シート取出手段)
231S 給紙位置センサ(検知手段)
243 リフタ(昇降手段)
241 送風手段
1000 画像形成システム
S シート
S1 最上位シート